(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】光学システム及び頭部装着型表示機器
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20250408BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20250408BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20250408BHJP
G02B 3/08 20060101ALN20250408BHJP
【FI】
G02B25/00
G02B27/02 Z
G02B13/18
G02B3/08
(21)【出願番号】P 2023526899
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2021137745
(87)【国際公開番号】W WO2023097763
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】202111446784.7
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523155456
【氏名又は名称】ゴアテック・オプティカル・テクノロジー・カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GOERTEK OPTICAL TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 1 Fab., Optical Park Phase 3, No. 3999, Huixian Road, Yongchun Community, Qingchi Sub-district Office, Weifang Hi-Tech Zone, Weifang, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】スン,チー
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ポーガン
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211475(JP,A)
【文献】特開2020-020935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムであって、
入射光の伝播方向に沿って順次に設けられた第三のレンズ(3)、第二のレンズ(2)及び第一のレンズ(1)からなり、
前記第一のレンズ(1)の有効焦点距離f1及び前記第二のレンズ(2)の有効焦点距離f2がともに前記光学システムの有効焦点距離fよりも大きく、
前記第一のレンズ(1)の有効焦点距離f1が、20mm≦f1≦40mmに設定され、
前記第二のレンズ(2)の有効焦点距離f2が、20mm≦f2≦40mmに設定され、
前記第三のレンズ(3)の有効焦点距離f3が、-100mm≦f3≦-50mmに設定され、
前記第一のレンズ(1)の有効焦点距離f1と前記第二のレンズ(2)の有効焦点距離f2との和が、前記第三のレンズ(3)の有効焦点距離f3の絶対値よりも大きい、
ことを特徴とす
る光学システム。
【請求項2】
前記第一のレンズ(1)及び前記第二のレンズ(2)の屈折力がともに正であり、前記第三のレンズ(3)の屈折力が負である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記第一のレンズ(1)と前記第二のレンズ(2)とが接合して設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記第一のレンズ(1)と前記第二のレンズ(2)との接合する2つの表面がともにフレネル面である、ことを特徴とする請求項3に記載の光学システム。
【請求項5】
前記光学システムの有効焦点距離fが、15mm≦f≦25mmを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項6】
前記第一のレンズ(1)と前記第二のレンズ(2)との間に間隔T1が設けられており、前記間隔T1が0.1mm≦T1≦0.5mmに設定され、
前記第二のレンズ(2)と前記第三のレンズ(3)との間に間隔Yが設けられており、前記間隔Yが2mm≦Y≦4.5mmに設定され、
前記第一のレンズ(1)、前記第二のレンズ(2)及び前記第三のレンズ(3)が同一光軸上に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項7】
前記第一のレンズ(1)と前記第二のレンズ(2)とは、材質が同じであり、両方ともCOP材料であり、
前記第三のレンズ(3)がOKP材料又はEP材料である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の光学システムを含む、ことを特徴とする頭部装着型表示機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年11月30日に中国特許庁に出願された、出願番号が202111446784.7であり、発明名称が「光学システム及び頭部装着型表示機器」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は、参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、光学結像の技術分野に関し、より具体的に、本願は、光学システム及び頭部装着型表示機器に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、拡張現実(Augmented Reality、AR)技術及び仮想現実(Virtual Reality、VR)技術などは、スマートウェアラブル機器に適用され、急速に発展している。拡張現実技術及び仮想現実技術の核心部品は、いずれも表示光学システムである。表示光学システムの表示効果の良否によって、スマートウェアラブル機器の品質が直接に決定される。
