IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンデン株式会社の特許一覧

特許7663079車両セキュリティシステム、電子制御装置、ドア解錠方法
<>
  • 特許-車両セキュリティシステム、電子制御装置、ドア解錠方法 図1
  • 特許-車両セキュリティシステム、電子制御装置、ドア解錠方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】車両セキュリティシステム、電子制御装置、ドア解錠方法
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20250409BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20250409BHJP
   B60R 25/25 20130101ALI20250409BHJP
【FI】
E05B49/00 R
B60R25/24
B60R25/25
E05B49/00 K
E05B49/00 S
E05B49/00 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022019724
(22)【出願日】2022-02-10
(65)【公開番号】P2023117161
(43)【公開日】2023-08-23
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲波 慶行
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-161545(JP,A)
【文献】特開2008-62690(JP,A)
【文献】特開2008-143220(JP,A)
【文献】特開2020-21406(JP,A)
【文献】特開2019-108680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0217818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60R 25/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(3)のドアアンロックを許可する車両セキュリティシステムにおいて、
ユーザ(1)が携帯可能な電子キー(2)と、
前記車両に搭載され、前記電子キーとの無線通信により無線情報認証を行う無線情報認証部(41、51、61~64)と、
前記車両に搭載され、前記ユーザの生体認証を行う生体認証部(42)と、
前記無線情報認証が成功し且つ前記生体認証が所定の回数(N)より少ない回数で成功した場合にドアアンロックを許可し、前記無線情報認証が成功し且つ前記生体認証が所定の回数以上失敗した場合に前記車両側から前記電子キーへの無線通信を所定時間停止することによりドアアンロックを所定時間不許可とする解錠許可判定部(64)と、を備える車両セキュリティシステム。
【請求項2】
前記解錠許可判定部は、ドアアンロックを所定時間不許可とすることを、前記車両側から前記電子キーへ送信する信号の生成を所定時間停止することにより実行する、請求項1に記載の車両セキュリティシステム。
【請求項3】
ユーザ(1)が携帯可能な電子キー(2)と無線通信を行う機能、および、前記ユーザの生体認証を行う機能を備える車両(3)に搭載される電子制御装置(6)において、
前記電子キーとの前記無線通信による無線情報認証が成功し且つ前記生体認証が所定の回数(N)より少ない回数で成功した場合にドアアンロックを許可し、前記無線情報認証が成功し且つ前記生体認証が所定の回数以上失敗した場合に前記車両側から前記電子キーへの無線通信を所定時間停止することによりドアアンロックを所定時間不許可とする電子制御装置。
【請求項4】
ドアアンロックを所定時間不許可とすることを、前記車両側から前記電子キーへ送信する信号の生成を所定時間停止することにより実行する、請求項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
車両(3)のドアアンロックを判定するドア解錠方法において、
ユーザ(1)が携帯可能な電子キー(2)との通信により無線情報認証を行うこと(S10~S40)と、
前記ユーザの生体認証を行うこと(S80、S90)と、
前記無線情報認証が成功し且つ前記生体認証が所定の回数(N)より少ない回数で成功した場合にドアアンロックを許可し(S70、S100)、前記無線情報認証が成功し且つ前記生体認証が所定の回数以上失敗した場合に前記車両側から前記電子キーへの無線通信を所定時間停止することによりドアアンロックを所定時間不許可とすること(S70、S110)を含む、ドア解錠方法。
