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特許7662927整形外科用人工膝関節の金属裏打ち膝蓋骨部品及びそれを製造する関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】整形外科用人工膝関節の金属裏打ち膝蓋骨部品及びそれを製造する関連方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
A61F2/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022537058
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2020086549
(87)【国際公開番号】W WO2021122835
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】16/717,077
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Loughbeg Industrial Estate, Ringaskiddy, County Cork, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ・アンソニー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミルトナー・ニコラス・エイ
(72)【発明者】
【氏名】オマホニー・エヴァン・ピー
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0166035(US,A1)
【文献】特開平04-329949(JP,A)
【文献】特表2014-503267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科用インプラントであって、
膝蓋骨部品を備え、前記膝蓋骨部品は、
(i)それぞれ中にアンダーカットが形成された複数のポケットが形成された後部ベース表面と、(ii)外側に延びる複数のペグを有する前部ベース表面と、を含む固体金属ベースと、
前記前部ベース表面及び前記ペグ上に配置された多孔質金属コーティングと、
前記固体金属ベースの前記後部ベース表面に成形され、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成された後部ベアリング表面を有するポリマーベアリングと、を含
前記固体金属ベースは、前記後部ベース表面と前記前部ベース表面との間に延びる周囲側壁を更に含み、
前記周囲側壁は、その中に形成された複数のポケットを有し、
前記周囲側壁に形成された前記ポケットのそれぞれは、その中に配置された前記多孔質金属コーティングを有する、整形外科用インプラント。
【請求項2】
前記ポリマーベアリングは、前記固体金属ベースの前記ポケット内に成形されている、請求項1に記載の整形外科用インプラント。
【請求項3】
各前記ポケットの後端は、前記後部ベース表面に形成された開口部によって画定され、
各前記ポケットの前端は、前記開口部から前方に間隔を置いて配置されたベース壁によって画定され、
前記ポケットの上側及び下側は、前記開口部から前記ベース壁まで延びる一対の側壁によって画定され、前記側壁はその中に形成された前記アンダーカットを有する、請求項1に記載の整形外科用インプラント。
【請求項4】
前記アンダーカットを画定する前記側壁の表面は、丸みを帯びた表面を含む、請求項3に記載の整形外科用インプラント。
【請求項5】
前記後部ベース表面における前記複数のポケットは、互いに開口する複数の隣接するポケットを含む、請求項1に記載の整形外科用インプラント。
【請求項6】
前記膝蓋骨部品はドーム型膝蓋骨部品を含む、請求項1に記載の整形外科用インプラント。
【請求項7】
前記ポケットのそれぞれは、その中に配置された前記多孔質金属コーティングを有する、請求項1に記載の整形外科用インプラント。
【請求項8】
整形外科用インプラントであって、
膝蓋骨部品を備え、前記膝蓋骨部品は、
