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  • 特許-水中油滴型皮膚洗浄化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】水中油滴型皮膚洗浄化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20250409BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250409BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250409BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20250409BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20250409BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/92
A61K8/06
A61Q19/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021017285
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120410
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】守田 つかさ
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-12252(JP,A)
【文献】特開2018-104342(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030283(WO,A1)
【文献】特開2005-89571(JP,A)
【文献】特開2014-19685(JP,A)
【文献】特開2001-58938(JP,A)
【文献】特開2003-113052(JP,A)
【文献】特開2013-189423(JP,A)
【文献】特開2006-160619(JP,A)
【文献】特表2018-537500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/
A61Q
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分を0.01~10質量%、(b)成分を10~50質量%、(c)成分を1~10質量%および(d)成分を1~20質量%含有することを特徴とする、水中油滴型皮膚洗浄化粧料。

(a)成分: 式(1)で表され、かつ下記式(2)、式(3)および式(4)の関係を満足するアルキルオキシラン誘導体
(b)成分: 炭素数2~6の多価アルコール
(c)成分: ポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤
(d)成分: 25℃で固体である油脂を少なくとも含む油脂

O-(AO)-H ・・・・(1)

(式(1)において、
は、炭素数1~6の炭化水素基であり、
AOは炭素数3のオキシアルキレン基であり、
nはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数であり、50≦n≦150である。)

0.35≦M/M≦0.75 ・・・・(2)

(式(2)において、ゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラム上の屈折率強度が最大となる極大点KからベースラインBへの垂線の長さをLとし、屈折率強度がL/2となるクロマトグラム上の2点のうち溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとし、点Oと点Qを結ぶ直線Gと前記極大点Kから前記ベースラインへ引いた垂線との交点をPとしたとき、点Oと交点Pの距離をMとし、点Qと交点Pの距離をMとする。)

=W1/2/W5% ・・・(3)
0.30≦A≦0.70 ・・・(4)

(式(3)および式(4)において、前記クロマトグラム上で屈折率強度がL/20となる2点のうち溶出時間が早いほうを点Rとし、溶出時間が遅いほうを点Sとし、点Rと点Sを結んだ直線Hと前記極大点Kから前記ベースラインBへ引いた垂線との交点をTとし、点Rと交点Tの距離をW1/2とし、点Rと点Sの距離をW5%とする。)
【請求項2】
(d)成分が25℃で液体の油脂を更に含んでおり、25°Cで固体の油脂の質量に対する25°Cで液体の油脂の質量の比率(25°Cで液体の油脂の質量/25°Cで固体の油脂の質量)が1/8~1/2であることを特徴とする、請求項1記載の水中油滴型皮膚洗浄化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油滴型皮膚洗浄化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、過剰な洗浄は肌に悪いと感じる意識の高まりから、ハンドソープなどといった皮膚の汚れを除去する皮膚洗浄化粧料においても皮膚を洗浄し清潔にするだけでなく、皮膚の水分を保ち、乾燥による肌荒れを起こしにくいことも重要であるとの認識が広まっている。そのため、皮膚洗浄化粧料について、洗浄性だけでなく、洗浄後の肌のしっとり感等といった洗浄後の肌状態についても改善されてきた。
【0003】
特許文献1においては、高級脂肪酸塩、N-アシルアルキルタウリン塩、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースの組み合わせにより、泡立ち、泡量、泡質(キメ、弾力性)、洗浄力、泡切れ、経時安定性が良好で、洗い流した後にしっとり感を有するクリーム状皮膚洗浄料が提供されている。しかしながら洗浄後のべたつきのなさについては十分ではなかった。
【0004】
特許文献2においては、炭素数が12~18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体、多価アルコール、炭素数12~18の脂肪酸石けん、アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤の組み合わせにより、水なじみが良く、泡立ち、泡質が良好であり、すすぎ時のぬるつき、洗浄後の適度なしっとり感とべたつきのなさを有する皮膚洗浄料が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-181223号公報
【文献】特開2016-132646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、肌を清潔に保つことの重要性が再認識され、洗浄する回数が増加した。中でも保育や介護、食品等の分野においては衛生意識が高いため、皮膚洗浄の回数は特に多い。さらには冷水で落ちにくい汚れも多く、お湯を使用する場合も増えている。そのため、皮膚洗浄化粧料には洗浄性や洗浄後の肌のしっとり感やべたつきのなさだけでなく、お湯で短時間に繰り返し使用した場合においても、洗浄後にしっとりすることが求められている。しかしながら、上記の組成物においては、洗浄性が十分ではなかったり、短時間に繰り返しお湯で使用した場合における洗浄後のしっとり感が十分ではなかったりと、改善の余地があった。
【0007】
本発明の課題は、洗浄性に優れ、洗浄後にべたつきのなさが得られ、お湯で短時間に繰り返し使用した場合であっても洗浄後にしっとり感が感じられる水中油滴型皮膚洗浄化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のものである。
(1) 下記(a)成分を0.01~10質量%、(b)成分を10~50質量%、(c)成分を1~10質量%および(d)成分を1~20質量%含有することを特徴とする、水中油滴型皮膚洗浄化粧料。

