(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】エンジンの吸気系構造
(51)【国際特許分類】
F02M 26/19 20160101AFI20250409BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
F02M26/19 311
F02M35/10 301P
F02M35/10 301T
F02M35/10 311E
(21)【出願番号】P 2022006391
(22)【出願日】2022-01-19
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊波 碩人
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋之
(72)【発明者】
【氏名】石井 肇
(72)【発明者】
【氏名】並里 和明
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/098010(WO,A1)
【文献】特開2019-002353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/08-47/10
F02M 26/00-26/74、35/00-35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に排気の一部を排気還流ガスとして還流する排気還流装置を備えたエンジンの吸気系構造であって、
前記吸気通路に設けられるサージタンクと、
前記サージタンクの上流に設けられ、前記排気還流ガスが導入する第1導入口が設けられる上流側吸気通路と、
前記サージタンクの下流に設けられ、前記エンジンの各気筒へ吸気を供給する複数の下流側吸気通路と、
前記第1導入口から前記上流側吸気通路の一側方に偏位させて前記排気還流ガスを導入する排気還流通路と、を備え、
前記サージタンクは、上流側タンク壁面に設けられ前記上流側吸気通路と接続するタンク流入口を有し、
前記タンク流入口の周縁の前記一側方側に前記サージタンク内に延びる壁部が備えられて
おり、
前記壁部は、下流側に向かうに伴って前記一側方とは反対側に傾斜している
ことを特徴とするエンジンの吸気系構造。
【請求項2】
吸気通路に排気の一部を排気還流ガスとして還流する排気還流装置を備えたエンジンの吸気系構造であって、
前記吸気通路に設けられるサージタンクと、
前記サージタンクの上流に設けられ、前記排気還流ガスが導入する第1導入口が設けられる上流側吸気通路と、
前記サージタンクの下流に設けられ、前記エンジンの各気筒へ吸気を供給する複数の下流側吸気通路と、
前記第1導入口から前記上流側吸気通路の一側方に偏位させて前記排気還流ガスを導入する排気還流通路と、を備え、
前記サージタンクは、上流側タンク壁面に設けられ前記上流側吸気通路と接続するタンク流入口を有し、
前記タンク流入口の周縁の前記一側方側に前記サージタンク内に延びる壁部が備えられており、
前記壁部は、当該壁部の延びる方向に垂直な方向の断面が前記一側方側に凹んだ半円状である
ことを特徴とするエンジンの吸気系構造。
【請求項3】
前記排気還流通路は、前記一側方とは反対側から前記第1導入口に向かって延び、
前記第1導入口は、前記上流側吸気通路における前記一側方とは反対側の領域に設けられる
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のエンジンの吸気系構造。
【請求項4】
前記上流側吸気通路における前記一側方側の領域に設けられ、少なくとも一部が前記一側方とは反対側に向かって開口し、前記上流側吸気通路に排気還流ガスを導入する第2導入口を更に備えた
ことを特徴とする請求項
3に記載のエンジンの吸気系構造。
【請求項5】
前記壁部は、前記上流側吸気通路の下流側端部を前記サージタンク内に突出して形成されていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載のエンジンの吸気系構造。
【請求項6】
前記上流側吸気通路は、前記サージタンクへ向けて前記壁部の突出方向に延びることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載のエンジンの吸気系構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の吸気通路における排気還流ガスの導入部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたエンジンの多くには、排気性能を向上させるために、EGR装置(排気還流装置)が備えられている。EGR装置は、排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路を備え、排気通路から排気の一部(EGRガス)を吸気通路に還流し、吸気の酸素濃度を低下させる。これにより、エンジンの燃焼室内の温度を低下させ、エンジンからのNOxの排出を抑制する。
