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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】シート給送装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/14 20060101AFI20250408BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20250408BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20250408BHJP
   B65H 3/66 20060101ALI20250408BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B65H1/14 322A
B65H3/06 A
B65H3/52 330H
B65H3/66
B65H7/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020144183
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039250
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-08-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相川 憲稔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 政利
(72)【発明者】
【氏名】坂本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】竹下 尚人
(72)【発明者】
【氏名】畑川 和義
(72)【発明者】
【氏名】桧垣 明治
(72)【発明者】
【氏名】堀内 圭
(72)【発明者】
【氏名】西沢 聖児
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 裕
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚己
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-269923(JP,A)
【文献】特開2018-070375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68,7/00-7/20,
43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを積載する積載トレイと、
前記積載トレイに積載されたシートの最上位のシートの上面に接触し、シートを送り出す送出手段と、
前記送出手段によって送り出されたシートを1枚に分離する分離手段と、
前記送出手段によって送り出されたシートを前記分離手段に案内する傾斜部を有するガイド部材と、
前記送出手段によってシートを送出する送出位置へ前記積載トレイを昇降移動させる移動手段であって、前記積載トレイに積載されたシートがコート層を有する所定の坪量以下の所定シートである場合に、前記積載トレイに積載されたシートが前記所定シート以外のシートの場合の前記送出位置よりも低い送出位置へ前記積載トレイを移動させる移動手段と、
前記移動手段により昇降移動する前記積載トレイ上のシートの最上面を検知するセンサと、を備え、
前記移動手段は、前記積載トレイから送り出されるシートが前記所定シート以外のシートである場合に、前記センサが前記積載トレイ上のシートの最上面を検知したことに応じて前記最上位のシートが第1の送出位置に位置するように前記積載トレイを移動させ、前記積載トレイから送り出されるシートが前記所定のシートである場合に、前記センサが前記積載トレイ上のシートの最上面を検知したことに応じて前記最上位のシートが前記第1の送出位置よりも低い第2の送出位置に位置するように前記積載トレイを移動させる、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記分離手段は、前記送出手段によって送り出されるシートを給送する給送ローラと、前記給送ローラに圧接される分離ローラとを有し、
前記傾斜部は、前記送出手段によって送り出されるシートを前記給送ローラに向けて案内する、ことを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記所定シートが送出される際の送出位置は、前記送出ローラによるシート搬送方向において前記傾斜部の下流側端部よりも下方に位置するように、前記移動手段によって前記積載トレイが移動される、ことを特徴とする請求項1または2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載のシート給装装置と、
