(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】ワークの搬送装置及びマッピング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250408BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2021062553
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】猪股 徹也
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-165543(JP,A)
【文献】特開2020-191370(JP,A)
【文献】特開2014-116426(JP,A)
【文献】特開2014-160775(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0118300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向に配列した複数のスロットを備えて前記スロットごとに板状物である1つのワークを水平に収容可能な収容部を対象とした前記ワークの搬送を行う搬送装置であって、
前記ワークを搬送するときに前記ワークを保持するハンドと、
前記ワークに光を照射して前記スロットにおける前記ワークの在荷状態を判別するセンサと、
前記ハンド及び前記センサを前記収容部に対して移動させる移動機構と、
前記移動機構を駆動し制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、正常な搭載状態で複数箇所において前記ワークが収容され、かつ異常な搭載状態で複数箇所において前記ワークが収容されている状態の前記収容部に対し、前記センサを前記高さ方向に移動させて前記センサによって前記ワークを検出させる閾値検出動作を実行し、前記閾値検出動作において前記正常な搭載状態の前記ワークから得られた検出厚さの平均値及び前記スロット内での高さ位置の平均値と、前記閾値検出動作において前記異常な搭載状態の前記ワークから得られた検出厚さの平均値及び前記スロット内での高さ位置の平均値とから、前記正常な搭載状態と前記異常な搭載状態とを判別する閾値を算出する、搬送装置。
【請求項2】
前記異常な搭載状態は、1つの前記スロットに対して2以上の前記ワークが収容される第1の状態と、隣接する前記スロットに跨って少なくとも1つの前記ワークが収容される第2の状態と、を含み、
前記閾値の算出に際し、前記第1の状態で複数箇所において前記ワークが収容されているとともに前記第2の状態で複数箇所において前記ワークが収容されている前記収容部が使用される、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記センサは前記ハンドに取り付けられている、請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記センサは、発光部と受光部とを備え、前記発光部から前記受光部に向けた光が前記ワークに遮られることにより前記ワークを検出する透過型のセンサである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記センサは、前記ワークに向けて光を照射し前記ワークからの反射光を検出することにより前記ワークを検出する反射型のセンサである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記収容部の奥行き方向に直交する水平方向に沿った、前記ワークにおける前記センサからの光が照射される位置を照射位置として、
前記制御手段は、前記閾値検出動作を行う前に、前記センサを前記
高さ方向に沿って移動させて前記ワークからの前記反射光を検出させる動作を、全ての前記スロットに1つずつ前記ワークが収容されている状態の前記収容部を対象として、前記照射位置を移動させて繰り返し実行して検出分布データを取得し、前記検出分布データに基づいてマッピング位置を決定し、
前記制御手段は、決定された前記マッピング位置において前記閾値検出動作を実行し、
前記マッピング位置は、前記収容部における前記ワークの在荷状態を判別するマッピングを行うために前記センサを
前記高さ方向に移動させるときの前記照射位置である、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記移動機構を制御して前記ワークの搬送を行うときに、前記収容部における前記ワークの在荷状態を判別するマッピングを行う制御を実行するとともに、前記閾値を用いて前記異常な搭載状態の有無を判別する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
高さ方向に配列した複数のスロットを備えて前記スロットごとに板状物である1つのワークを水平に収容可能な収容部における前記ワークの在荷状態を判別する
マッピングを行うマッピング方法であって、
正常な搭載状態で複数箇所において前記ワークが収容され、かつ異常な搭載状態で複数箇所において前記ワークが収容されている状態の前記収容部に対し、センサを前記高さ方向に移動させて前記センサによって前記ワークを検出させる閾値検出動作を実行し、
前記閾値検出動作において前記正常な搭載状態の前記ワークから得られた検出厚さの平均値及び前記スロット内での高さ位置の平均値と、前記閾値検出動作において前記異常な搭載状態の前記ワークから得られた検出厚さの平均値及び前記スロット内での高さ位置の平均値とから、前記正常な搭載状態と前記異常な搭載状態とを判別する閾値を算出する、マッピング方法。
【請求項9】
