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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】防災設備の伝送システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20250408BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B17/00 C
G08B17/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021046066
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144875
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
(72)【発明者】
【氏名】小島 美典
(72)【発明者】
【氏名】溝口 英史
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-196298(JP,A)
【文献】特開平09-115081(JP,A)
【文献】特開2009-267960(JP,A)
【文献】特開2015-139658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0278564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
G08B 17/00,23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、前記回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、前記回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、前記端末機器は自己のアドレスが指定された前記呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、
所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、前記呼出電文に所定の配線確認情報を含めて送信し、
前記端末機器は、自己のアドレスを指定した前記配線確認情報を含む前記呼出電文を受信した場合に、前記配線確認情報を含む応答電文を送信し、
前記配線確認要求を受け付けていない他の回線ユニットは、前記配線確認情報を含む応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報することを特徴とする防災設備の伝送システム。
【請求項2】
制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、前記回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、前記回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、前記端末機器は自己のアドレスが指定された前記呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、
所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、所定時間又は前記配線確認要求が解除されるまでの間、前記呼出電文の送信を停止し、前記前記呼出電文の停止中に前記応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報することを特徴とする防災設備の伝送システム。
【請求項3】
制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、前記回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、前記回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、前記端末機器は自己のアドレスが指定された前記呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、
前記複数の回線ユニットは、ランダムに設定される配線確認時間の間、前記呼出電文の送信を停止し、前記前記呼出電文の停止中に前記応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報することを特徴とする防災設備の伝送システム。
【請求項4】
制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、前記回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、前記回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、前記端末機器は自己のアドレスが指定された前記呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、
所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、所定の配線確認電文を含めて送信し、
前記配線確認要求を受け付けていない他の回線ユニットは、前記配線確認電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報することを特徴とする防災設備の伝送システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の防災設備の伝送システムに於いて、前記防災設備はガス系消火設備であり、前記複数の回線ユニットから引き出された伝送路に前記複数の端末機器として複数の操作箱が接続されたことを特徴とする防災設備の伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御盤から引き出された複数の伝送路に端末機器を接続し、伝送路単位に制御盤からアドレスを指定した呼出電文を送信すると共に端末機器から応答電文を受信して制御を行う防災設備の伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災が発生した場合に二酸化炭素やハロンガス等の消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備にあっては、水損や汚損を嫌う機器を設置している室内において、消火による機器損失を最小限に抑えつつ迅速な消火を行うことを可能とする。
