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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20250409BHJP
   B60W 20/50 20160101ALI20250409BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20250409BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20250409BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60W20/50
B60L15/20 K ZHV
B60L50/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021033309
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134274
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】小泉 槙吾
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-321542(JP,A)
【文献】特開2013-001182(JP,A)
【文献】特開2012-187962(JP,A)
【文献】国際公開第2013/121525(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02815944(EP,A1)
【文献】実開昭63-025861(JP,U)
【文献】特開2006-132541(JP,A)
【文献】特開2008-275008(JP,A)
【文献】特開2006-342838(JP,A)
【文献】特開2016-044745(JP,A)
【文献】特開2016-161097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00-10/30,20/00-20/50
F16H 3/00- 3/78,59/00-61/12,
61/16-61/24,63/40-63/50
B60L 1/00- 3/12, 7/00-13/00,
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に伝達される駆動力を発生する内燃機関および電動機と、
クラッチを介して前記内燃機関に接続され、シフトレバーの操作に応じて変速段を切り替える変速部材を有する手動変速機と、
前記変速部材は、前記手動変速機に設けられたシフトアンドセレクト軸であり、
前記シフトアンドセレクト軸は、前記手動変速機の変速段に応じて位置を移動し、この位置の移動によって前記手動変速機の変速段を切り替え、
前記手動変速機の変速段に対応する前記シフトアンドセレクト軸の位置に応じた出力をするシフトポジションセンサと、
前記シフトアンドセレクト軸が前記手動変速機の変速段ニュートラル状態とする位置になっていることを検出するニュートラルスイッチと、
前記シフトアンドセレクト軸が前記手動変速機の変速段後進段とする位置になっていることを検出するリバーススイッチとを備え、
ハイブリッド車両の進行方向に応じて前記電動機の回転方向が切り替わるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記シフトポジションセンサの検出結果と、前記ニュートラルスイッチおよび前記リバーススイッチの検出結果とが整合しないことを条件として、前記シフトポジションセンサの検出結果に基づいて前記電動機を駆動制御することを禁止する制御部を有することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記シフトポジションセンサによって前記手動変速機の変速段が前進段であることが検出された場合に、前記ニュートラルスイッチによって前記手動変速機の変速段がニュートラル状態であることが検出されず、かつ、前記リバーススイッチによって前記手動変速機の変速段が後進段となっていることが検出されていないことを条件として、前記電動機に前進方向の駆動力を発生させることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記シフトポジションセンサによって前記手動変速機の変速段が後進段であることが検出された場合に、前記ニュートラルスイッチによって前記手動変速機の変速段がニュートラル状態であることが検出されず、かつ、前記リバーススイッチによって前記手動変速機の変速段が後進段となっていることが検出されたことを条件として、前記電動機に後進方向の駆動力を発生させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記シフトポジションセンサによって前記手動変速機の変速段が前進段または後進段を成立していないことが検出され、かつ、前記ニュートラルスイッチによって前記手動変速機の変速段がニュートラル状態となっていることが検出されたことを条件として、前記リバーススイッチの検出状態にかかわらず、前記電動機に走行用の駆動力を発生させないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源として内燃機関と電動機モータとを有し、駆動源から駆動輪に動力を伝達する手段として手動変速機と摩擦クラッチとを備えたハイブリッド車両が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このハイブリッド車両は、モータを手動変速機の出力側(駆動輪側)に設置し、車両の進行方向に応じてモータの回転方向を切り替えている。また、運転者によるシフトレバーの操作位置をシフト位置センサによって検出し、シフト位置センサの結果に基づいてモータの駆動トルク(MGトルク)を調整している。
【0004】
このハイブリッド車両は、シフト位置センサの異常時にモータの制御に支障が生じることを防止するために、運転者にシフト位置センサの異常を知らせ、EV走行禁止処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-1182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるハイブリッド車両にあっては、シフト位置センサの異常の有無を検出する構成の具体的な記載がなく、シフト位置センサの異常をどのように検出しているのかを窺い知ることができない。
【0007】
仮に、故障検出用の専用の装置を用いてシフト位置センサの異常を検出した場合には、制御装置の製造コストが増大するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、ニュートラルスイッチとリバーススイッチを利用して、シフトポジションセンサの異常を簡単、かつ、安価に検出でき、異常となっているシフトポジションセンサの検出結果に基づいて電動機が駆動されることを防止できるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、駆動輪に伝達される駆動力を発生する内燃機関および電動機と、クラッチを介して前記内燃機関に接続され、シフトレバーの操作に応じて変速段を切り替える変速部材を有する手動変速機と、前記変速部材は、前記手動変速機に設けられたシフトアンドセレクト軸であり、前記シフトアンドセレクト軸は、前記手動変速機の変速段に応じて位置を移動し、この位置の移動によって前記手動変速機の変速段を切り替え、前記手動変速機の変速段に対応する前記シフトアンドセレクト軸の位置に応じた出力をするシフトポジションセンサと、前記シフトアンドセレクト軸が前記手動変速機の変速段ニュートラル状態とする位置になっていることを検出するニュートラルスイッチと、前記シフトアンドセレクト軸が前記手動変速機の変速段後進段とする位置になっていることを検出するリバーススイッチとを備え、ハイブリッド車両の進行方向に応じて前記電動機の回転方向が切り替わるハイブリッド車両の制御装置であって、前記シフトポジションセンサの検出結果と、前記ニュートラルスイッチおよび前記リバーススイッチの検出結果とが整合しないことを条件として、前記シフトポジションセンサの検出結果に基づいて前記電動機を駆動制御することを禁止する制御部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように上記の本発明によれば、ニュートラルスイッチとリバーススイッチを利用して、シフトポジションセンサの異常を簡単、かつ、安価に検出でき、異常となっているシフトポジションセンサの検出結果に基づいて電動機が駆動されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のシフトポジションセンサの信号の出力を示す図であり、各変速段を判断する出力の範囲を示している。
