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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】車載用バッテリー
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20250408BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20250408BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20250408BHJP
   H01M 50/298 20210101ALI20250408BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/249
H01M50/209
H01M50/298
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021056167
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022153107
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】成毛 俊昭
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-014564(JP,A)
【文献】特開2020-035709(JP,A)
【文献】特開平07-156826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0162447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/249
H01M 50/209
H01M 50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアシートの下方に配置される車載用バッテリーであって、
池モジュールと、
上方に開口を有し前記開口から前記電池モジュールを収納する収納ケースと、
配置部を有し前記収納ケースに前記開口を上方から覆う状態で取り付けられた第1のカバーと、
前記第1のカバーの上側において前記配置部に配置されたバッテリーコントロールユニットと、
前記バッテリーコントロールユニットを覆う第2のカバーとを備え、
前記収納ケースと前記第1のカバーによって密閉空間が形成され、
前記密閉空間に前記電池モジュールが配置された
車載用バッテリー。
【請求項2】
前記第1のカバーが前記収納ケースの略外形上を覆い、
前記第1のカバーの上側に一体形成された前記配置部を備えた
請求項1に記載の車載用バッテリー。
【請求項3】
前記バッテリーコントロールユニットが前記電池モジュールより低い電圧で駆動が行われる低電圧部として形成された
請求項1又は請求項2に記載の車載用バッテリー。
【請求項4】
前記収納ケースには左右に離隔して位置された二つの電池収納部と二つの前記電池収納部の間に位置された中間部とが設けられ、
前記電池収納部の底面部が前記中間部の底面部より下方に位置され、
供給する電圧の大きさが異なる第1の電圧線と第2の電圧線のうち前記第1の電圧線が一方の前記電池収納部に配置され前記第2の電圧線が他方の前記電池収納部に配置された
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車載用バッテリー。
【請求項5】
前記収納ケースの内部に左右方向に延びる二つの補強部材が配置され、
前記補強部材の左右両端部が前記電池モジュールの上側において前記電池収納部を形成する左右両側の側面部に固定された
請求項4に記載の車載用バッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される車載用バッテリーについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の各種の車両にはモーターや各種の電装部品に電力を供給するための車載用バッテリーが搭載されている。
【0003】
近年、電気自動車やハイブリッド電気自動車等の車両が普及されつつあり、これらの電気を動力とした車両においては高い蓄電機能を有する車載用バッテリーが搭載される(特許文献1参照)。
【0004】
車載用バッテリーには収納ケースと収納ケースに収納された電池モジュールとが設けられ、電池モジュールは、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の複数の電池セル(2次電池)が配列されて構成されている。
【0005】
