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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20250409BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20250409BHJP
   F04C 15/06 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
F04C2/10 341E
F04C15/00 E
F04C15/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020144479
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039456
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】永井 友三
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-203381(JP,A)
【文献】特開2006-233844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/08- 2/28
F04C 14/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸を中心に回転可能であり、外歯を有するインナーロータと、前記インナーロータを囲み、前記外歯に噛み合う内歯を有するアウターロータと、を有するポンプ機構と、
前記ポンプ機構を収容するポンプ収容部と、前記ポンプ収容部に繋がる吸入部及び吐出部と、を有するポンプハウジングと、
を備え、
前記ポンプハウジングは、
前記ポンプ機構の軸方向一方側において前記ポンプ機構と軸方向に対向する第1端面と、
前記ポンプ機構の軸方向他方側において前記ポンプ機構と軸方向に対向し、前記第1端面との間で前記ポンプ機構を軸方向に挟む第2端面と、
を有し、
前記吸入部は、
前記第1端面から軸方向一方側に窪む第1吸入側凹部と、
前記第2端面から軸方向他方側に窪む第2吸入側凹部と、
を有し、
前記吐出部は、
前記第1端面から軸方向一方側に窪む第1吐出側凹部と、
前記第2端面から軸方向他方側に窪む第2吐出側凹部と、
を有し、
前記第1吸入側凹部の底面及び前記第2吸入側凹部の底面は、軸方向と交差する面に対して傾斜する吸入側傾斜面をそれぞれ有し、
前記第1吐出側凹部の底面及び前記第2吐出側凹部の底面は、軸方向と交差する面に対して傾斜する吐出側傾斜面をそれぞれ有し、
前記第1吸入側凹部の前記吸入側傾斜面と前記第2吸入側凹部の前記吸入側傾斜面とは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なり、かつ、前記中心軸の回りの周方向の一方側に向かうに従って軸方向で互いに近づく向きに傾斜し、
前記第1吐出側凹部の前記吐出側傾斜面と前記第2吐出側凹部の前記吐出側傾斜面とは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なり、かつ、周方向の一方側に向かうに従って軸方向で互いに離れる向きに傾斜し、
前記第1吸入側凹部の底面及び前記第2吸入側凹部の底面は、軸方向と交差し、前記吸入側傾斜面の周方向の他方側に繋がる吸入側平坦面をそれぞれ有し、
前記第1吐出側凹部の底面及び前記第2吐出側凹部の底面は、軸方向と交差し、前記吐出側傾斜面の周方向の一方側に繋がる吐出側平坦面をそれぞれ有し、
前記第1吸入側凹部における前記吸入側平坦面と前記吸入側傾斜面との境界部は、軸方向から見て、前記第2吸入側凹部における前記吸入側平坦面と前記吸入側傾斜面との境界部と重なり、
前記第1吐出側凹部における前記吐出側平坦面と前記吐出側傾斜面との境界部は、軸方向から見て、前記第2吐出側凹部における前記吐出側平坦面と前記吐出側傾斜面との境界部と重なっている、電動ポンプ。
【請求項2】
前記第1吸入側凹部の前記吸入側平坦面と前記第1吐出側凹部の前記吐出側平坦面とは、軸方向において互いに同じ位置に配置されている、請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記第1吸入側凹部及び前記第2吸入側凹部は、前記吸入側傾斜面における周方向の一方側の端部から前記ポンプ機構に向かって軸方向に延びる面をそれぞれ有する、 請求項1または2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記第1吐出側凹部及び前記第2吐出側凹部は、前記吐出側傾斜面における周方向の他方側の端部から前記ポンプ機構に向かって軸方向に延びる面をそれぞれ有する、 請求項1からのいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
軸方向から見たとき、
前記第1吸入側凹部、前記第2吸入側凹部、前記第1吐出側凹部、及び前記第2吐出側凹部は、前記中心軸回りの周方向に沿った円弧形状に延びている、 請求項1からのいずれか1項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
