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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】III族窒化物結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20250408BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20250408BHJP
   C30B 25/14 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C30B29/38 D
H01L21/205
C30B25/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021105133
(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公開番号】P2023003829
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-04-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、環境省、令和2年度未来のあるべき社会・ライフサイクルを創造する技術イノベーション事業(高品質GaN基板を用いた超高効率GaNパワー・光デバイスの技術開発とその実証)委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】森 勇介
(72)【発明者】
【氏名】吉村 政志
(72)【発明者】
【氏名】今西 正幸
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 茂佳
(72)【発明者】
【氏名】滝野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松野 俊一
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058718(JP,A)
【文献】特開2021-050107(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
H01L 21/205
C30B 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種基板を準備する準備工程と、
育成チャンバに配置された前記種基板を昇温する昇温工程と、
前記育成チャンバと接続管によって接続された原料チャンバ内で生成されたIII族元素酸化物ガスと、窒素元素含有ガスと、を前記育成チャンバ内に供給して、前記種基板にIII族窒化物結晶を成長させる成長工程と、
を含み、
前記昇温工程において、前記原料チャンバ内に供給するキャリアガスの流量y(L/min)が、以下の2つの関係式(I)及び(II)を満たし、
y<[1-k×H(Ts)]/[k×H(Ts)-j×H(Tg)]×j×H(Tg)×t (I)
y≧1.58×10-4×(22.4/28)S×F(N)/F(T) (II)
kは、原料チャンバにおけるIII族元素飽和蒸気圧への到達割合、
Ts(℃)は、前記原料チャンバの温度、
Tg(℃)は、前記育成チャンバの温度、
H(Ts)(atm)は、前記原料チャンバ内の温度TsでのIII族元素の飽和蒸気圧、
H(Tg)(atm)は、前記育成チャンバ内の温度TgでのIII族元素の飽和蒸気圧、
jは、2.25×10 -3 の値を有する補正係数、
(L/min)は、前記原料チャンバ以外から前記育成チャンバに流入するガス流量の和、
(mm は、前記接続管の断面積、
F(N)(L/min)は、前記育成チャンバに供給される前記窒素元素含有ガスの体積流量、
F(T)(L/min)は、前記原料チャンバ以外から前記育成チャンバに供給されるガスの体積流量の和、を示す、
III族窒化物結晶の製造方法。
【請求項2】
前記昇温工程は、前記成長工程の前に、500℃以上1050℃未満の昇温過程において実施される、
請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項3】
前記昇温工程は、不活性ガスと前記窒素元素含有ガスとの混合雰囲気で実施される、
請求項1又は2に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN等のIII族窒化物結晶は、高出力LED(発光ダイオード)及びLD(レーザーダイオード)等の次世代光デバイスや、EV(電気自動車)及びPHV(プラグインハイブリッド自動車)等に搭載される高出力パワートランジスタ等の次世代電子デバイスへの応用が期待されている。III族窒化物結晶の製造方法として、III族元素酸化物を原料とするOxide Vapor Phase Epitaxy(OVPE)法が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