前記異常な搭載状態は、1つの前記スロットに対して2以上の前記ワークが収容される第1の状態と、隣接する前記スロットに跨って少なくとも1つの前記ワークが収容される第2の状態と、を含み、
前記閾値の算出に際し、前記第1の状態で複数箇所において前記ワークが収容されているとともに前記第2の状態で複数箇所において前記ワークが収容されている前記収容部を使用する、請求項8に記載のマッピング方法。
【請求項10】
前記センサは、前記ワークに向けて光を照射し前記ワークからの反射光を検出することにより前記ワークを検出する反射型のセンサであり、
前記収容部の奥行き方向に直交する水平方向に沿った、前記ワークにおける前記センサからの光が照射される位置を照射位置として、
前記閾値検出動作を行う前に、前記センサを前記
高さ方向に沿って移動させて前記ワークからの前記反射光を検出させる動作を、全ての前記スロットに1つずつ前記ワークが収容されている状態の前記収容部を対象として、前記照射位置を移動させて繰り返し実行して検出分布データを取得し、前記検出分布データに基づいてマッピング位置を決定し、
前記閾値検出動作は、決定された前記マッピング位置において実行され、
前記マッピング位置は、前記マッピングを行うために前記センサを
前記高さ方向に移動させるときの、前記照射位置である、請求項8または9に記載のマッピング方法。
【請求項11】
前記閾値を決定したのち前記ワークの搬送を行うときに、前記収容部に対する前記マッピングを行うとともに、前記閾値を用いて前記異常な搭載状態の有無を判別する、請求項8乃至10のいずれか1項に記載のマッピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ロボットなどの搬送装置を用いたワークの搬送に関し、特に、カセットあるいはカセットステージなどの収容部におけるワークの在荷状態を判別するマッピングを実行するときに、収容部でのワークの異常搭載状態の検出の精度を向上させた搬送装置及びマッピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送用ロボットなどの搬送装置によって、半導体ウエハやガラス基板などの板状のワークを搬送する場合、搬送対象のワークは、カセットあるいはカセットステージなどと呼ばれる収容部に予め収容されており、搬送装置は、その先端に設けられたハンドを搬送元の収容部内に伸ばしてワークを取り出し、ハンド上にワークを載置した状態でワークを搬送し、搬送先の収容部にワークを収容する。半導体ウエハなどのワークを搬送する搬送ロボットの一例が特許文献1に示されている。一般に収容部は複数枚のワークを収容可能であるから、実際に搬送を行う前に、収容部のどの位置にワークが存在するかの在荷状態を調べる必要があり、これをマッピングと呼ぶ。収容部には複数のスロットが垂直方向に積み重なるように設けられているとして、マッピングを実行することにより、何番目と何番目のスロットにワークが存在するかを知ることができ、その結果に応じて最適な搬送シーケンスを組み立てることができる。搬送シーケンスでは、搬送元の収容部の何番目のスロットからワークを取り出して、搬送先の収容部における現在空きスロットとなっている何番目のスロットにそのワークを収容するかが指定される。
【0003】
マッピングは、センサを用いて収容部内のワークを非接触で検出してその位置を求めることによって行われる。マッピングに使用されるセンサには、ワークによって光路が遮られることによりワークを検出する透過型のセンサと、ワークに検出用の光を照射しワークのエッジ(あるいは端面)で反射された光を検出し、その反射量や反射位置に基づいてワークを検出する反射型のセンサとがある。マッピングでは、スロットの配列方向に沿ってセンサを移動させながらスロットごとにワークの存在不存在を判定するが、センサがどの位置にあるときに光(透過光または反射光)を検出しどの位置にあるときに光を検出しなかったによって、ワークの厚さやスロットの高さ方向におけるワークの位置も求めることができる。なお、ワークは例えば半導体ウエハであってその厚さは例えば1mm以下であり、収容部においてワークが1枚ずつ置かれるスロットの相互の間隔は5mm~10mm程度である。これらの理由から、透過型あるいは反射型のいずれのセンサを用いる場合においても、検出用の光はビーム径を絞れて指向性が鋭いレーザー光であることが好ましい。透過型のセンサを用いてマッピングを行う例が特許文献2,3に記載されている。
【0004】
スロットが垂直方向に配列している収容部に板状のワークを水平に収容する場合、スロットごとに1枚のワークが収容される必要がある。しかしながら何らかの理由によって1つのスロットに2枚以上のワークが重なって置かれたり、2つのスロットに跨るようにワークが置かれたりすることがある。以下の説明において、1つのスロットに1枚のワークが収容されている状態を「シングル」と呼び、1つのスロットに2枚以上のワークが収容されている状態を「ダブル」と呼ぶ。各スロットでは、ワークが水平になるように、例えばスロットの水平方向の両端部に設けられたレールによってそのワークの両端部がそれぞれ保持される。したがって、スロットは水平方向に細長い領域であり、レールによってワークが保持される位置を基準としてスロットの高さ方向にスロット内で高さ位置を定めることができる。ワークの搬送のためには、収容部に搬送装置のハンドを挿し入れ、ハンドを少し上昇させることにより、スロットに収容されていたワークをハンド上に載置させる必要がある。そのため、スロットの水平方向両端のレールの部分を除けば、垂直方向に隣接するスロットの間は仕切られていない。そのため、垂直方向に隣接する2つのスロットに跨るように斜めにワークが置かれることもある。1つのワークが2つのスロットに跨っている状態を「クロス」と呼ぶ。