外歯を有するインナーロータとインナーロータと、インナーロータを囲み、インナーロータの外歯に噛み合う内歯を有するアウターロータと、を有するポンプ機構を備えるポンプが知られている。例えば、特許文献1には、そのようなポンプとして、トロコイド式ギヤポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平06-67876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなポンプにおいては、インナーロータ及びアウターロータを収容するポンプ収容部と、ポンプ収容部に繋がる吸入部及び吐出部と、が設けられる。吸入部からポンプ収容部内に流体が流入すると、流体の圧力によって、ポンプ収容部内のインナーロータ及びアウターロータが傾く問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心に回転可能であり、外歯を有するインナーロータと、前記インナーロータを囲み、前記外歯に噛み合う内歯を有するアウターロータと、を有するポンプ機構と、前記ポンプ機構を収容するポンプ収容部と、前記ポンプ収容部に繋がる吸入部及び吐出部と、を有するポンプハウジングと、を備える。前記ポンプハウジングは、前記ポンプ機構の軸方向一方側において前記ポンプ機構と軸方向に対向する第1端面と、前記ポンプ機構の軸方向他方側において前記ポンプ機構と軸方向に対向し、前記第1端面との間で前記ポンプ機構を軸方向に挟む第2端面と、を有する。前記吸入部は、前記第1端面から軸方向一方側に窪む第1吸入側凹部と、前記第2端面から軸方向他方側に窪む第2吸入側凹部と、を有する。前記吐出部は、前記第1端面から軸方向一方側に窪む第1吐出側凹部と、前記第2端面から軸方向他方側に窪む第2吐出側凹部と、を有する。前記第1吸入側凹部の底面及び前記第2吸入側凹部の底面は、軸方向と交差する面に対して傾斜する吸入側傾斜面をそれぞれ有する。前記第1吐出側凹部の底面及び前記第2吐出側凹部の底面は、軸方向と交差する面に対して傾斜する吐出側傾斜面をそれぞれ有する。前記第1吸入側凹部の前記吸入側傾斜面と前記第2吸入側凹部の前記吸入側傾斜面とは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なり、かつ、前記中心軸の回りの周方向の一方側に向かうに従って軸方向で互いに近づく向きに傾斜している。前記第1吐出側凹部の前記吐出側傾斜面と前記第2吐出側凹部の前記吐出側傾斜面とは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なり、かつ、周方向の一方側に向かうに従って軸方向で互いに離れる向きに傾斜している。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一つの態様によれば、ポンプ機構の振れを抑えることができる電動ポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態の電動ポンプの断面図であって、図5のI-I断面図である。
図2図2は、本実施形態のポンプ機構及び吸入側の構造を示す一部断面を含む斜視図である。
図3図3は、本実施形態のポンプ機構及び吐出側の構造を示す斜視図であって、図5におけるIII-III断面を含む斜視図である。
図4図4は、本実施形態のポンプ機構と吸入部及び吐出部の構造を示す断面図であって、図5のIV-IV線に沿うポンプハウジング側の断面図と、図6のVI-VI線に沿うポンプカバー側の断面図を含む。
図5図5は、ポンプハウジング側の第1吸入側凹部及び第1吐出側凹部側の構造を示す図である。
図6図6は、ポンプカバーの内面側を示す図である。
図7図7は、ポンプ機構とポンプハウジング側の吸入部及び吐出部との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下で参照する各図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
XYZ座標系において、X軸方向は、図1に示される中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。中心軸Jは、後述するモータ220のシャフト21の中心軸線である。Y軸方向は、X軸と直交する方向のうち、図1の上下方向と平行な方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との両方と直交する方向であり、図1の奥行方向と平行な方向である。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のいずれにおいても、図中に示される矢印の向く側を+側、反対側を-側とする。
【0009】
以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(X軸方向)を単に「軸方向」と称する。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と称する。中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と称する。周方向のうち+X側から見て時計回りに進む側を「周方向の一方側」と称する。周方向のうち+X側から見て反時計回りに進む側を「周方向の他方側」と称する。
【0010】
本実施形態では、上記「周方向の一方側」であって、電動ポンプ200内のオイルが流れる方向における下流側を単に「下流側」と称する場合がある。また、上記「周方向の他方側」であって、電動ポンプ200内のオイルが流れる方向における上流側を単に「上流側」と称する場合がある。
【0011】
また、X軸方向の正の側(+X側)を「フロント側」と称する場合がある。同様に、X軸方向の負の側(-X側)を「リア側」と称する場合がある。リア側(-X側)は、本発明における軸方向一方側に相当する。フロント側(+X側)は、本発明における軸方向他方側に相当する。
【0012】
本実施形態の電動ポンプ200は、流体としてオイルを送る電動オイルポンプである。電動ポンプ200は、例えば、車両等に搭載される機器のオイル供給に用いられる。電動ポンプ200は、図1及び図2に示すように、ポンプハウジング210と、モータ220と、ポンプ機構30と、を備える。
【0013】
ポンプハウジング210は、ハウジング本体211と、ポンプカバー212と、モータカバー213と、を有する。ハウジング本体211は、モータ220を収容するモータ収容部211aと、ポンプ機構30を収容するポンプ収容部211bと、モータ収容部211aの内部とポンプ収容部211bの内部とを繋ぐ第1貫通孔211cと、を有する。
【0014】
