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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20250409BHJP
   F25B 29/00 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
F25B1/00 397B
F25B1/00 399Y
F25B1/00 361J
F25B1/00 303
F25B1/00 361C
F25B1/00 321L
F25B1/00 321J
F25B29/00 371F
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022040193
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2023135138
(43)【公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 幸久
(72)【発明者】
【氏名】岡村 徹
(72)【発明者】
【氏名】牧本 直也
(72)【発明者】
【氏名】林 芳生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】横尾 康弘
(72)【発明者】
【氏名】平山 順基
(72)【発明者】
【氏名】武藤 騎士
(72)【発明者】
【氏名】野口 航平
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062700(JP,A)
【文献】実開昭63-159133(JP,U)
【文献】特表2013-510286(JP,A)
【文献】国際公開第2021/220661(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0103009(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間(68)の空調を行うための冷凍サイクル装置であって、
第1圧縮機(101)と第1放熱器(102)と空調用膨張弁(106)と空調用蒸発器(107)と第1膨張弁(108)と第1蒸発器(109)とを有し、第1冷媒が前記空調用蒸発器と前記第1蒸発器との少なくとも一方で蒸発し且つ前記第1放熱器で放熱しながら循環する第1冷凍サイクル(10)と、
第2圧縮機(201)と第2放熱器(202)と第2膨張弁(203)と第2蒸発器(204)とを有し、第2冷媒が前記第2蒸発器で蒸発し且つ前記第2放熱器で放熱しながら循環する第2冷凍サイクル(20)と、
前記第1放熱器からの放熱先を、前記第2蒸発器内の前記第2冷媒、または外気に切り替える伝熱部(30)とを備え、
前記空調用蒸発器では、前記第1冷媒の蒸発に伴って、前記第1冷媒が、前記空調対象空間へ送風される送風空気から吸熱し、
前記第1蒸発器では、前記第1冷媒の蒸発に伴って前記第1冷媒が外気から吸熱し、
前記第2放熱器は、該第2放熱器内の前記第2冷媒から前記送風空気へ放熱させる、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記第1冷凍サイクルと前記第2冷凍サイクルと前記伝熱部とを制御する制御部(80a)を備える、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記伝熱部は、熱媒体が循環する熱媒体回路で構成され、
該熱媒体回路は、前記熱媒体と外気とを熱交換させる外気熱交換器(33)と、前記熱媒体と前記送風空気とを熱交換させることにより前記送風空気を加熱する暖房用熱交換器(35)とを有し、
前記第1放熱器は前記第1冷媒から前記熱媒体へ放熱させ、
前記第2蒸発器は、前記熱媒体から前記第2冷媒へ吸熱させることにより前記第2冷媒を蒸発させ、
前記第2放熱器は前記第2冷媒から前記熱媒体へ放熱させる熱交換器であり、前記第2冷媒から前記送風空気へ放熱させる場合には前記第2冷媒から前記熱媒体を介して前記送風空気へ放熱させ、
前記制御部は、前記空調対象空間の暖房が実施される場合には、前記第1放熱器と前記第2蒸発器との間に前記熱媒体が循環する第1循環路(71、71a)と、該第1循環路に対して前記熱媒体の流通が阻止され前記第2放熱器と前記暖房用熱交換器との間に前記熱媒体が循環する第2循環路(72)とを前記熱媒体回路に成立させ、前記第1循環路と前記第2循環路とのそれぞれに前記熱媒体を循環させると共に前記第1圧縮機と前記第2圧縮機とを作動させ、前記第1冷凍サイクルでは前記第1冷媒を前記第1放熱器から前記第1膨張弁と前記第1蒸発器とへ流通させ、
前記制御部は、前記空調対象空間の冷房が実施される場合には、前記暖房用熱交換器に対して前記熱媒体の流通が阻止され前記第1放熱器と前記外気熱交換器との間に前記熱媒体が循環する第3循環路(73)を前記熱媒体回路に成立させ、該第3循環路に前記熱媒体を循環させると共に前記第1圧縮機を作動させ、前記第1冷凍サイクルでは前記第1冷媒を前記第1放熱器から前記空調用膨張弁と前記空調用蒸発器とへ流通させる、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記熱媒体回路は、車載の対象機器(69)と前記熱媒体とを熱交換させる機器熱交換器(34)を有し、
前記第3循環路は、前記第1放熱器と前記第2放熱器と前記外気熱交換器とに前記熱媒体が流れる循環路であり、
前記制御部は、前記空調対象空間の暖房時ではないときに前記対象機器の冷却を実施する場合には、前記第3循環路と、該第3循環路に対して前記熱媒体の流通が阻止され前記第2蒸発器と前記機器熱交換器との間に前記熱媒体が循環する第4循環路(74)とを前記熱媒体回路に成立させ、前記第3循環路と前記第4循環路とのそれぞれに前記熱媒体を循環させると共に前記第2圧縮機を作動させる、請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記第1循環路(71a)は、前記第1放熱器と前記機器熱交換器と前記第2蒸発器とに前記熱媒体が流れる循環路であり、
前記制御部は、前記対象機器の暖機を実施する場合には、前記第1循環路を前記熱媒体回路に成立させ、前記第1循環路に前記熱媒体を循環させると共に前記第1圧縮機を作動させ、前記第1冷凍サイクルでは前記第1冷媒を前記第1放熱器から前記第1膨張弁と前記第1蒸発器とへ流通させる、請求項4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記第1循環路(71a)は、前記第1放熱器と前記機器熱交換器と前記第2蒸発器とに前記熱媒体が流れる循環路であり、
前記制御部は、前記空調対象空間の暖房時に前記対象機器の暖機を実施する場合には、前記第1循環路と前記第2循環路とを前記熱媒体回路に成立させ、前記第1循環路と前記第2循環路とのそれぞれに前記熱媒体を循環させると共に前記第1圧縮機と前記第2圧縮機とを作動させ、前記第1冷凍サイクルでは前記第1冷媒を前記第1放熱器から前記第1膨張弁と前記第1蒸発器とへ流通させる、請求項4に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記空調対象空間の暖房時に前記対象機器の冷却を実施する場合には、前記第2循環路と前記第4循環路とを前記熱媒体回路に成立させ、前記第2循環路と前記第4循環路とのそれぞれに前記熱媒体を循環させると共に前記第2圧縮機を作動させる、請求項4ないし6のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記熱媒体回路は、前記第2循環路に対して前記熱媒体の流通が阻止され前記第2蒸発器と前記外気熱交換器との間に前記熱媒体が循環する外気吸熱循環路(75)が成立可能な構成になっており、
前記制御部は、
前記空調対象空間の暖房が実施される場合には、前記第1循環路と前記外気吸熱循環路との一方を前記熱媒体回路に成立させ、且つ前記第2循環路も前記熱媒体回路に成立させ、
前記空調対象空間の暖房が実施される場合に前記第1循環路を成立させた場合には、前記第1循環路と前記第2循環路とのそれぞれに前記熱媒体を循環させると共に前記第1圧縮機と前記第2圧縮機とを作動させ、前記第1冷凍サイクルでは前記第1冷媒を前記第1放熱器から前記第1膨張弁と前記第1蒸発器とへ流通させ、
前記空調対象空間の暖房が実施される場合に前記外気吸熱循環路を成立させた場合には、前記外気吸熱循環路と前記第2循環路とのそれぞれに前記熱媒体を循環させると共に前記第2圧縮機を作動させる、請求項3ないし7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記暖房用熱交換器は、前記空調用蒸発器から流出した前記送風空気を加熱するように配置され、
前記制御部は、前記送風空気を除湿してから加熱する除湿暖房が実施される場合には、前記第1循環路と前記第2循環路とを前記熱媒体回路に成立させ、前記第1循環路と前記第2循環路とのそれぞれに前記熱媒体を循環させると共に前記第1圧縮機と前記第2圧縮機とを作動させ、前記第1冷凍サイクルでは前記第1冷媒を前記第1放熱器から前記空調用膨張弁と前記空調用蒸発器とへ流通させる、請求項3ないし8のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1圧縮機と前記第2圧縮機との両方の作動中に前記第1圧縮機の回転数と前記第2圧縮機の回転数との両方を上昇させる場合には、前記第1圧縮機の回転数と前記第2圧縮機の回転数との一方を他方に対して先に上昇させる、請求項2ないし9のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1圧縮機と前記第2圧縮機との両方の作動中に前記第1圧縮機の回転数と前記第2圧縮機の回転数との両方を上昇させる場合には、前記第1圧縮機の回転数を前記第2圧縮機の回転数に対して先に上昇させる第1の回転数上昇パターンと、前記第2圧縮機の回転数を前記第1圧縮機の回転数に対して先に上昇させる第2の回転数上昇パターンとの何れかを選択し、該選択した回転数上昇パターンで前記第1圧縮機と前記第2圧縮機とのそれぞれの回転数を上昇させる、請求項2ないし9のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第3循環路と前記第4循環路とを成立させ前記第1圧縮機と前記第2圧縮機とを作動させ前記第1冷凍サイクルでは前記第1冷媒を前記第1放熱器から前記空調用膨張弁と前記空調用蒸発器とへ流通させている場合において、前記第1圧縮機の回転数と前記第2圧縮機の回転数との両方を上昇させる場合には、前記第1圧縮機の負荷が前記第2圧縮機の負荷に比して大きければ前記第1圧縮機の回転数を前記第2圧縮機の回転数に対して先に上昇させ、前記第2圧縮機の負荷が前記第1圧縮機の負荷に比して大きければ前記第2圧縮機の回転数を前記第1圧縮機の回転数に対して先に上昇させる、請求項4ないし7のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記除湿暖房の実施中に前記第1圧縮機の回転数と前記第2圧縮機の回転数との両方を上昇させる場合には、前記第2圧縮機の回転数を前記第1圧縮機の回転数に対して先に上昇させる、請求項9に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項14】
前記第1放熱器は、前記第1圧縮機から吐出された前記第1冷媒から放熱させることで該第1冷媒を凝縮させる凝縮部(103)と、該凝縮部で凝縮した前記第1冷媒から更に放熱させることで該第1冷媒を過冷却する過冷却部(104)とを有している、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項15】
前記第1圧縮機の容量と前記第2圧縮機の容量とのうちの一方は他方に対して大きい、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項16】
前記第1圧縮機の吐出流量と前記第2圧縮機の吐出流量とのうちの一方は他方に対して大きい、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の冷凍サイクルを備えた冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の冷凍サイクル装置として、例えば特許文献1に記載された冷凍空調装置が知られている。この特許文献1に記載された冷凍空調装置は、運転容量が可変の圧縮機と熱源側熱交換器と減圧装置と負荷側熱交換器とを有する冷凍サイクルを複数備えている。その複数の冷凍サイクルではそれぞれ、その冷凍サイクルの冷媒が、熱源側熱交換器で熱源側熱媒体に対し放熱または吸熱する。そして、その熱源側熱媒体の流路は、各冷凍サイクルの熱源側熱交換器を直列に流れるように構成されている。
【0003】
また、複数の冷凍サイクルではそれぞれ、その冷凍サイクルの冷媒が、負荷側熱交換器で負荷側熱媒体を冷却または加熱する。そして、その負荷側熱媒体の流路は、各冷凍サイクルの負荷側熱交換器を直列に流れるように構成されている。
【0004】
冷凍空調装置の制御装置は、負荷側熱媒体の温度に基づき各冷凍サイクルの圧縮機運転容量の合計値を制御するとともに、各冷凍サイクルの圧縮機効率の平均値が最大となるように各圧縮機の運転容量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-229916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、車室内の空調および電池の温調は、複数の熱交換器を用いて実施されている。しかしながら、近年、車両熱源は不足する傾向にあり、車両が搭載する電池の容量増加や車両の航続距離延長への要望は年々高まっている。そのため、例えば車室内の空調や車載機器の温調に利用される冷凍サイクルの高効率化が必要となってきている。
【0007】
このようなことから、冷凍サイクルの高効率化を図る技術として、特許文献1に開示された技術だけでなく、さらに別の冷凍サイクル装置に関する技術が必要になってきている。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、高効率で運転することが可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の冷凍サイクル装置は、
空調対象空間(68)の空調を行うための冷凍サイクル装置であって、
第1圧縮機(101)と第1放熱器(102)と空調用膨張弁(106)と空調用蒸発器(107)と第1膨張弁(108)と第1蒸発器(109)とを有し、第1冷媒が空調用蒸発器と第1蒸発器との少なくとも一方で蒸発し且つ第1放熱器で放熱しながら循環する第1冷凍サイクル(10)と、
第2圧縮機(201)と第2放熱器(202)と第2膨張弁(203)と第2蒸発器(204)とを有し、第2冷媒が第2蒸発器で蒸発し且つ第2放熱器で放熱しながら循環する第2冷凍サイクル(20)と、
第1放熱器からの放熱先を、第2蒸発器内の第2冷媒、または外気に切り替える伝熱部(30)とを備え、
空調用蒸発器では、第1冷媒の蒸発に伴って、第1冷媒が、空調対象空間へ送風される送風空気から吸熱し、
第1蒸発器では、第1冷媒の蒸発に伴って第1冷媒が外気から吸熱し、
