(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】サポート車
(51)【国際特許分類】
E01C 19/00 20060101AFI20250408BHJP
B61B 13/00 20060101ALN20250408BHJP
【FI】
E01C19/00
B61B13/00 A
(21)【出願番号】P 2023046194
(22)【出願日】2023-03-23
【審査請求日】2024-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 雅嘉
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-260103(JP,A)
【文献】実開平05-083806(JP,U)
【文献】特開平08-108854(JP,A)
【文献】特開平06-294105(JP,A)
【文献】実開昭63-192803(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面の勾配を横切る方向に走行する法面作業車を支持し、基準走行線に沿って走行するサポート車において、
前記法面作業車を支持する本体部と、車輪どうしを前記本体部の幅方向に離間させて支持し、前記車輪の舵角を変更するステアリング機構と、を備え、
前記ステアリング機構は、
前記舵角の変更時に、前記車輪の動きに連動して、互いに前記幅方向における逆方向にスライドする第1移動部材および第2移動部材を備え、
前記第1移動部材は、前記第2移動部材に対して一方の進行側に配置され、
前記第2移動部材は、前記第1移動部材に対して前記一方の進行側と反対の方向である他方の進行側に配置され、
前記第1移動部材および前記第2移動部材には、それぞれセンサが取り付けられ、
前記一方の進行側に進行するときに、前記第1移動部材に取り付けられた一方の前記センサにより前記基準走行線を検出し、前記ステアリング機構を制御し、前記一方の前記センサを前記基準走行線に沿わせ、
前記他方の進行側に進行するときに、前記第2移動部材に取り付けられた他方の前記センサにより前記基準走行線を検出し、前記ステアリング機構を制御し、前記他方の前記センサを前記基準走行線に沿わせる、
サポート車。
【請求項2】
前記ステアリング機構は、
それぞれ前後方向に延び、前記本体部に対して上下方向を軸として回動可能に取り付けられ、前記幅方向に並んで前記車輪を支持する2つの回動部材を備え、
前記第1移動部材は、
前記2つの前記回動部材
のそれぞれの回動の中心よりも前方側において
前記2つの前記回動部材を連結し、
前記第2移動部材は、
前記2つの前記回動部材のそれぞれの前記回動の中心よりも後方側において
前記2つの前記回動部材を連結する、
請求項1に記載のサポート車。
【請求項3】
前記ステアリング機構は、
それぞれ前後方向に延び、前記本体部に対して上下方向を軸として回動可能に取り付けられ、前記幅方向に並んで前記車輪を支持する2つの回動部材と、
前記2つの前記回動部材
のそれぞれの回動の中心よりも前後方向の一方向側において
前記2つの前記回動部材を連結する連結部材と、
前記2つの前記回動部材
のうち一方に取り付けられ、前記舵角の変更時に前記第1移動部材および前記第2移動部材を前記幅方向にスライドさせるリンク機構を有するセンサアームと、を備える、
請求項1に記載のサポート車。
【請求項4】
前記回動部材において、前記回動の中心から前記第1移動部材との連結部分までの前後方向の距離は、前記回動の中心から前記第2移動部材との連結部分までの前後方向の距離と等しい、
請求項2に記載のサポート車。
【請求項5】
直進時において、それぞれの前記センサは、平面視で前後に重なる位置にある、
請求項1から4のいずれかに記載のサポート車。
【請求項6】
それぞれの前記センサは、前記車輪よりも前記幅方向の外側に保持される、