(a)成分: 式(1)で表され、かつ下記式(2)、式(3)および式(4)の関係を満足するアルキルオキシラン誘導体
(b)成分: 炭素数2~6の多価アルコール
(c)成分: ポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤
(d)成分: 25℃で固体である油脂を少なくとも含む油脂

O-(AO)-H ・・・・(1)

(式(1)において、
は、炭素数1~6の炭化水素基であり、
AOは炭素数3のオキシアルキレン基であり、
nはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数であり、50≦n≦150である。)

0.35≦M/M≦0.75 ・・・・(2)

(式(2)において、ゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラム上の屈折率強度が最大となる極大点KからベースラインBへの垂線の長さをLとし、屈折率強度がL/2となるクロマトグラム上の2点のうち溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとし、点Oと点Qを結ぶ直線Gと前記極大点Kから前記ベースラインへ引いた垂線との交点をPとしたとき、点Oと交点Pの距離をMとし、点Qと交点Pの距離をMとする。)

=W1/2/W5% ・・・(3)
0.30≦A≦0.70 ・・・(4)

(式(3)および式(4)において、前記クロマトグラム上で屈折率強度がL/20となる2点のうち溶出時間が早いほうを点Rとし、溶出時間が遅いほうを点Sとし、点Rと点Sを結んだ直線Hと前記極大点Kから前記ベースラインBへ引いた垂線との交点をTとし、点Rと交点Tの距離をW1/2とし、点Rと点Sの距離をW5%とする。)
(2) (d)成分が25℃で液体の油脂を更に含んでおり、25°Cで固体の油脂の質量に対する25°Cで液体の油脂の質量の比率(25°Cで液体の油脂の質量/25°Cで固体の油脂の質量)が1/8~1/2であることを特徴とする、(1)の水中油滴型皮膚洗浄化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄性に優れ、洗浄後のべたつきのなさに加え、お湯で短時間に繰り返し使用した場合であっても洗浄後にしっとり感が感じられる水中油滴型皮膚洗浄化粧料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明にて定義されるMとMを説明するためのモデルクロマトグラム図である。
図2図2は本発明にて定義されるW1/2とW5%を説明するためのモデルクロマトグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水中油滴型皮膚洗浄化粧料は、(a)成分~(d)成分を含有する。以下、(a)成分から順次説明する。
((a)成分)
(a)成分は、式(1)で表され、かつ式(2)、式(3)および式(4)の関係を満足するアルキルオキシラン誘導体である。
O-(AO)-H ・・・・(1)
【0012】
式(1)において、Rで示される炭素数1~6の炭化水素基は、炭素と水素からなる官能基であり、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基から選ばれる1種であり、好ましくはアルキル基またはアルケニル基である。
の炭素数は6以下とするが、4以下が更に好ましい。すなわち、Rは好ましくは炭素数1~6のアルキル基またはアルケニル基であり、最も好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。Rは、直鎖炭化水素基であってよく、分岐鎖炭化水素基であってよいが、好ましくは直鎖炭化水素基である。炭素数1~6の直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。Rで示される炭素数1~6の炭化水素基は1種のみでも、2種以上でもよい。
【0013】
式(1)において、AOは炭素数3のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシトリメチレン基またはオキシメチルエチレン基であるが、オキシメチルエチレン基が好ましい。
式(1)において、nは、オキシアルキレン基AOの平均付加モル数で、50以上である。nが50未満であると粘度が低く、洗浄後のべたつきのなさに欠ける場合がある。しかしながら、nが大きくなるにつれて洗浄後のべたつきが大きくなるため、nは150以下であることが好ましく、120以下であることが更に好ましい。
【0014】
(a)成分は、更に下記の式(2)を満足する。
0.35≦M/M≦0.75 ・・・・(2)
