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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】隔膜真空計
(51)【国際特許分類】
   G01L 21/00 20060101AFI20250408BHJP
   G01L 9/12 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
G01L21/00 Z
G01L9/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021083124
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022176610
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 康秀
(72)【発明者】
【氏名】小原 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】市原 純
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-033330(JP,A)
【文献】特開平09-145511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座に形成された第1の電極と、前記台座とギャップを隔てて配置されたダイアフラムに前記第1の電極と対向するように形成された第2の電極とを備え、被測定媒体の圧力による前記ダイアフラムの変位に応じて前記第1、第2の電極の間隔が変化するように構成されたセンサチップと、
センサ駆動信号を前記第2の電極に印加するように構成された第1の信号発生器と、
前記センサ駆動信号と位相がずれた信号を出力するように構成された第2の信号発生器と、
前記第1の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された増幅器と、
前記増幅器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第1の同期検波部と、
前記増幅器の出力信号から前記第2の信号発生器の出力信号に同期した信号を復調するように構成された第2の同期検波部と、
前記第1、第2の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極間の静電容量に比例した値を静電容量値として算出するように構成された容量算出部と、
前記第1、第2の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極の直列抵抗に比例した値を算出し、この直列抵抗に比例した値から前記センサチップの温度に比例した値をセンサチップ温度として求めるように構成された温度算出部とを備えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項2】
請求項1記載の隔膜真空計において、
算出された前記静電容量値を前記センサチップの温度によって補正して計測圧力値に変換するように構成された圧力計測部をさらに備えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項3】
台座に形成された第1の電極と、前記台座とギャップを隔てて配置されたダイアフラムに前記第1の電極と対向するように形成された第2の電極と、前記第1の電極の外側の前記台座に形成された第3の電極と、前記第2の電極の外側の前記ダイアフラムに前記第3の電極と対向するように形成された第4の電極とを備え、被測定媒体の圧力による前記ダイアフラムの変位に応じて前記第1、第2の電極の間隔が変化するように構成されたセンサチップと、
センサ駆動信号を前記第2、第4の電極に印加するように構成された第1の信号発生器と、
前記センサ駆動信号と位相がずれた信号を出力するように構成された第2の信号発生器と、
前記第1の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された第1の増幅器と、
前記第3の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された第2の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力信号から前記第2の増幅器の出力信号を減算するように構成された減算器と、
前記第1の増幅器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第1の同期検波部と、
前記減算器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第2の同期検波部と、
前記第1の増幅器の出力信号から前記第2の信号発生器の出力信号に同期した信号を復調するように構成された第3の同期検波部と、
前記第1、第3の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極間の第1の静電容量Cxの値を算出するように構成された第1の容量算出部と、
前記第2の同期検波部の出力信号から、前記第1の静電容量Cxから前記第3、第4の電極間の第2の静電容量Crを減算した値Cx-Crを算出するように構成された第2の容量算出部と、
前記第1、第3の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極の直列抵抗に比例した値を算出し、この直列抵抗に比例した値から前記センサチップの温度に比例した値をセンサチップ温度として求めるように構成された温度算出部と、
前記第1、第2の容量算出部の算出結果から、前記第2の静電容量Crにより前記第1の静電容量Cxを補正した値(Cx-Cr)/Cxを算出するように構成された容量補正部とを備えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項4】
台座に形成された第1の電極と、前記台座とギャップを隔てて配置されたダイアフラムに前記第1の電極と対向するように形成された第2の電極と、前記第1の電極の外側の前記台座に形成された第3の電極と、前記第2の電極の外側の前記ダイアフラムに前記第3の電極と対向するように形成された第4の電極とを備え、被測定媒体の圧力による前記ダイアフラムの変位に応じて前記第1、第2の電極の間隔が変化するように構成されたセンサチップと、