OVPE法における反応系の例は、以下に示す通りである。
(1)Gaを加熱し、この状態で、HOガスを導入する。導入されたHOガスは、Gaと反応して、GaOガスを生成させる(下記式(I))。
(2)そして、NHガスを導入し、生成されたGaOガスと反応させて、種基板上にGaN結晶を生成する(下記式(II))。
2Ga(l)+HO(g)→GaO(g)+H(g)・・・(I)
GaO(g)+2NH(g)→2GaN(s)+HO(g)+2H(g)・・・(II)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015/053341A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、種基板を昇温させる工程において、GaOガスを生成させるための原料であるIII族金属(Ga)ガスの蒸気が、原料を配置した原料チャンバから、種基板を配置した育成チャンバへ拡散する場合がある。この場合には、種基板とIII族金属ガスとが反応して、種基板上に多結晶や貫通ピット等の異常成長の起点が生じるおそれがある。
【0006】
一方、III族金属ガスの拡散を抑制するために、III族金属の設置されている原料チャンバへ供給されるガスラインのキャリアガス流量を低減することが考えられる。しかし、上記キャリアガス流量を低減した場合、育成チャンバへ供給される窒素元素含有ガス(NH)がIII族金属の設置されている原料チャンバに逆流し、III族金属と反応し、III族金属上でIII族窒化物結晶が生成されてしまう。この場合、III族金属がIII族窒化物結晶で被覆されてしまう。これにより、昇温工程の後の成長工程において反応性ガス(HO)をIII族金属上に供給しても、結晶成長に必要なIIII族元素酸化物ガス(GaO)が生成しにくくなる。したがって高品質なIII族窒化物結晶を効率よく生成することが難しい。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高品質なIII族窒化物結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、種基板を準備する準備工程と、育成チャンバに配置された種基板を昇温する昇温工程と、育成チャンバと接続管によって接続された原料チャンバ内で生成されたIII族元素酸化物ガスと、窒素元素含有ガスと、を育成チャンバ内に供給して、種基板にIII族窒化物結晶を成長させる成長工程と、を含み、昇温工程において、原料チャンバ内に供給するキャリアガスの流量yが、以下の2つの関係式(I)及び(II)を満たし、
y<[1-k×H(Ts)]/[k×H(Ts)-j×H(Tg)]×j×H(Tg)×t (I)
y≧1.58×10-4×(22.4/28)S×F(N)/F(T) (II)
kは、原料チャンバにおけるIII族元素飽和蒸気圧への到達割合、Tsは、原料チャンバの温度、Tgは、育成チャンバの温度、H(Ts)は、原料チャンバ内の温度TsでのIII族元素の飽和蒸気圧、H(Tg)は、育成チャンバ内の温度TgでのIII族元素の飽和蒸気圧、jは、補正係数、tは、原料チャンバ以外から育成チャンバに流入するガス流量の和、Sは、接続管の断面積、F(N)は、育成チャンバに供給される窒素元素含有ガスの体積流量、F(T)は、原料チャンバ以外から育成チャンバ111に供給されるガスの体積流量の和、を示す。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、高品質のIII族窒化物結晶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の(a)時系列の製造方法を示すフローチャートと、(b)本製造方法で用いる製造装置内の上流から下流に向けての各機能単位を工程として示した際のフローチャートである。
図2】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造装置の概略図である。
図3】温度とGaの飽和蒸気圧との関係を表すグラフである。
図4】原料チャンバ以外から育成チャンバに流入するガス流量と、原料チャンバからのN流量に対するGa蒸気の拡散及びNHガスの逆流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、種基板を準備する準備工程と、育成チャンバに配置された種基板を昇温する昇温工程と、育成チャンバと接続管によって接続された原料チャンバ内で生成されたIII族元素酸化物ガスと、窒素元素含有ガスと、を育成チャンバ内に供給して、種基板にIII族窒化物結晶を成長させる成長工程と、を含み、昇温工程において、原料チャンバ内に供給するキャリアガスの流量yが、以下の2つの関係式(I)及び(II)を満たし、
