(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチドクラスターのクローナリティを改善するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20250408BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20250408BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20250408BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20250408BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20250408BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20250408BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20250408BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20250408BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20250408BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6874 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6876 Z
C40B40/06
C12Q1/6806 Z
C12N15/09 200
(21)【出願番号】P 2020572449
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 US2019067233
(87)【国際公開番号】W WO2020132103
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エス フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ミンハオ グオ
【審査官】齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533710(JP,A)
【文献】特表2015-519084(JP,A)
【文献】国際公開第2015/134552(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0233802(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0128624(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0177141(US,A1)
【文献】LIN WANG; ET AL,3’ BRANCH LIGATION: A NOVEL METHOD TO LIGATE NON-COMPLEMENTARY DNA TO RECESSED OR INTERNAL 3’OH ENDS IN DNA OR RNA,BIORXIV,2018年06月29日,PAGE(S):1-21,https://www.biorxiv.org/content/10.1101/357863v1.full.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を増幅するための方法であって、
(a)増幅試薬を提供することであって、
(i)増幅部位のアレイであって、
該増幅部位は捕捉核酸の2つの集団を含み、各集団は捕捉配列を含み、
第1の集団は、第1の捕捉配列を含み、第2の集団は、第2の捕捉配列を含む、増幅部位のアレイと、
(ii)複数の異なる修
飾標的核酸を含む溶液であって、
前記異なる修飾標的核酸は二本鎖核酸であり、
前記異なる修
飾標的核酸は3’末端および5’末端をそれぞれ含み、前記異なる修
飾標的核酸は、前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも
、前記第1の捕捉配列に対する親和性が低い
、第1のユニバーサル捕捉結合配列を前記3’末端に含む、溶液と、
を含む、増幅試薬を提供することと、
(b)前記増幅試薬を反応させて、各々が前記溶液からの個々の標的核酸からのアンプリコンのクローン集団を含む複数の増幅部位を生成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
(b)の工程が、
(i)各増幅部位に輸送する個々の標的核酸から第1のアンプリコンを産生することと、
(ii)各増幅部位に輸送される個々の標的核酸から、または、前記第1のアンプリコンから、次のアンプリコンを産生することと、
をさらに含み、
前記次のアンプリコンが増幅部位で産生される平均速度は、前記第1のアンプリコンが増幅部位で産生される平均速度よりも遅い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核酸配列を決定するための方法であって、
アレイ上の複数のアンプリコン部位の各々でアンプリコンの明らかなクローン集団を検出する配列決定手順を実施することを含み、
前記アレイが、
(a)増幅試薬を提供することであって、
(i)複数の増幅部位であって、
該増幅部位は捕捉核酸の2つの集団を含み、各集団は捕捉配列を含み、
第1の集団は、第1の捕捉配列を含み、第2の集団は、第2の捕捉配列を含む、複数の増幅部位と、
(ii)複数の異なる修飾標的核酸を含む溶液であって、
前記異なる修飾標的核酸は3’末端および5’末端をそれぞれ含み、前記異なる修飾標的核酸は、前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも
、前記第1の捕捉配列に対する親和性が低い
、第1のユニバーサル捕捉結合配列を前記3’末端に含む、溶液と、
を含む、増幅試薬を提供することと、
(b)前記増幅試薬を反応させることと、
を含むプロセスによって作製される、方法。
【請求項4】
前記溶液中の前記異なる修飾標的核酸の数が、前記アレイ中の増幅部位の数を超え、
前記異なる修飾標的核酸は、前記複数の増幅部位への流体アクセスを有し、
前記増幅部位の各々は、複数の異なる修飾標的核酸のいくつかの核酸に対するキャパシティを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応は、
(i)前記異なる修飾標的核酸を前記増幅部位に輸送することと、
(ii)前記増幅部位にある前記
異なる修飾標的核酸を増幅することであって、前記
異なる修飾標的核酸の増幅部位での増幅速度は、
前記異なる修飾標的核酸が増幅部位に輸送される速度よりも遅い、増幅することと、
を同時に行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液中の前記複数の異なる修飾標的核酸が、
(i)前記溶液から前記増幅部位への前記異なる修飾標的核酸を輸送することと、
(ii)ある増幅速度で前記増幅部位にある前記
異なる修飾標的核酸を増幅して、各々がアンプリコンの明らかなクローン集団を含むアンプリコン部位のアレイを生成することと、
を同時に生じる濃度である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列と100%未満の相補性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
a)前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列に非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含み、または、
b)前記異なる修飾標的核酸が、第1のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、(i)前記第1の捕捉配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチド、または(ii)前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する前記異種集団のメンバーが、前記異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記異種集団が、(iii)前記第1の捕捉配列の長さより短い長さを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列の長さより短い長さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列の長さよりも1から12ヌクレオチド短い長さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記異なる修飾標的核酸が、第1のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、前記第1の捕捉配列の長さよりも短い1~12ヌクレオチドを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の捕捉配列の長さより短い長さを有する前記異種集団の個々のメンバーが、前記第1の捕捉配列の配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチド、または前記第1の捕捉配列の配列と100%の相補性を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記異なる修飾標的核酸が、前記第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列よりも、前記第2の捕捉配列に対してより少ない親和性を有する相補体を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列を前記5’末端に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のユニバーサル捕捉結合配列の前記相補体が、前記第2の捕捉配列と100%未満の相補性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
a)前記第2のユニバーサル捕捉結合配列の前記相補体が、前記第2の捕捉配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含む、または
b)前記異なる修飾標的核酸が、第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、該異種集団が、(i)前記第2の捕捉配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドまたは(ii)前記第2の捕捉配列と100%の相補性を有する相補体を含む個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の捕捉配列と100%の相補性を有する相補体を含む前記異種集団のメンバーが、前記異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記異種集団が、(iii)前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
異なる修飾標的核酸は、5’末端に第2のユニバーサル捕捉結合配列を含み、
前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも短い長さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1から12ヌクレオチド短い長さを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記異なる修飾標的核酸が、第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記増幅部位のアレイが、表面上にアレイの特徴部を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記特徴部の各々についての面積が、前記増幅部位に輸送される
前記異なる修飾標的核酸の排除体積の直径より大きい、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記特徴部が連続しておらず、捕捉剤を欠く表面の格子間領域によって分離されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
増幅部位のアレイと、増幅部位に結合した少なくとも1つの標的核酸とを含む組成物であって、
前記増幅部位は捕捉核酸の2つの集団を含み、各集団は捕捉配列を含み、
第1の集団は第1の捕捉配列を含み、第2の集団は第2の捕捉配列を含み、
前記標的核酸は3’末端および5’末端をそれぞれ含み、前記標的核酸は、前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも前記第1の捕捉配列に対する親和性が低い第1のユニバーサル捕捉結合配列を3’末端に含み、
前記標的核酸
の第1のユニバーサル捕捉結合配列は、前記第1の捕捉配列にハイブリダイズされる、組成物。
【請求項27】
a)前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列と100%未満の相補性を有する、または
b)前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列に非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含む、または
c)前記アレイの増幅部位の少なくとも30%が、少なくとも1つの標的核酸によって占められる、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、異種集団を含み、該異種集団が、(i)前記第1の捕捉配列に対して非相補的である、1、2、または3つのヌクレオチドまたは(ii)前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する、個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含み、前記異種集団のメンバーが、異なる増幅部位に結合される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する前記異種集団のメンバーが、前記異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
異なる標的核酸は5’末端に第2のユニバーサル捕捉結合配列を含み、
前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも短い長さを有する、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸が、第1のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、前記第1の捕捉配列の長さ未満の1~12ヌクレオチドを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸は第1のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、
前記異種集団が、前記第1の捕捉配列の長さより短い長さを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列をさらに含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項34】
a)短い長さを含む個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、または
b)短い長さを有する前記異種集団の個々のメンバーが、前記第1の捕捉配列の配列に対して非相補的である、1、2、もしくは3つのヌクレオチドを含む、または前記第1の捕捉配列の配列と100%の相補性を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸が、前記第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する相補体を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列よりも、前記第2の捕捉配列に対してより少ない親和性を有する相補性を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列を前記5’末端に含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項36】
前記第2のユニバーサル捕捉結合配列の相補体が、前記第2の捕捉配列と100%未満の相補性を有する、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記第2のユニバーサル捕捉結合配列の相補体が、前記第2の捕捉配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸が、第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、(i)前記第2の捕捉配列に対して非相補的である1、2、もしくは3つのヌクレオチドを有する相補体または(ii)前記第2の捕捉配列と100%の相補性を有する相補体を含む、個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
前記第2の捕捉配列と100%の相補性を有する相補体を含む前記異種集団のメンバーが、前記異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する、請求項
38に記載の組成物。
【請求項40】
前記標的核酸が、前記5’末端に、前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項41】
a)前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、または
b)前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸が、第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、前記第2の捕捉配列の長さ未満の1~12ヌクレオチドを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記異種集団が、(iii)前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列をさらに含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する前記異種集団の個々のメンバーが、前記第2の捕捉配列の配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドまたは前記第2の捕捉配列の配列と100%の相補性を有する相補体を含む、請求項43に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2018年12月19日に出願された米国仮出願第62/782,279号の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、とりわけ、アンプリコンの配列決定のクラスターを生成するための標的核酸の排除増幅(exclusion amplification)の使用に関し、より詳細には、モノクローナルであるクラスターの数の増加に関する。
【背景技術】
【0003】
次世代シークエンシング(NGS)技術の向上は、シークエンシング速度とデータ出力を大幅に増加させ、その結果、現在のシークエンシングプラットフォームの大量のサンプルスループットをもたらした。約10年前、Illumina Genome Analyzerは1回のランにつき最大1ギガバイトのシークエンスデータを生成することができた。現在、Illumina NovaSeq(商標)一連のシステムでは、2日間で最大2テラバイトのデータを生成でき、これは、2000倍を超えるキャパシティの増加を表している。
【0004】
この大キャパシティ化を実現する1つの態様は、クラスターの生成である。クラスター生成は、ライブラリーのメンバーが各端部に存在するユニバーサル配列を含むライブラリーの生成を含むことができる。ライブラリーはフローセルにロードされ、ライブラリーの個々のメンバーは、ユニバーサル配列に相補的な表面結合オリゴのローン上に捕捉される。次いで、それぞれのメンバーを、ブリッジ増幅により、別個のクローンクラスターに増幅する。クラスターの生成が完了すると、個々のクラスターにはライブラリーの単一メンバーの約1000複製(コピー)を含めることができ、ライブラリーは配列決定の準備が整う。
【0005】
ブリッジ増幅の一つの方法は、動力学排除増幅としても知られる排除増幅(ExAmp)である。この方法は、パターン化されたアレイおよび等温条件を用いてライブラリーを増幅するリコンビナーゼ促進増幅反応であり、その結果、増幅がより速くなり、アレイのウェル中にクローナルクラスターを生成するための試薬の使用がより少なくなる。ExAmp方法はクローナルクラスターの製造に非常に有用であることが証明されているが、より多くのウェルを占める状態は、より多くのポリクローナルウェルの製造を引き起こす。
【発明の概要】
【0006】
次世代配列決定(NGS)技術は、単一の標的核酸から産生されたアンプリコンのモノクローナル集団の高度に平行な配列決定に依存する。アンプリコンの単クローナル集団を配列決定すると、はるかに高い信号対雑音比が得られ、強さが増し、フィルタを通過するクラスターの割合が増加し、そのすべてがデータ出力およびデータの質の増加に寄与する。
【0007】
排除増幅方法は、パターン化されたフローセル上のウェル当たりの単一標的核酸の増幅、およびウェル中のアンプリコンのモノクローナル集団の産生を可能にする。典型的には、ウェル内の最初に捕捉された標的核酸の増幅速度は、ウェルでの標的核酸の輸送および捕捉のはるかに遅い速度と比較して、より急速である。ウェル内に捕捉された第1の標的核酸は、迅速に増幅され、ウェル全体を充填することができ、同じウェル内のさらなる標的核酸の捕捉を妨げる。あるいは、第2の標的核酸が第1のウェルの後に同じウェルに付着する場合、第1の標的核酸の迅速な増幅は、フィルタを通過する信号を生じるのに十分な量のウェルをしばしば満たす。排除増幅の使用はまた、モノクローナルウェルの超ポアソン分布、すなわち、アレイ中のモノクローナルであるウェルの割合が、ポアソン分布によって予測される割合を超えることができる。
【0008】
有用なクラスターの超ポアソン分布の増加は、より多くのモノクローナルウェルがより多くのデータ出力をもたらすので非常に望ましい;しかしながら、ウェルへの標的核酸のシーディング(播種/シード)は、一般に、より多くの占有されたウェルに対するトレードオフがより多くのポリクローナルウェルである空間ポアソン分布に従う。より高い超ポアソン分布を得る1つの方法は、シーディングが迅速に起こり、その後、シーディングされた標的核酸の間に遅延が生じることである。この遅延は、生化学反応動力学を通して生じると考えられているため、「動力学遅延」と呼ばれ、一方のシーディングされた標的核酸を他方のシーディングされた標的核酸よりも早く開始させる。