センサ駆動信号を前記第2、第4の電極に印加するように構成された第1の信号発生器と、
前記センサ駆動信号と位相がずれた信号を出力するように構成された第2の信号発生器と、
前記第1の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された第1の増幅器と、
前記第3の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された第2の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力信号から前記第2の増幅器の出力信号を減算するように構成された減算器と、
前記第1の増幅器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第1の同期検波部と、
前記減算器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第2の同期検波部と、
前記減算器の出力信号から前記第2の信号発生器の出力信号に同期した信号を復調するように構成された第3の同期検波部と、
前記第1の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極間の第1の静電容量Cxの値を算出するように構成された第1の容量算出部と、
前記第2、第3の同期検波部の出力信号から、前記第1の静電容量Cxから前記第3、第4の電極間の第2の静電容量Crを減算した値Cx-Crを算出するように構成された第2の容量算出部と、
前記第2、第3の同期検波部の出力信号から前記第3、第4の電極の直列抵抗に比例した値を算出し、この直列抵抗に比例した値から前記センサチップの温度に比例した値をセンサチップ温度として求めるように構成された温度算出部と、
前記第1、第2の容量算出部の算出結果から、前記第2の静電容量Crにより前記第1の静電容量Cxを補正した値(Cx-Cr)/Cxを算出するように構成された容量補正部とを備えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項5】
請求項3または4記載の隔膜真空計において、
前記第2の電極と前記第4の電極とは、電気的に接続されて単一の電極として形成されることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の隔膜真空計において、
前記補正された第1の静電容量値(Cx-Cr)/Cxを前記センサチップ温度によって補正して計測圧力値に変換するように構成された圧力計測部をさらに備えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の隔膜真空計において、
前記第2の信号発生器は、前記センサ駆動信号に対して位相が90度ずれた信号を出力することを特徴とする隔膜真空計。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の隔膜真空計において、
前記センサチップ温度をユーザーに通知するように構成された温度通知部をさらに備えることを特徴とする隔膜真空計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔膜真空計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
隔膜真空計は、ダイアフラムの変位を容量の変化で検出することにより、圧力を計測している。隔膜真空計は、半導体のプロセスチャンバーの圧力計測のために使用される。近年の半導体プロセスは、高度化しており、正確な圧力の計測が求められる。しかし、隔膜真空計では、圧力で容量が変化するのみでなく、温度によっても容量が変化してしまうため、温度を検出して容量を補正することにより正確な圧力を計測している。
【0003】
温度の検出のためには温度センサの設置が必要であるが、センサチップ内に温度センサを設置すると、圧力検出のための電極を小さくしなければならないという課題があった。また、センサチップへの温度センサの取り付けと温度センサの信号を取り出すための配線が必要になるので、センサチップが大きくなるという課題があった。そのため、従来の隔膜真空計では、センサチップの外側に温度センサを取り付けるようにしていた(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の隔膜真空計のように温度センサをセンサチップの外側に取りつけると、センサチップの正確な温度が計測できないため、温度変化が発生したときの温度検出の追従性の遅れ等々により、容量の補正に誤差が発生し、圧力の計測誤差が発生するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-7906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、センサチップの外側に温度センサを設けることなく、センサチップの温度を正確に計測することができる隔膜真空計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の隔膜真空計(第1の実施例)は、台座に形成された第1の電極と、前記台座とギャップを隔てて配置されたダイアフラムに前記第1の電極と対向するように形成された第2の電極とを備え、被測定媒体の圧力による前記ダイアフラムの変位に応じて前記第1、第2の電極の間隔が変化するように構成されたセンサチップと、センサ駆動信号を前記第2の電極に印加するように構成された第1の信号発生器と、前記センサ駆動信号と位相がずれた信号を出力するように構成された第2の信号発生器と、前記第1の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された増幅器と、前記増幅器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第1の同期検波部と、前記増幅器の出力信号から前記第2の信号発生器の出力信号に同期した信号を復調するように構成された第2の同期検波部と、前記第1、第2の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極間の