(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】接着性積層シート、積層体、及び配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/26 20060101AFI20250408BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20250408BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20250408BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B32B37/26
H05K3/46 B
B32B37/12
B32B15/08 J
(21)【出願番号】P 2024572261
(86)(22)【出願日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2024024479
【審査請求日】2024-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2023115310
(32)【優先日】2023-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】北畠 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 京平
(72)【発明者】
【氏名】中村 利美
(72)【発明者】
【氏名】松浦 宜範
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-78422(JP,A)
【文献】特開2014-201829(JP,A)
【文献】特開平3-283696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0359086(US,A1)
【文献】国際公開第2018/066114(WO,A1)
【文献】特開2023-8352(JP,A)
【文献】国際公開第2024/214797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
H05K1/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線板の製造方法であって、
第1キャリア、第1剥離層、第1金属層、及び樹脂含有層をこの順に備えた積層体を用意する工程と、
前記積層体に接着性積層シートを積層する工程であって、前記接着性積層シートが、第2キャリア、第2剥離層、及び接着性材料を含む接着層をこの順に備え、前記接着層と前記樹脂含有層とが当接するように前記接着性積層シートを前記積層体に積層する、工程と、
前記接着性積層シートが積層された前記積層体から前記第1キャリアを前記第1剥離層で剥離する工程と、
前記第1キャリアが剥離された前記積層体から前記第2キャリアを前記第2剥離層で剥離する工程と、
前記第2キャリアが剥離された前記積層体から前記第2剥離層を除去し、それにより前記接着層を露出させる工程と、
前記第2剥離層が除去された前記積層体から前記接着層を除去する工程と、
を含む、配線板の製造方法。
【請求項2】
前記接着性
積層シートが、前記第2剥離層と前記接着層との間に第2金属層をさらに備える、請求項
1に記載の配線板の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂含有層が、前記第1金属層上に設けられる第1再配線層、前記第1再配線層上に設けられるモールド樹脂層、及び前記モールド樹脂層上に設けられる第2再配線層を含む、請求項
1又は2に記載の配線板の製造方法。
【請求項4】
前記モールド樹脂層が、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含む、請求項
3に記載の配線板の製造方法。
【請求項5】
前記第1キャリアの剥離が、レーザーリフトオフ法又は機械的方法により行われる、請求項
1又は2に記載の配線板の製造方法。
【請求項6】
前記積層体に前記接着性積層シートを積層した後、前記第2キャリアを剥離する前に、前記積層体に対して100℃以上350℃以下の加熱を行う工程をさらに含む、請求項
1又は2に記載の配線板の製造方法。
【請求項7】
前記積層体から前記第1キャリアを剥離した後、前記第2キャリアを剥離する前に、前記積層体の前記第1キャリアが剥離された側の面に追加の接着性積層シートを積層する工程をさらに含み、
前記追加の接着性積層シートが、第3キャリア、第3剥離層、及び接着性材料を含む第2接着層をこの順に備え、
前記追加の接着性積層シートの前記積層体への積層が、前記第2接着層と前記積層体の前記第1キャリアが剥離された側の面とが当接するように行われる、請求項
1又は2に記載の配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の配線板の製造方法に用いられる接着性積層シートであって、
キャリアと、
前記キャリア上に設けられる剥離層と、
前記剥離層上に設けられ、接着性材料を含む接着層と、
を備えた、接着性積層シート。
【請求項9】
前記剥離層と前記接着層との間に設けられる金属層をさらに備えた、請求項8に記載の接着性積層シート。
【請求項10】
前記キャリアが金属で構成される、請求項8に記載の接着性積層シート。
【請求項11】
前記キャリアが、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、チタン、ニッケル及びジュラルミンからなる群から選択される少なくとも1種で構成される、請求項8に記載の接着性積層シート。
【請求項12】
前記接着性材料が、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、感光性ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の接着性積層シート。
【請求項13】
前記接着層が1μm以上2000μm以下の厚さを有する、請求項8に記載の接着性積層シート。
【請求項14】
前記キャリアの平面視面積A
C
に対する前記接着層の平面視面積A
A
の比A
A
/A
C
が0.03以上1.0以下である、請求項8に記載の接着性積層シート。
【請求項15】
前記金属層が、Ti、Cu、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、In、Sn、Zn、Ga及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成される、請求項9に記載の接着性積層シート。
【請求項16】
前記金属層が10nm以上1000nm以下の厚さを有する、請求項9に記載の接着性積層シート。
【請求項17】
前記剥離層が炭素を含む、請求項8に記載の接着性積層シート。
【請求項18】
請求項8に記載の接着性積層シートと、前記接着性積層シートの前記接着層上に設けられる樹脂含有層と、前記樹脂含有層上に設けられる追加金属層とを備えた、積層体。
【請求項19】
前記追加金属層上に設けられる追加剥離層、及び前記追加剥離層上に設けられる追加キャリアをさらに備えた、請求項18に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着性積層シート、積層体、及び配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板の実装密度を上げて小型化するために、プリント配線板の多層化が広く行われるようになってきている。このような多層プリント配線板は、携帯用電子機器の多くで、軽量化や小型化を目的として利用されている。そして、この多層プリント配線板には、層間絶縁層の更なる厚さの低減、及び配線板としてのより一層の軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求を満たす技術として、コアレスビルドアップ法を用いた多層プリント配線板の製造方法が採用されている。コアレスビルドアップ法とは、いわゆるコア基板を用いることなく、絶縁層と配線層とを交互に積層(ビルドアップ)して多層化する方法である。コアレスビルドアップ法においては、支持体と多層プリント配線板との剥離を容易に行えるように、キャリア付銅箔を使用することが提案されている。例えば、特許文献1(特開2005-101137号公報)には、キャリア付銅箔のキャリア面に絶縁樹脂層を貼り付けて支持体とし、キャリア付銅箔の極薄銅層側にフォトレジスト加工、パターン電解銅めっき、レジスト除去等の工程により第一の配線導体を形成した後、ビルドアップ配線層を形成し、キャリア付支持基板を剥離し、極薄銅層を除去することを含む、半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献1に示されるような埋め込み回路の微細化のため、極薄銅層の厚さを1μm以下としたキャリア付銅箔が望まれる。そこで、極薄銅層の厚さ低減を実現するため、スパッタリング等の気相法により極薄銅層を形成することが提案されている。例えば、特許文献2(国際公開第2017/150283号)には、ガラス又はセラミックス等のキャリア上に、剥離層、反射防止層、及び極薄銅層がスパッタリングにより形成されたキャリア付銅箔が開示されている。また、特許文献3(国際公開第2017/150284号)には、ガラス又はセラミックス等のキャリア上に、中間層(例えば密着金属層及び剥離補助層)、剥離層及び極薄銅層(例えば膜厚300nm)がスパッタリングにより形成されたキャリア付銅箔が開示されている。特許文献2及び3には、所定の金属で構成される中間層を介在させることでキャリアの機械的剥離強度の優れた安定性をもたらすことや、反射防止層が望ましい暗色を呈することで、画像検査(例えば自動画像検査(AOI))における視認性を向上させることも教示されている。
