(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】電力ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/42 20060101AFI20250408BHJP
【FI】
H01B7/42 C
(21)【出願番号】P 2025008835
(22)【出願日】2025-01-22
【審査請求日】2025-02-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323004813
【氏名又は名称】株式会社TOTOKU
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 毅安
(72)【発明者】
【氏名】山崎 哲
(72)【発明者】
【氏名】今村 博人
(72)【発明者】
【氏名】仲條 裕一
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114582548(CN,A)
【文献】特開2022-41490(JP,A)
【文献】特開2015-100188(JP,A)
【文献】特開2018-125118(JP,A)
【文献】実開昭55-21546(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と前記導体を被覆する耐熱樹脂層と前記耐熱樹脂層を絶縁被覆する外被部を備え、
前記外被部は、内環状部と前記内環状部から放射状に延びる3つ以上のリブ部と前記リブ部の外端に連結する外環状部とが一体構造の熱可塑性樹脂からなり、前記内環状部と前記リブ部と前記外環状部とによって囲まれた流路が前記リブ部と同数で形成されており、
前記流路に冷媒を流すことで通電時の温度上昇を抑える構成であること
を特徴とする電力ケーブル。
【請求項2】
前記耐熱樹脂層は押出成形されており、前記耐熱樹脂層の厚さは0.4~1.0mmであること
を特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル。
【請求項3】
前記耐熱樹脂層はポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレンまたはテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなること
を特徴とする請求項2に記載の電力ケーブル。
【請求項4】
電動車両における給電部からバッテリへの給電ラインを構成すること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電力ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電用の電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却管を設けた給電ケーブルが提案されている(特許文献1:特開2018-18748号公報)。また、中空コア体に形成された空隙部に冷媒を流す同軸ケーブルが提案されている(特許文献2:特開2015-100188号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-18748号公報
【文献】特開2015-100188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の給電ケーブルは冷却管が電力線の中心に設けられているため、通電時の導体発熱の冷却に必要な断面積を十分に確保することができない。また、横断面が非軸対称形状なので、特許文献2のような軸対称形状の同軸ケーブルに比べて可撓性に乏しい。
【0005】
電動車両への給電時間を短くするためには導体に流す電力量を大きくする必要がある。一方で、電力量を大きくすると導体発熱が大きくなり、導体発熱が過大になると外被が溶融して絶縁性能を維持できなくなるという課題がある。例えば、突入電流などの過度電流に起因して導体発熱が一時的に上昇し、中空コア体の耐熱温度を超えることがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、突入電流などの過度電流に起因する導体発熱に耐えられる耐熱構造にしつつ、導体発熱を速やかに冷却可能な冷却構造を有する電力ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力ケーブルは、導体と前記導体を被覆する耐熱樹脂層と前記耐熱樹脂層を絶縁被覆する外被部を備える。前記外被部は、内環状部と前記内環状部から放射状に延びる3つ以上のリブ部と前記リブ部の外端に連結する外環状部とが一体構造の熱可塑性樹脂からなり、前記内環状部と前記リブ部と前記外環状部とによって囲まれた流路が前記リブ部と同数で形成されている。前記電力ケーブルは、前記流路に冷媒を流すことで通電時の温度上昇を抑える構成であることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、電力ケーブルの外被部に冷却のための流路を設けたことで、通電時の導体発熱の冷却に必要な断面積を十分に確保することができる。尚且つ、導体を被覆する耐熱樹脂層が外被部への熱伝導を抑制するので当該外被部の熱溶融を防止できる。よって、突入電流などの過度電流に起因する導体発熱に耐えられる耐熱構造にしつつ、導体発熱を速やかに冷却可能な冷却構造にできる。
