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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023502230
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2022003843
(87)【国際公開番号】W WO2022181260
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2021027848
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009266(JP,A)
【文献】特開昭61-219124(JP,A)
【文献】特開2006-128285(JP,A)
【文献】特開2013-026257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートと電極層とを交互に積層した母積層体を所定の間隔で切断して、第1方向に延びる複数の第一棒状体を形成し、
前記各第一棒状体の少なくとも一表面および互いに隣接する前記第一棒状体の間に樹脂を配置して、前記複数の第一棒状体が互いに固定された平板状ブロックを形成し、
前記平板状ブロックを前記第1方向と直交する第2方向に所定の間隔で切断して、複数の素体前駆体が一列に整列した複数の第二棒状体を形成し、
前記各第二棒状体の切断面に加工処理を行って、前記複数の素体前駆体を複数の素体部品とし、
前記複数の素体部品を焼成して、前記複数の素体部品を焼結するとともに、前記樹脂を除去する、積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記樹脂は、熱可塑性樹脂であり、前記各第一棒状体の前記少なくとも一表面および互いに隣接する前記第一棒状体の間に配置した樹脂粉末を加熱するとともに、前記樹脂粉末の少なくとも一部を溶融させることによって、前記樹脂を配置する、積層セラミック電子部品の製造方法
【請求項2】
前記母積層体を切断した後に、前記複数の第一棒状体を粘着性拡張シート上に配置し、前記粘着性拡張シートを拡張することによって、互いに隣接する前記第一棒状体の間に、前記樹脂が配置される隙間を形成する、請求項1記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
セラミックグリーンシートと電極層とを交互に積層した母積層体を所定の間隔で切断して、第1方向に延びるとともに、各々が第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、第1切断面、および前記第1切断面に対向する第2切断面を有する複数の第一棒状体を形成し、
前記複数の第一棒状体を一定の隙間を空けて整列させ、前記隙間に樹脂を配置して、前記複数の第一棒状体が互いに固定された平板状ブロックを形成し、
前記平板状ブロックを前記第1方向と直交する第2方向に所定の間隔で切断して、複数の素体前駆体が一列に整列した複数の第二棒状体を形成し、
前記各第二棒状体の切断面に加工処理を行って、前記複数の素体前駆体を複数の素体部品とし、
前記複数の素体部品を焼成して、前記複数の素体部品を焼結するとともに、前記樹脂を除去する、積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記樹脂は、熱可塑性樹脂であり、互いに隣接する前記第一棒状体の間に配置した樹脂粉末を加熱するとともに、前記樹脂粉末の少なくとも一部を溶融させることによって、前記樹脂を配置する、積層セラミック電子部品の製造方法
【請求項4】
前記複数の第一棒状体を、複数の前記第1主面が面一となり、かつ前記各第一棒状体の前記第1切断面が該第一棒状体に隣接する前記第一棒状体の前記第2切断面に臨むように整列させた後、前記隙間に樹脂を配置して、前記平板状ブロックを形成する、請求項3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記複数の第一棒状体を、複数の前記第1切断面が面一となり、かつ前記各第一棒状体の前記第1主面が該第一棒状体に隣接する前記第一棒状体の前記第2主面に臨むように整列させた後、前記隙間に樹脂を配置して、前記平板状ブロックを形成する、請求項3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂が少なくとも一部が溶融している状態で、平坦面を有する型部材を、前記平坦面が前記平板状ブロックに対向するように位置させるとともに、前記型部材を前記平板状ブロックに向かって押し付けることによって、前記樹脂の表面を平坦にする、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂の融点は、前記セラミックグリーンシートおよび前記電極層に含まれるバインダの分解温度以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記加工処理を行う前に、平板を準備し、前記各第二棒状体を、前記切断面が前記平板の表面に接触するように、前記平板上で整列させるとともに、互いに隣接する前記第二棒状体同士を接触させることによって、前記複数の第二棒状体が一体化された平板状集合体を形成する、請求項1~のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記平板状集合体を加熱した後に冷却し、互いに隣接する前記第二棒状体同士を前記樹脂で接合する、請求項記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記加工処理は、前記平板状集合体を研磨または研削することを含む、請求項またはに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記加工処理は、前記平板状集合体の第1面に、所定の厚みのセラミックグリーンシートを接触させることを含む、請求項10のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記加工処理は、前記平板状集合体の第1面および該第1面とは反対側の第2面に、所定の厚みのセラミックグリーンシートを接触させることを含む、請求項10のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記加工処理は、前記平板状集合体の第1面および該第1面とは反対側の第2面に、所定の厚みのセラミックスラリーを塗布して乾燥させることを含む、請求項10のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記加工処理は、前記平板状集合体をセラミックスラリー中に浸漬後に引き上げて、乾燥させることを含む、請求項10のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミック電子部品の製造方法に関する。特に、本開示は、セラミックグリーンシートと電極層とを積層してなる母積層体を切断して得られる素体部品を焼成することを含む、積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された積層セラミック電子部品の製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-128285号
【発明の概要】
【0004】
本開示の積層セラミック電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと電極層とを交互に積層した母積層体を所定の間隔で切断して、第1方向に延びる複数の第一棒状体を形成し、
前記各第一棒状体の少なくとも一表面および互いに隣接する前記第一棒状体の間に樹脂を配置して、前記複数の第一棒状体が互いに固定された平板状ブロックを形成し、
前記平板状ブロックを前記第1方向と直交する第2方向に所定の間隔で切断して、複数の素体前駆体が一列に整列した複数の第二棒状体を形成し、
前記各第二棒状体の切断面に加工処理を行って、前記複数の素子前駆体を複数の素体部品とし、
前記複数の素体部品を焼成して、前記複数の素体部品を焼結するとともに、前記樹脂を除去する。
【0005】
また、本開示の積層セラミック電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートと電極層とを交互に積層した母積層体を所定の間隔で切断して、第1方向に延び、各々が第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、第1切断面、および前記第1切断面に対向する第2切断面を有する複数の第一棒状体を形成し、
