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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】コネクタユニット
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/193 20060101AFI20250408BHJP
   H01R 12/82 20110101ALI20250408BHJP
【FI】
H01R13/193
H01R12/82
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020120104
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017044
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-05-17
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】元重 佑一
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸太郎
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】小川 恭司
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-322085号公報(JP,A)
【文献】特開昭54-098985(JP,A)
【文献】特開平08-273761号公報(JP,A)
【文献】実開昭63-085891(JP,U)
【文献】特開2007-227025(JP,A)
【文献】特開2007-018914(JP,A)
【文献】特開2001-035334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/193
H01R 12/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側端子を有する相手側コネクタと、前記相手側端子に押圧接触した状態にて電気的に接続されることになる端子を有するコネクタと、を備えるコネクタユニットであって、
前記相手側コネクタは、
前記相手側端子に設けられる導電部と、
前記導電部とは異なる被当接部と、を有し、
前記端子は、
前記導電部と電気的に接続されることになる接点部と、
前記被当接部と当接することになる当接部と、
前記接点部と前記当接部とを連結する弾性変形可能な連結部と、を有し、
前記コネクタと前記相手側コネクタとを嵌合する際、
前記当接部が前記被当接部と当接して前記導電部に近付くように変位するとともに前記接点部が前記導電部に近付くように変位し、前記接点部が前記導電部に前記連結部の弾性変形を伴って押圧接触し、
前記端子は、
対向方向に互いに向かい合うように配置された一対の前記接点部と、
前記対向方向に互いに向かい合うように配置された一対の前記当接部と、
前記対向方向に互いに向かい合うように配置された一対の前記連結部と、
前記対向方向に互いに向かい合うように配置され且つ前記相手側端子との接続方向に延びる一対の平板状の基板部であって、前記対向方向の一方側の基板部の前記接続方向の一端部が、前記対向方向の一方側に位置する前記接点部、前記連結部及び前記当接部を含んで連続する一方側部分と連結し、前記対向方向の他方側の基板部の前記接続方向の一端部が、前記対向方向の他方側に位置する前記接点部、前記連結部及び前記当接部を含んで連続する他方側部分と連結する、一対の基板部と、
一対の前記基板部における前記接続方向の前記一端部と反対側の他端部同士を連結し、且つ、前記対向方向に延びる、平板状の天板部と、
を一体に含む、クリップ状の形状を有し、
前記端子の一対の前記基板部が、前記コネクタに設けられ且つ前記接続方向の前記一端部側に開口する溝部に圧入され固定されており
前記接点部は、前記導電部に向かって突出するように湾曲した形状を有し、
前記当接部は、前記被当接部に向かって突出するように湾曲した形状を有し、
当該端子は、
前記一対の前記当接部の間の間隔を前記被当接部によって押し広げることによって前記一対の前記接点部の間の距離が大きくなり、且つ、前記一対の前記接点部の各々が対応する前記導電部に押圧接触するように構成される、
又は、
前記一対の前記当接部の間の間隔を前記被当接部によって押し狭めることによって前記一対の前記接点部の間の距離が小さくなり、且つ、前記一対の前記接点部の各々が対応する前記導電部に押圧接触するように構成される、
コネクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子、及び、その端子を用いたコネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、端子と相手側端子とを互いに押圧接触させた状態で電気的に接続するコネクタユニットが提案されている。例えば、この種のコネクタユニットで用いられる端子として、一対の接点部で相手側端子を挟み込むように全体としてU字状の形状を有する端子(いわゆる、クリップ端子)が挙げられる(例えば、特許文献1,2を参照。)。クリップ端子は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される高電圧バッテリと、車載回路と、をメンテナンスの際などに遮断するためのサービスプラグに適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-220129号公報
【文献】特開2006-260794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の端子を相手側端子に向けて近付けながら電気的接続を行う際、端子と相手側端子との間に生じる摩擦力が、端子の移動を妨げる向きに端子に及ぼされる。この摩擦力に抗して端子を相手側端子に対して移動させながら接続する際に要する外力を、以下「挿入力」という。特に、端子および相手側端子の両者に同一のメッキ材料でメッキ処理が施されている場合、両者の界面で摩擦接合が局所的に発生する等の理由から、両者間の摩擦係数が大きくなって大きな挿入力が必要となる場合がある。更に、そのように大きな挿入力を要する状態で、相手側端子に対する端子の移動量が大きいと、端子同士を組み付ける作業の作業性を高め難い。
【0005】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、相手側端子との組み付けの作業性に優れる端子を用いるコネクタユニット、の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタユニットは、下記[1]特徴としている。
[1]
相手側端子を有する相手側コネクタと、前記相手側端子に押圧接触した状態にて電気的に接続されることになる端子を有するコネクタと、を備えるコネクタユニットであって、
前記相手側コネクタは、
前記相手側端子に設けられる導電部と、
前記導電部とは異なる被当接部と、を有し、
前記端子は、
前記導電部と電気的に接続されることになる接点部と、
前記被当接部と当接することになる当接部と、
前記接点部と前記当接部とを連結する弾性変形可能な連結部と、を有し、
前記コネクタと前記相手側コネクタとを嵌合する際、
前記当接部が前記被当接部と当接して前記導電部に近付くように変位するとともに前記接点部が前記導電部に近付くように変位し、前記接点部が前記導電部に前記連結部の弾性変形を伴って押圧接触し、
前記端子は、
対向方向に互いに向かい合うように配置された一対の前記接点部と、
前記対向方向に互いに向かい合うように配置された一対の前記当接部と、
前記対向方向に互いに向かい合うように配置された一対の前記連結部と、
前記対向方向に互いに向かい合うように配置され且つ前記相手側端子との接続方向に延びる一対の平板状の基板部であって、前記対向方向の一方側の基板部の前記接続方向の一端部が、前記対向方向の一方側に位置する前記接点部、前記連結部及び前記当接部を含んで連続する一方側部分と連結し、前記対向方向の他方側の基板部の前記接続方向の一端部が、前記対向方向の他方側に位置する前記接点部、前記連結部及び前記当接部を含んで連続する他方側部分と連結する、一対の基板部と、
一対の前記基板部における前記接続方向の前記一端部と反対側の他端部同士を連結し、且つ、前記対向方向に延びる、平板状の天板部と、
を一体に含む、クリップ状の形状を有し、
前記端子の一対の前記基板部が、前記コネクタに設けられ且つ前記接続方向の前記一端部側に開口する溝部に圧入され固定されており
前記接点部は、前記導電部に向かって突出するように湾曲した形状を有し、
前記当接部は、前記被当接部に向かって突出するように湾曲した形状を有し、
当該端子は、
前記一対の前記当接部の間の間隔を前記被当接部によって押し広げることによって前記一対の前記接点部の間の距離が大きくなり、且つ、前記一対の前記接点部の各々が対応する前記導電部に押圧接触するように構成される、
又は、
前記一対の前記当接部の間の間隔を前記被当接部によって押し狭めることによって前記一対の前記接点部の間の距離が小さくなり、且つ、前記一対の前記接点部の各々が対応する前記導電部に押圧接触するように構成される、
コネクタユニットであること
【0007】
