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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】ボイラ水管保護用耐火タイル
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20250408BHJP
   F22B 37/10 20060101ALI20250408BHJP
   F22B 37/20 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
E04F13/08 102E
F22B37/10 602D
F22B37/20 B
F22B37/10 602B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024230496
(22)【出願日】2024-12-26
【審査請求日】2025-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田 友也
(72)【発明者】
【氏名】大谷 健二
(72)【発明者】
【氏名】森 健太
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 康博
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-150907(JP,A)
【文献】特開2003-14205(JP,A)
【文献】特開2017-106664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/10
F22B 37/20
E04F 13/08
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅W及び高さHの半管状の第一片翼部と、中央部と、幅W及び高さHの半管状の第二片翼部とが幅方向に順に接続され、且つ、全幅L及び全高Hの矩形状に一体成型されるとともに、前記中央部の裏面の中央付近にフックを引掛けるための凹部が形成された、かもめ型のボイラ水管保護用耐火タイルにおいて、
前記第一片翼部と前記第二片翼部のうち、裏面で見て、
一方の片翼部において、
前記中央部から幅方向に(3/4)Wの位置で、高さ方向に延びる仮想線上、または、前記仮想線の近傍に1つだけ配置した第一スペーサを備え、
他方の片翼部において、
前記中央部から幅方向に(1/4)Wの位置で、高さ方向に延びる仮想線上、または、前記仮想線の近傍に1つだけ配置した第二スペーサと、
前記中央部から幅方向に(3/4)Wの位置で、高さ方向に延びる仮想線上、または、前記仮想線の近傍に1つだけ配置した第三スペーサ
の2つのスペーサを備えた第一スペーサ組と、
または、
前記中央部から幅方向に(1/4)Wの位置で、高さ方向に延びる仮想線上、または、前記仮想線の近傍に、少なくとも(2/4)Hの距離だけ離隔してそれぞれ1つだけ配置した第二スペーサ及び第三スペーサの2つのスペーサを備えた第二スペーサ組
のいずれか一方のスペーサ組を備え、
前記一方の片翼部及び前記他方の片翼部に配置した総計3つだけのスペーサの各々の中点を幅方向及び高さ方向の平面上で結線した場合に形成される仮想三角形の面積Sが、
{{(H/2)×(L-W)}/2}≦S<{(L×H)/2}
となるボイラ水管保護用耐火タイル。
【請求項2】
前記他方の片翼部に前記第一スペーサ組を備えた前記ボイラ水管保護用耐火タイルにおいて、
前記第一スペーサは、前記一方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に(3/4)Hの位置、または、それ以上の高さ方向の位置に配置され、
前記第二スペーサは、前記他方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に(1/4)Hの位置、または、それ以下の高さ方向の位置に配置され、
前記第三スペーサは、前記他方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に高さ(3/4)Hの位置、または、それ以上の高さ方向の位置に配置された請求項1に記載のボイラ水管保護用耐火タイル。
【請求項3】
前記他方の片翼部に前記第一スペーサ組を備えた前記ボイラ水管保護用耐火タイルにおいて、
前記第一スペーサは、前記一方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に(1/4)Hの位置、または、それ以下の高さ方向の位置に配置され、
前記第二スペーサは、前記他方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に(3/4)Hの位置、または、それ以上の高さ方向の位置に配置され、
前記第三スペーサは、前記他方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に(1/4)Hの位置、または、それ以下の高さ方向の位置に配置された請求項1に記載のボイラ水管保護用耐火タイル。
【請求項4】
前記他方の片翼部に前記第二スペーサ組を備えた前記ボイラ水管保護用耐火タイルにおいて、