前記複数の第一棒状体を一定の隙間を空けて整列させ、前記隙間に樹脂を配置して、前記複数の第一棒状体が互いに固定された平板状ブロックを形成し、
前記平板状ブロックを前記第1方向と直交する第2方向に所定の間隔で切断して、複数の素体前駆体が一列に整列した複数の第二棒状体を形成し、
前記各第二棒状体の切断面に加工処理を行って、前記複数の素子前駆体を複数の素体部品とし、
前記複数の素体部品を焼成して、前記複数の素体部品を焼結するとともに、前記樹脂を除去する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
図1】積層セラミックコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図1の積層セラミックコンデンサの素体部品を模式的に示す斜視図である。
図3図2の素体部品の前駆体を模式的に示す斜視図である。
図4】電極が印刷されたグリーンシートを模式的に示す斜視図である。
図5】電極が印刷されたグリーンシートの積層状態を模式的に示す斜視図である。
図6図1の積層セラミックコンデンサを製造するための母積層体を模式的に示す斜視図である。
図7図6の母積層体を切断して得た第一棒状体を模式的に示す斜視図である。
図8】粘着拡張シート上に配置された第一棒状体を模式的に示す斜視図である。
図9】樹脂粉末で覆われた第一棒状体を加熱している状態を模式的に示す断面図である。
図10】樹脂上に配置した平板を押圧している状態を模式的に示す断面図である。
図11】平板状ブロックを模式的に示す斜視図である。
図12図11の平板状ブロックを切断して得た第二棒状体を模式的に示す斜視図である。
図13図12の第二棒状体を軸線回りに回転させた状態を模式的に示す斜視図である。
図14図13の第二棒状体を集合させた平板状集合体を模式的に示す斜視図である。
図15】平板状集合体の表面を研磨加工している状態を模式的に示す側面図である。
図16】樹脂粉末同士の溶融接合によって一体となった第一棒状体を模式的に示す断面図である。
図17】平板状ブロックを模式的に示す斜視図である。
図18図17の平板状ブロックを切断して得られた第二棒状体を模式的に示す斜視図である。
図19図18の第二棒状体を軸線回りに回転させた状態を模式的に示す斜視図である。
図20図19の第二棒状体を集合させた平板状集合体を模式的に示す斜視図である。
図21】平板状集合体の両面にセラミックグリーンシートを貼り付けている状態を模式的に示す斜視図である。
図22】両面にセラミックグリーンシートが貼付された平板状集合体を模式的に示す斜視図である。
図23】焼成後の平板状集合体を模式的に示す斜視図である。
図24】バレル研磨が行われた焼成後の素体部品を模式的に示す斜視図である。
図25A】支持シートと樹脂シートとで挟まれた第一棒状体を加熱している状態を模式的に示す断面図である。
図25B】2枚の樹脂シートで挟まれた第一棒状体を加熱している状態を模式的に示す断面図である。
図26】樹脂によって固定された第一棒状体を模式的に示す断面図である。
図27】樹脂粉末が配置された第一棒状体を加熱する過程を模式的に示す断面図である。
図28】樹脂上に配置した平板を押圧している状態を模式的に示す断面図である。
図29】平板状ブロックを模式的に示す斜視図である。
図30図29の平板状ブロックを切断して得られた第二棒状体を模式的に示す斜視図である。
図31図30の第二棒状体を軸線回りに回転させた状態を模式的に示す斜視図である。
図32A図31の第二棒状体の切断面にスラリー浸漬塗布している状態を模式的に示す断面図である。
図32B図31の第二棒状体の切断面にスラリー浸漬塗布している状態を模式的に示す断面図である。
図33】側面にスラリーが付与された第二棒状体を模式的に示す斜視図ある。
図34】焼成後の第二棒状体を模式的に示す斜視図である。
図35図31の第二棒状体を集合させた平板状集合体を模式的に示す斜視図である。
図36図35の平板状集合体の表面にセラミックグリーンシートを転写している状態を模式的に示す斜視図である。
図37図35の平板状集合体の表面にセラミックグリーンシートを転写した後、基材を剥がしている状態を模式的に示す斜視図である。
図38】表面に保護層となるセラミックグリーンシートが付与された平板状集合体を模式的に示す斜視図である。
図39】焼成後の平板状集合体を模式的に示す斜視図である。
図40】平板状集合体の表面にセラミックスラリーを転写している状態を模式的に示す斜視図である。
図41】平板状集合体をセラミックスラリー中に浸漬している状態を模式的に示す断面図である。
図42】乾燥中の平板状集合体を模式的に示す斜視図である。
図43】切断面を上向きにして集合配置した第一棒状体を模式的に示す斜視図である。
図44】粘着拡張シート上で離間された第一棒状体を模式的に示す斜視図である。
図45】樹脂粉末が充填された第一棒状体の状態を模式的に示す断面図である。
図46】樹脂上に配置した平板を押圧している状態を模式的に示す断面図である。
図47】平板状ブロックを模式的に示す斜視図である。
図48】平板状ブロックを切断して得た第二棒状体を模式的に示す斜視図である。
図49】切断後に集合させた第二棒状体の様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の積層セラミック電子部品の製造方法が基礎とする構成について説明する。近年、電子機器の小型高機能化に伴い、電子機器に搭載される電子部品の小型化が求められている。そのような電子部品の一例として、積層セラミックコンデンサが挙げられる。積層セラミックコンデンサは、一辺の長さが1mm以下である製品が主流となってきている。
【0008】
積層セラミック電子部品は、例えば特許文献1に記載されているように、セラミックグリーンシートと電極層とを積層してなる母積層体を切断して個々の素体部品を得た後、素体部品を焼成し、焼成後の素体部品に所定の処理を施して製造することができる。
【0009】
近年の積層セラミック電子部品の小型化傾向に伴い、従来の積層セラミック電子部品の製造方法では、素体部品のハンドリングが困難になってきている。その結果、製品品質の低下、または製造コストの増大等の問題が生じることがあった。
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の積層セラミック電子部品の製造方法の実施形態について説明する。なお、以下では、積層セラミック電子部品の一例である積層セラミックコンデンサの製造方法について説明するが、本開示の積層セラミック電子部品の製造方法は、積層セラミックコンデンサの製造方法に限られず、積層型圧電素子、積層サーミスタ素子、積層チップコイル、およびセラミック多層基板等の様々な積層セラミック電子部品の製造方法にも適用することができる。
【0011】
先ず、積層セラミック電子部品の一例である積層セラミックコンデンサについて説明する。図1は、積層セラミックコンデンサの一例の斜視図である。図2は、図1の積層セラミックコンデンサの素体部品を模式的に示す斜視図である。図2は、焼成前の素体部品を示す図である。なお、焼成後の素体部品は、焼成によって収縮しているが、焼成前の素体部品と同一構造を有するため、図2は、焼成後の素体部品を示す図であるともいえる。図3は、図2の素体部品の前駆体を示す斜視図である。以下では、素体部品の前駆体を、素体前駆体と呼ぶことがある。
【0012】
積層セラミックコンデンサ1は、素体部品2と、外部電極3とを有している。素体部品2は、図2に示すように、略直方体状の形状を有している。素体部品2は、誘電体セラミックからなり、外部電極3に接続される複数の内部電極5を有している。外部電極3は、素体部品2の一対の端面に配設され、他の隣接する面にまで回り込んでいる。複数の内部電極5は、素体部品2の一対の端面から内部に延び、互いに接することなく交互に積層されている。
【0013】
外部電極3は、素体部品2に接続する下地層と、外部配線の外部電極3へのはんだ実装を容易にするめっき外層とを有して構成されている。下地層は、焼成後の素体部品2に塗布焼き付けされてもよい。下地層は、焼成前の素体部品2に配設され、素体部品2と同時に焼成されてもよい。下地層およびめっき外層は求められる機能に合わせて複数層であっても構わない。外部電極3は、めっき外層を有さず、下地層と導電性樹脂層とを有して構成されていてもよい。
【0014】
素体部品2は、図2,3に示すように、素体前駆体13と、保護層6とを有している。素体前駆体13は、図3に示すように、略直方体状の形状を有している。素体前駆体13は、互いに対向する第1主面7aおよび第2主面7b、互いに対向する第1端面8aおよび第2端面8b、ならびに互いに対向する第1側面9aおよび第2側面9bを有している。以下、第1主面7aと第2主面7bとを区別しない場合、単に、主面7と記載する。同様に、第1端面8aと第2端面8bとを区別しない場合、単に、端面8と記載し、第1側面9aと第2側面9bとを区別しない場合、単に、側面9と記載する。