前記シート給装装置から給送されるシートに画像を形成する画像形成装置と、を備える画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置にシートを給送するシート給送装置に関する。更に本発明は、かかるシート給送装置を備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンター等の画像形成装置には、画像形成部にシートを給送するシート給送装置が内蔵され又は外付けで装備されている。一般にシート給送装置は、例えば数千枚に及ぶ大容量のシートを収納可能な収納庫と、収納庫内でシートを積載する積載トレイと、積載トレイ上のシートを最上位から1枚ずつ分離して給送する分離給紙機構とを備えている。
【0003】
分離給紙機構は、積載トレイに積載されたシートの最上面に接触してシートを送り出す繰出ローラー、及び給紙ローラーと分離ローラーとからなる分離機構を備えている。分離機構は、給紙ローラーと分離ローラーとのニップ部に2枚以上のシートが重なってニップされると、分離ローラーが逆転又は停止して、最上位のシートだけを給送し、それ以外のシートの給紙を阻止するように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
かかる分離機構では、停止又は逆転している分離ローラーに次のシートの先端が当たって止められると、シート先端がめくれる等して給紙不良を生じる虞がある。このようなシート先端のめくれや給紙不良を防止するために、特許文献1記載のシート給送装置は、積載トレイの給紙方向先端からニップ部に向けて、ニップ部近傍まで延ばしたシートガイドを備え、シートの先端を確実にニップ部に案内できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-322095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の分離機構は、坪量の小さい薄紙、特に近年需要が増えている薄紙コート紙等のシートを給紙する場合、給紙不良の防止に十分対応できない虞がある。コート紙の中には、表面の光沢を出すために滑り性のある成分を用いたものがあり、この成分によって紙同士の吸着力が増すことで、重送を起こす可能性が高くなる。
【0007】
また、この成分が分離ローラーの表面に付着してその摩擦係数が低下すると、ニップ部に挟まれたシートが1枚だけの場合や無い場合でも、分離ローラーが逆転する可能性がある。その場合、薄紙は、普通紙よりも剛度が低いので、その先端がシートガイドの先端から垂れ下がり、逆転する分離ローラーに接触して巻き込まれ、めくれを生じる虞がある。
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、シートの種類及び坪量に拘わらず、確実にシートを給紙し、シートの給紙不良を低減し得るシート給送装置を提供することを目的とする。
【0009】
更に本発明は、かかるシート給送装置を備えた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のシート給送装置は、
シートを積載する積載トレイと、
前記積載トレイに積載されたシートの最上位のシートの上面に接触し、シートを送り出す送出手段と、
前記送出手段によって送り出されたシートを1枚に分離する分離手段と、
前記送出手段によって送り出されたシートを前記分離手段に案内する傾斜部を有するガイド部材と、
前記送出手段によってシートを送出する送出位置へ前記積載トレイを昇降移動させる移動手段であって、前記積載トレイに積載されたシートがコート層を有する所定の坪量以下の所定シートである場合に、前記積載トレイに積載されたシートが前記所定シート以外のシートの場合の前記送出位置よりも低い送出位置へ前記積載トレイを移動させる移動手段と、
前記移動手段により昇降移動する前記積載トレイ上のシートの最上面を検知するセンサと、を備え、
前記移動手段は、前記積載トレイから送り出されるシートが前記所定シート以外のシートである場合に、前記センサが前記積載トレイ上のシートの最上面を検知したことに応じて前記最上位のシートが第1の送出位置に位置するように前記積載トレイを移動させ、前記積載トレイから送り出されるシートが前記所定のシートである場合に、前記センサが前記積載トレイ上のシートの最上面を検知したことに応じて前記最上位のシートが前記第1の送出位置よりも低い第2の送出位置に位置するように前記積載トレイを移動させる、ことを特徴とする。

【0011】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明のシート給装装置と、前記シート給装装置から給送されるシートに画像を形成する画像形成装置と、を備える画像形成システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシート給送装置によれば、シートの種類及び坪量に拘わらず、確実にシートを給紙し、シートの給紙不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好適な実施形態にかかるシート給紙装置を備えた画像形成システムの全体構成図である。
図2】シート給紙装置の内部構成を正面側(図1の手前側)から示す概略図である。
図3】(a)、(b)図は、積載トレイの上昇に伴う分離給紙機構の動作を説明する部分拡大図である。
図4】通常モードにおけるシートの送出位置を示す説明図である。
