(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】コアネットワークノードにおけるMTU適用制御
(51)【国際特許分類】
H04W 28/06 20090101AFI20250408BHJP
H04W 92/12 20090101ALI20250408BHJP
H04L 47/36 20220101ALI20250408BHJP
【FI】
H04W28/06
H04W92/12
H04L47/36
(21)【出願番号】P 2024531818
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2022026810
(87)【国際公開番号】W WO2024009423
(87)【国際公開日】2024-01-11
【審査請求日】2024-05-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)/オープン性を活用する公衆網・自営網の設備共用技術の先導的研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】319010088
【氏名又は名称】楽天モバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100188879
【氏名又は名称】渡邉 未央子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亮
(72)【発明者】
【氏名】新村 寛
【審査官】篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-263576(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103581041(CN,A)
【文献】Internet Engineering Task Force (IETF),Path MTU Discovery for IP version 6,2017年07月14日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04L 47/36
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のプロセッサを備え、
前記1以上のプロセッサの少なくとも一つによって、
無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定する決定処理と、
前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する適用処理と、
が実行される、
ことを特徴とするネットワーク管理装置。
【請求項2】
前記決定処理は、前記受信パケットから前記ノードが属する前記無線アクセスネットワークに関する属性情報を抽出し、当該属性情報に基づいて前記MTU値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項3】
前記決定処理は、前記無線アクセスネットワークに関する属性情報と、当該無線アクセスネットワークのノードと前記コアネットワークのノードとの間のパスMTU値とを対応付けたマッピングテーブルを参照して、前記受信パケットから抽出された前記属性情報に対応する前記パスMTU値を導出し、導出された前記パスMTU値を前記MTU値として決定する
ことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項4】
前記受信パケットは、前記ノードから送信されるセットアップ要求メッセージである
ことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項5】
前記受信パケットは、通信端末から前記無線アクセスネットワークを介して送信される登録要求メッセージである
ことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項6】
前記属性情報は、前記無線アクセスネットワークを所有する事業者を識別可能な情報である
ことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項7】
前記属性情報は、PLMN(Public Land Mobile Network)、MCC(Mobile Country Number)、MNC(Mobile Network Code)、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)、TAC(Tracking Area Code)、Cell ID、S-NSSAI(Single-Network Slice Selection Assistance Information)、無線アクセスネットワークノードIDおよびIPアドレスの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項8】
前記決定処理は、前記受信パケットから複数の属性情報が抽出された場合、前記複数の属性情報に基づいてそれぞれ決定された前記MTU値の最小値を、最終的な前記MTU値として決定する
ことを特徴とする請求項2に記載のネットワーク管理装置。
【請求項9】
前記決定処理は、前記受信パケットのパケットサイズを取得し、当該パケットサイズに基づいて前記MTU値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項10】
前記決定処理は、同一の前記ノードから送信される前記受信パケットのパケットサイズの最大値を、前記MTU値として決定する
ことを特徴とする請求項9に記載のネットワーク管理装置。
【請求項11】
前記適用処理は、前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードが属するグループ内のノードへの送信パケットに適用する
ことを特徴とする請求項9に記載のネットワーク管理装置。
【請求項12】
前記適用処理は、IPアドレスが所定のIPアドレス範囲に含まれるノード、または、同一のサブネットに属するノードを、同一のグループに属するノードであると判断する
ことを特徴とする請求項11に記載のネットワーク管理装置。
【請求項13】
ネットワーク管理装置により実行されるネットワーク管理方法であって、
無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定し、
前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する、
ことを含むことを特徴とするネットワーク管理方法。
【請求項14】
1以上のプロセッサを備え、
前記1以上のプロセッサの少なくとも一つによって、
無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定する決定処理と、
前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する適用処理と、
が実行される、