(i)中に複数のポケットが形成された後部ベース表面と、(ii)外側に延びる複数のペグを有する前部ベース表面と、を含む固体金属ベースであって、(a)各前記ポケットの後端は、前記後部ベース表面に形成された開口部によって画定され、(b)各前記ポケットの前端は、前記開口部から前方に間隔を置いて配置されたベース壁によって画定され、(c)前記ポケットの上側及び下側は、前記開口部から前記ベース壁まで延びる一対の側壁によって画定され、(d)前記複数のポケットは、互いに開口する複数の隣接するポケットを含む、固体金属ベースと、
前記前部ベース表面及び前記ペグ上に配置された多孔質金属コーティングと、
前記固体金属ベースの前記後部ベース表面に成形され、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成された後部ベアリング表面を有するポリマーベアリングと、を含
前記固体金属ベースは、前記後部ベース表面と前記前部ベース表面との間に延びる周囲側壁を更に含み、
前記周囲側壁は、その中に形成された複数のポケットを有し、
前記周囲側壁に形成された前記ポケットのそれぞれは、その中に配置された前記多孔質金属コーティングを有する、整形外科用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、移植可能な整形外科用人工膝関節に関し、より具体的には、整形外科用人工膝関節の移植可能な膝蓋骨部品に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の生涯の間に、例えば、疾患又は外傷の結果として、患者に関節置換術を実施することが必要となる場合がある。関節置換術は、患者の1つ以上の骨に移植されるプロテーゼの使用を伴う場合がある。膝蓋骨置換術の場合、整形外科用プロテーゼが患者の膝蓋骨に移植される。具体的には、人工膝蓋骨部品は、膝の伸展及び屈曲中にその後面が大腿骨部品と関節接合するように、患者の天然膝蓋骨に固定される。
【0003】
従来のドーム型膝蓋骨部品は、ドーム状のポリマーベアリングとして具体化されている。他のタイプの膝蓋骨部品には、大腿骨のベアリング表面に適合するように設計された適合ベアリング又は解剖学的ベアリングが含まれる。ドーム型膝蓋骨部品は、人工膝関節の膝蓋骨部品と大腿骨部品との間のより大きな動きを可能にするが、解剖学的膝蓋骨部品は大腿骨部品に比べてより拘束されている。いずれのタイプの膝蓋骨部品も、所与の外科的処置のニーズに適合する臨床的利点を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、整形外科用インプラントは、膝蓋骨部品を含む。膝蓋骨部品は、中にいくつかのポケットが形成された後部ベース表面を含む固体金属ベースを有する。各ポケットは、その中に形成されたアンダーカットを有する。固体金属ベースはまた、前部ベース表面を有し、そこからいくつかのペグが外側に延びている。多孔質金属コーティングは、固体金属ベースの前部ベース表面及びペグ上に配置されている。ポリマーベアリングは、固体金属ベースの後部ベース表面に成形されている。ポリマーベアリングは、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成された後部ベアリング表面を有する。
【0005】
一実施形態では、ポリマーベアリングは、固体金属ベースのポケット内に成形されている。
【0006】
例示的に、各ポケットの後端は、後部ベース表面に形成された開口部によって画定され、各ポケットの前端は、開口部から前方に間隔を置いて配置されたベース壁によって画定される。ポケットの内側及び外側は、開口部からベース壁まで延びる一対の側壁によって画定される。側壁はその中に形成されたアンダーカットを有する。
【0007】
一実施形態では、アンダーカットを画定する側壁の表面は、丸みを帯びた表面を有する。
【0008】
例示的に、固体金属ベースのいくつかの隣接するポケットは、互いに開口している。
【0009】
一実施形態では、固体金属ベースは、後部ベース表面と前部ベース表面との間に延びる周囲側壁を更に含む。周囲側壁は、その中に形成されたいくつかのポケットを有し、周囲側壁に形成された各ポケットは、その中に配置された多孔質金属コーティングを有する。
【0010】
例示的に、膝蓋骨部品は、ドーム型膝蓋骨部品又は解剖学的膝蓋骨部品として具体化されてもよい。
【0011】