【0009】
排除増幅は、配列一致を見つけたとき、二本鎖DNA(例えば、標的核酸)へのプライマー(例えば、ウェルに結合したプライマー)の侵入を容易にするために、リコンビナーゼ(組換え酵素)を使用することによって働く。増幅効率を最大にするために、侵入プライマーとアダプタ配列との間の完全な同一性を使用することは、排除増幅のための標準的な実施である。本発明者らは、標的核酸アダプタとウェルに付着したプライマーとの間の相同性の程度を調整することによって、シーディングされた標的核酸中に動力学遅延をコードする方法を同定した。侵入プライマーとアダプタ配列との間の平均相同性を低下させることにより、増幅の平均速度が低下したにもかかわらず、ウェルのいわゆるモノクローナル性の速度において驚くべき改善があった。一般に、より多くのミスマッチが導入されるにつれて、増幅効率は低下した。予想外に、増幅効率の高いものと低いものの両方を有するアダプタ配列の混合物が使用された場合、混合物は個々の成分の性能の平均としては機能しなかった-高効率と低効率の中間である-が、強度とフィルタを通過するクラスターの両方において、すべてのシングルタイプアダプタ配列を上回った。
定義
【0010】
本明細書中で使用される用語は、特に明記しない限り、関連技術におけるそれらの通常の意味をとるものと理解されるであろう。本明細書で使用されるいくつかの用語およびその意味は、以下に記載される。
【0011】
本明細書中で使用される場合、用語「アンプリコン」は、核酸に関して使用される場合、核酸を複製(コピー)する産物を意味し、ここで、産物は、核酸のヌクレオチド配列の少なくとも一部と同一または相補的であるヌクレオチド配列を有する。アンプリコンは、例えば、ポリメラーゼ伸長、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、ライゲーション伸長、またはライゲーション連鎖反応を含む鋳型として、核酸、例えば標的核酸またはそのアンプリコンを使用する種々の増幅方法のいずれかによって製造することができる。アンプリコンは、特定のヌクレオチド配列の単一複製(例えば、ポリメラーゼ伸長産物)またはヌクレオチド配列の複数複製(例えば、RCAのコンカテマー産物)を有する核酸分子であり得る。標的核酸の第1のアンプリコンは、典型的には相補的な複製である。その後のアンプリコンは、最初のアンプリコンの生成後、標的核酸から、または最初のアンプリコンから作成される複製である。後続のアンプリコンは、標的核酸に対して実質的に相補的であるか、または標的核酸に対して実質的に同一である配列を有することができる。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「増幅部位」は、1つ以上のアンプリコンが生成され得るアレイ内またはアレイ上の部位を指す。増幅部位は、その部位で生成される少なくとも1つのアンプリコンを含有、保持、または結合するようにさらに構成することができる。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「アレイ」は、相対的な位置に従って互いに区別することができる部位の集団を指す。アレイの異なる部位にある異なる分子は、アレイ内の部位の位置に応じて互いに区別することができる。アレイの個々の部位は、特定のタイプの1つ以上の分子を含むことができる。例えば、部位は、特定の配列を有する単一の標的核酸分子を含むことができ、または部位は、同じ配列(および/またはその相補的配列)を有するいくつかの核酸分子を含むことができる。アレイの部位は、同じ基板上に位置する異なる特徴であってもよい。例示的な特徴は、限定されるものではないが、基材内のウェル、基材内または基材上のビーズ(または他の粒子)、基材とは凸部、基材上のリッジ、または基材内のチャネルを含む。アレイの部位は、それぞれが異なった分子をベアリングする別々の基材とすることができる。別々の基材に結合した異なる分子は、基材が結合する表面上の基材の位置に従って、または液体もしくはゲル中の基材の位置に従って同定することができる。別々の基板が表面上に配置される例示的アレイは、ウェル内にビーズを有するものを含むが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「キャパシティ」は、部位および核酸材料に関して使用される場合、部位を占有することができる核酸材料、例えば標的核酸由来のアンプリコンの最大量を意味する。例えば、この用語は、特定条件においてその部位を占有することができる核酸分子の総数を指すことができる。例えば、核酸材料の総質量、または特定条件においてその部位を占有することができる特定のヌクレオチド配列の総複製数を含む、他の尺度も使用することができる。典型的には、標的核酸に対する部位のキャパシティは、標的核酸のアンプリコンに対する部位のキャパシティと実質的に同等であろう。
【0015】
本明細書で使用される場合、「捕捉剤」という用語は、標的分子(例えば、標的核酸)に付着、保持、または結合することができる材料、化学物質、分子、またはそれらの部分を指す。例示的な捕捉剤は、修飾標的核酸の少なくとも一部と相補的な捕捉核酸(例えば、ユニバーサル捕捉結合配列)、修飾標的核酸(またはそれに結合した連結部分)に結合することができるレセプター-リガンド結合対のメンバー(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、レクチン、炭水化物、核酸結合タンパク質、エピトープ、抗体など)、または修飾標的核酸(またはそれに結合した連結部分)と共有結合を形成することができる化学試薬を含むが、これらに限定されない。1つの実施形態において、捕捉剤は核酸である。核酸捕捉剤は、増幅プライマーとして使用することもできる。
【0016】
「P5」および「P7」という用語は、核酸捕捉剤を指す場合に使用することができ、「P5’」(P5プライム)および「P7’」(P7プライム)という用語は、それぞれ、P5およびP7の相補体を指す。任意の適切な核酸捕捉剤が、本明細書に提示される方法において使用され得、P5およびP7の使用は、例示的な実施形態のみであることが理解される。フローセル上のP5およびP7のような核酸捕捉剤の使用は、国際公開第2007/010251号、国際公開第2006/064199号、国際公開第2005/065814号、国際公開第2015/106941号、国際公開第1998/044151号、および国際公開第2000/018957号の開示により例示されるように、当該技術分野において公知である。当業者は、核酸捕捉剤が増幅プライマーとしても機能し得ることを認識するであろう。例えば、任意の適切な核酸捕捉剤は、固定化されていても溶液中であっても、前方増幅プライマーとして作用することができ、配列(例えば、ユニバーサル捕捉結合配列)へのハイブリダイゼーションおよび配列の増幅のために本明細書に提示される方法において有用であり得る。同様に、任意の適切な核酸捕捉剤は、固定化されていても溶液中であっても、逆増幅プライマーとして作用することができ、配列(例えば、ユニバーサル捕捉結合配列)へのハイブリダイゼーションおよび配列の増幅のために本明細書に提示される方法において有用であり得る。利用可能な一般的知識および本開示の教示を考慮すると、当業者は、本明細書に提示される標的核酸の捕捉および増幅に適した配列をどのように設計および使用するかを理解するであろう。
【0017】
本明細書中で使用されるように、用語「ユニバーサル配列」は、2つ以上の標的核酸に共通する配列の領域を意味し、ここで、分子は、互いに異なる配列の領域も有する。分子のコレクションの異なるメンバーに存在するユニバーサル配列は、ユニバーサル配列の一部、例えばユニバーサル捕捉結合配列に相補的な捕捉核酸の集団を使用して、複数の異なる核酸の捕捉を可能にし得る。ユニバーサル捕捉結合配列の非限定的な例としては、P5およびP7プライマーと同一または相補的な配列が挙げられる。本明細書に詳細に記載されるユニバーサル捕捉結合配列の他の非限定的な例には、P5およびP7プライマーに対するアイデンティティの低下(例えば、1つ以上のミスマッチ)または相補性の低下、および/またはP5およびP7プライマー未満の長さを有する配列が含まれる。同様に、分子のコレクションの異なるメンバーに存在するユニバーサル配列は、ユニバーサル配列の一部、例えばユニバーサルプライマー結合部位に相補的なユニバーサルプライマーの集団を用いて、複数の異なる核酸の複製または増幅を可能にし得る。標的核酸分子は、本明細書に記載されるように、ユニバーサルアダプタ(本明細書ではアダプタとも称される)、例えば、異なる標的配列の一方または両端に結合するように修飾され得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「アダプタ」およびその派生語、例えば、ユニバーサルアダプタは、一般に、標的核酸に連結され得る任意の直鎖オリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、アダプタは、試料中に存在する任意の標的配列の3’末端または5’末端に対して実質的に非相補的である。いくつかの実施形態において、好適なアダプタ長は、約10~100ヌクレオチド、約12~60ヌクレオチドおよび約15~50ヌクレオチドの範囲である。一般に、アダプタは、ヌクレオチドおよび/または核酸の任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、アダプタは、1つまたは複数の位置に1つまたは複数の切断可能な基を含むことができる。別の態様では、アダプタは、プライマー、例えば捕捉核酸の少なくとも一部と実質的に同一であるか、または実質的に相補的である配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、アダプタは、下流側の誤り訂正、識別、またはシークエンシングを支援するために、インデックスまたはタグとも呼ばれるバーコードを含むことができる。「アダプタ(adaptor)」と「アダプタ(adapter)」という用語は、同じ意味で使用される。
【0019】
本明細書に定義されるように、「試料」およびその派生語は、その最も広い意味で使用され、標的核酸を含むことが疑われる任意の試験片、培養物などを含む。いくつかの実施形態において、試料は、DNA、RNA、PNA、LNA、核酸のキメラ型またはハイブリッド型を含む。試料は、1つ以上の核酸を含有する任意の生物学的、臨床的、外科的、農業的、大気または水生ベースの試料を含むことができる。この用語はまた、ゲノムDNA、新鮮凍結またはホルマリン固定パラフィン包埋核酸試料のような任意の単離核酸試料を含む。また、試料は、単一個体、遺伝的に関連したメンバーからの核酸試料の集まり、遺伝的に関連しないメンバーからの核酸試料、腫瘍試料および正常組織試料のような単一個体からの核酸試料(適合)、または母体被検者から得られた母体および胎児DNAのような2つの異なる形態の遺伝物質を含有する単一供給源からの試料、または植物または動物DNAを含有する試料中の混入(コンタミネーション)細菌DNAの存在から得ることができると想定される。いくつかの実施形態において、核酸材料の供給源は、例えば、新生児スクリーニングに典型的に使用されるような、新生児から得られる核酸を含むことができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「クローン集団」という用語は、特定のヌクレオチド配列に関して均質である核酸の集団を指す。均質な配列は、典型的には少なくとも10ヌクレオチド長であるが、例えば、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、少なくとも500、または少なくとも1000ヌクレオチド長を含めて、さらに長くすることができる。クローン集団は、単一の標的核酸から誘導され得る。典型的には、クローン集団中のすべての核酸は、同じヌクレオチド配列を有するであろう。クローン集団において、クローン性から逸脱することなく、少数の突然変異(例えば、増幅アーチファクトによる)が生じ得ることは理解されるであろう。また、少数の異なる標的核酸(例えば、限定された程度まで増幅または増幅されなかった標的核酸による)が、クローン性から逸脱することなく、クローン性集団において生じ得ることも理解されるであろう。
【0021】
本明細書で使用されるように、用語「異なる」は、核酸に言及して使用される場合、核酸が互いに同一ではないヌクレオチド配列を有することを意味する。2つ以上の核酸は、その全長に沿って異なるヌクレオチド配列を有することができる。あるいは、2つ以上の核酸は、それらの長さのかなりの部分に沿って異なるヌクレオチド配列を有することができる。例えば、2つ以上の核酸は、互いに異なる一方で、互いに同じユニバーサル配列領域も有する標的ヌクレオチド配列部分を有することができる。
【0022】
本明細書で使用されるように、用語「流体アクセス」は、流体中の分子および流体と接触する部位に関して使用される場合、その部位に接触または侵入するために、流体中または流体中を移動する分子の能力を指す。この用語はまた、分子が溶液から分離するか、またはその部位から出て、溶液に入る能力を指すことができる。流体アクセスは、分子がその部位に入ること、その部位に接触すること、その部位から離れること、および/またはその部位から出ることを妨げる障壁がない場合に起こり得る。しかしながら、流体アクセスは、アクセスが絶対的に防止されない限り、拡散が遅延、減少、または変更されても存在すると理解される。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「二本鎖」は、核酸分子に関して使用される場合、核酸分子中のヌクレオチドの実質的に全てが、相補的ヌクレオチドに水素結合されることを意味する。部分的二本鎖核酸は、相補的ヌクレオチドに水素結合したそのヌクレオチドの少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%を有することができる。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「各々」は、アイテムの回収に言及して使用される場合、回収内の個々のアイテムを識別することを意図しているが、コンテキストが他のアイテムを明確に指示しない限り、回収内のすべてのアイテムを必ずしも指すわけではない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「排除体積」という用語は、特定の分子が、他のかかる分子の除外に対して、占有する空間の体積を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「格子間領域(間質領域)」は、基板または表面の他の領域を分離する表面上の領域を指す。例えば、格子間領域は、アレイのある特徴をアレイの別の特徴から分離することができる。互いに分離された2つの領域は、互いに接触しない離散的であり得る。別の例では、格子間領域は、特徴の第1の部分を特徴の第2の部分から分離することができる。格子間領域によって提供される分離は、部分的または完全な分離であり得る。格子間領域は、典型的には、表面上の特徴の表面材料とは異なる表面材料を有する。例えば、アレイの特徴は、格子間領域に存在する量または濃度を超える量または濃度の捕捉剤を有することができる。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、格子間領域に存在していなくてもよい。
【0027】
本明細書において使用されるように、用語「ポリメラーゼ」は、当技術分野におけるその使用と一致することを意図しており、例えば、鋳型鎖として核酸を使用して核酸分子の相補的複製を生成する酵素を含む。典型的には、DNAポリメラーゼは鋳型鎖に結合し、次いで鋳型鎖を下方に移動し、核酸の伸長鎖の3’末端の遊離ヒドロキシル基にヌクレオチドを連続的に付加する。DNAポリメラーゼは典型的にはDNA鋳型から相補的なDNA分子を合成し、RNAポリメラーゼは典型的にはDNA鋳型からRNA分子を合成する(転写)。ポリメラーゼは、プライマーとよばれる短いRNAやDNA鎖を使って鎖の成長を始めることができる。ポリメラーゼの中には、鎖に塩基を付加する部位の上流側で鎖を置換するものもある。このようなポリメラーゼは鎖置換であるといわれ、ポリメラーゼによって読み取られる鋳型鎖から相補鎖を除去する活性を有する。鎖置換活性を有する例示的なポリメラーゼとしては、限定されるものではないが、Bsu(枯草菌)、Bst(Bacillus stearothermophilus)ポリメラーゼ、exo-Klenowポリメラーゼまたは配列決定グレードT7エキソポリメラーゼの大きな断片が挙げられる。いくつかのポリメラーゼは、それらの前の鎖を分解し、それを後の成長鎖(5’エキソヌクレアーゼ活性)に効果的に置き換える。ポリメラーゼの中には、その背後にある鎖を分解する活性(3’エキソヌクレアーゼ活性)をもつものがある。いくつかの有用なポリメラーゼは、3’および/または5’エキソヌクレアーゼ活性を減少または排除するために、突然変異によって、または別の方法で修飾されている。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸」は、当技術分野におけるその使用と一致することが意図され、天然に存在する核酸およびその機能的アナログを含む。特に有用な機能的アナログは、配列比様式で核酸にハイブリダイズすることができるか、または特定のヌクレオチド配列の複製のための鋳型として使用することができる。天然に存在する核酸は一般にホスホジエステル結合を含む主鎖を有する。アナログ構造は、当技術分野で公知の様々であるもののいずれかを含む代替主鎖結合を有することができる。天然に存在する核酸は、一般に、デオキシリボース糖(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)に見られる)またはリボース糖(例えば、リボ核酸(RNA)に見られる)を有する。核酸は、当技術分野で公知のこれらの糖部分の様々な類似体のいずれかを含有することができる。核酸は、天然または非天然の塩基を含むことができる。この点に関して、天然のデオキシリボ核酸は、アデニン、チミン、シトシンまたはグアニンから選択される1つ以上の塩基を有することができ、リボ核酸は、ウラシル、アデニン、シトシンまたはグアニンから選択される1つ以上の塩基を有することができる。核酸に含まれ得る有用な非天然の塩基は、当技術分野において公知である。用語「標的」は、核酸に言及して使用される場合、本明細書に記載される方法または組成物の文脈における核酸の意味的識別子として意図され、他の点で明示的に示されるものを超えて核酸の構造または機能を必ずしも限定しない。各端部にユニバーサル配列を有する標的核酸、例えば、各端部におけるユニバーサルアダプタは、修飾標的核酸と呼ばれ得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「リコンビナーゼ負荷タンパク質」および「リコンビナーゼ」という用語は、互換的に使用され、当該技術分野におけるその使用と一致することが意図され、例えば、RecAタンパク質、T4 UvsXタンパク質、RB69バクテリオファージUvsXタンパク質、任意の門(系統)由来の任意の相同タンパク質もしくはタンパク質複合体、またはそれらの機能的変異体が挙げられる。真核生物RecA相同体は、一般に、同定されるこのグループの第一メンバーの後にRad51と命名される。RecAの代わりに他の非相同リコンビナーゼ、例えばRecTまたはRecOを使用することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「SSBタンパク質」または「SSB」とも呼ばれる「一本鎖結合タンパク質」という用語は、例えば、早期アニーリングを防止するため、ヌクレアーゼ消化から一本鎖核酸を保護するため、核酸から二次構造を除去するため、または核酸の複製を促進するために、一本鎖核酸に結合する機能を有する任意のタンパク質を指すものとする。この用語は、国際生化学分子生物学連合(NC-IUBMB)の命名委員会によって単一鎖結合タンパク質として正式に同定されたタンパク質を含むが、これらに限定されない。例示的な一本鎖結合タンパク質は、限定されるものではないが、大腸菌SSB、T4 gp32、T7遺伝子2.5 SSB、ファージファイ29 SSB、RB69バクテリオファージgp32タンパク質、任意の門由来の任意の相同タンパク質またはタンパク質複合体、およびそれらの機能的変異体を含む。
【0031】
ここでいう「アクセサリータンパク質」とは、リコンビナーゼと一本鎖結合タンパク質と相互作用してssDNA上のUvsXフィラメントの核生成を助ける機能を有するタンパク質のことをいい、「アクセサリータンパク質」、「組換えアクセサリータンパク質」および「リコンビナーゼヘルパータンパク質」という用語は互換的に用いられる。例示的なアクセサリータンパク質は、限定されるものではないが、T4 UvsY、RB69バクテリオファージUvsYタンパク質、大腸菌RecO、大腸菌RecR、任意の門由来の任意の相同タンパク質またはタンパク質複合体、およびそれらの機能的変異体を含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、「輸送」という用語は、流体を通る分子の移動を指す。この用語は、分子の濃度勾配に沿った移動(例えば、受動拡散)のような受動輸送を含むことができる。この用語はまた、分子が濃度勾配に沿って、またはその濃度勾配に逆らって移動することができる能動輸送を含むことができる。したがって、輸送は、1つ以上の分子を所望の方向に、または増幅部位のような所望の位置に移動させるためにエネルギーを適用することを含むことができる。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「速度」は、輸送、増幅、捕捉、または他の化学的処理に関して使用される場合、化学動力学および生化学的動力学におけるその意味と一致することが意図される。2つのプロセスの速度は、最大速度(例えば、飽和時)、定常状態前の速度(例えば、平衡前)、速度定数、または当技術分野で公知の他の測定値に関して比較することができる。特定の実施形態では、プロセスの完了のための合計時間に関して、特定処理の速度を決定することができる。例えば、増幅が完了するのに要する時間に関して、増幅速度を決定することができる。しかしながら、特定処理に対する速度は、プロセスの完了のための合計時間に関して決定される必要はない。
【0034】
「および/または」という用語は、列挙された元素の1つまたは全て、または列挙された元素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0035】
「好ましい」および「好ましくは」という用語は、特定の状況下で、特定の利益を与え得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じまたは他の状況下では、他の実施形態も好ましい場合がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものでもない。
【0036】
用語「備える」およびその変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味を有するものではない。
【0037】
「含む(include)」、「含む(includes)」、または「含む」などの言語で実施形態が本明細書に記載されている場合、「からなる」および/または「から本質的になる」という用語で記載されている他の類似の実施形態も提供されることが理解される。
