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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】電池システムおよび組電池の均等化方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20250408BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021048041
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022146985
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛史
(72)【発明者】
【氏名】中川 宇彦
(72)【発明者】
【氏名】上井 健太
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-244058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0346552(US,A1)
【文献】特開2020-018089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0008886(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数のブロックを含む組電池と、
前記複数のブロックの電圧を均等化する均等化制御を実行するように構成された均等化装置と、
定められた均等化時間を取得し、前記均等化制御の開始時から前記均等化時間が経過した場合に前記均等化制御を終了するように前記均等化装置を制御する制御装置と
前記複数のブロックの各々の電圧を検出する電圧センサと、
前記組電池と負荷との間の電気的な接続と遮断とを切り替えるように構成されたリレーとを備え
前記均等化装置は、
前記複数のブロックにそれぞれ並列接続された複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子にそれぞれ直列接続された複数の放電抵抗とを含み、
前記均等化時間は、前記複数の放電抵抗の抵抗値と、前記電圧センサの検出誤差とに基
づいて定められ、
前記均等化制御は、前記複数のブロックのうちの第1のブロックと第2のブロックとの間の電圧差が閾値よりも大きい場合に、前記複数のスイッチング素子のうち前記第2のブロックと比べて高電圧である前記第1のブロックに並列接続されたスイッチング素子を導通させることによって前記第1のブロックを放電させる処理であり、
前記制御装置は、前記組電池と前記負荷との間が電気的に遮断されてから接続されるまでの経過時間に応じて前記閾値を算出する、電池システム。
【請求項2】
前記均等化時間は、前記複数のブロックの電圧使用範囲の上限値にさらに基づいて定められる固定値である、請求項に記載の電池システム。
【請求項3】
前記組電池の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記経過時間と、前記組電池の温度とに応じて、前記閾値を算出する、請求項に記載の電池システム。
【請求項4】
記均等化時間は、前記組電池と前記負荷との間を前記リレーにより電気的に接続するのに先立って取得された前記複数のブロック間の電圧差にさらに基づいて定められる可変値である、請求項に記載の電池システム。
【請求項5】
直列接続された複数のブロックを含む組電池と、
前記複数のブロックの電圧を均等化する均等化制御を実行するように構成された均等化装置と、
定められた均等化時間を取得し、前記均等化制御の開始時から前記均等化時間が経過した場合に前記均等化制御を終了するように前記均等化装置を制御する制御装置と、
前記複数のブロックの各々の電圧を検出する電圧センサと、
前記組電池と負荷との間の電気的な接続と遮断とを切り替えるように構成されたリレーとを備え、
前記均等化装置は、
前記複数のブロックにそれぞれ並列接続された複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子にそれぞれ直列接続された複数の放電抵抗とを含み、
前記均等化時間は、前記複数の放電抵抗の抵抗値と、前記電圧センサの検出誤差と、前記組電池と前記負荷との間を前記リレーにより電気的に接続するのに先立って取得された前記複数のブロック間の電圧差とに基づいて定められる可変値であり、
