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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】切削加工システム、および切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/00 20060101AFI20250409BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
B23B27/00 D
B23B29/24 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024522328
(86)(22)【出願日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2023032825
【審査請求日】2024-04-24
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】山岸 傑
(72)【発明者】
【氏名】桑山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】高野 豊久
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/002567(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/009813(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-51/14;
B23C 1/00-9/00;
B23D 1/00-81/00;
B23Q 1/00-41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の加工空間に設けられる送電アンテナを介して電力を送電する給電装置と、
前記加工空間に配置され、前記送電アンテナからの送電電力を受電する受電アンテナ回路を有する切削工具と、を備え、
前記切削工具は、
第1センサが設けられた第1工具本体と、
前記第1工具本体に対して別体に設けられ、前記第1センサへ電力を与えるための第1電力線を介して前記第1工具本体に接続される筐体と、を備え、
前記工作機械は、前記工具本体を把持するタレットを有し、
前記タレットは、前記工具本体を取り付ける工具取付溝と、前記タレットの回転軸方向の端面における領域であって、前記工具取付溝よりも前記タレットの回転軸側の領域である軸側領域とを含み、
前記筐体は、
受電した電力を出力する前記受電アンテナ回路を内部に収容する筐体本体と、
前記タレットの回転軸方向の端面に前記筐体本体を固定する固定部と、を含み、
前記筐体本体は、前記タレットにおける前記軸側領域に配置される
切削加工システム。
【請求項2】
前記筐体本体は、前記タレットの端面に固定された状態において前記端面に対向する対向面を有し、
前記固定部は、前記端面と、前記対向面と、を接着させる接着部を含む
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項3】
前記固定部は、
前記タレットの工具取付溝に把持される被把持部と、
前記被把持部から延び、かつ、先端部に前記筐体本体が設けられるアーム部と、を含み、
前記アーム部は、前記被把持部が前記工具取付溝に把持された状態で、前記タレットの端面に沿って前記タレットの回転軸に向かって延びている
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項4】
前記筐体本体は、前記受電アンテナ回路のアンテナ素子の中心を前記タレットの回転軸が通過するように前記タレットの端面に固定される
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項5】
前記アンテナ素子は、ループ素子である
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項6】
前記第1工具本体および前記筐体のいずれかに設けられ、前記受電アンテナ回路によって受電された電力を蓄電する蓄電部をさらに備える
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の切削加工システム。
【請求項7】
前記切削工具は、
第2センサが設けられ、前記第2センサへ電力を与えるための第2電力線を介して前記筐体に接続される第2工具本体と、
前記受電アンテナ回路が受電した電力を前記第1センサおよび前記第2センサに給電する給電制御部と、をさらに備える
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の切削加工システム。
【請求項8】
前記加工空間外に設置され、前記給電制御部を制御する外部装置をさらに備え、
前記切削工具は、前記外部装置との間で通信可能な通信部をさらに備え、
前記給電制御部は、前記通信部を介して与えられる前記外部装置からの制御命令に基づいて前記第1センサへ与えられる電力および前記第2センサへ与えられる電力を制御する
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項9】
前記制御命令は、前記工作機械の状態を示す情報、および、前記通信部から送信される前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とを含む出力情報のうちの少なくともいずれか一方に基づいて生成される
請求項に記載の切削加工システム。
【請求項10】
前記受電アンテナ回路は、
前記送電アンテナからの送電電力を受電する受電アンテナを有する複数の回路部と、
前記複数の回路部が出力する電力を合成する合成回路と、を備える
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の切削加工システム。
【請求項11】
工作機械の加工空間に配置される切削工具であって、
前記加工空間に設けられる送電アンテナを介して給電装置から送電される送電電力を受電する受電アンテナ回路と、
センサが設けられた工具本体と、
前記工具本体に対して別体に設けられ、前記センサへ電力を与えるための電力線を介して前記工具本体に接続される筐体と、を備え、