【0038】
特に指定のない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「前記(the)」、および「少なくとも1つの」は、互換的に使用され、1つまたは複数を意味する。
【0039】
2つの核酸配列のハイブリダイゼーションなど、事象が起こるのに「適切」である条件、または「適切」な条件は、そのような事象が起こるのを妨げない条件である。したがって、これらの条件は、イベントを許可、強化、促進、および/または助長する。
【0040】
本明細書で使用される「提供する」とは、組成物、物品、または核酸の文脈において、組成物、物品、または核酸を作製すること、組成物、物品、または核酸を購入すること、または他の方法で化合物、組成物、物品、または核酸を得ることを意味する。
【0041】
また、本明細書では、終点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0042】
本明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「一部の実施形態」等への言及は、当該実施形態に関連して説明される特定の特性、構成、または特性が、当該開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所におけるそのような語句の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、特定の特徴、構成、組成物、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0043】
別個のステップを含む本明細書に開示される任意の方法について、ステップは、任意の実行可能な順序で実行されてもよい。また、必要に応じて、2つ以上の工程の任意の組み合わせを同時に行ってもよい。
【0044】
上述の本発明の要約の意図は、本発明に開示される実施態様の1つ1つや、すべての実施状態を記載しようとするものではない。以下の記述は、実施形態をより具体的に例示しようとするものである。アプリケーション全体のいくつかの場所では、例のリストを通してガイダンスが提供されており、これらの例は様々な組み合わせで使用することができる。各例示において、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0045】
本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むことにより最も良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、アレイのウェルに取り付けられた例示的な例、または第1および第2の捕捉配列の概略図(
図1A)、および各端部に結合されたユニバーサルアダプタを有する標的核酸の例示的な例の概略図(
図1B)である。
【
図2】
図2は、アレイのウェルに付着した第1の捕捉核酸および標的核酸のハイブリダイズした一本鎖の例示的な例の概略図である。
【
図3】
図3Aは、個々およびアダプタ群の密度通過フィルタを示す。k/mm2、千/平方ミリメートル。レーンは、実施例の表2に示すフローセルのレーンを指す。
図3Bは、個々の突然変異体アダプタに関連する最終読み取りの比率を示す。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、鎖(鎖)浸潤および重複の例示的な例の概略図を示す(「RPA」は、組換えポリメラーゼ増幅を指す)。
図4Aにおいて、リコンビナーゼは、相同配列(すなわち、一致するP7末端)を含有する二本鎖鋳型への遊離P7プライマーの侵入を促進する。完全な相同性は必要ない(ここではP7に導入された2つの意図的なミスマッチによって示されている)が、相同性の低下したアダプタ(ここでは変異鎖についてより小さな矢印で示されている)によって、侵入と増幅の速度は低下するであろう。
図4Bでは、いずれかの端部からのリコンビナーゼを介した侵入は、未変異のローン(lawn)プライマーを用いて起こり、娘鎖からの突然変異を効果的に修正し、それによって完全なアダプタに形質転換する。しかしながら、元の鎖とローン鎖の相同性は低下しているので、最初の複製が生じるまでの時間遅延は変異の数と程度に比例する。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、増幅速度に対する短いおよび突然変異アダプタライブラリーの効果を示す。
図5Aでは、1つの成功した複製が、各テンプレートを完全なものに変換する。しかしながら、その転移の時間定数は、克服すべき非相同性の程度に依存する(より大きな速度はより太い矢印で示される)。
図5Bでは、短いおよび突然変異アダプタライブラリーにおけるより遅い増幅速度は、リアルタイム増幅曲線における右方向シフトによって示される。
【
図6】
図6は、個々のパッド上のクローン優性のための異なるテンプレート間の競合を示す。シーディングされたテンプレートは、それらの増幅バイアス(すなわち、動力学遅延);1=最も速い、6=最遅で示される。テンプレートの等モル比は、必要ではなく、望ましくさえもない。より高速なテンプレートの数が多い方が優先される。ただし、最も遅いテンプレート(6)であっても、パッド上に競合がなければ、パッドにモノクローナルクラスターを定植できる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
なお、模式図は必ずしも一定の縮尺ではない。図中で使用される同様の番号は、同様の構成要素、ステップなどを指す。しかしながら、所与の図における構成要素を指す数字の使用は、同じ数字でラベル付けされた別の図における構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。さらに、異なる数の構成要素を参照するために異なる数を使用することは、異なる数の構成要素が、他の数の構成要素と同一または類似であってはならないことを示すことを意図するものではない。
【0048】
本明細書では、配列決定に使用することができるモノクローナルクラスターの産生を増加させることに関連する組成物および方法を提供する。
【0049】
本開示は、核酸を増幅するための方法、および核酸配列を決定するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、(i)増幅部位のアレイ、および(ii)複数の異なる標的核酸を有する溶液を含む増幅試薬を提供することを含む。増幅部位は、捕捉核酸の少なくとも2つの集団を含む。1つの集団、第1の集団は、第1の捕捉配列を含み、第2の集団は、第2の捕捉配列を含む。異なる標的核酸は、3’末端に第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む。一実施形態では、標的核酸は二本鎖である。第1のユニバーサル捕捉結合配列は、第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも第1の捕捉配列に対する親和性が低い。例えば、
図1Aに示されるように、捕捉核酸の第1の集団の核酸100は、第1の捕捉配列110を含み、ここで、核酸100は増幅部位120の表面に付着される。
図1Bに示すのは、各端部にユニバーサルアダプタ140を含み、各ユニバーサルアダプタ140の3’末端に第1のユニバーサル捕捉結合配列150を含む二本鎖標的核酸130である。
【0050】
任意に、異なる標的核酸はまた、5’末端に第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む。第2のユニバーサル捕捉結合配列の相補体は、第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列よりも、第2の捕捉配列に対してより少ない親和性を有する。例えば、
図1Aに示されるように、第2の捕捉核酸集団の核酸160は、第1の捕捉配列170を含み、ここで、核酸160は、増幅部位120の表面に付着される。
図1Bに示すのは、各端部にユニバーサルアダプタ140を含み、各ユニバーサルアダプタ140の5’末端に第2のユニバーサル捕捉結合配列180を含む二本鎖標的核酸130である。
【0051】
この方法はさらに、増幅試薬を反応させて、それぞれが溶液からの個々の標的核酸からのアンプリコンのクローン集団を有する複数の増幅部位を生成することを含む。反応は、異なる標的核酸を増幅部位に輸送し、増幅部位で標的核酸を増幅することを含む。例えば、
図2に示されるように、捕捉核酸の第1の集団の核酸200は、第1の捕捉配列210を含み、ここで、核酸200は、増幅部位220の表面に付着される。一本鎖の3’末端に第1のユニバーサル捕捉結合配列250を含む標的核酸230の一本鎖は、核酸200の第1の捕捉配列210とハイブリダイズする。第1のユニバーサル捕捉結合配列250は、第1のユニバーサル捕捉結合配列250と第1の捕捉配列210との間のミスマッチの存在を示すための「X」を含む。次いで、これは、例えばブリッジ増幅を介してクラスター増幅を受け、クラスターの生成をもたらすことができる。
【0052】
核酸のライブラリーを製造するための方法も本明細書に提供される。ライブラリーは、本明細書に記載の増幅方法において使用することができる。この方法は、複数の異なる標的核酸の溶液を提供することを含む。一実施形態では、標的核酸は二本鎖である。ユニバーサルアダプタは、二本鎖標的核酸の両端に連結されて、第1の複数の修飾標的核酸を形成し、ここで、修飾標的核酸の各々は、ユニバーサルアダプタに隣接する標的核酸を含む。ユニバーサルアダプタは、二本鎖核酸の領域および一本鎖非相補的核酸鎖の領域を含む。一本鎖非相補的核酸鎖の領域は、3’末端に第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む。第1のユニバーサル捕捉結合配列は、第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも第1の捕捉配列に対する親和性が低い。任意に、一本鎖非相補的核酸鎖の領域は、5’末端に第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む。第2のユニバーサル捕捉結合配列の相補体は、第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列よりも第2の捕捉配列に対して親和性が低い。
アレイ
【0053】
本明細書に記載の方法で使用される増幅部位のアレイは、1つ以上の基質として存在することができる。アレイに使用することができる例示的なタイプの基板材料としては、ガラス、変性ガラス、機能化ガラス、無機ガラス、マイクロスフェア(例えば、不活性および/または磁性粒子)、プラスチック、多糖類、ナイロン、ニトロセルロース、セラミックス、樹脂、シリカ、シリカ系材料、炭素、金属、光ファイバーまたは光ファイバーバンドル、ポリマーおよびマルチウェル(例えば、マイクロタイター)プレートが挙げられる。例示的なプラスチックには、アクリル、ポリスチレン、スチレンおよび他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタンおよびTeflon(商標)が含まれる。例示的なシリカ系材料には、シリコンおよび様々な形態の改質シリコンが含まれる。
【0054】
特定の実施形態では、基板は、ウェル、チューブ、チャネル、キュベット、ペトリプレート、ボトルなどの容器内または容器の一部であってもよい。特に有用な容器は、例えば米国特許第8,241,573号またはBentley et al., Nature 456:53-59 (2008)に記載されているようなフローセルである。例示的なフローセルは、Illumina, Inc.(カリフォルニア州サンディエゴ)から市販されているものである。別の特に有用な容器は、マルチウェルプレートまたはマイクロタイタープレート中のウェルである。
【0055】
いくつかの実施形態では、アレイの部位は、表面上の特徴として構成することができる。この特徴は、任意の様々な所望のフォーマットで存在することができる。例えば、部位は、ウェル、ピット、チャネル、リッジ、隆起領域、ペグ、ポスト等であり得る。上記のように、部位はビーズを含有することができる。しかしながら、特定の実施形態において、部位はビーズまたは粒子を含有する必要はない。例示的な部位には、454 LifeSciences(スイス、バーゼルのRocheの子会社)またはIon Torrent(カリフォルニア州、CarlsbadのLife Technologiesの子会社)により販売されている市販の配列決定プラットフォームに使用される基材に存在するウェルが含まれる。ウェルを有する他の基板には、例えば、米国特許第6,266,459号、米国特許第6,355,431号、米国特許第6,770,441号、米国特許第6,859,570号、米国特許第6,210,891号、米国特許第6,258,568号、米国特許第6,274,320号、米国特許第8,262,900号、米国特許第7,948,015号、米国特許出願公開第2010/0137143号、米国特許第8,349,167号、またはPCT公開番号WO00/63437号に記載されているエッチングされた光ファイバーおよび他の基板が含まれる。
いくつかの場合において、ウェル中のビーズを使用する用途のために、これらの参考文献において基質が例示される。ウェル含有基材は、本開示の方法または組成物において、ビーズの有無にかかわらず使用することができる。いくつかの実施態様において、基材のウェルは、米国特許第9,512,422号に記載されているゲル材料(ビーズを伴うまたは伴わない)を含むことができる。
【0056】
アレイの部位は、ガラス、プラスチックまたは上記に例示した他の材料のような非金属表面上の金属特徴であり得る。金属層は、ウェットプラズマエッチング、ドライプラズマエッチング、原子層堆積、イオンビームエッチング、気相成長法、真空スパッタリングなどの当技術分野で公知の方法を使用して、表面上に蒸着することができる。様々な市販機器のいずれかを適切に使用することができ、例えば、FlexAL(登録商標)、OpAL(登録商標)、Ionfab 300Plus(登録商標)、またはOptofab 3000(登録商標)システム(Oxford Instruments, UK)などが挙げられる。金属層は、Thornton, Ann. Rev. Mater. Sci. 7:239-60 (1977)に記載されているように、e-ビーム蒸着またはスパッタリングによって堆積させることもできる。上記に例示したような金属層堆積技術をフォトリソグラフィ技術と組み合わせて、表面上に金属領域またはパッチを作製することができる。金属層堆積技術およびフォトリソグラフィ技術を組み合わせるための例示的な方法は、米国特許第8,778,848号および第8,895,249号に提供されている。
【0057】
フィーチャの配列は、スポットまたはパッチのグリッドとして表示できる。特徴は、繰り返しパターンまたは不規則な非繰り返しパターンに配置することができる。特に有用なパターンは、六角形パターン、直線状パターン、格子状パターン、反射対称性を有するパターン、回転対称性を有するパターンなどである。非対称パターンも有用である。ピッチは、最近傍特徴の異なるペア間で同じにすることができ、またはピッチは、最近傍特徴の異なるペア間で変えることができる。特定の実施形態では、アレイの特徴は、それぞれ、約100nm2、250nm2、500nm2、1pm2、2.5pm2、5pm2、10pm2、100pm2、または500pm2より大きい面積を有することができる。あるいは、またはさらに、アレイの特徴は、それぞれ、約1mm2、500pm2、100pm2、25pm2、10pm2、5pm2、1pm2、500nm2、または100nm2より小さい面積を有することができる。実際、領域は、上に例示されたものから選択される上限と下限との間の範囲にあるサイズを有することができる。
【0058】
表面上の特徴のアレイを含む実施形態の場合、特徴は、格子間領域によって分離され、離散的であり得る。特徴のサイズおよび/または領域間の間隔は、アレイが高密度、中密度または低密度であり得るように、変化し得る。高密度アレイは、約15pm未満だけ離れた領域を有することを特徴とする。中密度アレイは、約15~30pm離れた領域を有し、一方、低密度アレイは、30pm超離れた領域を有する。本開示において有用なアレイは、100pm、50pm、10pm、5pm、1pmまたは0.5pm未満離れた領域を有することができる。
【0059】
特定の実施形態において、アレイは、ビーズまたは他の粒子の集まりを含むことができる。粒子は、溶液中に懸濁されてもよく、または基板の表面上に配置されてもよい。溶液中のビーズアレイの例は、Luminex(Austin, Tex.)によって商業化されたもの、表面上に位置するビーズを有するアレイの例は、ビーズがビーズチップアレイ(Illumina Inc., San Diego Calif.)などのウェル中に位置するもの、または454ライフサイエンス社(ロシュ、バーゼルスイスの子会社)またはIon Torrent(Life Technologies、Carlsbad Calif.の子会社)からの配列決定プラットフォームにおいて使用される基材を含む。表面上にビーズを有するその他のアレイは、米国特許第6,266,459号、米国特許第6,355,431号、米国特許第6,770,441号、米国特許第6,859,570号、米国特許第6,210,891号、米国特許第6,258,568号、米国特許第6,274,320号、米国特許出願公開第2009/0026082号、米国特許出願公開第2009/0127589号、米国特許出願公開第2010/0137143号、米国特許出願公開第2010/0282617号、国際公開第00/63437号に記載されている。上記参考文献のいくつかは、アレイ基質中または上にビーズを装填する前に、ビーズに標的核酸を付着させる方法を記載している。しかしながら、ビーズを増幅プライマーを含むように作製することができ、次いでビーズをアレイにロードするために使用することができ、それによって本明細書中に記載される方法において使用するための増幅部位を形成することが理解される。本明細書中に先に記載したように、基質はビーズなしで使用することができる。例えば、増幅プライマーは、ウェルに直接、またはウェル中のゲル材料に付着させることができる。したがって、参照文献は、本明細書に記載の方法および組成物に使用するために改変することができる材料、組成物または装置の例示である。
【0060】
アレイの増幅部位は、標的核酸に結合することができる複数の捕捉剤を含むことができる。一実施形態では、捕捉剤は捕捉核酸を含む。配列決定のためのアレイを調製するために使用される典型的な条件において、捕捉核酸のヌクレオチド配列は、1つ以上の標的核酸の配列に相補的である。対照的に、本開示の捕捉核酸のヌクレオチド配列は、1つ以上の標的核酸の配列に対して完全に相補的ではない。本開示において提示される方法において有用な捕捉核酸のヌクレオチド配列は、本明細書中に詳細に記載される。いくつかの実施形態において、捕捉核酸は、標的核酸の増幅のためのプライマーとしても機能することができる(ユニバーサル配列も含むか否かにかかわらず)。いくつかの実施形態において、捕捉核酸の1つの集団は、P5プライマーまたはその相補体を含み、捕捉核酸の第2の集団は、P7プライマーまたはその相補体を含む。
【0061】
特定の実施形態では、捕捉核酸などの捕捉剤を増幅部位に付着させることができる。例えば、捕捉剤は、アレイの特徴の表面に付着させることができる。取付部材は、ビーズ、粒子またはゲルのような中間構造を介して行うことができる。ゲルを介した捕捉核酸のアレイへの付着例を米国特許第8,895,249号に述べ、さらに、Illumina Inc.(San Diego, Calif.)から市販されているか、または国際公開第2008/093098号に記載されているフローセルによって例示される。本明細書に記載の方法および装置において使用できる例示的なゲルは、限定されないが、アガロースのようなコロイド構造を有するもの、ゼラチンのようなポリマーメッシュ構造、またはポリアクリルアミド、SFA(例えば、米国特許出願公開第2011/0059865号参照)またはPAZAM(例えば、米国特許仮出願第61/753,833号および米国特許第9,012,022号参照)のような架橋高分子構造を含む。ビーズを介した取付部材は、本明細書に記載の記載および引用された参考文献に例示されているように達成することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、アレイ基板の表面上の特徴は、非連続であり、表面の格子間領域によって分離される。アレイの特徴と比較して、捕捉剤の量または濃度が実質的に低い格子間領域が有利である。捕捉剤を欠く格子間領域は、特に有利である。例えば、格子間領域における捕捉部分の比較的少量または非存在は、標的核酸の局在化、およびその後生成されるクラスターを所望の特徴に有利にする。特定の実施形態では、特徴部は、表面(例えば、ウェル)における凹部特徴部であり得、特徴部は、ゲル材料を含み得る。ゲル含有特徴は、ゲルが実質的に存在しない表面上の格子間領域によって互いに分離することができ、またはゲルが存在する場合には、核酸の局在を実質的に支持することができない。ウェルのようなゲル含有特徴を有する基材を製造および使用するための方法および組成物は、米国特許第9,512,422号に記載されている。
標的核酸
【0063】
本明細書中に記載される方法において使用される増幅試薬の溶液は、標的核酸を含む。用語「標的核酸」、「標的断片」、「標的核酸断片」、「標的分子」、および「標的核酸分子」は、アレイ上などのように、配列決定することが所望される核酸分子を指すために交換可能に使用される。標的核酸は、本質的に、既知または未知の配列の任意の核酸であり得る。それは、例えば、ゲノムDNAまたはcDNAの断片であり得る。配列決定は、標的分子の全体または一部の配列の決定をもたらし得る。標的は、ランダムに断片化された一次核酸試料から誘導することができる。一実施形態では、標的は、ユニバーサル増幅配列、例えば、ユニバーサルアダプタ中に存在する配列を各標的断片の端部に配置することによって増幅に適した鋳型に加工することができる。
【0064】
一次核酸試料は、試料由来の二本鎖DNA(dsDNA)形態(例えば、ゲノムDNA断片、PCRおよび増幅産物など)に由来してもよく、あるいは、DNAまたはRNAとして試料由来の一本鎖形成に由来してもよく、そして例示的なdsDNA形態に変換されてもよい。例として、mRNA分子は、当技術分野で周知の標準的な技術を用いて、本明細書に記載される方法において使用するのに適した二本鎖cDNAに複製され得る。一次核酸試料からのポリヌクレオチド分子の正確な配列は、一般に、本開示の材料ではなく、公知または不明であり得る。
【0065】
一実施形態では、一次核酸試料由来の一次ポリヌクレオチド分子はDNA分子である。より詳細には、一次ポリヌクレオチド分子は、生物の全遺伝的相補体を表し、イントロンおよびエキソン配列の両方、並びにプロモーターおよびエンハンサー配列のような非コード調節配列を含むゲノムDNA分子である。一実施形態では、ポリヌクレオチド配列またはゲノムDNAの特定のサブセット、例えば、特定の染色体を使用することができる。さらに詳細には、一次ポリヌクレオチド分子の配列は不明である。さらにより詳細には、一次ポリヌクレオチド分子はヒトゲノムDNA分子である。DNA標的断片は、任意のランダムな断片化プロセスの前または後、並びにユニバーサルアダプタ配列のライゲーションの前または後のいずれかで、化学的または酵素的に処理され得る。