【0015】
素体前駆体13の端面8および側面9には、内部電極5が露出している。保護層6は、素体前駆体13の側面9に配設されている。保護層6は、第1端面8aに露出した内部電極5と、第2端面8bに露出した内部電極5とが電気的に短絡することを抑制している。また、保護層6は、内部電極5における、素体前駆体13の側面9に露出した部位を物理的に保護している。保護層6は、素体部品2を作製する上で最後に取り付けられる。保護層6は、素体前駆体13の側面9に露出している内部電極5を保護している。保護層6は、セラミック材料からなっていてもよい。この場合、保護層6を、絶縁性を有し、かつ機械的強度が高いものとすることができる。保護層6となるセラミック材料は、通常、焼成前の素体前駆体13に配設される。なお、図2においては、素体前駆体13と保護層6との境界を二点鎖線で示しているが、実際の境界は明瞭に現われるわけではない。
【0016】
以下、図2の素体部品2および図1の積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。
【0017】
先ず、セラミック誘電体材料であるBaTiOに添加剤を加えたセラミックの混合粉体をビーズミルで湿式粉砕混合する。この粉砕混合したスラリーに、ポリビニルブチラール系バインダ、可塑剤、および有機溶剤を加えて混合し、セラミックスラリーを作製する。
【0018】
次に、ダイコーターを用いて、キャリアフィルム上にセラミックグリーンシート10を成形する。セラミックグリーンシート10の厚みは、例えば、1~10μm程度であってもよい。セラミックグリーンシート10の厚みを薄くするほど、積層セラミックコンデンサの静電容量が高くすることができる。セラミックグリーンシート10の成形は、ダイコーターだけに限られず、例えば、ドクターブレードコーターまたはグラビアコーター等を用いて行ってもよい。
【0019】
次に、図4で示すように、上記で作成したセラミックグリーンシート10に、スクリーン印刷法を用いて、内部電極5となる金属材料を含む導電性ペーストを所定のパターンで印刷する。導電性ペーストの印刷は、スクリーン印刷法だけに限られず、例えば、グラビア印刷法等を用いて行ってもよい。導電性ペーストは、例えばNi、Pd、Cu、Ag等の金属、またはそれらの合金を含んでいてもよい。図3では、内部電極5のパターンが複数列の帯状パターンである例を示したが、内部電極5のパターンは、例えば個別電極パターン等のパターンであってもよい。
【0020】
コンデンサとしての特性が確保できる限りにおいて、内部電極5の厚みが薄ければ薄いほど、内部応力による内部欠陥を防ぐことができる。高積層数のコンデンサであれば、内部電極5の厚みは、例えば、1.0μm以下であってもよい。
【0021】
次に、図5に示すように、所定枚数積層したセラミックグリーンシート10の上に、内部電極5が印刷されたセラミックグリーンシート10を所定枚数積層し、さらに、セラミックグリーンシート10を所定枚数積層する。内部電極5が印刷されたセラミックグリーンシート10は、内部電極5のパターンをずらしながら所定枚数積層する。なお、図5では省略されているが、セラミックグリーンシート10の積層は支持シート上で行う。支持シートは、弱粘着シートまたは発泡剥離シート等の粘着および剥離が可能な粘着剥離シートであってもよい。
【0022】
次に、セラミックグリーンシート10を複数枚積層されてなる積層体を積層方向にプレスして、図6に示すような一体化した母積層体11を得る。積層体のプレスは、例えば静水圧プレス装置を用いて行うことができる。母積層体11の内部では、セラミックグリーンシート10を挟んで内部電極5が層状に埋め込まれている。母積層体11が縦横に切断されると、図3に示す素体前駆体13になる。母積層体11の主面、端面、および側面は、素体前駆体13の主面7、端面8、および側面9にそれぞれ相当するため、以下では、同じ参照符号を付す。なお、図6では省略されているが、母積層体11の下には、セラミックグリーンシート10を積層する際に用いた支持シートが位置している。
【0023】
次に、図7に示すように、押切切断装置を用いて、母積層体11を所定の寸法で切断し、第1方向D1に延びる複数の第一棒状体12を得る。第一棒状体12の切断面は、素体前駆体13の端面8に相当し、第一棒状体12の切断面には、内部電極5が露出している。なお、母積層体11を切断する方法は、押切切断装置を用いる方法に限定されず、例えばダイシングソウ装置等を用いてもよい。なお、本明細書において、複数の第一棒状体12を得るための母積層体11の切断を、第一の切断と呼ぶことがある。
【0024】
次に、図8に示すように、図7に示す複数の第一棒状体12を粘着拡張シート14上に配置する。さらに、互いに隣接する第一棒状体12の間の間隔が広がるように、粘着拡張シート14の両端を矢符Aで示す方向に拡張する。粘着拡張シート14の拡張量を調整することによって、第一棒状体12同士の隙間を調整することができる。第一棒状体12同士の隙間が広過ぎると、後の工程で使用する樹脂粉末の使用量が多くなる。第一棒状体12同士の間隔は、樹脂粉末が第一棒状体12同士の隙間に進入し得る程度であればよい。具体的には、微粒の樹脂粉末を使用するとともに、第一棒状体12同士の隙間を樹脂粉末の平均粒径の2倍以上としてもよい。
【0025】
上記のように、本実施形態では、第一棒状体12同士の隙間を、粘着拡張シート14の拡張量の調整によって制御することができる。このため、後の工程で使用される樹脂粉末の量を、第一棒状体12同士を固定し得る最小量とすることが可能となる。その結果、積層セラミックコンデンサの製造における材料コストを低減することができる。
【0026】
なお、ダイシングソウ装置を用いた切断のように、切断巾を伴う切断においては、第一棒状体12同士の隙間を調整しなくてもよい。押し切り切断装置による切断の場合、切断溝巾はほとんどないが、後の工程において、溶融した樹脂が、第一棒状体12同士の僅かの隙間に部分的に入り込んで、第一棒状体12上に位置する樹脂と一体となるため、第一棒状体12同士を固定することができる。なお、後に行う加工処理の目的によっては、押し切り刃による切断を行う場合であっても、互いに隣接する第一棒状体12の間に間隔を形成する処理が不要となることがある。
【0027】
図4~8に示す工程は、以下に説明する各実施形態に共通する工程である。先ず、第1実施形態について説明する。
【0028】
(第1実施形態)
本実施形態では、図9に示すように、先ず、平坦な底面を有する平底皿17を準備し、平底皿17の底面上に支持シート18と一緒に複数の第一棒状体12を配置する。複数の第一棒状体12および支持シート18は、支持シート18が平底皿17の底面に接するように配置する。続いて、熱可塑性の樹脂からなる樹脂粉末16を第一棒状体12の少なくとも一表面に配置した後、樹脂粉末16を加熱して溶融させる。
【0029】
樹脂粉末16を配置した後、加熱を行う前に、複数の第一棒状体12に振動を与えてもよい。これにより、樹脂粉末16を互いに隣接する第一棒状体12の隙間に充填することができるとともに、樹脂粉末16の該隙間への充填度を高めることができる。なお、樹脂粉末16の平均粒径は隙間の長さの2分の1以下であってもよく、この場合、樹脂粉末16の隙間への充填度を効果的に高めることができる。樹脂粉末16の平均粒径は、例えば、20~30μm程度であってもよい。第一棒状体12同士の隙間の長さは、例えば、100μm程度であってもよい。
【0030】
本実施形態では、樹脂粉末16を振動充填した後に、平行仕切り板(図示せず)を、第一棒状体12の一表面(上面)から所定の間隔をあけて、第一棒状体12の一表面に沿ってスライドさせて、余分な樹脂粉末16を掻き取る。続いて、樹脂粉末16を所定の温度まで加熱し、樹脂粉末16の少なくとも一部を溶融させる。所定の温度は、樹脂粉末16を構成する材料の融点等に応じて適宜設定することができる。所定の温度は、例えば、180℃程度であってもよい。
【0031】
熱可塑性樹脂からなる樹脂粉末16は加熱によって溶融し、溶融した樹脂15が、下方に流動して、第一棒状体12同士の隙間に入る。その際、隙間に存在していた空気は、樹脂粉末16間の空隙を通って外部に出る。これにより、隙間の空気は押し出され、樹脂15が下方から隙間に充填される。第一棒状体12の一表面に押し出された空気によって、樹脂15が大きな泡状のドームを作ることがあるが、泡状のドームは表面膜であり、樹脂15の第一棒状体12同士の隙間への充填に影響を及ぼすものではない。
【0032】
