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特許7662635抗PD-1-抗VEGFA二重特異性抗体、その医薬組成物および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】抗PD-1-抗VEGFA二重特異性抗体、その医薬組成物および使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20250408BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20250408BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250408BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250408BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250408BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250408BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250408BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250408BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250408BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/24
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
C12P21/08
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2022530820
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2020131447
(87)【国際公開番号】W WO2021104302
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】201911164156.2
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519063026
【氏名又は名称】中山康方生物医▲藥▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AKESO BIOPHARMA,INC.
【住所又は居所原語表記】6 Shennong Road,Torch Development Zone Zhongshan,Guangdong 528437 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】張 鵬
(72)【発明者】
【氏名】李 百 勇
(72)【発明者】
【氏名】夏 瑜
(72)【発明者】
【氏名】王 忠 民
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109053895(CN,A)
【文献】国際公開第2017/117464(WO,A1)
【文献】特表2017-520512(JP,A)
【文献】国際公開第2018/026600(WO,A1)
【文献】特開2015-221829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGFAおよびPD-1を標的とする二重特異性抗体であって、
(a)VEGFAに結合するヒトIgG1免疫グロブリンであって、ここで前記ヒトIgG1免疫グロブリンは2対のポリペプチド鎖を含む、ここで前記ポリペプチド鎖の各対は重鎖および軽鎖を含む、ここで前記ヒトIgG1免疫グロブリンの前記重鎖のアミノ酸配列は配列番号24に記載される、および前記ヒトIgG1免疫グロブリンの前記軽鎖のアミノ酸配列は配列番号26に記載される、ヒトIgG1免疫グロブリン;および
(b)PD-1に結合する2つの一本鎖抗体であって、ここで各一本鎖抗体のVH領域のアミノ酸配列は配列番号9に記載されている、および各一本鎖抗体のVL領域のアミノ酸配列は配列番号17に記載されている、一本鎖抗体、
を含み、
ここで各一本鎖抗体の1つの末端は第1のリンカー断片によって前記ヒトIgG1免疫グロブリンの各重鎖のC末端に連結される、ここで各一本鎖抗体の前記VH領域および前記VL領域は第2のリンカー断片によって連結されている、ここで前記第1のリンカー断片および前記第2のリンカー断片は同一であるかまたは異なる、好ましくはここで前記第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列は独立して配列番号18および配列番号19から選択される、および好ましくはここで前記第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が、配列番号18に記載されている、
二重特異性抗体。
【請求項2】
第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号18に記載されている、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号19に記載されている、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
第1のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号18に記載されており、第2のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号19に記載されている、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
第1のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号19に記載されており、第2のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号18に記載されている、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の二重特異性抗体をコードする、単離された核酸分子。
【請求項7】
DNAを含む、請求項6に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
請求項6または7に記載の前記単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項9】
発現ベクターである、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
プラスミド、ファージミド、コスミドおよび人工染色体から選択される、請求項8または9に記載のベクター。
【請求項11】
人工染色体が、酵母人工染色体、細菌人工染色体またはP1由来の人工染色体である、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
ベクターが、ラムダファージおよびM13ファージから選択される、バクテリオファージである、請求項8または9に記載のベクター。
【請求項13】
ベクターが動物ウイルスである、請求項8または9に記載のベクター。
【請求項14】
ベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、バキュロウィルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルスから選択される、請求項13に記載に記載のベクター。
【請求項15】
ベクターが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメントおよびレポーター遺伝子、複製開始部位、またはその任意の組合せを含む、請求項8に記載のベクター。
【請求項16】
請求項6または7に記載の前記単離された核酸分子または請求項8~15のいずれか1項に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項17】
請求項8~15のいずれか1項に記載のベクターで宿主細胞を形質転換、形質導入またはトランスフェクションすることを含む方法。
【請求項18】
第1のベクターおよび第2のベクターで宿主細胞を形質転換、形質導入またはトランスフェクションすることを含む方法であって、
ここで前記第1のベクターが二重特異性抗体の重鎖ポリペプチドをコードし、前記第2のベクターが前記二重特異性抗体の軽鎖ポリペプチドをコードし、ここで
(i)前記二重特異性抗体の重鎖ポリペプチドが、配列番号24に記載のアミノ酸配列および一本鎖抗体を含み、ここで前記一本鎖抗体の1つの末端は第1のリンカー断片によって前記配列番号24に記載のアミノ酸配列のC末端に連結され、前記一本鎖抗体のVH領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記一本鎖抗体のVL領域のアミノ酸配列が配列番号17に記載されており、前記一本鎖抗体の前記VH領域および前記VL領域は第2のリンカー断片によって連結されており、および前記第1のリンカー断片および前記第2のリンカー断片は同一であるかまたは異なり;かつ
(ii)前記二重特異性抗体の軽鎖ポリペプチドのアミノ酸配列が配列番号26に記載されており、
好ましくはここで、前記第1のリンカー断片および前記第2のリンカー断片のアミノ酸配列が独立して配列番号18および配列番号19から選択され、好ましくはここで、前記第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が、配列番号18に記載されている、
方法。
【請求項19】
第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号18に記載されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号19に記載されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
第1のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号18に記載されており、第2のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号19に記載されている、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
第1のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号19に記載されており、第2のリンカー断片のアミノ酸配列が配列番号18に記載されている、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
宿主細胞が、原核細胞、真菌細胞、昆虫細胞および動物細胞から選択される、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項24】
宿主細胞が、大腸菌、枯草菌、酵母細胞、アスペルギルス属、S2ショウジョウバエ細胞、Sf9細胞、線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞および単離されたヒト細胞から選択される、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
宿主細胞が、CHO細胞である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
宿主細胞が、原核細胞、真菌細胞、昆虫細胞および動物細胞から選択される、請求項17~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
宿主細胞が、大腸菌、枯草菌、酵母細胞、アスペルギルス属、S2ショウジョウバエ細胞、Sf9細胞、線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞および単離されたヒト細胞から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
宿主細胞が、CHO細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を含む医薬組成物であって、薬学的に許容されるベクターおよび/または賦形剤をさらに含む、医薬組成物。
【請求項30】
悪性腫瘍を治療および/または予防するための医薬の調製における、請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体または請求項29に記載の医薬組成物の使用。
【請求項31】
悪性腫瘍が、結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺癌、食道胃接合部腺癌および白血病から選択され;
好ましくは、前記肺がんは非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、前記非小細胞肺がんはEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記肝臓がんは肝細胞がんであり;
好ましくは、前記腎腫瘍は腎細胞がんであり;
好ましくは、前記乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、前記尿路上皮がんは膀胱がんである、
請求項30に記載の使用。
【請求項32】
肺がんが非小細胞肺がんである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんである、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
(1)VEGFAのVEGFR2への結合を遮断するための医薬もしくは薬剤、
VEGFAの活性もしくはレベルをダウンレギュレートするための医薬もしくは薬剤、
血管内皮細胞増殖に対するVEGFAの刺激を軽減するための医薬もしくは薬剤、
血管内皮細胞増殖を抑制するための医薬もしくは薬剤、または、
腫瘍血管新生を遮断するための医薬もしくは薬剤;
ならびに/または
(2)PD-1のPD-L1への結合を遮断するための医薬もしくは薬剤、
PD-1の活性もしくはレベルをダウンレギュレートするための医薬もしくは薬剤、
生体におけるPD-1の免疫抑制を軽減するための医薬もしくは薬剤、
Tリンパ球におけるIFN-γ分泌を促進するための医薬もしくは薬剤、または、
Tリンパ球におけるIL-2分泌を促進するための医薬もしくは薬剤
の調製における、請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体の使用。
【請求項35】
悪性腫瘍の治療および/または予防において使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体または請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項36】
悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺癌、食道胃接合部腺癌および白血病から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、前記非小細胞肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記肝臓がんが肝細胞がんであり;
好ましくは、前記腎腫瘍が腎細胞がんであり;
好ましくは、前記乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、前記尿路上皮がんが膀胱がんである、請求項35に記載の二重特異性抗体または医薬組成物。
【請求項37】
肺がんが非小細胞肺がんである、請求項36に記載の二重特異性抗体または医薬組成物。
【請求項38】
肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんである、請求項36に記載の二重特異性抗体または医薬組成物。
【請求項39】
(1)VEGFAのVEGFR2への結合の遮断、
VEGFAの活性もしくはレベルのダウンレギュレート、
血管内皮細胞増殖に対するVEGFAの刺激の軽減、
血管内皮細胞増殖の抑制、または、
腫瘍血管新生の遮断;
ならびに/または
(2)PD-1のPD-L1への結合の遮断、
PD-1の活性もしくはレベルのダウンレギュレート、
生体におけるPD-1の免疫抑制の軽減、
Tリンパ球におけるIFN-γ分泌の促進、または、
Tリンパ球におけるIL-2分泌の促進、
における使用のための、請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体または請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項40】
請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を調製する方法であって、請求項16に記載の宿主細胞を好適な条件で培養すること、および細胞培養物から前記二重特異性抗体を単離すること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、腫瘍治療および免疫生物学の分野に属し、抗PD-1-抗VEGFA二重特異性抗体、その医薬組成物およびその使用に関する。詳しくは、本発明は、抗ヒトPD-1-抗ヒトVEGFA二重特異性抗体、その医薬組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
腫瘍、特に悪性腫瘍は、今日の世の中では健康を脅かす重篤な疾患であり、各種疾患の中で死亡の第2の主要原因である。近年、その発病率は著しく増加している。悪性腫瘍は、治療反応性が悪く、後期の転移率が高く、予後が不良であることが特徴である。現在臨床的に採用されている従来の治療方法(例えば、放射線療法、化学療法および外科治療など)は、疼痛を大幅に緩和し、生存時間を延ばすが、それらの方法には大きな制限があり、さらにそれらの効果を向上させるのは困難である。
【0003】
腫瘍増殖の2つの異なる段階、すなわち、血管が関与しない緩慢な成長段階から血管が関与する急速な増殖段階がある。血管新生によって、血管切り替え段階を完了するのに十分な栄養を腫瘍は獲得することができ、血管新生が生じない場合、原発腫瘍は1~2mm未満になり、したがって、転移は起こり得ない。
【0004】
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、内皮細胞の分裂および増殖を促進し、新しい血管の形成を促進し、血管透過性を改良することができる増殖因子であり、またこれは、細胞表面上の血管内皮細胞増殖因子受容体に結合し、チロシンキナーゼシグナル伝達経路の活性化によって役割を果たす。腫瘍組織において、腫瘍細胞、ならびに腫瘍へ侵入するマクロファージおよびマスト細胞は高レベルのVEGFを分泌し、パラクリン様式で腫瘍血管内皮細胞を刺激し、内皮細胞の増殖および移動を促進し、血管新生を誘導し、腫瘍の連続的な増殖を促進し、血管透過性を強化し、周囲組織内の線維素沈着を引き起こし、単核細胞、繊維芽細胞および内皮細胞の浸潤を促進し、これは腫瘍ストロマの形成と腫瘍細胞の新たな血管への侵入を容易にし、また腫瘍転移を促進することができる。したがって、腫瘍血管新生を抑制することが、現在最も有望な腫瘍治療方法の1つであると考えられる。VEGFファミリーには、VEGFA、VEGFB、VEGFC、VEGFDおよびPIGFが含まれる。血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)には、VEGFR1(Flt1としても知られている)、VEGFR2(KDRまたはFlk1としても知られている)、VEGFR3(Flt4としても知られている)、およびニューロピリン-1(NRP-1)が含まれる。最初の3つの受容体は構造において類似しており、チロシンキナーゼスーパーファミリーに属し、膜外領域、膜貫通セグメントおよび膜内領域から構成されており、膜外領域は免疫グロブリン様ドメインから構成され、膜内領域はチロシンキナーゼ領域である。VEGFR1およびVEGFR2は、主として血管内皮細胞の表面に位置しており、VEGFR3は、主としてリンパ内皮細胞の表面に位置している。
【0005】
VEGFファミリーの分子は、これらの受容体に対して異なる親和性を有する。VEGFAは、主に、VEGFR1、VEGFR2およびNRP-1と共に作用する。VEGFR1は、最も初期に発見された受容体であり、通常の生理学的条件下でVEGFR2よりもpVEGFAに対して高い親和性を有しているが、細胞内セグメント内のチロシナーゼ活性はVEGFR2より低い(Ma Li、 Chinese Journal of Birth Health and Heredity、2016、24巻(5号):146~148頁)。
【0006】
VEGFR2は血管新生および血管工学の主要な制御因子であり、VEGFR1よりもはるかに高いチロシンキナーゼ活性を有する。VEGFR2は、リガンドVEGFAに結合した後、血管内皮細胞の増殖、分化など、ならびに血管の形成プロセスおよび血管の浸透性を媒介する(Roskoski R Jr.ら、Crit Rev Oncol Hematol、2007、62巻(3号):179~213頁)。VEGFAは、VEGFR2に結合した後、下流のPLC-γ-PKC-Raf-MEK-MAPKシグナル経路を介して細胞内の関連タンパク質遺伝子の転写発現を媒介し、それにより血管内皮細胞の増殖を促進する(Takahashi Tら、Oncogene、1999、18巻(13号):2221~2230頁)。
【0007】
VEGFR3はチロシンキナーゼファミリーメンバーのうちの1つであり、主に胚血管内皮細胞および成体リンパ内皮細胞を発現し、またVEGFCおよびVEGFDはVEGFR3に結合してリンパ内皮細胞の増殖および移動を刺激し、リンパ管の新生を促進する;NRP-1は非チロシンキナーゼ膜貫通型タンパク質であり、生体シグナルを独立して伝達することはできず、VEGFチロシンキナーゼ受容体と複合体を形成した後でのみ、シグナル伝達を媒介することができる(Ma Li、Chinese Journal of Birth Health and Heredity、2016、24巻(5号):146~148頁)。
【0008】
VEGFAおよびVEGFR2は、主に、VEGFAがVEGFR2に結合する前後の血管新生の調節に関与しており、上流および下流の経路での多数の中間シグナルのカスケード反応が形成され、最後に、生理機能が、内皮細胞の増殖、生存、移動、浸透性増加および末梢組織への浸潤などで変化する(Dong Hongchaoら、Journal of Modern Oncology、2014年9月、22巻(9号):2231~3)。
【0009】
現在、ヒトVEGF、特にVEGFA、例えばベバシズマブを標的とするいくつかのヒト化モノクローナル抗体があり、ベバシズマブは、2004年に連続して様々な腫瘍、例えば、非小細胞肺がん、腎細胞がん、子宮頸がんおよび転移性結腸直腸がんなどの治療用として米国食品医薬品局によって承認されている。
【0010】
CD279としても知られている、プログラム細胞死受容体-1(PD-1)は、I型膜貫通糖タンパク質膜表面受容体であり、CD28免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、一般に、T細胞、B細胞および骨髄細胞において発現される。PD-1には、2つの天然リガンド、PD-L1およびPD-L2がある。PD-L1およびPD-L2は両方ともB7スーパーファミリーに属しており、非造血細胞および様々な腫瘍細胞を含む、様々な細胞の膜表面で構成的または誘導的に発現される。PD-L1は、主に、T細胞、B細胞、DCおよび微小血管内皮細胞、ならびに様々な腫瘍細胞で発現されるが、PD-L2は、抗原提示細胞、例えば樹状細胞およびマクロファージでのみ発現される。PD-1とそのリガンドとの間の相互作用は、リンパの活性化、T細胞の増殖、ならびにサイトカイン、例えばIL-2およびIFN-γの分泌を抑制することができる。
【0011】
多くの研究から、腫瘍微細環境は腫瘍細胞を免疫細胞による損傷から保護することができること、腫瘍微細環境に浸潤したリンパ球におけるPD-1の発現がアップレギュレートされること、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、結腸がんおよび神経膠腫などの様々な原発腫瘍組織が免疫組織化学分析においてPD-L1陽性であることが明らかになっている。それと同時に、腫瘍におけるPD-L1の発現は、がん患者の予後不良と有意に関連している。PD-1とそのリガンドとの間の相互作用の遮断は、腫瘍特異的T細胞免疫を促進し、腫瘍細胞の免疫除去効率を増強し得る。多数の臨床試験からは、PD-1またはPD-L1を標的とする抗体がCD8 T細胞の腫瘍組織への浸潤を促進し、抗腫瘍免疫エフェクター因子、例えばIL-2、IFN-γ、グランザイムBおよびパーフォリンなどをアップレギュレートし、それによって腫瘍の増殖を効果的に抑制することができることが明らかである。
【0012】
