(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】抗CD73抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20250408BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250408BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250408BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250408BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250408BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250408BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250408BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250408BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250408BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250408BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/00
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2022514681
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2020074804
(87)【国際公開番号】W WO2021044005
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
【氏名又は名称原語表記】Les Laboratoires Servier
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】グランダル,ミカエル・モンラード
(72)【発明者】
【氏名】ジェッティング,トーベン
(72)【発明者】
【氏名】ラント,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブセン,ヤヌス・スコウ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ランディ・ウェスト
(72)【発明者】
【氏名】フレーリク,カミラ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0225703(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/28
A61K 39/395
A61P 35/00
C07K 16/46
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/13
C12N 15/63
C12P 21/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)それぞれ配列番号17~22;
b)それぞれ配列番号23~28;
c)それぞれ配列番号29~34;又は
d)それぞれ配列番号35~40
のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む、抗CD73抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
a)それぞれ配列番号9及び13;
b)それぞれ配列番号10及び14;
c)それぞれ配列番号11及び15;又は
d)それぞれ配列番号12及び16
のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
a)それぞれ配列番号9及び13;
b)それぞれ配列番号10及び14;
c)それぞれ配列番号11及び15;又は
d)それぞれ配列番号12及び16
のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む、請求項1に記載の抗CD73抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
a)配列番号9及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)並びに配列番号13及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号10及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号14及び42のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号11及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号15及び42のアミノ酸配列を含むLC;又は
d)配列番号12及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号16及び42のアミノ酸配列を含むLC
を含む抗CD73抗体。
【請求項5】
a)インビトロで可溶性CD73の活性を阻害する;
b)インビトロでCalu-6細胞上のCD73の活性を阻害する;
c)インビトロでH292細胞上のCD73の活性を阻害する;
d)CHO-S細胞上で発現されたヒト及びカニクイザルCD73に特異的に結合する;
e)SPRによって測定される1nM以下のK
DでヒトCD73のECDに結合する;
f)SPRによって測定される0.7nM以下のK
DでカニクイザルCD73のECDに結合する;
g)オレクルマブ、CPX006、及び/又は11E1と同じCD73のエピトープに結合しない;
h)1:1複合体を生じる方法でCD73ホモ二量体上のエピトープに結合する;
i)インビトロでオレクルマブよりも有効に可溶性CD73活性を阻害する;
j)インビトロでCalu-6、H292、及びCynom-K1細胞上のCD73活性を阻害する;
k)インビトロでCalu-6、NCI-H1775、KYSE-30、及びCapan-2細胞上のCD73活性を阻害する;
l)インビトロでMDA-MB-231及びMDA-MB-468細胞の増殖を阻害する;
m)インビトロで初代CD4
+及びCD8
+T細胞並びにCD19
+B細胞上のCD73活性を阻害する;
n)インビトロでCD4
+T細胞の増殖を回復させる;
o)インビトロでCD4
+及びCD8
+T細胞を活性化する;
p)抗PD-1抗体と組み合わせて、AMPの存在下で一方向混合リンパ球反応(MLR)においてT細胞増殖を回復させる;
q)一方向MLRにおいて、抗PD-1抗体と組み合わせて、AMPの存在下でT細胞活性化を増強する;
r)インビトロでB細胞活性化を刺激しない;
s)インビトロでH292細胞中のCD73のレベルを25%を超えて低下させない;
t)A375細胞を移植したPBMCヒト化マウスから収穫した腫瘍におけるCD73活性を阻害する;
u)MDA-MB-231細胞を移植したNOD-scidマウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する;
v)Calu-6細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する;及び
w)A375細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する
から選択される少なくとも1つの特性を有する、請求項1~4のいずれか一項記載の抗CD73抗体又は抗原結合部分。
【請求項6】
IgGである、請求項1~4のいずれか一項記載の抗CD73抗体。
【請求項7】
IgG
1である、請求項
6に記載の抗CD73抗体。
【請求項8】
F
C領域に少なくとも1つの変異を含む、請求項1~
7のいずれか一項記載の抗CD73抗体。
【請求項9】
IgG
1であり、EUナンバリングスキームに従ってナンバリングされた重鎖アミノ酸234位及び235位の1つ以上に変異を含む、請求項1~
8のいずれか一項記載の抗CD73抗体。
【請求項10】
234位及び235位のアミノ酸残基の一方又は両方が、LeuからAlaに変異している、請求項
9に記載の抗CD73抗体。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項記載の抗CD73抗体又はその抗原結合部分と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、又はCD73経路阻害剤を更に含む、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか一項記載の抗CD73抗体の、重鎖
又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、
及び軽鎖
又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配
列を含む、単離された組換え核酸分子。
【請求項14】
配列番号1~8のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項
13に記載の単離された組換え核酸分子。
【請求項15】
請求項
13又は
14に記載の単離核酸分子を含むベクターであって、発現制御配列を更に含む、ベクター。
【請求項16】
請求項1~
10のいずれか一項記載の抗CD73抗体の、重鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、及び軽鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む、宿主細胞。
【請求項17】
抗CD73抗体又はその抗原結合部分を作製するための方法であって、請求項
16に記載の宿主細胞を提供することと、該宿主細胞を、該抗体又は部分の発現に適した条件下で培養することと、得られた抗体又は部分を単離することとを含む、方法。
【請求項18】
請求項1~
10のいずれか一項記載の抗CD73抗体の抗原結合部分、及び別の異なる抗体の抗原結合部分を含む、二重特異性結合分子。
【請求項19】
a)患者のCD73活性を低下させる;
b)患者のCD4
+T細胞増殖を増加させる;
c)患者の免疫系を刺激する;又は
d)患者のがんを処置する
ための医薬組成物であって、有効量の請求項1~
10のいずれか一項記載の抗CD73抗体若しくは抗原結合部分、又は請求項
18の二重特異性結合分子を含む、医薬組成物。
【請求項20】
前記患者が、皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟部組織、造血系、頭頸部、肝臓、骨、膀胱、乳房、胃、子宮、子宮頸部、及び膵臓からなる群より選択される組織に起源を有するがんを有する、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記患者が、黒色腫、頭頸部がん、乳がん、膀胱がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、卵巣がん、腎細胞癌腫、前立腺がん、結腸直腸がん、胆管癌腫、甲状腺がん、又は精巣がんを有する、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項22】
処置は、免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、CD73経路阻害剤、又は放射線療法を更に含む、請求項19記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に援用される、2019年9月6日に出願された米国仮特許出願第62/896908号に基づく優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、全体が参照により本明細書に援用される配列表を含有する。2020年9月1日に作成された配列表の電子コピーは、022675_WO055_SL.txtという名称であり、サイズが30355バイトである。
【背景技術】
【0003】
腫瘍細胞は、腫瘍形成の各段階に影響を及ぼす複雑な微小環境(腫瘍微小環境又はTME)に囲まれている。TMEにおいて、アデノシンなどの免疫調節因子の濃度の増加は、腫瘍細胞が宿主抗腫瘍免疫応答を克服するのを助ける。
【0004】
アデノシンは、CD4+及びCD8+T細胞並びにナチュラルキラー(NK)細胞などの様々な免疫細胞上で発現された4つの異なる受容体(AR)に結合する。これらのプリン作動性Gタンパク質共役型受容体、A1R、A2AR、A2BR、及びA3Rはそれぞれ、異なる特性、並びに細胞及び組織分布を示す。ARへのアデノシンの結合は、T細胞及びNK細胞の抗腫瘍応答を抑制し、制御性T細胞(Treg)及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)などの免疫抑制細胞の発達及び活性化も促進し、したがってがんの進行を促進する。アデノシン受容体の免疫調節作用に加えて、それらのシグナル伝達はまた、がん細胞の生存及び増殖に直接影響を及ぼし得る。
【0005】
TMEにおけるアデノシンの蓄積は、細胞外ATPをアデノシンに変換する経路において働く細胞表面酵素CD73及びCD39によって媒介される。CD73は、5’-NTとしても公知であり、α-ヘリカルリンカーによってホモ二量体に連結された2つの65kDサブユニットからなる細胞外酵素である。多くのがん細胞によって過剰発現されると、CD73は、特に腫瘍低酸素条件下で、5’-AMPのアデノシンへの加水分解を媒介する。研究により、CD73の高発現は、トリプルネガティブ乳がん、肺がん、卵巣がん、腎臓がん、胃がん、及び黒色腫などの様々ながんにおいて予後不良をもたらすことが示されている。CD73の阻害は、がん治療に対する強力なアプローチとなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、CD73を標的化する新規な組換え抗体、並びにこれらの抗体の1つ以上を含む医薬組成物、並びにがんを処置するための抗体及び医薬組成物の使用に関する。抗体処置を含む、このようながんのために現在利用可能な処置と比較して、本明細書に記載される抗体及び組成物は、単独で、又は別のがん治療薬と組み合わせて、優れた臨床応答を提供し得ることが企図される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの態様では、本開示は、
a)配列番号9及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)並びに配列番号13及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号10及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号14及び42のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号11及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号15及び42のアミノ酸配列を含むLC;又は
d)配列番号12及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号16及び42のアミノ酸配列を含むLC
を含む抗体と同じヒトCD73のエピトープに結合する抗CD73抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0008】
特定の実施態様では、前記抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号17~19のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)1~3;
ii)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号9のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号9及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)
を含み;
前記抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号20~22のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)1~3;
ii)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号13及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)
を含む。
【0009】
特定の実施態様では、前記抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号23~25のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)1~3;
ii)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号10及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)
を含み;
前記抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号26~28のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)1~3;
ii)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号14のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号14及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)
を含む。
【0010】
特定の実施態様では、前記抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号29~31のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)1~3;
ii)配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号11のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号11及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)
を含み;
前記抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号32~34のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)1~3;
ii)配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号15のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号15及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)
を含む。
【0011】
特定の実施態様では、前記抗体の重鎖が、
i)それぞれ配列番号35~37のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(H-CDR)1~3;
ii)配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);
iii)配列番号12のアミノ酸配列を含むVH;又は
iv)配列番号12及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)
を含み;
前記抗体の軽鎖が、
i)それぞれ配列番号38~40のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(L-CDR)1~3;
ii)配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
iii)配列番号16のアミノ酸配列を含むVL;又は
iv)配列番号16及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)
を含む。
【0012】
いくつかの実施態様では、本開示は、
a)それぞれ配列番号17~22;
b)それぞれ配列番号23~28;
c)それぞれ配列番号29~34;又は
d)それぞれ配列番号35~40
のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む抗CD73抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0013】
いくつかの実施態様では、本開示は、
a)それぞれ配列番号9及び13;
b)それぞれ配列番号10及び14;
c)それぞれ配列番号11及び15;又は
d)それぞれ配列番号12及び16
のアミノ酸配列と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインアミノ酸配列及び軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む抗CD73抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0014】
いくつかの実施態様では、本開示は、
a)それぞれ配列番号9及び13;
b)それぞれ配列番号10及び14;
c)それぞれ配列番号11及び15;又は
d)それぞれ配列番号12及び16
のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗CD73抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0015】
いくつかの実施態様では、本開示は、
a)配列番号9及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)並びに配列番号13及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号10及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号14及び42のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号11及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号15及び42のアミノ酸配列を含むLC;又は
d)配列番号12及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号16及び42のアミノ酸配列を含むLC
を含む抗CD73抗体を提供する。
【0016】
いくつかの実施態様では、本開示は、
a)配列番号43のアミノ酸残基R73、R109、及びD168;
b)配列番号43のアミノ酸残基R109;又は
c)配列番号43のアミノ酸残基I301、S302、及びH304
を含む、ヒトCD73上のエピトープに結合する抗CD73抗体又はその抗原結合部分を提供する。
いくつかの実施態様では、本開示は、
a)配列番号43のアミノ酸残基27~31、61~75、及び161~170;
b)配列番号43のアミノ酸残基61~70及び161~170;又は
c)配列番号43のアミノ酸残基27~31、266~270、及び291~305
を含む、ヒトCD73上のエピトープに結合する抗CD73抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0017】
特定の実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、
a)インビトロで可溶性CD73の活性を阻害する;
b)インビトロでCalu-6細胞上のCD73の活性を阻害する;
c)インビトロでH292細胞上のCD73の活性を阻害する;
d)CHO-S細胞上で発現されたヒト及びカニクイザルCD73に特異的に結合する;
e)SPRによって測定される1nM以下のKDでヒトCD73のECDに結合する;
f)SPRによって測定される0.7nM以下のKDでカニクイザルCD73のECDに結合する;
g)オレクルマブ、CPX006、及び/又は11E1と同じCD73のエピトープに結合しない;
h)1:1複合体を生じる方法でCD73ホモ二量体上のエピトープに結合する;
i)インビトロでオレクルマブよりも有効に可溶性CD73活性を阻害する;
j)インビトロでCalu-6、H292、及びCynom-K1細胞上のCD73活性を阻害する;
k)インビトロでCalu-6、NCI-H1775、KYSE-30、及びCapan-2細胞上のCD73活性を阻害する;
l)インビトロでMDA-MB-231及びMDA-MB-468細胞の増殖を阻害する;
m)インビトロで初代CD4+及びCD8+T細胞並びにCD19+B細胞上のCD73活性を阻害する;
n)インビトロでCD4+T細胞の増殖を回復させる;
o)インビトロでCD4+及びCD8+T細胞を活性化する;
p)抗PD-1抗体と組み合わせて、AMPの存在下で一方向混合リンパ球反応(MLR)においてT細胞増殖を回復させる;
q)一方向MLRにおいて、抗PD-1抗体と組み合わせて、AMPの存在下でT細胞活性化を増強する;
r)インビトロでB細胞活性化を刺激しない;
s)インビトロでH292細胞中のCD73のレベルを25%を超えて低下させない;
t)A375細胞を移植したPBMCヒト化マウスから収穫した腫瘍におけるCD73活性を阻害する;
u)MDA-MB-231細胞を移植したNOD-scidマウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する;
v)Calu-6細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する;及び
w)A375細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する
から選択される少なくとも1つの特性を有する。
具体的な実施態様では、抗体又は抗原結合部分が、前記特性の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、又は23個全てを有する。