【0003】
このようなガス系消火設備は、制御盤に自動モードを設定していた場合には、防護区画に設置した2系統に接続された各火災感知器からの火災発報(2系統のAND発報)があった場合に、ガス放出する起動条件が成立したと判断して所定時間のカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了すると、制御盤から起動装置に起動信号を出力して動作し、起動装置から二酸化炭素等の開放ガスを防護区画に対応したガス供給配管に設けた選択弁に供給して開くと共に消火ガス貯蔵容器の栓を開け、噴射ヘッドから消火ガスを放出する。
【0004】
また制御盤に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器の発報によって火災を発見し、防護区画に設置した操作箱の扉を開いて起動スイッチを押した場合にガス放出する起動条件が成立したと判断して制御盤がカウントダウンを開始し、カウントダウンが終了すると同様にして消火ガスを放出する。
【0005】
図10は従来のガス系消火設備の伝送システムを示した説明図であり、制御盤100には回線ユニット106(106-1),106(106-2)と共通ユニット108が設けられ、回線ユニット106(106-1),106(106-2)から引き出された伝送路104(104-1),104(104-2)に、アドレスA1~A4を設定した例えば4台の操作箱102が接続されている。
【0006】
回線ユニット106(106-1),106(106-2)は自己の伝送路104(04-1),104(104-2)に接続された操作箱102のアドレスA1~A4を順次指定して呼出電文を送信し、操作箱102は自己のアドレスを指定した呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する。このような呼出電文と応答電文の送受信により、制御盤10と操作箱102の間でガス消火制御に必要な制御信号や表示信号をシリアル伝送により送受信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-062432号公報
【文献】特開平11-245809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このような従来のガス消火設備にあっては、回線ユニット106(106-1),106(106-2)に割り当てられた操作箱102を、それぞれの伝送路104(104-1),104(104-2)に接続する配線作業を行った場合に、伝送路105に示すように誤って伝送路104(104-1),104(104-2)の間を接続してしまうことが想定される。
【0009】
このように伝送路105によって伝送路104(104-1),104(104-2)を誤接続した場合、制御盤100の電源投入により回線ユニット106(106-1),106(106-2)は同時に起動し、同じタイミングでアドレスA1~A4を順次指定した呼出電文を伝送路106(106-1),106(106-2)に送信する。
【0010】
ここで、伝送路104(104-1),104(104-2)は伝送路105によって誤接続されており、また、伝送路の長さも伝送遅延を生ずるほど長くないため、操作箱102は回線ユニット106(106-1),106(106-2)から確認電文を同時に受信して応答電文を送信することとなり、伝送路104(104-1),104(104-2)は伝送路105により誤接続されていても、正常に呼出電文と応答電文の送受信が行われる。
【0011】
しかしながら、例えば伝送回線104(104-1)に接続している操作箱102で起動スイッチの操作等を行った場合、スイッチ起動情報を含む応答電文は、伝送路の誤接続により回線ユニット106(106-1),106(106-2)の両方で受信され、回線ユニット106(106-2)が誤った制御を行う問題があり、設備の運用を開始した早い段階で、伝送路の誤接続を検出して対処する必要がある。
【0012】
本発明は、制御盤から引き出され複数の端末機器を接続した異なる伝送路の間の誤配線を検出して警報することで迅速且つ適切に誤配線に対処可能とする防災設備の伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(防災設備の第1伝送システム)
本発明は、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文が受信された場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、
所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、呼出電文に所定の配線確認情報を含めて送信し、
端末機器は、自己のアドレスが指定された配線確認情報を含む呼出電文を受信した場合に、配線確認情報を含む応答電文を送信し、
前記配線確認要求を受け付けていない他の回線ユニットは、配線確認情報を含む応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報することを特徴とする。
【0014】
(防災設備の第2伝送システム)
本発明の別の形態にあっては、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、
所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、所定時間又は配線確認要求が解除されるまでの間、呼出電文の送信を停止し、呼出電文の停止中に応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報することを特徴とする。
【0015】
(防災設備の第3伝送システム)
本発明の別の形態にあっては、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、
複数の回線ユニットは、ランダムに設定される配線確認時間の間、呼出電文の送信を停止し、呼出電文の停止中に応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報することを特徴とする。
【0016】
(防災設備の第4伝送システム)
本発明の別の形態にあっては、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、
所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、所定の配線確認電文を含めて送信し、