第2放熱器は、その第2放熱器内の第2冷媒から送風空気へ放熱させる。
【0010】
このようにすれば、第1冷凍サイクルと第2冷凍サイクルとを役割分担させ、例えば第1冷凍サイクルを空調対象空間の冷房を目的として構成すると共に第2冷凍サイクルを空調対象空間の暖房を目的として構成することが可能である。そして、空調対象空間の暖房時には、例えば冷凍サイクル装置が単一の冷凍サイクルしか備えない場合に比して、第1冷凍サイクルと第2冷凍サイクルとを協働させることで暖房効率の向上を図ることが可能である。これらのことから、空調対象空間の冷房時にも暖房時にも冷凍サイクル装置の高効率化を図ることが可能である。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態において、空調装置が有する冷凍サイクル装置の回路構成を示した全体構成図である。
図2】第1実施形態において、空調装置が有する室内空調ユニットの概略構成を模式的に示した断面図である。
図3】第1実施形態において、空調装置が有する制御装置の入出力系統を示したブロック図である。
図4】冷凍サイクル装置が協調暖房モードで運転された場合の冷媒流れおよび熱媒体流れを図1の全体構成図に太線で示した図である。
図5】冷凍サイクル装置が単独暖房モードで運転された場合の冷媒流れおよび熱媒体流れを図1の全体構成図に太線で示した図である。
図6】冷凍サイクル装置が冷房モードおよび機器冷却モードで運転された場合の冷媒流れおよび熱媒体流れを図1の全体構成図に太線で示した図である。
図7】冷凍サイクル装置が機器暖機暖房モードで運転された場合の冷媒流れおよび熱媒体流れを図1の全体構成図に太線で示した図である。
図8】冷凍サイクル装置が機器暖機モードで運転された場合の冷媒流れおよび熱媒体流れを図1の全体構成図に太線で示した図である。
図9】冷凍サイクル装置が機器冷却暖房モードで運転された場合の冷媒流れおよび熱媒体流れを図1の全体構成図に太線で示した図である。
図10】冷凍サイクル装置が第1除湿暖房モードで運転された場合の冷媒流れおよび熱媒体流れを図1の全体構成図に太線で示した図である。
図11】冷凍サイクル装置が第2除湿暖房モードで運転された場合の冷媒流れおよび熱媒体流れを図1の全体構成図に太線で示した図である。
図12】第1実施形態において、第1、第2圧縮機の両方の作動中に第1、第2圧縮機の両方の回転数を上昇させる場合に、第1、第2圧縮機の何れを優先させてその回転数を上昇させるかを示した図である。
図13】第1実施形態において、第1圧縮機の回転数を第2圧縮機の回転数に対して先に上昇させる第1の回転数上昇パターンで第1、第2圧縮機のそれぞれの回転数を上昇させる場合を表したタイムチャートである。
図14】第1実施形態において、第2圧縮機の回転数を第1圧縮機の回転数に対して先に上昇させる第2の回転数上昇パターンで第1、第2圧縮機のそれぞれの回転数を上昇させる場合を表したタイムチャートである。
図15】冷凍サイクル装置が協調暖房モードで運転された場合において第1冷凍サイクルの第1冷媒と第2冷凍サイクルの第2冷媒とのそれぞれの状態を表したモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
図1図2に示すように、本実施形態の冷凍サイクル装置9は、車室内空間68を適切な温度に調整する空調装置8の一部を構成している。すなわち、冷凍サイクル装置9は、空調対象空間である車室内空間68の空調を行うための装置である。
【0017】
空調装置8は、冷凍サイクル装置9と室内空調ユニット60とを備えている。空調装置8は、例えば、電気自動車またはハイブリッド車両に搭載される。そのため、空調装置8を搭載する車両は、走行用モータの電源として機能する電池69を備えている。この電池69は、繰り返し充放電可能な二次電池であり、例えばリチウムイオン電池で構成される。そして、電池69が適切な充放電性能を発揮するために、電池69の温度は所定の温度範囲内に維持されるのが好ましく、電池69はその充放電に伴って発熱する。
【0018】
従って、本実施形態の冷凍サイクル装置9は、車室内空間68へ送風される送風空気を加熱または冷却する機能のほか、電池69を冷却する機能および電池69を暖機する機能も備えている。すなわち、電池69は、冷凍サイクル装置9によって温調される車載の対象機器である。
【0019】
冷凍サイクル装置9は、第1冷凍サイクル10と、第2冷凍サイクル20と、第1熱媒体回路30と、第2熱媒体回路50と、空調装置8の各機器を制御する制御装置80(図3参照)に含まれる回路制御部80aとを備えている。その回路制御部80aは、制御装置80の制御対象となっている複数の機器の中で冷凍サイクル装置9に含まれる制御対象機器を制御する制御部である。すなわち、回路制御部80aは、第1冷凍サイクル10と第2冷凍サイクル20と第1熱媒体回路30と第2熱媒体回路50とのそれぞれが有する制御対象機器を制御する。回路制御部80aは本開示の制御部に対応する。
【0020】
第1冷凍サイクル10と第2冷凍サイクル20はそれぞれ、蒸気圧縮式の冷凍サイクルで構成されている。また、第1冷凍サイクル10と第2冷凍サイクル20はそれぞれ、そのサイクル内の高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界サイクルで運転される。
【0021】
第1冷凍サイクル10は、第1冷媒が循環する冷媒回路であり、その第1冷凍サイクル10としての冷媒回路には第1冷媒が封入されている。第1冷凍サイクル10で循環する第1冷媒としては、種々の冷媒を採用し得るが、本実施形態では、例えばHFO134aなどのフロン系冷媒が採用されている。
【0022】
第1冷凍サイクル10は、第1圧縮機101、第1放熱器102、空調用膨張弁106、空調用蒸発器107、第1膨張弁108、第1蒸発器109、およびそれらを接続する配管などを有している。
【0023】
第1冷凍サイクル10では、第1圧縮機101の吐出口101aは第1放熱器102の冷媒入口102aへ接続され、第1放熱器102の冷媒出口102bは空調用膨張弁106の冷媒入口106aと第1膨張弁108の冷媒入口108aとへ接続されている。また、空調用膨張弁106の冷媒出口106bは空調用蒸発器107の冷媒入口107aへ接続され、第1膨張弁108の冷媒出口108bは第1蒸発器109の冷媒入口109aへ接続されている。また、空調用蒸発器107の冷媒出口107bと第1蒸発器109の冷媒出口109bは共に第1圧縮機101の吸入口101bへ接続されている。
【0024】
第1圧縮機101は吐出口101aと吸入口101bを有し、吸入口101bから吸入した第1冷媒を圧縮すると共にその圧縮した第1冷媒を吐出口101aから吐出する。第1圧縮機101は、具体的には電動圧縮機であり、圧縮室に導入された第1冷媒を圧縮する圧縮機構部と、その圧縮機構部を回転駆動する電動モータとを有している。本実施形態の第1圧縮機101は、圧縮機容量が固定のものであってもよいし、圧縮機容量を増減可能な可変容量型であってもよい。
【0025】
第1圧縮機101は、図3の回路制御部80aから出力される制御信号によって制御され、例えば、第1圧縮機101の回転数(詳細に言えば、第1圧縮機101の電動モータの回転数)は、その回路制御部80aから出力される制御信号によって制御される。例えば第1圧縮機101の吐出流量は、第1圧縮機101の回転数が上昇するほど大きくなる。
【0026】
図1に示すように、第1放熱器102は、第1冷媒が流入する冷媒入口102aと、第1冷媒が流出する冷媒出口102bと、第1熱媒体回路30の第1熱媒体が流入する熱媒体入口102cと、その第1熱媒体が流出する熱媒体出口102dとを有している。第1放熱器102の冷媒入口102aには、第1圧縮機101から吐出された高温高圧の第1冷媒が流入する。
【0027】
第1放熱器102は、第1冷媒と第1熱媒体回路30の第1熱媒体とを熱交換させる熱交換器(別言すると、水冷コンデンサ)である。第1放熱器102は、冷媒入口102aに流入した第1冷媒から第1熱媒体へ放熱させ、その放熱後の第1冷媒を冷媒出口102bから流出させると共に、第1冷媒によって加熱された第1熱媒体を熱媒体出口102dから流出させる。
【0028】
詳細には、第1放熱器102は、凝縮部103と不図示の受液部と過冷却部104とを有している。その凝縮部103には第1放熱器102の冷媒入口102aと熱媒体出口102dとが設けられ、過冷却部104には第1放熱器102の冷媒出口102bと熱媒体入口102cとが設けられている。
【0029】
凝縮部103は、冷媒入口102aから流入した第1冷媒から第1熱媒体回路30の第1熱媒体へ放熱させ、それによりその第1熱媒体を加熱すると共に第1冷媒を凝縮させる。第1放熱器102の受液部は、凝縮部103を通過した第1冷媒の気液を分離するとともに、分離された液相の第1冷媒をサイクル内の余剰冷媒として貯留する。
【0030】
第1放熱器102の過冷却部104は、凝縮部103で凝縮した第1冷媒から第1熱媒体へ更に放熱させ、それにより第1冷媒を過冷却する。詳しく言うと、過冷却部104は、受液部に貯留された液相の第1冷媒を、凝縮部103に流入する前の第1熱媒体(すなわち、凝縮部103で熱交換する前の第1熱媒体)へ放熱させることで過冷却する。過冷却部104で過冷却された第1冷媒は、第1放熱器102の冷媒出口102bから流出し、空調用膨張弁106と第1膨張弁108とへ流れる。
【0031】
空調用膨張弁106は、第1冷媒が流入する冷媒入口106aと、第1冷媒が流出する冷媒出口106bとを有している。空調用膨張弁106は、その空調用膨張弁106の冷媒入口106aに流入した第1冷媒を減圧させる減圧装置である。空調用膨張弁106は電気式膨張弁であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。空調用膨張弁106の電動アクチュエータは例えばステッピングモータを含んで構成されており、弁体を変位させることにより空調用膨張弁106の絞り開度を変化させる。空調用膨張弁106の電動アクチュエータは回路制御部80a(図3参照)からの制御信号によって制御されるので、空調用膨張弁106の絞り開度は、回路制御部80aからの制御信号に応じて増減される。
【0032】
また、空調用膨張弁106は、その絞り開度を零にすることが可能な構成、すなわち、空調用膨張弁106を全閉にすることが可能な構成になっている。空調用膨張弁106が全閉になった場合には、第1放熱器102から空調用蒸発器107への第1冷媒の流れが遮断される。空調用膨張弁106が開いている場合には、空調用膨張弁106で減圧された第1冷媒は空調用膨張弁106の冷媒出口106bから流出し、空調用蒸発器107の冷媒入口107aへ流れる。
【0033】
図1図2に示すように、空調用蒸発器107は、第1冷媒が流入する冷媒入口107aと、第1冷媒が流出する冷媒出口107bとを有している。空調用蒸発器107は、車室内空間68へ送風される送風空気を冷却する冷却用の熱交換器であり、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。
【0034】
詳細には、空調用蒸発器107は、冷媒入口107aに流入した第1冷媒と空調用蒸発器107を通過する送風空気とを熱交換させ、その熱交換により第1冷媒を蒸発させると共に送風空気を冷却する。すなわち、空調用蒸発器107では、第1冷媒の蒸発に伴って、その第1冷媒が送風空気から吸熱する。空調用蒸発器107で吸熱した第1冷媒は冷媒出口107bから流出し、第1圧縮機101の吸入口101bへ流れる。
【0035】
図1に示すように、第1膨張弁108は、第1冷媒が流入する冷媒入口108aと、第1冷媒が流出する冷媒出口108bとを有している。第1膨張弁108は、その第1膨張弁108の冷媒入口108aに流入した第1冷媒を減圧し、減圧した第1冷媒を冷媒出口108bから流出させる。その第1膨張弁108の冷媒出口108bから流出した第1冷媒は第1蒸発器109の冷媒入口109aへ流れる。
【0036】
第1膨張弁108は、空調用膨張弁106とは異なる箇所に配置されているが、空調用膨張弁106と同様の構成を備えている。すなわち、第1膨張弁108は弁体と電動アクチュエータとを有し、第1膨張弁108の絞り開度は、回路制御部80a(図3参照)からの制御信号に応じて増減される。そして、第1膨張弁108は、第1膨張弁108を全閉にすることが可能な構成になっている。
【0037】
第1膨張弁108が全閉になった場合には、第1放熱器102から第1蒸発器109への第1冷媒の流れが遮断される。第1膨張弁108が開いている場合には、第1膨張弁108で減圧された第1冷媒は第1膨張弁108の冷媒出口108bから流出し、第1蒸発器109の冷媒入口109aへ流れる。
【0038】
このように第1膨張弁108と空調用膨張弁106はそれぞれ全閉可能な構成であるので、第1冷媒の流路を例えば第1流通状態と第2流通状態と第3流通状態とに択一的に切り替える冷媒流路切替部としての機能を含んでいる。その第1流通状態では、第1放熱器102から空調用膨張弁106を介した空調用蒸発器107への第1冷媒の流れが遮断され、第1放熱器102から第1膨張弁108を介した第1蒸発器109への第1冷媒の流れが許容される。また、第2流通状態では、第1放熱器102から空調用膨張弁106を介した空調用蒸発器107への第1冷媒の流れが許容され、第1放熱器102から第1膨張弁108を介した第1蒸発器109への第1冷媒の流れが遮断される。また、第3流通状態では、第1放熱器102から空調用膨張弁106を介した空調用蒸発器107への第1冷媒の流れと、第1放熱器102から第1膨張弁108を介した第1蒸発器109への第1冷媒の流れとの両方が許容される。
【0039】
第1蒸発器109は、第1冷媒が流入する冷媒入口109aと、第1冷媒が流出する冷媒出口109bと、第2熱媒体回路50の第2熱媒体が流入する熱媒体入口109cと、その第2熱媒体が流出する熱媒体出口109dとを有している。第1蒸発器109は、第1冷媒と第2熱媒体とを熱交換させる熱交換器(別言すると、チラー)であり、その第1冷媒と第2熱媒体との熱交換により、第1冷媒へ吸熱させて第1冷媒を蒸発させると共に第2熱媒体を冷却する。第1蒸発器109で吸熱した第1冷媒は冷媒出口109bから流出し、第1圧縮機101の吸入口101bへ流れる。それと共に、第1蒸発器109で冷却された第2熱媒体は熱媒体出口109dから流出する。
【0040】
以上述べたような構成から第1冷凍サイクル10では、第1圧縮機101が作動している場合、空調用膨張弁106が開き且つ第1膨張弁108が全閉になっていれば第1冷媒は空調用蒸発器107に流れるが第1蒸発器109には流れない。逆に、空調用膨張弁106が全閉になり且つ第1膨張弁108が開いていれば第1冷媒は空調用蒸発器107に流れないが第1蒸発器109には流れる。また、空調用膨張弁106と第1膨張弁108との両方が開いていれば第1冷媒は空調用蒸発器107と第1蒸発器109との両方に流れる。このように、第1冷凍サイクル10では、第1冷媒が空調用蒸発器107と第1蒸発器109との一方または両方で蒸発し且つ第1放熱器102で放熱しながら循環する。
【0041】
