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特許7662885活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびその硬化物ならびに保護フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびその硬化物ならびに保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20250408BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20250408BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20250408BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/32 015
C08G18/44
C08G18/67 055
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024165527
(22)【出願日】2024-09-24
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早崎 直哉
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222068(JP,A)
【文献】特開2014-083800(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093299(WO,A1)
【文献】特開2020-002349(JP,A)
【文献】特開2012-102193(JP,A)
【文献】特開2014-189651(JP,A)
【文献】特開2024-028222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C08G 18/32
C08G 18/44
C08G 18/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
前記ウレタンアクリレートは、
脂環式イソシアネート化合物、
芳香族ポリオール化合物、
ポリカーボネートジオール、および、
ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物
に由来する構造単位を有し、
前記ウレタンアクリレートは、1分子中に2個以上の前記ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を含み、
前記ポリカーボネートジオールは、脂環構造または複素環を有する、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネートジオールは、主鎖に脂環構造または複素環を有する、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記芳香族ポリオール化合物はビスフェノール骨格を有する化合物である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
保護フィルム用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を含む、保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびその硬化物ならびに保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射によって硬化する性質を有することから、例えば、各種基材を保護するために使用される保護フィルムを製造することができる。その他、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種基材へのコーティング、ハードコート剤、接着剤等にも応用されている。
【0003】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては種々提案されている。例えば、特許文献1には、ジイソシアネート化合物と、ポリカーボネートジオール化合物と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタンアクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-037411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種基材を保護するための保護フィルムとしての利用価値が高まっている。このため、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、各種基材への密着性に優れると共に、耐候性にも優れるフィルムを形成することができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が求められる。
【0006】
加えて、保護対象の基材表面は平坦ではなく、湾曲あるいは曲面形状を形成していることもあるので、基材に保護フィルムを強く密着させるために、フィルムを引っ張りながら基材に貼り合わせる必要がある。このため、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成される保護フィルムには、引張伸び特性、とりわけ、高温状態における引張伸び特性に優れることも求められる。
【0007】
斯かる観点から、基材への密着性が高く、耐候性にも優れ、その上、高温状態における引張伸び特性に優れるフィルムを形成することができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、基材への密着性が高く、耐候性にも優れ、その上、室温状態だけでなく高温状態においても引張伸び特性に優れるフィルムを形成することができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびその硬化物並びに保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造単位を有するウレタンアクリレートを必須成分とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
ウレタンアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
前記ウレタンアクリレートは、
脂環式イソシアネート化合物、
芳香族ポリオール化合物、
ポリカーボネートジオール、および、
ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物
に由来する構造単位を有し、
前記ポリカーボネートジオールは、脂環構造または複素環を有する、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
項2