ことを特徴とするネットワーク管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コアネットワークノードにおけるMTU適用制御に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルネットワークは、無線アクセスネットワーク(Radio Access Network:RAN)とコアネットワーク(Core Network:CN)とを含む。RANノードは、バックホールネットワーク経由でCNノード(以下、「コア」という。)に接続される。
例えば5Gモバイルネットワークの場合、RANノードはCU(Central Unit)であり、コアはAMF(Access and Mobility Management Function)である。
【0003】
モバイルネットワークを構成するCNおよびRANを1つのMNO(Mobile Network Operator)が所有する場合、当該MNOは、コアとRANノードとの間のパスMTU(Maximum Transmission Unit)を事前に把握し、コアに、上記パスMTUに基づくMTU値を設定することができる。これにより、コアは、パスMTUにできるだけ近く、かつ、パスMTUを超えないサイズのパケットをRANノードに対して送信することができ、伝送効率を向上させることができる。
ここで、パスMTUとは、送信元から送信先までのリンクMTUのうち最も小さい値であり、パケットを分割(フラグメンテーション)せずに送信元ノードから送信先ノードまで転送できるパケットの最大サイズである。
【0004】
しかしながら、近年、複数の事業者(企業、自治体など)がそれぞれ個別に運用する5Gネットワーク(ローカル5G)において、MNOのコア機能を共用する形態が普及している。この場合、コアは、ローカル5G-RANの各CUに接続しうる。コアとローカル5G-RANのCUとは、専用回線またはVPN(Virtual Private Network)により接続されるため、両者の間のパスMTUは事業者ごとにそれぞれ異なる。そのため、コアは、パスMTU探索技術を用いてパスMTUを動的に検出し、パケットを送信することになる。
従来のパスMTU探索技術としては、例えば、Path MTU Discovery for IPv6が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】J. McCann et al、"Path MTU Discovery for IP version 6"、Internet Engineering Task Force (IETF)、RFC8201、July 2017、[online]、[令和4年6月21日検索]、インターネット<https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc8201>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のパスMTU探索技術では、パケットがMTUの問題で転送できない経路に到達した場合、当該パケットは破棄され、パケットを転送できなかった中間ノード(ルータなど)から送信元にICMP(Internet Control Message Protocol)エラーメッセージが送信される。このICMPエラーメッセージには、パケットが破棄される原因となった中間ノードのMTU値が含まれており、ICMPエラーメッセージを受信した送信元は、パケットサイズをICMPエラーメッセージに含まれるMTU値以下に調整して再度パケットを送信しなければならない。送信元と送信先との間に複数の中間ノードが存在する場合、上記の過程は、送信元から送信されたパケットが送信先に届くまで繰り返し行われる。
このように、従来のパスMTU探索技術では、ICMPエラーメッセージの送信およびパケットの再転送が発生しうるため、パケット伝送処理に時間を要していた。
【0007】
なお、上記のパスMTU探索技術を用いずに、例えば、MNOと各ローカル5G事業者との間の協議により決定された各パスMTUのうちの最小値を、コアのMTU値として事前に設定することも考えられる。この場合、コアは、各CUとの間のすべてのパスMTUを超えないパケット送信が可能となる。そのため、上記のようなICMPエラーメッセージの送信やパケットの再転送は発生せず、その分の処理を高速化することができる。しかしながら、各CUへ送信されるすべてのメッセージに対して、すべてのパスMTUを超えない最小のMTU値が適用されてしまう。
MTU値が小さく設定されている場合、同じデータ量を送信先に届けるためにより多くのパケットが必要となる。各パケットには決まったサイズのヘッダが付加されるため、伝送されるパケット内のデータ領域は相対的に小さくなり、伝送効率が低下する。そのため、MTU値は、パスMTUを超えない範囲でできるだけ大きいことが望まれる。
【0008】
そこで、本開示は、コアネットワークノードにおいて適切なMTU値を適用し、パケット伝送効率をより向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一態様によるネットワーク管理装置は、1以上のプロセッサを備える。前記1以上のプロセッサの少なくとも一つによって、決定処理と、適用処理と、が実行される。前記決定処理は、無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定する処理である。前記適用処理は、前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する処理である。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の一態様によるネットワーク管理方法は、無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定し、前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する、ことを含む。
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の一態様によるネットワーク管理システムは、1以上のプロセッサを備える。前記1以上のプロセッサの少なくとも一つによって、決定処理と、適用処理と、が実行される。前記決定処理は、無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定する処理である。前記適用処理は、前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する処理である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、コアネットワークノードにおいて適切なMTU値を適用し、パケット伝送効率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、MNO-RANを備えるモバイルネットワークの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、ローカル5G-RANを備えるモバイルネットワークの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、コア(AMF)の機能ブロック図の一例である。