前記工作機械は、前記工具本体を把持するタレットを有し、
前記タレットは、前記工具本体を取り付ける工具取付溝と、前記タレットの回転軸方向の端面における領域であって、前記工具取付溝よりも前記タレットの回転軸側の領域である軸側領域とを含み、
前記筐体は、
受電した電力を出力する前記受電アンテナ回路を内部に収容する筐体本体と、
前記タレットの回転軸方向の端面に前記筐体本体を固定する固定部と、を含み
前記筐体本体は、前記タレットにおける前記軸側領域に配置される
切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削加工システム、および切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体部と、本体部に配置されたセンサ部と、センサの出力を示す情報を外部へ送信する無線通信部と、各部に電力を供給する電池と、を備えた切削工具が開示されている。電池は、本体部に設けられた空間である電池収容部に内蔵されている。
この切削工具は、加工中の切削工具の状態をセンサによってモニタし、外部へ送信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2022/230149号
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態に係る切削加工システムは、工作機械の加工空間に設けられる送電アンテナを有する給電装置と、前記加工空間に配置され、かつ、前記送電アンテナからの送電電力を受電する受電アンテナ回路を有する切削工具と、を備える。前記切削工具は、第1センサが設けられた第1工具本体と、前記第1センサへ電力を与えるための第1電力線を介して前記第1工具本体に接続され、前記受電アンテナ回路を内部に収容する、前記第1工具本体に対して別体の筐体と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施形態に係る切削加工システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る切削工具が取り付けられたタレットの端面を正面視したときの外観図である。
図3図3は、切削工具の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、筐体の断面図である。
図5図5は、図4中の回路基板の基板面を示す図である。
図6図6は、変形例に係る切削工具のブロック図である。
図7図7は、複数の切削工具が取り付けられたタレットの端面を正面視したときの外観図である。
図8図8は、第2実施形態に係る切削工具が取り付けられたタレットの端面を正面視したときの外観図である。
図9図9は、図8中、IV-IV線の矢視断面図を示している。
図10図10は、第3実施形態に係る切削工具が取り付けられたタレットの端面を正面視したときの外観図である。
図11図11は、第3実施形態に係る切削工具のブロック図である。
図12図12は、第4実施形態に係る受電アンテナ回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
上記従来の切削工具では、電池の電力が消費され枯渇すると、新たな電池に交換する必要がある。この場合、電池収容部内から古い電池を取り出し、新たな電池を装着しなければならず、加工中に電池を交換することは困難である。
このため、加工時間が長時間となることにより、加工中に電池の電力が枯渇すると、その後の切削工具の状態をモニタすることができなくなるおそれがある。
【0007】
そこで、切削工具のセンサに対して無線給電することが考えられる。切削工具のセンサに対して無線給電すれば、加工中の切削工具に対して給電が可能となり、加工時間が長時間になったとしても連続して切削工具の状態をモニタすることが可能となる。
【0008】
ここで、センサへ無線給電するためには、送電される電力を受電するための受電アンテナ回路を切削工具に設ける必要がある。
例えば、電池に代えて受電アンテナ回路を切削工具の本体部(シャンク)に内蔵することが考えられる。
しかし、この場合、受電アンテナ回路を、切削工具の本体部に設けられた空間等の限られた空間内に配置しなければならず、受電アンテナ回路の配置態様が制限される上、受電アンテナ素子の大きさや個数等といった受電アンテナ回路の回路規模も制限されることとなる。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、受電アンテナ回路の配置の自由度および回路規模の自由度を高めることができる。
【0010】
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
[実施形態の概要]
(1)本開示の実施形態に係る切削加工システムは、工作機械の加工空間に設けられる送電アンテナを有する給電装置と、前記加工空間に配置され、かつ、前記送電アンテナからの送電電力を受電する受電アンテナ回路を有する切削工具と、を備える。前記切削工具は、第1センサが設けられた第1工具本体と、前記第1センサへ電力を与えるための第1電力線を介して前記第1工具本体に接続され、前記受電アンテナ回路を内部に収容する、前記第1工具本体に対して別体の筐体と、を備える。
【0011】
上記構成によれば、受電アンテナ回路が、第1工具本体に対して別体である筐体に収容されているので、第1工具本体に受電アンテナ回路を内蔵する必要がない。
この結果、受電アンテナ回路の配置や回路規模が第1工具本体に制限されることがなく、受電アンテナ回路の配置の自由度および回路規模の自由度を高めることができる。
【0012】
(2)上記(1)の切削加工システムにおいて、前記工作機械が、前記工具本体を把持するタレットを有する場合、前記筐体は、筐体本体と、前記タレットの軸方向の端面に前記筐体本体を固定する固定部と、を備えていてもよい。
この場合、筐体を工具本体とともにタレットに固定することができる。
【0013】
(3)上記(2)の切削加工システムにおいて、前記筐体本体は、前記端面に固定された状態において前記端面に対向する対向面を有する場合、前記固定部は、前記端面と、前記対向面と、を接着させる接着部を含んでいてもよい。