請求項1から4のいずれかに記載のサポート車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サポート車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面の舗装作業時において、転圧ローラやアスファルトフィニッシャなどの法面作業車を、法面の勾配を横切る方向に走行させながら作業を行う工法が知られている。このような工法では、法面作業車に並走するサポート車によって法面作業車を支持することにより、法面作業車のずり落ちの防止や、転圧ローラによる法面に対する垂直な転圧を可能にしている。例えば、特許文献1の技術では、油圧シリンダの制御によって、サポート車が転圧ローラを支持するためのロープの張力を一定化でき、転圧ローラによる転圧圧力を均一化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような工法では、予め設けられた基準走行線に沿ってサポート車を走行させることにより、法面の勾配を横切る方向に走行する法面作業車を一定の力で支持している。しかし、従来はオペレータの操縦によってサポート車を基準走行線に沿って走行させていたため、オペレータの技能によっては安定した走行が難しい。さらに、法面の舗装作業においては、法面作業車を同じ走路で往復させる場合があるため、サポート車には、前進時および後進時の両方において基準走行線に沿った安定した走行が求められる。
本開示は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、前進時および後進時の両方において基準走行線に沿った安定した走行ができるサポート車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の様態は、法面の勾配を横切る方向に走行する法面作業車を支持し、基準走行線に沿って走行するサポート車において、前記法面作業車を支持する本体部と、車輪どうしを前記本体部の幅方向に離間させて支持し、前記車輪の舵角を変更するステアリング機構と、を備え、前記ステアリング機構は、前記舵角の変更時に、前記車輪の動きに連動して、互いに前記幅方向における逆方向にスライドする第1移動部材および第2移動部材を備え、前記第1移動部材は、前記第2移動部材に対して一方の進行側に配置され、前記第2移動部材は、前記第1移動部材に対して前記一方の進行側と反対の方向である他方の進行側に配置され、前記第1移動部材および前記第2移動部材には、それぞれセンサが取り付けられ、前記一方の進行側に進行するときに、前記第1移動部材に取り付けられた一方の前記センサにより前記基準走行線を検出し、前記ステアリング機構を制御し、前記一方の前記センサを前記基準走行線に沿わせ、前記他方の進行側に進行するときに、前記第2移動部材に取り付けられた他方の前記センサにより前記基準走行線を検出し、前記ステアリング機構を制御し、前記他方の前記センサを前記基準走行線に沿わせる、サポート車である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、前進時および後進時において、それぞれのステアリング機構が進行方向側のセンサを基準走行線に沿わせながら走行する。このため、サポート車は、前進時および後進時の両方において基準走行線に沿った安定した走行ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】転圧時における法面を模式的に示す縦断面図。
【
図3】実施の形態1のローラサポータの直進時のステアリング機構の平面図。
【
図4】実施の形態1のローラサポータの前進時のステアリング機構の平面図。
【
図5】実施の形態1のローラサポータの後進時のステアリング機構の平面図。
【
図6】実施の形態2のローラサポータの直進時のステアリング機構の平面図。
【
図7】実施の形態3のローラサポータの直進時のステアリング機構の平面図。
【
図8】実施の形態3のローラサポータの前進時のステアリング機構の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.実施の形態1]
[1-1.構成]
[1-1-1.転圧時における全体構成]
図1は、転圧時における法面Sを模式的に示す縦断面図である。
図2は、転圧時における法面Sを模式的に示す平面図である。法面Sは、例えば、アスファルト舗装が施される自動車用コースに設けられており、走行する自動車が左右に傾く方向に傾斜している。
図1に示すように、法面Sの転圧には、ローラ91を有する転圧ローラ(法面作業車)90が用いられる。転圧ローラ90は、法面Sの勾配の方向を垂直に横切るように、コースを走行する自動車と同じ方向に走行しながら、自動車用コースの1周を連続して転圧する。
【0009】
法面Sを走行する転圧ローラ90は、法面Sの上端から略水平に拡がる平坦路Pを走行するローラサポータ(サポート車)1によって上方から支持されている。ローラサポータ1は、動滑車に巻き掛けられたワイヤWによって転圧ローラ90と接続されており、転圧時には転圧ローラ90と並走する。ローラサポータ1は、転圧ローラ90にかかる重力のうち法面Sの勾配方向に沿った分力に抗して転圧ローラ90を支持することにより、転圧ローラ90のずり落ちの防止、および、法面Sに対する均一な転圧を可能とする。
【0010】
ローラサポータ1は、ワイヤWによって転圧ローラ90を支持する本体部10を有する。本体部10は、ワイヤWが巻き掛けられたウインチ15を支持する旋回体11と、旋回体11を下方から旋回可能に支持する支持体13と、を有している。ローラサポータ1は、転圧ローラ90と並走しながら、旋回体11の旋回角度およびウインチ15によるワイヤWの巻き取り量を調整し、転圧ローラ90を一定の支持力で支持する。また、支持体13における転圧ローラ90と反対側には、カウンターウエイトが搭載されており、転圧ローラ90を支持した状態でのローラサポータ1の走行を安定させる。
【0011】
図2に示すように、ローラサポータ1は、転圧ローラ90を支持しながら、平坦路Pに配置された基準走行線Lに沿って走行する。基準走行線Lは、法面Sと平坦路Pとの境界に沿った向きに設けられている。ローラサポータ1が基準走行線Lに対して沿った走行をする際の精度や安定性は、転圧ローラ90にかかる支持力の変動を抑制するうえで重要であり、転圧ローラ90における転圧の均一化のためには、高い精度および安定性が要求される。
【0012】
[1-1-2.ステアリング機構の構成]
図3は、ローラサポータ1の直進時におけるステアリング機構30の平面図である。なお、以降の図中において、符号Aはローラサポータ1の前方を示し、符号Bはローラサポータ1の後方を示す。また、ローラサポータ1の前後、上下、左右といった方向は支持体13を基準とし、以後の上下、左右、前後といった方向の記載は、特に説明がなければ支持体13を基準とする。
【0013】
ローラサポータ1は、支持体13に取り付けられた前後一対のステアリング機構30を有している。ステアリング機構30は、2つの車輪31どうしを左右方向(本体部の幅方向)に離間させて支持しており、左右一対の車輪31の舵角を同時に変更する。本実施の形態では、車輪31はダブルタイヤである。
【0014】
ステアリング機構30は、左右一対の回動部材33と、左右一対の回動部材33どうしを連結する前方側連結部材(第1移動部材)35aおよび後方側連結部材(第2移動部材)35bと、を有している。
【0015】
回動部材33は、上下に挿通される軸部材33cを介して支持体13に対して取り付けられる部材であり、前後方向に延びている。回動部材33は、前後方向の中央に挿通された軸部材33cを回動の中心として、支持体13に対して上下方向を軸に回動可能である。回動部材33は、油圧モータ34を介して車輪31および車軸31cを支持している。
【0016】
油圧モータ34は、本体部10に搭載された油圧ポンプに対して、油圧ホースを介して接続されている。油圧モータ34は、本体部10に搭載されたエンジンにより動作する油圧ポンプから駆動力を伝達されることにより、車軸31cおよび車輪31を回転させる。車軸31cは、車輪31の中心に挿通される軸であり、前後方向において回動部材33の中央に位置している。
【0017】
前方側連結部材35aは、左右方向に延びる部材であり、両端を二つの回動部材33の前端33aに対して、上下方向を軸に回動可能に連結されている。後方側連結部材35bは、左右方向に延びる部材であり、両端を二つの回動部材33の後端33bに対して、上下方向を軸に回動可能に連結されている。
【0018】
後方側連結部材35bには、油圧ポンプから伝達される作動力によって左右方向に伸縮する油圧シリンダ36が接続されている。油圧シリンダ36は、後述の制御部によって制御されており、伸縮によって後方側連結部材35bを支持体13に対して左右に相対移動させる。
【0019】
油圧シリンダ36により後方側連結部材35bが左右の一方側に相対移動すると、二つの回動部材33は共に後端33bを一方側に移動させる方向に回動する。このように、制御部は、油圧シリンダ36を制御して回動部材33を回動させ、回動部材33に支持される車輪31の舵角(支持体13に対する車輪31の平面視における相対角度)を変更する。このため、車輪31の舵角の変更時に、支持体13に対して、後方側連結部材35bは、車輪31の後部31bと左右方向における同じ方向に相対移動する。