【0003】
特許文献1に記載された多気筒のエンジンでは、吸気通路の各気筒へ分流する位置の近傍でEGRガス(排気還流ガス)を導入する構造になっており、吸気通路の外周部から略接線方向にEGRガスを導入する構成を採用している。これにより、吸気通路内でEGRガスの旋回流を発生させて、EGRガスと吸気との混合を促進させる。
また、特許文献2に記載された多気筒のエンジンでは、EGRガス導入部とエンジンの気筒との間に、放熱性の低い大径の主吸気通路と放熱性の高い小径の従吸気通路を有するとともに、主吸気通路に開閉弁を有し、エンジンの低負荷時には開閉弁を閉じて従吸気通路のみ開放することで、吸気とEGRガスとの混合を促す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3539246号公報
【文献】特開平5-99080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばアイドル状態のように吸気量及びEGRガス量が少ない場合では、特許文献1のように吸気通路に対して接線方向にEGRガスを導入したとしても、EGRガスの旋回流が弱く、EGRガスがそのまま各気筒への分岐通路に流入し、一部の気筒にEGRガスが偏って流入する可能性がある。また、特許文献2では、開閉弁の作動により吸気抵抗が大きく変化するためエンジン制御が複雑化する可能性があるとともに、当該開閉弁の追加により部品コストが上昇するといった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の気筒に排気還流ガスの濃度を均一にした吸気を導入させることができるエンジンのEGR導入部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るエンジンの吸気系構造は、吸気通路に排気の一部を排気還流ガスとして還流する排気還流装置を備えたエンジンの吸気系構造であって、 前記吸気通路に設けられるサージタンクと、前記サージタンクの上流に設けられ、前記排気還流ガスが導入する第1導入口が設けられる上流側吸気通路と、前記サージタンクの下流に設けられ、前記エンジンの各気筒へ吸気を供給する複数の下流側吸気通路と、前記第1導入口から前記上流側吸気通路内の一側方に偏位させて前記排気還流ガスを導入する排気還流通路と、を備え、前記サージタンクは、上流側タンク壁面に設けられ前記上流側吸気通路と接続するタンク流入口を有し、前記タンク流入口の周縁の前記第一側方側に前記サージタンク内に延びる壁部が備えられており、前記壁部は、下流側に向かうに伴って前記一側方とは反対側に傾斜していることを特徴とする。
【0008】
これにより、一側方に偏位するように上流側吸気通路に流入した排気還流ガスは、サージタンク内に流入する際に壁部によって当該壁部よりも更なる一側方側への移動が抑制される。これにより、サージタンクの壁部側に排気還流ガスが多く移動することが抑制される。そして、壁部に排気還流ガスが衝突することで、排気還流ガスの慣性力を弱め、吸気との混合を促すことができ、さらに壁部を下流側に向かうに伴って一側方とは反対側に傾斜させることで、壁部の高さをより低くしても壁部を伝って排気還流ガスが壁部とは反対側に案内され易くなり、吸気量や排気還流ガスの流量が異なる条件下でもサージタンク内での排気還流ガスの濃度を均一にすることが可能になる。
また、本発明に係るエンジンの吸気系構造は、吸気通路に排気の一部を排気還流ガスとして還流する排気還流装置を備えたエンジンの吸気系構造であって、前記吸気通路に設けられるサージタンクと、前記サージタンクの上流に設けられ、前記排気還流ガスが導入する第1導入口が設けられる上流側吸気通路と、前記サージタンクの下流に設けられ、前記エンジンの各気筒へ吸気を供給する複数の下流側吸気通路と、前記第1導入口から前記上流側吸気通路の一側方に偏位させて前記排気還流ガスを導入する排気還流通路と、を備え、前記サージタンクは、上流側タンク壁面に設けられ前記上流側吸気通路と接続するタンク流入口を有し、前記タンク流入口の周縁の前記一側方側に前記サージタンク内に延びる壁部が備えられており、前記壁部は、当該壁部の延びる方向に垂直な方向の断面が前記一側方側に凹んだ半円状であることを特徴とする。