【0005】
「シングル」は収容部に行けるワークの正常な収容状態あるいは搭載状態である。これに対し、「ダブル」と「クロス」は、収容部における異常な搭載状態である。このように「ダブル」または「クロス」の形態で収容部内にワークが収容された状態すなわち不良状態にあるときに収容部からワークを取り出そうとすると、ワークが破損したり、ワークを取り出せなかったりするおそれがある。したがって、マッピングでは、ワークの在荷状態を判別するだけでなく、それらの不良状態を認識してアラートを発し、それにより破損事故などを防止できるようにすることが必要である。こうした異常搭載状態は、ワークの検出厚さやスロットの高さ方向におけるワークの位置が「シングル」の場合と異なるので、ワークの検出厚さに関するする閾値と、ワークの高さ方向の位置に関する閾値とを設定することにより検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-84651号公報
【文献】特開2004-327501号公報
【文献】特開2000-36528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マッピング実行時にワークの異常搭載状態を検出するときは、ワークの検出厚さに対する閾値と、スロットでのワークの高さ方向の位置に関する閾値との2つの閾値を予め設定しておく必要がある。従来は、これらの閾値は、実際に異常搭載状態のワークを測定し、正常搭載状態での測定データと異常搭載状態での測定データとから人手により設定していた。しかしながら、この閾値の設定作業には時間がかかるとともに、誰が閾値を設定するかによってばらつきが生じ、その結果、適切に実際にマッピングを行うときに適切に異常搭載状態を検出できないこともあった。
【0008】
本発明の目的は、マッピング実行時にワークの異常搭載状態を判別するための閾値を短時間で正確に設定できる搬送装置及びマッピング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搬送装置は、高さ方向に配列した複数のスロットを備えてスロットごとに板状物である1つのワークを水平に収容可能な収容部を対象としたワークの搬送を行う搬送装置であって、ワークを搬送するときにワークを保持するハンドと、ワークに光を照射してスロットにおけるワークの在荷状態を判別するセンサと、ハンド及びセンサを収容部に対して移動させる移動機構と、移動機構を駆動し制御する制御手段とを有し、制御手段は、正常な搭載状態で複数箇所においてワークが収容され、かつ異常な搭載状態で複数箇所においてワークが収容されている状態の収容部に対し、センサを高さ方向に移動させてセンサによってワークを検出させる閾値検出動作を実行し、閾値検出動作において正常な搭載状態のワークから得られた検出厚さの平均値及びスロット内での高さ位置の平均値と、閾値検出動作において異常な搭載状態のワークから得られた検出厚さの平均値及びスロット内での高さ位置の平均値とから、正常な搭載状態と異常な搭載状態とを判別する閾値を算出する。
【0010】
本発明の搬送装置では、正常な搭載状態と異常な搭載状態とがそれぞれ複数箇所現れるようにワークを収容した収容部を用意し、その収容部に対して、マッピング動作と同様の閾値検出動作を実行し、閾値検出動作により得た平均値に基づいて閾値を算出する。したがって、マッピング実行時に異常搭載状態の有無を判別するために用いられる閾値を、人手によらずに自動的に設定できる。その結果、作業者の違いによる判別閾値のばらつきが起こらず、マッピング実行時に正確に異常搭載状態を判別できるようになる。
【0011】
本発明の搬送装置では、異常な搭載状態は、1つのスロットに対して2以上のワークが収容される第1の状態(すなわち「ダブル」)と、隣接するスロットに跨って少なくとも1つのワークが収容される第2の状態(すなわち「クロス」)と、を含み、閾値の算出に際し、第1の状態で複数箇所においてワークが収容されているとともに第2の状態で複数箇所においてワークが収容されている収容部を使用することが好ましい。第1の状態と第2の状態がそれぞれ複数箇所で現れている収容部に対して閾値検出動作を実行することにより、第1の状態と第2の状態とを区別して判別することを可能にする閾値が得られる。
【0012】
本発明の搬送装置では、センサはハンドに取り付けられていることが好ましい。マッピングのためにはセンサを移動させる必要があるが、収容部に対して移動するハンドにセンサを取り付けることにより、搬送装置における移動機構の構成を簡略化できる。
【0013】
本発明の搬送装置では、センサは、発光部と受光部とを備え、発光部から受光部に向けた光がワークに遮られることによりワークを検出する透過型のセンサであってもよいし、ワークに向けて光を照射しワークからの反射光を検出することによりワークを検出する反射型のセンサであってもよい。本発明では、マッピングに一般的に用いられる透過型のセンサ及び反射型のセンサのいずれも使用することができる。ただし、使用するセンサの種類に応じ、閾値の算出手順が異なることがある。
【0014】
反射型のセンサを使用する場合、マッピング位置によってはワークの検出をうまく行えないことがある。ここでマッピング位置とは、収容部におけるワークの在荷状態を判別するマッピングを行うためにセンサを高さ方向に移動させるときの照射位置のことであり、照射位置とは、収容部の奥行き方向に直交する水平方向に沿った、ワークにおけるセンサからの光が照射される位置のことである。そこで本発明の搬送装置では、制御手段が、閾値検出動作を行う前に、センサを高さ方向に沿って移動させてワークからの反射光を検出させる動作を、全てのスロットに1つずつワークが収容されている状態の収容部を対象として、照射位置を移動させて繰り返し実行して検出分布データを取得し、検出分布データに基づいてマッピング位置を決定し、その後、決定されたマッピング位置において閾値検出動作を実行することが好ましい。
