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特許7662921時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-21
(54)【発明の名称】時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20250414BHJP
【FI】
G05B23/02 302V
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2025002214
(22)【出願日】2025-01-07
【審査請求日】2025-01-07
(31)【優先権主張番号】202411074413.4
(32)【優先日】2024-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】525074647
【氏名又は名称】李小玲
(73)【特許権者】
【識別番号】525074658
【氏名又は名称】張樹生
(73)【特許権者】
【識別番号】525074669
【氏名又は名称】王万章
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】李小玲
(72)【発明者】
【氏名】張樹生
(72)【発明者】
【氏名】王万章
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-193509(JP,A)
【文献】特表2019-513246(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116680611(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法であって、
電磁弁駆動側の現在の時系列電流データ、バルブコア正常時系列履歴電流データ、バネ破断時系列履歴電流データ、バルブコア不動作時系列履歴電流データ、及びバルブコア軽固着時系列履歴電流データを取得して、それに対して前処理を実行するステップと、
前処理済みの電磁弁駆動側の現在の時系列電流データ、バルブコア正常時系列履歴電流データ、バネ破断時系列履歴電流データ、バルブコア不動作時系列履歴電流データ、及びバルブコア軽固着時系列履歴電流データに対して時間領域の解析と周波数領域の解析をそれぞれ実行することで、現在の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトルを得るステップと、
現在の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトルに対して融合処理をそれぞれ実行することで、現在の複合特徴ベクトル、バルブコア正常の複合特徴ベクトル、バネ破断の複合特徴ベクトル、バルブコア不動作の複合特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の複合特徴ベクトルを得るステップと、
バルブコア正常の複合特徴ベクトル、バネ破断の複合特徴ベクトル、バルブコア不動作の複合特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の複合特徴ベクトルに基づいてベクトルデータ集合を作成するステップと、
ベクトルデータ集合を使用して、事前に作成されたランダムフォレストモデルに対してモデル訓練を実行し、ランダムフォレストモデルの訓練が完了した後に現在の複合特徴ベクトルの診断識別を実行するステップと、
を含む、
ことを特徴とする時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【請求項2】
前記電磁弁駆動側の現在の時系列電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側が現在の状態にあるときの複数の時点における電流値であり、前記電磁弁駆動側のバルブコア正常時系列履歴電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側がバルブコア正常状態にある時の複数の履歴時点における履歴電流値であり、前記電磁弁駆動側のバネ破断時系列履歴電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側がバネ破断状態にある時の複数の履歴時点における履歴電流値であり、前記電磁弁駆動側のバルブコア不動作時系列履歴電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側がバルブコア不動作状態にある時の複数の履歴時点における履歴電流値であり、前記電磁弁駆動側のバルブコア軽固着時系列履歴電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側がバルブコア軽固着状態にある時の複数の履歴時点における履歴電流値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【請求項3】
現在の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルを得る具体的なステップは、
前処理済みの電磁弁駆動側が現在の状態にある時の複数の時点の電流値、バルブコア正常状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、バネ破断状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、バルブコア不動作状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、及び、バルブコア軽固着状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値をそれぞれ読み取って、それに対して平均値解析と降順の並べ替えをそれぞれ実行して、現在の状態の電流平均値、現在の状態の電流実効値、現在の状態の最大電流値、現在の状態の最小電流値、バルブコア正常状態の電流平均値、バルブコア正常状態の電流実効値、バルブコア正常状態の最大電流値、バルブコア正常状態の最小電流値、バネ破断状態の電流平均値、バネ破断状態の電流実効値、バネ破断状態の最大電流値、バネ破断状態の最小電流値、バルブコア不動作状態の電流平均値、バルブコア不動作状態の電流実効値、バルブコア不動作状態の最大電流値、バルブコア不動作状態の最小電流値、及び、バルブコア軽固着状態の電流平均値、バルブコア軽固着状態の電流実効値、バルブコア軽固着状態の最大電流値、バルブコア軽固着状態の最小電流値を得るステップと、
現在の状態の最大電流値と最小電流値、バルブコア正常状態の最大電流値と最小電流値、バネ破断状態の最大電流値と最小電流値、バルブコア不動作状態の最大電流値と最小電流値、及び、バルブコア軽固着状態の最大電流値、最小電流値に対して、差分解析をそれぞれ行うことで、現在の状態の電流範囲値、バルブコア正常状態の電流範囲値、バネ破断状態の電流範囲値、バルブコア不動作状態の電流範囲値、及び、バルブコア軽固着状態の電流範囲値を得るステップと、
現在の状態の電流平均値、現在の状態の電流実効値、現在の状態の電流範囲値、バルブコア正常状態の電流平均値、バルブコア正常状態の電流実効値、バルブコア正常状態の電流範囲値、バネ破断状態の電流平均値、バネ破断状態の電流実効値、バネ破断状態の電流範囲値、バルブコア不動作状態の電流平均値、バルブコア不動作状態の電流実効値、バルブコア不動作状態の電流範囲値、及び、バルブコア軽固着状態の電流平均値、バルブコア軽固着状態の電流実効値、バルブコア軽固着状態の電流範囲値に基づいて、現在の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルをそれぞれ作成するステップと、
