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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】電力変換装置用の筐体
(51)【国際特許分類】
   H02B 3/00 20060101AFI20250408BHJP
   H02B 1/30 20060101ALI20250408BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
H02B3/00 D
H02B1/30 F
H05K5/02 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022036185
(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公開番号】P2023131429
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃司
(72)【発明者】
【氏名】有松 公治
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-037419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/30
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置が内部に搭載され本体部と、
前記本体部の上方に位置して前記本体部に取り付けられた屋根と、
を備え、
前記本体部は、吊り治具が固定される固定部を有し、
前記屋根は、前記固定部に対応する位置に前記吊り治具が挿通する挿通部を有し、
前記固定部は、前記本体部の上面部に設けられており、
前記本体部の前記上面部は、
上段部と、
前記上段部から一段下がった下段部と、
を有し、
前記固定部は、前記下段部に設けられている電力変換装置用の筐体。
【請求項2】
電力変換装置が内部に搭載され本体部と、
前記本体部の上方に位置して前記本体部に取り付けられた屋根と、
を備え、
前記本体部は、吊り治具が固定される固定部を有し、
前記屋根は、前記固定部に対応する位置に前記吊り治具が挿通する挿通部を有し、
前記挿通部は、前記屋根の上面よりも上方に突出している電力変換装置用の筐体。
【請求項3】
前記固定部は、前記本体部の上面部に設けられている請求項に記載の電力変換装置用の筐体。
【請求項4】
前記本体部の前記上面部は、
上段部と、
前記上段部から一段下がった下段部と、
を有し、
前記固定部は、前記下段部に設けられている請求項に記載の電力変換装置用の筐体。
【請求項5】
前記上面部は、前記下段部から前記上段部に向けて立ち上がる立壁部を有する請求項1または4に記載の電力変換装置用の筐体。
【請求項6】
前記挿通部は、前記屋根の下面よりも下方に突出しており、
前記挿通部の下方には、前記下段部が位置している請求項1、4、5のいずれか1項に記載の電力変換装置用の筐体。
【請求項7】
前記挿通部は、前記屋根の上面よりも上方に突出している請求項1、5、6のいずれか1項に記載の電力変換装置用の筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、一般的に電力変換装置用の筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置が内部に搭載された電力変換装置用の筐体が知られている。このような電力変換装置用の筐体は、例えば屋外に設置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/096677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置用の筐体は、電力変換装置を搭載した状態で、クレーンなどにより現場に設置される。筐体を吊上げるためには、ワイヤが掛けられる屋根の強度を重量に耐えるように増加させなければならず、コストが増加するおそれがある。また、筐体の本体部と屋根とを分割して輸送、設置することも考えられる。しかし、このような場合には、現場で本体部に屋根を取り付ける作業が発生するため、コストが増加するおそれがある。
【0005】
本実施形態は、上述する課題に鑑みなされたもので、筐体を効率よく吊上げることができる電力変換装置用の筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態は、電力変換装置が内部に搭載された本体部と、前記本体部の上方に位置して前記本体部に取り付けられた屋根と、を備え、前記本体部は、吊り治具が固定される固定部を有し、前記屋根は、前記固定部に対応する位置に前記吊り治具が挿通する挿通部を有する電力変換装置用の筐体である。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、筐体を効率よく吊上げることができる電力変換装置用の筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態による電力変換装置用の筐体を吊った状態を示す正面図である。
図2】筐体の本体部を斜め上方からみた斜視図である。
図3図1中の筐体、吊り治具、補助部材を矢示A-A方向からみた断面図である。
図4】筐体を上方からみた平面図である。