【0020】
また、二つの回動部材33の回動により、前端33aに連結される前方側連結部材35aは、支持体13に対して、後方側連結部材35bと逆方向に相対移動する。このため、後方側連結部材35bと同様に、車輪31の舵角の変更時に、支持体13に対して、前方側連結部材35aは、車輪31の前部31aと左右方向における同じ方向に移動する。
【0021】
このとき、2つの連結部材35a、35bは、それぞれ支持体13に対してスライドすることによって移動する。すなわち、2つの連結部材35a、35bは、車輪31の舵角の変更時に支持体13に対して平行移動する。
【0022】
また、本実施の形態では、回動部材33において、前方側連結部材35aとの連結部分である前端33aと軸部材33cとの距離D1は、後方側連結部材35bとの連結部分である後端33bと軸部材33cとの距離D2に等しい。このため、車輪31の舵角の変更により、前方側連結部材35aは、支持体13に対して、後方側連結部材35bと同じ距離だけ左右方向に相対移動する。
【0023】
ステアリング機構30は、前方側連結部材35aの左右方向中央に取り付けられた前方側センサ37aと、後方側連結部材35bの左右方向中央に取り付けられた後方側センサ37bと、を有している。各センサ37a、37bは、それぞれ基準走行線Lを検出し、基準走行線Lに対する自身の左右方向の変位を検出可能なセンサである。各センサ37a、37bは、後述の制御部に対して検出信号を送信する。本実施の形態では、基準走行線Lは、高周波が流れる電線であり、各センサ37a、37bは、左右一対の磁気センサを搭載している。制御部は、左右一対の磁気センサによって電線が発する磁気の強度を検出し、基準走行線Lに対する各センサ37a、37bの変位を特定する。
【0024】
図3に示すように、前方側センサ37aは、車軸31c、および、回動部材33の回転の中心である軸部材33cよりも前方に位置している。後方側センサ37bは、車軸31c、および、軸部材33cよりも後方に位置している。また、ローラサポータ1の直進時において、各センサ37a、37bは、平面視で前後に重なる位置にある。換言すれば、ローラサポータ1の直進時において、前方側センサ37aが左右方向において占める位置は、後方側センサ37bが左右方向において占める位置と重なる。また、各センサ37a、37bは、それぞれが取り付けられる各連結部材35a、35bの移動時には、一体となって移動する。このため、車輪31の舵角の変更時に、各連結部材35a、35bが支持体13に対してスライドしたとき、各センサ37a、37bも同様に支持体13に対してスライドする。
【0025】
[1-2.動作]
以下では、ローラサポータ1が基準走行線Lに沿って走行する際の動作を説明する。ローラサポータ1は、基準走行線Lに沿った走行の開始前に、オペレータの手動操縦により、基準走行線Lに沿った位置に移動する。これにより、制御部は、各センサ37a、37bの検出信号により、基準走行線Lを検知可能な状態となる。なお、制御部は、プロセッサやメモリ等を有し、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより各機器を制御する。また、以下の動作は、複数の制御部によって行われていてもよい。
【0026】
[1-2-1.前進時の動作]
図4は、ローラサポータ1の前進時におけるステアリング機構30の平面図である。
図4に示すように、制御部は、ローラサポータ1の前進時において、各センサ37a、37bのうち進行方向側に位置する2つの前方側センサ37aを基準走行線Lに沿わせる。より具体的には、制御部は、ローラサポータ1の前進時において、ステアリング機構30を制御して前方側センサ37aを移動させ、2つの前方側センサ37aの中心と基準走行線Lとを平面視で重ねる。以下では、前方側センサ37aを基準走行線Lに沿わせる制御の詳細について説明する。
【0027】
ローラサポータ1の前進時において、制御部は、2つの前方側センサ37aの検出信号により、基準走行線Lに対する2つの前方側センサ37aの左右方向における変位をそれぞれ独立に特定する。
【0028】
