(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】一斉開放弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/122 20060101AFI20250408BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
F16K31/122
A62C35/68
(21)【出願番号】P 2021104602
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021026930
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 亮太
(72)【発明者】
【氏名】志賀 法道
(72)【発明者】
【氏名】椿 大志
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】実公昭45-003254(JP,Y1)
【文献】実開平01-118271(JP,U)
【文献】特開2000-179725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/12-31/165;31/36-31/42
F16K 17/18-17/34
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次室と、二次室と、該一次室と二次室を仕切る弁体と、該弁体を作動させるピストンと、該ピストンが配設されるピストン室とを備えてなる一斉開放弁であって、
該ピストン室の加圧側の空気を排出する一つの排出口を有する空気排出機構を備え、
該空気排出機構は、縦方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する縦使用時及び横方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する横使用時のいずれの使用状態においても前記空気を
排出できるように前記排出口が前記ピストン室の加圧側で最も高位置に配置されていることを特徴とする一斉開放弁。
【請求項2】
一次室と、二次室と、該一次室と二次室を仕切る弁体と、該弁体を作動させる弁作動機構とを備え、該弁作動機構は、一次側の水が導入されるピストン室と、該ピストン室に移動可能に設けられたピストンと、該ピストンと前記弁体を連動させるステムと、ピストン室側の面が外側に凸となるドーム形状部を有し前記ピストン室における加圧側を覆う蓋部材とを備えてなる一斉開放弁であって、
前記蓋部材は、前記ドーム形状部の外周部に形成されて前記ピストン室の加圧側の空気及び水を排出する排出口と、前記排出口と前記ドーム形状部における内面の中心部をつなぐ溝形状部とを有し、
縦方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する縦使用時において、前記排出口は前記ドーム形状部における最も高位置に配置され、
横方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する横使用時において、前記溝形状部の溝底が前記ドーム形状部の中心部と同じ高さかまたは該中心部より高位置に配置され、
前記縦使用時及び前記横使用時のいずれの使用状態においても前記空気を前記排出口から排出
できるように構成されていることを特徴とする一斉開放弁。
【請求項3】
前記ピストンに前記ピストン室における加圧側と他方の側とを連通させるオリフィスを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の一斉開放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備における消火水を供給する配管中に設置される加圧開放型の一斉開放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
消火設備で用いられる一斉開放弁として、弁体に突設したピストンステムの先端に設けたピストンに圧力が加わったときに上記弁体が開動して一次室と二次室とが連通する加圧開放型のものがある。このような加圧開放型の一斉開放弁の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の「加圧開放弁」は、特許文献1の
図1に示されるように、一次側流路1aの高圧消火水を一次圧流入孔6から下部室4に流入させることで下部室4を加圧し、この圧力によってピストン3を上方に押し上げて主弁12を開動させるものである。この加圧時(開動作時)において、ピストン室の加圧側(下部室4)の空気が全て排出されないと、空気の膨張・収縮の作用によって所定の圧力が得られず、正しく弁体が開動しない場合がある。この点、特許文献1は、ピストン3に設けられた小孔Bから上部室5側に空気を排出している。
小孔Bのようなピストン室の加圧側の空気を排出するための排出口は、ピストン室の加圧側における最も高位置に配置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の
