(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】両面粘着シート、積層体及び表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20250409BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20250409BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20250409BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250409BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20250409BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J4/02
C09J133/00
B32B27/00 M
B32B15/01 H
H01B5/14 A
(21)【出願番号】P 2023084165
(22)【出願日】2023-05-22
【審査請求日】2024-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
(72)【発明者】
【氏名】安田 直人
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052213(JP,A)
【文献】特開2014-201709(JP,A)
【文献】特開2014-133812(JP,A)
【文献】国際公開第2021/100270(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/189284(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-201/10
B32B1/00-43/00
H01B5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル共重合体(A)と、
炭素数が10~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)と、
炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)と、
水素引抜型重合開始剤を除く光重合開始剤(C)と、を含む粘着剤組成物を光硬化させてなる両面粘着シートであって、
前記(メタ)アクリル共重合体(A)は、(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位と、(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位と、(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する単位とを含有し、
前記(メタ)アクリル共重合体(A)100質量部に対する、前記単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)の含有量が0.1~10質量部であり、前記二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)の含有量が0.05~5質量部であり、
以下の測定方法で測定し算出した前記両面粘着シートの酸素透過率(P
A)が2000ml/(m
2・1day・1atm)以上である、両面粘着シート;
(測定方法)
両面粘着シートの厚みを200μmとし、その両面に厚みが20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をそれぞれ貼合し、「CPP(20μm)/両面シート(粘着剤層200μm)/CPP(20μm)」の層構成の積層シートを作製し、23℃、相対湿度50%、1atmの環境下において、該積層シートの酸素透過量を酸素透過率測定装置を用いて測定し、1m
2における24時間に透過する酸素量に換算することで該積層シートの酸素透過率(P
L)を算出する;同様にして20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)のみを2枚重ねて40μmの厚みにしたCPP単体の酸素透過率(P
P)を算出し以下の式(1)から導かれた式(2)より、両面粘着シートの酸素透過率(P
A)を算出する。
1/P
L=1/P
A+1/P
P ・・・ 式(1)
P
A=(P
P×P
L)/(P
P-P
L) ・・・ 式(2)
【請求項2】
全光線透過率が80%以上である、請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
ゲル分率が75質量%以下である、請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の両面粘着シートと、銅メッシュ系透明導電フィルムとを備える、積層体。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の両面粘着シートと、銅メッシュ系透明導電フィルムとを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シート、積層体及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの入力装置が広く用いられている。タッチパネルの方式としては、抵抗膜型、静電容量型などがあるが、主として静電容量型が採用されている。これらのタッチパネルを搭載した表示装置の製造等においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な粘着シートが使用されており、例えば、表示装置と入力装置との貼合に透明な粘着シートが使用されている。
【0003】
従来、タッチパネルの透明導電フィルムには、ITO(酸化インジウムスズ)などの金属酸化物が広く用いられている。ITOは透明かつ導電性のある材料であるが、導電性は銅などの金属に劣ることが知られている。例えば、大画面のタッチパネルセンサーの透明導電フィルムにITOを用いると検出精度が保てなくなる場合があり課題となっていた。このため、タッチパネルの透明導電フィルムに銅などの金属メッシュを用いることが検討されている。
【0004】
しかしながら、銅などの金属メッシュは金属光沢を有するため、外光を反射することで銅メッシュ(銅配線)が可視化され、透明導電フィルムの透明性を低下させたり、タッチパネルの視認性や意匠性を低下させてしまう。このため、銅メッシュの上に黒化膜を重ねることで反射を抑制することが検討されている。例えば、特許文献1には、光透過性を有する基材と、光透過性を有する下地層と、下地層のうち、基材に接する面とは反対側の面に位置する第1の酸窒化銅層と、第1の酸窒化銅層のうち、下地層に接する面とは反対側の面に位置する銅層と、銅層のうち、第1の酸窒化銅層に接する面とは反対側の面に位置する第2の酸窒化銅層と、を備えるタッチパネル用導電性積層体が開示されている。また、特許文献2には、フィルム基材の一方の主面上に金属層と金属黒化層とをこの順に有する第一の片面製膜材と、フィルム基材の一方の主面上に金属黒化層と金属層とをこの順に有する第二の片面製膜材を、粘着剤もしくは接着剤を介してフィルム基材同士を貼り合わせて両面製膜材を準備する工程と、両面露光によるフォトリソ工法により、両面製膜材の金属層を同時にエッチングして金属配線パターンを一括形成する工程と、粘着剤もしくは接着剤を介して、金属黒化層側にカバーガラスを貼り合わせ、金属層側にフィルム基材を貼り合わせる工程と、を有することを特徴とするタッチパネルセンサーの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/136117号
【文献】特開2015-125563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、黒化膜を重ねた銅メッシュを有する透明導電フィルムに、従来の粘着シートを貼合し、例えば高温環境下に置いた場合、黒化膜の色相が変化し銅メッシュが可視化されてしまうという問題が生じることが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、銅メッシュ系透明導電フィルムに粘着シートを貼合した場合であっても、銅メッシュの可視化を抑制することができる粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の具体的な態様の例を以下に示す。
[1] (メタ)アクリル共重合体(A)と、
炭素数が10~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)と、
炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)と、