モータ収容部211aは、ハウジング本体211のうちリア側(-X側)の部分に設けられている。モータ収容部211aは、リア側に開口し、軸方向に延びる円筒状である。モータ収容部211aのリア側の開口は、モータカバー213によりリア側から塞がれる。モータ収容部211aに収容されるモータ220は、シャフト21を有するロータ22と、ロータ22の径方向外側に位置するステータ23と、バスバーアッシー224と、バスバーカバー225と、第1ベアリング27及び第2ベアリング28と、を有する。第1ベアリング27及び第2ベアリング28は、本実施形態では転がり軸受である。第1ベアリング27及び第2ベアリング28のいずれか一方または両方が、滑り軸受であってもよい。シャフト21のフロント側の端部は、ポンプ機構30に連結される。
【0015】
図1に示すように、バスバーアッシー224は、複数のバスバー224aと、複数のバスバー224aを保持する樹脂製のバスバーホルダ224bと、を有する。バスバーアッシー224は、軸方向から見て円環状である。複数のバスバー224aは、バスバーホルダ224bに一部が埋め込まれて保持される。
【0016】
バスバーアッシー224は、ステータ23のリア側に位置する。バスバーアッシー224は、モータ収容部211aに、リア側から挿入される。
バスバー224aの一方側の端部は、ステータ23のコイル23cからリア側へ延びるコイル線23dと接続される。
【0017】
バスバーカバー225は、バスバーアッシー224のリア側に位置する。バスバーカバー225は、モータ収容部211aに、リア側から挿入される。図示は省略するが、バスバーカバー225は、軸方向から見て円環状である。バスバーカバー225は、バスバーアッシー224をリア側から覆う。バスバーカバー225のリア側からモータカバー213が被せられる。
【0018】
モータカバー213は、バスバーカバー225をリア側から覆う円板状の部材である。モータカバー213は、中心軸Jに沿って延びる円筒部213aと、円筒部213aの外周面から径方向外側に広がる円環状のカバー本体213bと、を有する。図示は省略するが、円筒部213aは、モータカバー213の軸方向の両側に開口する。図2に示すように、円筒部213aのフロント側の開口部は、第1ベアリング27を保持するベアリング保持部213cである。図3に示すように、円筒部213aのリア側の開口部には、ブリーザ60が装着される。図示は省略するが、ブリーザ60は、内部にフィルタを内蔵する。ブリーザ60のフィルタは、例えば、気体を通し液体を遮断する気液分離フィルタである。
【0019】
カバー本体213bは、径方向において、バスバーカバー225の外側まで広がる。カバー本体213bは、バスバーカバー225よりも径方向外側に位置する部位において、ハウジング本体211にねじ止めされる。
【0020】
図2に示すように、第2ベアリング28は、第1貫通孔211cに、リア側から挿入される。第1貫通孔211cの内部には、オイルシール15と、固定リング16と、ウェーブワッシャ17と、第2ベアリング28とが、フロント側から順に配置される。
【0021】
シャフト21は、第2ベアリング28、ウェーブワッシャ17、固定リング16、及びオイルシール15の内孔に通される。シャフト21のフロント側の端部に、ポンプ機構30が連結される。
【0022】
ポンプ収容部211bは、モータ収容部211aのフロント側(+X側)に位置する。ポンプ収容部211bは、フロント側に開口する凹部によって構成されている。ポンプ収容部211bは、例えば、フロント側から見て円形状の凹部である。ポンプ収容部211bのフロント側の開口は、ポンプカバー212によってフロント側から塞がれる。ポンプ収容部211bに収容されるポンプ機構30は、シャフト21のフロント側の端部に連結されるインナーロータ31と、インナーロータ31の径方向外側に位置するアウターロータ32と、を有する。
【0023】
本実施形態のポンプ機構30は、例えばトロコイド式ポンプである。インナーロータ31とアウターロータ32は、互いに噛み合う。外歯を有するインナーロータ31と、インナーロータ31の外歯31aに噛み合う内歯32aを有するアウターロータ32は、ポンプギアである。インナーロータ31及びアウターロータ32は、それぞれトロコイド歯形を有する。インナーロータ31には、モータ220のシャフト21が連結されている。インナーロータ31は、シャフト21が中心軸J回りに回転することで、回転させられる。インナーロータ31が回転することで、インナーロータ31に噛み合うアウターロータ32も回転する。このようにして、モータ220は、インナーロータ31を回転させてポンプ機構30を駆動する。アウターロータ32の回転軸は、中心軸Jに対して径方向に偏心した軸である。
【0024】
ポンプカバー212は、ハウジング本体211のフロント側に固定される。ポンプカバー212は、ポンプ収容部211bよりも径方向外側へ広がる。ポンプカバー212は、ポンプ収容部211bよりも径方向外側の位置で、ハウジング本体211のフロント側を向くハウジング側接続端面211dに対して、図1に示す複数のねじ215を用いて締結される。ハウジング側接続端面211dには、ポンプ収容部211bの開口部を径方向外側から囲む環状のシール部材214が配置される。シール部材214は、ハウジング本体211とポンプカバー212との間を封止する。
【0025】
図4に示すように、ポンプハウジング210は、第1端面210aと、第2端面210bと、ポンプ収容部211bに繋がる吸入部61及び吐出部62と、吸入側流路81及び吐出側流路82と、を有する。第1端面210aは、ハウジング本体211に設けられる。第1端面210aは、ポンプ収容部211bの内側面のうちリア側に位置する面である。第1端面210aは、フロント側を向く。第1端面210aは、ポンプ機構30のリア側においてポンプ機構30と軸方向に対向する。第1端面210aは、例えば、軸方向と直交する平坦面である。
【0026】
