(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】基地局装置、中継局装置、通信制御方法、及び通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/10 20090101AFI20250408BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20250408BHJP
H04W 4/33 20180101ALI20250408BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20250408BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20250408BHJP
H04W 72/54 20230101ALI20250408BHJP
【FI】
H04W16/10
H04B7/15
H04W4/33
H04W4/44
H04W16/26
H04W72/54
(21)【出願番号】P 2020186693
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2022-12-26
【審判番号】
【審判請求日】2024-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】230120499
【氏名又は名称】藤江 和典
(74)【代理人】
【識別番号】100201385
【氏名又は名称】中安 桂子
(72)【発明者】
【氏名】中田 恒夫
【合議体】
【審判長】中木 努
【審判官】本郷 彰
【審判官】廣川 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/145013(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/099508(WO,A3)
【文献】Takki Yu et al.,Proposal for Full Duplex Relay,IEEE C802.16j-08/106r1,2008年05月15日,第1-4頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
3GPP TSG SA WG1-4
3GPP TSG CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽空間(20)内に設けられた下流側アンテナ(22)を用いて前記遮蔽空間内の通信端末装置(23)との下流側通信と、前記遮蔽空間外に設けられた上流側アンテナ(21)を用いて基地局装置との上流側通信と、を同時に行うことができる中継局装置(2)を介して、前記通信端末装置と通信する基地局装置(1)であって、
前記中継局装置と前記基地局装置との通信又は他の中継局装置と前記基地局装置との通信に用いる通信リソースを割り当てるリソース割当部(122)と、
前記リソース割当部によって割り当てられた前記通信リソースである割当済リソースが前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信で再利用が可能
となる要件であって、基準となる遮蔽空間を構成する基準電波
遮蔽構造の基準電波遮蔽能に基づき前記再利用の可否が分類された再利用要件を記憶する再利用要件記憶部(132)と、
前記中継局装置から前記遮蔽空間を構成する電波遮蔽構造の電波
遮蔽能を取得する中継局情報取得部(121)と、
前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信に用いる通信リソースであって、前記割当済リソースの中から、前記電波
遮蔽能が前記再利用要件を満たす再利用リソースを特定する再利用リソース特定部(123)と、
前記再利用リソースを前記中継局装置へ送信することを指示する送信指示部(124)と、を有する、
基地局装置(1)。
【請求項2】
前記割当済リソースは、さらに前記他の中継局装置と他の通信端末装置との通信
に割当済の通信リソース、又は前記基地局装置と前記他の通信端末装置との通信
に割当済の通信リソースである、
請求項1記載の基地局装置。
【請求項3】
再利用要件記憶部は、前記再利用要件として、前記下流側通信の電波強度が所定値に減衰する前記中継局装置からの減衰距離を記憶している、
請求項1に記載の基地局装置。
【請求項4】
再利用要件記憶部は、前記再利用要件として、前記下流側通信の電波強度が所定値に減衰する前記中継局装置からの減衰距離及び、前記減衰距離に対応する前記中継局装置と他の中継局装置との距離を記憶している、
請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
遮蔽空間(20)内に設けられた下流側アンテナ(22)を用いて前記遮蔽空間内の通信端末装置(23)との下流側通信と、前記遮蔽空間外に設けられた上流側アンテナ(21)を用いて基地局装置(1)との上流側通信と、を同時に行い、前記通信端末装置と前記基地局装置との通信を中継する中継局装置(2)であって、
前記遮蔽空間を構成する電波
遮蔽構造の電波遮蔽能を記憶する中継局情報記憶部(261)と、
前記基地局装置へ前記電波遮蔽能を送信する接続要求指示部(251)と、
前記中継局装置と前記基地局装置との通信又は他の中継局装置と前記基地局装置との通信に割り当てられた通信リソースである割当済リソースの中から特定された、前記電波
遮蔽能が再利用要件を満たす再利用リソースを、前記基地局装置から取得する再利用リソース取得部(254)と、
前記中継局装置と前記通信端末装置との通信に前記再利用リソースを割り当てる再利用リソース割当部(255)と、を有し、
前記再利用要件は、前記割当済リソースが前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信で再利用が可能
となる要件であって、基準となる遮蔽空間を構成する基準電波
遮蔽構造の基準電波遮蔽能に基づき前記再利用の可否が分類されている、
中継局装置(2)。
【請求項6】
遮蔽空間内に設けられた下流側アンテナを用いて前記遮蔽空間内の通信端末装置との下流側通信と、前記遮蔽空間外に設けられた上流側アンテナを用いて基地局装置との上流側通信と、を同時に行うことができる中継局装置を介して、前記通信端末装置との通信を行う前記基地局装置の通信制御方法であって、
前記中継局装置と前記基地局装置との通信又は他の中継局装置と前記基地局装置との通信に用いる通信リソースを割り当て(S104)、
割り当てられた前記通信リソースである割当済リソースが前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信で再利用が可能