【0018】
特定の実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、IgG1などのIgGである。抗体は、FC領域に少なくとも1つの変異を含み得る。例えば、抗体は、IgG1であり、IMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従ってナンバリングされた重鎖アミノ酸234位及び235位の1つ以上に変異を含み得る。具体的な実施態様では、234位及び235位のアミノ酸残基の一方又は両方が、LeuからAlaに変異している。
【0019】
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載される抗CD73抗体又はその抗原結合部分と、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。特定の実施態様では、医薬組成物が、免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及びCD73経路阻害剤の1つ以上を更に含み得る。
【0020】
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分の、重鎖若しくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、又は軽鎖若しくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、又はその両方を含む、単離核酸分子を提供する。特定の実施態様では、核酸分子が、配列番号1~8のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み得る。
【0021】
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載される単離核酸分子を含むベクターであって、発現制御配列を更に含む、ベクターを提供する。
【0022】
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分の、重鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、及び軽鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む、宿主細胞を提供する。
【0023】
いくつかの実施態様では、本開示は、抗CD73抗体又はその抗原結合部分を作製するための方法であって、本明細書に記載される宿主細胞を提供することと、当該宿主細胞を、抗体又は部分の発現に適した条件下で培養することと、得られた抗体又は部分を単離することとを含む、方法を提供する。
【0024】
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載される1つ又は2つの別個の抗CD73抗体の抗原結合部分を含む、二重特異性結合分子を提供する。
【0025】
いくつかの実施態様では、本開示は、それを必要とする患者のCD73活性を低下させるための方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される抗CD73抗体若しくは抗原結合部分、医薬組成物、又は二重特異性結合分子を当該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施態様では、本開示は、それを必要とする患者のCD4+T細胞増殖を増加させるための方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される抗CD73抗体若しくは抗原結合部分、医薬組成物、又は二重特異性結合分子を当該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0027】
いくつかの実施態様では、本開示は、それを必要とする患者の免疫系を刺激するための方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される抗CD73抗体若しくは抗原結合部分、医薬組成物、又は二重特異性結合分子を当該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施態様では、本開示は、患者のがんを処置するための方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される抗CD73抗体若しくは抗原結合部分、医薬組成物、又は二重特異性結合分子を当該患者に投与することを含む、方法を提供する。特定の実施態様では、がんが、皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟部組織、造血系、頭頸部、肝臓、骨、膀胱、乳房、胃、子宮、子宮頸部、及び膵臓からなる群より選択される組織に起源を有する。特定の実施態様では、がんが、黒色腫、頭頸部がん、乳がん、膀胱がん、非小細胞肺がん、膵臓がん、卵巣がん、腎細胞癌腫、前立腺がん、結腸直腸がん、胆管癌腫、甲状腺がん、又は精巣がんである。
【0029】
特定の実施態様では、本明細書に記載される処置が、免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、CD73経路阻害剤、又は放射線療法を患者に投与することを更に含む。
【0030】
いくつかの態様では、本開示は、
a)患者のCD73活性を低下させる;
b)患者のCD4+T細胞増殖を増加させる;
c)患者の免疫系を刺激する;又は
d)患者のがんを処置する
ための医薬を製造するための、本明細書に記載される抗CD73抗体若しくは抗原結合部分、医薬組成物、又は二重特異性結合分子の使用を提供する。
【0031】
いくつかの態様では、本開示は、
a)患者のCD73活性を低下させる;
b)患者のCD4+T細胞増殖を増加させる;
c)患者の免疫系を刺激する;又は
d)患者のがんを処置する
のに使用するための、本明細書に記載される抗CD73抗体若しくは抗原結合部分、医薬組成物、又は二重特異性結合分子を提供する。
【0032】
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の詳細な説明において明らかである。しかしながら、詳細な説明は、本発明の実施態様及び態様を示すが、限定ではなく例示としてのみ与えられることを理解すべきである。本発明の範囲内での様々な変更及び修正は、詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】示される抗CD73抗体で処理した後の可溶性CD73の活性を示すグラフである。データを未処理対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図2】示される抗CD73抗体で処理した後にCalu-6細胞(上)又はH292細胞(下)上で発現されたCD73の活性を示すグラフのペアである。データを未処理対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図3】CHO-S細胞上で発現されたヒト及びカニクイザルCD73への示される抗CD73抗体及び参照抗体(オレクルマブ)類似体の結合を示すグラフのセットである。モックトランスフェクトCHO-S細胞を陰性対照として使用した。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG
1-LALAアイソタイプ抗体である。データを平均±SEMとして表す。
【
図4】示される抗CD73抗体について識別された競合パターン及びエピトープビンを示す概略図である。接続黒色線は、交差遮断活性を示す。接続点線は、一方向にのみ遮断する抗体を示す。抗体を、他の抗CD73抗体との競合パターンに従ってグループ分けする。
【
図5】開いた状態のCD73二量体(4H2G)の結晶構造上にマッピングされた抗体21127(パネルA)、21163(パネルB)、21046(パネルC)、11E1類似体(パネルD)、オレクルマブ類似体(パネルE)、及びCPX006類似体(パネルF)の結合エピトープを示す図である。構造を表面表示として示し、N末端ドメインを淡灰色として、C末端ドメインを灰色として示す。アデノシンを白色の棒として示す(矢印で示される)。線状エピトープを濃灰色として示し、接触残基を黒色として示す。
【
図6A】比mAb:CD73 1:1(黒色線)、0.5:1(濃灰色線)、0.1:1(淡灰色線)、0:1(灰色破線)及び1:0(黒色破線)でCD73と混合した抗体21127、21163、21046、及び11E1、オレクルマブ、及びCPX006類似体の一連のSEC-MALSプロファイルを示す図である。様々なピークの計算したサイズを表10に示す。
【
図6B】比mAb:CD73 1:1(黒色線)、0.5:1(濃灰色線)、0.1:1(淡灰色線)、0:1(灰色破線)及び1:0(黒色破線)でCD73と混合した抗体21127、21163、21046、及び11E1、オレクルマブ、及びCPX006類似体の一連のSEC-MALSプロファイルを示す図である。様々なピークの計算したサイズを表10に示す。
【
図7】示される抗CD73抗体及び参照抗体(オレクルマブ)類似体で処理した後の可溶性CD73の活性を示すグラフである。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG
1-LALAアイソタイプ抗体である。データを未処理対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。垂直の点線は、可溶性組換えCD73の抗体濃度と等モルの抗体濃度を示す。
【
図8】示される抗CD73抗体及び参照抗体(オレクルマブ)類似体で処理した後にCalu-6細胞(上)、H292細胞(中央)、及びCynom-K1細胞(下)上で発現されたCD73の活性を示すグラフのセットである。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG
1-LALAアイソタイプ抗体である。データを未処理対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図9】示される抗CD73抗体及び参照抗体類似体(オレクルマブ)で3時間(上)、6時間(中央)、又は24時間(下)処理した後にH292細胞上で発現されたCD73の活性を示すグラフのセットである。データを未処理対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図10】CellTiter-Gloアッセイによって測定される、示される抗体の存在下で20種の異なるがん細胞株によって発現されたCD73の活性を示すグラフである。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG1-LALAアイソタイプ抗体である。各データポイントは、3回の技術的反復の平均を表す。
【
図11】300μMのAMPの存在下で成長させた2つのトリプルネガティブ乳がん細胞株MBA-MB-231(上のパネル)及びMBA-MB-468(下のパネル)の生存率に対するCD73活性の遮断効果を示すグラフのペアである。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG1-LALAアイソタイプ抗体である。全てのカウントを未処理細胞に対して正規化し、データを3回の技術的反復の平均±SEMとして表す。
【
図12】CellTiter-Gloアッセイによって測定される、示される抗体の存在下で健康なヒトドナー由来の初代CD4
+及びCD8
+T細胞並びにCD19
+B細胞によって発現されたCD73の活性を示すグラフのセットである。活性を未処理細胞(100%)に対して正規化する。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG1-LALAアイソタイプ抗体である。データを3回の技術的反復の平均±SEMとして表す。
【
図13】抗CD3/CD28ビーズ、AMP、並びに示される抗CD73抗体及び参照抗体(オレクルマブ)類似体で処理したCD4
+T細胞の増殖を示すグラフである。データをAMPで処理していない対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図14】抗CD3/CD28ビーズ、AMP、及び21127又は参照抗体(オレクルマブ)類似体で処理したCD4
+(上のパネル)及びCD8
+(下のパネル)T細胞の活性化を示すグラフのペアである。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG1-LALAアイソタイプ抗体である。データを平均±SEMとして表す。
【
図15】抗PD-1抗体(12819)、AMP、及び示される抗CD73抗体又は参照抗体(オレクルマブ)類似体とのインキュベーション時の一方向混合リンパ球反応(MLR)におけるT細胞増殖を示すグラフである。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG1-LALAアイソタイプ抗体である。データをAMPで処理していない対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図16】AMPあり(下のパネル)又はなし(上のパネル)での、示される濃度の抗PD-1及び/又は抗CD73抗体とのインキュベーション時の一方向MLRにおけるT細胞増殖を示すグラフのペアである。12819+21127の組み合わせは、2つの抗体の1:1混合物であり、示される濃度は混合物の総濃度を示す。「対照Ab」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG1-LALAアイソタイプ抗体である。データをAMPで処理していない対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図17A】示される抗体(10μg/mL)及びCD40リガンド(0.5μg/mL)で一晩刺激した健康なドナー由来のPBMCにおけるB細胞活性化を示す図である。
図17Aは、B細胞(CD20
+)上のCD69のレベルを示す一連のプロットである。
【
図17B】
図17Bは、B細胞活性化マーカーCD25、CD69及びCD83の抗体染色についての平均蛍光強度(MFI)を示す一連のグラフである。「IgG1-LALA対照」は、非CD73特異的FcγR欠損IgG1-LALAアイソタイプ抗体である。データは1人のドナーからの反復であり、平均±SEMとして表す。
【
図18】示される抗CD73抗体又は参照抗体(オレクルマブ)類似体による24時間の処理後にH292細胞で発現されたCD73のレベルを示すグラフである。データを未処理対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図19】示される抗体による処置後のヒト異種移植片黒色腫モデルA375におけるCD73の活性を示すグラフのペアである。上のパネル:A375を移植したPBMCヒト化マウスに、様々な用量の21127を2週間にわたって1週間に3回投与した。最後の投与の1日後に腫瘍を収穫し、CD73活性について分析した。下のパネル:A375を皮下移植したNOD-scidマウスを、示される抗体又は組み合わせで1週間にわたって1週間に3回処置した。最後の処置の3、7、10、17、及び29日後に腫瘍を収穫し、CD73活性について分析した。データを未処理対照に対して正規化し、平均±SEMとして表す。
【
図20】ヒトトリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231を皮下移植したNOD-scidマウスにおける腫瘍成長を示すグラフである。マウスを、10mg/kgの抗体21127又は参照抗体(オレクルマブ)類似体で1週間に2回処置した。灰色領域は、処置期間を示す。データを平均±SEMとして表す。
【
図21】Calu-6又はA375腫瘍細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおける腫瘍成長に対する抗CD73抗体21127又はビヒクルによる処置の効果を示すグラフのペアである。灰色領域は、処置期間を示す。データを平均±SEMとして表す。
*P<0.05
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、がん患者などの患者のCD73活性を抑制するために使用することができる新規な抗ヒトCD73抗体を提供する。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「CD73」はヒトCD73を指す。ヒトCD73ポリペプチド配列は、以下に示されるように、UniProtアクセッション番号P21589(5NTD_HUMAN)(配列番号43)で入手可能である。
10 20 30 40 50
MCPRAARAPA TLLLALGAVL WPAAGAWELT ILHTNDVHSR LEQTSEDSSK
60 70 80 90 100
CVNASRCMGG VARLFTKVQQ IRRAEPNVLL LDAGDQYQGT IWFTVYKGAE
110 120 130 140 150
VAHFMNALRY DAMALGNHEF DNGVEGLIEP LLKEAKFPIL SANIKAKGPL
160 170 180 190 200
ASQISGLYLP YKVLPVGDEV VGIVGYTSKE TPFLSNPGTN LVFEDEITAL
210 220 230 240 250
QPEVDKLKTL NVNKIIALGH SGFEMDKLIA QKVRGVDVVV GGHSNTFLYT
260 270 280 290 300
GNPPSKEVPA GKYPFIVTSD DGRKVPVVQA YAFGKYLGYL KIEFDERGNV
310 320 330 340 350
ISSHGNPILL NSSIPEDPSI KADINKWRIK LDNYSTQELG KTIVYLDGSS
360 370 380 390 400
QSCRFRECNM GNLICDAMIN NNLRHTDEMF WNHVSMCILN GGGIRSPIDE
410 420 430 440 450
RNNGTITWEN LAAVLPFGGT FDLVQLKGST LKKAFEHSVH RYGQSTGEFL
460 470 480 490 500
QVGGIHVVYD LSRKPGDRVV KLDVLCTKCR VPSYDPLKMD EVYKVILPNF
510 520 530 540 550
LANGGDGFQM IKDELLRHDS GDQDINVVST YISKMKVIYP AVEGRIKFST
560 570
GSHCHGSFSL IFLSLWAVIF VLYQ
【0035】
本明細書で使用される「抗体」(Ab)又は「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された2本の重(H)鎖(約50~70kDa)及び2本の軽(L)鎖(約25kDa)を含む四量体を指す。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)及び重鎖定常領域(CH)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VL)及び軽鎖定常領域(CL)で構成される。VH及びVLドメインは、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分され得る。各VH及びVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシル末端まで配置された、3つのCDR(本明細書におけるH-CDRは重鎖由来のCDRを示し;本明細書におけるL-CDRは軽鎖由来のCDRを示す)及び4つのFRで構成される。重鎖又は軽鎖におけるアミノ酸番号、並びにFR及びCDR領域の割り当ては、IMGT(登録商標)定義(EU numbering;Lefranc et al.,Dev Comp Immunol 27(1):55-77(2003));又はKabat、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,MD(1987 and 1991));Chothia&Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Chothia et al.,Nature 342:878-883(1989);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996);若しくはHonegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.309(3):657-70(2001)の定義に従い得る。
【0036】
「組換え抗体」という用語は、抗体をコードするヌクレオチド配列を含む細胞又は細胞株から発現される抗体を指し、前記ヌクレオチド配列は天然では細胞と関連していない。
【0037】
「単離タンパク質」、「単離ポリペプチド」又は「単離抗体」という用語は、その起源又は由来の源により、(1)その天然の状態で付随する天然に会合している成分と会合していない、(2)同じ種由来の他のタンパク質を含まない、(3)異なる種由来の細胞によって発現される、及び/又は(4)天然に存在しない、タンパク質、ポリペプチド又は抗体を指す。したがって、化学合成される、又は天然に由来する細胞とは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、その天然に会合している成分から「単離」される。タンパク質はまた、当技術分野において周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって天然に会合している成分を実質的に含まないようにされ得る。
【0038】
「親和性」という用語は、抗原と抗体との間の誘引の尺度を指す。抗原に対する抗体の固有の誘引性は、典型的には、具体的な抗体-抗原相互作用の結合親和性平衡定数(KD)として表される。抗体は、KDが1mM以下、好ましくは100nM以下である場合、抗原に特異的に結合すると言われる。KD結合親和性定数は、例えば、IBIS Technologies製のIBIS MX96 SPRシステム又はForteBio製のOctet(商標)システムを使用して、例えば表面プラズモン共鳴(BIAcore(商標))又はバイオレイヤー干渉法によって測定され得る。
【0039】
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体又は二重特異性結合分子などの関連分子に特異的に結合する抗原の一部(決定基)を指す。エピトープ決定基は、一般的に、アミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、一般的に、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。エピトープは、「線状」又は「立体構造」であり得る。線状エピトープでは、タンパク質(例えば、抗原)と相互作用分子(抗体など)との間の相互作用点の全てが、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に存在する。立体構造エピトープでは、相互作用点が、一次アミノ酸配列において互いに分離されているタンパク質上のアミノ酸残基にわたって存在する。抗原上の所望のエピトープが決定されると、当技術分野において周知の技術を使用してそのエピトープに対する抗体を作製することが可能である。例えば、線状エピトープに対する抗体は、例えば、線状エピトープのアミノ酸残基を有するペプチドで動物を免疫することによって作製され得る。立体構造エピトープに対する抗体は、例えば、立体構造エピトープの関連アミノ酸残基を含有するミニドメインで動物を免疫することによって作製され得る。具体的なエピトープに対する抗体はまた、例えば、対象となる標的分子(例えば、CD73)又はその関連部分で動物を免疫化し、次いで、エピトープへの結合についてスクリーニングすることによっても作製され得る。
【0040】
競合アッセイ、エピトープビニング、及びアラニンスキャニングを含むが、これらに限定されるわけではない、当技術分野において公知の方法を使用することによって、抗体が本開示の抗CD73抗体と同じエピトープに結合するかどうか、又はこれと結合について競合するかどうかを決定することができる。いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体を飽和条件下でCD73に結合させ、次いで、試験抗体がCD73に結合する能力を測定する。試験抗体が参照抗CD73抗体と同時にCD73に結合することができる場合、試験抗体は参照抗CD73抗体とは異なるエピトープに結合する。しかしながら、試験抗体が同時にCD73に結合することができない場合、試験抗体は、本開示の抗CD73抗体によって結合されるエピトープと同じエピトープ、重複するエピトープ、又はこれに近接するエピトープに結合する。この実験は、例えば、ELISA、RIA、BIACORE(商標)、SPR、バイオレイヤー干渉法又はフローサイトメトリーを使用して実施され得る。抗CD73抗体が別の抗CD73抗体と交差競合するかどうかを試験するために、2つの方向で上記の競合方法を使用することができる、すなわち、公知の抗体が試験抗体を遮断するかどうか、及びその逆を決定することができる。このような交差競合実験は、例えば、IBIS MX96 SPR機器又はOctet(商標)システムを使用して実施され得る。
【0041】
「ヒト抗体」という用語は、可変ドメイン及び定常領域配列がヒト配列に由来する抗体を指す。この用語は、ヒト遺伝子に由来するが、例えば、免疫原性を低下させる、親和性を増加させる、及び/又は安定性を増加させるように改変されている配列を有する抗体を包含する。更に、この用語は、ヒト細胞に典型的ではないグリコシル化を付与し得る非ヒト細胞で組換え産生された抗体を包含する。この用語はまた、ヒト抗体遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト生物(例えば、OmniRat(登録商標)ラット)において産生される抗体を包含する。
【0042】