特許文献1に記載された車載用バッテリーは、フロアパネルの下方において車体に取り付けられて配置され、収納ケースに複数の電池モジュールや電池モジュールの制御等を行うバッテリーコントロールユニット等が収納されている。電池モジュールとバッテリーコントロールユニットは底板とバッテリーケース(カバー)によって形成された空間に配置され、バッテリーコントロールユニットが支持台を介して電池モジュールの上方に配置されている。電池モジュールは高い電圧によって駆動が行われるため高電圧部であり、バッテリーコントロールユニットは電池モジュールより低い電圧によって駆動が行われるため低電圧部であり電池モジュールを監視して制御する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-147423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両において、万が一衝突が生じ衝突による衝撃が車載用バッテリーに付与されると、高電圧部である電池モジュールからガスが発生するおそれがある。ガスが発生すると、ガスが高温であるため低電圧部であるバッテリーコントロールユニットに影響を及ぼし、バッテリーコントロールユニットの電池モジュールに対する監視機能や制御機能に支障を来し電池モジュールの高い電圧状態が維持されて短絡等が発生するおそれがある。
【0008】
また、電池モジュールから発生するガスが車載用バッテリーケースの外部に放出されガスが車室に流動されると、車両の搭乗者にも影響を及ぼすおそれもある。
【0009】
そこで、本発明は、車載用バッテリーと搭乗者の保護機能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車載用バッテリーは、リアシートの下方に配置される車載用バッテリーであって、池モジュールと、上方に開口を有し前記開口から前記電池モジュールを収納する収納ケースと、配置部を有し前記収納ケースに前記開口を上方から覆う状態で取り付けられた第1のカバーと、前記第1のカバーの上側において前記配置部に配置されたバッテリーコントロールユニットと、前記バッテリーコントロールユニットを覆う第2のカバーとを備え、前記収納ケースと前記第1のカバーによって密閉空間が形成され、前記密閉空間に前記電池モジュールが配置されたものである。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収納ケースの内部において電池モジュールが密閉空間に配置されバッテリーコントロールユニットが密閉空間の外側の空間に配置されるため、万が一の衝突等の場合に電池モジュールにおいてガスが発生しても発生したガスが密閉空間から外部に放出されず、ガスがバッテリーコントロールユニットや搭乗者に影響を及ぼさず車載用バッテリーと搭乗者の保護機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図2乃至図7と共に本発明車載用バッテリーの実施の形態を示すものであり、本図は、車両の構成を示す図である。
図2】車体の一部を示す斜視図である。
図3】車載用バッテリー等の構成を前方から見た状態で概念的に示す断面図である。
図4】車載用バッテリーの分解斜視図である。
図5】車載用バッテリー等の構成を側方から見た状態で概念的に示す断面図である。
図6】車両に左右方向からの衝突が生じたときに電池モジュールが変形した状態を前方から見た状態で概念的に示す断面図である。
図7】車載用バッテリーが車体に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<車両の概略構成>
先ず、本発明に係る車載用バッテリーが搭載される車両の概略構成について説明する(図1参照)。
【0014】
車両100は、例えば、燃料(ガソリン)による動力又は電気による動力の少なくとも一方の動力によって走行するハイブリッド車両である。但し、車両100は電気による動力のみによって走行する電動車両であってもよい。
【0015】
車両100は動力源110とアクセル開度センサー120と速度センサー130と制御部140と車載用バッテリー1を備えている。
【0016】
動力源110としてはエンジン111(内燃機関)と駆動モーター112(電動モーター)が設けられている。従って、車両100においては、エンジン111と駆動モーター112の双方を動力としたハイブリッド走行モードと、駆動モーター112のみを動力としたモーター走行モードの2種類の走行モードが設定され、走行条件等に応じて2種類の走行モードが切り換えられる。但し、車両100においてはエンジン111のみを動力としたエンジン走行モードの設定が可能にされていてもよい。
【0017】
アクセル開度センサー120は運転者から要求される車両100の駆動力に相当するアクセル開度、即ち、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を検出する。アクセル開度センサー120によって検出されたアクセル開度は検出信号として制御部140に出力される。
【0018】
速度センサー130は車両100の速度を検出する。速度センサー130によって検出された車両100の速度は検出信号として制御部140に出力される。
【0019】
制御部140は車両100における各部の動作を統括的に制御したり各種の演算処理を行う機能を有している。制御部140は、演算を行うマイクロプロセッサーと、マイクロプロセッサーに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)と、演算結果等の各種のデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、データの入力又は出力を行うためのインターフェース等を有している。