となる要件であって、基準となる遮蔽空間を構成する基準電波
遮蔽構造の基準電波遮蔽能に基づき前記再利用の可否が分類された再利用要件を記憶し、
前記中継局装置から前記遮蔽空間を構成する電波遮蔽構造の電波
遮蔽能を取得し(S101)、
前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信に用いる通信リソースであって、前記割当済リソースの中から、前記電波
遮蔽能が前記再利用要件を満たす再利用リソースを特定し(S106)、
前記再利用リソースを前記基地局装置から前記中継局装置に送信する(S120)、
通信制御方法。
【請求項7】
基地局装置に搭載され、遮蔽空間内に設けられた下流側アンテナを用いて前記遮蔽空間内の通信端末装置との下流側通信と、前記遮蔽空間外に設けられた上流側アンテナを用いて基地局装置との上流側通信と、を同時に行うことができる中継局装置を介して、前記通信端末装置との通信を行う前記基地局装置で実行される通信制御プログラムであって、
前記中継局装置と前記基地局装置との通信又は他の中継局装置と前記基地局装置との通信に用いる通信リソースを割り当て(S104)、
割り当てられた前記通信リソースである割当済リソースが前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信で再利用が可能
となる要件であって、基準となる遮蔽空間を構成する基準電波
遮蔽構造の基準電波遮蔽能に基づき前記再利用の可否が分類された再利用要件を記憶し、
前記中継局装置から前記遮蔽空間を構成する電波遮蔽構造の電波
遮蔽能を取得し(S101)、
前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信に用いる通信リソースであって、前記割当済リソースの中から、前記電波
遮蔽能が前記再利用要件を満たす再利用リソースを特定し(S106)、
前記再利用リソースを前記基地局装置から前記中継局装置に送信する(S120)、
通信制御プログラム。
【請求項8】
遮蔽空間内に設けられた下流側アンテナを用いて前記遮蔽空間内の通信端末装置との下流側通信と、前記遮蔽空間外に設けられた上流側アンテナを用いて基地局装置との上流側通信と、を同時に行う中継局装置の通信制御方法であって、
前記基地局装置へ前記遮蔽空間を構成する電波
遮蔽構造の電波遮蔽能を送信し(S202)、
前記中継局装置と前記基地局装置との通信又は他の中継局装置と前記基地局装置との通信に割り当てられた通信リソースである割当済リソースの中から特定された、前記電波
遮蔽能が再利用要件を満たす再利用リソースを、前記基地局装置から取得し(S206)、
前記中継局装置と前記通信端末装置との通信に前記再利用リソースを割り当て(S207)、
前記再利用要件は、前記割当済リソースが前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信で再利用が可能
となる要件であって、基準となる遮蔽空間を構成する基準電波
遮蔽構造の基準電波遮蔽能に基づき前記再利用の可否が分類されている、
通信制御方法。
【請求項9】
中継局装置に搭載され、遮蔽空間内に設けられた下流側アンテナを用いて前記遮蔽空間内の通信端末装置との下流側通信と、前記遮蔽空間外に設けられた上流側アンテナを用いて基地局装置との上流側通信と、を同時に行う前記中継局装置で実行される通信制御プログラムであって、
前記基地局装置へ前記遮蔽空間を構成する電波
遮蔽構造の電波遮蔽能を送信し(S202)、
前記中継局装置と前記基地局装置との通信又は他の中継局装置と前記基地局装置との通信に割り当てられた通信リソースである割当済リソースの中から特定された、前記電波
遮蔽能が再利用要件を満たす再利用リソースを、前記基地局装置から取得し(S206)、
前記中継局装置と前記通信端末装置との通信に前記再利用リソースを割り当て(S207)、
前記再利用要件は、前記割当済リソースが前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信で再利用が可能
となる要件であって、基準となる遮蔽空間を構成する基準電波
遮蔽構造の基準電波遮蔽能に基づき前記再利用の可否が分類されている、
通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継局装置を介した通信端末装置との通信において、割当済の通信リソースを再利用して効率的なデータ送受信を行う、基地局装置及び中継局装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信が普及するにつれ、様々な場所で無線通信を用いた通信を行う機会が増えている。とりわけ、自動車等の移動体においては、大容量のセルラー通信や、車車間通信及び路車間通信のようなV2X等を用いて、運転支援や自動運転制御を行う技術が注目されている。これに伴い、周波数の利用効率を向上させるために通信リソースを効率よく活用することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヘテロジーニアスネットワークにおいてモバイルリレーノードにより持ち込まれる干渉を軽減するために、区分型周波数再利用と電力防防御型ビームフォーミングとを適用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者らは、以下の課題を見出した。
リレーノードが移動する構成では、常に干渉を回避するにはビームフォーミングを移動に動的に追従させる必要がある。リレーノードのカバレッジはフェージング環境下ではモバイルとの距離に対して一様ではないから、十分なマージンを持って周波数を共用する必要があるため、再利用効率を上げることが困難である。また、ドナーマクロセルBSとリレーノードの間の通信と、リレーノードとモバイル間の通信は時間・周波数を共用することができない。
【0006】
本発明は、割当済の通信リソースのうち、干渉の可能性が低い通信リソースを特定し、中継局装置と遮蔽空間内の通信端末装置との通信に再利用することにより通信リソースを有効に活用し、ひいてはデータを効率的に送受信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の基地局装置(1)は、遮蔽空間(20)内に設けられた下流側アンテナ(22)を用いて前記遮蔽空間内の通信端末装置(23)との下流側通信と、前記遮蔽空間外に設けられた上流側アンテナ(21)を用いて基地局装置との上流側通信と、を同時に行うことができる中継局装置(2)を介して、前記通信端末装置と通信する基地局装置(1)であって、
前記中継局装置と前記基地局装置との通信又は他の中継局装置と前記基地局装置との通信に用いる通信リソースを割り当てるリソース割当部(122)と、