さらに、抗PD-1抗体はまた、ウイルス慢性感染症の治療においても使用することができる。ウイルス慢性感染症は、多くの場合、ウイルス特異的エフェクターT細胞の機能の喪失とその数の減少を伴っている。PD-1とPD-L1との間の相互作用はPD-1抗体を注射することにより遮断され、それによって、ウイルス慢性感染症におけるエフェクターT細胞の枯渇を有効に抑制することができる。
【0013】
PD-1抗体の広範囲の抗腫瘍に関する可能性と驚くべき効果により、PD-1経路を標的とする抗体が様々な腫瘍の治療で:非小細胞肺がん、腎細胞がん、卵巣がんおよび黒色腫の治療において(Homet M.B.,Parisi G.ら、Anti-PD-1 Therapy in Melanoma. Semin Oncol. 2015年6月;42巻(3号):466~473頁)、ならびにリンパ腫および貧血において(Held SA,Heine Aら、Advances in immunotherapy of chronic myeloid leukemia CML. Curr Cancer Drug Targets 2013年9月;13巻(7号):768~74頁)、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復の欠損(dMMR)の腫瘍(いくつかの抗PD-1抗体薬剤が、MSI-H/dMMR特性を有する腫瘍の治療のためにFDAらによって承認されている)において、飛躍的進歩をもたらすことが業界において広く容認されている。
【0014】
抗血管新生療法および免疫チェックポイント抑制剤の現在の組合せは、多くの腫瘍において良好な効果を示す。例えば、卵巣がん(Joyce F.Liuら、JAMA Oncol.、2019;5巻(12号):1731~1738頁)、非小細胞肺がん(EGFRおよび/またはALK感受性変異型を含む非小細胞肺がん)(Manegold C,ら、J Thorac Oncol.、2017年2月;12巻(2号):194~207頁)、腎細胞がん(Dudek AZら、J Clin Oncol.、2018年;36巻(補遺;要約、4558頁))、肝細胞がん(Stein Sら、J Clin Oncol、2018年、36巻(15_補遺):4074頁;2020年にFDAによって承認された肝細胞がんの治療において使用するためのアテゾリズマブと組み合わせたベバシズマブ)、結腸直腸がん(MSI-H/dMMRおよび非MSI-H/dMMR型を含む)(Bendell JCら、Safety and efficacy of MPDL3280A (anti-PDL1) in combination with bevacizumab (bev) and/or FOLFOX in patients (pts) with metastatic colorectal cancer (mCRC).American Society of Clinical Oncology;2015年5月29日~6月2日;Chicago、IL. 2015年;要約704頁で示された;Hochster HSら、Efficacy and safety of atezolizumab (atezo) and bevacizumab (bev) in a phase Ib study of microsatellite instability (MSI)-high metastatic colorectal cancer (mCRC).American Society of Clinical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium;2017年1月19日~21日;San Francisco、CA. 2017年;要約673頁で示された)、乳がん(Yukinori Ozakiら、A multicenter phase II study evaluating the efficacy of nivolumab plus paclitaxel plus bevacizumab triple-combination therapy as a first-line treatment in patients with HER2-negative metastatic breast cancer:WJOG9917B NEWBEAT trial [要約].the 2019 San Antonio Breast Cancer Symposiumの会議記録中;2019年12月10~14日;San Antonio、TX. Philadelphia(PA):AACR;Cancer Res 2020年;80巻(4補遺):要約nr PD1-03)の治療において使用するための抗VEGF抗体(例えばベバシズマブ)およびPD-1/PD-L1抗体(例えばニボルマブ、ペムブロリズマブおよびアテゾリズマブ)の組合せ;VEGFR2抗体およびPD-1抗体の組合せはまた、胃および食道胃接合部の腺癌における良好な抗腫瘍効果を示し(Herbst RSら、Lancet Oncol.2019年;20巻(8号):1109~1123)頁;また、PD-1抗体(ペムブロリズマブ)および血管新生抑制剤(レンバチニブ)の併用レジメンは、子宮内膜がんの治療において良好な効果を示し、子宮内膜がんの治療において使用するために2019年にFDAによって承認された。黒色腫(PD-1抗体のニボルマブおよびペムブロリズマブは、黒色腫の治療において使用するためにFDAによって承認されている)、子宮頸がん(Krishnansu S.ら、N Engl J Med.、2014年;370巻:734~743頁)、神経膠腫、前立腺がん(Antonarakis ES.ら、J Clin Oncol.、2020年2月10日;38巻(5号):395~405頁)、尿路上皮がん(Joaquim Bellmunt.ら、N Engl J Med.、2017年;376巻:1015~1026頁;2017年にFDAによって承認された膀胱がんの治療において使用するためのニボルマブ)、食道がん(Kato Kら、Lancet Oncol.、2019年;20巻(11号):1506~17頁)、中皮腫(Scherpereel Aら、Lancet Oncol.、2019年;20巻(2号):239~253頁)などのために、PD-1/PDL-1抗体は良好な効果を示し、PD-1経路は腫瘍発生においてVEGF経路との相乗効果を有することを考えると、PD-1およびVEGF経路の両方を遮断する薬剤は良好な抗腫瘍効果を有すると予期され得る。
【0015】
二重特異性抗体としても知られている二重特異性抗体は、2つの異なる抗原を同時に標的とする特定の医薬であり、免疫選択精製によって製造することができる。さらに、二重特異性抗体はまた、遺伝子工学によっても製造することができ、それは結合部位の最適化、合成の型の検討および収量などの面における対応の柔軟性から特定の利点を有する。現在、二重特異性抗体は、45種を超えて存在することが示されている(Muller D, Kontermann RE. Bispecific antibodies for cancer immunotherapy: current perspectives. BioDrugs 2010;24巻:89~98頁)。多くの二重特異性抗体は、IgG-ScFv型、すなわちMorrison型で開発されており(Coloma M. J., Morrison S. L. Design and production of novel tetravalent bispecific antibodies. Nat Biotechnol.、1997;15巻:159~163頁)、天然に存在するIgG型とのその類似性と、抗体の操作、発現および精製における利点から、二重特異性抗体の理想の型のうちの1つであることが実証されている(Miller B. R., Demarest S. J.ら、Stability engineering of scFvs for the development of bispecific and multivalent antibodies. Protein Eng Des Sel 2010;23巻:549~57頁; Fitzgerald J, Lugovskoy A. Rational engineering of antibody therapeutics targeting multiple oncogene pathways. MAbs 2011;3巻:299~309頁)。
【0016】
ADCC(抗体依存性細胞媒介性傷害)とは、抗体のFab断片のウイルス感染細胞もしくは腫瘍細胞のエピトープへの結合、および抗体のFc断片のキラー細胞の表面上のFc受容体(FcR)への結合によって媒介されるキラー細胞(NK細胞、マクロファージなど)による標的細胞の死滅を意味する。
【0017】
CDC(補体依存性細胞傷害)とは、抗体の対応する細胞膜表面上の抗原への特異的結合が複合体を形成し、補体系を活性化することを意味し、これは、標的細胞の表面上でMACをさらに形成し、その後の標的細胞の溶解をもたらす。補体は、様々な細菌および他の病原体の溶解を引き起こし得、病原体の感染に対する重要な防御機構である。
【0018】
Fc受容体は、免疫グロブリンファミリーに属し、これは、特異的な免疫細胞の表面で発現されて、抗体のFc領域を認識し、免疫応答を媒介する。Fab領域が抗原を認識した後、抗体のFc領域は、免疫細胞(例えば、キラー細胞)上のFc受容体に結合して、食作用およびADCCなどの免疫細胞の応答機能を開始する。
【0019】
Fc受容体によって認識される抗体の種類および発現細胞の種類により、Fc受容体は、主に、3つの種類、FcγR、FcαRおよびFcεRに分類される。FcγRは、4つのサブタイプ、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcRn(新生児Fc受容体)にさらに分類することができる。これらの中でも、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIは、ADCC効果に密接に関連する。FcγRIIIは、ADCCを媒介する最も主たる分子であり、異なる細胞型において、2つの非常に相同なサブタイプ、FcγRIIIaおよびFcγRIIIbを有する。FcγRIIIa集団において、一塩基多型(SNP)の部位によって区別される2つのサブタイプ、高親和性を有するFcγRIIIa_V158、および低親和性を有するFcγRIIIa_F158が存在する。FcγRIは、IgGのFc領域に対してより高い親和性を有し、ADCCプロセスに関与する;FcγRIIは、FcγRIIa、FcγRIIbおよびFcγRIIc(それぞれ、CD32a、CD32bおよびCD32cとも称される)の3つのサブタイプを含み、その中でも、FcγRIIaはADCC活性を有する;FcγRIIaについて、ヒトにおいて、単一ヌクレオチド変異により、FcγRIIa_H131およびFcγRIIa_R131の2つのサブタイプが存在する(Hogarth PM、Pietersz GA. 2012年、NATURE REVIEWS DRUG DISCOVERY、11巻(4号):311~331頁)。
【0020】
IgGファミリーは、4つのメンバー、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含み、これは、重鎖定常領域の断片結晶化可能(Fc)領域中のアミノ酸において異なり、FcγRに対するそれらの異なる親和性をもたらす。IgG1は、ヒトにおいて最も大量のサブタイプであり、モノクローナル抗体医薬において使用される最も一般的なサブタイプでもある。IgG1は、様々なFcγRと結合することができ、ADCCおよびCDC効果を誘導することができる。IgG2は、FcγRに対して最も低い親和性を有するが、FcγRIIaとの結合によって、単球媒介ADCCをさらに誘導することができる。IgG3は、FcγRに対する最も高い結合能力を特徴とし、ADCC、およびIgG1よりも高いCDC効果を誘導することができる。IgG4分子は、FcγRI以外のFcγRに弱く結合し、IgG4分子は、CDCおよびNK細胞媒介ADCCを引き起こすより低い可能性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
現在のところ、抗PD-1-抗VEGFA二重特異性抗体が結合する免疫細胞に対する抗体媒介性のADCCおよび/またはCDC活性によって引き起こされる損傷を低減または排除し、抗体薬剤の効果を改善する、新規な抗PD-1-抗VEGFA二重特異性抗体を開発する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
概要
集中的な研究および創意的取り組みによって、本発明者らは、それに応じて、抗PD-1-抗VEGFA抗体構造のFc断片を改変して、Fc領域のFc受容体への結合能力を低減し、それによって、免疫細胞におけるADCCおよびCDCの毒性および副作用を低減し、抗PD-1-抗VEGFA抗体薬剤の薬剤効果を増加させた。
【0023】
本発明を以下に詳述する。
本発明の一態様は、
PD-1を標的とする第1のタンパク質機能領域と、
VEGFAを標的とする第2のタンパク質機能領域
を含む二重特異性抗体であって;
第1のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、第2のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であるか;または第1のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、第2のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり;
免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
または、
免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
免疫グロブリンがヒトIgG1サブタイプのものであり;
EU番号方式に従って、免疫グロブリンの重鎖定常領域が、234、235および237位のいずれか2または3つに変異を有し、二重特異性抗体のFcγRIIIaおよび/またはC1qに対する親和定数が、変異前の親和定数と比較して、変異後に低減されており;好ましくは、親和定数が、Fortebio Octetシステムによって測定される、
二重特異性抗体に関する。
【0024】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体について、EU番号方式に従って、免疫グロブリンの重鎖定常領域は、以下の変異:
L234AおよびL235A;または
L234AおよびG237A;または
L235AおよびG237A;
または
L234A、L235AおよびG237A
を有する。
【0025】
本発明では、別段の定めがない限り、位置番号の前の文字は変異前のアミノ酸を表し、位置番号の後の文字は変異後のアミノ酸を表す。
【0026】
本発明は、
PD-1を標的とする第1のタンパク質機能領域と、
VEGFAを標的とする第2のタンパク質機能領域
を含む二重特異性抗体であって;
第1のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、第2のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であるか;または第1のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、第2のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり;
免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
または、
免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
免疫グロブリンがヒトIgG1サブタイプのものである、
二重特異性抗体にさらに関する。
【0027】
本発明は、
PD-1を標的とする第1のタンパク質機能領域と、
VEGFAを標的とする第2のタンパク質機能領域
を含む二重特異性抗体であって;
第1のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、第2のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であるか;または第1のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、第2のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり;
免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
または、
免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
免疫グロブリンがヒトIgG1サブタイプのものであり;
EU番号方式に従って、免疫グロブリンの重鎖定常領域が、以下の変異:
L234AおよびL235A;または
L234AおよびG237A;または
L235AおよびG237A;または
L234A、L235AおよびG237A
を有する、
二重特異性抗体にさらに関する。
【0028】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体について、EU番号方式に従って、免疫グロブリンの重鎖定常領域は、
N297A、D265A、D270A、P238D、L328E、E233D、H268D、P271G、A330R、C226S、C229S、E233P、P331S、S267E、L328F、A330L、M252Y、S254T、T256E、N297Q、P238S、P238A、A327Q、A327G、P329A、K322A、T394D、G236R、G236A、L328R、A330S、P331S、H268A、E318AおよびK320A
から選択される1つまたは複数の変異を有するか、またはさらに有する。
【0029】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、
免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5および配列番号9から選択され、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7、配列番号11および配列番号17から選択され;
または、
免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5および配列番号9から選択され、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7、配列番号11および配列番号17から選択され;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されている、
二重特異性抗体が提供される。
【0030】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体は、以下の(1)~(12):
(1)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7に記載されている;
(2)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11に記載されている;
(3)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号17に記載されている;
(4)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7に記載されている;
(5)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11に記載されている;
(6)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号17に記載されている;
(7)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されている;
(8)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されている;
(9)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号5に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号17に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されている;
(10)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されている;
(11)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号11に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されている;および
(12)免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号17に記載されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号3に記載されている
のいずれか1つから選択される。
【0031】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、
免疫グロブリンの重鎖のアミノ酸配列が配列番号24に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖のアミノ酸配列が配列番号26に記載されている、
二重特異性抗体が提供される。
【0032】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体は、IgG-scFvの形態、すなわち、Morrisonフォーマットである。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の1つまたは複数の実施形態における二重特異性抗体について、
免疫グロブリンの重鎖定常領域は、ヒトIgガンマ-1鎖C領域またはヒトIgガンマ-4鎖C領域であり、免疫グロブリンの軽鎖定常領域はヒトIgカッパ鎖C領域である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、免疫グロブリンの定常領域はヒト化されている。例えば、重鎖定常領域はIgガンマ-1鎖C領域、ACCESSION:P01857であり、軽鎖定常領域はIgカッパ鎖C領域、ACCESSION:P01834であるか;または、免疫グロブリンの重鎖定常領域はIgガンマ-4鎖C領域、ACCESSION:P01861.1であり、免疫グロブリンの軽鎖定常領域はIgカッパ鎖C領域、ACCESSION:P01834である。
【0035】
本発明の一実施形態では、重鎖定常領域Igガンマ-1鎖C領域(ACCESSION:P01857)のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号40)
本発明の一実施形態では、重鎖定常領域Igガンマ-4鎖C領域(ACCESSION:P01861.1)のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号41)
本発明の一実施形態では、軽鎖定常領域Igカッパ鎖C領域(ACCESSION:P01834)のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号42)
本発明のいくつかの実施形態では、一本鎖抗体が免疫グロブリンの重鎖のC末端に連結されている、二重特異性抗体が提供される。免疫グロブリンは2つの重鎖を有するので、2つの一本鎖抗体分子は1つの免疫グロブリン分子に連結される。好ましくは、2つの一本鎖抗体分子は同一である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、2つの一本鎖抗体が存在し、それぞれの一本鎖抗体の1つの末端が免疫グロブリンの2つの重鎖のうちの1つのC末端またはN末端に連結されている、二重特異性抗体が提供される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、ジスルフィド結合は、一本鎖抗体のVとVの間に存在する。抗体のVHとVLの間にジスルフィド結合を導入する方法は、当技術分野においては周知であり、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,747,654号;Rajagopalら、Prot. Engin.、10巻(1997)1453~1459頁;Reiterら、Nat. Biotechnol.、14巻(1996)1239~1245頁;Reiterら、Protein Engineering、8巻(1995)1323~1331頁;Webberら、Molecular Immunology、32巻(1995)249~258頁;Reiterら、Immunity、2巻(1995)281~287頁;Reiterら、JBC、269巻(1994)18327~18331頁;Reiterら、Inter. J. of Cancer、58巻(1994)142~149頁;またはReiterら、Cancer Res.54巻(1994)2714~2718頁を参照されたい。