y<[1-k×H(Ts)]/[k×H(Ts)-j×H(Tg)]×j×H(Tg)×t (I)
y≧1.58×10-4×(22.4/28)S×F(N)/F(T) (II)
kは、原料チャンバにおけるIII族元素飽和蒸気圧への到達割合、Tsは、原料チャンバの温度、Tgは、育成チャンバの温度、H(Ts)は、原料チャンバ内の温度TsでのIII族元素の飽和蒸気圧、H(Tg)は、育成チャンバ内の温度TgでのIII族元素の飽和蒸気圧、jは、補正係数、tは、原料チャンバ以外から育成チャンバに流入するガス流量の和、Sは、接続管の断面積、F(N)は、育成チャンバに供給される窒素元素含有ガスの体積流量、F(T)は、原料チャンバ以外から育成チャンバ111に供給されるガスの体積流量の和、を示す。
【0012】
第2の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1の態様において、昇温工程は、成長工程の前に、500℃以上1050℃未満の昇温過程において実施されてもよい。
【0013】
第3の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1又は第2の態様において、前記昇温工程は、不活性ガスと前記窒素元素含有ガスとの混合雰囲気で実施されてもよい。
【0014】
以下、実施の形態に係るIII族窒化物結晶の製造装置及びIII族窒化物結晶の製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0015】
(実施の形態1)
<III族窒化物結晶の製造方法の概要>
本実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法の概要を、図1のフローチャート及び図2を参照して説明する。図1(a)は、III族窒化物結晶の製造方法の時系列のフローチャートを示したものである。図1(b)は、本製造方法で用いる製造装置内の上流から下流に向けての各機能単位を工程として示したものである。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、種基板を準備する種基板準備工程と、種基板を不活性ガス雰囲気で昇温する昇温工程と、種基板を窒素元素含有ガス雰囲気で昇温する分解保護昇温工程と、III族元素酸化物ガスと窒素元素含有ガスとを供給して、種基板にIII族窒化物結晶を成長させる成長工程と、III族窒化物結晶の分解を窒素元素含有ガス雰囲気で分解抑制しつつ降温する工程と、III族窒化物結晶を不活性ガス雰囲気で降温する工程と、III族窒化物結晶を取出す工程と、を含む。
【0017】
<種基板準備工程>
種基板116を準備する種基板準備工程では、基板サセプタ117上に種基板116を載置する。
【0018】
<昇温工程>
本実施形態では、III族窒化物結晶の製造方法は、昇温工程を有する。昇温工程では、不活性ガス雰囲気で育成チャンバ111を100℃以上500℃未満まで昇温する。
【0019】
<分解保護昇温工程>
分解保護昇温工程では、NHガス雰囲気で育成チャンバ111を500℃以上1000℃未満まで昇温する。
【0020】
<成長工程>
成長工程では、原料チャンバ100でIII族元素酸化物ガスを生成し育成チャンバ111へ供給するとともに、窒素元素含有ガスを育成チャンバ111へ供給し、種基板116上でIII族窒化物結晶の生成を行う。
【0021】
成長工程は、図1(b)に示すように、反応性ガス供給工程、III族元素酸化物ガス生成工程、III族元素酸化物ガス供給工程、窒素元素含有ガス供給工程、III族窒化物結晶生成工程、及び残留ガス排出工程を含む。なお、成長工程に含まれる各工程は、III族窒化物結晶の製造装置内において同時に行われていてよい。成長工程に含まれる各工程は、図2に示すIII族窒化物結晶の製造装置内の上流から下流に向けての各機能単位を工程として示したものである。
【0022】
<反応性ガス供給工程>
反応性ガス供給工程では、反応性ガスを原料反応室へ供給する。
【0023】
<III族元素酸化物ガス生成工程>
III族元素酸化物ガス生成工程では、出発III族元素源と反応性ガス(出発III族元素源が酸化物の場合は還元性ガス、金属の場合は酸化性ガス)とを反応させ、III族元素酸化物ガスを生成する。
【0024】
<III族元素酸化物ガス供給工程>
III族元素酸化物ガス供給工程では、III族元素酸化物ガス生成工程で製造されたIII族元素酸化物ガスを育成チャンバへ供給する。
【0025】
<窒素元素含有ガス供給工程>
窒素元素含有ガス供給工程では、窒素元素含有ガスを育成チャンバへ供給する。
【0026】
<III族窒化物結晶生成工程>