【0004】
従来の関連技術では、VR機器を例とする。従来のVR機器の多くは、1枚式レンズと表示画面(display)との組み合わせによって形成された表示光学システムを用いている。しかし、光路結像要件に基づき、レンズが表示画面から遠く離れることになり、その結果、VR機器のサイズが大きくなり、製品の小型化に不利であり、ユーザの装着時の使用体験が悪くなる恐れがある。また、現在のVR機器には、折り返し光路を採用する技術案もあり、この技術案は、VR機器の小型化、軽量化を実現できるが、製作コストが高く、光効率が低く(<25%)、ゴーストが生じるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の目的は、光学システム及び頭部装着型表示機器の新しい技術案を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の1つの局面によれば、光学システムが提供されている。前記光学システムは、入射光の伝播方向に沿って順次に設けられた第三のレンズ、第二のレンズ及び第一のレンズを含み、
前記第一のレンズの有効焦点距離f1及び前記第二のレンズの有効焦点距離f2がともに前記光学システムの有効焦点距離fよりも大きい。
【0007】
選択的に、前記第一のレンズ及び前記第二のレンズの屈折力がともに正であり、前記第三のレンズの屈折力が負である。
【0008】
選択的に、前記第一のレンズと前記第二のレンズとが接合して設けられている。
【0009】
選択的に、前記第一のレンズと前記第二のレンズとの接合する2つの表面がともにフレネル面である。
【0010】
選択的に、前記第一のレンズの有効焦点距離f1と前記第二のレンズの有効焦点距離f2との和が、前記第三のレンズの有効焦点距離f3の絶対値よりも大きい。
【0011】
選択的に、前記第一のレンズの有効焦点距離f1が、20mm≦f1≦40mmに設定され、
前記第二のレンズの有効焦点距離f2が、20mm≦f2≦40mmに設定され、
前記第三のレンズの有効焦点距離f3が、-100mm≦f3≦-50mmに設定される。
【0012】
選択的に、前記光学システムの有効焦点距離fが、15mm≦f≦25mmを満たす。
【0013】
選択的に、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2との間に間隔T1が設けられており、前記間隔T1が0.1mm≦T1≦0.5mmに設定され、
前記第二のレンズと前記第三のレンズとの間に間隔Yが設けられており、前記間隔Yが2mm≦Y≦4.5mmに設定され、
前記第一のレンズ、前記第二のレンズ及び前記第三のレンズが同一光軸上に位置する。
【0014】
選択的に、前記第一のレンズと前記第二のレンズとは、材質が同じであり、両方ともCOP材料であり、
前記第三のレンズがOKP材料又はEP材料である。
【0015】
本願のもう1つの局面によれば、頭部装着型表示機器が提供されている。
【0016】
前記頭部装着型表示機器は、上記のいずれか一項の光学システムを含む。
【発明の効果】
【0017】
本願の有益な効果は、次のとおりである。
【0018】
本願の実施例による技術案において、複数のレンズを採用しており、レンズの有効焦点距離を合理的に設定することで、光路構造全体の短焦点、高光効率、高解析力の光学的要件の実現に有利であり、結像品質の向上に寄与する。本願の実施例では、短焦点、高解像度の直接透過型光路構造設計案が提案されており、形成された光学システムは、例えば、頭部装着型表示機器(例えばVR機器)に適用可能である。
【0019】
本願のその他の特徴及びその利点は、以下に図面を参照して本願の例示的な実施例について行われた詳しい説明によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本願の実施例又は先行技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は先行技術の説明に必要な図面を簡単に紹介する。明らかなことに、以下の説明における図面は本願の一部の図面に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働をすることなく、提供された図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0021】
【
図1】本願の実施例による光学システムの構造模式図である。
【
図2】本願の実施例による光学システムの結像原理の模式図である。
【
図3】本願の実施例による光学システムにおける第三のレンズの口径xと、第三のレンズと第二のレンズとの間の間隔Yとの関係図である。
【
図4】本願の実施例による光学システムにおける第三のレンズの口径xと、第三のレンズと第二のレンズとの間の間隔Yとの関係図である。
【
図5】本願の実施例による光学システムにおける第三のレンズの口径xと、第三のレンズと第二のレンズとの間の間隔Yとの関係図である。
【
図6】本願の実施例1による光学システムのスポットダイアグラムである。
【
図7】本願の実施例1による光学システムの像面湾曲及び歪曲収差図である。
【