水素引抜型重合開始剤を除く光重合開始剤(C)と、を含む粘着剤組成物を光硬化させてなる両面粘着シートであって、
以下の測定方法で測定し算出した両面粘着シートの酸素透過率(PA)が2000ml/(m2・1day・1atm)以上である、両面粘着シート;
(測定方法)
両面粘着シートの厚みを200μmとし、その両面に厚みが20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をそれぞれ貼合し、「CPP(20μm)/両面シート(粘着剤層200μm)/CPP(20μm)」の層構成の積層シートを作製し、23℃、相対湿度50%、1atmの環境下において、該積層シートの酸素透過量を酸素透過率測定装置を用いて測定し、1m2における24時間に透過する酸素量に換算することで該積層シートの酸素透過率(PL)を算出する;同様にして20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)のみを2枚重ねて40μmの厚みにしたCPP単体の酸素透過率(PP)を算出し以下の式(1)から導かれた式(2)より、両面粘着シートの酸素透過率(PA)を算出する。
1/PL=1/PA+1/PP ・・・ 式(1)
PA=(PP×PL)/(PP-PL) ・・・ 式(2)
[2] (メタ)アクリル共重合体は、(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位と、(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位と、(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する単位とを含有する、[1]に記載の両面粘着シート。
[3] (メタ)アクリル共重合体(A)100質量部に対する、単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)の含有量が0.1~10質量部であり、二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)の含有量が0.05~5質量部である、[1]又は[2]に記載の両面粘着シート。
[4] 全光線透過率が80%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の両面粘着シート。
[5] ゲル分率が75質量%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の両面粘着シート。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の両面粘着シートと、銅メッシュ系透明導電フィルムとを備える、積層体。
[7] [1]~[5]のいずれかに記載の両面粘着シートと、銅メッシュ系透明導電フィルムとを備える、表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、銅メッシュ系透明導電フィルムに粘着シートを貼合した場合であっても、銅メッシュの可視化を抑制することができる。これにより、視認性や意匠性に優れた表示装置を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の両面粘着シートの構成の断面の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0012】
(両面粘着シート)
本発明は、(メタ)アクリル共重合体(A)と、炭素数が10~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)と、炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)と、水素引抜型重合開始剤を除く光重合開始剤(C)と、を含む粘着剤組成物を光硬化させてなる両面粘着シートに関する。そして、以下の測定方法で測定し算出した両面粘着シートの酸素透過率は2000ml/(m2・1day・1atm)以上である。
(測定方法)
両面粘着シートの厚みを200μmとし、その両面に厚みが20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)をそれぞれ貼合し、「CPP(20μm)/両面粘着シート(粘着剤層200μm)/CPP(20μm)」の層構成の積層シートを作製し、23℃、相対湿度50%、1atmの環境下において、該積層シートの酸素透過量を酸素透過率測定装置を用いて測定し、1m2における24時間で透過する酸素量に換算することで該積層シートの酸素透過率(PL)を算出する。同様にして20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)のみを2枚重ねて40μmの厚みにしたCPP単体の酸素透過率(PP)を算出し、以下の式(1)から導かれた式(2)より、両面粘着シートの酸素透過率(PA)を算出する。
1/PL=1/PA+1/PP ・・・ 式(1)
PA=(PP×PL)/(PP-PL) ・・・ 式(2)
【0013】
「無延伸ポリプロピレン(厚み20μm)/粘着剤層(厚み200μm)/無延伸ポリプロピレン(厚み20μm)」の層構成の積層シートを作製する際には、厚みが200μmの両面粘着シートの両面に20μmの無延伸ポリプロピレン(レンソールGP-32 北越化成社製)をハンドローラーを用いて貼合し、積層シートを作製する。そして、この積層シートの酸素透過率(PL)を酸素透過率測定装置を用いて測定する。次いで20μmの無延伸ポリプロピレン(レンソールGP-32 北越化成社製)を2枚重ねにして40μmの厚みにした無延伸ポリプロピレンフィルムの酸素透過率(PP)を、酸素透過率測定装置を用いて測定する。このようにして得られた積層シートの酸素透過率(PL)と無延伸ポリプロピレンフィルムの酸素透過率(PP)を用いて上記式(2)より、両面粘着シートの酸素透過率(PA)を算出することが出来る。両面粘着シートの酸素透過率(PA)は、シート面積1m2、圧力1atm(=1気圧)のもとで、24時間(1日)当たりに両面粘着シート(粘着剤層)を透過する酸素の量を表している。
酸素透過率測定装置を用いて酸素透過率を測定する際には、装置仕様の測定面積にて、23℃、相対湿度50%、1atmの環境下で酸素透過量を測定する。そして、測定された酸素量から、1m2、24時間における酸素透過量に換算して酸素透過率を算出する。酸素透過率の測定には、ASTM F2622に準拠した酸素透過率測定装置を用いることが好ましく、例えば、酸素透過率計測定装置(OX-TRAN2/12 MOCON社製)を用いることができ、この装置(OX-TRAN2/12)を用いた場合は測定面積(テストセル面積)50cm2で測定することができる。
【0014】
上述した測定方法で測定した両面粘着シートの酸素透過率(PA)は2000ml/(m2・1day・1atm)以上であればよく、2050ml/(m2・1day・1atm)以上であることがより好ましく、2100ml/(m2・1day・1atm)以上であることがさらに好ましく、2150ml/(m2・1day・1atm)以上であることが特に好ましい。また、酸素透過率の上限値は特に限定されるものではないが、30000ml/(m2・1day・1atm)以下であることが好ましい。本発明においては、両面粘着シートの酸素透過率(PA)を敢えて所定値以上に高めることにより、銅メッシュ上に積層された黒化膜を構成する成分が還元されることを抑制することができ、これにより、黒化膜の変色を抑制することができるものと推定される。その結果、銅メッシュの可視化を抑制することができる。なお、本実施形態においては、粘着剤組成物を構成する各成分を適切に選択することにより、上記酸素透過率(PA)が達成される。
【0015】
本実施形態では、両面粘着シートの酸素透過率(PA)を上記範囲とすることにより、例えば、銅メッシュの黒化膜の近傍に存在する酸素量を一定以上にすることができる。この場合、黒化膜中の酸素が引き抜かれ還元されることを抑制でき、変色が抑制されるものと推定される。
【0016】
本実施形態の両面粘着シートは、粘着剤層のみから構成されるものであることが好ましいが、支持体を有するものであってもよい。この場合、支持体としては、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロース等のプラスチックフィルム;反射防止フィルム、電磁波遮蔽フィルム等の光学フィルムなどが挙げられる。両面粘着シートが支持体を有する場合、後述するゲル分率は粘着剤層のゲル分率を示すものとする。両面粘着シートが、粘着剤層からなる粘着シートである場合、両面粘着シートは、複数の粘着剤層からなるシートであってもよいが、単層の粘着剤層からなる粘着シートであることが好ましい。
【0017】