第2冷凍サイクル20は、第2冷媒が循環する冷媒回路であり、その第2冷凍サイクル20としての冷媒回路には第2冷媒が封入されている。第2冷凍サイクル20で循環する第2冷媒は、第1冷凍サイクル10の第1冷媒と同じ冷媒であってもよいし第1冷媒と異なる種々の冷媒であってもよいが、本実施形態では、第2冷媒として、第1冷凍サイクル10の第1冷媒と同じ冷媒が採用されている。
【0042】
第2冷凍サイクル20は、第2圧縮機201、第2放熱器202、第2膨張弁203、第2蒸発器204、およびそれらを接続する配管などを有している。
【0043】
第2冷凍サイクル20では、第2圧縮機201の吐出口201aは第2放熱器202の冷媒入口202aへ接続され、第2放熱器202の冷媒出口202bは第2膨張弁203の冷媒入口203aへ接続されている。また、第2膨張弁203の冷媒出口203bは第2蒸発器204の冷媒入口204aへ接続され、第2蒸発器204の冷媒出口204bは第2圧縮機201の吸入口201bへ接続されている。
【0044】
第2圧縮機201は吐出口201aと吸入口201bを有し、吸入口201bから吸入した第2冷媒を圧縮すると共にその圧縮した第2冷媒を吐出口201aから吐出する。第2圧縮機201は、第1圧縮機101とは異なる箇所に配置されているが、第1圧縮機101と同様の構成を備えた電動圧縮機である。すなわち、第2圧縮機201は、圧縮機構部と電動モータとを有し、回路制御部80a(図3参照)からの制御信号によって制御される。例えば、第2圧縮機201の回転数は、回路制御部80aからの制御信号によって制御される。例えば第2圧縮機201の吐出流量は、第2圧縮機201の回転数が上昇するほど大きくなる。
【0045】
また、本実施形態の第2圧縮機201は第1圧縮機101と同様に、圧縮機容量が固定のものであってもよいし、圧縮機容量を増減可能な可変容量型であってもよい。例えば本実施形態では、第1、第2圧縮機101、201として、圧縮機容量が固定であれば同一の圧縮機容量のものが採用され、圧縮機容量が可変であれば最大の圧縮機容量が同一のものが採用される。
【0046】
第2放熱器202は、第2冷媒が流入する冷媒入口202aと、第2冷媒が流出する冷媒出口202bと、第1熱媒体回路30の第1熱媒体が流入する熱媒体入口202cと、その第1熱媒体が流出する熱媒体出口202dとを有している。第2放熱器202は、第2冷媒と第1熱媒体とを熱交換させその熱交換により第2冷媒から第1熱媒体へ放熱させる熱交換器(別言すると、水冷コンデンサ)である。第2放熱器202は、その第2冷媒と第1熱媒体との熱交換により、第2冷媒を凝縮させると共に第1熱媒体を加熱する。第2放熱器202で放熱した第2冷媒は冷媒出口202bから流出し、第2膨張弁203の冷媒入口203aへ流れる。それと共に、第2放熱器202で加熱された第1熱媒体は熱媒体出口202dから流出する。
【0047】
第2膨張弁203は、第2冷媒が流入する冷媒入口203aと、第2冷媒が流出する冷媒出口203bとを有している。第2膨張弁203は、その第2膨張弁203の冷媒入口203aに流入した第2冷媒を減圧し、減圧した第2冷媒を冷媒出口203bから流出させる。その第2膨張弁203の冷媒出口203bから流出した第2冷媒は第2蒸発器204の冷媒入口204aへ流れる。
【0048】
第2膨張弁203は、空調用膨張弁106とは異なる箇所に配置されているが、空調用膨張弁106と同様の構成を備えている。すなわち、第2膨張弁203は弁体と電動アクチュエータとを有し、第2膨張弁203の絞り開度は、回路制御部80a(図3参照)からの制御信号に応じて増減される。なお、第2膨張弁203は全閉にならなくても差し支えない。
【0049】
第2蒸発器204は、第2冷媒が流入する冷媒入口204aと、第2冷媒が流出する冷媒出口204bと、第1熱媒体回路30の第1熱媒体が流入する熱媒体入口204cと、その第1熱媒体が流出する熱媒体出口204dとを有している。第2蒸発器204は、第1蒸発器109とは異なる箇所に配置されているが、第1蒸発器109と同様の構成を備えている。
【0050】
すなわち、第2蒸発器204は、第2冷媒と第1熱媒体とを熱交換させる熱交換器(別言すると、チラー)である。そして、第2蒸発器204は、第2冷媒と第1熱媒体との熱交換により第1熱媒体から第2冷媒へ吸熱させ、それによって第2冷媒を蒸発させると共に第1熱媒体を冷却する。
【0051】
第2蒸発器204で吸熱した第2冷媒は冷媒出口204bから流出し、第2圧縮機201の吸入口201bへ流れる。それと共に、第2蒸発器204で冷却された第1熱媒体は熱媒体出口204dから流出する。
【0052】
以上述べたような構成から第2冷凍サイクル20では、第2圧縮機201が作動している場合、第2冷媒が第2蒸発器204で蒸発し且つ第2放熱器202で放熱しながら循環する。
【0053】
第1熱媒体回路30は、第1熱媒体が循環する熱媒体回路である。本実施形態では第1熱媒体回路30が本開示の伝熱部に対応し、第1熱媒体が本開示の熱媒体に対応する。第1熱媒体は例えば液体である。第1熱媒体としては、例えば、エチレングリコールを含む溶液などである不凍液を採用することができる。
【0054】
第1熱媒体回路30は、第1ポンプ31、第2ポンプ32、第1外気熱交換器33、機器熱交換器34、ヒータコア35、第1切替弁37、第2切替弁38、第3切替弁39、バイパス切替弁40、シャット弁42、開閉通路43、バイパス通路44、およびそれらを接続する配管などを有している。
【0055】
第1熱媒体回路30では、第1ポンプ31の吐出口31aは第1切替弁37の第1ポート37aへ接続されている。また、第1切替弁37の第2ポート37bは第1放熱器102の熱媒体入口102cへ接続され、第1切替弁37の第3ポート37cはバイパス切替弁40の第1ポート40aへ接続されている。
【0056】
また、第1放熱器102の熱媒体出口102dは第3切替弁39の第1ポート39aへ接続され、第3切替弁39の第2ポート39bはバイパス切替弁40の第1ポート40aへ接続されている。また、第3切替弁39の第3ポート39cは第2ポンプ32の吸入口32bへ接続され、バイパス切替弁40の第2ポート40bは機器熱交換器34の熱媒体入口34aへ接続されている。また、機器熱交換器34の熱媒体出口34bは第2蒸発器204の熱媒体入口204cへ接続され、バイパス切替弁40の第3ポート40cはバイパス通路44を介して機器熱交換器34の熱媒体出口34bへ接続されている。また、第2蒸発器204の熱媒体出口204dは第1ポンプ31の吸入口31bへ接続されている。
【0057】
また、第2ポンプ32の吐出口32aは第2放熱器202の熱媒体入口202cへ接続され、第2放熱器202の熱媒体出口202dは第2切替弁38の第1ポート38aへ接続されている。また、第2切替弁38の第2ポート38bはヒータコア35の熱媒体入口35aへ接続され、ヒータコア35の熱媒体出口35bは第2ポンプ32の吸入口32bへ接続されている。
【0058】
また、第2切替弁38の第3ポート38cは第1外気熱交換器33の第1接続口33aへ接続され、第1外気熱交換器33の第2接続口33bは第1放熱器102の熱媒体入口102cへ接続されている。また、第1外気熱交換器33の第1接続口33aと第2蒸発器204の熱媒体入口204cは開閉通路43を介して互いに接続されている。
【0059】
第1ポンプ31と第2ポンプ32は、第1熱媒体を圧送する電動ポンプであり、第1ポンプ31と第2ポンプ32とのそれぞれの回転数は、回路制御部80a(図3参照)から出力される制御信号に応じて制御される。そして、第1ポンプ31の回転数が上昇するほど第1ポンプ31の吐出流量は大きくなり、第2ポンプ32の回転数が上昇するほど第2ポンプ32の吐出流量は大きくなる。
【0060】
第1ポンプ31は吐出口31aと吸入口31bとを有し、吸入口31bから吸入した第1熱媒体を吐出口31aから吐出する。第2ポンプ32は、吐出口32aと吸入口32bとを有し、吸入口32bから吸入した第1熱媒体を吐出口32aから吐出する。
【0061】
第1外気熱交換器33は第1接続口33aと第2接続口33bとを有している。第1外気熱交換器33では、第1熱媒体が第1接続口33aと第2接続口33bとの一方から第1外気熱交換器33内へ流入し、他方から第1外気熱交換器33の外部へ流出する。
【0062】
第1外気熱交換器33は、第1熱媒体と外気とを熱交換させる熱交換器である。外気とは車室内空間68外の空気である。また、第1外気熱交換器33は本開示の外気熱交換器に対応する。第1外気熱交換器33は、例えば車両走行時に走行風としての外気が当たるように車両の前方側に配置されている。第1外気熱交換器33に対し外気は、車両走行によって又は不図示の送風機の作動によって供給される。
【0063】
機器熱交換器34は、第1熱媒体が流入する熱媒体入口34aと、第1熱媒体が流出する熱媒体出口34bとを有している。機器熱交換器34は、熱媒体入口34aから機器熱交換器34内へ流入した第1熱媒体と電池69とを熱交換させ、それにより、電池69を冷却しまたは加熱する。その電池69と熱交換した後の第1熱媒体は熱媒体出口34bから流出する。例えば、機器熱交換器34は電池69と一体構成になっており、電池69に含まれる複数の電池セルの温度を均一化しつつ電池69を冷却または加熱できるように構成されている。
【0064】
図1図2に示すように、ヒータコア35は、第1熱媒体が流入する熱媒体入口35aと、第1熱媒体が流出する熱媒体出口35bとを有している。ヒータコア35は、第1熱媒体と室内空調ユニット60のケーシング61内に流通する送風空気とを熱交換させることによりその送風空気を加熱する暖房用熱交換器であり、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されている。ヒータコア35では、第1熱媒体は熱媒体入口35aからヒータコア35に流入して送風空気と熱交換し、その熱交換した後の第1熱媒体は熱媒体出口35bから流出する。
【0065】
第1切替弁37と第2切替弁38と第3切替弁39とバイパス切替弁40はそれぞれ、電動の三方弁である。これらの切替弁37、38、39、40のそれぞれの作動は、回路制御部80a(図3参照)からの制御信号によって制御される。
【0066】
第1切替弁37は第1ポート37aと第2ポート37bと第3ポート37cとを有している。第1切替弁37は、第1ポート37aと第2ポート37bとを連通させる一方で第3ポート37cを全閉にする第1切替状態と、第1ポート37aと第3ポート37cとを連通させる一方で第2ポート37bを全閉にする第2切替状態とに切り替えられる。なお、切替弁のポートの全閉とは、そのポートが塞がれそのポートでの流体(例えば、第1熱媒体)の流れが阻止されることである。
【0067】
第2切替弁38は第1ポート38aと第2ポート38bと第3ポート38cとを有している。第2切替弁38は、第1ポート38aと第2ポート38bとを連通させる一方で第3ポート38cを全閉にする第1切替状態と、第1ポート38aと第3ポート38cとを連通させる一方で第2ポート38bを全閉にする第2切替状態とに切り替えられる。
【0068】
第3切替弁39は第1ポート39aと第2ポート39bと第3ポート39cとを有している。第3切替弁39は、第1ポート39aと第2ポート39bとを連通させる一方で第3ポート39cを全閉にする第1切替状態と、第1ポート39aと第3ポート39cとを連通させる一方で第2ポート39bを全閉にする第2切替状態とに切り替えられる。
【0069】
バイパス切替弁40は第1ポート40aと第2ポート40bと第3ポート40cとを有している。バイパス切替弁40は、温調切替状態とバイパス切替状態と第1ポート閉状態とに切り替えられる。バイパス切替弁40は温調切替状態に切り替えられると、第1ポート40aと第2ポート40bとを連通させる一方で第3ポート40cを全閉にする。また、バイパス切替弁40はバイパス切替状態に切り替えられると、第1ポート40aと第3ポート40cとを連通させる一方で第2ポート40bを全閉にする。また、バイパス切替弁40は第1ポート閉状態に切り替えられると、第2ポート40bと第3ポート40cとを連通させる一方で第1ポート40aを全閉にする。
【0070】
例えば、電池69の冷却または暖機が行われる場合には、回路制御部80aからの制御信号によってバイパス切替弁40は温調切替状態に切り替えられる。逆に、電池69の冷却も暖機も行われず、機器熱交換器34をバイパスさせて第1熱媒体を流通させる場合には、回路制御部80aからの制御信号によってバイパス切替弁40はバイパス切替状態に切り替えられる。
【0071】
シャット弁42は電動の開閉弁であり、そのシャット弁42の作動は、回路制御部80a(図3参照)からの制御信号によって制御される。シャット弁42は開閉通路43に設けられており、その開閉通路43を開閉する。シャット弁42が開状態になれば開閉通路43は開かれ、シャット弁42が閉状態になれば開閉通路43は閉じられる。
【0072】
例えば、シャット弁42が開閉通路43を閉じた場合には、第1外気熱交換器33の第1接続口33aと第2蒸発器204の熱媒体入口204cとの間の連通は遮断される。逆に、シャット弁42が開閉通路43を開いた場合には、第1外気熱交換器33の第1接続口33aと第2蒸発器204の熱媒体入口204cとの間で第1熱媒体が流通可能になる。
【0073】
第1熱媒体回路30では、シャット弁42および切替弁37、38、39、40のそれぞれの作動に応じて、第1熱媒体の流通経路(別言すると、第1熱媒体が流れる流路)が切り替わる。すなわち、シャット弁42および切替弁37、38、39、40は、第1熱媒体回路30において第1熱媒体の流通経路を切り替える流通経路切替部として機能する。
【0074】
第2熱媒体回路50は、第2熱媒体が循環する熱媒体回路である。その第2熱媒体は、第1熱媒体回路30の第1熱媒体と同じ熱媒体であってもよいし第1熱媒体と異なる種々の熱媒体であってもよいが、本実施形態では、第2熱媒体として、第1熱媒体回路30の第1熱媒体と同じ熱媒体が採用されている。
【0075】
第2熱媒体回路50は、第3ポンプ51、第2外気熱交換器52、およびそれらを接続する配管などを有している。
【0076】
第2熱媒体回路50では、第3ポンプ51の吐出口51aは第1蒸発器109の熱媒体入口109cへ接続され、第1蒸発器109の熱媒体出口109dは第2外気熱交換器52の熱媒体入口52aへ接続されている。また、第2外気熱交換器52の熱媒体出口52bは第3ポンプ51の吸入口51bへ接続されている。従って、第2熱媒体回路50では、第3ポンプ51が作動すると、第3ポンプ51の吐出口51aから吐出された第2熱媒体は、第1蒸発器109、第2外気熱交換器52の順に流れてから第3ポンプ51の吸入口51bへ吸い込まれる。
【0077】
第3ポンプ51は、第2熱媒体を圧送する電動ポンプであり、第3ポンプ51の回転数は、回路制御部80a(図3参照)から出力される制御信号に応じて制御される。そして、第3ポンプ51の回転数が上昇するほど第3ポンプ51の吐出流量は大きくなる。第3ポンプ51は吐出口51aと吸入口51bとを有し、吸入口51bから吸入した第2熱媒体を吐出口51aから吐出する。
【0078】
第2外気熱交換器52は、第2熱媒体と外気とを熱交換させる熱交換器であり、熱媒体入口52aと熱媒体出口52bとを有している。第2外気熱交換器52は、第1蒸発器109から熱媒体入口52aに流入した第2熱媒体と外気とを熱交換させ、その熱交換により外気から吸熱した第2熱媒体を熱媒体出口52bから第3ポンプ51の吸入口51bへと流す。