【0015】
本発明の搬送装置では、制御手段は、移動機構を制御してワークの搬送を行うときに、収容部におけるワークの在荷状態を判別するマッピングを行う制御を実行するとともに、閾値を用いて異常な搭載状態の有無を判別することができる。本発明に基づいて決定された閾値を使用することにより、マッピング実行時に、異常な搭載状態を正確に判別することが可能になる。
【0016】
本発明のマッピング方法は、高さ方向に配列した複数のスロットを備えてスロットごとに板状物である1つのワークを水平に収容可能な収容部におけるワークの在荷状態を判別するマッピングを行う方法であって、正常な搭載状態で複数箇所においてワークが収容され、かつ異常な搭載状態で複数箇所においてワークが収容されている状態の収容部に対し、センサを高さ方向に移動させてセンサによってワークを検出させる閾値検出動作を実行し、閾値検出動作において正常な搭載状態のワークから得られた検出厚さの平均値及びスロット内での高さ位置の平均値と、閾値検出動作において異常な搭載状態のワークから得られた検出厚さの平均値及びスロット内での高さ位置の平均値とから、正常な搭載状態と異常な搭載状態とを判別する閾値を算出する。
【0017】
本発明のマッピング方法では、正常な搭載状態と異常な搭載状態とがそれぞれ複数箇所現れるようにワークを収容した収容部を用意し、その収容部に対して、マッピング動作と同様の閾値検出動作を実行し、閾値検出動作により得た平均値に基づいて閾値を算出する。したがって、マッピング実行時に異常搭載状態の有無を判別するために用いられる判別閾値を、人手によらず、かつばらつきなく自動的に設定でき、マッピング実行時に正確に異常搭載状態を判別できるようになる。
【0018】
本発明のマッピング方法では、異常な搭載状態は、1つのスロットに対して2以上のワークが収容される第1の状態(すなわち「ダブル」)と、隣接するスロットに跨って少なくとも1つのワークが収容される第2の状態(すなわち「クロス」)と、を含み、閾値の算出に際し、第1の状態で複数箇所においてワークが収容されているとともに第2の状態で複数箇所においてワークが収容されている収容部を使用することが好ましい。第1の状態と第2の状態がそれぞれ複数箇所で現れている収容部に対して閾値検出動作を実行することにより、第1の状態と第2の状態とを区別して判別することを可能にする閾値が得られる。
【0019】
本発明のマッピング方法では、センサとして、発光部と受光部とを備え、発光部から受光部に向けた光がワークに遮られることによりワークを検出する透過型のセンサを用いるこもできるし、ワークに向けて光を照射しワークからの反射光を検出することによりワークを検出する反射型のセンサを用いることもできる。しかしながら反射型のセンサを用いる場合、マッピング位置によってはワークの検出をうまく行えないことがある。そこで本発明のマッピング方法では、センサが反射型のセンサである場合には、閾値検出動作を行う前に、センサを高さ方向に沿って移動させてワークからの反射光を検出させる動作を、全てのスロットに1つずつワークが収容されている状態の収容部を対象として、照射位置を移動させて繰り返し実行して検出分布データを取得し、検出分布データに基づいてマッピング位置を決定し、そののち、決定されたマッピング位置において閾値検出動作を実行することが好ましい。
【0020】
本発明のマッピング方法では、閾値を決定したのちワークの搬送を行うときに、収容部に対するマッピングを行うとともに、閾値を用いて異常な搭載状態の有無を判別することができる。本発明に基づいて決定された閾値を使用することにより、マッピング実行時に、異常な搭載状態を正確に判別することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マッピング実行時にワークの異常搭載状態を判別するための閾値を短時間で正確に設定できる搬送装置とマッピング方法とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の一形態の搬送装置である搬送用ロボットを示す図である。
【
図2】(a)は透過型のセンサによるマッピングを説明する平面図であり、(b),(c)は反射型のセンサによるマッピングを説明する平面図である。
【
図4】異常搭載状態の判別に用いる閾値の決定手順を示すフローチャートである。
【
図5】閾値の決定のための収容部へのウエハの搭載状態を説明する正面図である。
【
図6】検出厚さに関する判別閾値TH1の決定を説明するである。
【
図7】検出厚さに関する判別閾値TH2と高さ方向での検出位置に関する判別閾値TH3の決定を説明する図である。
【
図8】高さ方向での検出位置に関する判別閾値TH4の決定を説明する図である。
【
図9】マッピング位置の決定を説明する図であって、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の一形態の搬送装置である搬送用ロボットを示している。
図1に示す搬送用ロボット20は、板状物であるワークの搬送に用いられるものである。以下では、ワークがシリコンウエハなどのウエハ50であり、ウエハ50は、収容部であるカセットステージ40に収容されるものとする。カセットステージ40は、垂直方向に配列された複数のスロットを備えており、スロットごとに1枚のウエハ50が水平に収容されるように構成される。搬送用ロボット20は、ウエハ50の搬送を行う前に、カセットステージ40におけるウエハ50の在荷状態を判別するマッピングを実行する。