を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【請求項4】
現在の状態の電流平均値、現在の状態の電流実効値、現在の状態の電流範囲値を計算する具体的な式は以下の通りであり、
【数1】
ここで、
は現在の状態の電流平均値であり、iは電磁弁駆動側が現在の状態にあるときのk番目の時点における電流値であり、iは電磁弁駆動側が現在の状態にあるときのn番目の時点における電流値であり、2<k<n、nは合計時点数であり、I’は現在の状態の電流実効値であり、Rは現在の状態の電流範囲値であり、iMaxは現在の状態の最大電流値であり、iMinは現在の状態の最小電流値である、
ことを特徴とする請求項3に記載の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【請求項5】
現在の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア軽固着の周波数領域の特徴ベクトルを得る具体的なステップは、
前処理済みの電磁弁駆動側が現在の状態にある時の複数の時点の電流値、バルブコア正常状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、バネ破断状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、バルブコア不動作状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、及び、バルブコア軽固着状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値をそれぞれ読み取って、それに対して二次導関数解析をそれぞれ行うことで、現在の状態の二次導関数、バルブコア正常状態の二次導関数、バネ破断状態の二次導関数、バルブコア不動作状態の二次導関数、及び、バルブコア軽固着状態の二次導関数を得るステップと、
現在の状態の二次導関数、バルブコア正常状態の二次導関数、バネ破断状態の二次導関数、バルブコア不動作状態の二次導関数、及び、バルブコア軽固着状態の二次導関数に対して、バイナリ離散ウェーブレットパケット分解をそれぞれ行うことで、現在の状態のウェーブレット関数、バルブコア正常状態のウェーブレット関数、バネ破断状態のウェーブレット関数、バルブコア不動作状態のウェーブレット関数、及び、バルブコア軽固着状態のウェーブレット関数を得るステップと、
現在の状態のウェーブレット関数、バルブコア正常状態のウェーブレット関数、バネ破断状態のウェーブレット関数、バルブコア不動作状態のウェーブレット関数、及び、バルブコア軽固着状態のウェーブレット関数に対して、エネルギー解析をそれぞれ行うことで、現在の状態のエネルギー値、バルブコア正常状態のエネルギー値、バネ破断状態のエネルギー値、バルブコア不動作状態のエネルギー値、及び、バルブコア軽固着状態のエネルギー値を得るステップと、
現在の状態のエネルギー値、バルブコア正常状態のエネルギー値、バネ破断状態のエネルギー値、バルブコア不動作状態のエネルギー値、及び、バルブコア軽固着状態のエネルギー値に対して正規化処理をそれぞれ行うことで、現在の状態の正規化エネルギー特徴、バルブコア正常状態の正規化エネルギー特徴、バネ破断状態の正規化エネルギー特徴、バルブコア不動作状態の正規化エネルギー特徴、及び、バルブコア軽固着状態の正規化エネルギー特徴を得て、現在の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の周波数領域の特徴ベクトル、及び、バルブコア軽固着の周波数領域の特徴ベクトルとしてそれぞれ記録するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【請求項6】
現在の状態のウェーブレット関数、現在の状態のエネルギー値、現在の状態の正規化エネルギー特徴を計算する具体的な式は以下の通りであり、
【数2】
ここで、Ψjr(t)は現在の状態の第j層ウェーブレット分解の第r個の成分のウェーブレット関数であり、gはウェーブレット変換のスケールパラメータであり、g=1,2,3・・・,sであり、sは最大スケールであり、かつ1≦s≦jであり、rはウェーブレット変換の位置パラメータであり、
は現在の状態の二次導関数であり、Xjrは現在の状態でウェーブレット変換により得られた係数であり、eは現在の状態の第j層ウェーブレット分解のエネルギー値であり、且つeは第j層のすべての位置のウェーブレット係数のエネルギー総和を示し、r=1,2,3,・・・Qであり、Qは合計位置数であり、Eは現在の状態の第j層ウェーブレット分解の正規化エネルギー特徴である、
ことを特徴とする請求項5に記載の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【請求項7】
ベクトルデータ集合を使用して、事前に作成されたランダムフォレストモデルに対してモデル訓練を実行し、具体的にはC4.5アルゴリズムを使用して訓練を実行し、具体的には、ベクトルデータ集合をサンプリングして複数の決定木を生成し、ランダムフォレストモデルを構築することである、
ことを特徴とする請求項1に記載の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【請求項8】
複数の決定木を生成する具体的なステップは、
ベクトルデータ集合を読み取り、複数のグループのデータをランダムに抽出し、ランダムベクトルデータ集合を個別に作成するステップと、
各グループのデータのランダムベクトルデータ集合に対して、ベクトル訓練データ集合とベクトル検証データ集合にそれぞれ分割するステップと、
各グループのデータに対して、ベクトル訓練データ集合のルートノードから開始し、情報利得率が最も高い特徴を使用して分割し、分割によって生成されたサブセットごとにこの分割プロセスを繰り返し、再帰的に木を構築するステップと、
事前に設定された停止条件に達したときに木の構築動作を停止するステップと、
構築された木に対して事後枝刈りの策を採用し、当該策は木が完全に生成された後に行われ、木が所定の基準を満たすまでベクトル検証データ集合を使用して枝刈り前後の木を評価して調整するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【請求項9】
ランダムフォレストモデルの訓練が完了した後の現在の複合特徴ベクトルの診断識別では、ランダムフォレストモデルによる故障診断の手段は、多数決法を使用して最終結果を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁の故障診断の技術分野に関し、具体的には、時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁弁は、シンプルな構造、低コスト、低汚染、速い応答速度等の利点のため、造船、石油化学産業、国防、産業機器などの重要な分野で電気油圧制御装置に広く使用されている。しかしながら、使用環境における長期的な磨耗、腐食、電気分解などの要因により、電磁弁は非常に故障しやすくなる。これは制御システムの性能に重大な影響を与え、さらにはシステムのシャットダウンを引き起こし、システムの通常の動作を危険にさらす。したがって、システムの安全性と信頼性を向上させるためには、電磁弁の故障をオンラインで診断し、故障をタイムリーかつ正確に発見して修正できるようにする必要がある。
【0003】
現在、電磁弁の故障診断方法は主にモデル駆動方法とデータ駆動方法とに分けられる。モデル駆動方法では、主に、シミュレーション、テスト、または実際のエンジニアリング経験を通じて、電磁弁の故障タイプと電磁弁モデルパラメータの間のマッピング関係を確立し、さらに該マッピング関係に基づいて故障診断を実行する。しかしながら、当該方法は特定の故障診断基準を形成しておらず、人間の主観的要因に大きく影響される。