第2端面210bは、ポンプカバー212に設けられる。第2端面210bは、ポンプカバー212のリア側の面のうちポンプ機構30と対向する部分である。第2端面210bは、リア側を向く。第2端面210bは、ポンプ機構30のフロント側においてポンプ機構30と軸方向に対向する。第2端面210bは、第1端面210aとの間でポンプ機構30を軸方向に挟む。第2端面210bは、ポンプ収容部211bのフロント側の開口を塞ぐ。第2端面210bは、例えば、軸方向と直交する平坦面である。
【0027】
吸入部61は、図2に示すように、吸入側流路81を介して、ポンプハウジング210の側面に設けられた吸入口51と繋がっている。吸入口51は、例えば、ポンプ収容部211bよりもモータ220側に位置する。吸入部61には、吸入口51から吸入側流路81に流入したオイルが流入する。吸入部61は、図2及び図4に示すように、ポンプ収容部211bに対してハウジング本体211側に位置する第1吸入側凹部71と、ポンプ収容部211bに対してポンプカバー212側に位置する第2吸入側凹部91と、を有する。第1吸入側凹部71の軸方向から見た形状と第2吸入側凹部91の軸方向から見た形状とは、例えば、互いに同じ形状である。第1吸入側凹部71と第2吸入側凹部91とは、軸方向から見て、少なくとも一部同士が互いに重なる。第1吸入側凹部71と第2吸入側凹部91とは、例えば、軸方向から見て、全体同士が互いに重なる。
【0028】
吐出部62は、図3に示すように、吐出側流路82を介して、ポンプハウジング210の側面に設けられた吐出口52と繋がっている。吐出口52は、例えば、ポンプ収容部211bよりもモータ220側に位置する。吐出部62には、ポンプ機構30から吐出されたオイルが流入する。吐出部62は、図3及び図4に示すように、ポンプ収容部211bに対してハウジング本体211側に位置する第1吐出側凹部72と、ポンプ収容部211bに対してポンプカバー212側に位置する第2吐出側凹部92と、を有する。第1吐出側凹部72の軸方向から見た形状と第2吐出側凹部92の軸方向から見た形状とは、例えば、互いに同じ形状である。第1吐出側凹部72と第2吐出側凹部92とは、軸方向から見て、少なくとも一部同士が互いに重なる。第1吐出側凹部72と第2吐出側凹部92とは、例えば、軸方向から見て、全体同士が互いに重なる。
【0029】
図4に示すように、第1吸入側凹部71及び第1吐出側凹部72は、第1端面210aからリア側へ窪む。第1吸入側凹部71及び第1吐出側凹部72は、例えば、軸方向で互いに同じ位置に配置されている。第1吸入側凹部71の軸方向における深さT1と、第1吐出側凹部72の軸方向における深さT2は、例えば互いに同じである。なお、深さT1と深さT2とは、互いに異なっていてもよい。
【0030】
図5に示すように、第1吸入側凹部71及び第1吐出側凹部72は、例えば、周方向に延びる溝である。本実施形態では、軸方向から見たとき、第1吸入側凹部71及び第1吐出側凹部72は、中心軸J回りの周方向に沿った円弧形状に延びている。
【0031】
図7に示すように、第1吸入側凹部71の径方向外縁部及び第1吐出側凹部72の径方向外縁部は、軸方向から見て、ポンプ機構30のアウターロータ32の外周円に沿った方向、すなわちアウターロータ32の回転軸回りの周方向に円弧形状に延びている。第1吸入側凹部71の径方向内縁部及び第1吐出側凹部72の径方向内縁部は、軸方向から見て、中心軸J回りの周方向に円弧形状に延びている。
【0032】
軸方向から見たとき、第1吸入側凹部71のうち径方向内側を向く側面71a及び第1吐出側凹部72のうち径方向内側を向く側面72aが、ポンプ機構30のアウターロータ32の径方向内側を向く内周面32bのうち、最大径となる複数の部分32cと軸方向で重なる。
【0033】
図5に太矢印で示すように、第1吸入側凹部71内及び第1吐出側凹部72内においては、オイルが周方向の他方側から周方向の一方側に流れる。つまり、第1吸入側凹部71及び第1吐出側凹部72においては、周方向の他方側、すなわち図5の太矢印が向く側と逆側が上流側であり、周方向の一方側、すなわち図5の太矢印が向く側が下流側である。
【0034】
本実施形態における第1吸入側凹部71は、中心軸Jの回りの周方向に沿って、上流側端部71hから下流側端部71jへ向かうにしたがって径方向の幅が徐々に広がる。上流側端部71hは、第1吸入側凹部71のうち周方向の他方側の端部である。下流側端部71jは、第1吸入側凹部71のうち周方向の一方側の端部である。つまり、第1吸入側凹部71の径方向の幅は、周方向の他方側から周方向の一方側に向かうにしたがって大きくなる。
【0035】
一方、第1吐出側凹部72は、中心軸Jの回りの周方向に沿って、上流側端部72hから下流側端部72jへ向かうにしたがって径方向の幅が徐々に狭くなる。上流側端部72hは、第1吐出側凹部72のうち周方向の他方側の端部である。下流側端部72jは、第1吐出側凹部72のうち周方向の一方側の端部である。つまり、第1吐出側凹部72の径方向の幅は、周方向の他方側から周方向の一方側に向かうにしたがって小さくなる。
【0036】
図4に示すように、第2吸入側凹部91及び第2吐出側凹部92は、第2端面210bからフロント側に窪む。第2吸入側凹部91の軸方向における深さT3と、第2吐出側凹部92の軸方向における深さT4は、例えば互いに同じである。なお、深さT3と深さT4とは、互いに異なっていてもよい。第2吸入側凹部91及び第2吐出側凹部92の深さT3,T4は、第1吸入側凹部71及び第1吐出側凹部72の深さT1,T2よりも小さい。これに限らず、第2吸入側凹部91及び第2吐出側凹部92の深さT3,T4が、第1吸入側凹部71及び第1吐出側凹部72の深さT1,T2よりも大きくてもよい。
【0037】
図6に示すように、第2吸入側凹部91及び第2吐出側凹部92は、例えば、周方向に延びる溝である。本実施形態では、軸方向から見たとき、第2吸入側凹部91及び第2吐出側凹部92は、中心軸J回りの周方向に沿った円弧形状に延びている。
【0038】