図3図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のシフトポジションセンサの信号の出力を示す図であり、異常時の例であって、実際の変速段とシフトポジションセンサの出力によって誤判定される変速段との関係を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のシフトポジションセンサの信号の出力を示す図であり、異常時の他の例であって、実際の変速段とシフトポジションセンサの出力によって誤判定される変速段との関係を示す図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両のシフトポジションセンサの信号の出力を示す図であり、異常時のさらに他の例であって、実際の変速段とシフトポジションセンサの出力によって誤判定される変速段との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、駆動輪に伝達される駆動力を発生する内燃機関および電動機と、クラッチを介して内燃機関に接続され、シフトレバーの操作に応じて変速段を切り替える変速部材を有する手動変速機と、手動変速機の変速段に応じた変速部材の位置を検出するシフトポジションセンサと、手動変速機の変速段がニュートラル状態となっていることを検出するニュートラルスイッチと、手動変速機の変速段が後進段となっていることを検出するリバーススイッチとを備え、ハイブリッド車両の進行方向に応じて電動機の回転方向が切り替わるハイブリッド車両の制御装置であって、シフトポジションセンサの検出結果と、ニュートラルスイッチおよびリバーススイッチの検出結果とが整合しないことを条件として、シフトポジションセンサの検出結果に基づいて電動機を駆動制御することを禁止する制御部を有する。
【0013】
これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、ニュートラルスイッチとリバーススイッチを利用して、シフトポジションセンサの異常を簡単、かつ、安価に検出でき、異常となっているシフトポジションセンサの検出結果に基づく電動機の駆動を防止できる。
【実施例
【0014】
以下、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置について、図面を用いて説明する。図1から図5は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置を示す図である。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両1は、エンジン2と、電動機としてのモータジェネレータ3(MGで示す)と、手動変速機4と、ディファレンシャル装置5と、左右の駆動輪6A、6Bと、制御部としてのECU(Electric Control Unit)10とを含んで構成されている。本実施例のエンジン2は内燃機関を構成する。
【0016】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0017】
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20が連結されている。ISG20は、ベルト21などを介してエンジン2の図示しないクランクシャフトに連結されている。
【0018】
ISG20は、電力が供給されることにより回転してエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、エンジン2のクランクシャフトから入力される回転力で回転されてこの回転を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0019】
モータジェネレータ3は、インバータ30を介してバッテリ31から供給される電力によって駆動力を発生する電動機としての機能と、ディファレンシャル装置5を介して駆動輪6A、6Bから入力される回転力(逆駆動力)によって回生発電を行なう発電機としての機能とを有する。
【0020】
インバータ30は、ECU10の制御により、バッテリ31から供給された直流電力を三相の交流電力に変換してモータジェネレータ3に供給したり、モータジェネレータ3によって生成された三相の交流電力を直流電力に変換してバッテリ31を充電する。バッテリ31は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池によって構成されている。
【0021】
手動変速機4は、エンジン2から出力された回転を複数の変速段のいずれかに応じた変速比で変速して出力するMT(Manual Transmission)である。
【0022】