データ駆動方法は、複数の測定可能なデータ処理に基づいて特徴ベクトルを抽出し、最後にアルゴリズムを使用して故障診断を実現する。例えば、カク聖橋らはセンサーを使用して電磁弁の負荷圧力、出入口油ポートの流量、および開度値を測定し、物理モデルに基づいて特徴ベクトルを抽出し、最後に、サポートベクターマシン(SVM)に基づいてオンライン故障診断を実行する。しかしながら、当該方法は操作が複雑で、元のデータを取得するのが困難であり、工学的に実現できる可能性は低い。
実際は、電流信号測定が、コストが低く、情報量が多く、取得が容易であるという利点があり、電磁方向切換弁の故障診断にも利用できる。
【0004】
特許文献1の既存の発明特許出願では、電流検出に基づく電磁弁故障診断方法が開示されており、センサーに基づいて電磁弁の前端駆動電流を測定し、ウェーブレットエネルギー分解を実行して特徴ベクトルを抽出し、最後にBPニューラルネットワークに基づいて故障診断を行う。
【0005】
上記の特許文献1に記載の方法から、従来技術の限定には少なくとも次の問題が含まれることが分かる。まず、信号の処理にはウェーブレットパケット分解のみが使用されるため、信頼性が低くなる。さらに、BPニューラルネットワークに基づく故障診断の信頼性は初期パラメータの選択に大きく依存するため、実際のエンジニアリングに適用することは困難である。従って、システムの安全性と信頼性を保証するために、電磁弁の故障タイプをオンラインで迅速に診断する方法を提案することが急務である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第103336189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、信号の処理にはウェーブレットパケット分解のみが使用されるため、信頼性が低くなり、さらに、BPニューラルネットワークに基づく故障診断の信頼性は初期パラメータの選択に大きく依存するため、実際のエンジニアリングに適用することが困難であるという問題を解決した、時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策によって達成される。
時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法であって、
電磁弁駆動側の現在の時系列電流データ、バルブコア正常時系列履歴電流データ、バネ破断時系列履歴電流データ、及びバルブコア不動作時系列履歴電流データ、バルブコア軽固着時系列履歴電流データを取得し、それに対して前処理を実行するステップと、
前処理済みの電磁弁駆動側の現在の時系列電流データ、バルブコア正常時系列履歴電流データ、バネ破断時系列履歴電流データ、バルブコア不動作時系列履歴電流データ、及びバルブコア軽固着時系列履歴電流データに対して時間領域の解析と周波数領域の解析をそれぞれ実行することで、現在の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトルを得るステップと、
現在の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルと周波数領域の特徴ベクトルに対して融合処理をそれぞれ実行することで、現在の複合特徴ベクトル、バルブコア正常の複合特徴ベクトル、バネ破断の複合特徴ベクトル、及びバルブコア不動作の複合特徴ベクトル、バルブコア軽固着の複合特徴ベクトルを得るステップと、
バルブコア正常の複合特徴ベクトル、バネ破断の複合特徴ベクトル、バルブコア不動作の複合特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の複合特徴ベクトルに基づいてベクトルデータ集合を作成するステップと、ベクトルデータ集合を使用して、事前に作成されたランダムフォレストモデルに対してモデル訓練を実行し、ランダムフォレストモデルの訓練が完了した後に現在の複合特徴ベクトルの診断識別を実行するステップと、を含む。
【0009】
さらに、前記電磁弁駆動側の現在の時系列電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側が現在の状態にあるときの複数の時点における電流値であり、前記電磁弁駆動側のバルブコア正常時系列履歴電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側がバルブコア正常状態にある時の複数の履歴時点における履歴電流値であり、前記電磁弁駆動側のバネ破断時系列履歴電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側がバネ破断状態にある時の複数の履歴時点における履歴電流値であり、前記電磁弁駆動側のバルブコア不動作時系列履歴電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側がバルブコア不動作状態にある時の複数の履歴時点における履歴電流値であり、前記電磁弁駆動側のバルブコア軽固着時系列履歴電流データとは、具体的には、電磁弁駆動側がバルブコア軽固着状態にある時の複数の履歴時点における履歴電流値である。
【0010】
さらに、現在の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルを得る具体的なステップは、
前処理済みの電磁弁駆動側が現在の状態にある時の複数の時点の電流値、バルブコア正常状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、バネ破断状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、バルブコア不動作状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、及び、バルブコア軽固着状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値をそれぞれ読み取って、それに対して平均値解析と降順の並べ替えをそれぞれ実行して、現在の状態の電流平均値、現在の状態の電流実効値、現在の状態の最大電流値、現在の状態の最小電流値、バルブコア正常状態の電流平均値、バルブコア正常状態の電流実効値、バルブコア正常状態の最大電流値、バルブコア正常状態の最小電流値、バルブコア正常状態のバネ破断状態の電流平均値、バルブコア正常状態の電流実効値、バルブコア正常状態の最大電流値、バルブコア正常状態の最小電流値、バルブコア不動作状態の電流平均値、バルブコア不動作状態の電流実効値、バルブコア不動作状態の最大電流値、バルブコア不動作状態の最小電流値、及び、バルブコア軽固着状態の電流平均値、バルブコア軽固着状態の電流実効値、バルブコア軽固着状態の最大電流値、バルブコア軽固着状態の最小電流値を得るステップと、
現在の状態の最大電流値と最小電流値、バルブコア正常状態の最大電流値と最小電流値、バネ破断状態の最大電流値と最小電流値、バルブコア不動作状態の最大電流値と最小電流値、及びバルブコア軽固着状態の最大電流値と最小電流値に対して、差分解析をそれぞれ行うことで、現在の状態の電流範囲値、バルブコア正常状態の電流範囲値、バネ破断状態の電流範囲値、バルブコア不動作状態の電流範囲値、及びバルブコア軽固着状態の電流範囲値を得るステップと、現在の状態の電流平均値、現在の状態の電流実効値、現在の状態の電流範囲値、バルブコア正常状態の電流平均値、バルブコア正常状態の電流実効値、バルブコア正常状態の電流範囲値、バネ破断状態の電流平均値、バネ破断状態の電流実効値、バネ破断状態の電流範囲値、バルブコア不動作状態の電流平均値、バルブコア不動作状態の電流実効値、バルブコア不動作状態の電流範囲値、及び、バルブコア軽固着状態の電流平均値、バルブコア軽固着状態の電流実効値、バルブコア軽固着状態の電流範囲値に基づいて、現在の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルをそれぞれ作成するステップと、