【0079】
第2外気熱交換器52は、例えば、車両走行時に走行風としての外気が当たるように第1外気熱交換器33と共に車両の前方側に配置されている。第2外気熱交換器52に対し外気は、車両走行によって又は不図示の送風機の作動によって供給される。
【0080】
図2に示す室内空調ユニット60は、車室内空間68へ送風される送風空気を適温に調整するための装置である。例えば、室内空調ユニット60は、車室内空間68の最前部のインストルメントパネルの内側に配置されている。室内空調ユニット60は、ケーシング61と空調用蒸発器107とヒータコア35と送風機62とエアミックスドア65とを有している。
【0081】
ケーシング61は、車室内空間68へ送風される送風空気の空気流路を形成する通路形成部であり、室内空調ユニット60の外殻を構成している。ケーシング61の内側には、空調用蒸発器107およびヒータコア35などが収容されている。図示しないが、ケーシング61の空気流れ上流側には、ケーシング61の内側へ導入される内気と外気との導入割合を調整する内外気箱が配置されている。
【0082】
送風機62は電動送風機である。送風機62は、遠心ファン621と、その遠心ファン621を回転駆動する電動モータ622とを有している。遠心ファン621は、ケーシング61の内側に配置されている。遠心ファン621は回転することにより、内外気箱から空気を吸い込むと共に、その吸い込んだ空気を車室内空間68へ向けて送風する。送風機62の回転数、具体的には送風機62の電動モータ622の回転数は、制御装置80(図3参照)から出力される制御信号によって制御される。
【0083】
ケーシング61の内側では、送風機62の遠心ファン621に対する空気流れ下流側に空調用蒸発器107が配置されている。そして、空調用蒸発器107に対する空気流れ下流側には、温風流路63と冷風流路64とが並列に形成されている。温風流路63には、ヒータコア35が配置されている。冷風流路64は、空調用蒸発器107を通過した空気をヒータコア35を迂回して流すための流路である。
【0084】
また、ケーシング61の内側では、空調用蒸発器107とヒータコア35との間にエアミックスドア65が配置されている。エアミックスドア65は、温風流路63と冷風流路64とを開閉するドア装置であり、温風流路63を通過させる空気と冷風流路64を通過させる空気との風量割合を調整する。エアミックスドア65の作動は、制御装置80(図3参照)から出力される制御信号によって制御される。
【0085】
また、ケーシング61の内側で、温風流路63と冷風流路64とに対する空気流れ下流側には、温風流路63を通過した温風と冷風流路64を通過した冷風とを混合させるエアミックス空間66が形成されている。図示しないが、ケーシング61の内側における空気流れの最下流部には、エアミックス空間66で所望の温度に調整された送風空気を車室内空間68へ吹き出すための複数の開口孔が形成されている。
【0086】
図3に示すように、制御装置80は、非遷移的実体的記録媒体としての半導体メモリおよびプロセッサを含むコンピュータとその周辺回路とで構成された電子制御装置である。制御装置80は、その半導体メモリに格納されたコンピュータプログラムを実行する。このコンピュータプログラムが実行されることで、コンピュータプログラムに対応する方法が実行される。すなわち、制御装置80は、そのコンピュータプログラムに従って種々の制御処理を実行する。このことは、制御装置80に含まれる回路制御部80aについても同様である。
【0087】
例えば、制御装置80は、車室内空間68の暖房や冷房や除湿暖房などの空調および電池69の温調などを行う。車室内空間68の除湿暖房とは、室内空調ユニット60のケーシング61内に流れる送風空気を除湿してから加熱する空調である。詳しく言うと、その車室内空間68の除湿暖房とは、空調用蒸発器107で露点温度よりも低い温度まで送風空気を冷却した後にヒータコア35で所望の温度まで昇温させて車室内空間68へ吹き出す空調である。
【0088】
制御装置80の出力側には、冷凍サイクル装置9の構成機器を含む各種機器が接続されている。この制御装置80の出力側に接続されている各機器は、制御装置80に制御される制御対象機器である。具体的に、制御装置80の出力側には、第1圧縮機101、空調用膨張弁106、第1膨張弁108、第2圧縮機201、第2膨張弁203、第1~第3ポンプ31、32、51、各切替弁37、38、39、40、シャット弁42、送風機62、およびエアミックスドア65等が接続されている。
【0089】
制御装置80の入力側には、冷凍サイクル装置9に含まれる複数のセンサなどが接続されている。具体的に、制御装置80の入力側には、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、第1温度圧力センサ81d、第2温度圧力センサ81e、第3温度圧力センサ81f、第1温度センサ81g、第2温度センサ81h、第3温度センサ81i、および第4温度センサ81j等が接続されている。
【0090】
第1温度圧力センサ81dは、空調用蒸発器107の冷媒出口107bにおける第1冷媒の温度と圧力とを検出する。そして、その検出された第1冷媒の温度と圧力とに基づいて回路制御部80aは、例えば空調用膨張弁106の絞り開度を調整する。
【0091】
また、第2温度圧力センサ81eは、第1蒸発器109の冷媒出口109bにおける第1冷媒の温度と圧力とを検出する。そして、その検出された第1冷媒の温度と圧力とに基づいて回路制御部80aは、例えば第1膨張弁108の絞り開度を調整する。
【0092】
第3温度圧力センサ81fは、第2蒸発器204の冷媒出口204bにおける第2冷媒の温度と圧力とを検出する。そして、その検出された第2冷媒の温度と圧力とに基づいて回路制御部80aは、例えば第2膨張弁203の絞り開度を調整する。
【0093】
また、第1温度センサ81gは第2圧縮機201の吐出口201aにおける第2冷媒の温度を検出し、第2温度センサ81hはヒータコア35の熱媒体入口35aにおける第1熱媒体の温度を検出する。また、第3温度センサ81iは第1蒸発器109の熱媒体出口109dにおける第2熱媒体の温度を検出し、第4温度センサ81jは第2外気熱交換器52の熱媒体出口52bにおける第2熱媒体の温度を検出する。
【0094】
このように、制御装置80には、各種の検出信号が入力される。これにより、冷凍サイクル装置9と室内空調ユニット60は、その検出信号に応じて、車室内空間68へ送風される送風空気の温度等を調整することができ、快適な空調を実現することができる。
【0095】
制御装置80の入力側には、乗員による種々の入力操作に用いられる操作装置としての操作パネル82が接続されている。操作パネル82は、インストルメントパネル付近に配置されており、乗員に操作される各種操作スイッチを有している。制御装置80には、操作パネル82に含まれる各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0096】
操作パネル82の各種操作スイッチには、オートスイッチ、運転モード切替スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、および吹出モード切替スイッチ等が含まれている。
【0097】
制御装置80は、車室内空間68の冷房、暖房、または除湿暖房を実施する場合には、送風機62を作動させ、車室内空間68へ向けて送風する。そして、制御装置80は、車室内空間68の冷房を実施する場合には、例えば、図2の温風流路63が全閉され且つ冷風流路64が全開されるドア位置に、エアミックスドア65を制御する。これにより、車室内空間68の冷房時には、空調用蒸発器107から流出した送風空気は、ヒータコア35を迂回して車室内空間68へと流れる。
【0098】
その一方で、制御装置80は、車室内空間68の暖房または除湿暖房を実施する場合には、例えば、温風流路63が全開され且つ冷風流路64が全閉されるドア位置に、エアミックスドア65を制御する。これにより、車室内空間68の暖房時または除湿暖房時には、空調用蒸発器107から流出した送風空気は、ヒータコア35を通過してから車室内空間68へと流れる。言い換えると、この場合、ヒータコア35は、空調用蒸発器107から流出した送風空気を加熱するように配置される。
【0099】
冷凍サイクル装置9は、冷凍サイクル装置9の運転モードを適宜切り替えることができる構成になっている。具体的に、冷凍サイクル装置9は、その運転モードとして、協調暖房モード、単独暖房モード、冷房モード、機器冷却モード、機器暖機暖房モード、機器暖機モード、機器冷却暖房モード、第1除湿暖房モード、および第2除湿暖房モードを実行可能に構成されている。
【0100】
これらの複数の運転モードは基本的には択一的に実施されるものであるが、冷房モードと機器冷却モードは同時に実施可能である。本実施形態の説明では、冷房モードと機器冷却モードとが共に実施される運転モードを機器冷却冷房モードと呼ぶ場合がある。
【0101】
例えば、これらの冷凍サイクル装置9の運転モードは、制御装置80に接続された複数のセンサから得られる検出信号および操作パネル82の操作信号などに基づき回路制御部80aによって切り替えられる。冷凍サイクル装置9のそれぞれの運転モードについて、以下に説明する。
【0102】
<協調暖房モード>
図1図4に示すように、冷凍サイクル装置9の協調暖房モードは、車室内空間68の暖房時に実施され、第1圧縮機101と第2圧縮機201との両方の作動によって送風空気を温める運転モードである。要するに、協調暖房モードとは、第1、第2冷凍サイクル10、20の両方を使って送風空気を温める運転モードである。
【0103】
この協調暖房モードと後述の単独暖房モードは、車室内空間68の暖房が実施される場合に択一的に実行される運転モードである。協調暖房モードと単独暖房モードとの切替えは、複数のセンサによって検出される物理量に応じて行われてもよいし、操作パネル82に対する乗員の手動操作に応じて行われてもよい。
【0104】
協調暖房モードでは、図4の矢印A1a、A1b、A2、A3a、A3b、A4、A5および太い実線で示すとおり第1冷媒、第2冷媒、第1熱媒体、および第2熱媒体がそれぞれ流通するように、回路制御部80a(図3参照)は各制御対象機器を制御する。
【0105】
なお、図4の複数の太い実線と太い破線はそれぞれ、循環している第1冷媒、第2冷媒、第1熱媒体、または第2熱媒体の流通経路を表している。このことは、図4に相当する後述の図でも同様である。
【0106】
具体的に、協調暖房モードでは、回路制御部80aは、第1切替弁37を上記第1切替状態にし、第2切替弁38を上記第1切替状態にし、第3切替弁39を上記第1切替状態にし、バイパス切替弁40を上記バイパス切替状態にし、シャット弁42を閉状態にする。これにより、回路制御部80aは、第1放熱器102と第2蒸発器204との間に第1熱媒体が循環する第1循環路71と、第2放熱器202とヒータコア35との間に第1熱媒体が循環する第2循環路72とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、その第1循環路71と第2循環路72は互いの間で第1熱媒体の流通が阻止されるように形成される。
【0107】
また、回路制御部80aは第1ポンプ31を作動させ、これにより、図4の矢印A3a、A3bで示されるように、第1循環路71に第1熱媒体を循環させる。詳細には、その第1循環路71では、第1ポンプ31の吐出口31aから吐出された第1熱媒体は、第1切替弁37、第1放熱器102の過冷却部104、第1放熱器102の凝縮部103、第3切替弁39、バイパス切替弁40、第2蒸発器204の順に流れてから第1ポンプ31の吸入口31bへ吸い込まれる。
【0108】
従って、協調暖房モードでは、第1放熱器102内の第1冷媒から放出される熱は、第1熱媒体回路30によって第2蒸発器204内の第2冷媒へ伝えられる。すなわち、第1熱媒体を介した第1放熱器102からの放熱先は、第2蒸発器204内の第2冷媒になる。
【0109】
なお、協調暖房モードでは、上記したように、回路制御部80aは、基本的にはバイパス切替弁40をバイパス切替状態にするが、バイパス切替弁40を温調切替状態にする場合もある。従って、協調暖房モードでは、第1循環路71は、機器熱交換器34に第1熱媒体を流通させない流路になる場合もあれば、機器熱交換器34に第1熱媒体を流通させる流路になる場合もある。例えば、バイパス切替弁40の第1ポート40aに流入する第1熱媒体よりも電池69の方が高温になっている場合には、回路制御部80aは、バイパス切替弁40を温調切替状態にする。これにより、協調暖房モードにおいて電池69の冷却も実施することできる。
【0110】
また、回路制御部80aは第2ポンプ32を作動させ、これにより、図4の矢印A4で示されるように、第2循環路72に第1熱媒体を循環させる。詳細には、その第2循環路72では、第2ポンプ32の吐出口32aから吐出された第1熱媒体は、第2放熱器202、第2切替弁38、ヒータコア35の順に流れてから第2ポンプ32の吸入口32bへ吸い込まれる。
【0111】
また、回路制御部80aは第3ポンプ51を作動させ、これにより、図4の矢印A5で示されるように、第2熱媒体回路50に第2熱媒体を循環させる。
【0112】
また、回路制御部80aは空調用膨張弁106を全閉にする一方で、第1膨張弁108が減圧作用を発揮するように第1膨張弁108の絞り開度を調整する。そして、回路制御部80aは第1圧縮機101を作動させる。これにより、第1冷凍サイクル10では第1冷媒が、図4の矢印A1a、A1bで示されるように循環する。すなわち、第1圧縮機101の吐出口101aから吐出された第1冷媒は、第1放熱器102の凝縮部103、第1放熱器102の過冷却部104、第1膨張弁108、第1蒸発器109の順に流れてから第1圧縮機101の吸入口101bへ吸い込まれる。
【0113】
このとき、第2熱媒体回路50に第2熱媒体が循環しているので、第1蒸発器109では、第1冷媒の蒸発に伴って、その第1冷媒が、第2外気熱交換器52を通過する外気から第2熱媒体を介して吸熱する。また、空調用膨張弁106が全閉になっているので、空調用蒸発器107では第1冷媒と室内空調ユニット60(図2参照)のケーシング61内に流通する送風空気との熱交換は行われず、空調用蒸発器107はその送風空気を冷却しない。
【0114】
また、回路制御部80aは、第2膨張弁203が減圧作用を発揮するように第2膨張弁203の絞り開度を調整し、第2圧縮機201を作動させる。これにより、第2冷凍サイクル20では第2冷媒が、図4の矢印A2で示されるように循環する。すなわち、第2圧縮機201の吐出口201aから吐出された第2冷媒は、第2放熱器202、第2膨張弁203、第2蒸発器204の順に流れてから第2圧縮機201の吸入口201bへ吸い込まれる。
【0115】
このとき、第2循環路72に第1熱媒体が循環しているので、第2放熱器202は、第2放熱器202内に流通する第2冷媒から第1熱媒体を介して、ヒータコア35を通過する送風空気へ放熱させる。
【0116】
