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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/66 20060101AFI20250409BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20250409BHJP
【FI】
B60N2/66
B60N2/90
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021058091
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022058115
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】63/085,225
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】平尾 勇弥
(72)【発明者】
【氏名】河田 和也
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-084656(JP,A)
【文献】特開2013-085832(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186387(WO,A1)
【文献】特開2016-198121(JP,A)
【文献】特開2019-187953(JP,A)
【文献】特開2017-136239(JP,A)
【文献】米国特許第05748473(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/66
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックを備える乗物用シートであって、
前記シートバックは、
前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、
前記シートバックフレームに配設され、着座者の腰部を支持するランバーサポートと、
前記着座者の状態を検出するセンサと、を備え、
前記ランバーサポートは、前記乗物用シートの幅方向に延在する平板状の樹脂パネルであるプレート部材を有し、
前記プレート部材の背面には、前記ランバーサポートの前記乗物用シートの前後方向における位置を調整する調整機構が配置されており、
前記センサは、前記プレート部材の背面において、前記調整機構を避けた位置に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記調整機構は、前記乗物用シートの幅方向に沿って延在しており、
前記センサは、前記調整機構上方または下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記調整機構には、前記シートバックフレームに接続するワイヤ部材が連結されており、
前記センサは、前記ワイヤ部材を避けた位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記プレート部材は、背面に格子状リブを有しており、
前記センサは、前記格子状リブを避けた位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記プレート部材は、周囲の領域よりも厚みが薄い凹部を備え、
前記凹部に前記センサが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記センサは、前記プレート部材においてシート幅方向における中央から外側へ寄った位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記センサとは異なる部品に接続させた配線部材が、前記センサよりも後方であって、前記乗物用シートの幅方向において、前記センサに対して反対側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記センサは、電波を照射する照射部と、前記着座者から反射された前記電波を受信する受信部と、前記照射部及び前記受信部を内包するハウジングと、を備え、
前記乗物用シートの上下方向において、前記照射部及び前記受信部は、前記調整機構の上方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記着座者の頭部を支持するヘッドレストと、
前記着座者の臀部を支持するシートクッションと、
前記シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームと、
前記シートクッションフレームの下部に配置されたスライドレールと、
前記シートバックフレーム及び前記シートクッションフレームに載置されたパッド部材と、
前記パッド部材を覆うトリムカバーと、を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に着座者の腰部を支持するランバーサポートを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートに着座する着座者の腰部を支持するランバーサポート装置などの腰部支持体を備えた乗物用シートが知られている。例えば、特許文献1には、ランバーサポート装置を備えた車両用シートにおいて、ドップラー式生体センサが、ランバーサポート装置の作動、つまり、樹脂パネルの撓みに伴って樹脂パネルに接触しないように、ランバーサポート装置の下端部とシートバックの着座面との間において、シートバックパッドの内部に配設される構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-199100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の乗物用シートの構成では、センサの位置がシートバックの下端部に限定されてしまい、生体情報の適切な検出という観点からは不利となる可能性がある。