を含む。
【0011】
さらに、現在の状態の電流平均値、現在の状態の電流実効値、現在の状態の電流範囲値を計算する具体的な式は以下の通りであり、
【数1】
ここで、
は現在の状態の電流平均値であり、iは電磁弁駆動側が現在の状態にあるときのk番目の時点における電流値であり、iは電磁弁駆動側が現在の状態にあるときのn番目の時点における電流値であり、2<k<n、nは合計時点数であり、I’は現在の状態の電流実効値であり、Rは現在の状態の電流範囲値であり、iMaxは現在の状態の最大電流値であり、iMinは現在の状態の最小電流値である。
【0012】
さらに、現在の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア軽固着の周波数領域の特徴ベクトルを得る具体的なステップは、
前処理済みの電磁弁駆動側が現在の状態にある時の複数の時点の電流値、バルブコア正常状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、バネ破断状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、バルブコア不動作状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値、及びバルブコア軽固着状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値をそれぞれ読み取って、それに対して二次導関数解析をそれぞれ行うことで、現在の状態の二次導関数、バルブコア正常状態の二次導関数、バネ破断状態の二次導関数、バルブコア不動作状態の二次導関数、及びバルブコア軽固着状態の二次導関数を得るステップと、
現在の状態の二次導関数、バルブコア正常状態の二次導関数、バネ破断状態の二次導関数、バルブコア不動作状態の二次導関数、及びバルブコア軽固着状態の二次導関数に対して、バイナリ離散ウェーブレットパケット分解をそれぞれ行うことで、現在の状態のウェーブレット関数、バルブコア正常状態のウェーブレット関数、バネ破断状態のウェーブレット関数、バルブコア不動作状態のウェーブレット関数、及びバルブコア軽固着状態のウェーブレット関数を得るステップと、
現在の状態のウェーブレット関数、バルブコア正常状態のウェーブレット関数、バネ破断状態のウェーブレット関数、バルブコア不動作状態のウェーブレット関数、及びバルブコア軽固着状態のウェーブレット関数に対して、エネルギー解析をそれぞれ行うことで、現在の状態のエネルギー値、バルブコア正常状態のエネルギー値、バネ破断状態のエネルギー値、バルブコア不動作状態のエネルギー値、及びバルブコア軽固着状態のエネルギー値を得るステップと、
現在の状態のエネルギー値、バルブコア正常状態のエネルギー値、バネ破断状態のエネルギー値、バルブコア不動作状態のエネルギー値、及びバルブコア軽固着状態のエネルギー値に対して正規化処理をそれぞれ行うことで、現在の状態の正規化エネルギー特徴、バルブコア正常状態の正規化エネルギー特徴、バネ破断状態の正規化エネルギー特徴、バルブコア不動作状態の正規化エネルギー特徴、及びバルブコア軽固着状態の正規化エネルギー特徴を得て、現在の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の周波数領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の周波数領域の特徴ベクトルとしてそれぞれ記録するステップと、を含む。
【0013】
さらに、現在の状態のウェーブレット関数、現在の状態のエネルギー値、現在の状態の正規化エネルギー特徴を計算する具体的な式は以下の通りであり、
【数2】
ここで、Ψjr(t)は現在の状態の第j層ウェーブレット分解の第r個の成分のウェーブレット関数であり、gはウェーブレット変換のスケールパラメータであり、g=1,2,3,・・・s、sは最大スケールであり、かつ、1≦s≦j、rはウェーブレット変換の位置パラメータであり、Δi’’(t)は現在の状態の二次導関数であり、Xjrは現在の状態でウェーブレット変換により得られた係数であり、eは現在の状態の第j層ウェーブレット分解のエネルギー値であり、第j層のすべての位置のウェーブレット係数のエネルギー総和を示し、r=1,2,3,・・・Qであり、Qは合計位置数であり、Eは現在の状態の第j層ウェーブレット分解の正規化エネルギー特徴である。
【0014】
さらに、ベクトルデータ集合を使用して、事前に作成されたランダムフォレストモデルに対してモデル訓練を実行し、具体的にはC4.5アルゴリズムを使用して訓練を実行し、具体的には、ベクトルデータ集合をサンプリングして複数の決定木を生成し、ランダムフォレストモデルを構築することである。
【0015】
さらに、複数の決定木を生成する具体的なステップは、ベクトルデータ集合を読み取り、複数のグループのデータをランダムに抽出し、ランダムベクトルデータ集合を個別に作成するステップと、各グループのデータのランダムベクトルデータ集合に対して、ベクトル訓練データ集合とベクトル検証データ集合にそれぞれ分割するステップと、各グループのデータに対して、ベクトル訓練データ集合のルートノードから開始し、情報利得率が最も高い特徴を使用して分割し、分割によって生成されたサブセットごとにこの分割プロセスを繰り返し、再帰的に木を構築するステップと、事前に設定された停止条件に達したときに木の構築動作を停止するステップと、構築された木に対して事後枝刈りの策を採用し、当該策は木が完全に生成された後に行われ、木が所定の基準を満たすまでベクトル検証データ集合を使用して枝刈り前後の木を評価して調整するステップと、を含む。
【0016】
さらに、ランダムフォレストモデルの訓練が完了した後の現在の複合特徴ベクトルの診断識別では、ランダムフォレストモデルによる故障診断の手段は、多数決法を使用して最終結果を取得する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)当該の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法は、複数の状態の電流データと時間周波数領域解析による統合特徴ベクトルを統合することにより、電磁弁の異なる故障タイプをより正確に識別して区別することができ、特徴の特性化能力が向上するだけでなく、時間領域と周波数領域の情報を総合的に活用することで故障診断の精度と信頼性が向上する。
(2)当該の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法は、電磁弁の電流特性をリアルタイムで監視し解析し、効率的なランダムフォレストモデルを使用してオンライン故障診断を行うことにより、本方法は即時の故障警報とメンテナンスのアドバイスを提供できる。故障をタイムリーに解決し、機器のダウンタイムを短縮するだけでなく、より深刻な機器の損傷を防ぐことで、メンテナンスコストを削減し、機器の寿命を延ばす。
(3)当該の時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法は、C4.5アルゴリズムに基づくランダムフォレストモデルを使用して訓練を実行し、事後枝刈りの策と組み合わせることで、過剰適合が効果的に回避され、モデルの汎化能力が向上する。ランダムフォレストは、複数の決定木を統合することで、単一の決定木のバラツキを軽減し、多数決法により全体的な判定精度が向上する。これにより、作業環境の変化やさまざまな種類の故障に直面しても、モデルは効率的な診断性能を維持できる。