図5】薄コート紙モードにおけるシートの送出位置を示す説明図である。
図6】積載トレイの動作を示すフロー図である。
図7】薄コート紙モードにおけるシートの繰出動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の画像形成システム100の全体構成を示している。画像形成システム100は、画像形成装置1と、シート給紙装置2とを備える。シート給送装置2は、画像形成装置1の一方(図1中、右側)の側面1aに連結されている。画像形成装置1には、原稿読取装置3と原稿給送装置4とシート集積装置5とが一体に装着されている。
【0016】
(画像形成装置)
画像形成装置1は、所定枚数(例えば、100枚程度)のシートを収納可能な給紙カセット6(図示する実施形態では、2つの給紙カセット6a,6b)を内部に備えている。シート給紙装置2は、給紙カセット6a,6bよりも多数枚のシートの積載に対応可能に比較的大容量に構成されている。
【0017】
画像形成装置1は、原稿読取装置3によって原稿シートから読み取られた画像データに基づいて、給紙カセット6a,6b又はシート給紙装置2から供給されたシート上に画像形成を行い、画像形成されたシートをシート集積装置5に集積、収納する。原稿読取装置3には、原稿給送装置4によって原稿シートを自動で給送することもできる。ここで、画像形成システム100において扱われるシートには、A6,B5、A4等の小サイズやB4、A3等の大サイズの普通紙の他、規格サイズ以外の長尺シート、普通紙、厚紙、薄紙等の坪量(厚さ)の異なるシート、OHPシート、トレーシングペーパー、コート紙などの特殊シートを含むものとする。
【0018】
画像形成装置2は、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ等であり、シートに画像を形成し得るものであれば、公知の様々な画像形成機構を採用することができ、例えば床面に設置される。図示される実施形態の画像形成装置2は、画像形成機構として静電式画像形成機構を採用しているが、これに限定されるものではなく、インクジェット式画像形成機構、オフセット式画像形成機構等を採用することも可能である。
【0019】
図1に示す画像形成装置2は、投光器(レーザーヘッド等)7と、感光ドラム8と、現像器9と、転写チャージャー10と、定着ローラー11とを備えている。各給紙カセット6a,6bに収納されているシートは、その最上面に接触している送出ローラー12によって送り出され、分離ローラー対13によって1枚ずつに分離され、搬送ローラー対14によって搬送路15を転写チャージャー10へと送られる。シート給紙装置2から搬入されたシートは、同様に搬送ローラー対14によって搬送路15を転写チャージャー10へと送られる。
【0020】
給紙カセット6a,6b又はシート給紙装置2から供給されたシートには、感光ドラム8の表面に投光器7で形成した静電潜像(静止画像)に現像器9で付着させたトナーが、転写チャージャー10によって転写される。トナーが転写されたシートは、下流側に配置される定着ローラー11に送られて、シート上のトナーを加熱定着させた後、排紙ローラー対16によってシート集積装置5へ排出される。
【0021】
原稿読取装置3の上部には、透明なガラスで形成された第1のプラテン17と第2のプラテン18とが水平方向に並設されている。第1のプラテン17は、手置きでセットされる原稿の読み取りに用いられ、対応可能な最大サイズの原稿を載置できるようなサイズに形成されている。第2のプラテン18は、原稿給送装置4から給送されて所定速度で移動する原稿の読み取りに用いられる。
【0022】
原稿読取装置3の内部には、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20と、集光レンズ21及び光電変換素子22を有する光電変換手段が設けられている。第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20は、図示されないキャリッジモーターによって駆動されて、第1のプラテン17の下方を副走査方向に往復移動する。第1のプラテン17上に載置された原稿の読み取りを行うとき、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20を移動させながら、第1の読取キャリッジ19のランプから光を第1のプラテン17上の原稿の画像へ照射し、原稿からの反射光を、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20のミラーから集光レンズ21を介して光電変換素子22に案内し、電気信号に変換することによって画像データを生成させる。
【0023】
原稿給送装置4は、給紙トレイ23と、シート搬送機構24と、排紙トレイ25とを備える。給紙トレイ23上に載置された原稿は、シート搬送機構24によって1枚ずつ搬送され、第2のプラテン18上を通過し、排紙トレイ25に排出される。原稿給送装置4から給送されて第2のプラテン18上を通過する原稿を読み取るとき、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20は、第2のプラテン18の下方で予め停止させておき、第2のプラテン18上を通過する原稿から画像データを生成させる。
