(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の光硬化物及び感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20250408BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20250408BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20250408BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20250408BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
G03F7/004 503Z
G03F7/031
G03F7/038 503
G03F7/027 502
H05K3/28 D
(21)【出願番号】P 2022050485
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】田家 史佳
(72)【発明者】
【氏名】上杉 尚之
(72)【発明者】
【氏名】西川 大英
(72)【発明者】
【氏名】木村 健人
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232206(JP,A)
【文献】特開2000-298339(JP,A)
【文献】特開2020-160146(JP,A)
【文献】国際公開第2016/010077(WO,A1)
【文献】特開2016-122153(JP,A)
【文献】特開2012-014931(JP,A)
【文献】特開2002-040632(JP,A)
【文献】特開2000-315850(JP,A)
【文献】特開2018-101038(JP,A)
【文献】特開2018-063405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H05K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)カチオン重合開始剤と、(C)光ラジカル重合開始剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)反応性希釈剤と、を含有し、
前記(C)光ラジカル重合開始剤が、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤を含有し、
前記(B)カチオン重合開始剤のカチオン部分が、芳香族スルホニウムであ
り、
前記(D)エポキシ化合物が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも2種を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)カチオン重合開始剤のアニオン部分が、リン系またはアンチモン系である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)カチオン重合開始剤のアニオン部分が、リン系である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)カチオン重合開始剤のカチオン部分が、1分子中の芳香環数が3個以下の芳香族化合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)カチオン重合開始剤のカチオン部分が、1分子中の芳香環数が2個以下の芳香族化合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C2)オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含有する請求項1乃至6のいずれか
1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
【請求項9】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料、例えば、プリント配線板に形成された導体回路パターンを被覆するための絶縁被覆材料として適した感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物の光硬化物、前記感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の基板上には、銅箔等の導体回路パターンが形成され、導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載し、はんだ付けランドを除いた導体回路の部分は、保護膜としての絶縁被膜(ソルダーレジスト膜)で被覆される。前記絶縁被膜として、カルボキシル基含有感光性樹脂と光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物の硬化膜が使用されることがある。そこで、絶縁被膜には、プリント配線板の基板に対する密着性や解像性等が要求される。
【0003】
そこで、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B) 光重合開始剤、(C)感光性モノマー、及び(D)顔料を必須成分として含有するアルカリ現像型の感光性樹脂組成物であって、上記光重合開始剤(B)として、(B-1) ホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、及び(B-2)光カチオン重合開始剤を含有し、上記感光性モノマー(C)として、(C-1)カチオン硬化性モノマーを含有する感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、(B-2)光カチオン重合開始剤と、(C-1)カチオン硬化性モノマーを含むことで、現像後、カチオン重合が進み、基材との密着性に優れた絶縁被膜とするものである。
【0004】
一方で、導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載する実装工程では、絶縁被膜を形成したプリント配線板上に電子部品を載置し、リフロー炉による加熱処理にてプリント配線板上に電子部品をはんだ付けする。上記実装工程では、フラックス成分が含まれているはんだが使用されることがある。フラックス成分が含まれているはんだが使用されると、はんだからフラックス成分が滲み出て、滲み出たフラックス成分が、絶縁被膜の表面部や導体回路パターンの開口部から絶縁被覆へ浸透してしまうことがあった。
【0005】
フラックス成分が絶縁被覆へ浸透してしまうと、絶縁被膜がプリント配線板から剥離してしまう現象や膨れの現象が発生し、絶縁被膜に不具合が生じる場合があった。従って、絶縁被膜には、はんだからフラックス成分が滲み出ても、絶縁被膜がプリント配線板から剥離したり膨れたりことを防止できる、耐フラックス性が要求されることがある。
【0006】
しかし、特許文献1の感光性樹脂組成物で形成した絶縁被膜では、はんだからフラックス成分が滲み出ると、フラックス成分が絶縁被膜へ浸透してしまい、絶縁被膜がプリント配線板から剥離したり膨れたりすることがあり、耐フラックス性に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、絶縁信頼性、塗膜硬度、現像性及びタック性の基本諸特性を損なうことなく、耐フラックス性に優れた絶縁被膜を形成できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)カチオン重合開始剤と、(C)光ラジカル重合開始剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)反応性希釈剤と、を含有し、