前記均等化制御は、前記複数のブロックのうちの第1のブロックと第2のブロックとの間の電圧差が閾値よりも大きい場合に、前記複数のスイッチング素子のうち前記第2のブロックと比べて高電圧である前記第1のブロックに並列接続されたスイッチング素子を導通させることによって前記第1のブロックを放電させる処理であり、
前記制御装置は、前記組電池と前記負荷との間が電気的な遮断されてから接続されるまでの経過時間に応じて前記閾値を設定する、電池システム。
【請求項6】
前記組電池の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記経過時間と、前記組電池の温度とに応じて、前記閾値を設定する、請求項に記載の電池システム。
【請求項7】
組電池の均等化方法であって、
前記組電池は、直列接続された複数のブロックを含み、均等化装置により均等化制御が実行されるように構成され、
前記均等化装置は、
前記複数のブロックにそれぞれ並列接続された複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子にそれぞれ直列接続された複数の放電抵抗とを含み、
前記複数のブロックの各々の電圧は、電圧センサにより検出され、
前記均等化制御は、前記複数のブロックのうちの第1のブロックと第2のブロックとの間の電圧差が閾値よりも大きい場合に、前記複数のスイッチング素子のうち前記第2のブロックと比べて高電圧である前記第1のブロックに並列接続されたスイッチング素子を導通させることによって前記第1のブロックを放電させる処理であり、
前記均等化方法は、
前記組電池と負荷との間が電気的に遮断されてから接続されるまでの経過時間に応じて前記閾値を算出するステップと、
前記均等化制御を開始するステップと、
定められた均等化時間を取得するステップと、
前記均等化制御の開始時から前記均等化時間が経過した場合に前記均等化制御を終了するステップとを含み、
前記均等化時間は、前記複数の放電抵抗の抵抗値と、前記電圧センサの検出誤差とに基づいて定められる、組電池の均等化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池システムおよび組電池の均等化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-177615号公報(特許文献1)に開示された電圧均等化装置は、複数の電池が直列に接続された組電池の各電池に対して、それぞれ充電または放電を行って、各電池の電圧を均等化する。この電圧均等化装置は補正値設定手段を備える。補正値設定手段は、各電池の電圧が均等となる均等化目標電圧に対して、第1の補正値および第2の補正値を設定する。第1の補正値は、各電池の充電または放電の直流電流により発生する電池の内部抵抗による電圧変化分である。第2の補正値は、分極による電圧変化分である。第2の補正値は、均等化目標電圧の所定の精度を画定する精度閾値以下の値であって、0よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-177615号公報
【文献】特開2015-41513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば特許文献1に開示された電圧均等化装置は、電池の電圧が目標電圧に到達したか否かを監視しながら均等化制御を実行する。そして、電圧均等化装置は、電池の電圧が目標電圧に到達した場合に均等化制御を終了する。
【0005】
しかしながら、一般に、電池の通電時には、電池の無通電時と比べて、電圧検出精度が低下する。そのため、電池の通電時には、均等化制御を終了してよいかどうかを正確に判定できない可能性がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、均等化制御を終了してよいかどうかを高精度に判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の第1の局面に係る電池システムは、組電池と、均等化装置と、制御装置とを備える。組電池は、直列接続された複数のブロックを含む。均等化装置は、複数のブロックの電圧を均等化する均等化制御を実行するように構成されている。制御装置は、定められた均等化時間を取得し、均等化制御の開始時から均等化時間が経過した場合に均等化制御を終了するように均等化装置を制御する。
【0008】
上記(1)の構成において、制御装置は、電圧に代えて時間(均等化時間)に基づいて均等化制御を終了させる。これにより、組電池の通電が各ブロックの電圧検出精度に及ぼす影響に無関係に均等化制御の終了タイミングを判定できる。よって、上記(1)の構成によれば、均等化制御を終了してよいかどうかを高精度に判定できる。
【0009】