本明細書で使用される抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、ヒトCD73、又はその部分)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の部分又は断片を指す。完全長抗体の特定の断片が抗体の抗原結合機能を果たすことができることが示されている。「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片:VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片:ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片;及び(vi)抗原に特異的に結合することができる単離相補性決定領域(CDR)が挙げられる。更に、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、組換え法を使用して、VLドメイン及びVHドメインが対形成して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって連結され得る。VH及び/又はVLを含む抗原結合分子も本開示の範囲内である。VHの場合、分子はまた、CH1、ヒンジ、CH2、又はCH3領域の1つ以上を含み得る。このような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図されている。ダイアボディなどの一本鎖抗体の他の形態も包含される。ダイアボディは、VHドメイン及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎ、それによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を作り出すリンカーを使用した、二価の二重特異性抗体である。
【0043】
Fab及びF(ab’)2断片などの抗体部分は、全抗体のパパイン又はペプシン消化などの従来技術を使用して全抗体から調製され得る。更に、抗体、抗体部分及び免疫接着分子は、例えば本明細書に記載される、標準的な組換えDNA技術を使用して得られ得る。
【0044】
抗CD73抗体のクラス(アイソタイプ)及びサブクラスは、当技術分野において公知の任意の方法によって決定され得る。一般的に、抗体のクラス及びサブクラスは、抗体の具体的なクラス及びサブクラスに特異的な抗体を使用して決定され得る。このような抗体は市販されている。クラス及びサブクラスは、ELISA又はウエスタンブロット及び他の技術によって決定され得る。或いは、クラス及びサブクラスは、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の定常領域の全部又は一部を配列決定し、それらのアミノ酸配列を免疫グロブリンの様々なクラス及びサブクラスの公知のアミノ酸配列と比較し、抗体のクラス及びサブクラスを決定することによって決定され得る。
【0045】
別段の指示がない限り、本開示で言及される全ての抗体アミノ酸残基番号は、IMGT(登録商標)ナンバリングスキーム(EUナンバリング)に基づくものである。
【0046】
抗CD73抗体
本開示は、CD73に対する抗体、及びその抗原結合部分を提供する。具体的な実施態様では、本明細書で開示される抗体が、再編成されたヒト抗体遺伝子によってコードされる抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えば、ラット)から作製されるヒト抗体である。特定の実施態様では、ヒト抗体が、例えば、プライマー由来の変異を生殖系列配列に戻すように変化させるための特定の変異を含有し得る(例えば、表1の「Symplex修正」変異体参照)。
【0047】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体が、Fc領域に「LALA」変異(L234A/L235A)を有する。これらの変異は、ヒトFcγR(Fcガンマ受容体)に対する抗体の結合を弱める。このような抗体は、低レベルの二次エフェクター機能を有し、エフェクターT細胞を枯渇させず、他の非悪性細胞を標的化もしないので有利である。
【0048】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、
a)配列番号9及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)並びに配列番号13及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号10及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号14及び42のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号11及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号15及び42のアミノ酸配列を含むLC;又は
d)配列番号12及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号16及び42のアミノ酸配列を含むLC
を含む抗体とヒトCD73への結合について競合若しくは交差競合する、又はこれを含む抗体と同じヒトCD73のエピトープに結合する。
【0049】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、配列番号19、25、31、又は37の重鎖CDR3(H-CDR3)アミノ酸配列を有する。
【0050】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、それぞれ配列番号17~19、23~25、29~31、又は35~37のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1~3(H-CDR1~3)を有する。
【0051】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、配列番号9~12のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列を有する。
【0052】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、配列番号9~12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVHを有する。
【0053】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体が、配列番号9~12のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のVHアミノ酸配列;及び配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の重鎖定常領域アミノ酸配列を有する。
【0054】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体が、配列番号9~12のいずれか1つのVHアミノ酸配列及び配列番号41の重鎖定常領域アミノ酸配列を含む。
【0055】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、配列番号22、28、34、又は40の軽鎖CDR3(L-CDR3)アミノ酸配列を有する。
【0056】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、それぞれ配列番号20~22、26~28、32~34、又は38~40のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1~3(L-CDR1~3)を有する。
【0057】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、配列番号13~16のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を有する。
【0058】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、配列番号13~16のいずれか1つのアミノ酸配列を含むVLを有する。
【0059】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体が、配列番号13~16のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のVLアミノ酸配列;及び配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の軽鎖定常領域アミノ酸配列を有する。
【0060】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体が、配列番号13~16のいずれか1つのVLアミノ酸配列及び配列番号42の軽鎖定常領域アミノ酸配列を含む。
【0061】
特定の実施態様では、抗CD73抗体が、上記の重鎖のいずれか1つ及び上記の軽鎖のいずれか1つを含む。
【0062】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体又は抗原結合部分が、
a)それぞれ配列番号17~22;
b)それぞれ配列番号23~28;
c)それぞれ配列番号29~34;又は
d)それぞれ配列番号35~40
のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む。
【0063】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体又は抗原結合部分が、
a)それぞれ配列番号9及び13;
b)それぞれ配列番号10及び14;
c)それぞれ配列番号11及び15;又は
d)それぞれ配列番号12及び16
のアミノ酸配列と80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のVH及びVLを含む。
【0064】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体又は抗原結合部分が、
a)それぞれ配列番号9及び13;
b)それぞれ配列番号10及び14;
c)それぞれ配列番号11及び15;又は
d)それぞれ配列番号12及び16
のアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む。
【0065】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体が、
a)配列番号9及び41のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)並びに配列番号13及び42のアミノ酸配列を含む軽鎖(LC);
b)配列番号10及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号14及び42のアミノ酸配列を含むLC;
c)配列番号11及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号15及び42のアミノ酸配列を含むLC;又は
d)配列番号12及び41のアミノ酸配列を含むHC並びに配列番号16及び42のアミノ酸配列を含むLC
を含む。
【0066】
本開示はまた、抗体21028、21046、21127、又は21163と結合について競合若しくは交差競合する、又はこれと同じエピトープに結合する抗CD73抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0067】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体又は抗原結合部分が、抗体21028、21046、21127、又は21163のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む。
【0068】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体又は抗原結合部分が、抗体21028、21046、21127、又は21163のVH及びVLとアミノ酸配列がそれぞれ少なくとも90%同一のVH及びVLを含む。
【0069】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体又は抗原結合部分が、抗体21028、21046、21127、又は21163のそれぞれVH及びVLであるVH及びVLを含む。
【0070】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体が、抗体21028、21046、21127、若しくは21163、又は前記抗体と同じアミノ酸配列を含む抗体である。
【0071】
本明細書に記載される方法によって得られる抗CD73抗体のクラスは、別のクラス又はサブクラスで変更され得る、又はスイッチされ得る。本開示のいくつかの実施態様では、VL又はVHをコードする核酸分子が、それぞれCL又はCHをコードする核酸配列を含まないように、当技術分野において周知の方法を使用して単離される。次いで、VL又はVHをコードする核酸分子が、異なるクラスの免疫グロブリン分子由来のCL又はCHをそれぞれコードする核酸配列に作動可能に連結される。これは、上記の、CL又はCH配列を含むベクター又は核酸分子を使用して達成され得る。例えば、元々IgMであった抗CD73抗体は、IgGにクラススイッチされ得る。更に、クラススイッチングを使用して、あるIgGサブクラスを別のサブクラスに、例えばIgG1からIgG2に変換することができる。κ軽鎖定常領域を、例えばλ軽鎖定常領域に変更することができる、又は逆もまた同様である。所望のIgアイソタイプを有する本開示の抗体を作製する例示的な方法は、抗CD73抗体の重鎖をコードする核酸分子及び抗CD73抗体の軽鎖をコードする核酸分子を単離するステップと、重鎖の可変ドメインを得るステップと、重鎖の可変ドメインのコード配列を所望のアイソタイプの重鎖の定常領域のコード配列と連結するステップと、細胞内で連結された配列によってコードされる軽鎖及び重鎖を発現させるステップと、所望のアイソタイプを有する抗CD73抗体を回収するステップとを含む。
【0072】
本開示の抗CD73抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、又はIgD分子であり得るが、典型的にはIgGアイソタイプ、例えばIgGサブクラスIgG1、IgG2a若しくはIgG2b、IgG3又はIgG4のものである。いくつかの実施態様では、抗体がアイソタイプサブクラスIgG1のものである。いくつかの実施態様では、抗体がアイソタイプサブクラスIgG2のものである。
【0073】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体が、Fc領域に少なくとも1つの変異を含み得る。いくつかの異なるFc変異が公知であり、これらの変異は抗体のエフェクター機能を変化させる。例えば、多くの場合、例えばリガンド/受容体相互作用が望ましくない場合、又は抗体-薬物コンジュゲートの場合、エフェクター機能を低下させる、又は排除することが望ましいであろう。
【0074】
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体が、エフェクター機能を低下させるFc領域の少なくとも1つの変異、例えば228位、233位、234位及び235位の1つ以上の変異を含み、アミノ酸位置はIMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。
【0075】
いくつかの実施態様では、例えば、抗体がIgG1サブクラスのものである場合、234位及び235位のアミノ酸残基の一方又は両方が、例えば、LeuからAlaに変異され得る(L234A/L235A)。これらの変異は、IgG1抗体のFc領域のエフェクター機能を低下させる。アミノ酸位置は、IMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。
【0076】
いくつかの実施態様では、例えば、抗体がIgG4サブクラスのものである場合、変異S228Pを含み得、アミノ酸位置はIMGT(登録商標)ナンバリングスキームに従ってナンバリングされる。この突然は、望ましくないFabアーム交換を減少させることが知られている。
【0077】
いくつかの実施態様では、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合部分が、配列番号43の以下の残基:R73、R109、D168、I301、S302、及びH304の少なくとも1つ(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つ)を含むCD73のエピトープに結合する。特定の実施態様では、抗体又は抗原結合部分が、残基R73、R109、及びD168を含む、又はからなるCD73のエピトープに結合する(抗体21127など)。特定の実施態様では、抗体又は抗原結合部分が、残基R109を含む、又はからなるCD73のエピトープに結合する(抗体21163など)。特定の実施態様では、抗体又は抗原結合部分が、残基I301、S302、及びH304を含む、又はからなるCD73のエピトープに結合する(抗体21046など)。
【0078】
いくつかの実施態様では、本発明の抗CD73抗体又はその抗原結合部分が、配列番号43の残基27~31、61~70、61~75、161~170、266~270、及び/又は291~305を含むCD73のエピトープに結合する。特定の実施態様では、抗体又は抗原結合部分が、残基27~31、61~75、及び161~170を含む、又はからなるCD73のエピトープに結合する(抗体21127など)。特定の実施態様では、抗体又は抗原結合部分が、残基61~70及び161~170を含む、又はからなるCD73のエピトープに結合する(抗体21163など)。特定の実施態様では、抗体又は抗原結合部分が、残基27~31、266~270、及び291~305を含む、又はからなるCD73のエピトープに結合する(抗体21046など)。
【0079】
いくつかの実施態様では、抗体又は部分が、配列番号43の残基27~31(又はその断片、例えば1、2、3、若しくは4残基断片)を含むエピトープに結合する(抗体21127及び21046など)。いくつかの実施態様では、抗体又は部分が、配列番号43の残基61~75(又はその断片、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、若しくは14残基断片、例えば残基61~70)を含むエピトープに結合する(抗体21127及び21163など)。いくつかの実施態様では、抗体又は部分が、配列番号43の残基161~170(又はその断片、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは9残基断片)を含むエピトープに結合する(抗体21127及び21163など)。いくつかの実施態様では、抗体又は部分が、配列番号43の残基266~270(又はその断片、例えば1、2、3、若しくは4残基断片)を含むエピトープに結合する(抗体21046など)。いくつかの実施態様では、抗体又は部分が、配列番号43の残基291~305(又はその断片、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、若しくは14残基断片)を含むエピトープに結合する(抗体21046など)。
【0080】
上記残基又は表9に示される残基の任意の組み合わせを含むエピトープも企図される。
【0081】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載されるCD73エピトープを含むアミノ酸配列を免疫原として使用して(例えば、動物に投与する、又は抗体ライブラリーをスクリーニングするための抗原として)、前記エピトープに結合する抗CD73抗体又はその抗原結合部分を作製又は識別することができる。
【0082】
いくつかの実施態様(例えば、10μg/mLの濃度で)では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、可溶性CD73の活性を少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%(例えば、少なくとも40%)阻害する。いくつかの実施態様では、1、2、3、4、5、7、10、15、20、30、40、50、又は100μg/mLの濃度で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、可溶性CD73の活性を少なくとも90%阻害する。
【0083】
いくつかの実施態様(例えば、10μg/mLの濃度で)では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、Calu-6細胞上のCD73の活性を少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(例えば、少なくとも75%)阻害する。
【0084】
いくつかの実施態様(例えば、10μg/mLの濃度で)では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、H292細胞上のCD73の活性を少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%(例えば、少なくとも80%)阻害する。
【0085】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、CHO-S細胞上で発現されたヒトCD73、カニクイザルCD73、又はその両方に特異的に結合する。
【0086】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、又は0.01nM以下(例えば、1nM以下)のKDでヒトCD73の細胞外ドメイン(ECD)に、結合する。
【0087】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、又は0.01nM以下(例えば、0.7nM以下)のKDでカニクイザルCD73の細胞外ドメイン(ECD)に結合する。
【0088】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、オレクルマブ、CPX006、11E1、又はこれらの任意の組み合わせと同じCD73のエピトープに結合しない。
【0089】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、1:1複合体を生じる方法でCD73ホモ二量体上のエピトープに結合する。特定の実施態様では、抗体/CD73の結合が、1:1複合体のみを生じる。特定の実施態様では、抗体/CD73の結合が、主に1:1複合体を生じる。具体的な実施態様では、CD73への抗体又は抗原結合部分の結合が、CD73濃度とは無関係に1:1複合体を生じる。
【0090】
いくつかの実施態様では、例えば1、3、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100μg/mL以下の濃度(10μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、可溶性CD73活性を阻害する。特定の実施態様では(例えば、10μg/mLの濃度で)、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、前記CD73活性をオレクルマブよりも有効に阻害する。具体的な実施態様では(例えば、上記の濃度の1つの抗体又は抗原結合部分を用いる)、CD73活性が少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%阻害される。例えば、抗体又は抗原結合部分は、3μg/mLの濃度でCD73活性を100%阻害し得る。
【0091】
いくつかの実施態様では、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、又は100μg/mL以下の濃度(3μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、Calu-6、H292、Cynom-K1細胞、又はこれらの任意の組み合わせ上のCD73活性を阻害する。特定の実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、前記CD73活性をオレクルマブよりも有効に阻害する。特定の実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、3、6、又は24時間の追加のインキュベーション後に、オレクルマブよりも有効なままである。具体的な実施態様では(例えば、上記の濃度の1つの抗体又は抗原結合部分を用いる)、CD73活性が少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%阻害される。
【0092】
いくつかの実施態様(例えば、25μg/mLの濃度で)では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、表11に示される任意の細胞株又は細胞株の組み合わせ上のCD73活性を阻害する。特定の実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、Calu-6、NCI-H1775細胞、KYSE-30細胞、Capan-2細胞、又はこれらの任意の組み合わせ上のCD73活性を阻害する。特定の実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、前記CD73活性をオレクルマブよりも有効に阻害する。
【0093】
いくつかの実施態様では、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、15、20、又は25μg/mL以下の濃度(0.01μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、インビトロでMDA-MB-231細胞、MDA-MB-468細胞、又はその両方の生存及び/又は増殖を阻害する。特定の実施態様では(例えば、0.5μg/mL以上の濃度で)、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、前記生存/増殖をオレクルマブよりも有効に阻害する。具体的な実施態様では(例えば、上記の濃度の1つの抗体又は抗原結合部分を用いる)、生細胞の数が少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%減少する。
【0094】
いくつかの実施態様では、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、15、20、又は25μg/mL以下の濃度(0.1μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、初代CD4+細胞、CD8+T細胞、CD19+B細胞、又はこれらの任意の組み合わせ上のCD73活性を阻害する。具体的な実施態様では(例えば、上記の濃度の1つの抗体又は抗原結合部分を用いる)、CD73活性が例えば少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%阻害される。
【0095】