本実施形態の両面粘着シートの貼合用途は特に限定されるものではないが、銅メッシュの可視化を抑制することができるため、銅メッシュ系透明導電フィルム貼合用であることが好ましい。そして、当該銅メッシュは黒化膜を有するものであることが好ましい。黒化膜は、黒化処理により形成される膜であり、黒化処理では、銅メッシュ上に反射防止用の黒い皮膜を形成する。黒化膜としては、例えば、銅酸化物(CuO)や銅酸窒化物(CuNO)を含む膜などが挙げられる。なお、黒化膜は、銅メッシュの反射率を抑制できる膜であれば特に限定されることはなく公知の黒化膜を用いることができ、例えば、黒色顔料を含む膜を用いることもできる。黒化処理では、銅メッシュ上に銅酸化物膜や銅酸窒化物膜をスパッタリング法やその他公知の方法で形成することができる。また、黒化処理では黒色顔料の電着塗装を施してもよい。
【0018】
中でも黒化膜は銅酸化物膜や銅酸窒化物膜であることが好ましい。この場合、本実施形態の両面粘着シートは、銅酸化物膜付き銅メッシュ系透明導電フィルム貼合用、もしくは、銅酸窒化物膜付き銅メッシュ系透明導電フィルム貼合用であることが好ましい。
【0019】
なお、本実施形態の両面粘着シートは、一般的な表示装置や光学装置を構成する部材として使用することもできる。
【0020】
本実施形態の両面粘着シートの厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。通常、両面粘着シートの厚みは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、40μm以上であることが特に好ましい。また、両面粘着シートの厚みは、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることがさらに好ましく、500μm以下であることが一層好ましく、400μm以下であることが特に好ましい。両面粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの酸素透過率を高めやすくなる。また、両面粘着シートの厚みを上記範囲内とすることにより、段差追従性を十分に確保することができ、さらに耐久性を高めることができる。
【0021】
両面粘着シートの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、両面粘着シートの全光線透過率は、100%であってもよい。両面粘着シートの全光線透過率を上記範囲内とすることにより、透明性を高めることができ、表示装置といった光学用途に好ましく用いることができる。なお、全光線透過率は、23℃、相対湿度50%の環境において、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定した値である。
【0022】
両面粘着シートのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。両面粘着シートのヘイズ値の下限値は特に限定されるものではなく、0%であってもよい。両面粘着シートのヘイズを上記範囲内とすることにより、透明性を高めることができ、表示装置といった光学用途に好ましく用いることができる。なお、ヘイズは、23℃、相対湿度50%の環境において、JIS K 7136:2000に準拠して測定した値である。
【0023】
両面粘着シートのゲル分率は、0質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。また、両面粘着シートのゲル分率は、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。両面粘着シートのゲル分率を上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの酸素透過率を所定の数値範囲にコントロールしやすくなる。また、両面粘着シートのゲル分率を上記範囲内とすることにより、段差追従性を高めることができる。
【0024】
両面粘着シートの対ガラス粘着力は2N/10mm以上が好ましく、5N/10mm以上がより好ましい。また両面粘着シートの対ガラス粘着力は25N/10mm以下が好ましく、20N/10mm以下がより好ましい。両面粘着シートの対ガラス粘着力を上記範囲以上にすることで意図せぬ剥がれが生じたるすることがなく、また上記範囲以下にすることで誤って貼合した時やリサイクル時にパネルを解体するときに容易に剥がすことが出来る。なお、上記記載の両面粘着シートの対ガラス粘着力は100μmの厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを両面粘着シートの片面に裏打ちし被着体としてソーダガラスを用いてJIS Z 0237に規定される粘着力の測定方法に準じて測定した対ガラス粘着力の値である。
【0025】
(粘着剤組成物)
本実施形態の両面粘着シートは、(メタ)アクリル共重合体(A)、炭素数が10~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)、炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)、及び、水素引抜型重合開始剤を除く光重合開始剤(C)を含む粘着剤組成物から形成される。
【0026】
((メタ)アクリル共重合体(A))
(メタ)アクリル共重合体(A)は、表示装置の視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましく、(メタ)アクリレートに由来する単位を有することが好ましい。なお、本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。
【0027】
(メタ)アクリル共重合体(A)は、(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位と、(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位と、(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する単位とを含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル共重合体の全質量に対する(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位の含有量は15~79.5質量%であることが好ましく、(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位の含有量は20~79.5質量%であることが好ましく、(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は0.5~15質量%であることが好ましい。本実施形態では、特定の構成単位を有する(メタ)アクリル共重合体を用いることにより、両面粘着シートの酸素透過率を所定値以上とすることが容易となる。これにより、透明導電フィルムが有する銅メッシュ上の黒化膜が還元されにくくなり、変色することを効果的に抑制することができる。また、本実施形態においては、特定の構成単位を有する(メタ)アクリル共重合体を用いることにより粘着剤の凝集力を高め、粘着特性や耐久性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0028】
-(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位-
(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、secブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tertブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、(メタ)アクリル共重合体は、炭素数が1~10の分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位を有することが好ましく、炭素数が4~10の分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位を有することがより好ましい。このような分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位としては、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)に由来する単位を有することが好ましい。また、本実施形態においては、(メタ)アクリル共重合体は、炭素数が1~10の分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位と炭素数が1~10の直鎖状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位を含むことも好ましく、炭素数が4~10の分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位と炭素数が1~5の直鎖状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位を含むことがより好ましい。
