(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
H01G4/32 521P
H01G4/32 510
H01G4/32 511A
H01G4/32 542
(21)【出願番号】P 2023511036
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013292
(87)【国際公開番号】W WO2022210129
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021055641
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 大
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041126(WO,A1)
【文献】特開平06-168845(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に金属層が配設され、該一面の第1の方向の一方の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に連続する縁部絶縁領域が設けられた誘電体フィルムが、複数枚積層された直方体状のフィルム積層体であって、前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なり、前記縁部の平面視位置が1枚ごとにずれるように、前記一面における第1の方向の向きを1枚ごとに反転させて積層されたフィルム積層体と、
前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに形成され、前記金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極と、
前記第1金属電極および前記第2金属電極の、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向の端部から前記第1の方向に沿って前記フィルム積層体の表面にまで延び
、前記フィルム積層体の変形を抑えることが可能な機械的強度を有する薄板状の保護金属層と、を含むフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記保護金属層は、前記第1金属電極および前記第2金属電極の前記端部と接合されている、請求項1記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記保護金属層と、前記第1金属電極および前記第2金属電極とは、同種の金属材料で構成されている、請求項2記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
複数のフィルムコンデンサと、該複数のフィルムコンデンサを接続するバスバーと、を備え、
前記フィルムコンデンサが、請求項1~3のいずれか1つに記載のフィルムコンデンサを含む、連結型コンデンサ。
【請求項5】
スイッチング素子により構成されたブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部とを備え、
前記容量部が、請求項1~3のいずれか1つに記載のフィルムコンデンサを含む、インバータ。
【請求項6】
電源と、該電源に接続されたインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備え、
前記インバータが、請求項5に記載のインバータである、電動車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のフィルムコンデンサは、一面に金属層が配設され、該一面の第1の方向の一方の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に連続する縁部絶縁領域が設けられた誘電体フィルムが、複数枚積層された直方体状のフィルム積層体であって、前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なり、前記縁部の平面視位置が1枚ごとにずれるように、前記一面における第1の方向の向きを1枚ごとに反転させて積層されたフィルム積層体と、前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに形成され、前記金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極と、前記第1金属電極および前記第2金属電極の、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向の端部から前記第1の方向に沿って前記フィルム積層体の表面にまで延びる保護金属層と、を含む。