【0020】
制御部140はエンジン111を制御するエンジン制御部141と駆動モーター112を制御するモーター制御部142と車両100の走行モードを切り替えるモード切替部143とを備えている。
【0021】
エンジン制御部141はECU(Engine Control Unit)として動作する部分である。モーター制御部142は、例えば、駆動モーター112による車両100の車輪の駆動動作や駆動モーター112における回生動作等を制御する機能を有している。モード切替部143は車両100の速度や加速度等に基づき、エンジン111と駆動モーター112の双方を動力としたハイブリッド走行モードと駆動モーター112のみを動力としたモーター走行モードの2種類の走行モードを切り替える。
【0022】
車載用バッテリー1は車両100において使用される電力、例えば、駆動モーター112において使用される電力の他に制御部140や車両100において電力によって動作される各部や車両100に設けられた各種の照明等において使用される電力を貯蔵する電池モジュールを有している。電池モジュールの電池としては、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池が用いられている。車載用バッテリー1には車両100の外部からの充電により得られる電力(充電電力)の他に、例えば、駆動モーター112から供給される回生電力が貯蔵される。
【0023】
<車体の概略構成>
次に、車体50における後部の下部側の概略構成について説明する(図2及び図3参照)。
【0024】
車体50はフロアパン51とフロントフロアパネル52とリアフロアパネル53とサイドフレーム54、54を有している。
【0025】
フロアパン51は後述するリアシートの下側に位置された部分である。フロアパン51には横長の矩形状に形成された取付部55が設けられ、取付部55の内側の部分が上下に貫通された挿入孔55aとして形成されている。取付部55の上面部は矩形状に形成された締結用枠部55bとして設けられている。
【0026】
フロントフロアパネル52はフロアパン51の前側に連続して設けられ、左右方向における中央部が上方に突出された突状部52aとして設けられている。突状部52aは下方及び前後に開口された空間を有するトンネル形状に形成され、後端が取付部55の前面部に連続されている。
【0027】
リアフロアパネル53はフロアパン51の後側に連続して設けられている。
【0028】
サイドフレーム54、54はそれぞれフロントフロアパネル52とフロアパン51とリアフロアパネル53に亘る部分の左右に位置され、前後方向における中間部分が後方へ行くに従って上方に変位するように傾斜されている。
【0029】
車両100にはエンジン111等から車輪に動力を伝達するためのプロペラシャフト56等を含む図示しない動力伝達機構が設けられている。プロペラシャフト56は車体50の下面側において、少なくとも一部が突状部52aの内部に配置されている。突状部52aの内部には、例えば、車両100の走行時等に排出されるガスを排出するための排気管57の少なくとも一部も配置されている。
【0030】
<車載用バッテリー等>
次に、車載用バッテリー1について説明する(図3乃至図7参照)。
【0031】
車載用バッテリー1は上方に開口された横長の箱状に形成された収納ケース2と収納ケース2の開口を上方から覆う第1のカバー3と第1のカバー3に取り付けられる第2のカバー4と内部に配置される所要の各部とを有している(図3乃至図5参照)。
【0032】
収納ケース2には上端部から外方に張り出された締結用フランジ部2aが設けられている。収納ケース2は左右に離隔して位置された電池収納部5、5と電池収納部5、5間に位置された中間部6とを有し、中間部6が電池収納部5、5の上端部に連続されている。従って、収納ケース2には中間部6の下側に前後及び下方に開口された凹状部2bが形成されている。
【0033】
電池収納部5は前面部7と後面部8と側面部9、10と底面部11によって構成され、上方に開口されている。外側の側面部9は上端が内側の側面部10の上端より上方に位置され、側面部9の高さが側面部10の高さより高くされている。前面部7の下端部には前後に貫通された第1の挿通孔7aが形成されている。
【0034】
中間部6は前面部12と後面部13と底面部14によって構成され、前面部12と電池収納部5の前面部7とが同一平面上に位置され、後面部13と電池収納部5の後面部8とが同一平面上に位置されている。底面部14は左右両側縁がそれぞれ電池収納部5、5における側面部10、10の上縁に連続されている。底面部14には上下に貫通された排気孔14aが形成されている。
【0035】
底面部14の下面には圧力弁15が取り付けられている(図3参照)。圧力弁15は排気孔14aを覆う状態で底面部14に取り付けられ、車載用バッテリー1の内圧が一定以上に上昇したときに開放されて内圧を低下させる機能を有している。
【0036】