【0005】
とりわけ、電子デバイスのより一層の小型化及び省電力化に伴い、半導体チップ及びプリント配線板の高集積化及び薄型化へのニーズが高まっている。かかるニーズを満たす次世代パッケージング技術として、FO-WLP(Fan-Out Wafer Level Packaging)やPLP(Panel Level Packaging)の採用が近年検討されている。そして、FO-WLPやPLPにおいても、コアレスビルドアップ法の採用が検討されている。そのような工法の一つとして、コアレス支持体表面に配線層及び必要に応じてビルドアップ配線層を形成し、さらに必要に応じて支持体を剥離した後に、チップの実装を行う、RDL-First(Redistribution Layer-First)法と呼ばれる工法がある。例えば、特許文献4(特開2015-35551号公報)には、ガラス又はシリコンウェハからなる支持体の主面への金属剥離層の形成、その上への絶縁樹脂層の形成、その上へのビルドアップ層を含む再配線層(Redistribution Layer)の形成、その上への半導体集積回路の実装及び封止、支持体の除去による剥離層の露出、剥離層の除去による2次実装パッドの露出、並びに2次実装パッドの表面への半田バンプの形成、並びに2次実装を含む、半導体装置の製造方法が開示されている。
【0006】
FO-WLPやPLPの採用が検討される近年の技術動向を受けて、ビルドアップ層の薄型化が求められている。しかしながら、ビルドアップ層が薄い場合、コアレスビルドアップ法を用いて作製したビルドアップ層付基材から、基材を剥離する際、ビルドアップ層が局部的に大きく湾曲することがある。かかるビルドアップ層の大きな湾曲は、ビルドアップ層内部の配線層の断線や剥離を引き起こし、その結果、配線層の接続信頼性を低下させうる。かかる問題に対処すべく、多層積層体に補強シートを積層してハンドリング性を向上させることが提案されている。例えば、特許文献5(特許第6731060号公報)には、多層配線板の製造において、剥離可能な基材を含む多層配線層付積層体に、所定の剥離強度をもたらす第2剥離層を介して補強シートを積層させることが開示されている。かかる手法によれば、多層配線層を局部的に大きく湾曲させることなく、基材及び補強シートをこの順に剥離することができるとされている。特許文献6(特許第6731061号公報)には、多層配線層の接続信頼性と多層配線層表面の平坦性を向上すべく、剥離可能な基材を含む多層配線層付積層体に、基材よりもビッカース硬度が低い補強シートを積層させることが開示されている。特許文献7(特許第7112962号公報)には、補強シートに開口部を設け、かつ、補強シートの多層積層体への積層に可溶性粘着層を用いることが開示されている。特許文献8(特許第7208011号公報)には、補強シートの多層積層体への積層に可溶性粘着層を用い、かつ、所定領域内に可溶性粘着層が形成されない非占有領域を設けることが開示されている。特許文献7及び8に開示される手法によれば、役目を果たした補強シートの剥離を、溶解剥離等の手法により、多層積層体に与える応力を最小化しながら極めて短時間で行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-101137号公報
【文献】国際公開第2017/150283号
【文献】国際公開第2017/150284号
【文献】特開2015-35551号公報
【文献】特許第6731060号公報
【文献】特許第6731061号公報
【文献】特許第7112962号公報
【文献】特許第7208011号公報
【発明の概要】
【0008】
特許文献7及び8に開示される補強シートを多層積層体に積層した場合、役目を果たした後の補強シートの剥離を短時間で行うことができる。しかしながら、補強シートのより一層迅速な剥離が求められる。
【0009】
本発明者らは、今般、接着性積層シートにおいて、キャリア上に剥離層、及び接着性材料を含む接着層をこの順に設けることにより、補強シートとして用いた後の剥離除去を速やかに行うことができるとの知見を得た。
【0010】
したがって、本発明の目的は、補強シートとして用いた後の剥離除去を速やかに行うことが可能な、接着性積層シートを提供することにある。
【0011】
本発明によれば、以下の態様が提供される。
[態様1]
キャリアと、
前記キャリア上に設けられる剥離層と、
前記剥離層上に設けられ、接着性材料を含む接着層と、
を備えた、接着性積層シート。
[態様2]
前記剥離層と前記接着層との間に設けられる金属層をさらに備えた、態様1に記載の接着性積層シート。
[態様3]
前記キャリアが金属で構成される、態様1又は2に記載の接着性積層シート。
[態様4]
前記キャリアが、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、チタン、ニッケル及びジュラルミンからなる群から選択される少なくとも1種で構成される、態様1~3のいずれか一つに記載の接着性積層シート。
[態様5]
前記接着性材料が、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、感光性ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、態様1~4のいずれか一つに記載の接着性積層シート。
[態様6]
前記接着層が1μm以上2000μm以下の厚さを有する、態様1~5のいずれか一つに記載の接着性積層シート。
[態様7]
前記キャリアの平面視面積ACに対する前記接着層の平面視面積AAの比AA/ACが0.03以上1.0以下である、態様1又は2に記載の接着性積層シート。
[態様8]
前記金属層が、Ti、Cu、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、In、Sn、Zn、Ga及びMoからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成される、態様2~7のいずれか一つに記載の接着性積層シート。
[態様9]
前記金属層が10nm以上1000nm以下の厚さを有する、態様2~8のいずれか一つに記載の接着性積層シート。
[態様10]
前記剥離層が炭素を含む、態様1~9のいずれか一つに記載の接着性積層シート。
[態様11]
態様1~10のいずれか一つに記載の接着性積層シートと、前記接着性積層シートの前記接着層上に設けられる樹脂含有層と、前記樹脂含有層上に設けられる追加金属層とを備えた、積層体。
[態様12]
前記追加金属層上に設けられる追加剥離層、及び前記追加剥離層上に設けられる追加キャリアをさらに備えた、態様11に記載の積層体。
[態様13]
配線板の製造方法であって、
第1キャリア、第1剥離層、第1金属層、及び樹脂含有層をこの順に備えた積層体を用意する工程と、
前記積層体に接着性積層シートを積層する工程であって、前記接着性積層シートが、第2キャリア、第2剥離層、及び接着性材料を含む接着層をこの順に備え、前記接着層と前記樹脂含有層とが当接するように前記接着性積層シートを前記積層体に積層する、工程と、
前記接着性積層シートが積層された前記積層体から前記第1キャリアを前記第1剥離層で剥離する工程と、
前記第1キャリアが剥離された前記積層体から前記第2キャリアを前記第2剥離層で剥離する工程と、
前記第2キャリアが剥離された前記積層体から前記第2剥離層を除去し、それにより前記接着層を露出させる工程と、
前記第2剥離層が除去された前記積層体から前記接着層を除去する工程と、
を含む、配線板の製造方法。
[態様14]
前記接着性シートが、前記第2剥離層と前記接着層との間に第2金属層をさらに備える、態様13に記載の配線板の製造方法。
[態様15]
前記樹脂含有層が、前記第1金属層上に設けられる第1再配線層、前記第1再配線層上に設けられるモールド樹脂層、及び前記モールド樹脂層上に設けられる第2再配線層を含む、態様13又は14に記載の配線板の製造方法。
[態様16]