配線確認要求を受け付けていない他の回線ユニットは、配線確認電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報することを特徴とする。
【0017】
(ガス系消火設備)
防災設備はガス系消火設備であり、複数の回線ユニットから引き出された伝送路に複数の端末機器として複数の操作箱が接続される。
【発明の効果】
【0018】
(防災設備の第1伝送システムによる効果)
本発明は、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、呼出電文に所定の配線確認情報を含めて送信し、端末機器は、自己のアドレスを指定した配線確認情報を含む呼出電文を受信した場合に、配線確認情報を含む応答電文を送信し、配線確認要求を受け付けていない他の回線ユニットは、配線確認情報を含む応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報するようにしたため、例えば2台の回線ユニットから引き出された伝送路の間が誤接続されていた場合、伝送システムの運用を開始した段階で配線確認操作を行って一方の回線ユニットから回線確認情報を含む呼出電文を送信した場合、回線確認情報を含む呼出電文を送信していない他方の回線ユニットで配線確認情報を含む応答電文が受信される異常が発生し、これを検出して警報することで、伝送路の誤配線を知って対処することができ、確実伝送路誤配線の問題を解消可能とする。
【0019】
(防災設備の第2伝送システムによる効果)
本発明の別の形態にあっては、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、所定時間又は配線確認要求が解除されるまでの間、呼出電文の送信を停止し、呼出電文の停止中に応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報するようにしたため、例えば2台の回線ユニットから引き出された伝送路の間が誤接続されていた場合、伝送システムの運用を開始した段階で配線確認操作を行って一方の回路ユニットからの呼出電文を送信を停止した場合、他方の回線ユニットからの呼出電文を受信した端末機器からの応答電文が呼出電文の送信を停止している回線ユニットで受信される異常が発生し、これを検出して警報することで、伝送路の誤配線を知って対処することができ、確実伝送路誤配線の問題を解消可能とする。
【0020】
(防災設備の第3伝送システムによる効果)
本発明の別の形態にあっては、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、複数の回線ユニットは、ランダムに設定される配線確認時間の間、呼出電文の送信を停止し、呼出電文の停止中に応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報するようにしたため、システムの運用中に、ランダムなタイミングで任意の回線ユニットによる呼出電文の送信が一時的に停止し、本来ならば、送信停止時間中は端末機器からの応答電文の受信はないが、誤配線がある場合には、端末機器からの応答電文が受信される異常が発生し、これを検出して警報することで、伝送路の誤配線を知って対処することができ、確実伝送路誤配線の問題を解消可能とする。
【0021】
(防災設備の第4伝送システムによる効果)
本発明の別の形態にあっては、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムに於いて、所定の配線確認要求を受け付けた回線ユニットは、所定の配線確認電文を含めて送信し、配線確認要求を受け付けていない他の回線ユニットは、配線確認電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報するようにしたため、例えば2台の回線ユニットから引き出された伝送路の間が誤接続されていた場合、伝送システムの運用を開始した段階で配線確認操作を行って一方の回線ユニットから回線確認電文を送信した場合、回線確認電文を送信していない他方の回線ユニットで配線確認電文が受信される異常が発生し、これを検出して警報することで、伝送路の誤配線を知って対処することができ、確実伝送路誤配線の問題を解消可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の伝送システムが使用される防災設備として、ガス系消火設備を例に取って全体構成を示した説明図である。
図2】ガス系消火設備に設けた伝送システムの概要を示したブロック図である。
図3】回線ユニットと操作箱の間で電文を送受信する伝送システムの機能構成を示したブロック図である。
図4】伝送システムで使用する呼出電文と応答電文の形式を示した説明図である。
図5】伝送システムの第1実施形態による誤配線を検出するための電文伝送を示したタイムチャートである。
図6】伝送システムの第1実施形態における回線ユニットの通信動作を示したフローチャートである。
図7】伝送システムの第2実施形態による誤配線を検出するための電文伝送を示したタイムチャートである。
図8】伝送システムの第2実施形態における回線ユニットの通信動作を示したフローチャートである。
図9】伝送システムの第1実施形態による誤配線を検出するための電文伝送を示したタイムチャートである。
図10】従来の伝送システムにおける誤配線の問題を示しブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る防災設備の伝送システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、この発明が限定されるものではない。
【0024】
[実施の形態の基本的な概念]
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、防災設備の伝送システムに関するものである。
【0025】
ここで、「防災設備」とは、防災機器を設けて火災等から人や物を守って防護する設備であり、一例としては、火災が発生した場合に二酸化炭素や窒素などの消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備を含むものである。
【0026】
また、「ガス系消火設備」とは、操作箱に設けられた起動スイッチの操作が制御盤の制御部で検出されたときに、起動装置のソレノイドに通電して消火ガスを防護区画へ放出させるものであり、窒素消火設備、二酸化炭素消火設備等を含む概念である。
【0027】