【0024】
(シート給送装置)
次に、図1及び図2を参照して、シート給送装置2の構造を詳細に説明する。
シート給送装置2は、装置全体を収容する筐体31内に、画像形成装置1に供給するシートを収納する収納庫32と、収納庫32内のシートを1枚ずつに分離して画像形成装置1に向けて供給する分離給紙機構33と、昇降機構34とを備える。
【0025】
収納庫32は、上部に開口部を設けた概略箱型形状を有し、その内側には、積載トレイ38が、昇降機構34により上下方向に昇降可能に設けられている。積載トレイ38は、板状のプレート部材からなり、その実質的に平坦な上面に所定サイズのシートの全体を積載できるようになっている。収納庫32は、シート給送装置2から画像形成装置1へシートを供給する給紙方向と直交する正面方向(図1中、手前側)に筐体31から引き出し可能であり、そのように引き出した状態で、前記上部の開口部を通して積載トレイ38上にシートを装填、積載することができる。
【0026】
収納庫32内部の積載トレイ38を収容する空間(以下、「積載トレイ収容空間」と称する)には、積載トレイ38上のシートを幅方向(給紙方向に直交する方向)に両側から挟んで位置する左右の側端規制部材(図示しない)と、積載トレイ38上のシートの後端(給紙方向に画像形成装置1から遠い側の端部)側に位置する後端規制部材43とが設けられている。積載トレイ38上のシートSは、幅方向の両側端の位置が前記側端規制部材によって規制され、給紙方向の後端の位置が後端規制部材43によって規制されるようになっている。
【0027】
前記側端規制部材は、例えばラックとピニオンとによって互いに連動してシートの幅方向にスライド可能に収納庫32の底部に立設されている。後端規制部材43は、給紙方向にスライド可能に収納庫32の底部に立設されている。前記側端規制部材及び後端規制部材43のいずれも、積載トレイ38と干渉しないように、該積載トレイに設けられた窓部(図示せず)を貫通して延びている。このような構成により、積載トレイ38上で積載されるシートのサイズに応じて、前記側端規制部材及び/又は後端規制部材43を収納庫32の底部上で移動させて、その側端位置及び/又は後端位置を規制することができる。
【0028】
積載トレイ38は、昇降機構34によって収納庫32内で上下方向に昇降可能に支持されている。積載トレイ38は、それぞれ幅方向の両側辺の角部近傍の位置から幅方向外向きに突設された4つの支持部45(図2には、簡単のために2つだけを例示)を有する。昇降機構34は、積載トレイ38の各支持部45にそれぞれ一端を固定された吊下げ部材としての4本のワイヤー46と、対応する各ワイヤー46を巻き取る4つの巻取プーリー47と、各巻取プーリー47と対応する支持部45との間に延びるワイヤー46をそれぞれ巻き掛ける複数の中間プーリー48と、巻取プーリー47を回転駆動させる昇降モーターM1とによって構成されている。
【0029】
例えば昇降モーターM1を正転駆動すると、4つの巻取プーリー47が同時に回転してそれぞれワイヤー46を巻き取ることによって、積載トレイ38は、4つの支持部45が同時に引き上げられ、略水平状態を維持したまま上昇する。昇降モーターM1を逆転駆動すれば、4つの巻取プーリー47が上昇時とは反対方向に回転駆動されて、各ワイヤー46が繰り出されることによって、積載トレイ38は、自重によって略水平状態を維持したまま下降する。昇降機構34は、このように積載トレイ38を略水平状態を保ったまま昇降できるものであればよく、本実施形態のものに限定されない。
【0030】
分離給紙機構33は、積載トレイ38上に積載されたシートの最上面に接触してシートを送り出す繰出ローラー51と、送り出されたシートを一枚ずつに分離して画像形成装置1へ搬送する分離搬送手段とを含んでいる。前記分離搬送手段は、給紙ローラー52と、該給紙ローラーに圧接して2枚目以降のシートの供給を阻止する分離ローラー53とによって構成される。前記分離搬送手段の下流側には、シートを画像形成装置1の搬送路15内に送り出すための搬送ローラー対54が設けられている。
【0031】
繰出ローラー51は、給紙モーターM2によって回転駆動され、積載トレイ38から最上位のシートを送り出す。給紙ローラー52は、同様に給紙モーターM2によって、図示されていない複数のギアやタイミングベルトを介して駆動されて回転し、繰出ローラー51によって積載トレイ38上から送り出されたシートを給紙方向に送り出す。搬送ローラー対54は、搬送モーターM3によって回転駆動され、給紙ローラー52から送り出されたシートを画像形成装置1へ供給する。
【0032】
繰出ローラー51は、図3(a)に示すように、その回転軸が、給紙ローラー52の回転軸の周りに回転自在に取り付けられたアーム部材55の先端に回転可能に支持されている。繰出ローラー51は、自重によって下方に垂下されている。繰出ローラー51は、積載トレイ38の上昇によって積載トレイ上の最上位のシートと接触し、該最上位のシートが更に上昇することによって上方に押し上げられる。これによって、アーム部材55は給紙ローラー52の回転軸を支点として回動するようになっている。
【0033】