前記リソース割当部によって割り当てられた前記通信リソースである割当済リソースが前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信で再利用が可能となる要件であって、基準となる遮蔽空間を構成する基準電波遮蔽構造の基準電波遮蔽能に基づき前記再利用の可否が分類された再利用要件を記憶する再利用要件記憶部(132)と、
前記中継局装置から前記遮蔽空間を構成する電波遮蔽構造の電波遮蔽能を取得する中継局情報取得部(121)と、
前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信に用いる通信リソースであって、前記割当済リソースの中から、前記電波遮蔽能が前記再利用要件を満たす前記再利用リソースを特定する再利用リソース特定部(123)と、
前記再利用リソースを前記中継局装置へ送信することを指示する送信指示部(124)と、を有する。
【0008】
本開示の中継局装置(2、2A)は、遮蔽空間(20)内に設けられた下流側アンテナ(22)を用いて前記遮蔽空間内の通信端末装置(23)との下流側通信と、前記遮蔽空間外に設けられた上流側アンテナ(21)を用いて基地局装置(1)との上流側通信と、を同時に行い、前記通信端末装置と前記基地局装置との通信を中継する中継局装置(2)であって、
前記遮蔽空間を構成する電波遮蔽構造の電波遮蔽能を記憶する中継局情報記憶部(261)と、
前記基地局装置へ前記電波遮蔽能を送信する接続要求指示部(251)と、
前記中継局装置と前記基地局装置との通信又は他の中継局装置と前記基地局装置との通信に割り当てられた通信リソースである割当済リソースの中から特定された、前記電波遮蔽能が再利用要件を満たす再利用リソースを、前記基地局装置から取得する再利用リソース取得部(254)と、
前記中継局装置と前記通信端末装置との通信に前記再利用リソースを割り当てる再利用リソース割当部(255)と、を有し、
前記再利用要件は、前記割当済リソースが前記中継局装置と前記通信端末装置との間の前記下流側通信で再利用が可能となる要件であって、基準となる遮蔽空間を構成する基準電波遮蔽構造の基準電波遮蔽能に基づき前記再利用の可否が分類されている。
【0009】
なお、特許請求の範囲、及び本項に記載した発明の構成要件に付した括弧内の番号は、本発明と後述の実施形態との対応関係を示すものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0010】
上述のような構成により、割当済の通信リソースのうち、中継局装置が設けられた遮蔽空間内の通信端末装置との下流側通信と干渉する可能性が低い通信リソースを、下流側通信に再利用することができる。したがって、中継局装置の中継によるリソース効率低下を抑えて、効率的にデータを送受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本開示の実施形態1の基地局装置の構成例を示すブロック図
【
図3】本開示の実施形態1の基地局装置の動作を示すフローチャート
【
図4】本開示の実施形態1の基地局装置の構成の変形例を示すブロック図
【
図5】本開示の実施形態1の基地局装置の動作の変形例を示すフローチャート
【
図6】本開示の実施形態2の中継局装置の構成例を示すブロック図
【
図7】本開示の実施形態2の中継局装置の動作を示すフローチャート
【
図8】再利用要件の具体例としての再利用テーブルを説明する説明図
【
図9】(a)(b)
図8の通信R1の再利用を説明する説明図
【
図10】(a)(b)
図8の通信R2の再利用(上り)を説明する説明図
【
図11】(a)(b)
図8の通信R3の再利用を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
なお、本発明とは、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された発明を意味するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。また、少なくともかぎ括弧内の語句は、特許請求の範囲又は課題を解決するための手段の項に記載された語句を意味し、同じく以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
特許請求の範囲の従属項に記載の構成及び方法は、特許請求の範囲の独立項に記載の発明において任意の構成及び方法である。従属項に記載の構成及び方法に対応する実施形態の構成及び方法、並びに特許請求の範囲に記載がなく実施形態のみに記載の構成及び方法は、本発明において任意の構成及び方法である。特許請求の範囲の記載が実施形態の記載よりも広い場合における実施形態に記載の構成及び方法も、本発明の構成及び方法の例示であるという意味で、本発明において任意の構成及び方法である。いずれの場合も、特許請求の範囲の独立項に記載することで、本発明の必須の構成及び方法となる。
【0015】
実施形態に記載した効果は、本発明の例示としての実施形態の構成を有する場合の効果であり、必ずしも本発明が有する効果ではない。
【0016】
複数の実施形態がある場合、各実施形態に開示の構成は各実施形態のみで閉じるものではなく、実施形態をまたいで組み合わせることが可能である。例えば一の実施形態に開示の構成を、他の実施形態に組み合わせても良い。また、複数の実施形態それぞれに開示の構成を集めて組み合わせても良い。
【0017】
発明が解決しようとする課題に記載した課題は公知の課題ではなく、本発明者が独自に知見したものであり、本発明の構成及び方法と共に発明の進歩性を肯定する事実である。
【0018】
1.各実施形態の全体構成例
図1を用いて、各実施形態で関係する機器及びその相互関係、並びに各実施形態の全体構成例をまず説明する。
【0019】
基地局装置1は、中継局装置2を介して、当該中継局装置2が設けられた遮蔽空間20内の通信端末装置23との間で無線通信を行う装置である。また、基地局装置1は、中継局装置2を介さずに、遮蔽空間20内の通信端末装置23との間で、無線通信を行うこともできる。
ここで、「基地局装置」とは、通信端末装置23の中継拠点として設置され基幹回線網と接続された装置を指すが、一部の処理や機能を基幹回線網の先にある各種サーバ装置で実現する場合は、当該各種サーバ装置も含めた装置全体を指す。
また、「遮蔽空間」とは、完全に遮蔽されている場合の他、空間の内外を比較して空間の内外を隔てる遮蔽素材により電波の減衰があればよい。
なお、便宜のため、図中では、基地局装置、中継局装置、通信端末装置、通信リソースを、適宜、基地局、中継局、端末、リソースと略記する。
【0020】
中継局装置2は、遮蔽空間20に設けられており、基地局装置1との上流側通信を行う上流側アンテナ21と、遮蔽空間20内の通信端末装置23との下流側通信を行う下流側アンテナ22と、を備えている。中継局装置2は上流側通信と下流側通信とを同時に行うことができる。
