(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20250409BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
H02J1/00 309W
H02J7/00 302Z
H02J7/00 301B
(21)【出願番号】P 2021119877
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 賢
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-015076(JP,A)
【文献】特開2019-013085(JP,A)
【文献】特開2004-221007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御基板(70)に実装された電子装置であって、
所定の処理を実行する処理回路(30)と、
外部電源(VB)から供給された電源供給電圧(VBin)を分圧して生成した入力信号電圧(Vin)を前記処理回路に出力するように直列接続された複数の分圧抵抗(R1、R2)で構成されているか、或いは、前記電源供給電圧が前記処理回路の入力信号電圧として入力される接続点に接続されたプルダウン抵抗(R3)で構成されている高インピーダンス入力回路(40、40U)と、
第1端(T1)が電源スイッチ(SW1)を介して前記外部電源に接続され、前記第1端と反対側の第2端(T2)が前記高インピーダンス入力回路の高電位側に接続されたコネクタ端子(Rc)と、
半導体スイッチで構成され、前記コネクタ端子の前記第2端とグランドとを接続する回復電流通電経路を開閉可能な回復スイッチ(SW2)、前記回復スイッチに直列接続された電流制限抵抗(Rr)、及び、前記電源スイッチをONした時から前記回復スイッチをON状態とする通電時間を設定する通電時間設定回
路を有する接触抵抗回復回路(50)と、
を備え、
前記通電時間設定回路は、前記コネクタ端子の前記第2端と、前記回復スイッチを構成するトランジスタのベース端子又はゲート端子との間でコンデンサ(Cr)と抵抗(Rs)とが直列接続されたCR回路(55)で構成されており、
前記電源スイッチのON後、前記回復スイッチのベース又はゲートに入力される電圧が前記回復スイッチのON閾値を下回るまでの時間が、前記CR回路の時定数に基づいて決まり、
前記接触抵抗回復回路は、前記通電時間の間、前記回復スイッチがONすることで、前記コネクタ端子の接触抵抗を低下させるように、前記高インピーダンス入力回路に流れる電流よりも大きな電流を前記コネクタ端子に流す電子装置。
【請求項2】
制御基板(70)に実装された電子装置であって、
所定の処理を実行する処理回路(30)と、
外部電源(VB)から供給された電源供給電圧(VBin)を分圧して生成した入力信号電圧(Vin)を前記処理回路に出力するように直列接続された複数の分圧抵抗(R1、R2)で構成されてい
る高インピーダンス入力回路(4
0)と、
第1端(T1)が電源スイッチ(SW1)を介して前記外部電源に接続され、前記第1端と反対側の第2端(T2)が前記高インピーダンス入力回路の高電位側に接続されたコネクタ端子(Rc)と、
半導体スイッチで構成され、前記コネクタ端子の前記第2端とグランドとを接続する回復電流通電経路を開閉可能な回復スイッチ(SW2)、前記回復スイッチに直列接続された電流制限抵抗(Rr)、及び、前記電源スイッチをONした時から前記回復スイッチをON状態とする通電時間を設定する通電時間設定回
路を有する接触抵抗回復回路(50)と、
を備え、
前記通電時間設定回路は、IC(204、206)の内部に設けられたタイマ回路(60)で構成されており、前記高インピーダンス入力回路で分圧して得られた前記入力信号電圧が前記タイマ回路の動作電源として用いられ、
前記接触抵抗回復回路は、前記通電時間の間、前記回復スイッチがONすることで、前記コネクタ端子の接触抵抗を低下させるように、前記高インピーダンス入力回路に流れる電流よりも大きな電流を前記コネクタ端子に流す電子装置。
