特許 7662680 蒸発燃料処理装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2025-04-07

(45)【発行日】2025-04-15

(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置

(51)【国際特許分類】

   F02M 25/08 20060101AFI20250408BHJP

【ＦＩ】

F02M25/08 311A

F02M25/08 311H

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2023003103

(22)【出願日】2023-01-12

(65)【公開番号】P2024099273

(43)【公開日】2024-07-25

【審査請求日】2024-01-10

(73)【特許権者】

【識別番号】391002498

【氏名又は名称】フタバ産業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000578

【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人

(72)【発明者】

【氏名】岩本 光司

【審査官】小林 勝広

(56)【参考文献】

【文献】特開２０２２－１２０４９２（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開平０４－０５９３５７（ＪＰ，Ｕ）

【文献】実開昭５６－０７７６４２（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ０２Ｂ ４７／００－４７／０６、４９／００

Ｆ０２Ｍ ２５／００－２５／１４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

複数のポートを有する蒸発燃料処理装置であって、
本体ケースと、蓋部とを備え、
前記本体ケースは、
それぞれ吸着材を収容するように構成された複数の吸着室と、
前記複数の吸着室のうちの１つである対象吸着室と、当該蒸発燃料処理装置の外部と、を連通するように構成された開口部と、
前記本体ケースに配置された複数の第１係合部と、
を備え、
前記蓋部は、
前記複数のポートのうちの１つである対象ポートと、
前記蓋部に配置され、前記複数の第１係合部に対してスナップフィット構造でそれぞれ係合可能に構成された複数の第２係合部と、
を備え、
前記開口部の少なくとも一部を閉塞するように、前記本体ケースにおける予め設定された装着面にて装着されるように構成され、
前記対象ポートは、前記対象吸着室におけるガスの流れ方向に交差する方向に当該ガスを誘導するように構成され、
前記蓋部が前記装着面に沿って回転する方向を回転方向として、
前記蓋部は、前記本体ケースに装着される前に前記回転方向に沿って回転されることで、複数の装着角度から１の装着角度が選択されて前記本体ケースに装着され、
前記複数の第１係合部及び前記複数の第２係合部は、前記回転方向に沿って回転した場合に回転対称となる位置にそれぞれ配置される
ように構成された蒸発燃料処理装置。

【請求項2】

請求項１に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記本体ケースに装着された前記蓋部が前記回転方向に沿って回転することを抑制するように構成された回転抑制部、
をさらに備える蒸発燃料処理装置。

【請求項3】

請求項１又は請求項２に記載の蒸発燃料処理装置であって、
フィルタをさらに備え、
前記吸着材は、該吸着材の集合体である吸着ユニットであり、
前記吸着ユニットは、前記フィルタを介して前記蓋部に押圧される
ように構成された蒸発燃料処理装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、蒸発燃料処理装置に関する。

【背景技術】

【0002】

例えば、下記特許文献１には、蒸発燃料処理装置において、本体ケースにおける開口部と開口部を閉塞する蓋部とが溶着により固定される構成が開示されている。蓋部には、蒸発燃料処理装置の内外を連通するように構成されたポートが配置されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０２２－１２０４９２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところで、蒸発燃料処理装置に配置されるポートの向きは、当該蒸発燃料処理装置が搭載される車両等の仕様に応じて変更できることが好ましい。しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、上記特許文献１の構成では、ポートの向き毎に蓋部等の部品や製造治具を開発する必要があり、容易にはポート向きを変更することができないという課題が見出された。

【0005】

本開示の１つの局面は、本体ケースにおける開口部と蓋部とが固定される蒸発燃料処理装置において、ポートの向きを変更しやすくすることにある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示の一態様は、複数のポートを有する蒸発燃料処理装置である。蒸発燃料処理装置は、本体ケースと、蓋部とを備える。本体ケースは、複数の吸着室と、開口部と、を備える。吸着室は、それぞれ吸着材を収容するように構成される。開口部は、複数の吸着室のうちの１つである対象吸着室と大気とを連通するように構成される。

【0007】

蓋部は、複数のポートのうちの１つである対象ポートを備える。蓋部は、開口部の少なくとも一部を閉塞するように、本体ケースにおける予め設定された装着面にて装着されるように構成される。対象ポートは、対象吸着室におけるガスの流れ方向に交差する方向にガスを誘導するように構成される。蓋部は、本体ケースに装着される前に回転方向に沿って回転されることで、複数の装着角度から１の装着角度が選択されて本体ケースに装着される。