ここで、「同時」とは、時間的に同一の場合の他、時間的に連続する場合も含む。
【0021】
遮蔽空間20は、電波遮蔽構造(電波遮蔽能)が既知な遮蔽空間であり、例えば、自動車の座席が設けられた空間、建築物内のホールや居室等が挙げられる。下流側アンテナ22は、遮蔽空間20内に設けられている。このため、遮蔽空間20の電波遮蔽能が既知であれば、当該電波遮蔽能に基づいて、遮蔽空間20内の下流側通信と遮蔽空間20外の他の通信とが干渉する可能性を評価することができる。電波遮蔽能としては、電波が減衰して所定の強度に減衰する中継局装置2からの距離や、電波の減衰率等が挙げられる。
【0022】
ここからは、車両Aの中継局装置2Aに視点を置いて説明する。
基地局装置1は、中継局装置2Aと遮蔽空間20A内の通信端末装置23Aとの下流側通信と他の通信との干渉能力を、遮蔽空間20Aの電波遮蔽能に基づいて評価する。この干渉能力の評価に基づいて、他の通信に割当済の通信リソースのうち、下流側通信との干渉の可能性が低いと判定されたものを下流側通信用に再割当する。ここで、他の通信とは、例えば、中継局装置2Aと基地局装置1との通信R1、基地局装置1と中継局装置2Bとの通信R2、中継局装置2Bと通信端末装置23Bとの通信R3、中継局装置2Bを介さない基地局装置1と通信端末装置23Bとの通信R4等が挙げられる。
【0023】
中継局装置2Aは、電波遮蔽構造が特定されている遮蔽空間20A内にある下流側アンテナ22を介して、遮蔽空間20内の下流側通信を行う通信端末装置23Aを認識し通信するよう構成されている。そして、中継局装置2Aは、把握した下流側通信を行う通信端末装置23の接続数等を、上流側通信を行う基地局装置1に通知する。
【0024】
なお、通信端末装置23Aがスマートフォンや携帯電話、タブレット等の場合、中継局装置2Aの無線通信部との間で無線通信を行い、中継局装置2Aを介して基地局装置1との間で無線通信を行う。無線通信には、後述の通信方式の例の他、BLEやBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を用いることができる。
【0025】
基地局装置1は、中継局装置2Aから通知された、通信端末装置23Aの情報に基づいて、中継局装置2Aと通信端末装置23Aと通信(下流側通信)Tに通信リソースを割り当てる。この際、遮蔽空間20Aの遮蔽構造に基づいて、既に割当済の他の通信R1~R4のうち、通信Tの干渉がないか十分に弱いと判定される通信を抽出する。そして、他の通信R1~R4に割当済の通信リソースを再利用リソースとして優先的に通信Tに割り当てて、中継局装置2Aに通知する。
【0026】
これにより、中継局装置2Aは、個々の通信端末装置23Aに対して再利用リソースを割り当てることができる。例えば、遮蔽空間20Aの電波遮蔽能が高い場合、遮蔽空間20の通信Tの電波は、遮蔽空間20Aの外部に設けられた上流側アンテナ21の位置における減衰が十分大きい。このため、中継局装置2Aが専ら上流側アンテナ21を介して基地局装置1との通信R1を行う場合、基地局装置1は、通信R1に対して割当済の通信リソースを、再利用リソースとして優先的に通信Tに割り当てることができる。
【0027】
基地局装置1と中継局装置2、中継局装置2と通信端末装置23、基地局装置1と通信端末装置23との間の無線通信方式は、例えば、IEEE802.11(WiFi(登録商標))やIEEE802.16(WiMAX(登録商標))、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、HSPA(High Speed Packet Access)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(Long Term Evolution Advanced)、4G、5G等を用いることができる。あるいは、DSRC(Dedicated Short Range Communication)を用いることができる。
【0028】
2.実施形態1
(1)基地局装置1の構成
図2を用いて、実施形態1の基地局装置1の構成について説明する。
基地局装置1は、無線通信部11、制御部12、記憶部13からなる。
【0029】
無線通信部11は、外部の通信装置である中継局装置2、通信端末装置23との間で「無線通信」を行う。無線通信の方式は、上述のとおり様々な通信方式を用いることができるが、本実施形態ではセルラー通信方式として4G又は5Gを想定している。なお、無線通信方式は、複数の通信方式に対応していてもよい。
ここで、「無線通信」とは、無線で信号を送信、又は/及び、受信することをいう。
【0030】
制御部12は、中継局情報取得部121、リソース割当部122、再利用リソース特定部123及び送信指示部124を実現している。
中継局情報取得部121は、遮蔽空間20の電波遮蔽能、収容する通信端末装置23のリスト等、中継局装置2の情報を取得する(
図1参照)。
リソース割当部122は、中継局装置2と基地局装置1との通信に通信リソースを割り当てる。
【0031】
再利用リソース特定部123は、中継局装置2から取得した電波遮蔽能と、再利用要件記憶部132の再利用要件と、を用いて、リソース割当部122によって割り当てられた割当済リソースのうち、再利用要件を満たす再利用リソースを特定する。
送信指示部124は、割当済リソース及び再利用リソースを中継局装置2へ送信することを指示する。
【0032】
記憶部13は、例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性メモリの他、RAM等の揮発性メモリを用いることができる。また、BDやDVD、SDカード等の取り外し可能な記憶媒体を用いてもよい。記憶部13は、中継局情報記憶部131、再利用要件記憶部132及び通信リソース記憶部133を実現している。
【0033】
中継局情報記憶部131は、取得した中継局装置2に関する情報を記憶する。中継局装置2に関する情報とは、遮蔽空間20の電波遮蔽能や、遮蔽空間20に収容する通信端末装置23の端末リスト、通信端末装置23へのデータ受信に関する情報、中継局装置2からのリソース割当要求受信に関する情報等である。
【0034】
再利用要件記憶部132は、遮蔽空間20の電波遮蔽能に基づく再利用要件を記憶する。再利用要件としては、下流側通信の電波強度が所定値に減衰する中継局装置2からの距離(減衰距離)、中継局装置2からの距離による下流側通信の電波強度の減衰率、減衰距離や減衰率に対応して規定された中継局装置間の距離等が挙げられる。再利用要件記憶部132は、これらを単独又は組み合わせて再利用要件として用いる。
【0035】
