(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】近赤外線吸収ガラスおよび近赤外線カットフィルタ
(51)【国際特許分類】
C03C 3/16 20060101AFI20250408BHJP
C03C 3/17 20060101ALI20250408BHJP
C03C 4/08 20060101ALI20250408BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C03C3/16
C03C3/17
C03C4/08
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2021567712
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048961
(87)【国際公開番号】W WO2021132645
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2019239885
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】金子 将士
(72)【発明者】
【氏名】塩田 勇樹
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-168455(JP,A)
【文献】特開2019-038719(JP,A)
【文献】特開昭57-149845(JP,A)
【文献】国際公開第2012/018026(WO,A1)
【文献】特開2014-125395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/16
C03C 3/17
C03C 3/247
C03C 4/08
G02B 5/22
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成イオンとして、
Pイオン、
Cuイオン、
Oイオン、
Liイオン、NaイオンおよびKイオンからなる群から選ばれる1種以上のイオン、ならびに、
Mgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンからなる群から選ばれる1種以上のイオン、
を少なくとも含み、
カチオン%表示のガラス組成において、
Cuイオンの含有量が5.1カチオン%以上15.0カチオン%以下であり、
Pイオンの含有量が30.0カチオン%以上55.0カチオン%以下であり、
Naイオンの含有量が0カチオン%以上1.0カチオン%以下であり、
Mgイオン、Caイオン、Srイオン、Baイオン、ZnイオンおよびCuイオンの合計含有量に対するAlイオンとPイオンとの合計含有量のカチオン比((Alイオン+Pイオン)/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン+Cuイオン))が5.300以下であり、
Liイオン、NaイオンおよびKイオンの合計含有量に対するMgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンの合計含有量のカチオン比((Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン)/(Liイオン+Naイオン+Kイオン))が0.100以上であり、
CuイオンおよびPイオンを除くカチオン類の平均価数が1.500未満であり、
アニオン%表示のガラス組成において、
Oイオンの含有量が85.0アニオン%以上であり、かつ
Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.300以上である、近赤外線吸収ガラス。
【請求項2】
カチオン%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量が30.0カチオン%以上50.0カチオン%以下である、請求項1に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項3】
カチオン%表示のガラス組成において、Liイオンの含有量が10.0カチオン%以上である、請求項1または2に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項4】
前記比率(Oイオン/Pイオン)が3.400以上である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項5】
カチオン%表示のガラス組成において、Mgイオン、Caイオン、Srイオン、BaイオンおよびZnイオンの合計含有量に対するZnイオンのカチオン比(Znイオン/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン))が0.600以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項6】
アニオン%表示のガラス組成において、Fイオンの含有量が10.0アニオン%以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項7】
厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長600nm以上で透過率が50%となる波長が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける透過率T1200が42.0%以下であり、かつ波長400nmにおける透過率T400が68.0%以上である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項8】
厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長600nm以上で透過率が50%となる波長が600nm~650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける透過率T1200が42.0%以下であり、かつ波長400nmにおける透過率T400が68.0%以上である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラス。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタ。
【請求項10】
厚みが0.25mm以下である、請求項
9に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項11】
厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長600nm以降で透過率が50%となる波長が600nm-650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける透過率T1200が42.0%以下であり、かつ波長400nmにおける透過率T400が68.0%以上である、請求項
9または
10に記載の近赤外線カットフィルタ。
【請求項12】
厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長600nm以降で透過率が50%となる波長が600nm-650nmの範囲にあり、波長1200nmにおける透過率T1200が42.0%以下であり、かつ波長400nmにおける透過率T400が68.0%以上である、請求項
9または
10に記載の近赤外線カットフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収ガラスおよび近赤外線カットフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外線カットフィルタは、CCDやCMOS等の撮像素子に入る光を人間の比視感度曲線に相当する光波長分布にするために、撮像素子の感度波長域における不要な近赤外光(波長700~1200nm)をカットする機能を有する。近赤外線カットフィルタは、一般に撮像素子の直前に設けられることが多い。
【0003】
近赤外線カットフィルタは、近赤外線吸収ガラスを基材とし、平板上に研磨加工されたものが広く用いられている。
【0004】
近赤外線吸収ガラスは、一般にCuイオンを含む。近赤外線吸収ガラスの分光透過特性の一例を
図1に示す。尚、
図1は、本発明を何ら限定するものではない。波長700~1200nm付近の光吸収特性は、ガラス中のCuイオン(Cu
2+)によって発現する。中でも、Cuイオンを含むリン酸塩ガラスは、Cuイオン(Cu
2+)のもつ近赤外線吸収特性を広範な波長域で示すことができるため、近赤外線カットフィルタ用のガラスとして有用である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
図1の波長600nm以降の透過率カーブおいて、透過率50%となる波長は「半値」と呼ばれ、近赤外線カットフィルタの主要規格の一つになっている。半値は、フィルタの仕様によって異なるが、波長600nm~650nmの範囲に設定されることが多い。半値を所望の値にする一般的な方法としては、ランベルト-ベールの法則にしたがい、ガラス基材の板厚か、ガラス中のCuイオン(Cu
2+)濃度のいずれかを調節する方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近赤外線カットフィルタには、近赤外線をカットする能力に優れること(即ち所望の半値を有しながら近赤外光の透過率が低いこと)とともに、可視光(波長400~600nm)の透過率が高いことも求められる。
【0008】
また、近年、スマートフォン等に搭載される撮像素子モジュールには、小型化と高性能化の両立が求められており、そのため近赤外線カットフィルタの板厚は薄肉化が要求されている。近赤外線をカットする能力を維持しつつ薄肉化するためには、ガラス中のCuイオン(Cu2+)の濃度を高める必要がある。しかしながらそのためにガラス原料中のCu成分の比率を単純に高くすると、熔解時にCu2+が還元されてできるCu+が増加し、特に波長400nm付近の透過率が低下してしまうことが知られている。
【0009】
更に、様々な使用環境下で透過率特性を維持するために、近赤外線カットフィルタには、高温高湿環境下において化学的耐久性が高いこと(即ち耐候性に優れること)が望まれる。
【0010】
上記に鑑み、本発明の一態様は、近赤外線カット能力に優れ、可視光透過率が高く、耐候性に優れる近赤外線吸収ガラス、および、かかる近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、可視光透過率を高くするために、ガラス組成を以下の2通りの観点から検討した。
(1)従来と比べて少ないCu量でも所望の半値と十分な近赤外線カット能力が得られるガラス組成。
(2)熔解時のCu+の生成を抑制するためには、ガラスをより低温で熔解・成形することが有効であるため、従来よりも原料バッチの熔解性に優れたガラス組成。