前記(C)光ラジカル重合開始剤が、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(B)カチオン重合開始剤のアニオン部分が、リン系またはアンチモン系である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(B)カチオン重合開始剤のアニオン部分が、リン系である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(B)カチオン重合開始剤のカチオン部分が、1分子中の芳香環数が3個以下の芳香族化合物である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(B)カチオン重合開始剤のカチオン部分が、1分子中の芳香環数が2個以下の芳香族化合物である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含有する[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(C2)オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含有する[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(D)エポキシ化合物が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも1種を含有する[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9]前記(D)エポキシ化合物が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも2種を含有する[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記(D)エポキシ化合物が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートを含有する[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[11][1]乃至[10]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
[12][1]乃至[10]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)カチオン重合開始剤と、(C)光ラジカル重合開始剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)反応性希釈剤と、を含有し、前記(C)光ラジカル重合開始剤が、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有することにより、絶縁信頼性、塗膜硬度、現像性及びタック性の基本諸特性を損なうことなく、(D)エポキシ化合物の架橋密度が向上して、耐フラックス性に優れた絶縁被膜を形成できる感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)カチオン重合開始剤のアニオン部分がリン系またはアンチモン系であることにより、(D)エポキシ化合物の架橋密度が確実に向上して、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)カチオン重合開始剤のアニオン部分がリン系であることにより、(D)エポキシ化合物の架橋密度がさらに向上して、さらに優れた塗膜硬度を得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)カチオン重合開始剤のカチオン部分が1分子中の芳香環数が3個以下の芳香族化合物であることにより、(D)エポキシ化合物の架橋密度が向上して、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)カチオン重合開始剤のカチオン部分が1分子中の芳香環数が2個以下の芳香族化合物であることにより、絶縁信頼性、塗膜硬度、現像性、タック性がバランスよく向上し、(D)エポキシ化合物の架橋密度がさらに向上して、耐フラックス性をさらに向上させることができる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含有することにより、(B)カチオン重合開始剤のカチオン重合の活性とあいまって、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(C2)オキシムエステル系光重合開始剤が(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含有することにより、(B)カチオン重合開始剤のカチオン重合の活性とあいまって、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(D)エポキシ化合物がクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも1種を含有することにより、(D)エポキシ化合物の架橋密度が確実に向上して、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(D)エポキシ化合物がクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも2種を含有することにより、タック性がさらに向上する。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(D)エポキシ化合物が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートを含有することにより、耐フラックス性、絶縁信頼性及び塗膜硬度のいずれもが、さらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)カチオン重合開始剤と、(C)光ラジカル重合開始剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)反応性希釈剤と、を含有し、前記(C)光ラジカル重合開始剤が、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有する。本発明の感光性樹脂組成物では、重合開始剤として、(B)カチオン重合開始剤と(C)光ラジカル重合開始剤が配合されている。本発明の感光性樹脂組成物では、絶縁信頼性、塗膜硬度、現像性及びタック性の基本諸特性を損なうことなく、(D)エポキシ化合物の架橋密度が向上して、耐フラックス性に優れた絶縁被膜を形成できる。
【0021】
<(A)カルボキシル基含有感光性樹脂>
(A)成分であるカルボキシル基含有感光性樹脂は、感光性樹脂組成物のベース樹脂である。カルボキシル基含有感光性樹脂の構造は、特に限定されず、例えば、感光性の不飽和二重結合を1個以上と遊離のカルボキシル基とを有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、(A1)1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A1樹脂)、(A2)ラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A2樹脂)、(A3)1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基にポリイソシアネート化合物を付加反応させ、さらに付加反応したポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、水酸基とカルボキシル基を有する化合物を付加反応させて得られる構造を有する酸変性ウレタン化不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A3樹脂)等が挙げられる。
【0022】
(A1)多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、その上限値は、3000g/eqが好ましく、2000g/eqがより好ましく、1000g/eqがさらに好ましく、500g/eqが特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と反応してエステル結合を形成することで、エポキシ樹脂に感光性の不飽和二重結合が導入されて、多官能エポキシ樹脂の骨格に感光性が付与される。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(アクリル酸及び/またはメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」ということがある。)、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのうち、反応性、入手容易性、取り扱い性の点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は、特に限定されず、例えば、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で加熱する方法が挙げられる。