図1は、横方向に配置された配管の間に配設して使用する(以下、「横使用」という)状態を示したものであるが、取り付け現場によって配管の配置はその限りではない。例えば縦方向に配置された配管の間に配設して使用する(以下、「縦使用」という)場合には、特許文献1の
図1の状態から90度回転させた状態で取り付ける必要がある。その場合、小孔Bは下部室4内の最も高位置とはならないので、加圧時に下部室4の空気を全て排出することができず動作が不安定となるという恐れがあった。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、縦使用時及び横使用時のいずれの使用状態においてもピストン室の加圧側の空気を全て排出することができる一斉開放弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る一斉開放弁は、一次室と、二次室と、該一次室と二次室を仕切る弁体と、該弁体を作動させるピストンと、該ピストンが配設されるピストン室とを備えてなるものであって、該ピストン室の加圧側の空気を排出する一つの排出口を有する空気排出機構を備え、該空気排出機構は、縦方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する縦使用時及び横方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する横使用時のいずれの使用状態においても前記空気を前記排出口から排出可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、本発明に係る一斉開放弁は、一次室と、二次室と、該一次室と二次室を仕切る弁体と、該弁体を作動させる弁作動機構とを備え、該弁作動機構は、一次側の水が導入されるピストン室と、該ピストン室に移動可能に設けられたピストンと、該ピストンと前記弁体を連動させるステムと、ピストン室側の面が外側に凸となるドーム形状部を有し前記ピストン室における加圧側を覆う蓋部材とを備えてなるものであって、前記蓋部材は、前記ドーム形状部の外周部に形成されて前記ピストン室の加圧側の空気及び水を排出する排出口と、前記排出口と前記ドーム形状部における内面の中心部をつなぐ溝形状部とを有し、縦方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する縦使用時において、前記排出口は前記ドーム形状部における最も高位置に配置され、横方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する横使用時において、前記溝形状部の溝底が前記ドーム形状部の中心部と同じ高さかまたは該中心部より高位置に配置され、前記縦使用時及び前記横使用時のいずれの使用状態においても前記空気を前記排出口から排出可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記ピストンに前記ピストン室における加圧側と他方の側とを連通させるオリフィスを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、ピストン室の加圧側の空気を排出する一つの排出口を有する空気排出機構を備え、該空気排出機構は、縦使用時及び横使用時のいずれの使用状態においてもピストン室の空気を一つの排出口から排出することができるので、使用状態に関わらず安定した動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁の説明図であり、横使用の状態における断面図を示したものである。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁の外観を示したものであり、
図2(a)は斜視図、
図2(b)は
図2(a)のA-A矢視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る蓋部材の説明図であり、
図3(a)は蓋部材を外側から見た斜視図、
図3(b)は蓋部材を内側から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)は
図2(b)に示した一斉開放弁の蓋部材のみを示した図であり、
図4(b)は
図4(a)に示した蓋部材の裏側を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁の開状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁の説明図であり、縦使用の状態における断面図を示したものである。
【
図7】蓋部材の他の態様を説明する説明図であり、
図7(a)は横使用の状態における断面図、
図7(b)は縦使用の状態における断面図を示したものである。
【
図8】本発明に至った経緯を説明する説明図であり、縦使用及び横使用のいずれにおいても空気を排出可能な一斉開放弁の一例を縦使用した状態を示したものである。
【
図9】
図8に示した一斉開放弁の横使用にした状態を示す図である。
【
図10】本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁の他の態様を説明する説明図であり、ピストン室を下に配置した横使用の状態における断面図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る一実施の形態を説明するのに先立ち、発明者が本発明に至った経緯を説明する。
