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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】流下液膜式蒸発器
(51)【国際特許分類】
   F28D 3/04 20060101AFI20250408BHJP
   F28D 3/02 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
F28D3/04
F28D3/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021507597
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2019100330
(87)【国際公開番号】W WO2020034937
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】201821312966.9
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810923286.9
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516389499
【氏名又は名称】ヨーク (ウーシー) エアー・コンディショニング・アンド・リフリジェレーション・カンパニー,リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】598147400
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】スー,シウピーン
(72)【発明者】
【氏名】ワーン,ションローン
(72)【発明者】
【氏名】ション,シーミン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ミンナン
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-057484(JP,A)
【文献】特表2015-514959(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105783347(CN,A)
【文献】特開2013-242140(JP,A)
【文献】特開2013-057485(JP,A)
【文献】特開2011-080756(JP,A)
【文献】特開2013-092365(JP,A)
【文献】特開2000-234878(JP,A)
【文献】特開2017-156041(JP,A)
【文献】特開2000-230760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0139898(US,A1)
【文献】米国特許第05588596(US,A)
【文献】国際公開第2013/035508(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035509(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/074749(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103851836(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 3/04
F28D 3/02
F28F 9/00
F25B 39/00
F25B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流下液膜式蒸発器において、
収容キャビティを有するハウジングと、
熱交換管であって、前記熱交換管の長手方向は前記ハウジングの長手方向と同じである、熱交換管と、
前記熱交換管の上方に配置され且つ複数の分配孔を含む、有孔板と、
前記有孔板の上方に配置され且つ複数のスプレーポートを含むスプレー管であって、各々が前記ハウジングの長手方向に延びる第1の拡張部分及び第2の拡張部分を備え、当該第1の拡張部分の端部は第1の外側に突き出た円弧状端面を備え、当該第2の拡張部分の端部は第2の外側に突き出た円弧状端面を備え、前記複数のスプレーポートは複数の短冊の形状をしており、前記複数の短冊の少なくとも一部は前記第1の外側に突き出た円弧状端面及び前記第2の外側に突き出た円弧状端面上に配置され、前記複数のスプレーポートは前記スプレー管の長手方向に間隔をあけて分配されており、前記複数のスプレーポートは前記有孔板に向けて冷媒をスプレーするように構成されている、スプレー管と、
前記スプレー管と流体連通している液体入口管であって、当該液体入口管を通って流れる前記冷媒が前記スプレー管に流れ込むことができる、液体入口管と、を備え、
前記熱交換管、前記有孔板、及び前記スプレー管は全て、前記収容キャビティ内に配置され、前記スプレー管の前記長手方向は、前記ハウジングの前記長手方向に実質的に垂直である、流下液膜式蒸発器。
【請求項2】
前記ハウジングの前記長手方向と同じである前記有孔板の長手方向であって、前記冷媒が前記有孔板に向けて前記複数のスプレーポートからスプレーされた後で、前記冷媒が前記有孔板の前記長手方向に流れることができるように構成されている、前記有孔板の長手方向、を備える、請求項1に記載の流下液膜式蒸発器。
【請求項3】
前記スプレー管の断面は平坦な楕円形状を備え、前記複数の短冊は、前記有孔板、前記第1の外側に突き出た円弧状端面、前記第2の外側に突き出た円弧状端面に面している前記スプレー管の一部の上に配置されている、請求項1に記載の流下液膜式蒸発器。
【請求項4】
前記スプレー管の断面は逆「Y」字型を備え、前記第1の拡張部分及び前記第2の拡張部分が別々に前記スプレー管から前記有孔板に向けて斜めに延びている、請求項1に記載の流下液膜式蒸発器。
【請求項5】
