(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御システム、情報処理方法、制御プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
H04L 65/80 20220101AFI20250408BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20250408BHJP
H04L 43/02 20220101ALI20250408BHJP
【FI】
H04L65/80
B25J19/00 J
H04L43/02
(21)【出願番号】P 2024024922
(22)【出願日】2024-02-21
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光洋
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 陽夫
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-115412(JP,A)
【文献】特開2001-025986(JP,A)
【文献】特開2023-144650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 65/80
B25J 19/00
H04L 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置であって、
前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得部と、
前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成部と、
前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信処理部と、
を備え
、
前記取得部は、
前記ロボットが備えるセンサのセンシング結果を取得し、
前記生成部は、
(1)前記センシング結果が示す、前記ロボット周辺に位置する人物の人数又は姿勢と(2)前記通信品質との双方に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する
情報処理装置。
【請求項2】
前記生成部は、
前記通信品質に応じた第1時間分の制御データを、繰り返し生成し、
前記通信処理部は、
前記制御データを第2時間毎に前記ロボットに送信し、
前記第1時間は、前記第2時間よりも長く且つ前記通信品質が低い程長い時間である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置であって、
前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得部と、
前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成部と、
前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信処理部と、
を備え、
前記制御データは、複数の制御データ部分を含み、
前記ロボットは、各制御データ部分に対応する動作を順番に実行し、
前記生成部は、
前記制御データに含まれる制御データ部分毎の確率であって、当該制御データ部分に対応する動作を前記ロボットが行っている時間中に、前記生成部において生成された次の制御データが前記ロボットに到達する確率を含む式を用いて前記制御データを生成す
る
情報処理装置。
【請求項4】
1又は複数のロボットと、前記ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置とを備える制御システムであって、
前記情報処理装置は、
前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得部と、
前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成部と、
前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信処理部と、を備え、
前記制御データは、複数の制御データ部分を含み、
前記生成部は、
前記制御データに含まれる制御データ部分毎の確率であって、当該制御データ部分に対応する動作を前記ロボットが行っている時間中に、前記生成部において生成された次の制御データが前記ロボットに到達する確率を含む式を用いて前記制御データを生成し、
前記ロボットは、
前記情報処理装置から前記制御データを受信したことに応答して、当該制御データに基づく動作を行
い、各制御データ部分に対応する動作を順番に実行する
制御システム。
【請求項5】
前記情報処理装置として、分散処理を行う複数のエッジサーバを備える
請求項
4に記載の制御システム。
【請求項6】
ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、
前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得ステップと、
前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成ステップと、
前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信ステップと、
を含
み、
前記制御データは、複数の制御データ部分を含み、
前記ロボットは、各制御データ部分に対応する動作を順番に実行し、
前記生成ステップにおいては、
前記制御データに含まれる制御データ部分毎の確率であって、当該制御データ部分に対応する動作を前記ロボットが行っている時間中に、前記生成ステップにおいて生成された次の制御データが前記ロボットに到達する確率を含む式を用いて前記制御データを生成する
情報処理方法。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記取得部、上記生成部および上記通信処理部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項8】
請求項