【0038】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、第1のタンパク質機能領域が、直接的に、またはリンカー断片によって、第2のタンパク質機能領域に連結されているか;および/または一本鎖抗体の重鎖可変領域が、直接的に、またはリンカー断片によって、一本鎖抗体の軽鎖可変領域に連結されている、二重特異性抗体が提供される。
【0039】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体について、リンカー断片は(GGGGS)nであり、nは正の整数である;好ましくは、nは1、2、3、4、5、または6である。
【0040】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体について、第1のタンパク質機能領域および第2のタンパク質機能領域の数は、それぞれ独立して、1、2またはそれ以上である。
【0041】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、一本鎖抗体が免疫グロブリンの重鎖のC末端に連結されている、二重特異性抗体が提供される。
【0042】
本発明は、
PD-1を標的とする第1のタンパク質機能領域と、
VEGFAを標的とする第2のタンパク質機能領域
を含む二重特異性抗体であって;
第1のタンパク質機能領域の数が1であり、第2のタンパク質機能領域の数が2であり;
第1のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、第2のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であり;
免疫グロブリンの重鎖のアミノ酸配列が配列番号24に記載されており、免疫グロブリンの軽鎖のアミノ酸配列が配列番号26に記載されており;
一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号17に記載されており;
一本鎖抗体が免疫グロブリンの重鎖のC末端に連結されており;
第1のタンパク質機能領域が、第1のリンカー断片によって、第2のタンパク質機能領域に連結されており;一本鎖抗体の重鎖可変領域が、第2のリンカー断片によって、一本鎖抗体の軽鎖可変領域に連結されており;第1のリンカー断片および第2のリンカー断片が同一または異なり;
好ましくは、第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が、独立して、配列番号18および配列番号19から選択され;
好ましくは、第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が、配列番号18に記載されている、
二重特異性抗体にさらに関する。
【0043】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片が、約10-6M未満、例えば約10-7M、10-8M未満または10-9M以下の親和定数でFcγRIに結合し;好ましくは、親和定数が、Fortebio Octetシステムによって測定される、二重特異性抗体が提供される。
【0044】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片が、約10-9M未満、例えば約10-7M、10-8M未満または10-9M以下の親和定数でC1qに結合し;好ましくは、親和定数が、Fortebio Octetシステムによって測定される、二重特異性抗体が提供される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体が10-5M未満、例えば10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M以下または未満のKでVEGFAタンパク質および/またはPD-1タンパク質に結合し;好ましくは、KがFortebioシステムによって測定される、二重特異性抗体が提供される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体が1nM未満、0.5nM未満、0.2nM未満、0.15nM未満、または0.14nM未満のEC50でVEGFAタンパク質に結合し;好ましくは、EC50が間接的ELISAによって検出され;
および/または、
二重特異性抗体が1nM未満、0.5nM未満、0.2nM未満、0.17nM未満、0.16nM未満または0.15nM未満のEC50でPD-1タンパク質に結合し;好ましくは、EC50が間接的ELISAによって検出される、
二重特異性抗体が提供される。
【0047】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体はモノクローナル抗体である。
【0048】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体はヒト化抗体である。
本発明の別の態様は、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体をコードする単離された核酸分子に関する。
【0049】
本発明のさらに別の態様は、本明細書に開示される単離された核酸分子を含むベクターに関する。
【0050】
本発明のさらに別の態様は、本明細書に記載される単離された核酸分子またはベクターを含む宿主細胞に関する。
【0051】
本発明の別の態様は、抗体またはその抗原結合断片と複合部分を含む複合体であって、免疫グロブリンが本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体であり、複合部分が検出可能な標識であり;好ましくは、複合部分が放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、発色物質または酵素である、複合体に関する。
【0052】
本発明の別の態様は、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体を含むか、または本発明の複合体を含むキットであって;
好ましくは、キットが、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片を特異的に認識することが可能な二次抗体をさらに含み;任意選択で、二次抗体が、検出可能な標識、例えば、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、発色物質または酵素をさらに含む、
キットに関する。
【0053】
本発明のさらに別の態様は、サンプル中のPD-1および/またはVEGFAの存在またはレベルを検出するためのキットの調製における、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または複合体の使用に関する。
【0054】
本発明の別の態様は、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または複合体を含む、医薬組成物に関し;任意選択で、医薬組成物は、薬学的に許容されるベクターおよび/または賦形剤をさらに含む。
【0055】
本発明の二重特異性抗体または本発明の医薬組成物は、製薬の分野において公知の任意の剤形、例えば、錠剤、丸剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、ゲル、カプセル、粉末、顆粒、エリキシル、トローチ、坐薬、注射剤(注射溶液、注射用滅菌粉末および注射用濃縮溶液を含む)、吸入剤、ならびに噴霧剤などに製剤化することができる。好ましい剤形は、投与および治療用途の意図した様式によって決まる。本発明の医薬組成物は、製造条件および保存条件下で無菌であり安定化するものとする。好ましい剤形の1つは、注射剤である。そのような注射剤は、無菌注射溶液であり得る。例えば、無菌注射溶液は、以下の方法によって調製することができる:本発明の必要量の二重特異性抗体が適切な溶媒に加えられ、任意選択で、他の所望する成分(限定するものではないが、pH調節剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、等張剤、保存剤、希釈剤、またはそれら任意の組合せを含む)が同時に加えられ、続いて濾過および滅菌される。さらに、滅菌注射溶液は、便利な保存および使用のために、無菌凍結乾燥粉末剤(例えば真空乾燥または凍結乾燥による)として調製することができる。そのような無菌凍結乾燥粉末剤は、使用前に、適切なベクター(例えば、無菌発熱性物質除去蒸留水)に分散させることができる。
【0056】
さらに、本発明の二重特異性抗体は、投与を容易にするために、単位用量剤形の医薬組成物中に存在させることができる。いくつかの実施形態では、単位用量は、少なくとも1mg、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、または少なくとも100mgである。医薬組成物が液体(例えば注射)剤形である場合、それは本発明の二重特異性抗体を少なくとも0.1mg/mL、例えば、少なくとも0.25mg/mL、少なくとも0.5mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも2.5mg/mL、少なくとも5mg/mL、少なくとも8mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも15mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも75mg/mL、または少なくとも100mg/mLなどの濃度で含むことができる。
【0057】
本発明の二重特異性抗体または医薬組成物は、限定するものではないが、経口経路、口腔経路、舌下経路、眼内経路、局所経路、非経口経路、直腸経路、髄腔内経路、嚢内経路、鼠蹊部経路、膀胱内経路、局所経路(例えば粉末剤、軟膏もしくは点滴剤)、または経鼻経路を含む、当技術分野において公知の任意の適切な方法によって投与され得る。しかし、多くの治療用途においては、投与の好ましい経路/形式は、非経口である(例えば、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射および筋肉内注射)。投与の経路および/または形式が意図した目的に応じて変わるということは、当業者には認識されよう。好ましい実施形態では、本発明の二重特異性抗体または医薬組成物は、静脈点滴または注射によって投与される。
【0058】
本明細書で提供された二重特異性抗体または医薬組成物は、単独でもしくは組合せて使用することができるか、または追加の薬学的に有効な薬剤(例えば腫瘍化学療法剤)と組み合わせて使用することができる。そのような追加の薬学的に有効な薬剤は、本発明の二重特異性抗体または本発明の医薬組成物の投与前に、その投与と同時に、あるいはその投与後に投与することができる。
【0059】
本発明では、投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答または予防応答)を達成するように調節され得る。例えば、それは単回投与であってもよく、ある期間にわたっての複数回投与であってもよく、また、治療の緊急程度に伴って用量を比例して低減または増加させることを特徴とし得る。
【0060】
本発明のまたさらなる態様は、悪性腫瘍を治療および/または予防するための医薬の調製における、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または本発明に記載の複合体の使用であって;好ましくは、悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺癌、食道胃接合部腺癌ならびに白血病から選択され;
好ましくは、肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、非小細胞肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、肝臓がんが肝細胞がんであり;
好ましくは、腎腫瘍が腎細胞がんであり;
好ましくは、乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、尿路上皮がんが膀胱がんである、
使用に関する。
【0061】
本発明のさらに別の態様は、以下の医薬の調製における、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または本発明に記載の複合体の使用に関する:
(1)サンプル中のVEGFAのレベルを検出するための医薬もしくは薬剤、
VEGFAのVEGFR2への結合を遮断するための医薬もしくは薬剤、
VEGFAの活性もしくはレベルをダウンレギュレートするための医薬もしくは薬剤、
血管内皮細胞増殖に対するVEGFAの刺激を軽減するための医薬もしくは薬剤、
血管内皮細胞増殖を抑制するための医薬もしくは薬剤、または、
腫瘍血管新生を遮断するための医薬もしくは薬剤;
ならびに/あるいは、
(2)PD-1のPD-L1への結合を遮断するための医薬もしくは薬剤、
PD-1の活性もしくはレベルをダウンレギュレートするための医薬もしくは薬剤、
生体におけるPD-1の免疫抑制を軽減するための医薬もしくは薬剤、
Tリンパ球におけるIFN-γ分泌を促進するための医薬もしくは薬剤、または、
Tリンパ球におけるIL-2分泌を促進するための医薬もしくは薬剤
の調製における、本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体または本発明の複合体の使用に関する。
【0062】
本発明のin vitro実験では、抗VEGFA抗体および抗VEGFA抗PD-1二重特異性抗体は両方とも、HUVEC細胞の増殖を抑制することができ、抗PD-1抗体および抗VEGFA抗PD-1二重特異性抗体は両方とも、IFN-γおよび/またはIL-2の分泌を促進し、免疫反応を活性化することができる。
【0063】
本発明のさらに別の態様は、悪性腫瘍を治療および/または予防する方法であって、有効量の本発明のいずれかの実施形態に記載の二重特異性抗体、または本発明に記載の複合体をそれを必要とする対象に投与するステップを含み;好ましくは、悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺癌、食道胃接合部腺癌ならびに白血病から選択され;
好ましくは、肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、非小細胞肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、肝臓がんが肝細胞がんであり;
好ましくは、腎腫瘍が腎細胞がんであり;
好ましくは、乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、尿路上皮がんが膀胱がんである、
方法に関する。
【0064】
本発明の二重特異性抗体の治療有効量または予防有効量の非限定的な典型的範囲は、0.02~50mg/kg、例えば0.1~50mg/kg、0.1~25mg/kgまたは1~10mg/kgである。用量は、治療しようとする病状のタイプおよび重症度に応じて変わり得ることに留意されたい。さらに、任意の特定の患者に関して、特定の投与レジメンが患者の必要性および医師の専門的判断によって経時的に調節され;本明細書で示した用量範囲が単なる説明目的のためであり、本発明の医薬組成物の使用および範囲を限定するものではないことは、当業者には理解されよう。
【0065】
本発明では、対象は哺乳動物、例えばヒトであり得る。
本発明のさらに別の態様は、
(1)サンプル中のVEGFAのレベルを検出する方法、
VEGFAのVEGFR2への結合を遮断する方法、
VEGFAの活性もしくはレベルをダウンレギュレートする方法、
血管内皮細胞増殖に対するVEGFAの刺激を軽減する方法、
血管内皮細胞増殖を抑制するための医薬または薬剤を調製する方法、または、
腫瘍血管新生を遮断する方法;
ならびに/あるいは、
(2)PD-1のPD-L1への結合を遮断する方法、
PD-1の活性もしくはレベルをダウンレギュレートする方法、
生体におけるPD-1の免疫抑制を軽減する方法、
Tリンパ球におけるIFN-γ分泌を促進する方法、または、
Tリンパ球におけるIL-2分泌を促進する方法
から選択される、in vivoでの方法またはin vitroでの方法に関する。
【0066】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体または複合体は、悪性腫瘍の治療および/または予防において使用され;好ましくは、悪性腫瘍は結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺癌、食道胃接合部腺癌ならびに白血病から選択され;
好ましくは、肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、非小細胞肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、肝臓がんが肝細胞がんであり;
好ましくは、腎腫瘍が腎細胞がんであり;
好ましくは、乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、尿路上皮がんが膀胱がんである。
【0067】
本発明の1つまたは複数の実施形態では、二重特異性抗体または複合体は、
(1)サンプル中のVEGFAのレベルの検出、
VEGFAのVEGFR2への結合の遮断、
VEGFAの活性もしくはレベルのダウンレギュレート、
血管内皮細胞増殖に対するVEGFAの刺激の軽減、
血管内皮細胞増殖の抑制、または、
腫瘍血管新生の遮断;
ならびに/あるいは、
(2)PD-1のPD-L1への結合の遮断、
PD-1の活性もしくはレベルのダウンレギュレート、
生体におけるPD-1の免疫抑制の軽減、
Tリンパ球におけるIFN-γ分泌の促進、または、
Tリンパ球におけるIL-2分泌の促進
のために使用される。
【0068】
抗体薬剤、特にモノクローナル抗体は、各種疾患の治療において良好な効果を達成した。これらの治療用抗体を取得するための従来の実験方法は、動物を抗原で免疫にすること、免疫動物において抗原を標的とする抗体を得ること、または抗原に対して親和性の低いそれらの抗体を親和性成熟によって改良することである。
【0069】
軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原の結合を決定する;それぞれの鎖の可変領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域を含む。重鎖(H鎖)のCDRはHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、軽鎖(L鎖)のCDRはLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、なお、これらはKabatらによって命名されており、Bethesda M.d.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、NIH Publication 1991、(1~3巻):91~3242頁を参照されたい。
【0070】
好ましくは、CDRはまたIMGT番号方式によっても規定することができ、Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas,およびMarie-Paule Lefranc. 「IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign:a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF.」 Nucleic acids research 38巻.補遺1(2009):D301~D307頁を参照されたい。
【0071】
下記の(1)~(13)のモノクローナル抗体配列のCDR領域のアミノ酸配列は、当業者に周知の技術的手段によって、例えばVBASE2データベースによって、またIMGT規定に従って分析されたが、それらの結果は以下のとおりである:
(1)ベバシズマブ
重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号1に記載されており、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号3に記載されている。
【0072】
重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
HCDR1:GYTFTNYG(配列番号28)
HCDR2:INTYTGEP(配列番号29)
HCDR3:AKYPHYYGSSHWYFDV(配列番号30)
軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
LCDR1:QDISNY(配列番号31)
LCDR2:FTS(配列番号32)
LCDR3:QQYSTVPWT(配列番号33)
(2)14C12、14C12H1L1または14C12H1L1(M)
重鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
HCDR1:GFAFSSYD(配列番号34)
HCDR2:ISGGGRYT(配列番号35)
HCDR3:ANRYGEAWFAY(配列番号36)
軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
LCDR1:QDINTY(配列番号37)
LCDR2:RAN(配列番号38)
LCDR3:LQYDEFPLT(配列番号39)
(3)VP101(hG1WT)またはVP101(hG1DM)
重鎖の9つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
HCDR1:GYTFTNYG(配列番号28)
HCDR2:INTYTGEP(配列番号29)
HCDR3:AKYPHYYGSSHWYFDV(配列番号30)
HCDR4:GFAFSSYD(配列番号34)
HCDR5:ISGGGRYT(配列番号35)
HCDR6:ANRYGEAWFAY(配列番号36)
HCDR7:QDINTY(配列番号37)
HCDR8:RAN(配列番号38)
HCDR9:LQYDEFPLT(配列番号39)
軽鎖可変領域の3つのCDR領域のアミノ酸配列は、以下のとおりである:
LCDR1:QDISNY(配列番号31)
LCDR2:FTS(配列番号32)
LCDR3:QQYSTVPWT(配列番号33)
本発明の抗体VP101(hG1DM)について、アミノ酸の変異は、VP101(hG1WT)の非可変領域に導入される。EU番号方式に従って、アミノ酸の変異は、234および235位に導入され、VP101(hG1DM)は、重鎖のヒンジ領域において、234位にロイシンとアラニンの点変異(L234A)、および235位にロイシンとアラニンの点変異(L235A)を導入することによって得られる。
【0073】
本発明では、別段の規定のない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用される細胞培養、分子遺伝学、核酸化学および免疫学の実験室での操作は、対応する分野で広く使用されている日常的な方法である。それと同時に、本発明をより理解するために、関連用語の規定および説明を以下で提供する。
【0074】
本明細書で使用される場合、VEGFAタンパク質(GenBank ID:NP_001165097.1)のアミノ酸配列に言及する場合には、これは完全長のVEGFAタンパク質、ならびにVEGFAの融合タンパク質、例えば、マウスIgGまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)に融合された断片を含む。しかし、VEGFAタンパク質のアミノ酸配列で、変異または変種(限定するものではないが、置換、欠失および/または付加を含む)が、その生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然で生成され得るか、または人工的に導入され得ることは当業者には理解されよう。したがって、本発明では、用語「VEGFAタンパク質」とは、それらの天然バリアントまたは人工バリアントを含む、すべてのそのような配列を含んでいるものとする。さらに、VEGFAタンパク質の配列断片を記載する場合、これはまたその天然バリアントまたは人工バリアントの対応する配列断片も含む。本発明の一実施形態では、VEGFAタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号33の下線部分として示されている(最後の6個のHisがない、合計で302アミノ酸)。
【0075】
本明細書で使用される場合、VEGFR2タンパク質(KDRとしても知られている、GenBank ID:NP_002244)のアミノ酸配列に言及する場合には、これは完全長のVEGFR2タンパク質、またはVEGFR2の細胞外断片VEGFR2-ECD、またはVEGFR2-ECDを含む断片を含み、またさらに、これはVEGFR2-ECDの融合タンパク質、例えば、マウスIgGまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)に融合された断片を含む。しかし、VEGFR2タンパク質のアミノ酸配列で、変異または変種(限定するものではないが、置換、欠失および/または付加を含む)が、その生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然で生成され得るか、または人工的に導入され得ることは当業者には理解されよう。したがって、本発明では、用語「VEGFR2タンパク質」とは、それらの天然バリアントまたは人工バリアントを含む、すべてのそのような配列を含んでいるものとする。さらに、VEGFR2タンパク質の配列断片を記載する場合、これはまたその天然バリアントまたは人工バリアントの対応する配列断片も含む。本発明の一実施形態では、VEGFR2の細胞外断片VEGFR2-ECDのアミノ酸配列は、配列番号34に記載されている(766アミノ酸)。