(2)電池システムは、複数のブロックの各々の電圧を検出する電圧センサを備える。均等化装置は、複数のブロックにそれぞれ並列接続された複数のスイッチング素子と、複数のスイッチング素子にそれぞれ直列接続された複数の放電抵抗とを含む。均等化時間は、複数の放電抵抗の抵抗値と、電圧センサの検出誤差とに基づいて定められる。
【0010】
目標電圧差を過度に小さく設定した場合、必要以上に長く均等化制御が継続され、組電池に蓄えられた電力が無駄に消費される可能性がある(詳細は後述)。これに対し、上記(2)の構成においては、目標電圧差が複数の電圧センサの検出誤差に基づいて定められるため、不必要に長く均等化制御が継続されることを抑制できる。よって、上記(2)の構成によれば、組電池に蓄えられた電力が無駄に消費されないうちに均等化制御を終了できる。
【0011】
(3)均等化時間は、複数のブロックの電圧使用範囲の上限値に基づいて定められる固定値である。
【0012】
上記(3)の構成によれば、均等化時間を固定値とすることで均等化時間を算出する演算処理が不要になるため、制御装置の演算負荷を低減できる。
【0013】
(4)電池システムは、組電池と負荷との間の電気的な接続と遮断とを切り替えるように構成されたリレーをさらに備える。均等化制御は、複数のブロックのうちの第1のブロックと第2のブロックとの間の電圧差が閾値よりも大きい場合に、複数のスイッチング素子のうち第2のブロックと比べて高電圧である第1のブロックに並列接続されたスイッチング素子を導通させることによって第1のブロックを放電させる処理である。制御装置は、組電池と負荷との間が電気的に遮断されてから接続されるまでの経過時間に応じて閾値を設定する。
【0014】
上記(4)の構成においては、組電池と負荷との間が電気的に遮断されてから接続されるまでの経過時間を考慮して、均等化制御を開始してよいかどうかが判定される。この経過時間が長いほど、組電池の分極緩和が進むため、ブロック間の電圧差を高精度に検出できる。よって、上記(4)の構成によれば、経過時間の長さ(つまり、組電池の分極の影響の低減度合い)を考慮することで、均等化制御を開始してよいかどうかを高精度に判定できる。
【0015】
(5)電池システムは、組電池の温度を検出する温度センサをさらに備える。制御装置は、経過時間と、組電池の温度とに応じて、閾値を設定する。
【0016】
上記(5)の構成によれば、組電池の分極緩和の温度依存性がさらに考慮されるため、均等化制御を開始してよいかどうかを一層高精度に判定できる。
【0017】
(6)電池システムは、組電池と負荷との間の電気的な接続と遮断とを切り替えるように構成されたリレーをさらに備える。均等化時間は、組電池と負荷との間をリレーにより電気的に接続するのに先立って取得された複数のブロック間の電圧差に基づいて定められる可変値である。
【0018】
上記(6)の構成によれば、均等化時間が可変値であるため、均等化時間を固定値とする場合と比べて、制御装置の演算負荷は増大し得るものの、複数のブロック間の電圧差に応じて均等化時間を高精度に設定できる。
【0019】
(7)均等化制御は、複数のブロックのうちの第1のブロックと第2のブロックとの間の電圧差が閾値よりも大きい場合に、複数のスイッチング素子のうち第2のブロックと比べて高電圧である第1のブロックに並列接続されたスイッチング素子を導通させることによって第1のブロックを放電させる処理である。制御装置は、組電池と負荷との間が電気的な遮断されてから接続されるまでの経過時間に応じて閾値を設定する。
【0020】
上記(7)の構成によれば、上記(4)の構成と同様に、均等化制御を開始してよいかどうかを高精度に判定できる。
【0021】
(8)電池システムは、組電池の温度を検出する温度センサをさらに備える。制御装置は、経過時間と、組電池の温度とに応じて、閾値を設定する。
【0022】
上記(8)の構成によれば、上記(5)の構成と同様に、均等化制御を開始してよいかどうかを一層高精度に判定できる。
【0023】
(9)本開示の第2の局面に係る組電池の均等化方法において、組電池は、直列接続された複数のブロックを含み、均等化装置により均等化制御が実行されるように構成されている。均等化方法は、均等化制御を開始するステップと、定められた均等化時間を取得するステップと、均等化制御の開始時から均等化時間が経過した場合に均等化制御を終了するステップとを含む。
【0024】
上記(9)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、均等化制御を終了してよいかどうかを高精度に判定できる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、均等化制御を終了してよいかどうかを高精度に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施の形態に係る電池システムが搭載された車両の全体構成を概略的に示す図である。