上記[1]の構成のコネクタユニットによれば、相手側端子を有する相手側コネクタと相手側端子に押圧接触した状態にて電気的に接続されることになる端子を有するコネクタとを嵌合する際、端子の当接部が被当接部と当接して導電部に近付くように変位するとともに、接点部が導電部に近付くように変位する。そして、そのように変位した接点部が、導電部に連結部の弾性変形を伴って押圧接触する。換言すると、当接部を変位させない限り、接点部が導電部から離れた位置にあるため、接点部と導電部との間に摩擦力が生じない。一例として、端子を相手側端子に近付けながら両者の接続を行う場合、当接部と被当接部とが当接するタイミングを調整することで、端子の接点部と相手側端子の導電部との押圧接触が始まるタイミングを調整できる。また、例えば、被当接部を樹脂等で構成することで、当接部と被当接部との間に生じる摩擦力を小さくすることができる。その結果、接点部が導電部に対して押圧接触した状態で(即ち、挿入力を要する状態で)端子を相手側端子に対して移動させる距離を短縮できる。この結果、本構成のコネクタユニットは、上述した従来の端子を有するコネクタユニットと比べ、相手側端子との組み付けの作業性に優れる。
【0008】
更に、上記[]の構成のコネクタユニットによれば、接点部が導電部に向けて突出するように湾曲した形状を有することで、接点部が導電部に対して滑らかに摺動し得る。当接部と被当接部との間の摺動についても同様である。この結果、本構成のコネクタユニットは更に相手側端子との組み付けの作業性に優れる。
【0009】
更に、上記[]の構成のコネクタユニットによれば、クリップ状の形状を有する端子の一対の当接部の間隔が被当接部によって押し広げられる(例えば、一対の当接部が被当接部を挟み込む)ことで、端子の一対の接点部の間の距離が大きくなり、一対の接点部の各々が対応する導電部と押圧接触する。逆に、クリップ状の形状を有する端子の一対の当接部の間隔が被当接部によって押し狭める(例えば、一対の当接部が被当接部によって挟みこまれる)ことで、端子の一対の接点部の間の距離が小さくなり、一対の接点部の各々が対応する導電部と押圧接触する。このように、本構成のコネクタユニットによれば、クリップ状の形状を有する端子として本発明を具体的に実現できる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、作業性に優れる端子を用いるコネクタユニット、を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコネクタユニットを示す斜視図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、端子及び相手側端子が接続する際の動作を説明するための図2に対応する断面図であり、図3(a)は、端子及び相手側端子の接続前の状態(コネクタ及び相手側コネクタの嵌合動作中の状態)を示し、図3(b)は、端子及び相手側端子の接続が完了した状態(コネクタ及び相手側コネクタの嵌合が完了した状態)を示す。
図4図4(a)及び図4(b)は、変形例に係るコネクタユニットにおける図3(a)及び図3(b)にそれぞれ対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタユニット1について説明する。コネクタユニット1は、図1に示すように、コネクタ2と、相手側コネクタ3とを備える。コネクタ2と相手側コネクタ3とが嵌合されることで、コネクタ2に収容された端子30(図2参照)と相手側コネクタ3に収容された相手側端子50(図2参照)とが電気的に接続される。
【0015】
コネクタユニット1は、典型的には、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されて、メンテナンスの際などに車載の高電圧バッテリと車載回路とを遮断して作業者の安全を確保するためのサービスプラグとして使用される。以下、説明の便宜上、図1図4に示すように、「前後方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。
【0016】
コネクタ2は、図1及び図2に示すように、ハウジング10と、ハウジング10に回動可能に支持されたレバー20と、ハウジング10に収容された端子30と、を備える。相手側コネクタ3は、相手側ハウジング40と、相手側ハウジング40に収容された相手側端子50と、を備える。以下、先ず、コネクタ2を構成する各部品について順に説明する。
【0017】
まず、ハウジング10について説明する。樹脂製のハウジング10は、図1に示すように、幅方向及び前後方向に延び且つ前後方向に長い略平板状の形状を有する。ハウジング10の下面の前後方向中央部には、図2に示すように、嵌合部11が形成されている。嵌合部11は、下方に開口する嵌合空間12を有している。嵌合部11は、相手側ハウジング40の後述する嵌合部41と嵌合することになる。