前記中央部は、その断面形状において、裏面から表面に向かうにつれて末広がりに厚みが増加する肉厚部を備え、
前記第一スペーサは、前記一方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に(2/4)Hの位置、または、その近傍の位置に配置され、
前記第二スペーサは、前記他方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に(1/4)Hの位置、または、それ以下の高さ方向の位置に配置され、
前記第三スペーサは、前記他方の片翼部の下端から上方に向かって高さ方向に(3/4)Hの位置、または、それ以上の高さ方向の位置に配置された請求項1に記載のボイラ水管保護用耐火タイル。
【請求項5】
前記中央部の上方には、その上端から突出する嵌合凸部がさらに一体形成され、
前記中央部の下方には、前記嵌合凸部が嵌合可能な嵌合凹部がさらに一体形成され、
前記ボイラ水管保護用耐火タイルを上下方向に2つ配置した際、下方に位置する前記ボイラ水管保護用耐火タイルの備える前記嵌合凸部が、上方に位置する前記ボイラ水管保護用耐火タイルの備える前記嵌合凹部に嵌合する請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のボイラ水管保護用耐火タイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ水管を保護するためのボイラ水管保護用耐火タイルに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラを備え、且つ、廃棄物を焼却処理しつつ発電する清掃工場や石炭などの燃料を燃焼させる発電所などの施設、すなわち、ボイラを備えた燃焼プラントでは、燃焼炉の炉壁に複数のボイラ水管が設置される。複数のボイラ水管は、一般的に、各々が鉛直方向に立設され且つ水平方向に均等な間隔で離隔して配置、すなわち均等配置される。そして、水平方向に隣接する2つのボイラ水管の間が板状のフィンで隙間なく接続されており、これらのボイラ水管とフィンとにより水管パネルが構成される。
【0003】
これらのボイラ水管を過度の熱から保護するため、水管パネルにおいて炉内を向いた側のボイラ水管の表面上に耐火タイルを設置する場合がある。このとき、例えば、水管パネルのフィンに均等にフックを設置して、フックにより耐火タイルを機械的に支持する技術がある(特許文献1参照)。
当該技術によれば、矩形状の耐火タイルの裏面に接着剤となるモルタル等の耐火目地材を施工し、耐火タイルの裏面中央付近に設けられた窪み(以下、「凹部」という)に当該フックを引掛け、耐火タイルを水管パネルに向かって押圧することで、耐火タイルが当該フックの両側で隣り合う2本のボイラ水管上に固定される。これを順次繰り返すことで、複数の耐火タイルが複数のボイラ水管の上面に設置される。
【0004】
ここで、特許文献1の耐火タイルは、1枚の耐火タイルで水平方向に隣接する2つのボイラ水管を保護し、且つ、燃焼炉からボイラ水管への熱伝導を均一化するために厚みを薄く均一化した耐火タイルであり、水平方向で切った断面形状が、かもめが翼を広げたような形状であることから、「かもめ型」の耐火タイルと呼ばれる。「かもめ型」の耐火タイルには複数の種類があり、例えば、特許文献1とは構造が異なる特許文献2の耐火タイルなどもある。
このような「かもめ型」の耐火タイルの裏面には、当該裏面に施工する接着剤としての耐火目地材を所定厚みとするため、従来、多数のスペーサが形成されていた。例えば、特許文献2の「かもめ型」の耐火タイルの裏面には、1つのボイラ水管に対して9個、すなわち、1つの当該耐火タイルにおいて総計18個のスペーサが整列配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3176108号
【文献】特許第6221186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、多数のスペーサを備えた耐火タイルにおいては、スペーサを起点とした割れが発生する場合がある。
また、接着剤としての耐火目地材を耐火タイルの裏面に施工する際、突出物であるスペーサの数は少ない方が施工容易であり、且つ、スペーサの数は少ない方が耐火タイルと水管パネルとの接着力を強化できる。
そこで、従来に比べスペーサの数を大幅に削減し、1つの「かもめ型」の耐火タイルを水管パネルに安定的に接触させうる最低限の数である3個のスペーサを、当該耐火タイルに配置することが考えられる。
しかし、1つの「かもめ型」の耐火タイルに、これら3個のスペーサを配置した場合であっても、依然としてスペーサを起点とした割れが発生し、また、耐火タイルがガタついて水管パネルへの施工が困難となる場合があることが、発明者らの試行により判明した。
【0007】
そこで、本発明は、スペーサを起点とした割れを防止し、且つ、容易な施工及び接着力強化を可能にするとともに、ボイラ水管に安定的に接触させて水管パネルへの施工を容易にすることができる「かもめ型」のボイラ水管保護用耐火タイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、幅W及び高さHの半管状の第一片翼部と、中央部と、幅W及び高さHの半管状の第二片翼部とが幅方向に順に接続され、且つ、全幅L及び全高Hの矩形状に一体成型されるとともに、中央部の裏面の中央付近にフックを引掛けるための凹部が形成された、「かもめ型」のボイラ水管保護用耐火タイル(以下、「耐火タイル」という)に関するものである。