図8】本願の実施例1による光学システムの分散マップである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願の実施例における図面を参照して本願の実施例の技術案を説明するが、明らかなことに、記載された実施例は、本願の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本願の実施例に基づいて創造的な努力をせずに当業者によって得られた他の全ての実施例は、本願の保護範囲に属する。
【0023】
以下の少なくとも1つの例示的な実施例に対する説明は、実際には単なる説明的なものであり、決して本願及びその適用又は使用に対するいかなる制限にはならない。
【0024】
当業者に知られている技術、方法及び機器については、詳細な説明がなされないかもしれないが、適切な場合には、かかる技術、方法及び機器は、明細書の一部とみなされるべきである。
【0025】
ここに示され議論される全ての例では、いずれの具体的な値も、制限とすべきではなく、単なる例示として解釈されるべきである。そのため、例示的な実施例の他の例では、異なる値を持っていてもよい。
【0026】
なお、類似する符号及び英文字は、以下の図面において類似項目を表し、従って、ある項目が1つの図面において定義されれば、以降の図面においてそれをさらに議論する必要がないことに注意すべきである。
【0027】
以下、
図1から
図8を参照して、本願の実施例による光学システム及び頭部装着型表示機器について、詳しく説明する。
【0028】
本願の実施例の1つの局面によれば、光学システムが提供されている。
【0029】
前記光学システムは、短焦点、高解像度の直接透過型光学システムであり、例えばVR機器(例えばVRメガネやVRヘルメット等)のような頭部装着型表示機器(head mounted display、HMD)といった電子機器に好適に適用され、良い応用が期待できる。
【0030】
本願の実施例による光学システムは、
図1及び
図2に示すように、入射光の伝播方向に沿って順次に設けられた第三のレンズ3、第二のレンズ2及び第一のレンズ1を含み、前記第一のレンズ1の有効焦点距離f1及び前記第二のレンズ2の有効焦点距離f2がともに前記光学システムの有効焦点距離fよりも大きい。
【0031】
本願の実施例による光学システムは、直接透過型光路構造であり、光路設計が比較的に簡単であるので、光学システム全体の製作が比較的に容易である。
【0032】
説明すべきなのは、前記光学システムが、例えば表示画面(display)4をさらに含む。
【0033】
前記表示画面4は、光路構造内で、光線、即ち上記入射光を射出するために使用可能である。
【0034】
つまり、本願の実施例による光学システムの技術案には、1組のレンズの組み合わせが設計されており、当該レンズの組み合わせが、例えば3つのレンズを含んでもよく、
図1及び
図2に示すように、そのうちの各レンズが、例えば表示画面4の出光側の位置に配設され、具体的には、表示画面4から射出された入射光の伝播方向に位置し、前記入射光を人の目5に投射して結像するために使用可能である。
【0035】
図1及び
図2に示すように、本願の実施例による技術案では、複数のレンズ(例えば3つのレンズ)を採用しており、レンズの有効焦点距離を合理的に設定することで、光路構造全体の短焦点、高光効率、高解析力の光学的要件の実現に有利であり、結像品質の向上に寄与する。
【0036】
本願の実施例では、短焦点、高解像度の直接透過型光路構造設計案が提案されており、形成された光学システムは、例えば頭部装着型表示機器(例えばVR機器)に適用可能であり、頭部装着型表示機器の小型化、軽量化への開発動向の実現にも寄与する。
【0037】
総合的に比較すると、本願の実施例による技術案は、レンズが表示画面から遠く離れて、VR機器のサイズが大きくなり、製品の小型化に不利であり、光効率が低いという従来の1枚式レンズと表示画面(display)との組み合わせの技術案による問題を解消した。その同時に、折り返し光路を用いたことによる欠陥を改善することができ、その加工難易度及び生産コストが比較的低く、直接透過型光学構造も、折り返し光路よりも簡単である。
【0038】
例えば、
図1及び
図2に示すように、前記光学システムには、例えば1.4インチ表示画面であって、100度の視野角を実現した表示画面4が設けられている。このことから、通常の1枚式レンズ(1P)構造又は2枚式レンズ(2P)構造の何れも、このタイプの表示画面を解像するのに不十分である。その原因は次のとおりである。
【0039】
1枚式レンズ(1P)は、2つの表面の面形状の自由度の最適化しかできず、その集光能力に限界があり、収差又は色収差も補正できなく、全視野で解像可能な画素の大きさ(結像スポットサイズ;spot size)が約80μm~100μmであり、さらに肝心なことは、短焦点という目的を達成できない問題がある。
【0040】
2枚式レンズ(2P)は、レンズ表面の面形状の最適化の自由度を増加させており、短焦点を実現できるが、解析力の制限が依然として存在し、その全視野で解像可能な画素の大きさ(結像スポットサイズ;spot size)が約60μm~80μmである。
【0041】
本願の実施例で用いられた光学レンズの組み合わせは、解析力をさらに向上させることができるとともに、色収差をある程度に補正することができ、直接透過型の短焦点光路構造を形成している。
【0042】
本願のいくつかの例では、前記第一のレンズ1及び前記第二のレンズ2の屈折力がともに正であり、前記第三のレンズ3の屈折力が負である。
【0043】
本願の実施例による光学システムにおいて、前記第一のレンズ1及び前記第二のレンズ2がともに正レンズとして設計され、前記第三のレンズ3が負レンズとして設計されていることが理解できる。2つの正レンズは、大きな正屈折力を提供することができる一方で、負レンズは、色収差をなくすために使用可能である。