【0076】
本明細書で使用される場合、別段の明示のない限り、VEGFRは、VEGFR1および/またはVEGFR2である;その特定のタンパク質配列は先行技術において公知の配列であり、既存の文献またはGenBankで開示されている配列を参照することができる。例えば、VEGFR1(VEGFR1、NCBI Gene ID:2321);VEGFR2(VEGFR2、NCBI Gene ID:3791)。
【0077】
本明細書で使用される場合、PD-1タンパク質(プログラム細胞死タンパク質1、NCBI GenBank:NM_005018)のアミノ酸配列に言及する場合には、これは完全長のPD-1タンパク質、またはPD-1の細胞外断片PD-1ECD、またはPD-1ECDを含む断片を含み、これは、PD-1ECDの融合タンパク質、例えば、マウスIgGまたはヒトIgGのFcタンパク質断片(mFcまたはhFc)に融合された断片をさらに含む。しかし、PD-1タンパク質のアミノ酸配列で、変異または変種(限定するものではないが、置換、欠失および/または付加を含む)が、その生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然で生成され得るか、または人工的に導入され得ることは当業者には理解されよう。したがって、本発明では、用語「PD-1タンパク質」とは、それらの天然バリアントまたは人工バリアントを含む、すべてのそのような配列を含んでいるものとする。さらに、PD-1タンパク質の配列断片を記載する場合、これはまたその天然バリアントまたは人工バリアントの対応する配列断片も含む。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語のEC50とは、最大効果の50%に対する濃度、すなわち、最大効果の50%を引き起こす濃度を意味する。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、一般に2対のポリペプチド鎖(各対は「軽」(L)鎖および「重」(H)鎖を有する)からなる免疫グロブリン分子を意味する。一般的な意味において、重鎖は、抗体中のより大きな分子量を有するポリペプチド鎖として解釈することができ、軽鎖は、抗体中のより小さな分子量を有するポリペプチド鎖を意味する。軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、αまたはεとして一般に分類され、抗体のアイソタイプは、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして規定される。軽鎖および重鎖において、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、約3個以上のアミノ酸の「D」領域も含む。各重鎖は、重鎖可変領域(V)および重鎖定常領域(C)からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(V)および軽鎖定常領域(C)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCからなる。抗体の定常領域は、古典的補体系の第1の成分(C1q)への免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)の結合を含む、免疫グロブリンの宿主組織または因子への結合を媒介し得る。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存領域の間に分散される、高度可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)へとさらに細分化され得る。それぞれのVおよびVは、以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、アミノ末端からカルボキシル末端へ配置されている3個のCDRおよび4個のFRからなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VおよびV)は、抗体結合部位を形成する。領域またはドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1987および1991))、またはChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196巻(1987):901~917頁;Chothiaら Nature 342巻(1989):878~883頁、あるいはIMGT番号方式の規定、Ehrenmann, Francois, Quentin Kaas,およびMarie-Paule Lefranc. 「IMGT/3Dstructure-DB and IMGT/DomainGapAlign: a database and a tool for immunoglobulins or antibodies, T cell receptors, MHC, IgSF and MhcSF.」 Nucleic acids research 38巻 補遺1(2009):D301~D307頁を参照、に基づき得る。特に、重鎖はまた、3個よりも多くの、例えば6、9、または12個のCDRを含んでいてもよい。例えば、本発明の二重特異性抗体では、重鎖は、別の抗体に連結されたIgG抗体の重鎖のC末端を有するScFvであってもよく、またこの場合、重鎖は9個のCDRを含む。用語「抗体」は、抗体を産生するためのいずれかの特定の方法によって限定されるものではない。例えば、抗体は、特に、組換え抗体、モノクローナル抗体およびポリクロナール抗体を含む。抗体は、異なるアイソタイプの抗体、例えばIgG(例えば、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgMであり得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部分」としても知られている、用語「抗原結合断片」とは、完全長抗体が結合するのと同じ抗原に特異的に結合し、および/または抗原への特異的結合について完全長抗体と競合する能力を維持する、完全長抗体の断片を含むポリペプチドを意味している。全体的には、Fundamental Immunology、Ch.7(Paul, W.編、第2版、Raven Press、 N.Y.(1989)を参照されたい。抗体の抗原結合断片は、組換えDNA技術により、またはインタクト抗体の酵素的切断または化学的切断によって生成することができる。いくつかの場合には、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、dAb、および相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体断片(例えばscFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、およびポリペプチドに特異的抗原結合能力を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むポリペプチドを含む。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「Fd断片」とは、VドメインおよびCH1ドメインからなる抗体断片を意味し;用語「Fv断片」とは、抗体の単一アームのVドメインおよびVドメインからなる抗体断片を意味し;用語「dAb断片」は、Vドメインからなる抗体断片を意味し(Wardら、Nature 341巻(1989):544~546頁);用語「Fab断片」とは、Vドメイン、Vドメイン、CドメインおよびCH1ドメインからなる抗体断片を意味し;用語「F(ab’)断片」とは、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結されている2つのFab断片を含む抗体断片を意味する。
【0082】
いくつかの場合においては、抗体の抗原結合断片は、VドメインとVドメインが対形成され、単一ポリペプチド鎖の生成を可能にするリンカーを介して1価分子を形成されている、一本鎖抗体(例えばscFv)である(例えば、Birdら、Science 242巻(1988):423~426頁、およびHustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻(1988):5879~5883頁を参照)。このようなscFv分子は、一般構造:NH-V-リンカー-V-COOHまたはNH-V-リンカー-V-COOHを有し得る。先行技術における適切なリンカーは、反復GGGGSアミノ酸配列またはそのバリアントからなる。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)を有するリンカーを使用することができ、また、そのバリアントも使用することができる(Holligerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻(1993):6444~6448頁)。本発明において有用である他のリンカーは、Alfthanら、Protein Eng. 8巻(1995):725~731頁、Choiら、Eur. J. Immunol.、31巻(2001):94~106頁、Huら、Cancer Res. 56巻(1996):3055~3061頁、Kipriyanovら、J. Mol. Biol.、293巻(1999):41~56頁、およびRooversら、Cancer Immunol.(2001)によって開示されている。
【0083】
いくつかの場合においては、抗体の抗原結合断片は、VドメインとVドメインが単一ポリペプチド鎖で発現される、ダイアボディ、すなわち二価抗体である。しかし、使用されるリンカーが短すぎるので同じ鎖の2つのドメインは対形成することができず、そのため、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対形成することとなり、2つの抗原結合部位が生成される(例えば、Holliger P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻(1993):6444~6448頁、およびPoljak R.J.ら、Structure 2巻(1994):1121~1123頁を参照)。
【0084】
抗体の抗原結合断片(例えば、上記で言及した抗体断片)は、当業者に公知の従来の技術(例えば、組換えDNA技術、または酵素的もしくは化学的切断)を使用することにより、所定の抗体から得ることができ、抗体の抗原結合断片は、インタクト抗体の場合と同じように特異性についてスクリーニングすることができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、文脈において明らかに規定されない限り、用語「抗体」に言及する場合には、それはインタクト抗体だけでなく、抗体の抗原結合断片も含む。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語の「mAb」および「モノクローナル抗体」とは、自然発生的に起こり得る自然突然変異を除き、非常に同種な抗体の群に由来する、すなわち、同一の抗体分子の群に由来する抗体またはその断片を意味する。モノクローナル抗体は、抗原上の単一エピトープに対して高特異的である。ポリクロナール抗体は、モノクローナル抗体に対して、一般に抗原上の異なるエピトープを認識する少なくとも2つ以上の異なる抗体を一般に含む。モノクローナル抗体は、一般に、Kohlerら(Nature、256号:495頁、1975)によって最初に報告されたハイブリドーマ技術によって得ることができ、また組換えDNA技術によっても得ることができる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ抗体」とは、軽鎖および/または重鎖の一部が(特定の種に由来し得るか、特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属し得る)抗体に由来し、軽鎖および/または重鎖の別の部分が(同一のもしくは異なる種に由来し得るか、同一のもしくは異なる抗体クラスもしくはサブクラスに属し得る)別の抗体に由来する、抗体を意味する。しかしいずれの場合にも、これは、標的抗原に対する結合活性を保持する米国特許第4,816,567号(Cabillyら);Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81号(1984):6851~6855頁)。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」とは、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)のCDR領域のすべてまたは一部が、ヒト以外の抗体(ドナー抗体)のCDR領域と置き換えられる場合に得られた抗体または抗体断片であって、そのドナー抗体が、予期した特異性、親和性または反応性を有する非ヒト(例えばマウス、ラットまたはウサギ)抗体であり得る、抗体または抗体断片を意味する。さらに、受容体抗体のフレームワーク領域(FR)の一部のアミノ酸残基はまた、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基と置き換えることができるか、または抗体の性能をさらに改善もしくは最適化する他の抗体のアミノ酸残基と置き換えることができる。ヒト化抗体についてのさらなる詳細については、例えば、Jonesら、Nature、1986、321巻:522~525頁;Reichmannら、Nature、1998、332巻:323~329頁;Presta、Curr. Op. Struct. Biol.、1992、2巻:593~596頁、およびClark、Immunol. Today 2000、21巻:397~402頁を参照されたい。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」とは、免疫グロブリンまたは抗体が特に結合する抗原上の部位を意味する。「エピトープ」はまた、本分野において「抗原決定基」とも称される。エピトープまたは抗原決定基は、一般に、分子の化学的に活性のある表面基、例えばアミノ酸または炭水化物または糖側鎖などからなり、通常、特異的な三次元構造特性および特異的な電荷特性を有する。例えば、エピトープは、一般に、特有の空間的立体構造に少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続または非連続のアミノ酸を含んでおり、これは「直鎖状」または「立体構造的」であり得る。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、66巻、G. E. Morris編(1996)を参照されたい。直鎖エピトープにおいて、タンパク質と相互作用分子(例えば抗体)との間のすべての相互作用部位は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直鎖状に位置する。立体構造的なエピトープにおいては、相互作用部位は、相互に隔てられているタンパク質のアミノ酸残基にわたって位置する。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語の「単離された」とは、自然状態から人工的手段によって得られることを意味する。ある特定の「単離された」物質または成分が天然に生じる場合、その自然環境に変化が生じる場合、または自然環境から単離される場合、またはその両方の場合であり得る。例えば、ある特定の単離されていないポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、ある特定の生存動物において自然に起こり、そのような自然状態で単離された高純度の同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドと称される。用語の「単離された」は、その物質の活性に影響を及ぼさない、人工物質もしくは合成物質、または他の不純物の存在を除外しない。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」とは、ポリヌクレオチドが挿入され得る核酸ビヒクルを意味する。挿入されたポリヌクレオチドによってコードされたタンパク質をベクターが発現させることができる場合、そのベクターは発現ベクターとして言及される。ベクターは、ベクターによって保有された遺伝物質エレメントを宿主細胞において発現することができるように、形質転換、形質導入またはトランスフェクションによって宿主細胞へ導入することができる。ベクターは当業者に周知であり、限定するものではないが、プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来の人工染色体(PAC);ファージ、例えばラムダファージまたはM13ファージ、および動物ウイルスなどが含まれる。ベクターとして使用することができる動物ウイルスは、限定するものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウィルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えばSV40)を含む。ベクターは、限定するものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメントおよびレポーター遺伝子を含む、発現を調節する様々なエレメントを含有していてもよい。さらに、ベクターは複製開始部位を含んでいてもよい。
【0092】
本明細書に使用される場合、用語「宿主細胞」とは、ベクターが導入され得る細胞を意味し、限定するものではないが、原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)もしくは枯草菌(bacillus subtilis)、真菌細胞、例えば酵母細胞もしくはアスペルギルス属(aspergillus)、昆虫細胞、例えばS2ショウジョウバエ細胞もしくはSf9、または動物細胞、例えば繊維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞、またはヒト細胞が含まれる。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語の「特異的に結合する」とは、2つの分子間の非無作為の結合反応、例えば、抗体とそれが標的とする抗原との間の反応を意味する。いくつかの実施形態では、抗原(または抗原に特異的な抗体)に特異的に結合する抗体とは、抗体が約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M未満または10-10M以下の親和性(K)で抗原に結合することを意味する。本発明のいくつかの実施形態では、用語「標的」とは、特異的結合を意味する。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「K」とは、特異的抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を意味し、これは抗体と抗原との間の結合親和性を説明するために使用される。より小さな平衡解離定数は、より強い抗体-抗原結合、および抗体と抗原との間のより高い親和性を示す。一般に、例えば、BIACORE表面プラズモン共鳴(SPR)装置またはFortebioシステムで決定した場合、抗体は、約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M未満または10-10M以下の解離平衡定数(K)で抗原に結合する。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語の「モノクローナル抗体」および「mAb」は同じ意味を有しており、交換可能に使用することができる;用語の「ポリクロナール抗体」および「pAb」は同じ意味を有しており、交換可能に使用することができる;用語の「ポリペプチド」および「タンパク質」は同じ意味を有しており、交換可能に使用することができる。さらに、本明細書においては、アミノ酸は、一般に、当技術分野で公知の1文字および3文字の略語によって表される。例えば、アラニンは、AまたはAlaによって表すことができる。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される補助物質」とは、対象および活性成分と薬理学的におよび/または生理学的に適合性のあるベクターおよび/または賦形剤を意味し、それは当技術分野において周知であり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences. Gennaro AR編、第19版 Pennsylvania: Mack Publishing Company、1995を参照)、限定するものではないが、pH調節剤、界面活性剤、アジュバントおよびイオン強度促進剤が含まれる。例えば、pH調節剤は、限定するものではないが、リン酸塩緩衝液を含み;界面活性剤は、限定するものではないが、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤、例えばTween-80を含み;イオン強度促進剤は、限定するものではないが、塩化ナトリウムを含む。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「アジュバント」とは、非特異的免疫促進剤を意味し、これは抗原への生体の免疫応答を促進することができるか、または抗原と一緒にまたは事前に生体に送達される場合に、免疫応答のタイプを変化させることができる。限定するものではないが、アルミニウムアジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント(例えば完全フロイントアジュバントおよび不完全フロイントアジュバント)、コリネバクテリウム・パルヴム(corynebacterium parvum)、リポ多糖類、サイトカインなどを含む、様々なアジュバントがある。フロイントアジュバントは、動物実験において最も一般的に使用されているアジュバントである。水酸化アルミニウムアジュバントは、臨床試験においてより頻繁に使用されている。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」とは、所望の効果を得るか、または少なくとも部分的に得るのに十分な量を意味する。例えば、予防的有効量(例えば、PD-1のPD-L1への結合またはVEGFの過剰発現に関連した疾患、例えば腫瘍に対する)は、その疾患(例えば、PD-1のPD-L1への結合またはVEGFの過剰発現に関連した疾患、例えば腫瘍)の発症を予防、抑止または遅延するのに十分な量であり;治療有効量とは、その病気に罹患している患者の疾患およびその合併症を治癒するか、または少なくとも部分的に抑止するのに十分な量である。そのような有効量を決定することは、疑いもなく当業者の範囲内である。例えば、治療目的のための有効量は、治療しようとする疾患の重症度、患者自身の免疫系の全体的な状態、患者の一般的状態、例えば年齢、体重および性別、投与経路、ならびに同時に与えられる他の治療などによって決まる。
【0099】
用語「MSI」はマイクロサテライト不安定性を意味する。マイクロサテライトは、ヒトゲノム全体にわたる短いタンデムリピートであり、1、2またはそれ以上のヌクレオチドの10~50リピートを含む。腫瘍などのある特定の異常な細胞中のマイクロサテライトは、正常な細胞と比較して、リピート単位の挿入または欠失によって長さが変更されている。そのような変更はMSIと称される。不安定性および範囲に基づいて、MSIは、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)、低頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-L)、およびマイクロサテライト安定性(MSS)として分類することができる。MSIの主な原因は、DNAのミスマッチ修復(MMR)の欠損である。ヒトのミスマッチ修復遺伝子(MMR遺伝子)は、転写および翻訳により対応するミスマッチ修復タンパク質を発現することができる。任意のMMRタンパク質の非存在は、ミスマッチ修復の欠損をもたらし得、塩基対のミスマッチは、そのような欠損によりDNA複製のプロセスにおいて蓄積し、最終的にMSIをもたらす。結腸直腸がんの約15%はMSI経路が原因である。これは、結腸直腸がんにおいて最初に報告され、胃がん、食道がん、副腎皮質がんなどにおいても起こり得る(Baretti Mら、Pharmacol Ther.、2018年;189巻:45~62頁)。MSI-H/dMMR特性はまた、その後の研究において、中皮腫、肉腫、副腎皮質がん、悪性黒色腫および卵巣の胚細胞新生物においても見出された。
【0100】