図2】電池システムの構成をより詳細に説明するための図である。
図3】本実施の形態における均等化制御に関連する一連の処理を示すタイムチャートである。
図4】本実施の形態における均等化制御に関連する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施の形態における均等化制御に関連する一連の処理の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0028】
以下では、本実施の形態に係る電池システムが電気自動車に搭載された構成を例に説明する。ただし、本実施の形態に係る電池システムは、電気自動車に限らず、走行用の組電池が搭載される車両全般(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車など)に適用可能である。さらに、本実施の形態に係る電池システムの用途は車両用に限定されるものではなく、たとえば定置用であってもよい。
【0029】
[実施の形態]
<車両の全体構成>
図1は、本実施の形態に係る電池システムが搭載された車両の全体構成を概略的に示す図である。図1を参照して、車両1は、電気自動車であって、電池システム2を備える。電池システム2は、組電池10と、監視ユニット20と、均等化ユニット30と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)40と、電池ECU(Electronic Control Unit)50とを備える。車両1は、パワーコントロールユニット(PCU:Power
Control Unit)60と、モータジェネレータ70と、駆動輪80と、統合ECU90
とをさらに備える。
【0030】
組電池10は、直列接続された複数のブロック101~10M(図2参照)を含む。組電池10は、モータジェネレータ70を駆動するための電力を蓄え、PCU60を通じてモータジェネレータ70に電力を供給する。また、組電池10は、モータジェネレータ70の発電時にPCU60を通じて発電電力を受けて充電される。
【0031】
監視ユニット20は、電圧センサ群21(後述する複数の電圧センサ211~21M)と、電流センサ22と、温度センサ23とを含む。電圧センサ群21は、組電池10を構成する各ブロックの電圧を検出する。電流センサ22は、組電池10に入出力される電流IBを検出する。温度センサ23は、組電池10の温度を検出する。各センサは、その検出結果を電池ECU50に出力する。
【0032】
均等化ユニット(均等化装置)30は、組電池10を構成する複数のブロック間のSOC(State Of Charge)の不均等を解消するために設けられている。より詳細には、組電池10では、時間の経過に伴い、自己放電電流のバラつき、または、電圧センサ群21の消費電流のバラつき等に起因して、複数のブロック間のSOCがバラつき得る。複数のブロック間の電圧バラつきは、充電効率のバラつきによっても生じ得る。均等化ユニット30は、電池ECU50からの制御指令に従って、SOC不均等を解消するために複数のブロックのうちのいずれかのブロック(1以上のブロック)を放電させる。組電池10、監視ユニット20および均等化ユニット30の詳細な構成については図2にて説明する。なお、SOCとOCV(Open Circuit Voltage)との間には、SOCの増加とともにOCVも単調増加するという相関関係が存在するので、均等化の対象はOCVであってもよい。
【0033】
SMR40は、組電池10とPCU60とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。SMR40は、電池ECU50からの制御指令に応じて、組電池10とPCU60との間での電力の供給と遮断とを切り替える。なお、SMR40は、本開示に係る「リレー」に相当する。
【0034】
電池ECU50は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ51と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリ52と、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)とを含む。電池ECU50は、監視ユニット20の各センサから受ける信号ならびにメモリ52に記憶されたプログラムおよびマップ(後述)に基づいて、組電池10を管理する。電池ECU50により実行される主要な制御としては組電池10の「均等化制御」が挙げられる。均等化制御の詳細については後述する。なお、電池ECU50は、本開示に係る「制御装置」に相当する。