いくつかの実施態様では、例えば0.05、0.1、0.5、又は1μg/mL以下の濃度(0.01μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、CD4+T細胞の増殖を回復させる。いくつかの実施態様では、例えば0.1、0.5、1、10、15、20、25、30、40、50、又は100μg/mL以下の濃度(25μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、CD4+T細胞の増殖を100%に回復させる。いくつかの実施態様では(例えば、0.1μg/mL以上の濃度で)、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、CD4+T細胞の増殖をオレクルマブよりも有効に回復させる。特定の実施態様では(例えば、上記の濃度の1つの抗体又は抗原結合部分を用いる)、T細胞の増殖が少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%に回復される。
【0096】
いくつかの実施態様では、例えば0.001、0.005、0.01、0.05、1、5、10、15、又は25μg/mL以下の濃度(1μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、CD4+及びCD8+T細胞を活性化する。いくつかの実施態様では(例えば、0.1μg/mL以上の濃度で)、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、CD4+及びCD8+T細胞をオレクルマブよりも有効に活性化する。
【0097】
いくつかの実施態様では、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、又は10μg/mL以下の濃度(0.01μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、抗PD-1抗体と組み合わせて、一方向混合リンパ球反応(MLR)において、AMPの存在下でT細胞増殖を回復させる。特定の実施態様では(例えば、1μg/mL以下の濃度で)、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、抗PD-1抗体と組み合わせて、T細胞増殖を完全に回復させる。特定の実施態様では(例えば、0.1μg/mL以上の濃度で)、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、抗PD-1抗体と組み合わせて、T細胞増殖をオレクルマブよりも有効に回復させる。具体的な実施態様では(例えば、抗PD-1抗体と組み合わせて、上記の濃度の1つの抗体又は抗原結合部分を用いる)、T細胞増殖が少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%に回復される。
【0098】
いくつかの実施態様では、例えば0.5、1、5、10、15、又は25μg/mL以下の濃度(1μg/mL以下の濃度など)で、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、一方向MLRにおいて、AMPの存在下でT細胞活性化を増強する。いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、抗PD-1抗体(12819など)と組み合わせて、一方向MLRにおいて、AMPの存在下でT細胞活性化を増強する。
【0099】
いくつかの実施態様では(例えば、10μg/mLの濃度で)、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、インビトロでB細胞活性化を刺激しない。いくつかの実施態様では(例えば、10μg/mLの濃度で)、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、インビトロでB細胞活性化を刺激する。B細胞活性化は、例えば、CD25、CD69、及び/又はCD83などのマーカーを見ることによって決定され得る。
【0100】
いくつかの実施態様では(例えば、25μg/mLの濃度で)、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、インビトロでH292細胞中のCD73のレベルを低下させない。いくつかの実施態様では(例えば、25μg/mLの濃度で)、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、インビトロでH292細胞中のCD73のレベルを、例えば、未処理対照と比較して40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以下に低下させる。いくつかの実施態様では(例えば、25μg/mLの濃度で)、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、インビトロでH292細胞中のCD73のレベルをわずかに低下させるだけである。例えば、特定の実施態様では、CD73のレベルが、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、又は35%(例えば、25%)以下低下する。
【0101】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、A375細胞を移植したPBMCヒト化マウスから収穫した腫瘍におけるCD73活性を阻害する(例えば、マウスに5mg/kg、20mg/kg、又は50mg/kgの抗体又は抗原結合部分を1週間又は2週間にわたって1週間に3回投与する場合)。特定の実施態様では、CD73活性の阻害が、処置が終了した後少なくとも20、24、28、32、36、40、44、50、75、100、125、150、175、又は200日間(例えば、少なくとも28日間)にわたって維持される。
【0102】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、MDA-MB-231細胞を移植したNOD-scidマウスにおける腫瘍成長を阻害する(例えば、マウスに10mg/kgの抗体又は抗原結合部分を合計16回の処置にわたって1週間に2回投与する場合)。特定の実施態様では、腫瘍成長阻害が、処置が終了した後少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、又は200日間(例えば、少なくとも60日間)にわたって、腫瘍体積の増加が制限された状態で維持される(例えば、10、20、30、40、又は50mm3未満)。
【0103】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、Calu-6又はA375細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおける腫瘍成長を阻害する(例えば、マウスに10mg/kgの抗体又は抗原結合部分を合計6回の処置にわたって1週間に3回投与する場合)。
【0104】
本開示はまた、上記の特性の任意の組み合わせを有する抗CD73抗体又は抗原結合部分を企図する。
【0105】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、以下の特性:
a)インビトロで可溶性CD73の活性を阻害する;
b)インビトロでCalu-6細胞上のCD73の活性を阻害する;
c)インビトロでH292細胞上のCD73の活性を阻害する;
d)CHO-S細胞上で発現されたヒト及びカニクイザルCD73に特異的に結合する;
e)SPRによって測定される1nM以下のKDでヒトCD73のECDに結合する;
f)SPRによって測定される0.7nM以下のKDでカニクイザルCD73のECDに結合する;
g)オレクルマブ、CPX006、及び/又は11E1と同じCD73のエピトープに結合しない;
h)1:1複合体を生じる方法でCD73ホモ二量体上のエピトープに結合する;
i)インビトロでオレクルマブよりも有効に可溶性CD73活性を阻害する;
j)インビトロでCalu-6、H292、及びCynom-K1細胞上のCD73活性を阻害する;
k)インビトロでCalu-6、NCI-H1775、KYSE-30、及びCapan-2細胞上のCD73活性を阻害する;
l)インビトロでMDA-MB-231及びMDA-MB-468細胞の増殖を阻害する;
m)インビトロで初代CD4+及びCD8+T細胞並びにCD19+B細胞上のCD73活性を阻害する;
n)インビトロでCD4+T細胞の増殖を回復させる;
o)インビトロでCD4+及びCD8+T細胞を活性化する;
p)抗PD-1抗体と組み合わせて、AMPの存在下で一方向混合リンパ球反応(MLR)においてT細胞増殖を回復させる;
q)一方向MLRにおいて、抗PD-1抗体と組み合わせて、AMPの存在下でT細胞活性化を増強する;
r)インビトロでB細胞活性化を刺激しない;
s)インビトロでH292細胞中のCD73のレベルを25%を超えて低下させない;
t)A375細胞を移植したPBMCヒト化マウスから収穫した腫瘍におけるCD73活性を阻害する;
u)MDA-MB-231細胞を移植したNOD-scidマウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する;
v)Calu-6細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する;及び
w)A375細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおけるインビボでの腫瘍成長を阻害する
の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、又は23個全て)を有する。
いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、特性a)~w)の全てを有する。いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、少なくとも特性a)~k)、n)、及びs)を有する。いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、少なくとも特性a)~g)、i)~k)、及びn)を有する。いくつかの実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、少なくとも特性a)~d)、i)~k)、n)、及びs)を有する。
【0106】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、インビボで腫瘍成長を阻害及び/若しくは腫瘍成長退縮を誘導し得る、がん患者における転移を減速若しくは逆転させ得る、並びに/又はがん患者の生存を延長させ得る。上記の特性の任意の組み合わせも企図される。
【0107】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分が、現在臨床試験中の抗CD73抗体よりも有効にT細胞増殖を増加させる、及び/又はCD73活性を低下させる。例えば、特定の実施態様では、抗CD73抗体又は抗原結合部分が、以下の特性:
-0.1μg/mLの濃度で、
-米国特許出願公開第2016/0129108号のそれぞれ配列番号17及び19;
-米国特許出願公開第2018/0009899号のそれぞれ配列番号14及び13;若しくは
-米国特許出願公開第2018/0030144号のそれぞれ配列番号3及び4
を含むHC及びLCアミノ酸配列を含む抗体よりも100μMのAMPと培養した活性化CD4+T細胞の増殖を増加させる;
及び/又は
-10μg/mL以上の濃度で、
-米国特許出願公開第2016/0129108号のそれぞれ配列番号17及び19;
-米国特許出願公開第2018/0009899号のそれぞれ配列番号14及び13;若しくは
-米国特許出願公開第2018/0030144号のそれぞれ配列番号3及び4
を含むHC及びLCアミノ酸配列を含む抗体よりも24時間のインキュベーション後にH292細胞中のCD73活性を低下させる
の少なくとも1つを有する。
【0108】
特定の実施態様では、本開示の抗体又はその抗原結合部分が、抗体又は抗体部分と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドの共有結合的又は非共有結合的会合によって形成されるより大きなイムノアドヘシン分子の一部であり得る。このようなイムノアドヘシン分子の例としては、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al.,Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101(1995))、並びに二価及びビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al.,Mol.Immunol.31:1047-1058(1994))が挙げられる。他の例としては、抗体由来の1つ以上のCDRを共有結合的又は非共有結合的に分子に組み込んで、分子を対象となる抗原に特異的に結合するイムノアドヘシンにする場合が挙げられる。このような実施態様では、CDRが、より大きなポリペプチド鎖の一部として組み込まれてもよく、別のポリペプチド鎖に共有結合的に連結されてもよく、又は非共有結合的に組み込まれてもよい。
【0109】
いくつかの実施態様では、別のポリペプチドに連結された本開示の抗CD73抗体の全部又は一部を含む融合抗体又はイムノアドヘシンが作製され得る。特定の実施態様では、抗CD73抗体の可変ドメインのみがポリペプチドに連結される。特定の実施態様では、抗CD73抗体のVHドメインが第1のポリペプチドに連結され、抗CD73抗体のVLドメインが、VHドメイン及びVLドメインが互いに相互作用して抗原結合部位を形成することができるように第1のポリペプチドと会合する第2のポリペプチドに連結される。いくつかの実施態様では、VHドメインが、VHドメイン及びVLドメインが互いに相互作用することができるように、リンカーによってVLドメインから分離される(例えば、一本鎖抗体)。次いで、VH-リンカー-VL抗体が対象となるポリペプチドに連結される。更に、2つ(以上)の一本鎖抗体が互いに連結されている融合抗体を作製することができる。これは、単一ポリペプチド鎖上に二価若しくは多価抗体を作製したい場合、又は二重特異性抗体を作製したい場合に有用である。
【0110】
一本鎖抗体(scFv)を作製するために、VH及びVLをコードするDNA断片は、VH及びVL配列が連続した一本鎖タンパク質として発現され得、VL及びVHドメインが可動性リンカーによって連結されているように、可動性リンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3(配列番号44)をコードする別の断片に作動可能に連結される。例えば、Bird et al.,Science 242:423-426(1988);Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883(1988);及びMcCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990)を参照されたい。一本鎖抗体は、単一のVH及びVLのみが使用される場合、一価;2つのVH及びVLが使用される場合、二価;又は3つ以上のVH及びVLが使用される場合、多価であり得る。例えば、ヒトCD73及び別の分子に特異的に結合する二重特異性又は多価抗体が作製され得る。
【0111】
他の実施態様では、抗CD73抗体をコードする核酸分子を使用して他の修飾抗体が調製され得る。例えば、「カッパボディ(kappa body)」(Ill et al.,Protein Eng.10:949-57(1997))、「ミニボディ(minibody)」(Martin et al.,EMBO J.13:5303-9(1994))、「ダイアボディ」(Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993))、又は「ジャヌシン(Janusin)」(Traunecker et al.,EMBO J.10:3655-3659(1991)and Traunecker et al.,Int.J.Cancer(Suppl.)7:51-52(1992))が、本明細書の教示に従って、標準的な分子生物学的技術を使用して調製され得る。
【0112】
本開示の抗CD73抗体又は抗原結合部分は、別の分子(例えば、別のペプチド又はタンパク質)に誘導体化又は連結され得る。一般的に、抗体又はその部分は、CD73結合が誘導体化又は標識によって悪影響を受けないように誘導体化される。したがって、本開示の抗体及び抗体部分は、本明細書に記載されるヒト抗CD73抗体のインタクト形態と修飾形態の両方を含むことが意図される。例えば、本開示の抗体又は抗体部分は、別の抗体(例えば、二重特異性抗体若しくはダイアボディ)、検出剤、医薬品、及び/又は抗体若しくは抗体部分と別の分子(ストレプトアビジンコア領域若しくはポリヒスチジンタグなど)の会合を媒介することができるタンパク質若しくはペプチドなどの1つ以上の他の分子実体に(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合又はその他によって)機能的に連結され得る。
【0113】
誘導体化抗体の1つのタイプは、(例えば、二重特異性抗体を作製するために、同じタイプ又は異なるタイプの)2つ以上の抗体を架橋することによって作製される。適切な架橋剤には、適切なスペーサーによって分離された2つの別個の反応性基を有するヘテロ二官能性(例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ二官能性(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)であるものが含まれる。このようなリンカーは、例えば、Pierce Chemical Company、イリノイ州ロックフォードから入手可能である。
【0114】
抗CD73抗体又は抗原結合部分を、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル若しくはエチル基、又は炭水化物基などの化学基で誘導体化することもできる。これらの基は、抗体の生物学的特徴を改善するために、例えば血清半減期を増加させるために有用であり得る。
【0115】
本開示による抗体又は抗原結合部分は、標識されていてもよい。本明細書で使用される場合、「標識」又は「標識された」という用語は、抗体への別の分子の組み込みを指す。いくつかの実施態様では、標識が、検出可能なマーカー、例えば、放射標識アミノ酸の組み込み、又はマーキングされたアビジン(例えば、光学的方法若しくは比色法によって検出することができる蛍光マーカー若しくは酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの結合である。いくつかの実施態様では、標識又はマーカーが、治療薬、例えば薬物コンジュゲート又は毒素であり得る。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野において公知であり、使用され得る。ポリペプチドに対する標識の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されるわけではない:放射性同位体若しくは放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、磁性剤、例えばガドリニウムキレート、毒素、例えば百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにこれらの類似体又はホモログ。いくつかの実施態様では、標識が、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームによって取り付けられる。
【0116】
いくつかの実施態様では、本開示による抗体又は抗原結合部分を細胞傷害剤にコンジュゲートさせて免疫複合体を形成することができる。いくつかの実施態様では、本開示による抗体又は抗原結合部分を放射性同位体にコンジュゲートさせることができる。
【0117】
特定の実施態様では、本開示の抗体が、中性形態(双性イオン形態を含む)で、又は正若しくは負に帯電した種として存在し得る。いくつかの実施態様では、抗体を対イオンと複合体化して、薬学的に許容し得る塩を形成することができる。
【0118】
「薬学的に許容し得る塩」という用語は、1つ以上の抗体と1つ以上の対イオンを含む複合体を指し、対イオンは薬学的に許容し得る無機及び有機の酸及び塩基に由来する。
【0119】
抗CD73抗体組成物
本開示はまた、1、2、3、4、又はそれを超える数の本明細書に記載される抗CD73抗体又はその抗原結合部分を含む併用療法(例えば、組成物)を提供する。特定の実施態様では、併用療法(例えば、組成物)が、2つの抗CD73抗体又は抗原結合部分を含む。併用療法は、例えば、前記抗体若しくは抗原結合部分又は前記抗体若しくは抗原結合部分を含む医薬組成物を使用する処置方法の形態をとり得る。
【0120】
いくつかの実施態様では、本開示は、第1及び第2の抗体が、
-それぞれ抗体21028及び21046;
-それぞれ抗体21028及び21127;
-それぞれ抗体21028及び21163;
-それぞれ抗体21046及び21127;
-それぞれ抗体21046及び21163;又は
-それぞれ抗体21127及び21163
である、第1の抗CD73抗体又はその抗原結合部分と第2の抗CD73抗体又はその抗原結合部分とを含む組成物を提供する。
【0121】
いくつかの実施態様では、組成物が、前記第1及び第2の抗体と同じエピトープに結合する、又はこれらと結合について競合する抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0122】
いくつかの実施態様では、組成物が、前記第1の抗体のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分と、前記第2の抗体のH-CDR1~3及びL-CDR1~3アミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分とを含む。
【0123】
いくつかの実施態様では、組成物が、前記第1の抗体のVH及びVLアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む抗体又はその抗原結合部分と、前記第2の抗体のVH及びVLアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む抗体又はその抗原結合部分とを含む。
【0124】
いくつかの実施態様では、組成物が、前記第1の抗体のVH及びVLアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分と、前記第2の抗体のVH及びVLアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分とを含む。
【0125】
いくつかの実施態様では、組成物が、前記第1の抗体のHC及びLCアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分と、前記第2の抗体のHC及びLCアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合部分とを含む。
【0126】
特定の実施態様では、前記組成物が、
a)それぞれ配列番号17~19、23~25、29~31、又は35~57のアミノ酸配列を含むH-CDR1~3を含む抗体;
b)そのVHが配列番号9、10、11、又は12のアミノ酸配列と配列が少なくとも90%同一の抗体;
c)そのVHが配列番号9、10、11、又は12のアミノ酸配列を含む抗体;
d)そのHCが配列番号9及び41、10及び41、11及び41、又は12及び41のアミノ酸配列を含む抗体;
e)それぞれ配列番号20~22、26~28、32~34、又は38~40のアミノ酸配列を含むL-CDR1~3を含む抗体;
f)そのVLが配列番号13、14、15、又は16のアミノ酸配列と配列が少なくとも90%同一の抗体;
g)そのVLが配列番号13、14、15、又は16のアミノ酸配列を含む抗体;
h)そのLCが配列番号13及び42、14及び42、15及び42、又は16及び42のアミノ酸配列を含む抗体;
i)そのH-CDR1~3及びL-CDR1~3がそれぞれ配列番号17~22、23~28、29~34、又は35~40のアミノ酸配列を含む抗体;
j)それぞれ配列番号9及び13、10及び14、11及び15、又は12及び16のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む抗体;
k)それぞれ配列番号9及び13、10及び14、11及び15、又は12及び16のアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む抗体;及び
l)それぞれ配列番号9及び41、並びに13及び42;10及び41、並びに14及び42;11及び41、並びに15及び42;又は12及び41、並びに16及び42のアミノ酸配列を含むHC及びLCを含む抗体
からなる群から選択される1つ、2つ、又はこれを超える数の抗体又はその抗原結合部分を含み得る。
【0127】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体組成物が、インビボで腫瘍成長を阻害及び/若しくは腫瘍成長退縮を誘導し得る、がん患者における転移を減速若しくは逆転させ得る、並びに/又はがん患者の生存を延長させ得る。上記の特性の任意の組み合わせも企図される。
【0128】
本開示はまた、本明細書に記載される抗CD73抗体組成物を作製する方法であって、第1の抗CD73抗体又は抗原結合部分及び第2の抗CD73抗体又は抗原結合部分を用意するステップと、2つの抗体又は部分を混和するステップとを含む方法を提供する。
【0129】
二重特異性結合分子
本開示はまた、本明細書に記載される抗CD73抗体の結合特異性を有する二重特異性結合分子(例えば、6つのCDR又はVH及びVLなどの抗原結合部分を含む)を提供する。いくつかの実施態様では、二重特異性結合分子が、別の異なる抗CD73抗体(例えば、本明細書中に記載される別の抗CD73抗体)、又はその活性が、がんなどの疾患状態を媒介するがん抗原若しくは別の細胞表面分子などの異なるタンパク質を標的化する抗体の結合特異性を更に有する。このような二重特異性結合分子は当技術分野において公知であり、異なる種類の二重特異性結合分子の例は本明細書の他の箇所に与えられる。特定の実施態様では、二重特異性結合分子が、CD73及びPD-1、CD73及びPD-L1、又はCD73及びCTLA-4に結合し得る。
【0130】
核酸分子及びベクター