第1のカバー3は横長の矩形状に形成され、外形状が収納ケース2の締結用フランジ部2aと同じか一回り小さい大きさにされている(図3乃至図5参照)。第1のカバー3の左右方向における中央部には上方に開口された凹状の配置部3aが形成され、配置部3aは第1のカバー3の前側に寄った位置に形成されている。第1のカバー3には上下に貫通された第2の挿通孔3bが形成され、第2の挿通孔3bは配置部3a又は配置部3aの近傍に位置されている。
【0037】
第1のカバー3には左右両側の部分と配置部3aの後方とにそれぞれ上方に膨らむ膨出部3c、3c、3cが設けられている。
【0038】
第2のカバー4は外形状が第1のカバー3の外形状より小さくされ、第1のカバー3に上側から取り付けられる。第2のカバー4は下方に開口された箱状に形成され、配置部3aと第2の挿通孔3bを覆う大きさに形成されている。
【0039】
収納ケース2の電池収納部5、5にはそれぞれ、例えば、三つずつの電池モジュール16、16、・・・が収納されている。電池モジュール16はケース部の内部にニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の複数の2次電池が収納されている。尚、収納ケース2に収納される電池モジュール16の数は任意であり、電池モジュール16は少なくとも一つずつが左右に離隔した状態で収納ケース2の電池収納部5、5に収納されていればよい。
【0040】
収納ケース2の電池収納部5、5にはそれぞれ補強部材17、17が固定されている(図3及び図4参照)。補強部材17は強度の高い金属材料によって左右に延びる形状に形成され、左右両端部が側面部9と側面部10に電池モジュール16、16、16の上側においてボルトや溶接等によって固定されている。
【0041】
従って、補強部材17によって電池収納部5が左右方向において補強されるため、万が一の左右方向からの車両100の衝突が生じたときに電池収納部5の変形が抑制され、電池モジュール16を保護することができる。
【0042】
尚、電池収納部5には、例えば、前後に離隔して複数の補強部材17が固定されていてもよい。
【0043】
また、万が一の左右方向からの車両100の衝突が生じたときに、衝突による衝撃が大きい場合には電池収納部5が大きく変形する可能性がある(図6参照)。しかしながら、収納ケース2には左右方向における中央部に凹状部2bが形成され、電池収納部5、5が凹状部2bの左右に位置されているため、電池収納部5が凹状部2b側に変位されて変形される。
【0044】
従って、電池収納部5の変形によって凹状部2bの左右方向における幅は小さくなるが、変形した電池収納部5が他方の電池収納部5に衝突し難いため、電池収納部5の内部に配置された電池モジュール16に損傷が生じ難く、衝突による衝撃が大きい場合においても電池モジュール16を保護することができる。
【0045】
収納ケース2の中間部6にはジャンクションボックス18が配置されている。ジャンクションボックス18は電池モジュール16、16、・・・等を制御する制御機器として機能する。ジャンクションボックス18は中間部6において底面部14の後端側の部分に配置されている。
【0046】
第1のカバー3の配置部3aにはバッテリーコントロールユニット19が配置されている。バッテリーコントロールユニット19は車載用バッテリー1の各部を制御する制御装置であり、電池モジュール16より低い電圧で駆動が行われる低電圧部とされている。従って、電池モジュール16はバッテリーコントロールユニット19より高い電圧で駆動が行われる高電圧部とされ、ジャンクションボックス18もバッテリーコントロールユニット19より高い電圧で駆動が行われる高電圧部とされる。
【0047】
収納ケース2には第1のカバー3が、例えば、図示しないボルト等により締結されて取り付けられ、第1のカバー3の外周部が収納ケース2の締結用フランジ部2aに上側から結合される(図3乃至図7参照)。このとき第1のカバー3の外周部と収納ケース2の締結用フランジ部2aとの間にはゴムシールやウェザーストリップ等のシール部材20が配置され、シール部材20を介して第1のカバー3の外周部と締結用フランジ部2aが密着される。従って、収納ケース2と第1のカバー3によって形成された内部の空間が密閉空間21として形成される。
【0048】
このように収納ケース2と第1のカバー3によって密閉空間21が形成され、密閉空間21には何れも高電圧部である電池モジュール16、16、・・・とジャンクションボックス18が配置される。また、低電圧部であるバッテリーコントロールユニット19は第1のカバー3の上側に位置されているため、密閉空間21の外側に配置される。
【0049】
収納ケース2に第1のカバー3が取り付けられた状態においては、配置部3aがジャンクションボックス18の前側に位置され、配置部3aに配置されたバッテリーコントロールユニット19がジャンクションボックス18の前側に位置される(図5参照)。このとき配置部3aが上方に開口された凹状に形成されているため、バッテリーコントロールユニット19の一部がジャンクションボックス18に水平方向において重なる状態にされ、バッテリーコントロールユニット19の下面がジャンクションボックス18の上下両面の間に位置される(図3及び図5参照)。
【0050】