静電容量に比例した値を静電容量値として算出するように構成された容量算出部と、前記第1、第2の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極の直列抵抗に比例した値を算出し、この直列抵抗に比例した値から前記センサチップの温度に比例した値をセンサチップ温度として求めるように構成された温度算出部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例(第1の実施例)は、算出された前記静電容量値を前記センサチップの温度によって補正して計測圧力値に変換するように構成された圧力計測部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の隔膜真空計(第2の実施例)は、台座に形成された第1の電極と、前記台座とギャップを隔てて配置されたダイアフラムに前記第1の電極と対向するように形成された第2の電極と、前記第1の電極の外側の前記台座に形成された第3の電極と、前記第2の電極の外側の前記ダイアフラムに前記第3の電極と対向するように形成された第4の電極とを備え、被測定媒体の圧力による前記ダイアフラムの変位に応じて前記第1、第2の電極の間隔が変化するように構成されたセンサチップと、センサ駆動信号を前記第2、第4の電極に印加するように構成された第1の信号発生器と、前記センサ駆動信号と位相がずれた信号を出力するように構成された第2の信号発生器と、前記第1の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された第1の増幅器と、前記第3の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された第2の増幅器と、前記第1の増幅器の出力信号から前記第2の増幅器の出力信号を減算するように構成された減算器と、前記第1の増幅器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第1の同期検波部と、前記減算器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第2の同期検波部と、前記第1の増幅器の出力信号から前記第2の信号発生器の出力信号に同期した信号を復調するように構成された第3の同期検波部と、前記第1、第3の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極間の第1の静電容量Cxの値を算出するように構成された第1の容量算出部と、前記第2の同期検波部の出力信号から、前記第1の静電容量Cxから前記第3、第4の電極間の第2の静電容量Crを減算した値Cx-Crを算出するように構成された第2の容量算出部と、前記第1、第3の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極の直列抵抗に比例した値を算出し、この直列抵抗に比例した値から前記センサチップの温度に比例した値をセンサチップ温度として求めるように構成された温度算出部と、前記第1、第2の容量算出部の算出結果から、前記第2の静電容量Crにより前記第1の静電容量Cxを補正した値(Cx-Cr)/Cxを算出するように構成された容量補正部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の隔膜真空計(第3の実施例)は、台座に形成された第1の電極と、前記台座とギャップを隔てて配置されたダイアフラムに前記第1の電極と対向するように形成された第2の電極と、前記第1の電極の外側の前記台座に形成された第3の電極と、前記第2の電極の外側の前記ダイアフラムに前記第3の電極と対向するように形成された第4の電極とを備え、被測定媒体の圧力による前記ダイアフラムの変位に応じて前記第1、第2の電極の間隔が変化するように構成されたセンサチップと、センサ駆動信号を前記第2、第4の電極に印加するように構成された第1の信号発生器と、前記センサ駆動信号と位相がずれた信号を出力するように構成された第2の信号発生器と、前記第1の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された第1の増幅器と、前記第3の電極から出力される電流を電圧に変換して増幅するように構成された第2の増幅器と、前記第1の増幅器の出力信号から前記第2の増幅器の出力信号を減算するように構成された減算器と、前記第1の増幅器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第1の同期検波部と、前記減算器の出力信号から前記センサ駆動信号に同期した信号を復調するように構成された第2の同期検波部と、前記減算器の出力信号から前記第2の信号発生器の出力信号に同期した信号を復調するように構成された第3の同期検波部と、前記第1の同期検波部の出力信号から前記第1、第2の電極間の第1の静電容量Cxの値を算出するように構成された第1の容量算出部と、前記第2、第3の同期検波部の出力信号から、前記第1の静電容量Cxから前記第3、第4の電極間の第2の静電容量Crを減算した値Cx-Crを算出するように構成された第2の容量算出部と、前記第2、第3の同期検波部の出力信号から前記第3、第4の電極の直列抵抗に比例した値を算出し、この直列抵抗に比例した値から前記センサチップの温度に比例した値をセンサチップ温度として求めるように構成された温度算出部と、前記第1、第2の容量算出部の算出結果から、前記第2の静電容量Crにより前記第1の静電容量Cxを補正した値(Cx-Cr)/Cxを算出するように構成された容量補正部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例(第2、第3の実施例)において、前記第2の電極と前記第4の電極とは、電気的に接続されて単一の電極として形成されることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例(第2、第3の実施例)は、前記補正された第1の静電容量値(Cx-Cr)/Cxを前記センサチップ温度によって補正して計測圧力値に変換するように構成された圧力計測部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の隔膜真空計の1構成例(第1~第3の実施例)において、前記第2の信号発生器は、前記センサ駆動信号に対して位相が90度ずれた信号を出力することを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例(第1~第3の実施例)は、前記センサチップ温度をユーザーに通知するように構成された温度通知部をさらに備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1、第2の信号発生器と増幅器と第1、第2の同期検波部と容量算出部と温度算出部とを設けることにより、第1の電極と第2の電極の直列抵抗が温度によって変化することを利用してセンサチップの温度を計測することができ、1つのセンサチップで圧力計測と温度計測を実現することができる。