【請求項6】
ドアアンロックを所定時間不許可とする判定がされると、前記車両側から前記電子キーへ送信する信号の生成を所定時間停止する、請求項に記載のドア解錠方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両セキュリティシステム、電子制御装置およびドア解錠方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが携帯する電子キーと車両との間の無線通信により、ユーザが車両のドアノブに触れることでドアが解錠されるスマートエントリーシステムが知られている。近年、そのスマートエントリーシステムに対し、電子キーと車両との間で電波を中継してドアを解錠するリレーアタックによる盗難被害が問題となっている。
【0003】
特許文献1、2には、車両の盗難対策として、車両のドアアンロックを許可する条件に生体認証を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-25960号公報
【文献】特開2011-25903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術のように、生体認証として指紋認証を採用した場合、車両に付着した指紋から生体情報を第三者が複製することが可能である。また、生体認証として顔認証を採用した場合、顔写真から生体情報を第三者が複製することが可能である。それらの方法によれば、その複製した生体情報の精度が低くても、不正を行う第三者が試行回数を増したいわゆる総当たり攻撃をすることで生体認証が解除されてしまう恐れがある。したがって、スマートエントリーシステムにおけるドアアンロックの許可の条件に、特許文献1、2に記載の技術のように生体認証を単に追加しただけでは車両盗難の完全な対策にはならない。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、試行回数を増やして生体認証を解除しようとする第三者による車両盗難を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によると、車両(3)のドアアンロックを許可する車両セキュリティシステムは、電子キー(2)、無線情報認証部(41、51、61~64)、生体認証部(42)、解錠許可判定部(64)を備える。電子キーは、ユーザ(1)が携帯可能なものである。無線情報認証部は、車両に搭載され、電子キーとの無線通信により無線情報認証を行う。生体認証部は、車両に搭載され、ユーザの生体認証を行う。解錠許可判定部は、無線情報認証が成功し且つ生体認証が所定の回数(N)より少ない回数で成功した場合にドアアンロックを許可し、無線情報認証が成功し且つ生体認証が所定の回数以上失敗した場合に車両側から電子キーへの無線通信を所定時間停止することによりドアアンロックを所定時間不許可とする。
【0008】
これによれば、第三者がリレーアタックにより無線情報認証を成功させた場合でも、生体認証を複数回の試行により解除しようとすると、生体認証が複数回失敗した時にドアアンロックが所定時間不許可となる。したがって、この車両セキュリティシステムは、不正操作を行う第三者による車両の盗難を防ぐことができる。
また、この車両セキュリティシステムは、電子キー、無線情報認証を行う機能、および生体認証を行う機能を備えた車両に対して新たな部品を追加することなく、即ちコストをかけることなく、第三者の不正操作を検出し、車両盗難を防ぐことができる。
【0009】
請求項に係る発明は、電子制御装置(6)に関する。電子制御装置は、ユーザ(1)が携帯可能な電子キー(2)と無線通信を行う機能、および、前記ユーザの生体認証を行う機能を備える車両(3)に搭載される。そして、この電子制御装置は、電子キーとの無線通信による無線情報認証が成功し且つ生体認証が所定の回数(N)より少ない回数で成功した場合にドアアンロックを許可し、無線情報認証が成功し且つ生体認証が所定の回数以上失敗した場合に車両側から電子キーへの無線通信を所定時間停止することによりドアアンロックを所定時間不許可とする。
これによれば、請求項に係る発明も、請求項1に係る発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0010】