【0012】
(1)について、本発明者らは、Cu2+の周りにP2O5が配置された錯体状のガラス骨格を想定し、これらガラス骨格以外の中間成分である一価と二価のイオンの平均価数を小さくすることによって、Cu2+への電子の流入、即ちCu+の生成を抑制できることと、同時にCu2+の光吸収波長域がより短波長にシフトし、所望の半値を実現するために要するCu量を低減できることを見出した。
【0013】
(2)について、本発明者らは、AlやP等のガラスのネットワーク形成成分が占める割合を一定以下にすることで、ガラス原料バッチの熔解性を高め、従来よりも低温で熔解・成形可能となることを見出した。
【0014】
更に本発明者らは、ガラス全体のOとPの比率を一定以上にすることによっても、所望の半値を実現するために要するCu量を低減できること、更には耐水性に劣るP-O-Pの架橋結合の形成を抑制して耐候性を向上させることが可能になることを見出した。
【0015】
即ち、本発明の一態様は、
構成イオンとして、
Pイオン、
Cuイオン、
Oイオン、
Liイオン、NaイオンおよびKイオンからなる群から選ばれる1種以上のイオン、ならびに、
Mgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンからなる群から選ばれる1種以上のイオン、
を少なくとも含み、
カチオン%表示のガラス組成において、
Cuイオンの含有量が15.0カチオン%以下であり、
Pイオンの含有量が55.0カチオン%以下であり、
Mgイオン、Caイオン、Srイオン、Baイオン、ZnイオンおよびCuイオンの合計含有量に対するAlイオンとPイオンとの合計含有量のカチオン比((Alイオン+Pイオン)/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン+Cuイオン))が5.300以下であり、
Liイオン、NaイオンおよびKイオンの合計含有量に対するMgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンの合計含有量のカチオン比((Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン)/(Liイオン+Naイオン+Kイオン))が0.100以上であり、
CuイオンおよびPイオンを除くカチオン類の平均価数が1.500未満であり、
アニオン%表示のガラス組成において、
Oイオンの含有量が85.0アニオン%以上であり、かつ
Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.300以上である、近赤外線吸収ガラス。(以下、単に「ガラス」とも記載する。)、
に関する。
【0016】
上記近赤外線吸収ガラスは、上記のガラス組成を有することにより、優れた近赤外線カット能力、高い可視光透過率ならびに優れた耐候性および熔解性を有することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、近赤外線カット能力に優れ、可視光透過率が高く、耐候性および熔解性に優れる近赤外線吸収ガラスを提供することができる。更に、本発明の一態様によれば、かかる近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】近赤外線吸収ガラスの分光透過特性の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[近赤外線吸収ガラス]
本発明および本明細書において、近赤外線吸収ガラスとは、少なくとも近近赤外線の波長域(波長700~1200nm)の全領域または一部の波長の光を吸収する性質を有するガラスである。また、本発明の一態様にかかる近赤外線吸収ガラスは、構成イオンとしてOイオン(酸素イオン)を含むため、酸化物ガラスであることができる。酸化物ガラスとは、ガラスの主要ネットワーク形成成分が酸化物であるガラスである。更に、本発明の一態様にかかる近赤外線吸収ガラスは、構成イオンとしてOイオン(酸素イオン)とともにPイオン(リンイオン)を含むため、リン酸塩ガラスであることができる。
【0020】
以下、上記近赤外線吸収ガラスについて、更に詳細に説明する。
【0021】
<ガラス組成>
本発明および本明細書において、カチオン類(カチオン成分)の含有量および合計含有量は特記しない限りカチオン%で表示するものとし、アニオン類(アニオン成分)の含有量および合計含有量は特記しないアニオン%で表示するものとする。
ここで、「カチオン%」とは、「(注目するカチオンの個数/ガラス成分のカチオンの総数)×100」で算出される値であって、注目するカチオン量のカチオンの総量に対するモル百分率を意味する。
また、「アニオン%」とは、「(注目するアニオンの個数/ガラス成分のアニオンの総数)×100」で算出される値であって、注目するアニオン量のアニオンの総量に対するモル百分率を意味する。
カチオン類同士の含有量のモル比は、注目するカチオンのカチオン%表示による含有量の比に等しく、アニオン類同士の含有量のモル比は、注目するアニオンのアニオン%表示による含有量の比に等しい。
カチオンの含有量とアニオンの含有量のモル比は、すべてのカチオン類とすべてのアニオン類の総量を100モル%としたときの注目する成分同士の含有量(モル%表示)の比率である。
各成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、イオンクロマトグラフィ法等により、ガラス中に含まれる元素の含有率(元素の質量%)を定量することができる。この元素の含有率(元素の質量%)を原子量で除することにより、モル%表示の各元素の含有量を求めることができ、その値からカチオン%とアニオン%を求めることができる。
また、本発明および本明細書において、構成成分の含有量が0%または含まないもしくは導入しないとは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分が不可避的不純物レベルで含まれることは許容される。不可避的不純物レベルとは、例えば、0.01%未満であることを意味する。
【0022】
カチオン類の価数について、詳細を後述する平均価数を求めるためには、各カチオンの形式価数を用いる。形式価数とは、注目するカチオンの酸化物について、酸化物を構成する酸素イオン(アニオン)の価数を-2としたときに酸化物が電気的中性を保つために必要な価数であり、酸化物の化学式から一義的に求めることができる。例えば、Cuイオンについては、酸化物CuOの化学式に含まれるO2-とCuとの電気的中性を保つためにCuの価数は+2となる。また、例えばPイオンについては、酸化物P2O5の化学式に含まれるO2-とPとの電気的中性を保つためにPの価数は+5となる。これを一般化すると、カチオンAXOYの形式価数は「+2X/Y」となる。したがって、ガラス組成を分析する際、カチオンの価数まで分析しなくてよい。また、アニオンの価数(例えば酸素イオンの価数が-2)についても、酸素イオンが2つの電子を受容し閉殻構造を取るという考えに基づいた形式価数である。したがって、ガラス組成を分析する際、アニオンの価数まで分析しなくてよい。また、上記の通り、Cu2+の一部は熔解時にCu+となり得るが、その量はわずかであるので、平均価数を求めるにあたってはCuの価数は全て+2として差支えない。
【0023】
(カチオン類)
Pイオンは、ガラスのネットワーク形成成分である。上記ガラスのPイオン含有量は、耐候性向上および熔解性向上の観点から、55.0%以下であり、53.0%以下であることが好ましく、51.0%以下であることがより好ましく、50.0%以下であることが更に好ましく、49.0%以下であることが一層好ましく、48.0%以下であることがより一層好ましく、47.0%以下であることが更に一層好ましく、46.0%以下であることがなお一層好ましく、45.0%以下であることがなおより一層好ましく、44.0%以下であることがなお更により一層好ましい。上記ガラスは構成イオンとしてPイオンを含むため、Pイオン含有量は、0%超である。ガラス熔解時の耐失透性の向上とガラスの機械的強度向上の観点からは、Pイオン含有量は、30.0%以上であることが好ましく、32.0%以上であることがより好ましく、34.0%以上であることが更に好ましく、36.0%以上であることが一層好ましく、38.0%以上であることがより一層好ましく、39.0%以上であることが更に一層好ましく、40.0%以上であることがなお一層好ましく、41.0%以上であることがなお更に一層好ましい。Pイオンの形式価数は、+5である。
【0024】
Cuイオンは、ガラスに近赤外線カット能力をもたらすことに寄与する成分である。可視光透過率を高める観点から、上記ガラスのCuイオン含有量は、15.0%以下であり、13.0%以下であることが好ましく、11.0%以下であることがより好ましく、9.0%以下であることが更に好ましい。上記ガラスは構成イオンとしてCuイオンを含むため、Cuイオン含有量は0%超である。十分な近赤外線カット能力を有するためには、Cuイオン含有量は、0.5%以上であることが好ましく、1.5%以上であることがより好ましく、2.5%以上であることが更に好ましい。
詳細を後述するように、上記ガラスは、一形態では、厚みが0.25mm以下の近赤外線カットフィルタ用ガラスとして使用することができる。
上記厚みの範囲の中でも厚みが比較的薄い近赤外線カットフィルタに適するガラス(以下、「ガラスI」とも記載する。)としては、Cuイオン含有量は、1.5%以上であることが好ましく、1.7%以上、1.9%以上、2.1%以上、2.3%以上、2.5%以上、2.7%以上、2.9%以上、3.1%以上、3.3%以上、3.5%以上、3.7%以上、3.9%以上、4.1%以上、4.5%以上、4.7%以上、4.9%以上、5.1%以上の順により好ましい。
また、かかる近赤外線カットフィルタにおいて可視光透過率を更に高める観点からは、ガラスIのCuイオン含有量は、15.0%以下であることが好ましく、13.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、8.5%以下、8.0%以下、7.5%以下、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下の順により好ましい。
上記の好ましい範囲に、(0.11/d)を乗ずることにより、所望の厚みをもつ近赤外線カットフィルタに適するガラスに含有すべきCuイオンの好ましい値を求めることができる。d はCuイオンの好ましい値を求めたい厚みであり、単位はmmである。
また、0.25mm以下の範囲の厚みの中でも厚みが比較的厚い近赤外線カットフィルタに適するガラス(以下、「ガラスII」とも記載する。)については、一形態では、Cuイオンの好ましい範囲は、上記の好ましい範囲に、(0.11/d)を乗ずることにより求めることができる。
