(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】セルおよびセル部材
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20250408BHJP
【FI】
G01N35/02 A
(21)【出願番号】P 2021188876
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西山 正洋
(72)【発明者】
【氏名】高木 亮二
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰宏
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-101381(JP,A)
【文献】特開平08-043400(JP,A)
【文献】特開2004-061160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体または試薬を貯留する複数のセルを装着可能な移動体と、前記移動体を往復運動させる駆動機構と、前記複数のセルの少なくとも一つに検査光を出射する発光部と、前記セルを透過した検査光を受光する受光部とを備える測定装置が備える前記移動体に装着可能なセルであって、
前記検体または前記試薬を受け入れる開口部と、
前記開口部と反対側に位置する底部と、
前記開口部と前記底部との間に設けられる複数の側壁とを備え、
前記複数の側壁は、前記発光部から前記受光部への検査光の透過方向において互いに対向する一対の第1側壁と、前記透過方向とは異なる方向において互いに対向する一対の第2側壁とを含み、
前記一対の第2側壁と前記底部との境界部分は丸みを帯びており、
前記複数の側壁の少なくとも一つは、前記一対の第1側壁間の距離又は前記一対の第2側壁間の距離を変化させる段差を有しており、
前記一対の第1側壁のうち一方は前記発光部に面する第1面を有し、且つ他方は前記受光部に面する第2面を有し、
前記段差は、前記一対の第1側壁のいずれかに設けられ、前記段差にて、前記第1面又は前記第2面より前記透過方向に突出する突出部を形成しており、
前記突出部における前記一対の第1側壁間の距離を、前記突出部外における前記一対の第1側壁間の距離よりも大きくしており、
前記段差は、前記開口部から前記底部への方向に延びて、前記突出部を前記開口部から前記底部に至るまで形成しており、
前記段差は、前記突出部を挟んで、前記透過方向とは異なる方向において互いに対向するように一対設けられてい
るセル。
【請求項2】
検体または試薬を貯留する複数のセルを装着可能な移動体と、前記移動体を往復運動させる駆動機構と、前記複数のセルの少なくとも一つに検査光を出射する発光部と、前記セルを透過した検査光を受光する受光部とを備える測定装置が備える前記移動体に装着可能なセルであって、
前記検体または前記試薬を受け入れる開口部と、
前記開口部と反対側に位置する底部と、
前記開口部と前記底部との間に設けられる複数の側壁とを備え、
前記複数の側壁は、前記発光部から前記受光部への検査光の透過方向において互いに対向する一対の第1側壁と、前記透過方向とは異なる方向において互いに対向する一対の第2側壁とを含み、
前記一対の第2側壁と前記底部との境界部分は丸みを帯びており、
前記複数の側壁の少なくとも一つは、前記一対の第1側壁間の距離又は前記一対の第2側壁間の距離を変化させる段差を有しており、
前記段差は、前記一対の第2側壁の少なくとも一つに設けられ、
前記段差から前記開口部側の前記一対の第2側壁間の距離を、前記段差から前記底部側の前記一対の第2側壁間の距離よりも大きくしてい
るセル。
【請求項3】
検体または試薬を貯留する複数のセルを装着可能な移動体と、前記移動体を往復運動させる駆動機構と、前記複数のセルの少なくとも一つに検査光を出射する発光部と、前記セルを透過した検査光を受光する受光部とを備える測定装置が備える前記移動体に装着可能なセルであって、
前記検体または前記試薬を受け入れる開口部と、
前記開口部と反対側に位置する底部と、
前記開口部と前記底部との間に設けられる複数の側壁とを備え、
前記複数の側壁は、前記発光部から前記受光部への検査光の透過方向において互いに対向する一対の第1側壁と、前記透過方向とは異なる方向において互いに対向する一対の第2側壁とを含み、
前記一対の第2側壁と前記底部との境界部分は丸みを帯びており、
前記複数の側壁の少なくとも一つは、前記一対の第1側壁間の距離又は前記一対の第2側壁間の距離を変化させる段差を有しており、
前記段差は、一対設けられ、各段差が前記一対の第2側壁のそれぞれに設けられており、
前記一対の第2側壁の前記段差から前記開口部側の前記一対の第2側壁間の距離を、前記段差から前記底部側の前記一対の第2側壁間の距離よりも大きくしてい
るセル。
【請求項4】
前記底部は、全体に丸みを帯びている請求項1から
3のいずれか1項に記載のセル。
【請求項5】
請求項1から
3のいずれか1項に記載されたセルの集合体であって、
複数の前記セルが一体形成されている、セル部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の物質の濃度を光学的に測定する測定装置において使用されるセルおよびセル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