【0035】
PCU60は、統合ECU90からの制御指令に従って、組電池10とモータジェネレータ70との間で双方向の電力変換を実行する。PCU60は、たとえば、組電池10の直流電力を昇圧するコンバータと、コンバータにより昇圧された直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ70に出力するインバータ(いずれも図示せず)とを含む。なお、PCU60は、本開示に係る「負荷」の一例である。
【0036】
モータジェネレータ70は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。モータジェネレータ70は、組電池10からの電力を用いて駆動される。モータジェネレータ70の駆動力は駆動輪80に伝達される。一方、車両1の制動時または下り斜面での加速度低減時等には、モータジェネレータ70は回生発電を行う。モータジェネレータ70により発電された電力は、PCU60を介して組電
池10に供給される。
【0037】
統合ECU90は、電池ECU50と同様に、プロセッサと、メモリと、入出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。統合ECU90は、各種センサから受ける信号ならびにメモリに記憶されたプログラムおよびマップに基づいて、電池ECU50と協調しながら車両1全体を制御する。統合ECU90は、機能毎に分割されて構成されていてもよいし、電池ECU50と一体的に構成されていてもよい。
【0038】
<電池システムの構成>
図2は、電池システム2の構成をより詳細に説明するための図である。組電池10においては、複数のセルが並列接続されることによりブロック(スタック、モジュールとも称される)が構成されている。そして、複数のブロックが直列接続されることにより組電池10が構成されている。
【0039】
より具体的には、組電池10は、直列接続されたM個のブロック101~10Mを含む。ブロック101~10Mの各々は、並列接続されたN個のセルを含む。M,Nは2以上の自然数である。ただし、本開示において組電池が並列接続されたセルを含むことは必須ではなく、N=1であってもよい。
【0040】
各セルはリチウムイオン電池である。図示しないが、隣接するセル間は、バスバーにより電気的に接続されるとともに機械的に連結されている。各セルには直列にヒューズ(図示せず)が接続されている。ヒューズは、過大な電流が流れた場合にセルの電流経路を遮断する。また、各セルの内部には、電流遮断機構(CID:Current Interrupt Device)(図示せず)が設けられている。CIDは、電池ケース内の圧力が所定値以上になると電流経路を遮断するように構成されている。
【0041】
電圧センサ211は、ブロック101の電圧VB1を検出する。すなわち、電圧センサ211は、ブロック101を構成するN個のセルの電圧を検出する。電圧センサ212~21Mについても同様である。電流センサ22は、各ブロック101~10Mを流れる電流IBを検出する。温度センサ23は、所定位置における組電池10の温度TBを検出する。
【0042】
均等化ユニット30は、均等化回路301~30Mを含む。均等化回路301は、ブロック101に並列接続され、一般的な均等化回路と同様に、放電抵抗Rb1と、スイッチング素子(トランジスタ等)SW1とを含む。他の均等化回路302~30Mについても同様である。
【0043】
電池ECU50は、電圧センサ211~21Mからブロック101~10Mの電圧VB1~VBMを取得すると、電圧VB1~VBMがほぼ等しくなるまで各ブロックが放電されるように、均等化回路301~30Mを制御する。この制御を「均等化制御」と称する。図2では、均等化制御のための制御指令をS1~SMで示す。均等化制御を実行することで、ブロック101~10M間のSOC不均等を解消できる。
【0044】
<均等化制御の終了条件>
ブロック101~10Mの電圧VB1~VBMを監視しながら均等化制御を実行し、均等化制御の対象とするブロックの電圧が目標電圧に到達した場合に均等化制御を終了することも考えられる。しかしながら、組電池10の通電時には、電圧降下および分極が生じるため、組電池10の無通電時と比べて、電圧検出精度が低下する。そのため、組電池10の通電時には、均等化制御を終了してよいかどうかを正確に判定できない可能性がある。
【0045】