収納ケース2に第1のカバー3が取り付けられた状態においては、密閉空間21における上部に空間が形成される。この空間は補強部材17、17の上側に形成され、特に、第1のカバー3における左右の膨出部3c、3cの下側には上下方向において一定以上の間隔を有する保護空間22、22が形成される。
【0051】
上記したように、ジャンクションボックス18は高い電圧で駆動される高電圧部であり、ジャンクションボックス18には高電圧を供給するための第1の電圧線23が接続される。第1の電圧線23は、例えば、収納ケース2の一方の電池収納部5に形成された第1の挿通孔7aに挿通されてジャンクションボックス18に接続される。尚、第1の電圧線23は、収納ケース2の外部に位置される外側部と収納ケース2の内部に位置される内側部とに分割されてもよく、この場合には第1の挿通孔7aに図示しないコネクターが取り付けられ、コネクターに外側部の一端部と内側部の一端部とが接続されてジャンクションボックス18に接続される。
【0052】
また、電池モジュール16、16、・・・も高い電圧で駆動される高電圧部であり、ジャンクションボックス18と電池モジュール16、16、・・・が密閉空間21において図示しない高電圧線によって接続されている。
【0053】
一方、バッテリーコントロールユニット19はジャンクションボックス18や電池モジュール16より低い電圧で駆動される低電圧部であり、バッテリーコントロールユニット19には低電圧を供給するための第2の電圧線24が接続される。第2の電圧線24は、例えば、収納ケース2の他方の電池収納部5に形成された第1の挿通孔7aと第1のカバー3に形成された第2の挿通孔3bとに挿通されてバッテリーコントロールユニット19に接続される。尚、第2の電圧線24も第1の電圧線23と同様に、収納ケース2の外部に位置される外側部と収納ケース2の内部に位置される内側部とに分割されてもよい。この場合には、第1の挿通孔7aに図示しないコネクターが取り付けられ、コネクターに外側部の一端部と内側部の一端部とが接続されてバッテリーコントロールユニット19に接続される。
【0054】
上記のように、第1の電圧線23が第1の挿通孔7aに挿通され第2の電圧線24が第1の挿通孔7aと第2の挿通孔3bに挿通された状態においては、第1の電圧線23と第1の挿通孔7aの間や第2の電圧線24と第1の挿通孔7a又は第2の挿通孔3bとの間に隙間が生じる場合があるが、これらの隙間は図示しないシール材等によって閉塞される。
【0055】
収納ケース2に第1のカバー3が取り付けられた状態において、第2のカバー4が第1のカバー3に、例えば、図示しないボルト等により締結されて取り付けられ、第2のカバー4によってバッテリーコントロールユニット19と第2の電圧線24の一部とが覆われる。尚、このとき第2のカバー4の外周部と第1のカバー3の上面との間にゴムシールやウェザーストリップ等の図示しないシール部材が配置され、シール部材を介して第2のカバー4の外周部と第1のカバー3の上面とが密着されてもよい。
【0056】
<車載用バッテリーの車体に対する取付状態等>
上記のように構成された車載用バッテリー1はボルト等によって車体50に取り付けられる(図7参照)。車載用バッテリー1の車体50への取付は収納ケース2における締結用フランジ部2aより下側の部分がフロアパン51の取付部55に形成された挿入孔55aに上側から挿入され、締結用フランジ部2aがボルト等によって締結用枠部55bに締結されることにより行われる。
【0057】
上記のように車載用バッテリー1が車体50のフロアパン51に取り付けられた状態においては、収納ケース2の少なくとも一部が車体50から下方に突出されると共に収納ケース2の凹状部2bにプロペラシャフト56や排気管57の少なくとも一部が挿入されて位置される。
【0058】
車載用バッテリー1がフロアパン51に取り付けられた状態において、車体50にはリアシート40が取り付けられる(図3及び図5参照)。リアシート40は搭乗者が着座するシートクッション41と背もたれとして機能するバックレスト42とを有している。
【0059】
リアシート40は車載用バッテリー1の真上の位置において車体50に取り付けられ、例えば、リアシート40が3人掛けの場合には、左右両側の搭乗者が着座される部分の真下にそれぞれ電池モジュール16、16、・・・が位置され、中央の搭乗者が着座される部分の真下にジャンクションボックス18とバッテリーコントロールユニット19が位置される(図3参照)。
【0060】
<車両の衝突時等の車載用バッテリーの状態>
車両100において、万が一衝突が生じた場合には、衝突による衝撃が車載用バッテリー1に付与されて高電圧部である電池モジュール16から高温のガスが発生するおそれがある。ガスが発生すると、発生したガスが収納ケース2の内部に充満するが、ガスの発生源である電池モジュール16が密閉空間21に配置されているため、圧力弁15が動作される後述する場合を除いてガスが密閉空間21から外部に放出されない。従って、ガスは第1のカバー3と第2のカバー4によって形成されたバッテリーコントロールユニット19が配置されている空間に侵入することがないため、ガスが低電圧部であるバッテリーコントロールユニット19に影響を及ぼさず、バッテリーコントロールユニット19の正常な駆動状態が確保される。