【0018】
嵌合部11の幅方向中央部には、図2に示すように、上方に窪み且つ下方に開口する溝部13が、嵌合空間12内にて前後方向に延びるように形成されている。溝部13には、端子30の後述する一対の基板部32が圧入され固定されている。
【0019】
次いで、レバー20について説明する。レバー20は、ハウジング10と相手側ハウジング40との嵌合動作を補助する機能を果たす。樹脂製のレバー20は、図1に示すように、前後方向に延びる一対のアーム部21と、一対のアーム部21の一端部同士を連結して幅方向に延びる連結部22と、から構成される。
【0020】
一対のアーム部21における先端部(他端部)23より連結部22側の先端部23近傍に位置する支点部24は、ハウジング10の幅方向両外側にて回動可能にハウジング10に支持されている。この結果、レバー20は、ハウジング10に対して、一対の支点部24を中心に、連結部22がハウジング10の前端の前方に位置する第1位置(寝た姿勢、図1参照)と、連結部22が支点部24の上方に位置する第2位置(立てた姿勢)との間を、回動可能となっている。
【0021】
次いで、端子30について説明する。端子30は、図2に示すように、前後方向からみて略U字状の形状を有するいわゆるクリップ端子である。端子30は、細長い矩形状の金属板にプレス加工及び曲げ加工等を施すことで、形成されている。
【0022】
具体的には、端子30は、幅方向且つ前後方向に延びる平板状の天板部31と、天板部31の幅方向両端部から垂下して幅方向に対向し且つ前後方向に延びる一対の平板状の基板部32と、一対の基板部32の下側に連続すると共に幅方向外側に突出するように湾曲し且つ前後方向に延びる一対の第1湾曲部33と、一対の第1湾曲部33の下側に連続すると共に幅方向内側に突出するように湾曲し且つ前後方向に延びる一対の第2湾曲部34と、から構成される。端子30の表面全体は、錫及び銀などの金属材料によってメッキ処理されている。
【0023】
ここで、第1湾曲部33の頂部(幅方向の最も外側に位置する部分)が、接点部35を構成し、第2湾曲部34の頂部(幅方向の最も内側に位置する部分)が、当接部36を構成し、接点部35と当接部36とを連結する部分が、連結部37を構成している(図2参照)。図3(a)に示すように、端子30が弾性変形していない状態にて、一対の接点部35は、一対の当接部36より幅方向外側に位置している。一対の接点部35の幅方向外側端面同士の間隔C、及び、一対の当接部36の幅方向内側端面同士の間隔Bは、端子30の幅方向への弾性変形によって変化し得る。
【0024】
端子30の一対の基板部32は、ハウジング10の溝部13に圧入され固定されている(図2参照)。この結果、端子30は、嵌合部11の嵌合空間12から下方に突出して、一対の接点部35及び一対の当接部36が嵌合部11の開口より下側に位置するように、ハウジング10に固定されている。以上、コネクタ2を構成する各部品について説明した。次いで、相手側ハウジング40を構成する各部品について順に説明する。
【0025】
まず、相手側ハウジング40について説明する。樹脂製の相手側ハウジング40は、図1に示すように、幅方向及び前後方向に延び且つ前後方向に長い形状を有する。相手側ハウジング40の前後方向中央部には、図1及び図2に示すように、嵌合部41が形成されている。嵌合部41は、上方に開口する嵌合空間42を有している。
【0026】
嵌合部41の幅方向中央部には、上下方向に延びる平板状の被当接部43が、嵌合空間42内にて前後方向に延びるように設けられている。樹脂製の被当接部43は、端子30の一対の当接部36の間に挿入されることになる。樹脂製の被当接部43の上端角部には、上下方向から傾斜する一対のテーパ面43aが、前後方向に延びるように形成されている。相手側ハウジング40には、図1に示すように、レバー20の第2位置から第1位置への回動時にレバー20の一対の先端部23と係合することになる一対の係合突部44が設けられている。
【0027】
次いで、相手側端子50について説明する。金属製の相手側端子50は、相手側ハウジング40の嵌合部41に固定されている。相手側端子50は、幅方向に対向し且つ前後方向に延びる一対の平板状の導電部51を備える。一対の導電部51は、嵌合空間42の一対の幅方向端面を画成している。一対の導電部51の間に、端子30の一対の接点部35が挿入されることになる。一方の導電部51は、車載の高圧バッテリと電気的に接続され、他方の導電部51は、車載回路と電気的に接続されることになる。相手側端子50の表面全体は、端子30と同じ金属材料によってメッキ処理されている。
【0028】