アーム部材55には、後述するセンサーフラグ56が、該アーム部材55と一体に回動するように設けられている。本実施形態のセンサーフラグ56は、図3(a)に示すように、アーム部材55の回転軸からアーム部材に関して概ね反対方向に延設されている。
【0034】
繰出ローラー51は、給紙モーターM2による給紙ローラー52の回転軸の回転が、複数のギアを介して伝達されることによって、回転駆動されるように構成することができる。この場合、例えばソレノイドによって前記ブラケットを給紙ローラー52の回転軸周りに揺動させ、繰出ローラー51を前記作動位置と待機位置との間で移動させることができる。
【0035】
分離ローラー53は、図2に示すように、その回転軸にトルクリミッター57が取り付けられている。これにより、給紙ローラー52と分離ローラー53とが圧接されるニップ部でシートが2枚以上重なってニップされたとき、分離ローラー53が停止して上から2枚目以降のシートの供給を阻止するようになっている。例えば複数のシートが重なって給紙ローラー52と分離ローラー53とのニップ部に進入すると、給紙ローラー52の駆動力が最上位のシートに伝達される一方、分離ローラー53の回転が停止されるので、最上位のシートとそれより下のシートとの間で滑りが生じ、最上位のシートだけがそれより下のシートから分離して送り出される。当然ながら、分離ローラー53に代えて分離パッドなど他の部材を用いてもよい。
【0036】
図3に示すように、前記分離搬送手段の給紙方向直ぐ下流側には、シートガイド58が設けられている。シートガイド58は、積載トレイ38上から送り出されるシートを給紙ローラー52と分離ローラー53との前記ニップ部に案内するために、給紙方向に沿って積載トレイ38の先端側から上向きに傾斜したガイド面を有する。シートガイド58は、例えば収納庫32側に固定した平板部材によって形成することができる。
【0037】
シートガイド58の給紙方向先端は、前記ニップ部にできる限り近接させて配置することが好ましい。それにより、積載トレイ38上から送り出されたシートの先端がシートガイド58先端から垂れ下がり、分離ローラー53に接触することによって発生し得るシートの先端めくれを防止することができる。
【0038】
(センサー手段)
シート給送装置2は、積載トレイ38及びシートの昇降方向の位置を検出するために、下限検出手段61と上面検出手段64とを備える。図2に示すように、下限検出手段61は、積載トレイ38の昇降範囲における下限位置に配置されている。上面検出手段64は、積載トレイ38上の最上位のシートSが、分離給紙機構33によって画像形成装置1に向けて給送可能な高さ位置PUに到達したことを検出する。
【0039】
上面検出手段64は、繰出ローラー51と積載トレイ38上の最上位シートとの接触位置を検出するためのシート接触センサー65と、アーム部材55と一体に回動するセンサーフラグ56とを備える。シート接触センサー65は、図3(a)に示すように、アーム部材55と一体に回動するセンサーフラグ56の回転範囲内に設置されている。
【0040】
本実施形態では、アーム部材55が積載トレイ38上の最上位シートにより押し上げられて図中反時計方向上向きに回転し、センサーフラグ56が反時計方向下向きに或る回転角度位置まで回転して、シート接触センサー65がオンすることによって、繰出ローラー51と接する最上位シートの高さ位置を検出することができる。
【0041】
また、シート給送装置2は、給紙ローラー52のシート出口付近即ち給紙方向の直ぐ下流側に配置されたシート検出手段66を有する。シート検出手段66は、給紙ローラー52から搬送ローラー対54へ送り出されるシートを検出する。
【0042】
(制御部)
シート給送装置2は、その動作を制御するための制御部70を備える。制御部70は、中央演算処理装置(CPU)からなり、読み出し専用メモリであるROMと、書き換え可能なメモリであるRAMとが接続されている。前記ROMには、後述する制御手順を予め記憶されている。前記RAMは、入力データの記憶用及び作業用記憶領域等として使用される主記憶装置である。
【0043】
制御部70には、下限検出手段61と、上面検出手段64と、シート検出手段66とが接続され、これら各センサーからの検出信号がリアルタイムで受信されるようになっている。更に制御部70には、昇降モーターM1、給紙モーターM2、搬送モーターM3が接続されており、前記CPUは、これらの動作を前記各検出手段からの検出信号に基づいて制御する。また、制御部70には、ユーザーによって操作される画像形成装置1の操作パネル74が接続されている。
【0044】
(積載トレイの上昇動作)
以下に、図3図5、及び図6のフロー図を用いて、シート給送装置2における積載トレイ38の昇降動作について説明する。シート給送装置2は、起動されたとき、又は筐体31から引き出された収納庫32が筐体31内に収容されたことを検知センサー(図示せず)によって検出したとき、昇降モーターM1を駆動して積載トレイ38を上昇させる。
【0045】
更にシート給送装置2は、積載トレイ38上からシートが繰出ローラー51によって順次送り出され、最上位シートの位置が設定された位置まで低くなったときも、昇降モーターM1を駆動して積載トレイ38を上昇させる。尚、積載トレイ38上の最上位シートの位置が前記設定された位置まで低くなったことは、シート接触センサー65がセンサーフラグ56を検出しなくなり、オフになることで判断される。