この場合、接着部によって、筐体本体をタレットの端面に固定することができる。なお、接着部としては、磁石や、接着剤等を用いることができる。
【0014】
(4)上記(2)の切削加工システムにおいて、前記固定部が、前記タレットの工具取付溝に把持される被把持部と、前記被把持部から延び、かつ、先端部に前記筐体本体が設けられるアーム部と、を含む場合、前記アーム部は、前記被把持部が前記工具取付溝に把持された状態で、前記タレットの端面に沿って前記タレットの回転軸に向かって延びていてもよい。
この場合、タレットの工具取付溝を利用して筐体本体をタレットの端面に固定することができる。これにより、容易に筐体本体をタレットに固定することができる。また、筐体本体をタレットの回転軸付近に容易に固定することができる。
【0015】
(5)上記(2)から(4)の切削加工システムにおいて、前記筐体本体は、前記受電アンテナ回路のアンテナ素子の中心を前記タレットの回転軸が通過するように前記タレットの端面に固定されることがある。
これにより、タレットが回転した場合においても、送電アンテナに対するアンテナ素子の相対的な位置の変化が抑制され、送電アンテナからの送電電力を安定して受電することができる。
【0016】
(6)上記(5)の切削加工システムにおいて、前記アンテナ素子は、ループ素子であることがある。
この場合、ループ素子の中心をタレットの回転軸が通過するように筐体本体を固定すれば、タレットが回転したとしても、送電アンテナに対するアンテナ素子の相対的な位置が大きく変化することがない。
【0017】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つの切削加工システムにおいて、前記第1工具本体および前記筐体のいずれかに設けられ、前記受電アンテナ回路によって受電された電力を蓄電する蓄電部をさらに備えていてもよい。
この場合、受電アンテナ回路が送電電力を受電しない場合においても、蓄電部に蓄電された電力を第1センサへ与えることができる。
【0018】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つの切削加工システムにおいて、前記切削工具は、第2センサが設けられ、前記第2センサへ電力を与えるための第2電力線を介して前記筐体に接続される第2工具本体と、前記受電アンテナ回路が受電した電力を前記第1センサおよび前記第2センサに給電する給電制御部と、をさらに備えていてもよい。
この場合、1つの受電アンテナ回路によって受電した電力を、複数のセンサへ給電することができる。
【0019】
(9)上記(8)の切削加工システムにおいて、前記加工空間外に設置され、前記給電制御部を制御する外部装置をさらに備え、前記切削工具は、前記外部装置との間で通信可能な通信部をさらに備える場合、前記給電制御部は、前記通信部を介して与えられる前記外部装置からの制御命令に基づいて前記第1センサへ与えられる電力および前記第2センサへ与えられる電力を制御するように構成されていてもよい。
この場合、加工空間の外部から、第1センサおよび第2センサへの給電を制御することができる。
【0020】
(10)上記(9)の切削加工システムにおいて、前記制御命令は、前記工作機械の状態を示す情報、および、前記通信部から送信される前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とを含む出力情報のうちの少なくともいずれか一方に基づいて生成されることがある。
工作機械の状態を示す情報を参照すれば、第1工具本体および第2工具本体の中から、使用中の工具本体を把握することができる。
また、出力情報を参照すれば、第1工具本体および第2工具本体の中から、使用中の工具本体を把握することができる。
よって、使用中の工具本体のセンサへ優先的に給電されるような制御命令を外部装置に出力させれば、効率的な給電が可能となる。
【0021】
(11)上記(1)から(10)のいずれか1つの切削加工システムにおいて、前記受電アンテナ回路は、前記送電アンテナからの送電電力を受電する受電アンテナを有する複数の回路部と、前記複数の回路部が出力する電力を合成する合成回路と、を備えることがある。
この場合、複数の回路部がそれぞれ受電アンテナを有しており、複数の回路部がそれぞれ電力を出力する。よって、複数の回路部が出力する電力を合成することで、より多くの電力を受電することができる。
【0022】
(12)また、他の観点からみた実施形態は、工作機械の加工空間に配置される切削工具である。この切削工具は、前記加工空間に設けられる送電アンテナによって送電される給電装置からの送電電力を受電する受電アンテナ回路と、センサが設けられた工具本体と、前記センサへ電力を与えるための電力線を介して前記工具本体に接続され、前記受電アンテナ回路を内部に収容する、前記工具本体に対して別体の筐体と、を備える。
【0023】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
〔全体構成について〕
図1は、実施形態に係る切削加工システムの全体構成を示す図である。図1中、切削加工システム1は、工作機械2と、切削工具4と、給電装置6と、外部装置7と、を備える。
【0024】
工作機械2は、例えば、タレット旋盤である。工作機械2は、タレット8と、駆動装置10と、移動装置12と、を有する。
切削工具4はタレット8に取り付けられる。タレット8には、複数の切削工具4が取付可能である。
駆動装置10は、タレット8を回転軸C回りに回転駆動する装置である。移動装置12は、タレット8を軸方向に沿って移動させる装置である。
また、工作機械2は、ワークを把持し回転させる主軸部等(図示省略)も有する。
【0025】
工作機械2は、タレット8を回転させるとともに移動させ、タレット8に取り付けられた切削工具4を加工位置へ移動させ、ワークに対して切削加工を行う。
切削加工は、工作機械2の加工空間S内で行われる。切削工具4や、タレット8、駆動装置10、移動装置12、主軸部等は、加工空間S内に配置される。
加工空間Sは、金属や樹脂等からなるカバーによって画定される。つまり、加工空間Sは、前記カバーによって閉鎖された空間である。切削加工時には、切削油(クーラント)が供給される。この切削油の飛散を防止するため、切削加工は、閉鎖された加工空間S内で行われる。
【0026】