前記ポリカーボネートジオールは、主鎖に脂環構造または複素環を有する、項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
項3
前記芳香族ポリオール化合物はビスフェノール骨格を有する化合物である、項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
項4
保護フィルム用である、項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
項5
項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物。
項6
項5に記載の硬化物を含む、保護フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、基材への密着性が高く、耐候性にも優れ、その上、室温状態だけでなく高温状態においても引張伸び特性に優れるフィルムを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0013】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ウレタンアクリレートを含有する。斯かるウレタンアクリレートは、脂環式イソシアネート化合物、芳香族ポリオール化合物、ポリカーボネートジオール、および、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物に由来する構造単位を有する。前記ポリカーボネートジオールは、脂環構造または複素環を有する。
【0015】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記各構造単位をすべて含むウレタンアクリレートを含有することによって、基材への密着性が高く、耐候性にも優れ、その上、室温状態だけでなく高温状態においても引張伸び特性に優れるフィルムを形成することができる。このため、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、フィルムを形成するための原料として好適に使用することができる。
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるウレタンアクリレートは、脂環式イソシアネート化合物、ポリカーボネートジオール、芳香族ポリオール化合物および、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物を反応させて得られる。以下では、脂環式イソシアネート化合物を、「(A1)脂環式イソシアネート化合物」と表記し、ポリカーボネートジオールを「(B1)ポリカーボネートジオール」と表記し、芳香族ポリオール化合物を「(B2)芳香族ポリオール化合物」と表記し、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物を「(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物」と表記する。また、これらの化合物を順に化合物(A1)、化合物(B1)、化合物(B2)および化合物(C1)と略記することもある。
【0018】
(A1)脂環式イソシアネート化合物
ウレタンアクリレートは、(A1)脂環式イソシアネート化合物に基づく構造単位を含有する。(A1)脂環式イソシアネート化合物は、分子内に脂環構造を有するイソシアネート化合物である。特に、(A1)脂環式イソシアネート化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートである。
【0019】
ウレタンアクリレートは、(A1)脂環式イソシアネート化合物に基づく構造単位を含有することで、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、耐候性および高温での伸び特性の両方に優れるフィルムを形成しやすくなる。
【0020】
脂環構造とは、芳香族性を有しない飽和及び/又は不飽和の炭素環構造を1以上含むものである。当該炭素環構造は2以上であってもよい。前記炭素環構造は脂肪族炭化水素構造の分枝を有することができる。炭素環構造は直接に、又は炭化水素鎖を介してポリマー主鎖の炭化水素鎖に結合される。
【0021】
前記炭素環構造には例えば、単環の構造の例として、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンなどのシクロアルカン構造や、シクロプロペン、シクロブテン、シクロプロペン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロアルケン構造などが挙げられる。また、二環式の構造の例として、ビシクロウンデカン等の二環式アルカン構造、ノルボルネンやノルボルナジエン等の二環式アルケン構造等が挙げられ、好適に用いることができる。なかでも、炭素数4~8の炭素環構造を有することが好ましく、炭素数4~8の単環の炭素環構造を有することがより好ましく、炭素数4~8の単環のシクロアルカン構造の炭素環構造を有することがさらに好ましく、シクロヘキサン構造を有することが特に好ましい。
【0022】
なお、脂環構造は、置換基を有することもできる。本明細書でいう「置換基」とは、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、スルホン基、シアノ基等を挙げることができる。
【0023】
(A1)脂環式イソシアネート化合物は、前記脂環構造を分子内に1個以上有することができ、2個以上有することが好ましく、2個有することがさらに好ましい。また、(A1)脂環式イソシアネート化合物は、イソシアネート基を分子内に2個以上有することが好ましく、2個有することがさらに好ましい。
【0024】
(A1)脂環式イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(別名4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0025】
(B1)ポリカーボネートジオール
ウレタンアクリレートは、(B1)ポリカーボネートジオールに基づく構造単位を含有する。(B1)ポリカーボネートジオールは、分子内に脂環構造または複素環を有するジオール化合物である。
【0026】
ウレタンアクリレートは、(B1)ポリカーボネートジオールに基づく構造単位を含有することで、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、基材への優れた密着性と、高温での優れた伸び特性とが両立されたフィルムを形成しやすくなる。
【0027】
(B1)ポリカーボネートジオールにおいて、脂環構造とは、前記(A1)脂環式イソシアネート化合物における脂環構造と同義である。(B1)ポリカーボネートジオールが有する脂環構造は、炭素数4~8の炭素環構造を有することが好ましく、炭素数4~8の単環の炭素環構造を有することがより好ましく、炭素数4~8の単環のシクロアルカン構造の炭素環構造を有することがさらに好ましく、シクロヘキサン構造を有することが特に好ましい。