前述した課題を解決するために縦使用及び横使用のいずれの使用状態においてもピストン室の加圧側の空気を適切に排出できるようにしたものとして、例えば、
図8、
図9に示すような一斉開放弁33が想定される。
【0013】
一斉開放弁33は、一次側配管3に連通する一次室5と、二次側配管7に連通する二次室9と、一次室5と二次室9を仕切る弁体11と、弁体11を作動する弁作動機構13とを備えたものである。5a及び9aは、平常時に弁体11の1次側及び2次側の排水を行うための排水口であるが、本実施の形態においては説明を省略する。
【0014】
弁作動機構13は、弁体11の一次側の水が導入されるピストン室15と、ピストン室15に移動可能に設けられたピストン17と、ピストン17と弁体11を連動させるステム19と、ピストン室15における加圧側を覆う蓋部材35とを備えている。
【0015】
蓋部材35は、ピストン室15側の面が外側に凸となるドーム形状部23を有しており、ドーム形状部23の外周部には、弁体11の一次側の水をピストン室15に導入するための導入口25が設けられている。導入口25は配管27を介して一次室5の送水口5bと接続される。また、ドーム形状部23の外周部及び中心部には、ピストン室15の空気及び水を排出するための第1排出口37と第2排出口39が形成されている。
第1排出口37と第2排出口39は一斉開放弁33の使用状態によって選択的に使用されるものである。以下、この点について具体的に説明する。
【0016】
図8は、縦方向に配置された一次側配管3と二次側配管7の間に一斉開放弁33を配設して使用する縦使用の状態を示している。
図8に示すように一斉開放弁33を縦使用する場合には、ピストン室15の最も高い位置に配置される第1排出口37から排気・排水を行う。この時第2排出口39は閉塞される。
【0017】
また、横方向に配置された一次側配管3と二次側配管7の間に一斉開放弁33を配設して使用する横使用時には、
図9に示すように、第2排出口39から排気・排水を行う。これは、ドーム形状部23の中心部に設けられた第2排出口39はピストン室15の最も高位置に配置されるので、ピストン室15の空気を全て排出することができるからである。
【0018】
一方、第1排出口37はドーム形状部23の外周部に設けられているため、横使用時の状態では第1排出口37の開口部(
図9の破線円Xで示す部分)が第2排出口39よりも下方に位置することとなり、ピストン室15の加圧側の空気を全て排出することができない。したがって横使用時において第1排出口37は閉塞される。
【0019】
上述したように、
図8、
図9に示した一斉開放弁33は、縦使用時には第1排出口37がピストン室15の最も高位置に配置され、横使用時には第2排出口39がピストン室15の最も高位置に配置されるので、使用状態に合わせて第1排出口37と第2排出口39を選択的に使用することで、縦使用、横使用のいずれの使用状態でも適切に空気を排出できる。
【0020】
上述のように一斉開放弁33は、現場で使用する状態に合わせて、第1排出口37と第2排出口39の一方に排気・排水のための配管31を取り付け、他方を閉塞して使用するものであるが、第1排出口37と第2排出口39に対する配管31の取り付け及び閉塞は、工場等で予め行われる場合がある。その場合には、現場に対応した製品管理・工程管理が必要となり、さらに本来配管を取り付けるべき排出口と別の排出口に配管を取り付けてしまうなどの配管ミスも生じる恐れがある。また、配管31を現場で取り付ける場合には、現場の作業者が、使用すべき排出口を誤る恐れがあった。
さらに、第1排出口37と第2排出口39の形状が異なる場合にはそれぞれの形状に対応した配管31を用意する必要もあり、製品管理が煩雑であった。
そこで発明者は上記問題点を解決するため、一つの排出口で縦使用及び横使用のいずれの使用状態でもピストン室の加圧側の空気を排出できる方法を鋭意検討し、本発明に至ったものである。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁1の断面図であり、
図2(b)のB-B断面を示したものである。
図1において、
図8、
図9と同一部分には同一の符号を付している。
図2は一斉開放弁1の外観を示すものであり、
図2(a)は斜視図、
図2(b)は
図2(a)のA-A矢視図である。
本実施の形態に係る一斉開放弁1は、
図1、
図2に示すように、一次側配管3に連通する一次室5と、二次側配管7に連通する二次室9と、一次室5と二次室9を仕切る弁体11と、弁体11を作動する弁作動機構13とを備えている。
一次室5、二次室9には、弁体11の1次側及び2次側の排水のための排水口5a、9aが設けられている。排水口5a、9aに接続される配管は図示を省略する。
【0022】
弁作動機構13は、一次側の水が導入されるピストン室15と、ピストン室15に移動可能に設けられたピストン17と、ピストン17と弁体11を連動させるステム19と、ピストン室15における加圧側を覆う蓋部材21とを備えてなるものである。
以下、本実施の形態の特徴部分である蓋部材21について