また、センサがシートバックパッドに配設されるため、シートバックパッドの着座面の硬さの影響が避けられなかった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ランバーサポートを備える場合においても、センサのレイアウトの自由度を確保しつつ、センサによって適切に生体情報を検出することが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートバックを備える乗物用シートであって、前記シートバックは、前記シートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、前記シートバックフレームに配設され、着座者の腰部を支持するランバーサポートと、前記着座者の状態を検出するセンサと、を備え、前記ランバーサポートは、前記乗物用シートの幅方向に延在する平板状の樹脂パネルであるプレート部材を有し、前記プレート部材の背面には、前記ランバーサポートの前記乗物用シートの前後方向における位置を調整する調整機構が配置されており、前記センサは、前記プレート部材の背面において、前記調整機構を避けた位置に配置されていることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、センサを、調整機構を備えるランバーサポートの背面に配置することができ、センサのレイアウトの自由度を確保しつつ、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0008】
上記の乗物用シートにおいて、前記調整機構は、前記乗物用シートの幅方向に沿って延在しており、前記センサは、前記調整機構上方または下方に配置されているとよい。
上記の構成では、センサを、シート幅方向に延在する調整機構を適切に避けつつ配置し、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0009】
上記の乗物用シートにおいて、前記調整機構には、前記シートバックフレームに接続するワイヤ部材が連結されており、前記センサは、前記ワイヤ部材を避けた位置に配置されているとよい。
上記の構成では、センサを、調整機構に連結されたワイヤ部材を適切に避けつつ配置し、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0010】
上記の乗物用シートにおいて、前記プレート部材は、背面に格子状リブを有しており、前記センサは、前記格子状リブを避けた位置に配置されているとよい。
上記の構成では、センサを、プレート部材の背面において格子状リブを避けつつ配置し、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記プレート部材は、周囲の領域よりも厚みが薄い凹部を備え、前記凹部に前記センサが取り付けられているとよい。
上記の構成では、センサを、プレート部材の凹部に配置することで、センサの配置が安定なものとなり、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0012】
上記の乗物用シートにおいて、前記センサは、前記プレート部材においてシート幅方向における中央から外側へ寄った位置に配置されているとよい。
上記の構成では、着座者の身体において背骨周りは凹んでいるため、着座者の身体において常に着座面に触れている背中の左側又は右側においてセンサによって生体情報を検知することが可能となる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記センサとは異なる部品に接続させた配線部材が、前記センサよりも後方であって、前記乗物用シートの幅方向において、前記センサに対して反対側に配置されているとよい。
上記の構成では、センサとは異なる部品に接続させた配線部材がセンサに影響を与えてしまうことが抑制される。
【0014】
上記の乗物用シートにおいて、前記センサは、電波を照射する照射部と、前記着座者から反射された前記電波を受信する受信部と、前記照射部及び前記受信部を内包するハウジングと、を備え、前記乗物用シートの上下方向において、前記照射部及び前記受信部は、前記調整機構の上方に配置されているとよい。
上記の構成では、照射部及び受信部が調整機構を避けるように配置されるため、センサによって生体情報を適切に検知することが可能となる。
【0015】
上記の乗物用シートにおいて、前記着座者の頭部を支持するヘッドレストと、前記着座者の臀部を支持するシートクッションと、前記シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームと、前記シートクッションフレームの下部に配置されたスライドレールと、前記シートバックフレーム及び前記シートクッションフレームに載置されたパッド部材と、前記パッド部材を覆うトリムカバーと、を備えるとよい。
上記の構成では、センサ及びランバーサポートを備える乗物用シートを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の乗物用シートによれば、センサを、調整機構を備えるランバーサポートの背面に配置することができ、センサのレイアウトの自由度を確保しつつ、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、センサを、シート幅方向に延在する調整機構を適切に避けつつ配置し、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、センサを、調整機構に連結されたワイヤ部材を適切に避けつつ配置し、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、センサを、プレート部材の背面において格子状リブを避けつつ配置し、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、センサを、プレート部材の凹部に配置することで、センサの配置が安定なものとなり、センサによって適切に生体情報を検出することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、着座者の身体において背骨周りは凹んでいるため、着座者の身体において常に着座面に触れている背中の左側又は右側においてセンサによって生体情報を検知することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、センサとは異なる部品に接続させた配線部材がセンサに影響を与えてしまうことが抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、照射部及び受信部が調整機構を避けるように配置されるため、センサによって生体情報を適切に検知することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、センサ及びランバーサポートを備える乗物用シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観図である。
図2】車両用シートが備えるシートフレームの前方斜視図である。
図3】シートバックフレームの後方斜視図である。
図4】ランバーサポートのプレート部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1乃至図4を参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートについて説明する。本実施形態に係る乗物用シートとして、車両に搭載される車両用シートを例に挙げて説明する。
【0019】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
本明細書における方向を示す用語に関し、図1のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの着座者(乗員)から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致している。
【0021】
[1.車両用シートS]
本実施形態に係る車両用シートSは、図1に図示した外観を有している。なお、図1中、車両用シートSの一部については、図示の都合上、トリムカバーを外した構成にて図示している。車両用シートSは、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバックS1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッションS2、及び、シートバックS1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレストS3を主な構成要素として有する。図2に示されるように、車両用シートSは、シートバックフレームF1及びシートクッションフレームF2を主構成要素とするシートフレームFを骨格として有している。
【0022】
シートバックS1はシートバックフレームF1にシートバックパッドS11を載置し、更にシートバックパッドS11をトリムカバーS12で覆うことで構成されている。シートクッションS2は、骨格となるシートクッションフレームF2にシートクッションパッドS21を載置し、更にシートクッションパッドS21をトリムカバーS22で覆うことで構成されている。ヘッドレストS3は、不図示の芯材にヘッドレストパッドS31を配して、トリムカバーS32で被覆して形成されている。シートバックS1のシートバックパッドS11やシートクッションS2のシートクッションパッドS21はウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材である。
【0023】
シートクッションフレームF2は、その下部に配置されたスライドレール装置RのアッパレールRUに対して連結されている。かかる構成により、車体フロアに固定されているロアレールRLに沿ってアッパレールRUが移動すると、シートクッションフレームF2を含む車両用シートS全体がスライド移動するようになる。
【0024】
なお、本実施形態において、シートクッションフレームF2は、図2に示すように回動リンクXLを介してアッパレールRUに連結されている。この回動リンクXLは、幅方向においてシートクッションS2の両脇に配置されたリンク部材であり、幅方向に沿う回動軸を中心にして回動する。そして、回動リンクXLがシートクッションS2を連れ回りながら回動することで、上下方向におけるシートクッションS2の位置が調整されるようになる。
【0025】
また、シートクッションフレームF2の後端部には、シートバックフレームF1の下端部が可動機構としてのリクライニング装置80を介して連結されている。このリクライニング装置80により、シートバックフレームF1を含むシートバックS1は、シートクッションS2に対する傾き角度が調整することが可能な状態でシートクッションS2に連結されている。すなわち、シートバックS1は、幅方向に沿うリクライニング軸81を中心にして、シートクッションS2に対して相対的に回動することが可能である。
【0026】
[2.シートバックフレームF1]
以下、車両用シートSが有するシートバックフレームF1の構成について図2及び図3を参照しながら説明する。シートバックフレームF1は、図2に示すように、シートフレームFを前方から見たときに方形枠をなしている。
【0027】
シートバックフレームF1の構造について説明すると、シートバックフレームF1は、図2及び図3に示すように、シート幅方向における両端部に設けられた一対のサイドフレーム10を有する。また、シートバックフレームF1は、同図に示すように、各サイドフレーム10の上端部に取り付けられることでサイドフレーム10の間を連結するアッパフレーム11を有する。更に、シートバックフレームF1は、同図に示すように、各サイドフレーム10の下端部に取り付けられることでサイドフレーム10の間を連結するロアメンバーフレーム12を有する。さらに、サイドフレーム10の間には、着座者の背を後方から支持するSバネ15が架設されている。
【0028】