手動変速機4は、エンジン2の動力が伝達される入力軸8と、入力軸8と複数の変速歯車組を介して接続される図示しない出力軸9とを備えており、出力軸9は、ディファレンシャル装置5を介して左右の駆動輪6A、6Bに接続されている。モータジェネレータ3の出力軸は、手動変速機4の出力軸9に接続されている。つまり、駆動力の伝達経路上で、モータジェネレータ3の出力は、手動変速機4よりも駆動輪6A、6B側に配置されており、手動変速機4の変速段を含む状態に関係なく駆動力を駆動輪6A、6Bに伝達可能に構成されている。
【0023】
手動変速機4で成立可能な変速段としては、例えば、低速段である1速段から高速段である6速段までの前進走行用の前進段と、後進段とがある。走行用の変速段の段数は、ハイブリッド車両1の諸元により異なり、上述の1速段から6速段に限られるものではない。
【0024】
手動変速機4における変速段は、運転者の操作によって選択/切替が行われ、運転者により操作されるシフトレバー40の操作位置に応じて切り替えられる。
【0025】
具体的には、シフトレバー40は、手動変速機4に設けられたシフトアンドセレクト軸45にケーブルやリンクにて連絡されている。そして、運転者の操作によって移動するシフトレバー40に応じてシフトアンドセレクト軸45も移動する。より具体的には、シフトアンドセレクト軸45は、運転者によるシフトレバー40のセレクト操作に応じて軸線方向に移動し、かつ、運転者によるシフトレバー40のシフト操作に応じて軸線周りに回転する。
【0026】
シフトアンドセレクト軸45には図示しないフィンガー部が設けられている。手動変速機4は変速段を切替える変速機構(図示せず)を有しており、フィンガー部は変速機構と係合し、変速機構を移動させる部材である。具体的には、シフトアンドセレクト軸45が軸方向に移動すると、フィンガー部がそれぞれ図示しない1速-2速段用のシフトヨーク、3速-4速段用のシフトヨーク、5速-6速段用のシフトヨーク、リバース用のシフトヨークに選択的に嵌合する。つまり、変速機構とは、これらのシフトヨーク、後述するシフタ軸、シフトフォークや同期装置にて構成される。
【0027】
そして、例えば、セレクト操作でシフトアンドセレクト軸45が軸方向に移動してフィンガー部が1速-2速段用のシフトヨークに嵌合する位置に移動することによって1速-2速段用のシフトヨークが選択され、その後、シフト操作にてシフトアンドセレクト軸45が軸線周りに回転すると、フィンガー部が1速-2速段用のシフトヨークを移動させ、1速-2速段用のシフトヨークに連結される図示しない1速-2速段用のシフタ軸が軸方向に移動し、1速-2速段用のシフタ軸に連結された図示しない1速-2速段用のシフトフォークが軸方向に移動する。シフトフォークの移動によって同期装置が作動して、変速段を構成するギヤが駆動力を伝達可能に入力軸8あるいは出力軸9に係合し、変速段が成立する。
【0028】
例えば、1速段を成立させるために、1速-2速段用のシフトフォークが軸方向の一方側であって1速側に移動すると、1速-2速段用のシフトフォークに嵌合する1速-2速段用のスリーブが1速段用の変速ギヤを出力軸9に連結して変速ギヤと出力軸9とを一体回転可能にし、エンジン2の動力を入力軸8、入力軸8側の1速段用の変速ギヤ、スリーブにより連結された出力軸9側の1速段用の変速ギヤおよび出力軸9を介してディファレンシャル装置5に出力する。
【0029】
以上のように運転者のシフトレバー40の操作によって切り替えられる手動変速機4の変速段の状態(位置)は、シフトポジションセンサ41により検出される。シフトポジションセンサ41は、ECU10に接続されており、シフトアンドセレクト軸45の位置を検出し、検出結果をECU10に送信する。
【0030】
具体的には、シフトポジションセンサ41は、ホール素子などの磁気検出素子を有する。シフトアンドセレクト軸45には図示しない永久磁石からなる被検出部が設けられている。
【0031】
シフトアンドセレクト軸45がセレクト方向(軸方向)とシフト方向(回転方向)に移動すると、シフトポジションセンサ41は、シフトアンドセレクト軸45の被検出部の移動に伴う磁界の強さを検出し、磁界の強さに応じた電圧を生成してその電圧に応じた出力信号を出力する。
【0032】
シフトポジションセンサ41から出力される出力信号は、シフトアンドセレクト軸45の位置を示しており、各変速段に応じた値となるように予め設定されている。そして、ECU10は、シフトポジションセンサ41の出力信号に基づいて現在成立している変速段を判定する。
【0033】
図2は、シフトポジションセンサ41の信号の出力に関し、各変速段を判断する出力の範囲を示している。図2に破線で示すように、シフトポジションセンサ41は、運転者によるシフトレバー40の操作範囲(シフトゲートパターン)と同様な動きをするシフトアンドセレクト軸45の被検出部の動き(以後、「出力パターン」)を検出する。