また、ガラスIIについては、一形態では、Cuイオン含有量は、0.5%以上であることが好ましく、0.7%以上、0.9%以上、1.1%以上、1.3%以上、1.5%以上、1.7%以上、1.9%以上、2.1%以上、2.3%以上、2.5%以上の順により好ましい。また、かかる近赤外線カットフィルタにおいて可視光透過率を更に高める観点からは、一形態では、ガラスIIのCuイオン含有量は、10.0%以下であることが好ましく、9.0%以下、8.5%以下、8.0%以下、7.5%以下、7.0%以下、6.5%以下、6.0%以下、5.5%以下、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下の順により好ましい。Cuイオンの形式価数は、+2である。
【0025】
上記ガラスのLiイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Liイオンは、ガラスの熔解・成形時の耐失透性を改善する働きを有する成分である。ガラスの熔解性を高める観点からは、Liイオン含有量は、10.0%以上であることが好ましく、12.0%以上であることがより好ましく、13.0%以上であることが更に好ましく、14.0%以上であることが一層好ましく、15.0%以上であることがより一層好ましく、16.0%以上であることが更に一層好ましく、17.0%以上であることが更により一層好ましく、18.0%以上であることがなお一層好ましく、20.0%以上であることがなおより一層好ましく、20.5%以上であることがなお更に一層好ましく、21.0%以上であることがなお更により一層好ましく、更には、21.5%以上、22.0%以上、22.5%以上、23.0%以上、23.5%以上、24.0%以上、24.5%以上、25.0%以上、25.5%以上、26.0%以上の順に更になおより一層好ましい。また、ガラスの化学的耐久性および/または加工性の向上、あるいはガラスの液相粘度を高める観点からは、Liイオン含有量は、32.0%以下であることが好ましく、31.0%以下であることがより好ましく、30.5%以下であることが更に好ましく、30.0%以下であることが一層好ましく、29.5%以下であることがより一層好ましく、29.0%以下であることが更に一層好ましく、28.5%以下であることが更になお一層好ましく、28.0%以下であることが更により一層好ましく、27.5%以下であることが特に一層好ましい。Liイオンの形式価数は、+1である。一形態では、上記観点からは、「Liイオン含有量>Naイオン含有量」とすることが好ましく、「Liイオン含有量>Kイオン含有量」とすることが好ましい。
【0026】
上記ガラスのNaイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Naイオンもガラスの熔解性を改善する働きを有する成分である。一形態では、LiまたはKを主に使用することが好ましい。具体的にはガラスの耐失透性の向上、液相温度における粘性の向上、ならびに化学的耐久性および/または加工性の向上の観点からは、Naイオン含有量は、30.0%以下であることが好ましく、28.0%以下であることがより好ましく、27.0%以下であることが更に好ましく、25.0%以下であることが一層好ましく、23.0%以下であることがより一層好ましく、21.0%以下であることが更に一層好ましく、19.0%以下であることがなお一層好ましく、17.0%以下であることがなおより一層好ましく、15.0%以下であることがなお更に一層好ましく、13.0%以下であることがなお更により一層好ましく、更には、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下、0.5%以下の順に更により一層好ましい。Naイオンの形式価数は、+1である。一形態では、上記観点からは、「Naイオン含有量<Liイオン含有量」とすることが好ましく、「Naイオン含有量<Kイオン含有量」とすることが好ましい。
【0027】
上記ガラスのKイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Kイオンもガラスの熔解性を向上させ、更に熔解・成形時の耐失透性を改善する働きを有する成分である。これらの観点から、Kイオン含有量は、3.0%以上であることが好ましく、4.0%以上であることがより好ましく、5.0%以上であることが更に好ましく、6.0%以上であることがより一層好ましく、7.0%以上であることが更により一層好ましく、8.0%以上であることがなお一層好ましく、9.0%以上であることがなおより一層好ましく、10.0%以上であることがなお更により一層好ましい。一方、ガラスの液相温度における粘性の向上、化学的耐久性および/または加工性の向上の観点からは、Kイオン含有量は、20.0%以下であることが好ましく、19.0%以下であることがより好ましく、17.0%以下であることが更に好ましく、15.0%以下であることが一層好ましく、14.5%以下であることがより一層好ましく、14.0%以下であることが更に一層好ましく、13.5%以下であることがなお一層好ましく、13.0%以下であることがなおより一層好ましく、12.5%以下であることがなお更により一層好ましく、12.3%以下であることが特に好ましい。Kイオンの形式価数は、+1である。一形態では、上記観点からは、「Kイオン含有量<Liイオン含有量」とすることが好ましく、「Kイオン含有量>Naイオン含有量」とすることが好ましい。
【0028】
上記ガラスは、構成イオンとして、Liイオン、NaイオンおよびKイオンからなる群から選ばれる1種以上のイオンを含む。即ち、上記ガラスは、一形態ではLiイオンのみを含むことができ、他の一形態ではNaイオンのみを含むことができ、他の一形態ではKイオンのみを含むことができ、他の一形態ではLiイオンおよびNaイオンを含むことができ、他の一形態ではLiイオンおよびKイオンを含むことができ、また他の一形態ではNaイオンおよびKイオンを含むことができ、更に他の一形態ではLiイオン、NaイオンおよびKイオンを含むことができる。
【0029】
上記ガラスは、Liイオン、NaイオンおよびKイオン以外の他のアルカリ金属イオンを含むこともできる。他のアルカリ金属イオンとしては、Csイオンを挙げることができる。上記ガラスのCsイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Csイオンの形式価数は、+1である。
【0030】
平均価数を低下させ可視光透過率を高める観点からは、Liイオン、NaイオンおよびKイオンの合計含有量は、19.0%以上であることが好ましく、21.0%以上であることがより好ましく、23.0%以上であることが更に好ましく、25.0%以上であることが一層好ましく、27.0%以上であることがより一層好ましく、28.0%以上であることが更に一層好ましく、29.0%以上であることが更により一層好ましく、30.0%以上であることがなお一層好ましく、30.5%以上であることがなおより一層好ましく、31.0%以上であることがなお更により一層好ましく、更には、32.0%以上、32.5%以上、33.0%以上、33.5%以上、34.0%以上、34.5%以上、35.0%以上、35.5%以上、36.0%以上、36.5%以上、37.0%以上、37.5%以上、38.0%以上、38.5%以上、39.0%以上、39.1%以上の順に好ましい。また、耐候性の更なる向上、ガラス転移温度の低下抑制および/または液相温度における粘度の低下抑制の観点からは、Liイオン、NaイオンおよびKイオンの合計含有量は、56.0%以下であることが好ましく、54.0%以下であることがより好ましく、52.0%以下であることが更に好ましく、50.0%以下であることが一層好ましく、48.0%以下であることがより一層好ましく、46.0%以下であることが更に一層好ましく、45.0%以下であることが更により一層好ましく、更には、44.0%以下、43.0%以下、42.5%以下、42.0%以下、41.5%以下、41.0%以下、40.5%以下、40.0%以下、39.5%以下の順になお更に一層好ましい。
【0031】
上記ガラスのMgイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。ガラスの液相粘度の低下の抑制、ガラスの機械的強度の補強、および/または耐薬品性の補強の観点から、Mgイオン含有量は、0.3%以上であることが好ましく、0.5%以上であることがより好ましく、0.8%以上であることが更に好ましく、1.1%以上であることが一層好ましく、1.3%以上であることがなおより一層好ましい。また、熔解成形時の耐失透性の更なる向上の観点からは、Mgイオン含有量は、7.0%以下であることが好ましく、6.0%以下であることがより好ましく、5.0%以下であることが更に好ましく、4.0%以下であることが一層好ましく、3.5%以下であることがより一層好ましく、3.0%以下であることが更に一層好ましく、2.5%以下であることがなお一層好ましく、2.0%以下であることがなおより一層好ましく、1.8%以下であることがなお更により一層好ましい。Mgイオンの形式価数は、+2である。一形態では、上記観点からは、「Mgイオン含有量<Caイオン含有量」とすることが好ましく、「Mgイオン含有量<Baイオン含有量」とすることが好ましい。
【0032】
上記ガラスのCaイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。ガラスの液相粘度の低下の抑制、ガラスの機械的強度の補強、耐薬品性の補強の観点から、Caイオン含有量は、1.3%以上であることが好ましく、1.5%以上であることがより好ましく、1.7%以上であることが更に好ましく、1.9%以上であることが一層好ましく、2.1%以上であることがなおより一層好ましく、2.3%以上であることがなお更に一層好ましく、2.5%以上であることがなお更により一層好ましく、2.7%以上であることが特に好ましい。また、熔解・成形時の耐失透性の更なる向上の観点からは、Caイオン含有量は、9.0%以下であることが好ましく、8.0%以下であることがより好ましく、7.0%以下であることが更に好ましく、6.0%以下であることが一層好ましく、5.0%以下であることがより一層好ましく、4.5%以下であることが更に一層好ましく、4.2%以下であることがなお一層好ましく、3.9%以下であることがなおより一層好ましく、3.7%以下であることがなお更により一層好ましく、3.5%以下であることが特に好ましい。Caイオンの形式価数は、+2である。一形態では、上記観点からは、「Caイオン含有量>Mgイオン含有量」とすることが好ましく、「Caイオン含有量>Srイオン含有量」とすることが好ましい。
【0033】