請求項に係る発明は、車両(3)のドアアンロックを判定するドア解錠方法に関する。このドア解錠方法は、次の内容を含む。即ち、ユーザ(1)が携帯可能な電子キー(2)との通信により無線情報認証を行うこと(S10~S40)。ユーザの生体認証を行うこと(S80、S90)。無線情報認証が成功し且つ生体認証が所定の回数(N)より少ない回数で成功した場合にドアアンロックを許可し(S70、S100)、無線情報認証が成功し且つ生体認証が所定の回数以上失敗した場合に車両側から電子キーへの無線通信を所定時間停止することによりドアアンロックを所定時間不許可とすること(S70、S110)。
これによれば、請求項に係る発明も、請求項1に係る発明と同様の作用効果を奏することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る車両セキュリティシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両セキュリティシステムが備える照合ECUが実行する制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態の車両セキュリティシステムは、ユーザ1が携帯可能な電子キー2と、車両3に搭載されるドアハンドル4、受信機5、照合電子制御装置6、およびボデー電子制御装置7などを備えている。以下、照合電子制御装置6を「照合ECU6」といい、ボデー電子制御装置7を「ボデーECU7」という。なお、ECUはElectronic Control Unitの略である。
【0014】
まず、電子キー2の構成について説明する。
【0015】
電子キー2は、LF受信部21、第1暗号処理部22、RF送信部23を有している。なお、LFはlow frequencyの略であり、RFはradio frequencyの略である。LF受信部21は、車両3のドアハンドル4に設けられたLF送信部41から送信される例えば125~135KHzの低周波信号(以下「LF信号」という)を受信する。なお、そのLF信号には、車両3の照合ECU6で生成される乱数が含まれている。LF受信部21が受信したLF信号は第1暗号処理部22に伝送される。
【0016】
第1暗号処理部22は、例えばASIC、マイコンなどの集積回路により構成されている。第1暗号処理部22は、LF受信部21で受信したLF信号に含まれる乱数を、第1暗号処理部22に格納された所定のロジックで演算し、暗号データを生成する。第1暗号処理部22で生成された暗号データは、RF送信部23に伝送される。
【0017】
RF送信部23は、例えば300~400MHzの高周波信号(以下「RF信号」という)に第1暗号処理部22で生成された暗号データを含めて車両3へ送信する。なお、LF信号はリクエスト信号と呼ばれることがあり、RF信号はIDコード信号と呼ばれることがある。
【0018】
次に車両3側の構成について説明する。
【0019】
車両3のドアハンドル4には、LF送信部41、生体認証部42等が設けられている。LF送信部41は、照合ECU6で生成される乱数を含むLF信号を車外へ送信する。生体認証部42は、ユーザ1の生体認証を行う機能を有している。生体認証部42は、後述する解錠許可判定部64による暗号認証が成功した後に生体認証を実施する。生体認証として例えば指紋認証を行う場合、生体認証部42は、ドアハンドル4の所定の位置(例えばドアハンドル4の裏面)に設けられた不図示の検知面に触れた指紋を読み取り、その読み取った指紋が予め登録されたユーザ1の指紋と一致するか否かを判定する。以下の説明では、検知面で読み取った指紋と予め登録されたユーザ1の指紋とが一致する判定結果を「生体認証の成功」と言い、それらの指紋が不一致の判定結果を「生体認証の失敗」ということがある。生体認証部42で実施された生体認証の判定結果は、その都度、照合ECU6の解錠許可判定部64に伝送される。なお、LF送信部41と生体認証部42は、ドアハンドル4に限らず、それ以外の場所に設置されていてもよい。
【0020】
受信機5は、RF送信部23から送信されるRF信号を受信するRF受信部51を有している。RF受信部51が受信したRF信号は、照合ECU6のRF受信処理部63に伝送される。なお、そのRF信号には、電子キー2の第1暗号処理部22で生成された暗号データが含まれている。
【0021】
照合ECU6は、制御処理や演算処理を行うプロセッサ、および、プログラムやデータ等を記憶するメモリーを有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。プロセッサは、CPUやMPUにより構成されている。メモリーは、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリ等の各種の非遷移的実体的記憶媒体を備えている。照合ECU6は、プロセッサがメモリーに記憶されたプログラムを実行することで、LF送信処理部61、第2暗号処理部62、RF受信処理部63、解錠許可判定部64等として機能する。