III族窒化物結晶生成工程では、III族元素酸化物ガス供給工程で育成チャンバ内へ供給されたIII族元素酸化物ガスと、窒素元素含有ガス供給工程で育成チャンバ内へ供給された窒素元素含有ガスとを反応させ、III族窒化物結晶を種基板上に成長させる。
【0027】
<残留ガス排出工程>
残留ガス排出工程では、III族窒化物結晶の生成に寄与しない未反応のガスをチャンバ外に排出する。
【0028】
<分解保護降温工程>
本実施の形態1では、III族窒化物結晶の製造方法は、分解保護降温工程を有する。分解保護降温工程では、種基板116上に成長したIII族窒化物結晶の分解を抑制するために、NHガスを供給しながら原料チャンバ100及び育成チャンバ111の温度を500℃まで降温する。
【0029】
<降温工程>
本実施の形態1では、III族窒化物結晶の製造方法は、降温工程を有する。降温工程では、不活性ガス雰囲気で原料チャンバ100及び育成チャンバ111の温度を100℃未満まで降温する。
【0030】
<取出し工程>
本実施の形態1では、III族窒化物結晶の製造方法は、取出し工程を有する。取出し工程では、III族窒化物結晶が成長した種基板116を育成チャンバ111から取出す。
【0031】
<III族窒化物結晶の製造装置の概要>
まず、本実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法に用いられるIII族窒化物結晶の製造装置の概要を、図2を参照して説明する。
図2において、各構成部材の大きさ、比率等は実際とは異なる場合がある。
III族窒化物結晶の製造装置は、原料チャンバ100と育成チャンバ111とを備える。原料チャンバ100は、III族元素酸化物ガスを生成する。育成チャンバ111は、原料チャンバ100から供給されるIII族元素酸化物ガスと窒素元素含有ガスとを反応させて種基板上にIII族窒化物結晶を生成する。
原料チャンバ100内に、原料反応室101が配置されており、原料反応室101内に出発III族元素源105を載置した原料ボート104が配置されている。原料反応室101には、出発III族元素源105と反応するガスを供給する反応性ガス供給管103が接続されている。原料反応室101は、生成されたIII族元素酸化物ガスを排出するIII族元素酸化物ガス排出口107を有する。出発III族源が酸化物の場合は、反応性ガスとして還元性ガスを用いる。出発III族源が金属の場合は、反応性ガスとして酸化性ガスを用いる。
【0032】
また、原料チャンバ100には、第1搬送ガスが供給される第1搬送ガス供給口102が接続されている。第1搬送ガス供給口102から供給された第1搬送ガスと、III族元素酸化物ガス排出口107から排出されたIII族元素酸化物ガスとが、ガス排出口108から接続管109を通過し育成チャンバ111へと流れる。つまり、第1搬送ガスとIII族元素酸化物ガスとは、育成チャンバ111に接続されたガス供給口118から育成チャンバ111内へ供給される。育成チャンバ111は、ガス供給口118と、第3搬送ガス供給口112、と窒素元素含有ガス供給口113と、第2搬送ガス供給口114と、排気口119とを有する。育成チャンバ111は、種基板116を設置する基板サセプタ117を備える。
【0033】
<III族窒化物結晶の製造方法及び製造装置の詳細>
図1及び図2を参照し、本実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法を詳細に説明する。
本実施の形態1では、出発III族元素源105として金属Gaを用いたがこれに限らず、例えば、AlやInを用いてもよい。
【0034】
<種基板準備工程>
まず、種基板116を準備する。種基板116として、例えば、窒化ガリウム、ガリウム砒素、シリコン、サファイア、炭化珪素、酸化亜鉛、酸化ガリウム、ScAlMgOを用いることができる。本実施形態では、種基板116として、窒化ガリウムを用いる。
【0035】
<昇温工程>
昇温工程では、不活性ガス雰囲気で、種基板116の分解が生じない温度まで育成チャンバの昇温を行う。OVPE法によるIII族窒化物結晶の製造においては、約500℃まで不活性ガス(例えばNガス)雰囲気で加熱を行う。
【0036】
<分解保護昇温工程>
分解保護昇温工程では、窒素元素含有ガス雰囲気で、種基板116の分解を抑制しながら昇温を行う。OVPE法によるIII族窒化物結晶の製造において、500℃以上1050℃未満までは、不活性ガスと窒素元素含有ガスであるNHガスとを混合した状態で加熱を行う。NHを混合する理由は、N原子の脱離により種基板116が分解することを防ぐためである。
【0037】