以上説明したように、協調暖房モードでは、第1冷媒、第2冷媒、第1熱媒体、および第2熱媒体が循環することで、第2外気熱交換器52を通過する外気から第2熱媒体回路50の第2熱媒体へと吸熱される。そして、その外気から第2熱媒体へ吸熱された熱は、第2熱媒体から、第1冷凍サイクル10の第1冷媒、第1循環路71の第1熱媒体、第2冷凍サイクル20の第2冷媒、第2循環路72の第1熱媒体の順に伝達され、ヒータコア35で第1熱媒体から送風空気へ放出される。これにより、空調装置8は、車室内空間68へ送風される送風空気を加熱し車室内空間68の暖房を実施することができる。
【0117】
<単独暖房モード>
次に、冷凍サイクル装置9の単独暖房モードについて説明する。図1図5に示すように、冷凍サイクル装置9の単独暖房モードは、車室内空間68の暖房時に実施され、第1圧縮機101を作動させずに第2圧縮機201の作動によって送風空気を温める運転モードである。要するに、単独暖房モードとは、第1冷凍サイクル10を使わずに第2冷凍サイクル20を使って送風空気を温める運転モードである。
【0118】
単独暖房モードでは、図5の矢印A2、A4、A6a、A6bおよび太い実線で示すとおり第2冷媒と第1熱媒体とがそれぞれ流通するように、回路制御部80a(図3参照)は各制御対象機器を制御する。
【0119】
具体的に、単独暖房モードでは、回路制御部80aは、第1切替弁37を上記第1切替状態にし、第2切替弁38を上記第1切替状態にし、第3切替弁39を上記第1切替状態にし、バイパス切替弁40を上記第1ポート閉状態にし、シャット弁42を開状態にする。これにより、回路制御部80aは、第2循環路72と、第2蒸発器204と第1外気熱交換器33との間に第1熱媒体が循環する外気吸熱循環路75とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、その第2循環路72と外気吸熱循環路75は互いの間で第1熱媒体の流通が阻止されるように形成される。
【0120】
また、図4図5とから判るように、図5の外気吸熱循環路75のうちの一部の流路が図4の第1循環路71と重複するので、外気吸熱循環路75は第1循環路71と同時には成立しない。すなわち、第1熱媒体回路30は、外気吸熱循環路75が第1循環路71に替えて成立可能な構成になっている。従って、車室内空間68の暖房が実施される場合に、第1循環路71と外気吸熱循環路75は択一的に第1熱媒体回路30に成立させられることになる。
【0121】
また、回路制御部80aは第1ポンプ31を作動させ、これにより、図5の矢印A6a、A6bで示されるように、外気吸熱循環路75に第1熱媒体を循環させる。詳細には、その外気吸熱循環路75では、第1ポンプ31の吐出口31aから吐出された第1熱媒体は、第1切替弁37、第1外気熱交換器33、シャット弁42、第2蒸発器204の順に流れてから第1ポンプ31の吸入口31bへ吸い込まれる。
【0122】
また、回路制御部80aは第2ポンプ32を作動させ、これにより、図5の矢印A4で示されるように、第2循環路72に第1熱媒体を循環させる。
【0123】
また、単独暖房モードでも協調暖房モードと同様に、回路制御部80aは第2膨張弁203と第2圧縮機201とを作動させる。これにより、第2冷凍サイクル20では第2冷媒が、図5の矢印A2で示されるように循環し、室内空調ユニット60(図2参照)のケーシング61内では、ヒータコア35を通過する送風空気が加熱される。
【0124】
なお、単独暖房モードでは第1冷凍サイクル10は使われないので、第1圧縮機101と第3ポンプ51は停止される。従って、単独暖房モードでも協調暖房モードと同様に、空調用蒸発器107では第1冷媒と室内空調ユニット60のケーシング61内に流通する送風空気との熱交換は行われず、空調用蒸発器107はその送風空気を冷却しない。
【0125】
以上説明したように、単独暖房モードでは、第2冷媒および第1熱媒体が循環することで、第1外気熱交換器33を通過する外気から外気吸熱循環路75の第1熱媒体へと吸熱される。そして、その外気から第1熱媒体へ吸熱された熱は、第1熱媒体から、第2冷凍サイクル20の第2冷媒、第2循環路72の第1熱媒体の順に伝達され、ヒータコア35で第1熱媒体から送風空気へ放出される。これにより、空調装置8は、車室内空間68へ送風される送風空気を加熱し車室内空間68の暖房を実施することができる。
【0126】
<冷房モード>
次に、冷凍サイクル装置9の冷房モードについて説明する。図1図6に示すように、冷凍サイクル装置9の冷房モードは、車室内空間68の冷房時に実施され、第1圧縮機101の作動によって送風空気を冷却する運転モードである。この冷房モードと後述の機器冷却モードは、択一的に実行することも両方同時に実行することも可能な運転モードである。
【0127】
冷房モードでは、図6の矢印A7a、A7b、A8および太い実線で示すとおり第1冷媒と第1熱媒体とがそれぞれ流通するように、回路制御部80a(図3参照)は各制御対象機器を制御する。なお、図6の矢印A2、A7a、A7b、A8、A9は、冷房モードと機器冷却モードとが同時に実行された場合(すなわち、機器冷却冷房モードが実行された場合)における第1冷媒、第2冷媒、および第1熱媒体の流れを示している。
【0128】
具体的に、冷房モードでは、回路制御部80aは、第1切替弁37を上記第2切替状態にし、第2切替弁38を上記第2切替状態にし、第3切替弁39を上記第2切替状態にし、バイパス切替弁40を上記温調切替状態にし、シャット弁42を閉状態にする。これにより、回路制御部80aは、第1放熱器102と第2放熱器202と第1外気熱交換器33とに第1熱媒体が順番に流れる第3循環路73を第1熱媒体回路30に成立させる。
【0129】
そして、この第3循環路73は、ヒータコア35との間で第1熱媒体の流通が阻止されるように形成される。そのため、ヒータコア35において第1熱媒体から送風空気への放熱は行われない。なお、第3循環路73の成立と同時に後述の第4循環路74も第1熱媒体回路30に成立するが、冷房モードでは、その第4循環路74に第1熱媒体を循環させる必要はない。
【0130】
また、図4図5図6から判るように、図6の第3循環路73と第4循環路74は、図4の第1、第2循環路71、72および図5の外気吸熱循環路75と同時には成立しない。すなわち、第1熱媒体回路30は、第3循環路73と第4循環路74とが第1、第2循環路71、72および外気吸熱循環路75に替えて成立可能な構成になっている。
【0131】
また、回路制御部80aは第2ポンプ32を作動させ、これにより、図6の矢印A8で示されるように、第3循環路73に第1熱媒体を循環させる。詳細には、その第3循環路73では、第2ポンプ32の吐出口32aから吐出された第1熱媒体は、第2放熱器202、第2切替弁38、第1外気熱交換器33、第1放熱器102の過冷却部104、第1放熱器102の凝縮部103、第3切替弁39の順に流れてから第2ポンプ32の吸入口32bへ吸い込まれる。
【0132】
従って、冷房モードでは、第1熱媒体を介した第1放熱器102からの放熱先は、第1外気熱交換器33を通過する外気になる。すなわち、図4図6から判るように、第1熱媒体回路30は、第1放熱器102からの放熱先を、第1外気熱交換器33を通過する外気または第2蒸発器204内の第2冷媒に切り替える。
【0133】
冷房モードでは、回路制御部80aは第1膨張弁108を全閉にする一方で、空調用膨張弁106が減圧作用を発揮するように空調用膨張弁106の絞り開度を調整する。そして、回路制御部80aは第1圧縮機101を作動させる。これにより、第1冷凍サイクル10では第1冷媒が、図6の矢印A7a、A7bで示されるように循環する。すなわち、第1圧縮機101の吐出口101aから吐出された第1冷媒は、第1放熱器102の凝縮部103、第1放熱器102の過冷却部104、空調用膨張弁106、空調用蒸発器107の順に流れてから第1圧縮機101の吸入口101bへ吸い込まれる。
【0134】
このとき、空調用蒸発器107は、第1冷媒の蒸発に伴って、室内空調ユニット60(図2参照)のケーシング61内で空調用蒸発器107を通過する送風空気を冷却する。また、第1膨張弁108が全閉になっているので、第1蒸発器109では第1冷媒と第2熱媒体との熱交換は行われない。なお、冷房モードでは、第1ポンプ31、第3ポンプ51、および第2圧縮機201を作動させる必要はない。
【0135】
以上説明したように、冷房モードでは、第1冷媒および第1熱媒体が循環することで、空調用蒸発器107を通過する送風空気から第1冷凍サイクル10の第1冷媒へと吸熱される。そして、その送風空気から第1冷媒へ吸熱された熱は、第1冷媒から第3循環路73の第1熱媒体に伝達され、第1外気熱交換器33で第1熱媒体から外気へ放出される。これにより、空調装置8は、車室内空間68へ送風される送風空気を冷却し車室内空間68の冷房を実施することができる。
【0136】
<機器冷却モード>
次に、冷凍サイクル装置9の機器冷却モードについて説明する。図1図6に示すように、冷凍サイクル装置9の機器冷却モードは、第2圧縮機201の作動によって電池69を冷却する運転モードである。回路制御部80aは、例えば車室内空間68の暖房時ではないときに電池69の冷却を実施する場合には、この機器冷却モードを選択する。
【0137】
機器冷却モードでは、図6の矢印A2、A8、A9および太い実線で示すとおり第2冷媒と第1熱媒体とがそれぞれ流通するように、回路制御部80a(図3参照)は各制御対象機器を制御する。
【0138】
具体的に、機器冷却モードでは、回路制御部80aは、切替弁37、38、39、40およびシャット弁42をそれぞれ、冷房モードと同じ切替状態にする。これにより、回路制御部80aは、第3循環路73と、第2蒸発器204と機器熱交換器34との間に第1熱媒体が循環する第4循環路74とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、この第4循環路74は、ヒータコア35と第3循環路73とに対して第1熱媒体の流通が阻止されるように形成される。
【0139】
また、回路制御部80aは第1ポンプ31を作動させ、これにより、図5の矢印A9で示されるように、第4循環路74に第1熱媒体を循環させる。詳細には、その第4循環路74では、第1ポンプ31の吐出口31aから吐出された第1熱媒体は、第1切替弁37、バイパス切替弁40、機器熱交換器34、第2蒸発器204の順に流れてから第1ポンプ31の吸入口31bへ吸い込まれる。
【0140】
また、回路制御部80aは第2ポンプ32を作動させ、これにより、図6の矢印A8で示されるように、第3循環路73に第1熱媒体を循環させる。
【0141】
また、機器冷却モードでも協調暖房モードと同様に、回路制御部80aは第2膨張弁203と第2圧縮機201とを作動させる。これにより、第2冷凍サイクル20では第2冷媒が、図6の矢印A2で示されるように循環する。なお、機器冷却モードでは、第3ポンプ51、および第1圧縮機101を作動させる必要はない。
【0142】
以上説明したように、機器冷却モードでは、第2冷媒および第1熱媒体が循環することで、機器熱交換器34で電池69から第4循環路74の第1熱媒体へと吸熱される。そして、その電池69から第1熱媒体へ吸熱された熱は、その第1熱媒体から、第2冷凍サイクル20の第2冷媒、第3循環路73の第1熱媒体の順に伝達され、第1外気熱交換器33で第1熱媒体から外気へ放出される。これにより、冷凍サイクル装置9は電池69を冷却することができる。
【0143】
なお、機器冷却モードと冷房モードとが同時に実施される場合(すなわち、機器冷却冷房モードが実施される場合)には、第3循環路73の第1熱媒体が第1放熱器102で第1冷媒から吸熱すると共に、第2放熱器202で第2冷媒から吸熱する。そして、その第1冷媒からの熱と第2冷媒からの熱は、第1外気熱交換器33で第1熱媒体から外気へ放出される。
【0144】
<機器暖機暖房モード>
次に、冷凍サイクル装置9の機器暖機暖房モードについて説明する。図1図7に示すように、冷凍サイクル装置9の機器暖機暖房モードは、車室内空間68の暖房中に電池69を暖機する運転モードである。すなわち、回路制御部80aは、車室内空間68の暖房時に電池69の暖機を実施する場合には、この機器暖機暖房モードを選択する。
【0145】
機器暖機暖房モードでは、図7の矢印A1a、A1b、A2、A3c、A3d、A4、A5および太い実線で示すとおり第1冷媒、第2冷媒、第1熱媒体、および第2熱媒体がそれぞれ流通するように、回路制御部80a(図3参照)は各制御対象機器を制御する。
【0146】
具体的に、機器暖機暖房モードでは、回路制御部80aは、第1~第3切替弁37、38、39、およびシャット弁42の切替状態を、協調暖房モード時と同じにする。そして、回路制御部80aは、バイパス切替弁40を上記温調切替状態にする。これにより、回路制御部80aは、第1循環路71aと第2循環路72とを第1熱媒体回路30に成立させる。
【0147】
但し、機器暖機暖房モードでは、バイパス切替弁40が常に温調切替状態にされるので、機器暖機暖房モード時の第1循環路71aは、協調暖房モード時の第1循環路71(図4参照)とは異なり、機器熱交換器34への第1熱媒体の流通を常に許容する流路とされる。この点を除き、機器暖機暖房モード時の第1循環路71aは協調暖房モード時の第1循環路71と同様である。従って、機器暖機暖房モードでは、第1循環路71aは、第1放熱器102と機器熱交換器34と第2蒸発器204とに第1熱媒体が順番に流れる循環路になる。
【0148】
また、回路制御部80aは第1ポンプ31を作動させ、これにより、図7の矢印A3c、A3dで示されるように、第1循環路71aに第1熱媒体を循環させる。詳細には、その第1循環路71aでは、第1ポンプ31の吐出口31aから吐出された第1熱媒体は、第1切替弁37、第1放熱器102の過冷却部104、第1放熱器102の凝縮部103、第3切替弁39、バイパス切替弁40、機器熱交換器34、第2蒸発器204の順に流れてから第1ポンプ31の吸入口31bへ吸い込まれる。
【0149】
また、回路制御部80aは、第2ポンプ32と第3ポンプ51と空調用膨張弁106と第1膨張弁108と第1圧縮機101と第2膨張弁203と第2圧縮機201とを、協調暖房モード時と同様に作動させる。これにより、第2循環路72の第1熱媒体、第2熱媒体回路50の第2熱媒体、第1冷凍サイクル10の第1冷媒、および第2冷凍サイクル20の第2冷媒はそれぞれ、協調暖房モード時と同様に循環する。
【0150】
このとき、例えば、回路制御部80aは、機器熱交換器34の熱媒体入口34aに流入する第1熱媒体の温度が電池69の暖機に適した温度になるように第1圧縮機101の回転数を調整する。それと共に、回路制御部80aは、ヒータコア35の熱媒体入口35aに流入する第1熱媒体の温度が暖房に適した温度になるように第2圧縮機201の回転数を調整する。
【0151】
以上説明したように、機器暖機暖房モードでは、第1冷媒、第2冷媒、第1熱媒体、および第2熱媒体が循環することで、第2外気熱交換器52を通過する外気から第2熱媒体回路50の第2熱媒体へと吸熱される。そして、その外気から第2熱媒体へ吸熱された熱は、第2熱媒体から、第1冷凍サイクル10の第1冷媒、第1循環路71aの第1熱媒体の順に伝達され、機器熱交換器34で第1熱媒体から電池69へ放出される。これと同時に、第1循環路71aの第1熱媒体へ伝達された熱は、第2蒸発器204から、第2冷凍サイクル20の第2冷媒、第2循環路72の第1熱媒体の順に伝達され、ヒータコア35で第1熱媒体から送風空気へ放出される。これにより、空調装置8は、車室内空間68へ送風される送風空気を加熱し車室内空間68を暖房することと、電池69を暖機することとを同時に実施することができる。