【0066】
核酸試料は、ゲノムDNA(gDNA)のような高分子量材料を含むことができる。試料は、FFPEまたはアーカイブDNA試料から得られた核酸分子のような低分子量物質を含むことができる。別の実施形態では、低分子量材料は、酵素的または機械的に断片化されたDNAを含む。試料は、無細胞循環DNAを含むことができる。いくつかの実施形態では、試料は、生検、腫瘍、削り取り、スワブ、血液、粘液、尿、プラズマ、精液、毛髪、レーザー捕捉顕微解剖、外科的切除、および他の臨床または実験室で得られた試料から得られた核酸分子を含むことができる。いくつかの実施形態において、試料は、疫学的、農業的、法医学的または病原性試料であり得る。いくつかの実施形態において、試料は、ヒトまたは哺乳動物供給源などの動物から得られる核酸分子を含むことができる。別の実施形態では、試料は、非哺乳動物源、例えば、植物、細菌、ウイルスまたは真菌から得られる核酸分子を含むことができる。いくつかの実施形態において、核酸分子の供給源は、アーカイブされたまたは絶滅した試料または種であり得る。
【0067】
さらに、本明細書に開示される方法および組成物は、法医学試料由来の分解および/または断片化されたゲノムDNAなどの低品質の核酸分子を有する核酸試料を増幅するのに有用であり得る。一実施形態では、法医学的試料は、犯罪現場から得られた核酸、行方不明者DNAデータベースから得られた核酸、法医学的調査に関連する実験室から得られた核酸、または法執行機関、1つ以上の軍事サービスもしくは任意のそのような職員によって得られた法医学的試料を含むことができる。核酸試料は、精製試料または溶解物を含有する粗DNA、例えば、唾液、血液、または他の体液を含浸させることができる口腔スワブ、紙、不織布または他の基材に由来するものであってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、核酸試料は、ゲノムDNAなどのDNAの低量または断片化された部分を含み得る。いくつかの実施形態において、標的配列は、血液、痰、プラズマ、精液、尿および血清を含むがこれらに限定されない1以上の体液中に存在し得る。いくつかの実施形態において、標的配列は、被害者の毛髪、表皮、組織試料、剖検または遺体から得ることができる。いくつかの実施形態において、1以上の標的配列を含む核酸は、死亡した動物またはヒトから得ることができる。いくつかの実施形態において、標的配列は、微生物、植物または昆虫のDNAなどの非ヒトDNAから得られる核酸を含むことができる。いくつかの実施形態において、標的配列または増幅標的配列は、ヒト同定の目的に向けられる。いくつかの実施形態において、本開示は、一般に、法医学試料の特性を同定するための方法に関する。いくつかの実施形態において、本開示は、一般に、本明細書に開示される1つもしくは複数の標的特異的プライマー、または本明細書に概説されるプライマー設計基準を使用して設計される1つもしくは複数の標的特異的プライマーを使用するヒト同定方法に関する。1つの実施形態において、少なくとも1つの標的配列を含有する法医学的またはヒト同定試料は、本明細書中に開示される標的特異的プライマーのいずれか1つ以上を使用して、または本明細書中に概説されるプライマー基準を使用して増幅され得る。
【0068】
生物学的試料の供給源のさらなる非限定的な例としては、全生物並びに患者から得られた試料を挙げることができる。生物学的試料は、任意の生物学的流体または組織から得ることができ、液体流体および組織、固体組織、並びに乾燥、凍結、および固定形態などの保存形態を含む、様々な形態で得ることができる。試料は、任意の生物学的組織、細胞または流体のものであってよい。そのような試料としては、喀痰、血液、血清、血漿、血球(例えば白血球)、腹水、尿、唾液、涙、痰、膣液(分泌)、医学的処置中に得られた洗浄液(例えば、生検、内視鏡検査または外科手術中に得られた骨盤または他の洗浄物)、組織、乳頭吸引物、芯または細針生検試料、細胞含有体液、遊離浮遊核酸、腹腔液、および胸水、またはそれらからの細胞が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的試料はまた、組織学的目的のために採取された凍結切片または固定切片、または顕微解剖された細胞またはその細胞外部分のような組織の切片を含むことができる。いくつかの実施形態において、試料は、例えば、全血試料などの血液試料であり得る。別の例では、試料は未処理の乾燥血液スポット(DBS)試料である。別例では、試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である。別例では、試料は唾液試料である。別例では、試料は乾燥唾液スポット(DSS)試料である。
【0069】
標的核酸が由来し得る例示的な生物学的サンプルとしては、例えば、真核生物(例えば、げっ歯類、マウス、ラットなどの哺乳類、ウサギ、モルモット、有蹄動物、馬、羊、豚、山羊、牛、猫、犬、霊長類、ヒトまたはヒト以外の霊長類)、植物、(例えば、シロイヌナズナ、とうもろこし、ソルガム、オーツ麦、小麦、米、菜種、または大豆)、藻類(例えば、コナミドリムシ)、線虫(例えば、エレガンス線虫)、昆虫(例えば、キイロショウジョウバエ、蚊、ショウジョウバエ、ミツバチまたはクモ)、魚(例えば、ゼブラフィッシュ)、爬虫類、両生類(例えば、カエル、アフリカツメガエル)、真菌(例えば、キイロタマホコリカビ、ニューモシスチスカリニ)、トラフグ、酵母、Saccharamoyces cerevisiae、またはSchizosaccharomyces pombe、または熱帯熱マラリア原虫が挙げられる。標的核酸はまた、細菌、大腸菌、ブドウ球菌または肺炎マイコプラズマのような原核生物;古細菌;C型肝炎ウイルスまたはヒト免疫不全ウイルスのようなウイルス;またはウイロイドに由来し得る。標的核酸は、上記生物の均質な培養物もしくは集団から、または代わりに、例えばコミュニティーもしくは生態系におけるいくつかの異なる生物の回収から得ることができる。
【0070】
ランダム断片化とは、酵素的、化学的または機械的手段によって、一次核酸試料からのポリヌクレオチド分子の断片化を無秩序な様式で指す。そのような断片化方法は当技術分野で公知であり、標準的方法(Sambrook and Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, third edition)を使用する。一実施形態では、断片化は、しばしばタグ付けと呼ばれるプロセスを使用して達成することができる。タグ付け(タグメンテーション)はトランスポソーム錯体を使用し、一段階断片化および連結に結合して、ユニバーサルアダプタを追加する(Gundersonら、WO2016/130704)。明確にするために、このようなより小さな断片の特異的PCR増幅を介してより大きな核酸断片のより小さな断片を生成することは、より大きな核酸断片を断片化することと同等ではない。というのは、より大きな核酸断片は、核酸配列のより大きな断片が無傷のままである(すなわち、PCR増幅によって断片化されない)からである。さらに、ランダム断片化は、切断を含むおよび/または周囲のヌクレオチドの配列同一性または位置にかかわらず、断片を生成するように設計される。より詳細には、ランダムな断片化は、長さ約50塩基対~長さ約1500塩基対、さらにより詳細には長さ50~700塩基対、さらにより詳細には長さ50~400塩基対の断片を生成するための噴霧化または超音波処理のような機械的手段による。最も詳細には、この方法は、長さが50~150塩基対のより小さな断片を生成するために使用される。
【0071】
機械的手段(例えば、噴霧、超音波処理およびヒドロシャー)によるポリヌクレオチド分子の断片化は、平滑末端と3’-および5’-突出末端との不均一な混合物を有する断片を生じる。したがって、例えばクローニングベクターの平滑化部位への挿入に最適な末端を生成するために、当技術分野で公知の方法またはキット(Lucigen DNA停止剤エンド修復キットなど)を用いて断片末端を修復することが望ましい。特定の実施形態では、核酸の集団の断片末端は平滑末端である。より詳細には、断片末端は平滑末端であり、リン酸化される。ホスフェート部分は、例えば、ポリヌクレオチドキナーゼを用いた酵素処理によって導入することができる。
【0072】
標的核酸またはそのアンプリコンの集団は、本明細書に記載の方法または組成物の特定用途に所望または適切な平均鎖長を有することができる。例えば、平均鎖長は、約100,000ヌクレオチド、50,000ヌクレオチド、10,000ヌクレオチド、5000ヌクレオチド、1000ヌクレオチド、500ヌクレオチド、100ヌクレオチド、または50ヌクレオチド未満であり得る。あるいは、またはさらに、平均鎖長は、約10ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、500ヌクレオチド、1000ヌクレオチド、5000ヌクレオチド、10,000ヌクレオチド、50,000ヌクレオチド、または100,000ヌクレオチドを超えることができる。標的核酸の集団、またはそのアンプリコンの平均鎖長は、上記の最大値と最小値との間の範囲であり得る。増幅部位で生成された(または本明細書で作製または使用された)アンプリコンは、上に例示されたものから選択される上限と下限の間の温度範囲にある平均鎖長を有することができることが理解されるであろう。
【0073】
場合によっては、標的核酸の集団は、そのメンバーのための最大長を有するように、条件下で産生され得るか、または別の方法で構成され得る。例えば、本明細書に記載の方法の1つ以上の工程で使用されるか、または特定の組成物中に存在するメンバーのための最大長は、100,000ヌクレオチド未満、50,000ヌクレオチド未満、10,000ヌクレオチド未満、5000ヌクレオチド未満、1000ヌクレオチド未満、500ヌクレオチド未満、100ヌクレオチド未満、または50ヌクレオチド未満であり得る。あるいは、または加えて、標的核酸の集団、またはそのアンプリコンを、そのメンバーのための最短長を有するように、条件下で産生するか、または他の方法で構成することができる。例えば、本明細書に記載の方法の1つ以上の工程で使用されるか、または特定の組成物中に存在するメンバーのための最短長は、10ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、500ヌクレオチド以上、1000ヌクレオチド以上、5000ヌクレオチド以上、10,000ヌクレオチド以上、50,000ヌクレオチド以上、または100,000ヌクレオチド以上であり得る。集団中の標的核酸の最大および最小鎖長は、上記の最大値と最小値との間の範囲であり得る。増幅部位で生成された(または本明細書で作製または使用された)アンプリコンは、上記に例示された上限値と下限値との間の範囲内の最大および/または最小鎖長を有し得ることが理解されるであろう。
【0074】
特定の実施形態では、標的核酸は、例えば、排除増幅を容易にするために、増幅部位の領域に対してサイズ決定される。例えば、アレイの部位の各々の面積は、排除増幅を達成するために、標的核酸の除外された体積の直径よりも大きくすることができる。例えば、表面上の特徴のアレイを使用する実施形態を考えると、特徴の各々についての面積は、増幅部位に輸送される標的核酸の排除体積の直径よりも大きいことができる。標的核酸についての排除された体積およびその直径は、例えば、標的核酸の長さから決定され得る。除外核酸量および除外容積の直径を決定する方法について、例えば、米国特許第7,785,790号、Rybenkov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 5307-5311 (1993)、Zimmerman et al., J. Mol. Biol. 222:599-620 (1991)、またはSobel et al., Biopolymers 31:1559-1564 (1991)に記載される。
【0075】
特定の実施形態では、標的断片配列は、例えば、DNA分子、例えばPCR産物の3’末端に単一のデオキシヌクレオチド、例えばデオキシアデノシン(A)を付加する非鋳型依存性端子転移酵素活性を有する、TaqポリメラーゼまたはKlenow exoマイナスポリメラーゼのような特定のタイプのDNAポリメラーゼの活性により、単一のオーバーハングヌクレオチドで調製される。このような酵素は、二本鎖標的断片の各鎖の平滑末端3’末端に一ヌクレオチド「A」を付加するために使用することができる。したがって、TaqまたはKlenow exoマイナスポリマーとの反応によって、二本鎖標的断片の各末端修復鎖の3’末端に’A’を加えることができ、一方、ユニバーサルアダプタポリヌクレオチド構築体は、ユニバーサルアダプタの二本鎖核酸の各領域の3’末端に存在する適合性の’T’オーバーハングを有するT-構築体とすることができた。この末端修飾はまた、結合されたアダプタ-標的-アダプタ分子の形成に向かうバイアスが存在するように、ベクターおよび標的の両方の自己連結を防止する。
【0076】
いくつかの場合において、このような供給源に由来する標的核酸は、本明細書中の方法または組成物における使用前に増幅され得る。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、多重置換増幅(MDA)、またはランダムプライム増幅(RPA)を含むが、これらに限定されない、様々な公知の増幅技術のいずれかを使用することができる。本明細書に記載の方法または組成物における使用前の標的核酸の増幅は任意であることが理解されるであろう。そのようなものとして、標的核酸は、本明細書に記載の方法および組成物のいくつかの実施形態において使用する前に増幅されないであろう。標的核酸は、任意に、合成ライブラリーから誘導され得る。合成核酸は、天然のDNAまたはRNA組成物を有することができ、またはその類似体であることができる。
ユニバーサルアダプタ
【0077】
本明細書に記載の方法または組成物において使用される標的核酸は、各端部に結合されたユニバーサルアダプタを含む。本明細書に記載の方法で使用される標的核酸の各端部にユニバーサルアダプタを取り付ける方法は、当業者に公知である。添付書類は、リジャテーション(Chesney et al.、US2018/0305753)を用いた標準的なライブラリー調製技術、またはトランスポセース・コンプレックスを用いたタグメンテーション(Gunderson et al.、WO 2016/130704)によることができる。
【0078】
一実施形態では、試料、例えば断片化された試料からの二本鎖標的核酸は、最初に同一のユニバーサルアダプタ分子(「ミスマッチアダプタ」、その一般的特徴は以下に定義され、さらにGormley et al.、US7,741,463、およびBignell et al.、US8,053,192に記載される)を、二本鎖標的核酸の5’末端および3’末端(既知、部分的に既知または未知の配列であり得る)に連結することによって処理される。一実施形態では、ユニバーサルアダプタは、その後の配列決定のために標的核酸をアレイ上に固定化するのに必要なユニバーサル捕捉結合配列を含む。別の実施形態では、固定化および配列決定の前に、標的核酸の各端部に存在するユニバーサルアダプタをさらに修飾するために、PCRステップが使用される。例えば、初期プライマー伸長反応は、各個々の標的核酸の両鎖に相補的な伸長生成物が形成され、ユニバーサル捕捉結合配列を付加するユニバーサルプライマー結合部位を使用して実施される。得られたプライマー伸長生成物、および任意にその増幅複製は、集合的に、固定化され、次いで配列決定され得る修飾標的核酸のライブラリーを提供する。「ライブラリー」という用語は、それらの3’末端および5’末端に既知の共通配列を含有する標的核酸の回収を指し、3’および5’修飾ライブラリーとも称され得る。標的核酸に結合したユニバーサルアダプタの3’末端、および任意に5’末端は、本明細書に記載されるユニバーサル捕捉結合配列の均質な集団または不均質な集団を含むことができる。
【0079】
本明細書で詳細に説明されるように、アダプタは配列ミスマッチの領域を含む、すなわち、それらは完全に相補的なポリヌクレオチド鎖のアニーリングによって形成されないので、本開示の方法において使用されるユニバーサルアダプタは「ミスマッチ(mismatch)」アダプタと呼ばれる。
【0080】
本明細書で使用するためのミスマッチアダプタは、2つの部分的に相補的なポリヌクレオチド鎖をアニーリングすることによって形成され、2つの鎖がアニーリングされる場合、二本鎖核酸の領域とも呼ばれる少なくとも1つの二本鎖領域、および一本鎖非相補的核酸鎖の領域とも呼ばれる少なくとも1つの非マッチ一本鎖領域を提供する。
【0081】
ユニバーサルアダプタの「二本鎖領域」は、典型的には、2つの部分的に相補的なポリヌクレオチド鎖のアニーリングによって形成される5つ以上の連続した塩基対を含む短い二本鎖領域である。この用語は、2本鎖がアニーリングされている核酸の二本鎖領域を意味し、いかなる特定の構造的立体配座も意味しない。本明細書中で使用される場合、用語「二本鎖」は、核酸分子に関して使用される場合、核酸分子中のヌクレオチドの実質的に全てが、相補的ヌクレオチドに水素結合されることを意味する。部分的二本鎖核酸は、相補的ヌクレオチドに水素結合したそのヌクレオチドの少なくとも10%、25%、50%、60%、70%、80%、90%または95%を有することができる。
【0082】
二本鎖領域は、機能を失うことなくできるだけ短くすることが一般的に有利である。この文脈において、「機能」とは、熟練した読者に周知されるであろう、酵素触媒的核酸ライゲーション反応に対する標準的な反応条件の下で、安定した二重構造を形成することができることを指し(例えば、酵素に適したライゲーションバッファーで4℃~25℃の温度帯でインキュベーションすること)、このようなユニバーサルアダプタを形成する二つの鎖が、標的分子に対するユニバーサルアダプタのライゲーション中、部分的にアニーリングされたままであることを意味する。プライマー伸長またはPCR反応のアニーリング工程で典型的に使用される条件下で、二本鎖領域が安定であることは絶対に必要ではない。
【0083】
ユニバーサルアダプタの二本鎖領域は、通常、ライゲーションに使用されるすべてのユニバーサルアダプタで同一である。ユニバーサルアダプタは、各標的分子の両末端に連結されているため、修飾標的核酸は、ユニバーサルアダプタの二本鎖領域に由来する相補的配列に隣接する。二本鎖領域が長ければ長いほど、したがって、修飾標的核酸構築物中に由来する相補的配列が長ければ長いほど、修飾標的核酸構築物が、プライマー伸長および/またはPCRで使用されるアニーリング条件下で、内部自己相補性のこれらの領域において、折り畳みおよび塩基対を形成することができる可能性が高くなる。したがって、二本鎖領域は、この効果を低減するために、20以下、15以下、または10以下の塩基対長であることが一般的に好ましい。二本鎖領域の安定性は、標準的なワトソン-クリック塩基対よりも強い塩基対を示す非天然ヌクレオチドを含めることにより、増大し、したがって、その長さは、潜在的に減少し得る。
【0084】
一実施形態では、ユニバーサルアダプタの2つの鎖は、二本鎖領域において100%相補的である。1つ以上のヌクレオチドミスマッチは、2つの鎖が基準ライゲーション条件下で安定な二重鎖を形成することができるならば、二本鎖領域内で許容され得ることが理解されるであろう。
【0085】
本明細書で使用するためのユニバーサルアダプタは、一般に、アダプタの「結束可能」端部を形成する二本鎖領域、例えば、結束反応において二本鎖ターゲット核酸に接合される端部を含むであろう。ユニバーサルアダプタの連結可能な端部は鈍くてもよく、または他の実施形態では、ライゲーションを促進/プロモートするために、1つ以上のヌクレオチドの短い5’または3’オーバーハングが存在してもよい。ユニバーサルアダプタの連結可能な末端の5’端子ヌクレオチドは、典型的にはリン酸化され、標的ポリヌクレオチド上の3’水酸基へのホスホジエステル結合を可能にする。
【0086】
「不一致(unmatch)領域」という用語は、ユニバーサルアダプタの領域、すなわち一本鎖非相補的核酸鎖の領域を指し、ここでユニバーサルアダプタを形成する2つのポリヌクレオチド鎖の配列は、プライマー伸長またはPCR反応のための標準的なアニーリング条件で2つの鎖が互いに完全にアニーリングすることができない程度の非相補性を示す。不一致領域は、酵素触媒配位反応の標準反応条件下である程度のアニーリングを示すが、ただし、増幅反応中のアニーリング条件下では、二本鎖が一本鎖形態に戻ることを条件とする。
【0087】
「不一致領域」は、二本鎖領域を形成する同一の2つのポリヌクレオチド鎖の異なる部分によって提供されることを理解されたい。アダプタ構築物におけるミスマッチは、一方の鎖に一本鎖領域が存在するように、他方より長い一方の鎖の形態をとることができ、または、2つの鎖がハイブリダイズしないように選択された配列をとることができ、したがって、両方の鎖に一本鎖領域を形成する。ミスマッチはまた、「バブル」の形態をとることができ、ここで、ユニバーサルアダプタ構築物の両端は、互いにハイブリダイズし、二重鎖を形成することができるが、中央領域は形成しない。不一致領域を形成する鎖の部分は、同じ2つの鎖の他の部分がアニーリングされて1つ以上の二本鎖領域を形成する条件下でアニーリングされない。疑いを避けるために、標的配列へのライゲーションを続いて受けるポリヌクレオチド二重鎖の3’末端における一本鎖または一本鎖塩基のオーバーハングは、本開示の文脈において「不一致領域」を構成しないことを理解されたい。
【0088】
不一致領域の長さの下限は、典型的には、機能、例えば、i)プライマー伸長、PCRおよび/または配列決定(例えば、プライマーのユニバーサルプライマー結合部位への結合)のためのプライマーの結合、またはii)修飾標的核酸の表面への固定化のための捕捉配列へのユニバーサル捕捉結合配列の結合のための適切な配列を提供する必要性によって決定される。理論的には、一般に、例えば、ライゲーション工程に続く修飾標的核酸構築物からの非結合ユニバーサルアダプタの分離を容易にするために、ユニバーサルアダプタの全長を最小にすることが有利であることを除いて、不一致領域の長さに上限はない。したがって、不一致領域は、長さが連続して50ヌクレオチド未満、または40ヌクレオチド未満、または30ヌクレオチド未満、または25ヌクレオチド未満であることが一般に好ましい。
【0089】
一本鎖非相補的核酸鎖の領域は、3’末端に少なくとも1つのユニバーサル捕捉結合配列を含む(
図1B、ユニバーサル捕捉結合配列150参照)。ユニバーサルアダプタの3’末端は、捕捉核酸上に存在する第1の捕捉配列とハイブリダイズする第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む。例えば、
図2に示すように、捕捉核酸の第1の集団の核酸200は、第1の捕捉配列210を含む。一本鎖の3’末端に第1のユニバーサル捕捉結合配列250を含む修飾標的核酸230の一本鎖は、第1の捕捉配列210にハイブリダイズして示される。第1のユニバーサル捕捉結合配列250と第1の捕捉配列210との間の相互作用であって、親和性を低下させ、ウェル内にシーディングされた標的核酸への動力学遅延をコードするように変更される。標準的なExAmp方法は、ユニバーサル捕捉結合配列を使用し、捕捉配列の全長にわたって完全に相補的な配列を捕捉する。本明細書に記載されるExAmp方法は、1つ以上のミスマッチを含むユニバーサル捕捉結合配列、短い長さを有する、またはそれらの組み合わせを使用する。ミスマッチおよび/または短い長さの結果は、2つの完全に相補的な全長配列の親和性と比較して、2つの配列間の親和性が低下する。親和性の低下は増幅効率の低下を引き起こし、この場合、得られる増幅効率は、一般に、ユニバーサル捕捉結合配列と捕捉配列との間の差の数の機能である。