また、分解保護昇温工程では、反応性ガス供給管103からキャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、例えば、不活性ガスやHガスを使用できる。キャリアガスを反応性ガス供給管103から供給する理由は、育成チャンバ111に供給される窒素元素含有ガスの原料チャンバ100への逆流を抑制するためである。この場合、反応性ガス供給管103から供給されるキャリアガスの流量や第1搬送ガス供給口102から供給される第1搬送ガスの供給量が多いと、原料ボート104に設置されている出発III族元素源105である金属Gaの蒸発量が多くなり、蒸発した金属Gaが原料チャンバ100から育成チャンバ111へと移動しやすくなる。分解保護昇温工程において、育成チャンバ111内の種基板116上に金属Gaが供給されてしまうと、供給された金属Gaの蒸気圧がGaの飽和蒸気圧を超えるとGaドロップレットが種基板116上に発生する。発生したドロップレットは、成長工程においてIII族窒化物結晶を成長させる際に、多結晶や貫通ピット等の異常成長源になる。そこで、Ga蒸気が育成チャンバ111へ供給されることを低減するために、原料チャンバ100に供給するキャリアガス及び第1搬送ガスのガス流量を低くすることが考えられる。
【0038】
しかし、キャリアガス及び第1搬送ガスのガス流量を低下させると、育成チャンバ111へ供給されている窒素元素含有ガスが原料チャンバ100へ逆流してしまう。窒素元素含有ガスであるNHガスの原料チャンバ100への逆流が生じた場合、原料チャンバ100内の出発III族元素源である金属Ga上でGaとNHとが反応してGaNが生成され、金属Ga表面を被覆する現象が生じる。金属GaがGaNで被覆されると、成長工程において、反応性ガスを原料チャンバ100に供給しても、金属Gaと反応性ガスとの反応が妨げられ、所望量のIII族元素酸化物ガスを生成することができなくなってしまう。つまり、金属Ga蒸気の種基板116上への拡散と、窒素元素含有ガスの原料チャンバ100への逆流と、を同時に抑制する必要がある。ここでは、理解を簡便にするために、分解保護昇温工程において原料チャンバ100に供給するガスは、反応性ガス供給管からのキャリアガスであるNガスのみであると仮定する。また、圧力は1atmとする。
【0039】
第一に、Ga蒸気の種基板116への拡散抑制に関して検討する。
まず、原料チャンバ100内のGa蒸気の体積流量に関して考える。原料チャンバ100内のGa蒸気の分圧をx(atm)、原料チャンバ100に供給するキャリアガスのNの体積流量をy(L/min)、Ga蒸気の体積流量をz(L/min)とした場合、原料チャンバ100内のGaガスとNガス(N:Ga)とは式(III)の関係を持つ。
1-x:x=y:z・・・(III)
これをzについて変形すると、式(IV)で表される。
z=(x×y)/(1-x)・・・(IV)
【0040】
次に、育成チャンバ111に供給された際のGa蒸気の分圧を考える。育成チャンバ111に供給されるGa蒸気以外のガス流量をT(L/min)、原料チャンバ100以外から育成チャンバ111に供給されるガス流量をt(L/min)とする。育成チャンバ111に供給されるGa蒸気以外のガス流量とは、原料チャンバ100から供給されるGa蒸気以外のガス流量と、原料チャンバ100以外から育成チャンバ111に供給されるガス流量と、の和を意味する。その場合、Tは以下の式(V)の関係を示す。
T=y+t・・・(V)
【0041】
ここで育成チャンバ111内でのGaガスの分圧は、z/(T+z)となる。また種基板116部でのGaの飽和蒸気圧をH(Tg)(atm)とした場合、Gaガス分圧はGa飽和蒸気圧を超えた際にGaドロップレットとなるため、種基板116上でのGaドロップレットの発生を抑制するためには、Gaガス流量zは、以下の式(VI)を保つ必要がある。
z/(T+z)<j×H(Tg)・・・(VI)
ここでjは補正係数である。jの値は、実験による検討を重ねた結果、2.25×10-3であった。したがって、式(VI)に式(IV)と式(V)とを代入して、式(VII)と表すことができる。
y<(1-x)/[x-j×H(Tg)]×j×H(Tg)×t・・・(VII)
【0042】
さらに原料チャンバ100でのGa蒸気が(k×100)%だけ飽和蒸気圧に到達しているとすると、原料チャンバ100でのGa飽和蒸気圧をH(Ts)として、原料チャンバ100内のGa蒸気の分圧xを以下の(VIII)として表すことができる。この場合、kは、原料チャンバ100でのGa蒸気の飽和蒸気圧H(Ts)に対する比率である。
x=k×H(Ts)・・・(VIII)
式(VIII)を式(VII)に代入すると式(IX)となる。
y<[1-k×H(Ts)]/[k×H(Ts)-j×H(Tg)]×j×H(Tg)×t・・・(IX)
【0043】
また、H(Ts)とH(Tg)は以下の式によって表される。
H(Ts)=EXP[-ΔG(Ts)/(R×Ts)]・・・(X)
H(Tg)=EXP[-ΔG(Tg)/(R×Tg)]・・・(XI)