図3、
図4を用いて詳細に説明する。
【0023】
図3は蓋部材21を単体で図示したものであり、
図3(a)は外側から見た斜視図、
図3(b)は内側から見た斜視図である。
図4(a)は
図2(b)における蓋部材21を単体で図示したものであり、
図4(b)は
図4(a)に示した蓋部材21の裏側(内側)を示した図である。
【0024】
図3(b)に示すように、蓋部材21はピストン室15側の面が外側に凸となるドーム形状部23を有している。このように蓋部材21の一部をドーム形状としているのは、平板円盤状のものに比べて強度が増すためである。なお、ドーム形状部23を内側に凸となる形状とするとドーム形状部23の中心部がピストン17と干渉しやすくなったり、横使用時にドーム形状部23の外面に水が溜まって腐食しやすくなったりするので、ドーム形状部23は外側に凸となる形状が好ましい。
【0025】
蓋部材21にはフランジ部24が設けられ、フランジ部24には、一斉開放弁1に取り付けるためのボルトを挿通するボルト孔24aが形成されている。
【0026】
また、
図3、
図4に示すように、ドーム形状部23の外周部には、弁体11の一次側の水をピストン室15に導入するための導入口25が設けられており、配管27を介して弁体11の一次側である一次室5の送水口5bと接続されている(
図1参照)。また、配管27には図示しない調圧弁が設けられてもよい。
【0027】
さらに、蓋部材21におけるドーム形状部23の外周部には、ピストン室15の加圧側の空気及び水(消火水)を排出するための排出口29が一つ設けられており、排出口29は、配管31を介して二次室9の導入口9bと接続されている。
なお、上記はピストン室15の加圧側の空気及び水を二次室9に排出するように構成したものであるが、排出先はこの限りではなく、大気排気・排水としてもよい。
【0028】
また、ドーム形状部23の内面には、ドーム形状部23の内面の中心部23aと排出口29とをつなぐ溝形状部23bが形成されている(
図3(b)、
図4(b)参照)。
本実施の形態における排出口29と溝形状部23bは本発明の空気排出機構の構成要素の一つに相当する。
以下、溝形状部23bについて
図1を用いて詳細に説明する。
【0029】
図1は、横方向に配置された一次側配管3と二次側配管7の間に一斉開放弁1を配設して使用する横使用時の状態であり、
図2(b)のB-B断面、即ち溝形状部23bの溝底を通る断面である。
溝形状部23bは、
図1の拡大図に示すように、横使用時において、溝形状部23bの溝底がドーム形状部23の中心部23aと同じ高さかまたは中心部23aより高位置に配置されるように形成されている。
【0030】
前述した
図9の一斉開放弁33では、ピストン室15に導入された消火水の液面が
図9の破線円Xに示す部分に到達すると、ドーム形状部23の内側と第1排出口37の空間が分断され、ドーム形状部23の内側に残る空気を第1排出口37から排出することはできなかったが、本実施の形態の一斉開放弁1は、溝形状部23bが形成されていることにより、前記分断が生じず、ピストン室15の加圧側が消火水で満たされるまで、排出口29から適切に空気を排出することができる。
【0031】
上記のようにピストン室15内に空気が残留しないので、
図1に示した一斉開放弁1は、横使用時において加圧時に所定の圧力を得ることができ、弁作動機構13が確実に動作して弁体11が開動する(
図5参照)。
【0032】
なお、溝形状部23bが形成された部分には、蓋部材23の外側の対応する部分に凸形状部23cが形成されている(
図3(a)、
図4(a)参照)。これによって、
図1の断面を見てもわかるように、溝形状部23bが形成された部分も他の部分と同様の厚みを確保しており、蓋部材23の強度は従来の蓋部材35と同程度に有している。
【0033】
次に、上述した本実施の形態の一斉開放弁1を縦使用した場合について説明する。
図6は縦方向に配置された一次側配管3と二次側配管7の間に配設して使用する縦使用の状態における一斉開放弁1の断面図である。
図6に示すように、縦使用時においては、排出口29はドーム形状部23における最も高位置に配置される。
これにより、導入口25から消火水を導入した際には、消火水の液面が排出口29に到達するまでにピストン室15の加圧側の空気を適切に排出口29から排出することができるので、
図1に示した横使用時と同様に、加圧時に所定の圧力を得ることができ、弁作動機構13が確実に動作して弁体11が開動する。
【0034】
以上のように、本実施の形態においては、蓋部材21のドーム形状部23の外周部に設けられた排出口29と、排出口29とドーム形状部23における内面の中心部23aをつなぐ溝形状部23bとで構成された空気排出機構を備えたことにより、縦使用時、横使用時のいずれの使用状態においてもピストン室15の加圧側の空気を適切に排出することができる。
【0035】
また、ピストン室15の加圧側の空気を排出する排出口29が一つであるので、工場又は現場において配管31の取り付けミスが生じることがなく、製品管理・工程管理・現場施工が容易となる。
【0036】