図3(a)に示すように、端子30が弾性変形していない状態にて、被当接部43の幅Aが、端子30の一対の当接部36の間隔Bより大きく(A>B)、且つ、一対の導電部51の幅方向内側端面同士の間隔Dが、一対の接点部35の間隔C以上となっている(D≧C)。以上、相手側ハウジング40を構成する各部品について説明した。
【0029】
次いで、コネクタ2と相手側コネクタ3との嵌合動作について説明する。コネクタ2と相手側コネクタ3とを嵌合させるためには、まず、レバー20を第2位置(立てた姿勢)に維持した状態で、ハウジング10の嵌合部11が相手側ハウジング40の嵌合部41の上方に位置するように、ハウジング10及び相手側ハウジング40を配置する。
【0030】
次いで、ハウジング10及び相手側ハウジング40を上下方向に互いに近づけて、嵌合部11及び嵌合部41を半嵌合させる。この過程において、端子30の一対の当接部36は、まず、被当接部43の一対のテーパ面43aに当接し、その後、テーパ面43aから受ける力のうち幅方向外向きの分力によって幅方向外側への弾性変形量を増大させながら、テーパ面43a上を擦動する。即ち、一対の当接部36が一対のテーパ面43a上を擦動する間は、間隔B(図3(a)参照)が次第に増大し、それに伴い間隔C(図3(a)参照)も増大していく。なお、一対の当接部36が一対のテーパ面43aに当接する前の段階では、端子30が弾性変形していない。よって、一対の接点部35が一対の導電部51の間に進入したとしても、上記した「D≧C」の関係から、一対の接点部35が一対の導電部51に押圧接触することはない。
【0031】
ここで、金属製の当接部36と樹脂製の被当接部43(テーパ面43a)との擦動時に生じる摩擦力は、金属同士の間に生じる摩擦力に比べて小さい。このため、テーパ面43aの上下方向からの傾斜角度を大きくしても、ハウジング10及び相手側ハウジング40の嵌合を進行させるために必要な上下方向の力(いわゆる挿入力)を小さい値に維持し易い。このため、テーパ面43aの上下方向からの傾斜角度を大きくしてテーパ面43aの上下方向長さを短くできるので、一対の当接部36がテーパ面43a上を擦動する間におけるハウジング10の相手側ハウジング40の対する上下方向の移動量(ストローク)を小さくできる。
【0032】
一対の当接部36が一対のテーパ面43aの下端縁を通過すると、以降、一対の当接部36の幅方向外側への弾性変形量の増大(即ち、間隔B,Cの増大)が停止すると共に、一対の当接部36は、押圧接触する被当接部43の一対の側面上を擦動していく。この段階では、間隔Bが、被当接部43の幅Aまで押し広げられていることによって、一対の接点部35の間隔Cも、一対の導電部51の間隔D(図3(a)参照)より大きくなろうとする。しかしながら、この段階では、一対の接点部35が一対の導電部51の間に既に進入しているので、間隔Cは間隔Dより大きくなり得ない。この結果、一対の接点部35は、一対の連結部37の弾性変形を伴って一対の導電部51に押圧接触する。
【0033】
このように、嵌合部11及び嵌合部41が半嵌合した状態では、一対の当接部36の間隔Bを被当接部43によって押し広げることによって一対の接点部35の間隔Cが大きくなり(図3(b)の幅方向外向きの白矢印を参照)、且つ、一対の接点部35が一対の導電部51に押圧接触している。
【0034】
次いで、レバー20の連結部22を前方且つ下方に押すことで、レバー20を第2位置(立てた姿勢)から第1位置(寝た姿勢)まで回動させる。この過程において、レバー20の一対の先端部23が相手側ハウジング40の一対の係合突部44を上向きに押圧し続けることで(図1参照)、支点部24を支点とし、連結部22を力点とし、先端部23を作用点とした「てこの原理」により、レバー20(即ち、レバー20を支持するハウジング10)が、相手側ハウジング40に対して相対的に下方に移動していく(即ち、嵌合が進行していく)。このように、レバー20は、ハウジング10と相手側ハウジング40との嵌合動作を補助する機能を果たす。
【0035】
このように、レバー20の回動により嵌合が進行していく過程では、上記のように一対の当接部36が、押圧接触する被当接部43の一対の側面上を擦動すると共に、一対の接点部35が、押圧接触する一対の導電部51の内壁面上を擦動する。ここで、金属製の接点部35と金属製の導電部51との擦動摩擦力は、金属製の当接部36と樹脂製の被当接部43との擦動摩擦力より大きい。これは、同一のメッキ材料でメッキ処理が施されている端子30及び相手側端子50の両者の界面で摩擦接合が局所的に発生する等に起因して、摩擦係数が大きくなり易いことに因る。
【0036】