MSI-HおよびdMMRは、2つの異なるアッセイの結果を表し、生物学的に一致し、MSI-H/dMMRまたはMSI-high/dMMRと呼ばれるが、MSI-LおよびMSSは、能力のあるミスマッチ修復(pMMR)の表現型である。dMMRの検出は、腫瘍検体(外科手術検体および吸引検体を含む)に基づいて、MSH2、MLH1、MSH6およびPMS2の4つのミスマッチ遺伝子についてのタンパク質発現の免疫組織化学的アッセイを実施することである。4つのタンパク質のいずれかの非存在はdMMRを確認し、4つのタンパク質すべての陽性の結果は、pMMR、すなわち、完全なミスマッチ修復機能を示す。MSIの検出は、腫瘍細胞および体細胞中の反復DNA配列(マイクロサテライト配列)の長さをマッチさせること、および長さを比較することである。5つの標準遺伝子座が、American NCI標準に基づいてPCRを使用して検出される場合、2つ以上の遺伝子座における不一致は、不安定性を示し、MSI-Hとして規定され、1つの不一致の遺伝子座はMSI-Lを示し、5つの一致した遺伝子座はMSSを示す。ハイスループット配列決定(次世代配列決定またはNGSとも称される)をマイクロサテライト不安定性を検出する方法として使用することもできる。PCRアッセイのために、より多くのマイクロサテライト遺伝子座、例えば5より多くの遺伝子座または追加のマイクロサテライト遺伝子座が選択されると、≧30%の遺伝子座における不一致はMSI-Hとして規定され、すべての遺伝子座における一致はMSSとして規定され、0~30%の不一致はMSI-Lとして規定される。
【0101】
有利な効果
本発明は、以下の技術的効果(1)~(4)の1つまたは複数を達成する:
(1)本発明の抗体のFc断片の改変は、VP101(hG1WT)、ならびにFC受容体のFcγRIおよびFcγRIIIa_F158の結合活性を完全に除去し、それによってADCC活性を完全に除去する。
【0102】
(2)本発明の抗体のFc断片の改変は、VP101(hG1WT)、ならびに補体C1qの結合活性を完全に除去し、それによってCDC活性を完全に除去する。
【0103】
(3)本発明の二重特異性抗体は、VEGFAに十分に特異的に結合することができ、VEGFAのVEGFA2への結合を効果的に遮断することができ、生体におけるVEGFAの免疫抑制および血管新生におけるVEGFAの促進効果を特異的に軽減する。
【0104】
(4)本発明の二重特異性抗体は、PD-1に十分に特異的に結合することができ、PD-1のPD-L1への結合を効果的に遮断することができ、生体におけるPD-1の免疫抑制を特異的に軽減し、免疫応答を活性化する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】VP101(hG1DM)のFcγRIに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、50nM、25nM、12.5nM、6.25nMおよび3.12nMである。
図2】ベバシズマブのFcγRIに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、50nM、25nM、12.5nM、6.25nMおよび3.12nMである。
図3】ニボルマブのFcγRIに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、50nM、25nM、12.5nM、6.25nMおよび3.12nMである。
図4】VP101(hG1WT)のFcγRIに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、50nM、25nM、12.5nM、6.25nMおよび3.12nMである。
図5】VP101(hG4WT)のFcγRIに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、50nM、25nM、12.5nM、6.25nMおよび3.12nMである。
図6】VP101(hG1DM)のFcγRIIa_H131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図7】ベバシズマブのFcγRIIa_H131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図8】ニボルマブのFcγRIIa_H131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図9】VP101(hG1WT)のFcγRIIa_H131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図10】VP101(hG4WT)のFcγRIIa_H131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図11】VP101(hG1DM)のFcγRIIa_R131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図12】ベバシズマブのFcγRIIa_R131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図13】ニボルマブのFcγRIIa_R131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図14】VP101(hG1WT)のFcγRIIa_R131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図15】VP101(hG4WT)のFcγRIIa_R131に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、200nM、100nM、50nM、25nMおよび12.5nMである。
図16】VP101(hG1DM)のFcγRIIIa_V158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図17】ベバシズマブのFcγRIIIa_V158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図18】ニボルマブのFcγRIIIa_V158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図19】VP101(hG1WT)のFcγRIIIa_V158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図20】VP101(hG4WT)のFcγRIIIa_V158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図21】VP101(hG1DM)のFcγRIIIa_F158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗原濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図22】ベバシズマブのFcγRIIIa_F158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図23】ニボルマブのFcγRIIIa_F158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図24】VP101(hG1WT)のFcγRIIIa_F158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図25】VP101(hG4WT)のFcγRIIa_F158に対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、500nM、250nM、125nM、62.5nMおよび31.25nMである。
図26】VP101(hG1DM)のC1qに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、10nM、5nM、2.5nM、1.25nMおよび0.625nMである。
図27】ベバシズマブのC1qに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、10nM、5nM、2.5nM、1.25nMおよび0.625nMである。
図28】ニボルマブのC1qに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、10nM、5nM、2.5nM、1.25nMおよび0.625nMである。
図29】VP101(hG1WT)のC1qに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗体濃度は、それぞれ、10nM、5nM、2.5nM、1.25nMおよび0.625nMである。
図30】VP101(hG4WT)のC1qに対する親和定数アッセイ。上から下への曲線の対についての抗原濃度は、それぞれ、10nM、5nM、2.5nM、1.25nMおよび0.625nMである。
図31】PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1標的細胞系におけるVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のADCC活性アッセイ。
図32】PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1標的細胞系におけるVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のCDC活性アッセイ。
図33】ELISA法によって検出された、PBMC細胞およびRaji-PDL1細胞の混合培養によって誘導されたサイトカインIFN-γの分泌に対する抗体VP101(hG1DM)の効果。
図34】ELISA法によって検出された、PBMC細胞およびRaji-PDL1細胞の混合培養によって誘導されたサイトカインIL-2の分泌に対する抗体VP101(hG1DM)の効果。
図35】PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1標的細胞系におけるVP101(hG1DM)のADCP活性アッセイ。
【発明を実施するための形態】
【0106】
詳細な説明
本発明の実施形態を、実施例を参照して以下で詳細に説明する。以下の実施例が本発明を例示するためだけのものであって、本発明の範囲の限定として解釈されないことは、当業者には理解されよう。技術または条件の明確な説明のない場合は、当技術分野の文献に開示されている技術または条件に従って(例えば、Guide to Molecular Cloning Experiments、J. Sambrookら著、およびHuang Peitangら訳、第3版、Science Pressを参照)または製品マニュアルに従って実施した。使用した試薬または機器は、それらの製造業者が明示されていない場合、すべて市販されている従来の製品である。
【0107】
本発明の以下の実施例において、同一標的用の市販抗体ベバシズマブ(商品名アバスチン(登録商標))は、対照抗体としてRocheから購入したか、または調製実施例1に従って調製した。
【0108】
本発明の以下の実施例において、同一標的用の市販抗体ニボルマブ(商品名Opdivo(登録商標))は、対照抗体としてBMSから購入した。
【0109】
本発明の以下の実施例では、使用されるアイソタイプ対照抗体は、ヒト抗ニワトリ卵白リゾチームIgG(抗HEL、またはhIgGと略称されるヒトIgG)であり、その可変領域配列は、Aciernoらによって公表された研究、標題「Affinity maturation increases the stability and plasticity of the Fv domain of anti-protein antibodies」(Aciernoら、J Mol Biol.、2007年;374巻(1号):130~46頁)に由来する。実施例において使用されるhIgG1DMおよびhIgG4WTは、hG1DMおよびhG4WTの定常領域配列を有する抗HELのアイソタイプ対照抗体である。アイソタイプ対照抗体は、Akeso Biopharma,Inc.の実験室で調製された。
【0110】
調製実施例1:抗VEGFA抗体ベバシズマブの調製
中国公開特許公報第CN1259962A号には、市販の抗VEGFAモノクローナル抗体アバスチン(ベバシズマブ)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列が言及されている。Genscriptに、重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列の合成を委託した。
ベバシズマブの重鎖可変領域のアミノ酸配列(ベバシズマブ-Hv):(123aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTNYGMNWVRQAPGKGLEWVGWINTYTGEPTYAADFKRRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAKYPHYYGSSHWYFDVWGQGTLVTVSS(配列番号1)
ベバシズマブの重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(369bp)
GAGGTGCAGCTGGTCGAGTCCGGGGGGGGGCTGGTGCAGCCAGGCGGGTCTCTGAGGCTGAGTTGCGCCGCTTCAGGGTACACCTTCACAAACTATGGAATGAATTGGGTGCGCCAGGCACCAGGAAAGGGACTGGAGTGGGTCGGCTGGATCAACACTTACACCGGGGAACCTACCTATGCAGCCGACTTTAAGCGGCGGTTCACCTTCAGCCTGGATACAAGCAAATCCACTGCCTACCTGCAGATGAACAGCCTGCGAGCTGAGGACACCGCAGTCTACTATTGTGCTAAATATCCCCACTACTATGGGAGCAGCCATTGGTATTTTGACGTGTGGGGGCAGGGGACTCTGGTGACAGTGAGCAGC(配列番号2)
ベバシズマブの軽鎖可変領域のアミノ酸配列(ベバシズマブ-Lv):(107aa)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKVLIYFTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSTVPWTFGQGTKVEIK(配列番号3)
ベバシズマブの軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(321bp)
GATATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCATCACATGCAGTGCTTCACAGGATATTTCCAACTACCTGAATTGGTATCAGCAGAAGCCAGGAAAAGCACCCAAGGTGCTGATCTACTTCACTAGCTCCCTGCACTCAGGAGTGCCAAGCCGGTTCAGCGGATCCGGATCTGGAACCGACTTTACTCTGACCATTTCTAGTCTGCAGCCTGAGGATTTCGCTACATACTATTGCCAGCAGTATTCTACCGTGCCATGGACATTTGGCCAGGGGACTAAAGTCGAGATCAAG(配列番号4)
重鎖定常領域は、すべてIgガンマ-1鎖C領域、ACCESSION:P01857であった;軽鎖定常領域は、すべてIgカッパ鎖C領域、ACCESSION:P01834であった。
【0111】
ベバシズマブの重鎖cDNAおよび軽鎖cDNAをベクターpcDNA3.1にクローニングし、抗体ベバシズマブの組換え発現プラスミドを得た。組換えプラスミドを293F細胞にトランスフェクトした。293F細胞の培養培地を精製し、次いで検出した。
【0112】
抗VEGFAモノクローナル抗体アバスチン(ベバシズマブ)をこのようにして得た。
調製実施例2:抗PD-1抗体14C12およびそのヒト化抗体14C12H1L1、ならびに変異体14C12H1L1(M)の配列設計
抗PD-1抗体14C12およびそのヒト化抗体14C12H1L1の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列およびコードするヌクレオチド配列は、それぞれ、中国公開特許公報第CN106967172A号における14C12および14C12H1L1のものと同一である。
【0113】
(1)14C12の重鎖および軽鎖可変領域配列
14C12の重鎖可変領域のアミノ酸配列:(118aa)
EVKLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFAFSSYDMSWVRQTPEKRLEWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNARNTLYLQMSSLRSEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSA(配列番号5)
14C12の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(354bp)
GAGGTCAAACTGGTGGAGAGCGGCGGCGGGCTGGTGAAGCCCGGCGGGTCACTGAAACTGAGCTGCGCCGCTTCCGGCTTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCATGGGTGAGGCAGACCCCTGAGAAGCGCCTGGAATGGGTCGCTACTATCAGCGGAGGCGGGCGATACACCTACTATCCTGACTCTGTCAAAGGGAGATTCACAATTAGTCGGGATAACGCCAGAAATACTCTGTATCTGCAGATGTCTAGTCTGCGGTCCGAGGATACAGCTCTGTACTATTGTGCAAACCGGTACGGCGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGACAGGGCACCCTGGTGACAGTCTCTGCC(配列番号6)
14C12の軽鎖可変領域のアミノ酸配列:(107aa)
DIKMTQSPSSMYASLGERVTFTCKASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVDGVPSRFSGSGSGQDYSLTISSLEYEDMGIYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELK(配列番号7)
14C12の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(321bp)
GACATTAAGATGACACAGTCCCCTTCCTCAATGTACGCTAGCCTGGGCGAGCGAGTGACCTTCACATGCAAAGCATCCCAGGACATCAACACATACCTGTCTTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGCAAAAGCCCCAAGACCCTGATCTACCGGGCCAATAGACTGGTGGACGGGGTCCCCAGCAGATTCTCCGGATCTGGCAGTGGGCAGGATTACTCCCTGACCATCAGCTCCCTGGAGTATGAAGACATGGGCATCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCTCTGACCTTTGGAGCAGGCACAAAACTGGAACTGAAG(配列番号8)
(2)ヒト化モノクローナル抗体14C12H1L1の重鎖および軽鎖可変領域ならびに重鎖および軽鎖の配列
14C12H1L1の重鎖可変領域のアミノ酸配列:(118aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSS(配列番号9)
14C12H1L1の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(354bp)
GAAGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGGAGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGCGACTGAGCTGCGCAGCTTCCGGATTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCAGGAAAGGGACTGGATTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGATACACCTACTATCCTGACAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATCTCTAGAGATAACAGTAAGAACAATCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGACACCGCACTGTACTATTGTGCCAACCGCTACGGGGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGGCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGT(配列番号10)
14C12H1L1の軽鎖可変領域のアミノ酸配列:(107aa)
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELK(配列番号11)
14C12H1L1の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列:(321bp)
GACATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCATGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCTTCACATGCCGCGCTAGTCAGGATATCAACACCTACCTGAGCTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGGAAAAGCCCCAAGACACTGATCTACCGGGCTAATAGACTGGTGTCTGGAGTCCCAAGTCGGTTCAGTGGCTCAGGGAGCGGACAGGACTACACTCTGACCATCAGCTCCCTGCAGCCTGAGGACATGGCAACCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCACTGACCTTTGGCGCCGGGACAAAACTGGAGCTGAAG(配列番号12)
14C12H1L1の重鎖(14C12H1)のアミノ酸配列:(448aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSSYDMSWVRQAPGKGLDWVATISGGGRYTYYPDSVKGRFTISRDNSKNNLYLQMNSLRAEDTALYYCANRYGEAWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号13)
14C12H1L1の重鎖(14C12H1)をコードするヌクレオチド配列:(1344bp)
GAAGTGCAGCTGGTCGAGTCTGGGGGAGGGCTGGTGCAGCCCGGCGGGTCACTGCGACTGAGCTGCGCAGCTTCCGGATTCGCCTTTAGCTCCTACGACATGTCCTGGGTGCGACAGGCACCAGGAAAGGGACTGGATTGGGTCGCTACTATCTCAGGAGGCGGGAGATACACCTACTATCCTGACAGCGTCAAGGGCCGGTTCACAATCTCTAGAGATAACAGTAAGAACAATCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGGGCTGAGGACACCGCACTGTACTATTGTGCCAACCGCTACGGGGAAGCATGGTTTGCCTATTGGGGGCAGGGAACCCTGGTGACAGTCTCTAGTGCCAGCACCAAAGGACCTAGCGTGTTTCCTCTCGCCCCCTCCTCCAAAAGCACCAGCGGAGGAACCGCTGCTCTCGGATGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCTGAACCCGTCACCGTGAGCTGGAATAGCGGCGCTCTGACAAGCGGAGTCCATACATTCCCTGCTGTGCTGCAAAGCAGCGGACTCTATTCCCTGTCCAGCGTCGTCACAGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTCAACCACAAGCCCTCCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTGGAGCCCAAATCCTGCGACAAGACACACACCTGTCCCCCCTGTCCTGCTCCCGAACTCCTCGGAGGCCCTAGCGTCTTCCTCTTTCCTCCCAAACCCAAGGACACCCTCATGATCAGCAGAACCCCTGAAGTCACCTGTGTCGTCGTGGATGTCAGCCATGAGGACCCCGAGGTGAAATTCAACTGGTATGTCGATGGCGTCGAGGTGCACAACGCCAAAACCAAGCCCAGGGAGGAACAGTACAACTCCACCTACAGGGTGGTGTCCGTGCTGACAGTCCTCCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCTCTCCCTGCCCCCATTGAGAAGACCATCAGCAAGGCCAAAGGCCAACCCAGGGAGCCCCAGGTCTATACACTGCCTCCCTCCAGGGACGAACTCACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTCAAGGGCTTTTATCCCAGCGACATCGCCGTCGAGTGGGAGTCCAACGGACAGCCCGAGAATAACTACAAGACCACCCCTCCTGTCCTCGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACCGTGGACAAAAGCAGGTGGCAGCAGGGAAACGTGTTCTCCTGCAGCGTGATGCACGAAGCCCTCCACAACCACTACACCCAGAAAAGCCTGTCCCTGAGCCCCGGCAAA(配列番号14)