これにより、サージタンクの壁部側に排気還流ガスが多く移動することが抑制され、壁部に排気還流ガスが衝突することで、排気還流ガスの慣性力を弱め、吸気との混合を促すことができ、さらに壁部を当該壁部の延びる方向に垂直な方向の断面が一側方側に凹んだ半円状とすることで、壁部に衝突した排気還流ガスの分散が抑制されて排気還流ガスが壁部とは反対側に案内され易くなり、吸気量や排気還流ガスの流量が異なる条件下でもサージタンク内での排気還流ガスの濃度を均一にすることが可能になる。
【0009】
好ましくは、前記排気還流通路は、前記一側方とは反対側から前記第1導入口に向かって延び、前記第1導入口は、前記上流側吸気通路における前記一側方とは反対側の領域に設けられるとよい。
これにより、排気還流通路から第1導入口を通過して上流側吸気通路に流入した排気還流ガスは、上流側吸気通路において第1導入口とは反対側の壁部に向かう。このように、簡単な構成で、上流側吸気通路の一側方に偏位させるように排気還流ガスを導入することができる。
【0010】
好ましくは、前記上流側吸気通路における前記一側方側の領域に設けられ、少なくとも一部が前記一側方側とは反対側に向かって開口し、前記上流側吸気通路に排気還流ガスを導入する第2導入口を更に備えるとよい。
これにより、第2導入口から前記一側方側とは反対側に向かって排気還流ガスが上流側吸気通路に導入されることで、サージタンク内の壁部とは反対側に排気還流ガスが導入され易くなる。したがって、壁部の高さを低くしてもサージタンク内での排気還流ガスの濃度を均一にすることができる。
【0011】
好ましくは、前記壁部は、前記上流側吸気通路の下流側端部を前記サージタンク内に突出して形成されているとよい。
これにより、サージタンク内に壁部を容易に形成することができる。
【0013】
好ましくは、前記上流側吸気通路は、前記サージタンクへ向けて前記壁部の突出方向に延びるとよい。
これにより、吸気が壁部に沿ってサージタンクへ向けて流れるので、壁部に向かった排気還流ガスと吸気とが混合し易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエンジンの吸気系構造によれば、一側方に偏位させて上流側吸気通路に排気還流ガスを流入させることと、一側方側に壁部を設けることで、吸気量や排気還流ガスの流量が異なる条件下でもサージタンク内での排気還流ガスの濃度を均一にすることが可能になるので、複数の気筒に排気還流ガスの濃度を均一にした吸気を導入させることができ、排気還流装置の効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の前部の概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のエンジンの吸気系補機の縦断面図である。
【
図3】第1実施形態のエンジンの吸気系補機の縦断面図である。
【
図4】第1実施形態のエンジンの吸気系補機の横断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態のエンジンの吸気系補機の縦断面図である。
【
図6】第2実施形態のエンジンの吸気系補機の横断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態のエンジンの吸気系補機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン3の吸気系構造を採用した車両1の前部の概略構造図である。
図2は、本発明の第1実施形態のエンジン3の前面に配置された吸気系の補機の縦断面図であり、車両に搭載された際の車幅方向右側から視た図である。
図3は、第1実施形態のエンジン3の吸気系補機の縦断面図である。
図4は、第1実施形態のエンジン3の吸気系補機の横断面図である。
図3は、
図2中に記載したA-A部の断面図である。
図4は、
図3中に記載したB-B部の断面図である。
【0017】
図1に示すように、本発明を採用した車両1は、前部のエンジンルーム2にエンジン3を含むパワーユニット4を搭載している。車両1は、EVモード、シリーズモード、パラレルモードが可能なプラグインハイブリッド車である。
パワーユニット4は、エンジン3と図示しない走行駆動用モータ及び発電用モータジェネレータを備えている。走行駆動用モータ及び発電用モータジェネレータは、エンジン3の車幅方向左方に配置されている。発電用モータジェネレータは、エンジン3のスタータモータとしても使用される。
【0018】
エンジン3は、4気筒であり、車両1に横置きに搭載されている。エンジン3の前面3aに吸気マニホールド5が備えられ、吸気通路6が配置されている。一方、エンジン3の後面側に排気マニホールド7が備えられ、排気通路8が配置されている。