【0008】

このような構成によれば、対象ポートがガスを誘導する方向が、蓋部の回転と共に変化するように構成でき、蓋部が複数の装着角度から１の装着角度を選択することができる。よって、対象ポートの向きは、蓋部の装着角度を設定するだけで複数の方向に変更することができる。したがって、本体ケースにおける開口部と蓋部とが固定される蒸発燃料処理装置において、ポートの向きを変更しやすくすることができる。

【0009】

本開示の一態様は、本体ケースに装着された蓋部が回転方向に沿って回転することを抑制するように構成された回転抑制部、をさらに備えてもよい。
このような構成によれば、装着前には蓋部の装着角度を設定可能であり、かつ装着後の蓋部が回転することを抑制するように構成することができる。

【0010】

本開示の一態様は、複数の第１係合部と、複数の第２係合部と、をさらに備えてもよい。第１係合部は、本体ケースに配置される。第２係合部は、蓋部に配置され、複数の第１係合部とそれぞれ係合可能に構成される。複数の第１係合部及び複数の第２係合部は、回転方向に沿って回転した場合に回転対称となる位置にそれぞれ配置されてもよい。

【0011】

このような構成によれば、複数の第１係合部及び複数の第２係合部が係合可能な位置毎に、蓋部の装着角度を設定することができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】実施形態の蒸発燃料処理装置を示す斜視図である。

【図2】蒸発燃料処理装置のII－II断面図である。

【図3】図３Ａは副室部付近の拡大断面図、図３Ｂは副室部付近の右側面図である。

【図4】図４Ａは蓋部の設置角度が１８０度である場合の斜視図、図４Ｂは蓋部の設置角度が９０度である場合の斜視図、図４Ｃは蓋部の設置角度が－９０度である場合の斜視図である。

【図5】図５Ａは第１変形例の蒸発燃料処理装置において、蓋部の設置角度が０度である場合の斜視図を示す斜視図、図５Ｂは蓋部の設置角度が１８０度である場合の斜視図、図５Ｃは蓋部の設置角度が－９０度である場合の斜視図、図５Ｄは蓋部の設置角度が９０度である場合の斜視図である。

【図6】図６Ａは第２変形例の蒸発燃料処理装置を示す斜視図、図６Ｂは第３変形例の蒸発燃料処理装置を示す斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
［１．実施形態］
［１－１．構成］
図１～図３に示す蒸発燃料処理装置１Ａは、周知のキャニスタとしての機能を備える。すなわち、車両の燃料タンク（図示省略）で発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する機能を備える。蒸発燃料処理装置１Ａは、本体ケース２と、蓋部７０と、を備える。

【0014】

本体ケース２は、内部空間を形成するケースである。本体ケース２は、例えば、合成樹脂製のケースである。なお、本体ケース２の材質はこれに限定されるものではない。
本体ケース２は、チャージポート２１と、パージポート２２と、大気ポート２３（対象ポートの一例に相当する）と、副室部６０と、を備える。ポート２１～２３は、本体ケース２における同じ側（例えば、図１では上側）に配置されている。また、これらのポート２１～２３はポートの向きが同じ向きに設定されている。なお、ポートの向きとは、ポートから排出されるガスが誘導される方向である。

【0015】

なお、ここでいうガスとは、蒸発燃料処理装置１Ａの内部を流通する気体であって、大気及び蒸発燃料が含まれうる気体である。
以後、本体ケース２におけるチャージポート２１、パージポート２２、及び、大気ポート２３が設けられた側を、ポート側と記載する。本体ケース２は、ポート側の反対側に開口２６を有している。当該開口２６は、蓋として機能するキャップ２７により閉塞されている。

【0016】

チャージポート２１は、配管によって車両の燃料タンクに接続される。チャージポート２１は、燃料タンクで発生した蒸発燃料を蒸発燃料処理装置１Ａ内に取り込むように構成されている。

【0017】

パージポート２２は、パージ弁を介して車両のエンジンの吸気管（図示省略）に接続される。パージポート２２は、蒸発燃料処理装置１Ａ内の蒸発燃料を蒸発燃料処理装置１Ａから排出し、エンジンに供給するように構成されている。