制御部は、2つのステアリング機構30の油圧シリンダ36を独立に制御し、特定した変位を打ち消すように2つの前方側センサ37aを移動させて基準走行線Lに沿わせる。このときの油圧シリンダ36の制御は、油圧シリンダ36の伸縮量および伸縮方向と、前方側センサ37aの移動方向および量と、の関係によって決定される。この関係は、予めメモリに記憶されている。本実施の形態では、前方側センサ37aが取り付けられる前方側連結部材35aは、油圧シリンダ36に接続された後方側連結部材35bと逆方向に、同じ距離だけ移動する。このため、本実施形態の制御部は、検出した基準走行線Lからの変位と同方向および距離だけ後方側連結部材35bを移動させるように、油圧シリンダ36を制御する。
【0029】
このように、制御部は、ローラサポータ1の前進中には、基準走行線Lに対する前方側センサ37aの変位の特定と、変位を打ち消すだけの前方側センサ37aの移動とを繰り返す。これにより、ローラサポータ1の前進中において、前方側センサ37aは基準走行線Lに沿った状態となる。
【0030】
ここで、変位を打ち消した後の車輪31の転動方向(すなわち、車輪31が転がる際の車輪31単体の進行方向)が付近の基準走行線Lと平行でない場合、ローラサポータ1が僅かに前進すると、ステアリング機構30は、付近の基準走行線Lに対して斜行する。この場合、前方側センサ37aは、ローラサポータ1の前進によって付近の基準走行線Lから左右に移動する。このときの移動による変位の方向は、前方側センサ37a付近の基準走行線Lが延びる方向に対する車輪31の転動方向によって決まる。
【0031】
例えば、車輪31の転動方向が、前方側センサ37a付近の基準走行線Lが延びる方向よりも右方向に傾いている場合、前方側センサ37aは、基準走行線Lに対して右方向に移動する。上述のように、これに対し、制御部は、油圧シリンダ36を制御し、移動による変位を打ち消すだけ前方側センサ37aを左方向に向けて移動させる。前方側センサ37aが設けられる前方側連結部材35aは、車輪31の前部31aと左右方向における同じ方向に移動するため、車輪31の転動方向は、変位の打ち消しによって左方向にずれる。すなわち、制御部が、基準走行線Lに対する前方側センサ37aの変位を打ち消す制御をおこなうことにより、車輪31の転動方向は、基準走行線Lと平行に近づく。
【0032】
また、変位を打ち消した後の平面視における車輪31の転動方向が付近の基準走行線Lと平行である場合、ローラサポータ1が僅かに前進すると、ステアリング機構30は、付近の基準走行線Lと平行移動する。この場合、前方側センサ37aは、ローラサポータ1の前進によって付近の基準走行線Lから左右にずれることが無い。
【0033】
このため、ローラサポータ1の前進中において、前方側センサ37aを基準走行線Lに沿わせる制御をおこなうことにより、車輪31の転動方向を、前方側センサ37a付近の基準走行線Lの延びる方向に対し、平行に保つことができる。従って、ローラサポータ1は基準走行線Lに沿って精度よく安定して走行することができる。また、車輪31の舵角の変更時には、前方側連結部材35aおよび前方側センサ37aは支持体13に対してスライドするため、支持体13と前方側センサ37aとの相対角度が一定となり、制御が容易になる。
【0034】
また、2つのステアリング機構30は独立に制御されるため、2つのステアリング機構30のそれぞれの車輪31の転動方向が、付近の基準走行線Lの延びる方向に対して平行になる。これにより、2つのステアリング機構30の車輪31の間における内輪差を小さくすることができる。
【0035】
[1-2-2.後進時の動作]
図5は、ローラサポータ1の後進時におけるステアリング機構30の平面図である。通常、法面Sの転圧を完了させるためには、転圧ローラ90によって同じ経路を往復する必要がある。このため、ローラサポータ1も同じ経路を往復する必要があり、後進時においても基準走行線Lに沿った走行を行う。なお、後進時の制御は、前進時の制御と前後を入れ替えたものであるため、前進時の制御と共通の動作や作用等の詳細については説明を省略する。
【0036】
ローラサポータ1の後進時において、制御部は、基準走行線Lに対する後方側センサ37bの変位の特定と、変位を打ち消すだけの後方側センサ37bの移動とを繰り返す。これにより、
図5に示すように、制御部は、ローラサポータ1の後進時において、各センサ37a、37bのうち進行方向側に位置する後方側センサ37bを基準走行線Lに沿わせる。
【0037】
これにより、ローラサポータ1は後進時においても、基準走行線Lに沿って精度よく安定して走行することができる。また、車輪31の舵角の変更に伴って後方側センサ37bは支持体13に対してスライドするため、支持体13と後方側センサ37bとの相対角度が一定となり、制御が容易になる。