熱可塑性の樹脂15の融点は、セラミックグリーンシート10および内部電極5に含まれるバインダの分解温度以下であってよい。これにより、樹脂15の溶融段階における第一棒状体12の変質を抑制することができ、その結果、製品品質を向上させることができる。また、樹脂15は、金属、塩素またはフッ素等を含有しない樹脂であってもよい。これにより、金属、塩素またはフッ素等の物質が、素体部品2の焼成後も素体部品2の表面に残り、製品の特性劣化を引き起こす虞を低減することができる。
【0033】
溶融した樹脂15の第一棒状体12に対する濡れ性に関して、溶融した樹脂15の第一棒状体12への接触角は30度以下であってもよい。接触角が大きいと、第一棒状体12が溶融樹脂を弾いた状態になるため、溶融した樹脂15と第一棒状体12との間に空隙が形成され、第一棒状体12同士を樹脂15でしっかり固定できないことがある。接触角が30度以下である場合、溶融した樹脂15の第一棒状体12に対する濡れ性が高められ、第一棒状体12同士を樹脂15でしっかりと固定できる。
【0034】
樹脂15は、ワックス等の油脂材料を含まない樹脂であってもよい。樹脂15は、後の工程、例えば、保護層6となるセラミックグリーンシートを第二棒状体上に配置して乾燥させる工程において、例えば90~120℃の温度環境下に置かれる。ワックス等の油脂材料は、そのような温度では形状を保持できない。また、溶融したワックスは、セラミックグリーンシート内のバインダを溶解し、素体部品2の膨潤または変形等の問題を引き起こす虞がある。樹脂15がワックス等の油脂材料を含まないことで、そのような問題を回避することができる。
【0035】
樹脂15は、硬化反応型の樹脂以外の樹脂であってよい。硬化反応型の樹脂は、硬化時の収縮が大きいため、素体部品2の変形の原因となることがある。また、硬化反応型の樹脂は、一般に、熱分解温度が高いので、樹脂を焼成によって除去する際に、製品に影響を与えない焼成条件を達成することが難しい。
【0036】
樹脂粉末16を構成する樹脂15、すなわち第一棒状体12同士を固定する樹脂15は、上記のように、熱可塑性の樹脂である。熱可塑性の樹脂15としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、およびメタクリル酸エステル系ポリマー等が挙げられる。
【0037】
本実施形態では、図10に示すように、溶融した樹脂15が第一棒状体12同士の隙間に充填された段階で、平板21を溶融した樹脂15上に配置し、平板21を矢符Bで示す方向に押圧する。平板21は、押圧力で溶融した樹脂15中に沈降するが、第一棒状体12の周囲に設置されていたスペーサー22で沈降が止まる。そのままの状態で冷却することで、第一棒状体12の上部に樹脂15の層が形成される。なお、平板21の押圧は、例えばプレス加圧装置を用いて行うことができる。
【0038】
図11は、複数の第一棒状体12が樹脂で互いに固定されて一体となった平板状ブロック23を示す。複数の第一棒状体12は、第1方向D1に延びている。平板状ブロック23では、隣接する第一棒状体12の間に充填された樹脂が第一棒状体12の上部の樹脂層へと延展した結果、平坦な樹脂表面が形成されている。
【0039】
次に、図11の平板状ブロック23を、第1方向D1と直交する第2方向D2に所定の間隔で切断する。図12は、平板状ブロック23を切断して得られた複数の第二棒状体24を示す。なお、本明細書において、複数の第二棒状体24を得るための平板状ブロック23の切断を、第二の切断と呼ぶことがある。第二の切断は、第一の切断と直交する方向に行われるともいえる。第二棒状体24の切断面は、素体前駆体13の側面9に相当し、該切断面には内部電極5が露出している。この時点で、個々の積層セラミック電子部品は、図3に示す素体前駆体13となっている。
【0040】
なお、図11の平板状ブロック23の上面が凹凸面であると、第二の切断の精度が低下する虞がある。本実施形態では、図10に示すように、平板21を用いて樹脂15に圧力を加えるため、平板状ブロック23の上面は平坦面になっている。このため、第二の切断の精度を向上させることができ、その結果、製品品質を向上させることができる。
【0041】
次に、図13に示すように、複数の第二棒状体24を、各々の軸線の周りに90度回転させて、第二の切断による切断面(内部電極5が露出した面)を上向きにする。なお、第二棒状体24を回転させる際、第二棒状体24に外力がかかるが、素体前駆体13同士が固定用樹脂で強固に固定されているので、素体前駆体13が脱落したり、第二棒状体24が変形したりする虞が低減されている。
【0042】
次に、複数の第二棒状体24を集合させて、平板状集合体27を形成する。平板状集合体27を形成する際、図14に示すように、2つのL字型の枠板25を用いて、複数の第二棒状体24を側方周囲から押さえてもよい。平板状集合体27では、複数の第二棒状体24の複数の切断面が、実質的に、同一平面上に位置していてもよい。第二の切断による切断面(内部電極5が露出した面)は、平板状集合体27の上面および下面、すなわち平板状集合体の表面および裏面となる。第二の切断による切断面を、電極露出面と呼ぶことがある。
【0043】
図14に示す状態で、電極露出面に加工処理を施してもよいが、本実施形態では、加工処理を行う前に、平板状集合体27を加熱し、樹脂の溶融が始まった直後に加熱を止める処理を施す。これにより、互いに隣接する第二棒状体24が、少なくとも部分的に、樹脂で接合されるので、平板状集合体27は、枠板25を取り外しても、その形態を自立保持できる。その結果、後の工程における平板状集合体27のハンドリングが容易になる。平板状集合体27は、第二の切断による第二棒状体24の切断面が上面および下面となるため、複数の第二棒状体24を単一の部品として取り扱うことができる。その結果、後の工程における切断面への加工処理が容易になり、ひいては、積層セラミック電子部品の生産性および製品品質を向上させることができる。
【0044】
次に、平板状集合体27の第1面(一方主面)27aに粘着剥離ができる支持シート18を貼り付けて固定する。続いて、図15に示すように、研磨盤28を用いて、平板状集合体27の第2面(他方主面)27bを研磨して、表面を平滑にするとともに、露出電極間の異物を取り除く。第2面27bの研磨が終了後、別の支持シート18で研磨が終了した面を固定し、第1面27aの研磨を行う。第1面27aおよび第2面27bを研磨した後の平板状集合体27の寸法は、製品の所定の寸法に合わせている。
【0045】
研磨は、複数の砥石と研磨粉を用いて、粗い番手から細かい番手に進んで行う。最終研磨では、平均粒径が1μm以下の砥粒を用いてもよく、平均粒径が0.5μm以下の砥粒を用いてもよい。これにより、内部電極5から研磨で遊離した金属粒子が砥粒傷の中に残留し、内部電極5間の絶縁を劣化させる虞を低減できる。砥粒材料は、研磨性に優れ、かつ焼成中に誘電体材料および電極材料と反応し難いダイヤモンド砥粒であってもよい。
【0046】
本実施形態では、個々の素体前駆体13を研磨するのではなく、平板状集合体27を研磨するため、素体前駆体13の整列、固定等の工程を省略することができる。また、研磨中の素体前駆体13のぐらつきによる被研磨面のばらつきを抑制することができるため、全ての素体前駆体13に均一な研磨面を形成することができる。
【0047】
なお、砥粒研磨を行う代わりに、サンドペーパーテープ研磨または研削バイトによる切削処理を行ってもよい。その場合も、仕上げで使用される研磨基材に埋め込まれている研磨粒子の平均粒径は、1μm以下であってよい。これにより、内部電極5から遊離した金属粒子によって、内部電極5間の絶縁が劣化する虞を低減できる。
【0048】
研磨を施した平板状集合体27に、保護層6となるセラミックグリーンシートを付与する。その後、平板状集合体27に脱脂処理および焼成処理を行って、素体部品2を焼結するとともに、樹脂を分解燃焼させて除去する。焼成後の平板状集合体27を個片化することによって、図2の素体部品2を作製することができる。さらに、素体部品2に外部電極3を取り付けることによって、図1の積層セラミックコンデンサ1を製造することができる。
【0049】
本実施形態では、個々の素体部品2をハンドリングするのではなく、素体部品2となる領域を複数有する第一棒状体12、および複数の素体前駆体13が整列した第二棒状体24をハンドリングするので、素体部品2におけるハンドリングが容易になる。その結果、製品品質を向上させるとともに、製造コストの負担を軽減することが可能となる。
【0050】
本実施形態では、第一棒状体12同士および第二棒状体24同士を固定する樹脂が熱可塑性樹脂であるため、加熱によって樹脂粉末同士を溶融接合させたり、樹脂を溶融流動させたりすることができる。加熱された際、溶融した樹脂は、第一棒状体12および第二棒状体24に外力を実質的に及ぼすことなく、第一棒状体12同士の隙間および第二棒状体24同士の隙間に進入することができる。また、冷却された際、樹脂は体積収縮が小さいため、第一棒状体12および第二棒状体24に不要な応力がかからず、素体部品2に変形または損傷等が生じる虞を低減することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本開示の製造方法の第2実施形態は、図8に示す複数の第一棒状体12を作製するまでは、本開示の製造方法の第1実施形態と同一である。