【0025】
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が、不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に付加反応することで、感光性樹脂に遊離のカルボキシル基が導入される。多塩基酸及び/または多塩基酸無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用することができる。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、ジグリコール酸等の2官能のカルボン酸、トリメリット酸等の3官能のカルボン酸、ピロメリット酸等の4官能のカルボン酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの多塩基酸及び多塩基酸無水物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物との反応方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で加熱する方法が挙げられる。
【0027】
(A2)ラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂
また、必要に応じて、上記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、さらに、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物(例えば、グリシジル化合物)を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物をさらに反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂では、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている化学構造を有している。従って、ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂は、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂よりも、光重合反応性に優れ、感光特性がさらに向上する。
【0028】
ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(アクリレート及び/またはメタクリレートを「(メタ)アクリレート」ということがある。)、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
(A3)酸変性ウレタン化不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、(A1)多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と同じく、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、特に限定されないが、(A1)多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と同じく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのうち、反応性、入手容易性、取り扱い性の点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネアート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリメチルヘキサメチルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチルアミンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、1,3-ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
水酸基とカルボキシル基を有する化合物
水酸基とカルボキシル基を有する化合物は、特に限定されず、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘプタン酸等のジメチロールアルカン酸といったジアルカノールアルカン酸を挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記したA1樹脂、A2樹脂、A3樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されず、例えば、その下限値は、確実にアルカリ現像性を付与する点から、30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部(光硬化部)の溶解を確実に防止する点から、200mgKOH/gが好ましく、光硬化物の絶縁信頼性を確実に向上させる点から、150mgKOH/gが特に好ましい。
【0035】
カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されず、使用条件等により適宜選択可能であり、例えば、その下限値は、光硬化物の強靭性及びタック性の向上に寄与する点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量の上限値は、アルカリ現像性の向上に寄与する点から、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、上記「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、常温で測定し、ポリスチレン換算にて算出される質量平均分子量を意味する。
【0036】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、上記各成分を用いて上記反応工程にて調製してもよく、上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、「リポキシSP-4621」、「リポキシSP-4785L」(以上、昭和電工株式会社)、「ZAR-2000」、「ZFR-1122」、「ZFR-1887」、「FLX-2089」、「ZCR-1569H」、「ZCR-1601H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(株式会社ダイセル)等を挙げることができる。
【0037】
<(B)カチオン重合開始剤>
(B)成分であるカチオン重合開始剤が配合されることで、カチオン重合の活性が向上することで(D)エポキシ化合物の架橋密度が向上し、後述する(C)光ラジカル重合開始剤のラジカル重合の活性とあいまって、フラックス成分の絶縁被膜への浸透を抑制して、耐フラックス性に優れた絶縁被膜を形成できる。
【0038】
カチオン重合開始剤としては、例えば、アニオン部分が、PF6
-等のリン系、SbF6
-等アンチモン系、BF4
-、[BX4]-(Xは、フェニル基の有する水素原子の2個以上が、フッ素原子又はトリフルオロメチル基によって置換された官能基を示す。)等のホウ素系等で構成され、カチオン部分が、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チオキサントニウム等で構成されているカチオン重合開始剤が挙げられる。
【0039】
カチオン重合開始剤のアニオン部分としては、(D)エポキシ化合物の架橋密度が確実に向上して、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる点から、リン系、アンチモン系が好ましく、(D)エポキシ化合物の架橋密度がさらに向上して、さらに優れた塗膜硬度を得ることができる点から、リン系が特に好ましい。
【0040】