7に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項9】
1又は複数のロボットと、前記ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置とを備える制御システムであって、
前記情報処理装置は、
前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得部と、
前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成部と、
前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信処理部と、を備え、
前記取得部は、
前記ロボットが備えるセンサのセンシング結果を取得し、
前記生成部は、
(1)前記センシング結果が示す、前記ロボット周辺に位置する人物の人数又は姿勢と(2)前記通信品質との双方に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成し、
前記ロボットは、
前記情報処理装置から前記制御データを受信したことに応答して、当該制御データに基づく動作を行う
制御システム。
【請求項10】
ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、
前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得ステップと、
前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成ステップと、
前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信ステップと、
を含み、
前記取得ステップにおいては、
前記ロボットが備えるセンサのセンシング結果を取得し、
前記生成ステップにおいては、
(1)前記センシング結果が示す、前記ロボット周辺に位置する人物の人数又は姿勢と(2)前記通信品質との双方に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、制御システム、情報処理方法、制御プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット等を制御するための制御データを生成する場合、その生成が完了するまでの時間には揺らぎがあるため、一定周期毎に、ロボットの動作に要する時間分よりも長い時間分の制御データを生成する処理が従来技術として知られている。前記処理においては、ロボットの動作に実際には使用されなかった分の制御データ部分については破棄される。特許文献1では、子供などの割り込みによって中断しない案内ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来技術では、例えば制御データを生成するサーバと、制御対象となるロボットとが遠隔地に位置し、制御データの通信遅延が生じた場合に、ロボットの動作に要する制御データが不足してロボットが一時的に動作不能になることがある。
【0005】
一方で、ロボットが動作不能になることを防ぐために、一定周期毎に生成する制御データのサイズを大きくした場合には、制御データの生成コスト、及び破棄される制御データ部分のロスが増加するという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ロボットの制御データを過剰に生成することなく、通信遅延時においてロボットが動作不能となることを抑制可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置であって、前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得部と、前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成部と、前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信処理部と、を備える。
【0008】
本発明の他の態様に係る制御システムは、1又は複数のロボットと、前記ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置とを備える制御システムであって、前記情報処理装置は、前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得部と、前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成部と、前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信処理部と、を備え、前記ロボットは、前記情報処理装置から前記制御データを受信したことに応答して、当該制御データに基づく動作を行う。
【0009】
本発明の他の態様に係る情報処理方法は、ロボットを制御するための制御データを生成する情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、前記情報処理装置と前記ロボットとの間の通信品質を示す情報を取得する取得ステップと、前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成ステップと、前記生成された制御データを前記ロボットに送信する通信ステップと、を含む。
【0010】
コンピュータを本発明の各態様に係る情報処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報処理装置をコンピュータにて実現させる情報処理装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0011】
また、前記制御プログラムは、コンピュータを前記各部として動作させる処理又はその他の処理において、各種の機械学習手法を用いてもよい。この場合、機械学習手法を用いるプログラムはサーバで動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、ロボットの制御データを過剰に生成することなく、通信遅延時においてロボットが動作不能となることが抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】制御システムの機能的構成を示すブロック図の一例である。