また、「操作箱」とは、防護区画の外壁等に設けられ、扉を開けて内部の起動スイッチを操作することにより制御盤に起動信号を送信し、消火ガスを防護区画へ放出させる操作を行うものである。また「起動装置」とは、制御盤からの起動信号によるソレノイドの通電により開栓して開放ガスを放出し、選択弁及び容器弁を開栓して、容器に充填している消火ガスを噴射ヘッドに供給して防護区画へ放出させるものである。
【0028】
「防災設備の伝送システム」とは、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器、例えば、ガス系消火設備の操作箱を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを順次指定して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスが指定された呼出電文を受信した場合に応答電文を送信するものである。
【0029】
本実施形態の防災設備の伝送システムは、制御盤から引き出され複数の端末機器を接続した異なる伝送路の間の誤配線を検出して警報するためものであり、次の第1乃至第3伝送システムで構成されるものである。
【0030】
防災設備の第1伝送システム」とは、所定の配線確認操作を検出した回線ユニットが、前記呼出電文に所定の配線確認情報を含めて送信し、端末機器は、自己のアドレスが指定された配線確認情報を含む前記呼出電文を受信した場合に、配線確認情報を含む応答電文を送信し、配線確認操作を検出していない他の回線ユニットは、配線確認情報を含む応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報するものであり、実施形態の具体的内容における伝送システムの第1実施形態に対応する。
【0031】
また、「防災設備の第2伝送システム」とは、所定の配線確認操作を検出した回線ユニットが、所定時間又は配線確認要求が解除されるまでの間、呼出電文の送信を停止し、前記呼出電文の停止中に応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報するものであり、実施形態の具体的内容における伝送システムの第2実施形態に対応する。
【0032】
また、「防災設備の第3伝送システム」とは、複数の回線ユニットが、ランダムに設定される配線確認時間の間、呼出電文の送信を停止し、前記呼出電文の停止中に応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報するものであり、実施形態の具体的内容における伝送システムの第3実施形態に対応する。
【0033】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「防災設備」が「ガス系消火設備」であり、「端末機器」が「ガス系消火設備の操作箱」である場合について説明する。
【0034】
[実施形態の具体的内容]
次に実施の形態の具体的内容について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.ガス系消火設備
b.伝送システム
c.回線ユニット及び操作箱
c1.回線ユニット
c2.操作箱
d.誤配線を検出して警報する伝送システムの第1実施形態
d1.回線ユニットの制御部
d2.誤配線の検出動作
d3.誤配線を検出する回路ユニットの通信動作
e.誤配線を検出して警報する伝送システムの第2実施形態
e1.回線ユニットの制御部
e2.誤配線の検出動作
e3.誤配線を検出する回路ユニットの通信動作
f.誤配線を検出して警報する伝送システムの第3実施形態
f1.回線ユニットの制御部
f2.誤配線の検出動作
g.本発明の変形例
【0035】
[a.ガス系消火設備]
本実施形態の伝送システムが適用されるガス系消火設備について、より詳細に説明する。図1は本発明の伝送システムが適用される防災設備として、ガス系消火設備を例にとって全体構成図を示した説明図である。なお、図1の設備構成は一例であり、必要に応じて適宜の構成をとることができる。
【0036】
図1に示すように、ガス系消火設備にはガス系の消火設備を一括制御する制御盤10を備え、また防護区画A,Bとなる各部屋の外に操作箱12を設置している。制御盤10には防護区画A,B毎に回線ユニットが設けられ、各回線ユニットから引き出された伝送路に、防護区画A,B毎に設置した操作箱12を接続してシリアル伝送を行うようにしている。
【0037】
操作箱12は起動スイッチと起動スイッチを保護する扉を備え、手動モードを設定している場合、人が火災を発見した場合には、扉を開けて起動スイッチを操作することにより制御盤10に起動信号を送信し、消火剤としての消火ガスを放出させる。放出表示灯15は監視区域内に消火ガスが放出されていることを表示し、室内に入らないことを知らせる。
【0038】
噴射ヘッド14は消火ガスを室内に放出する。スピーカ13は消火ガスが放出されることを示す注意警報と退避警報を放送し、人が警戒区域内に存在する場合は直ちに避難することを促す。消火ガス貯蔵容器16は消火ガスを貯蔵する。
【0039】
本実施形態にあっては、複数の防護区画A,Bについて火災想定を1箇所としており、このため消火ガス貯蔵容器16は複数の防護区画A,Bに対する共通設備として設けており、1防護区画の消火に必要な量の消火ガスが充填されている。
【0040】
起動装置18は防護区画A,Bに対応して設けられ、制御盤10から消火ガス放出用の起動信号を受けて内蔵したソレノイドの通電により開弁して二酸化炭素などの開放ガスを放出させ、開放ガスにより選択弁17を開放させると共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開けさせる。選択弁17は起動装置18の起動による開放ガスを受けて開き、火災の生じた防護区画A又はBの噴射ヘッド14に消火ガスを供給して噴射させる。
【0041】
火災感知器11は2系統の感知器回線で各防護区画A,Bの火災を監視している。圧力スイッチ21は消火ガス貯蔵容器16から消火ガスが放出されたことを検出し、制御盤10に検出信号を送り、火災の発生した監視区域に対応した放出表示灯15を点滅させる。ピストンレリーザ19は消火ガスが部屋に放出されたとき消火ガスを室外に漏れないようにダンパーで排煙口を閉じる。閉止弁23は消火ガス貯蔵容器16からの消火ガスの供給を手動操作で閉止させる。
【0042】
このようなガス系消火設備において、制御盤10に自動モードを設定していた場合には、2系統に接続された各火災感知器11からの火災発報(2系統のAND発報)があつた場合にガス放出の起動条件が成立したと判断して起動権を獲得し、所定時間のカウントダウンを開始すると共にスピーカ13から消火ガスが放出される旨を示す注意警報と退避警報が放送される。