切削工具4は、ワークに対して切削加工を行うための工具である。より具体的に、切削工具4は、切削加工のうちの旋削加工を行うための工具である。旋削加工とは、回転するワークに対して工具を押し当てて行われる加工である。
切削工具4は、第1工具本体20と、第1工具本体20に対して別体の筐体22と、を備える。第1工具本体20および筐体22は、タレット8の端面8a側に取り付けられている。端面8aは、タレット8の軸方向両側の端面のうち、駆動装置10側とは反対側の端面である。
【0027】
本実施形態の切削工具4はセンサを有する。センサは切削工具4の状態を検知する機能を有する。切削工具4はさらにセンサの出力を示す出力情報を外部へ送信する機能を有する。切削工具4の構成については、後に詳述する。
【0028】
給電装置6は、加工空間S内の切削工具4へ無線給電する機能を有する。給電装置6は、送電アンテナ6aと、送電部6bと、を備える。送電部6bは、電源100から供給される電力に基づいて給電用の信号を生成し、送電アンテナ6aへ与える。送電アンテナ6aは、加工空間S内における切削工具4へ無線給電可能な位置に固定されている。送電アンテナ6aは、給電用の信号を給電用の電波として切削工具4へ送信する。
給電装置6から切削工具4へ送電される電力は、切削工具4のセンサの動作電力や出力情報を送信するための電力として用いられる。
【0029】
本実施形態の給電装置6は、5.7GHzを含む周波数帯域の信号を生成し送信する。つまり、送電アンテナ6aからは、5.7GHzを含む周波数帯域の電波が放射される。
なお、給電装置6が放射する電波の周波数帯域は、特に限定されるわけではないが、規制等の観点から、2.4GHzを含む周波数帯域であってもよい。
【0030】
外部装置7は、工作機械2(の加工空間S)の外部に配置される装置である。外部装置7は、切削工具4との間で無線通信を行う機能を有する。外部装置7は、無線通信によって、切削工具4が送信する出力情報を受信する。
外部装置7は、コンピュータ等により構成される。外部装置7は、処理部7aと、記憶部7bと、入出力部7cと、通信部7dと、を備える。
【0031】
処理部7aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、量子プロセッサ等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサである。
【0032】
記憶部7bは、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等である。
記憶部7bには、処理部7aに実行させるためのコンピュータプログラムや、必要な情報が記憶されている。処理部7aは、記憶部7bのようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、処理部7aが有する各種処理機能を実現する。
【0033】
入出力部7cは、各種情報を外部へ向けて出力する機能や、オペレータによる操作入力を受け付ける機能を有する。入出力部7cは、モニタや、タッチパネル、キーボード、マウス等のデバイスを含む。
通信部7dは、切削工具4との間で無線通信を行う機能を有する。通信部7dは、例えば、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)によって切削工具4と無線通信を行う。よって、通信部7dは、2.4GHzを含む周波数帯域を用いて無線通信する。
【0034】
外部装置7の処理部7aは、切削工具4から送信される出力情報を通信部7dによって受信し、出力情報に関する処理を行う機能を有する。処理部7aは、出力情報からセンサによる検知結果を示す情報を取り出し、記憶部7bに記憶したり、入出力部7cを介して検知結果を外部へ出力したりする。
【0035】
〔第1実施形態に係る切削工具について〕
図2は、第1実施形態に係る切削工具4が取り付けられたタレット8の端面8aを正面視したときの外観図である。
図2に示すように、タレット8は、ほぼ多角形(8角形)の外形を有する部材である。タレット8は、機械構造用鋼等の鋼材によって形成されている。
タレット8の端面8aは、複数(8つ)の工具取付溝9aと、円形面部9bと、外面部9cと、を有する。
8つの工具取付溝9aは、8角形の各辺に対応して設けられている。8つの工具取付溝9aは、外面部9cに対して軸方向に凹んでいる。8つの工具取付溝9aは、回転軸Cを中心とする径方向に沿って延びている。8つの工具取付溝9aは、円形面部9bを囲む環状溝9dによって互いに繋がっている。
円形面部9bは、タレット8の端面8aの中央に設けられた面である。円形面部9bの軸方向の位置は、外面部9cの軸方向の位置と一致していてもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
第1実施形態に係る切削工具4は、上述のように、第1工具本体20と、筐体22と、を備える。
第1工具本体20は、シャンク20aと、切削チップ20bと、を有する。シャンク20aは、金属製の四角柱状の部材である。切削チップ20bは、ワークを切削するための刃物である。切削チップ20bは、シャンク20aの先端に着脱可能に装着されている。
第1工具本体20は、タレット8の工具取付溝9aに取り付けられている。
【0037】
本実施形態において、第1工具本体20は、8つの工具取付溝9aのうちの一つの工具取付溝9aに取り付けられている。第1工具本体20のシャンク20aは、固定用プレート21とともに工具取付溝9aに取り付けられる。固定用プレート21は、シャンク20aを工具取付溝9a内で把持するための治具である。シャンク20aは、固定用プレート21と工具取付溝9aの壁面との間で把持される。
【0038】
筐体22は、円形面部9bに固定されている。筐体22は、回転軸C上に固定されている。よって、タレット8の端面8aの中央に固定されている。
第1工具本体20と、筐体22と、は、第1電力線24を介して互いに接続されている。
第1電力線24は、筐体22側から第1工具本体20側へ電力を与えるための電力線である。第1工具本体20にはセンサや無線通信部(後に説明する)が設けられている。筐体22には、レクテナ(後に説明する)が収容されている。第1電力線24は、レクテナが出力する電力をセンサや無線通信部へ与えるための電力線である。