【
図5】
図5は、RAN属性に基づくMTU値の適用動作を示すシーケンス図である。
【
図6】
図6は、UE属性に基づくMTU値の適用動作を示すシーケンス図である。
【
図7】
図7は、パケットサイズに基づくMTU値の適用動作を示すシーケンス図である。
【
図8】
図8は、ネットワーク管理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、MNO-RANへのパケット伝送動作を示すシーケンス図である。
【
図10】
図10は、ローカル5G-RANへの従来のパケット伝送動作を示すシーケンス図である。
【
図11】
図11は、ローカル5G-RANへの従来のパケット伝送動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施形態について詳細に説明する。以下に開示される構成要素のうち、同一機能を有するものには同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、以下に開示される実施形態は、本開示の一形態であり、装置の構成や各種条件によって適宜修正または変更されるべきものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが上記課題の解決手段に必須のものとは限らない。
【0015】
本実施形態では、本開示による技術を適用したネットワークとして、3GPP(Third Generation Partnership Project)(登録商標)で規格されている第5世代(5G)モバイルネットワークを想定している。なお、本開示による技術は、5Gモバイルネットワーク以外のネットワークに適用されてもよい。
【0016】
以下、本実施形態に係るネットワーク管理装置が、5GモバイルネットワークのコアネットワークノードにおけるMTU(Maximum Transmission Unit)値を適用するためのMTU適用制御機能を備える場合について説明する。本実施形態では、上記コアネットワークノードが、5Gコアネットワークのネットワーク要素の1つであるAMF(Access and Mobility Management Function)である場合について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のネットワーク管理システムが適用されるモバイルネットワーク100のネットワーク構成例を示す図である。
図1に示すモバイルネットワーク100は、ユーザ端末(User Equipment:UE)が直接アクセスする無線アクセスネットワーク(Radio Access Network:RAN)と、複数のRANを集約するコアネットワーク(Core Network:CN)と、を有する。モバイルネットワーク100においては、UEとRANとが無線通信し、その情報をCNに送って処理する。これにより、UEは、インターネットに接続したり、他社のネットワークと接続して音声通話をしたりすることができる。
なお、UEは、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)などのモバイル通信可能な通信端末であってよい。
【0018】
図1に示すように、モバイルネットワーク100は、基地局11と、複数の収容局12~14と、を備える。ここで、収容局12はエッジデータセンタ、収容局13は地域データセンタ(Regional Data Center:RDC)、収容局14は中央データセンタ(Central Data Center:CDC)である。エッジデータセンタ12から中央データセンタ14までの間でバックホールネットワークが構成される。
本実施形態におけるモバイルネットワーク100は、仮想化基盤で構築された仮想化ネットワークであってよい。この場合、モバイルネットワーク100では、汎用的なサーバ上に、基幹網の交換機から基地局の無線アクセス機能までをソフトウェアにより実現することができる。
【0019】
基地局11は、アンテナや配電盤、バッテリー等を備える。基地局11は、RANの機能の一部であるRU(Radio Unit)220の機能を担う。
エッジデータセンタ12は、基地局11の近くに設置され、複数の基地局11とそれぞれ光ファイバーケーブル等で接続されている。
地域データセンタ13は、対象地域に配置される複数のエッジデータセンタ12と接続されている。
エッジデータセンタ12または地域データセンタ13は、RANの機能の一部であるDU(Distributed Unit)およびCU(Cental Unit)230の機能を担う。
【0020】
中央データセンタ(CDC)14は、複数のエッジデータセンタ12および複数の地域データセンタ13と接続されている。この中央データセンタ14は、5Gコアネットワークの機能を担う。CDC10は、5GコアネットワークのAMF、SMF(Session Management Function)、UPF(User Plane Function)などの機能を実現する。
【0021】
なお、エッジデータセンタ12、地域データセンタ13、中央データセンタ14といった各データセンタ(収容局)の数は、
図1に示す数に限定されない。例えば
図1では、地域データセンタ13および中央データセンタ14を1つずつしか図示していないが、地域データセンタ13および中央データセンタ14はそれぞれ複数設置されていてもよい。
【0022】
図1に示すモバイルネットワーク100においては、1つのMNO(Mobile Network Operator)がエンドツーエンド(End-to-End)でネットワーク管理を行う。
この
図1に示すモバイルネットワーク100においては、MNO-RANのRANノードであるCU230が、コアネットワークノードであるAMF210に接続する。CU230とAMF210との間の通信プロトコルとして3GPPが規格するNGAP(NG Application Protocol)があり、NGAPメッセージを送受信することで接続の確立を含むCU230とAMF210との間の通信制御が行われる。
【0023】
本実施形態では、モバイルネットワーク100において、MNOが管理するコアネットワークの機能を、企業、自治体などを含む複数の事業者(ローカル5G事業者)が共用してよい。つまり、モバイルネットワーク100では、複数の事業者が運用するローカル5G-RANのノードが、MNOが運用するCNのノードに接続しうる。
すなわち、本実施形態のネットワーク管理システムが適用されるモバイルネットワーク100は、
図2に示すように、中央データセンタ(CDC)14と、基地局21、22と、を備える構成となりうる。基地局21、22は、事業者ごとのローカル5G-RANを構成する5G基地局(gNB(gNodeB))である。
【0024】
基地局21は、アンテナや配電盤、バッテリー等を備える。基地局21は、RANの機能の一部であるRU(Radio Unit)220の機能を担う。
基地局22は、基地局21の近くに設置され、複数の基地局21とそれぞれ光ファイバーケーブル等で接続されている。基地局22は、RANの機能の一部であるDU(Distributed Unit)およびCU(Cental Unit)230の機能を担う。