(式(2)において、クロマトグラム上の屈折率強度が最大となる極大点KからベースラインBへの垂線の長さをLとし、屈折率強度がL/2となるクロマトグラム上の2点のうち溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとし、点Oと点Qを結ぶ直線Gと前記極大点Kから前記ベースラインへ引いた垂線との交点をPとしたとき、点Oと交点Pの距離をMとし、点Qと交点Pの距離をMとする。)
【0015】
すなわち、本発明で用いるアルキルオキシラン誘導体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、示差屈折率計を用いて得られたクロマトグラムによって規定される。このクロマトグラムとは、屈折率強度と溶出時間との関係を表すグラフである。ここで、図1は、アルキルオキシラン誘導体のゲル浸透クロマトグラフィーにより得られるクロマトグラムのモデル図であり、横軸は溶出時間を、縦軸は示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度を示す。ゲル浸透クロマトグラフに試料溶液を注入して展開すると、最も分子量の高い分子から溶出が始まり、屈折率強度の増加に伴い、溶出曲線が上昇していく。その後、屈折率強度が最大となる極大点Kを過ぎると、溶出曲線は下降していく。
【0016】
/Mは、それぞれ、以下のようにしてクロマトグラムから算出する。
(1) クロマトグラム上の屈折率強度の極大点KからベースラインBへ垂線を引き、垂線の長さをLとする。
(2) 屈折率強度がL/2となるクロマトグラム上の2点のうち、溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとする。
(3) 点Oと点Qを結んだ直線Gと、屈折率強度の極大点KからベースラインBへ引いた垂線との交点をPとする。
(4) 点Oと交点Pの距離をM、交点Pと点Qの距離をMとする。
【0017】
また、本発明のアルキルオキシラン誘導体のゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、クロマトグラムの屈折率強度の極大点が複数ある場合は、それらのうち屈折率強度が最も大きい点を極大点Kとする。さらに同じ屈折率強度の極大点が複数ある場合は、溶出時間の遅いほうを屈折率強度の極大点Kとする。この際、ゲル浸透クロマトグラフィーに使用した展開溶媒等に起因するピークや、使用したカラムや装置に起因するベースラインの揺らぎによる疑似ピークは除く。
【0018】
ここで、(a)成分は、M/Mが0.35≦M/M≦0.75を満たすものである。M/Mが0.75より大きくなると、アルキルオキシラン誘導体の粘度が低下し、これを水中油滴型皮膚洗浄化粧料に配合した際、お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感が損なわれる。この観点から、M/Mを0.75以下とするが、0.65以下とすることが好ましく、0.55以下が更に好ましい。また、M/Mが小さくなるほど、分子量分布における高分子量側の偏りが大きくなり、アルキルオキシラン誘導体の粘度が上昇する。すわなち、M/Mが0.35より小さくなると、粘度が高くなりすぎ、洗浄後の肌のべたつきのなさが損なわれる原因となる。このため、M/Mを0.35以上とするが、お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感の観点から、0.40以上とすることが更に好ましく、0.45以上とすることが特に好ましい。
【0019】
また、本発明で用いるアルキルオキシラン誘導体は、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムが左右非対称であり、以下に示すようにして求められるクロマトグラムのピークの非対称値Asが式(3)、式(4)を満たす。
As=W1/2/W5% ・・・(3)
0.30≦As≦0.70 ・・・(4)
【0020】
図2のクロマトグラムのモデル図を参照しつつ、Asの算出方法について更に説明する。横軸は溶出時間を、縦軸は示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度を示す。
(1) クロマトグラム上の屈折率強度の極大点KからベースラインBへ垂線を引き、その長さをLとする。
(2) 屈折率強度がL/20となるクロマトグラム上の2点のうち、溶出時間が早いほうを点Rとし、溶出時間が遅いほうを点Sとする。
(3) 点Rと点Sを結んだ直線Hと、屈折率強度の極大点KからベースラインBへ引いた垂線との交点をTとする。
(4) 点Rと交点Tの距離をW1/2、点Rと点Sの距離をW5%とする。
【0021】
本発明において、Asは0.30≦As≦0.70を満たす。Asを0.70以下とすることによって、粘度が適度に向上し、お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感を付与することができる。この観点からは、Asを0.65以下とすることが更に好ましい。また、Asが小さくなるほど、分子量分布における高分子量側の偏りが大きくなり、それに由来する粘度の上昇等が見られる。よって、洗浄後のべたつきのなさを付与する観点から、Asを0.30以上とするが、0.57以上とすることが更に好ましい。