前記モールド樹脂層が、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含む、態様15に記載の配線板の製造方法。
[態様17]
前記第1キャリアの剥離が、レーザーリフトオフ法又は機械的方法により行われる、態様13~16のいずれか一つに記載の配線板の製造方法。
[態様18]
前記積層体に前記接着性積層シートを積層した後、前記第2キャリアを剥離する前に、前記積層体に対して100℃以上350℃以下の加熱を行う工程をさらに含む、態様13~17のいずれか一つに記載の配線板の製造方法。
[態様19]
前記積層体から前記第1キャリアを剥離した後、前記第2キャリアを剥離する前に、前記積層体の前記第1キャリアが剥離された側の面に追加の接着性積層シートを積層する工程をさらに含み、
前記追加の接着性積層シートが、第3キャリア、第3剥離層、及び接着性材料を含む第2接着層をこの順に備え、
前記追加の接着性積層シートの前記積層体への積層が、前記第2接着層と前記積層体の前記第1キャリアが剥離された側の面とが当接するように行われる、態様13~18のいずれか一つに記載の配線板の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の接着性積層シートの一態様を示す模式断面図である。
【
図2】
図1の接着性積層シートを備えた積層体の一態様を示す模式断面図である。
【
図3】本発明の配線板の製造方法の一例を模式断面図で示す工程流れ図であり、初期の工程((i)~(iii))に相当する。
【
図4】本発明の配線板の製造方法の一例を模式断面図で示す工程流れ図であり、
図3に示される工程に続く工程((iv)~(vi))に相当する。
【
図5】本発明の配線板の製造方法の一例を模式断面図で示す工程流れ図であり、
図4に示される工程に続く工程((vii)~(ix))に相当する。
【
図6】本発明の配線板の製造方法の一例を模式断面図で示す工程流れ図であり、
図5に示される工程に続く工程((x)及び(xi))に相当する。
【
図7】キャリア付金属箔を用いた積層体の製造方法の一例を模式断面図で示す工程流れ図であり、初期の工程((i)~(iii))に相当する。
【
図8】キャリア付金属箔を用いた積層体の製造方法の一例を模式断面図で示す工程流れ図であり、
図7に示される工程に続く後期の工程((iv)~(vi))に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
接着性積層シート
本発明の接着性積層シートの一例が
図1に模式的に示される。
図1に示されるように、接着性積層シート10は、キャリア12と、剥離層16と、接着層20とをこの順に備えたものである。剥離層16はキャリア12上に設けられる。接着層20は剥離層16上に設けられ、接着性材料を含む。接着性積層シート10は、剥離層16と接着層20との間に金属層18をさらに備えるのが好ましい。所望により、接着性積層シート10は、キャリア12と剥離層16との間に中間層14をさらに有していてもよい。中間層14、剥離層16、金属層18及び接着層20の各々は、1層から構成される単層であってもよく、2層以上から構成される多層であってもよい。このように接着性積層シート10において、キャリア12上に剥離層16、及び接着性材料を含む接着層20を設けることにより、補強シートとして用いた後の剥離除去を速やかに行うことが可能となる。
【0014】
接着性積層シート10の補強シートとしての使用及びその後の剥離除去は例えば以下のようにして行うことができる。まず、接着性積層シート10の接着層20側を被着体(例えば配線層付積層体)に貼り付けることで、キャリア12等によって被着体が補強されて、ハンドリング性等が向上する。そして、キャリア12と接着層20との間に剥離層16が設けられているため、補強シートとしての役目を果たしたキャリア12(及び存在する場合には中間層14)を剥離層16の位置で剥離することができる。キャリア12等の剥離後、剥離層16(及び存在する場合には金属層18)を除去することにより、接着層20表面の殆ど又は全部が露出する。こうして露出した接着層20表面に対して、例えば剥離液を接触させる等の手法を用いることで、接着層20を除去する。このように、本発明の接着性積層シート10によれば、補強シートとして機能しうるキャリア12等の剥離後に、露出した接着層20を直接除去することができる。したがって、特許文献7(特許第7112962号公報)や特許文献8(特許第7208011号公報)等に開示されるような可溶性粘着層を溶解又は軟化する際に補強シート自体が存在し、溶解液等との接触面積が十分に大きくない従来の手法と比べて、より一層迅速にシートの剥離除去及び接着層の除去を行うことが可能となる。
【0015】
接着層20は、接着性積層シート10を被着体に所望の密着性で貼り付けることができ、かつ、使用後に被着体から除去可能な層であるのが好ましい。接着層20を介した接着性積層シート10と被着体との接着態様は特に限定されず、例えば機械的結合(すなわちアンカー効果による接着)、物理的相互作用(すなわちファンデルワールス力による接着)、化学結合等であってよい。接着層20に含まれる接着材料の例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、合成ゴム、でんぷんが挙げられ、好ましくは熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、感光性ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂又はそれらの組合せである。
【0016】
高温での加熱処理(例えば260℃で数分間)を施すような被着体(例えば配線層付積層体)の補強シートとして接着性積層シート10を用いる場合、接着層20はこのような加熱処理を経た後でも接着性を保持でき、かつ、使用後に除去可能であるのが好ましい。この観点から、接着性材料は熱硬化性樹脂を含むのが好ましい。熱硬化性樹脂の好ましい例としては、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性メラミン樹脂及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくは熱硬化性エポキシ樹脂である。熱硬化性エポキシ樹脂を含む接着層の製品例としては、東レ株式会社製のTSA-16が挙げられる。
【0017】
接着層20は1μm以上2000μm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは3μm以上1000μm以下、さらに好ましくは5μm以上800μm以下、特に好ましくは10μm以上500μm以下である。このような厚さであると、被着体への密着性を所望の範囲に制御しやすくなるとともに、補強シート等として使用した後の接着性積層シート10の剥離除去をより一層短時間で行うことができる。
【0018】
接着層20は、室温で接着性を呈するのは勿論のこと、溶解液に接触して溶解又は軟化可能な層であるのが好ましい。したがって、接着層20は溶液可溶型樹脂を含むのが好ましく、例えば酸可溶型樹脂又はアルカリ可溶型樹脂を含む。この溶液可溶型樹脂は、溶解液との接触により効率的に溶解又は軟化することができるので、接着層20の除去をより迅速に行うことが可能となる。特に、接着層20はアルカリ可溶型樹脂を含むのが好ましい。アルカリ可溶型樹脂の好ましい例としては上述した熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0019】
接着層20の形成手法は特に限定されるものではなく、公知の手法を採用可能である。例えば、接着材料を溶媒に溶かした塗布液を剥離層16(又は存在する場合には金属層18)上に塗布し、乾燥して溶媒を揮発させることにより、接着層20を形成することができる。あるいは、市販品の接着剤フィルムを剥離層16(又は存在する場合には金属層18)上に載置した後、ロールラミネーションや真空ラミネーション等の手法により貼り合わせてもよい。
【0020】
接着性積層シート10は、キャリア12の平面視面積ACに対する接着層20の平面視面積AAの比AA/ACが0.03以上1.0以下であるのが好ましく、より好ましくは0.05以上0.95以下、さらに好ましくは0.08以上0.93以下、特に好ましくは0.10以上0.90以下である。平面視面積AC及びAAは、接着性積層シート10を平面視した場合のキャリア12の面積及び接着層20の面積をそれぞれ意味する。このようにキャリア12に対して接着層20を十分大きく形成することで、接着性積層シート10を被着体に安定的かつ確実に接着することができる。そうでありながらも、接着性積層シート10は、上述のとおりキャリア12の剥離後に接着層20表面の殆ど又は全部を露出させた状態で溶解液等を接触させることができるため、短時間で接着層20を除去することができる。
【0021】