前記流下液膜式蒸発器内に配置された複数の前記スプレー管を備え、前記複数のスプレー管の入り口端は、前記複数のスプレー管が互いに流体連通するように、互いに連通している、請求項1に記載の流下液膜式蒸発器。
【請求項6】
前記複数のスプレー管の数は偶数であり、前記複数のスプレー管は、前記液体入口管を基準にして対称的に分配されている、請求項5に記載の流下液膜式蒸発器。
【請求項7】
液体入口ボックスを備え、前記液体入口ボックスは前記液体入口管と前記スプレー管との間に配置され、それにより、前記液体入口管と前記スプレー管は前記液体入口ボックスによって互いに流体連通することができる、請求項1に記載の流下液膜式蒸発器。
【請求項8】
カバー板を備え、前記カバー板は前記スプレー管と前記液体入口ボックスとの間に配置され、前記カバー板の第1の側縁及び第2の側縁は前記有孔板に向かって延び、密封態様で前記有孔板の第1の側縁及び第2の側縁に各々接続されている、請求項7に記載の流下液膜式蒸発器。
【請求項9】
熱交換管上に冷媒を分配するシステムであって、
収容キャビティを有するハウジングと、
熱交換管であって、前記熱交換管の長手方向は前記ハウジングの長手方向と同じである、熱交換管と、
有孔板であって、複数の分配孔を含み、当該有孔板の長手方向が前記ハウジングの前記長手方向の同じである、有孔板と、
複数のスプレーポートを含むスプレー管であって、当該複数のスプレーポートは当該スプレー管の長手方向に間隔をあけて分配されており、当該複数のスプレーポートは前記有孔板に向けて冷媒をスプレーするように構成され、当該有孔板が前記熱交換管と当該スプレー管の間に配置されている、スプレー管と、
前記スプレー管と流体連通している液体入口管であって、それにより、当該液体入口管を通って流れる前記冷媒が前記スプレー管に流れ込むことができる、液体入口管と、
前記液体入口管及び前記スプレー管と流体連結している液体入口ボックスであって、それにより、当該液体入口管及び当該スプレー管が当該液体入口ボックスを介して互いに流体連通している、液体入口ボックスと、
前記スプレー管と前記液体入口ボックスとの間に配置されたカバー板であって、当該カバー板の第1の側縁及び当該カバー板の第2の側縁は前記有孔板に向かって延び、当該カバー板の当該第1の側縁は当該有孔板の第1の側縁に密封して接続され、当該カバー板の当該第2の側縁は当該有孔板の第2の側縁に密封して接続されている、カバー板と、
前記ハウジングと流体連通し、且つ前記収容キャビティから気体の冷媒を排出するように構成されている、気体排出管と、を備え、
前記熱交換管、前記有孔板、及び前記スプレー管は全て、前記収納キャビティ内に配置され、当該スプレー管の前記長手方向は、当該有孔板の前記長手方向に実質的に垂直であり、それにより、前記複数のスプレーポートから当該有孔板に向けてスプレーされた前記冷媒が当該有孔板の前記長手方向に流れることかできる、システム。
【請求項10】
前記有孔板の上方に配置された前記スプレー管を含む複数のスプレー管を備え、当該複数のスプレー管の数は偶数であり、当該複数のスプレー管は、前記液体入口管を基準にして対称的に分配され、当該複数のスプレー管の入り口端は、前記液体入口ボックスによって互いに流体連通している、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記有孔板の方向に突き出た円弧状端面を有する前記スプレー管の各々の表面を備え、前記複数のスプレーポートは複数の短冊の形状をしており、当該複数の短冊の少なくとも一部は当該円弧状端面上に配置されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
流下液膜式蒸発器において、
収容キャビティを有するハウジングと、
前記収容キャビティ内に配設された熱交換管であって、前記熱交換管の長手方向は前記ハウジングの長手方向と同じである、熱交換管と、
前記収容キャビティ内に配設され、且つ前記熱交換管とスプレー管との間に配置された有孔板であって、複数の分配孔を含み、当該有孔板の長手方向が前記ハウジングの長手方向と同じである、有孔板と、
前記収容キャビティ内に配設され、且つ複数のスプレーポートを含む前記スプレー管であって、前記有孔板の方向に突き出た円弧状端面を含み、当該複数のスプレーポートは複数の短冊の形状をし、且つ当該スプレー管の長手方向に間隔をあけて分配され、当該複数の短冊の少なくとも一部は当該円弧状端面上に配置され、当該複数のスプレーポートは前記有孔板に向けて冷媒をスプレーするように構成されている、前記スプレー管と、
前記スプレー管と流体連通している液体入口管であって、それにより、当該液体入口管を通って流れる前記冷媒が当該スプレー管に流れ込むことができ、当該スプレー管の前記長手方向が前記有孔板の前記長手方向に実質的に垂直であり、それにより、当該有孔板に向けて前記複数のスプレーポートからスプレーされた前記冷媒が当該有孔板の前記長手方向に流れることができる、液体入口管と、
前記液体入口管は、各々が前記ハウジングの前記長手方向で且つ前記有孔板に向けて延びる第1の流路及び第2の流路へと二またに分かれ、
第1のスプレー管は前記液体入口管の前記第1の流路の端部に配設され、第2のスプレー管は当該液体入口管の前記第2の流路の端部に配設され、当該第1のスプレー管の中心軸及び当該第2のスプレー管の中心軸は60°以上の角度を形成する、流下液膜式蒸発器。
【請求項13】
前記スプレー管の断面は、互いに離れる方向に延びる第1の拡張部分及び第2の拡張部分を備えた平坦な楕円形状を有し、前記第1の拡張部分及び前記第2の拡張部分の各々は外側に突き出た円弧状端面を備え、前記複数のスプレーポートは前記複数の短冊の形状をしており、前記複数の短冊は、前記有孔板に面している前記スプレー管の表面上で、且つ前記円弧状端面の少なくとも一部の上に配置されている、請求項12に記載の流下液膜式蒸発器。
【請求項14】