図5図4中の筐体を矢示B-B方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図5を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態による電力変換装置用の筐体を吊った状態を示す正面図である。
図2は、筐体の本体部を斜め上方からみた斜視図である。
図3は、図1中の筐体、吊り治具、補助部材を矢示A-A方向からみた断面図である。
図4は、筐体を上方からみた平面図である。
図5は、図4中の筐体を矢示B-B方向からみた断面図である。
【0010】
図1に示すように、電力変換装置用の筐体1(以下、筐体1とする)は、本体部10と、屋根30と、を備えている。筐体1は、例えば屋外の地面Gに設置されている。
【0011】
なお、本願明細書において、「上」、「下」、「右」および「左」という記載は、筐体1の前で筐体1を見た人を基準とした上、下、右および左をそれぞれいう。また、本願明細書においては、筐体1から、筐体1の前に居る人へ向かう方向を「前」方向とし、その逆方向を「後」方向とする。
【0012】
本体部10は、上方に開口部10aを有するボックス状に形成されている。本体部10の内部10bには、電力を変換したり制御したりするための電力変換装置100が搭載されている。
【0013】
本体部10は、側面10cにドア12を有している。作業者は、ドア12を開閉することにより、電力変換装置100のメンテナンスなどを行うことができる。また、本体部10は、側面に吸気口13を有している。
【0014】
吸気口13は、外部から本体部10の内部10bに空気を流入させる。吸気口13は、下方が開口したカバー14により覆われている。カバー14は、雨水などが吸気口13から本体部10の内部に浸入するのを抑制している。本体部10の内部10bに流入した空気は、電力変換装置100を冷却して、上方の開口部10aから排気される。
【0015】
図2に示すように、本体部10は、上面部16を有している。上面部16は、例えば本体部10の上下方向の中間部よりも上方(好ましくは、ドア12よりも上方)に位置している。本体部10の上面部16は、上段部16a、下段部16b、および立壁部16c、を有している。上面部16には、例えば図示しないボルトなどにより屋根30が固定されている。上段部16aは、本体部10の上端となっており、内側が開口部10aとなっている。図1に示すように、上面部16は、例えば屋根30の内部に位置している。
【0016】
下段部16bは、本体部10の四隅に形成されている。下段部16bは、上段部16aから一段下がった平坦面となっている。下段部16bは、本体部10の側面10cから本体部10の内部10bに向けて延びている。すなわち、上面部16は、上段部16aと、下段部16bと、により段付き状に形成されている。
【0017】
固定部20は、本体部10の上面部16に設けられている。具体的には、固定部20は、下段部16bに設けられている。固定部20は、例えば下段部16bから下方に向けて穿設されためねじとなっている。固定部20には、後述する吊り治具50のおねじ54が螺合する。
【0018】
立壁部16cは、下段部16bから上段部16aに向けて立ち上がっている。立壁部16cは、本体部10の内部10bと下段部16bとの間を遮蔽している。図2に示すように、立壁部16cは、L字状に形成されている。立壁部16cは、下段部16bにある雨水などが上段部16aを越えて、本体部10の内部10bに浸入するのを抑制する。
【0019】
屋根30は、本体部10の上方に位置して、本体部10に取り付けられている。屋根30は、本体部10の開口部10aを覆っている。屋根30は、例えば複数枚の板材が組み合わされて形成されている。図1に示すように、屋根30は、下方が開口したボックス状に形成されている。
【0020】
図1図4に示すように、屋根30の外形形状は、本体部10の外形形状よりも大きくなっている。これにより、吸気口13から本体部10の内部10bに流入した空気は、本体部10の開口部10aを介して屋根30の下方から外部に排出される。屋根30は、例えば上面30aが左右方向で傾斜している。これにより、屋根30は、上面30aに雨水などが溜まるのを抑制している。
【0021】
屋根30は、本体部10の固定部20に上下方向で対向する位置に、挿通部32を有している。挿通部32は、屋根30の上面30aと下面30bとの間を上下方向に貫通している。挿通部32は、例えば円筒状に形成されている。挿通部32には、後述の吊り治具50の軸部52が挿通する。この場合、挿通部32は、吊り治具50の軸部52の外形形状よりも大きく形成されている。
【0022】
図3図5に示すように、挿通部32は、屋根30の上面30aよりも上方に突出する第1突出部32aを有している。また、挿通部32は、屋根30の下面30bよりも下方に突出する第2突出部32bを有している。挿通部32の下方には、本体部10の下段部16bが位置している。挿通部32は、本体部10の固定部20に対応して4個設けられている。
【0023】
吊り治具50は、筐体1を吊上げるときに用いられるものである。図3に示すように、吊り治具50は、軸部52と、軸部52の下端に設けられたおねじ54と、軸部52の上端に設けられたワイヤ掛け部56と、を有している。軸部52は、例えば円筒状に形成されている。
【0024】
筐体1を吊上げる場合には、軸部52が後述する補助具60の貫通孔62および屋根30の挿通部32に挿通され、おねじ54が本体部10の固定部20に螺合する。図1に示すように、ワイヤ掛け部56には、図示しないクレーンなどの主巻きフック110から延びるワイヤ120が掛けられる。
【0025】