キャリア12は、接着性積層シート10を被着体に積層した場合に、被着体を補強してそのハンドリング性を向上する機能を有するのが典型的である。キャリア12は、JIS H 3130-2012の繰返し撓み式試験に準拠して測定される、ばね限界値Kb0.1が100N/mm2以上1500N/mm2以下であるのが好ましく、より好ましくは150N/mm2以上1200N/mm2以下、さらに好ましくは200N/mm2以上1000N/mm2以下である。
【0022】
参考のため、候補となりうる各種材料についてのばね限界値Kb0.1を以下の表1及び2に例示する。
【0023】
【0024】
【0025】
キャリア12は、樹脂、金属(合金や金属間化合物等を含む)、ガラス、セラミックス、シリコン又はそれらの組合せで構成されるのが好ましく、より好ましくは金属で構成される。金属製キャリアを用いることで、接着性積層シート10を補強シートとして用いた場合に、ハンドリング中におけるキャリア12の破損等を効果的に防止できることや、使用後のキャリア12のリサイクルが可能となること等の利点を有する。キャリア12を構成する金属の例としては、上記ばね限界値Kb0.1やヤング率等の観点から、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、ステンレス鋼、銅(青銅、リン銅、銅ニッケル合金、銅チタン合金等の銅合金を含む)、チタン(チタン合金を含む)、ニッケル(ニッケル合金を含む)及びジュラルミン(例えばJIS規格におけるA2017、A2024及びA7075)が挙げられるが、耐薬品性の観点からステンレス鋼が特に好ましい。樹脂の例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、及びフェノール樹脂が挙げられ、このような樹脂と繊維補強材とからなるプリプレグであってもよい。シリコンで構成されるキャリア12としては、元素としてSiを含むものであればどのようなものでもよく、SiO2基板、SiN基板、Si単結晶基板、Si多結晶基板等が適用できる。キャリア12を構成するガラスの好ましい例としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
キャリア12の形態は、被着体の湾曲を防止ないし抑制できるかぎり、シート状に限らず、フィルム、板、及び箔の他の形態であってもよく、好ましくはシート又は板の形態である。キャリア12はこれらのシート、フィルム、板、及び箔等が積層されたものであってもよい。キャリア12の典型例としては、金属シート、樹脂シート(特に硬質樹脂シート)、ガラスシートが挙げられる。キャリア12の厚さは、キャリア12の強度保持及びキャリア12のハンドリング容易性の観点から、好ましくは10μm以上1mm以下であり、より好ましくは50μm以上800μm以下、さらに好ましくは100μm以上600μm以下である。キャリア12が金属シート(例えばステンレス鋼シート)である場合、金属シートにおける、剥離層16(又は存在する場合には中間層14)が形成される側の表面の十点平均粗さRz-jis(JIS B 0601-2001に準拠して測定される)は0.05μm以上500μm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.5μm以上400μm以下、さらに好ましくは1μm以上300μm以下である。このような表面粗さであると、表面の凹凸に起因するアンカー効果によって、キャリア-接着層間における剥離強度を所望の値に制御しやすくなる。
【0027】
所望により設けられる中間層14は、キャリア12と剥離層16との間に介在して、キャリア12と剥離層16との密着性の確保に寄与する層である。中間層14を構成する金属の例としてはCu、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、In、Sn、Zn、Ga、Mo及びそれらの組合せ(以下、金属Mと称することがある)が挙げられ、好ましくはCu、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、Mo及びそれらの組合せ、より好ましくはCu、Ti、Zr、Al、Cr、W、Ni、Mo及びそれらの組合せ、さらに好ましくはCu、Ti、Al、Cr、Ni、Mo及びそれらの組合せ、特に好ましくはCu、Ti、Al、Ni及びそれらの組合せが挙げられる。中間層14は、純金属であってもよいし、合金であってもよい。中間層14を構成する金属は原料成分や成膜工程等に起因する不純物を含んでいてもよい。また、特に制限されるものではないが、中間層14の成膜後に大気に暴露される場合、それに起因して混入する酸素の存在は許容される。上記金属の含有率の上限は特に限定されず、100原子%であってもよい。中間層14は物理気相堆積(PVD)法により形成された層であるのが好ましく、より好ましくはスパッタリングにより形成された層である。中間層14は金属ターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング法により形成された層であるのが膜厚分布の均一性の観点で特に好ましい。中間層14の厚さは10nm以上1000nm以下であるのが好ましく、より好ましくは30nm以上800nm以下、さらに好ましくは60nm以上600nm以下、特に好ましくは100nm以上400nm以下である。こうした厚さとすることにより、キャリアと同等の粗度を有する中間層とすることが可能となる。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0028】
中間層14は、1層構成であってもよいし、2層以上の構成であってもよい。中間層14が1層構成である場合、中間層14はCu、Al、Ti、Ni又はそれらの組合せ(例えば合金や金属間化合物)で構成される金属を含有する層からなるのが好ましく、より好ましくはAl、Ti、又はそれらの組合せ(例えば合金や金属間化合物)であり、さらに好ましくは主としてAlを含有する層又は主としてTiを含有する層である。一方、キャリア12との密着性が十分高いとはいえない金属又は合金を中間層14に採用する場合は、中間層14を2層構成とすることが好ましい。中間層14の好ましい2層構成の例としては、キャリア12に隣接するTi含有層と、剥離層16に隣接するCu含有層とからなる積層構造が挙げられる。また、2層構成の各層の構成元素や厚みのバランスを変えると、剥離強度も変わるため、各層の構成元素や厚みを適宜調整するのが好ましい。なお、本明細書において「金属M含有層」の範疇には、キャリアの剥離性を損なわない範囲において、金属M以外の元素を含む合金も含まれるものとする。したがって、中間層14は主として金属Mを含む層ともいうことができる。上記の点から、中間層14における金属Mの含有率は50原子%以上100原子%以下であることが好ましく、より好ましくは60原子%以上100原子%以下、さらに好ましくは70原子%以上100原子%以下、特に好ましくは80原子%以上100原子%以下、最も好ましくは90原子%以上100原子%以下である。
【0029】
中間層14を合金で構成する場合、好ましい合金の例としてはNi合金が挙げられる。Ni合金はNi含有率が45重量%以上98重量%以下であるのが好ましく、より好ましくは55重量%以上90重量%以下、さらに好ましくは65重量%以上85重量%以下である。好ましいNi合金は、Niと、Cr、W、Ta、Co、Cu、Ti、Zr、Si、C、Nd、Nb及びLaからなる群から選択される少なくとも1種との合金であり、より好ましくはNiと、Cr、W、Cu及びSiからなる群から選択される少なくとも1種との合金である。中間層14をNi合金層とする場合、Ni合金ターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング法により形成された層であるのが膜厚分布の均一性の観点で特に好ましい。
【0030】