【0024】
図1に示す搬送用ロボット20は、例えば特許文献1に記載された水平多関節型ロボットと同様のものであり、基台21に対して直列に取り付けられた3本のアーム22~24と、先端側のアーム24の先端に取り付けられたハンド25と、を備えている。
図1はアーム22~24が折り畳まれた状態で描かれているが、アーム22~24を広げた状態とすることもでき、特に、アーム22,23は基台21に対するアーム22の取り付け位置を中心として、水平面内でアーム23の先端が半径方向に移動するリンク機構を構成している。アーム24はアーム23に対して水平面内で回転可能であり、ハンド25はアーム24に対して回転可能である。基台21には、根元側のアーム22を昇降させる不図示の昇降機構と、垂直軸の周りでアーム22を回転させる不図示の回転機構とが設けられている。ハンド25には、
図2を用いて説明するように、マッピングを行うために用いるセンサが取り付けられている。搬送用ロボット20には、さらに、搬送用ロボット20を駆動し制御するためのロボットコントローラ30が接続している。ロボットコントローラ30は、基台21に設けられた昇降機構や回転機構、アーム22,23からなるリンク機構、アーム23に対してアーム24を回転させる機構、アーム24に対してハンド25を回転する機構を制御し、センサからの検出信号を処理する。特にロボットコントローラ30は、判別閾値決定のための動作、マッピング位置決定のための動作、マッピング動作及びワークを搬送する動作についての制御を実行する。
【0025】
搬送用ロボット20は、搬送元のカセットステージ40からウエハ50を1枚取り出して搬送先の装置またはカセットステージ40に向けてそのウエハ50を搬送する処理や、搬送元の装置またはカセットステージ40から搬送されてきたウエハ50を搬送先のカセットステージ40の空いているスロットに収容する処理を実行する。収容部であるカセットステージ40は、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)スタンダードE47.1に規定される正面開口式カセット一体型搬送、保管箱であるFOUP(Front-Opening Unified Pod)など正面開口式のものである。したがって、搬送用ロボット20がカセットステージ40内のスロットからウエハ50を取り出すとき、及びカセットステージ40内の空きスロットに対してウエハ50を収容するときに、搬送用ロボット20のハンド25は、そのフォーク部26側を先端として、カセットステージ40の正面の開口を介して所定のスロットを目指してカセットステージ40内に進入する。
【0026】
ウエハ50の実際の搬送を行う前にマッピングが行われるが、カセットステージ40においてスロットは垂直方向に配置しているので、マッピングでは、センサが垂直方向に移動するようにハンド25を昇降させる。
図2(a)~(c)は、センサによるマッピングを説明する平面図であり、マッピング実行時にはハンド25は図において紙面に垂直な方向に移動する。ハンド25は、その一端側においてフォーク部26が設けられた細長い部材である。フォーク部20は、先端側が2つに分岐した形状を有し、ワークであるウエハ50を搬送する際にウエハ50を保持する部分である。搬送時においてウエハ50は、フォーク部26の表面に水平に載置される。
【0027】
図2(a)は、透過型のセンサを用いたマッピングを示している。透過型のセンサは、ハンド25のフォーク部26の一方の先端に設けられた発光部27と他方の先端に設けられた受光部28とを備え、発光部27から受光部28に向けてレーザー光60を照射する。レーザー光60の発生には、例えば、レーザーダイオード(LD)が使用される。ハンド25の昇降によってウエハ50によりレーザー光60が遮られて受光部28に入射しなくなることにより、透過型のセンサは、スロット内のワーク50を検出することができる。受光部28にレーザー光60が入射しない期間におけるハンド25の移動量や移動位置から、ウエハ50の厚さやスロット内でのウエハ50の高さ方向の位置も判明する。
【0028】
図2(b)は、反射型のセンサ29を用いたマッピングを示している。反射型のセンサ29は、レーザー光60の発光部と受光部とが一体にしたものであり、発光部からレーザー光60をウエハ50に向けて照射し、ウエハ50からの反射光を受光部によって検出する。レーザー光50はウエハの端面(ウエハエッジ)において乱反射し、そのため、反射光の一部が受光部に入射する。反射光を検出している期間内におけるハンド25の移動量や移動位置から、ウエハ50の厚さやスロット内でのウエハ50の高さ方向の位置も判明する。
【0029】
反射型のセンサ29を用いる場合、ウエハ50からの反射光の方向や強度は、ウエハ50の端面の表面状態によって大きく変化する。ウエハ50の端面が粗面であるときは、照射されたレーザー光60は、上述の
図2(b)に示すように、ウエハ50の端面において乱反射し、乱反射による反射光の一部がセンサ29の受光部に到達する。その結果、センサ29は、マッピング位置に依存せずにウエハ50を検知することができる。ここでマッピング位置とは、スロットの配列する垂直方向にセンサを動かしてマッピングを行うときに、カセットステージ40の奥行き方向とは直交する水平方向に沿った、ウエハ50においてセンサ29からの光が照射される位置のことである。これに対し、ウエハ50の端面が例えば鏡面となっている場合は、照射されたレーザー光60は、