【0022】
本発明において、M、MおよびAsを求めるためのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、システムとしてSHODEX(登録商標)GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてSHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて、屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。
【0023】
アルキルオキシラン誘導体は、具体的にはポリプロピレングリコールメチルエーテル、ポリプロピレングリコールエチルエーテル、ポリプロピレングリコールプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ポリプロピレングリコールペンチルエーテル、ポリプロピレングリコールへキシルエーテル等であり、好ましくはポリプロピレングリコールプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテルである。
【0024】
以下、水中油滴型皮膚洗浄化粧料の全質量を100質量%とする。
(a)成分の含有量が多いと洗浄後のべたつきが発生するだけでなく、洗浄性が低下することがあるので、(a)成分の含有量は、10質量%以下とするが、7質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることが更に好ましく、2質量%以下とすることが特に好ましい。また、また、(a)成分が少ないと洗浄後のべたつきのなさが損なわれるだけでなく、お湯で短時間に繰り返し使用した場合の洗浄後のしっとり感を感じにくくなることがあるので、(a)成分の含有量を0.01質量%以上とするが、0.1質量%以上とすることが好ましく、0.5質量%以上とすることが更に好ましい。
【0025】
((b)成分)
(b)成分は、炭素数が2~6である多価アルコールである。この多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、メチルプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンチレングリコール、1,2-へキシレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、グルコース、マルトース、ソルビトール等が挙げられる。これらの(b)成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を適宜組み合わせて用いても良い。中でも好ましくはグリセリン、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコールであり、より好ましくはグリセリン、ジプロピレングリコールである。
【0026】
水中油滴型皮膚洗浄化粧料全体の質量を100質量%としたとき、(b)成分の含有量が多いと洗浄後にべたつきが発生することがあるので、(b)成分の含有量は、50質量%以下とするが、40質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることが更に好ましい。また、(b)成分が少ないと、短時間にお湯で繰り返し使用した場合の洗浄後のしっとり感を感じにくくなることがあるので、10質量%以上とするが、15質量%以上とすることが好ましく、25質量%以上とすることが更に好ましい。
【0027】
((c)成分)
(c)成分は、ポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤である。
【0028】
ポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤は、平均重合度2~10のポリグリセリンと炭素数10~22の脂肪酸とのエステルである。
このポリグリセリンの平均重合度は、好ましくは2~8であり、2~6がより好ましく、2または3がさらに好ましく、2のものが特に好ましい。
【0029】
この脂肪酸は、好ましくは炭素数12~20の脂肪酸、より好ましくは炭素数16~18の脂肪酸である。これらの脂肪酸は飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖のいずれでもよく、またこれら脂肪酸の混合物であってもよい。脂肪酸としては、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸等が挙げられる。中でも好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸であり、より好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸であり、さらに好ましくはパルミチン酸、イソステアリン酸であり、イソステアリン酸が特に好ましい。