【0052】
本実施形態では、先ず、図16で示すように、平坦な底面を有する平底皿17を準備し、平底皿17の底面上に支持シート18と一緒に複数の第一棒状体12を配置する。複数の第一棒状体12および支持シート18は、支持シート18が平底皿17の底面に接するように配置する。次に、複数の第一棒状体12の上方から、平底皿17の底面上に樹脂粉末16を敷き詰める。続いて、複数の第一棒状体12に振動を与えて、樹脂粉末16を第一棒状体12同士の隙間に振動充填する。その後、平行仕切り板を、第一棒状体12の一表面(上面)から所定の間隔をあけて、第一棒状体12の一表面に沿ってスライドさせ、余分な樹脂粉末16を掻き取り、樹脂粉末16からなる粉体の上面を平坦にする。樹脂粉末16の平均粒径は、第一棒状体12同士の隙間の2分の1以下であってもよく、この場合、樹脂粉末16の第一棒状体12同士の隙間への充填度を高めることができる。
【0053】
その後、樹脂粉末16の完全溶融が起こる直前の温度までの加熱を行う。これにより、図16に示すように、樹脂粉末16同士の接触点における、樹脂粉末16同士の溶融接合を起こすことができる。その結果、少なくとも一部が溶融した樹脂粉末16によって第一棒状体12同士が固定され、図17に示すような、第一棒状体12同士が互いに固定されて一体となった平板状ブロック23が得られる。なお、加熱温度を適宜調整することにより、全ての樹脂粉末16を一体とすることが可能であり、その場合、第一棒状体12同士は強固に固定される。
【0054】
次に、図17の平板状ブロック23を、第1方向D1と直交する第2方向D2に所定の間隔で切断する。図18は、平板状ブロック23を切断して得られた複数の第二棒状体24を示す。言い換えれば、図18は、平板状ブロック23に第二の切断を行って得られた複数の第二棒状体24を示す。第二棒状体24の切断面は、素体前駆体13の側面9に相当し、該切断面には内部電極5が露出している。この時点で、個々の積層セラミック電子部品は、図3に示す素体前駆体13となっている。
【0055】
次に、図19に示すように、複数の第二棒状体24を、各々の軸線の周りに90度回転させて、第二の切断による切断面(内部電極5が露出した面)を上向きにする。なお、第二棒状体24を回転させる際、第二棒状体24に外力がかかるが、素体前駆体13同士が樹脂で強固に固定されているので、素体前駆体13が脱落したり、第二棒状体24が変形したりする虞が低減されている。
【0056】
次に、複数の第二棒状体24を集合させて、平板状集合体27を形成する。平板状集合体27を形成する際、図20に示すように、2つのL字型の枠板25を用いて、複数の第二棒状体24を側方周囲から押さえてもよい。平板状集合体27では、複数の第二棒状体24の複数の切断面が、実質的に、同一平面上に位置していてもよい。第二の切断による切断面(内部電極5が露出した面)は、平板状集合体27の上面および下面、すなわち平板状集合体の表面および裏面となっている。続いて、平板状集合体27を加熱し、第二棒状体24に付着している樹脂の溶融が始まった直後に加熱を止めることによって、枠板25を取り外しても形態を自立保持できる平板状集合体27とする。平板状集合体27の複数の第二棒状体24は互いに固定されているため、平板状集合体27を形成した後、L字型の枠板25を取り外すことができる。そのため、後の工程において、無駄な空間または設備が不要となる。
【0057】
次に、図21に示すように、平板状集合体27の上面および下面に、保護層6となるセラミックグリーンシート10を配置して接合する。保護層6となるセラミックグリーンシート10としては、素体部品2に用いられたセラミックグリーンシートと同一成分であり、かつ保護層6として必要な所定の厚みを有するシートを用いる。セラミックグリーンシート10は、平板状集合体27の両面に一度に貼り付けてもよい。セラミックグリーンシート10が単体でのハンドリングが可能な強度を有さない場合、平板状集合体27の両面に一度に貼り付けず、片面ずつセラミックグリーンシート10を貼り付けてもよい。これにより、セラミックグリーンシート10と平板状集合体27との接合を安定したものとすることができる。
【0058】
次に、上面および下面にセラミックグリーンシート10が接合された平板状集合体27に静水圧プレスを施して、保護層6となるセラミックグリーンシートを密着させ、図22に示す平板状集合体27を形成する。図22の平板状集合体27では、セラミックグリーンシート10の余分な部分(外周部)を切り取ってある。この時点で、個々の積層セラミック電子部品は、図3に示す素体前駆体13に、保護層6となるセラミックグリーンシート10が貼り付けられた、図2の素体部品2となる。
【0059】
次に、図22の平板状集合体27に脱脂処理および焼成処理を行う。先ず、平板状集合体27をジルコニア製のプレート上に配置し、平板状集合体27が配置されたプレートを脱脂炉に入れて溶剤とバインダを除去し、その後、高温の焼成炉で素体部品を焼結させる。焼成温度は、内部電極5となる導電性ペーストに含まれる金属材料等に応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、1100~1250℃であってもよい。従来の積層セラミック電子部品の製造方法は、焼成処理を行う前に、素体部品である生チップをセラミック製の焼成プレート上に並べる工程を必要とする。本実施形態では、複数の素体部品2が一体となった平板状集合体27をそのまま焼成プレートの上に載せるだけでよいので、個々の素体部品2を焼成プレート上に並べる工程が不要となる。
【0060】
図23は、焼成後の平板状集合体27を模式的に示す。図23に示すように、素体部品2を囲んでいた樹脂は分解燃焼して無くなる。そのため、素体部品2間は空隙31になり、保護層6と素体前駆体13とで構成される素体部品2だけが残る。また、保護層6における素体部品2間に位置する部位に分離割れライン32が生じるため、素体部品2は、実質的に、個々に切り離されている。分離割れライン32は、素体部品2が焼結過程で収縮し、素体部品2間の隙間が広がることで、焼結されたセラミックグリーンシート10における、素体部品2間に位置し、厚みの薄い部位に亀裂が入って自然に形成される。
【0061】
分離割れライン32は、保護層6となるセラミックグリーンシートまたは乾燥後のセラミックスラリーの厚みが、40μmを超えると部分的に発生しないことがある。そのため、保護層6となるセラミックグリーンシートまたは乾燥後のセラミックスラリーの厚みは、40μm以下であってもよい。
【0062】
次に、焼成後の素体部品2にバレル研磨を行う。バレル研磨は、素体部品2の角およびバリを取り除く目的で行うものであり、公知のバレル研磨を用いることができる。本実施形態では、素体部品2と研磨メディアを水が入ったポットの中に入れて回転させて研磨を行う。図24は、バレル研磨後の素体部品2を示す。図24に示すように、バレル研磨後の素体部品2では、保護層6の突出縁が取り除かれ、素体部品2の角がとれている。なお、図24は、図2に示す素体部品2と同一の素体部品2であるが、図2とは異なる視点から見た素体部品2を示している。図24は、図23と同一視点になっている。また、図24では、実際には存在しないが、素体前駆体13と保護層6との境界を二点鎖線で示している。
【0063】
上記のようにして、図2の素体部品2を作製することができる。さらに、素体部品2に外部電極3を取り付けることによって、図1の積層セラミックコンデンサ1を製造することができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本開示の製造方法の第3実施形態は、図8に示す複数の第一棒状体12を作製するまでは、本開示の製造方法の第1実施形態と同一である。
【0065】
本実施形態では、図25Aに示すように、先ず、第1の平板21a上に支持シート18と一緒に複数の第一棒状体12を配置する。複数の第一棒状体12および支持シート18は、支持シート18が第1の平板21aの上面に接するように配置する。続いて、支持シート18で支持された複数の第一棒状体12の周囲を枠板25で囲み、複数の第一棒状体12の上に樹脂シート36を配置し、さらに、熱可塑性樹脂からなる樹脂シート36上に第2の平板21bを配置する。その後、第2の平板21bを矢符Cで示す方向に一定の圧力で押圧しながら、樹脂を加熱して溶融させる。
【0066】