特に、本発明の耐火タイルは、第一片翼部と第二片翼部のうち、裏面で見て、
一方の片翼部において、
中央部から幅方向に(3/4)Wの位置で、高さ方向に延びる仮想線上、または、当該仮想線の近傍に1つだけ配置した第一スペーサを備え、
他方の片翼部において、
中央部から幅方向に(1/4)Wの位置で、高さ方向に延びる仮想線上、または、当該仮想線の近傍に1つだけ配置した第二スペーサと、
中央部から幅方向に(3/4)Wの位置で、高さ方向に延びる仮想線上、または、当該仮想線の近傍に1つだけ配置した第三スペーサ
の2つのスペーサを備えた第一スペーサ組と、
または、
中央部から幅方向に(1/4)Wの位置で、高さ方向に延びる仮想線上、または、当該仮想線の近傍に、少なくとも(2/4)Hの距離だけ離隔してそれぞれ1つだけ配置した第二スペーサ及び第三スペーサの2つのスペーサを備えた第二スペーサ組
のいずれか一方のスペーサ組を備えている。
そして、一方の片翼部及び他方の片翼部に配置した総計3つだけのスペーサの各々の中点を幅方向及び高さ方向の平面上で結線した場合に形成される仮想三角形の面積Sが、
{{(H/2)×(L-W)}/2}≦S<{(L×H)/2}
となるように、これら3つのスペーサがそれぞれ配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐火タイルは、2つの片翼部のうち、一方の片翼部に第一スペーサ、他方の片翼部に第二スペーサ及び第三スペーサ、の総計3つだけのスペーサを備える。
従って、多数のスペーサを備えた従来の耐火タイルに比べ、耐火タイル裏面への耐火目地材の容易な施工と、耐火タイルの水管パネルへの接着力を強化することができる。
また、本発明の耐火タイルは、一方の片翼部には第一スペーサのみを配置し、且つ、他方の片翼部に配置する第二スペーサと第三スペーサとの間隔を、第一スペーサ組のように幅方向に約(2/4)W程度の距離だけ離隔し、または、第二スペーサ組のように少なくとも(2/4)Hの距離だけ離隔して配置する。
従って、各スペーサは互いに大きく離れて配置されるので、スペーサを起点とした割れの発生を防止することができる。
さらに、本発明の耐火タイルは、第一スペーサ、第二スペーサ、及び、第三スペーサの各中点を結線した場合に形成される仮想三角形の面積Sが、以下の関係式を満たすように配置される。
{{(H/2)×(L-W)}/2}≦S<{(L×H)/2}
従って、当該耐火タイルを水管パネルに施工する際、耐火タイルをボイラ水管にガタつきなく安定的に接触できるよう、一方の片翼部に配置した第一スペーサと、他方の片翼部に配置した第二スペーサ及び第三スペーサを、それぞれバランス良く配置することができる。
【0010】
従って、本発明によれば、スペーサを起点とした割れを防止し、且つ、容易な施工及び接着力強化を可能にするとともに、ボイラ水管に安定的に接触させて水管パネルへの施工を容易にすることができる「かもめ型」の耐火タイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態の非嵌合型且つかもめ型耐火タイルの構成例を示し、(A)は表面から見た正面図であり、(B)は裏面から見た背面図であり、(C)は(B)のX軸に沿ったA-A線における断面図であり、(D)は(B)のY軸に沿ったB-B線における断面図である。
図2】第二実施形態の嵌合型且つかもめ型の耐火タイルの構成例を示し、(A)は表面から見た正面図であり、(B)は裏面から見た背面図であり、(C)は(B)のX軸に沿ったA′-A′線における断面図であり、(D)は(B)のY軸に沿ったB′-B′線における断面図である。
図3】(A)は、肉厚部を説明するため、図1(C)に付番し、且つ、符号及び点線を加えた断面図であり、(B)は、肉厚部を形成しない耐火タイルの断面図である。
図4】耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置例(パターン1A)である。
図5】耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置例(パターン1B)である。
図6】耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置例(パターン2A)である。
図7】耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置例(パターン2B)である。
図8】耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置例(パターン3A)である。
図9】耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置例(パターン3B)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1乃至図9を用いて、本発明の実施形態およびその変形例であるかもめ型耐火タイルについて説明する。
