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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリオレフィンフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20250408BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020204974
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2021115857
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2020011091
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004107
【氏名又は名称】弁理士法人Kighs
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】濱田 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮川 大地
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103587(WO,A1)
【文献】特開2018-065267(JP,A)
【文献】特開2000-052509(JP,A)
【文献】特開2019-059511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上の複数層からなる包装用の二軸延伸ポリオレフィンフィルムであって、
プロピレン単独重合体からなる樹脂組成物からなるプロピレン系重合体層と、
前記プロピレン系重合体層の少なくとも一方の面に密度が0.900~0.950g/cmのバイオマス由来ポリエチレン樹脂を主体とするポリエチレン樹脂層とを備え、
前記ポリエチレン樹脂層のバイオマス度が84%以上であり、
JIS K 7127(1999)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの巻取り方向の引張弾性率が1.0GPa以上である
ことを特徴とする二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項2】
前記プロピレン系重合体層と前記ポリエチレン樹脂層がそれぞれ交互に積層され3~5層の積層体よりなる請求項1に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムを構成する層のうち、一の前記プロピレン系重合体層が基材層であり、前記基材層の層厚が前記ポリエチレン樹脂層の層厚よりも厚く構成されてなる二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項4】
JIS K 7136(2000)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムのヘーズが9%以下であり、狭角拡散透過率が15%以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項5】
前記プロピレン系重合体層と前記ポリエチレン樹脂層とが接着層を介すことなく一体化されてなる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項6】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムが1μm~100μmの範囲である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
【請求項7】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムが共押出しの二軸延伸の製膜によりなる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリオレフィンフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリオレフィンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、再生可能資源の利用度を高めて環境負荷を軽減した循環型社会への取り組みが積極的に求められている。再生可能資源は、主に植物や植物由来の原料を加工した資源であり、バイオマス資源とも称される。バイオマス資源の場合、植物体の生育に伴い大気中の二酸化炭素は吸収される。そして、バイオマス資源として燃料等に利用されると再び水と二酸化炭素に分解される。従って、二酸化炭素の量は増えない。つまり、バイオマス資源はカーボンニュートラルの点から今後大きく取り入れる必要のある資源である。
【0003】
プラスチックの分野においては、バイオマス由来のプラスチックとしてポリ乳酸や生分解性ポリマー等のバイオマス由来プラスチックが製造されているものの、生産量が限られており、広く普及しているということはできない。一方、汎用プラスチックのうち、最も多く使用される材料であるポリエチレンに関して、植物由来の糖分からエタノールを経てポリエチレンを得る手法が商業化され、普及している。
【0004】
バイオマス由来のポリエチレンを使用した樹脂フィルムとして、エチレン系樹脂のみを使用したフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このフィルムにおいては、エチレン系樹脂のみで構成されているため、耐熱性に劣る。また、ポリプロピレン系樹脂にバイオマス由来のポリエチレンが添加されたフィルムが提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。しかしながら、これらフィルムは、透明性や透視感に劣るきらいがある。