通信リソース記憶部133は、基地局装置1の通信に用いる通信リソース、及び通信リソースの割当を記憶する。通信リソースの割当に関する情報として、遮蔽空間20外の通信に割当済のリソース集合、割当済の通信リソース集合のうち遮蔽空間20内外の通信に再利用可能な通信リソース集合、未割当の通信リソース集合等が挙げられる。
【0036】
(2)基地局装置1の動作
図3のフローチャートを用いて、本実施形態の基地局装置1の動作を説明する。
なお、以下の動作は、基地局装置1で実行される通信制御方法を示すだけでなく、基地局装置1で実行可能な通信制御プログラムの処理手順を示すものである。
そして、これらの処理は、
図3で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0037】
基地局装置1の中継局情報取得部121は、中継局装置2から接続要求(アタッチ要求)を受信した際、当該接続要求に含まれる中継局装置2の属性情報から、中継局装置2が設けられた遮蔽空間20の電波遮蔽能を取得し、中継局装置2に対して確認応答を送信する(S101)。このようにして、基地局装置1は、中継局装置2の遮蔽空間20の電波遮蔽能を取得し、中継局情報記憶部131に記憶する。
【0038】
中継局情報取得部121は、中継局装置2から、その収容する通信端末装置23の端末リストの更新を受信して取得し、中継局装置2に対して確認応答を送信する(S102)。このようにして、基地局装置1は、中継局装置2から通信端末装置23のアップデートを受けて中継局情報記憶部131に記憶し、中継局装置2が収容する端末リストを最新の状態に維持する。
【0039】
中継局情報取得部121は、基幹回線網(バックボーンネットワーク)から中継局装置2の通信端末装置23へのデータを受信、又は中継局装置2からリソース割当要求を受信する(S103)。基地局装置1からの下り通信の場合は通信端末装置23へのデータ、基地局装置1への上り通信の場合は中継局装置2からのリソース割当要求の受信が、リソース集合P(N)の割り当て(S104)、及び再利用リソース集合R(N)の特定(S106)のトリガとなる。中継局情報取得部121が受信した情報は、中継局情報記憶部131に記憶する。
【0040】
リソース割当部122は、基地局装置1と、中継局装置2及び通信端末装置23との間の通信に、通信リソースrの集合であるリソース集合P(N)を割り当てる(S104)。リソース集合P(N)は、通信リソース記憶部133に記憶する。
ここで、割当済のリソース集合P(N)とは、周波数、時間、符号等で定義される通信リソースの集合であり、本発明の「割当済リソース」にあたる。例えば、fiをi番目の周波数スロット、tiをi番目の時間スロットとすると、通信リソースの例は、特定の周波数スロットと時間スロットとの組み合わせ(fi、ti)で示される。また、リソース集合P(N)の例は、特定の周波数スロットと時間スロットとの組み合わせの集合{(f1、t1),(f3、t2)、(f5、t7)}で示される。
【0041】
再利用リソース特定部123は、割当済のリソース集合P(N)のうち、中継局装置2と通信端末装置23との間の下流側通信に再利用可能な再利用リソース集合R(N)を初期化する(S105)。
【0042】
再利用リソース特定部123は、通信リソース記憶部133のリソース集合P(N)の通信リソースrが再利用要件を満たすか否かを判断し、再利用要件を満たす通信リソースrを再利用リソース集合R(N)に追加する。この判断をリソース集合P(N)のすべてについて繰り返して行い、リソース割当部によって割り当てられた割当済のリソース集合P(N)のうち、再利用要件を満たす再利用リソース集合R(N)を特定する(S106)。再利用リソース集合R(N)は、通信リソース記憶部133に記憶する。
【0043】
S106は、割当済のリソース集合P(N)から、再利用リソース集合R(N)を特定するループであり、割り当て要求されている通信(通信リンク)が再利用要件を満たせば、リソース集合P(N)に含まれる通信リソースrを再利用リソース集合R(N)に追加する。これを、既に通信リソースrが割り当てられている通信の全てに対して行う。再利用要件は、例えば、再利用可能となる関係を特定したテーブルとして、再利用要件記憶部132に記憶されている。
【0044】
送信指示部124は、リソース集合P(N)及び再利用リソース集合R(N)を通信リソース記憶部133から取得して、無線通信部11を介して、S103で受信した下りデータの送信先、又は上りデータのリソース割当要求の発信元である中継局装置2に送信する(S120)。
【0045】
(3)基地局装置1の変形例
図4に示すように、基地局装置1の制御部12は、中継局情報取得部121、リソース割当部122、再利用リソース特定部123及び送信指示部124に加えて、新規リソース割当部125を実現するものであってもよい。
新規リソース割当部125は、中継局装置2の収容する通信端末装置23へのデータ又は中継局装置2からのリソース割当要求を受信した場合に、再利用リソース集合R(N)が不足するとき、割当済のリソース集合P(N)以外の、未割当のリソースを新規リソース集合U(N)として、中継局装置2の下流側通信の不足分に割り当てる。
【0046】
送信指示部124は、再利用リソース集合R(N)がリソース割当要求に対して不足するとき、P(N)、R(N)に加えて、未割当のリソースからなる新規リソース集合U(N)の中継局装置2への送信を指示する。
【0047】
(4)基地局装置1の変形例の動作
図5のフローチャートを用いて、本実施形態の基地局装置1の変形例の動作を説明する。
基地局装置1の変形例では、再利用リソース集合R(N)を特定した(S106)後、新規リソース割当部125は、R(N)のリソース総量が、基地局装置1が受信したデータ又はリソース割当要求(S103)に対応する割り当て必要量よりも少ないか否かを判断する(S107)。
【0048】
再利用リソース集合R(N)のリソース総量が割り当て必要量よりも少ない場合(S107のY(Yes))、S108に処理を移す。新規リソース割当部125は、不足分に対して、リソース集合P(N)以外の未割当の通信リソースを、新規リソース集合U(N)に割り当てる(S108)。新規リソース集合U(N)は、通信リソース記憶部133に記憶する。
【0049】
再利用リソース集合R(N)のリソース総量が割り当て必要量以上である場合(S107のN(No))、S109に処理を移す。新規リソース割当部125は、新規リソース集合U(N)を空集合(=φ)として初期化する(S109)。
【0050】
送信指示部124は、割当済のリソース集合P(N)、再利用リソース集合R(N)及び新規リソース集合U(N)を通信リソース記憶部133から取得して、中継局装置2へ送信することを指示する(S130)。