もちろん、本発明を実施する製品は、必ずしも上記の利点をすべて同時に達成する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による時間周波数領の域特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法のフローチャートである。
図2】本発明による時間周波数領の域特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法例のステップフローチャートである。
図3】本発明による多次元駆動側電流の時間周波数領域特性に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法のランダムフォレスト訓練及び評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願の実施例は、時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法を使用することで、信号の処理にはウェーブレットパケット分解のみが使用されるため、信頼性が低くなり、且つ、BPニューラルネットワークに基づく故障診断の信頼性は初期パラメータの選択に大きく依存するため、実際のエンジニアリングに適用することが困難であるという問題を解決する。
【0020】
本出願の実施例における問題に対する全体的な考え方は次の通りである。
【0021】
まず、現在の状態と履歴状態における正常、バネ破断、バルブコア不動作、軽固着、を含むさまざまな動作状態での電磁弁の時系列電流データを収集し、これらのデータを前処理、クリーニング、フォーマットして、データ品質が解析ニーズを満たしていることを確認し、前処理済みのデータに対して時間領域および周波数領域の解析を実行して、電流の平均値、実効値、最大値、最小値、範囲値などの主要な特徴を抽出する。
次に、抽出された時間領域の特徴と周波数領域の特徴を融合して、統合特徴ベクトルを形成し、これらの複合特徴ベクトルを使用してベクトルデータ集合を構築し、ランダムフォレストモデルを適用し、C4.5アルゴリズムによって構築された決定木の集合に基づいて、モデルの訓練を実行し、訓練が完了した後、訓練済みモデルを使用して、新たな特徴ベクトルまたは現在の特徴ベクトルに対して故障診断を実行する。
実施例における処理は、例えば処理装置が備えるプロセッサが記憶装置に備えるプログラムを実行することによって実現してよい。あるいは、実施例における処理は、処理装置が備えるハードウェア回路によって実行されてもよい。
【0022】
図1を参照して、本発明の実施例は、技術的解決手段を提供する。時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法であって、以下のステップを含む。電磁弁駆動側の現在の時系列電流データ、バルブコア正常時系列履歴電流データ、バネ破断時系列履歴電流データ、バルブコア不動作時系列履歴電流データ、バルブコア軽固着時系列履歴電流データを取得し、それに対して前処理を実行し、バルブコア正常時系列履歴電流データは、作業員が設定した電磁弁バルブコアの通常の動作状態での電流測定データであり、バネ破断時系列履歴電流データは、作業員が設定した電磁弁バネ破断動作状態での電流測定データであり、履歴バルブコア不動作時系列電流データは、作業員が設定した電磁弁バルブコア不動作動作状態での電流測定データであり、履歴バルブコア軽固着時系列電流データは、作業員が設定した電磁弁バルブコア軽固着動作状態での電流測定データであり、前処理済みの電磁弁駆動側の現在の時系列電流データ、バルブコア正常時系列履歴電流データ、バネ破断時系列履歴電流データ、バルブコア不動作時系列履歴電流データ、及びバルブコア軽固着時系列履歴電流データに対して時間領域と周波数領域の解析をそれぞれ行うことで、現在の時間領域と周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域と周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域と周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域と周波数領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の時間領域と周波数領域の特徴ベクトルを得て、現在の時間領域と周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域と周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域と周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域と周波数領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の時間領域と周波数領域の特徴ベクトルに対して融合処理をそれぞれ行うことで、現在の複合特徴ベクトル、バルブコア正常の複合特徴ベクトル、バネ破断の複合特徴ベクトル、バルブコア不動作の複合特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の複合特徴ベクトルを得て、バルブコア正常の複合特徴ベクトル、バネ破断の複合特徴ベクトル、バルブコア不動作の複合特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の複合特徴ベクトルに基づいてベクトルデータ集合を作成し、ベクトルデータ集合を使用して、事前に作成されたランダムフォレストモデルに対してモデル訓練を実行し、ランダムフォレストモデルの訓練が完了した後、現在の複合特徴ベクトルの診断識別を実行する。
【0023】
電磁弁駆動側の現在の時系列電流データは、具体的には、電磁弁駆動回路に設置された電流センサーにより取得される、電磁弁駆動側が現在の状態にあるときの複数の時点における電流値である。
電磁弁駆動側のバルブコア正常時系列履歴電流データは、具体的には、電磁弁駆動回路に設置された電流センサーにより取得される、電磁弁駆動側がバルブコア正常状態にあるときの複数の時点における履歴電流値である。
電磁弁駆動側のバネ破断時系列履歴電流データは、具体的には、電磁弁駆動回路に設置された電流センサーにより取得される、電磁弁駆動側がバネ破断状態にあるときの複数の履歴時点における履歴電流値である。
電磁弁駆動側のバルブコア不動作時系列履歴電流データは、具体的には、電磁弁駆動回路に設置された電流センサーにより取得される、電磁弁駆動側がバルブコア不動作状態にあるときの複数の履歴時点における履歴電流値である。
電磁弁駆動側の履歴バルブコア軽固着時系列電流データは、具体的には、電磁弁駆動回路に設置された電流センサーにより取得される、電磁弁駆動側がバルブコア軽固着状態にあるときの複数の履歴時点における履歴電流値である。
【0024】