第2吸入側凹部91の径方向外縁部及び第2吐出側凹部92の径方向外縁部は、軸方向から見て、アウターロータ32の回転軸回りの周方向に円弧形状に延びている。第2吸入側凹部91の径方向内縁部及び第2吐出側凹部92の径方向内縁部は、軸方向から見て、中心軸J回りの周方向に円弧形状に延びている。図示は省略するが、第2吸入側凹部91のうち径方向内側を向く側面及び第2吐出側凹部92のうち径方向内側を向く側面は、ポンプ機構30のアウターロータ32の径方向内側を向く内周面32bのうち、最大径となる複数の部分32cと軸方向で重なる。
【0039】
図6に太矢印で示すように、第2吸入側凹部91内及び第2吐出側凹部92内においては、オイルが周方向の他方側から周方向の一方側に流れる。つまり、第2吸入側凹部91及び第2吐出側凹部92においては、周方向の他方側、すなわち図6の太矢印が向く側と逆側が上流側であり、周方向の一方側、すなわち図6の太矢印が向く側が下流側である。
【0040】
図6に示すように、本実施形態における第2吸入側凹部91は、中心軸Jの回りの周方向に沿って、上流側端部91hから下流側端部91jへ向かうにしたがって径方向の幅が徐々に広がる。上流側端部91hは、第2吸入側凹部91のうち周方向の他方側の端部である。下流側端部91jは、第2吸入側凹部91のうち周方向の一方側の端部である。つまり、第2吸入側凹部91の径方向の幅は、周方向の他方側から周方向の一方側に向かうにしたがって大きくなる。
【0041】
一方、第2吐出側凹部92は、中心軸Jの回りの周方向に沿って、上流側端部92hから下流側端部92jへ向かうにしたがって径方向の幅が徐々に狭くなる。上流側端部92hは、第2吐出側凹部92のうち周方向の他方側の端部である。下流側端部92jは、第2吐出側凹部92のうち周方向の一方側の端部である。つまり、第2吐出側凹部92の径方向の幅は、周方向の他方側から周方向の一方側に向かうにしたがって小さくなる。
【0042】
図4に示すように、第1吸入側凹部71には吸入側流路81が接続されている。吸入側流路81は、第1吸入側凹部71の径方向内側を向く側面71aに開口する。第1吐出側凹部72には吐出側流路82が接続される。吐出側流路82は、第1吐出側凹部72の径方向内側を向く側面72aに開口する。
【0043】
第1吸入側凹部71の底面71fは、吸入側平坦面71cと吸入側傾斜面71bとを有する。底面71fは、第1吸入側凹部71の内側面のうちリア側に位置しフロント側を向く面である。第1吐出側凹部72の底面72fは、吐出側平坦面72cと吐出側傾斜面72bとを有する。底面72fは、第1吐出側凹部72の内側面のうちリア側に位置しフロント側を向く面である。
【0044】
吸入側平坦面71c及び吐出側平坦面72cは、軸方向と交差する面である。吸入側平坦面71c及び吐出側平坦面72cは、例えば、軸方向と直交する面である。吸入側平坦面71c及び吐出側平坦面72cは、例えば、第1端面210aと平行である。第1吸入側凹部71の吸入側平坦面71cは、周方向において吸入側傾斜面71bよりも吸入側流路81側に位置し、吸入側傾斜面71bの周方向の他方側(上流側)の端部に繋がる。第1吐出側凹部72の吐出側平坦面72cは、周方向において吐出側傾斜面72bよりも吐出側流路82側に位置し、吐出側傾斜面72bの周方向の一方側(下流側)の端部に繋がる。
【0045】
吸入側傾斜面71b及び吐出側傾斜面72bは、吸入側平坦面71c及び吐出側平坦面72cに対して傾斜する面である。吸入側傾斜面71bは、吸入側平坦面71cから周方向の一方側(下流側)に向かうに従ってフロント側に位置する。吐出側傾斜面72bは、吐出側平坦面72cから周方向の他方側(上流側)に向かうに従ってフロント側に位置する。吸入側傾斜面71bの吸入側平坦面71cに対する傾斜角度θ1と、吐出側傾斜面72bの吐出側平坦面72cに対する傾斜角度θ2とは、例えば、互いに同じである。傾斜角度θ1,θ2は、例えば15°~35°の範囲内が好ましい。なお、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とは、互いに異なってもよい。
【0046】
第1吸入側凹部71は、吸入側傾斜面71bにおける周方向の一方側の下流側端部71jからフロント側のポンプ機構30に向かって軸方向に延びる面71dを有する。面71dは、例えば、周方向と直交する面である。第1吐出側凹部72は、吐出側傾斜面72bにおける周方向の他方側の上流側端部72hからフロント側のポンプ機構30に向かって軸方向に延びる面72dを有する。面72dは、例えば、周方向と直交する面である。
【0047】
第2吸入側凹部91の底面91fは、吸入側平坦面91cと、吸入側傾斜面91bと、を有する。底面91fは、第2吸入側凹部91の内側面のうちフロント側に位置しリア側を向く面である。第2吐出側凹部92の底面92fは、吐出側平坦面92cと、吐出側傾斜面92bと、を有する。底面92fは、第2吐出側凹部92の内側面のうちフロント側に位置しリア側を向く面である。
【0048】
吸入側平坦面91c及び吐出側平坦面92cは、軸方向と交差する面である。吸入側平坦面91c及び吐出側平坦面92cは、例えば、軸方向と直交する面である。吸入側平坦面91c及び吐出側平坦面92cは、例えば、第2端面210bと平行である。第2吸入側凹部91の吸入側平坦面91cは、周方向において吸入側傾斜面91bよりも吸入側流路81側に位置し、吸入側傾斜面91bの周方向の他方(上流)側の端部に繋がる。第2吐出側凹部92の吐出側平坦面92cは、周方向において吐出側傾斜面92bよりも吐出側流路82側に位置し、吐出側傾斜面92bの周方向の一方(下流)側の端部に繋がる。
【0049】
吸入側傾斜面91b及び吐出側傾斜面92bは、吸入側平坦面91c及び吐出側平坦面92cに対して傾斜する面である。吸入側傾斜面91bは、吸入側平坦面91cから周方向の一方側(下流側)に向かうに従ってリア側に位置する。吐出側傾斜面92bは、吐出側平坦面92cから周方向の他方側(上流側)に向かうに従ってリア側に位置する。
【0050】