【0038】
本実施の形態では、上述のように、距離D1と距離D2とが等しい(
図3参照)ため、車輪31の舵角の変更量と各センサ37a、37bの左右方向の変位量との関係は、各センサ37a、37b間で同じである。このため、前進時と後進時における挙動の違いが小さく、前後進の間でローラサポータ1の走路がずれにくい。また、本実施の形態では、各センサ37a、37bは平面視で前後に重なる位置にあるため、各センサ37a、37bが基準走行線Lに沿ったときに、前後進の間でローラサポータ1の走路が左右にずれにくい。
【0039】
[1-3.効果]
以上説明したように、本実施の形態では、ローラサポータ1は、転圧ローラ90を支持する本体部10と、車輪31どうしを左右方向に離間させて支持し、車輪31の舵角を変更するステアリング機構30と、を備え、ステアリング機構30は、車輪31の舵角の変更時に、車輪31の動きに連動して、互いに左右方向における逆方向にスライドする前方側連結部材35aおよび後方側連結部材35bを備え、前方側連結部材35aおよび後方側連結部材35bには、それぞれ前方側センサ37aおよび後方側センサ37bが取り付けられ、進行方向側の前方側センサ37aまたは後方側センサ37bにより基準走行線Lを検出し、ステアリング機構30を制御し、進行方向側の前方側センサ37aまたは後方側センサ37bを基準走行線Lに沿わせる。
これにより、ローラサポータ1は、前進時および後進時の両方において基準走行線に沿った安定した走行を行うことができる。特に、本実施の形態では、前方側センサ37aは車軸31cよりも前方側に位置し、後方側センサ37bは車軸31cよりも後方側に位置する。このため、前後進の両方において、各センサ37a、37bで引っ張る様に、ローラサポータ1を精度よく基準走行線L沿わせることができる。
【0040】
また、本実施の形態のように、それぞれのステアリング機構30は、本体部10に対して上下方向を軸として回動可能に取り付けられ、左右方向に並んで車輪31を支持する2つの回動部材33を備え、前方側連結部材35aは、回動部材33の回動の中心である軸部材33cよりも前方側において2つの回動部材33を連結し、後方側連結部材35bは、回動部材33の回動の中心である軸部材33cよりも後方側において2つの回動部材33を連結する、構成としてもよい。
これにより、ローラサポータ1による基準走行線Lに沿った走行の安定性を、簡素な構成で高めることができる。
【0041】
また、本実施の形態のように、回動部材33において、軸部材33cから前方側連結部材35aとの連結部分である前端33aまでの前後方向の距離D1は、軸部材33cから後方側連結部材35bとの連結部分である後端33bまでの前後方向の距離と等しい、構成としてもよい。
これにより、前後進時の挙動の差が小さくなり、前後進の間でローラサポータ1の走路がずれにくくなる。
【0042】
また、本実施の形態のように、直進時において、前方側センサ37aおよび後方側センサ37bは、平面視で前後に重なる位置にある、構成としてもよい。
これにより、前後進の間でローラサポータ1の走路が左右にずれにくくなる。
【0043】
[2.実施の形態2]
以下、実施の形態2について説明する。以下、実施の形態1と同様の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0044】
図6は、実施の形態2に係るローラサポータ1の直進時におけるステアリング機構130の平面図である。実施の形態2では、各センサ37a、37bは、センサアーム140を介して、各連結部材35a、35bに取り付けられている。センサアーム140は、各連結部材35a、35bから車輪31よりも右側まで延びている。各センサ37a、37bは、センサアーム140の先端に取り付けられ、右側の車輪31よりも右側に位置している。このため、
図6に示すように、ローラサポータ1の走行時には、ステアリング機構130の各車輪31は基準走行線Lよりも左側に位置する。これにより、基準走行線Lが設けられる平坦路Pの幅や、平坦路P上の障害物に応じて、ローラサポータ1の走路をずらすことができる。また、本実施の形態では、センサアーム140は、ローラサポータ1から見て、左右における転圧ローラ90と反対側に延びている。
【0045】