【0009】
前記耐熱樹脂層は押出成形されており、前記耐熱樹脂層の厚さは0.4~1.0mmであることが好ましい。押出成形によって均等な厚さの耐熱樹脂層が形成される。前記耐熱樹脂層の径方向の厚さを0.4mm以上にすることで成形性が良くなるとともに耐熱性能を確保できる。前記耐熱樹脂層の径方向の厚さを1.0mm以下にすることで電力ケーブルが細径になるとともに材料コストを抑えることができる。
【0010】
前記耐熱樹脂層はポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)からなることが好ましい。または、前記耐熱樹脂層はフッ素樹脂からなることが好ましい。前記耐熱樹脂層はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)からなることが好ましい。これらの樹脂は、いずれも耐熱温度が150℃超であるので、過電流による導体発熱に耐えることができる。特に、PAEK、PPS、PAI、PI、PBI、PTFE、PFA、FEPは耐熱温度が200℃超であるので、より高温域の導体発熱においても十分に耐えることができる。
【0011】
本構成によれば、優れた可撓性を有しつつ、通電電流が300A以上の給電方式、通電電力が3000VAの給電方式、CHAdeMO、SAEなどの既知の充電規格に容易に対応できる。一例として、本発明に係る電力ケーブルは、電動車両における給電部からバッテリへの給電ラインを構成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、突入電流などの過度電流に起因する導体発熱に耐えられる耐熱構造にしつつ、導体発熱を速やかに冷却可能な冷却構造を有する電力ケーブルが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電力ケーブルの例を模式的に示す横断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の電力ケーブルの例を模式的に示す概略の構造図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る電力ケーブルの適用例を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態に係る電力ケーブル1は、一例として
図3に示すように、電動車両51における給電部51aからバッテリ51bへの給電ラインを構成する。電力ケーブル1は、ケーブル両端にそれぞれ外部との接続用コネクタが取付けられる。そして、コネクタを介して冷媒がケーブル内を流動する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0015】
[電力ケーブル]
図1に示すように、本実施形態の電力ケーブル1は、導体2と、導体2を絶縁被覆する耐熱樹脂層3と、耐熱樹脂層3を絶縁被覆する外被部4を備える。外被部4は、内環状部4aと、内環状部4aから放射状に延びる3つ以上のリブ部4bと、リブ部4bの外端に連結する外環状部4cとが一体構造の熱可塑性樹脂からなる。そして、内環状部4aとリブ部4bと外環状部4cとによって囲まれた流路5がリブ部4bと同数で形成されている。放熱効率と機械的強度を両立させるために、リブ部4bの数は3~9に設定される。リブ部4bの数を3以上にすることで外被部4の機械的強度を十分確保できる。リブ部4bの数を9以下にすることで冷媒を流して冷却するために必要な流路5の断面積を十分に確保することができる。より好ましくは、リブ部4bの数は5~7に設定される。つまり、流路5の数は5~7に設定されることが好ましい。
【0016】
耐熱樹脂層3はポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)からなることが好ましい。または、耐熱樹脂層3はフッ素樹脂からなることが好ましい。耐熱樹脂層3を導体2と内環状部4aとの中間に設けることで、導体2から外被部4への熱伝導を抑制して外被部4の熱溶融を防止できる。尚且つ、外被部4は、成形性に優れた汎用の樹脂成形品を用いて材料コストを抑えることができる。
【0017】
外被部4は、オレフィン樹脂やフッ素樹脂などの熱可塑性樹脂が適用できる。ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂は材料コストを抑えることができるため好ましい。架橋ポリエチレンは耐熱温度が120℃であるので、特に好ましい。
【0018】