【0043】
制御盤10及び操作箱12には2桁表示の7セグメント表示器が設けられており、通常はカウントダウン初期値として所定の秒数が表示されており、カウントダウンを開始すると、残り時間の秒数が順次表示され、カウントダウン終了で零秒が表示される。
【0044】
制御盤10のカウントダウンが終了すると、制御盤10は起動装置18にガス放出信号を出力して動作し、起動装置18から二酸化炭素等の開放ガスを選択弁17に供給して開くと共に消火ガス貯蔵容器16の栓を開け、ガス供給配管を介して噴射ヘッド14から火災検知した防護区画の室内に消火ガスを放出させる。
【0045】
自動モードにより消火ガスが放出されると、制御盤10の7セグメント表示器には、作動した火災感知器11の作動履歴として感知器番号「FF」が表示される。ここで、感知器番号FはF=1~8の値をもち、2つの防護区画に設置した8台の火災感知器11に固有の感知器番号を予め割り当てている。
【0046】
また制御盤10に手動モードを設定していた場合には、監視員が目視又は火災感知器11の発報によって例えば防護区画Aの火災を発見し、防護区画Aの外側に設置している操作箱12の扉を開いて起動スイッチを押すことで起動信号が制御盤10に送信される。制御盤10は起動信号の受信によりガス放出の起動条件が成立したと判断して起動権及びスピーカの鳴動権を獲得し、カウントダウンを開始すると共にスピーカ13は消火ガスが放出される旨を示す注意警報と退避警報を放送し、カウントダウンが終了すると、自動モードの場合と同様にして防護区画の噴射ヘッド14から消火ガスを放出させる。
【0047】
[b.伝送システム]
ガス系消火設備の伝送システムについて、より詳細に説明する。図2はガス系消火設備に設けた伝送システムの概要を示したブロック図である。図2に示すように、制御盤10は例えば2つの防護区画に対応して回線ユニット26(26-1),26(26-2)が設けられており、回線ユニット26(26-1),26(26-2)に対しては2系統の火災感知器11、操作箱12、スピーカ13及び起動装置18が信号線により接続されている。
【0048】
回線ユニット26(26-1),26(26-2)から引き出された伝送路24(24-1),24(24-2)には、各防護区画に設けた4台の操作箱12が接続されている。4台の操作箱12には、伝送路24(24-1),24(24-2)単位に、アドレスA1~A4が予め設定されている。なお、以下の説明で回線ユニット26(26-1),26(26-2)及び伝送路24(24-1),24(24-2)を区別する必要がない場合は、回線ユニット26及び伝送路24とする場合がある。
【0049】
また、回線ユニット26(26-1),26(26-2)から引き出されたシリアル伝送路24(24-1),24(24-2)は、施工時の現場配線作業のミスにより、想像線で示す伝送路25によって誤配線される場合がある。
【0050】
回線ユニット26(26-1),26(26-2)に対しては共通部28として、操作部30、表示部32、移報部34、スピーカ駆動部36が設けられ、相互に信号線接続されている。
【0051】
操作部30には、全ての防護区画での動作モードを一括して自動モード又は手動モードに切替えるキースイッチ、カウントダウン中にガス放出を停止させる非常停止スイッチ、警報を停止させる警報停止スイッチ、移報を停止させる移報停止スイッチ等が設けられ、各スイッチからの操作信号が回線ユニット26(26-1),26(26-2)に並列に出力されるように信号線接続している。
【0052】
表示部32には、電源状態を示す電源灯、火災発生を示す火災灯、手動モードの設定を示す手動モード表示灯、自動モードの設定を示す自動モード表示灯、ガス放出動作の起動を示す放出起動灯、ガス放出されたことを示す放出灯、カウントダウンに使用する7セグメント表示器等が設けられており、回線ユニット26(26-1),26(26-2)から各表示信号のOR入力により表示駆動されるように信号線接続している。
【0053】
移報部34には、自動モード、手動モード、火災、起動、ガス放出等の移報信号を出力する無電圧接点回路が設けられており、回線ユニット26(26-1),26(26-2)から各移報信号がOR入力により移報出力されるように信号線接続している。
【0054】
スピーカ駆動部36には、消火ガスの放出を行う警報放送の音源とパワーアンプが設けられており、回線ユニット26(26-1),26(26-2)に対し放送信号が並列的に入力されるように信号線接続している。
【0055】
[c.回線ユニット及び操作箱]
回線ユニットと操作箱について、より詳細に説明する。図3は回線ユニットと操作箱の間で電文を送受信する伝送システムの機能構成を示したブロック図であり、1つの回線ユニットとこれに接続した操作箱を含む設備機器を取り出して示している。
【0056】
(c1.回線ユニット)
図3に示すように、回線ユニット26は、制御部38を備え、制御部38に対し防護区画側の機器を信号線接続するため、伝送部40、2系統分の火災受信部42、駆動部44、スピーカ選択部46が設けられている。
【0057】
スピーカ選択部46には図2に示したスピーカ駆動部36からの信号線が入力接続され、スピーカ選択部46のスイッチ手段をオンして放送信号をスピーカ13に供給可能とする。なお、スピーカ選択部46は2つの防護区画に対応した数を設けている。
【0058】
また、制御部38に対し図2に示した制御盤10の共通部28となる操作部30、表示部32及び移報部34が接続されている。
【0059】
制御部38は、プログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路が使用される。制御部38は、所定の呼出周期毎に、操作箱12のアドレスA1~A4を順次指定した呼出電文(下り電文)を伝送部40に指示して送信させる制御を行っており、呼出電文には操作箱12に対するコマンド及び各種の表示情報を含めて送信する。また、制御部38は伝送部40を介して受信した操作箱12からの応答電文(上り電文)に含まれるスイッチ操作情報(オンオフ情報)等のデータを取得してガス放出に必要な制御や表示を行う。
【0060】
伝送部40は操作箱12との間で伝送路24を介して各種の電文をシリアル伝送により送受信する。
【0061】
(c2.操作箱)
操作箱について、より詳細に説明する。図3に示すように、操作箱12は、制御部48を備え、制御部48に対し伝送部50、操作部52、検出部54、表示部56及び7セグメント表示器58が設けられている。
【0062】
制御部48は、プログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路が使用される。