【0034】
すなわち、シフトポジションセンサ41の信号の出力は、シフト方向においては、2速段/4速段/6速段から後進段(REV)/1速段/3速段/5速段に向かうに従って出力信号が増大し、セレクト方向においては、後進段から5速段/6速段に向かうに従って出力信号が増大する。
【0035】
シフトレバー40がセレクト方向とシフト方向に操作されると、シフトアンドセレクト軸45がシフト方向(回転方向)とセレクト方向(軸方向)に移動し、シフトアンドセレクト軸45のフィンガー部がシフトヨークを移動させる。そして、フィンガー部の先端位置(シフトヨークとの係合箇所)が、1速段、2速段、3速段、4速段、5速段、6速段および後進段の各位置に合致すると、手動変速機4の変速段として、当該変速段が成立することになる。
【0036】
シフトポジションセンサ41は、シフトアンドセレクト軸45の被検出部の位置をシフト方向(回転方向)とセレクト方向(軸方向)にて検知する。つまり、シフトポジションセンサ41は、シフトアンドセレクト軸45の被検出部が図2上のどの位置に存在しているか検出する。
【0037】
そして、各変速段(1速段、2速段、3速段、4速段、5速段、6速段および後進段)が成立したときのシフトポジションセンサ41の出力は、図2上で各変速段に対応した所定の範囲となるように設定されており、シフトポジションセンサ41の出力が、変速段が1速段、2速段、3速段、4速段、5速段、6速段および後進段の各変速段の範囲に合致すると、ECU10は、手動変速機4の変速段として当該変速段が成立していると判断する。
【0038】
手動変速機4には、ニュートラルスイッチ42が設けられており、ニュートラルスイッチ42は、ECU10に接続されている。ニュートラルスイッチ42は、手動変速機4において前進段および後進段のいずれもが成立していない状態、つまりニュートラル状態であることを検出する。詳細には、フィンガー部の先端がシフトヨークを移動させておらず、フィンガー部が1速-2速段用のシフトヨーク、3速-4速段用のシフトヨーク、5速-6速段用のシフトヨーク、リバース用のシフトヨークの間を自由に移動可能な状態(セレクト移動が可能な状態)であることを検出する。
【0039】
ニュートラルスイッチ42は、手動変速機4がニュートラル状態にあるときに、シフトアンドセレクト軸45に設けられた図示しないニュートラルレバーが接触することにより、ONされるスイッチである。詳細には、シフトアンドセレクト軸45がシフト方向に回転しておらずシフトアンドセレクト軸45がセレクト方向への移動が可能な状態であるときに、ニュートラルスイッチ42は通電して、ECU10にニュートラル状態を知らせる。
【0040】
このニュートラル状態は、図2においては、シフト方向で2速段/4速段/6速段と後進段/1速段/3速段/5速段との間に位置し、セレクト方向に延びている。つまり、ニュートラル状態でのシフトポジションセンサ41の出力値は、シフト方向で2速段/4速段/6速段における出力値と後進段/1速段/3速段/5速段における出力値との間の出力値となっている。図2におけるニュートラル状態の出力範囲をニュートラルバンドNとして示す。
【0041】
シフトポジションセンサ41とニュートラルスイッチ42はそれぞれ独立しており、シフトポジションセンサ41の出力値が概ねニュートラルバンドNの領域に入っているときにニュートラルスイッチ42がオンとなり、出力値が概ねニュートラルバンドNの領域から外れているときにニュートラルスイッチ42がオフとなる。
【0042】
手動変速機4には、リバーススイッチ43が設けられており、リバーススイッチ43は、ECU10に接続されている。リバーススイッチ43は、手動変速機4の変速段として後進段が成立していることを検出する。
【0043】
リバーススイッチ43は、手動変速機4が後進段にあるときに、シフトアンドセレクト軸45に設けられた図示しないリバースレバーが接触することにより、ONされるスイッチである。手動変速機4の変速段として後進段が成立しているときに、リバーススイッチ43は通電して、ECU10に後進段が成立した状態を知らせる。
【0044】
シフトポジションセンサ41の出力値が概ね図2の後進段の領域に入っているときにリバーススイッチ43はオンとなり、出力値が概ね図2の後進段の領域から外れているときにリバーススイッチ43はオフとなる。本実施例のシフトアンドセレクト軸45は、変速部材を構成する。
【0045】
なお、参考に図2上に示した通り、リバーススイッチ43がオンになる領域とシフトポジションセンサ41が後進段の成立を示す出力範囲は同じになるが、リバーススイッチ43がオンになる領域とシフトポジションセンサ41が変速段の成立を示す出力範囲は、ニュートラルスイッチ42がオンになる領域と重ならずに距離を有しているため、各変速段の成立判断の信頼性を向上させることができ、不整合の発生を抑制することができる。