そこで、本実施の形態においては、均等化制御の終了条件を、ブロック101~10Mの電圧VB1~VBMに代えて、均等化制御の実行開始時からの経過時間によって定める構成を採用する。より詳細には、電池ECU50は、均等化制御の実行開始時から、放電抵抗Rb1~RbMの抵抗値および電圧センサ群21の検出誤差等に応じて定められる均等化時間が経過した場合に均等化制御を終了する。以下、この制御について詳細に説明する。
【0046】
図3は、本実施の形態における均等化制御に関連する一連の処理を示すタイムチャートである。図3において、横軸は経過時間を表す。縦軸は、組電池10に含まれる代表的なブロックの分極電圧を模式的に表す。図3には車両1のIG-ON(イグニッションオン)/IG-OFF(イグニッションオフ)の状態が示されるとともに、SMR40の閉成(ON)/開放(OFF)の状態も示されている。
【0047】
図3では理解を容易にするため、組電池10を構成するブロック数が2つ(すなわち、組電池10に含まれるブロックがブロック101,102のみ)であると想定する。
【0048】
初期時刻t0において、車両1はIG-ONされており、SMR40は閉成されている。時刻t1においてユーザにより車両1のIG-OFF操作が行われると、SMR40が開放される(時刻t2)。これにより、ブロック101,102がPCU60から電気的に遮断されるので、ブロック101,102は無負荷状態(無通電状態)となる。なお、車両1がIG-OFFされてから次にIG-ONされるまでに経過した時間を「IG-OFF時間T1」と記載する。IG-OFF時間T1は、ブロック101,102が無負荷状態で放置された時間とみることができる。
【0049】
時刻t2以降、ブロック101,102の分極電圧は時間の経過とともに小さくなる。なお、一般に、電池の分極がある程度緩和されるまでには通常、電池を数十分間放置することを要する。電池の分極が十分に緩和される(分極が解消する)までには通常、数時間を要する。
【0050】
時刻t3においてユーザにより車両1のIG-ON操作が行われる。そうすると、車両1はReadyON状態へと移行し、SMR40が閉成される(時刻t4)。これにより、ブロック101,102とPCU60とが電気的に接続され、ブロック101,102が通電状態(充放電が可能な状態)になる。
【0051】
IG-ON操作が行われてからSMR40が閉成されるまでの短時間(時刻t3と時刻t4との間の期間)にブロック101の電圧VB1とブロック102の電圧VB2との間の電圧差ΔV(=|VB1-VB2|)が取得される。そして、取得された電圧差ΔVが閾値THよりも大きかった場合、均等化制御を実行することが決定される。
【0052】
組電池10の満充電容量を推定する際には各ブロック101~10MのSOCが用いられる。ブロック101~10MのSOCには使用範囲が予め定められている。すべてのブロック101~10Mは、SOCが使用範囲内に収まるように充放電される。ブロック101~10MのうちのいずれかのブロックのSOC(すなわち最も高いSOC)が使用範囲の上限値に達すると、それ以上、組電池10を充電することができない。また、いずれかのブロックのSOC(すなわち最も低いSOC)が使用範囲の下限値に達すると、それ以上、組電池10を放電することができない。したがって、ブロック101~10M間にSOC不均等が生じている場合には、SOCが均等である場合と比べて、SOCの使用範囲が実質的に狭くなり、その結果、車両1のEV走行距離が短くなる。よって、車両1のEV走行距離が影響を受ける(端的にはEV走行距離が過度に短くなる)のに先立ち、均
等化制御を実行することが望ましい。閾値THを適切な値とすることで、分極の影響を考慮してもSOC不均等が生じていることを検出できるようになるため、均等化制御の要否を正確に判定することが可能になる。閾値THは、後述のようにすることで算出される可変値としてもよいし、事前実験の結果に基づいて設定された固定値であってもよい。
【0053】
図3に示す例では、電圧差ΔVが閾値THよりも大きかったため、時刻t5において均等化制御が開始される。本実施の形態においては、均等化制御が開始された時刻t5から「均等化時間T2」が経過した時刻t6に均等化制御が終了する。均等化時間T2は以下のように定めることができる。
【0054】
図2を再び参照して、ここでは均等化制御の対象がブロック101である例について説明する。電池ECU50から均等化ユニット30に対して均等化指令S1が出力されると、スイッチング素子SW1がオンされ、電流が放電抵抗Rb1を流れる。この電流Iの大きさは、オームの法則に従い、電圧差ΔVと目標電圧差ΔVtagとの差分値を放電抵抗Rb1の抵抗値で除した値となる(下記式(1)参照)。
I=(ΔV-ΔVtag)/Rb1 ・・・(1)