吸入側傾斜面91bの吸入側平坦面91cに対する傾斜角度θ3と、吐出側傾斜面92bの吐出側平坦面92cに対する傾斜角度θ4とは、例えば、互いに同じである。傾斜角度θ3,θ4は、例えば0°~15°の範囲内が好ましい。本実施形態では、傾斜角度θ3,θ4の大きさは、傾斜角度θ1,θ2の大きさよりも小さい。なお、傾斜角度θ3と傾斜角度θ4とは、互いに異なってもよい。傾斜角度θ3,θ4の大きさは、傾斜角度θ1,θ2の大きさと同じであってもよいし、傾斜角度θ1,θ2の大きさより大きくてもよい。
【0051】
第2吸入側凹部91は、吸入側傾斜面91bにおける周方向の一方側の下流側端部91jからリア側のポンプ機構30に向かって軸方向に延びる面91dを有する。面91dは、例えば、周方向と直交する面である。第2吐出側凹部92は、吐出側傾斜面92bにおける周方向の他方側の上流側端部92hからリア側のポンプ機構30に向かって軸方向に延びる面92dを有する。面92dは、例えば、周方向と直交する面である。
【0052】
吸入部61における第1吸入側凹部71の底面71fと第2吸入側凹部91の底面91fとは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なる。第1吸入側凹部71の吸入側傾斜面71bと第2吸入側凹部91の吸入側傾斜面91bとは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なる。本実施形態では、第1吸入側凹部71の吸入側平坦面71cと第2吸入側凹部91の吸入側平坦面91cとは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なる。第1吸入側凹部71の底面71fと、第2吸入側凹部91の底面91fとは、軸方向から見て、例えば互いの面積における80%~90%以上が重なることが好ましい。
【0053】
第1吸入側凹部71の底面71fと第2吸入側凹部91の底面91fとは、例えば、軸方向から見た面積が同じである。第1吸入側凹部71の底面71fと第2吸入側凹部91の底面91fとは、例えば、軸方向から見て全体同士が互いに重なる。吸入側傾斜面71bと吸入側傾斜面91bとは、例えば、軸方向見た面積が同じである。吸入側傾斜面71bと吸入側傾斜面91bとは、例えば、軸方向から見て全体同士が互いに重なる。吸入側平坦面71cと吸入側平坦面91cとは、例えば、軸方向から見た面積が同じである。吸入側平坦面71cと吸入側平坦面91cとは、例えば、軸方向から見て全体同士が互いに重なる。
【0054】
本実施形態では、第1吸入側凹部71における吸入側平坦面71cと吸入側傾斜面71bとの境界部B1は、軸方向から見て、第2吸入側凹部91における吸入側平坦面91cと吸入側傾斜面91bとの境界部B2と重なる。
【0055】
吐出部62における第1吐出側凹部72の底面72fと第2吐出側凹部92の底面92fとは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なる。第1吐出側凹部72の吐出側傾斜面72bと第2吐出側凹部92の吐出側傾斜面92bとは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なる。本実施形態では、第1吐出側凹部72の吐出側平坦面72cと第2吐出側凹部92の吐出側平坦面92cとは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なる。第1吐出側凹部72の底面72fと、第2吐出側凹部92の底面92fとは、軸方向から見て、例えば互いの面積における80%~90%以上が重なることが好ましい。
【0056】
第1吐出側凹部72の底面72fと第2吐出側凹部92の底面92fとは、例えば、軸方向から見た面積が同じである。第1吐出側凹部72の底面72fと第2吐出側凹部92の底面92fとは、例えば、軸方向から見て全体同士が互いに重なる。吐出側傾斜面72bと吐出側傾斜面92bとは、例えば、軸方向見た面積が同じである。吐出側傾斜面72bと吐出側傾斜面92bとは、例えば、軸方向から見て全体同士が互いに重なる。吐出側平坦面72cと吐出側平坦面92cとは、例えば、軸方向から見た面積が同じである。吐出側平坦面72cと吐出側平坦面92cとは、例えば、軸方向から見て全体同士が互いに重なる。
【0057】
本実施形態では、第1吐出側凹部72における吐出側平坦面72cと吐出側傾斜面72bとの境界部B3は、軸方向から見て、第2吐出側凹部92における吐出側平坦面92cと吐出側傾斜面92bとの境界部B4と重なる。
【0058】
なお、本明細書において「或る境界部が、軸方向から見て他の境界部と重なる」とは、軸方向から見たときに、或る境界部の一部と他の境界部の一部とが、少なくとも重なっていればよい。
【0059】
第1吐出側凹部72は、図5に示すように、上流側端部72hに半円形状の切欠き72kを有する。第2吐出側凹部92は、図6に示すように、上流側端部92h側に半円形状の切欠き92kを有する。
【0060】
吸入側流路81は、第1吸入側凹部71のうち底面71fが吸入側平坦面71cとなっている部分に接続されている。吸入側流路81が第1吸入側凹部71に接続される接続位置は、上流側端部71hから周方向の一方側に離れている。
【0061】
吸入側流路81は、図2に示すように、第1吸入側凹部71との接続位置から径方向外側に延びる流路81aと、流路81aの径方向外側の端部からリア側へ延びる流路81bと、流路81bのリア側の端部から径方向外側へ延びる流路81cと、を有する。流路81cの径方向外側の端部は、ポンプハウジング210の外周面に開口する吸入口51に繋がる。すなわち、吸入側流路81は、ポンプハウジング210の径方向外側を向く面に開口する吸入口51と、第1吸入側凹部71とを接続する流路である。
【0062】
流路81aと流路81bとの交差部には、ポンプハウジング210の外周面からキャップ85が嵌め込まれる。流路81bのフロント側の端部に、ポンプハウジング210のフロント側の端面からキャップ86が嵌め込まれる。キャップ85,86は、流路81a,81bを構成するドリル穴の開口を塞ぐ。流路81aと流路81bとの交差部からキャップ86まで延びる流路は、流路81bを金型により形成する過程で形成される孔であり、流路としての機能面からは吸入側流路81に必須な部位ではない。