基地局装置1が、割当済のリソース集合P(N)及び再利用リソース集合R(N)に加えて、新規リソース集合U(N)を中継局装置2に送信することで、中継局装置2は必要な場合に、リソース集合P(N)に割り当てられなかった新規リソースを通信端末装置23との通信に用いることができる。
【0051】
以上、本実施形態の基地局装置1、通信制御方法、及びデータ通信制御プログラムによれば、遮蔽空間の電波遮蔽能に基づいて、干渉可能性の低い通信リソースを特定し、遮蔽空間内の通信に再利用することで、中継による通信リソースの利用効率の低下を抑制できる。また、基地局装置1が中継局装置2による個々の通信端末装置23への通信リソース割当に関知しないことによって、基地局装置1の処理コストと、基地局装置1と中継局装置2との通信に必要な制御情報を削減することができる。
【0052】
3.実施形態2
(1)中継局装置2の構成
図6を用いて、実施形態2の中継局装置2の構成について説明する。
中継局装置2は、遮蔽空間20内の通信端末装置23(
図1参照)との下流側通信と、基地局装置1との上流側通信と、を同時に行い、通信端末装置23と基地局装置1との通信を中継するものであり、遮蔽空間20
に設けられる。
【0053】
中継局装置2は、上流側アンテナ21、下流側アンテナ22、無線通信部24、制御部25、記憶部26を備えている。
【0054】
中継局装置2は、汎用のCPU(Central Processing Unit)、RAM等の揮発性メモリ、ROM、フラッシュメモリ、又はハードディスク等の不揮発性メモリ、各種インターフェース、及びこれらを接続する内部バスで構成することができる。そして、これらのハードウェア上でソフトウェアを実行することにより、
図6に記載の各機能ブロックの機能を発揮させるように構成することができる。
もちろん、中継局装置2を、LSI等の専用のハードウェアで実現してもよい。
【0055】
中継局装置2は、部品の形態、半完成品の形態、完成品の形態、のいずれを有していてもよい。例えば、部品の形態としては、半導体回路や半導体モジュール、半完成品の形態として電子制御装置(ECU(Electric Control Unit)、以下ECUと略する。)、完成品の形態としては、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、携帯電話、ナビゲーションシステムが挙げられる。
【0056】
無線通信部24は、無線通信により、上流側アンテナ21を介して基地局装置1との間で上流側通信を行い、下流側アンテナ22を介して、遮蔽空間20内の通信端末装置23との間で下流側通信を行う(
図1参照)。
【0057】
制御部25は、接続要求指示部251、端末リスト更新部252、端末リスト送信部253、再利用リソース取得部254、再利用リソース割当部255、送信指示部256を実現する。
【0058】
接続要求指示部251は、基地局装置1に対して接続要求を行う際、記憶部26の中継局情報記憶部261の遮蔽空間20の電波遮蔽能を含む遮蔽空間20の属性情報を送信し、基地局装置1からの確認応答を受信する。これにより、基地局装置1は、遮蔽空間20の電波遮蔽能を用いて、割当済のリソース集合P(N)から再利用リソース集合R(N)を特定することができる。
端末リスト更新部252は、新たな通信端末装置23からの接続要求の受信、又は接続していた通信端末装置23の離脱を検出した場合、中継局情報記憶部261の収容端末リストを更新する。
端末リスト送信部253は、更新された収容端末リストを基地局装置1に送信し、基地局装置1からの確認応答を受信する。
【0059】
再利用リソース取得部254は、基地局装置1から、遮蔽空間20の電波遮蔽能に基づいた再利用要件を満たす再利用リソースを取得する。再利用リソースは、通信リソース記憶部262に記憶する。
再利用リソース割当部255は、再利用リソースを取得し、中継局装置2と通信端末装置23との下流側通信に割り当てる。
送信指示部256は、再利用リソースを割り当てた結果について、遮蔽空間20内の通信端末装置23への送信を指示する。
【0060】
記憶部26は、例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性メモリの他、RAM等の揮発性メモリを用いることができる。また、BDやDVD、SDカード等の取り外し可能な記憶媒体を用いてもよい。記憶部26は、中継局情報記憶部261、通信リソース記憶部262を実現する。
【0061】
中継局情報記憶部261は、遮蔽空間の電波遮蔽能、遮蔽空間に収容している通信端末装置の収容端末リスト等を記憶する。
通信リソース記憶部262は、基地局装置1から受信した通信リソースに関する情報を記憶する。当該情報としては、割当済リソースからなるリソース集合P(N)、再利用リソース集合R(N)及び新規リソース集合U(N)等が挙げられる。
【0062】
(2)中継局装置2の動作
図7のフローチャートを用いて、本実施形態の中継局装置2の動作を説明する。なお、以下の動作は、中継局装置2で実行される通信制御方法を示すだけでなく、中継局装置2で実行可能な通信制御プログラムの処理手順を示すものである。そして、これらの処理は、
図7で示した順序には限定されない。すなわち、あるステップでその前段のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0063】
中継局装置2の接続要求指示部251は、基地局装置1を検出し(S201)、遮蔽空間20(
図1参照)の電波遮蔽能を含む属性情報を付した接続要求を基地局装置1に送信し、基地局装置1から確認応答を受信する(S202)。
【0064】
端末リスト更新部252は、新たな通信端末装置23からの接続要求を受信、又は下流側通信により接続中の通信端末装置23の離脱を検出する(S203)。そして、遮蔽空間20内に収容する通信端末装置23の端末リストを更新する(S204)。端末リストは、中継局情報記憶部261に記憶する。
端末リスト送信部253は、端末リスト更新部252又は中継局情報記憶部261から取得した端末リストを基地局装置1に送信し、基地局装置1から確認応答を受信する(S205)。
【0065】
再利用リソース取得部254は、基地局装置1から、リソース集合P(N)及び再利用リソース集合R(N)、又はリソース集合P(N)、再利用リソース集合R(N)及び新規リソース集合U(N)を受信する(S206)。
再利用リソース割当部255は、遮蔽空間20に収容している通信端末装置23ごとに、再利用リソース集合R(N)又は、再利用リソース集合R(N)及び新規リソース集合U(N)に含まれるリソースの割当を決定する(S207)。
送信指示部256は、再利用リソース集合R(N)に含まれるリソースを割り当てた結果、又は再利用リソース集合R(N)及び新規リソース集合U(N)に含まれるリソースを割り当てた結果を通信端末装置23に送信する。
【0066】