図1は、第一実施形態の耐火タイル(非嵌合型)の構造を示し、図2は、第二実施形態の耐火タイル(嵌合型)の構造を示す。図3は、肉厚部を備える場合と肉厚部を備えない場合の耐火タイルの構造の相違を説明するために使用される。
そして、図4乃至図9で、第一実施形態の耐火タイルを用いて、1つの耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置につき、複数の例を示す。ここでは、第一実施形態の耐火タイルを用いて各スペーサの配置の例を説明するが、第二実施形態の耐火タイルにおける各スペーサの配置も同様であるので、繰り返しての説明は省略する。
以下の説明においては、まず、主要な2種の耐火タイル、すなわち第一実施形態の非嵌合型耐火タイルと第二実施形態の嵌合型耐火タイルとの2種の「かもめ型」耐火タイルの基本構造を説明し、次いで、これら2種の耐火タイルが備えうる肉厚部について説明した後、これら耐火タイルの各々がそれぞれ3つだけ備える各スペーサ、すなわち、第一乃至第三スペーサの配置の例を説明する。
【0013】
なお、図においては、説明の簡便のため、適宜、X軸、Y軸、Z軸による直交座標系を用いて説明する。ここでは、Y軸は鉛直に配置され、X軸およびZ軸は水平に配置される。Y軸は、複数の耐火タイルが水管パネルに整列配置される上下方向、すなわち高さ方向を示す。Y軸の矢印方向は、上下方向のうち、上方に向かう方向を示す。X軸は、複数の耐火タイルが水管パネルに整列配置される左右方向、すなわち幅方向を示す。Z軸は、水管パネルに垂直な方向、すなわち耐火タイルの厚み方向を示す。Z軸の矢印方向は、ボイラ水管からその上面に設置された耐火タイルに向かう方向を示す。
ここでは、一例として、Y軸方向は鉛直方向として説明をするが、上下方向に沿う方向であれば、鉛直方向に対して傾いていてもよい。例えば、燃焼炉の一部の箇所においては炉壁が鉛直から傾いている場合があり、その場合は、X軸は水平方向を維持しつつ、Y軸とZ軸が傾いて配置された直交座標系と考えて、以下の説明を理解すればよい。
また、ここでは、耐火タイルを水管パネルに施工した際に、ボイラ水管を向く面を「裏面」とし、裏面の反対の面、すなわち、燃焼炉内を向く面を「表面」とする。
耐火タイルの材料は、燃焼炉の燃料や炉温によって変わりうるが、SiCを原料主成分とするものが望ましい。
各実施形態および各変形例はあくまでも例示に過ぎず、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明に必須の構成を除き、各実施形態及び各変形例の各構成は、必要に応じて取捨選択や種々変形して実施することができる。
【0014】
<第一実施形態の耐火タイル(非嵌合型)>
では、まず、「非嵌合型」且つ「かもめ型」の耐火タイル1の基本構造を説明する。
矩形状の耐火タイル1は、その裏面のX軸方向の中央、且つ、Y軸方向に中央からやや上方に、凹部4が1つだけ形成され、且つ、2つのボイラ水管を覆う耐火タイルである。詳しい説明は省略するが、水管パネルに耐火タイル1を施工する際、凹部4は、水管パネルに規則的に設置されたL字型フックを引っ掛けるために使用される。図1(B)及び図1(D)に示すように、中央部3に凹部4が形成される。
図1(A)に示すように、矩形状の耐火タイル1は、XY平面且つ表面で見て、X軸方向の中央に設けられた矩形状の中央部3の幅方向で右側に、1つのボイラ水管を覆う矩形状の第一片翼部2Aを備え、中央部3の幅方向で左側に、1つのボイラ水管を覆う矩形状の第二片翼部2Bを備える。耐火タイル1は、かもめ型の耐火タイルであるので、飛翔しているかもめの翼に相当する2つの部分を、それぞれ第一片翼部2A、第二片翼部2Bと名付けている。中央部3、第一片翼部2A、及び、第二片翼部2Bがそれぞれ接続した状態で一体成型されることで、矩形状の耐火タイル1が形成される。
図1(C)に示すように、XZ平面で見て、第一片翼部2Aは、断面形状が円形のボイラ水管の外周の約半分に沿って湾曲した半管状の形状である。同様に、XZ平面で見て、第二片翼部2Bは、断面形状が円形のボイラ水管の外周の約半分に沿って湾曲した半管状の形状である。当該半管形状の各片翼部2A、2Bの肉厚は、いずれの箇所も実質的に同一であり、中央部3の厚みよりも薄い。
図1(B)に示すように、XY平面且つ裏面で見て、高さ方向に長い楕円形の第一スペーサ5Aが第一片翼部2Aに一体成型され、同様の形状の第二スペーサ5Bと第三スペーサ5Cが第二片翼部2Bに一体成型される。すなわち、1つの耐火タイル1は、スペーサを総計3つだけ備える。
【0015】
なお、図1(B)においては、これら3つのスペーサ5A、5B、5Cはいずれも同じ寸法、例えば、X軸方向の寸法が約4mm且つY軸方向の寸法が約20mmとしている。また、水管パネルに耐火タイル1を固定する接着剤としての耐火目地材の厚みを一定にするために、第一片翼部2Aまたは第二片翼部2Bの裏面から突出する寸法を、例えば、約1.5mmとしている。しかし、設計に応じて、それぞれのスペーサ5A、5B、5Cの寸法が、互いに異なる寸法となってもよい。また、それぞれのスペーサ5A、5B、5Cには角がないよう丸みが付けられている。
【0016】
<第二実施形態の耐火タイル(嵌合型)>