【0090】
任意に、ユニバーサルアダプタの5’末端は、標的核酸の各末端に結合した第2のユニバーサル捕捉結合配列を含み、ここで、第2のユニバーサル捕捉結合配列は、捕捉核酸上に存在する第2の捕捉配列とハイブリダイズする。例えば、
図1Bに示すように、ユニバーサル捕捉結合配列180。したがって、特記しない限り、ユニバーサル捕捉結合配列をどのように調整して親和性を低下させるかについての以下の議論は、3’および5’ユニバーサル捕捉結合配列の両方に適用される。
【0091】
捕捉配列の3’末端は、本明細書に記載の方法におけるDNAポリメラーゼによるDNA合成の開始点として役立つ。当業者は、捕捉配列の3’末端のヌクレオチドおよびユニバーサル捕捉結合配列中の対応するヌクレオチドが、DNAポリメラーゼがDNA合成を開始する能力を維持するために相補的であるべきであることを認識するであろう。
【0092】
ユニバーサル捕捉結合配列は、捕捉配列に相補的でない1つ以上のヌクレオチドを含むことができる。一実施形態では、ユニバーサル捕捉結合配列は、本明細書に記載の増幅反応で使用される捕捉配列と比較して、1~5個のミスマッチヌクレオチド(非相補的ヌクレオチドとも呼ばれる)、例えば、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または5個のミスマッチヌクレオチドを含むことができる。ミスマッチヌクレオチドは、ゆらぎ(ウォブル)ミスマッチまたは真のミスマッチであり得る。
【0093】
ゆらぎミスマッチとは、ユニバーサル捕捉結合配列の集団において4つのヌクレオチドすべてが表される位置を指す。例えば、NがACTNGCにおけるゆらぎヌクレオチドである場合、ユニバーサル捕捉結合配列の集団は、ACTTGC、ACTAGC、ACTCGC、およびACTGGCを含み、集団におけるユニバーサル捕捉結合配列の25%は、捕捉配列の該当するヌクレオチドに相補的であろう。一実施形態では、ユニバーサル捕捉結合配列は、本明細書中に記載される増幅反応で使用される捕捉配列と比較して、1~5個のゆらぎヌクレオチド、例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または5個のゆらぎヌクレオチドを含むことができる。一実施形態では、ゆらぎヌクレオチドは、ユニバーサル捕捉結合配列全体のどこにでも位置することができる。
【0094】
真のミスマッチとは、ユニバーサル捕捉結合配列の集団中の特定の位置に4つのヌクレオチドのうちの3つのみが表される位置を指す。例えば、GがACTTGC中の真のミスマッチヌクレオチドの位置である場合、ユニバーサル捕捉結合配列の集団はACTTCC、ACTTTC、およびACTTACを含み、集団中のユニバーサル捕捉結合配列のいずれも、捕捉配列の対応するヌクレオチド、本実施例ではCに相補的ではない。一実施形態では、ユニバーサル捕捉結合配列は、本明細書中に記載される増幅反応で使用される捕捉配列と比較して、1~5個のミスマッチヌクレオチド、例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または5個のゆらぎヌクレオチドを含むことができる。一実施形態では、ゆらぎヌクレオチドは、ユニバーサル捕捉結合配列全体のどこにでも位置することができる。
【0095】
当業者は、ゆらぎミスマッチまたは真のミスマッチの使用が、ユニバーサル捕捉結合配列の親和性を変化させるより大きな制御を提供することを認識するであろう。単一のゆらぎヌクレオチドのみを有するユニバーサル捕捉結合配列の使用は、その位置に相補性、他の75%よりも高い親和性、および他の75%よりも予想されるより高い増幅効率を有するユニバーサル捕捉結合配列の25%をもたらす。単一の真のミスマッチヌクレオチドのみを有するユニバーサル捕捉結合配列を使用すると、その位置に相補性を有さず、親和性が低下し、増幅効率が低下すると予想されるユニバーサル捕捉結合配列のすべてが得られる。
【0096】
別の実施形態では、ユニバーサル捕捉結合配列は、全長ユニバーサル捕捉結合配列と捕捉配列との間の親和性よりも低い親和性をもたらす短い長さを有する。本明細書に記載の標準的増幅方法において有用な捕捉配列は、典型的には、約20~約30ヌクレオチドの長さを有するが、必要に応じて、より長くまたはより短くすることができる。本明細書に記載の方法において有用なユニバーサル捕捉結合配列は、本明細書に記載の増幅反応において使用される捕捉配列よりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヌクレオチド短い長さを有することができる。一実施形態では、ユニバーサル捕捉結合配列の長さは、第1のユニバーサル捕捉結合配列の3’末端からおよび/または第2のユニバーサル捕捉結合配列の5’末端からヌクレオチドを除去することによって短縮される。
【0097】
本明細書に記載の増幅反応は、ユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を使用することができる(例えば、複数の異なる標的核酸は、3’末端に存在し、任意に5’末端に存在するユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含むことができる)。一実施形態では、異種集団は、ミスマッチヌクレオチドを有する個々のユニバーサル捕捉結合配列を含む。一実施形態では、ユニバーサル捕捉結合配列は、1、2、3、4、または5個のミスマッチヌクレオチドを有する。ミスマッチヌクレオチドは、ゆらぎミスマッチ、真のミスマッチ、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0098】
一実施形態では、異種集団は、短い長さを有する個々のユニバーサル捕捉結合配列を含む。一実施形態では、異種集団は、本明細書に記載の増幅反応において使用される捕捉配列よりも短い1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヌクレオチドの長さを有する個々のユニバーサル捕捉結合配列を含む。
【0099】
一実施形態では、異種集団は、短い長さおよび1つまたは複数のミスマッチヌクレオチドの組み合わせを有する個々のユニバーサル捕捉結合配列を含む。ミスマッチヌクレオチドの数およびユニバーサル捕捉結合配列から欠失したヌクレオチドの数は、任意の組み合わせで存在することができ、例えば、ミスマッチヌクレオチドの数および欠失したヌクレオチドの数は、独立している。
【0100】
異種集団はまた、3’末端に、および任意に5’末端に、捕捉配列と100%の相補性を有するユニバーサル捕捉結合配列を有する個々の標的核酸を含むことができる。異種集団における異なるユニバーサル捕捉結合配列のモル比は、等しいか、または変化させることができる。モル比が等しくない実施形態では、より高い増幅効率を有するそれらのユニバーサル捕捉結合配列のより高いモル比が好ましい。したがって、異種集団が捕捉配列と100%の相補性を有するユニバーサル捕捉結合配列を含む実施形態では、100%の相補性を有するユニバーサル捕捉結合配列は、異種集団の任意の残りの他のメンバーよりも大きな割合で存在することができる。
【0101】
一本鎖非相補的核酸鎖の領域はまた、典型的には、少なくとも1つのユニバーサルプライマー結合部位をも含む。ユニバーサルプライマー結合部位は、ユニバーサルアダプタに連結された標的核酸の増幅および/または配列決定に使用することができるユニバーサル配列である。
【0102】
一本鎖非相補的核酸鎖の領域はまた、少なくとも1つのインデックスを含むことができる。インデックスは、アレイ上の特定の標的核酸のソースの特徴的なマーカーとして使用することができる。一般に、インデックスは、ライブラリー調製工程の一部として標的核酸に付加されるユニバーサルアダプタの一部であるヌクレオチドの合成配列である。従って、指標は、特定の試料の標的分子の各々に付着した核酸配列であり、その存在は、標的分子が単離された試料または供給源の指標であるか、またはそれを同定するために使用される。
【0103】
好ましくは、インデックスは最大20ヌクレオチド長、より好ましくは1~10ヌクレオチド長、最も好ましくは4~8ヌクレオチド長であり得る。例えば、4つのヌクレオチドインデックスでは256(44)の試料を同じアレイに多重化できるが、6つの塩基インデックスでは4096(46)の試料を同じアレイに処理できる。
【0104】
一実施形態では、ユニバーサル捕捉結合配列は、それが二本鎖標的断片に連結されるときにユニバーサルアダプタの一部であり、別の実施形態では、ユニバーサルアダプタが二本鎖標的断片に連結された後にユニバーサルプライマー伸長結合部位がユニバーサルアダプタに付加される。付加は、PCRベースの方法を含むルーティーンの方法を用いて達成することができる。
【0105】
ユニバーサルアダプタの正確なヌクレオチド配列は、一般に本発明にとって重要ではなく、所望の配列エレメントが複数の異なる修飾標的核酸の共通配列に最終的に含まれるように、例えば、ユニバーサル増幅プライマーおよび/または配列決定プライマーの特定のセットのためのユニバーサル捕捉結合配列および結合部位を提供するように、ユーザによって選択され得る。例えば、ライブラリー中の標的核酸の配列決定に最終的に使用されるプライマーまたはライブラリー中の標的核酸の増幅に由来する産物の配列決定のための結合部位を提供するために、さらなる配列エレメントが、例えば、固体保持体上に含まれてもよい。
【0106】
ユニバーサルアダプタの正確なヌクレオチド配列は、一般に、本開示に限定されないが、不一致領域中の個々の鎖の配列は、標準的なアニーリング条件で、自己アニーリング、ヘアピン構造の形成などをもたらし得る任意の内部自己相補性をいずれの個々の鎖も示さないようなものであるべきである。不一致領域における鎖の自己アニーリングは、増幅プライマーのこの鎖への特異的結合を阻止または低減し得るので、回避されるべきである。
【0107】
ミスマッチアダプタは、好ましくは、DNAの2本の鎖から形成されるが、ホスホジエステルおよび非ホスホジエステル主鎖結合の混合物によって連結された天然および非天然ヌクレオチド(例えば、1以上のリボヌクレオチド)の混合物を含むことができる。
ライゲーションと増幅
【0108】
ライゲーション法は当技術分野で公知であり、標準的な方法を使用する。このような方法は、共有結合が形成されるように、この場合はユニバーサルアダプタおよび二本鎖標的核酸、の2つのポリヌクレオチド鎖の末端の結合を効果または触媒するために、DNAリガーゼなどのリガーゼ酵素を使用する。ユニバーサルアダプタは、標的断片上に存在する3’-OHへのライゲーションを容易にするために、5’-リン酸部分を含有してもよい。二本鎖標的核酸は、せん断プロセスから残留するか、または酵素処理ステップを用いて添加されるかのいずれかの5’-リン酸部分を含み、末端修復され、場合によっては張出した1つの塩基または複数の塩基によって伸長されて、ライゲーションに適した3’-OHを与える。この文脈において、連結とは、以前は共有結合していなかったポリヌクレオチド鎖の共有結合を意味する。本開示の特定の態様では、このような結合は、2つのポリヌクレオチド鎖の間にホスホジエステル結合が形成されることによって起こるが、共有結合の他の手段(例えば、非ホスホジエステル主鎖結合)が使用されてもよい。
【0109】
本明細書で議論されるように、一実施形態では、ライゲーションで使用されるユニバーサルアダプタは、完全であり、ユニバーサル捕捉結合配列および他のユニバーサル配列、例えば、ユニバーサルプライマー結合部位およびインデックス配列を含む。得られた複数の標的核酸を用いて、配列決定のための固定化試料を調製することができる。
【0110】
また、本明細書中で議論されるように、1つの実施形態において、ライゲーションに使用されるユニバーサルアダプタは、ユニバーサルプライマー結合部位およびインデックス配列を含み、ユニバーサル捕捉結合配列を含まない。得られた複数の修飾標的核酸は、ユニバーサル捕捉結合配列などの特異的配列を含むようにさらに修飾することができる。ユニバーサル捕捉結合配列などの特異的配列を、二本鎖標的断片に連結されたユニバーサルプライマーに付加する方法は、PCRに基づく方法を含み、当該技術分野で公知であり、例えば、Bignellら(米国特許第8,053,192号)およびGundersonら(WO2016/130704)に記載されている。
【0111】
ユニバーサルアダプタが修飾されるこれらの実施形態では、増幅反応が調製される。増幅反応の内容は当業者に知られており、適当な基質(dNTPなど)、酵素(例えばDNAポリメラーゼ)および増幅反応に必要な緩衝液成分を含む。一般に、増幅反応は、増幅反応の各サイクルのプライマーアニーリング工程に直面する条件下で、増幅されるポリヌクレオチド配列の一部(例えば標的核酸)に特異的にアニーリングすることができる「フォワード」および「リバースプライマー(プライマーオリゴヌクレオチド)」としばしば示される少なくとも2つの増幅プライマーを必要とする。プライマーが第一増幅サイクルにおいて修飾標的核酸にアニーリングしない任意のヌクレオチド配列を含有する場合、この配列を増幅産物に複製することができることは理解されよう。例えば、ユニバーサル捕捉結合配列を有するプライマー、すなわち修飾標的核酸にアニーリングしない配列の使用は、ユニバーサル捕捉結合配列が得られたアンプリコンに組み込まれるであろう。
【0112】
増幅プライマーは一般に一本鎖ポリヌクレオチド構造である。それらはまた、天然および非天然塩基の混合物、並びに天然および非天然の主鎖結合を含有してもよく、ただし、いかなる非天然の修飾も、増幅反応の条件下で鋳型ポリヌクレオチド鎖にアニーリングする能力および鋳型鎖に相補的な新しいポリヌクレオチド鎖の合成の開始点として作用する能力として定義されるプライマーとしての機能を妨げない。プライマーは、非ヌクレオチド化学的修飾、例えば、エキソヌクレアーゼ耐性を増加させるためのホスホロチオエートをさらに含むことができ、ただし、修飾がプライマー機能を妨げないことを条件とする。
固定化試料の配列決定のための調製
【0113】
本開示の方法は、増幅試薬(増幅部位のアレイおよび複数の異なる修飾標的核酸)を反応させて、それぞれが部位をシーディング(播種)した個々の標的核酸からのアンプリコンのクローン集団を含む複数の増幅部位を産生することを含むことができる。標準反応において、排除増幅は、標的核酸種の比較的遅い速度(例えば、比較的遅い拡散または輸送)対、増幅が、核酸種の複製を部位に充填するために起こる比較的速い速度のために起こる。本明細書に記載の方法において、排除増幅は、部位をシーディングした標的核酸の第1の複製の形成における動力学遅延vs部位を満たすためにその後の複製が作製される比較的速い速度、に起因して起こり得る。例えば、個々の部位は、それぞれが異なるユニバーサル捕捉結合配列を有する(例えば、複数の異なる修飾標的核酸は、ユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含む)、いくつかの異なる標的核酸でシーディングされてもよい。しかしながら、任意の所与の標的核酸についての最初の複製形成は、そのユニバーサル捕捉結合配列の増幅効率に依存すると予想され、その結果、最初の複製形成の平均速度は、後続の複製が生成される速度と比較して比較的遅い。この場合、個々の部位がいくつかの異なる標的核酸でシーディングされていてもよいが、最初に増幅を開始するのは1つのみであり、排除増幅は、典型的には、その標的核酸のみが増幅部位を満たすことを可能にする。より具体的には、第1の標的核酸が増幅を開始すると、その部位は、その複製でキャパシティを急速に満たし、それによって、第2の標的核酸の複製がその部位で作製されるのを防止する。
【0114】
いくつかの実施形態では、たとえ増幅部位が、その部位で増幅を開始する第2の標的核酸の前のキャパシティに満たされていなくても、明らかなクローン性を達成することができる。いくつかの条件下では、第1の標的核酸の増幅は、その部位に輸送される第2の標的核酸からの複製の製造を効果的に上回るか、または圧倒的に製造するのに十分な数の複製がなされる点に進むことができる。例えば、直径500nmより小さい円形特徴部上のブリッジ増幅プロセスを使用する実施形態では、第1の標的核酸についての指数関数的増幅の14サイクル後に、同じ部位での第2の標的核酸からの混入が、Illumina配列決定プラットフォーム上での合成による配列決定分析に悪影響を及ぼすのに不十分な数の混入アンプリコンを生じることが決定された。
【0115】
アレイ中の増幅部位は、全ての実施形態において完全にクローンである必要はない。むしろ、いくつかの用途では、個々の増幅部位は、主に、第1の標的核酸からのアンプリコンでポピュレートすることができ、また、第2の標的核酸からの低レベルの混入アンプリコンを有することもできる。アレイは、混入レベルがアレイのその後の使用に許容できない影響を及ぼさない限り、低レベルの混入アンプリコンを有する1つ以上の増幅部位を有することができる。例えば、アレイを検出アプリケーションで使用する場合、許容可能なレベルの混入は、許容できない方法で、検出技術の信号対雑音または解像度に影響を及ぼさないレベルであろう。したがって、明らかなクローン性は、一般に、本明細書に記載の方法によって作製されるアレイの特定の使用または適用に関連するであろう。特定用途のために個々の増幅部位で許容され得る混入の例示的なレベルとしては、最大でも0.1%、0.5%、1%、5%、10%または25%の混入アンプリコンが挙げられるが、これらに限定されない。アレイは、これらの例示的なレベルの混入アンプリコンを有する1以上の増幅部位を含むことができる。例えば、アレイ中の増幅部位の5%、10%、25%、50%、75%、またはさらには100%までは、いくつかの混入アンプリコンを有することができる。
【0116】
増幅の前に標的核酸が増幅部位に存在する実施形態について、異なる速度の第1のアンプリコンおよびその後のアンプリコン形成を引き起こすための差次的に活性なプライマーの使用が上記で例示されているが、方法はまた、増幅が起こっているにつれて標的核酸が増幅部位に輸送される(例えば、拡散を介して)条件下で実施され得る。したがって、排除増幅は、比較的遅い輸送速度と、その後のアンプリコン形成と比較して比較的遅い第1のアンプリコン産生の両方を利用することができる。したがって、本明細書中に記載される増幅反応は、標的核酸が、(i)第1のアンプリコンの産生、および(ii)アレイの他の部位でのその後のアンプリコンの産生と同時に、溶液から増幅部位に輸送されるように実施され得る。特定の実施では、増幅部位で後続のアンプリコンが産生される平均速度は、標的核酸が溶液から増幅部位に輸送される平均速度を超えることができる。場合によっては、個々の増幅部位において単一の標的核酸から十分な数のアンプリコンを生成して、それぞれの増幅部位のキャパシティを満たすことができる。それぞれの増幅部位のキャパシティを満たすためにアンプリコンが生成される速度は、例えば、個々の標的核酸が溶液から増幅部位に輸送される速度を超えることができる。
【0117】
本明細書中に記載される方法において使用される増幅試薬は、好ましくは、増幅部位において標的核酸の複製を迅速に作製することができる。典型的には、本開示の方法において使用される増幅試薬は、ポリメラーゼおよびヌクレオチド三リン酸(NTP)を含む。当技術分野で公知の様々なポリメラーゼのいずれかを使用することができるが、いくつかの実施形態では、エキソヌクレアーゼ陰性であるポリメラーゼを使用することが好ましい場合がある。NTPは、DNA複製が作製される実施形態のためのデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)であり得る。典型的には、4つの天然種、dATP、dTTP、dGTPおよびdCTPが、DNA増幅試薬中に存在するであろうが、必要に応じて、類似体を使用することができる。NTPは、RNA複製が作製される実施形態のためのリボヌクレオチド三リン酸(rNTP)であり得る。典型的には、4つの天然種、rATP、rUTP、rGTPおよびrCTPがRNA増幅試薬中に存在するであろうが、必要に応じて類似体を使用することができる。
【0118】
増幅試薬は、アンプリコン形成率(速度)を促進し、場合によっては、アンプリコン形成上昇率させるさらなる成分を含むことができる。一例は、リコンビナーゼ負荷タンパク質である。リコンビナーゼは、反復的な侵入/伸長を可能にすることにより、アンプリコン形成を促進することができる。より具体的には、リコンビナーゼは、標的核酸をアンプリコン形成のための鋳型として用いて、ポリメラーゼによる標的核酸の侵入およびポリメラーゼによるプライマーの伸長を容易にすることができる。この過程は、侵入/伸長の各ラウンドから産生されたアンプリコンがその後のラウンドで鋳型となる連鎖反応として繰り返すことができる。変性サイクル(加熱や化学的変性を介する)は必要ないので、このプロセスは標準的なPCRよりも速く起こる可能性がある。このようにして、リコンビナーゼ促進増幅を等温的に行うことができる。一般に、増幅を容易にするために、ATP、または他のヌクレオチド(またはいくつかの場合には、その非加水分解性アナログ)を、リコンビナーゼ促進増幅試薬中に含むことが望ましい。リコンビナーゼ、一本鎖結合(SSB)タンパク質、およびアクセサリータンパク質の混合物が特に有用である。リコンビナーゼ促進増幅のための例示的配合は、TwistDx(ケンブリッジ、UK)によってTwistAmpキットとして市販されているものを含む。リコンビナーゼ促進増幅試薬および反応条件の有用な成分は、米国特許第5,223,414号および第7,399,590号に記載されており、その各々が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
アンプリコン形成を容易にし、場合によってはアンプリコン形成上昇率させるために増幅試薬に含めることができる成分の別の例は、ヘリカーゼである。ヘリカーゼは、アンプリコン形成の連鎖反応を可能にすることにより、アンプリコン形成を促進することができる。変性サイクル(例えば、加熱や化学的変性を介する)は必要ないので、このプロセスは標準的なPCRよりも速く起こる可能性がある。このように、ヘリカーゼ促進増幅を等温的に行うことができる。ヘリカーゼと一本鎖結合(SSB)蛋白質の混合物は、SSBが増幅をさらに促進することができるので、特に有用である。ヘリカーゼ促進増幅のための例示的配合は、Biohelix(Beverly, Mass.)からIsoAmpキットとして市販されているものを含む。さらに、ヘリカーゼタンパク質を含む有用な製剤の例は、米国特許第7,399,590号および第7,829,284号に記載されており、その各々が参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
アンプリコン形成を促進し、場合によってはアンプリコン形成速度を増加させるために増幅試薬に含めることができる成分の別例は、起点結合タンパク質である。
【0121】
溶液中の分子凝集試薬の存在は、排除増幅を助けるために使用することができる。有用な分子凝集試薬の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、フィコール(登録商標)、デキストラン、またはポリビニルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な分子クラウディング試薬および製剤は、米国特許第7,399,590号に記載されている。
【0122】