【0025】
なお、RU、DUおよびCUの分割方法は上記に限定されるものではなく、例えば基地局21にRUおよびDUを配置し、基地局22にCUを配置してもよい。また、RU、DUおよびCUをまとめて1つの基地局に配置してもよい。
【0026】
図1に示すモバイルネットワーク100においては、1つのMNOがエンドツーエンド(End-to-End)でネットワーク管理を行う。MNOは、AMF210とCU230との間のパスMTUを事前に把握することができるため、AMF210に事前にMTU値を設定することができる。
例えば、AMF210とMNO-RANのCU230との間のパスMTUが1500バイトである場合、MNOは、AMF210に、当該CU230と通信するためのMTU値として1500バイトを事前に設定することができる。
【0027】
ここで、パスMTUとは、パケットを分割(フラグメンテーション)せずに、送信元ノード(例えばAMF)から送信先ノード(例えばCU)に送信できる最大のパケットサイズであり、送信元ノード(例えばAMF)から送信先ノード(例えばCU)までのパス内のリンクMTUのうちの最小値に等しい。
【0028】
この場合、AMF210がMNO-RANのCU230に対してNGAPメッセージを送信する場合には、
図9のステップS101に示すように、パケットサイズを1500バイト以下に調整してNGAPメッセージを送信することができる。その結果、MNO-RANのCU230は、AMF210から送信されたパケットを正常に受信することができる。
また、AMF210は、パスMTUにできるだけ近く、かつ、パスMTUを超えないサイズでメッセージを送信することができる。例えば、1500バイトを超えるパケットサイズのNGAPメッセージを送信する必要がある場合には、AMF210は1500バイトにできるだけ近く、かつ、1500バイトを超えないパケットサイズにパケット分割(フラグメンテーション)を行ってNGAPメッセージを送信する。そのため、データ伝送効率を向上させることができ、ネットワークリソースを有効に活用することができる。
【0029】
一方、AMF210とローカル5G-RANのCU230とは、専用回線またはVPN(Virtual Private Network)により接続され、両者の間のパスMTUは事業者ごとにそれぞれ異なる。例えば、AMF210とローカル5G-RANのCU230との間のパスMTUは、MNO-RANのCU230との間(MNOバックホールネットワーク)のパスMTU(例えば1500バイト)よりも小さい1400バイトである場合がある。
そのため、
図2に示すモバイルネットワーク100において、AMF210がローカル5G-RANのCU230に対して、MNO-RANのCU230の場合と同様に1500バイトのメッセージを送信しても、当該CU230はメッセージを直接受信することができない。この場合のパケット伝送動作を
図10に示す。
【0030】
まずステップS111において、AMF210は、パケットサイズ1500バイトのNGAPメッセージをローカル5G-RANのCU230に対して送信する。
ローカル5G-RANのCU230までの間に配置されたルータなどの中間ノードでサポートされているMTU値が1400バイトである場合、ステップS112において、当該中間ノードは、AMF210に対してパケットサイズが大きすぎることを示すICMPエラーメッセージ(Too big)を返信する。このICMPエラーメッセージには、当該中間ノードでサポートされているMTU値(1400バイト)を示す情報が含まれる。
【0031】
そのため、AMF210は、パケットをICMPエラーメッセージに含まれるMTU値をもとに分割し、再度パケットを送信する。
具体的には、AMF210は、ステップS113において、パケットサイズ1400バイトのNGAPメッセージを送信し、ステップS114において、パケットサイズ100バイトの残りのNGAPメッセージを送信する。
これにより、ローカル5G-RANのCU230は、AMF210から送信されたNGAPメッセージを正常に受信することができる。
しかしながら、この場合、ICMPエラーメッセージの送信およびパケットの再転送が発生するため、伝送処理に時間を要する。
【0032】
そこで、各RANノードとの間のすべてのパスMTUを超えない最小のMTU値をAMFに設定することが考えられる。この場合、MNOは、各RANのCUとの間のパスMTUのうちの最小値をAMF210に設定する。これにより、AMFは、各CUとの間のすべてのパスMTUを超えないパケット送信が可能となるため、上記のようなICMPエラーメッセージの送信やパケットの再転送は発生しない。したがって、その分の処理を高速化することができる。
しかしながら、各CUへ送信されるすべてのメッセージに対して、すべてのパスMTUを超えない最小のMTU値が適用されてしまうため、伝送効率が悪い。
【0033】
例えば、AMF210が、MNO-RAN(パスMTU=1500バイト)と、ローカル5G-RAN(パスMTU=1400バイト)とに接続し得る場合、AMF210にはMTU値=1400バイトが事前に設定される(
図11のステップS121)。
そして、MNO-RANのCU230に対して1500バイトのNGAPメッセージを送る場合にも、MTU値=1400バイトが適用され、パケットを分割して送信する(ステップS122、123)。この場合、CU230は、AMF210から送信されたNGAPメッセージを正常に受信することができる。
【0034】
しかしながら、この場合、MNO-RANのCU230に対して、本来1回で送信可能なパケットを2回に分割して送信することになり、伝送効率が低下してしまう。
ネットワークリソースをより有効に活用するためには、コア(AMF)に、事業者ごと(RANごと)の最適なMTU値を設定することが望まれる。また、MTU値の設定は、人手を介さず自動的に行われることが望まれる。
【0035】
そこで、本実施形態では、コア(AMF)が、事業者ごと(RANごと)に最適なMTU値を適用するMTU適用制御機能を備える。
具体的には、AMF210は、RANノードから送信されたパケットを受信し、受信パケットから得られる情報に基づいてMTU値を決定し、決定されたMTU値を、上記RANノードへの送信パケットに自動的に適用する。
【0036】
図3は、AMF210の機能ブロック図の一例である。
AMF210は、通信部211と、RAN属性取得部212と、MTU決定部213と、MTU適用部214と、マッピングテーブル215と、を備える。
通信部211は、CU230との間でパケットの送受信を行う。通信部211は、パケットをCU230に送信する場合、MTU適用部214において適用されたMTU値に基づいて、パケットサイズを、パケット送信対象のRAN(CU)に対応するMTU値以下に調整して送信する。
【0037】
RAN属性取得部212は、通信部211により受信された受信パケットから、当該受信パケットの送信元のRANノードが属するRANに関する属性情報を抽出する。