吸気通路6には、スロットルバルブ10が備えられている。また、吸気通路6のスロットルバルブ10と吸気マニホールド5との間には、サージタンク11が備えられている。
【0019】
スロットルバルブ10は、エンジン3の前面3a側の上部に位置し、エンジン3の車幅方向中央に位置する2番気筒に連結するブランチ管12(下流側吸気通路)と3番気筒に連結するブランチ管12との間に配置されている。
サージタンク11は、エンジン3の前面3aに沿って備えられ、スロットルバルブ10の下方に配置されている。サージタンク11から各気筒に向けて吸気マニホールド5のブランチ管12が夫々接続されている。ブランチ管12はサージタンク11の下面から車両前側に屈曲しサージタンク11の前面側に隣接して上方に延び、エンジン3の前面3aの上部に設けられた各気筒の吸気ポート13に接続されている。
【0020】
一方、排気通路8には、排気マニホールド7の下流側にフロント触媒20が備えられている。また、排気通路8のフロント触媒20より下流側にリヤ触媒21が備えられている。フロント触媒20及びリヤ触媒21は、例えば三元触媒のような排気浄化触媒である。フロント触媒20は比較的小型であり、エンジン3の後面に隣接して配置されている。フロント触媒20は、エンジン始動直後のような冷態運転時において排気の浄化性能を向上させるために、エンジン3からすぐに排気が流入するようにエンジン3の近くに配置されている。リヤ触媒21は比較的大型であり、例えば車両1のフロア下に配置されている。
【0021】
更に、エンジン3には、EGR装置30(排気還流装置)が備えられている。EGR装置30は、排気の一部を吸気通路6に還流することで、吸気の酸素濃度を低下させてエンジン3の燃焼室内の温度上昇を抑える。これにより、エンジン3の排気中におけるNOxを低減させる。
EGR装置30は、吸気通路6と排気通路8とを接続するEGR通路31(排気還流通路)と、EGR通路31に介装されEGR通路31の開口面積を調節するEGRバルブ34と、EGR通路31に備えられたEGRクーラー32を有している。
【0022】
EGRクーラー32は、EGR通路31を通過する排気であるEGRガス(排気還流ガス)の温度を低下させる水冷式の冷却器であり、エンジン3の後面に沿って配置されている。EGRクーラー32は、EGRガスの温度を低下させることで、EGRガスを導入した吸気の温度の上昇を更に抑え、EGR装置30によるNOx低減効果を向上させる。
EGR通路31は、フロント触媒20の排気出口の近傍からEGRクーラー32を通過して、エンジンの後左部から上方に延びてエンジン3の前側に回り込み、エンジンの上左部に配置されたEGRバルブ34を通過して、スロットルバルブ10とサージタンク11との間の吸気通路6に接続されている。
【0023】
図2~4に示すように、エンジン3の吸気通路6の一部として、スロットルバルブ10とサージタンク11との間に、アダプタ40及びEGRリング41(上流側吸気通路)が備えられている。アダプタ40及びEGRリング41は、略同一径の円管形状であって、アダプタ40の下端とEGRリング41の上端とが接続して、エンジン3の前面に沿って上下方向に延び、アダプタ40の上端がスロットルバルブ10に接続し、EGRリング41の下部がサージタンク11の上壁11a(上流側タンク壁面)に設けられたタンク流入口42に接続されている。
【0024】
サージタンク11は、略矩形箱状に形成されており、上壁11aの左右方向(車幅方向)の略中央位置より若干車幅方向右方かつ車両前方側(一方側)の位置にタンク流入口42が設けられている。
サージタンク11の下壁11b(下流側タンク壁面)の車両後方側(他方側)の位置には、エンジン3の気筒数に対応して4個のタンク排出口43が左右方向に並んで配置されている。即ち、サージタンク11において、タンク流入口42とタンク排出口43とは車両前後方向にオフセットして配置されている。
【0025】
サージタンク11の各タンク排出口43からは、対応する左右位置の気筒の吸気ポート13に向かって、吸気マニホールド5のブランチ管12がサージタンク11の下側及び前側に隣接して延びている。
EGR装置30におけるEGR通路31と吸気通路6との接続箇所、即ちEGRガスの吸気通路6への導入箇所は、スロットルバルブ10とサージタンク11との間に位置している。
【0026】
EGRバルブ34より下流側のEGR通路31は、サージタンク11の上壁11aに沿って車幅方向左方から車幅方向右方(一側方)に向かって延び、EGRリング41の側面を囲むように形成されたEGR導入通路部45(排気還流通路導入部)を有している。