カチオン重合開始剤のカチオン部分としては、芳香環を有する化合物である、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウムが好ましく、耐フラックス性を確実に得ることができる点から、芳香族スルホニウムが特に好ましい。また、カチオン重合開始剤のカチオン部分である芳香環を有する化合物としては、(D)エポキシ化合物の架橋密度が向上して、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる点から、1分子中の芳香環数が3個以下の芳香族化合物が好ましく、絶縁信頼性、塗膜硬度、現像性、タック性がバランスよく向上し、(D)エポキシ化合物の架橋密度がさらに向上して、耐フラックス性をさらに向上させることができる点から、1分子中の芳香環数が2個以下の芳香族化合物が特に好ましい。
【0041】
芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、ジメチル-p-アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、ジメチル-p-アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ベンジル(4-アセトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル(4-アセトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、ジメチル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、ジメチル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0042】
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0043】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0044】
芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0045】
上市されているカチオン重合開始剤としては、例えば、「サンエイドSI-60L」、「サンエイドSI-80L」、「サンエイドSI-100L」、「サンエイドSI-110L」、「サンエイドSI-150L」、「サンエイドSI-180L」、「サンエイドSI-80」、「サンエイドSI-100」、「サンエイドSI-110」、「サンエイドSI-145」、「サンエイドSI-150」、「サンエイドSI-160」、「サンエイドSI-180」、「サンエイドSI-300」、「サンエイドSI-360」(以上、三新化学工業株式会社)、「アデカオプトマーSP-150」、「アデカオプトマーSP-170」、「アデカオプトマーSP-172」(以上、株式会社ADEKA)等が挙げられる。
【0046】
これらのカチオン重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
カチオン重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、(D)エポキシ化合物の架橋密度が確実に向上して、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.50質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、1.5質量部が特に好ましい。一方で、カチオン重合開始剤の配合量の上限値は、現像性の低下を防ぐ点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10質量部が好ましく、8.0質量部がより好ましく、6.0質量部が特に好ましい。
【0048】
<(C)光ラジカル重合開始剤>
(C)成分である光ラジカル重合開始剤が配合されることで、カチオン重合開始剤のカチオン重合の活性とあいまって、絶縁被膜の硬化性が向上してフラックス成分の絶縁被膜への浸透を抑制し、耐フラックス性に優れた絶縁被膜を形成できる。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物では、光ラジカル重合開始剤として、(C1)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C2)オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含有する。
【0050】
(C1)成分であるα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中におけるRは、水素または炭素数1~5個のアルキル基を表す)で表される化合物を挙げることができる。これらのうち、絶縁被膜の硬化性が確実に向上して優れた耐フラックス性を確実に得ることができる点から、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤として、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノン(式(1)中におけるRがメチル基)が好ましい。これらのα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
(C2)成分であるオキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)等を挙げることができる。これらのうち、絶縁被膜の硬化性が確実に向上して優れた耐フラックス性を確実に得ることができる点から、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムが好ましい。これらのオキシムエステル系光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種の光ラジカル重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、絶縁被膜の硬化性が確実に向上して優れた耐フラックス性を確実に得ることができる点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.50質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、1.5質量部が特に好ましい。一方で、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種の光ラジカル重合開始剤の配合量の上限値は、現像性の低下とハレーションを防ぐ点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、8.0質量部が好ましく、6.0質量部がより好ましく、4.0質量部が特に好ましい。
【0053】
<(D)エポキシ化合物>
(D)成分であるエポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の光硬化物の架橋密度を上げて十分な硬度を光硬化物に付与するためのものである。エポキシ化合物の架橋密度が向上することで、フラックス成分の絶縁被膜への浸透を抑制して耐フラックス性に優れた絶縁被膜を形成することに寄与する。
【0054】
エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の調製に使用できる多官能エポキシ樹脂と同じエポキシ樹脂を挙げることができる。具体的には、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
これらのエポキシ化合物のうち、エポキシ化合物の架橋密度が確実に向上して、優れた耐フラックス性を確実に得ることができる点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも1種を含有することが好ましく、タック性がさらに向上する点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された少なくとも2種を含有することがより好ましく、耐フラックス性、絶縁信頼性及び塗膜硬度のいずれもが、さらに向上する点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートを含有することが特に好ましい。