別の態様によれば、整形外科用インプラントは、膝蓋骨部品を含む。膝蓋骨部品は、中にいくつかのポケットが形成された後部ベース表面と、外側に延びるいくつかのペグを有する前部ベース表面とを有する固体金属ベースを含む。各ポケットの後端は、後部ベース表面に形成された開口部によって画定され、各ポケットの前端は、開口部から前方に間隔を置いて配置されたベース壁によって画定される。ポケットの内側及び外側は、開口部からベース壁まで延びる一対の側壁によって画定される。いくつかの隣接するポケットは互いに開口している。多孔質金属コーティングは、固体金属ベースの前部ベース表面及びペグ上に配置されている。ポリマーベアリングは、固体金属ベースの後部ベース表面に成形されている。ポリマーベアリングは、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成された後部ベアリング表面を有する。
【0012】
一実施形態では、ポリマーベアリングは、固体金属ベースのポケット内に成形されている。
【0013】
一実施形態では、アンダーカットを画定する側壁の表面は、丸みを帯びた表面を有する。
【0014】
一実施形態では、固体金属ベースは、後部ベース表面と前部ベース表面との間に延びる周囲側壁を更に含む。周囲側壁は、その中に形成されたいくつかのポケットを有し、周囲側壁に形成された各ポケットは、その中に配置された多孔質金属コーティングを有する。
【0015】
例示的に、膝蓋骨部品は、ドーム型膝蓋骨部品又は解剖学的膝蓋骨部品として具体化されてもよい。
【0016】
本開示の更に別の態様によれば、膝蓋骨部品を製造する方法は、固体金属ベースの前面及びいくつかのペグ上に多孔質金属コーティングを配置することを含む。ポリマーベアリングは、ポリマーベアリングの前面の一部が固体金属ベースの後面に形成されたいくつかのポケット内に配置されるように、固体金属ベースの後面上に成形される。ポリマーベアリングの後面は、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成された膝蓋骨ベアリング表面を形成する。
【0017】
例示的に、多孔質金属コーティング及び固体金属ベースは、一体型金属部品として3D印刷される。
【0018】
一実施形態では、固体金属ベースのポケットを画定するいくつかの側壁は、その中に形成されたアンダーカットを有する。ポリマーベアリングは、ポリマーベアリングの前面の一部がポケットのアンダーカットを画定する側壁に成形されるように、固体金属ベースの後面上に成形される。
【0019】
ポリマーベアリングは、ドーム型膝蓋骨ベアリング表面又は解剖学的膝蓋骨ベアリング表面のいずれかを含むように成形されてもよく、これらの両方は、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
詳細な説明は、具体的には、以下の図面を参照する。
図1】整形外科用人工膝関節の金属裏打ちドーム型膝蓋骨部品の斜視図である。
図2図1の金属裏打ちドーム型膝蓋骨部品の上面立面図である。
図3図1の金属裏打ちドーム型膝蓋骨部品の前面立面図である。
図4】矢印の方向から見た、図3の線4-4に沿った断面図であり、説明を分かりやすくするために、多孔質金属コーティングは図4の断面図に示されていないことに留意されたい。
図5図1の金属裏打ちドーム型膝蓋骨部品の固体金属ベースの斜視図である。
図6図5の固体金属ベースの後面立面図である。
図7図5の固体金属ベースの上面立面図である。
図8図6と同様の図であるが、後面の薄層が除去された固体金属ベースを示す図である。
図9】矢印の方向から見た、図6の線9-9に沿った断面図であり、説明を分かりやすくするために、多孔質金属コーティングは図9の断面図に示されていないことに留意されたい。
図10】固体金属ベースのポケットをより詳細に示す拡大断面図であり、図10は、丸で囲まれた領域によって示されるように、図9から取られた図である。
図11図1と同様の図であるが、整形外科用人工膝関節の金属裏打ち解剖学的膝蓋骨部品を示す図である。
図12図11の金属裏打ち解剖学的膝蓋骨部品の前面の斜視図である。
図13図6と同様の図であるが、ポケット内に配置された多孔質金属コーティングを有する、図1の金属裏打ちドーム型膝蓋骨部品の固体金属ベースを示す図である。