【0044】
本願のいくつかの例では、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とが接合して設けられている。
【0045】
つまり、本願の実施例では、2つの正レンズ同士が接合されるように設計されている一方で、負レンズは、これら2つを接合して設けられた正レンズから分離されるように設計されている。
【0046】
図1及び
図2に示すように、光路構造において、表示画面4から離れた側の前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とを接合して設けた設計は、迷光の低減に寄与する一方で、前記表示画面4に近い側の前記第三のレンズ3を独立して設け、それを、接合して設けられた2つのレンズと分離させた構造は、結像品質の向上に寄与することが理解できる。
【0047】
そして、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とを接合した設計は、構成部材の組み立ての難易度を低減し、レンズ間での組み立てによる不純物の発生リスクを低減することができるため、歩留まりを向上させることができる。
【0048】
本願のいくつかの例では、
図1及び
図2に示すように、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2との接合する2つの表面がともにフレネル面である。
【0049】
つまり、前記光学システムの設計では、隣接して設けられた2つのフレネル面を有し、これら2つのフレネル面が接合して設けられている。当該設計は、光路構造の低分散及び短焦点を実現でき、迷光も低減できるため、形成された光学システムの光効率が高く、高鮮明度の結像を実現することができる。
【0050】
本願のいくつかの例では、
図1に示すように、前記第一のレンズ1が第一の表面11及び第二の表面12を含み、前記第二のレンズ2が第三の表面21及び第四の表面22を含み、このように、光路構造全体において、前記第二の表面12と前記第三の表面21とが隣接して設けられており、両者がともにフレネル面に設定され、前記第一の表面11及び前記第四の表面22がともに非球面である(さらに、これら2つの表面がともに凸面である)。
【0051】
そのうち、前記第一のレンズ1の第一の表面11が外部に位置して、人の目5に直接に面し、前記第一のレンズ1の第二の表面12と前記第二のレンズ2の第三の表面21とが隣接して設けられており、本願において、前記第一のレンズ1の第一の表面11が非球面(例えば凸面)に設定され、前記第一のレンズ1の第二の表面12がフレネル面に設定されており、このように、前記第一のレンズ1(正レンズである)は、非球面とフレネル面との2つの面形状の組み合わせ形態に形成されている。
【0052】
選択的に、本願の実施例の設計では、前記第一のレンズ1の第一の表面11及び第二の表面12には、それぞれ反射防止膜(Anti-Reflective coating、AR)がメッキされている。
【0053】
前記第一のレンズ1の2つの表面にそれぞれ反射防止膜がメッキされた場合、前記反射防止膜によって反射光が低減されることで、前記第一のレンズ1の2つの表面での光線の透過率を高めることができる。
【0054】
選択的に、前記第一のレンズ1の第一の表面11には、前記反射防止膜の他に、さらに硬化膜がメッキされている。
【0055】
これは、前記第一のレンズ1の第一の表面11が外部に面しているため、擦り傷、打ち傷などの損傷を回避する必要があり、前記硬化膜をメッキすることで、前記第一のレンズ2の使用寿命を延ばすことができるからである。前記第一の表面11に硬化膜をメッキすること、即ち、前記第一の表面11に対して硬化処理を行うことで、前記第一の表面11の硬度、強度等を向上させることができる。これは、光学システム全体の使用寿命を延ばすのに有利である。
【0056】
もちろん、本願の実施例では、前記第一のレンズ1の第一の表面11に硬化膜がメッキされているのに限らず、前記第一のレンズ1の第二の表面12に硬化膜がメッキされていてもよく、当業者は、具体的なニーズに応じて柔軟に調整可能であり、本願はここで具体的に制限しない。
【0057】
また、本願の実施例では、前記第一のレンズ1は、以下のパラメータをさらに有する。
【0058】
例えば、前記第一のレンズ1の第一の表面11の半径R1の絶対値が、35mm≦R1≦65mmを満たし、前記第一のレンズ1の第二の表面12の半径R2の絶対値が、20mm≦R2≦40mmを満たし、前記第一のレンズ1の第一の表面11及び第二の表面12の円錐係数K1の絶対値が、K1≦20を満たす。
【0059】
そのうち、前記第一の表面11と前記第二の表面12とは、面形状の設計が異なる。
【0060】
具体的に、外側を向く前記第一の表面11が非球面(例えば凸面)に設計されるのに対して、前記第二の表面12がフレネル面に設計されており、フレネル面と非球面との組み合わせによって形成された第一のレンズ1を光路構造に適用することで、短焦点、高解像の効果の実現に寄与する。
【0061】
本願の実施例では、前記第一のレンズ1の面形状を最適化した後、加工の難易度及びコストを考慮すると、前記第一のレンズ1の円錐係数(Conic Constant)、即ちK1値を例えば[-10,10]に設計し、かつ、前記第一のレンズ1のフレネル面の半径Rを23mmよりも大きく設計することがより好ましい。
【0062】
本願のいくつかの例では、前記第二のレンズ2と前記第一のレンズ1とは、面形状の組み合わせ形態が同じであってもよく、
図1及び
図2に示すように、前記第二のレンズ2が第三の表面21及び第四の表面22を含み、前記第三の表面21がフレネル面であり、前記第四の表面22が非球面(例えば凸面)に設定されている。