【0029】
(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位の含有量は、(メタ)アクリル共重合体の全質量に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位の含有量は、(メタ)アクリル共重合体の全質量に対して、79.5質量%であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、優れた粘着力を発揮することができ、かつ酸素透過率を所定値以上にすることができ銅メッシュの可視化を抑制し得る粘着シートを得られやすくなる。
【0030】
-(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位-
(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、secブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tertブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、(メタ)アクリル共重合体は、炭素数が1~10の分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位を有することが好ましく、炭素数が4~10の分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位を有することがより好ましい。このような分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位としては、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)に由来する単位を有することが好ましい。また、本実施形態においては、(メタ)アクリル共重合体は、炭素数が1~10の分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位と炭素数が1~10の直鎖状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位を含むことも好ましく、炭素数が4~10の分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位と炭素数が1~5の直鎖状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位を含むことがより好ましい。
【0031】
なお、(a1)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートと(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートが有するアルキル基は同種のものであることが好ましい。
【0032】
(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位の含有量は、(メタ)アクリル共重合体の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位の含有量は、(メタ)アクリル共重合体の全質量に対して、79.5質量%であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。(a2)炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するメタクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、優れた粘着力を発揮することができ、かつ酸素透過率を所定値以上にすることができ銅メッシュの可視化を抑制し得る粘着シートを得られやすくなる。
【0033】
-(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する単位-
(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種は好ましく用いられる。
【0034】
(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、(メタ)アクリル共重合体の全質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、(メタ)アクリル共重合体の全質量に対して、15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましい。(a3)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、優れた粘着力を発揮することができ、かつ粘着シートの酸素透過率やゲル分率をコントロールしやすくなる。
【0035】
-他の単量体単位-
(メタ)アクリル共重合体は、上記以外の他の単量体単位を有してもよい。他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の環状基を有する(メタ)アクリル酸エステル単位や、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。(メタ)アクリル共重合体における他の単量体単位の含有量は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0036】
-(メタ)アクリル共重合体の物性-
(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、300万以下であることが好ましく、200万以下であることがより好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの酸素透過率を所定値以上にコントロールしやすくなり、かつ十分な段差追従性を確保することができる。なお、(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は粘着剤組成物中に含まれる(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。
【0037】
(単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1))
単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)は、分子内に反応性二重結合を1つ有するモノマーであり、炭素数が10~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有するモノマーである。炭素数が10~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。中でも、単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)は、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)の市販品の例としては、大阪有機化学工業社製のIBXA、大阪有機化学工業社製のISTA、大阪有機化学のLA等が挙げられる。
【0038】
本実施形態では、単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)として、炭素数が所定範囲のモノマーを用いることにより、両面粘着シートにおける重合体の架橋密度を制御することができ、緻密ではない網目構造を形成することができる。これにより、両面粘着シートの酸素透過率を所定範囲とすることができ、その結果、銅メッシュの黒化膜の変色を抑制することができ、銅メッシュの可視化を抑制することができる。
【0039】
粘着剤組成物中における、(メタ)アクリル共重合体(A)100質量部に対する、単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)の含有量は、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。また、単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)の含有量は、10質量部以下であることが好ましい。単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)の含有量を上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの酸素透過率を所定範囲とすることができ、その結果、銅メッシュの黒化膜の変色を抑制することができ、銅メッシュの可視化を抑制することができる。
【0040】