即ち、この段階では、上記挿入力が大きくなり易い。しかしながら、上記した「てこの原理」により、レバー20の連結部22を小さい力で押圧するだけでレバー20を容易に回動させる(即ち、嵌合を進行させる)ことができる。更に、一対の接点部35の間隔Cが増大していく過程では、一対の接点部35が一対の導電部51に押圧接触しないことに起因して、一対の接点部35が一対の導電部51の内壁面上を擦動した状態でハウジング10が相手側ハウジング40に対して上下方向に移動する量(ストローク)を小さくできる。
【0037】
レバー20の回動が進行して、レバー20が第1位置に到達すると、嵌合部11及び嵌合部41の嵌合(即ち、コネクタ2及び相手側コネクタ3の嵌合)が完了して、図1に示すコネクタユニット1が得られる。コネクタ2及び相手側コネクタ3の嵌合が完了した状態では、図2に示すように、端子30の一対の接点部35の各々が、相手側端子50の対応する導電部51にそれぞれ押圧接触して電気的に接続されている。この結果、一方の導電部51に接続される車載の高圧バッテリと、他方の導電部51に接続される車載回路とが、端子30を介して電気的に接続される。
【0038】
このように、コネクタ2及び相手側コネクタ3の嵌合が完了した状態において、車両のメンテナンスが行われる場合、コネクタ2が相手側コネクタ3から取り外される。これにより、端子30と相手側端子50との接続が遮断されて、一対の導電部51同士の電気的接続が遮断されることで、高電圧バッテリと車載回路とが遮断される。この結果、メンテナンスの作業者の安全が確保される。
【0039】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る端子30及びコネクタユニット1によれば、相手側端子50を有する相手側コネクタ3と、相手側端子50に押圧接触した状態にて電気的に接続されることになる端子30を有するコネクタ2と、を嵌合する際、端子30の一対の当接部36が被当接部43によって押し広げられることで一対の導電部51に近付くように変位するとともに、一対の接点部35も一対の導電部51に近付くように変位する。そして、そのように変位した一対の接点部35が、一対の導電部51にそれぞれの連結部37の弾性変形を伴って押圧接触する。換言すると、当接部36を変位させない限り、接点部35が導電部51から離れた位置にあるため、接点部35と導電部51との間に摩擦力が生じない。即ち、当接部36と被当接部43とが当接するタイミングを調整することで、端子30の接点部35と相手側端子50の導電部51との押圧接触が始まるタイミングを調整できる。更に、被当接部43を樹脂で構成していることで、当接部36と被当接部43との間に生じる摩擦力を小さくすることができる。その結果、接点部35が導電部51に対して押圧接触した状態で(即ち、比較的大きい挿入力を要する状態で)端子30を相手側端子50に対して移動させる上下方向の距離を短縮できる。この結果、本実施形態に係るコネクタユニット1は、上述した従来の端子を有するコネクタユニットと比べ、作業性に優れる。
【0040】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0041】
例えば、上記実施形態では、図3(a)に示すように、端子30の一対の当接部36の幅方向内側に相手側ハウジング40の被当接部43が配置され、端子30の一対の接点部35の幅方向外側に相手側端子50の一対の導電部51が配置され、且つ、端子30が弾性変形していない状態にて、被当接部43の幅Aが、一対の当接部36の間隔Bより大きく(A>B)、且つ、一対の導電部51の幅方向内側端面同士の間隔Dが、一対の接点部35の間隔C以上となっている(D≧C)。これにより、図3(b)に示すように、一対の当接部36の間隔Bを被当接部43によって押し広げることによって一対の接点部35の間隔Cが大きくなり、この結果、一対の接点部35が一対の導電部51の幅方向内側端面に押圧接触する。
【0042】
これに対し、図4(a)に示すように、上記実施形態の端子30における一対の当接部36及び一対の接点部35をそれぞれ、一対の接点部35及び一対の当接部36として使用し、上記実施形態における一対の導電部51の位置に、一対の平板状の被当接部43を配置し、上記実施形態における被当接部43の位置に、平板状の樹脂部分45を挟むように樹脂部分45の幅方向両側に位置する一対の平板状の導電部51を配置してもよい。換言すれば、端子30の一対の当接部36の幅方向外側に相手側ハウジング40の一対の被当接部43を配置し、端子30の一対の接点部35の幅方向内側に相手側端子50の一対の導電部51を配置してもよい。
【0043】
この場合、端子30が弾性変形していない状態にて、一対の当接部36の幅方向外側端面同士の間隔Cが、一対の被当接部43の幅方向内壁面同士の間隔Dより大きく(C>D)、且つ、一対の接点部35の幅方向内側端面同士の間隔Bが、一対の導電部51の幅方向外側端面同士の間隔A以上とされる(B≧A)。なお、図4において、図3に示す各構成に対応する構成には、図3にて付した符号と同じ符号を付している。