具体的には、現在の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルを得る具体的なステップは以下のとおりであり、前処理済みの電磁弁駆動側が現在の状態にある時の複数の時点の電流値、及び、バルブコア正常状態にある時、バネ破断状態にある時、バルブコア不動作状態にある時、バルブコア軽固着状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値をそれぞれ読み取って、それに対して平均値解析と降順の並べ替えをそれぞれ実行して、現在の状態の電流平均値、電流実効値、最大電流値、最小電流値、及び、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態の電流平均値、電流実効値、最大電流値、最小電流値を得るステップと、現在の状態にある時の最大電流値と最小電流値及びバルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態の最大電流値と最小電流値に対して、差分解析をそれぞれ行うことで、現在の状態の電流範囲値、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、及び、バルブコア軽固着状態の電流範囲値を得るステップと、現在の状態の電流平均値、電流実効値、電流範囲値、及びバルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態の電流平均値、電流実効値、電流範囲値に基づき、現在の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の時間領域の特徴ベクトル、バネ破断の時間領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の時間領域の特徴ベクトル、及び、バルブコア軽固着の時間領域の特徴ベクトルをそれぞれ作成するステップと、を含む。
【0025】
現在の状態の電流平均値、電流実効値、電流範囲値を計算する具体的な式は以下の通りである。
【数3】
ここで、
は現在の状態の電流平均値であり、iは電磁弁駆動側が現在の状態にあるときのk番目の時点における電流値であり、iは電磁弁駆動側が現在の状態にあるときのn番目の時点における電流値であり、2≦k≦nであり、nは合計時点数であり、I’は現在の状態の電流実効値であり、Rは現在の状態の電流範囲値であり、iMaxは現在の状態の最大電流値であり、iMinは現在の状態の最小電流値である。
【0026】
そして、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態の電流平均値、電流実効値、電流範囲値を計算する具体的な式は、現在の状態の電流平均値、電流実効値、電流範囲値を計算する具体的な式と類似する。
【0027】
本実施形態において、電磁弁のさまざまな状態(正常、バネ破断、バルブコア不動作等)の電流データを詳細に解析することで、異常な電流パターンを正確に識別できる。例えば、電流の平均値、実効値、最大値、最小値、範囲値を比較することで、機器の動作中に起こりうる問題を効果的に識別できる。これらの指標は、電磁弁の動作の状況は異常発生であるかどうかを反映できるので、故障の早期発見や機器の故障の可能性を防ぐことができ、さまざまな故障状態(例えば、通常動作およびさまざまな故障状態など)の電流特徴ベクトルを解析することにより、詳細な故障特徴データベースを構築できる。このようなデータベースは、現在の故障の種類を正確に診断するのに役立つだけでなく、バルブコア不動作か否か、またはバネ破断か否かなどの故障の具体的な原因を比較分析で特定することもできる。この診断の精度はその後のメンテナンス作業にとって非常に重要であり、目的のない検査や不必要なメンテナンスコストを削減でき、時間領域解析から提供されるデータは、予測メンテナンスモデルの構築や最適化に使用できる。さまざまな状態の電磁弁の電流データを長期的に追跡することにより、機器の将来のメンテナンスのニーズを予測し、メンテナンス計画とリソースの割り当てを最適化することができる。例えば、データでは特定のパターンの電流変化が常に機器の故障を引き起こすことを示している場合、問題発生の前に予防メンテナンスを実行できるため、高額な緊急修理や生産中断を避けることができる。
【0028】
具体的には、現在の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の周波数領域の特徴ベクトル、及びバルブコア軽固着の周波数領域の特徴ベクトルを得る具体的なステップは、前処理済みの電磁弁駆動側が現在の状態にある時の複数の時点の電流値、及び、バルブコア正常状態にある時、バネ破断状態にある時、バルブコア不動作状態にある時、バルブコア軽固着状態にある時の複数の履歴時点の履歴電流値をそれぞれ読み取って、それに対して二次導関数解析をそれぞれ行うことで、現在の状態、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態の二次導関数を得るステップと、現在の状態、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態の二次導関数に対して、バイナリ離散ウェーブレットパケット分解をそれぞれ行うことで、現在の状態、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態のウェーブレット関数を得るステップと、現在の状態、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態のウェーブレット関数に対して、エネルギー解析をそれぞれ行うことで、現在の状態、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態のエネルギー値を得るステップと、現在の状態、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態のエネルギー値に対して正規化処理をそれぞれ行うことで、現在の状態、バルブコア正常状態、バネ破断状態、バルブコア不動作状態、バルブコア軽固着状態の正規化エネルギー特徴を得て、現在の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア正常の周波数領域の特徴ベクトル、バネ破断の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア不動作の周波数領域の特徴ベクトル、バルブコア軽固着の周波数領域の特徴ベクトルとしてそれぞれ記録するステップと、を含む。
【0029】
現在の状態のウェーブレット関数、エネルギー値、正規化エネルギー特徴を計算する具体的な式は以下の通りである。
【数4】
ここで、Ψ(t)は現在の状態の第j層ウェーブレット分解の第r個の成分のウェーブレット関数であり、gはウェーブレット変換のスケールパラメータであり、かつウェーブレット関数の伸縮を制御するためのものであり、2は時間軸におけるウェーブレット関数の伸展を示し、g値が大きいほど、周波数分解能は低くなり、時間分解能は高くなり、g=1,2,3・・・,sであり、sは最大スケールであり、1≦s≦jである。rはウェーブレット変換の位置パラメータであり、かつ時間軸に沿ったウェーブレット関数の移動を制御して信号の部分の特性を捕捉するためのものであり、1/√(2)は正規化因子であり、変換されたエネルギーが一定に保たれるようにし、Δi’’は現在の状態の二次導関数である。
jrは現在の状態でウェーブレット変換により得られた係数であり、対応するスケールと位置で電流の二次導関数とウェーブレット基底関数の間の相関を反映する。
は現在の状態の第j層ウェーブレット分解のエネルギー値であり、第j層のすべての位置のウェーブレット係数のエネルギー総和を示す。r=1,2,3,・・・,Qであり、Qは合計位置数である。Eは現在の状態の第j層ウェーブレット分解の正規化エネルギー特徴である。
【0030】
バルブコア正常状態のウェーブレット関数、エネルギー値、正規化エネルギー特徴、バネ破断状態のウェーブレット関数エネルギー値、正規化エネルギー特徴、バルブコア不動作状態のウェーブレット関数エネルギー値、正規化エネルギー特徴、及び、バルブコア軽固着状態のウェーブレット関数エネルギー値、正規化エネルギー特徴を計算する具体的な式は、現在の状態のウェーブレット関数、エネルギー値、正規化エネルギー特徴を計算する具体的な式と類似する。
【0031】