増幅反応が起こる速度は、増幅反応の1つ以上の活性成分の濃度または量を増加させることによって増加させることができる。例えば、ポリメラーゼ、ヌクレオチド三リン酸、プライマー、リコンビナーゼ、ヘリカーゼまたはSSBの量または濃度を増加させて増幅速度を増加させることができる。場合によっては、量または濃度が増加する(または本明細書に記載の方法で操作される)増幅反応の1つまたは複数の活性成分は、増幅反応の非核酸成分である。
【0123】
増幅速度は、温度を調節することによって、本明細書に記載される方法において増加させることもできる。例えば、1つ以上の増幅部位での増幅速度は、変性または他の有害事象により反応速度が低下する最高温度まで部位の温度を上昇させることにより増加させることができる。最適または所望の温度は、使用中の増幅成分の既知の特性から、または所与の増幅反応混合物について経験的に決定することができる。このような調整は、プライマー融解温度(Tm)の事前予測に基づいて、または経験的に行うことができる。
【0124】
増幅反応が起こる速度は、1つ以上の増幅試薬の活性を増加させることによって増加させることができる。例えば、ポリメラーゼの伸長速度を増加させる補因子を、ポリメラーゼが使用されている反応に加えることができる。いくつかの態様において、マグネシウム、亜鉛またはマンガンのような金属補因子をポリメラーゼ反応に添加することができ、またはベタインを添加することができる。
【0125】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、二本鎖である標的核酸の集団を使用することが望ましい。排除増幅条件下でのサイトのアレイでのアンプリコン形成は、二本鎖標的核酸に対して効率的であることが観察されている。例えば、アンプリコンのクローン集団を有する複数の増幅部位は、リコンビナーゼおよび一本鎖結合タンパク質の存在下で、二本鎖標的核酸から(同じ濃度の一本鎖標的核酸と比較して)より効率的に産生され得る。にもかかわらず、一本鎖標的核酸は、本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態において使用され得ることが理解されるであろう。
【0126】
本明細書に記載の方法は、様々な増幅技術のいずれかを使用することができる。使用できる例示的な技術としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、多重置換増幅(MDA)、またはランダムプライム増幅(RPA)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、増幅は、例えば、増幅部位が所望のキャパシティを有する体積中にアンプリコンを含有することができる場合、溶液中で実施することができる。好ましくは、本開示の方法において排除増幅の条件下で使用される増幅技術は、固相上で実施される。例えば、増幅のために使用される1つ以上のプライマーを、増幅部位で固相に付着させることができる。PCR実施形態では、増幅に使用されるプライマーの一方または両方を固相に付着させることができる。二本鎖アンプリコンは、複製された鋳型配列に隣接する2つの表面付着プライマー間にブリッジ様構造を形成するので、表面に付着した2種のプライマーを利用する形態は、しばしばブリッジ増幅と呼ばれる。例えば、米国特許第5,641,658号、米国特許公開第2002/0055100号、米国特許第7,115,400号、米国特許出願公開第2004/0096853号、米国特許出願公開第2004/0002090号、米国特許出願公開第2007/0128624号、および米国特許出願公開第2008/0009420には、ブリッジ増幅に用いることができる例示的な試薬および条件が記載されている。固相PCR増幅はまた、固相保持体に付着した増幅プライマーの1つおよび液中の第2のプライマーを用いて行うことができる。表面付着プライマーと可溶性プライマーとの組み合わせを使用する例示的なフォーマットは、例えば、Dressman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:8817-8822 (2003)、WO05/010145、米国特許出願公開第2005/0130173号または第2005/0064460号に記載されているような乳化PCRである。乳化PCRは、フォーマットの例示であり、本明細書に記載される方法の目的のために、乳化の使用は任意であり、実際に、いくつかの実施形態では、乳化は使用されないことが理解されるであろう。記載されたPCR技術は、増幅の速度を促進または増加させるために、本明細書の他の箇所に例示された成分を用いて、非環状増幅(例えば、等温増幅)のために修飾することができる。したがって、記載されたPCR技術は、排除増幅条件下で使用することができる。
【0127】
RCA技術は、本開示の方法において使用するために変更することができる。RCA反応に用いることができる例示的な成分およびRCAがアンプリコンを生成する原理は、例えば、Lizardi et al., Nat. Genet. 19:225-232 (1998)、およびUS2007/0099208 A1に記載される。RCAに使用されるプライマーは、液状であるか、または増幅部位で固形保持体面に付着させることができる。上記参考文献に例示されたRCA技術は、本明細書の教示に従って、例えば、特定の用途に適合するように増幅速度を増加させるように改変することができる。したがって、RCA技術は、排除増幅条件下で使用することができる。
【0128】
MDA技術は、本開示の方法において使用するために修正することができる。MDAのいくつかの基本原理および有用な条件は、例えば、Dean et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 99:5261-66 (2002)、Lage et al., Genome Research 13:294-307 (2003)、Walker et al., Molecular Methods for Virus Detection, Academic Press, Inc., 1995、Walker et al., Nucl. Acids Res. 20:1691-96 (1992)、米国特許第5,455,166号、米国特許第5,130,238号、および米国特許第6,214,587号に記載される。MDAに使用されるプライマーは、溶液中にあるか、または増幅部位で固形保持体面に付着され得る。上記参考文献に例示されたMDA技術は、本明細書の教示に従って、例えば、特定の用途に適合するように増幅速度を増加させるように改変することができる。したがって、MDA技術は、排除増幅条件下で使用することができる。
【0129】
特定の実施形態では、記載された増幅技術の組み合わせを使用して、排除増幅条件下でアレイを作製することができる。例えば、RCAおよびMDAは、RCAが溶液中のコンカテマーアンプリコンを生成するために使用される組合せで使用され得る(例えば、溶液相プライマーを使用する)。次いで、増幅部位で固形保持体面に結合されたプライマーを用いて、アンプリコンをMDAの鋳型として使用することができる。この例では、RCA工程とMDA工程を組み合わせた後に産生されたアンプリコンは、増幅部位の表面に付着する。
【0130】
上記のいくつかの実施形態に関して例示されるように、本開示の方法は、循環増幅技術を使用する必要はない。例えば、標的核酸の増幅は、変性サイクルが存在しない増幅部位で行うことができる。例示的な変性サイクルには、増幅反応への化学的変性剤の導入および/または増幅反応の温度の上昇が含まれる。したがって、標的核酸の増幅は、標的核酸およびアンプリコンを変性させる化学試薬で増幅溶液を置換する工程を含む必要はない。同様に、標的核酸の増幅は、標的核酸およびアンプリコンを変性させる温度まで溶液を加熱することを含む必要はない。従って、増幅部位での標的核酸の増幅は、本明細書に記載の方法の時間、等温的に行うことができる。実際、本明細書に記載される増幅方法は、標準条件下でいくつかの増幅技術のために実施される1つ以上の環状操作なしで起こり得る。さらに、いくつかの標準的な固相増幅技術では、標的核酸が基板上にロードされた後、増幅が開始される前に洗浄が行われる。しかしながら、本方法の実施形態において、洗浄工程は、反応部位への標的核酸の輸送と増幅部位での標的核酸の増幅との間で実施される必要はない。代わりに、輸送(例えば拡散による)と増幅が同時に起こり、排除増幅を提供する。
【0131】
いくつかの実施形態において、排除増幅条件下で生じる増幅サイクルを繰り返すことが望ましい場合がある。したがって、標的核酸の複製は、サイクル操作なしで個々の増幅部位で作製することができるが、増幅部位のアレイは、各サイクル後にアンプリコンを含有する部位の数を増加させるために環状に処理することができる。特定の実施形態において、増幅条件は、1サイクルから次のサイクルに変更され得る。例えば、輸送速度を変化させる、または増幅速度を変化させるための上記の1つ以上の条件を、サイクル間で調整することができる。したがって、輸送速度はサイクルごとに増加させることができ、輸送速度はサイクルごとに減少させることができ、増幅速度はサイクルごとに増加させることができ、または増幅速度はサイクルごとに減少させることができる。
組成物
【0132】
本明細書に記載の増幅クラスタリング方法の間またはその後に、異なる組成物が生じることがある。一実施形態では、組成物は、増幅部位のアレイを含む。各部位は、第1および第2捕捉配列をそれぞれ含む第1および第2捕捉核酸を含み、ここで、第1および第2捕捉核酸は、部位の表面に結合される。アレイの異なる部位は、第1の捕捉核酸の第1の捕捉配列にハイブリダイズした標的核酸を含む。異なる部位の標的核酸は、それぞれ、捕捉配列にハイブリダイズするユニバーサル捕捉結合配列を3’末端に含む。第1の捕捉配列と100%の相補性を有するユニバーサル捕捉結合配列よりも捕捉配列に対する親和性が低いユニバーサル捕捉結合配列が存在する。一実施形態では、異なるユニバーサル捕捉結合配列が各部位に存在し、例えば、ユニバーサル捕捉結合配列の第1の異種集団が存在する。第1の異種集団は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8の異なるユニバーサル捕捉結合配列を含むことができる。
【0133】
一実施形態では、第1のユニバーサル捕捉結合配列は、第1の捕捉配列に対して非相補的である1~5個のヌクレオチドを含む。組成物は、第1の捕捉配列に対して100%の相補性を有するユニバーサル捕捉結合配列を有するいくつかの標的核酸を含むことができる。一実施形態では、第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1の異種集団のメンバーは、第1の異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する。第1の異種集団はまた、第1の捕捉配列の長さより短い長さ、例えば、第1の捕捉配列の長さより短い1~12ヌクレオチドの長さを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含むことができる。第1の異種集団の個々のメンバーは、第1の捕捉配列の長さより短い長さを有することができ、第1の捕捉配列の配列に対して非相補的である1~5個のヌクレオチド、または第1の捕捉配列の配列と100%の相補性のいずれかを含むことができる。
【0134】
5’末端は、第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列よりも、第2の捕捉配列に対してより少ない親和性を有する相補体を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列を任意に含むことができる。一実施形態では、第2のユニバーサル捕捉結合配列の相補体は、第2の捕捉配列に対して非相補的である1~5個のヌクレオチドを含む。組成物は、第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する相補体を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列を有するいくつかの標的核酸を含むことができる。一実施形態では、異なる第2のユニバーサル捕捉結合配列が各部位に存在し、例えば、第2のユニバーサル捕捉結合配列の第2の異種集団が存在する。第2の異種集団は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8の異なる第2のユニバーサル捕捉結合配列を含むことができる。一実施形態では、第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する相補体を有する第2の異種集団のメンバーは、第2の異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する。5’末端のユニバーサル捕捉結合配列の第2の異種集団は、第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さなど、第2の捕捉配列の長さよりも短い長さを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含むこともできる。第2の異種集団の個々のメンバーは、第2の捕捉配列の長さより短い長さを有し、第2の捕捉配列の配列に非相補的である1~5個のヌクレオチドを有する相補体、または第2の捕捉配列の配列と100%の相補性の両方を有することができる。
【0135】
結果として得られ得る別の組成物は、各標的核酸が各端部に結合されたユニバーサルアダプタを含む、単一の試料または供給源、例えばライブラリー由来の異なる二本鎖標的核酸を含む溶液を含む。ユニバーサルアダプタはユニバーサル捕捉結合配列を含み、ユニバーサル捕捉結合配列は異種集団である。異種集団は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8の異なるユニバーサル捕捉結合配列を含むことができる。
シークエンシングの使用/シークエンシング方法
【0136】
本開示のアレイは、例えば、本明細書に記載の方法によって製造され、増幅部位に増幅された標的核酸を含む、種々の適用のいずれかのために使用され得る。特に有用な用途は、核酸配列決定である。一例は、合成による配列決定(SBS)である。SBSでは、核酸テンプレート(例えば、標的核酸またはそのアンプリコン)に沿った核酸プライマーの伸長をモニターして、テンプレート中のヌクレオチドの配列を決定する。基礎となる化学的処理は、重合(例えば、ポリメラーゼ酵素によって触媒される)であり得る。特定のポリメラーゼベースのSBS実施形態では、蛍光標識ヌクレオチドは、プライマーに添加されるヌクレオチドの順序およびタイプの検出がテンプレートの配列を決定するために使用され得るように、テンプレート依存的な様式でプライマーに添加される(それによって、プライマーを伸長する)。本明細書に記載のアレイの異なる部位にある複数の異なるテンプレートは、アレイ中のそれらの位置のために異なるテンプレートについて生じる事象を区別することができる条件下で、SBS技術に供することができる。
【0137】
フローセルは、本開示の方法によって製造され、SBSまたは周期的な試薬の反復送達を含む他の検知技術に供されるアレイをハウジングするための便利なフォーマットを提供する。例えば、第1のSBSサイクルを開始するために、1つ以上の標識ヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどを、核酸テンプレートのアレイを収容するフローセルに流入/通過させることができる。プライマー伸長により標識ヌクレオチドが取り込まれるアレイのこれらの部位を検出することができる。任意に、ヌクレオチドは、一旦ヌクレオチドがプライマーに添加されると、さらなるプライマー伸長を終結させる可逆的終結特性をさらに含むことができる。例えば、可逆的ターミネーター部分を有するヌクレオチドアナログをプライマーに添加して、その部位を除去するためにデブロッキング剤が送達されるまでその後の伸長が起こらないようにすることができる。したがって、可逆的終端を使用する実施形態については、脱ブロッキング試薬をフローセルに送達することができる(検出の前または後)。洗浄は、種々の送達工程の間に行うことができる。次いで、サイクルをn時間繰り返すことにより、プライマーをn個のヌクレオチドだけ伸長させ、それにより長さnの配列を検出することができる。本開示の方法によって製造されるアレイと共に使用するために容易に適合され得る例示的なSBS手順、流体システムおよび検出プラットフォームは、例えば、Bentley et al., Nature 456:53-59 (2008)、WO 04/018497、米国特許第7,057,026号、WO 91/06678、WO 07/123,744、米国特許第7,329,492号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、米国特許第7,405,281号、および米国特許第8,343,746号に記載されている。
【0138】
パイロシークエンシングのような、環状反応を使用する他の配列決定手順を使用することができる。パイロシークエンシングは、特定のヌクレオチドが新生核酸鎖に組み込まれるときに無機ピロリン酸(PPi)の放出を検出する(Ronaghi, et al., Analytical Biochemistry 242(1), 84-9 (1996)、Ronaghi, Genome Res. 11(1), 3-11 (2001)、Ronaghi et al. Science 281(5375), 363 (1998)、米国特許第6,210,891号、米国特許第6,258,568号、および米国特許第6,274,320号)。パイロシークエンシングでは、放出されたPPiはATPスルフリラーゼによって直ちにアデノシン三リン酸(ATP)に変換されることによって検出でき、生成されたATPのレベルはルシフェラーゼ産生光子を介して検出できる。したがって、シークエンシング反応は、ルミネセンス検出システムを介してモニターすることができる。蛍光ベースの検出システムに使用される励起放射線源は、パイロシークエンシング手順には必要ない。本開示のアレイへのパイロシークエンシングの適用のために使用することができる有用な流体系、検出部および手順は、例えば、
WIPOが公開する特許出願2012/058096号、US 2005/0191698 A1、米国特許第7,595,883号、およびNo. 7,244,559号に記載されている。
【0139】
ライゲーション反応による配列決定も有用であり、例えば、Shendure et al. Science 309:1728-1732 (2005)、米国特許第5,599,675号、および米国特許第5,750,341号に記載されているものを含む。いくつかの実施形態は、例えば、Bains et al., Journal of Theoretical Biology 135(3), 303-7 (1988)、Drmanac et al., Nature Biotechnology 16, 54-58 (1998)、Fodor et al., Science 251(4995), 767-773 (1995)、およびWO 1989/10977に記載されるような、ハイブリダイゼーションによる配列決定手順を含むことができる。ライゲーションおよびハイブリダイゼーションによる配列決定手順の両方において、アレイの部位に存在する鋳型核酸(例えば、標的核酸またはそのアンプリコン)は、オリゴヌクレオチド送達および検出の繰り返しサイクルに供される。本明細書または本明細書で引用される参考文献に記載されるSBS方法のための流体システムは、ライゲーションによる配列決定またはハイブリダイゼーションによる配列決定手順のための試薬の送達に容易に適合され得る。典型的には、オリゴヌクレオチドは蛍光標識されており、本明細書のSBS手順に関して、または本明細書で引用されている参考文献に記載されているものと同様の蛍光検出器を使用して検出することができる。
【0140】
いくつかの実施形態は、DNAポリメラーゼ活性のリアルタイムモニタリングを含む方法を使用することができる。例えば、ヌクレオチド取り込みは、フルオロフォア-ベアリングポリメラーゼとγ-リン酸標識ヌクレオチドとの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)相互作用、またはゼロモード導波路(ZMW)を介して検出することができる。FRETに基づく配列決定のための技術および試薬は、例えば、Levene et al. Science 299, 682-686 (2003)、Lundquist et al. Opt. Lett. 33, 1026-1028 (2008)、Korlach et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105, 1176-1181 (2008)に記載されている。
【0141】
いくつかのSBS実施形態は、伸長生成物へのヌクレオチドの取り込み時に放出されるプロトンの検出を含む。例えば、放出されたプロトンの検出に基づく配列決定は、Ion Torrent(Guilford, Conn., Life Technologies subsidiary)から市販されている電磁検出部および関連技術、またはUS 2009/0026082 A1、US 2009/0127589 A1、US 2010/0137143 A1、またはUS 2010/0282617 A1に記載されている配列決定方法およびシステムを使用することができる。排除増幅を用いて標的核酸を増幅するための本明細書中に記載される方法は、プロトンを検出するために使用される基材に容易に適用され得る。より具体的には、本明細書に記載の方法を使用して、プロトンを検出するために使用されるアレイの部位にアンプリコンのクローン集団を産生することができる。
【0142】
例えば、本明細書に発明の方法によって製造された本開示のアレイの有用な用途は、遺伝子発現分析である。遺伝子発現は、デジタルRNAシークエンシングと呼ばれるものなどのRNA配列決定技術を用いて検出または定量することができる。RNA配列決定技術は、上記のような当技術分野で公知の配列決定方法を用いて実施することができる。遺伝子発現はまた、アレイへの直接ハイブリダイゼーションによって、またはその産物がアレイ上で検出されるマルチプレックスアッセイを用いて実施されるハイブリダイゼーション技術を用いて検出または定量することができる。本開示のアレイは、例えば、本明細書に発明の方法によって製造されたものであり、また、1つ以上の個体由来のゲノムDNA試料についてのゲノム型を決定するために使用することができる。本開示の一連の開示に基づいて行うことができるアレイベースの発現およびゲノタイピング分析のための例示的な方法は、米国特許第7,582,420号、第6,890,741号、第6,913,884号、または第6,355,431、または米国特許出願公開第2005/0053980号、US 2009/0186349 A1、またはUS 2005/0181440 A1に記載されている。
【0143】
本明細書に記載の方法によって製造されたアレイのための別の有用な用途は、単一細胞配列決定である。インデックス法と組み合わせると、単一細胞配列決定をクロマチンアクセシビリティアッセイで使用して、数千個の単一細胞において活性調節エレメントのプロフィールを作製することができ、単一細胞全ゲノムライブラリーを作製することができる。本開示のアレイ上で実施することができる単一細胞シークエンシングの例は、米国特許出願公開第2018/0023119号、米国仮出願第62/673,023号および第62/680,259号に記載されている。