【0063】
伝送部50は回線ユニット26の伝送部40との間で伝送路24を介して各種の電文信号をシリアル伝送により送受信させる。
【0064】
操作部52には非常停止スイッチ、キースイッチ、ランプテストスイッチ、起動スイッチ等が設けられている。また、検出部54には扉開検知スイッチが設けられている。更に、表示部56には火災灯、放出起動灯、電源灯、閉止弁閉表示灯、手動モード表示灯、自動モード表示灯等が設けられている。
【0065】
制御部48は、伝送路24を介して回線ユニット26から操作箱アドレスを指定したコマンド及び各種の表示情報を含む呼出電文(下り電文)となるシリアル伝送信号を受信した場合、表示部56の対応する表示灯を点灯させ、7セグメント表示器58を表示駆動させる制御を行う。
【0066】
また、制御部48は、呼出電文を受信した場合に、その応答電文(上り電文)としてのシリアル伝送信号を生成して回線ユニット26に送信させる制御を行う、この応答電文には、操作部48又は検出部54のスイッチ操作情報(オンオフ情報)等のデータが含まれる。
【0067】
なお、回線ユニット26から操作箱12に対しては電源線による電源供給が行われており、また電話回線により通話接続を可能としているが、図示を省略している。
【0068】
図4は伝送システムで使用する呼出電文と応答電文の形式を示した説明図である。図4(A)に示す呼出電文60は、コマンド、アドレス、データ、及びチェックサムで構成された4バイトの電文である。また、図4(B)に示した応答電文62はデータとチェックサムで構成された2バイトの電文である。なお、呼出電文及び応答電文の形式は必要に応じて適宜の形式とすることができる。
【0069】
[d.誤配線を検出して警報する伝送システムの第1実施形態]
誤配線を検出して警報する伝送システムの第1実施形態について、より詳細に説明する。図5は伝送システムの第1実施形態による誤配線を検出するための電文伝送を示したタイムチャートである。
【0070】
(d1.回線ユニットの制御部)
回線ユニットの制御部について、より詳細に説明する。図2に示した伝送路24(24-1),24(24-2)の間を伝送路25で接続した誤配線を検出して警報するため、図3に示した回線ユニット26の第1実施形態による制御部38は、例えば回線ユニット26を実装した回路基板等に設けている配線確認スイッチによる配線確認操作を検出した場合に、配線確認モードを設定し、呼出電文に所定の配線確認コード(配線確認情報)を含めて送信する制御を行う。
【0071】
これに対応して図3に示した操作箱12の制御部48は、自己のアドレスを指定した配線確認コードを含む呼出電文を受信した場合に、受信した配線確認コードを含む応答電文を作成し、伝送部50に指示して送信させる制御を行う。
【0072】
更に、回線ユニット26の制御部38は、配線確認スイッチの配線確認操作による配線確認モードを設定していない状態で、配線確認コードを含む応答電文を受信した場合に、自己の伝送路24と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報する制御を行う。
【0073】
(d2.誤配線の検出動作)
誤配線の検出動作について、より詳細に説明する。図5に示すように、回線ユニット26(26-1),26(26-2)は、制御盤10の電源投入により同時に起動し、その機能及び構成は同じであることから、同じタイミングで伝送路24(24-1),24(24-2)に図4(A)に示した4バイトの呼出電文を操作箱12のアドレスA1~A4を順次指定して並列的に送信している。この呼出電文は伝送路24(24-1),24(24-2)に接続されたアドレスが一致した操作箱12で受信され、同じタイミングで図4(B)に示した2バイトの応答電文が並列的に送信されている。なお、図5の呼出電文について、コマンドをCで示し、アドレスはA1~A4で示している。
【0074】
ここで、図2に示したように、伝送路24(24-1),24(24-2)が伝送路25により誤配線されていた場合、回線ユニット26(26-1),26(26-2)からの呼出電文は実質的に同じ伝送路に送信されたことになるが、送信タイミングは完全に一致して信号衝突によるビットデータの破壊は起きず、回線ユニット26(26-1),26(26-2)に接続している同じアドレスをもつ2台の操作箱12で正常に受信され、同じアドレスを持つ2台の操作箱12が同じタイミングで応答電文を送信し、これが回線ユニット26(26-1),26(26-2)で受信されており、誤配線があっても、見掛け上は正常な通信状態を維持することが発生しうる。
【0075】
ここで、制御盤10の電源を投入して伝送システムを起動した後、図5に示すように、回線ユニット26(26-1)の配線確認スイッチを時刻t1でオンしたとすると、回線ユニット26(26-1)はアドレスA1の呼出電文のデータに所定の配線確認コード64をセットして送信する。
【0076】
回線ユニット26(26-1)が送信した配線確認コード64を含む呼出電文は、伝送路24(24-1),24(24-2)に接続している同じアドレスA1を持つ2台の操作箱12で受信され、配線確認コード64を含む応答電文が送信される。この配線確認コード64を含む応答電文は回線ユニット26(26-1),26(26-2)の各々で受信される。
【0077】
しかしながら、回線ユニット26(26-2)は、配線確認コード64を含む呼出電文は送信しておらず、配線確認コード64を含む応答電文を受信することはないはずにもかかわらず、それを受信することは伝送路24(24-2)に誤配線があることを意味し、配線確認コード64を含む応答電文を受信した時刻t2で、誤配線検出を示す信号をHレベルとし、これに基づき誤配線を示す警報を出力する。
【0078】
なお、誤配線の検出は、配線確認コードを含む応答電文を連続して所定回数を受信した場合に、誤配線を検出することで、信頼性を高めるようにしても良い。
【0079】
(d3.誤配線を検出する回路ユニットの通信動作)
誤配線を検出する回路ユニットの通信動作について、より詳細に説明する。図6は伝送システムの第1実施形態における回線ユニットの制御動作を示したフローチャートであり、図3に示した回線ユニット26の制御部38による制御動作となる。また、回線ユニット26からの伝送路に接続した操作箱12のアドレスをA=1,2,3・・・Amaxとしている。
【0080】
図6に示すように、回線ユニット26の制御部38は、ステップS1で宛先アドレスAを初期化してA=1とし、続いて、ステップS2で配線確認モードか否か判別し、通常状態では配線確認モードでないことからステップS3に進み、アドレスA=1に設定した呼出電文を生成し、ステップS5で呼出電文を送信する。