【0005】
そこで、発明者らは鋭意検討を重ね、包装分野において多用される二軸延伸ポリオレフィンフィルムにおいて、優れた透明性や透視感、コシ感を備えるとともに、バイオマス資源に由来する樹脂を多く含有する環境負荷の低減を図りつつも生産性に優れる二軸延伸ポリオレフィンフィルムを開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5862055号公報
【文献】特開2018-65267号公報
【文献】特開2019-6461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、優れた透明性や透視感、コシ感を備えるとともに、生産性にも優れ、かつ環境への負荷が低減された二軸延伸ポリオレフィンフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、第1の発明は、少なくとも2層以上の複数層からなる包装用の二軸延伸ポリオレフィンフィルムであって、プロピレン単独重合体からなる樹脂組成物からなるプロピレン系重合体層と、前記プロピレン系重合体層の少なくとも一方の面に密度が0.900~0.950g/cmのバイオマス由来ポリエチレン樹脂を主体とするポリエチレン樹脂層とを備え、前記ポリエチレン樹脂層のバイオマス度が84%以上であり、JIS K 7127(1999)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの巻取り方向の引張弾性率が1.0GPa以上であることを特徴とする二軸延伸ポリオレフィンフィルムに係る。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記プロピレン系重合体層と前記ポリエチレン樹脂層がそれぞれ交互に積層され3~5層の積層体よりなる二軸延伸ポリオレフィンフィルムに係る。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムを構成する層のうち、一の前記プロピレン系重合体層が基材層であり、前記基材層の層厚が前記ポリエチレン樹脂層の層厚よりも厚く構成されてなる二軸延伸ポリオレフィンフィルムに係る。
【0011】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかにおいて、JIS K 7136(2000)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムのヘーズが9%以下であり、狭角拡散透過率が15%以下である二軸延伸ポリオレフィンフィルムに係る。
【0012】
第5の発明は、第1ないし第4の発明のいずれかにおいて、前記プロピレン系重合体層と前記ポリエチレン樹脂層とが接着層を介すことなく一体化されてなる二軸延伸ポリオレフィンフィルムに係る。
【0013】
第6の発明は、第1ないし第5の発明のいずれかにおいて、前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムが1μm~100μmの範囲である二軸延伸ポリオレフィンフィルムに係る。
【0014】
第7の発明は、第1ないし第6の発明のいずれかにおいて、前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムが共押出しの二軸延伸の製膜によりなる二軸延伸ポリオレフィンフィルムに係る。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る二軸延伸ポリオレフィンフィルムによると、少なくとも2層以上の複数層からなる包装用の二軸延伸ポリオレフィンフィルムであって、プロピレン単独重合体からなる樹脂組成物からなるプロピレン系重合体層と、前記プロピレン系重合体層の少なくとも一方の面に密度が0.900~0.950g/cmのバイオマス由来ポリエチレン樹脂を主体とするポリエチレン樹脂層とを備え、前記ポリエチレン樹脂層のバイオマス度が84%以上であり、JIS K 7127(1999)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの巻取り方向の引張弾性率が1.0GPa以上であることから、優れた透明性や透視感、コシ感を備えるとともに、生産性やフィルムの印刷や包装等の加工適性に優れ、かつ環境への負荷が低減された二軸延伸ポリオレフィンフィルムとすることができる。
【0016】
第2の発明に係る二軸延伸ポリオレフィンフィルムによると、第1の発明において、前記プロピレン系重合体層と前記ポリエチレン樹脂層がそれぞれ交互に積層され3~5層の積層体よりなるため、環境負荷のさらなる低減を図りつつ、フィルムの用途に応じて適宜の層を表層とすることができる。
【0017】
第3の発明に係る二軸延伸ポリオレフィンフィルムによると、第1又は第2の発明において、二軸延伸ポリオレフィンフィルムを構成する層のうち、一の前記プロピレン系重合体層が基材層であり、前記基材層の層厚が前記ポリエチレン樹脂層の層厚よりも厚く構成されてなるため、フィルムの生産性に優れる。
【0018】
第4の発明に係る二軸延伸ポリオレフィンフィルムによると、第1ないし第3の発明のいずれかにおいて、JIS K 7136(2000)に準拠して測定した前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムのヘーズが9%以下であり、狭角拡散透過率が15%以下であるため、透明性や透視感に優れ、高級感のある外観のフィルムとすることができる。
【0019】