本発明では、センサチップの正確な温度を計測することができるため、センサチップの外側に温度センサを設ける従来の構成と比較して、補正の誤差を抑えることができ、圧力の計測誤差を抑えることができる。また、本発明では、センサチップへの温度センサの取り付けと温度センサの信号を取り出すための配線が不要となるので、センサチップに温度センサを取り付ける場合と比較してセンサチップの小型化が可能となる。
【0012】
また、本発明では、第1、第2の信号発生器と第1、第2の増幅器と減算器と第1~第3の同期検波部と第1、第2の容量算出部と温度算出部と容量補正部とを設け、センサ駆動信号をセンサチップの第2、第4の電極に印加することにより、センサチップの第1の電極と第2の電極とを用いて圧力計測のための容量計測と温度計測とを実施し、センサチップの第3の電極と第4の電極とを用いて容量補正のための容量計測を実施することができ、1つのセンサチップで圧力計測と温度計測と容量補正を実現することができる。
【0013】
また、本発明では、第1、第2の信号発生器と第1、第2の増幅器と減算器と第1~第3の同期検波部と第1、第2の容量算出部と温度算出部と容量補正部とを設け、センサ駆動信号をセンサチップの第2、第4の電極に印加することにより、センサチップの第1の電極と第2の電極とを用いて圧力計測のための容量計測を実施し、センサチップの第3の電極と第4の電極とを用いて容量補正のための容量計測と温度計測とを実施することができ、1つのセンサチップで圧力計測と温度計測と容量補正を実現することができる。
【0014】
また、本発明では、温度通知部を設けることにより、センサチップの温度のユーザーに通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る隔膜真空計の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る隔膜真空計のセンサチップの要部の構成を示す断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施例に係る隔膜真空計の圧力・温度計測動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係る隔膜真空計の容量・温度検出部の構成を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の第1の実施例に係る隔膜真空計の圧力・温度計測時の増幅器の出力の波形を示す図である。
図6図6は、本発明の第1の実施例に係る隔膜真空計の圧力・温度計測時の同期検波部の出力の波形を示す図である。
図7図7は、本発明の第1の実施例に係る隔膜真空計の圧力・温度計測時の同期検波部の出力の波形を示す図である。
図8図8は、本発明の第2の実施例に係る隔膜真空計の構成を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の第2の実施例に係る隔膜真空計のセンサチップの要部の構成を示す断面図である。
図10図10は、本発明の第2の実施例に係る隔膜真空計の圧力・温度計測動作を説明するフローチャートである。
図11図11は、本発明の第2の実施例に係る隔膜真空計の容量・温度検出部の構成を示すブロック図である。
図12図12は、本発明の第3の実施例に係る隔膜真空計の構成を示すブロック図である。
図13図13は、本発明の第3の実施例に係る隔膜真空計の容量・温度検出部の構成を示すブロック図である。
図14図14は、本発明の第1~第3の実施例に係る隔膜真空計の回路部を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る隔膜真空計の構成を示すブロック図、図2は隔膜真空計に用いられるセンサチップの要部の構成を示す断面図である。
【0017】
隔膜真空計は、被測定媒体(例えばプロセスガス)の圧力によるダイアフラム(隔膜)の変位に応じて静電容量が変化する受圧部10と、受圧部10の静電容量の変化を計測圧力値に変換する回路部11とを備えている。
【0018】
受圧部10のセンサチップ1の台座101の中央部には凹部が形成されている。この凹部が形成された台座101の面には、被測定媒体(例えばプロセスガス)の圧力Pに応じて変形可能に構成されたダイアフラム102が接合されている。台座101の凹部は、ダイアフラム102と共に基準真空室104を形成する。
【0019】
センサチップ1において、台座101の基準真空室104側の面には固定電極105が形成され、ダイアフラム102の基準真空室104側の面には固定電極105と対向するように可動電極106が形成されている。こうして、固定電極105と可動電極106とがギャップを隔てて対向するように配置されている。ダイアフラム102が被測定媒体の圧力Pを受けて撓むと、可動電極106と固定電極105との間の間隔が変化し、可動電極106と固定電極105との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化からダイアフラム102が受けた被測定媒体の圧力Pを検出することができる。ダイアフラム構成部材100と台座101とは、例えばサファイアなどの絶縁体から構成されている。
【0020】
図1に示した隔膜真空計は、このように構成されたセンサチップ1と、センサチップ1を収容したハウジング2と、センサチップ1のダイアフラム102に被測定媒体の圧力Pを導く圧力導入管3と、ハウジング2を覆うセンサケース4とを備えている。
【0021】