前記スプレー管の断面は逆「Y」字型を有し、第1の拡張部分及び第2の拡張部分は、前記有孔板に面している前記スプレー管の表面上に別々に配置され、且つ当該有孔板に向けて斜めに延びており、前記第1の拡張部分及び前記第2の拡張部分の各々は外側に突き出た円弧状端面を備え、前記複数のスプレーポートは前記複数の短冊の形状をしており、前記複数の短冊は前記円弧端面上に配置されている、請求項12に記載の流下液膜式蒸発器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、流下液膜式蒸発器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
流下液膜式蒸発器は一般に、冷媒分配器を使用して熱交換管束内の熱交換管の表面に冷媒を分配し、蒸発のための液膜を形成させる。それらは、熱交換管表面からの薄膜蒸発のメカニズムを利用しており、熱伝達効率が高く冷媒投入量が少ないという利点を有し、近年、冷蔵及び空調業界において研究の中心となってきている。しかしながら、蒸発器内の熱交換管束上での冷媒分配の均一性が、蒸発器の熱交換性能を制限する主要な要因となっている。冷媒分配器に入る冷媒の状態は、一般に気相及び液相であり、冷媒のこれら2つの相が流下液膜式蒸発器の熱交換管束上に均一に分配されない場合、結果として、冷媒分配器は熱交換管の一部には過剰な冷媒を供給し、熱交換管の別の部分には少なすぎる冷媒を供給することになり、「ドライスポット」という現象がおこり、流下液膜式蒸発器の全体的な熱交換性能の低下につながる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本出願の目的は、熱交換管に冷媒を均一に分配することができる改良された流下液膜式蒸発器を提供することである。
【0004】
上記の目的を達成するために、本出願は流下液膜式蒸発器を提供し、この流下液膜式蒸発器は、ハウジングと、熱交換管と、有孔板と、スプレー管と、液体入口管と、を備える。ハウジングは収容キャビティを有する。熱交換管の長手方向は、ハウジングの長手方向と同じである。有孔板は熱交換管の上方に配置され、有孔板は複数の分配孔を備えている。スプレー管は有孔板の上方に配置され、スプレー管は複数のスプレーポートを有し、スプレーポートはスプレー管の長手方向に間隔をあけて分配されており、スプレーポートは有孔板に向けて冷媒をスプレーすることができるように構成される。液体入口管は、液体入口管を通って流れる冷媒がスプレー管に流れ込むことができるように、スプレー管と流体連通している。熱交換管、有孔板、及びスプレー管は全て、収容キャビティ内に配置される。スプレー管の長手方向は、ハウジングの長手方向に実質的に垂直である。
【0005】
上述した流下液膜式蒸発器では、有孔板の長手方向はハウジングの長手方向と同じであり、スプレーポートは、冷媒が有孔板に向けてスプレーされた後で、冷媒が有孔板の長手方向に流れることができるように構成されている。
【0006】
上述した流下液膜式蒸発器では、スプレー管の底部は円弧状の端面を有し、この円弧状の端面は有孔板の方向に突き出ており、スプレーポートは短冊状をしており、スプレーポートの少なくとも一部は円弧状の端面上に配置される。
【0007】
上述した流下液膜式蒸発器では、スプレー管はハウジングの長手方向に延びる2つの拡張部分を有し、拡張部分の端部は外側に突き出た円弧状の端面を備え、スプレーポートは短冊状をしており、スプレーポートの少なくとも一部は円弧状の端面上に配置される。
【0008】
上述した流下液膜式蒸発器では、スプレー管の断面は平坦な楕円形状を有しており、2つの拡張部分はそれぞれスプレー管の左端及び右端に配置され、スプレーポートは短冊状をしており、スプレーポートは、スプレー管の底部からそれぞれスプレー管の左端及び右端にある円弧状の端面に向けて延びている。
【0009】
上述した流下液膜式蒸発器では、スプレー管の断面は逆「Y」字型を有し、2つの拡張部分はスプレー管の底部に別々に配置され、斜めに下向きに延びており、スプレーポートは短冊状をしており、スプレーポートの少なくとも一部は円弧状の端面上に配置される。
【0010】
上述した流下液膜式蒸発器では、複数の前述のスプレー管が流下液膜式蒸発器に配置され、これら複数のスプレー管の上端は、複数のスプレー管が互いに流体連通するように、互いに連通している。
【0011】
上述した流下液膜式蒸発器では、スプレー管の数は偶数であり、複数のスプレー管は、液体入口管を基準にして対称的に分配されている。
【0012】
上述した流下液膜式蒸発器は液体入口ボックスを更に備え、液体入口ボックスは液体入口管とスプレー管との間に配置され、それにより、液体入口管とスプレー管は液体入口ボックスによって互いに流体連通することができる。
【0013】
上述した流下液膜式蒸発器はカバー板を更に備え、カバー板はスプレー管の上側部分に配置され、カバー板の2つの側縁は有孔板に向かって延び、密封態様で有孔板の2つの側縁に直接的に又は間接的に接続される。
【0014】
本出願の流下液膜式蒸発器では、スプレー管の長手方向は蒸発器ハウジングの長手方向に実質的に垂直になるように構成される。この構成により、スプレーポートからスプレーされる冷媒が実質的にハウジングの長手方向に移動することが可能になり、従って、スプレーポートからスプレーされる冷媒の流路が延び、スプレーされた冷媒の流れが妨げられることに起因して冷媒が熱交換管の表面に不均一にスプレーされるという問題が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本出願の実施形態における流下液膜式蒸発器100の3次元構造の概略図である。
図2図1に示した流下液膜式蒸発器100のハウジング101内部に配置される構成要素のうちの幾つかの構造概略図である。
図3図1に示した流下液膜式蒸発器100の、液体入口管102の位置での、径方向断面図である。
図4図3に示した流下液膜式蒸発器100の、スプレー管202の領域での、部分拡大図である。
図5図2のスプレー管202の3次元構造の概略図である。
図6図5に示したスプレー管202の、スプレーポート301の位置での、断面を示す。