【0063】
吐出側流路82は、図5に示すように、第1吐出側凹部72のうち底面72fが吐出側平坦面72cとなっている部分に接続されている。吐出側流路82が第1吐出側凹部72に接続される接続位置は、下流側端部72jから周方向の他方側に離れている。
【0064】
吐出側流路82は、図3に示すように、第1吐出側凹部72との接続位置から径方向外側に延びる流路82aを有する。流路82aの径方向外側の端部は、ポンプハウジング210の外周面に開口する吐出口52に繋がる。吐出側流路82は、流路82aから分岐してリア側へ延びる流路82bを有する。流路82bのリア側の端部は、ポンプハウジング210のリア側の端部に達する。
【0065】
流路82b内には、リリーフバルブ95が配置される。リリーフバルブ95は、軸方向に沿って移動可能な弁体95aと、弁体95aをフロント側へ押すコイルスプリング95bと、コイルスプリング95bのリア側の端部を支持する固定部95cとを有する。固定部95cは、雄ねじ状であり、流路82bのリア側の端部に締め込まれる。固定部95cは、流路82bのリア側の端部の開口を塞ぐ。
【0066】
吐出側流路82は、図3に示すように、流路82bから図示下側へ延びる流路82cを有する。流路82cは、流路82b内の弁体95aが軸方向に進退する領域から分岐される。流路82cの図示下側の端部は、図2に示す吸入側流路81に繋がる。本実施形態の場合、流路82cは、流路81bに流路81cが接続する位置よりもリア側の位置に接続される。
【0067】
リリーフバルブ95は、吐出側流路82の圧力により動作する。オイル圧力によって弁体95aが所定長さ以上リア側へ後退すると、流路82bと流路82cとが繋がり、吐出側流路82内のオイルの一部が、吸入側流路81に戻される。これにより、電動ポンプ200の吐出圧力を制限値以下に維持できる。また、リリーフバルブ95を設置することにより、異常な圧力による配管及び機器の破損を抑制できる。
【0068】
ポンプ機構30がモータ220によって駆動されると、吸入口51から吸入側流路81内にオイルが吸入される。図2に太矢印で示すように、吸入側流路81内に吸入されたオイルは、流路81c、流路81b、流路81aをこの順に流れて、第1吸入側凹部71内に流入する。図4中の矢印Fで示すように、ポンプ作用により、吸入側流路81から第1吸入側凹部71内へ吸入されたオイルは、第1吸入側凹部71内を流動しつつポンプ機構30へ吸引される。より詳細には、第1吸入側凹部71内のオイルは、インナーロータ31の外歯31aとアウターロータ32の内歯32aとの間に吸引される。ポンプ機構30に吸引されたオイルは、インナーロータ31及びアウターロータ32の回転に伴って、ポンプ収容部211b内を周方向の一方側に移動する。ポンプ機構30に吸引されたオイルの一部は、第2吸入側凹部91内にも流入する。第2吸入側凹部91内のオイルは、例えば、周方向の一方側に流れつつ、再びインナーロータ31の外歯31aとアウターロータ32の内歯32aとの間に吸引される。
【0069】
このような構成の電動ポンプ200において、ポンプ機構30によってポンプ収容部211b内を周方向の一方側に移動したオイルは、第1吐出側凹部72内及び第2吐出側凹部92内に流入する。第1吐出側凹部72内に流入したオイルは、第1吐出側凹部72内を周方向の一方側に流れて吐出側流路82へと吐出される。第2吐出側凹部92内に流入したオイルは、例えば、周方向の一方側に流れつつ、再びインナーロータ31の外歯31aとアウターロータ32の内歯32aとの間に吸引され、図4中の矢印Fで示すように、第1吐出側凹部72を介して吐出側流路82へと吐出される。図3に太矢印で示すように、吐出側流路82に吐出されたオイルは、流路82aを流れて、吐出口52から電動ポンプ200の外部に吐出される。
【0070】
本実施形態の電動ポンプ200では、第1吸入側凹部71の底面71f及び第2吸入側凹部91の底面91fは、軸方向と交差する面に対して傾斜する吸入側傾斜面71b,91bをそれぞれ有する。第1吸入側凹部71の吸入側傾斜面71bと第2吸入側凹部91の吸入側傾斜面91bとは、軸方向から見て少なくとも一部同士が互いに重なり、かつ、中心軸Jの回りの周方向の一方側に向かうに従って軸方向で互いに近づく向きに傾斜している。そのため、第1吸入側凹部71内のオイル及び第2吸入側凹部91内のオイルは、ポンプ機構30が周方向の一方側に回転するのに従って、吸入側傾斜面71b,91bに沿って周方向の一方側に流れつつ、軸方向においてポンプ収容部211b内に向かう向きに導かれる。
【0071】
これにより、ポンプ機構30が第1吸入側凹部71内のオイルから受けるフロント側向きの力とポンプ機構30が第2吸入側凹部91内のオイルから受けるリア側向きの力とのバランスを保ちつつ、第1吸入側凹部71内及び第2吸入側凹部91内からオイルをポンプ機構30に吸引させることができる。したがって、ポンプ機構30をオイルの圧力によって軸方向両側から好適に押さえた状態で、ポンプ機構30を回転させることができる。そのため、インナーロータ31及びアウターロータ32がポンプ収容部211b内において傾くことを抑制でき、インナーロータ31及びアウターロータ32が振動することを抑制できる。これにより、インナーロータ31及びアウターロータ32を安定して回転させることができる。したがって、ポンプ機構30から吐出されるオイルの吸引量の低下、及び吸入圧の脈動等を抑えることができる。また、インナーロータ31及びアウターロータ32とポンプ収容部211bの内側面との間のフリクションを低減できる。
【0072】