【請求項3】
前記IC(
204)の内部に、前記高インピーダンス入力回路、及び、前記接触抵抗回復回路の全部が設けられている請求項
2に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御基板のコネクタ等に用いられる端子において、フレッティングコロージョン現象により酸化膜が形成されて接触抵抗が増加したとき、コヒーラ効果を利用して接触抵抗を回復する技術が知られている。コヒーラ効果とは、酸化膜に対してある値以上の電圧を印加すると、急激に電流が流れ、酸化膜が破壊されて接触抵抗が抵抗する現象をいう。酸化膜が破壊された後は、安定した接触抵抗となる。接触抵抗を低く維持することができれば、端子の金メッキを錫メッキに変更することでコスト低減が可能となる。
【0003】
例えば特許文献1に開示された装置は、バッテリからの入力電圧を受けてレギュレータ部で内部電源(基準電圧源)が生成される。スイッチがオフからオンに切り替わり電源供給が開始された時、内部電源から、コンデンサを充電するための突入電流が一時的に流れる。この突入電流により、コネクタ端子に形成された酸化膜が破壊及び除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来技術では、コネクタ端子の酸化膜を除去するための接触抵抗回復電流を通電するのに、バッテリ電源とは別の内部電源を生成する電源回路、及び、内部電源用の電源端子が必要であり、制御基板の実装部品が増加する。内部電源の電源回路には酸化膜を除去できるだけの出力電流仕様が要求される。また、特許文献1の従来技術では大容量のコンデンサが必要となり、実装面積が大きくなるため、制御基板を小型化することができないという課題がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、コネクタ端子の接触抵抗回復機能を備えた電子装置において、制御基板を小型化する電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、制御基板(70)に実装された電子装置であって、所定の処理を実行する処理回路(30)と、高インピーダンス入力回路(40、40U)と、コネクタ端子(Rc)と、接触抵抗回復回路(50)と、を備える。
【0008】
高インピーダンス入力回路は、外部電源(VB)から供給された電源供給電圧(VBin)を分圧して生成した入力信号電圧(Vin)を処理回路に出力するように直列接続された複数の分圧抵抗(R1、R2)で構成されている。或いは、高インピーダンス入力回路は、電源供給電圧が処理回路の入力信号電圧として入力される接続点に接続されたプルダウン抵抗(R3)で構成されている。
【0009】
コネクタ端子は、第1端(T1)が電源スイッチ(SW1)を介して外部電源に接続され、第1端と反対側の第2端(T2)が高インピーダンス入力回路の高電位側に接続されている。
【0010】
接触抵抗回復回路は、半導体スイッチで構成され、コネクタ端子の第2端とグランドとを接続する回復電流通電経路を開閉可能な回復スイッチ(SW2)、回復スイッチに直列接続された電流制限抵抗(Rr)、及び、電源スイッチをONした時から回復スイッチをON状態とする通電時間を設定する通電時間設定回路を有する。接触抵抗回復回路は、通電時間の間、回復スイッチがONすることで、コネクタ端子の接触抵抗を低下させるように、高インピーダンス入力回路に流れる電流よりも大きな電流をコネクタ端子に流す。
【0011】
本発明の第1の態様では、通電時間設定回路は、コネクタ端子の第2端と、回復スイッチを構成するトランジスタのベース端子又はゲート端子との間でコンデンサ(Cr)と抵抗(Rs)とが直列接続されたCR回路(55)で構成されている。電源スイッチのON後、回復スイッチのベース又はゲートに入力される電圧が回復スイッチのON閾値を下回るまでの時間が、CR回路の時定数に基づいて決まる。
本発明の第2の態様では、通電時間設定回路は、IC(204、206)の内部に設けられたタイマ回路(60)で構成されている。複数の分圧抵抗(R1、R2)で構成されている高インピーダンス入力回路で分圧して得られた入力信号電圧がタイマ回路の動作電源として用いられる。