【0063】
選択的に、前記第三の表面21及び第四の表面22にも反射防止膜がメッキされている。
【0064】
前記反射防止膜によって反射光が低減されることで、前記第二のレンズ2の2つの表面での光線の透過率が高められる。
【0065】
また、本願の実施例では、前記第二のレンズ2は、以下のパラメータをさらに有する。
【0066】
本願のいくつかの例では、前記第二のレンズ2の第三の表面21の半径R3の絶対値が、20mm≦R3≦40mmを満たし、前記第二のレンズ2の第四の表面22の半径R4の絶対値が、35mm≦R4≦80mmを満たし、前記第二のレンズ2の第三の表面21及び第四の表面22の円錐係数K2の絶対値が、K2≦20を満たす。
【0067】
本願の実施例では、前記第二のレンズ2の面形状を最適化した後、加工の難易度及びコストを考慮すると、前記第二のレンズ2の円錐係数(Conic Constant)、即ちK2値を[-10,10]に設計し、かつ、前記第二のレンズ2のフレネル面の半径を23mmよりも大きく設計することがより好ましい。これは、前記第一のレンズ1と基本的に同じである。
【0068】
説明すべきなのは、前記第一のレンズ1及び前記第二のレンズ2がともにフレネル面を有する。レンズの面形状の加工を考慮すると、面形状のパラメータをある範囲内に設定する必要があり、さもなければ、加工精度が低かったり、カッタが破損したりするリスクが生じる(これは、歯形の加工が難しくて、歯形の鋭角が小さいほど、加工の傾斜角及び動作が難しくなるからである)。だからこそ、円錐係数K値を[-10,10]の範囲に設定し、各レンズのフレネル面のR値を23mm以上に設定することが好ましい。
【0069】
本願の実施例による技術案において、前記第一のレンズ1及び前記第二のレンズ2、即ち、2つの正レンズについて、ともに非球面(例えば凸面)とフレネル面との組み合わせ形態が用いられており、屈折率及びアッベ数の異なる材料の選択と取り合わせに基づいて、光路構造の低分散及び短焦点を実現した。
【0070】
本願のいくつかの例では、
図1に示すように、前記第三のレンズ3が第五の表面31及び第六の表面32を含み、前記第五の表面31と前記第二のレンズ2の第四の表面22が隣接して設けられており、前記第五の表面31及び前記第六の表面32のうちの少なくとも1つが非球面に設定されている。
【0071】
例えば、前記第三のレンズ3の屈折力が負である。
【0072】
つまり、本願の技術案の設計では、前記第三のレンズ3は、中央が薄く周辺が厚いレンズである負レンズとされ、光を発散させる能力を有する。前記第三のレンズ3は、光路構造全体で色収差をなくすために使用可能である。
【0073】
前記第三のレンズ3は、例えば、両凹レンズ(即ち、2つの表面がともに凹面)であってもよいし、平凹レンズ(即ち、一方の表面が凹面で、他方の表面が平面)であってもよい。
【0074】
好ましくは、前記第五の表面31が平面に設定され、前記第六の表面32が凹面に設定されている。即ち、光路構造全体において、前記第四の表面22と隣接する面が平面であり、前記表示画面4と隣接する面が凹面である。
【0075】
選択的に、前記第五の表面31及び前記第六の表面32には、ともに反射防止膜(Anti-Reflective coating、AR)がメッキされている。
【0076】
前記第三のレンズ3の2つの表面にそれぞれ反射防止膜がメッキされた場合、前記反射防止膜によって反射光が低減されることで、前記第三のレンズ3の2つの表面での光線の透過率を高めることができる。
【0077】
本願の1つの具体的な例において、
図1に示すように、前記光学システムは、表示画面4と、前記第一のレンズ1と、前記第二のレンズ2と、前記第三のレンズ3とを含み、そのうち、例えば、前記表示画面4を表示光源とし、前記第一のレンズ1及び前記第二のレンズ2をともに非球面及びフレネル面の正レンズとし、前記表示画面4に近い側の前記第三のレンズ3を負レンズとして設定することが可能である。3つのレンズの各表面のいずれにも反射防止膜のメッキ処理が行われ、また、前記第一のレンズ1の第一の表面11には、硬化膜による硬質化や反射防止膜処理も行われている。そのうえ、
図2に示すように、前記表示画面4から射出された前記入射光は、反射防止膜がメッキされた前記第三のレンズ3の第六の表面32を経て前記第三のレンズ3の内部に入り込み、前記第三のレンズ3を経た伝達光線は、発散されてから前記第二のレンズ2に入り込み、前記第二のレンズ2の2つの表面の両方にも反射防止膜がメッキされているため、光線は、前記第二のレンズ2を経て集光され、そして、前記第一のレンズ1に入り込み、前記第一のレンズ1も集光する正レンズであり、前記第一のレンズ1の光線伝送を経た後、人の目5に入り込んで結像する。光学システム全体に光路の折り返しがなく、かつ、各レンズの表面のいずれにも反射防止膜がメッキされているため、光線の伝達効率が高い。
【0078】
本願のいくつかの例では、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とのコバ領域が接合して設けられている。
【0079】
つまり、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とは、額縁においてのみ、額縁接合方式で接合されている。
【0080】
例えば、光透過性の光学接着剤によって前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とのコバ領域が接合接続される。そのうち、前記光学接着剤の屈折率は、各レンズの屈折率よりも低く、その屈折率が例えば1.1~1.3である。
【0081】