溶融樹脂が下方に流動し、第一棒状体12同士の隙間に進入することで、第一棒状体12同士が樹脂によって固定される。本実施形態では、熱可塑性の樹脂をシート状にして第一棒状体12に付与するため、その後の加熱までの工程が容易になる。また、第一棒状体12同士が固定されるため、複数の第一棒状体12を単一の部品としてハンドリングすることができる。その結果、後の工程における切断面への加工処理が容易になる。さらに、加工処理を施した後の焼成工程で、第一棒状体12同士を固定している樹脂を除去することができる。
【0067】
枠板25の上面は、第一棒状体12の上面と同等の高さ位置又はそれ以上であってよい。これにより、溶融した樹脂が外部に流出することを抑制できる。第一棒状体12の上面の高さ位置は、樹脂の外部への流出を抑制し得る限りにおいて、第一棒状体12の上面の高さ位置以下であってもよい。また、樹脂シート36の厚みは、0.3mm程度であってよい。樹脂シート36は、厚みが薄ければ薄いほど、材料を節約でき、製造コストを低減することができる。本実施形態では、樹脂シート36の厚みを、材料を節約できるとともに、複数の第一棒状体12を一体的にハンドリングすることを可能とする厚みに設定した。
【0068】
図25Bに示すように、複数の第一棒状体12を2枚の樹脂シート36で挟んだ状態で、2枚の樹脂シートの樹脂を加熱溶融させてもよい。この場合、複数の第一棒状体12を上側および下側から挟んだ構造となるため、第一棒状体12同士を強固に固定することが可能となる。また、樹脂の加熱は、真空装置内で行ってもよい。この場合、溶融した樹脂が第一棒状体12同士の隙間に入り込みやすくなるため、第一棒状体12同士を空隙率が低減された樹脂によって固定することが可能となる。その結果、第一棒状体12同士をより強固に固定することができる。
【0069】
図26は、図25Aに示す第一棒状体12の、樹脂を加熱溶融させた後の状態を模式的に示す断面図である。図26に示すように、溶融した樹脂15が下方に流動し、第一棒状体12同士の隙間を充填している。なお、図26に示すように、隙間に位置する樹脂15に空隙31が存在することがあるが、第一棒状体12同士は樹脂15によって強固に固定されている。図26は、第2実施形態における図17に示す状態に対応する。第3実施形態における以降の工程は、第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0070】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明をする。本開示の製造方法の第4実施形態は、図8に示す複数の第一棒状体12を作製するまでは、本開示の製造方法の第1実施形態と同一である。
【0071】
本実施形態では、先ず、平底皿17の底面上に樹脂粉末16を敷き詰めた後、樹脂粉末16を加熱溶融させて、図27に示すように、底敷樹脂19を成形する。続いて、底敷樹脂19上に図8に示す複数の第一棒状体12を配置し、複数の第一棒状体12上に樹脂粉末16を敷き詰める。複数の第一棒状体12上に樹脂粉末を敷き詰める際、複数の第一棒状体12に振動を与えて、第一棒状体12同士の隙間に樹脂粉末16を密に充填させる。さらに、振動充填の後に、平行仕切り板を、第一棒状体12の一表面(上面)から所定の間隔をあけた状態で、第一棒状体12の一表面(上面)に沿ってスライドさせ、一表面上の樹脂粉末16層を均一な厚みにする。なお、樹脂材料や粉末のサイズは、第1実施形態で記述したとおりである。
【0072】
その後、図27に示す状態の複数の第一棒状体12を所定の温度のオーブンの中に入れて、樹脂粉末16を加熱溶融する。所定の温度は、樹脂粉末16を構成する材料の融点等に応じて適宜設定することができる。溶融樹脂で第一棒状体12同士の隙間が充填され、また底敷樹脂19も溶融するので、樹脂粉末16が溶融した樹脂と底敷樹脂19とは一体化する。底敷樹脂19と樹脂粉末16とは、同一材料からなっていてもよい。この場合、底敷樹脂19および樹脂粉末16が同一の溶融挙動を示し、溶融濡れ性もよいため、第一棒状体12同士をより強固に固定することが可能となる。
【0073】
第一棒状体12同士の隙間に樹脂15が充填された後、図28に示すように、平板21を樹脂15上に配置し、平板21を矢符Dで示す方向に押圧する。平板21は溶融した樹脂中に沈降するが、第一棒状体12の周囲に設置されていたスペーサー22で沈降が止まる。そのままの状態で冷却すると、第一棒状体12の上部に樹脂層が形成される。なお、平板21の押圧は、例えばプレス加圧装置を用いて行うことができる。平板21の押圧は、樹脂15の溶融段階で行えばよく、オーブン内で行ってもよく、オーブン外で行ってもよい。図28では、底敷樹脂19上にスペーサー22を配置していたが、平定皿上に配置してもよい。
【0074】
図29は、第一棒状体12同士が樹脂15で固定されて一体となった平板状ブロック23を示す。図29に示す平板状ブロック23では、第一棒状体12同士の隙間に充填された樹脂15が、第一棒状体12の上面および下面に位置する樹脂15層へと延展し、平板状ブロック23の上面および下面に平坦な樹脂表面が形成されている。
【0075】
次に、図29の平板状ブロック23を、第1方向D1と直交する第2方向D2に所定の間隔で切断する。図30は、平板状ブロック23を切断して得られた複数の第二棒状体24を示す。言い換えれば、図30は、平板状ブロック23に第二の切断を行って得られた複数の第二棒状体24を示す。第二の切断による切断面には、内部電極5が露出している。第二の切断による切断面は、素体前駆体13の側面9に相当する。この時点で、個々の積層セラミック電子部品は、図3の素体前駆体13となる。
【0076】
次に、図31に示すように、複数の第二棒状体24を、各々の軸線方向各々の軸線の周りに90度回転させて、第二の切断による切断面のうちの一方(内部電極5が露出した面)を上向きにする。なお、第二棒状体24を回転させる際、第二棒状体24に外力がかかるが、素体前駆体13同士が固定用樹脂で強固に固定されているので、素体前駆体13が脱落したり、第二棒状体24が変形したりする虞が低減されている。
【0077】
次に、図31の複数の第二棒状体24の上面(第二の切断による切断面)全体に、粘着剥離ができる支持シート18を貼り合わせた後、図32Aに示すように、粘着剥離シート側を平板21に取り付ける。続いて、図32Bに示すように、保護層6となるセラミックスラリー29の中に電極露出面(第二の切断による切断面のうちの他方)を浸漬後に引き上げて、セラミックスラリー29を塗布する。続いて、塗布されたセラミックスラリー29を所定の温度で乾燥させる。その後、セラミックスラリー29が付与された電極露出面に別の支持シートを貼り付け、最初に用いた支持シート18を剥がし、同一のプロセスを行って、反対側の電極露出面へのセラミックスラリー29の塗布を行う。
【0078】
図33は、第二棒状体24の両方の電極露出面に、保護層6となるセラミックスラリー29が付与された状態を示している。個々の素体前駆体13に注目すると、セラミックスラリー29が付与されているのは電極露出面(側面9)のみであり、主面7および端面8は樹脂15で覆われている。従来、積層セラミック電子部品等の電子部品の表面へのスラリーまたはインクの塗工は、浸漬法またはスクリーン印刷法を用いて行われていた。従来の塗工法では、塗布面にスラリーまたはインクを塗工できるが、塗布面に隣接する他の面へのスラリーまたはインクの回り込みが避けられなかった。本開示の積層セラミック電子部品の製造方法では、塗布面に隣接する面が樹脂によって被覆されているので、隣接する面にスラリーが回り込むことを効果的に抑制できる。
【0079】
次に、図33の第二棒状体24に脱脂処理および焼成処理を行う。先ず、第二棒状体24をセラミック製のプレート上に配置し、第二棒状体24が配置されたプレートを、脱脂炉に入れて溶剤とバインダを除去し、その後、高温の焼成炉で焼成する。図34は、焼成後の第二棒状体24の状態を模式的に示している。図34に示すように、素体部品2を囲んでいた樹脂は分解燃焼して無くなる。そのため、素体部品2間は空隙31になり、保護層6と素体前駆体13とで構成される素体部品2だけが残っている。また、保護層6における素体部品2間に位置する部位に分離割れライン32が生じているので、素体部品2は、実質的に、個々に切り離されている。分離割れライン32は、素体部品2が焼結過程で収縮し、素体部品2間の隙間が広がることで、焼結されたセラミックスラリー29における、素体部品2間に位置し、厚みの薄い部位に亀裂が入って自然に形成される。
【0080】
次に、焼成後の素体部品2にバレル研磨を行う。バレル研磨は、素体部品2の角およびバリを取り除く目的で行うものであり、公知のバレル研磨を用いることができる。本実施形態では、素体部品2と研磨メディアを水が入ったポットの中に入れて回転させて研磨を行う。バレル研磨を行った後の素体部品2は、図24に示す素体部品2と同一となる。