ここで、受信パケットは、例えばRANもしくはUEがコアネットワークに接続する際にRANノードから送信されるメッセージであってよい。当該メッセージは、例えばCU230からAMF210に送信されるセットアップ要求(NG SETUP REQUEST)メッセージであってもよいし、UEからCU230を介してAMF210に送信されるNAS(Non-Access Stratum)プロトコルの登録要求(REGISTRATION REQUEST)メッセージを内包するNGAPメッセージであってもよい。
【0038】
また、RANの属性情報は、当該RANを所有する(運用する)事業者を識別可能な情報であればよい。
RANの属性情報は、例えばPLMN(Public Land Mobile Network)番号とすることができる。PLMN番号は、国や地域を表すMCC(Mobile Country Number)と、事業者を表すMNC(Mobile Network Code)とを組み合わせた事業者ネットワークの識別番号である。
【0039】
MTU決定部213は、RAN属性取得部212により取得されたRANの属性情報に基づいてMTU値を決定する。具体的には、MTU決定部213は、RANの属性情報とMTU値とを対応付けたマッピングテーブル215を参照して、RAN属性取得部212により取得されたRANの属性情報に対応するMTU値を導出する。
MTU適用部214は、MTU決定部213により決定されたMTU値を、当該MTU値の決定に用いた受信パケットの送信元のRANノードと通信するためのMTU値として設定する。
【0040】
マッピングテーブル215は、モバイルネットワーク100においてコアネットワークに接続しうるRANの属性情報と、当該RANのノード(CU)とコアネットワークのノード(AMF)との間のパスMTUとを対応付けた対応情報である。MTU決定部213は、このマッピングテーブル215を参照して、RAN属性取得部212により取得されたRANの属性情報に対応するパスMTU値を導出し、導出したパスMTU値を上記MTU値として決定する。
マッピングテーブル215は、コアネットワークを所有する事業者(本実施形態ではMNO)と、RANを所有する事業者(本実施形態ではローカル5G事業者)との間の取り決めに従って作成されてよい。また、マッピングテーブル215へのレコードの追加は、随時行われてよい。
【0041】
図4は、マッピングテーブル215の一例である。
マッピングテーブル215には、PLMN番号とMTU値とが対応付けられて格納される。
図4に示すマッピングテーブル215には、PLMN番号がxxxxxであるMNO-RANに対応するMTU値として1500バイトが格納されている。また、マッピングテーブル215には、PLMN番号がyyyyyであるエンタープライズAのローカル5G-RANに対応するMTU値として1450バイトが格納され、PLMN番号がzzzzzであるエンタープライズBのローカル5G-RANに対応するMTU値として1400バイトが格納されている。
【0042】
なお、本実施形態では、AMF210の内部メモリにマッピングテーブル215が記憶される場合について説明するが、マッピングテーブル215は、AMF210の外部で管理されてもよい。この場合、AMF210は、マッピングテーブル215を管理する外部ノードに対して、RAN属性に関する情報に対応付けられたMTU値を問い合わせる。外部ノードは、AMF210からの問い合わせを受けると、マッピングテーブル215を参照してMTU値を導出し、AMF210に導出結果を送信する。この場合、複数のAMF210によって1つのマッピングテーブル215を共用することが可能となる。
【0043】
図5は、RAN属性に基づくMTU値の適用動作を示すシーケンス図である。
RAN(CU)とコア(AMF)との間の接続を確立する場合、まずステップS1において、CU230は、AMF210に対してNGAPセットアップ要求メッセージを送信する。このセットアップ要求メッセージは、3GPP TS38.413で規定されている「NG SETUP REQUEST」である。セットアップ要求メッセージには、CU230が属するRANのPLMN番号が含まれる。
【0044】
AMF210は、CU230からセットアップ要求メッセージを受信すると、当該メッセージに含まれるPLMN番号を取得する。そして、AMF210は、
図4のマッピングテーブル215を参照し、取得したPLMN番号に対応するMTU値を導出する。
例えば、
図5に示すCU230がエンタープライズAのローカル5G-RANに属するCUである場合、CU230が送信するセットアップ要求メッセージには、PLMN=yyyyyが含まれる。そのため、AMF210は、マッピングテーブル215を参照し、MTU値=1450を導出する。
この場合、AMF210は、ステップS2において、MTU値=1450をCU230と通信するためのMTU値として適用する。
【0045】
そして、ステップS3において、AMF210は、セットアップ要求メッセージに応答する応答メッセージ(NG SETUP RESPONSE)と、それに続くNGAPメッセージとをCU230に送信する。このときAMF210は、CU230との通信において、パケットを分割せずに送信できる最大サイズが1450バイトであると認識してNGAPメッセージをCU230に送信する。
【0046】
一方、CU230から送信されるセットアップ要求メッセージにPLMN=zzzzzが含まれる場合には、AMF210は、
図4のマッピングテーブル215を参照し、MTU値=1400を導出する。そして、AMF210は、MTU値=1400を当該CU230と通信するためのMTU値として適用する。
このように、PLMN=yyyyyのローカル5G-RANに属するCU230との通信には、MTU値=1450が自動的に適用され、PLMN=zzzzzのローカル5G-RANに属するCU230との通信には、MTU値=1400が自動的に適用される。つまり、事業者ごと(RANごと)の最適なMTU値をAMF210に設定することができる。
【0047】
なお、
図5に示す例では、セットアップ要求メッセージに含まれるPLMN番号は1つのみであるが、PLMN番号は複数含まれうる。例えば、基地局が、エンタープライズAが所有するRANとエンタープライズBが所有するRANの両方に属する場合、当該基地局が備えるCU230が送信するセットアップ要求メッセージには2つのPLMN番号が含まれる。
この場合、AMF210は、セットアップ要求メッセージに含まれる2つのPLMN番号のそれぞれに対応するMTU値を導出する。そして、AMF210は、導出された2つのMTU値のうち小さい方を適用するMTU値として選択する。
このように、セットアップ要求メッセージに複数の属性情報が含まれる場合には、当該属性情報に基づいてそれぞれ決定された複数のMTU値の最小値を、最終的にAMF210に設定するMTU値として決定してよい。これにより、基地局が、事業者が異なる複数のRANに属する場合であっても、適切にMTU値を設定することができる。
【0048】
図6は、RAN属性に基づくMTU値の適用動作の別の例を示すシーケンス図である。
UEをコア(AMF)に登録する場合、まずステップS11において、UE240は、AMF210に対するNAS登録要求メッセージを送信する。この登録要求メッセージは、3GPP TS24.501で規定されている「REGISTRATION REQUEST」である。登録要求メッセージには、UE240が属するRANのPLMN番号が含まれる。