【0081】
続いてステップS6で操作箱12からの応答電文の受信を判別するとステップS7で配線確認コードを含むか否か判別し、この場合、配線確認コードは含まないことからステップS9に進み、応答電文のデータに含まれている情報を取り出して対応する制御や表示を行う。また、ステップS6で応答電文の受信を判別しなかった場合はステップS11に進み、呼出電文に設定したアドレスの操作箱が存在しないことを認識する。
【0082】
続いて、ステップS12で最大アドレスAmaxに到達したか否か判別し、この場合、最大アドレスAmaxに到達していないことから、ステップS13でアドレスAを1つ加算してステップS2に戻り、同様な動作を繰り返す。なお、ステップS12で最大アドレスAmaxに達したことを判別した場合はステップS1に戻り、アドレスAをA=1に初期化してステップS2からの処理を繰り返す。
【0083】
また、操作部30に設けた配線確認スイッチの操作により配線確認モードを設定している場合には、ステップS2で配線確認モードが判別されてステップS4に進み、配線確認コードを設定した呼出電文を生成し、ステップS5でこの呼出電文を送信する。
【0084】
続いてステップS6で確認応答電文の受信を判別するとステップS7に進み、この場合、応答電文には配線確認コードが含まれており、これを判別してステップS8に進む。ステップS8では配線確認モード中か否か判別し、この場合、配線確認モード中にあることからステップS10に進み、応答電文に配線確認コード以外のデータに含まれている場合には、その情報を取り出して対応する制御や表示を行う。
【0085】
一方、配線確認スイッチを操作していない別の回線ユニットの制御動作にあっては、ステップS6で確認応答電文の受信を判別してステップS7で応答電文に配線確認コードが含まれていることを判別してステップS8に進み、ここで配線確認モード中にないことを判別してステップS10に進み、誤配線を検出して警報を出力する。
【0086】
このように例えば回線ユニット26-1で配線確認操作を行って配線確認コードを含む呼出電文を送信した場合、配線確認コードを含む呼出電文を送信していない他方の回線ユニット26-2で配線確認コードを含む応答電文が受信された場合に、これを検出して警報することで、伝送路24-1,24-2が伝送路25により接続されている誤配線を知って対処することを可能とする。
【0087】
[e.誤配線を検出して警報する伝送システムの第2実施形態]
誤配線を検出して警報する伝送システムの第2実施形態について、より詳細に説明する。図7は伝送システムの第2実施形態による誤配線を検出するための電文伝送を示したタイムチャートである。
【0088】
(e1.回線ユニットの制御部)
回線ユニットの制御部について、より詳細に説明する。図2に示した伝送路24(24-1),24(24-2)の間を伝送路25で接続した誤配線を検出して警報するため、図3に示した回線ユニット26の第2実施形態による制御部38は、例えば回線ユニット26を実装した回路基板等に設けている配線確認スイッチのオン操作を検出した場合は、呼出停止モードを設定し、配線確認スイッチをオフするまでの間、或いは所定時間の間、呼出電文の送信を停止する制御を行う。
【0089】
これに対応して回線ユニット26の制御部38は、呼出電文の停止中に応答電文を受信した場合に、自己の伝送路26と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報する制御を行う。
【0090】
(e2.誤配線の検出動作)
誤配線の検出動作について、より詳細に説明する。いま、図2に示したように、伝送路24-1,24-2が伝送路25により誤配線されていたとする。この状態で、図7に示すように、制御盤10の電源を投入して伝送システムを起動した後、回線ユニット26(26-1)の配線確認スイッチを時刻t1でオンしたとすると、回線ユニット26(26-1)は配線確認スイッチをオンしている間、呼出電文の送信を停止する。これに対し回線ユニット26(26-2)は、配線確認スイッチをオンしていないことから、正常に呼出電文の送信を繰り返している。
【0091】
このため送信動作を停止している回線ユニット26(26-1)は、本来は応答電文を受信することはないが、伝送路の誤配線により、別の回線ユニット26(26-2)が送信した呼出電文に対する操作箱12からの応答電文を受信し、これは伝送路24(24-1)が他の伝送路に接続されている誤配線があることを意味し、呼出電文の送信を停止した後に最初の応答電文を受信した時刻t2で、誤配線検出を示す信号をHレベルとし、これに基づき誤配線を示す警報を出力する。
【0092】
なお、誤配線の検出は、呼出停止中に所定回数、連続して応答電文を受信した場合に、誤配線を検出することで、信頼性を高めるようにしても良い。
【0093】
(e3.誤配線を検出する回路ユニットの通信動作)
誤配線を検出する回路ユニットの通信動作について、より詳細に説明する。図8は伝送システムの第2実施形態における回線ユニットの制御動作を示したフローチャートであり、図3に示した回線ユニット26の制御部38による制御動作となる。また、回線ユニット26からの伝送路に接続した操作箱12のアドレスをA=1,2,3・・・Amaxとしている。
【0094】
図8に示すように、回線ユニット26の制御部38は、ステップS21で宛先アドレスAを初期化してA=1とし、続いて、ステップS22で配線確認スイッチのオン操作による呼出停止モードか否か判別し、通常状態では呼出停止モードでないことからステップS23に進み、アドレスA=1に設定した呼出電文を生成し、ステップS24で呼出電文を送信する。
【0095】
続いてステップS25で操作箱12からの応答電文の受信を判別するとステップS26で呼出停止モード中か否か判別し、この場合、呼出停止モードではないことから、これを判別してステップS27に進み、応答電文のデータに含まれている情報を取り出して対応する制御や表示を行う。また、ステップS25で応答電文の受信を判別しなかった場合はステップS29に進み、呼出電文に設定したアドレスの操作箱が存在しないことを認識する。
【0096】
続いて、ステップS30で最大アドレスAmaxに到達したか否か判別し、この場合、最大アドレスAmaxに到達していないことから、ステップS31でアドレスAを1つ加算してステップS22に戻り、同様な動作を繰り返す。なお、ステップS30で最大アドレスAmaxに達したことを判別した場合はステップS21に戻り、アドレスAをA=1に初期化してステップS22からの処理を繰り返す。
【0097】