ここでTsとTgとは、それぞれ原料チャンバ100及び育成チャンバ111の温度である。また、Rは気体定数であり、ΔGは原料チャンバ100及び育成チャンバ111の温度によって決定されるGaガスのギブスポテンシャルである。したがって、原料チャンバ100に供給するNガスの体積流量yは、式(X)と(XI)とを用いて表される式(IX)を満たす範囲であればよい。参考として図3にGa飽和蒸気圧の温度との関係を示す。
【0044】
第二に、窒素元素含有ガスであるNHの原料チャンバ100への逆流抑制に関して検討する。
原料チャンバ100に供給されるNガスの質量流量をX(g/min)、接続管109の断面積をS(mm)、育成チャンバ111に供給されるNHガスの体積流量をF(NH)(L/min)、原料チャンバ100以外から育成チャンバ111に供給されるガスの体積流量をF(T)(L/min)とする。なお、原料チャンバ100以外から育成チャンバ111に供給されるガス中での育成チャンバ111内のNHガスの濃度は、F(NH)/F(T)と表すことができる。
【0045】
窒素元素含有ガスであるNHの原料チャンバ100への逆流は、原料チャンバ100に供給されるキャリアガスであるNガスの質量流量X(g/min)が大きいほど抑制されると考えられる。また、接続管109の断面積Sが小さいほどNHの原料チャンバ100への逆流は抑制されると考えられる。さらに、NHガスの体積流量F(NH)(L/min)の逆数が大きいほどNHの原料チャンバ100への逆流は抑制されると考えられる。またさらに、原料チャンバ100以外から育成チャンバ111に供給されるガスの体積流量F(T)(L/min)が大きいほどNHの原料チャンバ100への逆流は抑制されると考えられる。
上記の関係から、NHの原料チャンバ100への逆流の抑制に正の相関を示すNガスの質量流量X(g/min)及び原料チャンバ100以外から育成チャンバ111に供給されるガスの体積流量F(T)(L/min)を分子に、負の相関を示す接続管109の断面積S及びNHガスの体積流量F(NH)(L/min)を分母に有する式XII)で表されるAの値を考える。このAは、育成チャンバ111から原料チャンバ100へのNHガスの逆流抑制を判断するためのパラメータであり、Aの数値が所定の値より大きい場合にNHの原料チャンバ100への逆流を抑制できると判断できる。
A=(X/S)×(FT(T)/F(NH))=(X×FT(T))/(S×F(NH))・・・(XII)
実験による検討を重ねた結果導出されたNHの原料チャンバ100への逆流を抑制できるAの下限値は、1.58×10-4であった。
【0046】
y(L/min)を原料チャンバ100に供給されたNガスの体積流量とすると、標準状態のモル体積22.4L/molとNガスの分子量28g/molを用いて、原料チャンバ100から供給するNガスの質量流量Xは式(XIII)で表される。
X=y×(28/22.4)・・・(XIII)
式(XII)に式(XIII)を代入し、
y≧A×(22.4/28)×S×F(NH)/F(T)・・・(XIV)
したがってAの下限値を代入するとyは、以下の式(XV)の関係を満たさなければならない。
y≧1.58×10-4×(22.4/28)S×F(NH)/F(T)・・・(XV)
【0047】
以上の内容をまとめると、分解保護昇温工程において原料チャンバ100へ供給するキャリアガスの体積流量yは式(IX)と(XV)を同時に満たす範囲に調整すればよい。具体的には、原料チャンバ以外から育成チャンバに流入するガス流量F(T)と、原料チャンバからのNの流量とを、図4に示す点線以上であって、一点鎖線以下の範囲に調整すればよい。これによって、原料チャンバ100から種基板116へ供給されるGa蒸気の拡散を抑制し、かつ原料チャンバ100への窒素元素含有ガスの逆流を抑制することが可能となる。なお、図4では、原料チャンバからのNの流量を体積流量で示しているが、体積流量と質量流量とは相互に変換できる。
【0048】
<成長工程>
成長工程では、原料チャンバ100でIII族元素酸化物ガスを生成し育成チャンバ111へ供給するとともに、窒素元素含有ガスを育成チャンバ111へ供給し、種基板116上でIII族窒化物結晶の生成を行う。具体的には、成長工程は、反応性ガス供給工程、III族元素酸化物ガス生成工程、III族元素酸化物ガス供給工程、窒素元素含有ガス供給工程、III族窒化物結晶生成工程、及び残留ガス排出工程を有する。
【0049】
<反応性ガス供給工程>
反応性ガス供給工程では、反応性ガス供給管103から反応性ガスを原料チャンバ100内の原料反応室101へ供給する。上述の通り、反応性ガスは、必要に応じて還元性ガス又は酸化性ガスを用いることができる。本実施形態では、III族元素源105として金属Gaを用いているため、反応性ガスとしてHOガスを用いる。
【0050】