検体に含まれる特定の物質の濃度を光学的な手法により測定する装置が知られている。例えば、特許文献1には、土壌の減衰スペクトルに基づいて硝酸性窒素濃度を判定する硝酸性窒素測定システムが開示されている。当該硝酸性窒素測定システムは、土壌と抽出溶媒との混合物を含むように構成されるサンプルチャンバー(セル)を備える。サンプルチャンバーは、光源からの光が土壌と抽出溶媒との混合物を通って検出器まで伝搬するように、光源と検出器との間で光学的に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様は、従来よりも測定に適したセルおよびセル部材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセルは、検体または試薬を貯留する複数のセルを装着可能な移動体と、前記移動体を往復運動させる駆動機構と、前記複数のセルの少なくとも一つに検査光を出射する発光部と、前記セルを透過した検査光を受光する受光部とを備える測定装置が備える前記移動体に装着可能なセルであって、前記検体または前記試薬を受け入れる開口部と、前記開口部と反対側に位置する底部と、前記開口部と前記底部との間に設けられる複数の側壁とを備え、前記複数の側壁は、前記発光部から前記受光部への検査光の透過方向において互いに対向する一対の第1側壁と、前記透過方向とは異なる方向において互いに対向する一対の第2側壁とを含み、前記一対の第2側壁と前記底部との境界部分は丸みを帯びており、前記複数の側壁の少なくとも一つは、前記一対の第1側壁間の距離又は前記一対の第2側壁間の距離を変化させる段差を有してお
り、前記一対の第1側壁のうち一方は前記発光部に面する第1面を有し、且つ他方は前記受光部に面する第2面を有し、前記段差は、前記一対の第1側壁のいずれかに設けられ、前記段差にて、前記第1面又は前記第2面より前記透過方向に突出する突出部を形成しており、前記突出部における前記一対の第1側壁間の距離を、前記突出部外における前記一対の第1側壁間の距離よりも大きくしており、前記段差は、前記開口部から前記底部への方向に延びて、前記突出部を前記開口部から前記底部に至るまで形成しており、前記段差は、前記突出部を挟んで、前記透過方向とは異なる方向において互いに対向するように一対設けられている。前記底部は、全体に丸みを帯びている。また、本発明の一態様に係るセル部材は、前記セルの集合体であって、複数の前記セルが一体形成されている。
【0006】
また、本発明の一態様に係るセルは、検体または試薬を貯留する複数のセルを装着可能な移動体と、前記移動体を往復運動させる駆動機構と、前記複数のセルの少なくとも一つに検査光を出射する発光部と、前記セルを透過した検査光を受光する受光部とを備える測定装置が備える前記移動体に装着可能なセルであって、前記検体または前記試薬を受け入れる開口部と、前記開口部と反対側に位置する底部と、前記開口部と前記底部との間に設けられる複数の側壁とを備え、前記複数の側壁は、前記発光部から前記受光部への検査光の透過方向において互いに対向する一対の第1側壁と、前記透過方向とは異なる方向において互いに対向する一対の第2側壁とを含み、前記一対の第2側壁と前記底部との境界部分は丸みを帯びており、前記複数の側壁の少なくとも一つは、前記一対の第1側壁間の距離又は前記一対の第2側壁間の距離を変化させる段差を有しており、前記段差が、前記一対の第2側壁の少なくとも一つに設けられ、前記段差から前記開口部側の前記一対の第2側壁間の距離を、前記段差から前記底部側の前記一対の第2側壁間の距離よりも大きくしている。前記底部は、全体に丸みを帯びている。また、本発明の一態様に係るセル部材は、前記セルの集合体であって、複数の前記セルが一体形成されている。
【0007】
また、本発明の一態様に係るセルは、検体または試薬を貯留する複数のセルを装着可能な移動体と、前記移動体を往復運動させる駆動機構と、前記複数のセルの少なくとも一つに検査光を出射する発光部と、前記セルを透過した検査光を受光する受光部とを備える測定装置が備える前記移動体に装着可能なセルであって、前記検体または前記試薬を受け入れる開口部と、前記開口部と反対側に位置する底部と、前記開口部と前記底部との間に設けられる複数の側壁とを備え、前記複数の側壁は、前記発光部から前記受光部への検査光の透過方向において互いに対向する一対の第1側壁と、前記透過方向とは異なる方向において互いに対向する一対の第2側壁とを含み、前記一対の第2側壁と前記底部との境界部分は丸みを帯びており、前記複数の側壁の少なくとも一つは、前記一対の第1側壁間の距離又は前記一対の第2側壁間の距離を変化させる段差を有しており、前記段差は、一対設けられ、各段差が前記一対の第2側壁のそれぞれに設けられており、前記一対の第2側壁の前記段差から前記開口部側の前記一対の第2側壁間の距離を、前記段差から前記底部側の前記一対の第2側壁間の距離よりも大きくしている。前記底部は、全体に丸みを帯びている。また、本発明の一態様に係るセル部材は、前記セルの集合体であって、複数の前記セルが一体形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、従来よりも測定に適したセルおよびセル部材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態1に係る測定装置が備えるターンテーブルの平面図である。
【
図7】試薬を溶解させる容器の形状を示す斜視図である。
【
図9】実施形態1に係る測定装置の、ターンテーブルを取り外した状態の斜視図である。
【
図10】実施形態1に係る測定装置におけるアーム、チューブおよびノズルの斜視図である。
【
図11】本体の内部における貯留部、洗浄部および溶媒供給部の構成について説明するための図である。
【
図13】実施形態1に係る測定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態2に係るセルを装着した状態の測定装置の部分拡大図である。
【
図15】実施形態2に係るセルの形状の例を示す図である。
【
図16】実施形態2に係るセルの形状の例を示す図である。
【