上記ガラスのSrイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。ガラスの液相粘度の低下の抑制、ガラスの機械的強度の補強、耐薬品性の補強の観点から、Srイオン含有量は、0.2%以上であることが好ましく、0.4%以上であることがより好ましく、0.6%以上であることが更に好ましく、0.8%以上であることが一層好ましく、0.9%以上であることがより一層好ましい。また、熔解成形時の耐失透性の更なる向上の観点からは、Srイオン含有量は、4.0%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがより好ましく、3.3%以下であることが更に好ましく、3.1%以下であることが一層好ましく、2.7%以下であることがより一層好ましく、2.5%以下であることが更に一層好ましく、2.3%以下であることが更により一層好ましく、2.1%以下であることがなお一層好ましく、1.9%以下であることがなおより一層好ましく、1.7%以下であることがなお更により一層好ましく、1.5%以下であることが特に好ましい。Srイオンの形式価数は、+2である。一形態では、上記観点からは、「Srイオン含有量<Caイオン含有量」とすることが好ましく、「Srイオン含有量<Baイオン含有量」とすることが好ましい。
【0034】
上記ガラスのBaイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。ガラスの液相粘度の低下の抑制、ガラスの機械的強度の補強、耐薬品性の補強の観点から、Baイオン含有量は、1.5%以上であることが好ましく、2.5%以上であることがより好ましく、2.9%以上であることが更に好ましく、3.1%以上であることが一層好ましく、3.3%以上であることがより一層好ましく、3.5%以上であることがなお一層好ましい。また、熔解・成形時の耐失透性の更なる向上の観点からは、Baイオン含有量は、10.0%以下であることが好ましく、9.5%以下であることがより好ましく、9.0%以下であることが更に好ましく、8.5%以下であることが一層好ましく、8.0%以下であることがより一層好ましく、7.5%以下であることが更に一層好ましく、7.0%以下であることが更により一層好ましく、6.5%以下であることがなお一層好ましく、6.0%以下であることがなおより一層好ましく、5.6%以下であることがなお更に一層好ましく、5.3%以下であることがなお更により層好ましく、更には、5.0%以下、4.7%以下、4.5%以下、4.3%以下の順になお更に一層好ましい。Baイオンの形式価数は、+2である。一形態では、上記観点からは、「Baイオン含有量>Caイオン含有量」とすることが好ましく、「Baイオン含有量>Srイオン含有量」とすることが好ましい。
【0035】
上記ガラスは、Mgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンからなる群から選ばれる1種以上のイオンを含む。平均価数を低下させ可視光透過率を高める観点からは、Mgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンの合計含有量が少ないことは好ましい。
Mgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンの合計含有量は、上記の観点および熔解性の更なる向上の観点からは、20.0%以下であることが好ましく、19.0%以下であることがより好ましく、18.0%以下であることが更に好ましく、17.5%以下であることが一層好ましく、17.0%以下であることがより好ましく、16.5%以下であることが更に好ましく、16.0%以下であることが更により一層好ましく、15.5%以下であることがなお一層好ましく、15.0%以下であることがなおより一層好ましく、14.5%以下であることがなお更に一層好ましく、14.0%以下であることがなお更により好ましく、更には、13.5%以下、13.0%以下、12.5%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.5%以下、10.0%以下の順に更により一層好ましい。また、Mgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンの合計含有量は、液相温度の低下抑制、耐候性向上の観点からは、3.0%以上であることが好ましく、4.0%以上であることがより好ましく、4.5%以上であることが更に好ましく、5.0%以上であることが一層好ましく、5.5%以上であることがより一層好ましく、6.0%以上であることが更に一層好ましく、6.5%以上であることが更により一層好ましく、7.0%以上であることがなお一層好ましく、7.5%以上であることがなお更により好ましく、更には、8.0%以上、8.5%以上、9.0%以上の順になおより一層好ましい。
【0036】
上記ガラスは、液相温度における粘度の低下を抑制する観点、機械的強度の向上および/またはガラス転移温度の低下抑制の観点から、Liイオン、NaイオンおよびKイオンの合計含有量に対するMgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンの合計含有量のカチオン比((Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン)/(Liイオン+Naイオン+Kイオン))が0.100以上であり、0.105以上であることが好ましく、0.110以上であることがより好ましく、0.115以上であることが更に好ましく、0.120以上であることが一層好ましく、0.125以上であることがより一層好ましく、0.130以上であることが更に一層好ましく、更には、0.160以上、0.180以上、0.200以上、0.220以上の順に一層好ましい。液相温度における粘度の低下を抑制することは、ガラスの成形性向上の観点から好ましい。また、熔解性およびまたは可視光透過率の更なる向上の観点から、上記カチオン比((Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン)/(Liイオン+Naイオン+Kイオン))は、0.650以下であることが好ましく、0.620以下であることがより好ましく、0.590以下であることが更に好ましく、0.560以下であることが一層好ましく、0.530以下であることがより一層好ましく、0.500以下であることが更に一層好ましく、0.460以下であることが更により一層好ましく、0.430以下であることがなお一層好ましく、0.400以下であることがなおより一層好ましく、0.370以下であることがなお更により一層好ましく、更には、0.350以下、0.320以下、0.310以下、0.300以下、0.295以下、0.290以下、0.287以下、0.285以下の順に更により一層好ましい。
また、ガラスの熔解温度が高くなることによってCu+が生成しやすくなり可視光透過率が低下するため、上記カチオン比は上記範囲にすることが好ましい。
【0037】
上記ガラスのAlイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。Tg低下の抑制および機械的強度の向上ならびに耐候性の向上の観点から、Alイオン含有量は、1.0%以上であることが好ましく、1.3%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましく、1.7%以上であることが一層好ましく、1.9%以上であることがより一層好ましく、2.1%以上であることが更に一層好ましく、2.3%以上であることがなお一層好ましく、2.5%以上であることがなお更に一層好ましい。また、原料の熔解性をより一層高めCu+の生成を更に抑制する観点からは、Alイオン含有量は、8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下であることがより好ましく、6.5%以下であることが更に好ましく、6.0%以下であることが一層好ましく、5.5%以下であることがより一層好ましく、5.3%以下であることが更に一層好ましく、5.0%以下であることが更により一層好ましく、4.7%以下であることがなお一層好ましく、4.5%以下であることがなお更により一層好ましく、更には4.0%以下、2.5%以下、2.0%以下であることが好ましい。Alイオンの形式価数は、+3である。平均価数を低下させ可視光透過率を高める観点からも、Alイオン含有量が少ないことは好ましい。
【0038】
上記ガラスのAlイオンとPイオンとの合計含有量(Alイオン+Pイオン)は、ガラスの熱的安定性や機械的強度を高める観点からは、40.0%以上であることが好ましく、41.0%以上であることがより好ましく、42.0%以上であることが更に好ましく、42.5%以上であることが一層好ましく、43.0%以上であることがより一層好ましく、44.0%以上であることが更に一層好ましく、44.5%以上であることが更により一層好ましく、45.0%以上であることがなお一層好ましい。また、原料の熔解性をより一層高めCu+の生成を更に抑制する観点からは、上記合計含有量(Alイオン+Pイオン)は、55.0%以下であることが好ましく、54.0%以下であることがより好ましく、53.0%以下であることが更に好ましく、52.0%以下であることが一層好ましく、51.0%以下であることがより一層好ましく、50.0%以下であることが更に一層好ましく、49.5%以下であることが更により一層好ましく、49.0%以下であることがなお一層好ましく、48.5%以下であることがなお更に一層好ましく、48.0%以下であることがなお更により一層好ましく、更には、47.0%以下、46.5%以下、46.2%以下、46.0%以下であることが更に一層好ましい。
【0039】
上記ガラスのZnイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができる。ガラスのTgを低下させる観点から、Znイオン含有量は、各種成分により奏される作用に大きな影響を及ぼさない範囲で上記Mgおよび/またはCaおよび/またはSrおよび/またはBaの代わりに導入することができる。しかし耐候性向上の観点から、Znイオン含有量は、8.7%以下であることが好ましく、8.5%以下であることがより好ましく、8.3%以下であることが更に好ましく、8.0%以下であることが一層好ましく、7.7%以下であることがより一層好ましく、7.5%以下であることが更に一層好ましく、7.3%以下であることが更により一層好ましく、7.1%以下であることがなお一層好ましく、6.5%以下であることがなお更に一層好ましく、6.0%以下であることがなお更により一層好ましく、更には、5.5%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下の順に更に一層好ましい。Znイオンの形式価数は、+2である。
【0040】