【0144】
本明細書に記載されている方法の利点は、様々な核酸ライブラリーのいずれかからアレイを迅速かつ効率的に作製することを提供することである。したがって、本開示は、本明細書に記載の方法のうちの1つまたは複数を使用してアレイを作製することができ、さらに、上記に例示したものなどの当技術分野で公知の技術を使用してアレイ上の核酸を検出することができる統合システムを提供する。したがって、本開示の統合システムは、増幅試薬をポンプ、バルブ、リザーバ、流体ラインなどの増幅部位のアレイに送達することができる流体成分を含むことができる。特に有用な流体成分はフローセルである。フローセルは、本開示のアレイを作成し、アレイを検出するために、統合システムにおいて構成および/または使用することができる。例示的なフローセルは、例えば、US 2010/0111768 A1および米国特許第8,951,781号に記載されている。フローセルに例示されるように、統合システムの1つ以上の流体成分を増幅方法および検出方法に使用することができる。核酸配列決定の実施形態を例にとると、統合システムの流体成分の1つ以上を、本明細書中に記載される増幅方法のために、および上に例示されるものなどの配列決定方法における配列決定試薬の送達のために使用することができる。あるいは、統合システムは、増幅方法を実行し、検出方法を実行するために、別々の流体システムを含むことができる。核酸のアレイを作製することができ、また核酸の配列を決定することができる統合配列決定システムの例としては、MiSeq(商標)、HiSeq(商標)、NextSeq(商標)、MiniSeq(商標)、NovaSeq(商標)、およびiSeq(商標)プラットフォーム(Illumina、Inc.、San Diego、Calif.)および米国特許第8,951,781号に記載されたデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。このような装置は、本明細書に記載のガイダンスに従って、排除増幅を用いてアレイを作製するように改変することができる。
【0145】
本明細書に記載される方法を実行することができるシステムは、検出装置と一体化される必要はない。むしろ、スタンドアロンシステムや、他のデバイスと統合されたシステムも可能である。統合システムの文脈において、上記に例示したものと同様の流体成分を、そのような実施形態において使用することができる。
【0146】
検出能力と統合されているか否かにかかわらず、本明細書に記載される方法を実行することができるシステムは、本明細書に記載される方法、技術またはプロセスの1つ以上のステップを実行するための命令の組を実行することができるシステム制御部を含むことができる。例えば、命令は、排除増幅条件下でアレイを作成するための工程の性能を指示することができる。任意に、指示書は、本明細書中に先に記載された方法を使用して核酸を検出するためのステップの性能をさらに指示することができる。有用なシステム制御部は、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ロジック回路、および本明細書に記載される機能を実行することができる任意の他の回路または処理部を使用するシステムを含む、任意の処理部ベースまたはマイクロプロセッサベースのシステムを含むことができる。装置制御部に対する一命令セットは、ソフトウェアプログラムの形成であってもよい。本明細書で使用されるように、「ソフトウェア」および「ファームウェア」という用語は交換可能であり、RAM記憶部、ROM記憶部、EPROM記憶部、EEPROM記憶部、および非蓄積型ではないRAM(NVRAM)記憶部を含む、コンピュータによって実行するために記憶部に記憶された任意のコンピュータプログラムを含む。ソフトウェアは、システムソフトウェアまたはアプリケーションソフトウェアのような様々な形態をとることができる。さらに、ソフトウェアは、別個のプログラムの回収、またはより大きなプログラム内のプログラムモジュール、またはプログラムモジュールの一部の形成であってもよい。また、ソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミングの形態でのモジュール式プログラミングを含んでもよい。
【0147】
各増幅部位に存在する複数のアンプリコンが一緒に検出される、アンサンブル検出の文脈において、本開示のアレイのためのいくつかの応用が、上に例示された。別の実施形態では、標的核酸またはそのアンプリコンのいずれであっても、単一の核酸を各増幅部位で検出することができる。例えば、増幅部位は、検出すべき標的ヌクレオチド配列を有する単一の核酸分子および複数の充填剤核酸を含有するように構成することができる。この例では、充填剤核酸は、増幅部位のキャパシティを満たすように機能し、これらは、必ずしも検出されることを意図していない。検出されるべき単一分子は、充填剤核酸の背景技術中の単一分子を識別することができる方法によって検出することができる。例えば、増加したゲインでサイトを検出するために、またはより高感度の標識を使用するために、上記のアンサンブル検出技術の改変を含む、様々な単一分子検出技術のいずれかを使用することができる。使用することができる単一分子検出方法の他の例は、US 2011/0312529 A1、米国特許第9,279,154号、US2013/0085073 A1に記載されている。
【0148】
単一分子核酸検出に有用なアレイは、以下の修飾を伴う本明細書に記載される1つ以上の方法を用いて作製することができる。複数の異なる標的核酸は、検出される標的ヌクレオチド配列およびフィラーアンプリコンを作製するために増幅されるべき1つ以上のフィラーヌクレオチド配列の両方を含むように構成され得る。複数の異なる標的核酸は、増幅試薬、例えば本明細書の他の箇所に記載されているものに含めることができ、フィラーヌクレオチド配列が増幅部位を満たすような排除増幅条件下で増幅部位のアレイと反応させることができる。標的配列の増幅を禁止しながら充填剤配列を増幅させるために使用され得る例示的な構成としては、例えば、増幅部位に存在する増幅プライマーのための結合部位に隣接する充填剤配列を有する第1の領域と、隣接領域の外側に標的配列を有する第2の領域とを有する単一の標的分子が挙げられる。別の構成では、標的核酸は、標的配列および充填剤配列をそれぞれ担持する別個の分子または鎖を含むことができる。別個の分子または鎖は、粒子に結合するか、または核酸デンドリマーまたは他の分枝構造のアームとして形成することができる。
【0149】
特定の実施形態では、それぞれが充填剤配列および標的配列の両方を含む増幅部位を有するアレイは、プライマー伸長アッセイまたは合成による配列決定技術を使用して検出され得る。このような場合、適切に配置されたプライマー結合部位を使用することにより、大量の充填剤配列ではなく標的ヌクレオチド配列で特定の伸長を達成することができる。例えば、配列決定プライマーのための結合部位は、標的配列の上流に配置することができ、充填剤配列のいずれにも存在しないことができる。あるいは、標的配列は、標準ヌクレオチドに水素結合することができない1つ以上の非天然ヌクレオチド類似体を含むことができる。非天然ヌクレオチドは、プライマー結合部位の下流(例えば、標的配列または標的配列およびプライマー結合部位に介在する領域)に配置することができ、そのようにして、適切なヌクレオチドパートナー(すなわち、標的配列中の非天然アナログに水素結合することができるもの)が添加されるまで、伸長または合成による配列決定を妨げるであろう。ヌクレオチドアナログイソシトシン(isocytosine)(isoC)およびイソグアニン(isoG)は、それらが互いに特異的に対合するが、ほとんどの伸長および合成による配列決定技術において使用される他の標準的ヌクレオチドとは対合しないので、特に有用である。標的配列中または標的配列の上流でisoCおよび/またはisoGを使用するさらなる利点は、増幅に使用されるヌクレオチド混合物からそれぞれのパートナーを省略することにより、増幅工程中の標的配列の望ましくない増幅を防止することである。
【0150】
本開示のアレイ、例えば、本明細書に発明の方法によって製造されたアレイは、検出方法のために使用される必要はないことが理解されるであろう。むしろ、アレイは、核酸ライブラリーを保存するために使用することができる。したがって、アレイは、その中の核酸を保存する状態で保存することができる。例えば、アレイは、乾燥状態、凍結状態(例えば、液体窒素中)、または核酸を保護する溶液中に保存することができる。あるいは、または加えて、アレイは、核酸ライブラリーを複製するために使用され得る。例えば、アレイを使用して、アレイ上の1つ以上の部位から複製アンプリコンを作成することができる。
【0151】
標的核酸をアレイの増幅部位に輸送し、増幅部位で捕捉された標的核酸の複製を作製することに関して、本開示のいくつかの実施形態が本明細書に例示されている。非核酸標的分子にも同様の方法を用いることができる。したがって、本明細書中に記載される方法は、例示された標的核酸の代わりに他の標的分子と共に使用され得る。例えば、本開示の方法は、異なる標的分子の集団から個々の標的分子を輸送するために実施することができる。各標的分子は、捕捉部位で反応を開始するために、アレイの個々の部位に輸送され得る(場合によっては捕捉され得る)。各部位での反応は、例えば、捕捉された分子の複製を生成することができ、または反応は、捕捉された分子を単離または隔離するために部位を変えることができる。いずれの場合も、最終結果は、異なるタイプの標的分子を含む集団から存在する標的分子のタイプに関してそれぞれ純粋なアレイの部位である。
【0152】
核酸以外の標的分子を使用する特定の実施形態では、異なる標的分子のライブラリーは、排除増幅を利用する方法を使用して作製され得る。例えば、標的分子アレイは、アレイの部位が溶液から標的分子でランダムにシーディングされ、標的分子の複製が生成されて、シーディングされた部位の各々をキャパシティまで充填する条件下で作製され得る。本開示の排除増幅方法に従って、シーディングおよび複製処理は、複製が作られる速度がシーディング速度を超える条件下で同時に進行することができる。したがって、第1の標的分子によってシーディングされた部位で複製が形成される比較的迅速な速度は、第2の標的分子を部位のシーディングから効果的に排除するであろう。ある場合には、標的分子のシーディングは、標的分子の複製以外の処理によって、部位をキャパシティまで満たす反応を開始するであろう。例えば、部位での標的分子の捕捉は、最終的に部位を第2の標的分子を捕捉することができないようにする連鎖反応を開始することができる。連鎖反応は、標的分子が捕捉される速度を超える速度で起こり、それによって、排除増幅の条件下で起こる。
【0153】
標的核酸に関して例示されるように、他の標的分子に適用した場合の排除増幅は、アレイの部位で反復反応(例えば、連鎖反応)を開始するための比較的遅い速度vs一旦開始された反復反応を継続するための比較的速い速度を利用することができる。前のパラグラフの例では、排除増幅は、例えば、標的分子シーディングの比較的遅い速度(例えば、比較的遅い拡散)vs反応が起こる比較的速い速度のために、例えば標的分子種の複製を部位に充填するために起こる。別の例示的な実施形態では、排除増幅は、部位をシーディングした標的分子の第1の複製の形成の遅れ(例えば、遅延または遅い活性化)vs部位を充填するために後続の複製が作られる比較的速い速度に起因して起こり得る。この例では、個々の部位は、いくつかの異なる標的分子でシーディングされていてもよい。しかしながら、任意の所与の標的分子についての最初の複製形成は、最初の複製形成の平均速度が、後続の複製が生成される速度と比較して比較的遅くなるように、ランダムに活性化され得る。この場合、個々の部位にはいくつかの異なる標的分子がシーディングされているかもしれないが、排除増幅は、これらの標的分子のうちの1つのみを複製することを可能にする。
【0154】
したがって、本開示は、(a)(i)部位の配列、および(ii)複数の異なる標的分子を有する溶液を提供する工程であって、溶液中の標的分子の数がアレイ中の部位の数を超え、異なる標的分子が前記複数の部位への流体アクセスを有し、前記部位のそれぞれが前記複数の異なる標的分子中のいくつかの標的分子に対するキャパシティを含む、工程と、(b)前記試薬を反応させて、それぞれが前記複数から単一の標的分子を有する複数の部位を生成するか、またはそれぞれが溶液からの個々の標的分子からの複製の純粋な集団を有する複数の部位を生成する工程と、を含むことができる分子のアレイを作製するための方法を提供し、前記反応する工程は、(i)異なる分子を平均輸送速度で前記部位に輸送する工程と、(ii)平均反応速度で前記部位をキャパシティに充填する反応を開始する工程とを同時に含み、前記平均反応速度は前記平均輸送速度を超える。いくつかの実施形態において、工程(b)は、試薬を反応させて、複数から単一の標的分子を各々有する複数の部位を生成させるか、または溶液から個々の標的分子から純粋な複製集団を各々有する複数の部位を生成させることによって代わりに実施することができ、反応することは、(i)反復反応(例えば、連鎖反応)を開始させて、各部位で標的分子から生成物を形成すること、および(ii)各部位で反応を継続させて、後続の生成物を形成することを含み、ここで、反応がその部位で起こる平均速度は、その部位で反応が開始される平均速度を超える。
【0155】
上記の非核酸実施形態において、標的分子は、アレイの各部位で生じる反復反応の開始剤であり得る。例えば、反復反応は、他の標的分子が部位を占めることを妨げるポリマーを形成することができる。あるいは、反復反応は、部位に輸送された標的分子の分子複製を構成する1つ以上のポリマーを形成することができる。
例示的な実施形態
【0156】
(第1実施形態) 核酸を増幅するための方法であって、
(a)増幅試薬を提供することであって、
(i)増幅部位のアレイであって、
該増幅部位は捕捉核酸の2つの集団を含み、各集団は捕捉配列を含み、
第1の集団は、第1の捕捉配列を含み、第2の集団は、第2の捕捉配列を含む、増幅部位のアレイと、
(ii)複数の異なる修飾二本鎖標的核酸を含む溶液であって、
前記異なる修飾二本鎖標的核酸は、前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも前記第1の捕捉配列に対する親和性が低い第1のユニバーサル捕捉結合配列を前記3’末端に含む、溶液と、
を含む、増幅試薬を提供することと、
(b)前記増幅試薬を反応させて、各々が前記溶液からの個々の標的核酸からのアンプリコンのクローン集団を含む複数の増幅部位を生成することと、
を含む、方法。
【0157】
(第2実施形態) 核酸を増幅するための方法であって、
(a)増幅試薬を提供することであって、
(i)増幅部位のアレイであって、
該増幅部位は捕捉核酸の2つの集団を含み、各集団は捕捉配列を含み、
第1の集団は、第1の捕捉配列を含み、第2の集団は、第2の捕捉配列を含む、増幅部位のアレイと、
(ii)複数の異なる修飾標的核酸を含む溶液であって、
前記異なる修飾標的核酸は、前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも前記第1の捕捉配列に対する親和性が低い第1のユニバーサル捕捉結合配列を前記3’末端に含む、溶液と、
を含む、増幅試薬を提供することと、
(b)前記増幅試薬を反応させて、各々が前記溶液からの個々の標的核酸からのアンプリコンのクローン集団を含む複数の増幅部位を生成することであって、前記反応が、
(i)各増幅部位に輸送する個々の標的核酸から第1のアンプリコンを産生することと、
(ii)各増幅部位または前記第1のアンプリコンに輸送される個々の標的核酸から、次のアンプリコンを産生することと、
を含み、
前記次のアンプリコンが増幅部位で産生される平均速度は、前記第1のアンプリコンが増幅部位で産生される平均速度よりも遅い、方法。
【0158】
(第3実施形態) 核酸配列を決定するための方法であって、
アレイ上の複数のアンプリコン部位の各々でアンプリコンの明らかなクローン集団を検出する配列決定手順を実施することを含み、
前記アレイが、
(a)増幅試薬を提供することであって、
(i)複数の増幅部位であって、
該増幅部位は捕捉核酸の2つの集団を含み、各集団は捕捉配列を含み、
第1の集団は、第1の捕捉配列を含み、第2の集団は、第2の捕捉配列を含む、複数の増幅部位と、
(ii)複数の異なる修飾標的核酸を含む溶液であって、
前記異なる修飾標的核酸は、前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも前記第1の捕捉配列に対する親和性が低い第1のユニバーサル捕捉結合配列を前記3’末端に含む、溶液と、
を含む、増幅試薬を提供することと、
(b)前記増幅試薬を反応させることと、
を含むプロセスによって作製される、方法。
【0159】
(第4実施形態) 前記溶液中の前記異なる修飾標的核酸の数が、前記アレイ中の増幅部位の数を超え、
前記異なる修飾標的核酸は、前記複数の増幅部位への流体アクセスを有し、
前記増幅部位の各々は、複数の異なる核酸中のいくつかの核酸に対するキャパシティを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
(第5実施形態) 前記反応は、
(i)前記異なる修飾標的核酸を平均輸送速度で増幅部位に輸送することと、
(ii)前記増幅部位にある前記標的核酸を、平均増幅速度で増幅し、該平均増幅速度は、平均輸送速度未満であることと、
を同時に行うことを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
(第6実施形態) 前記溶液中の前記複数の異なる修飾標的核酸が、
(i)前記溶液から前記増幅部位への前記異なる修飾標的核酸を輸送することと、
(ii)前記増幅速度で前記増幅部位にある前記標的核酸を増幅して、各々がアンプリコンの明らかなクローン集団を含むアンプリコン部位のアレイを生成することと、
を同時に生じる濃度である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
(第7実施形態) 前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列と100%未満の相補性を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
(第8実施形態) 前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列に非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
(第9実施形態) 前記異なる修飾標的核酸が、第1のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、(i)前記第1の捕捉配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチド、または(ii)前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
(第10実施形態) 前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する前記異種集団のメンバーが、前記異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
(第11実施形態) 前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列の長さより短い長さを有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
(第12実施形態) 前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列の長さよりも1から12ヌクレオチド短い長さを有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
(第13実施形態) 前記異なる修飾標的核酸が、第1のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、前記第1の捕捉配列の長さよりも短い1~12ヌクレオチドを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
(第14実施形態) 前記異種集団が、(iii)前記第1の捕捉配列の長さより短い長さを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列をさらに含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
(第15実施形態) 個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列の長さよりも1から12ヌクレオチド短い長さを有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
(第16実施形態) 前記第1の捕捉配列の長さより短い長さを有する前記異種集団の個々のメンバーが、前記第1の捕捉配列の配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチド、または前記第1の捕捉配列の配列と100%の相補性を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
(第17実施形態) 前記異なる修飾標的核酸が、前記第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列よりも、前記第2の捕捉配列に対してより少ない親和性を有する相補体を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列を前記5’末端に含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
(第18実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列の前記相補体が、前記第2の捕捉配列と100%未満の相補性を有する、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
(第19実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列の前記相補体が、前記第2の捕捉配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
(第20実施形態) 前記異なる修飾標的核酸が、第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、該異種集団が、(i)前記第2の捕捉配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドまたは(ii)前記第2の捕捉配列と100%の相補性を有する相補体を含む個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
(第21実施形態) 前記第2の捕捉配列と100%の相補性を有する相補体を含む前記異種集団のメンバーが、前記異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
(第22実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも短い長さを有する、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