図17】実施形態3に係るセルを装着した状態の測定装置の部分拡大図である。
【
図18】実施形態3に係るセルの形状の例を示す図である。
【
図19】実施形態3に係るセルの形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
(測定装置1の構成)
図1は、測定装置1の平面図である。
図2は、測定装置1が備えるターンテーブル3の平面図である。測定装置1は、検体中の物質の濃度を光学的に測定する測定装置であり、例えば土壌抽出液の成分を測定する測定装置である。
図1および
図2に示すように、測定装置1は、本体2、本体2に対して回転駆動するターンテーブル(移動体)3、ターンテーブル3に配置された複数のセル4aおよび複数のセル5aの少なくとも1つに液体(検体または試薬)を注入するノズル13、を備えている。
【0012】
複数のセル4a・5aは、検体または試薬を貯留するセルである。ターンテーブル3には複数のセル4a・5aを装着可能である。換言すれば、複数のセル4a・5aは、ターンテーブル3に装着可能である。具体的には、複数のセル4a・5aは、円形のターンテーブル3の外縁に沿って位置している。すなわち、複数のセル4a・5aは、仮想的な円またはその一部に沿って配置されている。
【0013】
図3は、セル部材4の形状を示す斜視図である。セル部材4は、複数のセル4aの集合体である。
図3に示すように、セル部材4は、複数のセル4aと、それらのセル4aを連結させる連結部4bとを備えている。連結部4bは、セル4aが上記の仮想的な円に沿って配置可能なように、セル4aの縁の部分を互いに連結させる。換言すれば、連結部4bは、仮想的な円に沿う形状を有し、かつ複数の開口部が形成されている板状の部材であり、それぞれの開口部とセル4aの開口部とが一致するように連結部4bとセル4aとが連結されている。セル部材4は、樹脂成型品として一体形成されてもよい。複数のセル4aを個別のセルとして形成してもよいが、セル部材4として一体に形成することにより、ターンテーブル3に対する複数のセル4aの取り外しが効率的になる。
図1に示す例では、10個のセル4aを備える5個のセル部材4がターンテーブル3に配置されている。ただし、各セル部材4が備えるセル4aの個数、およびターンテーブル3に配置されるセル部材4の個数は、
図1に示すものに限定されない。
【0014】
図4は、セル4aの具体的な形状の例を示す図である。
図4において、符号401はセル4aの上面図であり、符号402は、ターンテーブル3に装着されたセル4aをターンテーブル3の中心から見た場合の側面図である。
図4に示すように、セル4aは、互いに対向する2つの側壁41aと、側壁41aよりも幅広の、互いに対向する2つの側壁41eと、側壁41aおよび側壁41eに対する底部41bとを備える。底部41bは凸形状を有している。底部41bが有する凸形状の先端には、平坦面41dが形成されている。このため、セル4aを台に載置する場合に安定的に載置できる。
【0015】
ターンテーブル3に装着されたセル4aをターンテーブル3の中心から見たときの、底部41bにおける側壁41aとの境界部分、すなわち、側壁41aと平坦面41dとの間の部分を境界部分41cと称する。境界部分41cは、丸みを帯びている。換言すれば、セル4aの4つの側壁41a・41eのうち、面積が小さい方の2つの側壁41aと、平坦面41dとの間には、丸みを帯びた境界部分41cが位置している。
【0016】
また、セル4aにおいて、側壁41eを当該側壁41eに垂直な方向から平面視したときの平面図に投影される平坦面41dの長さは特に限定されないが、例えば側壁41a間の距離の50%以下の範囲で任意に決定できる。また、側壁41eを当該側壁41eに垂直な方向から平面視したときの境界部分41cの曲率は、0.5rad/m以下であることが好ましい。
【0017】
図5は、セル部材5の形状を示す斜視図である。セル部材5は、複数のセル5aの集合体である。
図5に示すように、セル部材5は、複数のセル5aと、それらのセル5aを連結させる連結部5bとを備えている。連結部5bは、セル5aが上記の仮想的な円に沿って配置可能なように、セル5aの縁の部分を互いに連結させる。換言すれば、連結部5bは、仮想的な円に沿う形状を有し、かつ複数の開口部が形成されている板状の部材であり、それぞれの開口部とセル5aの開口部とが一致するように連結部5bとセル5aとが連結されている。セル部材5は、樹脂成型品として一体形成されてもよい。複数のセル5aをセル部材5として一体に形成することにより、ターンテーブル3に対する複数のセル5aの取り外しが効率的になる。セル部材5についても、複数のセル5aを個別のセルとして形成してもよい。また、各セル部材5が備えるセル5aの個数およびターンテーブル3に配置されるセル部材5の個数は、
図1に示すものに限定されない。
【0018】
図6は、セル5aの具体的な形状の例を示す図である。
図6において、符号601はセル5aの上面図であり、符号602は、ターンテーブル3に装着されたセル5aをターンテーブル3の中心から見た場合の側面図である。
図6に示すように、セル5aは、互いに対向する2つの側壁51aと、側壁51aよりも幅広の、互いに対向する2つの側壁51eと、側壁51aおよび側壁51eに対する底部51bとを備える。底部51bは凸形状を有している。底部51bが有する凸形状の先端には、平坦面51dが形成されている。このため、セル5aを台に載置する場合に安定的に載置できる。
【0019】
ターンテーブル3に装着されたセル5aをターンテーブル3の中心から見たときの、底部51bにおける側壁51aとの境界部分、すなわち、側壁51aと平坦面51dとの間の部分を境界部分51cと称する。境界部分51cは、丸みを帯びている。換言すれば、セル5aの4つの側壁51a・51eのうち、面積が小さい方の2つの側壁51aと、平坦面51dとの間には、丸みを帯びた境界部分51cが位置している。