【0018】

大気ポート２３は、蓋部７０に配置される。蓋部７０は、後述する方向転換部７５を備えており、大気ポート２３は蓋部７０の方向転換部７５に接続される。大気ポート２３は、大気に開放される。大気ポート２３は、蒸発燃料を取り除いた気体を大気中に放出する。また、大気ポート２３は、外部ガス（つまりパージガス）を取り込むことで、蒸発燃料処理装置１Ａが吸着した蒸発燃料を脱離（つまりパージ）させる。

【0019】

本体ケース２の内部空間は、図２に示すように、第１室２Ａと、第２室２Ｂと、第３室２Ｃと、に仕切られている。
第１室２Ａは、一例として、略直方体形状、又は、円柱状である。第１室２Ａは、ポート側の端部が、チャージポート２１及びパージポート２２に繋がっている。また、第１室２Ａのポート側の端部には、第１フィルタ３２が配置されている。第１室２Ａのキャップ２７側の端部には、第２フィルタ３３が配置されている。第１フィルタ３２と第２フィルタ３３との間には、吸着材４０が配置されている。吸着材４０は、一例として、複数のペレットの集合体である。ペレットとは、粒状の活性炭である。ペレットは、粉状の活性炭をバインダと共に混練し、所定の形状に成形することで生成される。なお、第１室２Ａには、例えば、粉状の活性炭等、ペレット以外の吸着材が配置されてもよい。

【0020】

第１室２Ａは、キャップ２７側の端部が第２室２Ｂに繋がっている。本体ケース２の内部では、蒸発燃料を含むガス等のガスは、第１室２Ａと第２室２Ｂとを往来できる。
第２室２Ｂは、キャップ２７側の端部から大気ポート２３に延びる細長い形状を有する空間である。第２室２Ｂは、一例として、略直方体形状、又は、円柱状である。第２室２Ｂは、ポート側の端部が第３室２Ｃに繋がっている。また、第２室２Ｂのキャップ２７側の端部には、第１フィルタ３８が配置されている。第２室２Ｂのポート側の端部には、第２フィルタ５４が配置されている。第２室２Ｂにおいて第１フィルタ３８と第２フィルタ５４との間には、吸着材４３が配置されている。なお、吸着材４３は、吸着材４０と同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。

【0021】

副室部６０には、第３室２Ｃが形成される。第３室２Ｃは、第２室２Ｂの第２フィルタ５４側に隣接する空間である。
副室部６０は、図３に示すように、当接部６１と、吸着ユニット６２と、フィルタ６３と、開口部６５と、第１係合部６６Ａと、保持部６８と、段差部６８Ａと、大径部６９と、を備える。吸着ユニット６２は開口部６５から第３室２Ｃに挿入される。

【0022】

副室部６０内の第３室２Ｃは、隣接する第２室２Ｂよりも体積（内部空間の体積、及び外形の体積）が小さく構成されている。つまり、第２室２Ｂを相対的に体積が大きな主室とすると、第３室２Ｃは、相対的に体積が小さな副室である。

【0023】

当接部６１は、開口部６５から第３室２Ｃに挿入された吸着ユニット６２が突き当たる部位である。当接部６１は、吸着ユニット６２と当接することで吸着ユニット６２を保持する。当接部６１は、吸着ユニット６２の挿入方向奥側（図３では左側）に転換空間６４が形成されるように吸着ユニット６２を位置決めするために用いられる。転換空間６４については後述する。

【0024】

吸着ユニット６２は、例えば、活性炭ユニットが挙げられる。活性炭ユニットとしては、例えば、粒状活性炭、モノリス形状やハニカム形状に成形された成形活性炭、繊維状活性炭を用いてシート状、直方体状、円柱状、多角柱状等に成形したもの等が挙げられる。なお、吸着ユニット６２は、ユニット化されていれば、他の形態であってもよい。

【0025】

上記の第１室２Ａ及び第２室２Ｂでは、ガスの主たる流れ方向（以下、単に流れ方向という）が、第１フィルタ３２，３８から第２フィルタ３３，５４に向かう方向、或いはその反対方向（すなわち図２では破線矢印Ｂで示す上下方向）である。しかし、第３室２Ｃには、流れ方向が転換される転換空間６４が設けられており、この転換空間６４にて、ガスは、流れ方向が蓋部７０に向かう方向、或いはその反対方向に転換される。つまり、第３室２Ｃでは、流れ方向が、転換空間６４から蓋部７０に向かう方向、或いはその反対方向（すなわち図２では破線矢印Ｃで示す左右方向）である。換言すれば、第３室２Ｃでの流れ方向は、第１室２Ａ及び第２室２Ｂでの流れ方向とは交差する。すなわち第３室２Ｃでの流れ方向は、図２では上下方向と直交する左右方向である。