14C12H1L1の軽鎖(14C12L1)のアミノ酸配列:(214aa)
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号15)
14C12H1L1の軽鎖(14C12L1)をコードするヌクレオチド配列:(642bp)
GACATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCATGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCTTCACATGCCGCGCTAGTCAGGATATCAACACCTACCTGAGCTGGTTTCAGCAGAAGCCAGGGAAAAGCCCCAAGACACTGATCTACCGGGCTAATAGACTGGTGTCTGGAGTCCCAAGTCGGTTCAGTGGCTCAGGGAGCGGACAGGACTACACTCTGACCATCAGCTCCCTGCAGCCTGAGGACATGGCAACCTACTATTGCCTGCAGTATGATGAGTTCCCACTGACCTTTGGCGCCGGGACAAAACTGGAGCTGAAGCGAACTGTGGCCGCTCCCTCCGTCTTCATTTTTCCCCCTTCTGACGAACAGCTGAAATCAGGCACAGCCAGCGTGGTCTGTCTGCTGAACAATTTCTACCCTAGAGAGGCAAAAGTGCAGTGGAAGGTCGATAACGCCCTGCAGTCCGGCAACAGCCAGGAGAGTGTGACTGAACAGGACTCAAAAGATAGCACCTATTCCCTGTCTAGTACACTGACTCTGTCCAAGGCTGATTACGAGAAGCACAAAGTGTATGCATGCGAAGTGACACATCAGGGACTGTCAAGCCCCGTGACTAAGTCTTTTAACCGGGGCGAATGT(配列番号16)
(3)14C12H1L1(M)の重鎖および軽鎖可変領域配列
フレームワーク領域(軽鎖)中の個々のアミノ酸は、14C12H1L1に基づいて変異させて、14C12H1L1(M)を得た。
【0114】
14C12H1L1(M)の重鎖可変領域14C12H1(M)は、14C12H1L1の重鎖可変領域14C12H1と同一であり、すなわち、アミノ酸配列は、配列番号9に記載されている。
【0115】
14C12H1L1(M)の軽鎖可変領域14C12L1(M):(108aa、変異位置は14C12H1L1に基づいてアミノ酸配列中に下線を付けた)
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTFTCRASQDINTYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVSGVPSRFSGSGSGQDYTLTISSLQPEDMATYYCLQYDEFPLTFGAGTKLELKR(配列番号17)
調製実施例3:二重特異性抗体の配列設計
1.配列設計
本発明の二重特異性抗体の構造は、Morrison型(IgG-scFv)であり、すなわち、IgG抗体の2つの重鎖のC末端がそれぞれ別の抗体のscFv断片に結合されており、重鎖および軽鎖の主な構成設計は下記の表1に示した通りである。
【0116】
ベバシズマブに基づいて、14C12H1L1(M)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列がScFv断片部分と考えられるVP101抗体は、VP101(M)と称される。14C12H1L1と比較して、14C12H1L1(M)は、効果的に、二重特異性抗体の構造が最適化され、有効性が改善された。
【0117】
【表1】
【0118】
上記の表1において:
(1)右下方の角に表示された「V」を有するものは、対応する重鎖の可変領域または対応する軽鎖の可変領域を意味する。「V」表示のないものについては、対応する重鎖または軽鎖は、定常領域を含む完全長である。上記の調製例で説明した対応する配列は、これらの可変領域または完全長のアミノ酸配列と、それらをコードするヌクレオチド配列について言及されている。
【0119】
(2)リンカー1のアミノ酸配列はGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号18)である。
任意選択で、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)を、前述のリンカー1の代わりに、リンカー2として使用することができる。
【0120】
(3)ベバシズマブ-Hは、重鎖定常領域としてIgガンマ-1鎖C領域(ACCESSION:P01857)を使用した。
【0121】
(4)ベバシズマブ-G4Hは、重鎖定常領域としてIgガンマ-4鎖C領域(ACCESSION:P01861.1)を使用した。
【0122】
2.抗体VP101(M)の発現および精製
VP101の重鎖cDNA配列および軽鎖cDNA配列を、それぞれ、ベクターpUC57simple(Genscriptにより提供)にクローニングし、それぞれ、プラスミドpUC57simple-VP101HおよびpUC57simple-VP101Lを得た。
【0123】
プラスミドpUC57simple-VP101HおよびpUC57simple-VP101Lを酵素消化し(HindIII&EcoRI)、電気泳動によって単離した重鎖および軽鎖をベクターpcDNA3.1にサブクローニングし、組換えプラスミドを抽出して293F細胞にコトランスフェクトした。7日間細胞培養した後、培養培地を高速の遠心分離にかけ、上清を濃縮し、HiTrap MabSelect SuReカラムにロードした。溶出バッファーを用いてタンパク質を1ステップでさらに溶出させ、標的サンプル抗体VP101を単離し、PBSにバッファー交換した。
【0124】
3.抗体VP101(M)の検出
精製したサンプルを、還元性タンパク質電気泳動ローディングバッファーおよび非還元性タンパク質電気泳動ローディングバッファーの両方に加え、次いで、SDS-PAGE電気泳動検出のためにボイルした。
【0125】
調製実施例4の変異した抗体からの区別のために、VP101(M)は、本発明ではVP101(hG1WT)とも称される。上記に記載されるVP101(M)は「野生型」であり、重鎖定常領域としてIgガンマ-1鎖C領域(ACCESSION:P01857)、および軽鎖定常領域としてIgカッパ鎖C領域(ACCESSION:P01834)を含む。
【0126】
VP101(hG1WT)中の免疫グロブリン部分の重鎖のアミノ酸配列:(453aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTNYGMNWVRQAPGKGLEWVGWINTYTGEPTYAADFKRRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAKYPHYYGSSHWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号20)
VP101(hG1WT)中の免疫グロブリン部分の重鎖をコードするヌクレオチド配列:(1359bp)
GAGGTGCAGCTGGTCGAGTCCGGGGGGGGGCTGGTGCAGCCAGGCGGGTCTCTGAGGCTGAGTTGCGCCGCTTCAGGGTACACCTTCACAAACTATGGAATGAATTGGGTGCGCCAGGCACCAGGAAAGGGACTGGAGTGGGTCGGCTGGATCAACACTTACACCGGGGAACCTACCTATGCAGCCGACTTTAAGCGGCGGTTCACCTTCAGCCTGGATACAAGCAAATCCACTGCCTACCTGCAGATGAACAGCCTGCGAGCTGAGGACACCGCAGTCTACTATTGTGCTAAATATCCCCACTACTATGGGAGCAGCCATTGGTATTTTGACGTGTGGGGGCAGGGGACTCTGGTGACAGTGAGCAGCGCAAGCACCAAAGGGCCCAGCGTGTTTCCTCTCGCCCCCTCCTCCAAAAGCACCAGCGGAGGAACCGCTGCTCTCGGATGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCTGAACCCGTCACCGTGAGCTGGAATAGCGGCGCTCTGACAAGCGGAGTCCATACATTCCCTGCTGTGCTGCAAAGCAGCGGACTCTATTCCCTGTCCAGCGTCGTCACAGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTCAACCACAAGCCCTCCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTGGAGCCCAAATCCTGCGACAAGACACACACCTGTCCCCCCTGTCCTGCTCCCGAACTCCTCGGAGGCCCTAGCGTCTTCCTCTTTCCTCCCAAACCCAAGGACACCCTCATGATCAGCAGAACCCCTGAAGTCACCTGTGTCGTCGTGGATGTCAGCCATGAGGACCCCGAGGTGAAATTCAACTGGTATGTCGATGGCGTCGAGGTGCACAACGCCAAAACCAAGCCCAGGGAGGAACAGTACAACTCCACCTACAGGGTGGTGTCCGTGCTGACAGTCCTCCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCTCTCCCTGCCCCCATTGAGAAGACCATCAGCAAGGCCAAAGGCCAACCCAGGGAGCCCCAGGTCTATACACTGCCTCCCTCCAGGGACGAACTCACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTCAAGGGCTTTTATCCCAGCGACATCGCCGTCGAGTGGGAGTCCAACGGACAGCCCGAGAATAACTACAAGACCACCCCTCCTGTCCTCGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTGTACAGCAAACTGACCGTCGATAAATCTAGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTCTCTTGTTCCGTGATGCATGAAGCACTGCACAACCATTATACCCAGAAGTCTCTGAGCCTGTCCCCCGGCAAG(配列番号21)
調製実施例4の変異した抗体からの区別のために、VP101(G4M)は、本発明ではVP101(hG4WT)とも称される。上記に記載されるVP101(G4M)は「野生型」であり、重鎖定常領域としてIgガンマ-4鎖C領域(ACCESSION:P01861.1)、および軽鎖定常領域としてIgカッパ鎖C領域(ACCESSION:P01834)を含む。
【0127】
VP101(hG4WT)中の免疫グロブリン部分の重鎖のアミノ酸配列:(450aa)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTNYGMNWVRQAPGKGLEWVGWINTYTGEPTYAADFKRRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAKYPHYYGSSHWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号22)
VP101(hG4WT)中の免疫グロブリン部分の重鎖をコードするヌクレオチド配列:(1350bp)
GAGGTGCAGCTGGTCGAGTCCGGGGGGGGGCTGGTGCAGCCAGGCGGGTCTCTGAGGCTGAGTTGCGCCGCTTCAGGGTACACCTTCACAAACTATGGAATGAATTGGGTGCGCCAGGCACCAGGAAAGGGACTGGAGTGGGTCGGCTGGATCAACACTTACACCGGGGAACCTACCTATGCAGCCGACTTTAAGCGGCGGTTCACCTTCAGCCTGGATACAAGCAAATCCACTGCCTACCTGCAGATGAACAGCCTGCGAGCTGAGGACACCGCAGTCTACTATTGTGCTAAATATCCCCACTACTATGGGAGCAGCCATTGGTATTTTGACGTGTGGGGGCAGGGGACTCTGGTGACAGTGAGCAGCGCAAGCACCAAAGGGCCCTCGGTCTTCCCCCTGGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCATGCCCAGCACCTGAGTTCCTGGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGTCTCTGAGCCTGTCCCTCGGCAAG(配列番号23)
調製実施例4:ヒト化二重特異性抗体VP101(hG1WT)に基づく非可変領域アミノ酸変異設計
調製実施例3で得られたVP101(hG1WT)に基づいて、VP101(hG1DM)を、重鎖において、234位にロイシンとアラニンの点変異(L234A)、および235位にロイシンとアラニンの点変異(L235A)を導入することによって得た。
【0128】
VP101(hG1DM)中の免疫グロブリン部分の重鎖のアミノ酸配列:(453aa、変異位置に下線を付けた)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTNYGMNWVRQAPGKGLEWVGWINTYTGEPTYAADFKRRFTFSLDTSKSTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAKYPHYYGSSHWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号24)
VP101(hG1DM)中の免疫グロブリン部分の重鎖をコードするヌクレオチド配列:(1359bp、変異位置に下線を付けた)
GAGGTGCAGCTGGTCGAGTCCGGGGGGGGGCTGGTGCAGCCAGGCGGGTCTCTGAGGCTGAGTTGCGCCGCTTCAGGGTACACCTTCACAAACTATGGAATGAATTGGGTGCGCCAGGCACCAGGAAAGGGACTGGAGTGGGTCGGCTGGATCAACACTTACACCGGGGAACCTACCTATGCAGCCGACTTTAAGCGGCGGTTCACCTTCAGCCTGGATACAAGCAAATCCACTGCCTACCTGCAGATGAACAGCCTGCGAGCTGAGGACACCGCAGTCTACTATTGTGCTAAATATCCCCACTACTATGGGAGCAGCCATTGGTATTTTGACGTGTGGGGGCAGGGGACTCTGGTGACAGTGAGCAGCGCAAGCACCAAAGGGCCCAGCGTGTTTCCTCTCGCCCCCTCCTCCAAAAGCACCAGCGGAGGAACCGCTGCTCTCGGATGTCTGGTGAAGGACTACTTCCCTGAACCCGTCACCGTGAGCTGGAATAGCGGCGCTCTGACAAGCGGAGTCCATACATTCCCTGCTGTGCTGCAAAGCAGCGGACTCTATTCCCTGTCCAGCGTCGTCACAGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTCAACCACAAGCCCTCCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTGGAGCCCAAATCCTGCGACAAGACACACACCTGTCCCCCCTGTCCTGCTCCCGAAGCTGCTGGAGGCCCTAGCGTCTTCCTCTTTCCTCCCAAACCCAAGGACACCCTCATGATCAGCAGAACCCCTGAAGTCACCTGTGTCGTCGTGGATGTCAGCCATGAGGACCCCGAGGTGAAATTCAACTGGTATGTCGATGGCGTCGAGGTGCACAACGCCAAAACCAAGCCCAGGGAGGAACAGTACAACTCCACCTACAGGGTGGTGTCCGTGCTGACAGTCCTCCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGGCTCTCCCTGCCCCCATTGAGAAGACCATCAGCAAGGCCAAAGGCCAACCCAGGGAGCCCCAGGTCTATACACTGCCTCCCTCCAGGGACGAACTCACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTCAAGGGCTTTTATCCCAGCGACATCGCCGTCGAGTGGGAGTCCAACGGACAGCCCGAGAATAACTACAAGACCACCCCTCCTGTCCTCGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTGTACAGCAAACTGACCGTCGATAAATCTAGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTCTCTTGTTCCGTGATGCATGAAGCACTGCACAACCATTATACCCAGAAGTCTCTGAGCCTGTCCCCCGGCAAG(配列番号25)
VP101(hG1DM)、VP101(hG1WT)およびVP101(hG4WT)の免疫グロブリン部分の軽鎖のアミノ酸配列およびコードするヌクレオチド配列は同一である。
【0129】
VP101(hG1DM)中の免疫グロブリン部分の軽鎖のアミノ酸配列:(214aa)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKVLIYFTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSTVPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号26)
VP101(hG1DM)中の免疫グロブリン部分の軽鎖をコードするヌクレオチド配列:(642bp)
GATATTCAGATGACTCAGAGCCCCTCCTCCCTGTCCGCCTCTGTGGGCGACAGGGTCACCATCACATGCAGTGCTTCACAGGATATTTCCAACTACCTGAATTGGTATCAGCAGAAGCCAGGAAAAGCACCCAAGGTGCTGATCTACTTCACTAGCTCCCTGCACTCAGGAGTGCCAAGCCGGTTCAGCGGATCCGGATCTGGAACCGACTTTACTCTGACCATTTCTAGTCTGCAGCCTGAGGATTTCGCTACATACTATTGCCAGCAGTATTCTACCGTGCCATGGACATTTGGCCAGGGGACTAAAGTCGAGATCAAGCGGACCGTGGCCGCTCCCAGTGTCTTCATTTTTCCCCCTAGCGACGAACAGCTGAAATCCGGGACAGCCTCTGTGGTCTGTCTGCTGAACAACTTCTACCCTAGAGAGGCAAAAGTGCAGTGGAAGGTCGATAACGCCCTGCAGAGTGGCAATTCACAGGAGAGCGTGACAGAACAGGACTCCAAAGATTCTACTTATAGTCTGTCAAGCACACTGACTCTGAGCAAGGCTGACTACGAAAAGCATAAAGTGTATGCATGTGAGGTCACCCACCAGGGGCTGAGCAGTCCAGTCACCAAGTCATTCAACAGAGGCGAGTGC(配列番号27)
【実施例
【0130】
実施例1:FcγrRIのVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)に対する親和定数アッセイ
CD64としても知られているFc受容体FcγRIは、IgG抗体のFc断片に結合することができ、抗体依存性細胞媒介性傷害(ADCC)に関与する。治療用モノクローナル抗体のFc受容体への結合能力は抗体の安全性および効果に影響を与える。
【0131】
VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIに対する親和定数を、この実施例では、Fortebio Octetシステムを使用して決定し、各抗体のADCC活性を評価した。
【0132】
Fortebio Octetシステムを使用する抗体のFcγRIに対する親和定数を決定する方法は、簡潔には以下のとおり記載される:サンプル希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であった。1μg/mLのFcγRIaを50秒間HIS1Kセンサーに固定化した。センサーを60秒間バッファー中で平衡化し、センサーに固定化したCD64の3.12~50nM(連続2倍希釈)の濃度での抗体への結合を120秒間決定した。抗体を120秒間バッファー中で解離させた。センサーを、10mMのグリシン、pH1.5中で4回、それぞれ5秒間リフレッシュした。検出温度は30℃であり、周波数は0.3Hzであった。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。
【0133】
FcγRIのVP101(hG1WT)、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)、ならびに対照抗体のニボルマブおよびベバシズマブに対する親和定数を表1および図1~5に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
N/Aは、抗体が抗原への結合を有さないか、または極めて弱い結合シグナルを有することを示し、したがって、結果は、分析されず、対応するデータは得られなかった。
【0136】
結果は、VP101(hG1WT)が3.95E-09Mの親和定数でFcγRIに結合することができ;VP101(hG4WT)が8.52E-09Mの親和定数でFcγRIに結合することができ;ベバシズマブが3.68E-09Mの親和定数でFcγRIに結合することができ;ニボルマブが6.20E-09Mの親和定数でFcγRIに結合することができ;VP101(hG1DM)がFcγRIへの結合を有さないか、または極めて弱い結合シグナルを有し、したがって結果は分析されず、対応するデータは得られなかったことを示す。
【0137】
結果は、他の抗体のFcγRIに対する親和性が、VP101(hG1DM)のFcγRIへの結合なしを除いて、類似している。VP101(hG1DM)の結合活性は効果的に除去された。
【0138】
実施例2:FcγRIIa_H131のVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)に対する親和定数アッセイ
Fc受容体FcγRIIa_H131(CD32a_H131としても知られている)は、IgG抗体のFc断片に結合し、ADCC効果を媒介することができる。
【0139】
VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIa_H131に対する親和定数を、この実施例では、Fortebio Octetシステムを使用して決定し、各抗体のADCC活性を評価した。
【0140】
Fortebio Octetシステムを使用するVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIa_H131に対する親和定数を決定する方法は、簡潔には以下のとおり記載される:固定化希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であり、分析物希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、0.02%カゼイン、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であった。5μg/mLのFcγRIIa_H131を、60秒の固定化時間の間、NTAセンサーに固定化した。センサーを、600秒のブロッキングの間、PBS、0.02%Tween-20、0.02%カゼイン、および0.1%BSA(pH7.4)のバッファー中で平衡化し、センサーに固定化したFcγRIIa_H131の12.5~200nM(連続2倍希釈)の濃度での抗体への結合を60秒間決定した。抗体を60秒間バッファー中で解離させた。センサーを10mMのグリシン、pH1.7および10nMの硫酸ニッケル中でリフレッシュした。検出温度は30℃であり、周波数は0.6Hzであった。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。