上記形態により、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とによって1つの接合システムを構成することができる。接合システムは、フレネル面の歯形による迷光の影響を低減することができる一方で、接合後の2つの正レンズが1つの光学素子として光路構造内に組み立てられ、組み立ての難易度が低減される。また、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とのコバ領域でディスペンシングによって接合が行われるため、2つのレンズ間での組み立てによる不純物の発生リスクが低減され、歩留まりが向上される。
【0082】
本願のいくつかの例では、
図1及び
図2に示すように、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2との間に間隔T1が設けられており、前記間隔T1が0.1mm≦T1≦0.5mmに設定され、
前記第二のレンズと前記第三のレンズとの間に間隔Yが設けられており、前記間隔Yが2mm≦Y≦4.5mmに設定され、
前記第一のレンズ1、前記第二のレンズ2及び前記第三のレンズ3が同一光軸上に位置する。
【0083】
そのうち、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とが接合して設けられているため、両者の間の間隔が小さい。
【0084】
そのうち、前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間に間隔Yが設けられており、前記間隔Yと前記第三のレンズ3の口径xとは、
Y=ax+bという関係を満たし、そのうち、-0.8≦a≦-0.39、30≦b≦35である。
【0085】
つまり、本願の実施例による技術案において、前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間に一定の間隔Yが備えられ、当該間隔Yの値と前記第三のレンズ3の口径xの値との間には、線形的な負の相関関係が形成されている。
【0086】
光路構造全体において、前記第二のレンズ2が動かないように保持される場合は、前記第二のレンズ2に対する前記第三のレンズ3の距離を調整することにより、前記第三のレンズ3のクリアアパーチャの大きさを変更することが可能である。例えば、間隔値Yと口径値xとは、Y=ax+bという関係を満たす必要があり、そのうち、-0.8≦a≦-0.39、30≦b≦35である。
【0087】
前記第三のレンズ3が前記第二のレンズ2に近いほど、前記第三のレンズ3の口径xが大きくなり、つまり、両者の間の間隔Yの値が小さいほど、前記第三のレンズ3の口径xが大きくなることが理解できる。
【0088】
また、前記光学システムに表示画面4がさらに設けられている場合、各レンズの間隔が合理的に配置された後、前記第三のレンズ3と前記表示画面4との間の間隔寸法も考慮する必要がある。
【0089】
例えば、前記第三のレンズ3と前記表示画面4との間に第三の間隔T2が設けられている。
【0090】
選択的に、前記第三の間隔T3が8mm≦T2≦15mmに設定される。
【0091】
本願のいくつかの例では、前記第一のレンズ1と前記第二のレンズ2とは、材質が同じであり、両方ともCOP材料であり、前記第三のレンズ3がOKP材料又はEP材料である。
【0092】
COP材料、OKP材料、EP材料はいずれも光透過性の樹脂材料であり、質量が軽く、これらの材料を用いてレンズを製作することにより、レンズ群の質量を低減し、軽量化を実現することができる。
【0093】
各レンズについて、材料の選択上、短焦点及び色収差の考慮に基づいて、高屈折率及び高・低アッベ数の材料の組み合わせを選択して最適化設計を行う。
【0094】
当業者は、実際のニーズに応じて前記第一のレンズ1、前記第二のレンズ2及び前記第三のレンズ3の材質を合理的に選択することができ、上記の材料の種類に限定されるものではない。
【0095】
本願のいくつかの例では、前記第一のレンズ1の中心厚さ値h1が2mm≦h1≦4mmであり、前記第二のレンズ2の中心厚さh2が3mm≦h2≦5mmであり、前記第三のレンズ3の中心厚さh3が2mm≦h3≦4mmである。
【0096】
各レンズの厚さが厚すぎないので、光路構造全体の重量を低減させるのに有利である。
【0097】
本願のいくつかの例では、前記第一のレンズ1の有効焦点距離f1と前記第二のレンズ2の有効焦点距離f2との和が、前記第三のレンズ3の有効焦点距離f3の絶対値よりも大きい。
【0098】
選択的に、前記第一のレンズ1の有効焦点距離f1が、20mm≦f1≦40mmに設定され、
前記第二のレンズ2の有効焦点距離f2が、20mm≦f2≦40mmに設定され、
前記第三のレンズ3の有効焦点距離f3が、-100mm≦f3≦-50mmに設定される。
【0099】
本願のいくつかの例では、前記光学システムの有効焦点距離fが、15mm≦f≦25mmを満たす。
【0100】
本願では、短焦点の光学システムが提供されている。光学システム全体に光路の折り返しがなく、直接透過型の光学システムになっており、高鮮明の結像を実現できる。
【0101】
以下は、本願の実施例による技術案の1つの適用例である。
【0102】
(1)1.4インチの表示画面4と合わせて90度の視野角を実現した。
(2)歪曲収差が34.6%よりも小さく、像面湾曲が0.5mmよりも小さい。
(3)色収差が178umよりも小さい。虚像距離が1500mmである。
(4)0~1.0Fのスポットサイズがいずれも2つの表示画素よりも小さく、可視光帯域(450nm~630nm)での鮮明な結像を実現した。