一方、吐出部62側において軸方向で対向する吐出側傾斜面72b, 92b同士は、周方向の一方側(下流側)へ行くにしたがって軸方向で互いに遠ざかる方向へ傾斜する。そのため、ポンプ機構30から吐出されたオイルが吐出側傾斜面72b,92bを伝わって第1吐出側凹部72及び第2吐出側凹部92内へ効率よく誘導される。これにより、ポンプ機構30から第1吐出側凹部72内へ吐出されるオイルのリア側の向きの力と、ポンプ機構30から第2吐出側凹部92内へ吐出されるオイルのフロント側の向きの力とのバランスを保ちつつ、ポンプ機構30から第1吐出側凹部72及び第2吐出側凹部92へとオイルを吐出させることができる。したがって、インナーロータ31及びアウターロータ32がポンプ収容部211b内において傾くことを抑制でき、インナーロータ31及びアウターロータ32が振動することを抑制できる。これにより、インナーロータ31及びアウターロータ32を安定して回転させることができる。したがって、ポンプ機構30から吐出されるオイルの吐出量の低下、及び吐出圧の脈動等を抑えることができる。
【0073】
このように、吸入側と吐出側とで、ポンプ機構30に対するオイルの吸入量及び吸入圧と、吐出量及び吐出圧とのバランスが均等になることで、インナーロータ31及びアウターロータ32とポンプ収容部211bの内側面との間のフリクションを低減でき、インナーロータ31の回転ロスを抑制することが可能である。更に、インナーロータ31及びアウターロータ32と、ポンプカバ―212の内側面およびポンプ収容部211bの内側面との間の摩耗を低減することができる。摩耗が低減できることにより、発熱や摩耗粉を抑え、電動ポンプ200への悪影響を抑えることができる。
【0074】
また、本実施形態では、吸入部61側において、第1吸入側凹部71における吸入側平坦面71cと吸入側傾 斜面71bとの境界部B1は、軸方向から見て、第2吸入側凹部91における吸入側平坦面91cと吸入側傾斜面91bとの境界部B2と重なる。これにより、軸方向で対向する吸入側傾斜面71bと吸入側傾斜面91b同士の略全体が重なり合うため、一方の第1吸入側凹部71内のオイルが吸入側傾斜面71bに沿って流れる周方向位置では、他方の第2吸入側凹部91内のオイルも吸入側傾斜面91bに沿って流れる。
一方、吐出部62側において、第1吐出側凹部72における吐出側平坦面72cと吐出側傾斜面72bとの境界部B3は、軸方向から見て、第2吐出側凹部92における吐出側平坦面92cと吐出側傾斜面92bとの境界部B4と重なる。これにより、軸方向で対向する吐出側傾斜面72bと吐出側傾斜面92b同士の略全体が重なり合うため、一方の第1吐出側凹部72内のオイルが吐出側傾斜面72bに沿って流れる周方向位置では、他方の第2吐出側凹部92内のオイルも吐出側傾斜面92bに沿って流れる。
このため、吸入側及び吐出側の双方において、軸方向両側からポンプ機構30がオイルから受ける圧力のバランスをより保ちやすい。したがって、吸入時と吐出時とでインナーロータ31の回転がより安定する。
【0075】
また、本実施形態では、ポンプハウジング210側における第1吸入側凹部71の吸入側平坦面71cと、第1吐出側凹部72の吐出側平坦面72cとは、軸方向において互いに同じ位置に配置されている。これにより、第1吸入側凹部71及び第1吐出側凹部72に接続される吸入側流路81及び吐出側流路82の位置を軸方向で一致させやすい。これにより、吸入側平坦面71cと吐出側平坦面72cとが軸方向で異なる位置に比べて、吸入側流路81から吐出側流路82へとオイルを流しやすくできる。したがって、よりポンプ機構30が安定して回転することになる。
【0076】
本実施形態では、第1吸入側凹部71及び第2吸入側凹部91は、吸入側傾斜面71b,91bにおける周方向の一方側の端部から、ポンプ機構30に向かって軸方向に延びる面71d,91dをそれぞれ有する。また、第1吐出側凹部72及び第2吐出側凹部92は、吐出側傾斜面72b,92bにおける周方向の他方側であって上流側の端部からポンプ機構30に向かって軸方向に延びる面72d,92dをそれぞれ有する。このように、底面71f,91fからポンプ機構30側へ立ち上がる面71d,91dによって、ポンプ機構30へとオイルが吸引されやすくなるとともに、ポンプ機構30側から底面72f,92fへ向かって延びる面72d,92dによってポンプ機構30からオイルが排出されやすい。また、軸方向に沿う面71d,91d,72d,92dによって、各凹部71,72,91,92の軸方向の深さを大きくすることができ、ポンプ機構30に対して吸入または吐出するオイルの流れに反動が生じることが抑えられる。その結果、オイルの脈動を低減し、オイルをスムーズに流すことが可能となる。
【0077】
さらに、軸方向から見たとき、第1吸入側凹部71、第1吐出側凹部72、第2吸入側凹部91、及び第2吐出側凹部92は、中心軸回りの周方向に沿った円弧形状に延びている。これにより、吸入側流路81から流入したオイルが第1吸入側凹部71及び第2吸入側凹部91の円弧に沿って流動しながらポンプ機構30へと誘導されて効率よく吸引される。また、ポンプ機構30から吐出されたオイルは、第1吐出側凹部72及び第2吐出側凹部92の円弧に沿って流動しながら吐出側流路82へと効率よく排出される。
【0078】
以上述べたように、本実施形態の電動ポンプ200では、ポンプ機構30の振れを抑えることで、フリクションが低減するだけでなく、ポンプ脈動を低減できて効率改善が見込める。
【0079】
本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
22…ロータ、30…ポンプ機構、31…インナーロータ、31a…外歯、32…アウターロータ、32a…内歯、61…吸入部、62…吐出部、71…第1吸入側凹部、71b…吸入側傾斜面、71c…吸入側平坦面、71d,72d,91d,92d…(軸方向に延びる)面、72b…吐出側傾斜面、72c…吐出側平坦面、71f,72f,91f,92f…底面、72…第1吐出側凹部、91…第2吸入側凹部、91b…吸入側傾斜面、91c…吸入側平坦面、92…第2吐出側凹部、92b…吐出側傾斜面、92c…吐出側平坦面、200…電動ポンプ、210…ポンプハウジング、210a…第1端面、210b…第2端面、211b…ポンプ収容部、B1,B2,B3,B4…境界部、J…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7