【0055】
目標電圧差ΔVtagとは、ブロック101の均等化制御を実行することで、ブロック101の電圧VB1と他のブロックの電圧との間の電圧差を、どの程度まで減少させたいかを事前に定めた値である。目標電圧差ΔVtagについて、より詳細に説明する。
【0056】
電圧センサ群21を構成する各電圧センサ211~21Mには検出誤差が存在する。電圧センサ211~21Mの検出誤差は、たとえば約5mVである。電圧差ΔVが電圧センサ211~21Mの検出誤差よりも小さい場合、その電圧差ΔVが実際に生じているのか、電圧差ΔVが電圧センサ211~21Mの検出誤差に起因するものなのかを区別することはできない。したがって、目標電圧差ΔVtagを電圧センサ211~21Mの検出誤差よりも小さな値に設定することは過剰な目標設定であると言える。むしろ、目標電圧差ΔVtagを電圧センサ211~21Mの検出誤差よりも小さな値に設定した場合、必要な時間よりも長く均等化制御が実行され、その結果、組電池10に蓄えられた電力が無駄に消費され、車両1のEV走行距離が短くなる可能性がある。よって、目標電圧差ΔVtagは、電圧センサ211~21Mの検出誤差以上の値に設定でき、好ましくは、電圧センサ211~21Mの検出誤差と同等の値(この例では5mV)に設定できる。
【0057】
式(1)において、放電抵抗Rb1の抵抗値は、放電抵抗Rb1の仕様値である。また、目標電圧差ΔVtagは、電圧センサ211~21Mの検出誤差に応じて事前に定められた値である。このように、放電抵抗Rb1の抵抗値も目標電圧差ΔVtagも既知の固定値である。したがって、電圧差ΔVが定まれば電流Iの大きさも定まる。ブロック101の均等化に要する時間は電流Iの大きさに依存する。電流Iが大きいほど、ブロック101の均等化に要する時間は短くなる。よって、ブロック101の均等化に要する時間(均等化時間T2)と電流Iの大きさとの間の関係を予め実験的に求めておくことにより、電圧差ΔVに応じた均等化時間T2を算出できる。この場合、電圧差ΔVが大きいほど均等化時間T2は長く設定される。
【0058】
ただし、均等化時間T2を電圧差ΔVに応じて可変に設定することは必須ではない。均等化時間T2は固定値であってもよい。前述のように、電圧差ΔVが解消された以降も均等化制御を継続した場合、組電池10に蓄えられた電力が無駄に消費される可能性があるため、均等化制御は過度に長く実行しない方が望ましい。ここで、電流Iが大きいほど、均等化に要する時間は短くなる。したがって、電流Iが通常使用される電流範囲の上限値である場合を想定することで、過度に長くならないように均等化時間T2を設定できる。本実施の形態では各セルはリチウムイオン電池であるため、ブロック101の電圧がリチ
ウムイオン電池の電圧使用範囲の上限値(約4V)である場合に流れる電流Iを想定して均等化時間T2を設定すればよい。
【0059】
<制御フロー>
図4は、本実施の形態における均等化制御に関連する一連の処理の一例を示すフローチャートである。図4(および後の図5)に示すフローチャートは、予め定められた条件成立時(具体的にはIG-ON操作時)に実行される。各ステップは、電池ECU50によるソフトウェア処理により実現されるが、電池ECU50内に作製されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0060】
S101において、電池ECU50は、組電池10を構成する各ブロック101~10Mの電圧VB1~VBMを電圧センサ群21から取得する。そして、電池ECU50は、電圧VB1~VBM間の電圧差ΔVを算出する(S102)。この電圧差ΔVとは、より詳細には、電圧VB1~VBMのうちの最高電圧と最低電圧との間の電圧差である。
【0061】
S103において、電池ECU50は、組電池10の温度TBを温度センサ23から取得する。さらに、電池ECU50は、車両1におけるIG-OFF時間T1をタイマ(図示せず)を用いて取得する(S104)。
【0062】
S105において、電池ECU50は、S103にて取得した温度TBと、S104にて取得したIG-OFF時間T1とに基づいて、閾値THを算出する。温度TBとIG-OFF時間T1と閾値THとの間の関係が定められたマップ(図示せず)を事前実験を実施することで作成し、メモリ52に格納しておく。このマップを参照することで、電池ECU50は、温度TBおよびIG-OFF時間T1から閾値THを算出できる。
【0063】