図7図4に示した位置構成でスプレー管202からスプレーされた後の冷媒の移動経路を示す。
図8A】スプレー管202の、スプレーポート301の位置での、断面形状の第1の実施形態を示す。
図8B】スプレー管202の、スプレーポート301の位置での、断面形状の第2の実施形態を示す。
図9】2つのスプレー管202を有する流下液膜式蒸発器の、液体入口管102の位置での、軸方向の断面図である。
図10A】流下液膜式蒸発器における2つのスプレー管の構造の第1の実施形態を示す。
図10B】流下液膜式蒸発器における2つのスプレー管の構造の第2の実施形態を示す。
図10C】流下液膜式蒸発器における2つのスプレー管の構造の第3の実施形態を示す。
図10D】流下液膜式蒸発器における2つのスプレー管の構造の第4の実施形態を示す。
図11】流下液膜式蒸発器内部のスプレー管の位置構成の比較実施形態を示す。
図12図11に示したスプレー管の位置構成を有する流下液膜式蒸発器の、液体入口管の位置での、軸方向断面図を示す。
図13図11に示したスプレー管の位置構成を有する流下液膜式蒸発器の、液体入口管の位置での、径方向断面図を示す。
図14図13に示したスプレー管からスプレーされた後の冷媒の移動経路を示す。
図15図14に示した有孔板の幅方向における異なる位置を通って流れる冷媒の流速を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の様々な具体的な実施形態について、本明細書の一部を形成する図面を参照しながら、以下で説明する。「前」、「後」、「上側」、「下側」、「左」、「右」、「上部」、「底部」などの方向を示す用語が、本出願の様々な例証的な構造部分及び要素を説明するために本出願で使われているが、これらの用語は本明細書では、説明の便宜上のみのために使用されており、図に示した例証的な向きに基づいて決定されていることを、理解されたい。本明細書に開示する実施形態は、異なる向きで構成されることがあるので、方向を示すこれらの用語は、例示に過ぎず、限定するものとしてみなされるべきではない。
【0017】
図1は、本出願の実施形態における流下液膜式蒸発器100の3次元構造を示す。図1に示すように、流下液膜式蒸発器100は、ハウジング101、液体入口管102、ガス吸引管104、及び管板103を備える。ハウジング101は実質的に円筒形であり、管板103は、ハウジング101の長手方向の両端にそれぞれ配置される。液体入口管102はハウジング101の上側部分に配置され、冷媒をハウジング101の内部に導くように構成される。ガス吸引管104もハウジング101の上側部分に配置され、ハウジング101から気体の冷媒を排出するように構成される。
【0018】
図2は、図1に示した流下液膜式蒸発器100のハウジング101内部に配置される構成要素のうちの幾つかについての構造概略図であり、説明の都合上、ハウジング101の外側に配置される液体入口管102も図2に含まれている。図2に示すように、流下液膜式蒸発器100はスプレー管202、有孔板205、及びハウジング101の収容キャビティ内に配置される熱交換管束201(図3に示す)を更に備える。スプレー管202は液体入口管102の下に配置され、有孔板205はスプレー管202の下に配置され、熱交換管束201は有孔板205の下に配置される。スプレー管202は、実質的に、両端が閉じた管の形状をしている。液体入口管102と流体連通するように構成された入口206が、スプレー管202の上部に設けられている。複数のスプレーポート301がスプレー管202の底部に設けられ、スプレー管202に入った冷媒を、スプレー管202の下の有孔板205にスプレーするように構成される。有孔板205は実質的に長い短冊状の形状をしており、その長手方向はハウジング101の長手方向と同じである。有孔板205は複数の分配孔305を備えており、この孔は、有孔板205上にスプレーされた冷媒を再分配するように構成されており、その結果、有孔板205の下の熱交換管束201上に冷媒を均一に分配することができる。側面停止板204も有孔板205の左右の対向面に設けられ、これら2つの側面停止板204は有孔板205に垂直に下方に延び、その結果、これら2つの側面停止板204と有孔板205は一緒に、下方に開いている収容空間を形成する。図2に示した実施形態では、有孔板205の分配孔305の全てが円形である。他の実施形態では、分配孔305は、例えば楕円形、正方形、又は菱形などの別の形状のものであり得る。更に、スプレー管202の長手方向は、有孔板205の長手方向に実質的に垂直である。つまり、スプレー管202の長手方向は、有孔板205の幅方向と同じである。一般的に、スプレー管202の長手方向は有孔板205の長手方向に垂直であるが、一定の範囲内でのこれら2つの構成要素の位置関係のずれは制限されない。スプレー管202は有孔板205の長手方向の中央位置に配置され、その結果、スプレー管202からスプレーされる冷媒を、有孔板205の長手方向の中央位置から有孔板205の長手方向の両側に向けて均一にスプレーすることができる。
【0019】
流下液膜式蒸発器100は、スプレー管202と液体入口管102との間に配置された液体入口ボックス203と、スプレー管202の上側部分に配置されたカバー板302とを更に備える。液体入口ボックス203は、スプレー管202の長手方向に冷媒を予め分配できるようにするために、スプレー管202の長手方向に延び、液体入口管102とスプレー管202の入口206との間に流体連通を確立するように構成される。カバー板302は、有孔板205の長手方向に延び、カバー板302の2つの側縁は下方に延び、その結果、カバー板302は逆「U」字型構造のように見える。カバー板302は、液体入口ボックス203とスプレー管202との間に配置され、液体入口ボックス203とスプレー管202との間の連通を確保するように、液体入口ボックス203とスプレー管202との間に開口部を備えている。スプレー管202上のスプレーポート301は、カバー板302と有孔板205との間のキャビティ内に配置され、それによって、スプレーポート301からスプレーされる冷媒を、有孔板205に向けて流れるように、カバー板302によって確実に導くことができる。