剥離層16はキャリア12、及び存在する場合には中間層14の剥離を可能ないし容易とする層である。剥離層16は、物理的に力を加える方法により剥離が可能なもののほか、レーザーにより剥離する方法(レーザーリフトオフ、LLO)により剥離が可能となるものでも良い。剥離層16がレーザーリフトオフにより剥離が可能となる材質で構成される場合、剥離層16は硬化後のレーザー光線照射により界面の接着強度が低下する樹脂で構成されてもよく、あるいはレーザー光線照射により改質がされるケイ素、炭化ケイ素、金属酸化物等の層であってもよい。また、剥離層16は、有機剥離層及び無機剥離層のいずれであってもよいが、耐熱性の観点から好ましくは無機剥離層である。有機剥離層に用いられる有機成分の例としては、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、カルボン酸等が挙げられる。窒素含有有機化合物の例としては、トリアゾール化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。一方、無機剥離層に用いられる無機成分の例としては、Ni、Mo、Co、Cr、Fe、Ti、W、P、Zn、Cu、Al、Nb、Zr、Ta、Ag、In、Sn、Gaの少なくとも一種類以上を含む金属酸化物若しくは金属酸窒化物、又は炭素層等が挙げられる。これらの中でも特に、剥離層16は炭素を含むのが好ましく、より好ましくは剥離容易性や膜形成性の点等から炭素含有層、すなわち主として炭素を含んでなる層であり、さらに好ましくは主として炭素又は炭化水素からなる層であり、特に好ましくは硬質炭素膜であるアモルファスカーボンからなる層である。この場合、剥離層16(すなわち炭素含有層)はXPSにより測定される炭素濃度が60原子%以上であるのが好ましく、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは80原子%以上、特に好ましくは85原子%以上である。炭素濃度の上限値は特に限定されず100原子%であってもよいが、98原子%以下が現実的である。剥離層16は不純物(例えば雰囲気等の周囲環境に由来する酸素、水素等)を含みうる。また、剥離層16には金属層18等の成膜手法に起因して、剥離層16として含有された金属以外の種類の金属原子が混入しうる。剥離層16として炭素含有層を用いた場合には、キャリアとの相互拡散性及び反応性が小さく、300℃を超える温度でのプレス加工等を受けても、金属層(存在する場合)と接合界面との間での高温加熱による金属結合の形成を防止して、キャリアの引き剥がし除去が容易な状態を維持することができる。この剥離層16もスパッタリング等の気相法により形成された層であるのが剥離層16中の過度な不純物を抑制する点、所望により設けられる中間層14の成膜との連続生産性の点などから好ましい。剥離層16として炭素含有層を用いた場合の厚さは1nm以上20nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上10nm以下である。こうした厚さとすることにより、キャリアと同等の粗度を有し、剥離機能を具備した剥離層とすることが可能となる。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0031】
剥離層16は、金属酸化物層及び炭素含有層のそれぞれの層を含むか、又は金属酸化物及び炭素の双方を含む層であってもよい。特に、接着性積層シート10が中間層14及び金属層18を含む場合、炭素含有層がキャリア12の安定的な剥離に寄与するとともに、金属酸化物層が中間層14及び金属層18に由来する金属元素の加熱に伴う拡散を抑制することができ、結果として例えば350℃以上もの高温で加熱された後においても、安定した剥離性を保持することが可能となる。金属酸化物層はCu、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、In、Sn、Zn、Ga、Mo又はそれらの組合せで構成される金属の酸化物を含む層であるのが好ましい。金属酸化物層は金属ターゲットを用い、酸化性雰囲気下でスパッタリングを行う反応性スパッタリング法により形成された層であるのが、成膜時間の調整によって膜厚を容易に制御可能な点から特に好ましい。金属酸化物層の厚さは0.1nm以上100nm以下であるのが好ましい。金属酸化物層の厚さの上限値としては、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは10nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。このとき、剥離層16として金属酸化物層及び炭素層が積層される順は特に限定されない。また、剥離層16は、金属酸化物層及び炭素含有層の境界が明瞭には特定されない混相(すなわち金属酸化物及び炭素の双方を含む層)の状態で存在していてもよい。
【0032】
同様に、高温での熱処理後においても安定した剥離性を保持する観点から、剥離層16は、接着層20(又は存在する場合には金属層18)に隣接する側の面がフッ化処理面及び/又は窒化処理面である金属含有層であってもよい。金属含有層にはフッ素の含有量及び窒素の含有量の和が1.0原子%以上である領域(以下、「(F+N)領域」と称する)が10nm以上の厚さにわたって存在するのが好ましく、(F+N)領域は金属含有層の接着層20側に存在するのが好ましい。(F+N)領域の厚さ(SiO2換算)は、XPSを用いて接着性積層シート10の深さ方向元素分析を行うことにより特定される値とする。フッ化処理面ないし窒化処理面は、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive ion etching)、又は反応性スパッタリング法により好ましく形成することができる。一方、金属含有層に含まれる金属元素は、負の標準電極電位を有するのが好ましい。金属含有層に含まれる金属元素の好ましい例としては、Cu、Ag、Sn、Zn、Ti、Al、Nb、Zr、W、Ta、Mo及びそれらの組合せ(例えば合金や金属間化合物)が挙げられる。金属含有層における金属元素の含有率は50原子%以上100原子%以下であることが好ましい。金属含有層は1層から構成される単層であってもよく、2層以上から構成される多層であってもよい。金属含有層全体の厚さは、10nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは30nm以上500nm以下、さらに好ましくは50nm以上400nm以下、特に好ましくは100nm以上300nm以下である。金属含有層自体の厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0033】
あるいは、剥離層16は、炭素層等に代えて、金属酸窒化物含有層であってもよい。金属酸窒化物含有層のキャリア12と反対側(すなわち接着層20側)の表面は、TaON、NiON、TiON、NiWON及びMoONからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸窒化物を含むのが好ましい。また、接着性積層シート10が金属層18を含む場合、キャリア12と金属層18との密着性を確保する点から、金属酸窒化物含有層のキャリア12側の表面は、Cu、Ti、Ta、Cr、Ni、Al、Mo、Zn、W、TiN及びTaNからなる群から選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。こうすることで、金属層18表面の異物粒子数を抑制し、かつ、高温で長時間加熱された後においても、安定した剥離強度を保持することが可能となる。金属酸窒化物含有層の厚さは5nm以上500nm以下であるのが好ましく、より好ましくは10nm以上400nm以下、さらに好ましくは20nm以上200nm以下、特に好ましくは30nm以上100nm以下である。この厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0034】
所望により設けられる金属層18は金属で構成される層である。金属層18が剥離層16と接着層20との間に介在することで、キャリア12(及び存在する場合には中間層14)をより一層スムーズに剥離することができる。金属層18は、1層構成であってもよいし、2層以上の構成であってもよい。金属層18を構成する金属の好ましい例としては、Ti、Cu、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、In、Sn、Zn、Ga、Mo及びそれらの組合せが挙げられ、より好ましくはCu、Ti、Al、Nb、Zr、Cr、W、Ta、Co、Ag、Ni、Mo及びそれらの組合せ、さらに好ましくはCu、Ti、Al、Cr、Ni、Mo及びそれらの組合せ、特に好ましくはCu、Ti、Al、Ni及びそれらの組合せである。金属層18は、純金属であってもよいし、合金であってもよい。金属層18を構成する金属は原料成分や成膜工程等に起因する不純物を含んでいてもよい。また、上記金属の含有率の上限は特に限定されず、100原子%であってもよい。金属層18は物理気相堆積(PVD)法により形成された層であるのが好ましく、より好ましくはスパッタリングにより形成された層である。金属層18の厚さ(全体厚さ)は10nm以上1000nm以下であることが好ましく、好ましくは20nm以上900nm以下、より好ましくは30nm以上800nm以下、さらに好ましくは40nm以上700nm以下、特に好ましくは50nm以上500nm以下である。こうすることで、金属層18の除去を極めて短時間に行うことができ、補強シートとして用いた後の接着性積層シート10の剥離除去をより一層速やかに行うことができる。金属層18の厚さは、層断面を透過型電子顕微鏡のエネルギー分散型X線分光分析器(TEM-EDX)で分析することにより測定される値とする。
【0035】