本実施の形態のように、前方側センサ37aおよび後方側センサ37bは、車輪31よりも左右方向外側に保持される、構成としてもよい。
これにより、ローラサポータ1の走路の自由度が大きくなる。
【0046】
[3.実施の形態3]
以下、実施の形態3について説明する。以下、実施の形態1または2と同様の構成には、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0047】
図7は、実施の形態3に係るステアリング機構230の平面図であり、直進時のステアリング機構230を示す。ステアリング機構230は、前方側連結部材35aを有しておらず、左右一対の回動部材33を軸部材33cの後方側(一方向側)に位置する後方側連結部材(連結部材)35bのみで連結している。実施の形態3では、実施の形態1および2と異なり、各センサ37a、37bは、前後一対のセンサアーム240を介して、回動部材33に対して取り付けられている。
【0048】
センサアーム240は、それぞれリンク機構を有しており、車輪31の舵角の変更とともに各センサ37a、37bを左右に移動させる構造体である。センサアーム240は、右側の回動部材33に固定されるアーム固定部材241と、各センサ37a、37bを支持する2つのセンサ支持部材(第1移動部材、第2移動部材)247と、を有している。
【0049】
アーム固定部材241は、それぞれ回動部材33に沿って延びている。回動部材33における軸部材33cよりも前方側に固定される一方のアーム固定部材241は前方に延び、軸部材33cよりも後方側に固定される他方のアーム固定部材241は後方に延びる。
【0050】
センサ支持部材247は左右方向に延びる部材であり、車輪31よりも右側において各センサ37a、37bを有している。センサ支持部材247の右端には、平坦路Pに接地してセンサ支持部材247を支持する自在ゴム車輪249が取り付けられている。自在ゴム車輪249の転動方向は、水平ないずれの方向にも回動自在である。
【0051】
また、センサアーム240は、アーム固定部材241に取り付けられる揺動部材243と、揺動部材243とセンサ支持部材247とを連結するリンク部材245と、を有している。
【0052】
揺動部材243は、前方側のアーム固定部材241の前端、および、後方側のアーム固定部材241の後端に対し、前後方向を軸に回動可能に取り付けられる。このため、揺動部材243がアーム固定部材241に対して回動することにより、リンク部材245およびセンサ支持部材247はそれぞれ上下に揺動する。このため、自在ゴム車輪249が接地する平坦路Pに凹凸がある場合でも、センサアーム240に大きな荷重がかかりにくい。
【0053】
リンク部材245は、両端を揺動部材243およびセンサ支持部材247に対してそれぞれ上下方向を軸として回動可能に取り付けられる部材であり、左右方向に延びている。揺動部材243、リンク部材245、および、センサ支持部材247は、2つのジョイントを有するオープンループ構造のリンク機構を形成する。
【0054】
また、実施の形態3では、センサアーム240のリンク機構の動きを制限し、各センサ37a、37bを左右に移動させるためのフレーム250が設けられている。フレーム250は、支持体13に固定されるフレーム固定部材251と、フレーム固定部材251に固定される前後一対のガイド部材253と、2つのガイド部材253同士を固定する補強部材255と、を有している。
【0055】
フレーム固定部材251は、前後方向に延びる部材であり、両端においてガイド部材253をそれぞれ固定している。ガイド部材253は、フレーム固定部材251から右方向に延びる部材であり、それぞれ平面視でセンサ支持部材247に沿う位置に設けられる。補強部材255は、ガイド部材253の右端において前後方向に延びる部材であり、図示しないワイヤロープとターンバックルを介して、支持体13から吊られて支持されている。
【0056】
また、ガイド部材253には、それぞれ2つずつの金属バンド257が取り付けられている。金属バンド257は、金属製の帯が折り曲げられて左右方向に貫通した環状に形成された部材である。金属バンド257には、センサ支持部材247が左右に挿通されており、センサ支持部材247の回動を規制する。
【0057】
図8は、実施の形態3に係る前進時のステアリング機構230の平面図である。