【0005】
本開示の連結型コンデンサは、上記のフィルムコンデンサを含む複数のフィルムコンデンサが、バスバーにより複数個接続されている。
【0006】
本開示のインバータは、スイッチング素子により構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続され、上記のフィルムコンデンサを含む容量部とを備える。
【0007】
本開示の電動車輌は、電源と、該電源に接続された上記のインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であって、誘電体フィルムの平面図である。
【
図1B】実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であって、フィルムの積層状態を示す断面模式図である。
【
図2】実施形態のフィルムコンデンサの作製方法を示す分解斜視図である。
【
図5】フィルムコンデンサの変形例を示す、一部が切り欠かれた斜視図である。
【
図6】連結型コンデンサの構成を模式的に示した斜視図である。
【
図7】インバータの構成を説明するための電気回路図である。
【
図8】電動車輌の構成を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0010】
本開示の基礎となる構成のフィルムコンデンサは、たとえばポリプロピレン樹脂からなる誘電体フィルムの表面に電極となる金属膜を蒸着した金属化フィルムを、巻回あるいは一方向に複数枚積み重ねて積層して形成されている。
【0011】
金属化フィルムを積層した積層体の両端面には、金属膜と電気的に接続するメタリコン電極がそれぞれ設けられる。一方のメタリコン電極は、一部の金属膜と接合し、他方のメタリコン電極は、残りの金属膜と接続する。金属膜が2つのメタリコン電極と接続して短絡しないように、金属化フィルムをずらして積層している(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
特許文献1に記載されたフィルムコンデンサのような構造では、金属化フィルムがずれて延出した端面部分が、金属化フィルム同士が重なっている中央部分に比べて変形しやすい。特に、高温下では、延出部分が伸長してさらに変形しやすくなり、変形部分の破断などが生じてコンデンサ特性が低下する。
【0013】
本開示の目的は、コンデンサ特性の低下を抑制できるフィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌を提供することである。
【0014】
以下、実施形態のフィルムコンデンサについて、図面を参照しつつ説明する。実施形態のフィルムコンデンサ10は、
図1Aに示すような、ベースフィルムの一面に、金属層3を有する誘電体フィルム1,2を、交互に積層して構成されるフィルム積層体4を含む。
【0015】
本実施形態では、金属層3は、いわゆる櫛歯形状の金属層であって、複数の帯状金属層3aと、1つの共通金属層3cと、を含み、帯状金属層3aは、それぞれ共通金属層3cに電気的に接続されている。なお、帯状金属層3aと共通金属層3cとの間に、これらを接続する接続金属層3bをさらに有していてもよい。接続金属層3bは、各帯状金属層3aの端部と、共通金属層3cの側部とを接続している。各帯状金属層3aは、積層後、コンデンサの内部電極となるものである。誘電体フィルム1,2は、積層されたときの向きが反転しているだけで、同じ構成である。
【0016】
また、各図において、互いに平行に形成された各帯状金属層3aが延びる方向を、第1の方向(x方向)とし、平行な各帯状金属層3aの並び方向(x方向に直交するy方向)を第2の方向とする。フィルムの積層方向は、第1の方向および第2の方向に直交する、第3の方向(図示z方向)である。積層後のフィルム積層体4の詳細は後述する。
【0017】
誘電体フィルム1,2の表面の各帯状金属層3aは、ベースフィルムに対する金属蒸着により形成される。y方向に隣接する帯状金属層3aどうしの間には、フィルム面(以下、絶縁マージンS)が露出しており、これにより、各帯状金属層3aは、それぞれ電気的に絶縁された状態となっている。そして、各絶縁マージンSは、x方向の一方の端部側で、y方向に連続する縁部絶縁領域Tに繋がっている。各絶縁マージンSの間隔(ピッチP)は、各帯状金属層3aのy方向の幅P1と各絶縁マージンSのy方向の幅P2とを合わせた値(P=P1+P2)となっている。