図14図8と同様の図であるが、ポケット内に配置された多孔質金属コーティングを有する、図1の金属裏打ちドーム型膝蓋骨部品の固体金属ベースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の概念は、様々な修正及び代替形態の影響を受けやすいが、その特定の例示的な実施形態は、例として図面に示されており、本明細書において詳細に説明される。しかしながら、本開示の概念を開示された特定の形態に限定する意図はないが、逆に、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内にあるすべての修正、同等物、及び代替物をカバーすることであることを理解されたい。
【0022】
前部、後部、内側、外側、上側、下側などの解剖学的基準を表す用語は、本明細書に記載の整形外科用インプラント又はプロテーゼ及び手術器具に関連して、並びに患者の自然な解剖学的構造に関連して、本明細書全体で使用され得る。このような用語は、解剖学の研究と整形外科の分野の両方でよく理解されている意味を有する。書面による明細書及び特許請求の範囲におけるこのような解剖学的基準用語の使用は、別段の記載がない限り、それらのよく理解されている意味と一致することを意図している。
【0023】
ここで図1図4を参照すると、移植可能な人工膝関節の金属裏打ちドーム型膝蓋骨部品10が示されている。以下でより詳細に説明するように、ドーム型膝蓋骨部品10は、固体金属ベース14上に成形されたポリマーベアリング12を含み、一体型(即ち、非モジュール式)最終製品を形成する。ドーム型膝蓋骨部品10のポリマーベアリング12は、患者の遠位大腿骨(図示せず)の外科的に準備された端部に固定された大腿骨部品(図示せず)の一対の顆面と関節接合するように構成された後部ベアリング表面16を含む。特に、ドーム型膝蓋骨部品10の後部ベアリング表面16は、外側関節表面18及び内側関節表面20を含む。関節表面18、20は、大腿骨部品(図示せず)の外側顆面及び内側顆面とそれぞれ関節接合するように構成される。そのような大腿骨部品は、患者の天然大腿骨顆の構成を模倣するように構成されており、したがって、人工大腿骨部品の外側顆面及び内側顆面は、天然大腿骨の顆を模倣するように構成されている(例えば、湾曲している)ことを理解されたい。
【0024】
図2図4から分かるように、ドーム型膝蓋骨部品10の固体金属ベース14は、そこから外側に延びるペグ24などのいくつかの固定部材を有するほぼ平坦な前面22を含む。ペグ24は、患者の天然膝蓋骨(図示せず)の外科的に準備された後面に移植されるように構成される。このようにして、ドーム型膝蓋骨部品10の後部ベアリング表面16は、大腿骨部品に面し、それにより、患者の膝の屈曲及び伸展中に、後部ベアリング表面16がその大腿骨顆面と関節接合することが可能となる。
【0025】
ドーム型膝蓋骨部品10のポリマーベアリング12は、膝蓋骨部品10と大腿骨部品(一般に、コバルトクロム合金などの生体適合性金属で構成されるが、セラミックなどの他の材料も使用されてもよい)との間の円滑な関節接合を可能にする材料で構成された一体型ポリマー本体として具体化される。そのような高分子材料の1つは、超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene、UHMWPE)などのポリエチレンである。
【0026】
ここで図4図10を参照すると、固体金属ベース14がより詳細に示されている。その前面22の反対側に、固体金属ベース14は、丸みを帯びた後面26を含み、その上にポリマーベアリング12が成形されている。後面26は、その中に形成されたいくつかのポケット30を有する。以下で説明するように、ポケット30は、固体金属ベース14上に成形されたポリマーベアリング12を成形する際に、ポリマーの交互嵌合を可能にする。図6から分かるように、本明細書に記載の例示的な実施形態では、ポケット30は、クロスハッチタイプのパターンで後面26に配置されているが、他のパターンが使用されてもよい。図4図9及び図10から分かるように、各ポケット30の後端は、後面26に形成された開口部32によって画定され、ポケットの反対側の前端は、ベース壁34によって画定される。ベース壁34は、開口部32から固体金属ベース14の本体の中心に向かって前方に間隔を置いて配置されている。ポケット30の内側及び外側は、開口部32からベース壁34まで延びる一対の側壁36によって画定される。
【0027】