【0020】
図3は、図1に示した流下液膜式蒸発器100の、液体入口管102の位置での、径方向断面図である。図3に示すように、ハウジング101は2つの熱交換管束201を含んでおり、一方の熱交換管束201は、有孔板205及び2つの側面停止板204によって形成される収容空間内に配置され、他方の熱交換管束201はハウジング101の収容キャビティの底部に配置され、各熱交換管束201は、複数の熱交換管304を含んでいる。
【0021】
図4は、図3に示した流下液膜式蒸発器100の、スプレー管202の領域での、部分拡大図である。図4に示すように、複数のスプレーポート301は、スプレー管202の長手方向に間隔をあけて、スプレー管202の底部に配置される。カバー板302は、密閉された態様で側面停止板204に接続され、それにより、スプレーポート301からスプレーされる冷媒の全てが、有孔板205に向けて流れ、有孔板の分配孔305を介して熱交換管束201上に分配されて熱交換されることが確実になる。他の実施形態では、カバー板302は、有孔板205の幅方向の2つの側縁に密閉された態様で直接的に接続されることもある。そのような構成により、同様に、スプレーポート301からスプレーされる冷媒の全てが、有孔板205に向かって確実に流れるようにすることができる。
【0022】
図5は、図2に示したスプレー管202の3次元構造を示す。図5に示すように、複数のスプレーポート301が、スプレー管202の底部に設けられている。各スプレーポート301は、短冊状をしており、2つの側壁に向かってスプレー管202の底部から延びている。スプレーポート301の開口部の伸長方向に起因して、各スプレーポート301が存在する平面は、スプレー管202の長手方向に垂直になる。複数のスプレーポート301は、互いに平行であり、スプレー管202の長手方向に間隔をあけて配置される。
【0023】
図6は、図5に示したスプレー管202の、スプレーポート301の位置での、断面を示す。図6に示すように、スプレー管202の断面の上側部分は実質的に矩形であり、一方、下側部分は実質的に半円形の円弧である。スプレーポート301は、図6でスプレー管の下側部分にある白地部分によって示すように、スプレー管202の底部にある半円形の円弧の位置に配置される。冷媒がスプレー管202のスプレーポート301から外へスプレーされると、冷媒はスプレーポート301の開口方向に均一に外側に広がる。図5より、スプレーポート301からスプレーされる冷媒は、一定の流速を有しており、また、スプレーポート301は細長い短冊形状をしていることにより、スプレー管202の長手方向にはスプレーされた冷媒は殆ど広がらないことが分かる。冷媒の殆どは、スプレー管202の幅方向にのみスプレーされる。
【0024】
図7は、流下液膜式蒸発器100のハウジング101の、液体入口管102の位置での、軸方向断面図を示しており、矢印は、スプレー管202からスプレーされた後の、冷媒の移動経路を示す。図7に示すように、カバー板302、有孔板205、及び側面停止板204は、ハウジング101と同じ長手方向を有し、実質的に全て同じ長さであり、それらの端部全てが管板103まで延びている。スプレーポート301の開口部の形状及びスプレー管202の内側と外側との間の圧力差の影響を受けて、スプレー管202からスプレーされた冷媒は、有孔板205に到達するまで、スプレーポート301の下の領域にスプレーされる。冷媒は、スプレーポート301からスプレーされるときに高い初期速度を有するので、冷媒は、有孔板205までスプレーされた後でも依然として高速を維持しており、従って、冷媒は、有孔板205の両端に向けて有孔板205の長手方向に流れる。有孔板205は適切な長さのものであり、その結果、冷媒の速度は冷媒が連続的に流れるにつれて低下し、冷媒が両側にある管板103に近い位置まで移動したときには、冷媒の速度は既に非常に遅くなっているので、両側にある管板103では渦は形成されず、それによって、有孔板の表面上に冷媒が均一に分配される。冷媒が有孔板205の長手方向に移動するにつれて、冷媒は有孔板205の分配孔305から有孔板205の下の熱交換管束201に向かって流れることができ、その結果、冷媒は、熱交換管束201内の複数の熱交換管304上に均一に分配される。
【0025】
図8A及び図8Bはそれぞれ、スプレー管202の2つの他の実施形態の、スプレーポートの位置での、断面を示す。これら2つの実施形態では、スプレー管202の断面形状は、図6に示したスプレー管202の断面形状とは異なる。図6に示したスプレー管202の断面は、全体的に垂直方向に長くなっており、横幅は狭くなっている。これは具体的には、上側部分が矩形であり、一方下側部分は半円形の円弧であることとして現れる。しかしながら、スプレー管202の断面の横幅を狭くすると、有孔板205の長手方向における冷媒の移動距離が制限される。従って、スプレー管202からスプレーされる冷媒を首尾よく管板103の近くの位置まで移動させるために、本出願の実施形態によっては、スプレー管202を、スプレー管202の幅方向(即ち、ハウジング101の長手方向)に拡張して2つの拡張部分801を形成し、スプレーポートを、少なくとも部分的にこの拡張部分上に配置し、従って、ハウジング101の長手方向における冷媒のスプレー距離を増加させるのに役立てる。
【0026】
図8Aに示すように、スプレー管202の断面は平坦な楕円形状をしており、上側と下側に平坦で真っ直ぐな辺があり、2つの拡張部分801は、それぞれスプレー管202の左側及び右側に配置され、各拡張部分801の端部は、外側に突き出た円弧状端面501を有する。今説明した構造により、スプレー管202の断面は横方向により長いスパンを有する。図8Aは、スプレー管の断面の白地部分でのスプレーポート301の位置を示す。スプレーポート301は、短冊状をしており、スプレー管202の下半分に配置され、スプレー管202の底部から両側にある円弧状端面501に向かって延びる。