【0018】
共通金属層3cは、誘電体フィルム1,2の縁部絶縁領域Tと反対側、すなわち第1の方向の他方の縁部において、y方向に延びて設けられている。各帯状金属層3aは、絶縁マージンSによって、それぞれ電気的に絶縁されているが、1つの共通金属層3cに接続することで、金属層3全体としては、電気的に接続されている。また、金属層3が、接続金属層3bを有する場合、接続金属層3bは、y方向の長さ(幅)が、帯状金属層3aのy方向の長さ(幅)より小さい。接続金属層3bは、帯状金属層3aごとのヒューズとして機能するものである。例えば、ベースフィルムが絶縁破壊されるなどして帯状金属層3aが他の帯状金属層3aと短絡し、規定以上の電流が流れたような場合に、高抵抗の接続金属層3bが焼き切れることで断線させて、フィルムコンデンサ10全体の機能が停止しないようにしている。
【0019】
誘電体フィルム1,2のベースフィルムの構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー等の有機樹脂材料を用いることができる。誘電体フィルム1,2の金属層3の構成材料としては、アルミニウム等の金属材料を用いることができる。
【0020】
誘電体フィルム1,2は、
図1Bに示すように、誘電体フィルム1とそれに図示上下(z方向)に隣接する誘電体フィルム2の、x方向の向きを交互に反転させながら積層され、すなわち、誘電体フィルム1,2は、各誘電体フィルム1,2のx方向の一方の端部の縁部絶縁領域Tの平面視位置が、x方向において1枚おきに重なるように積層されてフィルム積層体4とされる。同様に、各誘電体フィルム1,2の他方の端部の共通金属層3cの平面視位置が、x方向において1枚おきに重なるように積層されている。また、フィルム積層体4は、x方向の縁部の平面視位置が1枚ごとにずれるように積層されている。誘電体フィルム1のx方向縁部と、誘電体フィルム2のx方向縁部とを平面視位置で揃えることなく、ずらして積層している。1枚おきに誘電体フィルム1だけを見ると、その縁部は揃っており、1枚おきに誘電体フィルム2を見ると、その縁部は揃っている。フィルム積層体4を平面視したときに、x方向の一方側の端部は、誘電体フィルム1の共通金属層3cが位置する縁部だけが重なっているずらし部となっており、そして、x方向の他方側の端部は、誘電体フィルム2の共通金属層3cが位置する縁部だけが重なっているずらし部となっており、x方向の中央部では、誘電体フィルム1の帯状金属層3aと誘電体フィルム2の帯状金属層3aとが重なっている。すなわち、フィルム積層体4のx方向の両端面のうち、一方の端面は、誘電体フィルム1の共通金属層3cが位置する縁部で構成されており、他方の端面は、誘電体フィルム2の共通金属層3cが位置する縁部で構成されている。
【0021】
フィルム積層体4のx方向の両端面には、金属溶射により金属電極(以下、メタリコン)が形成されている。なお、x方向の両端部に形成されるメタリコンの一方をメタリコン5A(第1金属電極)、他方をメタリコン5B(第2金属電極)と呼ぶが、これらは配設位置が異なるだけであり、構成に差異はない。例えば、メタリコン5Aは、一方の端面において誘電体フィルム1の共通金属層3cと電気的に接続しており、共通金属層3cを介して各帯状金属層3aとも電気的に接続している。一方、メタリコン5Bは、他方の端面において誘電体フィルム2の共通金属層3cと電気的に接続しており、共通金属層3cを介して各帯状金属層3aとも電気的に接続している。メタリコン5A,5Bと共通金属層3cとを電気的に接続すれば、共通金属層3cを介して、各帯状金属層3aをメタリコン5A,5Bと確実に接続することができる。また、縁部絶縁領域Tによって誘電体フィルム1の金属層3とメタリコン5Bとは、電気的に絶縁されている。さらに、フィルム積層体4のx方向端部のずらし部によって、誘電体フィルム1の縁部絶縁領域Tが位置する縁部が内方に退避しており、メタリコン5Bとの間に間隙が設けられているので、より確実にメタリコン5Bと絶縁される。同様に、縁部絶縁領域Tによって誘電体フィルム2の金属層3とメタリコン5Aとは、電気的に絶縁されている。さらに、フィルム積層体4のx方向端部のずらし部によって、誘電体フィルム2の縁部絶縁領域Tが位置する縁部が内方に退避しており、メタリコン5Aとの間に間隙が設けられているので、より確実にメタリコン5Aと絶縁される。
【0022】