図4図9及び図10から分かるように、各ポケット30は、その中に形成されたアンダーカット40を有する。具体的には、各ポケット30の前端を画定するベース壁34は、各ポケット30の後端を画定する開口部32よりも広い。側壁36は、凹面44に移行してからベース壁34に移行する凸面42に沿って開口部32から離れて延び、それによってアンダーカット40を形成する。アンダーカット40は、混合半径アンダーカット40として示されているが(即ち、アンダーカットを画定する表面は丸みを帯びている)、例えば、設計においてより四角いアンダーカットを含む他の構成も企図されることを理解されたい(例えば、側壁36は、丸みを帯びた移行の代わりに直交移行を画定する)。
【0028】
図4から分かるように、アンダーカット40を画定する側壁36は、ポリマーベアリング12が成形される固体金属ベース14の外側後面26とは反対側を向く表面を形成する。このようにして、アンダーカット40は、固体金属ベース14からのポリマーベアリング12の剥離に抵抗する。
【0029】
図8から分かるように、所与の列のクロスハッチパターンの隣接するポケット30は、互いに開口している。特に、固体金属ベース14の後面26の薄い外層が除去された図8の状況から分かるように、所与の列のポケット30のベース壁34は、固体金属ベース14の幅の大部分にわたって延びている。側壁36は、所与のポケット30を内側/外側方向に閉じるが、上側/下側方向に延びる所与の列のポケット30の間に配置された側壁はない。したがって、上側/側下方向に延びるそのような列内の隣接するポケット30は、互いに開口しており、それによって、ポリマー材料を隣接するポケット30の間で前進させ、ひいてはポケット30間の後面26の区画46の下で前進させることができる。区画46の下側は、ポリマーベアリング12が成形される固体金属ベース14の外側後面26とは反対側を向く表面を形成する。このようにして、区画46の下側は、固体金属ベース14からのポリマーベアリング12の剥離に抵抗する。
【0030】
図5及び図7から分かるように、外側周囲側壁50は、固体金属ベース14の後面26とその前面22との間に延びている。ドーム型膝蓋骨部品10は、内側にオフセットされたドーム型膝蓋骨部品10として具体化されているため、周囲側壁50は、固体金属ベース14の外側よりも固体金属ベース14の内側でより広い。図5図7から分かるように、周囲側壁50の上側、下側、及び内側は、その中に形成されたいくつかの壁ポケット52を有する。壁ポケット52は、周囲側壁50に形成された開口部54から固体金属ベース14の中心まで内側に延びる。固体金属ベース14の後面26に形成されたポケット30と同様に、壁ポケット52は、固体金属ベース14上に成形されたポリマーベアリング12を成形する際に、固体金属ベース14内へのポリマーの交互嵌合を可能にする。
【0031】
図2図5から分かるように、固体金属ベース14の前面22及びペグ24は、その上に配置された多孔質金属コーティング60を有する。図5及び図7から分かるように、多孔質金属コーティング60はまた、固体金属ベース14の壁ポケット50に配置されてもよい。多孔質金属コーティング60は、インディアナ州ワルシャワのDePuy Synthesから市販されているPorocat(登録商標)多孔質コーティングなどの別個に塗布されるコーティングであり得ることを理解されたい。しかしながら、本明細書に記載の例示的な実施形態では、多孔質金属コーティング60は、固体金属ベース14と同時に付加的に製造されることによって固体金属ベース14上に配置され、2つの金属構造の共通の一体型部品を形成する。
【0032】
一例では、多孔質金属コーティング60は、2019年3月26日に出願され、本開示と同じ譲受人に譲渡された米国特許出願第16/365,557号に記載された多孔質材料62で作られてもよく、その開示は、参照により、本明細書にその全体が記載されているかのように組み込まれる。付加製造プロセスとしては、例として、溶融及び焼結などの粉末床融合印刷、コールドスプレー3D印刷、ワイヤフィード3D印刷、融合堆積3D印刷、押出3D印刷、液体金属3D印刷、ステレオリソグラフィ3D印刷、結合剤噴射3D印刷、材料噴射3D印刷などを挙げることができる。
【0033】