ハウジング2の内部には隔壁7が設けられている。隔壁7は、台座板7aと支持板7bとから構成されており、ハウジング2の内部空間を第1の空間2aと第2の空間2bとに分離する。支持板7bは、外周がハウジング2に固定されており、台座板7aをハウジング2の内部空間内に浮上させた状態で支持する。台座板7aの第2の空間2b側にセンサチップ1が固定されている。また、台座板7aには、第1の空間2a内の圧力をセンサチップ1のダイアフラム102に導く圧力導入孔7cが形成されている。第2の空間2bは、センサチップ1の基準真空室104と連通しており、真空状態とされている。
【0022】
圧力導入管3は、ハウジング2の第1の空間2a側に接続されている。圧力導入管3とハウジング2との間にはバッフル8が設けられている。圧力導入管3より導入される被測定媒体は、バッフル8の板面に当たり、バッフル8の周囲の隙間を通して、ハウジング2の第1の空間2a内に流入する。
【0023】
隔膜真空計の回路部11は、可動電極106と固定電極105との間の静電容量に比例した値を静電容量値として算出するとともにセンサチップ1の温度に比例した値を算出する容量・温度検出部12と、算出された静電容量値を計測圧力値に変換する圧力計測部13と、算出されたセンサチップ1の温度をユーザーに通知する温度通知部14とから構成される。
【0024】
図3は本実施例の隔膜真空計の圧力・温度計測動作を説明するフローチャート、図4は容量・温度検出部12の構成を示すブロック図である。
容量・温度検出部12は、センサ駆動信号を出力する信号発生器120と、センサ駆動信号と位相がずれた信号を出力する信号発生器121と、容量CfとオペアンプA1とからなる増幅器122と、差動入力型のローパスフィルタ123-1,123-2と、増幅器122とローパスフィルタ123-1との間に設けられたスイッチ124と、増幅器122とローパスフィルタ123-2との間に設けられたスイッチ125と、可動電極106と固定電極105との間の静電容量値を算出する容量算出部126と、センサチップ1の温度を算出する温度算出部127とから構成される。
【0025】
図4では、センサチップ1の可動電極106と固定電極105との間の静電容量をCxで表している。また、可動電極106と固定電極105の直列抵抗の成分をRxで表している。
【0026】
信号発生器120は、圧力・温度計測時に正弦波状のセンサ駆動信号Esin(2πft)をセンサチップ1の第2の電極(例えば可動電極106)とスイッチ124とに印加する(図3ステップS100)。Eは振幅、fは周波数、tは時間である。
信号発生器121は、圧力・温度計測時にセンサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)をスイッチ125に印加する(図3ステップS101)。
【0027】
増幅器122は、センサチップ1の第1の電極(例えば固定電極105)から出力される電流を電圧に変換して増幅し、静電容量Cxに比例した振幅の信号を出力する。
【0028】
スイッチ124とローパスフィルタ123-1とは、同期検波部128を構成している。ローパスフィルタ123-1は、センサ駆動信号Esin(2πft)を通過させるようにカットオフ周波数が設定されている。同期検波部128は、増幅器122の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)に同期した信号を復調する。
【0029】
具体的には、スイッチ124は、圧力・温度計測時に信号発生器120から出力されるセンサ駆動信号Esin(2πft)が正のとき、増幅器122の出力端子とローパスフィルタ123-1の非反転入力端子とを接続する。また、スイッチ124は、センサ駆動信号Esin(2πft)が負のとき、増幅器122の出力端子とローパスフィルタ123-1の反転入力端子とを接続する。これにより、増幅器122の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)に同期した信号を復調することができる。
【0030】
一方、スイッチ125とローパスフィルタ123-2とは、同期検波部129を構成している。ローパスフィルタ123-2は、センサ駆動信号Esin(2πft)を通過させるようにカットオフ周波数が設定されている。同期検波部129は、増幅器122の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)に同期した信号を復調する。
【0031】
具体的には、スイッチ125は、圧力・温度計測時に信号発生器121から出力される信号Esin(2πft+π/2)が正のとき、増幅器122の出力端子とローパスフィルタ123-2の非反転入力端子とを接続する。また、スイッチ125は、信号Esin(2πft+π/2)が負のとき、増幅器122の出力端子とローパスフィルタ123-2の反転入力端子とを接続する。これにより、増幅器122の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)に同期した信号を復調することができる。
【0032】
図5は、圧力・温度計測時の増幅器122の出力Aの波形を示す図である。増幅器122の出力Aは、下記の式のように表すことができる。
【0033】
【数1】
【0034】
図6は、圧力・温度計測時の同期検波部128の出力vcの波形を示す図である。同期検波部128の出力vcは、下記の式のように表すことができる。このvcは、主に静電容量Cxに依存するが、直列抵抗Rxの値にも影響される。
【0035】
【数2】
【0036】
図7は、圧力・温度計測時の同期検波部129の出力vtの波形を示す図である。同期検波部129の出力vtは、下記の式のように表すことができる。このvtは、直列抵抗Rxの値に依存するが、静電容量Cxの値にも影響される。
【0037】
【数3】
【0038】
同期検波部128の出力vcと同期検波部129の出力vtとから下式の演算をすると、静電容量Cxのみに比例した値が得られる。
【0039】
【数4】
【0040】
また、同期検波部128の出力vcと同期検波部129の出力vtとから下式の演算をすると、直列抵抗Rxのみに比例した値が得られる。
【0041】
【数5】
【0042】
式(4)、式(5)におけるα,βは静電容量Cx、直列抵抗Rxに依存しない回路常数のCf,f,Eによる定数である。
【0043】
容量算出部126は、同期検波部128の出力vcと同期検波部129の出力vtとから式(4)により静電容量Cxの値を算出する(図3ステップS102)。