このアッパフレーム11は、正面視で下向きU字状に成形された部品であり、金属製の中空パイプ部材によって構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、アッパフレーム11が中実部材によって構成されてもよい。このアッパフレーム11の両自由端側は、左右のサイドフレーム10の上方に各々接合されている。なお、アッパフレーム11のうち、上方に配置される水平部分の前面には、ヘッドレストピラーを支持する角筒型のピラーガイド11aが取り付けられている。このピラーガイド11aは、幅方向に間隔を空けて一対設けられている。
【0029】
次に、サイドフレーム10は、側方視で紡錘状の外形形状をなしている。すなわち、サイドフレーム10を側方から見たとき、サイドフレーム10の前端部が上下方向の中途位置から円弧状に膨出している。なお、車両用シートSが使用状態にあるとき(より厳密には、シートバックS1が基準位置に在るとき)、サイドフレーム10は、鉛直方向に対してやや傾いた(後傾した)方向に沿って長く延出している。
【0030】
次に、ロアメンバーフレーム12について説明する。ロアメンバーフレーム12は、板金を加工することによって構成され、サイドフレーム10の下端部間に架設されている。また、ロアメンバーフレーム12の上縁部及び下縁部は、それぞれ、前方に曲げ加工された形状を有して形成されている。
【0031】
連結フレーム13は、シート幅方向に沿って延びており、アッパフレーム11の延出部11b同士を連結するものである。この連結フレーム13は、金属の板状プレートを所定形状に構成されている。
【0032】
[3.シートフレームFの特徴]
本実施形態のシートバックフレームF1には、ランバーサポート50(ランバーサポート装置、腰部支持体)が配設されている。ランバーサポート50は、樹脂パネルであるプレート部材51と、電磁モータ(図示省略)を内蔵した調整機構70と、ワイヤ部材71とにより構成されている。プレート部材51は、弾性変形可能な樹脂により概して矩形の板形状に形成されている。そして、プレート部材51は、Sバネ15の下方に配設されている。プレート部材51の配設位置は、図2に示すように、着座者の腰部を支持する位置とされている。
【0033】
プレート部材51は、シート幅方向に延びる姿勢で、支持ワイヤとしてのワイヤ部材71の前方側に配設されている。調整機構70が作動してワイヤ部材71が前方に突出するように湾曲することで、プレート部材51が中央部において、前方側に向かって弾性的に撓む。
【0034】
このような構造により、ランバーサポート50は、着座者の腰部の支持位置を変更することが可能とされている。具体的には、調整機構70の電磁モータが作動していない状態において、ワイヤ部材71は、引っ張られておらず、プレート部材51は、図2に示すように、撓むことなく、平らな状態とされている。一方、調整機構70の電磁モータが作動すると、ワイヤ部材71が引っ張られて、プレート部材51が、中央部において、前方に向かって撓む。
【0035】
このとき、撓んだプレート部材51により、シートバックパッドS11も前方に向かって撓み、その撓んだシートバックパッドS11により着座者の腰部が後方から前方に向かって押される。これにより、着座者の腰部の支持位置が変更される。つまり、電磁モータの作動量に応じて、プレート部材51の撓み量(前方への突出量)が変化し、着座者の腰部の支持位置が任意に変更される。これにより、着座者の腰部を適切に支持することができる。
【0036】
また、ランバーサポート50が配設されているシートバックS1には、ドップラー式生体センサであるセンサ60も配設されている。センサ60は、着座者の生体情報を検出するセンサである。着座者の生体情報とは、心拍数,脈拍数,脈拍の大きさ,呼吸数,呼吸の大きさを示す情報である。つまり、センサ60は、着座者の心拍と呼吸とを検出することが可能な生体センサである。
【0037】
詳しくは、センサ60は、電波を照射する照射部61と、電波を受信する受信部62と、照射部61と受信部62とを内包する樹脂製のハウジング63とにより構成されている。なお、受信部62により照射される電波は、生体の皮膚表面で反射する周波数の電波であればよいが、通常、マイクロ波であることが好ましい。
【0038】
以上のように、シートバックパッドS11の内部に配設されたセンサ60は、照射部61からシートバックS1の着座面に向かって電波を照射する。この際、照射部61により照射された電波が、着座者の皮膚表面で反射し、その反射した電波を、受信部62が受信する。着座者の皮膚表面は、心拍や呼吸により微細に動いているため、照射部61が照射した電波の周波数と、受信部62が受信した電波の周波数とは異なる。そこで、照射部61が照射した電波の周波数と、受信部62が受信した電波の周波数との差異に基づいて、着座者の生体情報、つまり、呼吸数,心拍数等が検出される。つまり、ドップラー効果を利用して、着座者の生体情報が検出される。
【0039】
このように、センサ60は、着座者の皮膚表面の微細な動きに基づいて、着座者の生体情報を検出するため、その配設位置は限定される。詳しくは、センサ60は、樹脂製のハウジングを備えており、所定の硬度を有しているため、着座者の着座時における違和感を防止するべく、シートバックパッドS11の着座面に露出しないようになっている。このため、センサ60は、シートバックパッドS11の着座面に露出しないようにプレート部材51の背面51aに配設されている。
【0040】
具体的には、ランバーサポート50は、シート幅方向に延在する平板状のプレート部材51を有し、プレート部材51の背面51aには、ランバーサポート50の前後方向における位置を調整する調整機構70が配置されており、センサ60は、プレート部材51の背面51aにおいて、調整機構70を避けた上方の位置に配置されている。
【0041】
このように構成された本実施形態の車両用シートSでは、センサ60を、調整機構70を備えるランバーサポート50の背面(詳細には、プレート部材51の背面51a)に配置することができ、センサ60のレイアウトの自由度を確保しつつ、センサ60によって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0042】