【0022】
LF送信処理部61は、乱数を含むLF信号を生成し、そのLF信号を、上述したLF送信部41と、照合ECU6内の第2暗号処理部62とにそれぞれ伝送する。第2暗号処理部62には、電子キー2が有する第1暗号処理部22に格納された所定のロジックと同一のロジックが格納されている。第2暗号処理部62は、LF送信処理部61で生成された乱数を、第2暗号処理部62に格納された所定のロジックで演算し、暗号データを生成する。第2暗号処理部62で生成された暗号データは、解錠許可判定部64に伝送される。
【0023】
RF受信処理部63は、RF受信部51から伝送されたRF信号に含まれる暗号データを解錠許可判定部64に伝送する。
【0024】
解錠許可判定部64は、第2暗号処理部62から伝送された暗号データと、RF受信処理部63から伝送された暗号データとが一致しているか否かを判定する暗号認証を実施する。以下の説明では、第2暗号処理部62から伝送された暗号データと、RF受信処理部63から伝送された暗号データとが一致する判定結果を「暗号認証の成功」と言い、それらの暗号データが不一致の判定結果を「暗号認証の失敗」ということがある。なお、本実施形態の暗号認証は、特許請求の範囲に記載の「無線情報認証」の一例に相当する。
【0025】
解錠許可判定部64は、暗号認証が成功し、且つ、生体認証が所定の回数より少ない回数で成功した場合にドアアンロックを許可する。解錠許可判定部64によるドアアンロック許可の信号は、ボデーECU7に伝送される。
【0026】
ボデーECU7も、制御処理や演算処理を行うプロセッサ、プログラムやデータ等を記憶するメモリーを有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。プロセッサは、CPUやMPUにより構成されている。メモリーは、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリ等の各種の非遷移的実体的記憶媒体を備えている。ボデーECU7は、プロセッサがメモリーに記憶されたプログラムを実行することで、ドアロックを解錠する解錠処理部71として機能する。ボデーECU7の有する解錠処理部71は、ドアアンロック許可の信号が伝送されると、車両3の各ドアに設けられた不図示のドアロックモータを駆動し、ドアロックを解錠する。
【0027】
一方、解錠許可判定部64は、暗号認証が成功し、且つ、生体認証が所定の回数以上失敗した場合にドアアンロックを所定時間不許可とする。具体的には、解錠許可判定部64は、LF送信処理部61によるLF信号の生成、即ち乱数の生成を所定時間停止させる。これにより、LF送信部41から車外へのLF信号の送信が所定時間停止する。その所定時間は、車両3に対して不正操作を行う第三者が車両3の盗難を諦めるのに必要十分な時間(例えば10分~数時間程度)に設定される。
【0028】
なお、本実施形態のLF送信処理部61、LF送信部41、第2暗号処理部62、RF受信部51、RF受信処理部63、および、解錠許可判定部64のうち暗号認証を行う機能部は、特許請求の範囲に記載の「無線情報認証部」の一例に相当する。また、本実施形態の照合ECU6は、特許請求の範囲に記載の「電子制御装置」の一例に相当する。
【0029】
次に、照合ECU6が実行する制御処理を、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
この処理は、車両3が停車し車外からドアロックが行われた後、所定の制御時間間隔で繰り返し実行される。
【0031】
まずステップS10で照合ECU6は、LF送信処理部61にて乱数を含むLF信号を生成し、そのLF信号を、LF送信部41を介して車外へ送信させると共に、第2暗号処理部62に伝送する。
【0032】
次に、ステップS20で照合ECU6は、RF受信処理部63がRF受信部51からRF信号を受信したか否かを検出する。RF受信処理部63がRF信号を受信していない場合、処理はステップS10に戻る。RF受信処理部63がRF信号を受信した場合、処理はステップS30に進む。
【0033】
続いて、ステップS30で照合ECU6は、解錠許可判定部64にて暗号認証を実施する。上述したように、解錠許可判定部64は、暗号認証において、LF送信処理部61で生成されたLF信号の乱数に基づいて第2暗号処理部62が生成した暗号データと、RF受信処理部63から伝送されるRF信号に含まれる暗号データとが一致しているか否かを判定する。
【0034】