図2(c)に示すように、ウエハ50の端面で一方向に鏡面反射する。この場合、マッピング位置が不適切であると、ウエハ50にレーザー光60が照射されていても反射光がセンサ29に戻らず、センサ29がウエハ50を検出できないことがある。反射型のセンサ29を用いるときのマッピング位置の決定については後述する。なおマッピング位置は、水平方向に実際にセンサ29を移動することによって変化させることもできるし、水平方向でのセンサ29の位置は変えずに、センサからの光の照射方向を変えることによっても変化させることができる。
【0030】
上述したようにマッピングを行うときは、カセットステージ40におけるウエハ50の異常搭載状態を判別できる必要がある。
図3は、異常搭載状態の例を示す図であり、
図3の左半分は、ワーク50を収容したカセットステージ40を正面から見た図として描かれている。図示されるカセットステージ40は、垂直方向に配列した8つのスロットを備えており、下から、スロット1、スロット2、…のように番号が振られている。各スロットでは、そのスロットの水平方向の両端部にそれぞれレール41が設けられている。スロットの1対のレール41によってウエハ50の両端部を保持することにより、そのスロットにウエハ50が収容されるので、レール41の上面、すなわちレール41においてウエハ50と当接すべき面の高さ方向の位置をスロットにおける高さ方向の基準とする。スロットごとの高さ方向の基準は図において破線で示されている。
図3の右半分は、
図3の左半分に示すようにカセットステージ40にウエハ50が収容されているときに、スロットの高さ方向においてマッピング実行時にウエハ50がどの範囲で検出されるかを、センサが透過型である場合と反射型である場合のそれぞれについて示している。
【0031】
図3においてスロット2には1枚のウエハ50が収容されており、したがってこのウエハ50は正常な搭載状態であって「シングル」である。
図3においてスロット4には2枚のウエハ50が収容されており、これらのウエハ50は異常搭載状態の1つである「ダブル」の状態にある。不良状態である「ダブル」は、「シングル」である場合に比べてウエハ50の検出厚さが大きくなるので、検出された厚さにより判定を行うことができる。例えば、センサが透過型であっても反射型であっても、検出された厚さがある閾値を超えた時に、「ダブル」であると判定することができる。
【0032】
図3においてスロット6とスロット7に跨るようにウエハ50が配置している。具体的にはこのウエハ50の図示左端はスロット6の左端側にあり、ウエハ50の図示右端はスロット7の右端側にあって、ウエア50が斜めに収容されている。このウエハ50は、異常搭載状態の1つである「クロス」の状態にある。不良状態が「クロス」である場合には、その判定方法は、センサの種類が透過型であるか反射型であるかによって異なってくる。透過型のセンサを用いるときは、「クロス」であると、「シングル」の場合に比べて(「ダブル」の場合と比べても)ウエハ50の検出厚さが大きくなり、かつ、スロットの高さ方向でのウエハ検出位置も「シングル」の場合と異なる。スロットの高さ方向でのウエハの検出位置としては、ウエハの厚さのばらつきなどを考慮し、スロットの高さ方向でのウエハの中心位置を用いることが好ましい。そこで透過型のセンサを用いるときは、検出厚さがある閾値を超え、さらに、検出されたウエハ50の高さ方向での中心位置と「シングル」である場合に検出されるであろう高さ方向でのウエハ50の中心位置との差が別の閾値を超えたときに、「クロス」であると判定することができる。これに対し反射型のセンサを用いるときは、「クロス」であるときの検出厚さは「シングル」の場合と同様のものとなるので、検出されたワークの高さ方向での中心位置と「シングル」である場合に検出されるであろうワークの高さ方向での中心位置との差が閾値を超えたときに、「クロス」であると判定することができる。
【0033】
従来は、異常搭載状態の検出に用いる2つの閾値(すなわち、ワークの検出厚さに対する閾値とスロットでのワークの高さ方向の位置に関する閾値)を人手により設定していた。しかしながら、この閾値の設定作業には時間がかかるとともに、誰が閾値を設定するかによってばらつきが生じるという課題がある。そこで本実施形態の搬送装置は、このような課題を解決するために、マッピング実行時に異常搭載状態を判別するために用いられる閾値を自動的に見つけ出して設定する。
図4は、異常搭載状態を判別するために用いられる閾値の決定の手順を示している。
図4に示す手順のうちステップ102~103は、ロボットコントローラ30が搬送用ロボット20を制御することによって実行されるものである。
【0034】
まず、ステップ101において、正常な搭載状態である「シングル」が複数箇所で出現し、異常搭載状態である「ダブル」と「クロス」がそれぞれ複数箇所で出現するように、ウエハ50をカセットステージ40に収容する。
図5は、このときのカセットステージ40におけるウエハ50の収容状態の一例を示している。スロット1とスロット2にはそれぞれ「シングル」でウエハ50が収容されている。スロット3には2枚のウエハ50が重ねられて収容されており「ダブル」となっている。スロット4の同様に「ダブル」となっている。スロット5の左端とスロット6の右端とに跨るようウエハ50が配置していて「クロス」となっており、同様にスロット6の左端とスロット7の右端とに跨るようにウエハ60が配置していて「クロス」となっている。
図5に示したものでは、「シングル」が2か所、「ダブル」が2か所、「クロス」が2か所出現している。
【0035】