では、次に、「嵌合型」且つ「かもめ型」の耐火タイル1′の基本構造を説明する。
第二実施形態の耐火タイル1′は、「嵌合型」の耐火タイルである点のみが第一実施形態の耐火タイル1と異なるので、耐火タイル1と同一の構成については同一の番号を付番して説明を省略する。
図2(A)に示すように、XY平面且つ表面で見て、矩形状の耐火タイル1′は、X軸方向の中央に設けられた矩形状の中央部3′の幅方向で右側に第一片翼部2Aを備え、中央部3′の幅方向で左側に第二片翼部2Bを備える。中央部3′、第一片翼部2A、及び、第二片翼部2Bがそれぞれ接続した状態で一体成型されることで、矩形状の耐火タイル1′が形成される。
図2(B)に示すように、XY平面且つ裏面で見て、矩形状の耐火タイル1′は、X軸方向の中央、且つ、Y軸方向に中央からやや上方に、凹部4が1つだけ形成される。図2(B)及び図2(D)に示すように、中央部3′に凹部4が形成される。
また、図2(B)に示すように、XY平面且つ裏面で見て、中央部3′には、第一片翼部2A及び第二片翼部2Bの上端の位置よりも上方へ矩形状に突出した嵌合凸部7と、第一片翼部2A及び第二片翼部2Bの下端の位置よりも上方へ矩形状に窪んで、嵌合凸部7を嵌め合わせることができる寸法の嵌合凹部8とが形成される。
【0017】
このように、耐火タイル1′は、嵌合凸部7と嵌合凹部8を備えるので、複数の耐火タイル1′を上下方向に互いに嵌合させて水管パネルに施工することができる。従って、非嵌合型の耐火タイル1を水管パネルに施工する場合に比べ、嵌合型の耐火タイル1′を水管パネルに施工した場合は、地震などの揺れに強く、耐火タイル1′の剥がれや落下をより強固に防止することができる。
【0018】
なお、ここでは、耐火タイル1′として、嵌合凸部7と嵌合凹部8とを両方備えた構造を説明した。しかし、耐火タイル1′の変形例として、嵌合凸部7と嵌合凹部8とのうち、嵌合凸部7を備えず且つ嵌合凹部8を備える点を除き耐火タイル1′と同一の耐火タイル、および、嵌合凸部7を備え且つ嵌合凹部8を備えない点を除き耐火タイル1′と同一の耐火タイルを用意して、水管パネルに、これら計3種(すなわち、第二実施形態の耐火タイル1′と2種の第二実施形態の変形例の耐火タイル)の嵌合型耐火タイルを上下方向に組み合わせて施工することができる。
【0019】
<各実施形態及び各変形例の耐火タイルが備えうる肉厚部>
図1図2に示した各実施形態の耐火タイル1、1′においては、それぞれ、中央部3が肉厚部6を備える構成を示している。しかし、これら耐火タイルは、必ずしも肉厚部6を備える必要はない。
そこで、各実施形態及び各変形例の耐火タイルが備えうる肉厚部6について、図3を用いて簡単に説明する。
なお、第一実施形態および第二実施形態の耐火タイルが肉厚部6を備えない場合は、それぞれ第一実施形態の変形例の耐火タイルまたは第二実施形態の変形例の耐火タイルとして取り扱う。
【0020】
図3(A)は、第一実施形態の耐火タイル1のA-A線断面図である図1(C)に、肉厚部6の説明のため、付番し、符号及び点線を加えた断面図である。図3(B)は、耐火タイル1から肉厚部6を取り除いた状態の耐火タイル、言い換えれば、第一実施形態の変形例の耐火タイルであり、肉厚部6を備えない耐火タイル1Aの断面図である。図3(B)は、図3(A)に対応する。
なお、ここでは、図3において第一実施形態の耐火タイル1を用いて説明をするが、第二実施形態の耐火タイル1′においても同様である。従って、耐火タイル1′については図3に対応する図を示しての説明を省略する。
【0021】
まず、図3(B)の説明を行ってから、図3(A)の説明を行う。
図3(B)に示すように、耐火タイル1Aは、XZ平面で見て、X軸方向の中央に設けられた矩形状の中央部3Aの+X方向側に第一片翼部2Aを備え、中央部3の-X方向側に第二片翼部2Bを備える。このとき、中央部3Aの表面は、耐火タイル1において、図1(A)で中央部3として示された表面に対応する。また、中央部3Aの裏面は、耐火タイル1において、図1(B)で中央部3として示された裏面に対応する。
なお、図3(B)において、Z軸に平行な2本の点線の間の略矩形の部分が中央部3Aである。当該2本の点線のうち、中央部3Aと第一片翼部2Aとの接続箇所を示す点線から、X軸に沿って第一片翼部2Aの最も端の位置までの寸法を、第一片翼部2Aの幅Wとする。また、当該2本の点線のうち、中央部3Aと第二片翼部2Bとの接続箇所を示す点線から、X軸に沿って第二片翼部2Bの最も端の位置までの寸法を、第二片翼部2Bの幅Wとする。そして、X軸に沿って、第一片翼部2Aの最も端の位置から第二片翼部2Bの最も端の位置までの寸法を、耐火タイルの全幅Lとする。
耐火タイルの全幅Lと各片翼部の幅Wは、図4乃至図9においても使用する。
【0022】
図3(B)に示すように、第一片翼部2Aと第二片翼部2Bとの肉厚は、中央部3Aとの接続箇所の近傍の除き、いずれの箇所も実質的に同一である。従って、第一片翼部2Aにおいて第一スペーサ5Aが形成された箇所における耐火タイルの肉厚TA、第二片翼部2Bにおいて第二スペーサ5Bが形成された箇所における耐火タイルの肉厚TB、及び、第二片翼部2Bにおいて第三スペーサ5Cが形成された箇所における耐火タイルの肉厚TCは、実質的に同一である。すなわち、実質的に、TA=TB=TCの関係が成り立つ。