【0028】
(B1)ポリカーボネートジオールにおいて、複素環とは、例えば、前記脂環構造を形成する炭素原子の少なくとも一つ(好ましくは一つ)がヘテロ原子に置き替えられた環構造を意味する。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等を挙げることができる。
【0029】
(B1)ポリカーボネートジオールは、主鎖に脂環構造または複素環を有することが好ましい。この場合、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、基材への密着性が高く、かつ、高温での伸び特性に優れるフィルムを形成しやすい。
【0030】
(B1)ポリカーボネートジオールは、主鎖に脂環構造を有することがより好ましく、主鎖に炭素数4~8の単環のシクロアルカン構造の炭素環構造を有することがさらに好ましく、主鎖にシクロヘキサン構造を有することが特に好ましい。
【0031】
(B1)ポリカーボネートジオールは、例えば、下記式(1)で表される構造単位を有するジオール化合物を挙げることができる。
【0032】
【化1】
【0033】
式(1)中、Rは前述の脂環構造または複素環に基づく2価の基を表す。従って、Rは、例えば、炭素数4~8の単環のシクロアルカン構造の炭素環構造に基づく2価の基が挙げられ、具体例としては、シクロヘキサン構造に基づく2価の基、すなわち、シクロヘキシレン基(-C10)を有することが特に好ましい。
【0034】
(B1)ポリカーボネートジオールが、前記式(1)で表される構造単位を有するジオール化合物である場合、両末端は、例えば、R-OHである。
【0035】
(B1)ポリカーボネートジオールが、前記式(1)で表される構造単位を有するジオール化合物である場合、当該構造単位以外に他の構造単位を有することができる。例えば、(B1)ポリカーボネートジオールは、前記式(1)で表される構造単位以外に下記式(2)で表される構造単位を有するジオール化合物を挙げることができる。
【0036】
【化2】
【0037】
式(2)中、Rは、鎖状のアルキレン基を示す。当該鎖状のアルキレン基は、例えば、炭素数20以下のアルキレン基であり、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。また、当該鎖状のアルキレン基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。Rとしての鎖状のアルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖を有していてもよい。Rの具体例としては、-CH-、-C4-、-C-、-C-、-C12-である。
【0038】
(B1)ポリカーボネートジオールが、前記式(2)で表される構造単位を有するジオール化合物を含む場合であって、斯かる構造単位が末端に配置される場合、前記式(2)で表される構造単位の末端は、例えば、R-OHである。
【0039】
(B1)ポリカーボネートジオールは、前記式(1)で表される構造単位のみからなるジオール化合物であってもよく、あるいは、前記式(1)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位の両方を有するジオール化合物であってもよい。
【0040】
(B1)ポリカーボネートジオールが、前記式(1)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位の両方を有するジオール化合物である場合、前記式(1)で表される構造単位の含有割合は、前記式(1)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位の全量に対し、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、25モル%以上であることがさらに好ましく、40モル%以上であることよりさらに好ましく、50モル%以上であることが特に好ましい。前記式(1)で表される構造単位の含有割合は、前記式(1)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位の全量に対し、70モル%以上であってもよい。
【0041】
(B1)ポリカーボネートジオールが、前記式(1)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位の両方を有するジオール化合物である場合、(B1)ポリカーボネートジオールは更に他の構造単位を含むことができ、あるいは、前記式(1)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位のみからなるジオール化合物であってもよい。
【0042】
(B1)ポリカーボネートジオールが、前記式(1)で表される構造単位および前記式(2)で表される構造単位の両方を有するジオール化合物である場合、(B1)ポリカーボネートジオール、これらの構造単位がランダムに配置されたランダムポリマーであってもよく、その他、ブロックポリマー、交互ポリマーであってもよい。
【0043】
なお、(B1)ポリカーボネートジオールが、前記式(1)で表される構造単位のみからなるジオール化合物である場合は、別途、前記式(2)で表される構造単位を有するジオール化合物を含有することもできる。すなわち、(B1)ポリカーボネートジオールは混合物であってもよい。
【0044】
(B1)ポリカーボネートジオールの数平均分子量は特に限定されず、例えば、400以上であることが好ましく、600以上であることがより好ましく、800以上であることがさらに好ましく、また、100000以下であることが好ましく、10000以下であることがより好ましく、5000以下であることがさらに好ましく、2000以下であることが特に好ましい。
【0045】
本発明において、数平均分子量とは、GPC測定で得られる値を意味することができる。具体的には、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPC装置により行い、ポリスチレン換算値として求められる。具体的な測定条件は、下記のとおりである。
カラム:東ソー社製のポリスチレンゲルカラム(TSKgel G4000HXL+TSKgel G3000HXL+TSKgel G2000HXL+TSKgel G1000HXL2本をこの順で直列に接続)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率検出器(島津製作所社製のRID-6A)
流速:1ml/分
【0046】
なお、(B1)ポリカーボネートジオールが市販品である場合において、その数平均分子量がメーカー保証値等によって判明している場合は、その値を(B1)ポリカーボネートジオールの数平均分子量として採用することができる。
【0047】