【0141】
FcγRIIa_H131のVP101(hG1WT)、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)、ならびに対照抗体のニボルマブおよびベバシズマブに対する親和定数を表2および図6~10に示す。
【0142】
【表3】
【0143】
N/Aは、抗体が抗原への結合を有さないか、または極めて弱い結合シグナルを有することを示し、したがって、結果は、分析されず、対応するデータは得られなかった。
【0144】
結果は、VP101(hG1WT)が2.28E-08Mの親和定数でFcγRIIa_H131に結合することができ;VP101(hG4WT)が3.68E-08Mの親和定数でFcγRIIa_H131に結合することができ;ベバシズマブが6.44E-08Mの親和定数でFcγRIIa_H131に結合することができ;VP101(hG1DM)が3.57E-08Mの親和定数でFcγRIIa_H131に結合することができるが;ニボルマブがFcγRIIa_H131への結合を有さないか、または極めて弱い結合シグナルを有し、したがって結果は分析されず、対応するデータは得られなかったことを示す。
【0145】
結果は、ニボルマブのFcγRIIa_H131への結合なしを除いて、他の抗体が以下の強い~弱い親和性:VP101(hG1WT)、VP101(hG4DM)、VP101(hG4WT)およびベバシズマブでFcγRIIa_H131に結合したことを示す。
【0146】
実施例3:FcγRIIa_R131のVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)に対する親和定数アッセイ
Fc受容体FcγRIIa_R131(CD32a_R131としても知られている)は、IgG抗体のFc断片に結合し、ADCC効果を媒介することができる。
【0147】
VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIa_R131に対する親和定数を、この実施例では、Fortebio Octetシステムを使用して決定し、各抗体のADCC活性を評価した。
【0148】
Fortebio Octetシステムを使用するVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)の親和定数を決定する方法は、簡潔には以下のとおり記載される:固定化希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であり、分析物希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、0.02%カゼイン、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であった。5μg/mLのFcγRIIa_R131を、60秒の固定化時間の間、NTAセンサーに固定化した。センサーを、600秒のブロッキングの間、PBS、0.02%Tween-20、0.02%カゼイン、および0.1%BSA(pH7.4)のバッファー中で平衡化し、センサーに固定化したFcγRIIa_R131の12.5~200nM(連続2倍希釈)の濃度での抗体への結合を60秒間決定した。抗体を60秒間バッファー中で解離させた。センサーを10mMのグリシン、pH1.7および10nMの硫酸ニッケル中でリフレッシュした。検出温度は30℃であり、周波数は0.6Hzであった。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。
【0149】
FcγRIIa_R131のVP101(hG1WT)、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)、ならびに対照抗体のニボルマブおよびベバシズマブに対する親和定数を表3および図11~15に示す。
【0150】
【表4】
【0151】
N/Aは、抗体が抗原への結合を有さないか、または極めて弱い結合シグナルを有することを示し、したがって、結果は、分析されず、対応するデータは得られなかった。
【0152】
結果は、VP101(hG1WT)が2.42E-08Mの親和定数でFcγRIIa_R131に結合することができ;VP101(hG4WT)が3.57E-08Mの親和定数でFcγRIIa_R131に結合することができ;ベバシズマブが5.16E-08Mの親和定数でFcγRIIa_R131に結合することができ;ニボルマブが6.93E-08Mの親和定数でFcγRIIa_R131に結合することができ;VP101(hG1DM)が3.35E-08Mの親和定数でFcγRIIa_H131に結合することができることを示す。
【0153】
結果は、抗体が以下の強い~弱い親和性:VP101(hG1WT)、VP101(hG1DM)、VP101(hG4WT)、ベバシズマブおよびニボルマブでFcγRIIa_R131に結合したことを示す。
【0154】
実施例4:FcγRIIbのVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)に対する親和定数アッセイ
Fc受容体FcγRIIb(CD32bとしても知られている)は、IgG抗体のFc断片に結合し、免疫細胞の機能をレギュレートすることができる。
【0155】
VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIbに対する親和定数を、この実施例では、Fortebio Octetシステムを使用して決定し、VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFc受容体への結合能力を評価した。
【0156】
Fortebio Octetシステムを使用するVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIbに対する親和定数を決定する方法は、簡潔には以下のとおり記載される:固定化希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であり、分析物希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、0.02%カゼイン、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であった。5μg/mLのhFCGR2B-hisを、60秒の固定化時間の間、NTAセンサーに固定化した。センサーを、600秒のブロッキングの間、PBS、0.02%Tween-20、0.02%カゼイン、および0.1%BSA(pH7.4)のバッファー中で平衡化し、センサーに固定化したhFCGR2B-hisの12.5~200nM(連続2倍希釈)の濃度での抗体への結合を60秒間決定した。抗体を60秒間バッファー中で解離させた。センサーを10mMのグリシン、pH1.7および10nMの硫酸ニッケル中でリフレッシュした。検出温度は30℃であり、周波数は0.6Hzであった。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。
【0157】
実施例5:FcγRIIIa_V158のVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)に対する親和定数アッセイ
Fc受容体FcγRIIIa_V158(CD16a_V158としても知られている)は、IgG抗体のFc断片に結合し、ADCC効果を媒介することができる。
【0158】
VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIIa_V158に対する親和定数を、この実施例では、Fortebio Octetシステムを使用して決定し、各抗体のADCC活性を評価した。
【0159】
Fortebio Octetシステムによる抗体のFcγRIIIa_V158に対する親和定数を決定する方法は、簡潔には以下のとおり記載される:サンプル希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であった。5μg/mLのFcγRIIIa_V158を120秒間HIS1Kセンサーに固定化した。センサーを60秒間バッファー中で平衡化し、センサーに固定化したhFcGR3A(V158)-hisの31.25~500nM(連続2倍希釈)の濃度での抗体への結合を60秒間決定した。抗体を60秒間バッファー中で解離させた。センサーを、10mMのグリシン、pH1.5中で4回、それぞれ5秒間リフレッシュした。検出温度は30℃であり、周波数は0.3Hzであった。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。
【0160】
FcγRIIIa_V158のVP101(hG1WT)、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)、ならびに対照抗体のニボルマブおよびベバシズマブに対する親和定数を表4および図16~20に示す。
【0161】
【表5】
【0162】
N/Aは、抗体が抗原への結合を有さないか、または極めて弱い結合シグナルを有することを示し、したがって、結果は、分析されず、対応するデータは得られなかった。
【0163】
結果は、VP101(hG1WT)が4.35E-08Mの親和定数でFcγRIIIa_V158に結合することができ;VP101(hG4DM)が1.34E-07Mの親和定数でFcγRIIIa_V158に結合することができ;ベバシズマブが2.76E-08Mの親和定数でFcγRIIIa_V158に結合することができるが;ニボルマブおよびVP101(hG4WT)がFcγRIIIa_V158への結合を有さないか、または極めて低い結合シグナルを有し、したがって結果は分析されず、対応するデータは得られなかったことを示す。
【0164】
結果は、ニボルマブおよびVP101(hG4WT)のFcγRIIIa_V158への結合なしを除いて、他の抗体が以下の強い~弱い親和性:ベバシズマブ、VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)でFcγRIIIa_V158に結合したことを示す。
【0165】
実施例6:FcγRIIIa_F158のVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)に対する親和定数アッセイ
Fc受容体FcγRIIIa_F158(CD16a_F158としても知られている)は、IgG抗体のFc断片に結合し、ADCC効果を媒介することができる。
【0166】
VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIIa_F158に対する親和定数を、この実施例では、Fortebio Octetシステムを使用して決定し、各抗体のADCC活性を評価した。
【0167】
Fortebio Octetシステムを使用するVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIIa_F158に対する親和定数を決定する方法は、簡潔には以下のとおり記載される:サンプル希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であった。5μg/mLのFcγRIIIa_F158を120秒間HIS1Kセンサーに固定化した。センサーを60秒間バッファー中で平衡化し、センサーに固定化したhFcGR3A(F158)-hisの31.25~500nM(連続2倍希釈)の濃度での抗体への結合を60秒間決定した。抗体を60秒間バッファー中で解離させた。センサーを、10mMのグリシン、pH1.5中で4回、それぞれ5秒間リフレッシュした。検出温度は30℃であり、周波数は0.3Hzであった。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。
【0168】
FcγRIIIa_F158のVP101(hG1WT)、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)、ならびに対照抗体のニボルマブおよびベバシズマブに対する親和定数を表5および図21~25に示す。
【0169】
【表6】
【0170】
N/Aは、抗体が抗原への結合を有さないか、または極めて弱い結合シグナルを有することを示し、したがって、結果は、分析されず、対応するデータは得られなかった。
【0171】
結果は、VP101(hG1WT)が7.41E-08Mの親和定数でFcγRIIIa_F158に結合することができ;ベバシズマブが9.32E-08Mの親和定数でFcγRIIIa_F158に結合することができるが;ニボルマブ、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)がFcγRIIIa_F158への結合を有さないか、または極めて低い結合シグナルを有し、したがって結果は分析されず、対応するデータは得られなかったことを示す。
【0172】
結果は、ニボルマブ、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)のFcγRIIIa_F158への結合なしを除いて、他の抗体が以下の強い~弱い親和性:VP101(hG1WT)およびベバシズマブでFcγRIIIa_F158に結合したことを示す。
【0173】
実施例7:C1qのVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)に対する親和定数アッセイ
血清補体C1qは、IgG抗体のFc断片に結合し、CDC効果を媒介することができる。治療用モノクローナル抗体のC1qへの結合能力は抗体の安全性および効果に影響を与える。
【0174】
VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のC1qに対する親和定数を、この実施例では、Fortebio Octetシステムを使用して決定し、各抗体のCDC活性を評価した。
【0175】
Fortebio Octetシステムを使用する抗体のC1qに対する親和定数を決定する方法は、簡潔には以下のとおり記載される:サンプル希釈バッファーはPBS、0.02%Tween-20、および0.1%BSA、pH7.4の溶液であった。50μg/mLの抗体を約2.0nmの固定化高さでFAB2Gセンサーに固定化した。センサーを60秒間バッファー中で平衡化し、センサーに固定化した抗体の0.625~10nM(連続2倍希釈)の濃度でのC1qへの結合を60秒間決定した。抗原および抗体を60秒間バッファー中で解離させた。センサーを、10mMのグリシン、pH1.7中で4回、それぞれ5秒間リフレッシュした。サンプルプレートの振とう速度は1000rpmであり、温度は30℃であり、周波数は0.6Hzであった。データを1:1モデルでフィッティングすることにより分析し、親和定数を得た。データ収集ソフトウェアはFortebio Data Acquisition 7.0であり、データ分析ソフトウェアはFortebio Data Analysis 7.0であった。
【0176】
C1qのVP101(hG1WT)、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)、ならびに対照抗体のニボルマブおよびベバシズマブに対する親和定数を表6および図26~30に示す。
【0177】
【表7】
【0178】
N/Aは、抗体が抗原への結合を有さないか、または極めて弱い結合シグナルを有することを示し、したがって、結果は、分析されず、対応するデータは得られなかった。
【0179】
結果は、VP101(hG1WT)が9.76E-10Mの親和定数でC1qに結合することができ;ベバシズマブが1.14E-09Mの親和定数でC1qに結合することができるが;ニボルマブ、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)がC1qへの結合を有さないか、または極めて低い結合シグナルを有し、したがって結果は分析されず、対応するデータは得られなかったことを示す。
【0180】
結果は、ニボルマブ、VP101(hG4WT)およびVP101(hG1DM)がC1qへ結合せず、VP101(hG1WT)およびベバシズマブが類似の親和性でC1qへと結合することを示す
【0181】
実施例8:PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1細胞におけるVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のADCC活性アッセイ
抗体VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)の細胞レベルでのADCC効果を検出するために、発明者らはPD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1細胞を構築し、細胞学的レベルで抗体のADCC活性を検出するための正常ヒトPBMCおよび標的細胞の共培養の系を確立した。
【0182】
PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1細胞におけるVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のADCC活性を検出する方法を以下のとおり明示する:
この実験では、ヒトPD-1過剰発現ベクターpCDH-CMV-PD1FL-Puro(Youbioから購入したpCDH-CMV-Puro)を最初に構築し、発現ベクターをウイルスにパッケージングし、次いでCHO-K1細胞に感染させ、薬剤耐性安定発現膜PD-1タンパク質のCHO-K1-PD1安定細胞株を、ピューロマイシン(2μg/mL)による投薬およびスクリーニングの後、得た。正常ヒトPBMCを、Ficoll末梢血単核細胞単離装置に従って単離した。単離PBMCを、1640完全培地に再懸濁し、トリパンブルーで染色し、細胞をカウントし、細胞の生存率を決定した。細胞を、飽和湿度のインキュベーター内で、37℃および5%COで一晩インキュベートした。翌日、CHO-K1-PD1細胞およびPBMCを回収し、遠心分離にかけ、上清を除去し、次いで細胞ペレットをRPMI-1640(1%BSAを含有)(本明細書の以下で、アッセイ培地と称される)に再懸濁し、遠心分離にかけ、2回洗浄した;細胞をカウントし、細胞の生存率を決定し、細胞の濃度をアッセイ培地を使用することによって適正範囲に調節し、CHO-K1-PD1細胞懸濁液(30,000細胞/ウェル)を実験設計に従って96ウェルプレートに加えた;50μLの抗体を加え、十分に混合し、室温で1時間プレインキュベートした:プレインキュベーション後、細胞にPBMC(900,000/50μL/ウェル)を加え、十分に混合し、インキュベーター内で、37℃および5%COで4時間インキュベートした。4時間後、96ウェルプレートを取り出し、250×gで5分間遠心分離にかけ、100μLの細胞上清を注意深く新たな96ウェル平底マイクロプレートに移した(細胞沈殿物をピペッティングしない)。100μLの新鮮な調製した反応溶液を、細胞傷害性検出キットの使用説明書に従って各ウェルに加えた。細胞を、暗所で、室温で30分間インキュベートした。490nmおよび650nmのOD値を測定し、ここで各群のOD値=OD490nm-OD650nmであった。ADCC活性を、式ADCC(%)=(処理群-陰性対照群)/(標的細胞における最大LDH放出-標的細胞における自発的LDH放出)×100%に従って、各群について算出した。
【0183】
PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1細胞におけるVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のADCC活性の検出結果は、ADCC%として表され、結果を図31に示す。
【0184】
結果は、陽性対照14C12H1L1(G1WT)がPBMCおよびCHO-K1-PD1の混合培養系において有意なADCC活性を有し、ADCC系が正常であることを示す。アイソタイプ対照抗体hIgG1DMと比較して、VP101(hG1WT)は、有意なADCC活性を示し、用量依存性を示したが、VP101(G1DM)はADCC活性を示さなかった。結果は、VP101(hG1WT)に基づく変異によって産生されたVP101(hG1DM)が、細胞学的レベルでADCC活性を有さず、ADCC効果が除去されていることを示す。
【0185】
実施例9:PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1細胞におけるVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のCDC活性アッセイ
抗体VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)の細胞学的レベルでのCDC効果を検出するために、発明者らはPD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1細胞を構築し(構築方法について実施例8を参照)、細胞学的レベルで抗体のCDC活性を検出するための標的細胞および正常ヒト補体血清の共培養の系を確立した。
【0186】
PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1細胞におけるVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のCDC活性を検出する方法を以下のとおり明示する:
検出の日に、CHO-K1-PD1細胞をトリプシン化によって回収し、170×gで5分間遠心分離にかけた;細胞ペレットをRPMI-1640(1%BSAを含有)(本明細書の以下で、アッセイ培地と称される)に再懸濁し、繰り返し遠心分離にかけ、2回洗浄した;細胞をカウントし、細胞の生存率を決定し、細胞の濃度をアッセイ培地を使用することによって適正範囲に調節し、CHO-K1-PD1細胞懸濁液(30,000細胞/ウェル)を実験設計に従って96ウェルプレートに加えた;50μLの抗体を加え、十分に混合し、室温で10分間プレインキュベートした:プレインキュベーション後、細胞に50μL/ウェルの正常ヒト補体血清(最終濃度:2%)を加え、十分に混合し、インキュベーター内で、37℃および5%COで4時間インキュベートした。4時間後、細胞を、250×gで5分間遠心分離にかけた;100μLの細胞上清を注意深く新たな96ウェル平底プレートに移した(細胞沈殿物をピペッティングしない)。100μLの新鮮な調製した反応溶液を、細胞傷害性検出キットの使用説明書に従って各ウェルに加えた。細胞を、暗所で、室温で30分間インキュベートした。490nmおよび650nmのOD値を測定し、ここで各群のOD値=OD490nm-OD650nmであった。CDC活性を、式CDC(%)=(処理群-陰性対照群)/(標的細胞における最大LDH放出-標的細胞における自発的LDH放出)×100%に従って、各群について算出した。
【0187】
PD-1抗原を発現するCHO-K1-PD1細胞におけるVP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)のCDC活性の検出結果は、CDC%として表され、結果を図32に示す。
【0188】
結果は、陽性対照抗体14C12H1L1(G1WT)のCDC%は、正常ヒト補体血清およびCHO-K1-PD1の混合培養系において、アイソタイプ対照抗体hIgG1DM群のものから有意差を有していたことを示し、CDC検出系が正常であることを示す。同等の用量レベルで、アイソタイプ対照と比較して、VP101(hG1WT)およびVP101(hG1DM)の両方についてCDC%に有意差はなかった。
【0189】
実施例10:末梢血単核細胞およびRaji-PDL1細胞の混合培養系(MLR)におけるVP101(hG1DM)の薬力学的活性
この実験では、ヒトPD-L1過剰発現ベクターplenti6.3-PD-L1-BSD(invitrogenから購入したplenti6.3-BSD)を最初に構築し、発現ベクターをウイルスにパッケージングし、次いでRaji細胞に感染させ、膜PD-L1タンパク質を安定に発現するためのRaji-PDL1安定細胞株を、BSD(10μg/mL)による投薬およびスクリーニングの後、得た。正常ヒトPBMCを、Ficoll末梢血単核細胞単離装置に従って単離し、単離PBMCを、1640完全培地に再懸濁し、カウントし、凍結した。PBMCを回復し、SEB(黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB)を加え、刺激して、2日間培養した。2日後、対数期のRaji-PDL1細胞を回収し、マイトマイシンC(Sigma、操作濃度は25μg/mLであった)を加え、インキュベーター内で60分間インキュベートし、マイトマイシンC処理Raji-PDL1細胞を遠心分離にかけ、洗浄した;SEBで2日間刺激されたPBMCを回収し、洗浄した;これらの細胞を混合し、抗体の存在または非存在の条件下で、1:1の細胞数の割合に従って培養した。3日後、細胞上清を遠心分離により回収し、上清中のIL-2およびIFN-γ濃度をELISAによって検出した。