また、調整機構70は、シート幅方向に沿って延在しており、センサ60は、調整機構70を上方または下方に避けた位置に配置されているとよい。なお、図示した例では、センサ60は、調整機構70を上方に避けた位置に配置されている。このような構成によれば、センサ60を、シート幅方向に延在する調整機構70を適切に避けつつ配置し、センサ60によって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0043】
また、調整機構70には、シートバックフレームF1のサイドフレーム10に接続するワイヤ部材71が連結されており、センサ60は、ワイヤ部材71を避けた位置に配置されている。具体的には、センサ60は、上下方向においてワイヤ部材71よりも上方に配置されている。このような構成によれば、センサ60を、調整機構70に連結されたワイヤ部材71を適切に避けつつ配置し、センサ60によって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0044】
また、プレート部材51は、背面51aに格子状リブ52を有しており、センサ60は、格子状リブ52を避けた位置に配置されている(図3)。具体的には、図3に示すように、センサ60は、プレート部材51の背面51aから後方に突出して形成された格子状リブ52の、突出している部分を避けた位置に配置されている。このような構成によれば、センサ60を、プレート部材51の背面51aにおいて格子状リブ52を避けつつ配置し、センサ60によって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0045】
また、プレート部材51は、周囲の領域よりも前後方向の厚みが薄い凹部53を備え、この凹部53にセンサ60が取り付けられている(図3及び図4)。このような構成によれば、センサ60を、プレート部材51の背面51aに形成された凹部53に配置することで、センサ60の配置が安定なものとなり、センサ60によって適切に生体情報を検出することが可能となる。
【0046】
また、センサ60は、プレート部材51の背面51aにおいて、中心から偏心した位置に配置されている(図4)。このような構成によれば、着座者の身体において背骨周りは凹んでいるため、着座者の身体において常に着座面に触れている背中の左側又は右側においてセンサ60によって生体情報を検知することが可能となる。
【0047】
また、センサ60とは異なる部品(電装部品)に接続させたハーネス等の配線部材(不図示)が、センサ60よりも後方であって、シート幅方向において、センサ60に対して反対側に配置されているとよい。このような構成によれば、センサ60とは異なる部品に接続させた配線部材がセンサ60に影響を与えてしまうことが抑制される。
【0048】
また、センサ60は、電波を照射する照射部61と、着座者から反射された電波を受信する受信部62と、照射部61及び受信部62を内包するハウジング63と、を備え、上下方向において、照射部61及び受信部62は、調整機構70の上方に配置されている(図4)。このような構成によれば、照射部61及び受信部62が、調整機構70を避けつつ、適切な高さ位置に配置されるため、センサ60によって生体情報を適切に検知することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の車両用シートSは、着座者の頭部を支持するヘッドレストS3と、着座者の臀部を支持するシートクッションS2と、シートクッションS2の骨格を構成するシートクッションフレームF2と、シートクッションフレームF2の下部に配置されたスライドレール装置Rと、シートバックフレームF1に載置されたシートバックパッドS11と、シートクッションフレームF2に載置されたシートクッションパッドS21と、シートバックパッドS11を覆うトリムカバーS12と、シートクッションパッドS21を覆うトリムカバーS22と、を備えている。このような構成によれば、センサ60及びランバーサポート50を備える車両用シートSを提供することが可能となる。
【0050】
<変形例>
以上までに、本実施形態に係る車両用シートSの構成について説明してきたが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0051】
上記の実施形態では、センサ60は、プレート部材51の背面51aにおいて、調整機構70を避けた上方の位置に配置されていたが、センサ60は、プレート部材51の背面51aにおいて、調整機構70を避けた下方の位置に配置されていてもよい。
【0052】
上記の実施形態では、センサ60は、プレート部材51の背面51aにおいて、中心から左側に若干偏心した位置に配置されていたが、センサ60は、プレート部材51の背面51aにおいて、中心から右側に若干偏心した位置に配置されていてもよい。
【0053】
以上、本実施形態に係る乗物用シートを、車両に搭載される車両用シートを例に説明した。本実施形態に係る乗物用シートは、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートバック
S11 シートバックパッド(パッド部材)
S12 トリムカバー(表皮材)
S2 シートクッション
S21 シートクッションパッド(パッド部材)
S22 トリムカバー(表皮材)
S3 ヘッドレスト
S31 ヘッドレストパッド(パッド部材)
S32 トリムカバー(表皮材)
R スライドレール装置(スライドレール)
RU アッパレール
RL ロアレール
XL 回動リンク
F シートフレーム
F1 シートバックフレーム
F2 シートクッションフレーム
10 サイドフレーム
11 アッパフレーム
11a ピラーガイド
11b 延出部
12 ロアメンバーフレーム
13 連結フレーム
15 Sバネ
50 ランバーサポート
51 プレート部材
51a 背面
52 格子状リブ
53 凹部
60 センサ
61 照射部
62 受信部
63 ハウジング
70 調整機構
71 ワイヤ部材
80 リクライニング装置
81 リクライニング軸
図1
図2
図3
図4