(5)光学システムの有効焦点距離fが19.13mmであり、光学全長(Total Track Length、TTL)が23.31mmであり、前記第三のレンズ3の口径xが33.2mmである。
【0103】
[実施例1]
実施例1では、光学システムが提供されており、表1によって光学システムの構造パラメータが示されている。
【0104】
表1には、人の目5(絞り)から表示画面4まで順に番号付けられた光学面番号(Surface)、光軸上での各光学面の曲率(C)、人の目5(絞り)から表示画面4までの光軸上での各光学面と次の光学面との距離(T)、及び、偶数次の非球面係数α2、α3、α4がそれぞれ示されている。
【0105】
そのうち、非球面係数は以下の方程式を満たすことが可能である。
【数1】
【0106】
式(1)において、zは光軸方向に沿った座標、Yはレンズ長単位を単位としたラジアル座標、Cは曲率(1/R)、Kは円錐係数(Conic Constant)、αiは各高次項の係数、2iは非球面の高乗(the order of Aspherical Coefficient)であり、本願の技術案設計では、像面湾曲のなだらかさを考慮して、高次項のない球面係数は、4次までとする。
【0107】
【0108】
実施例1の光学システムの性能の良否は、次のようなパラメータで反映される。
【0109】
図6に示すように、スポットサイズは、最大視野1.0Fで最大となり、その最大値が44μmよりも小さい。
【0110】
図7に示すように、T及びS方向の像面湾曲は、いずれのRGB波長についても、0.5mmよりも小さく、歪曲収差は、最大視野で最大となり、34.5%未満である。
【0111】
図8に示すように、RGBの最大分散は、最大視野位置にあり、460nm~610nmのRGB全体で、LCAが178nmである。
【0112】
本願の実施例による光学システムにおいて、前記第三のレンズ3の口径値xと、前記第三のレンズ3と前記第二のレンズ2との間の間隔Yの値との関係は、次の通りである。
【0113】
前記第三のレンズ3が前記第二のレンズ2に近いほど、前記第三のレンズ3の口径値xが大きくなり、両者の間は、線形的な負の相関関係にある。
【0114】
以下は、
図3から
図5に示すように、3つの実施例によって説明を行う。
【0115】
[実施例2]
前記光学システムにおいて、前記第一のレンズ1及び前記第二のレンズ2の屈折力がいずれも正に設定され、面形状のパラメータがそれぞれ次の通りである。
【0116】
前記第一のレンズ1:第一の表面11(凸面)の半径値R1=45mmであり、第二の表面12(フレネル面)の半径値R2=25mmであり、
前記第二のレンズ2:第三の表面21(フレネル面)の半径値R3=25mmであり、第四の表面22(凸面)の半径値R4=45mmであり、
前記第三のレンズ3は、屈折力が負であり、表示画面4の近くに設けられており、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを2mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが31.14mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを3mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが30.1mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを3.5mに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.7mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを4mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.4mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを4.5mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.2mmである。
【0117】
上記に列挙された前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yと、前記第三のレンズ3の口径値xとの関係から、両者が線形的な負の相関関係にあることは確認でき、
図3に示すように、Y=-0.7854x+32.578となる。
【0118】
[実施例3]
前記光学システムにおいて、前記第一のレンズ1及び前記第二のレンズ2の屈折力がいずれも正に設定され、面形状のパラメータがそれぞれ次の通りである。
【0119】
前記第一のレンズ1:第一の表面11(凸面)の半径値R1=35mmであり、第二の表面12(フレネル面)の半径値R2=25~29mmであり、
前記第二のレンズ2:第三の表面21(フレネル面)の半径値R3=25~29mmであり、第四の表面22(凸面)の半径値R4=35mmであり、
前記第一のレンズ1の有効焦点距離f1≒前記第二のレンズ2の有効焦点距離f2=29mmであり、