【
図2】既存の制御システムによる処理を示す概念図の一例である。
【
図3】既存の制御システムによる処理を示す概念図の一例である。
【
図4】制御システムの処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【
図5】制御システムによる処理を示す概念図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
〔1.制御システムの構成例〕
図1は、本開示に係る制御システム100の機能的構成を示すブロック図の一例である。制御システム100は、サーバ1、ロボット2及び中継装置3を備えており、サーバ1が生成した制御データによってロボット2を制御するためのシステムである。制御データには、例えばロボット2の視線方向、関節角度及び発話内容、モータ及びタイヤの回転速度、並びに電圧等の指令値が含まれ得る。
【0016】
サーバ1は、ロボット2に対するサーバとして機能する装置であって、制御部10、記憶部18及び通信部19を備えている。
【0017】
制御部10は、サーバ1全体を統括する制御装置であって、取得部11、生成部12及び通信処理部13を備えている。
【0018】
取得部11は、サーバ1とロボット2との間の通信品質を示す情報を、例えば中継装置3から取得する。なお、取得部11は、通信部19を介した通信速度に基づいて制御部10が算出した通信品質を示す情報を取得してもよい。また、取得部11は、ロボット2が備えるセンサ20のセンシング結果を取得する。
【0019】
生成部12は、前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する。ここで、「通信品質に応じた制御時間分」には「通信品質に応じた制御分量」と読み替えたときの意味も含まれ得る。
【0020】
通信処理部13は、通信部19による通信処理に係る制御を行う。
【0021】
記憶部18は、各種情報を格納する記憶装置であって、例えば通信品質と、単一の制御データの制御時間との関係を示す情報を格納する。生成部12は、制御データを生成する場合に前記情報を参照してもよい。
【0022】
通信部19は、通信処理部13による制御に基づいて、ロボット2等の外部装置との通信処理を行う。
図1に示すように、一態様においてサーバ1とロボット2との間の通信は、中継装置3を介して行われる。
【0023】
ロボット2は、サーバ1から受信した制御データに基づいて動作する装置である。ロボット2は、後述の
図5等に図示されるような人型のロボットに限定されず、車両型のロボット、又は特定箇所に設けられた工作機械等であってもよい。
【0024】
また、ロボット2は、1又は複数種類のセンサ20を備えている。センサ20には、イメージセンサ、サウンドセンサ及び力覚センサ等が含まれ得る。センサ20によるセンシング結果の少なくとも一部は、サーバ1に対して送信される。
【0025】
また、生成部12は、取得部11が取得したセンサ20のセンシング結果に応じた動作を指示する制御データを生成してもよい。また、例えば生成部12は、センシング結果を入力としてロボット2の動作内容を出力する機械学習モデルを用いて制御データを生成する構成であってもよい。前記構成においては、記憶部18が、機械学習モデルを規定するパラメータセットを格納し、制御部10が、前記機械学習モデルの学習を行ってもよい。
【0026】
中継装置3は、自装置に接続された装置間の通信を中継する装置であって、例えばサーバ1とロボット2との間の通信を中継する装置である。サーバ1とロボット2との間には、複数の中継装置3が設けられていてもよい。換言すると、サーバ1とロボット2との間の通信は、複数の中継装置3を介して実現されてもよい。中継装置3には、ルータ等の機器に加え、基地局装置等も含まれ得る。
【0027】
なお、制御システム100が備える単一の部材の機能が、別の複数の部材によって実現されてもよく、制御システム100が備える複数の部材の機能が、別の単一の部材によって実現されてもよい。
【0028】
また、単一のサーバ1が複数の中継装置3及びロボット2に接続された構成であってもよいし、単一の中継装置3が複数のロボット2に接続された構成であってもよい。これらの構成においては、通信品質が同じであっても、各ロボット2に対する単一の制御データに対応する制御時間が互いに異なっていてもよい。
【0029】
また、サーバ1の一部又は全部の機能は、クラウドコンピューティングによって実現されてもよいし、MEC(Multi-access Edge Computing)のようなエッジコンピューティングによって実現されてもよい。後者の構成の場合、サーバ1の一部又は全部の機能が、中継装置3と一体の装置によって実現されてもよい。換言すると、サーバ1と中継装置3とのうち一方が他方を備える構成であってもよい。また、制御システム100が、エッジサーバとして動作して分散処理を行う前記一体の装置を複数備える構成であってもよい。サーバ1及び中継装置3は、本開示における情報処理装置の一例である。
【0030】
〔2.補足事項〕
続いて、サーバが生成した制御データによってロボットを制御する既存の制御システムについて、
図2を参照して補足する。
図2は、前記既存の制御システムによる処理を示す概念図の一例である。
図2において、制御データは、1度あたりにロボットに送信される単一の制御データを示している。各制御データ部分は、制御データを構成するデータであって、単位時間分の制御に対応するデータを示している。本実施形態においては、説明を容易にするために前記単位時間を1秒として説明するが、これに限定されず0.1秒等であってもよい。換言すると、各制御データ部分が1秒分の制御に対応するデータであるものとして説明するが、これに限定されず、0.1秒分等の制御に対応するデータであってもよい。また、ロボットが備えるセンサのセンシング結果については、随時又は所定時間毎にサーバに対して送信される。
【0031】
図2において、単一の制御データは、N+1秒分(N+1個のブロック分)の制御データ部分を含んでいる。別の側面から言えば、ロボットは、単一の制御データを用いて各制御データ部分に対応する動作を順番に実行することによって、N+1秒間までの動作が可能である。