【0046】
エンジン2と手動変速機4との間の動力伝達経路には、クラッチ7が設けられている。クラッチ7としては、例えば乾式単板の摩擦クラッチを用いることができる。エンジン2と手動変速機4とは、クラッチ7を介して接続されている。
【0047】
クラッチ7は、クラッチアクチュエータ70によって作動され、エンジン2と手動変速機4との間で動力を伝達する係合状態と、動力を伝達しない解放状態と、回転差のある状態でトルクが伝達される半クラッチ状態とのいずれかに切り替えられる。クラッチアクチュエータ70は、ECU10に接続され、ECU10によって制御される。
【0048】
ECU10は、運転者により操作されるクラッチペダル71の踏み込み量に応じてクラッチアクチュエータ70を制御し、マニュアルクラッチと同等の動作となるように制御する。すなわち、本実施例のハイブリッド車両1は、クラッチバイワイヤ方式のクラッチ7を有する。
【0049】
クラッチペダル71の踏み込み量は、クラッチペダルセンサ72によって検出される。クラッチペダルセンサ72は、ECU10に接続されており、クラッチペダル71の踏み込み量に応じた信号をECU10に送信するようになっている。
【0050】
なお、ハイブリッド車両1は、クラッチペダル71の踏み込んだときの反力を擬似的に発生させるクラッチペダル疑似負荷装置73を有する。運転者は、クラッチペダル71を踏み込んだときにクラッチペダル疑似負荷装置73によって発生する反力によって、クラッチバイワイヤ方式でない通常のクラッチの踏み込み感覚と同等の踏み込み感覚を得ることができる。
【0051】
ハイブリッド車両1は、運転者により操作されるアクセルペダル90を備えている。アクセルペダル90の踏み込み量は、アクセル開度センサ91によって検出される。アクセル開度センサ91は、ECU10に接続されており、アクセルペダル90の踏み込み量をアクセル開度として検出し、当該アクセル開度に応じた信号をECU10に送信する。
【0052】
ハイブリッド車両1は、運転者により操作されるブレーキペダル92を備えている。ブレーキペダル92の踏み込み量は、ブレーキペダルセンサ93によって検出される。ブレーキペダルセンサ93は、ECU10に接続されており、ブレーキペダル92の踏み込み量に応じた信号をECU10に送信する。
【0053】
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0054】
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU10として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、本実施例におけるECU10として機能する。
【0055】
ECU10は、ハイブリッド車両1の制御モードを切り替える。本実施例における制御モードとしては、EVモードとHEVモードとが設定されている。
【0056】
EVモードは、クラッチ7を解放状態とし、モータジェネレータ3の動力によりハイブリッド車両1を走行させる制御モードである。HEVモードは、クラッチ7を係合状態とし、エンジン2、またはエンジン2およびモータジェネレータ3の動力によりハイブリッド車両1を走行させる制御モードである。
【0057】
詳細には、本実施例に係るハイブリッド車両1におけるEVモードは、運転者の操作によって選択されている手動変速機4の変速段に応じて出力特性と速度範囲が設定されており、アクセル開度センサ91によって検出される運転者のアクセルペダル90の踏み込み量に対応する出力(駆動力)で走行するモードである。
【0058】
HEVモードは、エンジン2が発生する駆動力によりハイブリッド車両1を走行させる制御モードであり、モータジェネレータ3の動力を補助的に使用してハイブリッド車両1を走行させる制御モードである。
【0059】
ECU10は、例えば、アクセル開度とエンジン回転数に基づいてEVモードとHEVモードとを切り替える。
【0060】
ECU10は、例えば、EVモードで走行時に、アクセル開度で決まるドライバ要求トルクがHEV移行閾値を超えた場合、エンジン2を再始動させてHEVモードに移行する。
【0061】
ECU10は、例えば、HEVモードで走行時に、アクセル開度とエンジン回転数で決まるドライバ要求トルクがEV移行閾値を下回った場合、エンジン2を停止させてEVモードに移行する。
【0062】