EGR導入通路部45は、サージタンク11の上壁11aと一体的に形成された上下方向断面が矩形の管状であって、EGRリング41の直径と略同一あるいはやや大きい前後幅(例えば数cm)を有し、上下幅が前後幅より小さい長方形状になっている。
【0027】
EGR導入通路部45は、EGRリング41の左右方向中心位置よりもわずかに車幅方向右方に延びている。また、EGR導入通路部45は、EGRリング41の軸線に対し、車両後方側にオフセットして配置されている。更に、EGR導入通路部45の後内壁面とEGRリング41の後外壁面とは、例えば1cm程度の間隔が形成されている。また、EGRリング41の前外壁面はEGR導入通路部45の前内壁面と当接している。即ち、EGR導入通路部45の内部の空間は、EGRリング41の外壁面のうち、後部及び左部に面している。
【0028】
更に、EGR導入通路部45の内部空間に面して、EGRリング41の外壁面のうち、後部にリング穴50(第1導入口)が設けられているとともに、車幅方向左部にリング穴51(第1導入口)が設けられている。これにより、EGRバルブ34を通過したEGRガスは、EGR導入通路部45からリング穴50、51を通過してEGRリング41内の吸気通路6に導入されるように形成されている。
【0029】
詳しくは、EGR導入通路部45は、EGRリング41からその接線方向である車幅方向左方に延びる本体部45a(排気還流通路導入部)を有し、その車幅方向左端部は、EGRリング41の車幅方向中心位置よりも若干車幅方向右側の位置までEGRリング41の外壁に沿って周方向に延びている。そして、EGRリング41には、EGR導入通路部45との接点である車両後方側の位置にリング穴50が設けられ、本体部45aにリング穴51が設けられている。
【0030】
更に、EGRリング41の下端のうち車幅方向左側半分は、サージタンク11の上壁11aと略同一あるいはわずかにサージタンク11内へ下方に突出し、EGRリング41の下端のうち車幅方向右側半分は、上壁11aよりサージタンク11内へ下方に大きく突出している。なお、このEGRリング41の下端部(下流側端部)の車幅方向右側(一側方側)半分の部位である突出部41a(壁部)は、EGRリング41の上部と同径で横断面が車幅方向右側に凹んだ半円状になっている。EGRリング41は、下端部及び突出部41aの車幅方向左側がサージタンク11内に開放されている。
以上のように、本実施形態では、車両1に横置きに搭載されたエンジン3の前面3a側に、吸気系の機器であるスロットルバルブ10及び吸気マニホールド5が備えられている。また、スロットルバルブ10と吸気マニホールド5との間には、サージタンク11が備えられている。サージタンク11から各気筒へ吸気マニホールド5のブランチ管12が接続されており、サージタンク11内において吸気が分流して各ブランチ管12を介して各気筒へ供給される。
【0031】
更に、吸気通路6に排気の一部であるEGRガスを供給するEGR装置30を備えており、スロットルバルブ10とサージタンク11との間の吸気通路6に設けられたEGRリング41において、吸気にEGRガスが導入される。
EGRリング41には、吸気通路6へのEGRガスの導入口としてリング穴50、51を有するが、リング穴50は車両前方を向いて開口し、リング穴51は車幅方向右方を向いて開口している。一方、サージタンク11から吸気をブランチ管12に排出する各タンク排出口43は、いずれも上方を向いている。
【0032】
したがって、リング穴50、51からEGRリング41内の吸気通路6に導入されたEGRガスは、ブランチ管12の流入口であるタンク排出口43のいずれにも直接に向かい難い構成となっている。
また、EGRガスを吸気通路6へ導くEGR通路31の最下流部であるEGR導入通路部45は、EGRリング41に向かって車幅方向右方へ延び、リング穴51はEGRリング41の車幅方向左側の部位(領域)に設けられているので、EGR通路31を通過してきたEGRガスの多くが、リング穴51を通過してEGRリング41に流入する。これにより、EGRリング41内の車幅方向右側にEGRガスが偏位し易い。しかしながら、EGRリング41の下端部は、車幅方向右側の部位が突出しており、車幅方向左側の部位がほとんど突出せずに開放しているので、EGR導入通路部45を車幅方向右側に向かって移動してきたEGRガスが突出部41aによって車幅方向右側への移動が抑制される。更に、EGRリング41の突出部41aの車幅方向左側にEGRガスと空気とが拡散し、EGRガスの車幅方向左側の気筒への流入量が増加する。
【0033】