【0012】
本発明では、外部電源からコネクタ端子を経由して高インピーダンス入力回路に向かう経路の途中に接触抵抗回復回路が設けられる。外部電源からの電源供給を開始した時から所定の通電時間、接触抵抗回復回路の回復スイッチがONすることで、コネクタ端子に大電流が通電されて酸化膜を破壊する。特許文献1の従来技術で設けられている接触抵抗回復電流を通電するための別の電源回路は不要である。
【0013】
また、本発明の接触抵抗回復回路は、半導体スイッチで構成された回復スイッチを用いるため、大容量コンデンサを用いる特許文献1の従来技術と比べて実装面積を減らし、制御基板を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の各実施形態による電子装置の基本構成を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態による電子装置の動作チャート。
【
図11】高インピーダンス入力回路の他の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による電子装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態の電子装置は、車載バッテリの直流電力により車載アクチュエータの駆動制御を行う制御装置において、バッテリ電圧の入力状態を判定する処理回路を含む装置である。複数の実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0016】
(基本構成)
最初に
図1を参照し、本発明の各実施形態による電子装置10の基本構成について説明する。電子装置10は、処理回路30、高インピーダンス入力回路40、及び、接触抵抗回復回路50を備え、制御基板70に実装されている。制御基板70の一端にはコネクタ75が設けられており、電子装置10は、コネクタ端子Rcをさらに備える。
【0017】
コネクタ端子Rcは、一種の抵抗素子として図示される。コネクタ端子Rcの第1端T1は、電源スイッチSW1を介して「外部電源」としてのバッテリVBに接続される。コネクタ端子Rcの第1端T1と反対側の第2端T2は、高インピーダンス入力回路40の高電位側に接続されている。
【0018】
図面及び明細書中の記号に関し、「VB」は、物としてのバッテリを指す符号であるとともに、バッテリの物性値であるバッテリ電圧を意味する。「Rc」は、コネクタ端子の符号であるとともに、コネクタ端子の物性値である端子接触抵抗を意味する。それ以外の抵抗の記号R1、R2、Rr等についても、抵抗素子の符号であるとともに、その物性値である抵抗(値)を意味する。
【0019】
処理回路30は所定の処理を実行する。本実施形態では、車載アクチュエータの起動時にバッテリ電圧VBの供給状態を判定する処理を実行する。処理回路30は、入力信号電圧Vinが高インピーダンス状態か低インピーダンス状態かを判定し、判定結果を出力する。その判定結果に基づき、正常に電源供給されている場合、例えば起動回路がアクチュエータを起動する。
【0020】
高インピーダンス入力回路40は、直列接続された複数の分圧抵抗R1、R2により構成されている。なお、分圧抵抗R1、R2を有しない他の構成例の高インピーダンス入力回路40Uについて、
図11を参照して後述する。高インピーダンス入力回路40の高電位側には、バッテリVBからコネクタ端子Rcを介して供給されたバッテリ供給電圧VBinが印加される。高インピーダンス入力回路40は、バッテリ供給電圧VBinを分圧して生成した入力信号電圧Vinを処理回路30に出力する。入力信号電圧Vinは下式で表される。
Vin=VBin×R2/(R1+R2)
【0021】
接触抵抗回復回路50は、コネクタ端子Rcの第2端T2とグランドとの間に高インピーダンス入力回路40に対して並列に接続された回復電流通電経路を有する。回復電流通電経路には、電流制限抵抗Rrと回復スイッチSW2とが直列接続されている。回復スイッチSW2は、バイポーラトランジスタやFET(電界効果トランジスタ)等の半導体スイッチで構成され、回復電流通電経路を開閉可能である。