【0152】
<機器暖機モード>
次に、冷凍サイクル装置9の機器暖機モードについて説明する。図1図8に示すように、冷凍サイクル装置9の機器暖機モードは、車室内空間68の暖房時ではないときに電池69を暖機する運転モードである。
【0153】
機器暖機モードでは、図8の矢印A1a、A1b、A3c、A3d、A5および太い実線で示すとおり第1冷媒、第1熱媒体、および第2熱媒体がそれぞれ流通するように、回路制御部80a(図3参照)は各制御対象機器を制御する。
【0154】
具体的に、機器暖機モードでは、回路制御部80aは、第2ポンプ32と第2圧縮機201とを停止する。そして、回路制御部80aは、第2膨張弁203の絞り開度制御を行わない。このことを除き、機器暖機モードにおける各制御対象機器の作動は機器暖機暖房モード時と同様である。
【0155】
従って、機器暖機モードでは、第1循環路71aの第1熱媒体、第2熱媒体回路50の第2熱媒体、および第1冷凍サイクル10の第1冷媒はそれぞれ、機器暖機暖房モード時と同様に循環する。そして、機器暖機暖房モード時とは異なり、第2冷凍サイクル20で第2冷媒は循環せず、ヒータコア35に第1熱媒体は流通しない。
【0156】
以上説明したように、機器暖機モードでは、第1冷媒、第1熱媒体、および第2熱媒体が循環することで、機器暖機暖房モード時と同様に、第2外気熱交換器52を通過する外気から第2熱媒体回路50の第2熱媒体へと吸熱される。そして、その外気から第2熱媒体へ吸熱された熱は、機器暖機暖房モード時と同様に電池69へ放出される。これにより、空調装置8は電池69を暖機することができる。
【0157】
<機器冷却暖房モード>
次に、冷凍サイクル装置9の機器冷却暖房モードについて説明する。図1図9に示すように、冷凍サイクル装置9の機器冷却暖房モードは、車室内空間68の暖房時に電池69を冷却する運転モードである。
【0158】
機器冷却暖房モードでは、図9の矢印A2、A4、A9および太い実線で示すとおり第2冷媒および第1熱媒体がそれぞれ流通するように、回路制御部80a(図3参照)は各制御対象機器を制御する。
【0159】
具体的に、機器冷却暖房モードでは、回路制御部80aは、第1切替弁37を上記第2切替状態にし、第2切替弁38を上記第1切替状態にし、第3切替弁39を上記第1切替状態にし、バイパス切替弁40を上記温調切替状態にし、シャット弁42を閉状態にする。これにより、回路制御部80aは、第2循環路72と第4循環路74とを第1熱媒体回路30に成立させる。
【0160】
そして、回路制御部80aは第1ポンプ31を作動させ、これにより、第4循環路74では、図9の矢印A9で示すように、第1熱媒体を機器冷却モード時と同様に循環させる。また、回路制御部80aは第2ポンプ32を作動させ、これにより、第2循環路72では、図9の矢印A4で示すように、第1熱媒体を協調暖房モード時と同様に循環させる。また、回路制御部80aは第2圧縮機201と第2膨張弁203とを作動させ、これにより、第2冷凍サイクル20では、図9の矢印A2で示すように、第2冷媒を協調暖房モード時と同様に循環させる。
【0161】
以上説明したように、機器冷却暖房モードでは、第2冷媒および第1熱媒体が循環することで、機器熱交換器34で電池69から第1熱媒体へと吸熱される。そして、その電池69から第1熱媒体へ吸熱された熱は、第1熱媒体から、第2冷凍サイクル20の第2冷媒、第2循環路72の第1熱媒体の順に伝達され、ヒータコア35で第1熱媒体から送風空気へ放出される。これにより、空調装置8は、車室内空間68へ送風される送風空気を加熱し車室内空間68を暖房すると共に、電池69を冷却することができる。
【0162】
<第1除湿暖房モード>
次に、冷凍サイクル装置9の第1除湿暖房モードについて説明する。図1図10に示すように、冷凍サイクル装置9の第1除湿暖房モードは、外気からの吸熱を伴って車室内空間68の除湿暖房時に実施される運転モードである。すなわち、第1除湿暖房モードで運転される冷凍サイクル装置9は、第2外気熱交換器52で外気から吸熱し、空調用蒸発器107で送風空気を冷却することによりその送風空気中の水蒸気を凝縮させ、それと共にその冷却した送風空気をヒータコア35で加熱する。
【0163】
第1除湿暖房モードでは、図10の矢印A2、A3a、A3b、A4、A5、A7a、A7b、A7cおよび太い実線で示すとおり第1冷媒、第2冷媒、第1熱媒体、および第2熱媒体がそれぞれ流通するように、回路制御部80aは各制御対象機器を制御する。
【0164】
具体的に、第1除湿暖房モードでは、回路制御部80aは、空調用膨張弁106を全閉にはせずに、空調用膨張弁106が減圧作用を発揮するように空調用膨張弁106の絞り開度を調整する。このことを除き、第1除湿暖房モードにおける各制御対象機器の作動は協調暖房モード時と同様である。
【0165】
従って、回路制御部80aは、第1循環路71と第2循環路72とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、第1循環路71の第1熱媒体、第2循環路72の第1熱媒体、第2熱媒体回路50の第2熱媒体、および第2冷凍サイクル20の第2冷媒はそれぞれ、協調暖房モード時と同様に循環する。
【0166】
但し、第1冷凍サイクル10では、第1放熱器102から流出した第1冷媒は、矢印A7bで示すように空調用膨張弁106を通って空調用蒸発器107に流れると共に、矢印A7cで示すように第1膨張弁108を通って第1蒸発器109に流れる。そして、空調用蒸発器107から流出した第1冷媒と第1蒸発器109から流出した第1冷媒は共に第1圧縮機101の吸入口101bへ吸い込まれる。
【0167】
以上説明したように、第1除湿暖房モードでは、第1冷媒、第2冷媒、第1熱媒体、および第2熱媒体が循環することで、第1蒸発器109では第2熱媒体を介して外気から第1冷媒へ吸熱されると共に、空調用蒸発器107では送風空気から第1冷媒へ吸熱される。そして、その外気と送風空気とから第1冷媒へ吸熱された熱は、第1放熱器102から、第1循環路71の第1熱媒体、第2冷凍サイクル20の第2冷媒、第2循環路72の第1熱媒体の順に伝達され、ヒータコア35で第1熱媒体から送風空気へ放出される。これにより、冷凍サイクル装置9は、第2外気熱交換器52で外気から吸熱し、空調用蒸発器107で送風空気を冷却し、それと共にその冷却した送風空気をヒータコア35で加熱することができる。
【0168】
なお、第1除湿暖房モードでも協調暖房モードと同様に、回路制御部80aは、基本的にはバイパス切替弁40をバイパス切替状態にするが、バイパス切替弁40を温調切替状態にする場合もある。
<第2除湿暖房モード>
次に、冷凍サイクル装置9の第2除湿暖房モードについて説明する。図1図11に示すように、冷凍サイクル装置9の第2除湿暖房モードは、外気からの吸熱を行わずに車室内空間68の除湿暖房時に実施される運転モードである。従って、第2除湿暖房モードでも第1除湿暖房モードと同様に、冷凍サイクル装置9は、空調用蒸発器107で送風空気を冷却することによりその送風空気中の水蒸気を凝縮させ、それと共にその冷却した送風空気をヒータコア35で加熱する。但し、第2除湿暖房モードでは、冷凍サイクル装置9は、第2外気熱交換器52で外気と第2熱媒体との熱交換を行わない。
【0169】
第2除湿暖房モードでは、図11の矢印A2、A3a、A3b、A4、A7a、A7bおよび太い実線で示すとおり第1冷媒、第2冷媒、および第1熱媒体がそれぞれ流通するように、回路制御部80aは各制御対象機器を制御する。
【0170】
具体的に、第2除湿暖房モードでは、回路制御部80aは、第1膨張弁108を全閉にする一方で、空調用膨張弁106が減圧作用を発揮するように空調用膨張弁106の絞り開度を調整する。そして、回路制御部80aは第3ポンプ51を停止する。このことを除き、第2除湿暖房モードにおける各制御対象機器の作動は第1除湿暖房モード時と同様である。
【0171】
従って、回路制御部80aは、第1循環路71と第2循環路72とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、第1循環路71の第1熱媒体、第2循環路72の第1熱媒体、および第2冷凍サイクル20の第2冷媒はそれぞれ、第1除湿暖房モード時と同様に循環する。
【0172】
但し、第1冷凍サイクル10では、第1放熱器102から流出した第1冷媒は、矢印A7bで示すように空調用膨張弁106を通って空調用蒸発器107に流れるが、第1蒸発器109には流れない。そのため、第1蒸発器109で第1冷媒と第2熱媒体との熱交換は行われない。また、第2熱媒体回路50において第2熱媒体は循環しない。
【0173】
以上説明したように、第2除湿暖房モードでは、第1冷媒、第2冷媒、および第1熱媒体が循環することで、空調用蒸発器107では送風空気から第1冷媒へ吸熱される。そして、その送風空気から第1冷媒へ吸熱された熱は、第1放熱器102から、第1循環路71の第1熱媒体、第2冷凍サイクル20の第2冷媒、第2循環路72の第1熱媒体の順に伝達され、ヒータコア35で第1熱媒体から送風空気へ放出される。これにより、冷凍サイクル装置9は、空調用蒸発器107で送風空気を冷却すると共に、その冷却した送風空気をヒータコア35で加熱することができる。
【0174】
なお、第2除湿暖房モードでも第1除湿暖房モードと同様に、回路制御部80aは、基本的にはバイパス切替弁40をバイパス切替状態にするが、バイパス切替弁40を温調切替状態にする場合もある。
【0175】
冷凍サイクル装置9の各運転モードについての説明は以上である。
【0176】
上記した複数の運転モードのうち選択される運転モードによっては、第1圧縮機101と第2圧縮機201との両方が作動中になる場合がある。回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の両方の作動中に第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合には、第1圧縮機101の回転数と第2圧縮機201の回転数との一方を他方に対して先に上昇させる。要するに、回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の両方の回転数を上昇させる場合には、第1圧縮機101の回転数を上昇させるタイミングと第2圧縮機201の回転数を上昇させるタイミングとをずらす。
【0177】
例えば図12に示すように、回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を上昇させるときの状況に応じて、第1、第2圧縮機101、201の何れの回転数を先に上昇させるかを決定する。図12の「優先」という記載は、第1、第2圧縮機101、201のうち先に回転数を上昇させる側の圧縮機を示している。
【0178】
具体的に、図4に示される協調暖房モード時には、上記したように第1圧縮機101と第2圧縮機201との両方が作動中になる。そして、協調暖房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合において暖房効率を向上させる場合には、第1の回転数上昇パターンを選択する。その第1の回転数上昇パターンとは、第1圧縮機101の回転数を第2圧縮機201の回転数に対して先に上昇させる回転数上昇パターンである。そして、回路制御部80aは、その選択した第1の回転数上昇パターンで第1圧縮機101と第2圧縮機201とのそれぞれの回転数を上昇させる。例えば、その場合、回路制御部80aは、図13のタイムチャートに示すように、第2圧縮機201の回転数よりも第1圧縮機101の回転数を先に上昇させる。
【0179】
これにより、後述の第2の回転数上昇パターンで第1圧縮機101と第2圧縮機201とのそれぞれの回転数を上昇させる場合に比して、暖房効率は向上する。なお、暖房効率がRhで表される場合、その暖房効率Rhは、例えば、ヒータコア35で送風空気へ供給される単位時間当たり熱量Whと、第1、第2圧縮機101、201の合計消費電力Wcとに基づき、「Rh=Wh/Wc」という式で算出することができる。
【0180】
一方、協調暖房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合において暖房性能を向上させる場合には、第2の回転数上昇パターンを選択する。その第2の回転数上昇パターンとは、第2圧縮機201の回転数を第1圧縮機101の回転数に対して先に上昇させる回転数上昇パターンである。そして、回路制御部80aは、その選択した第2の回転数上昇パターンで第1圧縮機101と第2圧縮機201とのそれぞれの回転数を上昇させる。例えば、その場合、回路制御部80aは、図14のタイムチャートに示すように、第1圧縮機101の回転数よりも第2圧縮機201の回転数を先に上昇させる。
【0181】
これにより、第1の回転数上昇パターンで第1圧縮機101と第2圧縮機201とのそれぞれの回転数を上昇させる場合に比して、暖房性能は向上する。なお、暖房性能は、例えば、ヒータコア35で送風空気へ供給される単位時間当たり熱量Whによって表すことができる。
【0182】
例えば、暖房中に車室内空間68の温度の早期上昇を乗員が要求する場合に乗員によってONに操作される所定スイッチが操作パネル82に設けられているとする。その場合、その所定スイッチが暖房中にONになっている場合には、暖房性能を向上させる必要性が高いと考えられる。その一方で、その所定スイッチが暖房中にOFFになっている場合には、冷凍サイクル装置9は、暖房性能を向上させるよりも暖房効率を向上させるように運転されるのがよい。
【0183】
そこで、協調暖房モード時に回路制御部80aは、操作パネル82に設けられた上記所定スイッチがOFFになっている場合には、上記の「暖房効率を向上させる場合」であると判断する。従って、協調暖房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合に上記所定スイッチがOFFであれば、第1の回転数上昇パターンを選択する。
【0184】
これに対し、協調暖房モード時に回路制御部80aは、操作パネル82に設けられた上記所定スイッチがONになっている場合には、上記の「暖房性能を向上させる場合」であると判断する。従って、協調暖房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合に上記所定スイッチがONであれば、第2の回転数上昇パターンを選択する。このように、回路制御部80aは、協調暖房モード時に第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合には、第1、第2圧縮機101、201のうち先に回転数を上昇させる側の圧縮機を乗員の操作に応じて切り替える。
【0185】
また、図6に示される機器冷却冷房モード時には、上記したように第1圧縮機101と第2圧縮機201との両方が作動中になり、車室内空間68の冷房と電池69の冷却とが同時に行われる。
【0186】