【0020】
側壁51eを当該側壁51eに垂直な方向から平面視したときの平面図に投影される平坦面51dの長さは特に限定されないが、例えば側壁51a間の距離の50%以下の範囲で任意に決定できる。また、側壁51eを当該側壁51eに垂直な方向から平面視したときの境界部分51cの曲率は、0.25rad/m以下であることが好ましい。
【0021】
一般的な成分の測定では、後述するように粉体を溶媒に溶解させた液体の試薬を使用する。しかし、測定する成分によっては試薬を溶媒に溶解させず、粉末の状態で使用する場合がある。セル5aは、粉末状の試薬を使用して測定することが可能なセルである。セル5aにはユーザによって粉末状の試薬が予め投入される。試薬の投入のしやすさおよび試薬の濃度のばらつきを低減することを考慮して、セル5aはセル4aよりも大きく形成されている。
【0022】
ノズル13は、セル4a・5aの少なくとも1つに液体を注入する。ノズル13は、ノズル13を移動させる移動機構としてのアーム11によって支持されている。ノズル13は消耗品であってよく、必要に応じて交換されてよい。
【0023】
図2に示すように、ターンテーブル3は、複数のセル部材4・5を配置可能な凹部または開口部を備えている。
図2に示す例では、ターンテーブル3は、セル部材4を配置可能な開口部3a、およびセル部材5を配置可能な開口部3bを備える。セル部材4・5は消耗品であってよく、例えば測定ごとに交換される。そのため、セル部材4・5を、測定装置1の構成要素として捉えなくてもよい。
【0024】
また、測定装置1は、複数のセル4a・5aとは大きさが異なる複数のセル6a(区画)を備える容器6をさらに備える。容器6は、試薬を溶解させる容器である。複数のセル4a・5aに注入するために十分な量の試薬を調整するため、セル6aは、セル4a・5aよりも大きい。ターンテーブル3は、容器6を配置可能な開口部3cを備える。
図2に示す例では、開口部3a・3bの径方向外側の外縁部によって規定される仮想的な円に開口部3cの外縁部が沿うように開口部3cが備えられている。開口部3cの径方向外側の外縁部は、前記仮想的な円と一致する必要はなく、前記仮想的な円の内側に位置していればよい。
【0025】
図7は、容器6の形状を示す斜視図である。容器6は、複数のセル6aの集合体である。容器6には、ターンテーブル3の径方向に沿って複数のセル6aが設けられている。また、容器6は、複数のセル6aを連結させる連結部6bを備える。連結部6bは、セル6aが上記の仮想的な円に沿って配置可能なように、セル6aの縁の部分を互いに連結させる。換言すれば、連結部6bは、仮想的な円に沿う形状を有し、かつ複数の開口部を有する板状の部材であり、それぞれの開口部とセル6aの開口部とが一致するように連結部6bとセル6aとが連結されている。容器6は、樹脂成型品として一体形成されてもよい。複数のセル6aを容器6として一体に形成することにより、ターンテーブル3に対する複数のセル6aの取り外しが効率的になる。
【0026】
図7に示す例では、容器6には、ターンテーブル3の径方向に沿って2つのセル6aが設けられている。ターンテーブル3の径方向に複数のセル6aを設けているのは、試薬の溶解を効率的に行うためである。この詳細については後述する。また、容器6には、ターンテーブル3の周方向に沿って3つのセル6aのペアが設けられている。したがって、容器6全体では6つのセル6aが設けられている。容器6には、測定装置1による測定で使用される試薬の数以上のセル6aが設けられていればよい。それぞれのセル6aには、ユーザによって測定前に試薬が粉末の状態で投入されてよい。測定時には、測定装置1は、粉末状の試薬を溶媒(希釈液)により溶解させて測定に用いる。容器6は、セル部材4・5等と同様に消耗品であってよく、必要に応じて交換されてよい。そのため、容器6を、測定装置1の構成要素として捉えなくてもよい。
【0027】
図8は、セル6aの具体的な形状の例を示す図である。
図8において、符号801はセル6aの上面図であり、符号802は、ターンテーブル3に装着されたセル6aをターンテーブル3の中心から見た場合の側面図である。
図8に示すように、セル6aは、互いに対向する2つの側壁61aと、側壁61aよりも幅広の、互いに対向する2つの側壁61eと、側壁61aおよび側壁61eに対する底部61bとを備える。底部61bは凸形状を有している。底部61bが有する凸形状の先端には、平坦面61dが形成されている。このため、セル6aを台に載置する場合に安定的に載置できる。
【0028】
ターンテーブル3に装着されたセル6aをターンテーブル3の中心から見たときの、底部61bにおける側壁61aとの境界部分、すなわち、側壁61aと平坦面61dとの間の部分を境界部分61cと称する。境界部分61cは、丸みを帯びている。換言すれば、セル6aの4つの側壁61a・61eのうち、面積が小さい方の2つの側壁61aと、平坦面61dとの間には、丸みを帯びた境界部分61cが位置している。
【0029】
側壁61eを当該側壁61eに垂直な方向から平面視した時の平面図に投影される平坦面61dの長さは特に限定されないが、例えば側壁61a間の距離の50%以下の範囲で任意に決定できる。また、側壁61eを当該側壁61eに垂直な方向から平面視した時の境界部分61cの曲率は、0.25rad/m以下であることが好ましい。
【0030】
また、測定装置1は、検体を貯留する複数の検体貯留部7をさらに備える。ターンテーブル3は、複数の検体貯留部7を、ターンテーブル3の外縁によって規定される仮想的な円の同心円またはその一部に沿って配置可能な凹部3dを備える。凹部3dは、ターンテーブル3における開口部3a・3bの内側に位置する。すなわち、測定装置1においては、複数の検体貯留部7が形成する円の外側にセル4a・5aが配置されている。検体貯留部7は消耗品であってよく、測定装置1の構成要素として捉えなくてもよい。