(二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2))
二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)は反応性官能基を2つ有するものである。そして、2つの反応性官能基は、炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で連結されている。2つの反応性官能基は炭素数が6~12の直鎖ジオールに由来する連結基で連結されていることがより好ましく、炭素数が6~10の直鎖ジオールに由来する連結基で連結されていることがさらに好ましい。
【0041】
二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)は以下の構造式で示されるものであることが好ましい。
【化1】
【0042】
上記式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、水素原子であることが好ましい。Rは炭素数が4~12の直鎖状のアルキレン基であり、Rは炭素数が6~12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が6~10のアルキレン基であることがより好ましい。
【0043】
炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート等が挙げられる。中でも、二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)は、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート及び1,10-デカンジオールジアクリレート、よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)の市販品の例としては、新中村化学工業(株)製のA-HD-N、A-NOD-N、A-DOD-N等が挙げられる。
【0044】
本実施形態では、炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)を用いることにより、上述した測定方法で測定した両面粘着シートの酸素透過率(PA)を所定以上にコントロールしやすくなり、その結果、銅メッシュ系透明導電フィルムに粘着シートを貼合した場合に銅メッシュの可視化を効果的に抑制することができる。これは、2つの反応性官能基が、構造的柔軟性の高い炭素数が4~12の直鎖ジオールで連結されることにより、ベースポリマーである(メタ)アクリル共重合体(A)の柔軟性を高めることができるためであると考えられる。
【0045】
本実施形態では、上述したような二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)を用いることで、両面粘着シートにおける重合体の架橋密度を制御することができ、緻密ではない網目構造を形成することができる。これにより、両面粘着シートの酸素透過率を所定範囲とすることができ、その結果、銅メッシュの黒化膜の変色を抑制することができ、銅メッシュの可視化を抑制することができる。
【0046】
粘着剤組成物中における、(メタ)アクリル共重合体(A)100質量部に対する、二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)の含有量は、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましい。また、二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)の含有量は、5質量部以下であることが好ましい。二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)の含有量を上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの酸素透過率を所定範囲とすることができ、その結果、銅メッシュの黒化膜の変色を抑制することができ、銅メッシュの可視化を抑制することができる。
【0047】
(光重合開始剤(C))
光重合開始剤(C)は、活性エネルギー線の照射により多官能モノマーの重合を開始させるものである。ここで、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0048】
本実施形態で用いる光重合開始剤(C)は水素引抜型重合開始剤を除く光重合開始剤である。水素引抜型重合開始剤を除く光重合開始剤を用いることで、黒化層の変色をより効果的に抑制することができる。
【0049】
光重合開始剤(C)としては、例えば、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチル-1-プロパノン等のアセトフェノン系光重合開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドや、2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤やカチオン系光重合開始剤などの油溶性重合開始剤を挙げることができる。中でも、光重合開始剤は、ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0050】
光重合開始剤(C)の市販品としてはIGM Resins B.V.社製、Omnirad819、Omnirad184等が挙げられる。
【0051】
粘着剤組成物中の光重合開始剤(C)の含有量は(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましい。また、粘着剤組成物中における光重合開始剤(C)の含有量は(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量を上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの硬度を高めることができ、両面粘着シートの耐久性や加工性、密着性を高めることができる。
【0052】
(溶剤)
粘着剤組成物はさらに溶剤を含有してもよい。溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。
【0053】
このような溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0054】
溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。粘着剤組成物中、溶剤の含有量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル共重合体100質量部に対し、25質量部以上500質量部以下とすることができ、30質量部以上400質量部以下とすることができる。また、溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対し、10質量%以上90質量%以下とすることができ、20質量%以上80質量%以下とすることができる。
【0055】
(任意成分)
本実施形態では粘着剤組成物は、用途や要求特性に応じて、以下に挙げるような任意成分を含んでいてもよい。ただし、粘着剤組成物は、架橋剤を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は0.1質量%以下であることが好ましい。粘着剤組成物中における架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着剤組成物は実質的に架橋剤を含まないものであると言える。
【0056】
任意成分としては、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、重合開始剤、重合性モノマー、紫外線吸収剤等が挙げられる。この場合、任意成分の含有量は(メタ)アクリル共重合体100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましく、0.5質量部以下であることが一層好ましく、0.1質量部以下であることが特に好ましい。
【0057】
シランカップリング剤としては、例えば、反応性官能基含有シランカップリング剤を用いることができる。例えば、メルカプト系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤などが挙げられる。メルカプト系シランカップリング剤としては、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられるが、後述の通り含有量に注意を払う必要がある。その他の反応性官能基含有シランカップリング剤としては、特開2020-114914号公報の[0094]~[0096]に記載のものを挙げることができる。
【0058】