組電池10の温度TBが高いほど組電池10の分極の緩和が進みやすい。また、IG-OFF時間T1が長いほど組電池10の分極の緩和が進みやすい。したがって、組電池10の温度TBが高いほど、また、IG-OFF時間T1が長いほど、分極の影響が小さくなる。そうすると、各ブロックの電圧を高精度に検出でき、電圧差ΔVの誤差が小さくなる。よって、上記マップにおいて、組電池10の温度TBが高いほど、また、IG-OFF時間T1が長いほど、閾値THを小さく定めることができる。
【0064】
S106において、電池ECU50は、S102にて算出した電圧差ΔVが閾値THよりも大きいかどうかを判定する。電圧差ΔVが閾値TH以下である場合(S106においてNO)には、ブロック101~10M間のSOC不均等が小さいため、均等化制御を実行しなくてよい。したがって、電池ECU50は、以降の処理を実行することなく、一連の処理を終了する。電圧差ΔVが閾値THよりも大きい場合(S106においてYES)、電池ECU50は、均等化制御を実行することを決定する(S107)。
【0065】
S108において、電池ECU50は、予め定められた均等化時間T2(固定値)をメモリから読み出す。均等化時間T2は、各ブロック101~10Mの電圧が通常の電圧使用範囲の上限値(リチウムイオン電池では約4V)である場合を想定し、過度に長くならないように定められた値である。
【0066】
S109において、電池ECU50は均等化制御を開始する。均等化制御は、均等化制御の実行開始時から均等化時間T2が経過するまで継続される(S110においてNO)。均等化時間T2が経過すると(S110においてYES)、電池ECU50は均等化制御を終了する(S111)。これにより、一連の処理が終了する。なお、ブロック101~10Mのうちの任意の2つのブロック間の電圧差が閾値THよりも小さくなるように、同様の制御を2以上のブロックに対して実施できる。
【0067】
図5は、本実施の形態における均等化制御に関連する一連の処理の他の一例を示すフローチャートである。S201~S207の処理は、図4におけるS101~S107の処理と同等であるため、説明は繰り返さない。
【0068】
電圧差ΔVが閾値THよりも大きいため均等化制御を実行することを決定した場合、電池ECU50は、S202にて算出された電圧差ΔVに応じて、均等化時間T2を算出する(S208)。前述のように、放電抵抗Rb1の抵抗値と、電圧センサ211~21Mの検出誤差に応じて事前に定められた目標電圧差ΔVtagとは固定値である。そのため、電圧差ΔVが定まれば、均等化制御時に流れる電流Iの大きさも定まる。よって、均等化時間T2と電流Iの大きさとの間の対応関係を実験的に求めておくことで、電圧差ΔVから均等化時間T2を算出できる。
【0069】
以降のS209~S211の処理は、図4におけるS109~S111の処理と同等であるため、説明は繰り返さない。
【0070】
均等化制御の実行中には、SMR40が閉成されており、組電池10は、PCU60との間で充放電され得る。組電池10の充放電時には、各ブロック101~10Mの電圧を高精度に検出することは困難であるため、均等化制御を終了してよいかどうかを正確に判定できない可能性がある。これに対し、本実施の形態において、電池ECU50は、均等化制御の開始時から均等化時間T2が経過したことを条件に均等化制御を終了させる。均等化時間T2を用いることで、組電池10の充放電が電圧センサ211~21Mによるブロック101~10Mの電圧検出精度に及ぼす影響によらずに均等化制御の終了タイミングを判定できる。よって、本実施の形態によれば、均等化制御を終了してよいかどうかを高精度に判定できる。
【0071】
さらに、均等化時間T2は、均等化制御によりブロック101~10Mを流れる電流に関連するパラメータ、より詳細には、放電抵抗Rb1~RbMの抵抗値と、目標電圧差ΔVtagとに基づいて定められている。目標電圧差ΔVtagは、電圧センサ群21を構成する各センサの検出誤差以上の値であり、過度に小さな値ではない。したがって、不必要に長く均等化制御が継続されることを抑制できる。よって、本実施の形態によれば、組電池10に蓄えられた電力が無駄に消費されないうちに均等化制御を終了できる。これにより、車両1のEV走行距離をできるだけ長く確保することが可能になる。
【0072】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 車両、2 電池システム、10 組電池、101~10M ブロック、20 監視ユニット、21 電圧センサ群、211~21M 電圧センサ、22 電流センサ、23
温度センサ、30 均等化ユニット、301~30M 均等化回路、50 電池ECU、51 プロセッサ、52 メモリ、60 PCU、70 モータジェネレータ、80 駆動輪、90 統合ECU、SW1~SWM スイッチング素子、Rb1~RbM 放電抵抗。
図1
図2
図3
図4
図5