<III族元素酸化物ガス供給工程>
III族元素酸化物ガス生成工程では、反応性ガス供給工程で原料反応室101へ供給された反応性ガスが、出発III族元素源105であるGaと反応し、III族元素酸化物ガスであるGaOガスを生成する。生成されたGaOガスはIII族元素酸化物ガス排出口107を経由し、原料反応室101から原料チャンバ100に排出される。排出されたGaOガスは第一搬送ガス供給口102から原料チャンバへと供給される第1搬送ガスと混合され、ガス排出口108へと供給される。
【0051】
本実施形態では、第1ヒータ106によって原料チャンバ100を加熱する。原料チャンバ100を加熱する場合、原料チャンバ100の温度を、GaOガスの沸点の観点から800℃以上とすることが好ましい。また、原料チャンバ100の温度を、育成チャンバ111よりも低温とすることが好ましい。後述のように第2ヒータ115によって育成チャンバを加熱する場合には、原料チャンバ100の温度を、例えば、1800℃未満とすることが好ましい。
【0052】
出発III族元素源105は、原料反応室101内に配置された原料ボート104内に載置されている。原料ボート104は、反応性ガスと出発III族元素源との接触面積を大きくできる形状であることが好ましい。例えば、出発III族元素源105と反応性ガスとが非接触の状態で原料反応室101を通過することを防ぐために、原料ボート104は多段の皿形状であることが好ましい。
【0053】
なお、III族元素酸化物ガスを生成する方法には、大別して、出発III族元素源105を還元する方法と、出発III族元素源105を酸化する方法とがある。例えば、還元する方法においては、出発III族元素源105として酸化物(例えばGa)、反応性ガスとして還元性ガス(例えばHガス、COガス、CHガス、Cガス、HSガス、SOガス)を用いる。一方、酸化する方法においては、出発III族元素源105として非酸化物(例えば液体Ga)、反応性ガスとしては酸化性ガス(例えばHOガス、Oガス、COガス、COガス、NOガス、NOガス、NOガス)を用いる。また、出発III族元素源105としてのGa源の他に、In源、Al源を出発III族元素として採用できる。第一搬送ガスとしては、不活性ガス、Hガス等を用いることができる。
【0054】
III族元素酸化物ガス供給工程では、III族元素酸化物ガス生成工程で生成されたGaOガスを、ガス排出口108、接続管109、ガス供給口118を経由し育成チャンバ111へと供給する。原料チャンバ100と育成チャンバ111とを接続する接続管109の温度が、原料チャンバ100の温度より低下すると、III族元素酸化物ガスを生成する反応の逆反応が生じ、出発III族元素源105が接続管109内で析出する。したがって、接続管109は、第3ヒータ110によって、原料チャンバ100の温度より低下しないよう第1ヒータ106より高温に加熱されることが好ましい。
【0055】
<窒素元素含有ガス供給工程>
窒素元素含有ガス供給工程では、窒素元素含有ガスを窒素元素含有ガス供給口113から育成チャンバ111に供給する。窒素元素含有ガスの例は、NHガス、NOガス、NOガス、NOガス、Nガス、Nガスを含む。
【0056】
<III族窒化物結晶生成工程>
III族窒化物結晶生成工程では、各供給工程を経て、育成チャンバ内へと供給された原料ガスを反応させ、III族窒化物結晶を種基板116上に成長させる。育成チャンバ111は第2ヒータ115により、III族元素酸化物ガスと窒素元素含有ガスとが反応する温度まで高温化されることが好ましい。この際、育成チャンバ111の温度は、III族元素酸化物ガスを生成する反応の逆反応が生じないようにするため、原料チャンバ100の温度より低下しないよう、育成チャンバ111の温度を制御することが好ましい。第2ヒータ115によって加熱される育成チャンバ111の温度は、1000℃以上1800℃以下であることが好ましい。また、原料チャンバ100で生成されたGaOガス、及び第1搬送ガスによる育成チャンバ111の温度変動を抑制する理由から、第2ヒータ115と第3ヒータ110との温度は同じとすることが望ましい。
【0057】
III族元素酸化物供給工程を経て、育成チャンバ111へと供給されたIII族元素酸化物ガスと、窒素元素含有ガス供給工程を経て、育成チャンバ111へと供給される窒素元素含有ガスと、を種基板116より上流で混合することによって、種基板116上でIII族窒化物結晶の成長を行うことができる。第2搬送ガスとしては、不活性ガス、又はHガス等を用いることができる。
【0058】
なお、成長工程に含まれる、反応性ガス供給工程、III族元素酸化物ガス生成工程、III族元素酸化物ガス供給工程、窒素元素含有ガス供給工程、III族窒化物結晶生成工程、及び残留ガス排出工程は、同時に行われていてよい。
【0059】
<残留ガス排出工程>