上記ガラスは、耐候性向上の観点から、Mgイオン、Caイオン、Srイオン、BaイオンおよびZnイオンの合計含有量に対するZnイオンのカチオン比(Znイオン/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン))が0.600以下であることが好ましく、0.580以下であることがより好ましく、0.570以下であることが更に好ましく、0.560以下であることが一層好ましく、更には、0.550以下、0.540以下、0.530以下、0.520以下、0.510以下、0.505以下、0.500以下、0.498以下、0.496以下、0.400以下、0.300以下、0.200以下、0.100以下、0.080以下、0.060以下、0.040以下、0.020以下の順により一層好ましい。また、上記カチオン比(Znイオン/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン))は、0であってもよく、0.000であってもよい。
【0041】
上記ガラスは、原料の熔解性を高めCu+の生成を抑制する観点から、Mgイオン、Caイオン、Srイオン、Baイオン、ZnイオンおよびCuイオンの合計含有量に対するAlイオンとPイオンとの合計含有量のカチオン比((Alイオン+Pイオン)/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン+Cuイオン))が5.3以下であり、5.1以下であることが好ましく、4.9以下であることがより好ましく、4.7以下であることが更に好ましく、4.5以下であることが一層好ましく、更には、4.3以下、4.1以下、3.9以下、3.7以下、3.5以下、3.3以下、3.1以下の順により一層好ましい。また、ガラスの熱的安定性の向上および機械的強度向上の観点からは、上記カチオン比((Alイオン+Pイオン)/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン+Cuイオン))は、1.6以上であることが好ましく、1.63以上であることがより好ましく、1.65以上であることが更に好ましく、更には、1.68以上、1.7以上、1.75以上、1.8以上、1.85以上、2.00以上、2.20以上、2.40以上、2.60以上、2.80以上の順に一層好ましい。
【0042】
上記ガラスは、更にカチオン類として、以下のカチオンの1種以上を任意に含むことができる。
【0043】
Yイオン、Laイオン、Gdイオン、Ybイオン等の希土類原子のイオンは、ガラスに少量導入されることにより、耐候性の更なる向上、耐薬品性の向上、ガラス転移温度の低下の抑制および/または液相温度における粘度低下の抑制に寄与し得る。これら希土類原子のイオンの含有量は、それぞれ、0%、0%以上または0%超であることができ、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下または0.5%以下であることもできる。Yイオン、Laイオン、GdイオンおよびYbイオンの形式価数は、+3である。
【0044】
Ti、Zr、Nb、WおよびBiは、少量を添加する事により、ガラスの耐候性の向上、耐薬品性の向上、また、Tg低下の抑制、液相粘度低下の抑制に寄与する成分である。
Tiイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができ、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが一層好ましい。Tiイオンの形式価数は、+4である。
Zrイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができ、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが一層好ましい。Zrイオンの形式価数は、+4である。
Nbイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができ、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが一層好ましい。Nbイオンの形式価数は、+5である。
Wイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができ、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが一層好ましい。Wイオンの形式価数は、+6である。
Biイオン含有量は、0%、0%以上または0%超であることができ、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることが更に好ましく、0.5%以下であることが一層好ましい。Biイオンの形式価数は、+3である。
【0045】
上記ガラスは、可視光透過率の向上の観点から、CuイオンおよびPイオンを除くカチオン類の平均価数が1.500未満であり、1.490以下であることが好ましく、1.480以下であることがより好ましく、1.470以下であることが更に好ましく、1.460以下であることが一層好ましく、1.450以下であることがより一層好ましく、1.440以下であることが更に一層好ましく、1.430以下であることがなお一層好ましく、更には、1.420以下、1.410以下、1.400以下、1.390以下、1.380以下、1.370以下、1.360以下、1.350以下の順に更に一層好ましい。また、CuイオンおよびPイオンを除くカチオン類の平均価数は、液相温度における粘度の低下を抑制する観点からは、1.100以上であることが好ましく、1.1500以上であることがより好ましく、1.200以上であることがより好ましく、1.250以上であることが更に好ましく、1.270以上であることが一層好ましく、1.280以上であることがより一層好ましく、1.290以上であることが更に一層好ましく、1.300以上であることが更により一層好ましい。例えばガラスの厚みや透過率が50%となる波長を調整するにあたってCu濃度を変化させる際に、上記平均価数を参照して組成を再調整することもできる。
【0046】
上記の平均価数は、CuイオンおよびPイオンを除くカチオン類について、「各カチオンのカチオン%での含有量×そのカチオンの形式価数」の総和を、CuおよびPを除くカチオンのカチオン%での含有量の合計で除した値として求められる。例えば、CuイオンおよびPイオンに加えて、Aカチオン(形式価数a、カチオン%での含有量A%)、Bカチオン(形式価数b、カチオン%での含有量B%)およびCカチオン(形式価数c、カチオン%での合計含有量C%)を含むガラスについて、上記の平均価数は、「(A×a+B×b+C×c)/(A+B+C)」として求められる。
【0047】
上記ガラスは、ガラスの厚みや透過率が50%となる波長を調整するにあたってCu濃度を変化させる際に、Cuイオンを含む平均価数を参照することもできる。Pイオンのみを除くカチオン類(したがってCuイオンを含む)について、上記と同様に求められるカチオン類の平均価数は、可視光透過率の更なる向上の観点からは、1.550以下であることが好ましく、1.540以下であることがより好ましく、1.530以下であることが更に好ましく、1.520以下であることが一層好ましく、1.510以下であることがより一層好ましく、1.500以下であることが更に一層好ましく、更には、1.490以下、1.480以下、1.470以下、1.460以下、1.450以下、1.440以下、1.430以下、1.420以下、1.410以下、1.400以下の順になお一層好ましい。また、液相温度における粘度の低下を抑制する観点からは、Pイオンのみを除くカチオン類の平均価数は、1.300以上であることが好ましく、1.310以上であることがより好ましく、1.320以上であることが更に好ましく、1.330以上であることが一層好ましく、1.340以上であることがより一層好ましく、1.350以上であることが更に一層好ましく、1.360以上であることが更により一層好ましい。
【0048】
(アニオン類)
上記ガラスは構成イオンとしてOイオンを含む。Oイオン含有量は、ガラスの熔融時の均質化を容易にし、生産性を高める観点から、85.0%以上であり、90.0%以上であることが好ましく、95.0%以上であることがより好ましく、98.0%以上であることが更に好ましく、99.0%以上であることが一層好ましい。特にガラス溶融時の揮発を抑え、生産性を高めると共に製造時の有害ガスの発生を抑える観点からは、Oイオンの含有量が100%であることが好ましい。尚、Oイオンの形式価数は、-2である。
【0049】
上記ガラスは、アニオン類として、一形態ではOイオンのみを含むことができ、他の一形態ではOイオンとともに他のアニオン類を1種以上含むことができる。他のアニオン類としては、Fイオン、Clイオン、Brイオン、Iイオン等を挙げることができる。尚、Fイオン、Clイオン、Brイオン、Iイオンの形式価数は、-1である。
【0050】
Fイオンの含有量は、ガラスの均質性向上および強度向上の観点から、15.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましく、5.0%以下であることが更に好ましく、2.0%以下であることが一層好ましく、1.0%以下であることがより一層好ましい。特にガラス溶融時の揮発を抑え、生産性を高めると共に製造時の有害ガスの発生を抑える観点からは、Fイオンを含まないこともできる。
【0051】
上記ガラスは、耐候性向上の観点から、Pイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.300以上であり、3.310以上であることが好ましく、3.320以上であることが更に好ましく、3.330以上であることが一層好ましく、更には、3.340以上、3.350以上、3.360以上、3.370以上、3.380以上、3.390以上、3.400以上、3.410以上、3.420以上、3.430以上、3.440以上、3.450以上、3.460以上の順により一層好ましい。また、ガラスの熔解・成形時の耐失透性や近赤外線カット能力の更なる向上の観点からは、上記比率(Oイオン/Pイオン)は、3.580以下であることが好ましく、3.570以下であることがより好ましく、3.560以下であることが更に好ましく、3.550以下であることが一層好ましく、3.540以下であることがより一層好ましく、3.530以下であることが更に一層好ましく、更には、3.520以下、3.510以下、3.500以下、3.490以下の順に更に一層好ましい。
【0052】
上記ガラスは、基本的に上記成分により構成されることが好ましいが、上記成分が奏する作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有させることも可能である。また、上記ガラスについて、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0053】