【0044】
温度算出部127は、同期検波部128の出力vcと同期検波部129の出力vtとから式(5)により直列抵抗Rxの値を算出する(図3ステップS103)。そして、温度算出部127は、直列抵抗Rxの値からセンサチップ1の温度を導出する(図3ステップS104)。直列抵抗Rxと温度との関係は予め温度算出部127に記憶されている。温度算出部127は、予め設定された式により直列抵抗Rxの値から温度を算出してもよいし、予め設定されたテーブルから直列抵抗Rxの値に対応する温度の値を取得するようにしてもよい。
【0045】
圧力計測部13は、容量・温度検出部12によって算出された静電容量Cxを容量・温度検出部12によって算出されたセンサチップ1の温度によって補正して計測圧力値MPに変換して出力する(図3ステップS105)。静電容量Cxをセンサチップ1の温度によって補正する方法は、例えば下記の式(6)を用いて行う。
【0046】
【数6】
【0047】
式(6)において、Voは容量・温度検出部12によって算出された静電容量Cx、Vtは容量・温度検出部12によって算出されたセンサチップ1の温度、aijは補正係数、i,jは多項式の次数である。
【0048】
温度通知部14は、容量・温度検出部12によって算出されたセンサチップ1の温度をユーザーに通知する(図3ステップS106)。通知方法の例としては、例えば温度の算出結果の表示、温度の算出結果の外部への送信などがある。
【0049】
容量・温度検出部12と圧力計測部13と温度通知部14とは、例えばユーザーの指示によって圧力・温度計測動作が終了するまで(図3ステップS107においてYES)、ステップS100~S106の処理を計測周期毎に行う。
【0050】
本実施例では、可動電極106と固定電極105の直列抵抗Rxが温度によって変化することを利用してセンサチップ1の温度を計測することができ、1つのセンサチップ1で圧力計測と温度計測を実現することができる。本実施例では、センサチップ1の正確な温度を計測することができるため、センサチップの外側に温度センサを設ける従来の構成と比較して、補正の誤差を抑えることができ、圧力の計測誤差を抑えることができる。また、本実施例では、センサチップ1への温度センサの取り付けと温度センサの信号を取り出すための配線が不要となるので、センサチップに温度センサを取り付ける場合と比較してセンサチップ1の小型化が可能となる。
【0051】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図8は本発明の第2の実施例に係る隔膜真空計の構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例の隔膜真空計は、受圧部10aと、回路部11aとを備えている。
【0052】
図9は本実施例のセンサチップ1aの要部の構成を示す断面図である。センサチップ1aにおいて、固定電極105の外側の台座101の基準真空室104側の面には、固定電極107が形成されている。可動電極106の外側のダイアフラム102の基準真空室104側の面には、固定電極107と対向するように可動電極108が形成されている。センサチップ1aのその他の構成はセンサチップ1と同じである。
【0053】
固定電極107と可動電極108とはダイアフラム102の縁部に形成されている。ダイアフラム102が被測定媒体の圧力Pを受けて撓むんだとしても、ダイアフラム102の縁部は殆ど変形しないため、可動電極108と固定電極107との間の静電容量は変化し難い。この静電容量は、センサ内外の温度変化および基準真空室104内の湿度変化等に基づく測定誤差を除去するために設けられたものである。
【0054】
回路部11aは、容量・温度検出部12aと、圧力計測部13aと、温度通知部14とから構成される。
【0055】
図10は本実施例の隔膜真空計の圧力・温度計測動作を説明するフローチャート、図11は容量・温度検出部12aの構成を示すブロック図である。
容量・温度検出部12aは、センサ駆動信号を出力する信号発生器130と、センサ駆動信号と位相がずれた信号を出力する信号発生器131と、増幅器132,133と、減算器134と、差動入力型のローパスフィルタ135~137と、増幅器132とローパスフィルタ135との間に設けられたスイッチ138と、減算器134とローパスフィルタ136との間に設けられたスイッチ139と、増幅器132とローパスフィルタ137との間に設けられたスイッチ140と、容量算出部141と、参照容量算出部142と、温度算出部143と、容量補正部144とから構成される。
【0056】
図11では、センサチップ1aの可動電極108と固定電極107との間の静電容量をCrで表している。また、可動電極108と固定電極107の直列抵抗の成分をRrで表している。
【0057】
信号発生器130は、圧力・温度計測時にセンサ駆動信号Esin(2πft)をセンサチップ1aの第2の電極(例えば可動電極106)と第4の電極(例えば可動電極108)とスイッチ138,139とに印加する(図10ステップS200)。
【0058】
信号発生器131は、圧力・温度計測時にセンサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)をスイッチ140に印加する(図10ステップS201)。
【0059】
増幅器132は、センサチップ1aの第1の電極(例えば固定電極105)から出力される電流を電圧に変換して増幅し、静電容量Cxに比例した振幅の信号を出力する。増幅器133は、センサチップ1aの第3の電極(例えば固定電極107)から出力される電流を電圧に変換して増幅し、静電容量Crに比例した振幅の信号を出力する。
減算器134は、増幅器132の出力信号Aから増幅器133の出力信号Bを減算する。
【0060】
スイッチ138とローパスフィルタ135とは、同期検波部145を構成している。ローパスフィルタ135は、センサ駆動信号Esin(2πft)を通過させるようにカットオフ周波数が設定されている。同期検波部145は、増幅器132の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)に同期した信号を復調する。
【0061】