補助具60は、筐体1を吊上げる場合に用いられるものである。図1図3に示すように、補助具60は、屋根30の上方に配置される。補助具60は、例えば金属製の枠体からなり、屋根30の挿通部32に対応する位置に上下方向に貫通する貫通孔62を有している。貫通孔62は、挿通部32の内径寸法よりも小さく、吊り治具50の外径寸法よりも大きくなっている。補助具60は、筐体1を吊上げた場合に、吊り治具50の軸部52の上端側が移動するのを抑制する。
【0026】
補助具60は、例えばクレーンの補巻きフック(図示せず)に吊上げられる。その状態で、吊り治具50の軸部52を補助具60の貫通孔62および屋根30の挿通部32に挿通させ、おねじ54を本体部10の固定部20に螺合させる。次に、主巻きフック110から延びるワイヤ120を、吊り治具50のワイヤ掛け部56に掛ける。
【0027】
この状態で、クレーンの主巻きフック110および補巻きフックを巻き上げることにより、筐体1を吊上げることができる。筐体1の内部には、電力変換装置100が搭載されている。この状態で、筐体1が4点吊りされると、4つの吊り治具50は、筐体1および電力変換装置100の重量により、おねじ54を支点としてワイヤ掛け部56がそれぞれ中央側に向けて引っ張られる。
【0028】
ここで、仮に補助具60を用いないで、筐体1を吊上げた場合には、中央側に引っ張られた吊り治具50の軸部52が傾き、屋根30の挿通部32に接触して挿通部32が変形してしまうおそれがある。
【0029】
そこで、この例では、補助具60を用いることにより、中央側に引っ張られた吊り治具50の軸部52を貫通孔62の内面で押さえている。筐体1を吊上げた場合には、対角線上に位置する各吊り治具50の引張応力の成分がそれぞれ中央側に向くことになる。従って、補助具60は、屋根30に対して相対移動することなく、吊り治具50の移動を抑制できる。これにより、補助具60が吊り治具50の移動を抑制するので、吊り治具50の軸部52が屋根30の挿通部32に接触するのを抑制できる。
【0030】
なお、吊り治具50が補助具60の貫通孔62内に回転可能に固定されていてもよい。このような場合には、吊り治具50と補助具60とが一体となっているので、補助具60を吊上げることなく、補助具60により吊り治具50の移動を抑制できる。
【0031】
このように、筐体1は、屋根30を補強しなくても、本体部10の内部に電力変換装置100を搭載した状態で、本体部10と屋根30とを一緒に吊上げて現場に設置させることができる。これにより、筐体1のコストを削減することができる。また、屋根30の軽量化を図ることができる。さらに、本体部10と屋根30とを分割する必要もないので、筐体1の設置作業の作業性を向上できる。
【0032】
次に、筐体1の防水構造について、説明する。
【0033】
筐体1が現場に設置された場合には、吊り治具50が固定部20から外される。そして、図4図5に示すように、屋根30の挿通部32には、蓋部70が取り付けられる。蓋部70と挿通部32との間には、図示しないシール部材が設けられている。これにより、蓋部70は、挿通部32内に雨水が浸入するのを抑制している。
【0034】
また、挿通部32は、屋根30の上面30aから上方に向けて延びる第1突出部32aを有している。これにより、第1突出部32aは、屋根30の上面30aを流れる雨水などが、挿通部32の内部に浸入するのを抑制している。
【0035】
さらに、挿通部32は、屋根30の下面30bから下方に向けて突出する第2突出部32bを有している。第2突出部32bは、仮に挿通部32の内部に雨水が浸入した場合でも、本体部10の内部に雨水が浸入するのを抑制する。
【0036】
具体的には、第2突出部32bは、雨水Wが屋根30の下面30bを伝って、本体部10の開口部10a上から内部10bに垂れ落ちるのを抑制できる。図5に示すように、第2突出部32bは、屋根30の下面30bよりも下方に向けて突出しているので、雨水Wを下方に向けて垂れ落とすことができる。
【0037】
雨水Wは、挿通部32の下方に位置する下段部16bに垂れ落ちる。下段部16bに垂れ落ちた雨水Wは、立壁部16cにより本体部10の内部10bに浸入するのが抑制される。なお、下段部16bは、外側に向けて傾斜していてもよい。これにより、下段部16bに垂れ落ちた雨水Wを効率よく外部に流すことができる。
【0038】
このように、屋根30に吊上げ用の挿通部32を設けた場合でも、現場への設置後に雨水などが本体部10の内部10bに浸入するのを抑制することができる。
【0039】
なお、上述した実施形態では、上面部16が上段部16aと下段部16bとにより段付き状に形成された場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば上面部は、段付き状に形成されていなくてもよい。例えば、本体部10の上端(上段部16a)は、固定部20が設けられるような平坦部を有していてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 筐体
10 本体部
10a 開口部
10b 内部
10c 側面
12 ドア
13 吸気口
14 カバー
16 上面部
16a 上段部
16b 下段部
16c 立壁部
20 固定部
30 屋根
30a 上面
30b 下面
32 挿通部
32a 第1突出部
32b 第2突出部
50 吊り治具
52 軸部
54 おねじ
56 ワイヤ掛け部
60 補助具
62 貫通孔
70 蓋部
100 電力変換装置
110 主巻きフック
120 ワイヤ
G 地面
W 雨水

図1
図2
図3
図4
図5