ステップS40で照合ECU6は、解錠許可判定部64にて、暗号認証の成功(即ち、暗号データの一致)、または、暗号認証の失敗(即ち、暗号データの不一致)を判定する。ステップS40で暗号認証の失敗が判定された場合、処理はステップS50に進む。ステップS50では、ドアアンロックが不許可と判定され、処理は一旦終了する。
【0035】
一方、ステップS40で暗号認証の成功が判定された場合、処理はステップS60に進む。ステップS60では、解錠許可判定部64にて、生体認証部42により実行された生体認証の回数をインクリメントする。なお、後述のステップS80で説明するように、生体認証部42による生体認証は、暗号認証が成功した後(即ち、ステップS40の肯定判定の後)に実施されるので、暗号認証が成功した直後(即ち、ステップS40の肯定判定の直後)の生体認証の回数は0とされる。
【0036】
次に、ステップ70で照合ECU6は、生体認証の回数が、所定の回数Nより小さいか否かを判定する。その所定の回数Nは、例えば、正当なユーザ1であれば生体認証が成功する回数として予め実験などにより設定され、照合ECU6のメモリーに記憶されている。生体認証の回数が、所定の回数Nより小さい場合、処理はステップS80に進む。
【0037】
ステップS80では、生体認証部42による生体認証が実施される。生体認証は、生体認証部42で読み取られる生体情報(例えば、ドアハンドル4の裏面の検知面に触れた指紋)と、予め登録されたユーザ1の生体情報(例えばユーザ1の指紋)とが一致するか否かが判定される。
【0038】
ステップS90にて生体認証の成功(即ち、生体情報の一致)、または、生体認証の失敗(即ち、生体情報の不一致)を判定する。ステップS90で生体認証の成功が判定された場合、処理はステップS100に進む。ステップS100では、ドアアンロックが許可され、その信号がボデーECU7の解錠処理部71に伝送されると共に、処理が終了する。
【0039】
一方、ステップS90で生体認証の失敗が判定された場合、処理はステップS60に戻る。上述したように、ステップS60では、解錠許可判定部64は、生体認証部42により実行された生体認証の回数をインクリメントする。そして、ステップ70で、生体認証の回数が、所定の回数Nより小さいか否かが判定される。生体認証の回数が、所定の回数N以上の場合、処理はステップS110に進む。
【0040】
ステップS110で照合ECU6は、ドアアンロックを所定時間不許可とすると共に、LF送信処理部61によるLF信号の生成を所定時間停止し、処理を一旦終了する。これにより、LF送信部41から車外へのLF信号の送信が所定時間停止される。
【0041】
以上説明した本実施形態の車両セキュリティシステム、照合ECU6、およびドア解錠方法は、次の作用効果を奏するものである。
【0042】
(1)本実施形態の車両セキュリティシステムは、生体認証が所定の回数N以上失敗した場合、解錠許可判定部64がドアアンロックを所定時間不許可とする。
これによれば、第三者がリレーアタックにより暗号認証を成功させた場合でも、生体認証を複数回の試行により解除しようとすると、生体認証が所定の回数N失敗した時にドアアンロックが所定時間不許可となる。したがって、この車両セキュリティシステムは、不正操作を行う第三者による車両3の盗難を防ぐことができる。
【0043】
また、この車両セキュリティシステムは、電子キー2、無線情報認証を行う機能、および生体認証を行う機能を備えた車両3に対して新たな部品を追加することなく、即ちコストをかけることなく、第三者の不正操作を検出し、車両3の盗難を防ぐことができる。なお、無線情報認証を行う機能とは、本実施形態においてLF送信処理部61、LF送信部41、第2暗号処理部62、RF受信部51、RF受信処理部63、および、解錠許可判定部64のうち暗号認証を行う機能部が相当する。
【0044】
(2)詳細には、本実施形態の車両セキュリティシステムは、暗号認証(即ち、無線情報認証)が成功し且つ生体認証が所定の回数N以上失敗した場合、解錠許可判定部64がドアアンロックを所定時間不許可とする。
これによれば、例えば子供等がいたずらでドアノブを複数回触り生体認証が複数回失敗した場合など、盗難ではない場合にドアアンロックが意図せず所定時間不許可とされてしまうことを防ぐことができる。
また、生体認証部42を常に作動させること無く、暗号認証(即ち、無線情報認証)が成功した後に生体認証部42を作動させればよいので、生体認証部42に消費される電力を低減することができる。
【0045】