一例として、外被部4は、内環状部4aの径方向の厚さが0.6~2.4mmであり、外環状部4cの径方向の厚さが0.6~2.4mmであり、リブ部4bの周方向の厚さが0.7~2.1mmである。この構成により、細径かつ堅牢かつ可撓性に優れた構成にできる。なお、上記構成に限られない。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の電力ケーブル1は、流路5に冷媒7を流すことで、通電時の外被部4の温度上昇を抑える構成である。一例として、冷媒7は不凍液または不活性液体若しくは水である。一例として、車載のバッテリ51bに用いられる冷却液を分流して冷媒7にする。そして、冷媒7を電力ケーブル1の一端側から取り込んで流動させて電力ケーブル1の他端側から吐出させて車載のバッテリ51bに用いられる冷却装置に還流する。これにより、電力ケーブル1を冷却できる。
図2における矢印は、冷媒7の進行方向を示している。上記以外の構成として、冷媒7を空気または不活性ガスにする場合がある。一例として、外気と同じ成分の冷媒7を、電力ケーブル1の一端側から取り込んで流動させて、電力ケーブル1の他端側から外部に放出する。
【0020】
導体2は単線としてもよい。導体2が単線の場合は、銅や銅合金またはアルミニウムやアルミニウム合金からなる金属線の外周に酸化皮膜などの絶縁皮膜が形成されている単線になる。導体2は撚線としてもよい。導体2が撚線の場合は、銅や銅合金またはアルミニウムやアルミニウム合金からなる金属線の外周に酸化物皮膜などの絶縁皮膜が形成されている素線の集合体になる。一例として、導体2は、素線を撚った第1撚線と第1撚線を撚った第2撚線と第2撚線を撚った第3撚線とを有する複合撚り構造である。絶縁皮膜は、はんだ付けに支障がない材質からなることが好ましい。一例として、絶縁皮膜は、ポリウレタンやポリエステルなどからなる。
【0021】
一例として、導体2は、ロープ撚りになっている。ロープ撚りは、撚線において、最終となる(n+1)回目の撚り方向を、第1回目の撚り方向から第n回目までの撚り方向とは逆方向にした撚り構造である。ここで、nは2以上の自然数である。好ましくは、nは2または3である。ロープ撚りによって、優れた形状安定性が得られる。
【0022】
一例として、導体2は、複数の素線をZ撚りして第1撚線とし、複数の第1撚線をZ撚りして第2撚線とし、複数の第2撚線をS撚りして第3撚線とする。また一例として、複数の素線をZ撚りして第1撚線とし、複数の第1撚線をZ撚りして第2撚線とし、複数の第2撚線をZ撚りして第3撚線とし、複数の第3撚線をS撚りして第4撚線とする。また一例として、複数の素線をS撚りして第1撚線とし、複数の第1撚線をS撚りして第2撚線とし、複数の第2撚線をZ撚りして第3撚線とする。また一例として、複数の素線をS撚りして第1撚線とし、複数の第1撚線をS撚りして第2撚線とし、複数の第2撚線をS撚りして第3撚線とし、複数の第3撚線をZ撚りして第4撚線とする。ここで、Z撚りは左撚りと同義であり、S撚りは右撚りと同義である。
【0023】
一例として、導体2は、銅または銅合金からなる金属線と、ポリウレタンからなる絶縁皮膜からなる素線を用いる。導体の断面積の合計値は20~120mm2である。また、絶縁皮膜は径方向の厚さが0.006~0.018mmである。
【0024】
[耐熱樹脂層の製造方法]
耐熱樹脂層3は、円環形状のダイスを用いて溶融樹脂を押し出して徐冷し固化する。この押出成形によって、導体2の周囲に耐熱樹脂層3を一体形成する。本実施形態の製造方法によれば、細径かつ堅牢かつ可撓性に優れた耐熱樹脂層3にできる。
【0025】
[外被部の製造方法]
外被部4は、専用ダイスを用いて製造する。専用ダイスは、中心孔と、当該中心孔を囲むようにその外縁に隣接して形成された内環状孔と、当該内環状孔の外周から放射状に延び内環状孔よりも幅広の6つ以上の所定形状孔と、当該所定形状孔の外端間を連結し内環状孔よりも幅広の外環状孔を有する。専用ダイスを用いて、内環状孔、所定形状孔及び外環状孔から溶融樹脂を押し出して徐冷し固化する。この押出成形によって外被部4を形成することで、耐熱樹脂層3の周囲に、内環状部4aと内環状部4aから放射状に延びるリブ部4bとリブ部4bの外端を連結する外環状部4cを熱可塑性樹脂で一体形成する。尚且つ、内環状部4aとリブ部4bと外環状部4cによって囲まれて長手方向に連続する流路5を形成する。本実施形態の製造方法によれば、細径かつ堅牢かつ可撓性に優れた電力ケーブル1にできる。
【0026】
[空冷試験]
続いて、上述の電力ケーブル1の冷却能力を確認するために試料を作製して、空冷試験を行った。試験規格はJIS C2805:2010である。
【0027】
(実施例)
実施例の試料における導体2は、素線の外径が0.12mmの第2種ポリウレタン銅線を用いた撚線である。導体2としての撚線は、素線を12本でZ撚りして第1撚線にして、第1撚線を6本でZ撚りして第2撚線にして、第2撚線を5本でZ撚りして第3撚線にして、次に、第3撚線を7本でS撚りした。耐熱樹脂層3はPFAを押出成形した。耐熱樹脂層3の径方向の厚さは0.4mmである。外被部4は架橋ポリエチレン樹脂からなる。外被部4は、内環状部4aの径方向の厚さが0.8mm、リブ部4bの周方向の厚さが1.4mm、外環状部4cの径方向の厚さが1.2mmである。外被部4は、流路5が6箇所に形成される。実施例の電力ケーブル1は、外径が16.8mmであり、全長が3.3mである。