【0022】
回復スイッチSW2がON(接続)すると、回復電流通電経路に回復電流Ireが流れる。回復電流Ireは、回復スイッチSW2がOFF(遮断)した時に高インピーダンス入力回路40に流れる電流よりも大きな電流となるように、電流制限抵抗Rrの抵抗値が設定されている。回復スイッチSW2がONの間、コネクタ端子Rcに回復電流Ireが流れて酸化膜が破壊及び除去されることで、接触抵抗Rcが低下し、正常レベルに回復される。
【0023】
通電時間設定回路55、60は、電源スイッチSW1をONした時から回復スイッチSW2をON状態とする通電時間を設定する。通電時間設定回路の符号「55」は、第1、第2実施形態のCR回路に対応し、符号「60」は、第3~第6実施形態のタイマ回路に対応する。
【0024】
図1において、以下の数値例を用いて作用を説明する。
VB=12V
R1=60kΩ
R2=20kΩ
Rc=100Ω(酸化した状態)
Rr=200Ω
【0025】
接触抵抗回復回路50の回復スイッチSW2がOFFのとき、コネクタ端子Rcに印加される電圧は、(12×0.1/(0.1+60+20)≒)15mVであり、非常に小さい。バッテリ電圧VB(12V)の大部分は高インピーダンス入力回路40の分圧抵抗R1、R2に印加される。そのため、コネクタ端子Rcの仕様によって多少の差はあるものの、酸化膜を破壊できないと推定される。
【0026】
回復スイッチSW2がONすると、コネクタ端子Rcに印加される電圧は(12×0.1/(0.1+0.2)=)4Vとなり、酸化膜を破壊可能な電圧まで上昇して酸化膜が破壊されることで、回復電流Ire(40mA以上)が通電されると考えられる。
【0027】
ただし、常時回復電流Ireを通電すると不要な消費電力の増加や本来の入力信号電圧Vinへの影響がある。そこで、接触抵抗値が回復したと見込まれる時間で回復スイッチSW2をOFFし回復電流通電経路を遮断する。
【0028】
こうして、電源スイッチSW1がONした時から所定の通電時間のみ接触抵抗回復回路50の回復スイッチSW2をONすることでコネクタ端子Rcにある値以上の電圧を印加することができる。これによりコネクタ端子Rcの酸化膜を除去し、接触抵抗を、酸化前の正常で安定した抵抗値に回復することができる。
【0029】
(比較例)
ここで
図12、
図13を参照し、比較例の電子装置108、109について説明する。
図12に示す比較例1の電子装置108は、特許文献1(特開2020-119814号公報)の
図3等の構成に相当する。VBAT及びSWBは特許文献1のバッテリ電圧及びバッテリスイッチに相当する。制御基板70内に設けられた電源回路81は特許文献1のレギュレータ部に相当し、バッテリ電圧VBATを受けて回復電流通電用の内部電源電圧VSを生成する。
【0030】
電源回路81は、回復スイッチSWS及び電源回路保護抵抗Rpvを介して回復電流通電用コネクタ端子Rcbに接続されている。接触抵抗回復時にSW制御部82が回復スイッチSWSをONすると、回復電流通電用の内部電源電圧VSは、回復電流通電用コネクタ端子Rcbを介してコネクタ端子Rcの第1端T1に印加される。
【0031】
比較例1の接触抵抗回復回路508は、電流制限抵抗RrとコンデンサCrとが直列接続されたRC回路で構成されている。回復スイッチSWSがONされ内部電源電圧VSが印加されると、コンデンサCrを充電するための突入電流が一時的に流れる。この突入電流により、コネクタ端子Rcに形成された酸化膜が破壊及び除去される。
【0032】
比較例1の電子装置108では、回復電流通電用の内部電源電圧VSを生成するための電源回路81や回復電流通電用コネクタ端子Rcbが必要であるため、制御基板70の実装部品が増加する。また、コネクタ端子Rcの素材、表面処理、サイズ等の条件によって変わるが、車載用の制御基板70を想定した場合、コンデンサCrの容量は1000μF以上必要と推測され、実装面積が大きくなる。
【0033】
図13に示す比較例2の電子装置109は、