【0039】
図3は、切削工具4の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、切削工具4は、上述の第1工具本体20および筐体22の他、第1センサ26と、無線通信部28と、電力制御部30と、蓄電部32と、受電アンテナ回路33と、を有する。
【0040】
第1センサ26、無線通信部28、電力制御部30、および蓄電部32は、シャンク20aに設けられる。第1センサ26、無線通信部28、電力制御部30、および蓄電部32は、シャンク20aの内部に設けられた空間に収容される。
一方、受電アンテナ回路33は、筐体22の内部に収容される。
【0041】
受電アンテナ回路33は、給電装置6の送電アンテナ6aから送電電力を受電する。受電アンテナ回路33は、1つのレクテナ34を有する。レクテナ34は、受電アンテナ34aと、整流回路34bと、を有する。受電アンテナ34aは、給電装置6からの給電用の電波を受信する。受電アンテナ34aは、受信した電波による電気信号を整流回路34bへ与える。整流回路34bは、受電アンテナ34aから与えられる電気信号を整流し直流電力に変換して出力する。整流回路34bが出力する直流電力は、第1電力線24を介して、第1工具本体20の電力制御部30へ与えられる。
【0042】
図4は、筐体22の断面図である。図4では、回転軸Cを含む上下方向の平面に沿った断面を示している。筐体22は、箱状の筐体本体22aと、仕切板22bと、防水コネクタ22cと、を有する。
【0043】
筐体本体22aは、樹脂等によって形成された中空の箱状の部材である。筐体本体22aの内部空間は密封されている。よって、筐体本体22aの内部空間への切削油の侵入が防止される。
防水コネクタ22cは、第1電力線24と、筐体22内のレクテナ34(受電アンテナ回路33)と、を接続するためのコネクタである。防水コネクタ22cは、切削油が第1電力線24とレクテナ34との接続部分から筐体22内に侵入するのを防止する。
【0044】
筐体本体22aにおいてタレット8側の外板40は、タレット8の端面8aの円形面部9bに沿って配置されている。外板40は、円形面部9bに対向する対向面40aを有する。
外板40の内面40bには、固定部42が固定されている。固定部42は、筐体本体22aをタレット8に固定する機能を有する。本実施形態の固定部42は、板状の磁石48を含む。磁石48は、内面40bに接着剤等によって固定されている。つまり、磁石48は筐体本体22a内部の空間内に固定されている。
【0045】
ここで、円形面部9bと、対向面40aとは、磁石48の磁力によって互いに接着されている。これにより、筐体本体22aは、円形面部9bに固定されている。つまり、磁石48は、円形面部9bと、対向面40aと、を接着させる接着部を構成する。
また、筐体本体22aは、磁力によってタレット8の円形面部9bに固定されているので、タレット8に対する筐体本体22aの着脱が容易である上、固定位置も容易に変更が可能である。
【0046】
なお、磁石48は筐体本体22a内部の空間内に固定されているので、切削加工によって生じる金属粉や切子が磁力によって磁石48に直接接着するのを防止することができ、加工後に筐体本体22aに付着する金属粉や切子の除去が容易となる。
【0047】
仕切板22bは、樹脂等により形成された板状の部材である。仕切板22bは、外板40に対向した状態で筐体本体22aの内部に設けられている。
仕切板22bにおいて外板40の反対側を向く板面22b1には、レクテナ34が設けられている。
レクテナ34は、回路基板34cを有している。
【0048】
図5は、図4中の回路基板34cの基板面を示す図である。
図5に示すように、回路基板34cの基板面34c1には、受電アンテナ34aと、回路チップ35と、が実装されている。
受電アンテナ34aは、C形のループ素子34a1と、一対の線路34a2と、を含む。ループ素子34a1および一対の線路34a2は、基板面34c1上にパターン形成された銅箔等の金属箔である。ループ素子34a1は、給電装置6からの送電電力を受電するためのアンテナ素子である。一対の線路34a2は、ループ素子34a1の両端と、回路チップ35と、を接続する。回路チップ35は、整流回路34bを含む回路チップである。回路チップ35には、第1電力線24が接続される。
【0049】
本実施形態の筐体本体22aは、回転軸Cがループ素子34a1(アンテナ素子)の中心Pを通過するようにタレット8の円形面部9bに固定されている。
受電アンテナ34aの位置は、筐体22(筐体本体22a)を円形面部9b上で移動させることで変更可能である。
回転軸Cがループ素子34a1の中心を通過しない位置に受電アンテナ34aが固定されていたとしても、受電アンテナ34aは、円形面部9bに固定されているため、タレット8の端面8aにおける回転軸C寄りの位置に固定される。このため、受電アンテナ34aは、タレット8が回転したとしても送電アンテナ6aからの電波を適切に受電することができる。
【0050】
但し、受電アンテナ34aは、回転軸Cがループ素子34a1の中心Pを通過するようにタレット8に固定されていることが好ましい。
これにより、タレット8が回転軸C回りに回転した場合においても、加工空間S内の送電アンテナ6aに対する受電アンテナ34a(ループ素子34a1)の相対的な位置の変化が抑制され、送電アンテナ6aからの送電電力を、より安定して受電することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、筐体本体22aを樹脂によって形成した場合を例示したが、筐体本体22aは、鋼板等の金属によって形成してもよい。この場合、筐体本体22aの一部に、送電アンテナ6aからの電波を通過させるための樹脂等からなる窓部が設けられる。
【0052】
図3中、第1工具本体20に設けられる電力制御部30には、上述のように、第1電力線24を介してレクテナ34(受電アンテナ回路33)からの直流電力が与えられる。
電力制御部30は、レクテナ34から与えられる直流電力を所定電圧に変換したり、蓄電部32の充放電を制御したり、レクテナ34からの直流電力および蓄電部32からの直流電力を第1センサ26および無線通信部28へ与えたりする機能を有する。