【0031】
図9は、測定装置1の、ターンテーブル3を取り外した状態の斜視図である。
図9には、本体2の内部の構成が表れている。
図9に示すように、測定装置1は、回転機構15、駆動機構16、ポンプ17、および気体噴出部18をさらに備える。
図9においては、本体2の内部の部材(駆動機構16、ポンプ17、発光部21および受光部22)を支持する部材については省略している。
【0032】
回転機構15は、ターンテーブル3を往復運動させる機構である。具体的には、回転機構15は、ターンテーブル3を往復回転運動させる。往復回転運動とは、第一の方向への回転運動と、第二の方向への回転運動とを、交互に複数回繰り返す運動である。また、回転機構15は、任意のセル4a・5a・6aが円弧C上に位置するようにターンテーブル3を回転させる。
【0033】
ノズル13は、チューブ12を介して、本体2の内部に格納されたポンプ17と連通している。ポンプ17は、ノズル13内の流体の吸引および排出を行う。ポンプ17は、例えばシリンジポンプである。ノズル13を支持するアーム11は、本体2の内部に格納された駆動機構16により回動する。その結果、ノズル13の先端は、
図1に示した円弧Cを描くように移動する。また、駆動機構16は、アーム11を上下方向に移動させる。その結果、ノズル13の先端も上下方向に移動する。
【0034】
円弧Cは、ターンテーブル3上の、複数のセル4a・5aおよびセル6aによって規定される仮想的な円、および複数の検体貯留部7によって規定される仮想的な円と交差している。仮想的な円の中心は、ターンテーブル3の回転駆動の中心と一致している。このため、ターンテーブル3の回転とアーム11の回動および上下移動とを組み合わせることで、ノズル13は、任意のセル4a・5a・6a、および検体貯留部7に対して液体の吸引または吐出を行うことができる。
【0035】
また、測定装置1は、セル4a・5aに貯留された検体の測定を行うための光学系20として、本体2の内部に発光部21と受光部22とを備える。光学系20の具体的な構成については後述する。
【0036】
図10は、測定装置1におけるアーム11、チューブ12およびノズル13の斜視図である。
図10に示すように、アーム11の先端には、チューブ12およびノズル13が接続される接続部11aが設けられている。接続部11aの内部には、チューブ12とノズル13とを連通させる通路が設けられている。このため、ノズル13による検体または試薬の吸引および吐出を、ポンプ17の動作により行うことができる。
【0037】
さらに、本体2には、ノズル13に供給される液体を貯留する液体貯留部8、ノズル13の内側の洗浄を行う洗浄部9および洗浄部10が設けられている。洗浄部10は、ノズル13から排出された液体を受け入れる受液部として機能するとともにノズル13の外側の洗浄を行う。液体貯留部8に貯留される液体は、例えば試薬の溶解および液化に使用される溶媒である。洗浄部9および洗浄部10は、溶媒と同じ種類の液体を用いてノズル13を洗浄する。液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10は、アーム11によってノズル13が移動している状態の測定装置1を平面視した場合に、ノズル13の先端が描く円弧Cの一部と重なる位置に配置されている。このため、アーム11によってノズル13を、液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10のそれぞれの直上に移動させ、溶媒の吸引およびノズル13の洗浄を行うことができる。また、本体2には、洗浄部10においてノズル13の外部を洗浄するために用いる溶媒を供給する溶媒供給部14が設けられている。
【0038】
測定装置1は、ノズル13から排出された液体を受け入れる受液部を、洗浄部10とは別に備えていてもよい。この場合には、当該受液部についても、円弧Cの一部と重なる位置に配置される。また、測定装置1は、必ずしも液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10の全てを備えている必要はなく、これらのうちの少なくとも1つを備えていればよい。
【0039】
液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10は、ターンテーブル3の外側に設けられている。このため、アーム11は、ターンテーブル3の回転とは無関係に、液体貯留部8、洗浄部9および洗浄部10のそれぞれの直上にノズル13を移動させ、溶媒の吸引およびノズル13の洗浄を行うことができる。
【0040】
(本体2の内部の構成)
図11は、本体2の内部における液体貯留部8、洗浄部9、洗浄部10および溶媒供給部14の構成について説明するための図である。ただし、
図11における液体貯留部8、洗浄部9、洗浄部10および溶媒供給部14の位置関係は、概念的に示されており、
図1に示す測定装置1におけるそれらの位置関係とは一致しない。
【0041】
図11に示すように、液体貯留部8には、試薬の溶解および液化に用いるためにノズル13により吸引される溶媒が貯留されている。洗浄部9には、ノズル13の内側を洗浄するための溶媒が貯留されている。
【0042】
また、洗浄部10の下方には、溶媒供給部14と連通している洗浄用ノズル14aが配置されている。洗浄部10に挿入されたノズル13に対して、溶媒供給部14から供給された溶媒を図示しないポンプにより吸引して洗浄用ノズル14aから吹き付けることで、ノズル13の外側の洗浄を行うことができる。