中間層14(存在する場合)、剥離層16、及び金属層18(存在する場合)の各層の形成は、物理気相堆積(PVD)法により行われるのが好ましい。物理気相堆積(PVD)法の例としては、スパッタリング法、真空蒸着法、及びイオンプレーティング法が挙げられるが、0.05nm以上5000nm以下といった幅広い範囲で膜厚制御できる点、広い幅ないし面積にわたって膜厚均一性を確保できる点等から、最も好ましくはスパッタリング法である。特に、中間層14(存在する場合)、剥離層16、及び金属層18(存在する場合)の全ての層をスパッタリング法により形成することで、製造効率が格段に高くなる。したがって、中間層14(存在する場合)、剥離層16、及び金属層18(存在する場合)はいずれも物理気相堆積(PVD)膜、すなわち物理気相堆積(PVD)法により形成された膜であるのが好ましく、より好ましくはスパッタ膜、すなわちスパッタリング法により形成された膜である。
【0036】
物理気相堆積(PVD)法による成膜は公知の気相成膜装置を用いて公知の条件に従って行えばよく特に限定されない。例えば、スパッタリング法を採用する場合、スパッタリング方式は、マグネトロンスパッタリング、2極スパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法等、公知の種々の方法であってよいが、マグネトロンスパッタリングが、成膜速度が速く生産性が高い点で好ましい。スパッタリングはDC(直流)及びRF(高周波)のいずれの電源で行ってもよい。また、ターゲット形状も広く知られているプレート型ターゲットを使用することができるが、ターゲット使用効率の観点から円筒形ターゲットを用いることが望ましい。ターゲットの純度は99.9%以上が好ましい。スパッタリングに用いるガスとしては、アルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。アルゴンガスの流量はスパッタリングチャンバーサイズ及び成膜条件に応じて適宜決定すればよく特に限定されない。また、異常放電やプラズマ照射不良などの稼働不良なく、連続的に成膜する観点から成膜時の圧力は0.1Pa以上20Pa以下の範囲で行うことが好ましい。この圧力範囲は、装置構造、容量、真空ポンプの排気容量、成膜電源の定格容量等に応じ、成膜電力、アルゴンガスの流量を調整することで設定すればよい。また、スパッタリング電力は成膜の膜厚均一性、生産性等を考慮してターゲットの単位面積あたり0.05W/cm2以上10.0W/cm2以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0037】
接着性積層シート10が金属層18等を有する場合、金属層18、所望により中間層14、及び所望により剥離層16(すなわち少なくとも金属層18、例えば金属層18及び中間層14)が、キャリア12の端面にまで延出することにより、当該端面が被覆されるのが好ましい。すなわち、キャリア12の表面のみならず端面も少なくとも金属層18で被覆されていることが好ましい。端面も被覆することで、配線基板の製造工程等におけるキャリア12への薬液の浸入を防止することができる他、接着性積層シート10をハンドリングする際の側端部における剥離によるチッピング、すなわち剥離層16上の皮膜(すなわち金属層18)の欠けを強固に防止させることができる。キャリア12の端面における被覆領域は、キャリア12の表面から厚さ方向(すなわちキャリア表面に対して垂直な方向)に向かって、好ましくは0.1mm以上の領域、より好ましくは0.2mm以上の領域、さらに好ましくはキャリア12の端面全域にわたるものとする。
【0038】
接着性積層シート10全体の厚さは特に限定されないが、好ましくは100μm以上5000μm以下、より好ましくは130μm以上4800μm以下、さらに好ましくは150μm以上4500μm以下、特に好ましくは200μm以上4000μm以下である。接着性積層シート10のサイズは特に限定されないが、好ましくは直径10cm以上又は10cm角以上、より好ましくは直径20cm以上又は20cm角以上、さらに好ましくは直径25cm以上又は25cm角以上である。接着性積層シート10のサイズの上限は特に限定されないが、直径1000cm又は1000cm角が上限の1つの目安として挙げられる。また、接着性積層シート10は、それ自体単独でハンドリング可能な形態である。
【0039】
積層体
本発明の好ましい態様によれば、接着性積層シートを備えた積層体が提供される。本発明の積層体の一例を
図2に示す。
図2に示されるように、積層体30は、接着性積層シート10と、接着性積層シート10の接着層20上に設けられる樹脂含有層40と、樹脂含有層40上に設けられる追加金属層38とを備える。所望により、積層体30は、追加金属層38上に設けられる追加剥離層36、及び追加剥離層36上に設けられる追加キャリア32をさらに備えていてもよい。また、積層体30は、追加剥離層36と追加キャリア32との間に追加中間層34をさらに備えていてもよい。
【0040】
積層体30は、後述する配線板の製造方法において、積層体50に接着性積層シート70を積層した後の中間製品、あるいは第1キャリア52等を剥離した後の中間製品に相当するものである。したがって、後述する積層体50の好ましい態様は、積層体30の好ましい態様としてそのまま当てはまる。
【0041】
配線板の製造方法
本発明の別の好ましい態様によれば、接着性積層シートを用いた配線板の製造方法が提供される。この方法は、(1)積層体の用意、(2)接着性積層シートの積層、(3)第1キャリアの剥離、(4)所望により行われる追加の接着性積層シートの積層、(5)第2キャリアの剥離、(6)第2剥離層の除去、及び(7)接着層の除去の各工程を含む。以下、図面を参照しながら、工程(1)~(7)の各々について説明する。
【0042】
(1)積層体の用意
本発明の配線板の製造方法の一例を
図3~6に示す。まず、
図3(i)に示されるように積層体50を用意する。この積層体50は、第1キャリア52、所望により第1中間層54(任意の層)、第1剥離層56、第1金属層58、及び樹脂含有層60をこの順に備える。第1キャリア52、第1中間層54、第1剥離層56及び第1金属層58は、特許文献2(国際公開第2017/150283号)及び特許文献3(国際公開第2017/150284号)に開示されるような、キャリア付金属箔に準じたものとすればよく、特に限定されない。あるいは、これらの各種層は、接着性積層シート10に関して上述したキャリア12、中間層14、剥離層16及び金属層18の好ましい態様に準じたものとしてもよい。
【0043】
樹脂含有層60は樹脂を含む層であり、好ましくは再配線層を含む。本発明において、再配線層とは、絶縁層と当該絶縁層の内部及び/又は表面に形成された配線層とを含む層を意味する。後述するとおり、樹脂含有層60は、第1金属層58上に設けられる第1再配線層60a、第1再配線層60a上に設けられるモールド樹脂層60b、及びモールド樹脂層60b上に設けられる第2再配線層60cを含むのが好ましい。モールド樹脂層60bはチップ等の電子素子を封止するための樹脂を含む層である。したがって、モールド樹脂層60bは、電子素子を包埋しうる。電子素子の例としては、半導体素子、チップコンデンサ、抵抗体等が挙げられる。樹脂含有層60(典型的にはモールド樹脂層60b)に含まれる樹脂の好ましい例としてはエポキシ樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。
【0044】
樹脂含有層60の好ましい形成方法の一例を
図7及び8に示す。まず、第1キャリア52上に第1中間層54(任意の層)、第1剥離層56及び第1金属層58をこの順に備えたキャリア付金属箔を用意する(
図7(i))。このキャリア付金属箔の第1金属層58の表面に、コアレスビルドアップ法により配線層及び絶縁層を形成して第1再配線層60aを得る(
図7(ii))。具体的には、第1金属層58にフォトレジストを積層して、所定のパターンとなるように露光及び現像を行い、レジストパターンを形成する。そして、レジストパターン間に電気めっき(例えば電気銅めっき)を施し、レジストパターンを剥離した後、レジストパターンの剥離により露出した第1金属層58の不要部分(すなわち配線パターンを形成しない部分)をエッチングにより除去して、第1配線層を形成する。その後、キャリア付金属箔の第1配線層が形成された面に絶縁層及び第n配線層(nは2以上の整数)を交互に形成する。こうして、絶縁層と当該絶縁層の内部及び/又は表面に形成された配線層とを含む第1再配線層60aを得る。所望により、第1再配線層60a上にピラー(柱状電極)Pの形成やチップCの搭載等を行うこともできる(
図7(iii))。ピラーPやチップC等を絶縁樹脂で包埋することにより、モールド樹脂層60bを形成してもよい(
図8(iv))。また、モールド樹脂層60bを表面研磨することにより、ピラーP等をモールド樹脂層60bから露出させてもよい(