【0023】
では、次に、図3(A)を用いて、肉厚部6を備えた耐火タイル1の説明を行う。
肉厚部6は、図3(B)における中央部3Aの表面から+Z方向側に、第一片翼部2Aと第二片翼部2Bの表面に接しながら、XY平面の表面を持つように肉盛りをしたような形状である。すなわち、図3(A)において、図3(B)の中央部3Aの表面から+Z方向側に向かうにつれて末広がりに厚みが増加する部分、具体的には二点鎖線で示される逆台形状の部分が、肉厚部6である。
このとき、中央部3Aに接続して形成された肉厚部6の表面が、図1(A)で中央部3として示されることになる。すなわち、中央部3は、XZ平面で見て、矩形状の中央部3Aと逆台形状の肉厚部6とが一体となって構成される。
また、図3(A)に示されるように、中央部3と第二片翼部2Bとの接続部分に近い第二スペーサ5Bが形成された箇所における耐火タイル1の肉厚TBは、肉厚部6による肉厚の増分があるため、第一スペーサ5Aが形成された箇所における耐火タイル1の肉厚TAと第三スペーサ5Cが形成された箇所における耐火タイル1の肉厚TCよりも大きくなる。すなわち、実質的に、TB>TA=TCの関係が成り立つ。
【0024】
なお、耐火タイルは、肉厚部6を備えない場合に比べ、肉厚部6を備えた場合の方が、機械的強度が増し、割れが生じにくくなる。しかし、耐火タイルは、肉厚部6を備えた場合よりも、肉厚部6を備えない場合の方が、重量が軽く、且つ、ボイラ水管への熱伝導をより均一化できる。
従って、設計仕様に応じて、適宜、肉厚部6を形成した耐火タイル1と肉厚部6を形成しない耐火タイル1Aを使い分けてよい。
【0025】
<各実施形態および各変形例の耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置例>
では、以下に、各実施形態および各変形例の耐火タイルが3つだけ備える各スペーサの配置の例を、図4乃至図9を用いて説明する。
まず、各図における前提事項を説明した後、各スペーサを配置する際の技術思想を説明する。その後、当該技術思想に基づく各スペーサの配置例を、順次、説明する。
<前提事項>
図4乃至図9では、説明の簡便のため、図1に示す非嵌合型の耐火タイル1を用いて各スペーサの配置を説明する。しかし、当該各スペーサの配置は、上述のいずれの実施形態または変形例の耐火タイルにも適用可能である。
図4乃至図9のいずれの図も、XY平面で見た耐火タイル1の裏面を示す。
非嵌合型の耐火タイル1の形状は、XY平面で見て、X軸方向の寸法が全幅L、Y軸方向の寸法が全高Hの矩形である。例えば、全幅Lは、約198mm、全高Hは、約194mmとすることができる。
図3の説明箇所で述べたように、中央部3と第一片翼部2Aとの接続箇所から、X軸に沿って第一片翼部2Aの最も端の位置までの寸法を、第一片翼部2Aの幅Wとする。また、中央部3と第二片翼部2Bとの接続箇所から、X軸に沿って第二片翼部2Bの最も端の位置までの寸法を、第二片翼部2Bの幅Wとする。例えば、幅Wは、約87mmとすることができる。各片翼部2A、2Bの肉厚は、上述したように薄く形成されており、約12mmとすることができる。
なお、嵌合型の耐火タイル1′の場合は、嵌合凸部7があるため、全体としてのY軸方向の寸法は全高Hよりも大きくなるが、XY平面で見て、全幅L×全高Hの矩形状の部分において、請求項の構成を理解するものとする。
また、ここでは、耐火タイル1の各片翼部2A、2Bの肉厚が薄いため、幅Wは、中央部3から各片翼部2A、2Bの外形の端までの寸法としている。しかし、耐火タイルにおいて当該肉厚が厚い場合には、幅Wは、半管状の各片翼部の内径の寸法であるとして、請求項の構成を理解してもよい。
【0026】
また、図4乃至図9では、説明の簡便のため、以下のように仮想線を設定する。
第一片翼部2Aの幅Wは、4つに均等に分割され、中央部3から+X軸方向に向かって、(1/4)Wの位置にY軸に平行な仮想線L1、(2/4)Wの位置にY軸に平行な仮想線L2、および、(3/4)Wの位置にY軸に平行な仮想線L3が、それぞれ設定される。
また、第二片翼部2Bの幅Wは、4つに均等に分割され、中央部3から-X軸方向に向かって、(1/4)Wの位置にY軸に平行な仮想線L4、(2/4)Wの位置にY軸に平行な仮想線L5、および、(3/4)Wの位置にY軸に平行な仮想線L6が、それぞれ設定される。
さらに、耐火タイル1の全高Hは、4つに均等に分割され、第一片翼部2A及び第二片翼部2Bの下端から+X軸方向に向かって、(1/4)Hの位置にX軸に平行な仮想線L7、(2/4)Hの位置にX軸に平行な仮想線L8、および、(3/4)Hの位置にX軸に平行な仮想線L9が、それぞれ設定される。
【0027】
<各スペーサを配置する際の技術思想>
1つの耐火タイル1は、スペーサとして、第一片翼部2Aと第二片翼部2Bのうち、一方の片翼部に1つ、他方の片翼部に2つ、の総計3つだけのスペーサ、すなわち、第一スペーサ、第二スペーサ、及び第三スペーサの3つだけを備える。
そして、第二スペーサと第三スペーサとで構成されるスペーサ組には、第二スペーサと第三スペーサとがそれぞれ異なるY軸に平行な仮想線上またはその近傍に配置された第一スペーサ組と、第二スペーサと第三スペーサとが少なくとも(2/4)Hの距離だけ離隔してY軸に平行な同一の仮想線上またはその近傍に配置された第二スペーサ組の2種類がある。