以上、本実施形態の中継局装置2、通信制御方法、及び通信制御プログラムによれば、基地局装置1への接続要求に遮蔽空間20の電波遮蔽能を付して送信することで、基地局装置1は、遮蔽空間20の下流側通信に対する干渉可能性の低い通信リソースを特定することができる。干渉可能性の低い通信リソースを、遮蔽空間20内の下流側通信に再利用することにより、中継局装置2の中継による通信リソースの利用効率低下を抑制できる。また、基地局装置1が中継局装置2による個々の通信端末装置23への通信リソース割当に関知しないことによって、基地局装置1の処理コストと、基地局装置1と中継局装置2との通信に必要な制御情報を削減することができる。
【0067】
4.再利用要件の具体例
図8を参照して、再利用要件の一例である再利用テーブルの例について説明する。再利用テーブルは、基地局装置1が中継局装置2へのデータ、又は中継局装置2からリソース割当要求を受信したことより、新たに通信リソースを割り当てる通信T及び通信リソース割当済の通信Rの分類を規定している。再利用リソースを用いる通信Tは、通信端末装置23を収容する遮蔽空間20の構造種別及び遮蔽能(減衰距離D)により分類されている。通信リソース割当済の通信Rは、通信に関与する装置によって分類されている。構造種別及び遮蔽能による通信Tの分類と、割当済の通信Rの分類との組み合わせについて、それぞれ再利用要件が規定されている。
【0068】
再利用要件は、それぞれの組み合わせについて、基地局装置1からの下り通信と、基地局装置1への上り通信とに分けて、通信Tの通信リソースrとして、通信Rの割当済の通信リソースを再利用できるか(可)否か(不可)を規定している。R1、R2、R3のいずれの場合も再利用が不可となる構造種別は、再利用テーブルに記載されていない。例えば、車両の減衰距離Dがbよりも大きい場合(b<D)、通信RがR1、R2、R3のいずれの場合も再利用が不可となるから、再利用テーブルには記録されていない。再利用の可否が検討される通信リソースは、下り通信同士又は上り通信同士である。
【0069】
再利用テーブルにおける減衰距離とは、中継局装置2から遮蔽空間20内の通信端末装置23との下流側通信に用いる電波の強度が所定値以下に減衰する、中継局装置2からの距離である。所定値は、適宜、設定することができるが、例えば、遮蔽空間20における電波強度に対する比率(例えば半減)、電波強度等が挙げられる。ここで、「所定値」とは、一定値の他、所定の条件によって変化する値も含む。
【0070】
図9(a)を参照して、再利用リソースを用いる通信Tの中継局装置2が設けられた遮蔽空間20が車両である場合に、中継局装置2と基地局装置1との通信R1に割当済の通信リソースを再利用できるか否かを説明する。この場合、通信リソースの再利用の可否は、下り及び上りのいずれの通信も、遮蔽空間20の遮蔽能によって決まる。遮蔽空間20の遮蔽能が所定値より大きい場合(T1)、減衰距離Dが所定値a未満となるから、通信R1の通信リソースの再利用は可となる。遮蔽空間20の遮蔽能が所定値以下の場合(T2)、減衰距離Dが所定値a以上となるから、通信R1の通信リソースの再利用は不可となる。
【0071】
図9(b)に示すように、通信Tの中継局装置2が設けられた遮蔽空間20が建築物である場合も、中継局装置2と基地局装置1との通信R1に割当済の通信リソースの再利用の可否が同様にして判断される。すなわち、下り及び上りのいずれの通信も、減衰距離Dが所定値c未満の場合(T3)、通信R1の通信リソースの再利用が可となり、減衰距離Dが所定値cよりも大きい場合、通信R1の通信リソースの再利用が
不可となる。
【0072】
図10(a)及び
図10(b)を参照して、再利用リソースを用いる通信Tの中継局装置2Aが設けられた遮蔽空間20Aが車両である場合の再利用の可不可について説明する。これらの図に示す例では、通信リソース割当済の通信Rは、車両に設けられた中継局装置2Bと基地局装置1との通信R2である。他の中継局装置2Bから基地局装置1への上りの通信R2の電波が中継局装置2Aに到達したときの強度は、中継局装置2Aと中継局装置2Bとの位置関係によって異なる。そこで、通信R2の再利用の可否は、中継局装置2Aの遮蔽空間20Aが属する構造種別に応じて規定された、中継局装置間の所定の距離Xa、距離Xbを用いて判断する。
【0073】
距離Xaは、遮蔽空間20Aが構造種別T1に属する場合、中継局装置2Aと通信端末装置23Aとの通信Tと、基地局装置1と他の中継局装置2Bとの通信R2とが干渉しない距離として規定されたものである。また、距離Xbは、遮蔽空間20Aが構造種別T2に属する場合、中継局装置2Aと通信端末装置23Aとの通信Tと、基地局装置1と他の中継局装置2Bとの通信R2とが干渉しない距離として規定されたものである。このため、減衰距離の所定値a<bと同様、所定の距離もXa<Xbとなる。
【0074】
図10(a)に示すように、中継局装置2Aの遮蔽空間20Aが構造種別T1に属する場合、中継局装置2Aと中継局装置2Bとの距離Lが所定の距離Xaより大きいとき(L>Xa)、通信R2と通信Tとは干渉する可能性が低い。したがって、通信R2に割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を可とする。中継局装置2Aの遮蔽空間20Aが構造種別T2に属する場合も同様、距離Lが所定の距離Xbより大きいとき(L>Xb)、通信R2に割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を可とする。
【0075】
図10(b)に示すように、中継局装置2Aの遮蔽空間20Aが構造種別T1に属する場合、中継局装置2Aと中継局装置2Bとの距離Lが所定の距離Xa以下のとき(L≦Xa)、通信R2と通信Tとは干渉する可能性が高い。したがって、通信R2に割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を不可とする。中継局装置2Aの遮蔽空間20Aが構造種別T2に属する場合も同様、距離Lが所定の距離Xb以下のとき(L≦Xb)、通信R2に割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を不可とする。
【0076】
基地局装置1から他の中継局装置2Bへの下り通信R2の電波強度は、上り通信R2とは異なり、中継局装置2Aと中継局装置2Bとの位置関係より影響されない。そこで、
図8の再利用テーブルに示すように、中継局装置2Aの遮蔽空間20Aが構造種別T1に属する場合(D<a)通信R2に割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を可とし、それ以外の場合(D≧a)再利用を不可とする。
【0077】