また、電力制御部30は、レクテナ34から直流電力が与えられると、蓄電部32のみへ直流電力を与えることもできる。この場合、第1センサ26、および無線通信部28は、蓄電部32から直流電力が与えられる。
さらに、電力制御部30は、レクテナ34から直流電力が与えられない場合、蓄電部32に蓄電された直流電力を第1センサ26、および無線通信部28へ与えることができる。
【0053】
蓄電部32は、例えば、バッテリや、キャパシタを含む。蓄電部32は、電力制御部30を介して与えられる直流電力を蓄電する。また、蓄電部32は、電力制御部30の制御に基づいて、蓄電した電力を放電する。
【0054】
第1センサ26は、シャンク20aの状態を検知するためのセンサである。より具体的に、第1センサ26は、ひずみセンサや、温度センサ、加速度センサ等を含む。第1センサ26は、シャンク20aの状態であるひずみや、温度、加速度(振動)を検知する機能を有する。第1センサ26は、電力制御部30から直流電力が与えられると、シャンク20aの状態を検知した結果を示す出力を無線通信部28へ与える。
【0055】
無線通信部28は、アンテナ28aを有しており、外部装置7との間で無線通信を行う機能を有する。
無線通信部28は、第1センサ26から与えられる出力を出力情報として無線送信する。無線通信部28は、電力制御部30から直流電力が与えられると、外部装置7との間で通信接続を行い、出力情報の無線送信を開始する。
【0056】
上記切削加工システム1によって切削加工を行う場合、まず、システム1のオペレータは、必要な切削工具4をタレット8に取り付ける。さらに、オペレータは、主軸部にワークを取り付ける。その後、オペレータは、工作機械2のカバーを閉じることで、加工空間Sを閉鎖する。
次いで、オペレータは、給電装置6による切削工具4への無線給電を開始させる。
これにより、切削工具4は、給電装置6からの送電電力を受電する。給電装置6から電力が与えられることで、切削工具4の第1センサ26はシャンク20aの状態の検知および検知結果の出力を開始する。さらに、無線通信部28は外部装置7との間で通信接続を行い、出力情報の無線送信を開始する。
その後、オペレータは、工作機械2を動作させて、切削加工を開始させる。
【0057】
このとき、切削工具4の第1センサ26は、切削工具4の状態を検知した結果を示す出力を無線通信部28へ与える。無線通信部28は、第1センサ26から与えられる出力を出力情報として無線送信する。
無線通信部28が送信した出力情報は、外部装置7によって受信される。
出力情報を受信した外部装置7は、出力情報からシャンク20aの状態を示す情報を取得する。外部装置7は、取得したシャンク20aの状態を示す情報を入出力部7cから出力する。これにより、外部装置7は、切削加工時の加工状態(切削工具4の状態)をオペレータへ出力することができる。
【0058】
上記構成によれば、受電アンテナ回路33(レクテナ34)が、第1工具本体20に対して別体である筐体22に収容されているので、第1工具本体20に受電アンテナ回路33を内蔵する必要がない。
この結果、受電アンテナ回路33の配置の自由度および回路規模の自由度を高めることができる。
【0059】
また、本実施形態では、工作機械2がタレット8を有し、また、筐体22が、筐体本体22aと、タレット8の円形面部9bに筐体本体22aを固定する固定部42(磁石48)と、を備えるので、筐体22を第1工具本体20とともにタレット8に固定することができる。
さらに、磁石48は、円形面部9bと、筐体本体22aの対向面40aと、を磁力によって接着させ固定することができる。
なお、本実施形態では、円形面部9bと、対向面40aと、を磁石48の磁力によって接着した場合を例示したが、円形面部9bと、対向面40aと、の間に接着剤や接着テープ等による接着層を設け、この接着層によって円形面部9bと、対向面40aと、を接着してもよい。
【0060】
なお、本実施形態では、電力制御部30および蓄電部32をシャンク20aに設けた場合を例示したが、図6に示すように、電力制御部30および蓄電部32は、筐体22に収容されていてもよい。筐体22は円形面部9b上に固定されるので、電力制御部30および蓄電部32を収容するためのスペースを筐体22において確保することは比較的容易である。また、シャンク20aにおいては、電力制御部30および蓄電部32を収容するための空間を設ける必要がない。さらに、シャンク20aに設けられる空間を最小限に抑えることで、シャンク20aの強度をより高く維持することができる。
【0061】
また、本実施形態では、タレット8に1つの切削工具4を取り付けた場合を例示したが、図7に示すように、2つ以上の切削工具4を取り付けてもよい。
この場合、各切削工具4の筐体22の全てを回転軸Cが通過する位置に配置することはできない。
しかし、筐体22は、磁石48によって円形面部9b上の位置であれば自在に配置することができるので、図7に示すように、各筐体22を回転軸Cの周囲に配置することで、タレット8が回転したとしても、各筐体22(受電アンテナ回路33)が送電アンテナ6aに対してできるだけ移動しないように配置することができる。
【0062】
〔第2実施形態について〕
図8は、第2実施形態に係る切削工具4が取り付けられたタレット8の端面8aを正面視したときの外観図である。
本実施形態では、筐体22の固定部42が、磁石48に代えて、被把持部50と、アーム部52と、を有している点において第1実施形態と相違する。なお、筐体22は、仕切板22bを有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0063】
被把持部50およびアーム部52は、筐体本体22aに一体に設けられた樹脂製の部材である。
被把持部50は、矩形状の部材であり、タレット8の工具取付溝9aに把持されている。被把持部50が把持されている工具取付溝9aは、第1工具本体20が把持されている工具取付溝9aに対して回転軸Cを挟んだ反対側に位置する。
【0064】
被把持部50は、シャンク20aと同様、固定用プレート51とともに工具取付溝9aに取り付けられる。被把持部50は、固定用プレート51と工具取付溝9aの壁面との間で把持される。
【0065】
図9は、図8中、IV-IV線の矢視断面図を示している。
図9において、タレット8は断面で示し、筐体22は外観で示している。