【0026】

フィルタ６３は、吸着ユニット６２の蓋部７０側（図３では右側）に配置される。なお、吸着ユニット６２は、フィルタ６３側の面が、段差部６８Ａにおける蓋部７０側の面である装着面６９Ａと面一になるように構成される。つまり、吸着ユニット６２の挿入方向の沿った高さは、副室部６０における当接部６１から装着面６９Ａまでの高さと一致する。

【0027】

フィルタ６３は、蓋部７０が副室部６０に取り付けられた際に、蓋部７０から押圧力を受けた状態になるよう設定される。よって、吸着ユニット６２は、フィルタ６３からの押圧力と当接部６１からの反力とによって、動きにくくなるように保持される。

【0028】

保持部６８は、吸着ユニット６２の挿入方向周りの外周部（例えば、図３では吸着ユニット６２の上下）を保持する部位である。挿入方向周りの外周部は、換言すれば、吸着ユニット６２におけるガスの流れ方向に平行な外周部である。保持部６８の内面は、吸着ユニット６２の外周の形状に沿う円筒形に構成される。これらの構成により、吸着ユニット６２の挿入方向周りの外周部は、本体ケース２の保持部６８に当接するように構成される。

【0029】

大径部６９は、保持部６８に対して吸着ユニット６２とは反対側（すなわち保持部６８よりも外周側）に隔てられた位置で蓋部７０を取り囲むように配置される。つまり、大径部６９は、保持部６８における外径よりも大きな外径を有する。

【0030】

段差部６８Ａは、保持部６８及び大径部６９を接続する段差を構成する部位である。段差部６８Ａは、保持部６８及び大径部６９に対して垂直な面を構成する。段差部６８Ａにおける内側の面（図３では右側の面）は、本体ケース２と蓋部７０との装着面６９Ａ（接合面）である。

【0031】

開口部６５は、第３室２Ｃと大気とを連通するように構成される部位である。開口部６５は、大径部６９における段差部６８Ａとは反対側の端部である。
蓋部７０は、開口部６５の少なくとも一部を閉塞する。蓋部７０は、図３に示すように、円盤状の本体部７１と、本体部７１に繋がるパイプ部７２と、方向転換部７５と、を備える。パイプ部７２における開口端は大気ポート２３を構成する。

【0032】

蓋部７０の外周の大径部６９との間には、シール部材７８が配置される。また、蓋部７０では、大気ポート２３は、方向転換部７５を介して本体ケース２に連通するように構成される。方向転換部７５は、略直方体形状であり、内部にガスが流通するための空間が形成される。方向転換部７５は、略直方体形状の一面が蓋部７０の本体部７１（すなわち略円形の部位）側に向けられており、この面に隣接する４つの側面のうちの任意の位置に、その側面と直交する方向に大気ポート２３が向くようにパイプ部７２が配置される。なお、方向転換部７５において、大気ポート２３が配置された側面と大気ポート２３の向きとは、交差していればよく、直交する必要はない。また、方向転換部７５は、蓋部７０Ｂの本体部７１とパイプ部７２とを気密を確保しつつ連結するように構成される。

【0033】

シール部材７８は、開口部６５と蓋部７０との間の全周を閉塞するように構成される。シール部材７８は、環状の部材である。環状は、円形、楕円形、多角形等を含み、孔の全周が取り囲まれる形状である。

【0034】

シール部材７８は、例えば、Ｏリングを採用できる。シール部材７８により開口部６５における蓋部７０の外周部分は隙間なく閉塞される。ただし、蓋部７０には、大気と連通する大気ポート２３が備えられている。開口部６５は、大気ポート２３においては開口された状態となる。

【0035】

なお、大気ポート２３には、ＥＬＣＭ（すなわち、Evaporative Leak Check Module）等の任意のモジュールが接続されてもよい。ＥＬＣＭは、蒸発燃料処理装置１Ａの漏れ検査を行うためのモジュールである。