【0028】
発明者らが、3つだけのスペーサを種々配置した複数の耐火タイルを検討したところ、半管状の各片翼部が全体として実質的に同一の肉厚であっても、半管状の各片翼部の当該半管の頂点付近、すなわち、仮想線L2及び仮想線L5の線上またはその近傍に配置されたスペーサからは当該スペーサを起点とする割れが発生する場合があった。従って、仮想線L2及び仮想線L5の線上またはその近傍には、スペーサを配置しない。
【0029】
また、発明者らが、3つだけのスペーサを種々配置した複数の耐火タイルを検討したところ、各片翼部の肉厚が約12mm程度に薄い場合、Y軸に平行な同一の1つの仮想線上またはその近傍に複数のスペーサが配置されると、当該複数のスペーサのいずれかを起点とする割れが発生する場合があった。しかし、各片翼部の肉厚が約14mm程度に厚い場合は、同様の配置であっても、割れは発生しなかった。
従って、上記他方の片翼部に配置される2つのスペーサについては、各片翼部の肉厚が薄い場合は第一スペーサ組を採用し、当該肉厚が厚い場合は第一スペーサ組または第二スペーサ組を採用するとよい。
例えば、肉厚部6を備えた耐火タイル1の場合、中央部3と片翼部2A、2Bとの接続箇所の近傍においては、片翼部2A、2Bの本来の肉厚に肉厚部6の肉厚が加わるので、先述の肉厚が厚い場合に相当する。従って、仮想線L1またはL4の線上、またはそれらの近傍に、第二スペーサ組を採用してよい。
ただし、第二スペーサ組の2つのスペーサをすぐ隣に配置すると、水管パネルへ耐火タイルを施工する際、耐火タイルにガタつきが生じ、安定的な施工が難しい場合があった。従って、第二スペーサ組の2つのスペーサの各中点の間には、少なくとも、(2/4)Hの間隔を開ける、すなわち互いに離隔するものとする。
【0030】
さらに、発明者らが、3つだけのスペーサを種々配置した複数の耐火タイルを検討したところ、第一スペーサ、第二スペーサ、及び第三スペーサのそれぞれの中点を、XY平面上で結んだ仮想三角形9の面積Sが所定の面積より大きいほど、水管パネルに耐火タイルを安定的に施工できることが判明した。
そこで、上述の技術思想を踏まえつつ、当該仮想三角形の面積Sが当該所定の面積より大きくなるように、第一スペーサ、第二スペーサ、及び第三スペーサをバランス良く配置する。
ただし、耐火タイル1は、XY平面で見て、全幅L×全高Hの矩形であるので、各スペーサの中点を結んだ仮想三角形9の面積Sは、最大でも{(L×H)/2}になりえず、{(L×H)/2}未満である。従って、S<{(L×H)/2}の関係が成り立つ。
一方、発明者らによれば、例えば、第一片翼部2Aの仮想線L1の線上に第一スペーサを配置し、第二片翼部2Bの仮想線L4に第二スペーサ組を配置した耐火タイルは、水管パネルに耐火タイルを安定的に施工することができなかった。しかし、第一片翼部2Aの仮想線L3の線上に第一スペーサを配置し、第二片翼部2Bの仮想線L4に第二スペーサ組を配置した耐火タイルは、第二スペーサと第三スペーサの各中点の間隔が少なくとも(2/4)Hであれば、水管パネルに耐火タイルを安定的に施工することができた。従って、この場合の面積Sを、安定的な施工の観点で、最低限必要な面積とする。この場合、各スペーサの中点を結んだ仮想三角形9の面積Sは、{{(H/2)×(L-W)}/2}である。
これにより、3つのスペーサのみを備えた耐火タイルを水管パネルに安定的に施工することができる面積Sの範囲は、以下の関係式の通りである。
{{(H/2)×(L-W)}/2}≦S<{(L×H)/2}
【0031】
<スペーサの配置例(パターン1)>
耐火タイル1が備える3つのスペーサの配置例として、図4および図5に、パターン1の配置例を示す。図4は、パターン1Aの配置であり、図5は、パターン1Aの左右対称の配置であるパターン1Bの配置である。なお、パターン1の配置例は、第二スペーサ5Bと第三スペーサ5Cが、第一スペーサ組の配置例である。
では、図4を用いて、パターン1Aの配置を説明する。
パターン1Aの配置においては、第一スペーサ5Aは、第一片翼部2Aの仮想線L3の線上、且つ、仮想線L9よりも上方に配置され、第二スペーサ5Bは、第二片翼部2Bの仮想線L4の線上、且つ、仮想線L7よりも下方に配置され、第三スペーサ5Cは、第二片翼部2Bの仮想線L6の線上、且つ、仮想線L9よりも上方に配置される。
この配置は、上述の技術思想を全て満たすため、パターン1Aの耐火タイル1は、スペーサを起点とした割れを防止し、且つ、容易な施工及び接着力強化を可能にするとともに、ボイラ水管に安定的に接触させて水管パネルへの施工を容易にすることができる耐火タイルである。
次に、図5を用いて、パターン1Bの配置を説明する。パターン1Bの配置においては、第一スペーサ5Aは、第二片翼部2Bの仮想線L6の線上、且つ、仮想線L9よりも上方に配置され、第二スペーサ5Bは、第一片翼部2Aの仮想線L1の線上、且つ、仮想線L7よりも下方に配置され、第三スペーサ5Cは、第一片翼部2Aの仮想線L3の線上、且つ、仮想線L9よりも上方に配置される。すなわち、パターン1Bの配置は、パターン1Aの左右対称の配置である。
従って、パターン1Bの耐火タイル1は、パターン1Aの耐火タイル1と同様の効果を奏する。