そして、機器冷却冷房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合において電池冷却性能よりも冷房性能の向上を優先させる場合には、第1の回転数上昇パターンを選択する。そして、回路制御部80aは、その選択した第1の回転数上昇パターンで第1圧縮機101と第2圧縮機201とのそれぞれの回転数を上昇させる。例えば、その場合、回路制御部80aは、図13のタイムチャートに示すように、第2圧縮機201の回転数よりも第1圧縮機101の回転数を先に上昇させる。
【0187】
一方、機器冷却冷房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合において冷房性能よりも電池冷却性能の向上を優先させる場合には、第2の回転数上昇パターンを選択する。そして、回路制御部80aは、その選択した第2の回転数上昇パターンで第1圧縮機101と第2圧縮機201とのそれぞれの回転数を上昇させる。例えば、その場合、回路制御部80aは、図14のタイムチャートに示すように、第1圧縮機101の回転数よりも第2圧縮機201の回転数を先に上昇させる。
【0188】
なお、冷房性能は、例えば、空調用蒸発器107で第1冷媒が送風空気から吸熱する単位時間当たり熱量によって表すことができる。また、電池冷却性能は、例えば、機器熱交換器34で第1熱媒体が電池69から吸熱する単位時間当たり熱量によって表すことができる。
【0189】
ここで、機器冷却冷房モード時には、図6に示すように第1圧縮機101は専ら冷房のために作動しているので、第1圧縮機101の負荷が大きいほど冷房性能を向上させる必要性が高いと考えられる。また、第2圧縮機201は専ら電池69の冷却のために作動しているので、第2圧縮機201の負荷が大きいほど電池冷却性能を向上させる必要性が高いと考えられる。
【0190】
そこで、機器冷却冷房モード時に回路制御部80aは、例えば第1圧縮機101の負荷が第2圧縮機201の負荷に比して大きい場合には、上記の「電池冷却性能よりも冷房性能の向上を優先させる場合」であると判断する。従って、機器冷却冷房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合に、第1圧縮機101の負荷が第2圧縮機201の負荷に比して大きければ、第1の回転数上昇パターンを選択する。
【0191】
これに対し、機器冷却冷房モード時に回路制御部80aは、例えば第2圧縮機201の負荷が第1圧縮機101の負荷に比して大きい場合には、上記の「冷房性能よりも電池冷却性能の向上を優先させる場合」であると判断する。従って、機器冷却冷房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合に、第2圧縮機201の負荷が第1圧縮機101の負荷に比して大きければ、第2の回転数上昇パターンを選択する。
【0192】
なお、第1圧縮機101の負荷が大きいほど第1圧縮機101の消費電力も大きくなり、第2圧縮機201の負荷と消費電力との関係もこれと同様である。このことから、回路制御部80aは、第1圧縮機101の負荷を示す指標値として第1圧縮機101の消費電力を採用し、第2圧縮機201の負荷を示す指標値として第2圧縮機201の消費電力を採用する。そして、回路制御部80aは、第1圧縮機101の消費電力と第2圧縮機201の消費電力とを比較することで、第1圧縮機101の負荷と第2圧縮機201の負荷との大小を判定する。
【0193】
また、図10に示される第1除湿暖房モード時、または図11に示される第2除湿暖房モード時にも、上記したように第1圧縮機101と第2圧縮機201との両方が作動中になる。
【0194】
そして、回路制御部80aは、第1除湿暖房モード時または第2除湿暖房モード時に第1、第2圧縮機101、201の両方の回転数を上昇させる場合には、例えば図14に示すように第2圧縮機201の回転数を第1圧縮機101の回転数に対して先に上昇させる。すなわち、その場合、回路制御部80aは第2の回転数上昇パターンを選択し、その選択した第2の回転数上昇パターンで第1圧縮機101と第2圧縮機201とのそれぞれの回転数を上昇させる。
【0195】
上述したように、本実施形態によれば、図4図6に示すように、第1冷媒が循環する第1冷凍サイクル10は、第1圧縮機101と第1放熱器102と空調用膨張弁106と空調用蒸発器107と第1膨張弁108と第1蒸発器109とを有する。空調用蒸発器107では例えば冷房モード時に、第1冷媒の蒸発に伴って、その第1冷媒が、車室内空間68へ送風される送風空気から吸熱する。第1蒸発器109では例えば協調暖房モード時に、第1冷媒の蒸発に伴ってその第1冷媒が外気から吸熱する。また、第2冷媒が循環する第2冷凍サイクル20は、第2圧縮機201と第2放熱器202と第2膨張弁203と第2蒸発器204とを有する。第2放熱器202は例えば協調暖房モード時に、その第2放熱器202内の第2冷媒から第1熱媒体を介して送風空気へ放熱させる。更に、第1熱媒体回路30は、第1放熱器102からの放熱先を、第1外気熱交換器33を通過する外気または第2蒸発器204内の第2冷媒に切り替える。例えば、その第1放熱器102からの放熱先は、冷房モード時には、第1外気熱交換器33を通過する外気に切り替えられ、協調暖房モード時には第2蒸発器204内の第2冷媒に切り替えられる。
【0196】
従って、第1冷凍サイクル10と第2冷凍サイクル20とを役割分担させ、例えば第1冷凍サイクル10を車室内空間68の冷房を目的として構成すると共に第2冷凍サイクル20を車室内空間68の暖房を目的として構成することが可能である。
【0197】
そして、協調暖房モード時には、図15のモリエル線図に示すように、第2冷凍サイクル20の低温側における第2冷媒の温度および圧力が第1冷凍サイクル10によって引き上げられる。そのため、第1、第2冷凍サイクル10、20を協働させることで、第2放熱器202内の第2冷媒から十分な放熱量を得ながら、例えば冷凍サイクル装置9が単一の冷凍サイクルしか備えない場合に比して暖房効率の向上を図ることが可能である。これらのことから、車室内空間68の冷房時にも暖房時にも冷凍サイクル装置9の高効率化を図ることが可能である。
【0198】
なお、図15の矢印B1は、第1放熱器102の凝縮部103内の第1冷媒と第2蒸発器204内の第2冷媒との間での第1熱媒体を介した熱交換を表している。また、矢印B2は、第1放熱器102の過冷却部104内の第1冷媒と第2蒸発器204内の第2冷媒との間での第1熱媒体を介した熱交換を表している。
【0199】
また、本実施形態によれば、第1冷媒が循環する第1冷凍サイクル10は、第1圧縮機101と第1放熱器102と第1膨張弁108と第1蒸発器109とを有する。第1蒸発器109では例えば協調暖房モード時に、第1冷媒の蒸発に伴ってその第1冷媒が外気から吸熱する。また、第2冷媒が循環する第2冷凍サイクル20は、第2圧縮機201と第2放熱器202と第2膨張弁203と第2蒸発器204とを有する。また、第1熱媒体回路30は例えば協調暖房モード時に、第1放熱器102内の第1冷媒から放出される熱を第2蒸発器204内の第2冷媒へ伝える。
【0200】
従って、例えば協調暖房モード時には、上記したように、第2冷凍サイクル20の低温側における第2冷媒の温度および圧力が第1冷凍サイクル10によって引き上げられる。そのため、第1、第2冷凍サイクル10、20を協働させることで、第2放熱器202内の第2冷媒から十分な放熱量を得ながら、例えば冷凍サイクル装置9が単一の冷凍サイクルしか備えない場合に比して冷凍サイクル装置9の高効率化を図ることが可能である。
【0201】
(1)また、本実施形態によれば、回路制御部80aは、車室内空間68の暖房が実施される場合には、例えば冷凍サイクル装置9の運転モードを協調暖房モードにする。その協調暖房モードでは、回路制御部80aは、第1放熱器102と第2蒸発器204との間に第1熱媒体が循環する第1循環路71と、第2放熱器202とヒータコア35との間に第1熱媒体が循環する第2循環路72とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、回路制御部80aは、第1冷凍サイクル10では第1冷媒を第1放熱器102から第1膨張弁108と第1蒸発器109とへ流通させる。
【0202】
その一方で、回路制御部80aは、車室内空間68の冷房が実施される場合には、例えば冷凍サイクル装置9の運転モードを冷房モードにする。その冷房モードでは、回路制御部80aは、第1放熱器102と第1外気熱交換器33との間に第1熱媒体が循環する第3循環路73を第1熱媒体回路30に成立させる。そして、回路制御部80aは、第1冷凍サイクル10では第1冷媒を第1放熱器102から空調用膨張弁106と空調用蒸発器107とへ流通させる。
【0203】
従って、第1熱媒体回路30における第1熱媒体の流通経路を切る替えることで、冷凍サイクル装置9の運転モードを、車室内空間68の暖房を実施するための協調暖房モードと、車室内空間68の冷房を実施するための冷房モードとに切り替えることが可能である。また、第1冷凍サイクル10を協調暖房モードと冷房モードとの何れでも活用することができる。更に、車室内空間68の暖房時には、図15のモリエル線図を用いて上記したように、暖房効率の向上を図るために第1冷凍サイクル10を活用することができる。
【0204】
(2)また、本実施形態によれば、図6に示すように、回路制御部80aは、車室内空間68の暖房時ではないときに電池69の冷却を実施する場合には、例えば冷凍サイクル装置9の運転モードを機器冷却モードにする。その機器冷却モードでは、回路制御部80aは、第3循環路73と、その第3循環路73に対して第1熱媒体の流通が阻止され第2蒸発器204と機器熱交換器34との間に第1熱媒体が循環する第4循環路74とを第1熱媒体回路30に成立させる。このとき、詳細に言うと、第3循環路73は、第1放熱器102と第2放熱器202と第1外気熱交換器33とに第1熱媒体が順番に流れる循環路となっている。そして、回路制御部80aは、第3循環路73と第4循環路74とのそれぞれに第1熱媒体を循環させると共に、第2圧縮機201を作動させる。
【0205】
従って、第1熱媒体回路30における第1熱媒体の流通経路を切る替えることで、冷凍サイクル装置9の運転モードを、電池69を冷却する機器冷却モードに切り替えることが可能である。そして、回路制御部80aは、機器冷却モードと共に冷房モードを同時に実施することも可能である。
【0206】
(3)また、本実施形態によれば、図7図8に示すように、回路制御部80aは、電池69の暖機を実施する場合には、例えば冷凍サイクル装置9の運転モードを機器暖機暖房モードまたは機器暖機モードにする。その機器暖機暖房モードまたは機器暖機モードでは、回路制御部80aは、第1循環路71aを第1熱媒体回路30に成立させる。このとき、詳細に言うと、第1循環路71aは、第1放熱器102と機器熱交換器34と第2蒸発器204とに第1熱媒体が順番に流れる循環路となっている。そして、回路制御部80aは、第1循環路71aに第1熱媒体を循環させると共に、第1圧縮機101を作動させ、第1冷凍サイクル10では第1冷媒を第1放熱器102から第1膨張弁108と第1蒸発器109とへ流通させる。
【0207】
従って、第1熱媒体回路30における第1熱媒体の流通経路を切る替えることで、冷凍サイクル装置9の運転モードを、電池69を暖機する機器暖機暖房モードまたは機器暖機モードに切り替えることが可能である。そして、回路制御部80aは、車室内空間68の暖房中に電池69を暖機することも、車室内空間68の暖房時ではないときに電池69を暖機することも可能である。
【0208】
(4)また、本実施形態によれば、図7に示すように、回路制御部80aは、車室内空間68の暖房時に電池69の暖機を実施する場合には、例えば冷凍サイクル装置9の運転モードを機器暖機暖房モードにする。その機器暖機暖房モードでは、回路制御部80aは、第1循環路71aと第2循環路72とを第1熱媒体回路30に成立させ、その第1循環路71aと第2循環路72とのそれぞれに第1熱媒体を循環させる。そして、回路制御部80aは、第1圧縮機101と第2圧縮機201とを作動させ、第1冷凍サイクル10では第1冷媒を第1放熱器102から第1膨張弁108と第1蒸発器109とへ流通させる。
【0209】
従って、第1熱媒体回路30における第1熱媒体の流通経路を切る替えることで、冷凍サイクル装置9の運転モードを、車室内空間68の暖房中に電池69を暖機する機器暖機暖房モードに切り替えることが可能である。
【0210】
(5)また、本実施形態によれば、図9に示すように、回路制御部80aは、車室内空間68の暖房時に電池69の冷却を実施する場合には、例えば冷凍サイクル装置9の運転モードを機器冷却暖房モードにする。その機器冷却暖房モードでは、回路制御部80aは、第2循環路72と第4循環路74とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、回路制御部80aは、その第2循環路72と第4循環路74とのそれぞれに第1熱媒体を循環させると共に、第2圧縮機201を作動させる。
【0211】
従って、第1熱媒体回路30における第1熱媒体の流通経路を切る替えることで、冷凍サイクル装置9の運転モードを、車室内空間68の暖房時に電池69を冷却する機器冷却暖房モードに切り替えることが可能である。
【0212】
(6)また、本実施形態によれば、図5に示すように、第1熱媒体回路30は、第2循環路72に対して第1熱媒体の流通が阻止され第2蒸発器204と第1外気熱交換器33との間に第1熱媒体が循環する外気吸熱循環路75が成立可能な構成になっている。回路制御部80aは、車室内空間68の暖房が実施される場合には、例えば冷凍サイクル装置9の運転モードを協調暖房モードまたは単独暖房モードにする。その単独暖房モードでは、回路制御部80aは、第2循環路72と外気吸熱循環路75とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、回路制御部80aは、第2循環路72と外気吸熱循環路75とのそれぞれに第1熱媒体を循環させると共に、第2圧縮機201を作動させる。
【0213】
従って、車室内空間68の暖房が実施される場合に、回路制御部80aは、冷凍サイクル装置9の運転モードとして、協調暖房モードだけでなく、その協調暖房モードに替えて単独暖房モードを選択することも可能である。そして、その単独暖房モードでは、第1圧縮機101を作動させずに第2圧縮機201の作動によって送風空気を温めることが可能である。
【0214】
(7)また、本実施形態によれば、図2に示すように、車室内空間68の除湿暖房が実施される場合、室内空調ユニット60のケーシング61内において、ヒータコア35は、空調用蒸発器107から流出した送風空気を加熱するように配置される。また、図10図11に示すように、回路制御部80aは、車室内空間68の除湿暖房が実施される場合には、例えば冷凍サイクル装置9の運転モードを第1除湿暖房モードまたは第2除湿暖房モードにする。その第1除湿暖房モードまたは第2除湿暖房モードでは、回路制御部80aは、第1循環路71と第2循環路72とを第1熱媒体回路30に成立させる。そして、回路制御部80aは、第1循環路71と第2循環路72とのそれぞれに第1熱媒体を循環させ、第1圧縮機101と第2圧縮機201とを作動させる。それと共に、回路制御部80aは、第1冷凍サイクル10では第1冷媒を第1放熱器102から空調用膨張弁106と空調用蒸発器107とへ流通させる。