【0036】

蓋部７０は、本体ケース２に対してスナップフィット構造８０Ａ（回転抑制部の一例に相当する）で固定されるように構成される。スナップフィット構造８０Ａは、材料の弾性を利用して凸部を凹部にはめ込むことにより固定する方式を採用した構造である。本実施形態では、第１係合部６６Ａと、第２係合部７３Ａとが係合することで、本体ケース２に対して蓋部７０を装着する。第１係合部６６Ａは、本体ケース２における大径部６９の外周部に配置された凹部である。第２係合部７３Ａは、蓋部７０の外周部に配置された凸部である。

【0037】

このような構成によって、蓋部７０を大径部６９に沿って挿入すると、蓋部７０の第２係合部７３Ａが内周側に向けて撓む。そして、第２係合部７３Ａが本体ケース２の第１係合部６６Ａに嵌り込むと、該部位の撓みが解消され、第１係合部６６Ａと第２係合部７３Ａとの係合状態が維持される。つまり、蓋部７０が本体ケース２に対して固定される。

【0038】

スナップフィット構造８０Ａは、蓋部７０が装着面６９Ａに沿って回転する方向を回転方向Ｒ（図３Ｂ参照）とすると、回転方向に沿って回転した場合に回転対称となる位置にそれぞれ配置される。本実施形態の例では、図３Ｂに示すように、４つのスナップフィット構造８０Ａを備える。すなわち、３６０度をスナップフィット構造８０Ａの数である４で除した９０度毎に、等間隔でスナップフィット構造８０Ａが配置される。なお、４つのスナップフィット構造８０Ａは、任意の第１係合部６６Ａが全ての第２係合部７３Ａの何れかと係合可能になるように構成されている。本実施形態の場合、全ての第１係合部６６Ａが同形状であり、全ての第２係合部７３Ａも同形状に構成される。

【0039】

ここで、蓋部７０に設けられた大気ポート２３は、第３室２Ｃにおけるガスの流れ方向に交差する方向にガスを誘導するように構成されている。本実施形態の例では、大気ポート２３は、蓋部７０と本体ケース２との装着面６９Ａに沿う任意の方向に向けられうる。

【0040】

このような構成であるため、蓋部７０は、本体ケース２に接合される前に、回転方向Ｒに沿って回転されることで、複数の装着角度から１の装着角度を選択することができる。蓋部７０は、装着角度が選択されてから本体ケース２に装着される。なお、装着角度とは、基準方向に対する回転角度（例えば右回りを正とする角度）である。例えば、図１に示すように、大気ポート２３がチャージポート２１及びパージポート２２と同じ方向を向く場合を基準方向とすると、図４Ａのように大気ポート２３がチャージポート２１及びパージポート２２と反対方向を向く場合、装着角度は１８０度である。また、図４Ｂ、図４Ｃのように、大気ポート２３が基準方向から９０度回転した状態では、装着角度は９０度又は－９０度である。つまり、４つのスナップフィット構造８０Ａを備える構成では、４つの装着角度から１の装着角度を選択することができる。

【0041】

装着された蓋部７０は、スナップフィット構造８０Ａによって、回転方向Ｒに沿って回転することが抑制される。
ここで、蒸発燃料処理装置１Ａにおいて、蓋部７０は、フィルタ６３を介して吸着ユニット６２を押圧しつつ、本体ケース２に装着される。よって、蓋部７０と吸着ユニット６２とは、近接して配置される。換言すれば、蓋部７０は、吸着ユニット６２が開口部６５側への移動する際の移動経路上（すなわち、吸着ユニット６２よりも開口部６５側）に配置される。さらに換言すれば、蓋部７０は吸着ユニット６２を開口部６５側から押さえることで吸着ユニット６２の移動を抑制する機能を備える。

【0042】

なお、上記実施形態では、スナップフィット構造８０Ａが装着後の蓋部７０の回転を抑制する機能を備えたが、スナップフィット構造８０Ａとは別の構成を用いて装着後の蓋部７０の回転を抑制する機能を備えてもよい。例えば、Ｏリングにより摩擦力が大きな構成を採用することによって、装着後の蓋部７０の回転を抑制するようにしてもよい。或いは、本体ケース２の装着面６９Ａが多角形に形成され、蓋部７０がこの装着面６９Ａの形状に合致する多角形の形状に形成されてもよい。これらのように構成された場合、蓋部７０が固定できれば、スナップフィット構造８０Ａを不要とすることができる。