上記のように、フィルムコンデンサ10は、フィルム積層体4のx方向両端部において、ずらし部を設けることで、逆極性のメタリコンとの絶縁性を十分に確保しているが、ずらし部は、誘電体フィルム1または誘電体フィルム2のいずれかしか重なっておらず、メタリコンとの間隙も存在するために変形しやすくなっている。高温下では、ベースフィルムが熱膨張によって伸長してさらに変形しやすくなる。ずらし部の変形は、ベースフィルムの一面に垂直なz方向への屈曲および湾曲などである。このような変形によって、フィルムの破断、積層体の剥離などが生じ、コンデンサ特性を低下させる。本実施形態のフィルムコンデンサ10は、このような変形によるコンデンサ特性の低下を抑制するために保護金属層11を備える。保護金属層11は、メタリコン5A,5Bのz方向の端部からx方向に沿ってフィルム積層体4の表面にまで延びている。本実施形態のフィルムコンデンサ10は、メタリコン5A,5Bのz方向の両端部が平坦面となっており、フィルム積層体4のz方向の外表面と面一である。保護金属層11は、メタリコン5A,5Bとフィルム積層体4との境界を覆うように、y方向に沿って延びている。保護金属層11は、メタリコン5A,5Bからフィルム積層体4にまで延びることで、フィルム積層体4の表面に位置する部分が、平面視で、ずらし部の少なくとも一部と重なることになる。このような保護金属層11は、フィルム積層体4のx方向両端部における変形を抑えることができる。保護金属層11によって、本実施形態のフィルムコンデンサ10は、変形によるコンデンサ特性の低下を抑制することができる。
【0023】
保護金属層11は、例えば、メタリコン5A,5Bの端部と接合されている。保護金属層11は、フィルム積層体4とは接合されていなくてよい。保護金属層11は、メタリコン5A,5Bの端部と接合されていれば、フィルム積層体4と接合されていなくてもずらし部の変形を抑えることができる。保護金属層11は、メタリコン5A,5Bの端部と、はんだまたはろう材などの接合材を介して接合してもよい。フィルム積層体4の変形時には、保護金属層11に対してメタリコン5A,5Bから剥離するz方向の力が加わる。保護金属層11がメタリコン5A,5Bから剥離することを防ぐために、例えば、保護金属層11とメタリコン5A,5Bとの密着強度が10N/mm2以上であればよい。密着強度は、例えば、JIS H 8402「溶射皮膜の引張密着強さ試験方法」に準拠して測定した引張密着強さである。
【0024】
保護金属層11とメタリコン5A,5Bとの密着強度が十分であっても、フィルム積層体4の変形時に保護金属層11に加わるz方向の力で保護金属層11自体が塑性変形するとフィルム積層体4が変形するおそれがある。保護金属層11は、フィルム積層体4の変形を抑えることが可能な機械的強度を有するものであればよい。例えば、ベースフィルムがポリプロピレン製であり、フィルム積層体4の厚さ(z方向寸法)が10mmの場合、保護金属層11は、厚さが0.5mm以上のステンレス鋼板を用いることができる。
【0025】
保護金属層11は、メタリコン5A,5Bと同種の金属材料で構成されていてもよい。メタリコン5A,5Bは、金属溶射によって形成され、例えば、亜鉛、錫および亜鉛‐錫合金などの金属材料が用いられる。保護金属層11としてメタリコン5A,5Bと同種の金属材料で薄板状の部材を準備しておき、金属溶射時にメタリコン5A,5Bの形成と保護金属層11との接合を同時に行うことができる。
【0026】
フィルムコンデンサ10が、例えば、外装ケースに収容されるような場合、メタリコンの位置が固定される。低温下でベースフィルムが収縮すると、メタリコン5A,5Bには、x方向に引張力が加わり、亀裂が生じるおそれがある。保護金属層11が、メタリコン5A,5Bの端部に接合していることで、低温下での亀裂の発生および亀裂の進展を抑制することができる。
【0027】
図2~
図4は、実施形態のフィルムコンデンサの製造方法について、模式的に説明した図である。積層型のフィルムコンデンサ10の作製においては、まず、
図2に示すように、フィルムの表面に、x方向に沿って連続する複数の帯状金属層3aとy方向に延びる共通金属層3cとを有する誘電体フィルム1または誘電体フィルム2を、複数枚、x方向の向きを交互に逆にしながら、すなわち、縁部絶縁領域Tの平面視位置が1枚おきに重なるよう、x方向の向きを1枚ごとに反転させながら積み重ねる。
【0028】
なお、先にも述べたように、誘電体フィルム1と誘電体フィルム2とは、x方向の向きを変えただけであり、構成は同じものである。また、積層する方法としては、長尺の誘電体フィルム1,2を重ねて、円筒または断面多角状の筒に巻き付ける等、従来公知の方法により行うことができる。
図2における仮想線(二点鎖線)は、筒等に巻回後の切断線を示す。
【0029】