【0027】
図8Bに示すスプレー管202の断面は逆「Y」字型形状を有する。2つの拡張部分801は、それぞれスプレー管202の底部の両側に配置され、斜め下方に延びており、その結果、2つの拡張部分801の間に特定の角度Aが形成される。実施形態によっては、角度Aは60°以上であり、その結果、スプレー管202の横幅はより大きく拡張される。図8Bより、各拡張部分801の端部が外側に突き出た円弧状端面501を有し、スプレーポート301がこれら2つの円弧状端面501に実質的に配置されていることが分かる。図8Bは、スプレー管202の同じ断面上に2つのスプレーポート301が配置されている様子を示す。スプレー管202の長手方向には、スプレーポート301の列が、各側にある円弧状端面501上に間隔をあけて配置されている。従って、スプレーポート301の2つの列が図8Bに示す単一のスプレー管202に配置され、有孔板205の長手方向における冷媒のスプレー距離を大幅に増加させる。
【0028】
図9は、2つのスプレー管202を有する流下液膜式蒸発器の、液体入口管102の位置での、軸方向断面図である。図9に示すように、ハウジング101のより長い長さに適合し、ハウジング101の長手方向にスプレー管202のスプレー距離を延ばすために、図9に示す実施形態は、蒸発器ハウジング101の内部に並んで配置された2つのスプレー管202を使用する。スプレー管202の断面は、図6図8A、及び図8Bの形状のいずれかであり得る。各スプレー管202の上には1つの液体入口ボックス203が設けられ、その結果、冷媒は、スプレー管202に入る前に、スプレー管202の長手方向に予備分配されることがある。冷媒の均一な分配を促進するために、液体入口管102はハウジング101の軸方向の中央位置に配置され、2つのスプレー管202は、有孔板205の上方に同じ高さで平行に配置され、液体入口管102の左側及び右側に対称的に配置される。図9に示すように、2つのスプレー管202のどちらか一方の垂直方向の中心軸と液体入口管102の中心軸との間の間隙はLであり、2つのスプレー管202のどちらか一方の垂直方向の中心軸とそれに対応した側の管板103との間の距離も、Lである。今説明したスプレー管202の対称的な構造構成は、有孔板205の表面に冷媒を均一にスプレーするのに役立つ。
【0029】
スプレー管202の上述した構成を実現するために、図9に示した実施形態の液体入口管102は、以下のように構成される。液体入口管102の、冷媒入り口に近い一方の端部は垂直に延びている。ハウジング101の中に延びる前に、液体入口管102は2つの分岐管へと二またに分かれ、それぞれハウジング101の長手方向の両側に向かって水平に延びる。2つのスプレー管202の位置の上で、2つの分岐管はそれぞれ垂直な角に形成され、それによって、ハウジング101の内部に入るまで垂直に下方に延び、それにより、2つのスプレー管202の上に配置された2つの液体入口ボックス203にそれぞれ
接続される。今説明した構成により、冷媒は液体入口管102に入った後で2つの経路へと二またに分かれ、2つの異なるスプレー管202にそれぞれ流れ込む。
【0030】
実施形態によっては、スプレー管202の数は、より長いハウジングを有する流下液膜式蒸発器に適合するために、2よりも大きな偶数に設定されることがある。スプレー管202の数を偶数に設定することにより、液体入口管102の両側での均一なスプレー管の分配が容易になり、その結果、液体入口管102を通って流れる冷媒が、スプレー管202に均一に分配される。
【0031】
図10A図10Dは、2つのスプレー管202が流下液膜式蒸発器内に同時に配置される、他の実施形態を示す。
【0032】
図10Aに示すように、2つのスプレー管202が、同じ高さで並んで配置され、1つの液体入口ボックス203を共有している。液体入口ボックス203は広い断面を有しており、その結果、液体入口ボックス203の幅方向の2つの側面部分を、それぞれ2つのスプレー管202の上端に接続し、それら2つのスプレー管202の上端と連通させることができる。今説明した構成では、2つのスプレー管202との流体連通は、1つの真っ直ぐな液体入口管102を使用して、共有された液体入口ボックス203によって、同時に実現することができる。従って、ハウジング101は、液体入口管102が通過するための開口部を1つだけ備えることでよく、それによって、液体入口管102及びハウジング101の構造が単純になる。
【0033】
図10Bは、ダブルスプレー管構造の別の実施形態を示す。図10Bに示すように、2つのスプレー管202は同じ高さで平行に配置されており、各スプレー管202の断面は実質的に円形である。円形の断面の設計により、スプレーポートの方向における冷媒の均一な分散が促進される。
【0034】
図10C及び図10Dは、2つのスプレー管202が、流下液膜式蒸発器内で特定の角度で配置されている構造を示す。図10C及び図10Dに示すように、流下液膜式蒸発器の同じ断面において、2つのスプレー管202の中心軸は、60°以上の特定の角度Bを形成する。角度Bのこの設定は、流下液膜式蒸発器ハウジングにおいて長手方向におけるスプレー管202のスプレー距離を延ばすのに役立つ。流下液膜式蒸発器の同じ断面における2つのスプレー管202の中心軸が特定の角度Bをなして構成されるようにするために、液体入口管102は、その一方の端部が垂直に下方に延び、2つの分岐管に二またに分かれてからスプレー管202と連通し、2つの分岐管は反対方向に水平に延びるように、構成される。2つのスプレー管202の上方で、2つの分岐管は鈍角である角を形成し、その結果、2つの分岐管は、それぞれ2つのスプレー管202につながるまで、互いから離れるように斜め下方に延びる。
【0035】