【0043】

上記実施形態では、蓋部７０と本体ケース２とをスナップフィット構造８０Ａを用いて組み付けたが、この構成に限定されない。例えば、任意の１つ以上の第１係合部６６Ａ及び第２係合部７３Ａが係合する構成、接着剤等を用いる構成等を採用してもよい。

【0044】

［１－２．効果］
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
（１ａ）蒸発燃料処理装置１Ａは、本体ケース２と、蓋部７０と、複数のポート２１～２３と、を備える。本体ケース２は、複数の吸着室２Ａ～２Ｃと、開口部６５と、を備える。複数の吸着室２Ａ～２Ｃは、それぞれ吸着材を収容するように構成される。開口部６５は、複数の吸着室２Ａ～２Ｃのうちの１つである対象吸着室と大気とを連通するように構成される。蓋部７０は、複数のポート２１～２３のうちの１つである大気ポート２３を備える。蓋部７０は、開口部６５の少なくとも一部を閉塞するように、本体ケース２における予め設定された装着面６９Ａにて装着されるように構成される。大気ポート２３は、対象吸着室におけるガスの流れ方向に交差する方向にガスを誘導するように構成される。蓋部７０は、本体ケース２に装着される前に回転方向Ｒに沿って回転されることで、複数の装着角度から１の装着角度が選択されて本体ケース２に装着される。

【0045】

このような構成によれば、大気ポート２３がガスを誘導する方向が、蓋部７０の回転と共に変化するように構成でき、蓋部７０が複数の装着角度から１の装着角度を選択することができる。よって、大気ポート２３の向きは、蓋部７０の装着角度を設定するだけで複数の方向に変更することができる。よって、本体ケース２における開口部６５と蓋部７０とが固定される蒸発燃料処理装置１Ａにおいて、ポートの向きを変更しやすくすることができる。

【0046】

（１ｂ）本開示の一態様は、スナップフィット構造８０Ａをさらに備える。スナップフィット構造８０Ａは、本体ケース２に装着された蓋部７０が回転方向Ｒに沿って回転することを抑制するように構成される。
このような構成によれば、装着前には蓋部７０の装着角度を設定可能であり、かつ装着後の蓋部７０が回転することを抑制するように構成することができる。

【0047】

（１ｃ）本開示の一態様は、複数の第１係合部６６Ａと、複数の第２係合部７３Ａと、をさらに備えてもよい。複数の第１係合部６６Ａは、本体ケース２に配置される。複数の第２係合部７３Ａは、蓋部７０に配置され、複数の第１係合部６６Ａとそれぞれ係合可能に構成される。複数の第１係合部６６Ａ及び複数の第２係合部７３Ａは、回転方向Ｒに沿って回転した場合に回転対称となる位置にそれぞれ配置されてもよい。
このような構成によれば、複数の第１係合部６６Ａ及び複数の第２係合部７３Ａが係合可能な位置毎に、蓋部７０の装着角度を設定することができる。

【0048】

［２．他の実施形態］
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。

【0049】

（２ａ）上記実施形態で採用したスナップフィット構造８０Ａは、任意の形状のスナップフィット構造を採用できる。また、スナップフィット構造でない、蓋部７０と本体ケース２とを固定するように構成された任意のロック機構を採用してもよい。

【0050】

（２ｂ）上記実施形態では、蓋部７０がチャージポート２１から遠い側（図２では右側）からチャージポート２１に近づくように本体ケース２に装着されるように、副室部６０を構成したが、この構成に限定されない。例えば、副室部６０に換えて、図５Ａ～図５Ｄに示す第２変形例の蒸発燃料処理装置１Ｂのように、副室部６０Ｂを備えてもよい。副室部６０Ｂは、蓋部７０がポート側から装着されるように構成される。

【0051】

この構成においても、蓋部７０が複数の装着角度から１の装着角度を選択することができる。例えば、図５Ａに示すように、大気ポート２３がチャージポート２１側を向く場合を基準方向とすると、図５Ｂのように大気ポート２３がチャージポート２１と反対方向を向く場合、装着角度は１８０度である。また、図５Ｃ、図５Ｄのように、大気ポート２３が基準方向から９０度回転した状態では、装着角度は９０度又は－９０度である。