【0030】
また、成分(c)のHLBは、好ましくは2~10のものが好ましい。HLBは下記の式により算出される。
HLB=20(1-S/A)
S:エステルのけん化価、A:脂肪酸の酸価
【0031】
水中油滴型皮膚洗浄化粧料全体の質量を100質量%としたとき、(c)成分が少ないと洗浄性が低下するだけでなく、洗い流した後のべたつきのなさを感じにくくなることがあるので、(c)成分の含有量を1質量%以上とするが、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上である。また、(c)成分の含有量が多いと、お湯で短時間に繰り返し使用した場合の洗浄後のしっとり感を感じにくくなることがあるので、(c)成分の含有量を10質量%以下とするが、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下である。
【0032】
((d)成分:油脂)
本発明において用いられる(d)成分は、油脂であり、25℃で固形である油脂を少なくとも含む。
油脂は、具体的には、ツバキ油、オリーブ油、アボガド油、メドウフォーム油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ゴマ油、グレープシード油、米油、ナタネ油、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン等が挙げられる。25℃で固形である油脂としては、ヤシ脂、シア脂、カカオ脂、水添パーム油、水添ナタネ油等が挙げられる。
【0033】
25℃で液状である油脂としては、オリーブ油、ヒマワリ油、ゴマ油、グレープシード油、ナタネ油、又は25℃で固形である油脂としては、シア脂、カカオ脂が好ましい。特に好ましくは、(d)成分として、25℃で液状である油脂と25℃で固形である油脂とを併用できる。この場合には、質量比(25℃で液体の油脂)/(25℃で固体の油脂)が好ましくは1/10~10/1であり、より好ましくは1/8~1/2であり、さらに好ましくは1/6~1/3である。25℃で液状の油脂と25℃で固形の油脂の組み合わせとして、例えばヒマワリ油とシア脂を併用すると特に好ましい。
【0034】
(d)成分が少ないと、お湯で短時間に繰り返し使用した場合の洗浄後のしっとり感を感じにくくなることがあるので、(d)成分の含有量を1質量%以上とするが、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。また、(d)成分の含有量が多いと洗浄後にべたつきのなさが損なわれるだけでなく、洗浄性が低下することがあるので、(d)成分の含有量を20質量%以下とするが、15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることが更に好ましい。
【0035】
水中油滴型皮膚洗浄化粧料には、(a)~(d)成分以外の添加剤を含有させることができる。こうした添加剤としては、化粧品用途に使用されるものが使用可能であるが、例えば、保湿剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤や香料などを例示できる。
水中油滴型皮膚洗浄化粧料の全質量を100質量%としたとき、添加剤の全量は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
水中油滴型皮膚洗浄化粧料の(a)~(d)成分および添加成分以外の残部は水である。水の含有量としては、20~90質量%が好ましく、30~85質量%がより好ましく、40~80質量%がさらに好ましい。
【実施例
【0036】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例及び比較例で用いている化合物a-1~a-3は次のように合成した。
【0037】
(参考合成例:複合金属シアン化物錯体触媒の合成)
塩化亜鉛2.1gを含む2.0mlの水溶液中に、カリウムヘキサシアノコバルテートKCo(CN)を0.84g含む15mlの水溶液を、40℃にて攪拌しながら15分間かけて滴下した。滴下終了後、水16ml、tert-ブチルアルコール16gを加え、70℃に昇温し、1時間攪拌した。室温まで冷却後、濾過操作(1回目濾過)を行い、固体を得た。この固体に、水14ml、tert-ブチルアルコール8.0gを加え、30分間攪拌したのち濾過操作(2回目濾過)を行い、固体を得た。
さらに再度、この固体にtert-ブチルアルコール18.6g、メタノール1.2gを加え、30分間攪拌したのち濾過操作(3回目濾過)を行い、得られた固体を40℃、減圧下で3時間乾燥し、複合金属シアン化物錯体触媒0.7gを得た。
【0038】
(化合物a-1~a-3)