【0032】
<スペーサの配置例(パターン2)>
耐火タイル1が備える3つのスペーサの配置例として、図6および図7に、パターン2の配置例を示す。図6は、パターン2Aの配置であり、図7は、パターン2Aの左右対称の配置であるパターン2Bの配置である。なお、パターン2の配置例は、第二スペーサ5Bと第三スペーサ5Cが、第一スペーサ組の配置例である。
では、図6を用いて、パターン2Aの配置を説明する。
パターン2Aの配置においては、第一スペーサ5Aは、第一片翼部2Aの仮想線L3の線上、且つ、仮想線L7よりも下方に配置され、第二スペーサ5Bは、第二片翼部2Bの仮想線L4の線上、且つ、仮想線L9よりも上方に配置され、第三スペーサ5Cは、第二片翼部2Bの仮想線L6の線上、且つ、仮想線L7よりも下方に配置される。
この配置は、上述の技術思想を全て満たすため、パターン2Aの耐火タイル1は、パターン1の耐火タイル1と同様の効果を奏することができる。
次に、図7を用いて、パターン2Bの配置を説明する。パターン2Bの配置においては、第一スペーサ5Aは、第二片翼部2Bの仮想線L6の線上、且つ、仮想線L7よりも下方に配置され、第二スペーサ5Bは、第一片翼部2Aの仮想線L1の線上、且つ、仮想線L9よりも上方に配置され、第三スペーサ5Cは、第一片翼部2Aの仮想線L3の線上、且つ、仮想線L7よりも下方に配置される。すなわち、パターン2Bの配置は、パターン2Aの左右対称の配置である。
従って、パターン2Bの耐火タイル1は、パターン2Aの耐火タイル1と同様の効果を奏する。
【0033】
<スペーサの配置例(パターン3)>
耐火タイル1が備える3つのスペーサの配置例として、図8および図9に、パターン3の配置例を示す。なお、パターン3の配置例は、第二スペーサ5Bと第三スペーサ5Dが、第二スペーサ組の配置例である。従って、パターン3の耐火タイルは、肉厚部6を備えることが望ましい。なお、第三スペーサ5Dは、パターン1およびパターン2における第三スペーサ5Cと同一形状である。
図8は、パターン3Aの配置であり、図9は、パターン3Aの左右対称の配置であるパターン3Bの配置である。
では、図8を用いて、パターン3Aの配置を説明する。
パターン3Aの配置においては、第一スペーサ5Aは、第一片翼部2Aの仮想線L3の線上、且つ、仮想線L8の線上に配置され、第二スペーサ5Bは、第二片翼部2Bの仮想線L4の線上、且つ、仮想線L7よりも下方に配置され、第三スペーサ5Dは、第二片翼部2Bの仮想線L4の線上、且つ、仮想線L9よりも上方に配置される。
この配置は、上述の技術思想を全て満たすため、パターン3Aの耐火タイル1は、パターン1及びパターン2の耐火タイル1と同様の効果を奏することができる。
次に、図9を用いて、パターン3Bの配置を説明する。パターン3Bの配置においては、第一スペーサ5Aは、第二片翼部2Bの仮想線L6の線上、且つ、仮想線L8の線上に配置され、第二スペーサ5Bは、第一片翼部2Aの仮想線L1の線上、且つ、仮想線L7よりも下方に配置され、第三スペーサ5Dは、第一片翼部2Aの仮想線L1の線上、且つ、仮想線L9よりも上方に配置される。すなわち、パターン3Bの配置は、パターン3Aの左右対称の配置である。
従って、パターン3Bの耐火タイル1は、パターン3Aの耐火タイル1と同様の効果を奏する。
【0034】
以上、本発明の実施形態および変形例の「かもめ型」耐火タイルについて説明した。実施形態等の「かもめ型」耐火タイルに適用されうる3つのスペーサの配置例については、パターン1、パターン2、及び、パターン3を示したが、本発明は、これらの配置例に限らず、請求項を満たすよう3つのスペーサを配置すれば、いかなる「かもめ型」耐火タイルにも適用される。
【符号の説明】
【0035】
1、1′、1A かもめ型耐火タイル
2A 第一片翼部
2B 第二片翼部
3、3′、3A 中央部
4 凹部
5A 第一スペーサ
5B 第二スペーサ
5C 第三スペーサ
5D 第三スペーサ
6 肉厚部
7 嵌合凸部
8 嵌合凹部
9 仮想三角形
H 全高
L 全幅
L1乃至L9 仮想線
W 片翼部の幅
TA 第一スペーサの位置における耐火タイルの肉厚
TB 第二スペーサの位置における耐火タイルの肉厚
TC 第三スペーサの位置における耐火タイルの肉厚
【要約】
【課題】割れを防止し、容易な施工及び接着力強化を可能にし、ボイラ水管に安定的に施工できるボイラ水管保護用耐火タイルを提供する。
【解決手段】耐火タイル1は、幅W及び高さHの第一片翼部2Aと、中央部3と、幅W及び高さHの第二片翼部2Bが、全幅L及び全高Hの矩形状に一体成型され、その裏面に3つのみのスペーサ並びにその中央に凹部4を備える。第一片翼部1Aにおいて、第一スペーサ5Aは中央部3から幅(3/4)Wの位置で高さ方向に延びる仮想線上に配置される。第二片翼部2Bにおいて、第二スペーサ5Bは中央部3から幅(1/4)Wの位置で高さ方向に延びる仮想線上に、第三スペーサ5Cは中央部3から幅(3/4)Wの位置で高さ方向に延びる仮想線上に配置される。各スペーサの中点を結んだ仮想三角形9の面積Sは、{(H/2)×(L-W)}/2≦S<(L×H)/2となる。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9