本開示はまた、本明細書に記載される抗CD73抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子及び配列を提供する。いくつかの実施態様では、異なる核酸分子が、抗CD73抗体又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードする。他の実施態様では、同じ核酸分子が、抗CD73抗体又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列をコードする。
【0131】
ヌクレオチド配列への言及は、特に明記しない限り、その相補物を包含する。したがって、具体的な配列を有する核酸への言及は、その相補配列を含むその相補鎖を包含すると理解されるべきである。本明細書で言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも10塩基長の、リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチド、又はいずれかの種類のヌクレオチドの修飾形態のヌクレオチドのポリマー形態を意味する。この用語は、一本鎖及び二本鎖形態を含む。
【0132】
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載される抗CD73抗体又はその抗原結合部分の、重鎖若しくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、又は軽鎖若しくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、又はその両方を含む核酸分子を提供する。
【0133】
本開示はまた、本明細書に列挙される1つ以上のヌクレオチド配列、例えば、配列番号1~8からなる群より選択されるヌクレオチド配列、又は配列番号9~16からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一のヌクレオチド配列を提供する。核酸配列の文脈における「パーセント配列同一性」という用語は、最大の対応のために整列された場合に同じである2つの配列中の残基を指す。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約18ヌクレオチド、より通常には少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36、48又はこれを超える数のヌクレオチドの伸長にわたり得る。ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができる当技術分野において公知のいくつかの異なるアルゴリズムがある。例えば、Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)、ウィスコンシン州マディソンのプログラムであるFASTA、Gap又はBestfitを使用してポリヌクレオチド配列を比較することができる。例えばプログラムFASTA2及びFASTA3を含むFASTAは、クエリー配列と検索配列との間の最良の重複の領域のアラインメント及びパーセント配列同一性を提供する(例えば、参照により本明細書に援用される、Pearson,Methods Enzymol.183:63-98(1990);Pearson,Methods Mol.Biol.132:185-219(2000);Pearson,Methods Enzymol.266:227-258(1996);及びPearson,J.Mol.Biol.276:71-84(1998)を参照されたい)。特に明記しない限り、具体的なプログラム又はアルゴリズムのデフォルトパラメータが使用される。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、参照により本明細書に援用される、そのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6及びスコアリング行列のNOPAMファクター)を用いたFASTAを使用して、又はGCGバージョン6.1で提供されるそのデフォルトパラメータを用いたGapを使用して決定することができる。
【0134】
いくつかの実施態様では、本開示は、配列番号1~8からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。特定の実施態様では、核酸分子が、配列番号1及び5、配列番号2及び6、配列番号3及び7、又は配列番号4及び8のヌクレオチド配列を含む。
【0135】
上記の実施態様のいずれにおいても、核酸分子が単離され得る。本明細書で「単離」又は「精製」と呼ばれる核酸分子は、(1)それらの起源のゲノムDNA若しくは細胞RNAの核酸から分離されている;及び/又は(2)天然に存在しない、核酸である。
【0136】
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合部分の鎖の一方又は両方を発現するのに適したベクターを提供する。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、これが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。いくつかの実施態様では、ベクターが、プラスミド、すなわち追加のDNAセグメントがライゲーションされ得るDNAの環状二本鎖片である。いくつかの実施態様では、ベクターが、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得るウイルスベクターである。いくつかの実施態様では、ベクターが、これらが導入される宿主細胞(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)において自律複製することができる。他の実施態様では、ベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)が、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それによって宿主ゲノムと共に複製される。更に、特定のベクターは、これらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。
【0137】
本開示は、本明細書に記載される抗CD73抗体又はその抗原結合部分の重鎖、軽鎖、又は重鎖と軽鎖の両方をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。特定の実施態様では、本開示のベクターが、本明細書に記載される核酸分子を含む。本開示は更に、融合タンパク質、修飾抗体、抗体断片、及びこれらのプローブをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。ベクターは、発現制御配列を更に含み得る。
【0138】
本明細書で使用される「発現制御配列」という用語は、これらがライゲーションされているコード配列の発現及びプロセシングを行うのに必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;並びに所望であれば、タンパク質分泌を増強する配列を含む。このような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なる;原核生物では、このような制御配列は、一般的に、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含む;真核生物では、一般的に、このような制御配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、少なくとも、その存在が発現及びプロセシングに必須である全ての成分を含むことを意図しており、その存在が有利である追加の成分、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列も含むことができる。
【0139】
本明細書に記載される抗CD73抗体又はその抗原結合部分の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子は、このような抗体又は部分を産生する任意の供給源から単離され得る。いくつかの実施態様では、核酸分子が、ヒトCD73抗原で免疫された動物から、又はこのようなB細胞から作製された不死化細胞から単離された抗CD73抗体を発現するB細胞から単離される。抗体をコードする核酸を単離する方法は当技術分野において周知である。mRNAを単離し、抗体遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はcDNAクローニングに使用するためのcDNAを作製するために使用することができる。特定の実施態様では、本明細書中に記載される核酸分子を、単離するのではなく、合成することができる。
【0140】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される核酸分子が、任意の供給源由来の重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列にインフレームで連結された本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分由来のVHドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。同様に、本明細書に記載される核酸分子は、任意の供給源由来の軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列にインフレームで連結された本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分由来のVLドメインをコードするヌクレオチド配列を含むことができる。
【0141】
本開示のいくつかの実施態様では、VH及び/又はVLをコードする核酸分子が、完全長抗体遺伝子に「変換」され得る。特定の実施態様では、VH又はVLドメインをコードする核酸分子が、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに作動可能に連結される、及び/又はVLセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、それぞれ重鎖定常(CH)又は軽鎖定常(CL)領域を既にコードする発現ベクターに挿入することによって完全長抗体遺伝子に変換される。いくつかの実施態様では、VH及び/又はVLドメインをコードする核酸分子が、標準的な分子生物学的技術を使用して、VH及び/又はVLドメインをコードする核酸分子をCH及び/又はCL領域をコードする核酸分子に連結、例えばライゲーションすることによって、完全長抗体遺伝子に変換される。次いで、完全長重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子が、これらが導入された細胞から発現され、抗CD73抗体が単離され得る。
【0142】
核酸分子は、大量の抗CD73抗体を組換え発現するために使用され得る。核酸分子はまた、本明細書に記載されるキメラ抗体、二重特異性抗体、一本鎖抗体、イムノアドヘシン、ダイアボディ、変異抗体及び抗体誘導体を作製するために使用され得る。
【0143】
いくつかの実施態様では、本開示の核酸分子が、特定の抗体配列に対するプローブ又はPCRプライマーとして使用される。例えば、核酸は、診断方法におけるプローブとして、又はとりわけ抗CD73抗体の可変ドメインをコードする追加の核酸分子を単離するために使用することができるDNAの領域を増幅するためのPCRプライマーとして使用され得る。いくつかの実施態様では、核酸分子がオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、オリゴヌクレオチドが、対象となる抗体の重鎖及び軽鎖の高度可変ドメインに由来する。いくつかの実施態様では、オリゴヌクレオチドが、本明細書に記載される本開示の抗CD73抗体又はその抗原結合部分のCDRの1つ以上の全部又は一部を包含する。
【0144】
いくつかの実施態様では、核酸分子及びベクターを使用して、変異抗CD73抗体を作製することができる。抗体は、例えば抗体の結合特性を変化させるために、重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインで変異され得る。例えば、抗CD73抗体のKDを増加若しくは減少させるため、koffを増加若しくは減少させるため、又は抗体の結合特異性を変化させるために、CDRの1つ以上で突然変異が行われ得る。いくつかの実施態様では、本開示のモノクローナル抗体において生殖細胞系列と比較して変化することが知られているアミノ酸残基で1つ以上の変異が行われる。可変ドメインのCDR若しくはフレームワーク領域、又は定常領域で変異が行われ得る。特定の実施態様では、可変ドメインで変異が行われる。具体的な実施態様では、本開示の抗体又はその抗原結合部分の可変ドメインのCDR又はフレームワーク領域において生殖系列と比較して変化することが知られているアミノ酸残基で1つ以上の変異が行われる。
【0145】
いくつかの実施態様では、得られたフレームワーク領域が対応する生殖系列遺伝子のアミノ酸配列を有するように、フレームワーク領域が変異される。例えば、抗CD73抗体の半減期を増加させるために、フレームワーク領域又は定常領域で変異が行われ得る。例えば、国際公開第00/09560号を参照されたい。フレームワーク領域又は定常領域における変異はまた、抗体の免疫原性を変化させるため、及び/又は別の分子への共有結合的若しくは非共有結合的結合のための部位を提供するために行われ得る。本開示によると、抗体は、可変ドメインのCDR若しくはフレームワーク領域のいずれか1つ以上又は定常領域に変異を有し得る。
【0146】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体又はその抗原結合部分が、遺伝子が転写及び翻訳制御配列などの必要な発現制御配列に作動可能に連結されるように、上記のように得られた部分的又は完全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入することによって発現される。発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、植物ウイルス、例えばカリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが含まれる。抗体コード配列は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体コード配列の転写及び翻訳を調節する意図した機能を果たすように、ベクターにライゲーションされ得る。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択され得る。抗体軽鎖コード配列及び抗体重鎖コード配列は、同じ又は別個のベクターに挿入され得、同じ又は異なる発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結され得る。いくつかの実施態様では、両コード配列が同じ発現ベクターに挿入され、同じ発現制御配列(例えば、共通のプロモーター)、別個の同一の発現制御配列(例えば、プロモーター)、又は異なる発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結され得る。抗体コード配列は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクター上の相補的制限部位のライゲーション、又は制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入され得る。
【0147】
簡便なベクターは、任意のVH又はVL配列が上記のように容易に挿入及び発現され得るように操作された適切な制限部位を有する、機能的に完全なヒトCH又はCL免疫グロブリン配列をコードするものである。このようなベクター中のHC及びLCコード遺伝子は、関連するmRNAを安定化することによって全体的な抗体タンパク質収率増強をもたらすイントロン配列を含有し得る。イントロン配列は、RNAスプライシングがどこで起こるかを決定するスプライスドナー及びスプライスアクセプター部位に隣接している。イントロン配列の位置は、抗体鎖の可変領域若しくは定常領域のいずれか、又は複数のイントロンが使用される場合は可変領域と定常領域の両方にあり得る。ポリアデニル化及び転写終結は、コード領域の下流の天然の染色体部位に存在し得る。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが免疫グロブリン鎖のアミノ末端にインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0148】
抗体鎖遺伝子に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有し得る。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等のような因子に依存し得ることが当業者には理解されよう。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、レトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ並びに天然免疫グロブリン及びアクチンプロモーターなどの強力な哺乳動物プロモーターに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーなどの、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントが含まれる。ウイルス調節エレメント及びその配列のさらなる説明については、例えば、米国特許第5168062号、同第4510245号及び同第4968615号を参照されたい。プロモーター及びベクター、並びに植物の形質転換の説明を含む、植物において抗体を発現させる方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第6517529号を参照されたい。細菌細胞又は真菌細胞、例えば酵母細胞においてポリペプチドを発現させる方法も、当技術分野において周知である。
【0149】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択マーカー遺伝子などの追加の配列を有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4399216号、同第4634665号及び同第5179017号参照)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。例えば、選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を用いたdhfr宿主細胞での使用のため)、neo遺伝子(G418選択のため)、及びグルタミン酸合成酵素遺伝子が含まれる。
【0150】
宿主細胞並びに抗体及び抗体組成物の作製方法
本開示はまた、本明細書に記載される抗体組成物並びに抗体及びその抗原結合部分を作製する方法を提供する。いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分を作製する方法であって、本明細書に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分の、重鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、及び軽鎖又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含む組換え宿主細胞を用意するステップと;抗体又は抗原結合部分の発現に適した条件下で前記宿主細胞を培養するステップと;得られた抗体又は抗原結合部分を単離するステップとを含む方法に関する。このような組換え宿主細胞におけるこのような発現によって産生される抗体又は抗原結合部分は、本明細書では「組換え」抗体又は抗原結合部分と呼ばれる。本開示はまた、このような宿主細胞の子孫細胞、及び同細胞よって産生される抗体又は抗原結合部分を提供する。
【0151】
本明細書で使用される「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターが導入された細胞を意味する。定義により、組換え宿主細胞は天然に存在しない。本開示は、例えば、本明細書に記載されるベクターを含み得る宿主細胞を提供する。本開示はまた、例えば、本明細書に記載される抗CD73抗体又はその抗原結合部分の、重鎖若しくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、軽鎖若しくはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列、又はその両方を含む宿主細胞を提供する。「組換え宿主細胞」及び「宿主細胞」は、具体的な対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫も意味することを理解すべきである。変異又は環境の影響のいずれかにより後続の世代で特定の改変が起こり得るので、このような子孫は、実際には、親細胞と同一ではないかもしれないが、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に依然として含まれる。
【0152】
抗CD73抗体及びその抗原結合部分をコードする核酸分子並びにこれらの核酸分子を含むベクターは、適切な哺乳動物、植物、細菌又は酵母宿主細胞のトランスフェクションに使用され得る。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の公知の方法によるものであり得る。哺乳動物細胞に異種ポリヌクレオチドを導入する方法は当技術分野において周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、及び核へのDNAの直接マイクロインジェクションが含まれる。更に、核酸分子は、ウイルスベクターによって哺乳動物細胞に導入され得る。細胞を形質転換する方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第4399216号、同第4912040号、同第4740461号、及び同第4959455号を参照されたい。例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換、バイオリステック形質転換、直接注入、電気穿孔法及びウイルス形質転換を含む、植物細胞を形質転換する方法は、当技術分野において周知である。細菌及び酵母細胞を形質転換する方法も当技術分野において周知である。
【0153】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野において周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含む。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、293 Freestyle細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、及びいくつかの他の細胞株が含まれる。どの細胞株が高い発現レベルを有するかを決定することによって、特に好ましい細胞株が選択される。使用され得る他の細胞株は、Sf9又はSf21細胞などの昆虫細胞株である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞における抗体の発現、又はより好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収することができる。植物宿主細胞には、例えば、タバコ属(Nicotiana)、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)、アオウキクサ、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ等が含まれる。細菌宿主細胞には、大腸菌(E.coli)及びストレプトマイセス属(Streptomyces)種が含まれる。酵母宿主細胞には、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、及びピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。
【0154】
更に、産生細胞株からの本開示の抗体又はその抗原結合部分の発現を、いくつかの公知の技術を使用して増強することができる。例えば、グルタミン合成酵素遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。GS系は、欧州特許第0216846号、同第0256055号、同第0323997号及び同第0338841号に関連して全体的又は部分的に論じられている。
【0155】
異なる細胞株又はトランスジェニック動物によって発現される抗体は、互いに異なるグリコシル化パターンを有する可能性がある。しかしながら、本明細書で提供される核酸分子によってコードされる、又は本明細書で提供されるアミノ酸配列を含む全ての抗体は、抗体のグリコシル化状態にかかわらず、より一般的には翻訳後修飾の有無にかかわらず、本開示の一部である。
【0156】
医薬組成物
本開示の別の態様は、本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、二重特異性結合分子、又は抗体組成物を有効成分として(又は唯一の有効成分として)含む医薬組成物である。医薬組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤を更に含み得る。いくつかの実施態様では、医薬組成物が、がん、例えば本明細書に記載されるがんの改善、予防、及び/又は処置を意図している。特定の実施態様では、がんが、皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟部組織、造血系、頭頸部、肝臓、骨、膀胱、乳房、胃、子宮、子宮頸部、及び膵臓などの組織中にある。特定の実施態様では、がんが、黒色腫、頭頸部がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、膀胱がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、膵臓がん(例えば、膵管腺癌)、卵巣がん、腎細胞癌腫、前立腺がん、結腸直腸がん、胆管癌腫、甲状腺がん、又は精巣がんである。
【0157】