図9および
図11においては簡単のため、洗浄用ノズル14aを1つのみ示している。しかし、測定装置1は、互いに異なる複数の方向からノズル13に洗浄用の溶媒を吹き付ける、複数の洗浄用ノズル14aを備えていてもよい。
【0043】
また、洗浄部10の下方には、洗浄部10に挿入されたノズル13に対して気体18aを吹き付けることにより、ノズル13の液滴13aを除去する気体噴出部18が配置されている。さらに、気体噴出部18の下方には、ノズル13から排出される液体および落下する液滴13aを収容する容器19が配置されている。
【0044】
(光学系20の構成)
図12は、光学系20の構成を示す図である。上述したとおり、測定装置1は、光学系20として発光部21と受光部22とを備える。発光部21は、セル4a・5aの少なくとも1つに検査光23を出射する。発光部21は例えばLED(Light Emitting Diode)である。受光部22は、セル4a・5aを透過した検査光23を受光する。受光部22は例えばフォトダイオードである。測定装置1は、発光部21から出射される検査光23の強度と、受光部22が受光する検査光23の強度とを用いて吸光分析を行う。ただし、発光部21および受光部22はこれらに限られない。
【0045】
セル部材4は、ターンテーブル3の外縁側に位置する外側面4cを有する。ターンテーブル3には、外側面4cがターンテーブル3の外縁に沿って揃うように、複数のセル4aを配置可能である。セル部材5および容器6も同様に、ターンテーブル3の外縁側に位置する外側面を有し、かつ当該外側面がターンテーブル3の外縁に沿って揃うように配置される。ターンテーブル3の径方向における外側に位置するセル6aについても同様である。
【0046】
図1に示したように、ターンテーブル3の径方向における内側に位置するセル6aは、セル4a・5aよりも中心側に位置する。すなわち、容器6はセル4a・5aよりもターンテーブル3の中心側へ突出している。このため、光学系20において、ターンテーブル3の中心に近い側に配置される構成要素(発光部21)は、ターンテーブル3の回転によって容器6に衝突しないよう、セル4a・5aから離隔して配置されることとなる。
【0047】
測定装置1においては、発光部21がターンテーブル3の中心に近い側に設けられる。検査光23は、ターンテーブル3の中心に近い側から、中心から遠い側に向かう方向に出射される。受光部22は、外側面4cと対向する位置に設けられている。上述のように、セル部材4・5および容器6の外側面がターンテーブル3の外縁に沿って揃うように配置されている。容器6の、ターンテーブル3の径方向の幅は、セル部材4・5の当該幅よりも大きいため、受光部22をターンテーブル3の中心に近い側に配置すると、受光部22とセル4a・5aとの距離が大きくなる。受光部22を外側面と対向する位置に設けることにより、受光部22をターンテーブル3の中心に近い側に設ける場合と比較して、受光部22を、セル4a・5aに近い位置に配置することができる。したがって、セル4a・5aを透過した検査光23のうち、受光部22が受光する光の比率を向上させることができる。さらに、大きさの異なるセル部材4・5および容器6を1つのターンテーブル3に搭載して測定を行うことができるため、従来よりも測定効率を高めることができる。
【0048】
図12においては、セル4a内に攪拌子4dが投入されている。攪拌子4dは、ターンテーブル3の往復回転によりセル4aを揺動させることで検体および試薬を攪拌させる場合に、攪拌の効率を向上させる部材である。攪拌子4dは、例えばセラミックの球体である。測定装置1においては、セル4a内に攪拌子4dが存在している場合であっても、検査光23の光路が攪拌子4dによって遮られないように発光部21と受光部22との位置関係が規定されている。
図12に示す例では、攪拌子4dは、セル4aの底部に位置する。これに対し、発光部21と受光部22との位置関係は、検査光23の光路が攪拌子4dの上側であるように規定されている。このため、セル4a内に攪拌子4dが存在していても測定に支障が生じない。また、セル5a・6a内にも攪拌子が投入されていてもよい。
【0049】
(測定装置1の動作)
図13は、測定装置1の動作の一例を示すフローチャートである。ここで示す測定方法は、あくまで一例に過ぎず、粉末の試薬ではなく液体の試薬を用いてもよい。また、セル4aおよびセル5aのいずれか一方のみを用いてもよい。また、検体と試薬とのどちらを先にセル4aまたはセル5aに注入するのかについても特に限定されない。
図13に示す例では、測定装置1は、まず検体をセル4a・5aに注入する(S1)。次に、測定装置1は、試薬を調整する(S2)。具体的には、測定装置1は、ノズル13により液体貯留部8から溶媒を吸引し、当該溶媒を、粉末の試薬が投入されているセル6aに注入する。さらに測定装置1は、ターンテーブル3の往復回転によりセル6aを揺動させることで攪拌して試薬を溶解させる。
【0050】
上述したとおり、容器6には、ターンテーブル3の径方向に沿って複数のセル6aが設けられている。径方向における外側に設けられたセル6aは、径方向における内側に設けられたセル6aと比較して、ターンテーブル3の回転に伴う移動速度が大きくなる。このため、径方向における外側に設けられたセル6aに、溶媒に溶解しにくい試薬を投入することで、ステップS2において効率良く試薬を攪拌して溶解させることができる。
【0051】
測定装置1は、調整した試薬をセル4aに注入する(S3)。このとき、測定装置1は、試薬を注入されたセル4aを、ターンテーブル3の往復回転により揺動させることで攪拌する。また、ステップS2・S3におけるターンテーブル3の往復回転により、セル5aに注入された検体も、予めセル5aに投入されていた粉末状の試薬と攪拌される。測定装置1は、検体と試薬とが攪拌されたセル4a・5aを、光学系20による測定位置に移動させる(S4)。その状態で、測定装置1は、セル4a・5a内の検体を透過した検査光23の強度を測定する(S5)。