(B1)ポリカーボネートジオールの製造方法は特に限定されず、例えば、カーボネートジオールを製造するための公知の方法によって、(B1)ポリカーボネートジオールを製造することができる。また、(B1)ポリカーボネートジオールは市販品等からも入手することができる。(B1)ポリカーボネートジオールの市販品としては、UBE社の「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズが挙げられ、具体的には、「ETERNACOLL(登録商標)UC-100」、「ETERNACOLL(登録商標)UM-90(3/1)」、「ETERNACOLL(登録商標)UM-90(1/1)」、「ETERNACOLL(登録商標)UM-90(1/3)」を挙げることができる。
【0048】
(B2)芳香族ポリオール化合物
ウレタンアクリレートは、(B2)芳香族ポリオール化合物に基づく構造単位を含有する。(B2)芳香族ポリオール化合物は、分子内に芳香環構造を有するポリオール化合物である。特に、(B2)芳香族ポリオール化合物は、分子内に少なくとも2個の水酸基を有するポリオールである。なお、(B2)芳香族ポリオール化合物は、分子内にカーボネート構造を有さない。
【0049】
ウレタンアクリレートは、(B2)芳香族ポリオール化合物に基づく構造単位を含有することで、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、基材への密着性および高温での伸び特性の両方に優れるフィルムを形成しやすくなる。
【0050】
芳香環構造とは、単環性、2環性、3環性、又は4環性のアリール基を挙げることができ、例えば、炭素数6以上18以下であることができる。アリール基は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニル、3-ビフェニル、4-ビフェニル、及び2-アンスリル等が例示される。
【0051】
(B2)芳香族ポリオール化合物は、前記芳香環構造を分子内に1個または2個以上有することが好ましく、1個または2個有することがより好ましく、2個有することがさらに好ましい。(B2)芳香族ポリオール化合物は、ベンゼン環構造であることが好ましい。
【0052】
また、(B2)芳香族ポリオール化合物は、水酸基を分子内に2個以上有することが好ましく、2個有することがさらに好ましい。
【0053】
(B2)芳香族ポリオール化合物は、ビスフェノール骨格を有する化合物であることが好ましく、ビスフェノールA骨格を有する化合物であることがより好ましい。
【0054】
また、(B2)芳香族ポリオール化合物は、アルキレンオキサイド付加物であってもよい。具体的には、(B2)芳香族ポリオール化合物は、芳香環を有するジオール化合物に、アルキレンオキサイドが付加してなる化合物であってもよく、すなわち、芳香族ポリエーテルポリオールであってもよい。中でも、(B2)芳香族ポリオール化合物は、ビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であることがより好ましい。アルキレンオキサイド付加物は重合度1~100程度、好ましくは50以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下、特に好ましくは5以下である。
【0055】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを挙げることができる。
【0056】
(B2)芳香族ポリオール化合物の一態様としては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
【0057】
(B2)芳香族ポリオール化合物は公知の方法で製造することができ、あるいは、市販品等から入手することも可能である。(B2)芳香族ポリオール化合物の市販品としては、ADEKA社のポリエーテルポリオールである「BPXシリーズ」、三洋化成社のニューポール(登録商標)BPシリーズを挙げることができる。
【0058】
(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物
ウレタンアクリレートは、(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物に基づく構造単位を含有する。ウレタンアクリレートが(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物に基づく構造単位を含有することによって、ウレタンアクリレートにアクリル部位が導入されて硬化性を有することができる。
【0059】
ヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシ基を少なくとも1個有する、炭素数1~20のアルキル基を挙げることができ、好ましくは、炭素数2~10である。
【0060】
(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物は、例えば、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリルエステルを挙げることができる。(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物としては、は2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが例示される。ポリエチレンテレフタレート基材への密着性がより向上し、高温での優れた伸び特性も向上しやすい点で、(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物は、メタクリル化合物であることが好ましく、中でもヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートが特に好ましい。
【0061】
ウレタンアクリレート
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるウレタンアクリレートは、脂環式イソシアネート化合物、芳香族ポリオール化合物、ポリカーボネートジオール、および、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物を反応させて得ることができる。これにより、ウレタンアクリレートは、脂環式イソシアネート化合物、芳香族ポリオール化合物、ポリカーボネートジオール、および、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物に由来する構造単位を有することができる。
【0062】
なお、念のために注記するに過ぎないが、ウレタンアクリレートがヒドロキシアルキル基を有するメタアクリル化合物に由来する構造単位を含有する場合は、厳密にはウレタンアクリレートはウレタンメタクリレートである。従って、本発明において、ウレタンアクリレートはウレタンメタクリレートも包含する。
【0063】