図2図10Dから分かるように、本出願では、スプレー管202の長手方向は、流下液膜式蒸発器100のハウジング101の長手方向に垂直になるように配置され、スプレーポート301は短冊状をしており、その結果、スプレー管202からスプレーされた冷媒は、実質的にハウジング101の長手方向に流れることができ、それによって、冷媒の移動空間が増加し、その結果、冷媒を有孔板205の表面上に均一にスプレーすることができる。本出願におけるスプレー管202の配置態様が採用されない場合、スプレー管202からスプレーされた後の冷媒の移動経路は、ハウジング101の径方向の幅が不十分なせいで、制限される可能性が高く、結果として、冷媒を熱交換管束201上に均一にスプレーすることができない。
【0036】
図11は、流下液膜式蒸発器内部のスプレー管1202の位置構成の比較例を示す。スプレー管202の長手方向が有孔板205の長手方向に垂直になるように配置される、本出願の実施形態とは異なり、図11に示す比較例では、スプレー管1202の長手方向が、有孔板1205の長手方向と同じになるように配置される。図11に示すように、スプレー管1202の長さは、カバー板1302、有孔板1205、及び側面停止板1204の長さと実質的に同じである。スプレー管1202は有孔板1205の上に配置され、液体入口管1102及び液体入口ボックス1203は両方とも、スプレー管1202の上に配置される。冷媒は、液体入口管1102から液体入口ボックス1203に入り、その後、スプレー管1202によって、有孔板1205の表面上にスプレーされることがある。比較例におけるスプレー管1202上のスプレーポート1301の構成は、本出願の実施形態における図5に示したスプレーポート301の構成と同じである。即ち、複数のスプレーポート1301は、互いに平行であり、スプレー管1202の長手方向に等間隔にあけて配置される。相違点は、比較例ではスプレー管1202の長手方向が有孔板1205の長手方向になるように配置されるので、上述したスプレーポート1301の構成により、冷媒が、スプレー管1202からスプレーされた後で、実質的に有孔板1205の幅方向に移動するようになる、ということである。
【0037】
図12は、図11に示したスプレー管1202の位置構成を有する流下液膜式蒸発器の、液体入口管1102の位置での、軸方向断面図を示す。図12に示すように、液体入口ボックス1203、スプレー管1202、カバー板1302、有孔板1205、及び側面停止板1204は全て、流下液膜式蒸発器のハウジング1101の内部に配置されており、スプレー管1202、カバー板1302、有孔板1205、及び側面停止板1204の長さは、ハウジング1101の長さと実質的に同じである。
【0038】
図13は、図11に示したスプレー管1202の位置構成を有する流下液膜式蒸発器の、液体入口管1102の位置での、径方向断面図を示す。図13に示すように、流下液膜式蒸発器の左側及び右側は対称的に構成され、スプレー管1202は有孔板1205の幅方向の中央位置に配置され、2つの熱交換管束1201が有孔板1205の下に設けられ、一方の熱交換管束1201は有孔板1205及びその両側にある側面停止板1204により形成される収容空間内に収められ、他方の熱交換管束1201はハウジング1101の底部空間内に配置され、2つの熱交換管束1201内の各熱交換管の長手方向は、ハウジング1101の長手方向にあるように構成される。
【0039】
図14は、図13に示したスプレー管1202からスプレーされた後の冷媒の移動経路を示す。図14に示すように、スプレー管1202からスプレーされた冷媒は、初速が高く、有孔板1205の幅方向の縁部まで進んだとき、冷媒は依然として一定の横方向速度を保持しているが、冷媒の移動経路は、実質的にハウジング1101の径方向になり、ハウジング1101の径方向幅は狭く、有孔板1205の幅を制限しているので、有孔板1205は冷媒が更に進むための十分な幅を持たない。一定の横方向速度を有する冷媒は、カバー板1302の遮断作用の下で、有孔板1205の縁部で渦を発達させ、その結果、中央位置よりも有孔板1205の幅方向の両端に、より多くの量の冷媒が集まる。
【0040】
図15は、図14に示した有孔板1205の幅方向における異なる位置を通って流れる分配された冷媒の流速を示す。ハウジング1101の径方向幅が狭いので、有孔板1205の幅は制限される。従って、スプレー管1202の長手方向がハウジング1101の長手方向と同じである場合、スプレー管1202からスプレーされた冷媒は、有孔板1205の幅の縁に達したときに依然として高い横方向速度を有しており、従って、動きが制限され、その結果、有孔板1205の幅方向で冷媒が不均一に分配される。図15に示すように、流下液膜式蒸発器内の様々な構成要素はその径方向に左右対称に構成されているので、冷媒の流速も、有孔板1205の中心点位置を基準にして、有孔板1205の幅方向で対称的である。具体的には、冷媒の流速は、スプレー管1202の真下に位置する中央位置で最小になり、有孔板1205の幅方向の両側に向けて位置が移動するにつれて、冷媒流速は徐々に増加し、有孔板1205の2つの縁部分の位置において、冷媒流速が最大になる。
【0041】
見て分かるように、比較例の流下液膜式蒸発器では、スプレー管1202の長手方向はハウジング1101の長手方向にあるように構成され、その結果、スプレー管1202からスプレーされた冷媒は、実質的にハウジング1101の径方向の幅方向に移動し、ハウジング1101の径方向の幅は狭いので、スプレー管1202からスプレーされた後での冷媒の移動範囲は大幅に制限され、その結果、冷媒を熱交換管の上に均一にスプレーすることができない。本出願の実施形態における流下液膜式蒸発器100では、熱交換管202の長手方向はハウジング101の長手方向に垂直になるように構成され、その結果、スプレー管202からスプレーされた冷媒は、実質的にハウジング101の長手方向に移動することができるので、冷媒の移動経路が長くなり、冷媒の移動が制限されることに起因して熱交換管上に冷媒が不均一にスプレーされるのを防ぎ、それによって、冷媒の不均一なスプレーによって引き起こされる熱交換管上の「ドライスポット」という現象が回避される。更に、上述した本出願の構成により、スプレー管202の幅方向での冷媒の移動経路が長くなり、即ち、本出願の実施形態におけるスプレー管202の構成を使用すると、スプレー管202の単位長さが有孔板205にスプレーするときの到達面積が大幅に増加し、従って、同じ面積の有孔板に対してスプレー効果を達成するために、本出願の実施形態でのスプレー管202の構成を使用すると、スプレー管202の長さが大幅に短縮され、これに呼応して、上述した構成により、スプレー管202上のスプレーポート301の開口部の数も低減され、それによってスプレー管を製造する難しさ及びコストが大幅に低減される。