【0215】
従って、第1熱媒体回路30における第1熱媒体の流通経路を切る替えることで、冷凍サイクル装置9の運転モードを、車室内空間68の除湿暖房を実施するための第1除湿暖房モードまたは第2除湿暖房モードに切り替えることが可能である。そして、除湿暖房中における第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとの切替えによって、外気からの吸熱の有無を切り替えることが可能である。
【0216】
(8)また、本実施形態によれば、図12図14に示すように、回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の両方の作動中に第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合には、次のように第1、第2圧縮機101、201を制御する。すなわち、その場合、回路制御部80aは、第1圧縮機101の回転数と第2圧縮機201の回転数との一方を他方に対して先に上昇させる。
【0217】
このような回転数制御により、第1、第2圧縮機101、201の作動に起因して生じうる騒音または振動の悪化、例えば第1圧縮機101の回転数と第2圧縮機201の回転数とが近いことに起因して生じうる騒音または振動の悪化を抑制することが可能である。
【0218】
ここで、図15に示すように、第1および第2冷媒の飽和液線SLと飽和蒸気線SGとの間のエンタルピ差は、低圧側ほど拡大する。そして、例えば協調暖房モード時のように第1、第2冷凍サイクル10、20が共に運転されている場合、外気から吸熱する側の第1冷凍サイクル10は、第2冷凍サイクル20に対し低圧側で運転される。そのため、第1、第2冷凍サイクル10、20の放熱側同士で比較した場合と吸熱側同士で比較した場合との何れでも、第1冷凍サイクル10のエンタルピ差の方が第2冷凍サイクル20のエンタルピ差よりも大きくなる。このことから、冷媒が冷凍サイクルの吸熱側から放熱側へ熱を運ぶ際の効率を第1冷凍サイクル10と第2冷凍サイクル20との間で比較した場合、第1冷凍サイクル10における効率の方が第2冷凍サイクル20よりも良い。
【0219】
従って、例えば協調暖房モード時には、第1圧縮機101の回転数を第2圧縮機201の回転数に対し先に上昇させれば、逆に第2圧縮機201の回転数を第1圧縮機101の回転数に対し先に上昇させる場合に比して暖房効率を向上させることができる。
【0220】
その一方で、協調暖房モード時には、第1放熱器102内の第1冷媒の温度上昇よりも第2放熱器202内の第2冷媒の温度上昇の方が、ヒータコア35に流通する第1熱媒体の温度に迅速に反映される。従って、協調暖房モード時には、第2圧縮機201の回転数を第1圧縮機101の回転数に対し先に上昇させれば、逆に第1圧縮機101の回転数を第2圧縮機201の回転数に対し先に上昇させる場合に比して暖房性能を向上させることができる。
【0221】
(9)また、本実施形態によれば、図12図14に示すように、回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の両方の作動中に第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合には、次のように第1、第2圧縮機101、201を制御する。すなわち、その場合、回路制御部80aは、第1圧縮機101の回転数を第2圧縮機201の回転数に対して先に上昇させる第1の回転数上昇パターンと、第2圧縮機201の回転数を第1圧縮機101の回転数に対して先に上昇させる第2の回転数上昇パターンとの何れかを選択する。そして、回路制御部80aは、その選択した回転数上昇パターンで第1圧縮機101と第2圧縮機201とのそれぞれの回転数を上昇させる。
【0222】
従って、第1圧縮機101および第2圧縮機201の作動に起因して生じうる騒音または振動の悪化を抑制しつつ、第1、第2冷凍サイクル10、20の効率を状況に応じて適切に向上させることが可能である。
【0223】
(10)また、本実施形態によれば、機器冷却冷房モード時に回路制御部80aは、第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合に、第1圧縮機101の負荷が第2圧縮機201の負荷に比して大きければ第1の回転数上昇パターンを選択する。その一方で、回路制御部80aは、第2圧縮機201の負荷が第1圧縮機101の負荷に比して大きければ第2の回転数上昇パターンを選択する。
【0224】
そして、回路制御部80aは、第1の回転数上昇パターンを選択した場合には、第1圧縮機101の回転数を第2圧縮機201の回転数に対して先に上昇させる。逆に、回路制御部80aは、第2の回転数上昇パターンを選択した場合には、第2圧縮機201の回転数を第1圧縮機101の回転数に対して先に上昇させる。
【0225】
従って、第1圧縮機101および第2圧縮機201の作動に起因して生じうる騒音または振動の悪化を抑制しつつ、冷房性能の向上と電池冷却性能の向上とのうち優先すべき側の性能向上に迅速に対応することが可能である。
【0226】
(11)また、本実施形態によれば、回路制御部80aは、車室内空間68の除湿暖房の実施中に第1、第2圧縮機101、201の両方の回転数を上昇させる場合には、第2圧縮機201の回転数を第1圧縮機101の回転数に対して先に上昇させる。
【0227】
従って、例えば逆に第1圧縮機101の回転数を第2圧縮機201の回転数に対して先に上昇させる場合と比較して、送風空気の温度を迅速に上昇させることが可能である。そのため、乗員の快適性を向上させることが可能である。そして、第1圧縮機101および第2圧縮機201の作動に起因して生じうる騒音または振動の悪化を抑制することができる。
【0228】
(12)また、本実施形態によれば、図4図5に示すように、協調暖房モード時および単独暖房モード時には、第2放熱器202は、その第2放熱器202内の第2冷媒から第2循環路72の第1熱媒体を介して、車室内空間68へ送風される送風空気へ放熱させる。従って、その第2放熱器202を有する第2冷凍サイクル20を車室内空間68の暖房に用いることができる。
【0229】
(13)また、本実施形態によれば、図1に示すように、第1放熱器102は、凝縮部103と過冷却部104とを有している。そして、その凝縮部103は、第1圧縮機101から吐出された第1冷媒から放熱させることでその第1冷媒を凝縮させ、過冷却部104は、凝縮部103で凝縮した第1冷媒から更に放熱させることでその第1冷媒を過冷却する。
【0230】
従って、第1放熱器102が過冷却部104を有さない構成と比較して、第1冷凍サイクル10からの放熱量が増し、これにより、例えば協調暖房モード時に第2冷凍サイクル20の低圧側を底上げすることができる。その結果、暖房効率および暖房性能の向上を図ることが可能である。
【0231】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
【0232】
本実施形態では、第1圧縮機101の圧縮機容量の方が第2圧縮機201の圧縮機容量よりも大きい。そのため、例えば協調暖房モード時または機器冷却冷房モード時など、第1、第2圧縮機101、201の両方が作動中である場合には、第1圧縮機101の吐出流量の方が第2圧縮機201の吐出流量よりも大きい。
【0233】
従って、例えば協調暖房モード時における暖房の最大性能よりも暖房効率を重視した冷凍サイクル装置9を構成することができる。このことは、図15を用いて上述した、第1圧縮機101の回転数を第2圧縮機201の回転数に対し先に上昇させることが暖房効率の向上につながることと同様の理由によるものである。
【0234】
ここで、図4図6に示すように、第1冷凍サイクル10の吸熱または放熱する能力の方が第2冷凍サイクル20の吸熱または放熱する能力よりも冷房性能に影響しやすい。その一方で、第2冷凍サイクル20の吸熱または放熱する能力の方が第1冷凍サイクル10の吸熱または放熱する能力よりも暖房性能に影響しやすい。そのため、本実施形態の第1、第2圧縮機101、201の圧縮機容量および吐出流量を上記のようにすることで、冷凍サイクル装置9を、暖房の最大性能よりも冷房の最大性能を重視したものにすることもできる。
【0235】
なお、本実施形態の第1、第2圧縮機101、201として可変容量型が採用されている場合には、第1圧縮機101の最大の圧縮機容量の方が第2圧縮機201の最大の圧縮機容量よりも大きい。
【0236】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0237】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0238】
本実施形態では、第2圧縮機201の圧縮機容量の方が第1圧縮機101の圧縮機容量よりも大きい。そのため、例えば協調暖房モード時または機器冷却冷房モード時など、第1、第2圧縮機101、201の両方が作動中である場合には、第2圧縮機201の吐出流量の方が第1圧縮機101の吐出流量よりも大きい。
【0239】
従って、例えば協調暖房モード時における暖房効率よりも暖房の最大性能を重視した冷凍サイクル装置9を構成することができる。このことは、図15を用いて上述した、第2圧縮機201の回転数を第1圧縮機101の回転数に対し先に上昇させることが暖房性能の向上につながることと同様の理由によるものである。
【0240】
なお、本実施形態の第1、第2圧縮機101、201として可変容量型が採用されている場合には、第2圧縮機201の最大の圧縮機容量の方が第1圧縮機101の最大の圧縮機容量よりも大きい。
【0241】
また、本実施形態と前述の第2実施形態とから、第1圧縮機101の圧縮機容量と第2圧縮機201の圧縮機容量とに差をつけることで、幅広いニーズに応えることが可能であると言える。
【0242】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0243】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、図1に示す空調用膨張弁106と第1膨張弁108はそれぞれ全閉可能になっているが、これは一例である。例えば、空調用膨張弁106は全閉可能ではなく、開閉弁がその空調用膨張弁106の冷媒入口106aに設けられていてもよい。これと同様に、第1膨張弁108は全閉可能ではなく、開閉弁がその第1膨張弁108の冷媒入口108aに設けられていてもよい。この場合、その2つの開閉弁が、第1冷媒の流路を切り替える冷媒流路切替部として機能する。
【0244】
(2)上述の各実施形態では、冷凍サイクル装置9は、その運転モードとして、協調暖房モード、単独暖房モード、冷房モード、機器冷却モード、機器暖機暖房モード、機器暖機モード、機器冷却暖房モード、第1除湿暖房モード、および第2除湿暖房モードを実行可能に構成されている。しかしながら、これは一例であり、それらの運転モードの全てが必須というわけではない。また、冷凍サイクル装置9は、それらの運転モードとは別の運転モードを実行可能に構成されていても差し支えない。
【0245】
(3)上述の各実施形態では、第1、第2圧縮機101、201として、電動圧縮機ではなく、例えば、内燃機関により駆動されるものが採用されていてもよい。また、第1放熱器102は、過冷却部104が省略され、凝縮部103だけを備える構成になっていてもよい。また、各膨張弁106、108、203は、電気式膨張弁ではなく、例えば、機械式膨張弁や固定絞りで構成されていてもよい。また、第2熱媒体回路50が設けられておらず、第1蒸発器109は、その第1蒸発器109内の第1冷媒と外気とを第2熱媒体回路50の第2熱媒体を介さずに熱交換させる熱交換器であっても差し支えない。
【0246】
(4)上述の各実施形態では、第2冷凍サイクル20の第2冷媒として、第1冷凍サイクル10の第1冷媒と同じ冷媒が採用されているが、第1冷媒とは異なる冷媒が採用されていても差し支えない。
【0247】
(5)上述の各実施形態では、第1、第2熱媒体は例えば液体であるが、これは一例である。例えば、第1、第2熱媒体の一方または両方が気体であっても差し支えない。更に言えば、第1、第2熱媒体回路30、50は、流体である第1、第2熱媒体によって熱を伝えるものであるが、流体ではなく金属など熱伝導性の高い固体を利用して熱を伝えるように構成されていても差し支えない。
【0248】
(6)上述の各実施形態では、図1に示すように、冷凍サイクル装置9によって冷却または暖機される車載の対象機器は電池69であるが、その車載の対象機器は電池69に限らない。その車載の対象機器としては、電池69以外に例えば、電動モータ、電動モータに供給される電力の周波数を変換するインバータ、または電池69に充電するための充電器等が想定される。
【0249】
(7)上述の各実施形態では、空調装置8は、例えば、電気自動車またはハイブリッド車両に搭載されるが、これは一例である。例えば、空調装置8は、車両のような移動体ではなく、定置型の装置やシステムに用いられても差し支えない。
【0250】
(8)上述の実施形態では、図3に示すように、回路制御部80aは、空調装置8の各機器を制御する制御装置80に含まれるが、これは一例である。例えば、制御装置80のうち回路制御部80a以外の制御部と、回路制御部80aとが別々の制御装置として構成されていても差し支えない。
【0251】
(9)上述の実施形態では、回路制御部80aは、協調暖房モード時に第1、第2圧縮機101、201の回転数を両方とも上昇させる場合には、第1、第2圧縮機101、201のうち先に回転数を上昇させる側の圧縮機を乗員の操作に応じて切り替える。しかしながら、これは一例である。例えば、回路制御部80aは、複数のセンサから制御装置80に入力される検出信号などに基づいて、第1、第2圧縮機101、201のうち先に回転数を上昇させる側の圧縮機を、乗員の操作によらず自動的に切り替えても差し支えない。
【0252】
(10)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0253】
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0254】
また、上述の各実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば、外気の温度など)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【0255】
また、本開示に記載の制御装置80及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置80及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置80及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0256】
10 第1冷凍サイクル
101 第1圧縮機
102 第1放熱器
107 空調用蒸発器
109 第1蒸発器
20 第2冷凍サイクル
201 第2圧縮機
202 第2放熱器
204 第2蒸発器
30 第1熱媒体回路(伝熱部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15