一例では、図4を参照すると、多孔質金属コーティング60の多孔質材料62は、複数の接続された単位格子を含むことができる多孔質三次元構造によって画定することができる。各単位格子は、外部幾何学的構造を画定する複数の格子ストラットと、外部幾何学的構造内に配置された複数の内部幾何学的構造を画定する複数の内部ストラットとを含む単位格子構造64を画定することができる。一例では、外部幾何学的構造は菱形十二面体であってもよく、内部幾何学的構造は菱形の三角ねじれ双角錐であってもよい。そのような幾何学的構造は、所与の設計のニーズに合うように変化する可能性があることを理解されたい。更に、多孔質金属コーティング60を構成する単位格子は、所与の設計のニーズに合うように任意の適切な代替幾何学的形状を有してもよいことを理解されたい。
【0034】
多孔質材料62は、金属粉末から形成される。例示的に、金属粉末としては、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、タンタル、又はニオブ粉末を挙げることができるが、これらに限定されない。多孔質金属コーティング60は、固体金属ベース14の前面22及びペグ24が、患者の膝蓋骨の外科的に準備された後面に移植される場合に、ドーム型膝蓋骨部品10への骨の内方成長を促進するのに適した多孔性を有する。
【0035】
本明細書に記載の例示的な実施形態では、多孔質金属コーティング60は、固体金属ベース14の前面22及びペグ24上に、そして壁ポケット50内に直接付加的に製造される。このような実施形態では、2つの構造、即ち、固体金属ベース14及び多孔質金属コーティング60は、共通の付加製造プロセス中に同時に製造され得る。例えば、2つの構造を単一の3D印刷操作で同時に製造して、両方の構造を含む共通の一体型金属部品を得ることができる。あるいは、多孔質金属コーティング60を、固体金属ベース14に固定される別個の部品として製造してもよい。
【0036】
ポリマーベアリング12は、いくつかの異なる技術を使用して固体金属ベース14に組み付けることができる。そうするための1つの例示的な方法は、圧縮成形技術を使用することである。例えば、固体金属ベース14及びポリマーベアリング12を作る材料(例えば、UHMWPE)を、互いに金型内に配置してもよい。その後、これらの部品を、ポリマーベアリング12を作る材料(例えば、UHMWPE)を溶融させるプロセスパラメータの下で互いに圧縮成形し、圧縮成形プロセスによって固体金属ベース14に機械的に固定する。上記のように、溶融ポリマーベアリング12は、固体金属ベース14に成形されると、固体金属ベース14のポケット30、52と互いに嵌合する。金型は、部品を互いに成形するだけでなく、後部ベアリング表面16をポリマーベアリング12に形成するように構成され得ることも理解されたい。
【0037】
成形プロセスで使用するための出発材料(例えば、ポリエチレンなどのポリマー)は、いくつかの異なる形態で提供されてもよい。例えば、出発材料のそれぞれは、プリフォームとして提供されてもよい。本明細書において、「プリフォーム」という用語は、ポリマー樹脂粒子のラム押出又は圧縮成形などによって、ロッド、シート、ブロック、スラブなどに統合された物品を意味する。「プリフォーム」という用語はまた、市販のプリフォームの中間機械加工によって作製され得るプリフォーム「パック」を含む。ポリエチレンプリフォームなどのポリマープリフォームは、前処理又は事処置されたいくつかの異なる変形形態で提供されてもよい。例えば、架橋又は非架橋(例えば、照射又は非照射)プリフォームを利用することができる。そのようなプリフォームは、その中に存在する任意のフリーラジカルを除去(例えば、再溶解又は急冷)又は安定化する(例えば、抗酸化剤としてのビタミンEの添加)ように処理することができる。あるいは、プリフォームはそのような方法で処理されなくてもよい。
【0038】
出発材料(例えば、ポリマー及びコポリマー)はまた、粉末として提供されてもよい。本明細書において「粉末」とは、樹脂粒子を意味する。プリフォームに関して上述したのと同様に、粉末は、前処理又は前処置されたいくつかの異なる変形形態で提供されてもよい。例えば、架橋又は非架橋(例えば、照射又は非照射)粉末を利用することができる。
【0039】
図11及び図12に示されるように、本開示の概念は、ドーム型膝蓋骨部品10に関連して本明細書で説明されてきたが、本開示の概念は、解剖学的部品70の設計においても使用できることを理解されたい。更に、固体金属ベース14の共通設計が、ドーム型膝蓋骨部品と解剖学的膝蓋骨部品の両方に使用され得ることが企図される。このような構成では、同じ固体金属ベース14が使用され、得られる部品のタイプは、ポリマーベアリング12を形成するために使用される金型の構成によって決まる。