【0052】

（２ｃ）上記実施形態では、副室部６０が４つの第１係合部６６Ａを備え、蓋部７０が４つの第２係合部７３Ａを備えることで、蒸発燃料処理装置１Ａが４つのスナップフィット構造８０Ａを備えたが、この構成に限定されない。例えば、図６Ａに示す第２変形例の蒸発燃料処理装置１Ｃのように、６つのスナップフィット構造８０Ａを備えてもよい。すなわち、副室部６０Ｃと、蓋部７０Ｃとを備えてもよい。副室部６０Ｃは、６つの第１係合部６６Ａを備え、蓋部７０Ｃは、６つの第２係合部７３Ａを備える。６つスナップフィット構造８０Ａは、６０度毎に配置され、全て同様の形状に構成される。

【0053】

（２ｄ）同様に、例えば、図６Ｂに示す第３変形例の蒸発燃料処理装置１Ｄのように、３つのスナップフィット構造８０Ａを備えてもよい。すなわち、副室部６０Ｄと、蓋部７０Ｄとを備えてもよい。副室部６０Ｄは、３つの第１係合部６６Ａを備え、蓋部７０Ｄは、３つの第２係合部７３Ａを備える。３つスナップフィット構造８０Ａは、１２０度毎に配置され、全て同様の形状に構成される。

【0054】

（２ｅ）上記実施形態では、複数のスナップフィット構造８０Ａが全て同様の形状に構成されたが、この構成に限られない。複数の第１係合部６６Ａが、複数の第２係合部７３Ａに係合可能であれば、どのような形状に構成されてもよい。第１係合部と第２係合部は同数あっても同数でなくてもよい。例えば、第１係合部６６Ａの数が第２係合部７３Ａの数よりも多く設定されていてもよい。

【0055】

（２ｆ）上記実施形態における１つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、１つの構成要素が有する１つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、１つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される１つの機能を、１つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。

【0056】

（２ｇ）前述した蒸発燃料処理装置１Ａの他、当該蒸発燃料処理装置１Ａを構成要素とするシステム、蒸発燃料処理方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。

【0057】

［本明細書が開示する技術思想］
［項目１］
複数のポートを有する蒸発燃料処理装置であって、
本体ケースと、蓋部とを備え、
前記本体ケースは、
それぞれ吸着材を収容するように構成された複数の吸着室と、
前記複数の吸着室のうちの１つである対象吸着室と大気とを連通するように構成された開口部と、
を備え、
前記蓋部は、
前記複数のポートのうちの１つである対象ポートを備え、
前記開口部の少なくとも一部を閉塞するように、前記本体ケースにおける予め設定された装着面にて装着されるように構成され、
前記対象ポートは、前記対象吸着室におけるガスの流れ方向に交差する方向にガスを誘導するように構成され、
前記蓋部が前記装着面に沿って回転する方向を回転方向として、
前記蓋部は、前記本体ケースに装着される前に前記回転方向に沿って回転されることで、複数の装着角度から１の装着角度が選択されて前記本体ケースに装着される
ように構成された蒸発燃料処理装置。
［項目２］
項目１に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記本体ケースに装着された前記蓋部が前記回転方向に沿って回転することを抑制するように構成された回転抑制部、
をさらに備える蒸発燃料処理装置。
［項目３］
項目１又は項目２に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記本体ケースに配置された複数の第１係合部と、
前記蓋部に配置され、前記複数の第１係合部とそれぞれ係合可能に構成された複数の第２係合部と、
をさらに備え、
前記複数の第１係合部及び前記複数の第２係合部は、前記回転方向に沿って回転した場合に回転対称となる位置にそれぞれ配置される
ように構成された蒸発燃料処理装置。

【符号の説明】

【0058】

１Ａ～１Ｄ…蒸発燃料処理装置、２…本体ケース、２Ａ…第１室、２Ｂ…第２室、２Ｃ…第３室、２１…チャージポート、２２…パージポート、２３…大気ポート、４０，４３…吸着材、６０，６０Ｂ～６０Ｄ…副室部、６１…当接部、６２…吸着ユニット、６３…フィルタ、６４…転換空間、６５…開口部、６６Ａ…第１係合部、６８…保持部、６８Ａ…段差部、６９…大径部、６９Ａ…装着面、７０，７０Ｂ～７０Ｄ…蓋部、７１…本体部、７２…パイプ部、７３Ａ…第２係合部、７５…方向転換部、７８…シール部材、８０Ａ…スナップフィット構造。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】