このようにウエハ50が収容されているカセットステージ40に対し、ステップ102において、通常のウエハ50の搬送時に行うマッピングと同様に、ハンド25を垂直方向に動かしつつセンサによってカセットステージ40内のウエハ50を検出する。この検出動作を閾値検出動作と呼ぶ。閾値検出動作によれば、各収容箇所のウエハ50について、その検出厚さと各スロット内での高さ方向位置の検出値が得られる。ここでは高さ方向位置は、対応するスロットにおけるウエハ50の高さ方向の中心位置を用いるものとする。その結果、「シングル」、「ダブル」及び「クロス」の搭載状態ごとに、ウエハの厚さとウエハの高さ方向中心位置の測定値がそれぞれ複数得られる。「クロス」の場合は、先に説明したように、センサが透過型のセンサであるか反射型のセンサかによって測定値は異なる。ここではカセットステージ40においてどのウエハ50あるいはどのスロットがどの搭載状態にあるかが分かっているので、マッピング実行時において異常搭載状態を判別するための閾値(すなわち判別閾値)を、その既知の搭載状態に合致するように測定値から決定する。すなわちステップ103において、各搭載状態ごとのウエハ厚さの測定値の平均値と高さ方向中心位置の測定値の平均値とに基づいて、判別閾値を算出する。以下、判別閾値の算出について具体的に説明する。
【0036】
閾値検出動作において「シングル」であるウエハ50をセンサで検出したときの厚さの平均値をaとし、スロットごとのそのスロットにおけるウエハ50の高さ方向中心位置の平均値をbとする。同様に、「ダブル」であるウエハ50をセンサで検出したときの厚さの平均値をcとする。「クロス」のウエハ50については、透過型のセンサで検出したときの厚さの平均値をdとし、透過型のセンサで検出したときのスロットでの高さ方向中心位置の平均値をeとし、反射型のセンサで検出したときのスロットでの高さ方向中心位置の平均値をfとする。
【0037】
異常搭載状態のうちの「ダブル」を判別するための判別閾値TH1は、
図6に示すように、「シングル」のときに検出厚さの平均値aと「ダブル」のときの検出厚さの平均値cとの中間値とする。すなわち、
TH1=(a+c)/2
とする。
【0038】
透過型のセンサを用いて「クロス」を判別するための判別閾値には、検出厚さに基づく判別閾値TH2と高さ方向の中心位置に基づく判別閾値TH3とがある。検出厚さに基づく判別閾値TH2は、
図7に示すように、「シングル」のときに検出厚さの平均値aと「クロス」のときの検出厚さの平均値dとの中間値とする。すなわち、
TH2=(a+d)/2
とする。高さ方向の中心位置に基づく判別閾値TH3は、「シングル」のときの高さ方向の中心位置の平均値bと「クロス」のときの高さ方向の中心位置の平均値eとの中間値とする。すなわち、
TH3=(b+e)/2
とする。
【0039】
反射型のセンサを用いて「クロス」を判別するための判別閾値TH4は、
図8に示すように、「シングル」のときの高さ方向の中心位置の平均値bと「クロス」のときの高さ方向の中心位置の平均値fとの中間値とする。すなわち、
TH4=(a+f)/2
とする。
【0040】
本実施形態では、以上のようにして、マッピング実行時に異常搭載状態か否かを判別する判別閾値が決定される。この判別閾値はパラメータとして例えばロボットコントローラ30に記憶される。ひとたび判別閾値が決定すれば、実際にウエハ50の搬送を行うときのマッピングを行ったときに、検出されたウエハの厚さ及びスロットにおける高さ方向中心位置と判別閾値とを比較することによって、ウエハ50が異常な状態でカセットカートリッジ40に搭載されているかどうかを判別することができる。透過型のセンサを使用している場合、ウエハの検出厚さが判別閾値TH1,TH2のいずれかよりも大きくなったとき、あるいは、ウエハの高さ方向の中心位置がTH3よりも大きくなったときは、異常搭載状態が発生している、と判断することができる。「ダブル」と「クロス」とを区別する必要があるときは、一般にTH2>TH1となるので、検出厚さがTH2を超えるか、スロットにおける高さ方向の中心位置がTH3を超えたときに、「クロス」と判別し、それ以外のときに「ダブル」と判別することができる。反射型のセンサを使用している場合は、ウエハの検出厚さが判別閾値TH1よりも大きければ「ダブル」と判別でき、高さ方向の中心位置が判別閾値TH4よりも大きければ「クロス」と判別することができる。
【0041】
ところで、反射型のセンサ29を使用する場合、
図2(c)に示すように、ウエハ50でのレーザー光60の照射位置によっては、ウエハ50を検出できないことがある。そこで形状や材質によりウエハ50を検出できない恐れがあるときは、ステップ101~103の動作を実行する前に、適切なマッピング位置を決定する動作を実行することが好ましい。マッピング位置の決定も、ロボットコントローラ30が搬送用ロボット0を制御することによって実行される。決定されたマッピング位置は、搬送時のマッピングで用いられるだけでなく、ステップ102において閾値検出動作を実行する際にも用いられる。
【0042】
マッピング位置は、ウエハ50の形状や材質ごとに決定する必要があるから、マッピング位置の決定においては、まず搬送対象となるウエハと同一形状、同一材質のウエハ50を、マッピング対象であるカセットステージ40の全てのスロットに1枚ずつ収容する。そして、ハンド25に取り付けた反射型のセンサ29をカセットステージ40の方に向け、ハンド25をカセットステージ40の前面の位置に移動させる。続いて、マッピング動作や閾値検出動作を行うときと同様に、
図9(a)に示すようにハンド25を垂直方向に動かし、カセットステージ40に向けてレーザー光60を照射してウエハ50を検出する。そしてこのようなウエハ50の検出動作を、
図9(b)に示すように、カセットステージ40の前面におけるハンド25(すなわち反射型のセンサ29)の水平方向の位置を変えながら繰り返して実行する。ここでの水平方向は、カセットステージ40の奥行き方向に直交する水平方向である。その結果、各スロットのウエハ50は、いずれも、水平方向に沿った異なる位置でレーザー光60が照射されることなり、センサ29の受光部によって、スロットごと、水平方向での照射位置ごとに、ウエハの厚さの検出結果が得られる。