具体的には、スイッチ138は、圧力・温度計測時に信号発生器130から出力されるセンサ駆動信号Esin(2πft)が正のとき、増幅器132の出力端子とローパスフィルタ135の非反転入力端子とを接続する。また、スイッチ138は、センサ駆動信号Esin(2πft)が負のとき、増幅器132の出力端子とローパスフィルタ135の反転入力端子とを接続する。これにより、増幅器132の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)に同期した信号を復調することができる。
【0062】
一方、スイッチ139とローパスフィルタ136とは、同期検波部146を構成している。ローパスフィルタ136は、センサ駆動信号Esin(2πft)を通過させるようにカットオフ周波数が設定されている。同期検波部146は、減算器134の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)に同期した信号を復調する。
【0063】
具体的には、スイッチ139は、圧力・温度計測時に信号発生器130から出力されるセンサ駆動信号Esin(2πft)が正のとき、減算器134の出力端子とローパスフィルタ136の非反転入力端子とを接続する。また、スイッチ139は、センサ駆動信号Esin(2πft)が負のとき、減算器134の出力端子とローパスフィルタ136の反転入力端子とを接続する。これにより、減算器134の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)に同期した信号を復調することができる。
【0064】
スイッチ140とローパスフィルタ137とは、同期検波部147を構成している。ローパスフィルタ137は、センサ駆動信号Esin(2πft)を通過させるようにカットオフ周波数が設定されている。同期検波部147は、増幅器132の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)に同期した信号を復調する。
【0065】
具体的には、スイッチ140は、圧力・温度計測時に信号発生器131から出力される信号Esin(2πft+π/2)が正のとき、増幅器132の出力端子とローパスフィルタ137の非反転入力端子とを接続する。また、スイッチ140は、信号Esin(2πft+π/2)が負のとき、増幅器132の出力端子とローパスフィルタ137の反転入力端子とを接続する。これにより、増幅器132の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)に同期した信号を復調することができる。
【0066】
容量算出部141は、同期検波部145の出力vcと同期検波部147の出力vtとから式(4)により静電容量Cxの値を算出する(図10ステップS202)。
参照容量算出部142は、同期検波部146の出力vrの振幅から静電容量(参照容量)Crの値を算出する(図10ステップS203)。
【0067】
容量補正部144は、参照容量Crにより静電容量Cxを補正した値(Cx-Cr)/Cxを算出する(図10ステップS204)。
第1の実施例と同様に、温度算出部143は、同期検波部145の出力vcと同期検波部147の出力vtとから式(5)により直列抵抗Rxの値を算出し(図10ステップS205)、直列抵抗Rxの値からセンサチップ1aの温度を導出する(図10ステップS206)。
【0068】
圧力計測部13aは、容量・温度検出部12aによって算出された静電容量(Cx-Cr)/Cxを容量・温度検出部12aによって算出されたセンサチップ1aの温度によって補正して計測圧力値MPに変換して出力する(図10ステップS207)。静電容量(Cx-Cr)/Cxをセンサチップ1aの温度によって補正する方法は、下記式(7)を用いて行う。
【0069】
【数7】
【0070】
式(7)において、Vxは容量算出部141によって算出された静電容量Cx、Vtは温度算出部143によって算出されたセンサチップ1aの温度、Vrは参照容量算出部142によって算出された静電容量Cr、aijkは補正係数、i,j,kは多項式の次数である。なお、式(7)の例では、容量補正部144の算出結果を使用せずに、容量算出部141,143の算出結果を使用することで、参照容量Crにより静電容量Cxを補正している。
【0071】
第1の実施例と同様に、温度通知部14は、容量・温度検出部12aによって算出されたセンサチップ1aの温度をユーザーに通知する(図10ステップS208)。
【0072】
容量・温度検出部12aと圧力計測部13aと温度通知部14とは、例えばユーザーの指示によって圧力計測動作が終了するまで(図10ステップS209においてYES)、ステップS200~S208の処理を計測周期毎に行う。
【0073】
こうして、本実施例では、センサチップ1aの固定電極105と可動電極106とを用いて圧力計測のための容量計測と温度計測とを実施し、センサチップ1aの固定電極107と可動電極108とを用いて容量補正のための参照容量計測を実施することができ、1つのセンサチップ1aで圧力計測と温度計測と容量補正を実現することができる。
【0074】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図12は本発明の第3の実施例に係る隔膜真空計の構成を示すブロック図であり、図1図8と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例の隔膜真空計は、受圧部10aと、回路部11bとを備えている。受圧部10aの構成は第2の実施例で説明したとおりである。
回路部11bは、容量・温度検出部12bと、圧力計測部13bと、温度通知部14とから構成される。
【0075】
図13は本実施例の容量・温度検出部12bの構成を示すブロック図である。容量・温度検出部12bは、信号発生器130,131bと、増幅器132,133と、減算器134と、ローパスフィルタ135,136と、スイッチ138,139と、容量算出部141bと、参照容量算出部142bと、温度算出部143bと、容量補正部144と、差動入力型のローパスフィルタ148と、減算器134とローパスフィルタ148との間に設けられたスイッチ149とから構成される。
【0076】
本実施例の隔膜真空計の圧力・温度計測動作の処理の流れは第2の実施例と同様であるので、図10の符号を用いて説明する。
信号発生器130は、圧力・温度計測時にセンサ駆動信号Esin(2πft)をセンサチップ1aの第2の電極(例えば可動電極106)と第4の電極(例えば可動電極108)とスイッチ138,139とに印加する(図10ステップS200)。