【0056】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂組成物の光硬化後に十分な硬度の絶縁被膜を得る点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、15質量部が特に好ましい。一方で、エポキシ化合物の配合量の上限値は、現像性の低下を防ぐ点から、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、50質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、30質量部が特に好ましい。
【0057】
<(E)反応性希釈剤>
(E)成分である反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を補強して、感光性樹脂組成物の硬化塗膜に十分な強度、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などを付与することに寄与する。
【0058】
反応性希釈剤としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレート化合物、2官能の(メタ)アクリレート化合物、3官能の(メタ)アクリレート化合物、4官能以上の(メタ)アクリレート化合物等の単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物のモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリレート化合物のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上70質量部以下が好ましく、15質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)~(E)成分の他に、必要に応じて、任意成分として、さらに、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤以外の他の光ラジカル重合開始剤を配合してもよい。他の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系;ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系;2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン等を挙げることができる。これらの他の光ラジカル重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、さらに、他の任意成分、例えば、無機フィラー、着色剤、添加剤、消泡剤、難燃剤、非反応性希釈剤等を配合することができる。
【0062】
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、シリカ等が挙げられる。
【0063】
着色剤としては、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、黒色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤、赤色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれの着色剤も使用可能である。着色剤には、例えば、白色着色剤である二酸化チタン、黒色着色剤であるアセチレンブラック、カーボンブラック等の無機系着色剤や、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン及び青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系等の有機系着色剤を挙げることができる。これらの着色剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
添加剤としては、例えば、メルカプトベンゾオキサザール及びその誘導体、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミン等の潜在性硬化剤、脂肪族ジメチルウレア等の熱硬化触媒等が挙げられる。
【0065】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系ポリマー、炭化水素系ポリマー、アクリル系ポリマー等が挙げられる。
【0066】
難燃剤は、感光性樹脂組成物の絶縁被膜に難燃性を付与するためのものである。難燃剤としては、リン系難燃剤を挙げることができ、有機リン酸塩系の難燃剤が好ましい。リン系難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下HCA)、HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0067】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の、粘度、塗工性及び乾燥性を調節するための成分である。非反応性希釈剤としては、例えば、感光性樹脂組成物に配合されている各成分に対して不活性である有機溶剤を挙げることができる。上記有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、常温(例えば、25℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、配合した成分を混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合を実施してもよい。
【0069】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物をプリント配線板に塗工して、絶縁被膜(例えば、ソルダーレジスト膜等)を形成する方法を説明する。
【0070】
上記のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷、スプレーコータ、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等、公知の塗工方法を用いて所望の厚さに塗布する。次に、塗布した感光性樹脂組成物上に、直描装置にて、直接、活性エネルギー線(例えば、レーザー光)を所望のパターンに応じて照射する露光処理を行って、該パターン状に塗膜を光硬化させる。露光量としては、例えば、50mJ/cm2~2000mJ/cm2が挙げられる。次に、希アルカリ水溶液で非露光領域を除去することにより塗膜を現像する。上記現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられ、希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次に、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で20~80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、現像した塗膜を熱硬化させて、目的とするパターンを有する光硬化膜(光硬化物)をプリント配線板上に形成させることができる。
【0071】
また、上記した、直描装置にて、直接、活性エネルギー線を所望のパターンに応じて照射する露光処理に代えて、本発明の感光性樹脂組成物の塗布後に60~100℃程度の温度で15~60分間程度加熱する予備乾燥を行ってタックフリーとした塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、波長300~400nmの範囲の紫外線)を照射させて塗膜を光硬化させる露光処理を行ってもよい。
【実施例】
【0072】
実施例1~19、比較例1
下記表1に示す各成分を下記表1に示す割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合させて、実施例1~19、比較例1にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。その後、調製した感光性樹脂組成物を以下のように基板に塗工して試験体を作製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0073】