本実施形態において、電磁弁電流データをウェーブレット変換および二次導関数解析することにより、通常の時系列解析では識別されにくい電流信号の瞬時変化と非線形特性を効果的に捕捉することができる。ウェーブレット変換は、さまざまな時間スケールで電流信号を部分的に解析できるため、小さな変化も検出でき、故障検出の感度と精度が大幅に向上し、さまざまな故障状態で周波数領域の特徴ベクトルを解析することで、この方法はバルブコア正常、バネ破断、バルブコア不動作及び軽固着等のさまざまなタイプの故障を正確に区別できる。各状態には固有の周波数領域特性(例えば、エネルギー分布やウェーブレット係数の変化)があり、このような詳細な周波数領域情報は、メンテナンスチームが特定の種類の故障をより正確に診断するのに役立つことにより、より的確なメンテナンス対策を取ることでき、電磁弁の電流特性を連続的に監視し、その時間周波数領域のデータを解析することで、機器の動作状態をリアルタイムに把握し、故障につながる傾向の変化をタイムリーに発見することができる。この方法は、リアルタイムの故障診断に役立つだけでなく、長期間のデータ解析により電磁弁のメンテナンスニーズを予測し、予防メンテナンスを実現することができる。予防メンテナンスは、突発的な故障を回避し、予定外のダウンタイムを減らし、機器全体の信頼性と効率を向上させることに役立つ。
【0032】
具体的には、ベクトルデータ集合を使用して、事前に作成されたランダムフォレストモデルに対してモデル訓練を実行し、具体的にはC4.5アルゴリズムを使用して訓練を実行し、具体的には、ベクトルデータ集合をサンプリングして複数の決定木を生成し、ランダムフォレストモデルを構築することである。
【0033】
本実施形態において、ランダムフォレストは、複数の決定木を統合することにより、予測の精度と信頼性を向上させる。各木(ツリー)はデータ集合における一つのランダムなサブセットで訓練され、この統合する方法ではモデルの分散を大幅に削減できるため、過剰適合を回避できる。各木を構築するときにC4.5アルゴリズムで使用される情報利得率法により、分割属性をより効果的に選択でき、これにより、各木の性能とモデル全体の安定性がさらに最適化され、C4.5アルゴリズムは、連続属性の処理をネイティブにサポートしており、連続属性に対して最適な二元分割点を自動的に見つけることができる。電流データは通常連続的なものであるため、C4.5アルゴリズムは電磁弁の故障診断に特に役立つ。さらに、C4.5は分類データを処理する際に事前のデータ変換の必要がなく、元のデータを直接学習でき、データの前処理の複雑さを軽減し、ランダムフォレストモデルの柔軟性により、ランダムフォレストモデルは可変入力特性に適応し、さまざまな種類の故障に対して信頼性の高い診断結果を与えることができる。C4.5アルゴリズムは特徴選択プロセスを最適化するため、モデルは故障につながる主要な要因をより正確に識別し、複雑な産業環境でも高レベルの性能を維持でき、C4.5アルゴリズムは、単純な情報利得を使用しなく情報利得率を使用して分割ノードを選択することにより、決定木がより多くのカテゴリあり特徴を選択する傾向を回避し、モデルをより公平かつバランスよくすることができる。これにより、モデルが特徴の多様性のために潜在的な故障の兆候を見逃さないことが保証されるので、故障診断において特に重要である。
【0034】
具体的には、複数の決定木を生成する具体的なステップは、ベクトルデータ集合を読み取り、複数のグループのデータをランダムに抽出し、ランダムベクトルデータ集合を個別に作成し、各グループのデータのランダムベクトルデータ集合に対して、ベクトル訓練データ集合とベクトル検証データ集合にそれぞれ分割するステップと、各グループのデータに対して、ベクトル訓練データ集合のルートノードから開始し、情報利得率が最も高い特徴を使用して分割し、分割によって生成されたサブセットごとにこの分割プロセスを繰り返し、再帰的に木を構築するステップと、を含み、C4.5では、分割特徴を選択する基準として、純粋な情報利得(ID3アルゴリズムによって使用される)を使用せず、情報利得率を使用する。情報利得率では、特徴の不純性が考慮され、より多くのカテゴリあり特徴が選択される傾向を回避することに役立つ。ここで、情報利得は差分の前後でのエントロピーの変化を計算し、固有の価値は、分割後の各サブセットのサイズの加重和を考慮し、事前に設定された停止条件に達したときに構築動作を停止する。停止条件は、すべてのインスタンスが同じカテゴリに属している場合に停止し、あるいは、それ以上の情報利得がない場合に停止し、あるいは、事前に設定された木の最大深さまたはノードの最小サンプル数に達した場合に停止することである。構築された木に対して事後枝刈りの策を採用し、当該策は木が完全に生成された後に行われ、木が所定の基準を満たすまでベクトル検証データ集合を使用して枝刈り前後の木を評価して調整する。具体的には、正確度、再現率、精度などの統計指標を計算し、木が所定の基準を満たすまで枝刈り後に検証セットの性能を向上させる可能性のある部分を枝刈りし、これは過剰適合を軽減し、モデルの汎化能力を向上させることに役立つ。
【0035】
本実施形態において、データのサブセットをランダムに抽出して複数の決定木を構築することにより、ランダムフォレストモデルは過剰適合のリスクを大幅に軽減し、未知のデータに対するモデルのパフォーマンスを向上させることができる。C4.5アルゴリズムでは、分割用の特徴を選択するときに情報利得率が考慮されることにより、分割の品質が最適化されるだけでなく、複数の特徴値によって引き起こされる偏差も軽減されて、各木の構築がより合理的になり、モデル全体の精度とロバスト性が向上する。C4.5アルゴリズムの使用、特に特徴選択における情報利得率の導入は、モデルは分類に最も役立つ特徴をより正確に識別するのに役立ち、単純な情報利得によって引き起こし得る選択バラツキを回避する。また、情報利得率では、分割後のサブセットのサイズが考慮され、よりバランスのとれた木構造の生成に役立ち、これは、複雑なデータ集合を処理する場合に特に重要であり、さまざまな停止条件(最大深さ、サンプル数の下限、情報利得閾値への到達など)を設定することで、木構造が複雑になりすぎないように木の成長を効果的に制御でき、過剰適合を回避する。事後枝刈りの策により、木モデルがさらに最適化され、完全に成長した木を枝刈りすることで、モデルの性能向上にあまり寄与しないノード或いはまったく寄与しないノードを削除することで、最終モデルのシンプルさと実行効率を確保し、事後枝刈りの策では、モデルはまずより大きなデータフレームに基づいて決定の基礎を形成し、次に枝刈りによって不要な部分を削除できることにより、新しいデータに対するモデルの適用効率が向上するだけでなく、モデルの実行時間とリソース使用量も最適化され、実際の応用でモデルを更に効率化し、電磁弁の故障診断の応用場面では、この方法は、履歴データとリアルタイムデータとの総合的な解析に基づいて、機器の特定の故障タイプを正確に識別できる。これは、タイムリーで効果的なメンテナンス策を策定し、機器のダウンタイムとメンテナンスコストを削減するために非常に重要である。
【0036】
具体的には、ランダムフォレストモデルの訓練が完了した後の現在の複合特徴ベクトルの診断識別では、ランダムフォレストモデルによる故障診断の手段は、多数決法を使用して最終結果を取得する。
【0037】
本実施形態において、多数決法は、各木の予測結果を統合して最終的な分類出力を決定する。各木はデータ集合の異なるランダムなサブセットで独立して訓練されるため、同じ入力に対して異なる予測結果が得られる可能性がある。このモデルは多数決を通じて集合知を活用し、一部の木の予測には誤差があっても、他の木の正しい予測によってこれらの誤差が補われるため、全体的な予測精度が向上する。単一決定木は、特に木の深さが深い場合、データ内のノイズの影響を受けて過剰適合しやすくなる。一方、ランダムフォレストは、複数の木を構築し、投票メカニズムを使用することで、過剰適合のリスクを効果的に分散する。複数の木はさまざまなデータの観点をカバーし、特定のデータサンプルに対するモデルの感度を下げることにより、未知のデータに対するモデルのパフォーマンスがより安定し、データ集合内の異常値や特徴分布の変化に直面した場合、ランダムフォレストは統合された特性により高いロバスト性を示す。多数決法は、一部の木が異常データの影響を受けた場合でも、モデル全体の出力は依然として大多数の木によって決定されることを保証するので、予測結果の一貫性と信頼性を維持し、ランダムフォレストは次元削減の必要がなく、高次元の特徴を持つデータ集合を処理できる。モデル内の各木は、データ内の一つのランダムな特徴サブセットから学習することができることにより、複雑なデータを処理するモデルの能力が向上するだけでなく、特徴間の複雑な相互作用をモデルが捕捉できるようになり、これが単一の木或いは簡単なモデルで実現されるのは非常に困難である。