【0040】
図13及び図14に示されるように、多孔質金属コーティング60は、固体金属ベース14の追加の位置に配置されてもよい。例えば、多孔質金属コーティング60は、隣接するポケット30間の開放領域(即ち、ポケット30間の後面26の区画46の下の領域)を含めて、ポケット30内に配置されてもよい。そのような実施形態では、溶融ポリマー材料(例えば、UHMWPE)は、ポリマーベアリング12が固体金属ベース14に成形されるときに、ポケット30を画定する構造体と互いに嵌合するだけでなく、ポケット30内の多孔質金属コーティング60とも互いに嵌合する。
【0041】
図面及び前述の説明において本開示を詳細に例示及び説明してきたが、このような例示及び説明は、性質上、例示的なものであり、限定的なものではないと見なされるべきであり、例示的な実施形態のみが示され、説明されており、本開示の精神の範囲内にあるすべての変更及び修正が保護されることが望まれることが理解される。
【0042】
本開示は、本明細書に記載の方法、装置、及びシステムの様々な特徴から生じる複数の利点を有する。本開示の方法、装置、及びシステムの代替実施形態は、記載された特徴のすべてを含むわけではないが、依然としてそのような特徴の利点の少なくとも一部から利益を得ることに留意されたい。当業者であれば、本発明の特徴の1つ以上を組み込み、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲内に入る方法、装置、及びシステムの独自の実装を容易に考案することができる。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 整形外科用インプラントであって、
膝蓋骨部品を備え、前記膝蓋骨部品は、
(i)それぞれ中にアンダーカットが形成されたいくつかのポケットが形成された後部ベース表面と、(ii)外側に延びるいくつかのペグを有する前部ベース表面と、を含む固体金属ベースと、
前記前部ベース表面及び前記ペグ上に配置された多孔質金属コーティングと、
前記固体金属ベースの前記後部ベース表面に成形され、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成された後部ベアリング表面を有するポリマーベアリングと、を含む、整形外科用インプラント。
(2) 前記ポリマーベアリングは、前記固体金属ベースの前記ポケット内に成形されている、実施態様1に記載の整形外科用インプラント。
(3) 各前記ポケットの後端は、前記後部ベース表面に形成された開口部によって画定され、
各前記ポケットの前端は、前記開口部から前方に間隔を置いて配置されたベース壁によって画定され、
前記ポケットの上側及び下側は、前記開口部から前記ベース壁まで延びる一対の側壁によって画定され、前記側壁はその中に形成された前記アンダーカットを有する、実施態様1に記載の整形外科用インプラント。
(4) 前記アンダーカットを画定する前記側壁の表面は、丸みを帯びた表面を含む、実施態様3に記載の整形外科用インプラント。
(5) 前記いくつかのポケットは、互いに開口するいくつかの隣接するポケットを含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント。
【0044】
(6) 前記固体金属ベースは、前記後部ベース表面と前記前部ベース表面との間に延びる周囲側壁を更に含み、
前記周囲側壁は、その中に形成されたいくつかのポケットを有し、
前記周囲側壁に形成された前記ポケットのそれぞれは、その中に配置された前記多孔質金属コーティングを有する、実施態様1に記載の整形外科用インプラント。
(7) 前記膝蓋骨部品はドーム型膝蓋骨部品を含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント。
(8) 前記膝蓋骨部品は、解剖学的膝蓋骨部品を含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント。
(9) 前記ポケットのそれぞれは、その中に配置された前記多孔質金属コーティングを有する、実施態様1に記載の整形外科用インプラント。
(10) 整形外科用インプラントであって、