【0042】
本出願について、図面に示した特定の実施形態を参照して説明したが、本出願の流下液膜式蒸発器は、本出願の教示の趣旨及び範囲及び背景から逸脱することなく、多くの変形形態を有することがあることを、理解されたい。当業者であれば、本出願で開示された実施形態における構造的な細部を変更する様々な方法があり、それらは全て本明細書及び特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれることを、理解するであろう。
〔態様1〕
流下液膜式蒸発器において、前記流下液膜式蒸発器(100)は、
収容キャビティを有するハウジング(101)と、
熱交換管(304)であって、前記熱交換管(304)の長さ方向は前記ハウジング(101)の長さ方向と同じである、熱交換管(304)と、
前記熱交換管(304)の上方に配置され且つ複数の分配孔(305)を備えている、有孔板(205)と、
スプレー管(202)であって、前記スプレー管(202)は前記有孔板(205)の上方に配置され、前記スプレー管(202)は複数のスプレーポート(301)を有し、前記スプレーポート(301)は前記スプレー管(202)の長さ方向に間隔をあけて分配されており、前記スプレーポート(301)は前記有孔板(205)に向けて冷媒をスプレーすることができるように構成される、スプレー管(202)と、
液体入口管(102)であって、前記液体入口管(102)を通って流れる前記冷媒が前記スプレー管(202)に流れ込むことができるように、前記スプレー管(202)と流体連通している、液体入口管(102)と、を含み、
前記熱交換管(304)、前記有孔板(205)、及び前記スプレー管(202)は全て、前記収容キャビティ内に配置され、前記スプレー管(202)の長さ方向は、前記ハウジング(101)の長さ方向に実質的に垂直であることを特徴とする、流下液膜式蒸発器。
〔態様2〕
前記有孔板(205)の長さ方向は前記ハウジング(101)の長さ方向と同じであり、前記スプレーポート(301)は、前記冷媒が前記有孔板(205)に向けてスプレーされた後で、前記冷媒が前記有孔板(205)の長さ方向に流れることができるように構成されていることを特徴とする、態様1に記載の流下液膜式蒸発器。
〔態様3〕
前記スプレー管(202)の底部は円弧状端面(501)を有し、前記円弧状端面(501)は前記有孔板(205)の方向に突き出ており、前記スプレーポート(301)は短冊状をしており、前記スプレーポート(301)の少なくとも一部は前記円弧状端面(501)上に配置されることを特徴とする、態様1に記載の流下液膜式蒸発器。
〔態様4〕
前記スプレー管(202)は前記ハウジング(101)の長さ方向に延びる2つの拡張部分(801)を有し、前記拡張部分(801)の端部は外側に突き出た円弧状端面(501)を備え、前記スプレーポート(301)は短冊状をしており、前記スプレーポート(301)の少なくとも一部は前記円弧状端面(501)上に配置されることを特徴とする、態様1に記載の流下液膜式蒸発器。
〔態様5〕
前記スプレー管(202)の断面は平坦な楕円形状を有しており、前記2つの拡張部分(801)はそれぞれ前記スプレー管(202)の左端及び右端に配置され、前記スプレーポート(301)は短冊状をしており、前記スプレーポート(301)は、前記スプレー管(202)の底部からそれぞれ前記スプレー管(202)の前記左端及び前記右端にある前記円弧状端面(501)に向けて延びることを特徴とする、態様4に記載の流下液膜式蒸発器。
〔態様6〕
前記スプレー管(202)の断面は逆「Y」字型を有しており、前記2つの拡張部分(801)は前記スプレー管(202)の底部に別々に配置され、斜めに下向きに延びており、前記スプレーポート(301)は短冊状をしており、前記スプレーポート(301)の少なくとも一部は前記円弧状端面(501)上に配置されることを特徴とする、態様4に記載の流下液膜式蒸発器。
〔態様7〕
複数の前記スプレー管(202)が前記流下液膜式蒸発器(100)内に配置され、前記複数のスプレー管(202)の上端は、前記複数のスプレー管(202)が互いに流体連通するように、互いに連通していることを特徴とする、態様1に記載の流下液膜式蒸発器。
〔態様8〕
前記スプレー管(202)の数は偶数であり、前記複数のスプレー管(202)は、前記液体入口管(102)を基準にして対称的に分配されていることを特徴とする、態様7に記載の流下液膜式蒸発器。
〔態様9〕
前記流下液膜式蒸発器(100)は液体入口ボックス(203)を更に備え、前記液体入口ボックス(203)は前記液体入口管(102)と前記スプレー管(202)との間に配置され、それにより、前記液体入口管(102)と前記スプレー管(202)は前記液体入口ボックス(203)によって互いに流体連通することができることを特徴とする、態様1に記載の流下液膜式蒸発器。
〔態様10〕
前記流下液膜式蒸発器(100)はカバー板(302)を更に備え、前記カバー板(302)は前記スプレー管(202)の上側部分に配置され、前記カバー板(302)の2つの側縁は前記有孔板(205)に向かって延び、密封態様で前記有孔板(205)の2つの側縁に直接的に又は間接的に接続されることを特徴とする、態様1に記載の流下液膜式蒸発器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15