UE240から送信されたNAS登録要求メッセージは、CU230を介してAMF210に送信される。ステップS12では、CU230は、UE240から送信されたNAS登録要求メッセージを包含するNGAPメッセージを、AMF210に対して送信する。このNGAPメッセージには、UE240が属するRANのPLMN番号が含まれる。
【0049】
AMF210は、CU230からNGAPメッセージを受信すると、当該メッセージに含まれるPLMN番号を取得する。そして、AMF210は、
図4のマッピングテーブル215を参照し、取得したPLMN番号に対応するMTU値を導出する。
例えば、
図6に示すUE240がエンタープライズAのローカル5G-RANに属する場合、UE240が送信する登録要求メッセージには、PLMN=yyyyyが含まれる。そのため、AMF210は、マッピングテーブル215を参照し、MTU値=1450を導出する。
この場合、AMF210は、ステップS13において、MTU値=1450をCU230と通信するためのMTU値として適用する。
【0050】
そして、ステップS14において、AMF210は、登録要求メッセージに応答するNASメッセージ(REGISTRATION ACCEPT)を包含するNGAPメッセージをCU230に送信する。このときAMF210は、NASメッセージを包含した状態のNGAPメッセージの送信可能な最大サイズが1450バイトであると認識して、NGAPメッセージをCU230に送信する。
ステップS15では、CU230からUE240に対して、登録要求メッセージの応答メッセージが送信される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態におけるネットワーク管理装置であるAMF210は、RANノードから送信されたパケットを受信し、その受信パケットから得られる情報に基づいてMTU値を決定する。そして、AMF210は、決定したMTU値を、コアネットワークから上記受信パケットの送信元のRANノードへの送信パケットに適用する。
【0052】
このように、AMF210は、パケットの送信元のRANノードごとにMTU値を自動的に設定することができる。このとき、AMF210は、受信パケットから得られる情報に基づいてMTU値を決定するので、RANノードごとに適切なMTU値を設定することが可能である。
したがって、AMF210からRANノードへのパケット伝送において、パケットを分割せずに効率的な伝送処理を行うことができる。つまり、従来のパスMTU探索(Path MTU Discovery)を利用する場合のようにICMPエラーメッセージの送信やパケットの再転送を発生させないようにすることができ、パケット伝送処理を高速化することができる。また、RANノードごとに適切なMTU値を設定し、データペイロードを増加させることができるので、パケット伝送効率を向上させることができる。
【0053】
具体的には、AMF210は、上記受信パケットからRANノードが属するRANに関する属性情報を抽出し、当該属性情報に基づいてMTU値を決定してよい。ここで、属性情報は、RANを所有する事業者を識別可能な情報、例えばPLMNであってよい。
したがって、異なる事業者がそれぞれ所有する複数のRAN(例えばローカル5G-RAN)を集約するコアネットワークにおいて、AMF210は、RAN(CU)ごとに適切なMTU値を適用することができる。
【0054】
また、AMF210は、MTU値の決定に際し、RANの属性情報と当該RANのパスMTU値とを対応付けたマッピングテーブル215を用いる。まず、AMF210は、上記マッピングテーブル215を参照して、受信パケットから抽出された属性情報に対応するパスMTU値を導出する。そして、AMF210は、導出されたパスMTU値を、RAN(CU)と通信するためのMTU値として決定し、適用する。
このように、マッピングテーブル215を用いることで、MTU値を容易かつ適切に決定することができる。また、各RAN(CU)と通信するためのMTU値を、各RAN(CU)との間のパスMTU値に設定することができるので、パケット伝送効率をより向上させることができる。
【0055】
ここで、上記受信パケットは、RANノードから送信されるセットアップ要求メッセージ、または、UE(通信端末)からRANを介して送信される登録要求メッセージであってよい。
このように、AMF210は、RANノードであるCU230がトリガとなって送信されるセットアップ要求メッセージや、UE240がトリガとなってCU230を介して送信される登録要求メッセージをもとにMTU値を決定することができる。したがって、AMF210から上記CU230への最初の送信パケットに、適切なMTU値を適用することができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、RANの属性情報としてPLMNを用い、PLMNをもとにMTU値を導出する場合について説明したが、MTU値の導出に用いる情報はPLMNに限定されない。
例えば、UEのIMSI(International Mobile Subscriber Identity)を用いてMTU値を導出してもよい。この場合、AMF210は、IMSI範囲(IMSI range)とMTU値とを対応付けたマッピングテーブルを記憶しておく。ここで、IMSI範囲は、1つ以上のIMSIから構成されるIMSIのセットであり、例えば、事業者ごとに割り当てられたIMSIのセットを範囲としてよい。
【0057】
AMF210は、UE240からCU230を介して送信されたNAS登録要求メッセージを受信し、当該登録要求メッセージに含まれるUE240のIMSIを取得する。そして、AMF210は、取得されたIMSI含むIMSI範囲を特定し、特定されたIMSI範囲に対応するMTU値をマッピングテーブルから導出する。
ここで、上記登録要求メッセージは、3GPP TS24.501で規定されている「REGISTRATION REQUEST」である。また、上記IMSIは、3GPP TS23.502で規定されている情報である。
【0058】
また、MTU値の導出に用いるRANの属性情報としては、MCC、MNC、TAC(Tracking Area Code)、Cell ID、S-NSSAI(Single-Network Slice Selection Assistance Information)、およびRANノードIDの少なくとも1つを用いてもよい。これらの情報は、CU230またはUE240からAMF210に対して、NGAPメッセージまたはNASメッセージによって通知される。
さらに、MTU値の導出に用いるRANの属性情報としては、CU230のIPアドレス、または、CU230が属するIPアドレス範囲/サブネットを用いてもよい。AMF210は、NGAPメッセージの送信元のIPアドレスから、上記のCU230のIPアドレスを特定することができる。
これらの情報を用いた場合でも、RAN(CU)ごとに適切なMTU値を決定し、適用することが可能である。
【0059】