前記第三のレンズ3は、屈折力が負であり、表示画面4の近くに設けられており、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを2mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが30.06mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを3mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.3mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを3.5mに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.2mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを4mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.07mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを4.5mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが28.6mmである。
【0120】
上記に列挙された前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yと、前記第三のレンズ3の口径値xとの関係から、両者が線形的な負の相関関係にあることは確認でき、
図4に示すように、Y=-0.5357x+31.078となる。
【0121】
[実施例4]
前記光学システムにおいて、前記第一のレンズ1及び前記第二のレンズ2の屈折力がいずれも正に設定され、面形状のパラメータがそれぞれ次の通りである。
【0122】
前記第一のレンズ1:第一の表面11(凸面)の半径値R1=50mmであり、第二の表面12(フレネル面)の半径値R2=25mmであり、
前記第二のレンズ2:第三の表面21(フレネル面)の半径値R3=25mmであり、第四の表面22(凸面)の半径値R4=50mmであり、
前記第一のレンズ1の有効焦点距離f1≒前記第二のレンズ2の有効焦点距離f2=29mmであり、
前記第三のレンズ3は、屈折力が負であり、表示画面4の近くに設けられており、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを2mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが30.1mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを3mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.7mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを3.5mに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.5mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを4mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径xが29.38mmであり、
前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yを4.5mmに設定すると、対応する前記第三のレンズ3の口径値xが29.08mmである。
【0123】
上記に列挙された前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔値Yと、前記第三のレンズ3の口径値xとの関係から、両者が線形的な負の相関関係にあることは確認でき、
図5に示すように、Y=-0.393x+30.888となる。
【0124】
上記の実施例2~実施例4から分かるように、前記第三のレンズ3と前記第二のレンズ2との間の間隔寸法Yと、前記第三のレンズ3の口径値xとは、線形的な負の相関関係にある。ただし、レンズの面形状のパラメータが異なる場合は、得られる線形係数が少し異なるようになり、例えば、
Y=ax+bであり、そのうち、-0.8≦a≦-0.39、30≦b≦35であり、Yは前記第二のレンズ2と前記第三のレンズ3との間の間隔Tであり、xは前記第三のレンズ3の口径値である。
【0125】
本願の実施例では、折り返し光路に係らない短焦点の光学システムが提供されている。
【0126】
(1)接合された2枚の正レンズと、分離して設計された1枚の負レンズとが含まれるように、複数(例えば3枚)の光学レンズを組み合わせることにより、超短焦点の効果を良好に実現することができる。
(2)2つの正レンズのフレネル面を接合処理することで、迷光を低減することができるとともに、光路構造内への2つの正レンズの組立に寄与し、組立プロセスが簡略化される。
(3)前記表示画面4に近い負レンズのパラメータを特別に設計しており、結像品質の向上に寄与する。
【0127】
本願のもう1つの局面によれば、頭部装着型表示機器が提供されている。
【0128】
前記頭部装着型表示機器は、上記のいずれか一種の光学システムを含む。
【0129】
前記頭部装着型表示機器は、例えばVR機器である。
【0130】
上記の実施例では、各実施例の違いに重点を置いて述べたが、各実施例間の異なる最適化特徴は、矛盾しない限り、それらを組み合わせてより良い実施例を形成することができ、文章の簡潔さを考慮して、ここでは繰り返して説明しない。
【0131】
例を通じて本願のいくつかの特定実施例を詳しく説明したが、上記の例が説明のためのものであり、本願の範囲を制限するためのものではないことは、当業者が理解すべきである。当業者は、本願の範囲及び精神を逸脱することなく、上記の実施例を変更可能であることを理解すべきである。本願の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【符号の説明】
【0132】
1、第一のレンズ;2、第二のレンズ;3、第三のレンズ;4、表示画面;5、人の目;
11、第一の表面;12、第二の表面;
21、第三の表面;22、第四の表面;
31、第五の表面;31、第六の表面。