図12の接触抵抗回復回路508の構成を本実施形態の接触抵抗回復回路50に置き換えたものである。この構成では、コネクタ端子Rcから入力されるバッテリ供給電圧VBinにより回復電流が通電されるため、電源回路81は不要である。しかし比較例2においてもコンデンサCrの容量は1000μF以上必要であるため、制御基板70を小型化することができない。
【0034】
(本発明の着眼点)
上記の比較例1、2に対し本発明では、制御基板70を小型化することを目的とする。その手段として、接触抵抗回復回路50において回復電流Ireを通電するための電圧源は、コネクタ端子Rcに入力されるバッテリ供給電圧VBinとし、別の電源回路を不要とする。また、大容量のコンデンサを使用せず、半導体スイッチにより接触抵抗回復回路50を構成する。
【0035】
第3~第6実施形態では、制御基板70上の回路の全部又は一部をICに組み込む。ICの内部に電流増幅回路やタイマ回路を組み込むことで更なる小型化を実現する。例えばICは、処理回路30を含む「入力IC」として構成される。タイマ回路60の動作電源も高インピーダンス入力回路40の電圧を用い、別の電源回路を不要とする。第6実施形態では、高インピーダンス入力回路40で分圧して得られた入力信号電圧Vinを動作電源とするFET回路でタイマ回路を構成することで、ICの端子数を低減可能である。
【0036】
続いて
図2~
図10を参照し、第1~第6実施形態の電子装置について順に説明する。以下、第1~第6実施形態の電子装置の符号は、「10」に続く3桁目に実施形態の番号を付す。
【0037】
(第1実施形態)
図2に示す第1実施形態の電子装置101では、接触抵抗回復回路50の回復スイッチSW2がNPN型バイポーラトランジスタ(図中「BT」)で構成されている。回復スイッチSW2のコレクタは高電位側の電流制限抵抗Rrに接続され、エミッタはグランドに接続されている。なお、
図2の構成を論理反転することで、回復スイッチSW2をPNP型バイポーラトランジスタで構成することも可能である。
【0038】
回復電流通電経路を構成する電流制限抵抗Rr及び回復スイッチSW2と並列に、コンデンサCr、抵抗Rs、抵抗Rtが高電位側からこの順に直列接続されている。抵抗Rsと抵抗Rtとの接続点は回復スイッチSW2のベースに接続されている。通電時間設定回路は、コンデンサCrと抵抗Rsとが直列接続されたCR回路55で構成されている。抵抗Rsと抵抗Rtとの接続点の電圧、すなわち、回復スイッチSW2のベースに入力される電圧をベース電圧Vaと記す。
【0039】
図3の動作チャートを参照し、電子装置101の動作について説明する。動作チャートの縦軸には上から順に、電源スイッチSW1のON/OFF、ベース電圧Va、回復スイッチSW2のON/OFF、回復電流Ireの変化を示す。時刻t1に電源スイッチSW1がONされると、ベース電圧Vaは、バッテリ供給電圧VBinに近い電圧、詳しくは抵抗Rsによる電圧降下分を引いた電圧まで上昇する。このとき、ベース電圧VaがON閾値Vthを上回って回復スイッチSW2がONし、回復電流Ireの通電が開始する。
【0040】
その後、コンデンサCrの充電に伴い、ベース電圧Vaは徐々に低下する。時刻t2にベース電圧VaがON閾値Vthを下回ると、回復スイッチSW2はOFFし、回復電流Ireの通電が終了する。厳密には、回復スイッチSW2のOFF動作、及び、それに伴う回復電流Ireの減少は、時刻t2から時刻t3まで傾きを持って変化する。しかし、時刻t2から時刻t3までの時間ΔTは、時刻t1から時刻t2までの時間Tonに比べて極めて短いため、無視してよい。したがって、電源スイッチSW1のON後、ベース電圧VaがON閾値Vthを下回るまでの時間を回復電流Ireの通電時間とみなす。
【0041】
ここで、ベース電圧Vaの低下時間は、CR回路の時定数、すなわちコンデンサCrの容量と抵抗Rsの抵抗値との積により決まる。よって、回復電流Ireの通電時間Tonは、CR回路の時定数と回復スイッチSW2のON閾値Vthとに基づいて決まる。
【0042】