【0032】
サーバは、制御データを生成してロボットに送信する処理をx秒の周期で繰り返す。換言すると、ロボットは、各制御データを用いてx秒間の周期で動作する。
図2の例の場合、前記xは、N未満の値となる。その結果、
図2の右図に示すように、ロボットは、或る制御データを用いてx秒分(t(+0)秒~t+x-1秒分)の動作を行い、次に受信した制御データを用いて以降の動作を行う処理を繰り返す。ここで、tは、任意の現在時刻に対応する。前記処理において、各制御データのN-x+1秒分(t+x~t+N秒分)の制御データ部分は、ロボットの動作には使用されず破棄される。
【0033】
図3は、既存の制御システムにおいて、サーバとロボットとが中継装置を介した通信を行う構成における処理を示す概念図の一例である。また、
図3は、サーバからロボットへの制御データの送信に通信遅延が生じた場合の例を示している。
【0034】
ロボットが或る制御データを受信してから、次の制御データを受信するまでに通信遅延が生じることによって、ロボットの動作に必要な制御データ部分が不足する場合がある。
【0035】
例えば
図3の右図は、或る制御データがN+1秒分の制御データ部分を含んでいるのに対し、ロボットが当該制御データを受信してから次の制御データを受信するまでに、通信遅延によってN+1秒よりも長い時間を要したことを示している。これにより、ロボットは、N+2秒目から次の制御データを受信するまでの間、動作不能となっている。別の側面から言えば、ロボットが単一の制御データを用いて動作を行う時間を示すxが、一時的にNよりも大きい値となっている。
【0036】
このように、既存の制御システムにおいては、制御データの通信遅延が生じた場合に、ロボットの動作に要する制御データ部分が不足してロボットが一時的に動作不能になることがあるという問題がある。
【0037】
〔3.制御システムの処理例〕
続いて、本開示に係る制御システム100が実行する処理の流れについて一例を挙げて説明する。
図4は、制御システム100の処理の流れを示すフローチャートの一例である。また、
図4に示す処理と並行して、ロボット2が備えるセンサ20のセンシング結果がロボット2からサーバ1に送信される処理が、随時又は所定時間毎に実行される。
【0038】
S101(ステップS101)において、サーバ1の取得部11は、サーバ1とロボット2との間の通信品質を示す情報を中継装置3等から取得して記憶部18に格納する。
【0039】
S102において、生成部12は、取得部11が直近に取得した情報が示す通信品質に応じた制御時間分の制御データを生成する。
【0040】
図5は、制御システム100による処理を示す概念図の一例である。サーバ1からロボット2への制御データの送信、及びロボット2が各制御データを用いて動作する処理が、x秒の周期で繰り返されるものとすると、
図5の左図に示すように、生成部12は、N+1秒分(t~t+N秒分)の制御データを生成する。ここで、Nは、xよりも大きな値であって、前述の通信品質が低い程大きい値となる。
【0041】
また、単一の制御データに対応する制御時間である前記N+1秒は、本開示における第1時間の一例であり、前記周期であるx秒は、本開示における第2時間の一例である。即ち生成部12は、通信品質に応じた第1時間分の制御データを生成する処理を、本ステップS102の工程の度に行う。また、第1時間は、第2時間よりも長く且つ通信品質が低い程長い時間である。
【0042】
一態様において、制御システム100を、単一の制御データに対応する動作であってロボット2の1周期の動作毎に、ロボット2が99.9%動作不能とならないQoS(Quality of Service)のシステムとする場合、生成部12は、以下の式1を満たすaに単位時間を乗じた値をNとして用いてもよい。
【0043】
【数1】
式1において、P
1は、1番目の制御データ部分に対応する動作をロボット2が行っている時間中に、生成部12において生成された次の制御データがロボット2に到達する確率を意味している。また、P
iは、i番目の制御データ部分に対応する動作をロボット2が行っている時間中に、生成部12において生成された次の制御データがロボット2に到達する確率を意味している。前記確率には、実測によって求められた割合も含まれる。iは、1以上の整数である。例えば
図5の「t+1」の制御データ部分は、iの値が2である場合に対応する。別の側面から言えば、P
iは、制御データのi番目の制御データ部分において、当該制御データに基づくロボット2の動作が、動作不能となることなく新たな制御データの受信によって完了する確率を意味している。
【0044】
このように生成部12は、制御データに含まれる制御データ部分毎の確率であって、当該制御データ部分に対応する動作をロボット2が行っている時間中に、生成部12において生成された次の制御データがロボット2に到達する確率を含む式を用いて制御データを生成してもよい。
【0045】
また、ロボット2が、或る制御データ部分に対応する動作までを実行したことを示す情報を、サーバ1に対する応答として随時送信して、サーバ1の生成部12が、当該情報を参照して制御データを生成する構成であってもよい。式1のPiの括弧書きについて補足すると、この括弧書きは、Piが0~i-1ステップ目で非応答であり、即ち0~i-1番目の制御データ部分では非応答であり、且つiステップ目で応答となる確率であることを意味している。
【0046】
S103において、通信処理部13は、生成部12が生成した制御データを、通信部19を介してロボット2に送信する。本ステップS103の工程は、前述の第2時間毎に繰り返される。即ち通信処理部13は、制御データを第2時間毎にロボット2に送信する。
【0047】
S104において、ロボット2は、サーバ1から制御データを受信したことに応答して、当該制御データに基づく動作を行う。ロボット2は、第2時間であるx秒毎に制御データを受信する。そのため、
図5の右図に示すように、ロボット2は、前回受信した制御データのうち、N-x+1秒分(t+x~t+N秒分)の制御データ部分については使用せず破棄し、新たに受信した制御データに基づいてt+x秒以降の動作を行う処理を繰り返す。換言すると、ロボット2は、動作の際に参照する各制御データのうちt+x~t+N秒分の制御データを、新たに受信した制御データによって上書きする処理を繰り返す。