【0038】
時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法の具体的な例は以下のとおりである。
【0039】
具体的には、図2図3を参照する。
【0040】
ステップ1では、バルブコア正常、バネ破断、バルブコア不動作及びバルブコア軽固着という4つの典型的な電磁弁動作状態を設定し、順次c、c、c、cとして記録され、電磁弁が正常に動作するように、通常の動作時の電磁弁動作回路を設定し、非接触電流センサーを駆動側に直列に接続し、サンプリング周期T、総収集時間nTで、時系列電流データi(t)=[i,i,・・・,i,・・・i
を収集する。
【0041】
ステップ2では、時系列電流データi(t)の平均値
、実効値i、範囲R及び最初の変曲点時刻tを計算し、時系列特徴Iを生成し、ここで、
【数5】
であり、
最初の変曲点時刻tは、データから画像曲線を描画して取得する必要がある。
【0042】
ある回データを例として挙げると、最終的な時系列特徴ベクトルIを次のように取得する。
【数6】
【0043】
ステップ3では、N=3を選択し、電流の二次導関数Δi’’(t)に対してバイナリ離散ウェーブレットパケット分解を実行し、次の式に従って周波数領域の特徴Eとしてエネルギーを計算する。
【数7】
ここで、Ψjr(t)は現在の状態の第j層ウェーブレット分解の第r個の成分のウェーブレット関数であり、ウェーブレット基底関数Ψ(t)はDaubechies関数である。
【0044】
ステップ4では、周波数領域の特徴Eと時間領域の特徴Iを組み合わせて複合特徴ベクトルTを形成し、複数のグループを記録する。
【数8】
【0045】
ステップ5では、バネ破断、バルブコア不動作、およびバルブコア軽固着という3つの典型的な故障状態をシミュレートし、複合特徴ベクトルT、T、Tを再度形成して記録する。
【0046】
ステップ5.1では、バネ破断の故障状態をシミュレートし、複数セットの複合特徴ベクトルTを記録する。
ステップ5.2では、バルブコア不動作の故障状態をシミュレートし、複数セットの複合特徴ベクトルTを記録する。
ステップ5.3では、バルブコア軽固着の故障状態をシミュレートし、複数セットの複合特徴ベクトルTを記録する。
【0047】
ステップ6では、複数のグループのラベル付き複合特徴ベクトル<T,C>(i=0,1,2,3)を訓練セットDATAとして使用する。
【数9】
【0048】
説明を容易にするために、次のように仮定する。
【数10】
【0049】
ステップ7では、ランダムフォレストモデル(RF)を生成する。
ステップ7.1では、訓練データ集合のサンプリングを行う。例えば、訓練セットDATAにはRグループのデータが含まれており、毎回、1つのグループのデータを復元抽出し、k回繰り返し、k本の決定木を生成し、ある回にサンプリングされた訓練セットTrainは次のように示す。
【数11】
残りの重複しないデータはテストセットTestとして使用し、合計kグループのTrainである。
【0050】
ステップ7.2では、決定木モデルの作成を行う。本発明は、C4.5アルゴリズムを使用して、ランダムフォレストモデル内の決定木ユニットを構築する。C4.5決定木は、情報利得量を基準として分割属性を選択し、生成したTrainに対応する決定木は、合計k本の決定木を生成する。
【0051】
ステップ7.4では、ランダムフォレスト分類モデルの構築を行う。この応用場面は4分類問題であり、最終的な予測結果を得るために多数決法を使用できる。中心的なアイデアは、ランダムフォレストモデル内のすべてのk本の決定木の予測結果に対して投票し、最も多くの票を獲得したカテゴリが最終出力カテゴリになることである。
【0052】
ステップ8では、訓練済みのランダムフォレストモデルを適用して、電磁弁の故障モードのオンライン診断を実行し、つまり、電磁弁の複合特徴ベクトルを入力として、ランダムフォレストモデルに導入し、モデル内のすべての決定木を取得して、その動作状態として動作状態の最頻数を判別して出力し、入力複合特徴ベクトルが次のようになっていると仮定する。
【数12】
5本の決定木による評価結果は以下の通りであり、
【数13】

このとき、最終評価結果として2を入力し、つまり該電磁弁のバルブコア不動作故障である。
【0053】
以上より、本出願には少なくとも次の効果がある。
複数の状態の電流データと時間周波数領域を使用して解析された統合特徴ベクトルを統合することにより、電磁弁の異なる故障タイプをより正確に識別して区別することができ、特徴の特性化能力が向上するだけでなく、時間領域と周波数領域の情報を総合的に活用することで故障診断の精度と信頼性が向上する。
電磁弁の電流特性をリアルタイムで監視し解析し、効率的なランダムフォレストモデルを使用してオンライン故障診断を行うことにより、本方法は即時の故障警報とメンテナンスのアドバイスを提供できる。故障をタイムリーに解決し、機器のダウンタイムを短縮するだけでなく、より深刻な機器の損傷を防ぐことで、メンテナンスコストを削減し、機器の寿命を延ばす。
C4.5アルゴリズムに基づくランダムフォレストモデルを使用して訓練を実行し、事後枝刈りの策と組み合わせることで、過剰適合が効果的に回避され、モデルの汎化能力が向上する。ランダムフォレストは、複数の決定木を統合することで、単一の決定木のバラツキを軽減し、そして多数決法により総合的な判定精度が向上する。これにより、作業環境の変化やさまざまな種類の故障に直面しても、モデルは効率的な診断性能を維持できる。
【0054】
本発明の好ましい実施例について説明してきたが、当業者にとって、基本的な発明概念が明らかであれば、これらの実施例にさらなる変更や修正を加えることができるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、好ましい実施例及び本発明の範囲内にあるすべての変更および修正を含むものとして解釈されることが意図されている。
【0055】
当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更および修正を加えることができることは明らかである。このように、本発明のこれらの変更および修正が本発明の特許請求の範囲及びその同等技術の範囲に属する場合には、本発明はそれらの変更および修正も含むものとする。
【要約】      (修正有)
【課題】時間周波数領域の特性解析に基づく電磁弁の故障のオンライン診断方法の提供。
【解決手段】電磁弁駆動側の時系列電流データを取得し、時間領域と周波数領域の解析をそれぞれ実行して、時間領域と周波数領域の特徴ベクトルを取得し、この両方を組み合わせて複合時間周波数領域特徴ベクトルを形成し、電磁弁の動作状態を変化させることで、ラベル付きの複数のグループの複合特徴ベクトルを取得し、これをもとに多数決法を使用して評価された孤立フォレストモデルを生成する。複数の状態の電流データと時間周波数領域解析による統合特徴ベクトルとを統合することにより、電磁弁の異なる故障タイプをより正確に識別して区別することができ、特徴の特性化能力が向上するだけでなく、時間領域と周波数領域の情報を総合的に活用することで故障診断の精度と信頼性が向上する。
【選択図】図1
図1
図2
図3