このように第1実施形態では、接触抵抗回復回路50の回復電流通電経路に並列に接続されたCR回路55により通電時間設定回路が構成される。CR回路のコンデンサCrに充電される電圧は、コネクタ端子Rcから入力されるバッテリ供給電圧VBinであり、特許文献1の従来技術のような別の電源回路や電源端子は不要である。よって、制御基板70を小型化することができる。
【0043】
(第2実施形態)
図4に示す第2実施形態の電子装置102では、接触抵抗回復回路50の回復スイッチSW2がNchのFET(例えばMOSFET)で構成されている。回復スイッチSW2のドレインは高電位側の電流制限抵抗Rrに接続され、ソースはグランドに接続されており、ソース側からドレイン側への電流を許容する寄生ダイオードが構成されている。寄生ダイオードを経由する逆方向の電流を遮断するため、接触抵抗Rrと回復スイッチSW2との間に順方向の電流のみを許容するダイオードD1が接続されている。なお、
図4の構成を論理反転することで、回復スイッチSW2をPchのFETで構成することも可能である。
【0044】
第1実施形態と同様に、通電時間設定回路は、コンデンサCrと抵抗Rsとが直列接続されたCR回路55で構成されている。電源スイッチのON後、ゲートに入力される電圧Vaが回復スイッチSW2のON閾値Vthを下回るまでの時間が回復電流Ireの通電時間Tonとなる。通電時間Tonは、CR回路の時定数に基づいて決まる。
【0045】
(第3実施形態)
第3~第6実施形態では、通電時間設定回路は、入力ICの内部に設けられたタイマ回路60で構成されている。タイマ回路60は、通電時間の間、回復スイッチSW2にON信号SWoを出力する。
図5に示す第3実施形態の電子装置103では、入力IC203の内部に、高インピーダンス入力回路40、及び、接触抵抗回復回路50の全部が設けられている。タイマ回路60の動作電源としてバッテリ供給電圧VBinが用いられる。入力IC203の端子は、バッテリ供給電圧VBin及びグランドGNDの2端子となる。
【0046】
この構成では各回路を入力IC203の内部に構成することで小型化できる。例えばタイマ回路60に増幅回路等を組み込むことで、より複雑な回路を構成でき、制御基板70の小型化が可能となる。タイマ回路60の具体的な回路構成は、第5実施形態の
図8が参照される。また、入力IC203の端子数を低減することができる。
【0047】
(第4実施形態)
図6に示す第4実施形態の電子装置104では、入力IC204の内部に、高インピーダンス入力回路40、及び、接触抵抗回復回路50の全部が設けられている。第3実施形態との違いは、タイマ回路60の動作電源として、高インピーダンス入力回路40で分圧して得られた入力信号電圧Vinが用いられることである。つまり、高インピーダンス入力回路40から処理回路30に出力される入力信号電圧Vinが分岐され、タイマ回路60の動作電源として用いられる。
【0048】
この構成では、第3実施形態と同様に制御基板70の小型化が可能となる。タイマ回路60の具体的な回路構成は、第6実施形態の
図10が参照される。
【0049】
(第5実施形態)
図7に示す第5実施形態の電子装置105では、タイマ回路60が入力IC205の内部に設けられており、タイマ回路60の動作電源としてバッテリ供給電圧VBinが用いられる。
図5に示す第3実施形態に対し、高インピーダンス入力回路40、及び、接触抵抗回復回路50のタイマ回路60以外の部分は入力IC205に含まれない。この構成ではタイマ回路60を入力IC205の内部に構成することで小型化できる。また、分圧抵抗R1、R2や電流制限抵抗Rrを設計変更する場合の対応が容易である。
【0050】
図8に、
図7をより具体化した回路図を示す。
図8の例では、
図2に示す第1実施形態と同様に、接触抵抗回復回路50の回復スイッチSW2はバイポーラトランジスタで構成されている。タイマ回路605は、コンデンサCr、抵抗Rs、Rt、電流増幅回路65を含み、電源スイッチSW1のON後、バッテリ供給電圧VBinがコンデンサCrに充電される。CR回路の時定数に基づいて回復スイッチSW2のON時間が決まる。設定する通電時間によっては、コンデンサCrを入力IC205の外部に配置してもよい。