図8(v))。表面研磨の好ましい例としては、砥石を用いた研削加工、及び化学機械研磨(CMP)が挙げられる。その後、上述したコアレスビルドアップ法によりモールド樹脂層60b表面に第2再配線層60cを形成する(
図8(vi))。こうして、キャリア付金属箔の第1金属層58上に、第1再配線層60a、モールド樹脂層60b及び第2再配線層60cを含む樹脂含有層60を備えた積層体50を好ましく作製することができる。
【0045】
所望により、後述する接着性積層シートを積層する前に、第1キャリア52、第1中間層54、第1剥離層56、第1金属層58及び/又は樹脂含有層60の周縁をトリミングしてもよい(
図3(ii))。こうすることで、トリミングされた部分をきっかけとして、後述する第1キャリア52等の剥離をより一層容易に行うことができる。トリミングの手法は特に限定されるものではなく、例えば、
図3(ii)に示されるような切削工具T(例えばカッター)、あるいは工作機械(例えば切削ブレード)を用いることができる。
【0046】
(2)接着性積層シートの積層
積層体50に接着性積層シート70を積層する(
図3(iii))。接着性積層シート70は、第2キャリア72、所望により第2中間層74(任意の層)、第2剥離層76、所望により第2金属層78(任意の層)、及び接着性材料を含む接着層80をこの順に備える。そして、接着層80と樹脂含有層60とが当接するように接着性積層シート70を積層体50に積層する。こうすることで、樹脂含有層60が第2キャリア72等によって補強され、第1キャリア52の剥離時等に樹脂含有層60が局部的に大きく湾曲することを防止又は抑制できる。特に、樹脂含有層60が再配線層を含む場合には、再配線層の表面及び/又は内部の配線層の断線や剥離を回避して、再配線層の接続信頼性を向上することができる。また、湾曲が効果的に防止ないし抑制されることで、再配線層表面の平坦性(コプラナリティ)を向上することもできる。なお、接着性積層シート70を積層体50に積層する際、接着層80と樹脂含有層60との間に更なる剥離層(図示せず)を介在させてもよい。こうすることで、後述する第1キャリア52の剥離後、第2キャリア72を剥離する際に、更なる剥離層を起点として第2キャリア72等を剥離除去することができ、樹脂含有層60表面に残存し得る接着層80の残渣の量を顕著に低減させることができる。更なる剥離層の好ましい態様は特に限定されるものではなく、例えば上述した剥離層16の好ましい態様に準じたものとすればよい。
【0047】
上述した接着性積層シート10の好ましい態様は、接着性積層シート70についてもそのまま当てはまる。すなわち、第2キャリア72、第2中間層74、第2剥離層76、第2金属層78及び接着層80はそれぞれ、上述したキャリア12、中間層14、剥離層16、金属層18及び接着層20に準じたものとすればよい。接着層80が接着材料として熱硬化性樹脂を含む場合、接着性積層シート70を積層体50に積層した後、硬化処理(キュア処理)を施すのが好ましい。硬化処理の条件は熱硬化性樹脂の種類等に応じて適宜決定することができ、特に限定されない。
【0048】
第2キャリア72は第1キャリア52よりもビッカース硬度が低いものであるのが好ましい。これにより、第2キャリア72自体が撓むことで、積層又は剥離時に発生しうる応力を上手く逃がすことができ、その結果、樹脂含有層60の湾曲をより一層効果的に防止又は抑制できる。第2キャリア72のビッカース硬度は第1キャリア52のビッカース硬度の2%以上99%以下であるのが好ましく、より好ましくは6%以上90%以下、さらに好ましくは10%以上85%以下である。好ましくは、第2キャリア72のビッカース硬度が50HV以上700HV以下であり、かつ、第1キャリア52のビッカース硬度が500HV以上3000HV以下であり、より好ましくは、第2キャリア72のビッカース硬度が150HV以上550HV以下であり、かつ、第1キャリア52のビッカース硬度が550HV以上2500HV以下であり、さらに好ましくは第2キャリア72のビッカース硬度が200HV以上500HV以下であり、かつ、第1キャリア52のビッカース硬度が600HV以上2000HV以下である。なお、本明細書においてビッカース硬度はJIS Z 2244-2009に記載される「ビッカース硬さ試験」に準拠して測定されるものである。
【0049】
参考のため、候補となりうる各種材料のビッカース硬度HVを以下に例示する:サファイアガラス(2300HV)、超硬合金(1700HV)、サーメット(1650HV)、石英(水晶)(1103HV)、SKH56(高速度工具鋼鋼材、ハイス)(722HV)、強化ガラス(640HV)、SUS440C(ステンレス鋼)(615HV)、SUS630(ステンレス鋼)(375HV)、チタン合金60種(64合金)(280HV前後)、インコネル(耐熱ニッケル合金)(150HV以上280HV以下)、S45C(機械構造用炭素鋼)(201HV以上269HV以下)、ハステロイ合金(耐食ニッケル合金)(100HV以上230HV以下)、SUS304(ステンレス鋼)(187HV)、SUS430(ステンレス鋼)(183HV)、鋳鉄(160HV以上180HV以下)、チタン合金(110HV以上150HV以下)、黄銅(80HV以上150HV以下)、及び青銅(50HV以上100HV以下)。
【0050】
(3)第1キャリアの剥離
接着性積層シート70が積層された積層体50から第1キャリア52(及び存在する場合には第1中間層54)を第1剥離層56で剥離する(
図4(iv))。このとき、第2キャリア72等が樹脂含有層60を補強していることで、第1キャリア52等の剥離時に樹脂含有層60が局部的に大きく湾曲するのを防止できる。すなわち、第2キャリア72等は、第1キャリア52が剥離される間、引き剥がし力に抗すべく樹脂含有層60を補強し、湾曲を効果的に防止又は抑制することができる。第1キャリア52の剥離は、レーザーにより剥離するレーザーリフトオフ法、又は機械を用いて物理的に力を加えることにより剥離する機械的方法により行われるのが好ましい。
【0051】
所望により、第1キャリア52を剥離した後の積層体50から、残存した第1剥離層56及び第1金属層58を除去してもよい(
図4(v))。第1剥離層56及び第1金属層58の除去方法は特に限定されるものではなく、第1剥離層56及び第1金属層58の材質等に応じて公知の手法を適宜選択すればよい。例えば、第1剥離層56が炭素層である場合、積層体に対して酸素プラズマ処理を行うことにより、好ましく第1剥離層56を除去することができる。また、第1金属層58の除去は、例えば第1金属層58を溶解可能なエッチング液を接触させることにより行うことができる。
【0052】
第1剥離層56及び第1金属層58の除去後に、樹脂含有層60(例えば第1再配線層60a)に対して、公知の手法で集積型受動デバイスI等の各種電子素子やはんだボールB等を搭載してもよく(
図4(vi)、その後に樹脂封止を行ってもよい。また、後述する第2キャリア72の剥離をスムーズに行うべく、切削工具T等を用いて、接着性積層シート70(例えば第2キャリア72、第2中間層74、第2剥離層76及び/又は第2金属層78)の周縁をトリミングしてもよい(
図5(vii))。
【0053】
所望により、接着性積層シート70の積層後、後述する第2キャリア72の剥離前に、積層体50に対して100℃以上350℃以下(好ましくは200℃以上300℃以下)の加熱を行ってもよい。このような加熱処理は、例えば上述した各種電子素子のリフローはんだ付け等を目的として行われうる。
【0054】
(4)追加の接着性積層シートの積層(任意工程)
所望により、第1キャリア52の剥離後、後述する第2キャリア72の剥離前に、積層体50の第1キャリア52が剥離された側の面に追加の接着性積層シート90を積層する(
図5(viii))。追加の接着性積層シート90は、第3キャリア92、所望により第3中間層94(任意の層)、第3剥離層96、所望により第3金属層98(任意の層)、及び接着性材料を含む第2接着層100をこの順に備える。そして、追加の接着性積層シート90の積層体50への積層が、第2接着層100と積層体50の第1キャリア52が剥離された側の面とが当接するように行われる。こうすることで、第2キャリア72剥離後における積層体のハンドリング性が向上するとともに、樹脂含有層60の局所的な湾曲をより一層防止又は抑制できる。なお、第1キャリア52等の剥離後に、樹脂含有層60(例えば第1再配線層60a)に対して集積型受動デバイスIやはんだボールB等を搭載した場合、
図5(viii)に示されるように、はんだボールB等が第2接着層100で埋め込まれるように、追加の接着性積層シート90を積層するのが好ましい。したがって、第2接着層100の厚さは、樹脂含有層60に搭載されるはんだボールB等の高さよりも大きいのが好ましい。
【0055】
上述した接着性積層シート10の好ましい態様は、追加の接着性積層シート90についてもそのまま当てはまる。すなわち、第3キャリア92、第3中間層94、第3剥離層96、第3金属層98及び第2接着層100はそれぞれ、上述したキャリア12、中間層14、剥離層16、金属層18及び接着層20に準じたものとすればよい。