図9に示すように、アーム部52は、被把持部50から延びている。アーム部52の先端52aに、筐体本体22aが設けられている。よって、アーム部52は、被把持部50と、筐体本体22aと、を連結している。
【0066】
また、アーム部52は、被把持部50が工具取付溝9aに把持された状態で、タレット8の円形面部9b(端面8a)に沿っている。また、アーム部52は、タレット8の回転軸Cに向かって延びている。
よって、被把持部50を工具取付溝9aに把持させ、アーム部52を円形面部9bに沿わせるように、筐体22をタレット8に配置すれば、筐体本体22aをタレット8の回転軸C付近に容易に固定することができる。
【0067】
また、被把持部50の内面50aには、スペーサ54が設けられている。内面50aは、被把持部50において回転軸C側に向く面である。
スペーサ54は、内面50aと、環状溝9dの外周面9d1と、の間に介在している。
スペーサ54を外周面9d1に当接させて筐体22をタレット8に配置することで、筐体本体22aを円形面部9b上の一定の位置に配置することができる。
また、スペーサ54の厚みを調整することで、筐体本体22aの円形面部9b上の位置を調整することができる。
本実施形態の筐体本体22aは、スペーサ54の厚みを調整することで、回転軸Cがループ素子34a1の中心を通過するように円形面部9bに固定されている。
【0068】
〔第3実施形態について〕
図10は、第3実施形態に係る切削工具4が取り付けられたタレット8の端面8aを正面視したときの外観図である。
本実施形態では、切削工具4が、第1工具本体20に加えて、第2工具本体60を備えている点において第1実施形態と相違する。
【0069】
第2工具本体60は、第1工具本体20と同様、シャンク60aと、切削チップ60bと、を有する。第2工具本体60は、第1工具本体20が把持されている工具取付溝9aに対して周方向において隣に位置する工具取付溝9aに把持されている。第2工具本体60は、固定用プレート61と工具取付溝9aの壁面との間で把持される。
第2工具本体60は、第2電力線62によって筐体22に接続されている。第2電力線62は、筐体22側から第2工具本体60側へ電力を与えるための電力線である。
【0070】
図11は、第3実施形態に係る切削工具4のブロック図である。
図11に示すように、第1工具本体20のシャンク20aには、第1センサ26と、電力制御部30と、蓄電部32と、が設けられている。
また、第2工具本体60のシャンク60aには、第2センサ66と、電力制御部70と、蓄電部72と、が設けられている。第2センサ66、電力制御部70、および蓄電部72は、第1センサ26、電力制御部30、および蓄電部32と同様の構成である。つまり、第2工具本体60は、第1工具本体20と同様の構成である。
【0071】
さらに、本実施形態の切削工具4は、筐体22内に、レクテナ34に加えて、給電制御部76と、無線通信部78と、を備える。
給電制御部76は、レクテナ34(受電アンテナ回路33)が受電した電力を第1センサ26、第2センサ66、および無線通信部78に給電する機能を有する。
【0072】
給電制御部76と、第1工具本体20の電力制御部30と、は第1電力線24によって互いに接続されている。給電制御部76は、第1電力線24および電力制御部30を介して第1センサ26へ電力を与える。
給電制御部76と、第2工具本体60の電力制御部70と、は第2電力線62によって互いに接続されている。給電制御部76は、第2電力線62および電力制御部70を介して第2センサ66へ電力を与える。
レクテナ34からの直流電力が与えられると、給電制御部76は、両センサ26、66および無線通信部78へ電力を与える。
【0073】
無線通信部78は、アンテナ78aを有しており、外部装置7との間で無線通信を行う機能を有する。
本実施形態の切削工具4では、第1工具本体20および第2工具本体60が外部装置7との通信機能を持たず、筐体22に無線通信部78を設け、外部装置7との通信機能を集約した構成を採用している。
【0074】
無線通信部78と、両センサ26、66と、は互いに接続されている。無線通信部78には、両センサ26、66の出力が与えられる。無線通信部78は、両センサ26、66から与えられる出力を出力情報として無線送信する。無線通信部78は、第1センサ26の出力情報、および第2センサ66の出力情報を、識別可能に外部装置7へ送信する。
無線通信部78は、給電制御部76から直流電力が与えられると、外部装置7との間で通信接続を行い、出力情報の無線送信を開始する。
【0075】
さらに、無線通信部78は、外部装置7から送信される制御命令を受信し、制御命令を給電制御部76へ与える機能を有する。
給電制御部76は、無線通信部78を介して与えられる外部装置7からの制御命令に基づいて第1センサ26へ与えられる電力および第2センサ66へ与えられる電力を制御する。より具体的に、制御命令は、第1センサ26および第2センサ66のうちのいずれか一方を示す情報を含む。給電制御部76は、制御命令が示すセンサに対してより多くの電力を供給する。
【0076】
外部装置7の処理部7a(図1参照)は、無線通信部78から送信される出力情報に基づいて制御命令を生成する。
処理部7aは、第1センサ26の出力情報と、第2センサ66の出力情報と、を比較し、第1工具本体20および第2工具本体60のうちのいずれが使用中(加工中)であるかを判定する。
次いで、処理部7aは、使用中であると判定した工具本体のセンサを示す情報を制御命令に含める。
これにより、給電制御部76は、使用中である工具本体のセンサに対してより多くの電力を供給する。
【0077】
本実施形態では、切削工具4が、レクテナ34が受電した電力を第1センサ26および第2センサ66に給電する給電制御部76を備えるので、1つのレクテナ34によって受電した電力を、複数のセンサへ給電することができる。
【0078】
また、本実施形態では、切削工具4が、外部装置7との間で通信可能な無線通信部78を備え、給電制御部76が、無線通信部78を介して与えられる外部装置7からの制御命令に基づいて第1センサ26へ与えられる電力および第2センサ66へ与えられる電力を制御するように構成されているので、加工空間Sの外部から、第1センサ26および第2センサ66への給電を制御することができる。
【0079】