ウレタンアクリレートは、(B1)ポリカーボネートジオールに基づく構造単位を30質量%以上含むことが好ましい。これにより、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は基材への密着性が高く、かつ、高温での伸び特性に優れるフィルムを形成しやすくなる。
【0064】
ウレタンアクリレートは、(B1)ポリカーボネートジオールに基づく構造単位を40質量%以上含むことがより好ましく、45質量%以上含むことがよりさらに好ましく、50質量%以上含むことが特に好ましく、また、95質量%以下含むことが好ましく、90質量%以下含むことがより好ましく、85質量%以下含むことがさらに好ましく、80質量%以下含むことがよりさらに好ましく、75質量%以下含むことが特に好ましい。
【0065】
ウレタンアクリレートは、(B2)芳香族ポリオール化合物に基づく構造単位を、(B1)ポリカーボネートジオールに基づく構造単位100質量部に対し、5質量部以上含むことが好ましく、8質量部以上含むことがより好ましく、9質量部以上含むことがさらに好ましく、10質量部以上含むことが特に好ましく、また、40質量部以下含むことが好ましく、35質量部以下含むことがより好ましく、30質量部以下含むことがさらに好ましく、25質量部以下含むことが特に好ましい。
【0066】
ウレタンアクリレートは、(A1)脂環式イソシアネート化合物に基づく構造単位を5~40質量%含むことが好ましい。これにより、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、耐候性および高温での伸び特性に優れるフィルムを形成しやすくなる。
【0067】
ウレタンアクリレートは、(A1)脂環式イソシアネート化合物に基づく構造単位を8質量%以上含むことがより好ましく、10質量%以上含むことがさらに好ましく、15質量%以上含むことがよりさらに好ましく、17質量%以上含むことが特に好ましく、また、38質量%以下含むことがより好ましく、35質量%以下含むことがさらに好ましく、30質量%以下含むことが特に好ましい。
【0068】
別の観点から、ウレタンアクリレートは、(B1)ポリカーボネートジオールに基づく構造単位100質量部に対し、(A1)脂環式イソシアネート化合物に基づく構造単位を15~80質量部含むことが好ましい。これにより、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、耐候性および高温での伸び特性に優れるフィルムを形成しやすくなる。
【0069】
ウレタンアクリレートは、(B1)ポリカーボネートジオールに基づく構造単位100質量部に対し、(A1)脂環式イソシアネート化合物に基づく構造単位を18質量部以上含むことがより好ましく、20質量部以上含むことがさらに好ましく、25質量部以上含むことが特に好ましく、また、75質量部以下含むことがより好ましく、70質量部以下含むことがさらに好ましく、60質量部以下含むことが特に好ましい。
【0070】
ウレタンアクリレートは、(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物に基づく構造単位を1~10質量%含むことが好ましい。ウレタンアクリレートは、(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物に基づく構造単位を1.5質量%以上含むことがより好ましく、2質量%以上含むことがさらに好ましく、2.5質量%以上含むことが特に好ましく、また、8質量%以下含むことがより好ましく、7質量%以下含むことがさらに好ましく、6質量%以下含むことが特に好ましい。
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるウレタンアクリレートは、本発明の効果が阻害されない限り、(A1)脂環式イソシアネート化合物、(B1)ポリカーボネートジオール、(B2)芳香族ポリオール化合物および(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物に基づく構造単位以外の構造単位を含むことができる。あるいは、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるウレタンアクリレートは、(A1)脂環式イソシアネート化合物、(B1)ポリカーボネートジオール、(B2)芳香族ポリオール化合物および(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物に基づく構造単位のみからなるものであってもよい。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるウレタンアクリレートは、(A1)脂環式イソシアネート化合物、(B1)ポリカーボネートジオール、(B2)芳香族ポリオール化合物および(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物に基づく構造単位の全量が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0072】
ウレタンアクリレートは、上記のように形成されていることで、分子内に重合性部位(アクリル部位)を有するものであり、例えば、アクリルエステル部位を有する化合物である。重合性部位は、ウレタンアクリレート分子中に少なくとも1個以上含まれており、好ましくは2個以上である。これにより、ウレタンアクリレートは、活性エネルギー線の照射によって硬化する性質を有することができる。
【0073】
ウレタンアクリレートは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、交互ポリマーのいずれであってもよい。
【0074】
ウレタンアクリレートの数平均分子量は、例えば、800以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、5000以上であることがさらに好ましく、7000以上であることがさらに好ましく、また、1000000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、50000以下であることがさらに好ましく、20000以下であることが特に好ましい。
【0075】
ウレタンアクリレートの製造方法は特に限定されず、例えば、公知のウレタンアクリレートの製造方法を広く採用することができる。例えば、(A1)脂環式イソシアネート化合物、(B1)ポリカーボネートジオール、(B2)芳香族ポリオール化合物および(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物を含む原料を用いた付加反応(重付加)により、ウレタンアクリレートを製造することができる。
【0076】
この場合、まず(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物以外の化合物を用いた付加反応(重付加)を行い、反応系内のイソシアネート含有量が所定の数値範囲になった時点で、(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物を反応系に添加する方法を採用することもできる。