【0028】
第1回目の空冷試験は、試料の一端側にエアーカプラを取付けて、試料の他端側を開放し、導体2に、直流50Aを連続通電して、資料各部の表面温度を非接触温度計によって計測した。連続通電の結果、導体2の表面温度が154℃になるとともに、外被部4の表面温度が118℃になった。その後、冷媒7として常温の空気を、流量が毎分70リットルで試料の一端側から押し込んで流動させ、試料の他端側から外部に空気を放出させた。連続空冷して10分経過した時点の温度を非接触温度計によって計測した結果、導体2の表面温度が100℃になるとともに、外被部4の表面温度が42℃になった。よって、実施例は、冷媒7を流すことで、導体2の表面温度が54℃冷却されるとともに、外被部4の表面温度が76℃冷却されることが確認できた。
【0029】
第2回目の空冷試験は、試料の一端側にエアーカプラを取付けて、試料の他端側を開放し、導体2に、直流70Aを連続通電して、資料各部の表面温度を非接触温度計によって計測した。連続通電の結果、導体2の表面温度が164℃になるとともに、外被部4の表面温度が128℃になった。その後、冷媒7として常温の空気を、流量が毎分70リットルで試料の一端側から押し込んで流動させ、試料の他端側から外部に空気を放出させた。連続空冷して10分経過した時点の温度を非接触温度計によって計測した結果、導体2の表面温度が90℃になるとともに、外被部4の表面温度が50℃になった。よって、実施例は、冷媒7を流すことで、導体2の表面温度が74℃冷却されるとともに、外被部4の表面温度が78℃冷却されることが確認できた。
【0030】
(参考例)
参考例は耐熱樹脂層3を有していない。参考例の試料における導体2および外被部4は実施例と同様である。参考例の試料における外径は16.0 参考例は耐熱樹脂層3を有していない。参考例の試料における導体2および外被部4は実施例と同様である。参考例の電力ケーブルは、外径が16.0mmであり、全長が3.3mである。
【0031】
第1回目の空冷試験は、試料の一端側にエアーカプラを取付けて、試料の他端側を開放し、導体2に、直流50Aを連続通電して、資料各部の表面温度を非接触温度計によって計測した。連続通電の結果、導体2の表面温度が154℃になるとともに、外被部4の表面温度が121℃になった。その後、冷媒7として常温の空気を、流量が毎分70リットルで試料の一端側から押し込んで流動させ、試料の他端側から外部に空気を放出させた。連続空冷して10分経過した時点の温度を非接触温度計によって計測した結果、導体2の表面温度が105℃になるとともに、外被部4の表面温度が49℃になった。よって、参考例は、冷媒7を流すことで、導体2の表面温度が49℃冷却されるとともに、外被部4の表面温度が72℃冷却されることが確認できた。
【0032】
第2回目の空冷試験は、試料の一端側にエアーカプラを取付けて、試料の他端側を開放し、導体2に、直流70Aを連続通電して、資料各部の表面温度を非接触温度計によって計測した。連続通電の結果、導体2の表面温度が164℃になるとともに、外被部4の表面温度が131℃になった。その後、冷媒7として常温の空気を、流量が毎分70リットルで試料の一端側から押し込んで流動させ、試料の他端側から外部に空気を放出させた。連続空冷して10分経過した時点の温度を非接触温度計によって計測した結果、導体2の表面温度が94℃になるとともに、外被部4の表面温度が52℃になった。よって、参考例は、冷媒7を流すことで、導体2の表面温度が70℃冷却されるとともに、外被部4の表面温度が79℃冷却されることが確認できた。
【0033】
上述の空冷試験の結果、実施例と参考例のいずれにおいても、流路5に冷媒7を流すことで外被部4の温度上昇を抑制できることが確認できた。尚且つ、耐熱樹脂層3を設けた実施例は、耐熱樹脂層3を有さない参考例に比べて、通電時の外被部4の温度上昇をさらに抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0034】
1 電力ケーブル
2 導体
3 耐熱樹脂層
4 外被部、4a 内環状部、4b リブ部、4c 外環状部
5 流路
7 冷媒
51 電動車両、51a 給電部、51b バッテリ
【要約】
【課題】突入電流などの過度電流に起因する導体発熱に耐えられる耐熱構造にしつつ、導体発熱を速やかに冷却可能な冷却構造を有する電力ケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】電力ケーブル1は、導体2と、導体2を被覆する耐熱樹脂層3と、耐熱樹脂層3を絶縁被覆する外被部4を備える。外被部4は、内環状部4aと内環状部4aから放射状に延びる3つ以上のリブ部4bとリブ部4bの外端に連結する外環状部4cとからなり、内環状部4aとリブ部4bと外環状部4cとによって囲まれた流路5がリブ部4bと同数で形成される。電力ケーブル1は、流路5に冷媒7を流すことで通電時の外被部4の温度上昇を抑える構成である。
【選択図】
図1