図8に示すように、基準走行線Lに対する前方側センサ37aの変位を打ち消すために舵角を変更した場合、回動部材33の回転に伴ってアーム固定部材241はそれぞれ回転する。これに伴い、揺動部材243、リンク部材245、および、センサ支持部材247で形成されるリンク機構も動作する。このとき、支持体13に固定されたフレーム250の金属バンド257によってセンサ支持部材247の回動は規制されるため、センサ支持部材247は、それぞれ支持体13に対して左右方向にスライドする。
【0058】
このように、リンク機構を有するセンサアーム240を用いることで、舵角の変更時において、車輪31の前部31aと左右の同じ方向に移動する前方側センサ37a、および、後部31bと左右の同じ方向に移動する後方側センサ37bを実現できる。このため、前方側連結部材35aが設けられていないステアリング機構230においても、前後進時の両方において基準走行線Lに沿った安定した走行を実現できる。
【0059】
すなわち、本実施の形態のように、ステアリング機構30は、本体部10に対して上下方向を軸として回動可能に取り付けられ、左右方向に並んで車輪31を支持する2つの回動部材33と、回動部材33の回動の中心よりも後方側において2つの回動部材33を連結する後方側連結部材35bと、回動部材33に取り付けられ、車輪31の舵角の変更時に2つのセンサ支持部材247を左右方向にスライドさせるリンク機構を有するセンサアーム240と、を備える。
これにより、ローラサポータ1による基準走行線Lに沿った走行の精度を、簡素な構成で、高めることができる。
【0060】
(他の実施の形態)
上記実施形態は本発明を適用した一具体例を示すものであり、発明が適用される形態を限定するものではない。
【0061】
上記実施の形態では、
図1および
図2に示したように、ローラサポータ1は、法面Sの上端に連なる平坦路Pに敷設された基準走行線Lに沿って走行すると説明したが、これは一例である。例えば、ローラサポータ1は、法面Sの下端から略水平に拡がる平坦な地面に敷設された基準走行線Lに沿って走行する構成としてもよい。この場合、ローラサポータ1は、ワイヤWを転圧ローラ90よりも上方側まで引き回すクレーンアームを旋回体11に備える構成となる。
【0062】
また、上記実施の形態では、ローラサポータ1は、転圧ローラ90を支持すると説明したが、これは一例である。例えば、ローラサポータ1は、例えば、法面Sにアスファルト合材を敷きならすアスファルトフィニッシャ等の転圧ローラ90以外の任意の法面作業車を支持する構成としてもよい。
【0063】
上記実施の形態では、基準走行線Lは高周波が流れる電線であり、各センサ37a、37bは、それぞれ左右一対の磁気センサを有していると説明したが、これは一例である。例えば、基準走行線Lは塗料やロープ等によって平坦路Pに引かれた線であり、各センサ37a、37bは基準走行線Lを光学的に検出するカメラ等である構成としてもよい。若しくは、各センサ37a、37bは接触式のセンサであり、基準走行線Lは平坦路Pに敷設されたロープや溝である構成としてもよい。その他、本発明の趣旨に反しない限り、基準走行線Lおよび各センサ37a、37bには、任意の組み合わせを用いることができる。
【0064】
上記実施の形態では、1つの支持体13に対し、2つのステアリング機構30、130、230が取り付けられると説明したが、これは一例である。例えば、支持体13には、3つ以上のステアリング機構30、130、230が取り付けられる構成としてもよい。
【0065】
実施の形態2および3では、ステアリング機構130、230は、2つのセンサアーム140、240を有すると説明したが、これは一例である。例えば、2つのセンサアーム140、240が一体化され、1つのセンサアームとしてステアリング機構130、230に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 ローラサポータ(サポート車)
10 本体部
13 支持体
30 ステアリング機構
31 車輪
31a 前部
31b 後部
33 回動部材
33a 前端(連結部分)
33b 後端(連結部分)
33c 軸部材(回動部材の回動の中心)
35a 前方側連結部材(第1移動部材)
35b 後方側連結部材(第2移動部材、連結部材)
37a 前方側センサ
37b 後方側センサ
90 転圧ローラ
130 ステアリング機構
140 センサアーム
230 ステアリング機構
240 センサアーム
247 センサ支持部材(第1移動部材、第2移動部材)
250 フレーム
L 基準走行線
S 法面