また、本実施形態においては、AMF210は、RANもしくはUEがコアネットワークに接続する際に送信されるセットアップ要求メッセージや登録要求メッセージに含まれる情報をもとにMTU値を導出する場合について説明した。しかしながら、AMF210は、CU230から受信したパケットのパケットサイズを用いてMTU値を設定してもよい。
AMF210がCU230からパケットを正常に受信した場合、AMF210とCU230との間のパスMTUは、受信パケットのパケットサイズ以上であると判断することができる。したがって、AMF210は、受信パケットのパケットサイズを取得し、取得したパケットサイズに基づいて、当該受信パケットの送信元のCU230にパケットを送信する際のMTU値を決定してもよい。
この場合にも、AMF210は、パケットを分割せずに送信可能なMTU値を自動的に設定することが可能である。また、上述したようなMTU値を導出するためのマッピングテーブル215は不要とすることができる。
【0060】
また、AMF210は、CU230から受信したパケットのパケットサイズをMTU値として記憶し、同一のCU230からパケットを受信するたびに、記憶されたMTU値と受信パケットのパケットサイズとを比較し、大きい方をMTU値として記憶し直してもよい。
このように、同一のRANノードから送信される受信パケットのパケットサイズの最大値をMTU値として決定し、適用してもよい。これにより、パスMTUに近いMTU値を適用することができる。
【0061】
なお、AMF210は、IPアドレス範囲やサブネットが共通であるCU230ごとにMTU値を記憶してよい。つまり、CU230をグループ化し、同一のグループに属するCU230については、同一のMTU値を適用してよい。
図8は、受信パケットのパケットサイズに基づくMTU値の適用動作を示すシーケンス図である。ここでは、第1のCU(CU1)231と第2のCU(CU2)232とが同じサブネット(サブネット1)に属する場合について説明する。
【0062】
まずステップS21において、第1のCU231が、AMF210に対して1200バイトのNGAPメッセージを送信し、AMF210が当該メッセージを正常に受信したものとする。
この場合、AMF210は、ステップS22において、当該メッセージのパケットサイズである1200バイトを、第1のCU231が属するサブネット1内のCUと通信するためのMTU値として適用する。そして、AMF210は、第1のCU231に対して、MTU値が1200バイトであると認識してNGAPメッセージを送信する(ステップS23)。
なお、第1のCU231が属するサブネットは、第1のCU231のIPアドレスから特定することができる。
【0063】
その後、第1のCU231と同じサブネット1に属する第2のCU232が、ステップS24において、AMF210に対して1400バイトのNGAPメッセージを送信し、AMF210が当該メッセージを正常に受信できたものとする。
この場合、AMF210は、第2のCU232から受信したパケットのパケットサイズと、サブネット1のCUと通信するためのMTU値として記憶しているパケットサイズとを比較する。第2のCU232から受信したパケットのパケットサイズは、記憶されているMTU値よりも大きい。そのため、AMF210は、ステップS25において、サブネット1のCUと通信するためのMTU値を、受信したパケットのパケットサイズである1400に更新する。
そして、AMF210は、第2のCU232に対して、MTU値が1400バイトであると認識してNGAPメッセージを送信する(ステップS26)。
【0064】
その後、ステップS27において、AMF210が、第1のCU231から1200バイトのNGAPメッセージを受信したものとする。この場合、第1のCU231から受信したパケットのパケットサイズは、サブネット1のCUと通信するためのMTU値として記憶しているパケットサイズよりも小さい。そのため、AMF210は、記憶しているMTU値を更新しない。つまり、サブネット1のCUと通信するためのMTU値は、1400バイトのまま保持される(ステップS28)。
そして、AMF210は、第1のCU231に対しては、MTU値が1400バイトであると認識してNGAPメッセージを送信する(ステップS29)。
【0065】
このように、CU230から受信したパケットのパケットサイズに基づいて決定されたMTU値を、AMF210から当該CU230が属するグループ内のCU230への送信パケットに適用してよい。ここで同一のグループに属するノードは、IPアドレスが所定のIPアドレス範囲に含まれるノード、または、同一のサブネットに属するノードとすることができる。
グループ化されたCU230について共通のMTU値を適用することで、
図7に示す例のように、1200バイトのメッセージしか送信してきていない第1のCU231に対しても、MTU値は1400バイトであると認識してメッセージを送り返すことができる。したがって、パケット伝送効率を向上させることができる。
また、IPアドレス範囲やサブネットによってCU230をグループ化するので、同じ事業者が所有するRANに属するCU230をグループ化し、共通のMTU値を適用することができる。したがって、各CU230と通信するためのMTU値を適切に設定することができうる。
【0066】
以上のように、本実施形態では、標準仕様を変更することなく、コアネットワークノードにおいて適切なMTU値を適用し、パケット伝送効率をより向上させることができる。
【0067】
なお、上記実施形態においては、モバイルネットワーク100が、MNOが所有するCNと、ローカル5G事業者が所有するRANと、を備える場合について説明した。しかしながら、モバイルネットワーク100は、ローカル5G事業者または他の事業者が所有するCNと、MNOまたは他の事業者が所有するRANと、を備えてもよい。
【0068】
さらに、上記実施形態においては、モバイルネットワーク100が5Gモバイルネットワークである場合について説明したが、モバイルネットワーク100は4Gモバイルネットワークであってよい。つまり、上述したAMF210の動作は、4Gコアネットワークを構成するMME(Mobility Management Entity)の動作にも適用することができる。4Gモバイルネットワークに適用する場合は、AMFをMMEに、CUをBBU(Base Band Unit)に、gNB(gNodeB)をeNB(eNodeB)に、NGAPをS1APに、それぞれ読み替えればよい。
また、モバイルネットワーク100は、5Gモバイルネットワークや4Gモバイルネットワークに限定されるものではなく、例えば第6世代(6G)モバイルネットワークなどの5G以降のモバイルネットワークであってもよい。
【0069】
本実施形態に係るネットワーク管理装置は、モバイルネットワーク100のコアネットワークを構成するいずれかの汎用サーバに実装されてよい。なお、ネットワーク管理装置は、専用サーバに実装されてもよい。また、ネットワーク管理装置は、単一または複数のコンピュータ上に実装されてもよい。
ネットワーク管理装置が単一のコンピュータに実装される場合、
図8に示すように、ネットワーク管理装置1は、CPU2、ROM3、RAM4、HDD5、入力部(キーボード、ポインティングデバイス等)6、表示部(モニター等)7、通信I/F8等を備えることができる。ネットワーク管理装置1はまた、外部メモリを備えてよい。