本開示の医薬組成物は、1つ以上の本開示の抗CD73抗体、抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子、例えば、1つ又は2つの抗CD73抗体、抗原結合部分、又は二重特異性結合分子を含む。いくつかの実施態様では、組成物が、単一の本開示の抗CD73抗体又はその抗原結合部分を含む。いくつかの実施態様では、組成物が、2つの別個の本開示の抗CD73抗体又はその抗原結合部分を含む。
【0158】
いくつかの実施態様では、医薬組成物が、少なくとも1つの本開示の抗CD73抗体又はその抗原結合部分、例えば1つの抗CD73抗体又は部分と、1つ以上の関連細胞表面受容体、例えば1つ以上のがん関連受容体を標的化する1つ以上の追加の抗体とを含み得る。
【0159】
一般的に、本開示の抗体、抗原結合部分及び二重特異性結合分子は、例えば以下に記載される、1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤と合わせて製剤として投与するのに適している。
【0160】
「賦形剤」という用語は、本明細書では、本開示の化合物以外の任意の成分を説明するために使用される。賦形剤の選択は、具体的な投与様式、溶解性及び安定性に対する賦形剤の効果、並びに剤形の性質などの因子に大きく依存する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容し得る賦形剤」が、生理学的に適合性のあるありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容し得る賦形剤のいくつかの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、並びにこれらの組み合わせである。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。薬学的に許容し得る物質の追加の例は、抗体の貯蔵寿命又は有効性を増強する、湿潤剤又は少量の補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、保存剤又は緩衝剤である。
【0161】
本開示の医薬組成物及びこれらの調製方法は、当業者には容易に明らかであろう。このような組成物及びその調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Edition(Mack Publishing Company,1995)に見出され得る。医薬組成物は、好ましくはGMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)条件下で製造される。
【0162】
本開示の医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、又は複数の単一単位用量として調製、包装、又は販売され得る。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の有効成分を含む医薬組成物の離散量である。有効成分の量は、一般的に、対象に投与されるであろう有効成分の投与量、又はこのような投与量の好都合な割合、例えばこのような投与量の2分の1若しくは3分の1に等しい。
【0163】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、典型的には、滅菌水又は滅菌等張生理食塩水などの薬学的に許容し得る担体と組み合わせた有効成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、包装又は販売され得る。注射用製剤は、保存剤を含有するアンプル又は複数回投与用容器などの単位剤形で調製、包装又は販売され得る。非経口投与のための製剤には、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルジョン、ペーストなどが含まれるがこれらに限定されない。このような製剤は、懸濁化剤、安定剤、又は分散剤を含むがこれらに限定されない1つ以上の追加の成分を更に含み得る。非経口投与用の製剤のいくつかの実施態様では、有効成分が、再構成された組成物の非経口投与の前に適切なビヒクル(例えば、無菌パイロジェンフリー水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は粒状)形態で提供される。非経口製剤はまた、塩、炭水化物及び緩衝剤(好ましくは、pH3~9まで)などの賦形剤を含有し得る水溶液を含むが、いくつかの用途では、これらは滅菌非水溶液として、又は滅菌パイロジェンフリー水などの適切なビヒクルと合わせて使用される乾燥形態としてより適切に製剤化され得る。例示的な非経口投与形態には、滅菌水溶液、例えばプロピレングリコール水溶液又はデキストロース水溶液中の溶液又は懸濁液が含まれる。このような剤形は、所望であれば適切に緩衝化され得る。有用な他の非経口投与可能な製剤には、微結晶形態又はリポソーム調製物中に有効成分を含むものが含まれる。非経口投与用の製剤は、即時放出及び/又は修飾放出されるように製剤化され得る。修飾放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及びプログラム放出が含まれる。
【0164】
いくつかの実施態様では、滅菌注射液が、抗CD73抗体、その抗原結合部分、二重特異性結合分子、又は抗体組成物を、必要に応じて、上に列挙される成分の1つ又は組み合わせを含む適切な溶媒に必要な量で組み込み、引き続いて濾過滅菌することによって調製され得る。一般的に、分散液は、活性化合物を、基礎分散媒及び上に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、有効成分及び任意の追加の所望の成分の粉末をその以前に滅菌濾過した溶液から生成する真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。注射用組成物の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩若しくはゼラチンを組成物に含めることによって、及び/又は修飾放出コーティング(例えば、遅延放出コーティング)を使用することによってもたらされ得る。
【0165】
本開示の抗体はまた、鼻腔内又は吸入によって、典型的には乾燥粉末吸入器から乾燥粉末(単独で、混合物として、若しくは例えば適切な薬学的に許容し得る賦形剤と混合された混合成分粒子として)の形態で;適切な噴射剤を使用して、若しくは使用しないで、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、電気流体力学を使用して微細なミストを生成するアトマイザー)、若しくはネブライザーからエアロゾルスプレーとして;又は点鼻薬として投与され得る。
【0166】
本開示の抗体及び抗体部分はまた、経口経路投与のために製剤化され得る。経口投与は、化合物が消化管に入るように嚥下すること、及び/又は化合物が口から直接血流に入る頬側、舌若しくは舌下投与を伴い得る。経口投与に適した製剤には、錠剤;多粒子若しくはナノ粒子、液体、又は粉末を含有するソフトカプセル又はハードカプセル;ロゼンジ(液体充填を含む);咀嚼錠;ゲル;高速分散剤形;フィルム;オビュール;スプレー;及び頬側/粘膜付着性パッチなどの固体、半固体及び液体系が含まれる。液体製剤には、懸濁液、溶液、シロップ及びエリキシルが含まれる。このような製剤は、ソフトカプセル又はハードカプセル(例えば、ゼラチン若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースから作製される)中の充填剤として使用され得、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は適切な油、並びに1つ以上の乳化剤及び/又は懸濁化剤を含む。液体製剤はまた、例えばサシェからの固体の再構成によって調製され得る。
【0167】
本開示の抗体及び組成物の治療的使用
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体及びその抗原結合部分、抗CD73組成物、並びに二重特異性結合分子が、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)のCD73活性を低下させるために使用される。例えば、医師は、本開示の抗CD73抗体を単独で、又は他の治療薬と組み合わせて(順次若しくは同時に)投与することによって、患者の抗腫瘍活性を増強することができる。抗CD73抗体は、CD73の活性を低下させ、患者の抗腫瘍応答を抑制する経路を阻害する。
【0168】
特定の実施態様では、抗体若しくはその抗原結合部分、組成物、又は二重特異性結合分子が、CD73陽性がんの処置に使用するためのものである。がんは、皮膚、肺、腸、結腸、卵巣、脳、前立腺、腎臓、軟部組織、造血系、頭頸部、肝臓、骨、膀胱、乳房、胃、子宮、子宮頸部、及び膵臓などの1つ以上の組織中にあり得る。
【0169】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体、抗原結合部分、二重特異性結合分子、及び/又は抗体組成物によって処置されるがんが、例えば、黒色腫(例えば、進行性又は転移性黒色腫)、皮膚基底細胞がん、神経膠芽腫、神経膠腫、神経膠肉腫、星状細胞腫、髄膜腫、神経芽腫、副腎皮質がん、頭頸部扁平上皮がん、口腔がん、唾液腺がん、鼻咽頭がん、乳がん、甲状腺がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、及び扁平上皮肺がん)、食道がん、胃食道接合部がん、胃がん、胃腸がん、原発性腹膜がん、肝臓がん、肝細胞癌、胆道がん、胆管癌腫、結腸がん、結腸直腸癌、卵巣がん、卵管がん、膀胱がん、上部尿路がん、尿路上皮がん、腎細胞癌腫、腎臓がん、尿生殖器がん、子宮頸がん、前立腺がん、精巣がん、線維肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、組織球腫、膵臓がん、子宮内膜がん、虫垂がん、進行性メルケル細胞がん、多発性骨髄腫、肉腫、絨毛癌、赤白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性単球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、肥満細胞白血病、小リンパ球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、単球性リンパ腫、HTLV関連T細胞白血病/リンパ腫、中皮腫、及び固形腫瘍を含み得る。がんは、例えば、初期、中間、後期、局所進行、又は転移段階であり得、他の治療薬(例えば、他の抗CD73治療薬)に対して再発性若しくは難治性であり得る、又は利用可能な標準治療がない場合がある。
【0170】
いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体、抗原結合部分、組成物、及び/又は二重特異性結合分子によって処置されるがんが、例えば、黒色腫、頭頸部がん、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、膀胱がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、膵臓がん(例えば、膵管腺癌)、卵巣がん、腎細胞癌腫、前立腺がん、結腸直腸がん、胆管癌腫、甲状腺がん、及び精巣がんを含み得る。
【0171】
「処置する」、「処置すること」及び「処置」は、生物学的障害及び/又はそれに付随する症状の少なくとも1つを緩和又は抑止する方法を指す。本明細書で使用される場合、疾患、障害又は状態を「緩和する」ことは、疾患、障害、又は状態の症状の重症度及び/又は発生頻度を減少させることを意味する。更に、本明細書における「処置」への言及は、治癒的、姑息的及び予防的処置への言及を含む。
【0172】
「治療上有効量」は、処置されている障害の症状の1つ以上をある程度軽減する、投与されている治療薬の量を指す。治療上有効量の抗がん治療薬は、例えば、腫瘍成長の遅延、腫瘍縮小、生存率の増加、がん細胞の排除、疾患進行の遅延若しくは減少、転移の逆転、又は医療専門家によって望まれる他の臨床エンドポイントをもたらし得る。
【0173】
本明細書に記載される抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子は、単独で、又は1つ以上の複数の他の薬物若しくは抗体と組み合わせて(又はこれらの任意の組み合わせとして)投与され得る。したがって、本明細書に記載される医薬組成物、方法及び使用はまた、以下に詳述される、他の活性剤との組み合わせ(共投与)の実施態様を包含する。
【0174】
本明細書で使用される場合、本開示の抗CD73抗体及びその抗原結合部分、抗体組成物、並びに二重特異性結合分子と1つ以上の治療薬を指す「共投与」、「共投与される」及び「と組み合わせて」という用語は、以下を意味することを意図しており、以下を指し、以下を含む:
a)処置を必要とする患者への本開示の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子と治療薬とのこのような組み合わせの同時投与であって、このような成分が、前記成分を実質的に同時に前記患者に放出する単一剤形に一緒に製剤化される投与、
b)処置を必要とする患者への本開示の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子と治療薬とのこのような組み合わせの実質的同時投与であって、このような成分が、前記患者によって実質的に同時に服用される別個の剤形に互いに別々に製剤化され、その際、前記成分が前記患者に実質的に同時に放出される投与、
c)処置を必要とする患者への本開示の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子と治療薬とのこのような組み合わせの逐次投与であって、このような成分が、各投与間で有意な時間間隔を空けて前記患者によって連続した時間で服用される別個の剤形に互いに別々に製剤化され、その際、前記成分が前記患者に実質的に異なる時間に放出される投与;及び
d)処置を必要とする患者への本開示の抗体/抗原結合部分/抗体組成物/二重特異性結合分子と治療薬とのこのような組み合わせの逐次投与であって、このような成分が、制御された方法で前記成分を放出する単一剤形に一緒に製剤化され、その際、これらが前記患者に同じ及び/又は異なる時間に、同時に、連続的に、及び/又は重複して放出され、各部分が同じ又は異なる経路によって投与され得る投与。
【0175】
本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子は、追加の治療的処置なしで、すなわち、スタンドアローン療法(単剤療法)として投与され得る。或いは、本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子による処置は、少なくとも1つの追加の治療的処置(併用療法)、例えば、免疫刺激剤、抗がん剤(例えば、化学療法剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、若しくはチロシンキナーゼ阻害剤)、又はワクチン(例えば、腫瘍ワクチン)を含み得る。
【0176】
いくつかの実施態様では、抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子が、がんを処置するための別の医薬/薬物と共投与又は製剤化され得る。追加の治療的処置は、例えば、免疫刺激剤、ワクチン、化学療法剤、抗新生物剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、及び/又は放射線療法を含み得る。いくつかの実施態様では、追加の治療的処置が、異なる抗がん抗体を含み得る。
【0177】
本明細書に記載される抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子と、少なくとも1つの他の薬剤(例えば、化学療法剤、抗新生物剤、又は抗血管新生剤)とを含む医薬品は、がん治療における同時、別個又は連続投与のための併用処置として使用され得る。他の薬剤は、当の具体的ながんの処置に適した任意の薬剤、例えばアルキル化剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン及び/又はオキサリプラチンなどの白金誘導体;植物性アルカロイド(alkoids)、例えばパクリタキセル、ドセタキセル及び/又はイリノテカン;抗腫瘍抗生物質、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンミトキサントロン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、アクチノマイシン、ルテオマイシン、及び/又はマイトマイシン;トポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤;代謝拮抗薬、例えばフルオロウラシル及び/又は他のフルオロピリミジン;FOLFOX;オシメルチニブ;シクロホスファミド;アントラサイクリン;ダカルバジン;ゲムシタビン;或いはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される薬剤によるものであり得る。いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子が、他の薬剤に対する応答性を再確立する。
【0178】
本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子はまた、ワクチン、サイトカイン、酵素阻害剤、免疫刺激化合物、及びT細胞療法などの他の抗がん療法と組み合わせて使用され得る。ワクチンの場合、これは、例えば、処置されるがんに関連する1つ以上の抗原を含有するタンパク質、ペプチド若しくはDNAワクチン、又は抗原と共に樹状細胞を含むワクチンであり得る。適切なサイトカインには、例えば、IL-2、IFN-γ及びGM-CSFが含まれる。抗がん活性を有する種類の酵素阻害剤の一例は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、例えば1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MT)である。養子T細胞療法は、腫瘍を認識及び攻撃するように患者自身のT細胞を増殖又は操作することを伴う様々な免疫療法技術を指す。
【0179】
本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子が、チロシンキナーゼ阻害剤に関連する補助療法に使用され得ることも企図される。これらは、受容体の細胞内チロシンキナーゼドメインと相互作用し、例えば細胞内Mg-ATP結合部位について競合することによって、リガンド誘導性受容体リン酸化を阻害する、合成の、主にキナゾリン由来の低分子量分子である。
【0180】
いくつかの実施態様では、抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子が、A2AR、A1AR、A2BR、A3AR、ADA、ALP、BTLA、B7-H3、B7-H4、CTLA-4、CD27、CD28、CD39、CD40、CD47、CD55、CD122、CD137、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、CTLA-3、CEACAM(例えば、CEACAM-1及び/又はCEACAM-5)、GAL9、GITR、HVEM、LAG-3、LY108、LAIR1、ICOS、IDO、KIR、NKG2A、PAP、PD-1/PD-L1/PD-L2、OX40、TIGIT、TIM-3、TGFR-β、TNFR2、VISTA、LILRB2、CMTM6及び/又は2B4の発現又は活性を調節する薬剤を含むがこれに限定されない、免疫系活性化を媒介する医薬/薬物と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施態様では、薬剤が、CD39、NKG2A、LAG-3、TIM-3、又はTNFR2の発現を調節する。特定の実施態様では、薬剤が低分子阻害剤である。特定の実施態様では、薬剤が、上記分子の1つに結合する抗体又はその抗原結合断片である。具体的な実施態様では、薬剤が、抗PD-L1抗体(例えば、デュルバルマブ若しくはアテゾリズマブ)、抗PD-1抗体、又は抗CTLA-4抗体である。本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子が、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-12、IL-15又はIL-21)、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤等と組み合わせて使用され得ることも企図される。
【0181】
特定の実施態様では、本開示の抗体及び抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子が、例えばCD73、CD39、若しくはCD38、又はA1R、A2AR、A2BR、及び/若しくはA3Rから選択されるアデノシン受容体を標的化し得るアデノシン作動性経路の別の阻害剤と組み合わせて投与され得る。このような阻害剤には、AR1阻害剤(例えば、DPCPX、SCH58261、及びFSPTP)、A2AR阻害剤(例えば、PBF-509、CPI-444、AZD4635、ZM241385、AB928、イストラデフィリン、SYN-115、ANR94、PSB1115、PSB603、及びNIR178)、A2B阻害剤(例えば、miR-128b、ATL801、アミノフィリン、MRS1754、IPDX、及びPBF-1129)、及びA3R阻害剤(例えば、MRS1191、MRS1220、MRS1523、及びCF-102)が含まれるがこれらに限定されない。このような阻害剤の他の例としては、他の抗CD73抗体、並びに抗CD39及び抗CD38抗体が挙げられる。いくつかの実施態様では、本開示の抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、二重特異性抗体、又は抗体組成物が、A001421、APCP、オレクルマブ、CPX-006/CPI-006、CPX-016、NZV-930、BMS-986179、IPH53、PT199、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、ダラツムマブ、又はイサツキシマブと組み合わせて投与され得る。
【0182】
本開示はまた、CAR-T技術に使用するためであり得る、キメラ抗原受容体の調製における本明細書中に記載される抗CD73抗体又は抗原結合部分の配列(例えば、6つのCDR又はVH及びVL配列)の使用を企図する。
【0183】
本開示の抗体及びその抗原結合部分、抗体組成物、並びに二重特異性結合分子が、本明細書に記載される処置方法に使用され得る、本明細書に記載される処置に使用され得る、及び/又は本明細書に記載される処置のための医薬の製造に使用するためのものであり得ることが理解される。本開示はまた、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合部分、抗体組成物、並びに二重特異性結合分子を含むキット及び製品を提供する。
【0184】
用量及び投与経路
本開示の抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子は、当の状態の処置に有効な量で、すなわち所望の結果を達成するのに必要な投与量及び期間で投与され得る。治療上有効量は、処置されている具体的な状態、患者の年齢、性別及び体重、並びに抗体がスタンドアローン処置として投与されているか、又は1つ以上の追加の抗がん処置と組み合わせて投与されているかなどの因子に応じて変動し得る。
【0185】
投与レジメンは、最適な所望の応答を提供するように調整され得る。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少若しくは増加させてもよい。投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態は、処置される患者/対象のための単位投与量として適した物理的に離散した単位を指し;各単位は、必要とされる医薬担体と会合して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。本開示の投与単位形態の仕様は、一般的に、(a)治療剤の固有の特徴及び達成されるべき具体的な治療効果又は予防効果、並びに(b)個体における感受性を処置するためにこのような活性化合物を配合する技術分野において固有の制限によって指示され、これらに直接依存する。
【0186】
したがって、当業者は、本明細書で提供される開示に基づいて、用量及び投与レジメンが治療分野で周知の方法に従って調整されることを理解するであろう。すなわち、最大許容用量を容易に確立することができ、検出可能な治療上の利益を患者に提供する有効量も、検出可能な治療上の利益を患者に提供するために各薬剤を投与するための時間的要件が決定され得るように決定され得る。したがって、特定の用量及び投与レジメンが本明細書に例示されているが、これらの例は、本開示を実施する際に患者に提供され得る用量及び投与レジメンを決して限定しない。
【0187】
投与量値は、緩和される状態の種類及び重症度によって変動し、単回又は複数回投与を含み得ることに留意すべきである。任意の具体的な対象について、特定の投与レジメンは、個々の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する者の専門的判断に従って経時的に調整されるべきであり、本明細書に示される投与量範囲は例示的なものにすぎず、具体化された組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことが更に理解されるべきである。更に、本開示の組成物を用いた投与レジメンは、疾患の種類、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重症度、投与経路、及び使用される具体的な抗体を含む様々な因子に基づき得る。したがって、投与レジメンは大きく変動し得るが、標準的な方法を使用して日常的に決定され得る。例えば、用量は、毒性効果及び/又は実験値などの臨床効果を含み得る薬物動態学的又は薬力学的パラメータに基づいて調整され得る。したがって、本開示は、当業者によって決定される患者内用量漸増を包含する。適切な投与量及びレジメンの決定は、関連技術において周知であり、本明細書に開示される教示が提供されると、当業者によって包含されることが理解されるであろう。
【0188】