膝蓋骨部品を備え、前記膝蓋骨部品は、
(i)中にいくつかのポケットが形成された後部ベース表面と、(ii)外側に延びるいくつかのペグを有する前部ベース表面と、を含む固体金属ベースであって、(a)各前記ポケットの後端は、前記後部ベース表面に形成された開口部によって画定され、(b)各前記ポケットの前端は、前記開口部から前方に間隔を置いて配置されたベース壁によって画定され、(c)前記ポケットの上側及び下側は、前記開口部から前記ベース壁まで延びる一対の側壁によって画定され、(d)前記いくつかのポケットは、互いに開口するいくつかの隣接するポケットを含む、固体金属ベースと、
前記前部ベース表面及び前記ペグ上に配置された多孔質金属コーティングと、
前記固体金属ベースの前記後部ベース表面に成形され、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成された後部ベアリング表面を有するポリマーベアリングと、を含む、整形外科用インプラント。
【0045】
(11) 前記ポリマーベアリングは、前記固体金属ベースの前記ポケット内に成形されている、実施態様10に記載の整形外科用インプラント。
(12) 前記ポケットを画定する前記一対の側壁のそれぞれは、丸みを帯びたアンダーカット表面を画定する、実施態様10に記載の整形外科用インプラント。
(13) 前記固体金属ベースは、前記後部ベース表面と前記前部ベース表面との間に延びる周囲側壁を更に含み、
前記周囲側壁は、その中に形成されたいくつかのポケットを有し、
前記周囲側壁に形成された前記ポケットのそれぞれは、その中に配置された前記多孔質金属コーティングを有する、実施態様10に記載の整形外科用インプラント。
(14) 前記膝蓋骨部品はドーム型膝蓋骨部品を含む、実施態様10に記載の整形外科用インプラント。
(15) 前記膝蓋骨部品は、解剖学的膝蓋骨部品を含む、実施態様10に記載の整形外科用インプラント。
【0046】
(16) 前記ポケットのそれぞれは、その中に配置された前記多孔質金属コーティングを有する、実施態様10に記載の整形外科用インプラント。
(17) 膝蓋骨部品を製造する方法であって、
多孔質金属コーティングを固体金属ベースの(i)前面及び(ii)いくつかのペグ上に配置することと、
(i)ポリマーベアリングの前面の一部が、前記固体金属ベースの後面に形成されたいくつかのポケット内に配置され、(ii)前記ポリマーベアリングの後面が、大腿骨部品の一対の大腿顆と関節接合するように構成された膝蓋骨ベアリング表面を形成する、ように、前記固体金属ベースの前記後面上に前記ポリマーベアリングを成形することと、を含む方法。
(18) 前記多孔質金属コーティングを前記固体金属ベースの前記前面及び前記いくつかのペグ上に配置することは、前記多孔質金属コーティング及び前記固体金属ベースを一体型金属部品として3D印刷することを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記固体金属ベースの前記ポケットを画定するいくつかの側壁は、その中に形成されたアンダーカットを有し、
前記固体金属ベースの前記後面上に前記ポリマーベアリングを成形することは、前記ポリマーベアリングの前記前面の一部が前記ポケットの前記アンダーカットを画定する前記側壁に成形されるように、前記固体金属ベースの前記後面上に前記ポリマーベアリングを成形することを含む、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記固体金属ベースの前記後面上に前記ポリマーベアリングを成形することは、前記ポリマーベアリングの前記後面が、前記大腿骨部品の前記一対の大腿顆と関節接合するように構成されたドーム型膝蓋骨ベアリング表面を形成するように、前記固体金属ベースの前記後面上に前記ポリマーベアリングを成形することを含む、実施態様17に記載の方法。
【0047】
(21) 前記固体金属ベースの前記後面上に前記ポリマーベアリングを成形することは、前記ポリマーベアリングの前記後面が、前記大腿骨部品の前記一対の大腿顆と関節接合するように構成された解剖学的膝蓋骨ベアリング表面を形成するように、前記固体金属ベースの前記後面上に前記ポリマーベアリングを成形することを含む、実施態様17に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14