図3は、所定長さに切断後のフィルム積層体4を、切断面(y方向端面)方向から見た図である。この
図3に示すように、上下に隣接する誘電体フィルム1と誘電体フィルム2とは、x方向に位置をずらせた状態(オフセットした状態)で積層し、フィルム積層体4のx方向の両端面には、共通金属層3cが露出している。フィルム積層体4の上面側では、金属層3が露出することになるので、例えば、ベースフィルム等のカバー層12を積層する。なお、フィルム積層体4の下面側にもカバー層12を積層してもよい。保護金属層11をフィルム積層体4のz方向表面である上下面に配置する。保護金属層11は、フィルム積層体4のx方向両端面から外方に延出するように配置すればよい。なお、保護金属層11は、フィルム積層体4の上下面に接合する必要はなく、冶具などで上下を挟んで一時的に固定すればよい。
【0030】
つぎに、
図4に示すように、先に述べた共通金属層3cが露出する、フィルム積層体4のx方向の両端面に、それぞれ、金属溶射によりメタリコン5A,5Bを形成する。これにより、誘電体フィルム1,2上の各帯状金属層3aは、メタリコン5A,5Bに、共通金属層3cを介して電気的に接続され、フィルムコンデンサ10の内部電極として機能するようになる。メタリコン5A,5Bは、上面側に配置された保護金属層11と下面側に配置された保護金属層11との間に形成されるとともに、メタリコン5A,5Bと保護金属層11とが接合される。
【0031】
上記の実施形態では、フィルム積層体4が、誘電体フィルム1,2を、x方向の向きを交互に反転させながら積層したものであり、誘電体フィルム1と誘電体フィルム2とは、同じ構成であって、向きが異なるというものである。変形例としては、フィルム積層体4は、誘電体フィルム1は、上記の実施形態と同じ構成であるが、誘電体フィルム2は、金属層が、ベースフィルムの一面の、縁部絶縁領域T以外の領域全体に設けられた、いわゆるベタパターンの面状金属層であってもよい。
【0032】
上記の実施形態では、保護金属層11は、メタリコン5A,5Bとフィルム積層体4との境界をy方向に沿って覆う一枚の薄板状であるが、これに限らず、一部が途切れていてもよく、y方向に分割されていてもよい。また、保護金属層11とフィルム積層体4とが、接着剤などを介して接着されていてもよい。
【0033】
上記の製造方法では、フィルム積層体4の表面に保護金属層11を配置したのち、メタリコン5A,5Bを形成しているが、これに限らず、メタリコン5A,5Bを形成したのち、保護金属層11をメタリコン5A,5Bのz方向端部に接合してもよい。
【0034】
図5は、フィルムコンデンサの変形例を示す、一部が切り欠かれた斜視図である。フィルムコンデンサAは、絶縁性および耐環境性の点から、フィルムコンデンサ10を外装部材7で被覆したものである。メタリコン5A,5Bには、外部接続用のリード線6が設けられている。
図5においては、外装部材7の一部を取り除いた状態を示しており、外装部材7の取り除かれた部分を破線で示している。
【0035】
図6は、連結型コンデンサの構成を模式的に示した斜視図である。
図6においては構成を分かりやすくするために、ケースおよびモールド用の樹脂を省略して記載している。連結型コンデンサBは、複数個のフィルムコンデンサAが一対のバスバー21、23により並列接続された構成となっている。バスバー21、23は、端子部21a、23aと、引出端子部21b、23bと、により構成されている。端子部21a、23aは外部接続用であり、引出端子部21b、23bは、フィルムコンデンサAのメタリコン5A、5Bにそれぞれ接続される。
【0036】
図7は、インバータの構成を説明するための電気回路図である。
図7には、整流後の直流から交流を作り出すインバータCの例を示している。本実施形態のインバータCは、
図7に示すように、ブリッジ回路31と、容量部33を備えている。ブリッジ回路31は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなスイッチング素子と、ダイオードにより構成される。容量部33は、ブリッジ回路31の入力端子間に配置され、電圧を安定化する。インバータCは、容量部33として、上記のフィルムコンデンサ10,Aまたは連結型コンデンサBを含んでよい。
【0037】
なお、このインバータCの入力は、直流電源の電圧を昇圧する昇圧回路35に接続される場合と、直流電源に接続される場合がある。一方、ブリッジ回路31は駆動源となるモータジェネレータ(モータM)に接続される。
【0038】
図8は、電動車輌の構成を説明するための概略構成図である。
図8には、電動車輌Dとしてハイブリッド自動車(HEV)の例を示している。