図9に示した例では、水平方向に沿って異なる11の位置A~Kにおいてレーザー光60が照射される。
【0043】
こうして得られる一連の検出結果は、水平方向での照射位置を一方の次元、垂直方向でのスロットの位置を他方の次元とする2次元の検出分布データとして表現することができる。
図10は、カセットステージ40におけるスロットの数が10であって、水平方向におけるレーザー光60の照射位置が上述したA~Kの11か所であり、各スロットには厚さ0.9mmのシリコンウエハがウエハ50として格納されている場合に得られた検出分布データの一例を示している。図において黒色で表されている領域は、センサ29がウエハ50を検知した領域である。この領域の垂直方向(図示上下方向)の寸法が大きいほど、ウエハ50がより厚く検出されたことを示している。点線は、ウエハ50が存在するにも関わらずウエハ50を検出できなかったことを示している。
【0044】
図10に示した結果では、同じ材質、同じ厚さのウエハ50を検出しようとしたにも関わらず、スロットごと、照射位置ごとに検出厚さが大きく異なっている。位置A,B,Kではウエハ50の検出に失敗したスロットもある。また、位置F,G,Hでは、本来の厚さよりも2~4倍程度厚くウエハ50を検出しているとともに検出厚さのばらつきが大きい。これは、ウエハ50におけるレーザー光60の反射角の関係で過反射が発生していることが原因として考えられる。そこで、マッピング位置を決定する処理では、ウエハ50を検出できていないスロットを含む照射位置や過度の過反射が生じている照射位置を除いてた上で、照射位置の中からマッピングを行うのにふさわしい位置を見つけ出し、その照射位置をマッピング位置として決定する。マッピング位置を決定するための条件としては、以下の(1)~(3)が挙げられる。
【0045】
(1) 検出厚さの平均値が所定の厚み(例えばウエハ50の厚み)に最も近い;
(2) 検出厚さの全ての値におけるばらつきが最も小さい;
(3) 検出厚さの最大値と最小値との差が最も小さい。
【0046】
マッピング位置を決定するときは、条件(1)~(3)のいずれか1つを用いてもよいし、これらの条件のうちの2つを用いてもよいし、条件(1)~(3)の全てを用いてもよい。このようにマッピング位置を定めることにより、反射型のセンサ29を用いた場合においても閾値検出動作やマッピング動作においてウエハ50を確実に検出できるようになる。
図10に示した例では、例えば位置Dまたは位置Iがマッピング位置として決定される。
【0047】
以上説明した本実施形態の搬送用ロボット20では、正常な搭載状態と異常な搭載状態とがそれぞれ複数箇所現れるようにウエハ50を収容したカセットステージ40を用意し、そのカセットステージ40に対して閾値検出動作を行って得た平均値に基づいて判別閾値を算出するので、マッピング実行時に異常搭載状態の有無を判別するために用いられる判別閾値を、人手によらずに自動的に設定できるようなる。その結果、作業者の違いによる判別閾値のばらつきが起こらず、マッピング実行時に正確に異常搭載状態を判別できるようになる。さらに、全てのスロットにウエハ50を収容したカセットステージ40を利用して検出分布データを取得し、検出分布データからマッピング位置を決定するので、人手を介することなく自動的に最適なマッピング位置を求めることができ、このマッピング位置において閾値検出動作を実行することにより、より適切な判別閾値を取得することが可能になる。本実施形態によれば、マッピング実行時に「ダブル」及び「クロス」の異常搭載状態を判別する判別閾値の設定の手番を削減することができる。
【0048】
ここで判別閾値の再設定について説明する。反射型のセンサを用い場合、ワークの形状や材質、表面状態などに応じて閾値が変化する可能性がある。そこでワークのロット切り替えなどに際して判別閾値を再設定する必要がある。ワークのロット切り替えに際しては、搬送装置が設けられる例えば半導体製造装置などの装置を停止するのが一般的であり、その停止期間中の判別閾値の再設定を行うことができる。同様に、透過型のセンサを用いる場合、段取り変えによりカセットステージなどの収容部の水準が変化するとウエハの検出厚みが変化するので、そのようなときに判別閾値の再設定が必要となる。段取り変えのときも、搬送装置が設けられる例えば半導体製造装置などの装置を停止するのが一般的であり、その停止期間中の判別閾値の再設定を行うことができる。したがって、本発明に基づいて判別閾値を自動設定したとしても、装置の停止期間が延びることがなく、その装置の生産性の向上に寄与する。
【0049】
本発明に基づいて判別閾値を算出する場合、上記のステップ101においてカセットステージ40にウエハ50を意図した通りに収容することが必要である。このときのウエハ50の収容における誤りを防ぐためには、例えば、それぞれの搭載状態のウエハ50を検出したときの検出値のばらつきあるいは標準偏差を計算し、ばらつきが大きいときには警報を出して確認を促してもよい。あるいは、各判別閾値を計算したのち、計算された判別閾値を使用して、ロボットコンロローラ30のメモリ上に残っている検出結果を判定し、正常な搭載状態と異常な搭載状態が正しく判別できているかを判定し、正しく判別できていないときは警報を出して確認を促してもよい。
【符号の説明】
【0050】
20…搬送用ロボット;21…基台;22~24…アーム;25…ハンド;26…フォーク部;27…発光部;28…受光部;29…センサ;30…ロボットコントローラ;40…カセットステージ;41…レール;50…ウエハ;60…レーザー光。