温度計、圧力計、安全弁、窒素ガス吹き込み管、撹拌機、真空排気管、冷却コイル、蒸気ジャケットを装備したステンレス製5リットル(内容積4,890ml)の耐圧反応装置に、ブチルプロピレングリコール200gと参考合成例の複合金属シアン化物錯体触媒0.2gを仕込んだ。窒素置換後、110℃へと昇温し、0.3MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、メチルオキシラン210gを4時間かけて仕込んだ。この際、反応槽内の圧力と温度の経時的変化を測定した。4時間後、反応槽内の圧力が急激に減少した。その後、反応槽内を110℃に保ちながら、0.6MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、徐々にメチルオキシランを投入し、3,287gのメチルオキシランを撹拌下に連続的に加圧添加した。このとき、メチルオキシランを840g添加するまでの時間は60分、2,100g添加するまでの時間は108分、3,287g添加するまでの時間は132分であった。添加終了後、110℃で1時間反応させた後、反応槽より1,680gを抜き取った。
さらに、反応槽の残存物を110℃へと昇温し、反応槽内を110℃に保ちながら、0.6MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、メチルオキシラン174gを20分かけて添加した。添加終了後、110℃で1時間反応させた後、再度反応槽より619gを抜き取り、窒素ガスを吹き込みながら、75~85℃、50~100Torrで1時間減圧処理後、ろ過を行った。
【0039】
得られた反応物(化合物a-1)について、昭和電工製GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定装置を用いて、前述のようにして、M、MおよびAsを求めた。その結果、M/Mは0.52、Asは0.61であった。
【0040】
さらに反応槽の残存物を110℃へと昇温し、反応槽内を110℃に保ちながら、0.6MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、メチルオキシラン121gを30分かけて添加した。添加終了後、110℃で1時間反応させた後、再度反応槽より370gを抜き取り、窒素ガスを吹き込みながら、75~85℃、50~100Torrで1時間減圧処理後、ろ過を行った。得られた反応物(化合物a-2)について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。
得られた反応物(化合物a-2のM/Mは0.42、Asは0.59であった。
【0041】
さらに反応槽の残存物を110℃へと昇温し、反応槽内を110℃に保ちながら、0.6MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、メチルオキシラン122gを30分かけて添加した。110℃で1時間反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら、75~85℃、50~100Torrで1時間減圧処理後、ろ過を行った。得られた反応物(化合物a-3)について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。
得られた反応物(化合物a-3のM/Mは0.36、Asは0.57であった。
【0042】
また、化合物a’(PREMINOL S1004F)については、クロマトグラムの屈折率極大点が一つではなく、単峰系のピークでないため、最大屈折率極大点をもつピークにおけるM/MおよびAsの値を示す。
また、表1中、水酸基価はJISK-1557-1、動粘度はJIS K-2283、不飽和度はJIS K-1557に準拠して測定したものであり、分子量は水酸基価より算出したものである。
【0043】
〔実施例1~14、比較例1~6〕
表2~表4に示す配合比率で、以下の方法により水中油滴型皮膚洗浄化粧料を調製した。なお、表2~4中の共通添加成分は、表5に示す10成分である。
すなわち、(b)成分およびイオン交換水を含む水相と、(a)成分、(c)成分、(d)成分および共通添加成分1,2,3からなる油性成分とをそれぞれ混合し、75~80℃に加熱し、ホモミキサーを用いて混合した後に共通添加成分4,5を添加し冷却し、共通添加成分中の6、7、8、9、10を添加して水中油滴型皮膚洗浄化粧料を得た。
得られた水中油滴型皮膚洗浄化粧料を用いて、4項目について下記の評価基準により評価を行った。評価結果を表2~4に示す。
【0044】
〔評価項目及び評価基準〕
下記の項目に関して、評価を行い、評点の合計によって、「◎」~「×」の下記4段階評価を行った。
(1)洗浄性
20名の男女(24才~54才)をパネラーとし、油汚れとしてナタネ油5gを手に塗布し、水中油滴型皮膚洗浄化粧料2gを手に5回なじませた後、こすらずに流水ですすいだ際の汚れ落ちについて下記のように判定し、20名の合計点を求めて、判定を行った。