【0077】
上記の付加反応においては、必要に応じて触媒を使用することができる。触媒としては、例えば、有機錫系化合物を使用することができ、具体例として、錫オクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジラウレート、マンガン、コバルト、鉛、ビスマス錫酸塩、鉛錫酸塩、ジルコニウムオクトエート、ジンクオクトエート、ジブチル錫-ビス-o-フェニルフェニレン、ジブチル錫-S,S-ジブチルジチオ-カーボネート、トリフェニルアンチモニージクロライド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレートメルカプチド、トリエチレンジアミン、ビスマスステアレート、鉛ステアレート、ジメチル錫ジクロライドなどを挙げることができる。触媒の使用量は、化合物(A1)、化合物(B1)、化合物(B2)および化合物(C1)の総量100質量部に対し、0.001~5質量部の範囲で調節することができる。
【0078】
上記付加反応は、その他、必要に応じて溶媒を使用できる他、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤の存在下で行うこともできる。
【0079】
上記付加反応の温度も特に限定されず、例えば、30~100℃程度、好ましくは、50~80℃とすることができる。反応時間も特に制限は無く、反応温度に応じて適宜の範囲とすることができる。例えば、遊離イソシアネート量が、使用したイソシアネート化合物に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下となるまで反応することができる。
【0080】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記ウレタンアクリレートを必須成分として含有する限り、他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、ビニル系モノマー等の重合性化合物、重合開始剤、溶媒等を挙げることができる。
【0081】
重合開始剤は、例えば、公知の重合開始剤を広く使用することができる。重合開始剤は、例えば、活性エネルギー線の照射によって、重合反応を開始させるものが好ましく、光重合開始剤を挙げることができる。
【0082】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アントラセン、α-クロロメチルナフタレン等の芳香族化合物、ジフェニルスルフィド、チオカーバメイト等のイオウ化合物を挙げることができる。可視光以外の紫外線などの活性エネルギー線による重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2,4,6,-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0083】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤の含有量は特に制限されず、前記ウレタンアクリレート100質量部に対して0.01~10質量部とすることができ、好ましくは、0.03~5質量部である。
【0084】
前記溶媒は、例えば、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗工性を向上させることを目的として添加され得る。溶媒としては、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等の塩素系炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;酢酸ビニル等のエステル化合物;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールおよびt-ブタノール等のアルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のホルムアミド;2-ピロリドン、N-メチルピロリドン等のピロリドン;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒の量は特に限定されず、例えば、前記ウレタンアクリレートの濃度が1~100質量%となるように溶媒の量を調整することができ、塗工性を考慮すると、好ましくは5~50質量%程度である。
【0086】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、重合禁止剤、光増感剤、光安定剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、触媒、レベリング剤、消泡剤、重合促進剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤、分散剤等を含むこともできる。
【0087】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記溶媒を除いた総質量に対し、前記ウレタンアクリレートを50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。
【0088】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、例えば、ウレタンアクリレートと、必要に応じて添加される成分を混合することで調製することができる。
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記ウレタンアクリレートを含有するものであり、活性エネルギー線によって硬化する性質を有するので、硬化物を形成することができる。活性エネルギー線としては紫外線が好ましく、その他、電子線、γ線、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が挙げられる。
【0090】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化する方法は特に限定されず、例えば、公知の方法を広く本発明でも採用することができる。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗膜を基材上に形成し、斯かる塗膜に活性エネルギー線を照射することによって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成することができる。
【0091】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いてフィルムを形成することができる。斯かるフィルムは、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むので、基材への密着性が高く、耐候性にも優れ、その上、高温状態における引張伸び特性に優れる。もちろん、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成されるフィルムは低温(例えば、室温)であっても引張伸び特性に優れるものである。