中継局装置2Aが建築物に設けられている場合、上り通信については、中継局装置2Aが車両に設けられている場合同様、通信Tと通信R2とが干渉しないと距離として規定された所定の距離Xcを用いて再利用の可否を判断する。すなわち、建築物の遮蔽空間20Aが構造種別T3に属する場合(D<c)、中継局装置2Aと中継局装置2Bとの距離Lが所定の距離Xcよりも大きいとき(L>Xc)通信R2に割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を可とし、距離Lが所定の距離Xc以下のとき(L≦Xc)再利用を不可とする。
下り通信については、建築物の遮蔽空間20Aが構造種別T3に属する場合(D<c)通信R2に割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を可とし、それ以外の場合(D≧c)再利用を不可とする。
【0078】
なお、
図8、
図10(a)及び
図10(b)では、通信R2を基地局装置1と他の中継局装置2Bとの通信としたが、通信端末装置23Bは他の中継局装置2Bを介さず、基地局装置1と直接通信する場合もある。この場合、中継局装置2Aと通信端末装置23Bとの距離と距離Xa又は距離Xbとを比較して、通信R2の再利用の可否を判断する。
【0079】
図11(a)及び
図11(b)を参照して、通信R3に割当済の通信リソースの通信Tへの再利用の可不可について説明する。通信R3は、通信(T)同様、中継局装置2Bとその収容する通信端末装置23Bとの間の通信である。この場合、中継局装置2Aが設けられた遮蔽空間20Aの遮蔽能に加えて、中継局装置2Bが設けられた遮蔽空間20Bの遮蔽能も問題となる。そこで、遮蔽空間20Aの減衰距離DAと遮蔽空間20Bの減衰距離DBのうち、大きい方のMax(a)及びMax(b)と、中継局装置2A、2B間の距離Lとを比較して、通信リソースの再利用の可不可を判断する。
【0080】
図11(a)に示すように、中継局装置2Aが設けられた遮蔽空間20Aの減衰距離DAよりも、中継局装置2Bが設けられた遮蔽空間20Bの減衰距離DBの方が大きい場合、中継局装置2Aと中継局装置2Bとの距離Lと減衰距離DBとを比較する。減衰距離DA<aのときは減衰距離DBがMax(a)となり、a≦減衰距離DA<bのときは減衰距離DBがMax(b)となる。距離Lが減衰距離DBより大きいとき(L>Max(a)、L>Max(a))、通信R3の割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を可とする。距離Lが減衰距離DB以下のとき(L≦Max(a)、L≦Max(b))、通信R3の割当済の通信リソースの通信Tへの再利用を不可とする。
【0081】
通信(T)の中継局装置2が設けられた遮蔽空間20が建築物である場合、下り及び上りのいずれも、通信R1と同様になる。
5.総括
以上、本発明の各実施形態における装置、方法、及びプログラムの特徴について説明した。
【0082】
各実施形態で使用した用語は例示であるので、同義の用語、あるいは同義の機能を含む用語に置き換えてもよい。
【0083】
実施形態の説明に用いたブロック図は、装置の構成を機能毎に分類及び整理したものである。それぞれの機能を示すブロックは、ハードウェア又はソフトウェアの任意の組み合わせで実現される。また、機能を示したものであることから、かかるブロック図は方法の発明、及び当該方法を実現するプログラムの発明の開示としても把握できるものである。
【0084】
各実施形態に記載した処理、フロー、及び方法として把握できる機能ブロック、については、一のステップでその前段の他のステップの結果を利用する関係にある等の制約がない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0085】
各実施形態、及び特許請求の範囲で使用する、第1、第2、乃至、第N(Nは整数)、の用語は、同種の2以上の構成や方法を区別するために使用しており、順序や優劣を限定するものではない。
【0086】
各実施形態は、車両に搭載される装置を前提としているが、本発明は、特許請求の範囲で特に限定する場合を除き、車両用以外の専用又は汎用の装置も含むものである。
【0087】
各実施形態では、各実施形態に開示の装置を車両に搭載する前提で説明したが、歩行者が所持する前提としてもよい。
【0088】
また、本発明の装置の形態の例として、以下のものが挙げられる。
部品の形態として、半導体素子、電子回路、モジュール、マイクロコンピュータが挙げられる。
半完成品の形態として、電子制御装置(ECU(Electric Control Unit))、システムボードが挙げられる。
完成品の形態として、携帯電話、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、サーバが挙げられる。
その他、通信機能を有するデバイス等を含み、例えばビデオカメラ、スチルカメラ、カーナビゲーションシステムが挙げられる。
【0089】
また各装置に、アンテナや通信用インターフェース等、必要な機能を追加してもよい。
【0090】
本発明の装置は、各種サービスの提供を目的とするために用いられることが想定される。かかるサービスの提供に伴い、本発明の装置が使用され、本発明の方法が使用され、又は/及び本発明のプログラムが実行されることになる。
【0091】
加えて、本発明は、各実施形態で説明した構成及び機能を有する専用のハードウェアで実現できるだけでなく、メモリやハードディスク等の記録媒体に記録した本発明を実現するためのプログラム、及びこれを実行可能な専用又は汎用CPU及びメモリ等を有する汎用のハードウェアとの組み合わせとしても実現できる。
【0092】
専用や汎用のハードウェアの非遷移的実体的記録媒体(例えば、外部記憶装置(ハードディスク、USBメモリ、CD/BD等)、又は内部記憶装置(RAM、ROM等))に格納されるプログラムは、記録媒体を介して、あるいは記録媒体を介さずにサーバから通信回線を経由して、専用又は汎用のハードウェアに提供することもできる。これにより、プログラムのアップグレードを通じて常に最新の機能を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、自動車や建築物の電波遮蔽能が既知の遮蔽空間に搭載される中継局装置と通信端末装置との間の通信に割当済の通信リソースのうち干渉可能性の低い通信リソースを再利用することにより、通信効率を向上させる装置として有用である。
【符号の説明】
【0094】
1 基地局装置、2 中継局装置、20 遮蔽空間、23 通信端末装置、122 リソース割当部、123 再利用リソース特定部、124 送信指示部、125 新規リソース割当部、131 中継局情報記憶部、132 再利用要件記憶部、251 :接続要求指示部、254 再利用リソース取得部、255 再利用リソース割当部、256 送信指示部、261 中継局情報記憶部