【0081】
上記のようにして、素体部品2を作製することができる。さらに、素体部品2に外部電極3を取り付けることによって、図1の積層セラミックコンデンサ1を製造することができる。
【0082】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明をする。本開示の製造方法の第5実施形態は、図31の第二棒状体24を作製するまでは、本開示の製造方法の第3実施形態と同一である。
【0083】
本実施形態では、先ず、複数の第二棒状体24を平板(図示せず)上で集合させて、平板状集合体27を形成する。平板状集合体27を形成する際、図35に示すように、2つのL字型の枠板25を用いて、複数の第二棒状体24を側方周囲から押えてもよい。平板状集合体27の上面および下面は、第二の切断による切断面(内部電極5が露出した面)となっている。
【0084】
次に、図36に示すように、基材35の表面(下面)にセラミックグリーンシート10を成形し、そのセラミックグリーンシート10が平板状集合体27の表面(上面)上に位置するように、基材35を配置する。続いて、表面が弾性体で形成されたヒーターローラー34を基材35の上面に当接させ、ヒーターローラー34を回転させながら圧力をかけて、セラミックグリーンシート10を平板状集合体27の表面(上面)に接触させる。その後、図37に示すように、基材35をめくるように剥がすことによって、セラミックグリーンシート10を平板状集合体27の表面に転写する。平板状集合体27の裏面(下面)にも、同様の処理を行い、セラミックグリーンシート10を転写する。その後、静水圧プレスを用いて、セラミックグリーンシート10を平板状集合体27の表面および裏面に強固に接着する。なお、基材35は、シリコンなどの弾性体のあるゴムシートであってもよく、PET(ポリエチレンテレフタレート)、またはナイロンなどの樹脂シートであってもよい。
【0085】
図38は、上面および下面にセラミックグリーンシート10が接着された平板状集合体27を示す。素体部品2は、第二の切断による切断面である電極露出面だけに保護層6となるセラミックグリーンシート10が付与された状態、すなわち図2に示す素体部品2になっている。
【0086】
次に、図38の平板状集合体27に脱脂処理および焼成処理を行う。脱脂処理および焼成処理は、上記各実施形態と同様の方法で行うことができる。図39は、図38に示す平板状集合体27を焼結した状態を模式的に示す斜視図である。素体部品2を囲んでいた樹脂は分解燃焼して無くなる。そのため、素体部品2間は空隙31になり、保護層6と素体前駆体13とで構成される素体部品2だけが残っている。また、保護層6における素体部品2間に位置する部位に分離割れライン32が生じているので、素体部品2は、実質的に、個々に切り離されている。分離割れライン32は、素体部品2が焼結過程で収縮し、素体部品2間の隙間が広がることで、焼結されたセラミックグリーンシート10における、素体部品2間に位置し、厚みの薄い部位に亀裂が入って自然に形成される。
【0087】
次に、焼成後の素体部品2にバレル研磨を行う。バレル研磨は、素体部品2の角およびバリを取り除く目的で行うものであり、公知のバレル研磨を用いることができる。本実施形態では、素体部品2と研磨メディアを水が入ったポットの中に入れて回転させて研磨を行う。バレル研磨を行った後の素体部品2は、図24に示す素体部品2と同一となる。
【0088】
上記のようにして、素体部品2を作製することができる。さらに、素体部品2に外部電極3を取り付けることによって、図1の積層セラミックコンデンサ1を製造することができる。
【0089】
本実施形態では、セラミックグリーンシート10が、第二棒状体24の切断面だけに付与され、該切断面に隣接する面に回り込むことを抑制できる。このため、焼成後の素体部品2におけるバリの発生を抑制することができ、製品品質を向上させることができる。また、バリを取り除くためのバレル研磨に要するコストを低減することが可能となる。
【0090】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。本開示の製造方法の第6実施形態は、図35の平板状集合体27を作製するまでは、本開示の製造方法の第5実施形態と同一である。
【0091】
本実施形態では、図40に示すように、先ず、表面が弾性体で形成された転写ローラー33の表面に予め付与してあるセラミックスラリー29を、図35の平板状集合体27の表面(上面)に転写する。平板状集合体27の上面に転写したセラミックスラリー29を乾燥させた後、同様の処理を平板状集合体27の裏面(下面)にも行う。
【0092】
転写ローラー33へのセラミックスラリー29の付与は、例えばスクリーン印刷装置を用いて行うことができる。転写ローラー33のローラー面を被印刷面とするとともに、転写ローラー33を、印刷に同期させて、回転移動させることによって、所定の厚みのセラミックスラリー29をローラー面上に付与することができる。
【0093】
本実施形態によれば、セラミックスラリー29を第二棒状体24の切断面だけに付与し、セラミックスラリー29が該切断面に隣接する面に回り込むことを抑制できる。このため、焼成後の素体部品2におけるバリの発生を抑制することができ、製品品質を向上させることができる。また、バリを取り除くためのバレル研磨に要するコストを低減することが可能となる。
【0094】
表面(上面)および裏面(下面)にセラミックスラリー29が転写された平板状集合体27は、実質的に、図38に示す平板状集合体27となる。したがって、平板状集合体27を焼成すると、図39に示す焼成後の平板状集合体27が得られる。本実施形態における以降の工程は、第5実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0095】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明をする。本開示の製造方法の第7実施形態は、図35の平板状集合体27を作製するまでは、本開示の製造方法の第5実施形態と同一である。
【0096】
本実施形態では、図41に示すように、先ず、図35の平板状集合体27をセラミックスラリー29の容器の中に浸漬した後、鉛直方向に引き上げる。セラミックスラリー29の粘度と固形分とを適宜調整することで、平板状集合体27から余分なセラミックスラリー29が垂れ落ちて、所定の厚みの均一なセラミックスラリー29層を形成することができる。また、平板状集合体27の2つの電極露出面の両方に、セラミックスラリー29層を同時に形成することができるので、製造コストの負担を軽減することができる。
【0097】
図42は、平板状集合体27の乾燥中の状態を示す。セラミックスラリー29の乾燥は、自然乾燥であってもよい。セラミックスラリー29を乾燥させる際、ブレードを用いて強制的に過剰なセラミックスラリー29を掻き取ったり、遠心力を利用して過剰なセラミックスラリー29を飛ばしたりしてもよい。これにより、乾燥時間を短縮させることが可能となる。
【0098】
平板状集合体27は、実質的に、図38に示す平板状集合体27となる。第7実施形態における以降の工程は、第5実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0099】
(第8実施形態)
本実施形態は、第一の切断で母積層体11から図7の第一棒状体12を作製するまでは、上記実施形態と同様でので、説明を省略する。第一棒状体12は、第1方向D1に延びている。第一棒状体12は、第1主面、第1主面に対向する第2主面、第1切断面、および第1切断面に対向する第2切断面を有している。また、第一棒状体12は、第1側面、および第1側面に対向する第2側面を有している。第一棒状体12の第1主面および第2主面は、素体前駆体13の第1主面7aおよび第2主面7bにそれぞれ相当するため、以下では、同じ参照符号を付す。第一棒状体12の第1切断面および第2切断面は、素体前駆体13の第1端面8aおよび第2端面8bにそれぞれ相当するため、以下では、同じ参照符号を付す。第一棒状体12の第1側面および第2側面は、素体前駆体13の第1側面9aおよび第2側面9bにそれぞれ相当するため、以下では、同じ参照符号を付す。以下、第1主面7aと第2主面7bとを区別しない場合、単に、主面7と記載する。同様に、第1切断面8aと第2切断面8bとを区別しない場合、単に、切断面8と記載し、第1側面9aと第2側面9bとを区別しない場合、単に、側面9と記載する。なお、複数の第一棒状体12は、第1切断面8aまたは第2切断面8bが第一の切断によって形成された面でない(すなわち、母積層体11の端面8である)第一棒状体12を含んでいてもよい。
【0100】