【0077】
信号発生器131bは、圧力・温度計測時にセンサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)をスイッチ149に印加する(図10ステップS201)。
【0078】
第2の実施例と同様に、同期検波部145は、増幅器132の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)に同期した信号を復調する。同期検波部146は、減算器134の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)に同期した信号を復調する。
【0079】
スイッチ149とローパスフィルタ148とは、同期検波部150を構成している。ローパスフィルタ148は、センサ駆動信号Esin(2πft)を通過させるようにカットオフ周波数が設定されている。同期検波部150は、減算器134の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)に同期した信号を復調する。
【0080】
具体的には、スイッチ149は、圧力・温度計測時に信号発生器131bから出力される信号Esin(2πft+π/2)が正のとき、減算器134の出力端子とローパスフィルタ148の非反転入力端子とを接続する。また、スイッチ149は、信号Esin(2πft+π/2)が負のとき、減算器134の出力端子とローパスフィルタ148の反転入力端子とを接続する。これにより、減算器134の出力から、センサ駆動信号Esin(2πft)と90度位相がずれた信号Esin(2πft+π/2)に同期した信号を復調することができる。
【0081】
容量算出部141bは、同期検波部145の出力vcの振幅から静電容量Cxの値を算出する(図10ステップS202)。
参照容量算出部142bは、同期検波部146の出力vrと同期検波部150の出力vtとから静電容量(参照容量)Crの値を算出する(図10ステップS203)。この参照容量Crは、式(4)において、CxをCrに置き換え、vcをvrに置き換えた式により算出することができる。
【0082】
容量補正部144は、参照容量Crにより静電容量Cxを補正した値(Cx-Cr)/Cxを算出する(図10ステップS204)。
温度算出部143bは、同期検波部146の出力vrと同期検波部150の出力vtとから直列抵抗Rrの値を算出し(図10ステップS205)、直列抵抗Rrの値からセンサチップ1aの温度を導出する(図10ステップS206)。
【0083】
直列抵抗Rrは、式(5)において、RxをRrに置き換え、vcをvrに置き換えた式により算出することができる。直列抵抗Rrと温度との関係は予め温度算出部143bに記憶されている。温度算出部143bは、予め設定された式により直列抵抗Rrの値から温度を算出してもよいし、予め設定されたテーブルから直列抵抗Rrの値に対応する温度の値を取得するようにしてもよい。
【0084】
第2の実施例と同様に、圧力計測部13bは、容量・温度検出部12bによって算出された静電容量(Cx-Cr)/Cxを容量・温度検出部12bによって算出されたセンサチップ1aの温度によって補正して計測圧力値MPに変換して出力する(図10ステップS207)。
【0085】
第2の実施例と同様に、温度通知部14は、容量・温度検出部12bによって算出されたセンサチップ1aの温度をユーザーに通知する(図10ステップS208)。
【0086】
容量・温度検出部12bと圧力計測部13bと温度通知部14とは、例えばユーザーの指示によって圧力・温度計測動作が終了するまで(図10ステップS209においてYES)、ステップS200~S208の処理を計測周期毎に行う。
【0087】
こうして、本実施例では、センサチップ1aの固定電極105と可動電極106とを用いて圧力計測のための容量計測を実施し、センサチップ1aの固定電極107と可動電極108とを用いて容量補正のための参照容量計測と温度計測とを実施することができ、1つのセンサチップ1aで圧力計測と温度計測と容量補正を実現することができる。
【0088】
なお、本実施例の説明中で圧力計測、および、温度計測の過程で、第1の容量算出部で算出される第1の静電容量値は第1、第2の電極間の静電容量に比例した値であればよく、同様に第2の容量算出部で算出される第2の静電容量値は第3、第4の電極間の静電容量に比例した値であればよい。また、温度算出部で算出されるセンサチップ温度はセンサチップの温度に比例した値であればよい。
更に、第2~第3実施例において、第2の電極と第4の電極を別々の電極とせずに、電気的に接続されて単一の電極として形成してもよい。
【0089】
第1~第3の実施例で説明した回路部11,11a,11bは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図14に示す。
【0090】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、容量・温度検出部12,12a,12bのハードウェアなどが接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1~第3の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、隔膜真空計に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,1a…センサチップ、10,10a…受圧部、11,11a,11b…回路部、12,12a,12b…容量・温度検出部、13,13a,13b…圧力計測部、14…温度通知部、102…ダイアフラム、105,107…固定電極、106,108…可動電極、120,121,130,131,131b…信号発生器、122,132,133…増幅器、123-1,123-2,135~137,148…ローパスフィルタ、124,125,138~140,149…スイッチ、126,141,141b…容量算出部、127,143,143b…温度算出部、128,129,145~147,150…同期検波部、134…減算器、142,142b…参照容量算出部、144…容量補正部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14