なお、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範疇における様々な態様についても、本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施の形態は、弁体11の一次側の水を一次室5に設けられた送水口5bからピストン室15に導入するものであったが、送水口5bを1次側配管3に設けるようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態は、ドーム形状部23の外周部に排出口29が形成された蓋部材21を用いた例であったが、蓋部材の他の態様として、
図7に示すような蓋部材32を用いたものであってもよい。
図7に示す蓋部材32は、フランジ部24の側面に排出口29を設けたものであり、フランジ部24には排出口29とピストン室15をつなぐように貫通孔24bが形成されている。
蓋部材32は貫通孔24bとドーム形状部23の中心部23aをつなぐ溝形状部23bを有しており、溝形状部23bは、
図7(a)に示すように、横使用時において、溝形状部23bの溝底が中心部23aと同じ高さかまたは中心部23aより高位置に配置されるように形成されている。
また、蓋部材32は、
図7(b)に示すように、縦使用時において排出口29が最も高位置に配置される。
【0038】
上記のように構成された蓋部材32を用いた場合にも、ドーム形状部23の外周部に排出口29が形成された蓋部材21を用いた場合と同様に、横使用と縦使用のいずれの使用状態においてもピストンの加圧側の空気を排出口29から適切に排出することができる。
もっとも、貫通孔24bを形成する部分は、薄肉にならないようフランジ部24の外側の対応する部分に凸形状部を形成するなどして強度を確保するとよい。
【0039】
また、本実施の形態の一斉開放弁1は、前述したように横使用時と縦使用時のいずれの使用状態でもピストン室の空気を適切に排出できるものであるが、その効果を得るためには、
図1、
図6に示したような正しい設置状態で使用する必要がある。
しかし、横使用の場合、設置空間の確保や保守性などの理由から
図1のように設置するのが難しい場合がある。
【0040】
例えば、
図1の一斉開放弁1は、開動作時にステム19の下端が一斉開放弁1の下部から突き出すので(
図5参照)、一斉開放弁1の下側にステム19が動作する空間を確保する必要がある。
さらに、弁体11及びその近傍の構成部品をメンテナンス(ゴミ詰まりの除去など)する際には、本体下部の蓋部材を取り外して作業を行うので、このような作業を行うのに必要な空間を一斉開放弁1の下側に確保する必要もある。
ところが、接続する配管が地面に近い場合などは、上記空間の確保が難しい。
【0041】
また、本弁11側はピストン室15側と比べてメンテナンスによる分解頻度が高いものの、メンテナンス時には作業者が下側から一斉開放弁1の内部を見上げる状態で本弁11を分解したり組み立てたりする必要があるので、作業性がよくない。
特に、一斉開放弁1のサイズが大きいと弁体11も重量があり、下側からの作業がさらに困難になる。
【0042】
上記のような理由から、横使用時に弁体11を上側、ピストン室15を下側に配置したいという要望があるので、そのような要望に対応できるようにした一斉開放弁1の他の態様を
図10に示す。
なお、
図10には、
図1等で図示を省略している手動起動弁41を図示している。手動起動弁41は、火災を目視確認した操作者が手動で一斉開放弁を起動するためのものであり、手動起動弁41を開放することにより、一次室5の水が導入口25からピストン室15に導入される。また、図示していないが、上記手動起動弁41と並列して電動弁も設けられるのが一般的である。電動弁は、火災感知器等から火災信号を受信した受信盤によって遠隔制御で開放されるものであり、手動起動弁41を手動開放するか電動弁を遠隔開放するかのいずれかにより一斉開放弁が開放される。
【0043】
図10に示す一斉開放弁43は、前述した一斉開放弁1の構成に加えて、ピストン17にピストン室15における加圧側と他方の側とを連通させるオリフィス45を設けたものである。
一斉開放弁43は、オリフィス45を設けたことにより、
図10に示すような弁体11を上側、ピストン室15を下側に配置して横使用する状態でも、オリフィス45を介してピストン室15における加圧側の空気を他方の側に全て排出できる。
また、一斉開放弁43は、
図1のようなピストン室15を上側、弁体11を下側に配置した横使用の状態や、
図6のような縦使用の状態においても、一斉開放弁1と同様に、蓋部材21の排出口29からピストン室15の加圧側の空気を適切に排出できるので、より多様な使用状態に対応できる例である。
【符号の説明】
【0044】
1 一斉開放弁
3 一次側配管
5 一次室
5a 排水口
5b 送水口
7 二次側配管
9 二次室
9a 排水口
9b 導入口
11 弁体
13 弁作動機構
15 ピストン室
17 ピストン
19 ステム
21 蓋部材
23 ドーム形状部
23a 中心部
23b 溝形状部
23c 凸形状部
24 フランジ部
24a ボルト孔
24b 貫通孔
25 導入口
27 配管
29 排出口
31 配管
32 蓋部材(他の態様)
33 一斉開放弁(想定例)
35 蓋部材(想定例)
37 第1排出口
39 第2排出口
41 手動起動弁
43 一斉開放弁(他の態様)
45 オリフィス