【0044】
この場合、図4(b)に示すように、一対の当接部36の間隔Cを一対の被当接部43によって押し狭めることによって一対の接点部35の間隔Bが小さくなり、この結果、一対の接点部35が一対の導電部51の幅方向外側端面に押圧接触する。図4に示す構成によっても、図3に示す上記実施形態と同様の作用・効果が奏され得る。
【0045】
更に、上記実施形態では、端子30が一対の接点部35、一対の当接部36及び一対の連結部37を有し、且つ、相手側端子50が一対の導電部51を有している。これに対し、端子30が、幅方向一方側に位置する単一の接点部35、単一の当接部36及び単一の連結部37を有し、相手側端子50が、幅方向一方側に位置する単一の導電部51を有していてもよい。この場合においても、端子30と相手側端子50とを組み付ける際、当接部36が被当接部43と当接して導電部51に近付くように変位するとともに接点部35が導電部51に近付くように変位し、接点部35が導電部51に連結部37の弾性変形を伴って押圧接触するように構成することができる。
【0046】
ここで、上述した本発明に係る端子30及びコネクタユニット1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
相手側端子(50)に押圧接触した状態にて電気的に接続されることになる端子(30)であって、
前記相手側端子(50)が有する導電部(51)と電気的に接続されることになる接点部(35)と、
前記導電部(51)とは異なる被当接部(43)と当接することになる当接部(36)と、
前記接点部(35)と前記当接部(36)とを連結する弾性変形可能な連結部(37)と、を備え、
前記端子(30)と前記相手側端子(50)とを組み付ける際、前記当接部(36)が前記被当接部(43)と当接して前記導電部(51)に近付くように変位するとともに前記接点部(35)が前記導電部(51)に近付くように変位し、前記接点部(35)が前記導電部(51)に前記連結部(37)の弾性変形を伴って押圧接触する、ように構成される、
端子(30)。
[2]
上記[1]に記載の端子(30)において、
前記接点部(35)は、前記導電部(51)に向かって突出するように湾曲した形状を有し、
前記当接部(36)は、前記被当接部(43)に向かって突出するように湾曲した形状を有する、
端子(30)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の端子(30)において、
当該端子(30)は、
一対の前記接点部(35)が互いに向かい合うように配置され、且つ、一対の前記当接部(36)が互いに向かい合うように配置された、クリップ状の形状を有し、
前記一対の前記当接部(36)の間の間隔を前記被当接部(43)によって押し広げることによって前記一対の前記接点部(35)の間の距離が大きくなり、且つ、前記一対の前記接点部(35)の各々が対応する前記導電部(51)に押圧接触するように構成される、
又は、
前記一対の前記当接部(36)の間の間隔を前記被当接部(43)によって押し狭めることによって前記一対の前記接点部(35)の間の距離が小さくなり、且つ、前記一対の前記接点部(35)の各々が対応する前記導電部(51)に押圧接触するように構成される、
端子(30)。
[4]
相手側端子(50)を有する相手側コネクタ(3)と、前記相手側端子(50)に押圧接触した状態にて電気的に接続されることになる端子(30)を有するコネクタ(2)と、を備えるコネクタユニット(1)であって、
前記相手側コネクタ(3)は、
前記相手側端子(50)に設けられる導電部(51)と、
前記導電部(51)とは異なる被当接部(43)と、を有し、
前記端子(30)は、
前記導電部(51)と電気的に接続されることになる接点部(35)と、
前記被当接部(43)と当接することになる当接部(36)と、
前記接点部(35)と前記当接部(36)とを連結する弾性変形可能な連結部(37)と、を有し、
前記コネクタ(2)と前記相手側コネクタ(3)とを嵌合する際、
前記当接部(36)が前記被当接部(43)と当接して前記導電部(51)に近付くように変位するとともに前記接点部(35)が前記導電部(51)に近付くように変位し、前記接点部(35)が前記導電部(51)に前記連結部(37)の弾性変形を伴って押圧接触する、
コネクタユニット(1)。
【符号の説明】
【0047】
1 コネクタユニット
2 コネクタ
3 相手側コネクタ
30 端子
33 第1湾曲部
34 第2湾曲部
35 接点部
36 当接部
37 連結部
43 被当接部
50 相手側端子
51 導電部
図1
図2
図3
図4