【0092】
従来の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から得られる保護フィルムは、高温での引張伸び特性が良好ではなかったので、湾曲あるいは曲面形状を有する基材に対し、加熱しつつ貼り合わせようとしても、フィルムの伸びが悪く、基材に貼り合わせることが難しいものであった。これに対し、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から得られるフィルムは、高温での引張伸び特性に優れ、また、基材への密着性に優れるので、湾曲あるいは曲面形状を有する基材に対しても優れた密着性を有する。
【0093】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記特性を備えるので、各種フィルムに適用することができ、中でも、保護フィルムに特に好適に使用することができる。
【0094】
保護フィルムを貼り合わせる対象となる基材の種類は特に限定されず、例えば、各種樹脂基材を挙げることができる。密着性が特に優れるという点で、基材は、アクリル基材、ポリエチレンテレフタレート基材等が好ましい。
【0095】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から形成されるフィルムの厚みも特に限定されず。目的の用途に応じて適宜の範囲とすることができ、例えば、従来の保護フィルムと同様とすることができる。
【0096】
本開示に包含される発明を特定するにあたり、本開示の各実施形態で説明した各構成(性質、構造、機能等)は、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各構成のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
【0097】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0098】
(原料)
下記に示す原料から適宜の原料を選択してウレタンアクリレートを調製し、当該ウレタンアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0099】
(A1)脂環式イソシアネート化合物
・水添MDI:4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(エボニック社「VESTANAT H12MDI」)
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(エボニック社「VESTANAT IPDI」)
【0100】
その他の脂肪族イソシアネート化合物
・HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
【0101】
(B1)ポリカーボネートジオール
・UM-90(3/1):UBE社製「ETERNACOLL(登録商標)UM-90(3/1)」
・UC-100:UBE社製「ETERNACOLL(登録商標)UC-100」
・UM-90(1/3):UBE社製「ETERNACOLL(登録商標)UM-90(1/3)」
【0102】
その他のポリカーボネートジオール
・UH-100:UBE社製「ETERNACOLL(登録商標)UH-100」
【0103】
(B2)芳香族ポリオール化合物
・BPX-11:ADEKA社製ポリエーテルポリオール「BPX-11」(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物)
・BPX-55:ADEKA社製ポリエーテルポリオール「BPX-55」(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物)
・BPE-40:三洋化成社製ニューポール「BPE」(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物)
【0104】
脂肪族ポリオール化合物
・EXCENOL420:AGC社「EXCENOL420」(脂肪族ポリオール)
(脂環構造または複素環を有さないポリカーボネートジオール)
【0105】
(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物
・HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
・HPMA:ヒドロキシプロピルメタクリレート
・HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
【0106】
(実施例1)
表1の配合表の実施例1に示す原料を選択して、ウレタンアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。具体的には、メチルエチルケトン50質量部中に、58.00質量部の(B1)ポリカーボネートジオール(UM-90(3/1))と、10.24質量部の(B2)芳香族ポリオール化合物(BPX‐11)と、27.90質量部の(A1)脂環式イソシアネート化合物(水添MDI)と、触媒として0.01質量部のジオクチル錫ジラウレートとを加え、70~75℃にて120分間反応させた。この反応により、遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)が1.50質量%であるウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液に、3.86質量部の(C1)ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリル化合物(HEMA)を加えた後、70~75℃にて遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)が0.1質量%未満となるまで反応を行い、数平均分子量(Mn)が10000であるウレタンアクリレートの溶液を得た。得られたウレタンアクリレートの溶液と、光重合開始剤としてIGM Resins B.V.製「Omnirad 184」3質量部とを混合することで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物得た。
【0107】
(実施例2~6)
表1の配合表に示す原料および配合量を選択するようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物得た。
【0108】
(実施例7~12)
表2の配合表に示す原料および配合量を選択するようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物得た。
【0109】
(実施例13~18)
表3の配合表に示す原料および配合量を選択するようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物得た。