【0048】
S105において、サーバ1の制御部10は、所定条件が満たされたか否かを判定する。ここで、所定条件とは、例えばS105において「NO」の判定が、直近の判定を含め所定回数以上連続してなされた場合に満たされる条件である。
【0049】
制御部10が、所定条件が満たされたと判定した場合(S105:YES)、続いてS101からの処理が繰り返され、所定条件が満たされていないと判定した場合(S105:NO)、続いてS102からの処理が繰り返される。
【0050】
S105についての前記記載は、生成部12が制御データの生成の際に参照する通信品質を示す情報が、一定期間又は或る程度の期間毎に更新されることを意味している。なお、S105の判定が実行されず、S104の処理に続いてS101からの処理が毎回繰り返される構成であってもよい。
【0051】
以上、装置によって実行される情報処理方法であって、取得ステップ(S101)、生成ステップ(S102)及び通信ステップ(S103)を含む方法について説明した。
【0052】
本例の方法によれば、サーバ1は、通信品質に応じた好適な制御時間分の制御データを生成してロボット2に送信することができる。特に、ロボット2が移動可能な場合、サーバ1は、通信品質の変化に合わせて、動的かつ好適な制御時間分の制御データを生成してロボット2に送信することができる。これにより、ロボット2の制御データを過剰に生成することなく、通信遅延時においてロボット2が動作不能となることが抑制可能となる。
【0053】
〔4.変形例〕
サーバ1の生成部12は、取得部11が取得したセンサ20のセンシング結果と通信品質との双方に応じた制御時間分の制御データを繰り返し生成する構成であってもよい。例えばセンシング結果が、ロボット2が居る室内の人数が所定以上となったことを示している場合に、生成部12は、通信が遮断されやすくなるものと予め推定して単一の制御データに対応する制御時間をより長くする構成であってもよい。
【0054】
また、取得部11が、センサ20のセンシング結果としてロボット2周辺に位置する人物の画像を取得し、生成部12が、推定した当該人物の姿勢に応じた制御時間分の制御データを繰り返し生成する構成であってもよい。例えば生成部12は、ロボット2の周辺人物がスマートフォンを凝視していると推定した場合、当該人物による通信のトラフィックが単なる歩行者による通信のトラフィックよりも大きくなるものとして、単一の制御データに対応する制御時間をより長くする構成であってもよい。
【0055】
また、生成部12は、単一の制御データに対応する制御時間を決定する場合に機械学習モデルを用いる構成であってもよい。例えば、ロボット2の周辺人物の姿勢に応じた制御時間分の制御データが生成される前述の構成においては、スマートフォンの位置情報又はそのスマートフォンを所持する人物の姿勢を説明変数とし、そのスマートフォンによる通信のトラフィックを目的変数とする機械学習モデルが用いられてもよい。また、生成部12は、推定したトラフィックに応じた時間を、単一の制御データに対応する制御時間としてもよい。
【0056】
また、制御システム100が中継装置3を備えず、サーバ1とロボット2とが通信処理を直接行う態様についても本開示に含まれる。
【0057】
また、ロボット2の動作に要する制御データ部分が不足してロボット2が一時的に動作不能となった場合に、その旨がロボット2からサーバ1に送信されて、生成部12が単一の制御データに対応する制御時間をより長くする構成であってもよい。
【0058】
また、ロボット2が、受信した制御データのうち何れの制御時間分までの制御データ部分を使用したかを示す情報をサーバ1に送信する構成であってもよい。前記構成において、生成部12は、ロボット2側で破棄された制御データ部分の分量が或る基準以下であった場合、単一の制御データに対応する制御時間をより長くし、破棄された制御データ部分の分量が別の基準以上であった場合、単一の制御データに対応する制御時間をより短くする構成であってもよい。
【0059】
また、単一のサーバ1が複数のロボット2を制御する構成の場合、生成部12は、各ロボット2に対する単一の制御データに対応する制御時間の合計が一定範囲内となるように各制御データを生成してもよい。例えば生成部12は、或るロボット2に対する制御データに対応する制御時間を長くした場合に、別のロボット2に対する制御データに対応する制御時間を短くする構成であってもよい。これにより、制御システム100全体における処理負荷の揺らぎを一定範囲内に収めることに寄与する。
【0060】
〔5.ソフトウェアによる実現例〕
サーバ1及びロボット2(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0061】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0062】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0063】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0064】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 サーバ(情報処理装置)
2 ロボット
3 中継装置(情報処理装置)
10 制御部
11 取得部
12 生成部
13 通信処理部
18 記憶部
19 通信部
20 センサ
100 制御システム
【要約】
【課題】ロボットの制御データを過剰に生成することなく、通信遅延時においてロボットが動作不能となることを抑制可能とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る情報処理装置(1)は、ロボット(2)を制御するための制御データを生成する情報処理装置(1)であって、前記情報処理装置(1)と前記ロボット(2)との間の通信品質を示す情報を取得する取得部(11)と、前記通信品質に応じた制御時間分の制御データを、繰り返し生成する生成部(12)と、前記生成された制御データを前記ロボット(2)に送信する通信処理部(13)と、を備える。
【選択図】
図1