【0052】
一般に、粉末状の試薬を投入されたセルに角部が存在する場合、当該角部に試薬が溜まる可能性がある。セルの角部に溜まった試薬は、セルに溶媒を注入して攪拌したときに、当該溶媒に溶解しにくくなる。
【0053】
これに対し、上述したとおり、セル6aにおいては、側壁61aと底部61bとの境界部分61cが丸みを帯びている。このため、ステップS2においてターンテーブル3を往復回転させたときに、試薬が溶媒に溶解しやすい。また、セル5aにおいては、側壁51aと底部51bとの境界部分51cが丸みを帯びている。このため、ステップS2においてターンテーブル3を往復回転させた時に、試薬が検体に溶解しやすい。すなわち、セル5a・6aにおいては、粉末状の試薬が溶媒または検体に溶解されやすくなっている。したがって、セル5a・6aが上記の形状を有しない場合と比較して、ステップS2において粉末状の試薬が溶媒または検体に十分に溶解しないことに起因して測定精度が低下する可能性を低減し、測定装置1による測定精度を向上させることができる。すなわち、セル5a・6aは、上述の形状を有しないセルと比較して測定に適したセルである。
【0054】
セル4aについても同様に、境界部分41cが丸みを帯びているため、検体と試薬とが攪拌されやすい。このため、検体と試薬とが十分に撹拌されないことに起因して測定精度が低下する可能性を低減し、測定装置1による測定精度を向上させることができる。
【0055】
粉末の試薬を溶解させた後に当該試薬の成分が時間の経過とともに変化すること、または、検体と試薬とを混合した後に混合液の成分が時間の経過とともに変化することがある。また、粉末の試薬が完全に溶解するまでには多少の時間がかかる。そのため、セル6aまたはセル5aにおいて試薬の溶解に要する時間および溶解のタイミングと、調整した試薬をセル4aに注入するタイミングと、セル4a・5bの測定を行うタイミングとを考慮して、測定装置1の動作制御を行うことが好ましい。
【0056】
測定装置1の動作中、ノズル13が検体または試薬の注入動作を行わない待機状態では、ノズル13の先端は洗浄部10の上方に位置している。このため、ノズル13の先端に検体または試薬の液滴13aが付着している場合であっても、当該液滴13aが他の検体または試薬が注入されたセル4a・5a・6a、または検体貯留部7に落下する可能性は小さい。
【0057】
また、測定装置1においては、互いに異なる複数種類の液体をノズル13により吸引および吐出する。複数種類の液体が混合すると、測定の精度が低下する。このため、測定の途中で必要に応じてノズル13を洗浄してもよい。
【0058】
ノズル13を洗浄する場合、まず、測定装置1は、洗浄部10において、ノズル13の内部に残留している液体を容器19(
図11参照)に排出するとともに、ノズル13の外部を洗浄する。次に、測定装置1は、ノズル13により洗浄部9から溶媒を吸引する。測定装置1は、ノズル13を揺動させることでノズル13内の溶媒を攪拌した後、洗浄部10において溶媒を容器19に排出する。その状態で、測定装置1は、液滴13aを気体噴出部18により除去することで、洗浄を終了する。このようにしてノズル13を洗浄することで、液体の混合を防止し、高精度な測定が可能となる。
【0059】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0060】
図14は、実施形態2に係るセル部材34・35を装着した状態の測定装置1の部分拡大図である。
図14においては、セル部材4・5の代わりに、セル部材34・35がターンテーブル3に配置されている。セル部材34は、複数のセル42を備えている。セル部材35は、複数のセル52を備えている。
【0061】
図15は、実施形態2に係るセル42の形状の例を示す図である。
図15において、符号1501はセル42の上面図であり、符号1502はターンテーブル3に装着されたセル42をターンテーブル3の中心から見た場合の側面図である。
図15に示すように、セル42は、互いに対向する側面である第1面42aおよび第2面42bを備える。また、セル42は、検体または試薬を受け入れる開口部42dと、開口部42dと反対側に位置する底部42eとを備える。底部42eは全体に丸みを帯びている。光学系20による測定時、第1面42aは発光部21に面し、第2面42bは受光部22に面する。第2面42bは、第1面42aと第2面42bとの距離が
他の箇所と比較して大きい突出部42cを、開口部42dから底部42eに至るまで有している。
【0062】
図16は、実施形態2に係るセル52の形状の例を示す図である。
図16において、符号1601はセル52の上面図であり、符号1602はターンテーブル3に装着されたセル52をターンテーブル3の中心から見た場合の側面図である。
図16に示すように、セル52は、互いに対向する側面である第1面52aおよび第2面52bを備える。また、セル52は、検体または試薬を受け入れる開口部52dと、開口部52dと反対側に位置する底部52eとを備える。底部52eは全体に丸みを帯びている。光学系20による測定時、第1面52aは発光部21に面し、第2面52bは受光部22に面する。第2面52bは、第1面52aと第2面52bとの距離が他の箇所と比較して大きい突出部52cを、セル52の開口部52dから底部52eに至るまで有している。
【0063】