また、呼出停止スイッチのオン操作により呼出停止モードを設定している場合には、ステップS22で呼出停止モードが判別され、ステップS23,S24をスキップすることで呼出電文を送信することなくステップS25に進み、応答電文の受信の有無を判別する。
【0098】
この場合、回線ユニット26は呼出電文の送信を停止していることから、操作箱12からの応答電文の受信はないにも関わらず、誤配線により応答電文を受信している。このため回線ユニット26は、ステップS25で応答電文の受信を判別してステップS26に進み、ステップS26で呼出停止モード中を判別してステップS28に進み、誤配線を検出して警報を出力する。
【0099】
このように例えば回線ユニット26(26-1)で呼出停止操作を行って呼出電文の送信を停止した場合、呼出電文を送信を停止していない他方の回線ユニット26(26-2からの呼出電文による操作箱からの応答電文が受信され、この異常を検出して警報するこ)とで、伝送路24(24-1),24(24-2)が伝送路25により接続されている誤配線を知って対処することを可能とする。
【0100】
[f.誤配線を検出して警報する伝送システムの第3実施形態]
誤配線を検出して警報する伝送システムの第3実施形態について、より詳細に説明する。図9は伝送システムの第3実施形態による誤配線を検出するための電文伝送を示したタイムチャートである。
【0101】
(f1.回線ユニットの制御部)
回線ユニットの制御部について、より詳細に説明する。図2に示した伝送路24(24-1),24(24-2)の間を伝送路25で接続した誤配線を検出して警報するため、図3に示した回線ユニット26の第3実施形態による制御部38は、ランダムに設定される配線確認時間の間、呼出電文の送信を停止し、呼出電文の停止中に応答電文を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報する制御を行う。
【0102】
(f2.誤配線の検出動作)
誤配線の検出動作について、より詳細に説明する。いま、図2に示したように、伝送路24(24-1),24(24-2)が伝送路25により誤配線されていたとする。この状態で、図9に示すように、制御盤10の電源を投入して伝送システムを起動すると、回線ユニット26(26-1),26(26-2)は、ランダムに設定された異なる時刻t1,t3のタイミングで、一定時間Tsのあいだ送信を停止する送信停止モードを設定する。
【0103】
このようにランダムに設定された時刻t1で回線ユニット26(26-1)が一定時間Tsのあいだ呼出電文の送信を停止すると、送信を停止している回線ユニット26(26-1)は、本来は応答電文を受信することはないが、伝送路の誤配線により、別の回線ユニット26(26-2)が送信した呼出電文に対する操作箱12からの応答電文を受信し、これは伝送路24(24-1)が他の伝送路に接続されている誤配線があることを意味し、呼出電文の送信を停止した後に最初の応答電文を受信した時刻t2で、誤配線検出を示す信号をHレベルとし、これに基づき誤配線を示す警報を出力する。
【0104】
また、回線ユニット26(26-2)も、ランダムに設定された時刻t3で一定時間Tsのあいだ呼出電文の送信を停止すると、送信を停止している回線ユニット26(26-2)は、本来は応答電文を受信することはないが、伝送路の誤配線により、別の回線ユニット26(26-1)が送信した呼出電文に対する操作箱12からの応答電文を受信し、これは伝送路24(24-2)が他の伝送路に接続されている誤配線があることを意味し、呼出電文の送信を停止した後に最初の応答電文を受信した時刻t4で、誤配線検出を示す信号をHレベルとし、これに基づき誤配線を示す警報を出力し、誤配線に適切に対処可能とする。
【0105】
また、本実施形態にあっては、呼出電文のランダムな送信停止によって、伝送路を誤配線した回線ユニット26(26-1),26(26-2)の両方で誤配線が検出されて警報されることから、例えば回線ユニットを3ユニット以上も受けている場合、どの回路ユニット間を誤配線しているかが簡単に分かる。
【0106】
なお、本実施形態においても、誤配線の検出は、呼出停止中に連続して応答電文を所定回数受信した場合に、誤配線を検出することで、信頼性を高めるようにしても良い。
【0107】
[g.本発明の変形例]
本発明による防災設備の伝送システムの変形例について、より詳細に説明する。本発明の車載情報表示装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0108】
(回線ユニット)
上記の実施形態は、制御盤に2つの回線ユニットを設け、回線ユニットの各々に4つの操作箱を伝送路を介して接続した場合を例にとっているが、回線ユニットの数及び回線ユニット当たりの操作箱の数は必要に応じて適宜に定めることができる。
【0109】
(防災設備)
上記の実施形態は、ガス消火設備の伝送システムを例にとっているが、制御盤に設けた複数の回線ユニットから引き出された伝送路に、回線ユニット毎に割り当てられた複数の端末機器を接続し、回線ユニットは自己の回線に接続した複数の端末機器のアドレスを順次して呼出電文を送信し、端末機器は自己のアドレスを指定した呼出電文を受信した場合に応答電文を送信する防災設備の伝送システムであれば、適宜の防災設備の伝送システムに適用できる。
【0110】
上記の実施形態は、「所定の配線確認要求を受け付け」を「回線ユニットが所定の配線確認操作を検出する」ことで実施しているが、これに限らない。例えば、制御盤の操作及び当該操作による回線ユニットへの制御命令によって、回線ユニットが所定の配線確認要求を受け付けるようにしてもよい。
【0111】
(防災設備の第4伝送システム)
上記の実施形態は、回線ユニットは応答電文の受信により誤接続を検出しているが、これに限らない。下記の様に、配線確認電文を直接受信することで誤接続を検出してもよい。即ち、配線確認要求を受け付けた回線ユニットが、所定の配線確認電文(配線確認コード)を含めて送信し、配線確認要求を受け付けていない他の回線ユニットは、配線確認電文(配線確認コード)を受信した場合に、自己の伝送路と他の回線ユニットの伝送路の誤接続を検出して警報する。
【0112】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0113】
10:制御盤
11:火災感知器
12:操作箱
24(24-1),24(24-2):伝送路
26(26-1),26(26-2):回線ユニット
28:共通部
38,48:制御部
40,50:伝送部
60:呼出電文
62:応答電文
64:配線確認コード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10