第5の発明に係る二軸延伸ポリオレフィンフィルムによると、第1ないし第4の発明のいずれかにおいて、前記プロピレン系重合体層と前記ポリエチレン樹脂層とが接着層を介すことなく一体化されてなるため、接着剤を用いた加工工程が不要となり生産性に優れるとともに、溶剤を使用しないため環境負荷の低減に寄与することができる。
【0020】
第6の発明に係る二軸延伸ポリオレフィンフィルムによると、第1ないし第5の発明のいずれかにおいて、前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムが1μm~100μmの範囲であるため、包装用フィルムとして印刷や袋への加工適性に優れたフィルムとすることができる。
【0021】
第7の発明は、第1ないし第6の発明のいずれかにおいて、前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムが共押出しの二軸延伸の製膜によりなるため、フィルムの強度を高めつつ製造を容易とし、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例に係る二層構造の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの概略断面図である。
図2】本発明の一実施例に係る三層構造の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの概略断面図である。
図3】本発明の一実施例に係る四層構造の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの概略断面図である。
図4】本発明の一実施例に係る五層構造の二軸延伸ポリオレフィンフィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施例に係る二軸延伸ポリオレフィンフィルム10の概略断面図である。このフィルム10は、プロピレン単独重合体を主体とするプロピレン系重合体層11と、バイオマス由来ポリエチレン樹脂を主体とするポリエチレン樹脂層12からなる積層フィルムである。このフィルム10は、各層の原料樹脂が溶融されてTダイ等から所定の厚さで吐出され共押出しされるTダイ法等の公知の製造方法により製造される。共押出しにより製膜されることによって、各層の間に接着層を介すことなく一体化されるため、生産性に優れつつ環境負荷の低減を図ることができるとともに、透明性・透視感に優れる。なお、二軸延伸ポリオレフィンフィルム10は包装用フィルムとして印刷性や加工適性の観点からフィルム厚は1~100μmの範囲とすることが好ましい。
【0024】
プロピレン系重合体層11の主体となる樹脂は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)であり、結晶性が高く、耐熱性や耐薬品性、強度に優れる。このことから、プロピレン系重合体層11が基材層となる。二軸延伸に際し、耐熱性の高い層を基材とすることにより、生産性を向上させることができる。基材層となるプロピレン系重合体層11には、必要に応じてアンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、着色剤等の添加剤が添加される。
【0025】
ポリエチレン樹脂層12は、プロピレン系重合体層11に積層された層であり、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂単独、又はバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を主体とするポリエチレン系樹脂からなる。プロピレン系重合体層11が基材層となるため、プロピレン系重合体層11の層厚はポリエチレン樹脂層12の層厚よりも厚く構成される。ポリエチレン樹脂層12には、必要に応じてアンチブロッキング剤や帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、着色剤等の添加材が適宜添加される。
【0026】
図2図4に示されるように、プロピレン系重合体層11とポリエチレン樹脂層12とは、それぞれ交互に積層されて、3~5層ないしそれ以上の層よりなる複層フィルムとされることができる。プロピレン系重合体層11は、プロピレン単独重合体を主体とすることから、印刷性に優れる。ポリエチレン樹脂層12はヒートシール性に優れることから、用途に応じてどちらの層を表面ないし裏面とするかを適宜選択することができる。さらには、フィルムを複層化することにより、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を多く含んだフィルムとすることができるため、環境負荷の低減をより図ることができる。
【0027】
バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、植物原料を加工して得られたポリエチレン系樹脂である。具体的には、サトウキビ等の植物原料から抽出された糖液から酵母によるアルコール発酵を経てエタノールを生成し、エチレン化したのち公知の樹脂化の工程でポリエチレンを製造する。このバイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、最終製品の環境負荷の低減に寄与する。
【0028】
バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、密度が0.900~0.950g/cmとするのがよい。この範囲を超える樹脂を用いるとダイス出口でのシート成型や延伸が困難になり生産性に劣るきらいがある。
【0029】