【0056】
(5)第2キャリアの剥離
第1キャリア52が剥離された積層体50から第2キャリア72を第2剥離層76で剥離する(
図5(ix))。こうして補強シートとしての役目を果たした第2キャリア72を先に剥離除去することで、後述する第2剥離層76、第2金属層78(存在する場合)及び接着層80の除去をスムーズに行うことが可能となる。
【0057】
第2キャリア72の剥離手法は第2剥離層76の材質等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。例えば上述したレーザーリフトオフ法又は機械的方法を好ましく採用することができる。
【0058】
(6)第2剥離層の除去
第2キャリア72が剥離された積層体50から第2剥離層76(及び存在する場合には第2金属層78)を除去し、それにより接着層80を露出させる(
図6(x))。第2剥離層76の除去方法は特に限定されるものではなく、第2剥離層76の材質等に応じて公知の手法を適宜選択すればよい。例えば、第2剥離層76が炭素層である場合、積層体50に対して酸素プラズマ処理を行うことにより、好ましく第2剥離層76を除去することができる。接着性積層シート70が第2金属層78を有し、積層体50に残存する第2剥離層76の量が少ない場合等には、第2剥離層76を単独で除去することに代えて、第2剥離層76及び第2金属層78の除去を同時に行ってもよい。つまり、第2金属層78を先行して除去することで、第2剥離層76の除去を併せて行うこともできる。第2金属層78の除去は、例えば第2金属層78を溶解可能なエッチング液を接触させることにより行うことができる。
【0059】
(7)接着層の除去
第2剥離層76等が除去された積層体50から接着層80を除去する(
図6(xi))。接着層80の除去方法は特に限定されるものではなく、接着層80の材質等に応じて公知の手法を適宜選択すればよい。例えば、接着層80を溶解可能な溶液を接触させることにより、接着層80を溶解又は軟化させて除去することができる。いずれにしても、本発明によれば、補強シート(第2キャリア72等)が介在することなく接着層80を直接除去することができるため、接着性積層シート70の短時間での剥離除去を実現することができる。
【0060】
接着層80の除去後、露出した樹脂含有層60(例えば第2再配線層60c)上にチップ等の電子素子を搭載する工程等をさらに行い、配線板としてもよい。上述した樹脂含有層60(例えばモールド樹脂層60b)に包埋されうるチップCと併せて、複数のICパッケージを積層して基板上に実装することで集積度を向上することができる。また、接着性積層シート70と同様の手法により第3キャリア92、第3中間層94(存在する場合)、第3剥離層96及び第3金属層98(存在する場合)及び第2接着層100を除去してもよい。いずれにしても、積層体50に対して公知の種々の処理を行うことで、最終製品としての配線板とすることができる。
【0061】
任意工程として想定される樹脂含有層60に搭載される電子素子の例としては、上述のとおり半導体素子、チップコンデンサ、抵抗体等が挙げられる。電子素子搭載の方式の例としては、フリップチップ実装方式、ダイボンディング方式等が挙げられる。フリップチップ実装方式は、電子素子の実装パッドと、再配線層等との接合を行う方式である。この実装パッド上にはピラーやはんだバンプ等が形成されてもよく、実装前に再配線層表面に封止樹脂膜であるNCF(Non-Conductive Film)等を貼り付けてもよい。接合は、はんだ等の低融点金属を用いて行われるのが好ましいが、異方導電性フィルム等を用いてもよい。ダイボンディング接着方式は、再配線層に対して、電子素子の実装パッド面と反対側の面を接着する方式である。この接着には、熱硬化樹脂と熱伝導性の無機フィラーを含む樹脂組成物である、ペーストやフィルムを用いるのが好ましい。
【実施例】
【0062】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0063】
例1
キャリア付金属箔上に樹脂含有層を積層して積層体を得た後、この積層体に対して接着性積層シートを貼り付けた。その後、接着性積層シート等を剥離除去した。具体的には以下のとおりである。
【0064】
(1)積層体の用意
第1キャリア52として、100mm角で厚さ1.1mmのガラス基板(材質:ソーダライムガラス)を用意した。この第1キャリア52上に、2層構成の第1中間層54としてのチタン層(厚さ50nm)及び銅層(厚さ200nm)、第1剥離層56としてのアモルファスカーボン層(厚さ6nm)、並びに2層構成の第1金属層58としてのチタン層(厚さ100nm)及び銅層(厚さ300nm)をスパッタリングでこの順に成膜して、キャリア付金属箔を得た。このとき、第1金属層58をキャリア12の端面にまで延出するように成膜することで、第1剥離層56の端部を被覆した。
【0065】
キャリア付金属箔の第1金属層58(金属箔)上に、樹脂含有層60として100mm角で厚さ30μmの絶縁層(材質:ポリイミド樹脂)を形成して、積層体50とした(
図3(i)参照)。その後、カッターを用いて積層体50の周縁部(幅10mm)をトリミングした(
図3(ii)参照)。
【0066】
(2)接着性積層シートの積層
第2キャリア72として、130mm角で厚さ0.3mmのステンレス鋼製シートを用意した。この第2キャリア72上に、2層構成の第2中間層74としてのチタン層(厚さ50nm)及び銅層(厚さ200nm)、第2剥離層76としてのアモルファスカーボン層(厚さ6nm)、並びに2層構成の第2金属層78としてのチタン層(厚さ100nm)及び銅層(厚さ300nm)をスパッタリングでこの順に成膜した。その後、第2金属層78上に、接着層80として100mm角で厚さ20μmの熱硬化性エポキシ樹脂フィルム(東レ株式会社製、TSA-16)を載置し、圧力0.5MPa及び80℃の条件で1分間真空ラミネートを行い、接着性積層シート70を得た。
【0067】
接着層80と樹脂含有層60とが当接するように、得られた接着性積層シート70を積層体50に積層し、圧力0.2MPa及び80℃の条件で1分間真空ラミネートを行った。その後、キュア処理として、大気雰囲気下にて100℃で1時間の熱処理を行った後、さらに170℃で2時間の熱処理を行った。こうして、接着性積層シート70を積層体50に積層した(
図3(iii)参照)。
【0068】
(3)加熱処理
接着性積層シート70積層後の積層体50に対して、はんだリフローを想定した加熱処理を行った。この加熱処理は、窒素雰囲気下にて260℃で1分間行った。
【0069】
(4)第1キャリアの剥離
加熱処理後の積層体50から第1キャリア52を第1中間層54とともに剥離した(
図4(iv)参照)。すなわち、接着性積層シート70を固定した状態で、第1キャリア52と樹脂含有層60とが離間する方向に力を加えることにより、第1キャリア52及び第1中間層54を引き剥がした。
【0070】
(5)第2キャリアの剥離、
第1キャリア52が剥離された積層体50から第2キャリア72を第2中間層74とともに剥離した(
図5(ix)参照)。すなわち、積層体50の樹脂含有層60側(第1キャリア52が剥離された側)を固定した状態で、第2キャリア72と樹脂含有層60とが離間する方向に力を加えることにより、第2キャリア72及び第2中間層74を引き剥がした。
【0071】
(6)第2剥離層及び第2金属層の除去
積層体50に残存した第2剥離層76をアッシングにより除去した。すなわち、アッシング用チャンバー内に積層体50を載置し、酸素ガスを導入後、プラズマ生成用電力により酸素を活性化させた。これにより、第2剥離層76の主成分である炭素を活性化した酸素と結合させて二酸化炭素とすることにより、第2剥離層76を反応生成ガスとして除去した。その後、積層体50の表面に露出した第2金属層78をエッチングにより除去した。具体的には、過酸化水素系アルカリエッチング液を用いて約40℃で1分間処理することによりTi層を除去するとともに、硫酸-過酸化水素系エッチング液を用いて約25℃で1分間処理することによりCu層を除去した。こうして、接着層80を露出させた(
図6(x)参照)。
【0072】
(7)接着層の除去
第2剥離層76及び第2金属層78を除去した後の積層体50に対して、レジスト剥離液(東京応化工業株式会社製、ST-120)を50℃で3分間浸漬させた。これにより、積層体50表面に露出した接着層80が膨潤しながら溶解した(
図6(xi)参照)。このように、本発明の接着性積層シートによれば、補強シートとして用いた後の剥離除去を速やかに実施できることが確認された。
【要約】
補強シートとして用いた後の剥離除去を速やかに行うことが可能な、接着性積層シートが提供される。この接着性積層シートは、キャリアと、前記キャリア上に設けられる剥離層と、前記剥離層上に設けられ、接着性材料を含む接着層とを備える。