これにより、サージタンク11からエンジン3の各気筒へのEGRガスの流入量を均等にし、各気筒へEGRガスの濃度を均一化した吸気を導入させることができ、EGR装置30の効果を向上させることができる。特に、EGRリング41内の車幅方向右側にEGRガスを敢えて偏らせ、突出部41aによって車幅方向左側にEGRガスを導くことで、吸気量や排気還流ガスの流量が小さくてもEGRガスを拡散させ吸気との混合を促し、サージタンク11内での排気還流ガスの濃度を均一にすることが可能になる。
【0034】
更に、本実施形態では、EGRリング41の車両後方側にもリング穴50が設けられているので、EGR導入通路部45において車幅方向右方に移動するEGRガスの一部は、車幅方向右方の突出部41aに向かってEGRリング41内に流入する。また、リング穴50からEGRガスの一部は、車両前方に向かって方向を変えてEGRリング41内に流入する。これにより、リング穴50からEGRリング41内に流入したEGRガスが、EGRリング41内で旋回流となり、EGRリング41内での吸気とEGRガスとの混合を促すことができる。
【0036】
また、EGR導入通路部45は、車幅方向右方に向かって延び先端が閉塞した配管形状であって、EGR導入通路部45の先端部(右端部)に、EGRリング41が貫通して、EGRガスの導入部が形成されている。
これにより、吸気通路6に対するEGRガスの導入部を、簡単な構成でコンパクトに構成することができる。
【0037】
また、EGRリング41の車幅方向右側の下端部を下方に延ばすことで、サージタンク11内での車幅方向右側へのEGRガスの移動を抑制する壁部である突出部41aを容易に形成することができる。
また、円筒状のEGRリング41の下端部に形成された突出部41aは、当該突出部41aの延びる方向と垂直な方向の断面が突出部41a側に凹んだ半円状であるので、突出部41aによってEGRガスが分散されずに車幅方向左側へ中心に向かって案内される。これにより、突出部41aによるEGRガスの車幅方向左側への案内を効果的に行うとともに、吸気とEGRガスとの混合を促すことができる。
【0038】
また、EGRリング41は、サージタンク11へ向けて突出部41aの突出方向である下方に延びているので、EGRリング41内を通過する吸気が突出部41aに沿ってサージタンク11へ向けて流れ、突出部41aに向かったEGRガスと吸気とが混合し易くなる。
また、EGR導入通路部45は、サージタンク11の上壁11aに一体に形成されているので、サージタンク11とEGR導入通路部45とをコンパクトに構成することができる。また、ブランチ管12は、サージタンク11の下壁11bに沿って車両前方側に延びるように構成されている。ブランチ管12がサージタンク11の車両後方側に接続されているので、ブランチ管12の車両前後方向の長さを確保して曲げ半径を大きくしつつ、サージタンク11及びブランチ管12の車両前後方向の長さを抑えることができる。したがって、ブランチ管12での吸気抵抗を抑えつつエンジン3の吸気系の構造をコンパクトに構成することができる。
【0039】
また、EGRリング41の下端の開口位置であるタンク流入口42は、ブランチ管12のサージタンク11における開口位置であるタンク排出口43と、タンク流入口42からの吸気の流入方向と垂直な車両前後方向にオフセットして配置され、タンク流入口42の開口側先方にはサージタンク11の下壁11bを有する。
したがって、タンク流入口42からサージタンク11へ流入したEGRガスを含む吸気がサージタンク11の下壁11bに衝突して車両前後方向及び車幅方向に広がる。更に、EGRリング41の一部を下方に延ばすことで、EGRリング41の下端とサージタンク11の下壁11bとの距離が短くなるので、EGRリング41の車幅方向右側部の下端部からサージタンク11内に流入したEGRガスを含む吸気がサージタンク11の下壁11bに衝突し易くなる。これにより、サージタンク11内でのEGRガスの混合を促すとともに、各タンク排出口43から各気筒に供給される吸気のEGRガス濃度の偏りを更に抑制することができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、EGRリング41にEGRガスを導入する2か所のリング穴50、51が設けられているが、EGR導入通路部45側のリング穴51のみ設けてもよく、リング穴50だけ設けてもよい。EGRリングの41下端部の車幅方向右側に突出部41aを備えることで、リング穴51またはリング穴50からEGRリング41内に流入したEGRガスを、サージタンク11から車幅方向左側の気筒にも導入し易くして、各気筒に供給される吸気のEGRガス濃度の偏りを抑制することができる。
【0041】
図5は、本発明の第2実施形態のエンジン3の吸気系補機の縦断面図である。