【0046】
積載トレイ38の上昇動作では、昇降モーターMT1を正転駆動する(ステップST1)。これによって巻取プーリー47が回転してワイヤー46を巻き取り、積載トレイ38が上昇する。図3(a)に示すように、積載トレイ38上のシートの最上面が繰出ローラー51に当接した後、更に積載トレイ38を上昇させると、前記シートの最上面によって繰出ローラー51が押し上げられて、アーム部材55が図中反時計方向上向きに回転する。
【0047】
これによって、シート接触センサー65は、図3(b)に示すように、アーム部材55と一体に回転するセンサーフラグ56を検出してオンする(ステップST2)。このシート接触センサー65がオンすることによって、積載トレイ38上の最上位のシートS上面が基準位置PUに到達したことが検出される。シート接触センサー65がオンすると、制御部70は、シートの給紙モードが「通常モード」か「薄コート紙モード」であるかを判断する(ステップST3)。
【0048】
ここで、薄コート紙モードは、積載トレイ38上のシートが薄コート紙である場合を言い、通常モードは、積載トレイ38上のシートが薄コート紙以外のシートである場合を言う。尚、本実施形態において、積載トレイ38上のシートが薄コート紙であるか否かは、使用者が事前に操作部74から入力したシート種類に係る情報に基づいて、制御部70が判断する。
【0049】
通常モードの場合(ステップST4)、シート接触センサー65がオンした位置から積載トレイ38を第1の設定量だけ上昇させて昇降モーターMT1を停止する(ステップST6)。これによって、図4に示すようにシートの最上面が第1の送出位置P1に配置される。
【0050】
薄コート紙モードの場合(ステップST5)、シート接触センサー65がオンした位置から積載トレイ38を第2の設定量だけ上昇させて昇降モーターMT1を停止する(ステップST6)。前記第2の設定量は、前記第1の設定量よりも小さい値に設定される。これによって、図5に示すように、積載トレイ38上のシートの最上面が第1の送出位置P1よりも低い第2の送出位置P2に配置される。
【0051】
本実施形態では、第1の送出位置P1をシートガイド58の給紙方向先端位置と略同じ高さとなるように設定し、第2の送出位置P2をそれよりも幾分低い位置に設定する。本実施形態では、第2の送出位置P2をシートガイド58の給紙方向先端よりも0.5mm低い位置に設定している。第2の送出位置P2と第1の送出位置P1との高さの差は、例えば薄コート紙と普通紙との厚さの差を考慮して決定することができる。
【0052】
本実施の形態では、積載トレイ38を上昇させる第1、第2の設定量を、昇降モーターMT1の駆動パルス数で設定している。この場合、昇降モーターMT1は、その駆動開始時点からの駆動パスル数をカウントし、それが予め設定されたパルス数に到達すると、駆動停止させるように制御する。
【0053】
上記実施形態では、積載トレイ38上のシートが薄コート紙であるか否かによって、給紙モードを通常モードと薄コート紙モードとに設定した。別の実施形態では、単にシートの坪量に応じて、複数の給紙モードを設定することができる。
【0054】
薄コート紙モードにおいて、積載トレイ38が前記第2の設定量上昇して停止し(ステップST5,ST6)、積載トレイ38のシート最上面が第2の送出位置P2に配置されると、繰出ローラー51が図4に示すように積載トレイ38のシート最上面に接触した状態で、給紙モーターM2が駆動される。それにより、繰出ローラー51は回転して、図7に示すように、積載トレイ38の最上位の薄コート紙Ssを給紙方向に繰り出す。繰り出されたシートSsは、給紙ローラー52と分離ローラー53とによって1枚ずつ分離して搬送され、搬送ローラー対54によって画像形成装置1へと送り出される。
【0055】
同図に示すように、前記最上位のシートSsは、その先端がシートガイド58の上向き傾斜面に沿って低い第2の送出位置P2から斜めに押し上げられつつ、繰り出される。それによって、シートSsの先端側部分は、シートガイド58の上向き傾斜面に支持されて、その腰の弱さ即ち低い剛性が補われるので、シートガイド58先端から分離ローラー53に向けて垂れ下がることが抑制される。従って、繰出ローラー51によって積載トレイ38から繰り出されるシートSsの先端が、逆転する分離ローラー53に接触してめくれを生じ、給紙不良を起こす虞を解消又は大幅に低減することができる。
【0056】
以上、添付図面の実施形態を参照して、本発明によるシート給送装置及びこれを備える画像形成システムについて説明したが、本発明は、図示される実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 画像形成装置
2 シート給送装置
32 収納庫
33 分離給紙機構
34 昇降機構
38 積載トレイ
51 繰出ローラー
52 給紙ローラー
53 分離ローラー
55 アーム部材
56 センサーフラグ
58 シートガイド
64 上面検出手段
65 シート接触センサー
70 制御部
100 画像形成システム
M1 昇降モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7