腫瘍治療の有効量は、患者の疾患進行を安定化する、及び/又は症状を改善する能力、好ましくは例えば腫瘍サイズを減少させることによって、疾患進行を逆転させる能力によって測定され得る。本開示の抗体、抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子が、がんを阻害する能力は、例えば実施例に記載される、インビトロアッセイによって、並びにヒト腫瘍における有効性を予測する適切な動物モデルにおいて評価され得る。適切な投与レジメンは、各具体的な状況において最適な治療応答を提供するために選択され、例えば、単回ボーラスとして、又は連続注入として、及び各症例の緊急性によって示される投与量の可能な調整を伴って投与され得る。
【0189】
本開示の抗体若しくはその抗原結合部分、抗体組成物、又は二重特異性結合分子は、当技術分野において受け入れられているペプチド、タンパク質又は抗体を投与する任意の方法によって投与され得、典型的には非経口投与に適している。本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、対象の組織の物理的な破壊及び組織の破壊を通した投与を特徴とする任意の投与経路を含み、したがって一般的に血流、筋肉、又は内臓への直接投与をもたらす。したがって、非経口投与には、注射による投与、外科的切開を通した適用、組織貫通非外科的創傷を通した適用などが含まれるがこれらに限定されない。特に、非経口投与には、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、大槽内、静脈内、動脈内、髄腔内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、及び関節滑液嚢内注射又は注入が含まれるがこれらに限定されないことが企図される。特定の実施態様は、静脈内経路及び皮下経路を含む。
【0190】
診断用途及び組成物
本開示の抗体及び抗原結合部分はまた、診断プロセス(例えば、インビトロ、エクスビボ)において有用である。例えば、抗体及び抗原結合部分を使用して、患者からの試料(例えば、組織試料、又は炎症性滲出液、血液、血清、腸液、唾液、若しくは尿などの体液試料)中のCD73のレベルを検出及び/又は測定することができる。適切な検出及び測定方法には、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、化学発光アッセイ、ラジオイムノアッセイ、及び免疫組織学などの免疫学的方法が含まれる。本開示は更に、本明細書に記載される抗体及び抗原結合部分を含むキット(例えば、診断キット)を包含する。
【0191】
製品及びキット
本開示はまた、本明細書に記載される抗CD73抗体若しくはその抗原結合部分、組成物、又は二重特異性結合分子、場合により追加の生物学的活性分子(例えば、別の治療薬)の医薬組成物、及び使用説明書を含有する1つ以上の容器(例えば、単回使用又は複数回使用容器)を含む製品、例えばキットを提供する。抗体若しくは抗原結合部分、組成物、又は二重特異性結合分子、及び任意の追加の生物学的活性分子は、非反応性ガラス又はプラスチックから作製されたバイアル又はアンプルなどの適切なパッキングに別々に包装され得る。特定の実施態様では、バイアル又はアンプルが、抗体若しくは抗原結合部分、組成物、又は二重特異性結合分子、及び場合により生物学的活性分子の濃縮ストック(例えば、2倍、5倍、10倍以上)を保持する。特定の実施態様では、キットなどの製品が、抗体若しくは抗原結合部分、組成物、又は二重特異性結合分子並びに/或いは生物学的活性分子(例えば、シリンジ及び針);並びに/或いは適切な希釈剤(例えば、滅菌水及び生理食塩水)を投与するための医療機器を含む。本開示はまた、前記製品を製造する方法を含む。
【0192】
本明細書で他に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。例示的な方法及び材料を以下に記載するが、本明細書に記載される方法及び材料と類似の又は等価な方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することもできる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。
【0193】
一般的に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医学品化学及び創薬化学、並びにタンパク質及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及びこれらの技術は、当技術分野において周知であり、一般に使用されるものである。酵素反応及び精製技術は、当技術分野において一般的に達成される、又は本明細書に記載される、製造業者の仕様に従って実施される。
【0194】
更に、文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書及び実施態様を通して、「有する(have)」及び「含む(comprise)」という単語、又は「有する(has)」、「有すること(having)」、「含む(comprise)」若しくは「含むこと(comprising)」などの変形は、明言される整数又は整数群を含むが、任意の他の整数又は整数群を除外しないことを意味すると理解される。
【0195】
本明細書で言及される全ての刊行物及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書ではいくつかの文献が引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することの自認を構成するわけではない。
【0196】
本開示がより良く理解され得るように、以下の実施例が示される。これらの実施例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0197】
実施例1.ラットB細胞からの抗CD73抗体のクローニング
材料及び方法
ヒトCD73に対する抗体を、完全ヒト型イディオタイプを有する抗体を産生するLigand Pharmaceuticals Inc.製のトランスジェニックラット系統であるOmniRat(登録商標)ラット(Osborn et al.,J Immunol.190(4):1481-90(2013))に由来する抗体レパートリーから単離した。単一細胞選別抗体分泌B細胞(ASC)からのラット由来抗体遺伝子のクローニングを、Symplex(商標)抗体発見技術(Meijer et al.,J Mol Biol 358(3):764-72(2006))によって実施した。
【0198】
IgG1-LALAフォーマット(下記参照)の完全ヒト免疫グロブリンをコードする抗体レパートリー構築物をHEK293細胞にトランスフェクトした。細胞上清を、ハイスループットフォーマットでフローサイトメトリーを使用してCHO細胞の表面上で発現されたCD73への結合についてスクリーニングした。CD73反応性クローンをDNA配列決定によって分析し、抗体をコードするDNA配列を抽出した。選択された抗体クローンを発現させ、下記のように機能的に試験した。
【0199】
抗体をコードするcDNA断片のSymplex(商標)クローニングにおいて縮重プライマーの使用によって導入された重鎖及び軽鎖のアミノ末端におけるミスセンス変異を生殖系列配列に戻し修正した。表1は、21028、21046、21127、及び21163と呼ばれる生殖細胞系抗体の重鎖可変ドメインヌクレオチド配列及び軽鎖可変ドメインヌクレオチド配列を示す。修正プロセスは、生殖系列に対するアミノ末端配列修正及びコドン使用頻度最適化を伴う。ヒト生殖系列配列とのマッチングのための標的を、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域についてのblast相同性検索によって識別した。
【0200】
抗体21028、21046、21127及び21163の可変ドメイン、定常領域及び相補性決定領域(CDR)のタンパク質配列をそれぞれ表2、表3及び表4に示す。
【0201】
結果
表1は、抗体21028、21046、21127及び21163の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を示す。
【表1】
【0202】
表2は、抗体21028、21046、21127及び21163の推定アミノ酸配列を示す。CDRは太字/下線である。
【表2】
【0203】
表3は、重鎖定常領域アミノ酸配列及び軽鎖定常領域アミノ酸配列(それぞれCH及びCL)を示す。「IgG
1 LALA」は、IgG
1抗体のFc領域のエフェクター機能を低下させることが知られている重鎖中の「LALA」変異(L234A/L235A、Kabatナンバリングスキームに従ってナンバリング)の存在を指す(Hezareh et al.,J Virol.75(24):12161-68(2001);Hessell et al.,Nature 449(7158):101-04(2007))。
【表3】
【0204】
表4は、抗体21028、21046、21127、及び21163の重鎖及び軽鎖CDRアミノ酸配列を示し、CDRはIMGTシステムに従って定義される。
【表4】
【0205】
表5は、抗体21028、21046、21127及び21163の配列番号情報を示す。特に明記しない限り、配列はアミノ酸配列である。
【表5】
【0206】
実施例2.可溶性CD73活性アッセイにおける抗CD73抗体のスクリーニング
抗CD73抗体のパネルを、可溶性組換えCD73の酵素活性を阻害する能力について評価した。抗CD73抗体を10μg/mLの濃度で組換えCD73(SinoBiological Incorporated)、AMP、及びATPと共に37℃で30分間インキュベートした。Sachsenmeier et al.,Journal of Biomolecular Screening 17(7):993-998(2012)に記載されるようにCellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega Corporation)を使用して、ATP検出のAMP阻害を測定することによって、CD73活性を調査した。
【0207】
抗CD73抗体で処理した後のCD73酵素活性の阻害を
図1に示す。異なる抗CD73抗体で処理した後のCD73活性が強く変化したことが明らかであり、一部の抗体はこのアッセイで機能性を有さなかったが、他の抗体はCD73活性を強く阻害したことを示している。
【0208】
実施例3.細胞ベースのCD73活性アッセイにおける抗CD73抗体のスクリーニング
抗CD73抗体のパネルを、がん細胞株上で発現されたCD73の活性を阻害する能力について評価した。抗CD73抗体を10μg/mLの濃度でCD73発現細胞株と共に37℃で30分間インキュベートし、引き続いてCD73基質、AMPを添加し、37℃で3時間更にインキュベートした。Sachsenmeier et al.、前記に記載されるように、CellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega Corporation)を使用して、ATPを上清に添加し、ATP検出のAMP阻害を測定することによって、CD73活性を調査した。
【0209】
抗CD73抗体で処理した後に2つの異なるがん細胞株上で発現されたCD73の活性を
図2に示す。異なる抗CD73抗体で処理した後のCD73活性が強く変化したことが明らかである;一部の抗体はこのアッセイで機能性を有さなかったが、他の抗体はCD73活性を強く阻害した。注目すべきことに、同じ10個の抗体が両細胞株において最も高い活性を示した。
【0210】
実施例4.抗CD73参照抗体類似体のクローニング
材料及び方法
表6の抗体類似体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインをコードするアミノ酸配列を、列挙した特許又は特許出願から得た。タンパク質配列を、ヒトコドン使用頻度でDNA配列に逆翻訳した。対応するDNA配列を遺伝子合成し、ヒト重鎖定常領域又はヒト軽鎖定常領域を含有する発現ベクターにクローニングし、完全長抗体鎖の発現を得た。発現のために選択されたヒト抗体アイソタイプを、該当する場合にはFc領域に導入された追加の変異と共に抗体フォーマット欄に列挙する。標準的なタンパク質発現系を使用して、得られた発現プラスミドでCHO細胞をトランスフェクトした。対応する抗体上清を、標準的なプロテインA精製カラムクロマトグラフィーを使用して精製した。
【表6】
【0211】
実施例5.ヒト又はカニクイザルCD73タンパク質でトランスフェクトしたCHO-S細胞への抗CD73抗体の直接結合
CHO-S細胞上で発現されたヒト又はカニクイザルCD73タンパク質への抗CD73抗体21028、21046、21127、及び21163の結合を評価し、オレクルマブ類似体の結合と比較した。
【0212】
抗CD73抗体を、ヒト又はカニクイザルCD73を一過的に発現するハムスターCHO-S細胞株と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、その後、AF647コンジュゲート二次抗ヒトIgG(H+L)抗体と共に更に20分間インキュベートした。洗浄ステップ後、各ウェルのAF647シグナルのGeoMeanを測定するハイスループットフローサイトメーターiQue Screener PLUS(Sartorius)を使用して抗体結合を検出した。全ての濃度を3連でアッセイし、各抗体について12点滴定曲線を作成した。
【0213】
細胞上で発現されたヒト又はカニクイザルCD73への抗体の結合曲線を
図3に示す。アッセイした抗体は、異なる効力及び有効性で細胞提示ヒト及びカニクイザルCD73タンパク質に結合する。特に、mAb21127は、試験した抗体の中で最も高い効力でヒト及びカニクイザルCD73に結合する。
【0214】
実施例6.ヒト及びカニクイザルCD73細胞外ドメイン(ECD)に対する抗体及びFAB断片親和性の測定
この実施例は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される、組換えヒト及びカニクイザルCD73細胞外ドメイン(ECD)への抗CD73 Fab断片及び抗体の結合を実証する。
【0215】
材料及び方法
IBIS MX96 SPR機器(IBIS Technologies、オランダ)と組み合わせたContinuous Flow Microspotter(CFM、Wasatch Microfluidics、米国ソルトレークシティー)を使用して、抗CD73 mAb及びFab断片の速度論的結合分析を表面プラズモン共鳴(SPR)によって実施した。ヒト及びカニクイザルCD73の細胞外ドメインをコードするCD73 cDNAを合成し、CMVプロモーター、及びHisタグ付きCD73 ECDのC末端6×ヒスチジン配列(配列番号45)、又はヒトIgG1 Fc配列(AA P101-K330)のいずれかを含有するベクターにそれぞれクローニングして、クローニングCD73 ECDに対してC末端にIgG1 Fcを融合した。Hisタグ付き及びFc融合構築物を、ExpiCHO(商標)発現系を使用して一過的に発現させ、それぞれ標準的なNi-NTAクロマトグラフィー又は標準的なMabSelect(商標)SuRe(商標)手順によって精製した。Genovis(スウェーデン)によって提供されるキットを使用して、完全長IgG1抗体をGingisKHAN酵素で消化することによって、抗CD73 Fab断片を作製した。CFMを使用して、15分間、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)上でFcタグ付き抗原を捕捉することによって、Fab断片の親和性を測定した。スポッティング後、SensEye(登録商標)をIBIS MX96バイオセンサーに配置し、固定抗原をSensEye FixItキットによって固定した。0.8nMから300nMまで増加する濃度で単量体Fab断片を注入することによって、速度論的分析を実施した。Fab断片注入の各サイクルの後、表面を10mMグリシンpH3、10%グリセロールによって再生した。Fab会合を15分間実施し、抗原解離を15分間実施した。Continuous Flow Microspotter(CFM、Wasatch Microfluidics、米国ソルトレークシティー)を使用して、15分間、G-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)(Ssens BV、オランダ)上でmAbを捕捉することによって、完全長モノクローナル抗体(mAb)の親和性を測定した。スポッティング後、SensEyeをIBIS MX96にドッキングし、スポッティングしたmAbをSensEye FixItキット(Ssens BV、オランダ)よって固定した。2倍希釈として0.16nMから10nMまで増加する濃度のHisタグ付き抗原を注入する速度論的滴定シリーズを適用することによって、速度論的分析を実施した。表面を、100mM H3PO4、pH3によって、カニクイザル抗原注入の次のサイクルの前に再生した。mAb会合を15分間実施し、抗原解離を45分間実施した。記録された結合応答を、会合速度(kon又はka)、解離速度(koff又はkd)及び親和性(KD)定数を計算するために、Scrubber2.0ソフトウェアを用いて単純なラングミュア1:1結合モデルに当てはめた。結合速度パラメータを、6つの独立した測定点の平均として測定した。
【0216】
結果
抗CD73 Fab断片及び完全長抗体の結合親和性及び速度論パラメータをそれぞれ表7及び表8に示す。完全長抗体は、ナノモル濃度以下の範囲の高い親和性でヒトCD73に結合した。全ての抗体が、ヒト及びカニクイザルCD73を、参照抗体(11E1、オレクルマブ、及びCPX006の類似体)と同等の結合速度で認識した。全ての抗体が、測定された高い親和性に寄与する非常に遅い解離速度定数を特徴としていた。Fab断片の一価結合親和性は、対応する完全長抗体の一価結合親和性よりも20~245倍弱かった。解離速度(kd)はフォーマットの変化によって強く影響され、Fab断片はインタクト抗体よりもはるかに速いCD73からの解離を示す。
【0217】
インタクト抗体及びFab断片の結合速度の差は、抗体がCD73ホモ二量体に結合すること、及び完全長抗体について測定された高い親和性が結合活性効果によるものであることを示唆している。CD73は、非共有結合性ホモ二量体として存在することが知られており(Knapp et al.,Structure 20(12):2161-2173(2012))、11E1類似体及びオレクルマブ類似体の結合は、CD73ホモ二量体への二価結合に依存することが以前に見出されており、ここに記載される完全長抗体とFab断片との間の結合速度論における類似の差を伴っている(Perrot,Cell Reports 27(8):2411-2425(2019))。
【0218】
抗CD73抗体及びFab断片のSPR分析は、抗CD73抗体が二量体CD73への二価結合に依存すること、及び本明細書に例示される完全長抗体の結合親和性が、CD73ホモ二量体に結合する場合、参照mAbの結合親和性に匹敵することを示した。
【表7】
【表8】
【0219】
実施例7.抗CD73抗体のエピトープビニング
この実施例は、対となる競合パターンに基づく抗CD73抗体のエピトープビンへのグループ化を記載する。異なるエピトープビンに属する抗体は、CD73のECD上の異なるエピトープを認識する。
【0220】
材料及び方法
対となる抗体競合の調査を、IBIS-MX96機器(IBIS、オランダ)を使用してSPRによって実施した。抗CD73抗体をPBS中3μg/mLに希釈し、Continuous Flow Microspotterを使用して15分間捕捉することによってG-a-hu-IgG Fc SensEye(登録商標)上にスポッティングし、引き続いてHerceptin(トラスツズマブ)によって残留結合部位をブロッキングし、SensEye FixItキット(IBIS、オランダ)によって化学的架橋した。センサー調製後、古典的なサンドイッチアッセイを使用して抗体競合分析を実施した。CD73-His ECD抗原をPBS、0.05% Tween20、及び200nM Herceptin泳動緩衝液に希釈し、次いで、10nMの濃度で注入し、抗CD73抗体のコンジュゲートアレイによって捕捉した。次に、泳動緩衝液中100nMに希釈したCD73抗体の各々の個々の注入を実施して、抗体競合パターンを確立した。Epitope Binning 2.0(Wasatch、米国)によってデータを分析した。
【0221】
結果
16個の抗CD73抗体の競合パターンを
図4に示す。試験した抗CD73抗体群は、4つの重複する主なエピトープビン:1、2、3、及び4にある。ビン1は、互いに交差遮断したオレクルマブ類似体及び11E1類似体を含んでいた。オレクルマブ及び11E1抗体は、N末端ドメインの最上部及びCD73の触媒部位の反対側で重複エピトープに結合することが示されている(Geoghegan et al.,MABS 8(3):454-467(2016)、及びPerrot et al.,Cell Reports 27:2411-2425(2019))。ビン1の全ての抗体は、ビン2にグループ分けされた抗体を交差遮断した。ビン2は、同等の競合パターンを示した抗体21385、21127、及び21163を含み、抗体が類似のエピトープに結合することを示唆した。ビン2の抗体は、ビン4の抗体を除く全ての試験抗体を交差遮断した。ビン4抗体を、2つのサブビン:ビン3の1つ以上の抗体と競合するビン4a及び4bに分けることができた。抗体21046(ビン4a)及びCPX006類似体(ビン4b)は、ビン3の異なる抗体と競合し、2つの抗体が密接に関連しているが同一ではない結合エピトープを有することを示している。
【0222】
結論として、抗体21127及び21163(ビン2)は、11E1類似体及びオレクルマブ類似体(ビン1)のエピトープとのいくらかの重複を有するCD73のユニークなエピトープに結合する。抗体21127及び21163のエピトープは、CPX006類似体(ビン4)のエピトープとは異なる。抗体21046(ビン4a)は、CPX006類似体エピトープ(ビン4b)に類似であるが、抗体21127及び21163(ビン2)並びに11E1類似体及びオレクルマブ類似体(ビン1)のエピトープとは異なるエピトープに結合する。
【0223】
実施例8.CD73変異誘発による抗CD73抗体のエピトープマッピング
この実施例は、94個の異なるCD73変異体に対する結合親和性及び速度論を測定することによって、どのようにして抗体21127、21163、及び21046の結合エピトープを線状エピトープ及び個々の接触残基に分けることができるかを例示する。
【0224】
材料及び方法
ヒト及びラット(ラット(Rattus norvegicus))CD73のタンパク質配列をUniProt(それぞれ、アクセッション番号P21589及びP21588)からダウンロードした。カニクイザル(カニクイザル(Macaca fascicularis))及びニワトリ(ニワトリ(Gallus gallus))CD73の完全長タンパク質配列をNCBI(それぞれXP_005552488.1、及びXP_004940453.1)からダウンロードした。公的に入手可能なCD73構造PDB 4H2F(開)、4H2G(オープン)、及び4H2I(閉)を使用して、表面露出アミノ酸残基をマッピングした。ヒトCD73とラットCD73との間で異なる表面露出残基位置をアラニンに変異させた。線状抗体エピトープをマッピングするために、ヒトCD73 ECD配列中の10個のアミノ酸を、5個のアミノ酸が重複するセグメントのニワトリ配列に順次交換したCD73キメラタンパク質を作製した。
【0225】
ヒトCD73の細胞外ドメインをコードするcDNAを合成し、CMVプロモーター及びヒトIg Fc配列(残基P101~K330)を含有するベクターにクローニングして、クローニングCD73 ECDに対してC末端にIg Fcを融合した。野生型(wt)及び変異ヒトCD73 Fc融合構築物を、標準的な遺伝子合成技術によって作製し、ExpiCHO(商標)発現系を使用して、培養物2mL中でタンパク質を一過的に発現させた。
【0226】
ヒトCD73 Fc融合構築物を回収した後、表面プラズモン共鳴(SPR)によって上清を抗CD73 Fabへの結合について試験した。Continuous Flow Microspotter(CFM、Wasatch Microfluidics、米国ソルトレークシティー)を使用して、15分間、G-a-hu-lgG Fc SensEye(登録商標)(Ssens BV、オランダ)上にCD73融合タンパク質を含有する培養物上清を固定化した。スポッティング後、SensEye(登録商標)をIBIS MX96バイオセンサーに配置し、FixITキット(Ssens BV、オランダ)を使用して捕捉タンパク質を表面に固定した。本発明の抗体の単量体Fab断片を0.8nMから500nMまで増加する濃度で注入する速度論的滴定シリーズを適用することによって、速度論的分析を実施した。Fab断片注入の各サイクルの後、表面を10mMグリシンpH3、10%グリセロールによって再生した。Fab会合を15分間実施し、抗原解離を15分間実施した。記録された結合応答を、会合速度(kon又はka)、解離速度(koff又はkd)及び親和性(KD)定数を計算するために、Scrubber2ソフトウェアを用いて単純なラングミュア1:1結合モデルに当てはめた。
【0227】
結果
抗体21127、21163及び21046、並びに11E1、オレクルマブ、及びCPX006類似体によって認識されるCD73のエピトープを、ヒトCD73配列の10アミノ酸セグメントがニワトリ配列で置き換えられたキメラ受容体構築物を使用して;又はヒトCD73とラットCD73との間で異なる表面露出アミノ酸をアラニンに変異させたアラニンスキャニングによってマッピングした。野生型CD73及び変異体に対する抗体の結合親和性をSPRによって測定し、wtと比較して少なくとも5倍の親和性低下のカットオフ、又は1:1結合モデルからの偏差を、抗CD73抗体への結合の有意な喪失を伴う構築物を見出すために使用した(表9)。
【表9】
【0228】
識別された線状エピトープ及び接触残基を、開状態のCD73ホモ二量体の結晶構造上にマッピングした(
図5)。抗体21127、21163、及び21046、並びに11E1、オレクルマブ、及びCPX006類似体によって認識されるエピトープは全て、CD73のN末端ドメイン上にあることが分かった(
図5)。抗体21127及び21163並びに11E1及びオレクルマブ類似体のエピトープは、CD73ホモ二量体の二量体化界面に垂直な表面上及び触媒中心に対して反対側に位置することが分かった(
図5、パネルA、B、D、及びE)。4つの抗体のエピトープは、異なる接触残基及び線状エピトープに結合することによって異なることが分かった。CD73の上部の表面に結合する抗体は、酵素を開いた不活性な立体構造に固定し、閉じた活性状態への移行を妨げることによって、酵素活性を遮断し得る(Perrot et al.,Cell Reports 27:2411-2425(2019))。
【0229】
抗体21046及びCPX006類似体のエピトープは、CD73の触媒中心のすぐ上のN末端ドメインの前面にあることが分かった(