残留ガス排出工程では、未反応のIII族元素酸化物ガス及び窒素元素含有ガス、並びに第1搬送ガス、第2搬送ガス、及び第3搬送ガスが排気口119から排出される。
【0060】
<分解保護降温工程>
分解保護降温工程では、窒素元素含有ガス雰囲気で、III族窒化物結晶の分解を抑制しながら降温を行う。OVPE法によるIII族窒化物結晶の製造において、500℃以下まで、不活性ガスと窒素元素含有ガスNHガスとを混合した状態で冷却を行う。
【0061】
<降温工程>
降温工程では、不活性ガス雰囲気で、III族窒化物結晶の育成チャンバからの取出しが可能な温度まで降温を行う。
【0062】
<取出し工程>
本実施形態では、降温工程を経て、III族窒化物結晶が成長した種基板116を育成チャンバ111から取出す。
【実施例
【0063】
図2に示す成長炉を用いて、分解保護昇温工程までの実験を行った。ここでは、III族窒化物結晶としてGaNを成長させる場合を想定した。出発III族元素源として、液体Gaを用い、窒素元素含有ガスとしては、NHガスを用いた。第1搬送ガス及び第2搬送ガスとして、Hガス及びNガスの混合物を用いた。また分解保護昇温工程までの時間は85分で検証を行った。種基板としてGaN基板を用いた。
【0064】
Ga蒸気の拡散によるGaドロップレット起点の多結晶やピットの発生は、表面フォトルミネッセンス(PL)像観察、又は原子間力顕微鏡(AFM)観察によって評価した。NHガスの逆流による原料ボート内金属Ga上のGaNの発生は目視で確認した。
【0065】
(実施例1)
分解保護昇温工程の条件として、基板温度を500℃から1050℃、原料温度を500℃から900℃まで加熱した。原料チャンバに供給するNガス流量を0.25L/min、NHガスの流量を10L/min、その他のNガス流量を35L/minとした。所望の温度まで昇温させ降温後の基板を評価した結果、結晶表面のGaドロップレット起点の多結晶やピット発生は確認されなかった。また、原料ボート内金属Ga上のGaNの発生は確認されなかった。
【0066】
(比較例1)
分解保護昇温工程の条件として、基板温度を500℃から1050℃、原料温度を500℃から900℃まで加熱した。原料チャンバに供給するNガス流量を2L/min、NHガスの流量を10L/min、その他のNガス流量を29L/minとした。所望の温度まで昇温させ降温後の基板を評価した結果、結晶表面のGaドロップレット起点の多結晶やピット発生が確認された。また、原料ボート内金属Ga上のGaNの発生は確認されなかった。
【0067】
(比較例2)
分解保護昇温工程の条件として、基板温度を500℃から1050℃、原料温度を500℃から900℃まで加熱した。原料チャンバに供給するNガス流量を0.01L/min未満、NHガスの流量を15L/min、その他のNガス流量を75L/minとした。所望の温度まで昇温させ降温後の基板を評価した結果、結晶表面のGaドロップレット起点の多結晶やピット発生が確認されなかった。また、原料ボート内金属Ga上のGaNの発生が確認された。
【0068】
(実施例と比較例のまとめ)
図4に実施例及び比較例の評価結果を示す。<III族窒化物結晶の製造方法及び製造装置の詳細>で説明した原料チャンバ内に供給することのできるN流量の上限値と下限値も同時に示している。実施例1は所望の領域に入っているため、Ga蒸気の拡散抑制とNHガスの逆流抑制とを同時に満たしており、種基板上でのGaドロップレット起点の多結晶やピットの発生は確認されず、さらに原料ボート内金属Ga上でのGaNの発生も確認されなかった。
【0069】
一方で、比較例1の場合、NHの逆流抑制の下限値を超えているため、原料ボート内金属Ga上のGaNの発生は確認されなかったが、種基板上へのGa蒸気拡散抑制の上限値を超えてしまったため、種基板上でのGaドロップレット起点の多結晶やピットの発生が確認された。
比較例2の場合、種基板上へのGa蒸気拡散抑制の上限値を超えなかったため、種基板上でのGaドロップレット起点の多結晶やピットの発生は確認されなかったが、NHの逆流抑制の下限値を下回ったため、原料ボート内金属Ga上のGaNの発生が確認された。
【0070】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0071】
100 原料チャンバ
101 原料反応室
102 第1搬送ガス供給口
103 反応性ガス供給管
104 原料ボート
105 出発III族元素源
106 第1ヒータ
107 III族元素酸化物ガス排出口
108 ガス排出口
109 接続管
110 第3ヒータ
111 育成チャンバ
112 第3搬送ガス供給口
113 窒素元素含有ガス供給口
114 第2搬送ガス供給口
115 第2ヒータ
116 種基板
117 基板サセプタ
118 ガス供給口
119 排気口
図1
図2
図3
図4