【0190】
IFN-γの分泌の結果を図33に示す。結果は、VP101(hG1DM)が、IFN-γの分泌を効果的に促進することができ、その活性はニボルマブの活性よりも有意に優れていることを示す。
【0191】
IL-2の分泌の結果を図34に示す。結果は、VP101(hG1DM)が、用量依存的関係でIL-2の分泌を効果的に促進することができ、その活性はニボルマブの活性よりも有意に優れていることを示す。
【0192】
実施例11:PD-1陽性細胞におけるVP101(hG1DM)の抗体依存性食作用活性なし
抗体依存性細胞食作用(ADCP)は、細胞表面抗原に結合した抗体のFc断片が、食作用的活性細胞(マクロファージなど)のFc受容体に結合し、このようにして、抗体結合細胞の食作用を媒介することを意味する。PD-1抗体などの免疫チェックポイント抑制剤抗体について、ADCP活性の存在は、抗腫瘍死滅効果を発揮するPD-1を発現する免疫細胞に対する損傷を引き起こし、それによってそれらの抗腫瘍活性に影響を及ぼす。
【0193】
この実験では、マウスマクロファージをエフェクター細胞として利用し、PD-1過剰発現CHO-K1-PD1細胞株(構築方法について実施例8を参照)を標的細胞として利用した。細胞によって媒介されるADCP効果を検出した。この実験では、フローサイトメトリーを適用して、PD-1を発現する細胞におけるVP101(hG1DM)のADCP活性を検出し、結果は、VP101(hG1DM)がADCP活性を有していなかったが、同じ標的に対する市販の抗体のニボルマブは有意なADCP活性を有していたことを示す。その方法は、詳しくは以下のとおりである:
C57マウス(Guangdong Medical Laboratory Animal Centerから購入)の大腿骨の骨髄を最初に無菌で回収し、氷上で5分間、赤血球溶解バッファーによって溶解した。溶解をDMEM完全培地(10%FBSを含有)で終了し、溶解物を1000rpmで遠心分離にかけ、2回洗浄した。細胞ペレットを10mLのDMEM完全培地に再懸濁し、M-CSFを100ng/mLの操作濃度で加えた。細胞を、誘導のために、細胞培養チャンバー内で、37℃および5%COで7日間培養した。培地の半分を交換し、M-CSFを3および5日目に加えた。細胞の誘導を7日目に終了した。細胞を0.25%トリプシンで消化した。マクロファージを回収し、750×gで5分間遠心分離にかけた。上清を除去し、細胞をDMEM完全培地(10%FBSを含有)に再懸濁し、カウントした。細胞を適正密度に調整し、後の使用のために、96ウェルのコニカル平底プレートに満たした。
【0194】
CHO-K1-PD1細胞を従来法によって回収し、170×gで5分間遠心分離にかけ、再懸濁し、カウントし、生存率を決定した。細胞をPBSで1回洗浄した。カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)をPBSで2.5μMに希釈し、細胞を適切な量の希釈CFSEで再懸濁し(染色密度:10,000,000細胞/mL)、インキュベーター内で、20分間インキュベートした。6mLのDMEM完全培地(10%FBSを含有)を加え、染色を停止した。細胞を170×gで5分間遠心分離にかけ、上清を除去した;1mLのDMEM完全培地を加えた。細胞を、インキュベーター内で、10分間インキュベートした。抗体を、DMEM完全培地で、20μg/mL、2μg/mLおよび0.2μg/mL(操作濃度は10μg/mL、1μg/mLおよび0.1μg/mLであった)に希釈し、アイソタイプ対照抗体hIgG1DMおよびhIgG4を設計した。新鮮な誘導された成熟マクロファージを回収し、750×gで5分間遠心分離にかけ、上清を除去した;細胞をカウントし、96ウェルのコニカル平底プレートに移し、1000×gで5分間遠心分離にかけ、上清を除去した;CHO-K1-PD1-CFSEの細胞密度を調整した;希釈された抗体および標的細胞を、実験設計に従い、マクロファージを含有する96ウェルのコニカル平底プレートに50μL:50μLの割合に従って混合した。細胞を、再懸濁し、十分に混合し、インキュベーター内で、37℃で2時間インキュベートした。150μLの正常温度の1%PBSAを各ウェルに加え、1000×gで5分間遠心分離にかけ、上清を除去した;細胞を200μLのPBSAで1回洗浄した;APC抗マウス/ヒトCD11b抗体(PBSAで500倍希釈)を100μL/サンプルで対応するサンプルに加え、十分に混合し、氷上で40分間インキュベートした。150μLの1%PBSAを各ウェルに加え、1000×gで5分間遠心分離にかけ、上清を除去した;各ウェルを200μLのPBSAで1回洗浄した。200μLの1%PBSAを再懸濁のために各ウェルに加え、続いてBeckmanフローサイトメーターを使用して分析した。
【0195】
系中のマクロファージはAPC陽性であり、食作用に関与するマクロファージはAPCおよびCFSE二重陽性であった。食作用率を、二重陽性細胞の数のAPC陽性細胞の数に対する比として決定し、抗体依存性ADCP活性を評価した。P%として表される各群のADCP活性を、以下の式に従って算出した:
【0196】
【数1】
【0197】
結果を図35に示す。
結果は、ニボルマブがマクロファージ+CHO-K1-PD1系において有意なADCP効果を有していたことを示す;VP101(hG1DM)の食作用率は、アイソタイプ対照抗体の食作用率と同等であり、VP101(hG1DM)がADCP効果を有していなかったことを示した。結果は、VP101(hG1DM)が良好な抗腫瘍効果を有する可能性があることを示す。
【0198】
本発明の特定の実施形態を詳細に記載したが、当業者は理解するであろう。様々な改変および置換を、開示されているすべての教示に従って詳細に行うことができ、これらの変更は、すべて本発明の保護範囲内である。本発明の完全な範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの任意の等価物により提供される。
本開示は、例えば以下を提供する。
[項1]
PD-1を標的とする第1のタンパク質機能領域と、
VEGFAを標的とする第2のタンパク質機能領域
を含む二重特異性抗体であって;
前記第1のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、前記第2のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であるか;または前記第1のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、前記第2のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり;
前記免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;前記一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
または、
前記免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;前記一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
前記免疫グロブリンがヒトIgG1サブタイプのものであり;
EU番号方式に従って、前記免疫グロブリンの重鎖定常領域が、234、235および237位のいずれか2または3つに変異を有し、前記二重特異性抗体のFcγRIIIaおよび/またはC1qに対する親和定数が、変異前の親和定数と比較して、変異後に低減されており;好ましくは、前記親和定数が、Fortebio Octetシステムによって測定される、
二重特異性抗体。
[項2]
EU番号方式に従って、前記免疫グロブリンの前記重鎖定常領域が、以下の変異:
L234AおよびL235A;または
L234AおよびG237A;または
L235AおよびG237A;
または
L234A、L235AおよびG237A
を有する、項1に記載の二重特異性抗体。
[項3]
PD-1を標的とする第1のタンパク質機能領域と、
VEGFAを標的とする第2のタンパク質機能領域
を含む二重特異性抗体であって;
前記第1のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、前記第2のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であるか;または前記第1のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であり、前記第2のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり;
前記免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;前記一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
または、
前記免疫グロブリンについて、重鎖可変領域が、配列番号34~36にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号37~39にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;前記一本鎖抗体について、重鎖可変領域が、配列番号28~30にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のHCDR1~HCDR3を含み、軽鎖可変領域が、配列番号31~33にそれぞれ記載されたアミノ酸配列のLCDR1~LCDR3を含み;
前記免疫グロブリンがヒトIgG1サブタイプのものであり;
EU番号方式に従って、前記免疫グロブリンの重鎖定常領域が、以下の変異:
L234AおよびL235A;または
L234AおよびG237A;または
L235AおよびG237A;または
L234A、L235AおよびG237A
を有する、
二重特異性抗体。
[項4]
EU番号方式に従って、前記免疫グロブリンの前記重鎖定常領域が、
N297A、D265A、D270A、P238D、L328E、E233D、H268D、P271G、A330R、C226S、C229S、E233P、P331S、S267E、L328F、A330L、M252Y、S254T、T256E、N297Q、P238S、P238A、A327Q、A327G、P329A、K322A、T394D、G236R、G236A、L328R、A330S、P331S、H268A、E318AおよびK320A
から選択される1つまたは複数の変異を有する、項1~3のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項5]
前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号5および配列番号9から選択され、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号7、配列番号11および配列番号17から選択され;
または、
前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号5および配列番号9から選択され、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号7、配列番号11および配列番号17から選択され;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されている、
項1~4のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項6]
前記二重特異性抗体が、以下の(1)~(12):
(1)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号5に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号7に記載されている;
(2)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号5に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号11に記載されている;
(3)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載
されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号5に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号17に記載されている;
(4)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号7に記載されている;
(5)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号11に記載されている;
(6)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号17に記載されている;
(7)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号5に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号7に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されている;
(8)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号5に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号11に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されている;
(9)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号5に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号17に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されている;
(10)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号7に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されている;
(11)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号11に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されている;および
(12)前記免疫グロブリンの前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号17に記載されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号1に記載されており、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域の前記アミノ酸配列が配列番号3に記載されている
のいずれか1つから選択される、項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項7]
前記免疫グロブリンの前記重鎖の前記アミノ酸配列が配列番号24に記載されており、前記免疫グロブリンの前記軽鎖の前記アミノ酸配列が配列番号26に記載されている、項1~6のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項8]
前記免疫グロブリンまたはその抗原結合断片が、約10-6M未満、例えば約10-7M、10-8M未満または10-9M以下の親和定数でFcγRIに結合し;好ましくは、前記親和定数が、Fortebio Octetシステムによって測定される、
項1~7のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項9]
前記免疫グロブリンまたはその前記抗原結合断片が、約10-9M未満、例えば約10-7M、10-8M未満または10-9M以下の親和定数でC1qに結合し;好ましくは、前記親和定数が、Fortebio Octetシステムによって測定される、
項1~8のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項10]
前記第1のタンパク質機能領域が、直接的に、またはリンカー断片によって、前記第2のタンパク質機能領域に連結されているか;および/または前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域が、直接的に、またはリンカー断片によって、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域に連結されている、項1~9のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項11]
前記リンカー断片が(GGGGS)nであり、nが正の整数である;好ましくは、nが1、2、3、4、5、または6である、項10に記載の二重特異性抗体。
[項12]
前記第1のタンパク質機能領域および第2のタンパク質機能領域の数が、それぞれ独立して、1、2またはそれ以上である、項1~11のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項13]
前記一本鎖抗体が、前記免疫グロブリンの前記重鎖のC末端に連結されている、項1~12のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[項14]
PD-1を標的とする第1のタンパク質機能領域と、
VEGFAを標的とする第2のタンパク質機能領域
を含む二重特異性抗体であって;
前記第1のタンパク質機能領域の数が1であり、前記第2のタンパク質機能領域の数が2であり;
前記第1のタンパク質機能領域が免疫グロブリンであり、前記第2のタンパク質機能領域が一本鎖抗体であり;
前記免疫グロブリンの重鎖のアミノ酸配列が配列番号24に記載されており、前記免疫グロブリンの軽鎖のアミノ酸配列が配列番号26に記載されており;
前記一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号9に記載されており、前記一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号17に記載されており;
前記一本鎖抗体が前記免疫グロブリンの前記重鎖のC末端に連結されており;
前記第1のタンパク質機能領域が、第1のリンカー断片によって、前記第2のタンパク質機能領域に連結されており;前記一本鎖抗体の前記重鎖可変領域が、第2のリンカー断片によって、前記一本鎖抗体の前記軽鎖可変領域に連結されており;前記第1のリンカー断片および前記第2のリンカー断片が同一または異なり;
好ましくは、前記第1のリンカー断片および第2のリンカー断片のアミノ酸配列が、独立して、配列番号18および配列番号19から選択され;
好ましくは、前記第1のリンカー断片および第2のリンカー断片の前記のアミノ酸配列が、配列番号18に記載されている、
二重特異性抗体。
[項15]
項1~14のいずれか1項に記載の前記二重特異性抗体をコードする、単離された核酸分子。
[項16]
項15に記載の前記単離された核酸分子を含む、ベクター。
[項17]
項15に記載の前記単離された核酸分子または項16に記載の前記ベクターを含む、宿主細胞。
[項18]
抗体またはその抗原結合断片と複合部分を含む複合体であって、免疫グロブリンが項1~14のいずれか1項に記載の前記二重特異性抗体であり、前記複合部分が検出可能な標識であり;好ましくは、前記複合部分が放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、発色物質または酵素である、複合体。
[項19]
項1~14のいずれか1項に記載の前記二重特異性抗体、または項18に記載の前記複合体を含む、キットであって;
好ましくは、前記キットが、前記免疫グロブリンまたはその抗原結合断片を特異的に認識することが可能な二次抗体をさらに含み;任意選択で、前記二次抗体が、検出可能な標識、例えば、放射性同位元素、蛍光物質、発光物質、発色物質または酵素をさらに含む、キット。
[項20]
サンプル中のPD-1および/またはVEGFAの存在またはレベルを検出するためのキットの調製における、項1~14のいずれか1項に記載の前記二重特異性抗体、または項18に記載の前記複合体の使用。
[項21]
項1~14のいずれか1項に記載の前記二重特異性抗体、または項18に記載の前記複合体を含む医薬組成物であって、任意選択で、前記医薬組成物が、薬学的に許容されるベクターおよび/または賦形剤をさらに含む、医薬組成物。
[項22]
悪性腫瘍を治療および/または予防するための医薬の調製における、項1~14のいずれか1項に記載の前記二重特異性抗体、または項18に記載の前記複合体の使用であって;好ましくは、前記悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺癌、食道胃接合部腺癌ならびに白血病から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、前記非小細胞肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記肝臓がんが肝細胞がんであり;
好ましくは、前記腎腫瘍が腎細胞がんであり;
好ましくは、前記乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、前記尿路上皮がんが膀胱がんである、
使用。
[項23]
有効量の項1~14のいずれか1項に記載の前記二重特異性抗体、または項18に記載の前記複合体をそれを必要とする対象に投与するステップを含む、悪性腫瘍を治療および/または予防する方法であって;好ましくは、前記悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイ
クロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺がん、食道胃接合部腺癌ならびに白血病から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、前記非小細胞肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記肝臓がんが肝細胞がんであり;
好ましくは、前記腎腫瘍が腎細胞がんであり;
好ましくは、前記乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、前記尿路上皮がんが膀胱がんである、
方法。
[項24]
悪性腫瘍の治療および/または予防において使用するための、項1~14のいずれか1項に記載の前記二重特異性抗体であって;好ましくは、前記悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺癌、食道胃接合部腺癌ならびに白血病から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、前記非小細胞肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記肝臓がんが肝細胞がんであり;
好ましくは、前記腎腫瘍が腎細胞がんであり;
好ましくは、前記乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、前記尿路上皮がんが膀胱がんである、
二重特異性抗体。
[項25]
悪性腫瘍の治療および/または予防において使用するための、項18に記載の前記複合体であって;好ましくは、前記悪性腫瘍が結腸がん、直腸がん、肺がん、肝臓がん、卵巣がん、皮膚がん、神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、腎腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、消化器がん、乳がん、脳腫瘍、子宮頸がん、食道がん、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)およびミスマッチ修復の欠損(dMMR)のがん、尿路上皮がん、中皮腫、子宮内膜がん、胃腺癌、食道胃接合部腺癌ならびに白血病から選択され;
好ましくは、前記肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり;好ましくは、前記非小細胞肺がんがEGFRおよび/またはALK感受性変異型非小細胞肺がんであり;
好ましくは、前記肝臓がんが肝細胞がんであり;
好ましくは、前記腎腫瘍が腎細胞がんであり;
好ましくは、前記乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり;
好ましくは、前記尿路上皮がんが膀胱がんである、
複合体。
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【配列表】
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