図5、パネルC及びF)。2つの抗体は、認識される線状エピトープ及び接触残基に関して異なる。
【0230】
要約すると、単一アミノ酸分解能でのエピトープマッピングは、例示される抗CD73抗体がそれぞれ別個の結合エピトープを有することを示した。抗体21127及び21163は、CD73のN末端ドメインの上部の類似のエピトープに結合する;これらのエピトープは、11E1、オレクルマブ及びCPX006類似体のエピトープとは異なる。抗体21046及びCPX006類似体は、CD73のN末端ドメインの前面の重複しているが依然として別個のエピトープに結合する。
【0231】
実施例9.溶液中で形成された抗体/CD73複合体の化学量論
この実施例は、SEC-MALSによって測定される溶液中で形成された抗体/CD73 ECD複合体のサイズを記載する。
【0232】
材料及び方法
抗CD73抗体及びHisタグ付きCD73を異なる比率で、並びに個別に分析して、CD73ホモ二量体と抗CD73抗体との間に形成された複合体のサイズを分析した。CD73-His 900pmolを、PBS、pH7.4に希釈した抗体 900、450、90又は0pmolと混合することによって試料を調製した。試料を室温で30分間インキュベートし、引き続いて、UHPLC UltiMate 3000(Thermo Scientific)及びSEC X-Bridgeカラム(Waters)を使用して、1.2mL/分の流量で分離した。試料泳動緩衝液は、0.01Mクエン酸塩、250mM L-アルギニン・HCl、pH6.0であった。HPLC分離後、全ての試料を、MiniDAWN TREOS MALS検出器(Wyatt)及びOptilab T-rEX屈折率検出器(Wyatt)を使用して分析した。GraphPad Prismを使用してデータプロットを作成した。
【0233】
結果
CD73ホモ二量体に対する抗体の二価結合は、酵素を不活性な立体構造に固定し得る(Geoghegan et al.,MABS 8(3):454-467(2016)及びPerrot et al.,Cell Reports 27:2411-2425(2019))。遮断機序は、CD73ホモ二量体の架橋によるもの、又は不活性状態の単一CD73二量体に結合することによるものであり得る。溶液中で形成された抗体/CD73複合体の化学量論を特徴付けるために、タンパク質複合体のサイズをSEC-MALSによって決定した。1:1抗体/CD73ホモ二量体複合体のサイズは、抗体及びCD73ホモ二量体の個々の分子量(それぞれおよそ150及び125kDa)から計算して270~280kDaの範囲にある。
図6A及び
図6B並びに表10は、様々な分子比でCD73ホモ二量体に結合する抗体21127、21163、及び21046、並びに11E1、オレクルマブ、及びCPX006類似体についてのSEC-MALSプロファイル及び形成された複合体のサイズを示す。CD73及び抗体の各々の個々の泳動は、タンパク質の予想サイズと一致する単分散ピークを示し、凝集体の非存在を確認する(
図6A及び
図6B、破線)。CD73に結合する抗体21127のSEC-MALSプロファイルは、予測される1:1 21127:CD73ホモ二量体複合体のサイズに対応する276kDaの平均サイズを有する1つの主ピーク(ピーク2)、及び過剰の21127又はCD73二量体のいずれかに対応する1つのより小さなピーク(ピーク1)を示す。抗体21163、並びに11E1類似体及びCPX006類似体は、主に1:1複合体を形成したが、最高の抗体:CD73比(1:1)で高次複合体を形成する傾向があった。多分散高次複合体は、CPX006類似体及び11E1類似体で最も顕著であった。抗体21046及びオレクルマブ類似体は大きな複合体を形成し、これらの抗体が主に別個のCD73二量体を架橋することを示しており、これはオレクルマブ(MEDI9447)についても示されている(Geoghegan et al,MABS 8(3):454-467(2016))。
【表10】
【0234】
表10のピークは、
図6A及び
図6Bのクロマトグラムに右から左に向かって見られるピーク1~4に対応する。ピーク1は、非結合/過剰なCD73ホモ二量体(約125kDa)又は非結合/過剰な抗体(約150kDa)のいずれかに対応する。ピーク2~4は、様々なサイズ及び化学量論のmAb:CD73複合体に対応し、約275kDaの複合体サイズは1:1の化学量論を表す。
【0235】
表10並びに
図6A及び
図6Bに示されるように、抗体21127は、CD73の濃度とは無関係に1:1複合体を生じる方法でCD73ホモ二量体上のエピトープに結合する。抗体21163並びに11E1類似体及びCPX006類似体は、主に1:1複合体としてCD73二量体に結合するが、様々な程度で高次複合体を形成する傾向も示す。抗体21046及びオレクルマブ類似体は、オリゴマー複合体としてのみCD73ホモ二量体に結合し、複数のCD73二量体の架橋を示す。
【0236】
実施例10.可溶性CD73活性アッセイにおける抗CD73抗体の機能性
可溶性CD73活性アッセイにおいて、抗CD73抗体21028、21046、21127、及び21163が可溶性組換えCD73の酵素活性を阻害する能力をより詳細に評価し、オレクルマブ類似体と比較した。抗CD73抗体を組換えCD73、AMP及びATPと共に37℃で2時間インキュベートした。Sachsenmeier et al.、前記に記載されるようにCellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega Corporation)を使用して、ATP検出のAMP阻害を測定することによって、CD73活性を調査した。
【0237】
示される濃度の抗CD73抗体又はオレクルマブ類似体で処理した後のCD73酵素活性の阻害を
図7に示す。抗CD73抗体の阻害機能は濃度依存的であり、異なる効力及び有効性を有するにもかかわらず、抗CD73抗体の全てがCD73活性を阻害することが明らかである。更に、オレクルマブ類似体は、より高い抗体濃度ではCD73酵素活性をあまり有効に阻害しない。同様の結果が、MedImmune(Geoghegan et al.,MABS 8(3):454-467(2016))によってオレクルマブ(以前はMEDI9447)について公開されている。抗体21028及び21046はまた、中間濃度と比較して高い濃度でCD73酵素活性をわずかに少なく阻害する。対照的に、抗体21127及び21163は、およそ3μg/mLを超える全ての濃度でCD73酵素活性の最大阻害を示す。
【0238】
実施例11.細胞ベースのCD73活性アッセイにおける抗CD73抗体の機能性
抗CD73抗体21028、21046、21127、及び21163が細胞上で発現されたCD73の活性を阻害する能力をより詳細に評価し、オレクルマブ類似体と比較した。抗CD73抗体をCD73発現ヒト細胞株(Calu-6及びH292)又はCD73発現カニクイザル細胞株(Cynom-K1)と共に37℃で30分間インキュベートし、引き続いてCD73基質、AMPを添加し、37℃で3時間更にインキュベートした。Sachsenmeier et al.、前記に記載されるように、CellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega Corporation)を使用して、ATPを上清に添加し、ATP検出のAMP阻害を測定することによって、CD73活性を調査した。
【0239】
異なる抗CD73抗体で処理した後のCD73活性の阻害を
図8に示す。抗CD73抗体の阻害機能は濃度依存的であり、異なる効力及び有効性を有するにもかかわらず、抗体の全てがヒトCD73活性とカニクイザルCD73活性の両方を阻害することが明らかである。抗体21127及び21163は、2つのヒト細胞株Calu-6及びH292において最も高い有効性を示すが、試験した4つの抗体全てが、3つの細胞株全てにおいてオレクルマブ類似体よりも明らかに優れている。
【0240】
実施例12.長期の細胞ベースのCD73活性アッセイにおける抗CD73抗体の機能性
長期の細胞ベースのアッセイにおいて、抗CD73抗体21028、21046、21127、及び21163が細胞株上で発現されたCD73の活性を阻害する能力をより詳細に評価し、オレクルマブ類似体と比較した。抗CD73抗体をCD73発現ヒト細胞株H292と共に37℃で30分間インキュベートし、引き続いてCD73基質、AMPを添加し、37℃で3、6又は24時間更にインキュベートした。Sachsenmeier et al.、前記に記載されるように、CellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega Corporation)を使用して、ATPを上清に添加し、ATP検出のAMP阻害を測定することによって、CD73活性を調査した。
【0241】
異なる抗CD73抗体で処理した後のCD73活性の阻害を
図9に示す。抗CD73抗体の阻害機能は濃度依存的であり、異なる効力及び有効性を有するにもかかわらず、抗体の全てがCD73活性を阻害することが明らかである。特に、細胞を抗体と最大24時間インキュベートすると、抗体21127及び21163がオレクルマブ類似体(及び試験した他の2つの抗CD73抗体)と更に区別される。
【0242】
実施例13.がん細胞株に対する抗CD73抗体の有効性
抗CD73抗体21127、21046、21163を、広範囲のCD73発現及び活性レベルを表すがん細胞株の大きなパネルで発現されるCD73の活性を阻害する能力について評価した。細胞パネルは、表11に記載される複数の起源組織にわたるいくつかのがん適応症に及ぶ。
【0243】
材料及び方法
抗CD73抗体を25μg/mLの濃度でCD73発現細胞株と共に37℃で30分間インキュベートし、引き続いてCD73基質、AMPを添加し、37℃で3時間更にインキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega Corporation)を使用して、ATPを上清に添加し、ATP検出のAMP阻害を測定することによって、細胞CD73活性を評価した。発光を介してCD73活性を検出する。
【0244】
結果
20種の異なるがん細胞株上で発現されたCD73の活性に対する抗CD73抗体の効果を
図10に示す。異なる抗CD73抗体で処理した後にCD73活性が変化したことが明らかである。いくつかの抗体(21046及びオレクルマブ類似体)は、より低い細胞CD73活性レベルでCD73を阻害するいくらかの能力を示したが、最高活性レベルで酵素を阻害することはできなかった一方、他の抗体(21127及び21163)は、例えばCalu-6、NCI-H1775、KYSE-30及びCapan-2細胞株で観察される最高活性レベルでさえCD73活性を強く阻害した。
【表11】
【0245】
実施例14.細胞ベースの生存率アッセイにおける抗CD73抗体活性のインビトロ試験
この実施例は、300μMのAMPの存在下で成長させた2つのがん細胞株を使用した生存率アッセイにおける抗体21127のインビトロ機能的特徴付けを記載する。
【0246】
材料及び方法
抗体を、トリプルネガティブ乳がん細胞株MDA-MB-231及びMDA-MB-468の生存率(生存及び/又は増殖)を直接阻害するそれらの能力についてインビトロで評価した。細胞を、2%FBS及び1%P/Sを補充したRPMI 1640 Glutamax(MDA-MB-231)又はDMEM(MDA-MB-468)培地中、384ウェルプレートに1000個細胞/ウェルで播種し、300μMのAMP(アデノシン一リン酸、Sigma-Aldrich)の存在下、25μg/mLから滴定した抗体と共に37℃の加湿インキュベーター中で4日間インキュベートした。製造業者の説明書に従って、WST-1細胞増殖試薬(Roche)を使用して細胞生存率を定量化した。
【0247】
結果
21127及びオレクルマブ類似体は、機能的読み出しに関して異なることが明らかである(
図11)。抗体21127は両細胞株に対する顕著な効果を示し、MBA-MB-231は未処理細胞と比較しておよそ60%生細胞に、MBA-MB-468は0%生細胞(すなわち、培地バックグラウンドで測定可能な生細胞はない)に減少した。オレクルマブ類似体は、MBA-MB-231細胞株の生存率に対する有意な効果を示さなかったが、MBA-MB-468はある程度影響を受け、未処理細胞と比較して生細胞数はおよそ70~80%に減少した。
【0248】
他の組織由来のがん細胞株においても同様の効果が期待され得る。
【0249】
実施例15.抗CD73抗体による健康なヒトドナー由来の初代CD4+及びCD8+T細胞並びにCD19+B細胞上で発現されたCD73の阻害
健康なヒトドナー由来の初代CD4+及びCD8+T細胞並びにCD19+B細胞上で発現されたCD73の活性を阻害する能力について、抗CD73抗体を評価した。
【0250】
材料及び方法
製造業者の説明書(Miltenyi Biotec)に従って関連する特異性を有する磁気(MACS)ビーズを使用して、バフィーコートPBMC(末梢血単核細胞)から初代CD4+及びCD8+T細胞並びにCD19+B細胞を単離した。50~0.003μg/mLの濃度での抗CD73抗体の4倍希釈滴定を、単離初代細胞と共に37℃で30分間インキュベートし、引き続いてCD73基質、AMPを添加し、37℃で20時間(CD19+B細胞)又は40時間(CD4+及びCD8+T細胞)更にインキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega Corporation)を使用して、ATPを上清に添加し、ATP検出のAMP阻害を測定することによって、CD73活性を評価した。
【0251】
結果
抗CD73抗体で処理した後に初代CD4
+及びCD8
+T細胞並びにCD19
+B細胞上で発現されたCD73の活性を
図12に示す。抗体21127及びオレクルマブ類似体で処理した後のCD73活性は強く異なっていたことが明らかである。より高濃度の抗体21127は、全ての初代細胞型においてCD73活性のほぼ完全な阻害を実証したが、オレクルマブ類似体は、CD19
+B細胞及びCD8
+T細胞においてCD73活性の非常に限定された阻害、並びにCD4
+T細胞において部分的な阻害のみを示した。健康なドナー由来の末梢血CD4
+T細胞は平均して制限されたCD73発現を有するが、CD19
+B細胞は平均して高レベルのCD73を発現し、CD8
+T細胞は平均して中レベルを発現するので、オレクルマブ類似体がCD73活性を阻害する能力はCD73発現レベルと相関する(Allard et al.,Immunol Rev 276(1):121-144(2017))。
【0252】
実施例16.T細胞増殖アッセイにおける抗CD73抗体の機能性
抗CD73抗体21028、21046、21127、及び21163がCD4+T細胞上で発現されたCD73の活性を阻害する能力をインビトロアッセイで評価し、オレクルマブ類似体と比較した。CD4+T細胞を健康なドナーから単離し、抗CD3/CD28ビーズ(Thermo Fisher Scientific)、AMP及び抗CD73抗体で48時間活性化し、引き続いて3H-チミジン(PerkinElmer Corporation)を更に24時間添加した。T細胞増殖を3H-チミジン取り込みとして測定し、AMPで処理していない対照に対して正規化した。
【0253】
異なる抗CD73抗体で処理した後のT細胞増殖を
図13に示す。T細胞増殖に対する抗CD73抗体の刺激機能は濃度依存的であり、異なる効力及び有効性を有するにもかかわらず、抗体の全てがT細胞増殖を刺激することが明らかである。オレクルマブ類似体を除く全ての抗体がT細胞増殖を完全に回復させ、抗体21127が最も高い効力で回復させた。
【0254】
実施例17.T細胞活性化アッセイにおける抗CD73抗体の機能性
抗CD73抗体がCD4+及びCD8+T細胞上で発現されたCD73の活性を阻害する能力をインビトロアッセイで評価し、オレクルマブ類似体と比較した。
【0255】
CD4+及びCD8+T細胞を健康なドナーから単離し、抗CD3/CD28ビーズ(Thermo Fisher Scientific)、AMP及び抗CD73抗体で72時間活性化し、引き続いて上清を収穫した。ELISA(Thermo Fisher Scientific)を使用して、T細胞活性化を上清中のIFN-γレベルとして測定した。
【0256】
異なる抗CD73抗体で処理した後のT細胞活性化を
図14に示す。T細胞活性化に対する抗体21127の刺激機能は濃度依存的であり、21127はオレクルマブ類似体よりも高いIFN-γレベルをもたらすことが明らかである。
【0257】
実施例18.一方向MLRアッセイにおける抗CD73抗体の機能性
抗CD73抗体が一方向混合リンパ球反応(MLR)でCD73の活性を阻害する能力をインビトロアッセイで評価し、オレクルマブ類似体と比較した。
【0258】
2人の異なる健康なドナーから単離した樹状細胞(DC)及びCD4+T細胞を共培養して、サイトカイン産生並びにT細胞活性化及び/又は増殖をもたらす同種抗原特異的反応を誘導した。DCを、20ng/mLの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及び20ng/mLのインターロイキン-4(IL-4)との7日間の培養によってCD14+単球から分化させ、健康なドナー材料由来の末梢血単核細胞(PBMC)から単離したCD4+T細胞と1:10の比で混合した。一方向MLRを25μg/mLの抗PD-1抗体(12819;国際公開第2017/055547号参照)、50μMのAMP及び示される濃度の抗CD73抗体と共に48時間インキュベートし、引き続いて3H-チミジン(PerkinElmer Corporation)を更に24時間添加した。増殖を3H-チミジン取り込みとして測定し、AMPで処理していない対照に対して正規化した。
【0259】
異なる抗CD73抗体で処理した後のT細胞増殖を
図15に示す。増殖に対する抗CD73抗体の刺激機能は濃度依存的であり、抗体21127とオレクルマブ類似体の両方がT細胞増殖を刺激したことが明らかである。しかしながら、抗体21127のみが増殖を完全に回復させた。
【0260】
実施例19.一方向MLRアッセイにおける抗CD73抗体と抗PD-1抗体の組み合わせ
この実施例は、抗PD-1抗体(12819)と抗CD73抗体(21127)の組み合わせが、一方向混合リンパ球反応(MLR)においてT細胞活性化を増強する能力を調べる。
【0261】
2人の異なる健康なドナーから単離した樹状細胞(DC)及びCD4+T細胞を共培養して、サイトカイン産生並びにT細胞活性化及び/又は増殖をもたらす同種抗原特異的反応を誘導した。DCを、20ng/mLの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及び20ng/mLのインターロイキン-4(IL-4)との7日間の培養によってCD14+単球から分化させ、健康なドナー材料由来の末梢血単核細胞(PBMC)から単離したCD4+T細胞と1:10の比で混合した。一方向MLRを、50μMのAMPの有無にかかわらず、抗CD73抗体21127及び/又は抗PD-1抗体(12819;国際公開第2017/055547号参照)と共に72時間インキュベートし、引き続いて上清を収穫した。抗CD73抗体21127と抗PD-1抗体12819との組み合わせを、1:1比の2つの抗体で組み合わせた。ELISA(Thermo Fisher Scientific)を使用して上清中のIFN-γレベルを定量化することによって、T細胞活性化を測定し、AMPで処理していない対照に対して正規化した。
【0262】
抗体12819及び/又は21127による処理後のIFN-γレベルによって測定される、一方向MLRにおけるT細胞活性化を
図16に示す。抗PD-1抗体12819が、AMPなし、及び抗体21127との同時インキュベーションありとなしの両方で一方向MLRを強く活性化したことが明らかである(上のパネル)。抗PD-1抗体による一方向MLRの活性化は、AMPを一方向MLRに添加した場合にはかなり少ない(下のパネル)。しかしながら、抗PD-1抗体と抗CD73抗体21127を組み合わせると、強いT細胞活性化が少なくとも部分的に回復し、抗PD-1抗体/抗CD73抗体の組み合わせの利益が強調された。
【0263】
実施例20.B細胞活性化アッセイにおける抗CD73抗体の機能性
抗体21046及び21127がB細胞活性化を刺激する能力をインビトロB細胞活性化アッセイで評価した。健康なドナー由来のPBMCを、21046、21127、又はオレクルマブ類似体(10μg/mL)並びにCD40リガンド(0.5μg/mL)で一晩刺激した。フローサイトメトリー分析を、B細胞(CD20+)に対するゲーティングを用いて実施し、B細胞活性化を、B細胞活性化マーカーCD25、CD69、及びCD83の上方制御として評価した。
【0264】
図17A及び
図17Bに示されるように、抗体21046は、B細胞活性化マーカーCD25、CD69及びCD83の強力な上方制御を刺激するが、抗体21127及びオレクルマブ類似体は、B細胞活性化に対する効果が限られている。
【0265】
実施例21.H292細胞中のCD73レベルの抗CD73抗体誘導低下
細胞株において抗CD73抗体21127、21028、21046、及び21163がCD73レベルを調節する能力を評価し、オレクルマブ類似体と比較した。抗CD73抗体を、25μg/mLで、ヒト細胞株H292と共に37℃で24時間インキュベートし、引き続いて細胞溶解し、Simple Western技術(ProteinSimple)を使用してCD73レベルを評価した。
【0266】
図18は、抗体21127、21028、21046、若しくは21163、又はオレクルマブ類似体で処理した後のCD73レベルを示す。抗CD73抗体21046又はオレクルマブ類似体とのインキュベーションは、いくらかのCD73下方制御をもたらしたが、他の抗CD73抗体は、あるとしても、CD73レベルに対する中程度の効果を有した。
【0267】
実施例22.ヒト腫瘍異種移植モデルにおける抗CD73抗体の機能性
この実施例は、抗CD73抗体21127がヒト腫瘍異種移植片から単離した細胞上で発現されたCD73の酵素活性を阻害する能力を実証する。
【0268】
材料及び方法
ヒト黒色腫細胞株A375を、6~8週齢の雌NOG又はNOD-scidマウスの側腹部に皮下接種した。一例(
図19、上のパネル)では、ヒトPBMCを腫瘍細胞接種の1日後に腹腔内注射した。腫瘍をキャリパーによって2次元で1週間に3回測定し、腫瘍体積(mm
3)を式:(幅)
2×長さ×0.5に従って計算した。マウスを、ビヒクル緩衝液、又は抗マウスCD73抗体TY/23(BioXcell)と組み合わせた(1)抗体21127、(2)オレクルマブ類似体、若しくは(3)抗体21127の腹腔内注射によって1週間に3回処置した。オレクルマブ類似体とは異なり、抗体21127はマウスCD73に対して交差反応性ではない。したがって、CD73を発現するマウス細胞(内皮細胞及び間質細胞)も含有する腫瘍塊におけるCD73活性の阻害を比較するために、抗体21127を抗マウスCD73抗体TY/23と組み合わせた。抗体を5mg/kg、20mg/kg又は50mg/kgで投与した。処置中止後の異なる時点で、腫瘍を収穫し、腫瘍分離キット及びgentleMACS Octo Dissociator(Miltenyi)を使用して分離した。得られた細胞懸濁液をCD73基質AMPと共に37℃で3時間インキュベートした。Sachsenmeier et al.、前記に記載されるように、CellTiter-Glo(登録商標)2.0(Promega Corporation)によって、ATPを上清に添加し、ATP検出のAMP阻害を測定することによって、CD73活性を調査した。
【0269】
結果
抗体21127は、2週間にわたる反復投与後の、A375ヒト黒色腫細胞株が移植されたPBMCヒト化マウスから収穫した腫瘍におけるCD73活性の用量依存的阻害を実証した(
図19、上のパネル)。CD73酵素活性に対する効果は、処置中止後も長期間持続することが分かった。
【0270】
図19、下のパネルに示されるように、オレクルマブ類似体は、CD73活性を処置後16日間阻害し、酵素活性は処置後28日目に完全に回復した。対照的に、抗体21127は単独で、又はTY/23と組み合わせて、処置中止後28日間にわたってCD73活性の持続的阻害を示した。
【0271】
実施例23.免疫細胞を含まないヒト異種移植腫瘍モデルにおける抗CD73抗体のインビボ有効性
この実施例は、抗CD73抗体がヒトトリプルネガティブ乳がん異種移植モデルにおいて腫瘍成長を阻害する能力を実証する。
【0272】
ヒトMDA-MB-231トリプルネガティブ乳がん細胞を、6~8週齢の雌NOD-scidマウスの側腹部に皮下接種した。腫瘍をキャリパーによって2次元で1週間に3回測定し、腫瘍体積(mm3)を式:(幅)2×長さ×0.5に従って計算した。ビヒクル緩衝液、抗体21127、又はオレクルマブ類似体の腹腔内注射による合計16回の処置でマウスを1週間に2回処置し、引き続いて観察期間を設けた。抗体を10mg/kgで投与した。ボンフェローニの多重比較検定による二元配置ANOVAを適用して、処置群間の各時点での腫瘍体積を比較した。GraphPad Prismバージョン5.0(GraphPad Software,Inc.)を使用して統計分析を実施した。
【0273】
抗体21127及びオレクルマブ類似体は、処置中に顕著な腫瘍阻害効果を示した(
図20)。処置中止後、オレクルマブ類似体で処置した腫瘍の再成長が観察された。対照的に、抗体21127で処置したマウスは、処置中に腫瘍成長を有効に制御し、処置後60日間の腫瘍サイズの増加は限られていた。
【0274】
実施例24.ヒトPBMCで再構成したマウスのヒト異種移植腫瘍モデルにおける抗CD73抗体のインビボ有効性
この実施例は、ヒト肺癌細胞又はヒト黒色腫細胞を移植したPBMCヒト化マウスにおける抗CD73抗体21127のインビボ有効性を実証する。
【0275】
ヒト肺癌細胞株Calu-6又はヒトA375黒色腫細胞株由来の細胞を、ヒトPBMCの腹腔内注射の1日前にNOGマウスに皮下移植した。処置をPBMC注射の日に開始し、マウスを、10mg/kgのビヒクル緩衝液又は抗CD73抗体21127の腹腔内注射によって、合計6回の処置にわたって1週間に3回処置した(n=10/群)。腫瘍をキャリパーによって2次元で1週間に3回測定し、腫瘍体積(mm3)を式:(幅)2×長さ×0.5により計算した。ボンフェローニの多重比較検定による二元配置ANOVAを適用して、処置群間の各時点での腫瘍体積を比較した。GraphPad Prismバージョン5.0(GraphPad Software,Inc.)を使用して統計分析を実施した。
【0276】
図21に示されるように、抗体21127による処置は、ヒトPBMCで再構成されたマウスにおける2つのヒト腫瘍異種移植モデル(Calu-6及びA375)において有意な腫瘍成長遅延(P<0.05対ビヒクル対照)をもたらした。
図21の各グラフは、1ニンのヒトPBMCドナーを表す。
【配列表】