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、上記ガラスはこれらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0054】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、上記ガラスはこれらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0055】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pr,Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ceは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、上記ガラスでは、これら元素の酸化物ガラス基準での酸化物換算での含有量は総量で10質量ppm以下とすることが好ましく、これら元素をガラス成分として含有しないことがより好ましい。
【0056】
Ge、Ta、Gdは高価な原料である。そのため、上記ガラスは、これらをガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0057】
Sb(Sb2O3)、Sn(SnO2)、Ce(CeO2)、およびSO3は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb2O3)は、清澄効果の大きな清澄剤である。
Sn(SnO2)、Ce(CeO2)は、Sb(Sb2O3)と比較し、清澄効果が小さい。これら清澄剤は、多量に添加するとガラスの着色が強まる傾向がある。したがって、清澄剤を添加する場合は、添加による着色の影響を考慮しつつ、Sb(Sb2O3)を添加することが好ましい。
【0058】
以下に記載の清澄剤として機能し得る成分の含有量については、酸化物換算した値を示す。
【0059】
Sb2O3の含有量は、外割り表示とする。即ち、Sb2O3、SnO2、CeO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSb2O3の含有量は、一形態では、1.0質量%未満、0.5質量%未満、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.15質量%以下、0.1質量%以下または0.1質量%未満であることができる。一形態では、Sb2O3の含有量は0質量%であることができる。また、他の一形態では、Sb2O3の含有量は0質量%超であることができる。熔解中にCu2+が還元されることによる着色を抑制することで可視光透過率を高める観点からは、Sb2O3の含有量は、0質量%超であることが好ましく、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.08質量%以上、0.10質量%以上の順により好ましい。
【0060】
SnO2の含有量も、外割り表示とする。即ち、SnO2、Sb2O3、CeO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSnO2の含有量は、好ましくは2.0質量%未満、より好ましくは1.0質量%未満、更に好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満の範囲である。SnO2の含有量は0質量%であってもよい。SnO2の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0061】
CeO2の含有量も、外割り表示とする。即ち、CeO2、Sb2O3、SnO2およびSO3以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのCeO2の含有量は、好ましくは2.0質量%未満、より好ましくは1.0質量%未満、更に好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満の範囲である。CeO2の含有量は0質量%であってもよい。CeO2の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0062】
SO3の含有量も、外割り表示とする。即ち、SO3、Sb2O3、SnO2、CeO2以外の全ガラス成分の酸化物としての合計含有量を100.0質量%としたときのSO3の含有量は、好ましくは2.0質量%未満、より好ましくは1.0質量%未満、更に好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満の範囲である。SO3の含有量は0質量%であってもよい。SO3の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0063】
<ガラス物性>
(透過率特性)
上記ガラスは、近赤外線カットフィルタ用ガラスとして好適である。近赤外線カット能力については、波長600nm以上で分光透過率が50%になる波長である半値を指標とすることができ、波長1200nmにおける透過率T1200を指標とすることもできる。
また、上記ガラスは、高い可視光透過率を示すこともできる。可視光透過率については、波長400nmにおける透過率T400を指標とすることができる。
上記ガラスは、詳細を後述するように、一形態では、厚みが0.25mm以下の近赤外線カットフィルタ用ガラスとして使用することができる。
上記厚みの範囲の中でも厚みが比較的薄い近赤外線カットフィルタに適するガラス(ガラスI)としては、厚み0.11mm換算の透過率特性として、半値は650nm以下が好ましく、更には、647nm以下、645nm以下、643nm以下、641nm以下、640nm以下、639nm以下、638nm以下の順により好ましい。
ガラスIについて、厚み0.11mm換算の透過率特性として、半値は600nm以上が好ましく、610nm以上、613nm以上、615nm以上、617nm以上、620nm以上、623nm以上、625nm以上、628nm以上の順により好ましい。
ガラスIについて、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長1200nmにおける透過率T1200は、42.0%以下であることが好ましく、更には、41.0%以下、40.0%以下、39.0%以下、38.5%以下、38.0%以下、37.5%以下、37.0%以下、36.5%以下、36.0%以下、35.5%以下、35.0%以下の順により好ましい。
ガラスIについて、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長1200nmにおける透過率T1200は、例えば10.0%以上、12.0%以上または14.0%以上であることができるが、かかる透過率がより低いことは近赤外線カット能力により優れることを意味するということができるため、上記例示した値を下回ることも好ましい。
また、ガラスIとしては、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長400nmにおける透過率T400は、68.0%以上であることが好ましく、70.0%以上であることがより好ましく、更には、71.0%以上、72.0%以上、73.0%以上、74.0%以上、75.0%以上、76.0%以上、77.0%以上、78.0%以上、79.0%以上、80.0%以上、の順により好ましい。
ガラスIについて、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長400nmにおける透過率T400は、例えば98.0%以下、97.0%以下または96.0%以下であることができるが、かかる透過率がより高いことは可視光透過性により優れることを意味するということができるため、上記例示した値を上回ることも好ましい。
また、上記厚みの範囲の中でも厚みが比較的厚い近赤外線カットフィルタに適するガラス(ガラスII)としては、厚み0.21mm換算の透過率特性として、半値は650nm以下が好ましく、更には、647nm以下、645nm以下、643nm以下、641nm以下、640nm以下、639nm以下、638nm以下の順により好ましい。
ガラスIIについて、厚み0.21mm換算の透過率特性として、半値は600nm以上が好ましく、610nm以上、613nm以上、615nm以上、617nm以上、620nm以上、623nm以上、625nm以上、628nm以上の順により好ましい。
ガラスIIについて、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長1200nmにおける透過率T1200は、42.0%以下であることが好ましく、更には、41.0%以下、40.0%以下、39.0%以下、38.5%以下、38.0%以下、37.5%以下、37.0%以下、36.5%以下、36.0%以下、35.5%以下、35.0%以下の順により好ましい。
ガラスIIについて、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長1200nmにおける透過率T1200は、例えば10.0%以上、12.0%以上または14.0%以上であることができるが、かかる透過率がより低いことは近赤外線カット能力により優れることを意味するということができるため、上記例示した値を下回ることも好ましい。
また、ガラスIIとしては、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長400nmにおける透過率T400は、68.0%以上であることが好ましく、70.0%以上であることがより好ましく、更には、71.0%以上、72.0%以上、73.0%以上、74.0%以上、75.0%以上、76.0%以上、77.0%以上、78.0%以上、79.0%以上、80.0%以上、の順により好ましい。
ガラスIIについて、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長400nmにおける透過率T400は、例えば98.0%以下、97.0%以下または96.0%以下であることができるが、かかる透過率がより高いことは可視光透過性により優れることを意味するということができるため、上記例示した値を上回ることも好ましい。
【0064】
上記の透過率特性は、以下の方法によって求められる値である。
ガラスサンプルを、互いに平行かつ光学研磨された平面を有するように加工し、波長200~1200nmにおける外部透過率を測定する。尚、外部透過率には、試料表面における光線の反射損失も含まれる。
光学研磨された一方の平面に垂直に入射する光線の強度を強度Aとし、他方の平面から出射する光線の強度を強度Bとして、分光透過率B/Aを算出する。波長600nm以上で分光透過率が50%になる波長を半値λT50とする。波長400nmにおける分光透過率をT400、また、波長1200nmにおける分光透過率をT1200とする。また、測定対象のガラスが換算される厚みのガラスでない場合には、そのガラスの厚みをdとして、以下の式によって、各波長λにおける透過率を換算するものとし、換算により得られた透過率特性から、半値λT50、T400およびT1200の換算値を求めることができる。
【0065】
T(λ)=(1-R(λ))2×exp(loge((T0(λ)/100)/(1-R(λ))2)×d/d0)×100