【0070】
CPU2は、1つ以上のプロセッサにより構成され、ネットワーク管理装置1における動作を統括的に制御する。
図3に示す各要素の少なくとも一部の機能は、CPU2がプログラムを実行することで実現することができる。なお、当該プログラムは、ROM3やHDD5等の不揮発性メモリに記憶されていてもよいし、着脱可能な記憶媒体(不図示)等の外部メモリに記憶されていてもよい。
【0071】
ただし、
図3に示す各要素のうちの少なくとも一部が専用のハードウェアとして動作するようにしてもよい。この場合、専用のハードウェアは、上記CPU2の制御に基づいて動作する。
ハードウェアにより実現される機能については、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各機能モジュールの機能を実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現するようにしてもよい。
【0072】
本開示の態様は、プログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体を含むことができ、ここでは、当該プログラムが、ネットワーク管理装置1のCPU2(1つ以上のプロセッサの少なくとも一つ)によって実行されたときに、ネットワーク管理装置1に前述の方法のうちの少なくともいずれかを実行させる命令を含む。
【0073】
なお、上記において特定の実施形態が説明されているが、当該実施形態は単なる例示であり、本開示の範囲を限定する意図はない。本明細書に記載された装置及び方法は上記した以外の形態において具現化することができる。また、本開示の範囲から離れることなく、上記した実施形態に対して適宜、省略、置換及び変更をなすこともできる。かかる省略、置換及び変更をなした形態は、請求の範囲に記載されたもの及びこれらの均等物の範疇に含まれ、本開示の技術的範囲に属する。
【0074】
(本開示の実施形態)
本開示は以下の実施形態を含む。
[1]1以上のプロセッサを備え、前記1以上のプロセッサの少なくとも一つによって、無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定する決定処理と、前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する適用処理と、が実行される、ことを特徴とするネットワーク管理装置。
【0075】
[2]前記決定処理は、前記受信パケットから前記ノードが属する前記無線アクセスネットワークに関する属性情報を抽出し、当該属性情報に基づいて前記MTU値を決定することを特徴とする[1]に記載のネットワーク管理装置。
【0076】
[3]前記決定処理は、前記無線アクセスネットワークに関する属性情報と、当該無線アクセスネットワークのノードと前記コアネットワークのノードとの間のパスMTU値とを対応付けたマッピングテーブルを参照して、前記受信パケットから抽出された前記属性情報に対応する前記パスMTU値を導出し、導出された前記パスMTU値を前記MTU値として決定することを特徴とする[2]に記載のネットワーク管理装置。
【0077】
[4]前記受信パケットは、前記ノードから送信されるセットアップ要求メッセージであることを特徴とする[2]または[3]に記載のネットワーク管理装置。
【0078】
[5]前記受信パケットは、通信端末から前記無線アクセスネットワークを介して送信される登録要求メッセージであることを特徴とする[2]または[3]に記載のネットワーク管理装置。
【0079】
[6]前記属性情報は、前記無線アクセスネットワークを所有する事業者を識別可能な情報であることを特徴とする[2]から[5]のいずれかに記載のネットワーク管理装置。
【0080】
[7]前記属性情報は、PLMN(Public Land Mobile Network)、MCC(Mobile Country Number)、MNC(Mobile Network Code)、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)、TAC(Tracking Area Code)、Cell ID、S-NSSAI(Single-Network Slice Selection Assistance Information)、無線アクセスネットワークノードIDおよびIPアドレスの少なくとも1つを含むことを特徴とする[2]から[6]のいずれかに記載のネットワーク管理装置。
【0081】
[8]前記決定処理は、前記受信パケットから複数の属性情報が抽出された場合、前記複数の属性情報に基づいてそれぞれ決定された前記MTU値の最小値を、最終的な前記MTU値として決定することを特徴とする[2]から[7]のいずれかに記載のネットワーク管理装置。
【0082】
[9]前記決定処理は、前記受信パケットのパケットサイズを取得し、当該パケットサイズに基づいて前記MTU値を決定することを特徴とする[1]から[8]のいずれかに記載のネットワーク管理装置。
【0083】
[10]前記決定処理は、同一の前記ノードから送信される前記受信パケットのパケットサイズの最大値を、前記MTU値として決定することを特徴とする[9]に記載のネットワーク管理装置。
【0084】
[11]前記適用処理は、前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードが属するグループ内のノードへの送信パケットに適用することを特徴とする[9]または[10]に記載のネットワーク管理装置。
【0085】
[12]前記適用処理は、IPアドレスが所定のIPアドレス範囲に含まれるノード、または、同一のサブネットに属するノードを、同一のグループに属するノードであると判断することを特徴とする[11]に記載のネットワーク管理装置。
【0086】
[13]無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定し、前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する、ことを含むことを特徴とするネットワーク管理方法。
【0087】
[14]1以上のプロセッサを備え、前記1以上のプロセッサの少なくとも一つによって、無線アクセスネットワークを構成するノードから送信され、当該無線アクセスネットワークを含む複数の無線アクセスネットワークを集約するコアネットワークにおいて受信された受信パケットから得られる情報に基づいて、MTU(Maximum Transmission Unit)値を決定する決定処理と、前記MTU値を、前記コアネットワークから前記ノードへの送信パケットに適用する適用処理と、が実行される、ことを特徴とするネットワーク管理システム。
【符号の説明】
【0088】
11…基地局、12…エッジデータセンタ、13…地域データセンタ(RDC)、14…中央データセンタ(CDC)、21,22…基地局、100…モバイルネットワーク、210…AMF、211…通信部、212…RAN属性取得部、213…MTU決定部、214…MTU適用部、215…マッピングテーブル、220…RU、230…CU、240…UE