手動変速機4の出力軸9は、ハイブリッド車両1の前進時に前進方向に回転し、後進時には前進方向と逆方向に回転する。モータジェネレータ3の出力軸は、手動変速機4の出力軸9に接続されているので、EVモードおよびHEVモードによる走行時に、モータジェネレータ3はハイブリッド車両1の進行方向に応じて回転方向が切り替わり、ハイブリッド車両1の前進時は正転し、後進時は逆転する。
【0063】
ECU10は、シフトポジションセンサ41の検出情報に基づいて前進段および後進段に応じた回転方向でモータジェネレータ3の駆動力を制御する。なお、モータジェネレータ3は、手動変速機4の出力軸9でなく、ディファレンシャル装置5に直接駆動力を出力するように接続されてもよい。
【0064】
本実施例において、ECU10は、シフトアンドセレクト軸45の位置を検出し、手動変速機4の変速段に応じた出力をするシフトポジションセンサ41の検出結果と、ニュートラルスイッチ42およびリバーススイッチ43の検出結果とが整合しない場合、シフトポジションセンサ41が異常であると判断する。
【0065】
これにより、ハイブリッド車両1に既存のニュートラルスイッチ42とリバーススイッチ43を利用して、シフトポジションセンサ41の異常を簡単に検出できる。
【0066】
また、シフトポジションセンサ41の故障検出用の専用の装置を用いてシフトポジションセンサ41の異常を検出する必要がないので、制御装置を安価に製造できる。
【0067】
また、ECU10は、シフトポジションセンサ41が異常であると判断すると、シフトポジションセンサ41の検出結果に基づいてモータジェネレータ3を制御することを禁止する。
【0068】
これにより、異常となっているシフトポジションセンサ41の検出結果に基づいてモータジェネレータ3が駆動されることを防止でき、運転者の意に反する事態が生じることを防止できる。
【0069】
ECU10は、シフトポジションセンサ41によって手動変速機4の変速段が前進段であることが検出された場合に、ニュートラルスイッチ42によって手動変速機4の変速段がニュートラル状態であることが検出されず、かつ、リバーススイッチ43によって手動変速機4の変速段が後進段となっていることが検出されていないことを条件として、モータジェネレータ3に前進方向の駆動力を発生させる。
【0070】
すなわち、ECU10は、シフトポジションセンサ41によって手動変速機4の変速段が前進段であることが検出されたときに、ニュートラルスイッチ42がオフで、かつ、リバーススイッチ43がオフである場合に、モータジェネレータ3に前進方向の駆動力を発生させる。
【0071】
ここで、図3に例示するように、運転者がシフトレバー40を後進段に操作し、シフトアンドセレクト軸45が後進段P1を達成する位置に移動された場合に、シフトポジションセンサ41は後進段P1の範囲に相当する出力を出力しなければならないが、シフトポジションセンサ41の異常や位置ずれによりセレクト方向の出力が大きくなると、実際の変速段が後進段であるのにもかかわらず、シフトポジションセンサ41は変速段が1速段(P2参照)の範囲に相当する出力を出力してしまうので、ECU10は1速段(前進段)であるものと誤判定してしまう。
【0072】
この場合、シフトポジションセンサ41の検出情報に基づいてモータジェネレータ3を制御すると、運転者が後進(後退)を意図しているのもかかわらずモータジェネレータ3が前進駆動力を発生させるおそれがある。
【0073】
しかし、本実施例では、この状態で実際の変速段に応じてリバーススイッチ43がオンとなっているので、ECU10は変速段が後進段となっていることを知り得て、シフトポジションセンサ41の検出結果に基づくモータジェネレータ3の前進駆動を許可しない。つまり、ECU10は、モータジェネレータ3に前進駆動力を発生させない。
【0074】
これにより、運転者が後進段を意図して操作してハイブリッド車両1が後進走行可能な状態である場合に、モータジェネレータ3が誤って正転駆動(前進走行用の駆動)されることを防止でき、運転者の意に反する事態が生じることを防止できる。
【0075】
また、ECU10は、シフトポジションセンサ41によって手動変速機4の変速段が後進段であることが検出された場合に、ニュートラルスイッチ42によって手動変速機4の変速段がニュートラル状態であることが検出されず、かつ、リバーススイッチ43によって手動変速機4の変速段が後進段となっていることが検出されたことを条件として、モータジェネレータ3に後進方向の駆動力を発生させる。
【0076】
すなわち、ECU10は、シフトポジションセンサ41によって手動変速機4の変速段が後進段であることが検出されたときに、ニュートラルスイッチ42がオフでかつ、リバーススイッチ43がオンである場合に、モータジェネレータ3に後進方向の駆動力を発生させる。すなわち、モータジェネレータ3を逆転駆動する。