可塑剤としては、例えば無官能性アクリル重合体を挙げることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
金属腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール系樹脂を挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂、メタクリル系樹脂などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
【0059】
なお、本実施形態の粘着剤組成物は、上述したような任意成分を含まず、固形分として(メタ)アクリル共重合体(A)、炭素数が10~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)、炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)、及び水素引抜型重合開始剤を除く光重合開始剤(C)のみを含むものであることも好ましい。
【0060】
(剥離シート付き両面粘着シート)
本実施形態の両面粘着シートの少なくとも一方の面には剥離シートが貼合されていることが好ましい。本実施形態は、剥離シート付き両面粘着シートに関するものでもある。なお、剥離シートは両面粘着シートを使用する際、両面粘着シートから剥離される。
【0061】
図1は、剥離シート付き両面粘着シートの構成の一例を表す断面図である。
図1に示された両面粘着シート1は、粘着剤層11の両面に、剥離シート12(12a、12b)を有している。なお、
図1の両面粘着シートは、ノンキャリアタイプの単層の粘着シートであり、両面粘着シートである。
【0062】
剥離シートとしては、剥離シート用基材と該剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH3)3SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
【0063】
剥離シート12においては、剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。つまり、一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シート12だけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて剥離シート12aと剥離シート12bの剥離シート12の剥離性を調整すればよい。
【0064】
(両面粘着シートの製造方法)
本実施形態の両面粘着シートの製造工程は、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程を含むことが好ましい。以下、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程について代表して説明する。
【0065】
粘着シートを形成する粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。また、塗膜の加熱は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いて実施できる。
【0066】
本実施形態では塗膜を光硬化する工程を含む。すなわち、本実施形態の両面粘着シートは光硬化両面粘着シートである。光照射の際に用いる光としては紫外線、可視光線等が挙げられる。中でも、波長が250~400nmの紫外線を用いることが好ましい。紫外線照射条件は、波長365nmを中心とした分光感度を持つ紫外線照度計で計測した場合の放射照度が0.1mW/cm2以上、光量は500mJ/cm2以上が望ましい。このような紫外線照射条件を採用することで、ゲル分率が高く、耐久性に優れた粘着シートが得られる。光源としては、ケミカルランプやブラックランプ等の紫外線蛍光ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等が用いられる。
【0067】
塗膜を光硬化する工程では、照射される紫外線の積算光量は500mJ/cm2以上であることが好ましく、1000mJ/cm2以上であることがより好ましく、1500mJ/cm2以上であることがさらに好ましい。照射される紫外線の積算光量は20000mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0068】
なお、本実施形態の両面粘着シートは、光硬化工程により完全硬化したものである。完全硬化するための紫外線の積算光量は粘着剤組成物に含まれる成分によっても異なるが、例えば、照射される紫外線の積算光量を3000mJ/cm2とすることで、粘着剤組成物を完全硬化させることができる。すなわち、本実施形態の両面粘着シートは、(メタ)アクリル共重合体(A)と、炭素数が10~20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)と、炭素数が4~12の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)と、水素引抜型重合開始剤を除く光重合開始剤(C)と、を含む粘着剤組成物に積算光量が3000mJ/cm2となるように紫外線を照射して光硬化させてなる両面粘着シートである。
【0069】
塗膜を光硬化する工程の前には、必要に応じて塗膜を乾燥させる工程を設けてもよい。乾燥工程における温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。また、乾燥工程における温度は、150℃以下であることが好ましい。乾燥工程における処理時間は、10秒以上であることが好ましく、1分以上であることがより好ましい。また、乾燥工程における処理時間は、1時間以下であることが好ましい。
【0070】
(粘着シートの使用方法)
本実施形態の両面粘着シートの使用方法においては、剥離シート付き両面粘着シートの一方の剥離シートを剥離して銅メッシュ系透明導電フィルムに接触させることで貼合し、続いて他方の剥離シートを剥がして他の被着体に接触させる。粘着シートが重合開始剤を含み、後硬化性を備えた半硬化粘着シートの場合は、その状態で活性エネルギー線を照射して粘着剤層を完全硬化させてもよい。
【0071】
(積層体/表示装置)
本実施形態は、上述した両面粘着シートと、銅メッシュ系透明導電フィルムとを備える積層体に関するものであってもよい。例えば、本実施形態の積層体においては、両面粘着シートの一方の面側に、銅メッシュ系透明導電フィルムが積層されており、両面粘着シートの他方の面側には他の被着体が積層されていることが好ましい。なお、両面粘着シートは、銅メッシュ系透明導電フィルムにおいて銅メッシュが形成されている面に直接貼合されることが好ましい。
【0072】
本実施形態は、上述した両面粘着シートと、銅メッシュ系透明導電フィルムとを備える表示装置に関するものであってもよい。例えば、本実施形態の表示装置においては、両面粘着シートの一方の面側に、銅メッシュ系透明導電フィルムが積層されており、両面粘着シートの他方の面側には他の被着体が積層されていることが好ましい。なお、両面粘着シートは、銅メッシュ系透明導電フィルムにおいて銅メッシュが形成されている面に直接貼合されることが好ましい。
【0073】
他の被着体としては、例えば、表示装置を構成する光学部材を挙げることができ、光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルム、カバーフィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。
【0074】
[積層体の製造方法]
本実施形態の積層体の製造方法は、銅メッシュ系透明導電フィルムの銅メッシュと接する面に対して、本実施形態の両面粘着シートを接触させた状態で、加圧を行う工程を含むことが好ましい。この際、加圧することで脱泡を行ってもよく、加圧工程の前または後にさらに脱泡工程を設けてもよい。また、加圧工程を加熱しながら行ってもよく、加圧工程の前または後にさらに加熱工程を設けてもよい。例えば、両面粘着シートを銅メッシュ系透明導電フィルムに接触させ、その状態でオートクレーブなどを用いた加圧・加温・脱泡してもよく、もしくはその状態で加圧および真空脱泡することで密着性を向上させることとしてもよい。
【実施例】
【0075】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0076】
[合成例]
<(メタ)アクリル共重合体A-1の合成>