さらに、制御命令は、無線通信部78から送信される出力情報に基づいて生成される。出力情報を参照すれば、第1工具本体20および第2工具本体60の中から、使用中の工具本体を把握することができる。
外部装置7は、使用中の工具本体のセンサに対してより多くの電力を供給させる制御命令を生成する。つまり、外部装置7は、使用中の工具本体のセンサへ優先的に給電させる制御命令を生成するので、効率的な給電が可能となる。
【0080】
なお、本実施形態では、制御命令が出力情報に基づいて生成される場合を例示した。しかし、外部装置7が工作機械2の状態を示す情報を取得可能である場合、制御命令は、工作機械2の状態を示す情報に基づいて生成してもよい。
工作機械2の状態を示す情報には、タレット8に取り付けられている工具本体のうち、いずれの工具本体を使用しているのかを示す情報が含まれている。よって、工作機械2の状態を示す情報を参照すれば、第1工具本体20および第2工具本体60の中から、使用中の工具本体を把握することができる。よって、外部装置7は、工作機械2の状態を示す情報に基づいて、使用中の工具本体のセンサに対してより多くの電力を供給させる制御命令を生成することができる。
【0081】
本実施形態では、第1工具本体20および第2工具本体60が外部装置7との通信機能を持たず、筐体22に無線通信部78を設け、外部装置7との通信機能を集約した場合を例示した。しかし、第1工具本体20および第2工具本体60のそれぞれに外部装置7と通信するための通信部を設け、第1工具本体20および第2工具本体60のそれぞれがセンサの出力情報を送信するように構成してもよい。
【0082】
また、本実施形態では、電力制御部30、70および蓄電部32、72をシャンク20a、60aに設けた場合を例示したが、電力制御部30、70および蓄電部32、72は、筐体22に収容されていてもよい。
【0083】
〔第4実施形態について〕
図12は、第4実施形態に係る受電アンテナ回路33を示す図である。
本実施形態では、受電アンテナ回路33が、2つのレクテナ34を備えている点において第1実施形態と相違する。
【0084】
本実施形態の受電アンテナ回路33は、2つのレクテナ34と、合成回路84と、を備える。
2つのレクテナ34は、給電装置6からの給電用の電波を受信し、直流電力を出力する。
合成回路84は、2つのレクテナ34が出力する直流電力を合成する。合成された直流電力は、第1電力線24を介して、第1工具本体20の電力制御部30へ与えられる。
【0085】
本実施形態の受電アンテナ回路33が有する2つのレクテナ34は、それぞれ、送電アンテナ6aからの送電電力を受電する受電アンテナ34aを有する回路部を構成する。
つまり、本実施形態では、2つのレクテナ34がそれぞれ受電アンテナ34aを有しており、2つのレクテナ34がそれぞれ電力を出力する。よって、2つのレクテナ34が出力する電力を合成することで、より多くの電力を受電することができる。
【0086】
本実施形態では、受電アンテナ回路33が2つのレクテナ34を備える場合を例示したが、より多数のレクテナを備えていてもよい。
なお、図12に示す受電アンテナ回路33は、第1実施形態の切削工具4のみでなく、他の実施形態の切削工具4にも適用することができる。
【0087】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
上記実施形態では、受電アンテナ34aが、アンテナ素子としてループ素子34a1を有することでループアンテナを構成する場合を例示した。しかし、受電アンテナ34aは、ループアンテナ以外に、一対の線状素子を有するダイポールアンテナ、パッチ素子を有するパッチアンテナを構成するものであってもよい。
なお、ダイポールアンテナにおけるアンテナ素子の中心は、一対の線状素子の一対の基端部または一対の基端部の中点である。また、パッチアンテナにおけるアンテナ素子の中心は、パッチ素子の放射面の中心である。
【0088】
また、上記実施形態では、切削工具4が旋削加工を行うための工具である場合を例示したが、切削工具4は、切削加工のうちの転削加工を行うための工具であってもよい。転削加工とは、固定されたワークに対して工具を回転させつつ押し当てて行われる加工である。
【0089】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
1 切削加工システム
2 工作機械
4 切削工具
6 給電装置
6a 送電アンテナ
6b 送電部
7 外部装置
7a 処理部
7b 記憶部
7c 入出力部
7d 通信部
8 タレット
8a 端面
9a 工具取付溝
9b 円形面部
9c 外面部
9d 環状溝
9d1 外周面
10 駆動装置
12 移動装置
20 第1工具本体
20a シャンク
20b 切削チップ
21 固定用プレート
22 筐体
22a 筐体本体
22b 仕切板
22b1 板面
22c 防水コネクタ
24 第1電力線
26 第1センサ
28 無線通信部
28a アンテナ
30 電力制御部
32 蓄電部
33 受電アンテナ回路
34 レクテナ(回路部)
34a 受電アンテナ
34a1 ループ素子
34a2 線路
34b 整流回路
34c 回路基板
34c1 基板面
35 回路チップ
40 外板
40a 対向面
40b 内面
42 固定部
48 磁石
50 被把持部
50a 内面
51 固定用プレート
52 アーム部
52a 先端
54 スペーサ
60 第2工具本体
60a シャンク
60b 切削チップ
61 固定用プレート
62 第2電力線
66 第2センサ
70 電力制御部
72 蓄電部
76 給電制御部
78 無線通信部
78a アンテナ
84 合成回路
100 電源
C 回転軸
P 中心
S 加工空間
【要約】
本開示の実施形態に係る切削加工システムは、工作機械の加工空間に設けられる送電アンテナを有する給電装置と、前記加工空間に配置され、かつ、前記送電アンテナからの送電電力を受電する受電アンテナ回路を有する切削工具と、を備える。前記切削工具は、第1センサが設けられた第1工具本体と、前記第1センサへ電力を与えるための第1電力線を介して前記第1工具本体に接続され、前記受電アンテナ回路を内部に収容する、前記第1工具本体に対して別体の筐体と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12