【0039】
図8における電動車輌Dは、駆動用のモータ41、エンジン43、トランスミッション45、インバータ47、電源(電池)49、前輪51aおよび後輪51bを備えている。
【0040】
この電動車輌Dは、駆動源としてモータ41またはエンジン43、もしくはその両方を備えている。駆動源の出力は、トランスミッション45を介して左右一対の前輪51aに伝達される。電源49は、インバータ47に接続され、インバータ47はモータ41に接続されている。
【0041】
また、
図8に示した電動車輌Dは、車輌ECU53およびエンジンECU57を備えている。車輌ECU53は電動車輌D全体の統括的な制御を行う。エンジンECU57は、エンジン43の回転数を制御し電動車輌Dを駆動する。電動車輌Dは、さらに運転者等に操作されるイグニッションキー55、図示しないアクセルペダル、及びブレーキ等の運転装置を備えている。車輌ECUには、運転者等による運転装置の操作に応じた駆動信号が入力される。この車輌ECU53は、その駆動信号に基づいて指示信号をエンジンECU57、電源49、および負荷としてのインバータ47に出力する。エンジンECU57は、指示信号に応答してエンジン43の回転数を制御し、電動車輌Dを駆動する。本実施形態のフィルムコンデンサA,10または連結型コンデンサBを容量部33として適用したインバータCを、
図8に示すような電動車輌Dに搭載することができる。
【0042】
なお、本実施形態のインバータCは、上記のハイブリッド自動車(HEV)のみならず、電気自動車(EV)や電動自転車、発電機、太陽電池など種々の電力変換応用製品に適用できる。
【0043】
本開示は次の実施の形態が可能である。
【0044】
本開示のフィルムコンデンサは、一面に金属層が配設され、該一面の第1の方向の一方の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に連続する縁部絶縁領域が設けられた誘電体フィルムが、複数枚積層された直方体状のフィルム積層体であって、前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なり、前記縁部の平面視位置が1枚ごとにずれるように、前記一面における第1の方向の向きを1枚ごとに反転させて積層されたフィルム積層体と、前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに形成され、前記金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極と、前記第1金属電極および前記第2金属電極の、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向の端部から前記第1の方向に沿って前記フィルム積層体の表面にまで延びる保護金属層と、を含む。
【0045】
本開示の連結型コンデンサは、上記のフィルムコンデンサを含む複数のフィルムコンデンサが、バスバーにより複数個接続されている。
【0046】
本開示のインバータは、スイッチング素子により構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続され、上記のフィルムコンデンサを含む容量部とを備える。
【0047】
本開示の電動車輌は、電源と、該電源に接続された上記のインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備える。
【0048】
本開示によれば、コンデンサ特性の低下を抑制できる積層型のフィルムコンデンサとすることができる。
【0049】
本開示によれば、特性低下が抑制されたフィルムコンデンサを用いた連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1,2 誘電体フィルム
3 金属層
3a 帯状金属層
3b 接続金属層
3c 共通金属層
4 フィルム積層体
5A メタリコン(第1金属電極)
5B メタリコン(第2金属電極)
6 リード線
7 外装部材
10 フィルムコンデンサ
11 保護金属層
12 カバー層
21,23 バスバー
21a,23a 端子部
21b,23b 引出端子部
31 ブリッジ回路
33 容量部
35 昇圧回路
41 モータ
43 エンジン
45 トランスミッション
47 インバータ
49 電源
51a 前輪
51b 後輪
53 車輌ECU
55 イグニッションキー
57 エンジンECU
A フィルムコンデンサ
B 連結型コンデンサ
C インバータ
D 電動車輌
M モータ
S 絶縁マージン
T 縁部絶縁領域