【0077】
他の不具合の例として、図4に示すように、運転者がシフトレバーを、例えば、1変速段に操作し、シフトアンドセレクト軸45が1速段(P3参照)を達成する位置に移動された場合に、シフトポジションセンサ41は1速段(P3)の範囲に相当する出力を出力しなければならない。
【0078】
しかし、シフトポジションセンサ41の異常や位置ずれによってセレクト方向の出力が小さくなると、実際の変速段が1速段であるのにもかかわらず、シフトポジションセンサ41は変速段が後進段(P4参照)の範囲に相当する出力を出力してしまうので、ECU10は、変速段を後進段(P4参照)であるものと誤判定してしまう。
【0079】
この場合、シフトポジションセンサ41の検出情報に基づいてモータジェネレータ3を制御すると、運転者が前進を意図しているのもかかわらずモータジェネレータ3が逆転駆動されるおそれがある。
【0080】
しかし、本実施例では、この状態で実際の変速段に応じてリバーススイッチ43がオフとなっているので、ECU10は変速段が後進段となっているはずがないことを知り得て、シフトポジションセンサ41の検出結果に基づくモータジェネレータ3の逆転駆動を許可しない。つまり、ECU10は、モータジェネレータ3に後進駆動力(逆転駆動力)を発生させない。
【0081】
これにより、運転者が前進段を意図して操作してハイブリッド車両1が前進走行可能な状態である場合に、モータジェネレータ3が誤って逆転駆動されることを防止でき、運転者の意に反する事態が生じることを防止できる。
【0082】
また、ECU10は、シフトポジションセンサ41からの出力が手動変速機4の変速段が前進段または後進段を成立していない状態を示す出力であることが検出され、かつ、ニュートラルスイッチ42によって手動変速機4の変速段がニュートラル状態となっていることが検出されたことを条件として、リバーススイッチ43の検出状態にかかわらず、モータジェネレータ3に走行用の駆動力を発生させない。
【0083】
すなわち、ECU10は、シフトポジションセンサ41によって手動変速機4の変速段がニュートラル位置または不定(前進段または後進段の変速段が成立していない状態)であることが検出されたときに、ニュートラルスイッチ42がオンである場合に、リバーススイッチ43のオンとオフにかかわらずに、モータジェネレータ3の駆動を禁止して、モータジェネレータ3の停止状態を維持する。
【0084】
さらに他の不具合の例として、図5に示すように、シフトポジションセンサ41の異常や位置ずれにより、実際の変速段がニュートラル位置P5であるのにもかかわらず、シフトポジションセンサ41が変速段を3速段(P6参照)の範囲に相当する出力を出力してしまうので、ECU10は3速段であるものと誤判定してしまう。この場合、シフトポジションセンサ41の検出情報に基づいてモータジェネレータ3を制御すると、モータジェネレータ3が正転駆動されるおそれがある。
【0085】
しかし、本実施例では、この状態では、ニュートラルスイッチ42がオンとなっているので、ECU10は、シフトポジションセンサ41の検出結果に基づいてモータジェネレータ3の正転駆動を許可しない。
【0086】
これにより、手動変速機4がニュートラル位置にある場合に、モータジェネレータ3が誤って駆動されることを防止でき、運転者の意に反する事態が生じることを防止できる。
【0087】
以上のように、本実施例のECU10は、ニュートラルスイッチ42とリバーススイッチ43を利用して、シフトポジションセンサ41の異常を簡単、かつ、安価に検出でき、異常となっているシフトポジションセンサ41の検出結果に基づいてモータジェネレータ3が駆動されることを防止できる。
【0088】
また、シフトポジションセンサ41が異常となっている場合には、シフトポジションセンサ41が故障している可能性が高いので、シフトポジションセンサ41が故障したことを運転者に報知し、シフトポジションセンサ41の点検や交換を行うように運転者に注意を促してもよい。
【0089】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0090】
1...ハイブリッド車両、2...エンジン(内燃機関)、3...モータジェネレータ(電動機)、4...手動変速機、6A,6B...駆動輪、7...クラッチ、10...ECU(制御部)、41...シフトポジションセンサ、42...ニュートラルスイッチ、43...リバーススイッチ、45...シフトアンドセレクト軸(変速部材)
図1
図2
図3
図4
図5