炭素数が1~10の分岐状のアルキル基を有するアクリレートとしてアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、炭素数が1~10の分岐状のアルキル基を有するメタクリレートとしてメタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、水酸基含有(メタ)アクリレートとしてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEMA)を、質量比で2EHA:2EHMA:2HEMA=20:70:10となるように配合し、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が50質量%で、重量平均分子量が48万の架橋性(メタ)アクリル共重合体(A-1)を含む溶液(a-1)を得た。
【0077】
<(メタ)アクリル共重合体A-2の合成>
炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアクリレートとしてアクリル酸メチル(MA)およびアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、炭素数が1~10の分岐状のアルキル基を有するメタクリレートとしてメタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、水酸基含有(メタ)アクリレートとしてアクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA)を、質量比でMA:2EHA:2EHMA:2HEA=30:35:25:10となるように配合し、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が50質量%で、重量平均分子量が80万の架橋性(メタ)アクリル共重合体(A-2)を含む溶液(a-2)を得た。
【0078】
<(メタ)アクリル共重合体A-3の合成>
炭素数が1~10の分岐状のアルキル基を有するアクリレートとしてアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、炭素数が1~10の直鎖状及び分岐状のアルキル基を有するメタクリレートとしてメタクリル酸メチル(MMA)およびメタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、水酸基含有(メタ)アクリレートとしてアクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA)を、質量比で2EHA:MMA:2EHMA:2HEA=20:10:60:10となるように配合し、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が50質量%で、重量平均分子量が40万の架橋性(メタ)アクリル共重合体(A-3)を含む溶液(a-3)を得た。
【0079】
<(メタ)アクリル共重合体A-4の合成>
炭素数が1~10の直鎖状のアルキル基を有するアクリレートとしてブチルアクリレート(BA)、水酸基含有(メタ)アクリレートとしてアクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA)を、質量比でBA:2HEA=70:30となるように配合し、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が50質量%で、重量平均分子量が50万の架橋性(メタ)アクリル共重合体(A-4)を含む溶液(a-4)を得た。
【0080】
<重量平均分子量>
(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は以下の方法でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。GPCの測定条件は以下のとおりである。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続して使用した)
・カラム温度:40℃
・試料濃度:0.5質量%
・検出器:RI-2031plus(JASCO製)
・ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
・流量(流速):0.8ml/min
・注入量:10μl
・校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320~2,500,000までの10サンプルによる校正曲線を使用した。
【0081】
[実施例1]
<粘着剤組成物の調製>
溶液(a-1)中に含まれる(メタ)アクリル共重合体(A-1)100質量部に対して、炭素数10の環状アルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B1)としてアクリル酸イソボルニル(IBXA)を5質量部、炭素数6の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー(B2)として1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N)を1質量部、光重合開始剤としてOmnirad819(IGM Resins B.V.社製)を0.5質量部添加し、当該原料の濃度が40質量%となるように酢酸エチルに加え、攪拌することで粘着剤組成物を調製した。
【0082】
<両面粘着シートの作製>
上記のようにして調製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第1の剥離シート、王子エフテックス社製、50RL-07(2))の表面に、乾燥後の塗工厚みが100μmになるようにアプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。かかる塗膜を、空気循環式恒温オーブンにより、80℃で3分間乾燥させることで、第1の剥離シートの表面に粘着剤層(実施例1の両面粘着シート)を形成した。
【0083】
<剥離シート付き両面粘着シートの作製>
次いで、該粘着剤層の表面に第1の剥離シートと剥離力の異なる、厚さ38μmの第2の剥離シート(王子エフテックス社製、38RL-07(L))を貼合し、23℃、相対湿度50%の条件で14日間養生した。これにより、粘着剤層(粘着シート)が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/両面粘着シート/第2の剥離シートの構成を備える、剥離シート付き両面粘着シートを得た。次いでこの剥離シート付き粘着シートの第2の剥離シート側から高圧水銀ランプを用いて積算光量が3000mJ/cm2となるよう紫外線を照射し、光硬化した剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0084】
[実施例2]
(メタ)アクリル共重合体(A-1)の溶液(a-1)を(メタ)アクリル共重合体(A-2)の溶液(a-2)に変更し、アクリル酸イソボルニル(IBXA)を炭素数18の分岐アルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるアクリル酸イソステアリル(ISTA)に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、光硬化した剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0085】
[実施例3]
(メタ)アクリル共重合体(A-1)の溶液(a-1)を(メタ)アクリル共重合体(A-3)の溶液(a-3)に変更し、アクリル酸イソボルニル(IBXA)を炭素数12の直鎖状アルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるアクリル酸ラウリル(LA)に変更し、さらに1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N)を炭素数10の直鎖ジオールに由来する連結基で反応性官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーである1,10-デカンジオールジアクリレート(A-DOD-N)に変更し、光重合開始剤のOmnirad819(IGMResins B.V.社製)0.5質量部をOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)1.0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、光硬化した剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0086】
[実施例4]
アクリル酸イソボルニル(IBXA)を炭素数18の分岐アルキル鎖を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるアクリル酸イソステアリル(ISTA)に変更し、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N)を炭素数10の直鎖ジオールで官能基が結ばれた二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーである1,10-デカンジオールジアクリレート(A-DOD-N)に変更し、光重合開始剤のOmnirad819(IGMResins B.V.社製)0.5質量部をOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)1.0質量部に変更した以外は実施例1と同様の手順で、光硬化した剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0087】