セル42の測定時には、検査光23は、突出部42cを透過する。セル52の測定時には、検査光23は、突出部52cを透過する。このため、セル42・52の測定時には、検査光23が検体を透過する距離が、突出部42c・52cを有しないセルの測定時と比較して長くなる。検査光23が検体を透過する距離が長い程、検査光23が検体を透過するときの検査光23の強度の変化量が大きくなる。換言すれば、外乱が検査光23に与える影響が相対的に小さくなる。したがって、セル42・52によれば、外乱の影響を小さくすることで、測定装置1による測定精度を向上させることができる。すなわち、セル42・52は、上述の形状を有しないセルと比較して測定に適したセルである。
【0064】
具体的には、突出部42cにおける第1面42aと第2面42bとの距離は、10mm以上であることが好ましい。突出部52cにおける第1面52aと第2面52bとの距離についても同様である。検査光23がこのような距離を透過することで、測定精度を十分に向上させることができる。
【0065】
なお、セル42においては、第1面42aと第2面42bとの距離が他の箇所と比較して大きい突出部を、第2面42bではなく第1面42aが有していてもよい。同様に、セル52においては、第1面52aと第2面52bとの距離が他の箇所と比較して大きい突出部を、第2面52bではなく第1面52aが有していてもよい。
【0066】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0067】
図17は、実施形態3に係るセル43・53を装着した状態の測定装置1の部分拡大図である。
図17においては、セル部材4・5の代わりに、セル部材64・65がターンテーブル3に配置されている。セル部材64は、複数のセル43を備えている。セル部材65は、複数のセル53を備えている。
【0068】
図18は、実施形態3に係るセル43の形状の例を示す図である。
図18において、符号1801はセル43の上面図であり、符号1802はターンテーブル3に装着されたセル43をターンテーブル3の中心から見た場合の側面図である。
図18に示すように、セル43は、互いに対向する側面である第1面43aおよび第2面43bを備える。第1面43aは発光部21に面し、第2面43bは受光部22に面する。また、セル43は、第1面43aおよび第2面43bとは別の複数の側面43cと、検体または試薬を受け入れる開口部43eと、開口部43eと反対側に位置する底部43fとを備える。底部43fは、全体に丸みを帯びている。
【0069】
セル43は、さらに、側面43c間の距離が、底部43fにおける側面43c間の距離よりも大きい幅広部43gを備える。第1面43aまたは第2面43bを当該第1面43aまたは第2面43bに垂直な方向から平面視したとき、
図18の符号1802に示すように、幅広部43gと底部43fとの境界において段差43hが形成されている。すなわち、第1面43aまたは第2面43bを当該第1面43aまたは第2面43bに垂直な方向から平面視したとき、開口部43eにおける側面43c間の距離が底部43fにおける側面43c間の距離よりも広い。さらに、上記の方向から平面視したとき、側面43c間の距離の変化が不連続となる箇所が存在する。
【0070】
セル43がこのような幅広部43gを備えることで、幅広部43gを備えないセルと比較してセル43の容積が大きくなる。このため、セル43に注入された検体および試薬が攪拌されやすくなる。したがって、セル43に注入された検体および試薬が十分に攪拌されないことに起因して測定精度が低下する可能性を低減し、測定装置1による測定精度を向上させることができる。すなわち、セル43・53は、上述の形状を有しないセルと比較して測定に適したセルである。具体的には、段差43hよりも開口部43e側における側面43c間の距離は、段差43hよりも底部43f側における側面43c間の距離に対して20%以上増加することが好ましい。
【0071】
図19は、実施形態3に係るセル53の形状の例を示す図である。
図19において、符号1901はセル53の上面図であり、符号1902はターンテーブル3に装着されたセル53をターンテーブル3の中心から見た場合の側面図である。
図19に示すように、セル53は、互いに対向する側面である第1面53aおよび第2面53bを備える。第1面53aは発光部21に面し、第2面53bは受光部22に面する。また、セル53は、第1面53aおよび第2面53bとは別の複数の側面53cと、検体または試薬を受け入れる開口部53eと、開口部53eと反対側に位置する底部53fとを備える。底部53fは、全体に丸みを帯びている。
【0072】
セル53は、さらに、側面53c間の距離が、底部53fにおける側面53c間の距離よりも大きい幅広部53gを備える。第1面53aまたは第2面53bを当該第1面53aまたは第2面53bに垂直な方向から平面視したとき、
図19の符号1902に示すように、幅広部53gと底部53fとの境界において段差53hが形成されている。セル53が幅広部53gを備えることで、セル43と同様に、幅広部53gを備えないセルと比較してセル53の容積が大きくなり、セル53に注入された検体および試薬が攪拌されやすくなる。
【0073】
また、セル43・53は、実施形態2において説明したセル42・52と同様に突出部を有していてもよい。セル43・53が突出部を有する場合、セル42・52と同様に測定装置1による測定精度を向上させることができる。
【0074】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 測定装置
3 ターンテーブル(移動体)
4a、5a、6a、42、52、43、53 セル
41a、51a、61a 側壁
41b、43f、51b、53f、61b 底部
41c、51c、61c 境界部分
41d、51d、61d 平坦面
42c、52c 突出部
43c、53c 側面
43g、53g 幅広部
43h、53h 段差
21 発光部
22 受光部