(第23実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1から12ヌクレオチド短い長さを有する、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
(第24実施形態) 前記異なる修飾標的核酸が、第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
(第25実施形態) 前記異種集団が、(iii)前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列をさらに含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
(第26実施形態) 個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
(第27実施形態) 前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する前記異種集団の個々のメンバーが、前記第2の捕捉配列の配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含む相補体、または前記第2の捕捉配列の配列と100%の相補性を有する相補体を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
(第28実施形態) 前記標的核酸がDNAである、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
(第29実施形態) 前記増幅部位のアレイが、表面上にアレイの特徴部を含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0185】
(第30実施形態) 前記特徴部の各々についての面積が、前記増幅部位に輸送される標的核酸の排除体積の直径より大きい、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0186】
(第31実施形態) 前記特徴部が連続しておらず、捕捉剤を欠く表面の格子間領域によって分離されている、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
(第32実施形態) 前記特徴部の各々が、ビーズ、ウェル、チャネル、リッジ、凸部またはそれらの組み合わせを含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
(第33実施形態) 前記増幅部位のアレイが、溶液中のビーズまたは表面上のビーズを含む、実施形態1~2のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
(第34実施形態) 前記増幅部位に輸送される前記標的核酸の増幅が等温的に起こる、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
(第35実施形態) 前記増幅部位に輸送される前記異なる修飾標的核酸の増幅が、変性サイクルを含まない、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
(第36実施形態) アンプリコンのクローン集団を含む複数の前記増幅部位が、(b)の間に前記異なる修飾標的核酸が流体アクセスを有した増幅部位の40%を超える、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
(第37実施形態) (b)の間に、それぞれの前記増幅部位のキャパシティを満たすために、それぞれの前記増幅部位における個々の前記標的核酸から十分な数のアンプリコンが生成される、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
(第38実施形態) それぞれの前記増幅部位のキャパシティを満たすために前記アンプリコンが生成される速度が、個々の標的核酸がそれぞれ個々の増幅部位に輸送される速度未満である、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
(第39実施形態) 前記輸送することが、受動拡散を含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
(第40実施形態) 前記増幅試薬がポリメラーゼおよびリコンビナーゼをさらに含む、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
(第41実施形態) ライブラリーの製造方法であって、
複数の二本鎖標的核酸の溶液を提供することと、
ユニバーサルアダプタを二本鎖標的核酸の両末端にライゲーションして、第1の複数の修飾標的核酸を形成することと、
を含み、
前記修飾標的核酸の各々は、前記ユニバーサルアダプタに隣接する標的核酸を含み、
前記ユニバーサルアダプタは、(i)二本鎖核酸の領域と、(ii)3’末端にユニバーサル捕捉結合配列を含む一本鎖非相補的核酸鎖の領域とを含み、
前記ユニバーサル捕捉結合配列は、異種集団を含み、
前記ライゲーションは、前記ユニバーサルアダプタの二本鎖核酸の領域を、二本鎖標的断片の各端部に共有結合的に結合させる、
方法。
【0197】
(第42実施形態) 前記3’末端におけるユニバーサル捕捉結合配列の前記異種集団のメンバーが、1、2、または3ヌクレオチドで互いに異なる、実施形態41に記載の方法。
【0198】
(第43実施形態) 前記3’末端におけるユニバーサル捕捉結合配列の前記異種集団のメンバーが、互いに1~12ヌクレオチド異なる長さを有する、実施形態41または42に記載の方法。
【0199】
(第44実施形態) 3’末端のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団のメンバーが、1、2、もしくは3ヌクレオチドで互いに異なり、1~12ヌクレオチド互いに異なり、またはそれらの組み合わせである、実施形態41~43のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
(第45実施形態) 一本鎖非相補的核酸鎖の領域が、5’末端に第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態41~44のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
(第46実施形態) 5’末端の第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団のメンバーが、1、2、または3ヌクレオチドで互いに異なる、実施形態41~45のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
(第47実施形態) 5’末端の第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団のメンバーが、互いに1~12ヌクレオチド異なる長さを有する、実施形態41~46のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
(第48実施形態) 5’末端の第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団のメンバーが、1、2、または3ヌクレオチドで互いに異なっており、1~12ヌクレオチドまたはそれらの組み合わせによって互いに異なっている、実施形態41~47のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
(第49実施形態) 増幅部位のアレイと、増幅部位に結合した少なくとも1つの標的核酸とを含む組成物であって、
前記増幅部位は捕捉核酸の2つの集団を含み、各集団は捕捉配列を含み、
第1の集団は第1の捕捉配列を含み、第2の集団は第2の捕捉配列を含み、
前記標的核酸は、前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する第1のユニバーサル捕捉結合配列よりも前記第1の捕捉配列に対する親和性が低い第1のユニバーサル捕捉結合配列を3’末端に含み、
前記標的核酸ユニバーサル捕捉結合配列は、前記第1の捕捉配列にハイブリダイズされる、組成物。
【0205】
(第50実施形態) 前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列と100%未満の相補性を有する、実施形態49に記載の組成物。
【0206】
(第51実施形態) 前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列に非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含む、実施形態49または50に記載の組成物。
【0207】
(第52実施形態) 前記アレイの増幅部位の少なくとも30%が、少なくとも1つの標的核酸によって占められる、実施形態49~51のいずれか1つに記載の組成物。
【0208】
(第53実施形態) 前記第1のユニバーサル捕捉結合配列が、異種集団を含み、該異種集団が、(i)前記第1の捕捉配列に対して非相補的である、1、2、または3つのヌクレオチドまたは(ii)前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する、個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含み、前記異種集団のメンバーが、異なる増幅部位に結合される、実施形態49~52のいずれか1つに記載の組成物。
【0209】
(第54実施形態) 前記第1の捕捉配列と100%の相補性を有する前記異種集団のメンバーが、前記異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する、実施形態49~53のいずれか1つに記載の組成物。
【0210】
(第55実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも短い長さを有する、実施形態49~54のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
(第56実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、実施形態49~55のいずれか1つに記載の組成物。
【0212】
(第57実施形態) 前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸が、第1のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、前記第1の捕捉配列の長さ未満の1~12ヌクレオチドを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態49~56のいずれか1つに記載の組成物。
【0213】
(第58実施形態) 前記異種集団が、(iii)前記第1の捕捉配列の長さより短い長さを有する個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列をさらに含む、実施形態49~57のいずれか1つに記載の組成物。
【0214】
(第59実施形態) 短い長さを含む個々の第1のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第1の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、実施形態49~58のいずれか1つに記載の組成物。
【0215】
(第60実施形態) 短い長さを有する前記異種集団の個々のメンバーが、前記第1の捕捉配列の配列に対して非相補的である、1、2、もしくは3つのヌクレオチドを含む、または前記第1の捕捉配列の配列と100%の相補性を有する、実施形態49~59のいずれか1つに記載の組成物。
【0216】
(第61実施形態) 前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸が、前記第2の捕捉配列に対して100%の相補性を有する相補体を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列よりも、前記第2の捕捉配列に対してより少ない親和性を有する相補性を有する第2のユニバーサル捕捉結合配列を前記5’末端に含む、実施形態49~60のいずれか1つに記載の組成物。
【0217】
(第62実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列の相補体が、前記第2の捕捉配列と100%未満の相補性を有する、実施形態49~61のいずれか1つに記載の組成物。
【0218】
(第63実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列の相補体が、前記第2の捕捉配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドを含む、実施形態49~62のいずれか1つに記載の組成物。
【0219】
(第64実施形態) 前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸が、第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、(i)前記第2の捕捉配列に対して非相補的である1、2、もしくは3つのヌクレオチドを有する相補体または(ii)前記第2の捕捉配列と100%の相補性を有する相補体を含む、個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態49~63のいずれか1つに記載の組成物。
【0220】
(第65実施形態) 前記第2の捕捉配列と100%の相補性を有する相補体を含む前記異種集団のメンバーが、前記異種集団の残りの他のメンバーよりも多い数で存在する、実施形態49~64のいずれか1つに記載の組成物。
【0221】
(第66実施形態) 前記標的核酸が、前記5’末端に、前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態49~65のいずれか1つに記載の組成物。
【0222】
(第67実施形態) 前記第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、実施形態49~66のいずれか1つに記載の組成物。
【0223】
(第68実施形態) 前記組成物が、複数の異なる標的核酸を含み、前記異なる標的核酸が、第2のユニバーサル捕捉結合配列の異種集団を含み、前記異種集団が、前記第2の捕捉配列の長さ未満の1~12ヌクレオチドを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列を含む、実施形態49~67のいずれか1つに記載の組成物。
【0224】
(第69実施形態) 前記異種集団が、(iii)前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列をさらに含む、実施形態49~68のいずれか1つに記載の組成物。
【0225】
(第70実施形態) 個々の第2のユニバーサル捕捉結合配列が、前記第2の捕捉配列の長さよりも1~12ヌクレオチド短い長さを有する、実施形態49~69のいずれか1つに記載の組成物。
【0226】
(第71実施形態) 前記第2の捕捉配列の長さより短い長さを有する前記異種集団の個々のメンバーが、前記第2の捕捉配列の配列に対して非相補的である1、2、または3つのヌクレオチドまたは前記第2の捕捉配列の配列と100%の相補性を有する相補体を含む、実施形態49~70のいずれか1つに記載の組成物。
【0227】
(第72実施形態) 前記標的核酸がDNAである、実施形態49~71のいずれか1つに記載の組成物。
実施例
【0228】
本発明を以下の実施例により説明する。特定の例、材料、量、および手順は、本明細書に記載される本発明の範囲および趣旨に従って広く解釈されるべきであることを理解されたい。
実施例1
【0229】
一般的な分析法と条件
特記しない限り、これは、本明細書に記載される実施例において使用される一般的なアッセイ条件を記載する。
【0230】
標準的なNextera(商標)ライブラリー調製から開始して核酸ライブラリーを作製し、ヒトgDNAのタグ付けを通してアダプタのユニバーサル部分を導入した。次いで、この普遍的な標識は、異なるアダプタ対(PCR1-PCR21)の各々に対して1つずつ、個々の反応に分割された。これらの反応のそれぞれにおいて、Nextera(商標)XTライブラリー調製試薬(Illumina、Inc.、San Diego、California)を用いて、標準P5/P7アダプタを修飾アダプタに置き換えることにより、12サイクルのPCRにより修飾アダプタを導入した。改変されたアダプタは、標準P5/P7配列(以下に概説する)からの変化により設計され、Integrated DNA Technologies (IDT Inc.、Skokie、Illinois)により合成された。
実施例2
【0231】
動力学遅延のためのアダプタ変異体の評価
標準のNextera(商標)ライブラリーとは異なるライブラリーを生成するために、一連の改変アダプタが使用された(表1)。これらのアダプタは、標準よりもわずかに短い(-4bpまたは-9bp)、または、P5/P7領域の長さに沿って1、2、または3つの不一致(「ゆらぎ」塩基:それぞれ1W、2W、または3W)が導入されていた。突然変異の範囲は、完全なP5&P7配列(PCR1)から両端の3つの不一致(PCR 21)までであった。
【0232】
次いで、各ライブラリーの濃度を定量し、ライブラリーを同一濃度に正規化した。次に、異なる改変アダプタを有するライブラリーを、カスタムプライマーを有するIlluminaプラットフォーム用KAPAライブラリー定量キット(Kapa Biosystems)を用いてqPCR装置(BioRad CFX384リアルタイムシステム)上で別々に増幅し、フローセル条件をシミュレートして表1の結果を生成した。効率は、qPCRのために標準的に定義されたCt (閾値サイクル)に達するのに必要なサイクル数から計算した。
【0233】
【0234】
αβ-4はアダプタから除去された4つの塩基対を指し;αβ-9はアダプタから除去された9つの塩基対を指し;1W、2W、3Wはそれぞれ、アレイの表面に存在する捕捉核酸に結合する領域の長さだけ存在する1、2、または3つのゆらぎ不一致を指し;1MM、真の不一致;FCP5、FCP7、全長P5、およびP7プライマーをそれぞれ指す。
実施例3
【0235】
シークエンシングを用いた動力学遅延のためのアダプタ変異体の評価
異なる変異型アダプタを選択し、それら自体またはHiSeq(商標)Xフローセル上のグループのいずれかで実行した(表2)。全ての配列決定は、標準試薬キットを用いてIllumina HiSeq(商標)X装置上で行った。
【0236】
【0237】
結果
図3Aに示すように、レーン1、2、および4は、不一致が少なく効率が高いアダプタを用いた反応であり、予想通り、フィルタを通過する高強度および高割合のクラスターをもたらした。レーン3および5は、より多くの不一致およびより低い効率を有するアダプタを用いた反応であり、予想通り、フィルタを通過する低強度および低割合のクラスターをもたらした。レーン6、7、および8は、高効率および低効率のアダプタの混合物であった。反対に直感的に、混合物は個々の成分の性能の平均として(例えば、高効率と低効率の中間)性能を果たさなかったが、強度とクラスター通過フィルタの両方において全ての単一型ライブラリーを上回った。したがって、驚くべき結果は、平均相同性を低下させることにより、増幅速度の平均が低下したにもかかわらず、ナノウェルのいわゆるモノクローナル性の速度が改善されたことである。新規性は、ある程度の変動性がアダプタ配列に導入されることであり、その結果、ここではテンプレート集団の間にある範囲の効率性が存在する。このようにして、複数の鋳型がパッド上にシーディングされると、通常、他のものに比べて利点があり、それが明らかにパッドを支配する。さらに、縮小相同性は、後の増幅の効率に影響を及ぼすことなく、最初の複製にのみ導入される遅延が生じるように、娘複製で補正される。
【0238】
異なる変異型アダプタを選択し、それら自体またはHiSeq(商標)Xフローセル上のグループのいずれかで実行した(表3)。上記のように、全ての配列決定は、標準試薬キットを用いてIllumina HiSeq(商標)X装置上で行った。
【0239】
【0240】
変異型アダプタのグループを混合物(例えば、レーン7)中で実施した場合、それらを等濃度で組み合わせた。従来のシークエンシングラン、すなわち、提案された方法を使用しないランでは、同じアダプタの混合ライブラリーの等しい濃度は、フローセル上の等しい比率の読み取りをもたらすであろう。
図3Bに示すように、異なる変異アダプタの混合物は、それらの効率に比例し、それらのシーディング濃度に比例しない最終読み取りカウントの表現をもたらし、したがって、提案された方法の有効性の実施、すなわち、より低い親和性を有するアダプタは、より長い動力学遅延を有し、最終読み取りのより低い割合をもたらした。
【0241】
全ての特許、特許出願、および出版物の完全な開示、並びに、本明細書に引用される(例えば、GenBankおよびRefSeqにおけるヌクレオチド配列提出、並びに、例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDB、およびGenBankおよびRefSeqにおけるアノテーション付きコーディング領域からの翻訳を含む)電子的に利用可能な材料は、その全体が参照により援用される。刊行物(補足表、補足図、補足材料と方法、および/または補足実験データなど)において参照された補足資料も同様にその全体が参照により援用される。本出願の開示と参照により本明細書に組み込まれる文書の開示との間に矛盾が存在する場合、本出願の開示が支配するものとする。上記の詳細な説明および実施例は、理解を明確にするためにのみ与えられている。そこから不必要な制限は理解されるべきではない。本開示は、示され記載された正確な詳細に限定されるものではなく、当業者にとって自明な変形例は、特許請求の範囲によって定義される開示の中に含まれる。
【0242】
明細書およびクレームにおいて使用される成分、分子量等の量を表す全ての数字は、特に示されていない限り、「約」という用語によって、全ての場合に修正されるものとして理解されるものであり、従って、別段に示されていない限り、明細書およびクレームに記載される数値パラメータは、本開示によって得られるように求められる所望の特性に依存して変化し得る近似である。少なくとも、相当主義を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の桁数に照らし、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0243】
本開示の広い範囲を規定する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体例に記載された数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、全ての数値は、本質的に、それらのそれぞれの試験測定において見出された標準偏差から生じる範囲を含む。
【0244】
すべての見出しは読者の利便性のためのものであり、見出しの後に続くテキストの意味を制限するために使用されるべきではない。