2点:汚れが落ちたと感じた場合。
1点:汚れが落ちにくいと感じた場合。
0点:汚れが落ちていないと感じた場合。

評点の合計が30点以上を洗浄性に優れる水中油滴型皮膚洗浄料として判定した。
【0045】
(2)洗浄後のべたつきのなさ
20名の男女(24才~54才)をパネラーとし、水中油滴型皮膚洗浄化粧料2gを手に5回なじませた後、こすらずに流水ですすぎ、タオルドライして5分後のべたつきのなさについて下記のように判定し、20名の合計点を求めて、判定を行った。

2点:べたつきがないと感じた場合。
1点:ややべたつきがあると感じた場合。
0点:べたつきがあると感じた場合。

評点の合計が30点以上をべたつきのなさに優れる水中油滴型皮膚洗浄料として判定した。

(3)お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感
20名の男女(24才~54才)をパネラーとし水中油滴型皮膚洗浄化粧料2gを手に5回なじませた後、お湯(約38℃)ですすぎタオルドライする操作を約5分間で10回繰り返し、タオルドライして5分後のしっとり感について下記のように判定し、20名の合計点を求めて、判定を行った。

2点:しっとり感があると感じた場合。
1点:ややしっとり感があると感じた場合。
0点:しっとり感がないと感じた場合。

評点の合計が30点以上を、お湯で繰り返し洗浄後のしっとり感に優れる水中油滴型皮膚洗浄料として判定した。
【0046】
<評点の合計による4段階評価>
◎:合計点が35以上
○:合計点が30以上~35未満
△:合計点が20以上~30未満
×:合計点が20未満
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
実施例1~14より、本発明の成分を用いた水中油滴型皮膚洗浄化粧料はいずれも洗浄性、洗浄後のべたつきのなさおよびお湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感において良好であった。
【0053】
一方、比較例1~6では十分な性能が得られていない。
比較例1では、(a)成分を含有していないことから、洗浄後のべたつきのなさ、お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感が不十分であった。
比較例2では、(a)成分を含有しておらず、(a’)成分として分子量分布の狭いアルキルオキシラン誘導体を配合しており、洗浄後のべたつきのなさ、お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感が不十分であった。
比較例3では(b)成分を含有していないことから、お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感が不十分であった。
比較例4では、(c)成分を含有していないことから、洗浄性、洗浄後のべたつきのなさが不十分であった。
比較例5では、(d)成分を含有しておらず、(d’)成分としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを配合しており、洗浄性、洗浄後のべたつきのなさ、お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感が不十分であった。
比較例6では、(d)成分を含有していないことから、洗浄後のしっとり感、お湯で繰り返し洗浄した後のしっとり感が不十分であった。
図1
図2