【0061】
バッテリーコントロールユニット19の正常な駆動状態が確保されるため、バッテリーコントロールユニット19による電池モジュール16に対する監視機能や制御機能が保持され、バッテリーコントロールユニット19による制御により電池モジュール16の駆動状態の停止や抑制機能が実行される。
【0062】
尚、電池モジュール16において発生したガスが密閉空間21に充満されると密閉空間21の内圧が大きく上昇する可能性があるが、この場合には圧力弁15が開放されて中間部6の底面部14に形成された排気孔14aから車両100の外部にガスが排出される。従って、密閉空間21の内圧の一定以上の上昇が規制され、収納ケース2や第1のカバー3等の変形や破損が防止される。
【0063】
また、電池モジュール16において発生したガスが密閉空間21から車室に放出されないため、ガスが車室へも流動されず、ガスの搭乗者に対する影響が及ぼされず搭乗者が保護される。
【0064】
車両100の前面衝突時には搭乗者に下方への力が付与され所謂サブマリン状態により搭乗者から車載用バッテリー1に上方からの外力が付与される可能性があるが、第1のカバー3の下側には保護空間22が形成されている。従って、搭乗者から車載用バッテリー1に付与された外力が保護空間22によって吸収され、高電圧部である電池モジュール16に対して外力が付与され難く、漏電や短絡や感電等を防止することができる。
【0065】
また、車両100の前突時にサブマリン状態により搭乗者から車載用バッテリー1に上方からの外力が付与されたときには外力が第2のカバー4を介してバッテリーコントロールユニット19に達する可能性があるが、バッテリーコントロールユニット19が低電圧部であるため搭乗者に対する影響は小さい。
【0066】
<まとめ>
以上に記載した通り、車載用バッテリー1にあっては、上方に開口された収納ケース2と、収納ケース2に収納された電池モジュール16と、配置部3aを有し収納ケース2に取り付けられた第1のカバー3と、第1のカバー3の上側において配置部3aに配置されたバッテリーコントロールユニット19と、バッテリーコントロールユニット19を覆う第2のカバー4とを備え、収納ケース2と第1のカバー3によって密閉空間21が形成され、密閉空間21に電池モジュール16が配置されている。
【0067】
従って、収納ケース2の内部において電池モジュール16が密閉空間21に配置されバッテリーコントロールユニット19が密閉空間21の外側の空間に配置されるため、万が一の車両100の衝突等の場合に電池モジュール16においてガスが発生しても発生したガスが密閉空間21から外部に放出されない。これにより、ガスがバッテリーコントロールユニット19や搭乗者に影響を及ぼさず車載用バッテリー1と搭乗者の保護機能を高めることができる。
【0068】
また、配置部3aが左右方向における中央部に位置されると共に上方に開口する凹状に形成されている。
【0069】
従って、バッテリーコントロールユニット19が左右方向における中央部に配置されると共に収納ケース2の底面部14に近付いて配置されるため、バッテリーコントロールユニット19に上方から負荷が付与されたときに高電圧部である電池モジュール16に負荷が生じ難く電池モジュール16を保護することができると共に車載用バッテリー1の上下方向における小型化を図ることができる。
【0070】
さらに、収納ケース2が車体50に取り付けられ、車体50には上下に貫通された挿入孔55aが形成され、収納ケース2が挿入孔55aに挿入され少なくとも一部が車体50から下方に突出された状態にされている。
【0071】
従って、リアシート40の位置を高くすることなく車載用バッテリー1をリアシート40の下方に配置することが可能になり、リアシート40の位置に関する設計の変更を行う必要がないと共に車室を狭めることなく車載用バッテリー1を所望の位置に配置することができる。
【0072】
さらにまた、収納ケース2には左右に離隔して位置された二つの電池収納部5、5と二つの電池収納部5、5間に位置された中間部6とが設けられ、電池収納部5の底面部11が中間部6の底面部14より下方に位置され、供給する電圧の大きさが異なる第1の電圧線23と第2の電圧線24のうち第1の電圧線23が一方の電池収納部5に配置され第2の電圧線24が他方の電池収納部5に配置されている。
【0073】
従って、供給する電圧の大きさが異なる第1の電圧線23と第2の電圧線24が収納ケース2の内部において左右に離隔した位置に配置されるため、第1の電圧線23と第2の電圧線24の間のノイズの影響を抑制することができる。
【符号の説明】
【0074】
50 車体
55a 挿入孔
1 車載用バッテリー
2 収納ケース
3 第1のカバー
3a 配置部
4 第2のカバー
5 電池収納部
6 中間部
9 側面部
10 側面部
11 底面部
14 底面部
16 電池モジュール
17 補強部材
19 バッテリーコントロールユニット
21 密閉空間
23 第1の電圧線
24 第2の電圧線
40 リアシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7