【0110】
(比較例1~3)
表4の配合表に示す原料および配合量を選択するようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物得た。
【0111】
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成されるフィルムの物性(基材への密着性、耐候性および引張伸び特性)を下記手順で評価した。
【0112】
[フィルムの作製1]
各実施例及び比較例で得た活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基材(東洋紡(株)製「コスモシャインA4360」)に乾燥した状態での膜厚が約10μmとなるよう塗布した後、80℃のオーブンで1分間乾燥させることで、PETフィルム上に皮膜を形成させた。その後、窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプ(80W/cm×1灯)を、積算照度600mJ/cmにて皮膜に照射することにより皮膜を硬化させフィルムを形成させた。これにより、PET基材上にフィルムが形成されてなる積層体を得た。
【0113】
[フィルムの作製2]
PET基材の代わりに、厚さ2mmのアクリル基材(日本テストパネル社製「アクリル試験片」)を使用したこと以外はフィルムの作製1と同様の手順で、アクリル基材上にフィルムが形成されてなる積層体を得た。
【0114】
[PET基材への密着性]
フィルムの作製1で得られた積層体表面に形成されているフィルム表面に対して、硬化塗膜表面にカッタ-ナイフで切れ目を入れて、2mm×2mmの碁盤目を100個作製し、その上からセロハン粘着テープを貼着した後、急速に剥がす操作を3回行い、剥離せずに残存した碁盤目の数を数え、下記基準で基材(PETフィルム)への密着性を評価した。
≪判定基準≫
A:碁盤目の残存数が100個であり、基材への密着性に極めて優れるものであった。
B:碁盤目の残存数が80個以上100個未満であり、基材への密着性が優れるものであった。
C:碁盤目の残存数が60個以上80個未満であり、基材への密着性が良好であった。
D:碁盤目の残存数が60個未満であり、基材への密着性に劣るものであった。
【0115】
[アクリル基材への密着性]
フィルムの作製2で得られた積層体表面に形成されているフィルム表面に対して、硬化塗膜表面にカッタ-ナイフで切れ目を入れて、2mm×2mmの碁盤目を100個作製し、その上からセロハン粘着テープを貼着した後、急速に剥がす操作を3回行い、剥離せずに残存した碁盤目の数を数え、下記基準で基材(アクリルフィルム)への密着性を評価した。
≪判定基準≫
A:碁盤目の残存数が100個であり、基材への密着性に極めて優れるものであった。
B:碁盤目の残存数が80個以上100個未満であり、基材への密着性が優れるものであった。
C:碁盤目の残存数が60個以上80個未満であり、基材への密着性が良好であった。
D:碁盤目の残存数が60個未満であり、基材への密着性に劣るものであった。
【0116】
[耐候性]
フィルムの作製1で得たフィルムの耐候性を、スガ試験機(株)製のサンシャインウェザーメーターS80を用いて評価した。試験条件は、光源:カーボンアークランプ、照射時間:100時間、とした。試験前後でフィルムの色差ΔE*abを色差計(日本電色工業(株)製SD6000)を用いて測定し、下記の判定基準を元に評価した。試験前後の色差の差が小さいほど、フィルムの耐候性が高いことを示す。
≪判定基準≫
A:ΔE*ab値が0.10未満
B:ΔE*ab値が0.10以上、0.30未満
C:ΔE*ab値が0.30以上、0.50未満
D:ΔE*ab値が0.50以上
【0117】
[引張伸び(130℃)]
万能試験機による引張試験により、各実施例および比較例の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から得られたフィルムの130℃における引張伸び(%)を評価した。具体的には、離型紙に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化物の厚みが100μmとなるように塗布し、UV照射機で硬化させ、フィルムを形成させた。得られたフィルムをダンベルで打ち抜き、引張試験用の試験片を作成した。株式会社島津製作所のオートグラフ(精密万能試験機)にて、130℃雰囲気下で引っ張り試験(引張速度:50mm/分)を行い、試験片が破断した際の伸び(引張伸び)を測定し、下記の判定基準を元に評価した。
≪判定基準≫
A:120%以上の引張伸びであり、引張伸び特性が極めて優れるものであった。
B:100%以上120%未満の引張伸びであり、引張伸び特性が優れるものであった。
C:80%以上100%未満の引張伸びであり、引張伸び特性が良好であった。
D:80%未満であり、引張伸び特性が劣るものであった。
【0118】
[引張伸び(20℃)]
25℃雰囲気下で引っ張り試験を行うように変更したこと以外は[引張伸び(130℃)]と同様の手順で引張伸びを測定し、下記の判定基準を元に評価した。
≪判定基準≫
A:120%以上の引張伸びであり、引張伸び特性が極めて優れるものであった。
B:100%以上120%未満の引張伸びであり、引張伸び特性が優れるものであった。
C:80%以上100%未満の引張伸びであり、引張伸び特性が良好であった。
D:80%未満であり、引張伸び特性が劣るものであった。
【0119】
表1~4には、各実施例および比較例で調製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の配合条件および評価結果を示している。なお、表1~4において、空欄はその原料を使用していないことを意味する。
【0120】
表1~4の結果から、所定の構造単位をすべて含むウレタンアクリレートは、基材への密着性が高く、耐候性にも優れ、その上、高温状態における引張伸び特性に優れるフィルムを形成することができることがわかった。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【要約】
【課題】基材への密着性が高く、耐候性にも優れ、その上、高温状態における引張伸び特性に優れるフィルムを形成することができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびその硬化物並びに保護フィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、ウレタンアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、前記ウレタンアクリレートは脂環式イソシアネート化合物、芳香族ポリオール化合物、ポリカーボネートジオール、および、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物に由来する構造単位を有し、前記ポリカーボネートジオールは、脂環構造または複素環を有する
【選択図】なし