次に、複数の第一棒状体12を一体化し、平板状ブロック23を形成する。上記実施形態では、図7に示すように、複数の第一棒状体12を、複数の第1主面7aが面一となり、かつ各第一棒状体12の第1切断面8aが、該第一棒状体12に隣接する第一棒状体12の第2切断面8bに臨むように整列させた。本実施形態では、図43に示すように、複数の第一棒状体12を、複数の第1切断面8aが面一となり、かつ各第一棒状体12の第1主面7aが、該第一棒状体12に隣接する第一棒状体12の第2主面7bに臨むように整列させる。図43は、図7の第一棒状体12を、長手方向を軸にして90°回転させて、側面9が解放面となるように、剥離可能な粘着拡張シート14上に主面7同士を背中合わせにして整列させた様子を表している。第一棒状体12の回転については、例えば、第一棒状体12の内部電極が磁性体金属であることを利用して、図7の状態で磁界に反応させて長手方向を軸にして90°回転させることができる。または、図7の第一棒状体12を粘着拡張シート14に貼り付けて、第一棒状体12同士を離間させてから、再度第一棒状体12をフリーにして、両主面7を上下から弾性プレートで挟んで、弾性プレートを互いに逆方向に平行移動させることにより、第一棒状体12を転がすように回転させてもよい。回転後に、切断面8を上下にしたまま、第一棒状体12を主面7が背中合わせになるように寄せて、さらに上から粘着拡張シート14を貼り合わせてから反転させてもよい。
【0101】
次に、図44に示すように、互いに隣接する第一棒状体12の間の間隔が広がるように、粘着拡張シート14の両端を矢符Eで示す方向に拡張する。粘着拡張シート14の拡張量を調整することによって、第一棒状体12同士の隙間を調整することができる。第一棒状体12同士の間隔は、樹脂粉末が第一棒状体12同士の隙間に進入し得る程度であればよく、例えば、50μm~150μm程度であってもよい。
【0102】
次に、図45に示すように、先ず、平坦な底面を有する平底皿17を準備し、平底皿17の底面上に支持シート18と一緒に複数の第一棒状体12を配置する。複数の第一棒状体12および支持シート18は、支持シート18が平底皿17の底面に接するように配置する。続いて、熱可塑性の樹脂からなる樹脂粉末16を第一棒状体12の少なくとも一表面に配置した後、振動を加えて、樹脂粉末16を第一棒状体12間の隙間に充填させる。その後、平行仕切り板(図示せず)を、第一棒状体12の一表面(上面)から所定の間隔をあけて、第一棒状体12の一表面に沿ってスライドさせて、余分な樹脂粉末16を掻き取る。樹脂粉末16の平均粒径は、例えば、10~50μm程度であってもよい。
【0103】
続いて、樹脂粉末16を所定の温度まで加熱し、樹脂粉末16の少なくとも一部を溶融させる。所定の温度は、樹脂粉末16を構成する材料の融点等に応じて適宜設定することができる。所定の温度は、例えば、150℃~180℃程度であってもよい。
【0104】
熱可塑性樹脂からなる樹脂粉末16は加熱によって溶融し、樹脂粉末16同士の接触面の融着が始まる。さらに過熱すると、溶融した樹脂15が、下方に流動して、第一棒状体12同士の隙間を埋める。
【0105】
熱可塑性の樹脂15の融点は、セラミックグリーンシート10および内部電極5に含まれるバインダの分解温度以下であってよい。これにより、樹脂15の溶融段階における第一棒状体12の変質を抑制することができる。また、樹脂15は、金属、塩素またはフッ素等を含有しない樹脂であってもよい。これにより、金属、塩素またはフッ素等の物質が、素体部品2の焼成後も素体部品2の表面に残り、製品の特性劣化を引き起こす虞を低減することができる。
【0106】
図46は、樹脂15が第一棒状体12同士の隙間で溶融した段階で、平板21を溶融した樹脂15上に配置し、平板21を矢符Fで示す方向に押圧している様子を示している。平板21は、押圧力で溶融した樹脂15中に沈降するが、第一棒状体12の周囲に設置されていたスペーサー22で沈降が止まる。そのままの状態で冷却することで、第一棒状体12の上部に樹脂15の層が形成される。なお、平板21の押圧は、例えばプレス加圧装置を用いて行うことができる。
【0107】
図47は、複数の第一棒状体12が樹脂で互いに固定されて一体となった平板状ブロック23を示す。複数の第一棒状体12は、第1方向D1に延びている。平板状ブロック23では、隣接する第一棒状体12の間に充填された樹脂が第一棒状体12の上部の樹脂層へと延展した結果、平坦な樹脂表面が形成されている。なお、上述では、樹脂を粉体の形にして樹脂を充填しているが、熱可塑性樹脂シートを一定間隔で整列した複数の第一棒状体12の上に被せて、平プレスをかけながら加熱溶融させて、樹脂を充填させてもよい。
【0108】
図47の平板状ブロック23に含まれる素体前駆体13の個数は、第1実施形態の図11の平板状ブロック23の個数より多い。この違いは、図43で示されているように、第一棒状体を90度回転した工程を加えたことによる。平板状ブロック23の厚みが、素体前駆体13の幅寸法でなく、長手寸法になるので、同一の平板状ブロックサイズにおける個数が増えるからである。言い換えれば、本実施形態によれば、平面視において、素体前駆体13を高密度に配列することができる。本実施形態では、第一棒状体12を回転させるという工程が増えるが、平板状ブロック23内の素体前駆体13の収納個数が多いので、切断工程の効率を向上させることができる。ひいては、積層セラミック電子部品の製造効率を向上させるとともに、製造コストの負担を軽減することが可能となる。
【0109】
次に、図48に示すように、平板状ブロック23を所定寸法で切断して複数の第二棒状体24を製作する。第二棒状体24の切断面は、素体前駆体13の側面9に相当し、内部電極5が露出している。この時点で、個々の積層セラミック電子部品は、図3に示す素体前駆体13となっている。平板状ブロック23は、図48に示すように、押し切り刃37を用いて切断されてもよい。
【0110】
次に、図49に示すように、複数の第二棒状体24を、各々の軸線の周りに90度回転させて、第二の切断による切断面(内部電極5が露出した面)を上向きにする。上向きにするには、上述で第一棒状体を回転したように、磁力、あるいは弾性プレート間に挟んで転がす方法などで細長い第二棒状体の長手方向を軸に90°回転できる。
【0111】
次に、図49で解放面になっている側面9の表面屑の洗浄を行う。既に図15で説明したが、図15のような研磨法で行ってよい。または、他の方法であるエッチング洗浄やブラスト洗浄で行ってもよい。もし、側面9に表面屑が無い場合は洗浄工程をスキップすることも可能である。
【0112】
以降の工程は、側面9の表面への保護層の形成であり、その後の工程も、第1実施形態の図21及びそれ以降で説明したプロセスと同様なので、説明を省略する。
【0113】
本開示の積層セラミック電子部品の製造方法によれば、素体部品のハンドリング性を向上させることができる。その結果、製品品質を向上させるとともに、製造コストの負担を軽減することが可能となる。
【0114】
各実施形態において使用されている方法、装置、材料等は、その実施形態だけに限定されるものではなく、組み合わせて使用してもよい。また、実施例では、保護層を誘電体材料のセラミックグリーンシートと同一材料としているが、絶縁性を確保で切るのであれば、他の材料であってもよい。また、実施例では省いているが、樹脂に接する平板や枠などの間に、樹脂からの離型を容易に行えるように、剥離シートや離型剤を挟んでもよい。また、例えば、保護層となるセラミックグリーンシートまたはセラミックスラリーが付与された平板状集合体を焼成前に切断したり、平板状集合体を研磨した後に洗浄したりしてもよい。そのように、各実施形態の加工条件を変えたり、各実施形態に新たな工程を追加したりすることは、本開示の主旨になんら影響を与えるものではない。
【符号の説明】
【0115】
1 積層セラミックコンデンサ
2 素体部品
3 外部電極
5 内部電極
6 保護層
7 主面
7a 第1主面
7b 第2主面
8 端面
8a 第1端面
8b 第2端面
9 側面
9a 第1側面
9b 第2側面
10 セラミックグリーンシート
11 母積層体
12 第一棒状体
13 素体前駆体
14 粘着拡張シート
15 樹脂
16 樹脂粉末
17 平底皿
18 支持シート
19 底敷樹脂
21 平板
21a 第1の平板
21b 第2の平板
22 スペーサー
23 平板状ブロック
24 第二棒状体
25 枠板
27 平板状集合体
27a 第1面
27b 第2面
28 研磨盤
29 セラミックスラリー
31 空隙
32 分離割れライン
33 転写ローラー
34 ヒーターローラー
35 基材
36 樹脂シート
37 押し切り刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32A
図32B
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49