二軸延伸ポリオレフィンフィルムの巻取り方向の引張弾性率は、1.0GPa以上とするのがよい。引張弾性率が1.0GPaよりも小さくなると、加工適正に劣るフィルムとなり、変形等が生じやすくなり、印刷や包装の生産性の低下を招く恐れがある。なお、引張弾性率は下記の実施例で述べる通り、JIS K 7127(1999)に準拠して測定される。
【0030】
また、二軸延伸ポリオレフィンフィルムのヘーズは9%以下とするのがよい。ヘーズが9%を超えるフィルムは透明性に劣り、透明フィルムとして取り扱いには適さない。ヘーズは、下記の実施例で述べる通り、JIS K 7136(2000)に準拠して測定される。また、二軸延伸ポリオレフィンフィルムの狭角拡散透過率(LSI)は15%以下とするのがよい。狭角拡散透過率(LSI)が15%を下回ると、透視感が格段に向上し、フィルムを通して見たものに歪みがほとんどないため、包装用フィルムとしての適格性が向上し、包装材料として高級感を有する。
【実施例
【0031】
[フィルムの作製]
試作例1~9及び比較例1,2のフィルムについて、後述の各材料を混練、溶融して二層共押出Tダイフィルム成型機とこれに続く二軸延伸機によりフィルムを製膜した。延伸倍率は、縦(巻き取り方向)5倍、横(幅方向)8倍とし、逐次二軸延伸により製膜した。なお、MFRはJIS K 7210(2014)に準拠し、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定されたメルトフローレートである。
【0032】
[プロピレン系重合体層の使用材料]
プロピレン系重合体層では、ポリプロピレン系樹脂として下記の樹脂PP1を使用した。なお、一般的なフィルムに用いられる帯電防止剤を適正量添加した。
・樹脂PP1:プロピレン単独重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名「FL100A」、MFR:3.0g/10min)
【0033】
[ポリエチレン樹脂層の使用材料]
ポリエチレン樹脂層では、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂として下記の樹脂PE1~PE4、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂ではない樹脂として下記の樹脂PP2を比較対象としてそれぞれ使用した。なお、一般的なフィルムに用いられるアンチブロッキング剤を適正量添加した。
・樹脂PE1:直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名「SLH218」、密度:0.916g/cm、MFR:2.3g/10min)
・樹脂PE2:高密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名「SGF4960」、密度:0.961g/cm、MFR:0.3g/10min)
・樹脂PE3:低密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名「SEB853」、密度:0.923g/cm、MFR:2.7g/10min)
・樹脂PE4:高密度ポリエチレン(ブラスケム社製、商品名「SHE150」、密度:0.948g/cm、MFR:1.0g/10min)
・樹脂PP2:エチレン-プロピレン-ブテン共重合体(日本ポリプロ株式会社製、商品名「FX4G」、MFR:5.0g/10min)
【0034】
[試作例1]
試作例1は、基材層であるプロピレン系重合体層にはプロピレン単独重合体(樹脂PP1)100重量%、ポリエチレン樹脂層には直鎖状低密度ポリエチレン(樹脂PE1)100重量%からなり、プロピレン系重合体層の厚みを19μm、ポリエチレン樹脂層の厚みを1μmとなるよう製膜されたフィルムである。
【0035】
[試作例2]
試作例2は、プロピレン系重合体層の厚みを17μm、ポリエチレン樹脂層の厚みを3μmとした以外は試作例1と同様に形成されたフィルムである。
【0036】
[試作例3]
試作例3は、プロピレン系重合体層の厚みを11μm、ポリエチレン樹脂層の厚みを9μmとした以外は試作例1と同様に形成されたフィルムである。
【0037】
[試作例4]
試作例4は、ポリエチレン樹脂層を低密度ポリエチレン(樹脂PE3)100重量%とした以外は試作例2と同様に形成されたフィルムである。
【0038】
[試作例5]
試作例5は、ポリエチレン樹脂層を高密度ポリエチレン(樹脂PE3)50重量%、高密度ポリエチレン(樹脂PE4)50重量%とした以外は試作例4と同様に形成されたフィルムである。
【0039】
[試作例6]
試作例6は、ポリエチレン樹脂層を高密度ポリエチレン(樹脂PE3)20重量%、高密度ポリエチレン(樹脂PE4)80重量%とした以外は試作例4と同様に形成されたフィルムである。
【0040】
[試作例7]
試作例7は、ポリエチレン樹脂層を高密度ポリエチレン(樹脂PE4)100重量%とした以外は試作例4と同様に形成されたフィルムである。
【0041】
[試作例8]
試作例8は、ポリエチレン樹脂層に高密度ポリエチレン(樹脂PE2)を使用した以外は試作例1と同様に形成されたフィルムである。
【0042】
[試作例9]
試作例9は、ポリエチレン樹脂層に高密度ポリエチレン(樹脂PE2)を使用した以外は試作例2と同様に形成されたフィルムである。
【0043】
[比較例1]
比較例1は、ポリエチレン樹脂層にエチレン-プロピレン-ブテン共重合体(樹脂PP2)を使用した以外は試作例1と同様に形成されたフィルムである。
【0044】
[比較例2]
比較例2は、プロピレン系重合体層を、プロピレン単独重合体(樹脂PP1)85重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(樹脂PE1)15重量%を混錬した樹脂とし、ポリエチレン樹脂層にエチレン-プロピレン-ブテン共重合体(樹脂PP2)を使用した以外は試作例1と同様に形成されたフィルムである。