【0066】
式中、T(λ):波長λにおける換算透過率(%)、T0(λ):波長λにおける実測透過率(%)、d:換算される厚み(mm)、d0:ガラスの厚み(mm)、R(λ)=((n(λ)-1)/(n(λ)+1))2で表される、波長λにおける反射率、n(λ):波長λにおける屈折率である。ここで、n(λ)=1.51680、R(λ)=0.042165の定数とみなして計算する。
【0067】
(耐候性)
上記ガラスは、先に説明した組成を有することにより、優れた耐候性を示すことができる。耐候性については、例えば、後述の実施例に記載の方法により評価される耐候性の評価結果を指標とすることができ、かかる評価結果が◎または〇であることが好ましく、◎であることがより好ましい。
【0068】
(熔解性)
上記ガラスは、先に説明した組成を有することにより、優れた熔解性を示すこともできる。熔解性については、例えば、後述の実施例に記載の方法により評価される熔解性の評価結果を指標とすることができ、かかる評価結果が〇であることが好ましい。
【0069】
(ガラス転移温度Tg、吸熱反応の収束する温度Tm)
上記ガラスのガラス転移温度は、特に限定されないが、加工性および/または後工程での耐熱性を付与する等の観点からは、Tgは、300℃以上であることが好ましく、さらには、310℃以上、320℃以上、330℃以上、340℃以上、350℃以上の順により好ましい。
一方、アニール炉や成形装置への負担軽減の観点からは、Tgは、500℃以下であることが好ましく、更には、490℃以下、480℃以下、470℃以下、460℃以下、450℃以下、440℃以下、430℃以下、420℃以下、410℃以下、400℃以下、390℃以下、の順により好ましい。
上記ガラスの吸熱反応の収束する温度Tmは、特に限定されないが、Tmが低いほど熔解性が良好になる傾向がある。また、熔解性が良好になるほどガラスの可視光透過率を高めることができる傾向がある。これらの観点からは、Tmは、870℃以下であることが好ましく、更には、860℃以下、850℃以下、840℃以下、830℃以下、820℃以下、810℃以下、800℃以下、790℃以下、780℃以下、770℃以下、760℃以下、750℃以下の順により好ましい。
【0070】
(比重)
近赤外線カットフィルタが軽量であることは、このフィルタが組み込まれる素子や装置の軽量化につながるため好ましい。この点から、上記ガラスの比重は、3.50以下であることが好ましく、更には、3.45以下、3.40以下、3.35以下、3.30以下、3.25以下、3.20以下、3.15以下、3.10以下、3.05以下の順により好ましい。
比重は、例えば2.5以上または2.6以上であることができるが、上記観点から比重が低いことは好ましいため、ここに例示した値を下回ることも好ましい。
【0071】
<ガラスの製造方法>
上記ガラスは、各種ガラス原料を調合、熔融、成形することにより得ることができる。製造方法については、後述の記載も参照できる。
【0072】
上記近赤外線吸収ガラスは、近赤外線カットフィルタ用ガラスとして好適である。また、上記近赤外線吸収ガラスは、近赤外線カットフィルタ以外の光学素子(レンズ等)にも適用することができ、その他、種々のガラス製の製品に対して適用可能であるし、種々の変形も可能である。
【0073】
[近赤外線カットフィルタ]
本発明の一態様は、上記近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタ(以下、単に「フィルタ」とも記載する。)に関する。
【0074】
上記フィルタを構成するガラスについては、先に記載した通りである。
【0075】
以下に、上記フィルタの製造方法の具体例について説明する。ただし、以下の製造方法は例示であって、本発明を限定するものではない。
【0076】
熔融ガラスを、燐酸塩、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、フッ化物等のガラス原料を適宜用いて、所望の組成になるように原料を秤量し、混合した後、白金製坩堝等の熔融容器中にて、例えば800℃~1000℃にて熔解する。その際、揮発性成分の揮発を抑制するために白金等の蓋を用いることもできる。また、熔融は大気中で行うことができ、Cuの価数変化を抑えるために、酸素雰囲気にするか、熔融ガラス中に酸素をバブリングすることもできる。熔融状態のガラスは、撹拌および清澄によって泡が低減された(好ましくは泡を含まない)均質化された熔融ガラスとなる。
【0077】
熔融状態のガラスを撹拌および清澄を行った後、ガラスを流し出して、所望の形状に成形する。ガラスを流し出す際は液相温度付近の温度まで降温し、ガラスの粘度を高めてから行うと、流し出したガラスの対流が起こりにくく、脈理が生じにくいため好ましい。
【0078】
ガラスの成形方法としては、キャスト、パイプ流出、ロール、プレス等の公知の方法を使用できる。成形されたガラスは予めガラスの転移点付近に加熱されたアニール炉に移し、室温まで徐冷される。こうして、近赤外線カットフィルタを製造することができる。
【0079】
成形方法の一例について、以下に説明する。平坦かつ水平な底面と、この底面を挟んで互いに平行に対抗する一対の側壁と、一対の側壁の間に位置する一方の開口部を塞ぐ堰板によって構成された鋳型を用意する。この鋳型に白金合金製のパイプから一定の流出スピードで均質化された溶融ガラスを鋳込む。鋳込まれた溶融ガラスは鋳型内に広がり、一対の側壁によって一定の幅に規制されたガラス板に成形される。成形されたガラス板は、鋳型の開口部から連続的に引き出されていく。ここで鋳型の形状、寸法、溶融ガラスの流出スピード等の成形条件を適宜設定することにより、大判かつ肉厚のガラスブロックを成形することができる。成形されたガラス成形体は、予めガラス転移温度付近に加熱されたアニール炉に移され、室温まで徐冷される。徐冷によって歪が除かれたガラス成形体には、スライス、研削、研磨加工等の機械加工が施される。こうして、板状、レンズ形状等の用途に応じた形状の近赤外線カットフィルタを得ることができる。または、上記ガラスからなるプリフォームを成形し、このプリフォームを加熱、軟化してプレス成形する方法(特に光学機能面に研削、研磨等の機械加工を施すことなく最終製品をプレス成形する精密プレス成形法)等も使用可能である。フィルタの表面には必要に応じて光学多層膜を形成してもよい。
【0080】
上記近赤外線カットフィルタは、優れた近赤外線カット能力と高い可視光透過率を兼ね備えることができる。かかる近赤外線カットフィルタによれば、半導体撮像素子の色感度補正を良好に行うことができる。
【0081】
また、上記近赤外線カットフィルタは、半導体イメージセンサーと組み合わせることにより、撮像装置に適用することが可能である。半導体イメージセンサーは、パッケージ内にCCDやCMOS等の半導体撮像素子を装着し、受光部を透光性部材でカバーしたものである。透光性部材を近赤外線カットフィルタが兼ねることもできるし、透光性部材を近赤外線カットフィルタとは別個のものとすることもできる。
【0082】
上記撮像装置は、半導体イメージセンサーの受光面に被写体の像を結像するためのレンズ、またはプリズム等の光学素子を備えることもできる。
【0083】
また、上記近赤外線カットフィルタによれば、色感度補正が良好になされ、優れた画質の画像を得ることが可能な撮像装置を提供することができる。
【0084】
上記近赤外線カットフィルタは、一形態では、厚みが0.25mm以下の近赤外線カットフィルタであることができる。近年、スマートフォンの登場により、撮像素子のカメラ厚みの減少傾向が顕著であり、これに伴い近赤外線カットフィルタにもより薄い厚みで性能を発揮することが望まれている。そのような近赤外線カットフィルタとしても、上記近赤外線カットフィルタは好適である。上記近赤外線カットフィルタの厚みは、0.24mm以下、0.23mm以下、0.22mm以下、0.21mm以下、0.20mm以下、0.19mm以下、0.18mm以下、0.17mm以下、0.16mm以下、0.15mm以下、0.14mm以下、0.13mm以下または0.12mm以下であることができる。上記近赤外線カットフィルタの厚みは、例えば0.21mmまたは0.11mmであることができる。また、上記近赤外線カットフィルタの厚みは、例えば0.50mm以上であることができるが、これに限定されるものではない。本発明および本明細書において、「厚み」とは、透過率を測定する領域の試料の厚みをいうものとし、シックネスゲージやマイクロメーター等によって測定することができる。例えば、透過光が通過する位置のほぼ中心部の厚みを測定してもよく、または透過光のスポット内で複数点の厚みを測定し、その平均値をとってもよい。
【0085】
上記近赤外線カットフィルタの近赤外線カット能力に関して、より一層優れた近赤外線カット能力を示す近赤外線カットフィルタとする観点からは、「厚み×Cu濃度」として算出される値が、0.2000mol/m2以上であることが好ましく、更には、0.2100mol/m2以上、0.2200mol/m2以上、0.2300mol/m2以上、0.2400mol/m2以上、0.2500mol/m2以上、0.2600mol/m2以上、0.2700mol/m2以上、0.2800mol/m2以上、0.2900mol/m2以上、0.3000mol/m2以上、0.3100mol/m2以上、0.3150mol/m2以上、0.3200mol/m2以上、0.3250mol/m2以上の順により好ましい。
また、より高い可視光透過率を示す近赤外線カットフィルタとする観点からは、「厚み×Cu濃度」として算出される値が、1.000mol/m2以下であることが好ましく、更には、0.9800mol/m2以下、0.9600mol/m2以下、0.9400mol/m2以下、0.9200mol/m2以下、0.9000mol/m2以下、0.8800mol/m2以下、0.8600mol/m2以下、0.8400mol/m2以下、0.8200mol/m2以下、0.8000mol/m2以下、0.7800mol/m2以下、0.7600mol/m2以下、0.7400mol/m2以下、0.7200mol/m2以下、0.7000mol/m2以下、0.6800mol/m2以下、0.6600mol/m2以下、0.6400mol/m2以下、0.6200mol/m2以下、0.6000mol/m2以下、0.5800mol/m2以下、0.5600mol/m2以下、0.5400mol/m2以下、0.5200mol/m2以下、0.5000mol/m2以下、0.4800mol/m2以下、0.4600mol/m2以下、0.4800mol/m2以下、0.4200mol/m2以下、0.4100mol/m2以下、0.4000mol/m2以下、0.3900mol/m2以下、0.3800mol/m2以下、0.3700mol/m2以下、0.3600mol/m2以下、0.3500mol/m2以下の順により好ましい。
【0086】
上記の「厚み×Cu濃度」の計算方法を説明する。
「厚み×Cu濃度」=