図6は、第2実施形態のエンジン3の吸気系補機の横断面図である。
本発明の第2実施形態のエンジン3の吸気系補機は、上記の第1実施形態に対して、EGR導入通路部45の構造及びEGRリング41のリング穴が車幅方向右側の位置(領域)にも設けられる点で異なる。
【0042】
図5、6に示すように、EGR導入通路部45は、EGRリング41から車幅方向左方に延びる本体部45aの他に、本体部45aとは反対側の車幅方向右側にEGRリング41の外壁に沿って周方向に延びる延長部45b(排気還流通路延長部)を備えている。そして、EGRリング41には、車両後方側の位置に設けられたリング穴50と、車幅方向左側の位置(領域)に設けられたリング穴51の他に、車幅方向右側の位置(領域)に延長部45bに面してリング穴52(第2導入口)が設けられている。
【0043】
これにより、第2実施形態では、EGRガスの一部がリング穴52からEGRリング内に車幅方向左側に向かって流入するので、EGRガスを車幅方向左側の気筒へ流入し易くすることができる。
したがって、本実施形態では、リング穴52を設けることで、第1実施形態と比較して、EGRリング41の突出部の突出量を少なくすることができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、EGRリング41にEGRガスを導入する3か所のリング穴50、51、52が設けられているが、これに限らず、リング穴50、51のうち何れか一方とリング穴52の2か所のみに設けられていても良い。
この場合にも第1実施形態と比較して、EGRリング41の突出部の突出量を少なくすることができる。
【0045】
図7は、本発明の第3実施形態のエンジン3の吸気系補機の縦断面図である。
本発明の第3実施形態のエンジン3の吸気系補機は、上記の第1実施形態に対して、EGRリング41の突出部41aの形状が異なる。
図7に示すように、本実施形態のEGRリング41の突出部41aは、下方に延びるに伴って中心側に傾斜している。即ち、EGRリング41の突出部41aは、下流側に向かうに伴って車幅方向左側に傾斜している。
【0046】
これにより、EGRリング41内に流入し突出部41aの内壁面に沿って下方に移動するEGRガスを突出部41aの傾斜した内壁面に沿って車幅方向左側に向かってサージタンク11内に流入させる。これにより、EGRガスを車幅方向左側の気筒へより流入し易くすることができる。また、EGRリング41の内壁面に沿って下方へ移動する吸気も、突出部41aの傾斜した内壁面に沿って中心側へ、即ち車幅方向左側に向かってサージタンク11内に流入するので、吸気によってEGRガスを車幅方向左側へ誘導し、EGRガスを車幅方向左側の気筒へより流入し易くすることができる。これにより、各気筒に供給される吸気のEGRガス濃度の偏りを更に抑制することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定するものではない。例えば、上記実施形態では、EGRリング41の下端部をサージタンク11内に突出して壁部を形成しているが、EGRリング41とは別に、タンク流入口の周縁の車幅方向右側にサージタンク11内に延びる壁部を備えてもよい。
また、突出部41aの詳細な形状については、EGRガスがサージタンク11内の車幅方向右側に移動することを抑制するように適宜変更してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、アダプタ40とEGRリング41とが別体構造になっているが、アダプタ40とEGRリング41とを一体構造にしてもよい。
また、本実施形態ではタンク排出口43が、エンジン3の気筒数に応じて複数設けられているが、これに限らずエンジン3の気筒数に対してタンク排出口43の数が少なくてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、プラグインハイブリッド車に搭載したエンジン3に本発明を適用しているが、ハイブリッド車やガソリン車に搭載されたエンジン、あるいは車両搭載以外のエンジンにも適用することができる。本発明は、EGR装置を備えたエンジンに対して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
3 エンジン
6 吸気通路
11 サージタンク
12 ブランチ管(下流側吸気通路)
30 EGR装置(排気還流装置)
41 EGRリング(上流側吸気通路)
41a 突出部(壁部)
42 タンク流入口
43 タンク排出口
45 EGR導入通路部(排気還流通路)
51 リング穴(第1導入口)
52 リング穴(第2導入口)