【0051】
(第6実施形態)
図9に示す第6実施形態の電子装置106では、タイマ回路60が入力IC206の内部に設けられており、タイマ回路60の動作電源として分圧後の入力信号電圧Vinが用いられる。
図6に示す第4実施形態に対し、高インピーダンス入力回路40、及び、接触抵抗回復回路50のタイマ回路60以外の部分は入力IC206に含まれない。
【0052】
この構成ではタイマ回路60を入力IC206の内部に構成することで小型化できる。また、分圧抵抗R1、R2や電流制限抵抗Rrを設計変更する場合の対応が容易である。さらに、第5実施形態に対し入力IC206の端子を低減することができる。
【0053】
図10に、
図9をより具体化した回路図を示す。
図10の例では、
図4に示す第2実施形態と同様に、接触抵抗回復回路50の回復スイッチSW2はFETで構成されている。タイマ回路606は、コンデンサCt1、複数の抵抗Rt1~Rt4、複数の半導体スイッチ(FET)Trt1、Trt2が多段に接続されたFET回路で構成されている。
【0054】
電源スイッチSW1のON後、高インピーダンス入力回路40で分圧して得られた入力信号電圧VinがコンデンサCt1に充電される。複数の半導体スイッチTrt1、Trt2で多段増幅された信号が回復スイッチSW2のゲートに出力される。入力IC206の内部に多段増幅回路等を構成することで、IC外部で回路構成するより小型・低コストで実現できる。コンデンサCt1も低容量化できるため、より小型化が可能である。設定する通電時間によっては、コンデンサCt1を入力IC206の外部に配置してもよい。
【0055】
(本発明の効果)
(1)比較例1、2によるRC回路での通電方式では、1000μF以上と推定される大容量のコンデンサCrが必要である。それに対し本発明の各実施形態では、半導体スイッチで構成された回復スイッチSW2を用いることで、コンデンサCrの容量を50μF~0.01μF以下にまで低減することができる。部品点数は増加するが、これにより制御基板70全体の実装面積を低減することができ、小型化が可能である。
【0056】
(2)本発明の各実施形態では、回復電流Ireを通電するための電圧源は、コネクタ端子Rcに入力されるバッテリ供給電圧VBinである。比較例1のように回復電流通電用の電源回路が不要である。電源回路やその電源端子の実装面積を必要としないため、制御基板70の小型化が可能である。また、回復電流通電用に電源回路の能力を上げることを要しない。
【0057】
(その他の実施形態)
図11に、
図1に対し高インピーダンス入力回路の構成が異なる他の実施形態の基本構成を示す。
図11に示す電子装置10Uでは、高インピーダンス入力回路40Uは、電源供給電圧VBinが処理回路30の入力信号電圧Vinとして入力される接続点に接続された高抵抗のプルダウン抵抗R3で構成されている。このように分圧抵抗を用いない構成でも、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0058】
外部電源VBは、バッテリに限らず、キャパシタや燃料電池等で構成されてもよい。また、直流電源の電力に代えて、交流電源の出力が整流された電力が電子装置に入力されてもよい。
【0059】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
10(101-106)、10U・・・電子装置、
20 ・・・入力IC(IC)、
30 ・・・処理回路、 40、40U・・・高インピーダンス入力回路、
50 ・・・接触抵抗回復回路、
55 ・・・CR回路(通電時間設定回路)、
60 ・・・タイマ回路(通電時間設定回路)
70 ・・・制御基板、
R1、R2・・・分圧抵抗、
Rc ・・・コネクタ端子、端子接触抵抗、 Rr ・・・電流制限抵抗、
SW1・・・電源スイッチ、 SW2・・・回復スイッチ、
T1 ・・・(コネクタ端子の)第1端、 T2・・・(コネクタ端子の)第2端、
VB ・・・バッテリ(外部電源)、バッテリ電圧、
VBin・・・バッテリ供給電圧(電源供給電圧)、 Vin・・・入力信号電圧。