[比較例1]
アクリル酸イソボルニル(IBXA)を炭素数1のアルキル基を有した単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーであるアクリル酸メチル(MA)に変更した以外は実施例1と同様の手順で、光硬化した剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0088】
[比較例2]
ベースポリマー(A-1)の溶液(a-1)をベースポリマー(A-4)の溶液(a-4)に変更し、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N)を三官能アクリル酸エステルモノマーであるアクリル酸エステルモノマーでトリメチロールプロパントリアクリレート(A-TMPT)に変更した以外は実施例1と同様の手順で、光硬化した剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0089】
[比較例3]
単官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー、二官能(メタ)アクリル酸エステルモノマー、光開始剤を添加する代わりに、架橋剤であるイソシアネート系化合物(D-110N、三井化学社製)を0.5質量部添加した以外は実施例1と同様の手順で、剥離シート付き両面粘着シートを得た。
【0090】
(評価及び測定)
<酸素透過率(PA)>
[積層シートの作製]
実施例及び比較例で作製した光硬化後の剥離シート付き両面粘着シート(両面粘着シートの厚み100μm)の軽剥離側の剥離シートを剥がして、20μmの無延伸ポリプロピレン(レンソールGP-32 北越化成社製)をハンドローラーを用いて貼合し、無延伸ポリプロピレンで裏打ちされた粘着シートを得た。次いで、無延伸ポリプロピレンで裏打ちされた粘着シートの重剥離側の剥離シートを剥がし、露出した粘着面に実施例及び比較例で作製した厚み100μmの両面粘着シートの粘着面同士が接するように貼合し、粘着剤層の厚みが200μmの無延伸プロピレンで裏打ちされた粘着シートを得た。続いて粘着剤層の厚みが200μmの無延伸プロピレンで裏打ちされた粘着シートの重剥離側の剥離シートを剥がし、露出した粘着面に20μmの無延伸ポリプロピレン(レンソールGP-32 北越化成社製)を貼合し、「無延伸ポリプロピレン/粘着剤層(厚み200μm)/無延伸ポリプロピレン」の構成の積層シートを作製した。
【0091】
[積層シートの酸素透過率(PL)の測定]
積層シートの酸素透過率(PL)を測定した。酸素透過率の測定には、酸素透過率計測定装置(OX-TRAN2/12 MOCON社製)を用い、テストセル面積(測定面積)50cm2、23℃、相対湿度50%、1atmの環境で酸素透過量が安定するまで約2時間置いた後、酸素透過量を測定した。そして、1m2における24時間で透過する酸素量に換算して積層シートの酸素透過率(PL)を算出した。
【0092】
[無延伸ポリプロピレンの酸素透過率(PP)の測定]
20μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)のみを2枚重ねて40μmの厚みにし、上記「積層シートの酸素透過率(PL)の測定」と同様にして酸素透過率測定装置(OX-TRAN2/212 MOCON社製)を用いて酸素透過量を測定し、1m2における24時間で透過する酸素量に換算して無延伸ポリプロピレンの酸素透過率(PP)を算出した。
【0093】
[酸素透過率(PA)の算出]
上記で得られた積層シートの酸素透過率(PL)と無延伸ポリプロピレンの酸素透過率(PP)の値から、下記式(1)から導かれた下記式(2)を用いて両面粘着シートの酸素透過率(PA)を算出した。
1/PL=1/PA+1/PP ・・・ 式(1)
PA=(PP×PL)/(PP-PL) ・・・ 式(2)
【0094】
<銅メッシュ系透明導電フィルム適性>
(評価用導電フィルムの作製)
特許第6607918号公報の実施例3記載の方法に準じて100μのポリエチレンテレフタレート基材の両面に銅による導電層を備えたと透明導電フィルムを作製した。続いてフォトリソグラフィの手法を用いて、この導電性フィルムの両面の導電部にピッチ200μm、線幅15μmの格子状の配線パターンを形成し評価用銅メッシュ系透明導電フィルムを作製した。そして、銅メッシュ上に、特許第6607918号公報の実施例3記載の方法に準じて黒化膜を形成した。
【0095】
(評価用サンプルの作製)
実施例及び比較例で作製した剥離シート付き両面粘着シート軽剥離側の剥離シートを剥がして、スライドガラス(松浪硝子社製、S9112)の片面にハンドローラーを用いて貼合した。次いでガラスで裏打ちされた粘着シートの重剥離側の剥離シートを剥がして、上記で作製した評価用銅メッシュ系透明導電フィルムに貼合した。続いて「ガラス/粘着剤層/銅メッシュ系透明導電フィルム」の構成となった積層体の銅メッシュ系透明導電フィルムの表面に実施例及び比較例で作製した両面粘着シートを貼合した。次いで重剥離側の剥離シートを剥がして、真空重ね合わせ装置(JE2020B-MVH型 常陽工学社製)を用いてスライドガラス(松浪硝子社製、S9112)を貼合し、「ガラス/粘着剤層/銅メッシュ系透明導電フィルム/粘着剤層/ガラス」の積層体を作製した。次いでこの積層体に50℃、0.5MPaの条件にて30分間オートクレーブ処理を行った。その後、23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置し、銅メッシュ系透明導電フィルム適性評価用サンプルを作製した。
【0096】
(銅メッシュ系透明導電フィルム適性の評価)
上記で作製した銅メッシュ系透明導電フィルム適性評価用サンプルを95℃のオーブンで、250時間処理した。その後、評価用サンプルの外観を目視で観察し、さらに配線部を光学顕微鏡で観察し、以下に示す評価基準に基づいて銅メッシュ系透明導電フィルム適性を評価した。なお、いずれのサンプルにおいても、浮き、剥がれ、気泡の発生などは生じなかった。
A:目視では銅メッシュ部が見えない。顕微鏡観察でも配線部に色の変化がない。
B:目視では銅メッシュ部が見えないが、顕微鏡観察では配線部にあきらかな色相の変化が見られるが全体に均一な色変化である。
C:目視では銅メッシュ部が見えないが、顕微鏡観察では配線部にあきらかな色相の変化が見られ、さらにサンプルの端部と中央部で色相が異なる。
D:目視ではサンプル端部が僅かに曇ったように見え、顕微鏡観察では配線部にあきらかな色相の変化があり、さらにサンプルの端部と中央部で色相も異なる。
E:目視で銅メッシュ部が見え顕微鏡観察では配線部にあきらかな色相が変化し配線部に光沢感が発現している。
【0097】
<全光線透過率およびヘイズ値>
実施例及び比較例で作製した剥離シート付き両面粘着シート(両面粘着シートの厚み100μm)の軽剥離側の剥離シートを剥がしてスライドガラス(松浪硝子社製、S9112)の片面にハンドローラーを用いて貼合し、この積層体に50℃、0.5MPaの条件にて30分間オートクレーブ処理を行った。その後、重剥離側の剥離シートを剥がして「ガラス/粘着剤層」の構成の評価用サンプルを作製し、得られたサンプルの全光線透過率を、JIS K 7361-1に準拠して測定した。また得られたサンプルのヘイズ値をJIS K 7136に準拠して測定した。これらの測定は3回行い、平均値を各測定値とした。測定には、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業社製、NDH-5000)を用いた。
その結果、実施例、比較例で作製した両面粘着シートは、いずれも23℃、相対湿度50%の環境における全光線透過率が90%~100%であり、23℃、相対湿度50%の環境におけるヘイズ値が1%未満であった。
【0098】
<ゲル分率>
粘着剤層約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥重量W(g)を測定した。得られた乾燥重量から下記式
ゲル分率(%)=(乾燥質量W/粘着シートの採取質量)×100
から算出される値を粘着シートのゲル分率とした。
【0099】
【0100】
実施例で得られた両面粘着シートを銅メッシュ系透明導電フィルムに貼合し、高温条件下で処理した場合、配線部の色相変化が抑制されており、銅メッシュ部の可視化が抑制されていた。
【符号の説明】
【0101】
1 剥離シート付き両面粘着シート
11 両面粘着シート(粘着剤層)
12a、12b 剥離シート