【0045】
[フィルムの性能の評価]
試作例1~9及び比較例1,2のフィルムに関し、引張弾性率、ヘーズ、狭角拡散透過率及び生産性の各項目についてそれぞれ測定した。総合評価では、後述の各項目における評価のすべてで良好な結果が得られた場合に「良(○)」、いずれかで好ましくない結果が1つ以上得られた場合やバイオマス由来の樹脂層が含まれない場合に「不可(×)」とした。その結果を後述の表1及び表2に示した。
【0046】
[引張弾性率の測定]
引張弾性率(GPa)の測定は、加工適性の指標の1つであって、JIS K 7127(1999)に準拠し、引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、V1-D)を使用して測定した。試作例1~9及び比較例1,2のフィルムでは、測定結果が1.0GPa以上を良品とした。
【0047】
[ヘーズの測定]
ヘーズ(%)の測定は、透明性の指標であって、JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH-5000)を使用して測定を行った。試作例1~9及び比較例1,2のフィルムでは、測定結果が9%以下を良品とした。
【0048】
[狭角拡散透過率の測定]
狭角拡散透過率(LSI)(%)は、透視感の指標であって、LSIは全光線透過光量に対する散乱角0.4°以上1.2°以下の散乱光量の比率を示すものである。LSIは、肉眼の透視感の目安であり、数値が低いほど透過性に優れる。LSIは、視覚透明度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を使用して測定を行った。試作例1~9及び比較例1,2のフィルムでは、測定結果が15%以下を良品とした。
【0049】
[物性評価]
物性評価は、上記の引張弾性率、ヘーズ、狭角拡散透過率のすべての評価が良品のものを「〇」とし、一つでも良品でないものは「×」とした。
【0050】
[生産性評価]
生産性評価は、二軸延伸ができないものやシート状に成形できないものを不可として「×」、二軸延伸がしにくいものを可として「△」、二軸延伸を容易に行うことができたものを良として「〇」とした。
【0051】
[総合評価]
総合評価として物性評価が「〇」、生産性が「〇」のものを「良」とし、一つでも「×」があるものを「不可」とした。また、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含有しない比較例1についても、環境負荷低減の観点から「不可」とした。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
[結果と考察]
表1~3に示すように、物性及び生産性評価による総合評価が「不可」となったのは試作例8,9及び比較例2であった。試作例8及び試作例9は、密度の高いバイオマス由来ポリエチレン樹脂を使用した例である。一般に、高密度ポリエチレンを使用したフィルムは低密度ポリエチレンを使用したフィルムと比較すると引裂性に劣る。これにより、試作例8については、二軸延伸時に破れ等が生じたもののフィルム成形を行うことができたため、生産性評価は「△(可)」とし、ヘーズが基準よりも高くなり総合評価を「不可(×)」とした。試作例9についてはシート状に成形することができなかったため、生産性評価を「×(不可)」とし、物性評価はできなかった。
【0056】
比較例1はフィルムの性能面では良好な結果が得られたが、バイオマス由来の樹脂が含まれないため、環境負荷低減の観点から本発明の目的にそぐわず、総合評価を「不可」とした。比較例2は、基材層にバイオマス由来の樹脂を混錬した例である。ポリエチレンとポリプロピレンには完全な相溶性はなく、混錬の結果として層内に相分離構造が形成されてLSI基準よりも高くなる傾向があり、比較例2は透視感に劣るため総合評価を「不可」とした。
【0057】
これに対し、総合評価が「良」となったのは試作例1~7であった。これらの試作例は、プロピレン単独重合体からなるプロピレン系重合体層とバイオマス由来ポリエチレン樹脂からなるポリエチレン樹脂層とからなり、プロピレン系重合体層の層厚が厚いほど引張弾性率が優れることがわかった。
【0058】
また、ポリエチレン樹脂層の主体となるポリエチレン樹脂を0.900~0.950g/cmの範囲の密度のバイオマス由来ポリエチレン樹脂とすることによって、環境負荷低減のためのバイオマス由来の樹脂を用いたフィルムであっても、ヘーズや狭角拡散透過率を良好とすることができ、透明性や透視感に優れたフィルムが得られることが分かった。
【0059】
以上説明したとおり、本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、プロピレン単独重合体を主体とする樹脂組成物からなるプロピレン系重合体層と、バイオマス由来ポリエチレン樹脂を主体とするポリエチレン樹脂層とからなる。特にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を主体とする層を有するため、環境負荷の低減を図りつつ、優れた透明性や透視感、コシ感を備えるフィルムとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、バイオマス由来ポリエチレン樹脂を主体とする層を有することにより、優れた透明性や透視感を備えつつ、環境負荷の低減を図ることができる。従って、新たな包装用フィルム等への活用が期待できるとともに、バイオマス資源の活用に有利となる。
【符号の説明】
【0061】
10 二軸延伸ポリオレフィンフィルム
11 プロピレン系重合体層
12 ポリエチレン樹脂層
図1
図2
図3
図4