下記表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
・リポキシSP-4785:グリシジルメタクリレート変性型クレゾールノボラック構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート35質量%、昭和電工株式会社
・ZCR-1601H:ビスフェノールノボラック構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート35質量%、日本化薬株式会社
・FLX-2089:酸変性ウレタン化不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート35質量%、日本化薬株式会社
【0074】
(B)カチオン重合開始剤
・サンエイドSI-110:ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(芳香環数2)、三新化学株式会社
・サンエイドSI-150L:ジメチル-p-アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート(芳香環数1)、三新化学株式会社
・サンエイドSI-100L:ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート(芳香環数2)、三新化学株式会社
・アデカオプトマーSP170:トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート(芳香環数3)、株式会社ADEKA
【0075】
(C)光ラジカル重合開始剤
・Omnirad379:IGM Resins B.V.社
【0076】
(D)エポキシ化合物
・N-695:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社
・TEPIC:トリグリシジルイソシアヌレート、日産化学工業株式会社
・NC-3000:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社
・EPICLON860:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、DIC株式会社
・VG3101L:高耐熱3官能エポキシ樹脂、株式会社プリンテック
【0077】
(E)反応性希釈剤
・KAYARAD DPCA-20:日本化薬株式会社
【0078】
無機フィラー
・EF-013:日本軽金属株式会社
着色剤
・カーボンブラック:東洋インキ製造株式会社
添加剤
・DICY-7:三菱化学株式会社
・U-CAT 3513N:サンアプロ株式会社
・メラミン:日産化学工業株式会社
消泡剤
・AC-2300C:信越化学工業株式会社
難燃剤
・エクソリット OP-935:クラリアントジャパン株式会社
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
【0079】
試験体作製工程
以下のようにして、上記のように調製した実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を基板上に塗工して、基板上に硬化塗膜を有する試験体を作製した。
基板:2層FCCL(フレキシブル銅張積層板)(Cu箔:厚さ12.5μm、ポリイミドフィルム厚さ:25μm)
表面処理:ソフトエッチング処理
塗工方法:スクリーン印刷
予備乾燥:オーブンにて80℃、20分
DRY膜厚(20±5μm)
露光:塗膜上に100mJ/cm2、露光装置:オルボテック社製の直描(DI)露光装置「Nuvogo1000R」(光源:レーザー)
現像:1質量%の炭酸ナトリウム水溶液、現像温度30℃、スプレー圧0.2MPa
ポストキュア(熱硬化処理):オーブンにて150℃、60分
【0080】
(1)耐フラックス性
Cu箔上の硬化塗膜の開口のあるパターンにポリイミドテープを積層(厚み150μm)した枠体を設置し、枠体の内側にロジン系フラックスを充填し、フタをして、プレヒート温度150~180℃、80秒間、ピーク温度240℃、40秒間の条件にて、リフロー炉(製品名:TNP-538EM,株式会社タムラ製作所製)を用いて、リフローを行った。リフロー後にフタを取り外し、硬化塗膜の状態を目視にて観察し、以下のように評価した。△評価以上を合格と判定した。
◎:硬化塗膜に剥離や膨れが無く、硬化塗膜表面にも異常が無い。
○:硬化塗膜に剥離や膨れは無いが、硬化塗膜表面に染み込み跡が有る。
△:硬化塗膜に若干の剥離や膨れが有る。
×:硬化塗膜に大きな剥離や膨れが有る。
【0081】
(2)絶縁信頼性
上記試験体作製工程に準じ、2層FCCL基板に代えて、くし形電極(ライン幅/スペース=30μm/30μm)を用いて試験体を作製し、HAST装置を用いて、110℃、85%R.H.で24時間加湿した後の絶縁抵抗を、DC32Vを印加して測定した。判定基準は以下のとおりであり、△評価以上を合格と判定した。
◎:絶縁抵抗値が1.0×109Ω以上である。
○:絶縁抵抗値が1.0×108Ω以上1.0×109Ω未満である。
△:絶縁抵抗値が1.0×107Ω以上1.0×108Ω未満である。
×:絶縁抵抗値が1.0×107Ω未満である。
【0082】
(3)塗膜硬度
2層FCCL基板の銅箔上における硬化塗膜の鉛筆硬度を、JISK-5600-5-4の試験方法に従って評価した。
【0083】
(4)現像性
現像後の試験体について、銅箔上及びポリイミドフィルム上の残渣の有無を目視で観察し、以下の3段階で評価した。△評価以上を合格と判定した。
○:銅箔上、ポリイミドフィルム上ともに残渣なし。
△:銅箔上には残渣が無いが、ポリイミドフィルム上にはやや残渣が有る。
×:銅箔上、ポリイミドフィルム上ともに残差が有る。
【0084】
(5)タック性
試験体作製工程における、80℃、20分の予備乾燥後に、ネガフィルムを塗膜上に接触させ、露光した際の張り付き性を目視で観察し、以下の3段階で評価した。△評価以上を合格と判定した。
○:張り付き無し。
△:塗膜に張り付き跡が残存。
×:ネガフィルム引き剥がし後、ネガフィルムに塗膜の張り付き有り。
【0085】
評価結果を下記表1に示す。
【0086】
【0087】
上記表1に示すように、光ラジカル重合開始剤としてα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤を配合し、さらにカチオン重合開始剤を配合した実施例1~19では、絶縁信頼性、塗膜硬度、現像性及びタック性に優れ、さらに、優れた耐フラックス性を有する絶縁被膜を形成できた。
【0088】
特に、リン系の光ラジカル重合開始剤を使用した実施例1は、アンチモン系の光ラジカル重合開始剤を使用した実施例5、9、19と比較して塗膜硬度がさらに向上した。また、カチオン重合開始剤のカチオン部分が1分子中の芳香環数が1個または2個の芳香族化合物である実施例1~18は、前記芳香環数が3個の芳香族化合物である実施例19と比較して、絶縁信頼性、塗膜硬度、現像性、タック性がバランスよく向上し、耐フラックス性をさらに向上させることができた。
【0089】
また、エポキシ化合物として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された2種を含有する実施例1~12は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択された1種を含有する実施例14~17と比較してタック性がさらに向上した。また、エポキシ化合物として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアヌレートを含有する実施例1は、耐フラックス性、絶縁信頼性及び塗膜硬度のいずれもが、さらに向上した。
【0090】
一方で、カチオン重合開始剤を配合しなかった比較例1では、耐フラックス性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の感光性樹脂組成物は、絶縁信頼性、塗膜硬度、現像性及びタック性等の基本諸特性を損なうことなく、耐フラックス性に優れた絶縁被膜を形成できるので、フレキシブル基板やリジット基板を用いたプリント配線板に設ける絶縁保護膜の分野で利用価値が高い。