(3)ところで、一般に、リレーアタックなどの不正操作を行う第三者は、車両3側から電子キー2への無線通信を傍受している。そこで、本実施形態の車両セキュリティシステムでは、解錠許可判定部64がドアアンロックを所定時間不許可とすることを、車両3側から電子キー2への無線通信を所定時間停止することにより実行する。
これによれば、不正操作を行う第三者が車両3側から電子キー2への無線通信を傍受できなくなるので、その第三者が車両3の盗難を諦めるように仕向けることができる。
【0046】
(4)具体的には、本実施形態の車両セキュリティシステムでは、車両3側から電子キー2へ送信するLF信号の生成を所定時間停止することにより実行する。
これによれば、照合ECU6内での制御処理により、部品の増加やコストをかけることなく、第三者による車両3の盗難を防止できる。
【0047】
(5)本実施形態の照合ECU6は、生体認証が所定の回数N以上失敗した場合、ドアアンロックを所定時間不許可とする。
(6)詳細には、照合ECU6は、暗号認証(即ち、無線情報認証)が成功し且つ生体認証が所定の回数N以上失敗した場合にドアアンロックを所定時間不許可とする。
(7)また、照合ECU6は、ドアアンロックを所定時間不許可とすることを、車両3側から電子キー2への無線通信を所定時間停止することにより実行する。
(8)具体的には、照合ECU6は、ドアアンロックを所定時間不許可とすることを、車両3側から電子キー2へ送信するLF信号の生成を所定時間停止することにより実行する。
これによれば、本実施形態の照合ECU6は、上記(5)~(8)の構成により、車両セキュリティシステムの作用効果として述べた(1)~(4)と同様の作用効果を奏する。
【0048】
(9)本実施形態のドア解錠方法は、生体認証が所定の回数N以上失敗した場合、ドアアンロックを所定時間不許可とする。
(10)詳細には、このドア解錠方法は、暗号認証(即ち、無線情報認証)が成功し且つ生体認証が所定の回数N以上失敗した場合に、ドアアンロックを所定時間不許可とする。
(11)また、このドア解錠方法は、ドアアンロックを所定時間不許可とする判定がされると、車両3側から電子キー2への無線通信を所定時間停止する。
(12)具体的には、このドア解錠方法は、ドアアンロックを所定時間不許可とする判定がされると、車両3側から電子キー2へ送信するLF信号の生成を所定時間停止する。
これによれば、本実施形態のドア解錠方法も、上記(9)~(12)の方法により、車両セキュリティシステムの作用効果として述べた(1)~(4)と同様の作用効果を奏する。
【0049】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、解錠許可判定部64は、暗号認証(即ち、無線情報認証)が成功し、且つ、生体認証が所定の回数N以上失敗した場合、ドアアンロックを所定時間不許可としたが、これに限らない。
例えば、解錠許可判定部64は、暗号認証(即ち、無線情報認証)の成功、失敗に関わらず、生体認証が所定の回数N以上失敗した場合、ドアアンロックを所定時間不許可としてもよい。
【0050】
(2)上記実施形態では、解錠許可判定部64は、ドアアンロックを所定時間不許可とすることを、車両3側から電子キー2への無線通信を所定時間停止することにより実行したが、これに限らない。
例えば、解錠許可判定部64は、ドアアンロックを所定時間不許可とすることを、照合ECU6からボデーECU7へのドアアンロック許可信号を所定時間停止することで実行してもよく、または、生体認証を所定時間停止することで実行してもよい。
【0051】
(3)上記実施形態では、生体認証部42が行う生体認証として指紋認証を例に説明したが、これに限らない。
生体認証として、例えば、顔、声紋、掌紋、虹彩、静脈などを採用してもよい。例えば、生体認証部42が顔認証を行う場合、車両3に搭載された不図示のカメラなどでユーザ1の顔を撮影し、その撮影した顔画像データが予め登録されたユーザ1の顔画像データと一致するか否かを判定する。
【0052】
(4)上記実施形態では、車両と電子キーとの間の無線情報認証として暗号認証を実行したが、これに限らず、無線情報認証として暗号認証以外の方法を実行してもよい。
【0053】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0054】
本発明に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ユーザ
2 電子キー
3 車両
41 LF送信部(無線情報認証部)
42 生体認証部
51 RF受信部(無線情報認証部)
61 LF送信処理部(無線情報認証部)
62 第2暗号処理部(無線情報認証部)
63 RF受信処理部(無線情報認証部)
64 解錠許可判定部(無線情報認証部)
図1
図2