(その組成の比重)/(その組成の分子量)×(Cuイオンのカチオン%/100)
×d/10×104
単位は、mol/m2であり、dは厚み(mm)である。
【0087】
上記の式の(その組成の分子量)について、計算方法を説明する。
(その組成の分子量)は、その組成を構成する全ての成分について、
(カチオン基準とする各成分の分子量)×(各成分のカチオン%/100)
の総和をとった値で、単位はg/molである。
更に、上記の(カチオン基準とする各成分の分子量)について、計算方法を説明する。 (カチオン基準とする各成分の分子量)=
(そのカチオンを成す元素の原子量)+(酸素の原子量×価数に応じた係数)
【0088】
価数に応じた係数とは、次の通りである。
形式価数+1ならば、係数は0.5
形式価数+2ならば、係数は1.0
形式価数+3ならば、係数は1.5
形式価数+4ならば、係数は2.0
形式価数+5ならば、係数は2.5
形式価数+6ならば、係数は3.0
【0089】
上記近赤外線カットフィルタの透過率特性については、ガラスIおよびガラスIIに関する先の記載を参照できる。また、上記近赤外線カットフィルタの物性についても、上記近赤外線吸収ガラスに関する先の記載を参照できる。
【実施例】
【0090】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例の形態に限定されるものではない。
【0091】
[実施例1~81、比較例A~F]
ガラス原料として、燐酸塩、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、酸化物等を、表1に示されている組成のガラスが150g~300g得られるよう秤量混合し、白金製坩堝中または石英坩堝中に投入し、800℃~1000℃で、60分~180分熔解し、撹拌して脱泡、均質化を行った後、予熱した金型に流し出し、所定形状に成形した。得られたガラス成形体をガラス転移温度付近に加熱したアニール炉に移し、室温まで徐冷した。得られたガラスからテストピースを切り出し、両面を鏡面研磨して厚み約0.2mmとした後、以下の方法により各種評価を行った。
【0092】
[評価方法]
<透過率特性>
各テストピースの波長200~1200nmの透過率を、分光光度計を使用して測定した。測定結果から、厚み0.11mm換算または厚み0.21mm換算の値として、半値(単位:nm)、波長1200nmにおける透過率T1200(単位:%)および波長400nmにおける透過率T400(単位:%)を求めた。
【0093】
<ガラス転移温度Tg、吸熱反応の収束する温度Tm>
Rigaku社製の示差走査熱量分析装置(DSC8270)を使用し、昇温速度10℃/分にしてガラス転移温度Tgおよび融解による吸熱反応が収束する温度Tmを測定した。
【0094】
<比重>
アルキメデス法により比重を測定した。
【0095】
<耐候性>
各テストピースを、温度85℃相対湿度85%の恒温恒湿槽内に168時間保持した。その後、各テストピースを蛍光灯下の目視による外観評価に付した。評価結果から、以下の基準により耐候性を評価した。
◎:表面に変質は認められない。
〇:表面にクモリが認められたが、潮解なし。
×:潮解した。
【0096】
<熔融性>
テストピースの作製のために用いたガラス原料と同じ処方で、熔解後に200gのガラスが得られるだけの原料((混合物))を秤量混合した後、白金製坩堝またはシリカガラス製坩堝中に投入し、1000℃で60分間熔解した。目視で観察した結果、熔け残りなく融液が得られた場合を「〇」、熔け残りがあった場合を「×」として評価した。
【0097】
以上の結果を、表1(表1-1~表1-6)、表2(表2-1~表2-6)、表3(表3-1~表3-6)に示す。表中、カチオン類の(合計)含有量の単位はカチオン%であり、アニオン類の(合計)含有量の単位はアニオン%である。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
ガラス原料として、燐酸塩、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩、酸化物等を、表1の実施例64の組成に外割表示でSb2O3が0.080質量%含まれる組成のガラスが150g~300g得られるよう秤量混合し、白金製坩堝中または石英坩堝中に投入し、実施例64と同様の熔解条件で熔解し、撹拌して脱泡、均質化を行った後、予熱した金型に流し出し、所定形状に成形した。得られたガラス成形体をガラス転移温度付近に加熱したアニール炉に移し、室温まで徐冷した。得られたガラスからテストピースを切り出し、両面を鏡面研磨して厚み約0.2mmとした後、上記方法により透過率特性の評価を行った。評価結果は、厚み0.11mm(換算)における値として、波長1200nmにおける透過率T1200が27.9%、波長400nmにおける透過率T400が87.4%であった。上記評価結果と実施例64の評価結果との対比から、Sb2O3の添加によって着色を抑制して可視光透過率を高めることができることが確認できる。
【0117】
最後に、前述の各態様を総括する。
【0118】
一態様によれば、構成イオンとして、Pイオン、Cuイオン、Oイオン、Liイオン、NaイオンおよびKイオンからなる群から選ばれる1種以上のイオン、ならびに、Mgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンからなる群から選ばれる1種以上のイオン、を少なくとも含み、カチオン%表示のガラス組成において、Cuイオンの含有量が15.0カチオン%以下であり、Pイオンの含有量が55.0カチオン%以下であり、Mgイオン、Caイオン、Srイオン、Baイオン、ZnイオンおよびCuイオンの合計含有量に対するAlイオンとPイオンとの合計含有量のカチオン比((Alイオン+Pイオン)/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン+Cuイオン))が5.300以下であり、Liイオン、NaイオンおよびKイオンの合計含有量に対するMgイオン、Caイオン、SrイオンおよびBaイオンの合計含有量のカチオン比((Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン)/(Liイオン+Naイオン+Kイオン))が0.100以上であり、CuイオンおよびPイオンを除くカチオン類の平均価数が1.500未満であり、アニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量が85.0アニオン%以上であり、かつPイオンの含有量に対するOイオンの含有量の比率(Oイオン/Pイオン)が3.300以上である近赤外線吸収ガラスが提供される。
【0119】
上記ガラスは、近赤外線カット能力に優れ、可視光透過率が高く、耐候性および熔解性に優れる近赤外線吸収ガラスであることができる。
【0120】
一形態では、上記ガラスのカチオン%表示のガラス組成において、Pイオンの含有量は、30.0カチオン%以上50.0カチオン%以下であることができる。
【0121】
一形態では、上記ガラスのカチオン%表示のガラス組成において、Liイオンの含有量は、10.0カチオン%以上であることができる。
【0122】
一形態では、上記ガラスのカチオン%表示のガラス組成において、Cuイオンの含有量は、2.1カチオン%以上15.0カチオン%以下であることができる。
【0123】
一形態では、上記比率(Oイオン/Pイオン)は、3.400以上であることができる。
【0124】
一形態では、上記ガラスのカチオン%表示のガラス組成において、Mgイオン、Caイオン、Srイオン、BaイオンおよびZnイオンの合計含有量に対するZnイオンのカチオン比(Znイオン/(Mgイオン+Caイオン+Srイオン+Baイオン+Znイオン))は、0.600以下であることができる。
【0125】
一形態では、上記ガラスのアニオン%表示のガラス組成において、Oイオンの含有量は、90.0アニオン%以下であることができる。
【0126】
一形態では、上記ガラスは、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長1200nmにおける透過率T1200が42.0%以下であることができる。
【0127】
一形態では、上記ガラスは、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長400nmにおける透過率T400が68.0%以上であることができる。
【0128】
一形態では、上記ガラスは、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長1200nmにおける透過率T1200が42.0%以下であることができる。
【0129】
一形態では、上記ガラスは、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長400nmにおける透過率T400が68.0%以上であることができる。
【0130】
一態様によれば、上記近赤外線吸収ガラスからなる近赤外線カットフィルタが提供される。
【0131】
一形態では、上記近赤外線カットフィルタの厚みは、0.25mm以下であることができる。
【0132】
一形態では、上記近赤外線カットフィルタは、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長600nm以上で透過率が50%となる波長が600nm~650nmの範囲にあることができる。
【0133】
一形態では、上記近赤外線カットフィルタは、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長1200nmにおける透過率T1200が42.0%以下であることができる。
【0134】
一形態では、上記近赤外線カットフィルタは、厚み0.11mm換算の透過率特性として、波長400nmにおける透過率T400が68.0%以上であることができる。
【0135】
一形態では、上記近赤外線カットフィルタは、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長600nm以上で透過率が50%となる波長が600nm~650nmの範囲にあることができる。
【0136】
一形態では、上記近赤外線カットフィルタは、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長1200nmにおける透過率T1200が42.0%以下であることができる。
【0137】
一形態では、上記近赤外線カットフィルタは、厚み0.21mm換算の透過率特性として、波長400nmにおける透過率T400が68.0%以上であることができる。
【0138】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる近赤外線吸収ガラスを得ることができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。