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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】自律走行台車、及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20250409BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019052578
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020154719
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】酒井 司
【合議体】
【審判長】本庄 亮太郎
【審判官】大山 健
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117560号公報(JP,A)
【文献】特開2017-168108号公報(JP,A)
【文献】特開2015-194438(JP,A)
【文献】特開2018-206004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された領域内において予め決められた自律走行経路を自律走行する自律走行台車であって、
走行部を有する本体と、
前記指定された領域内に生成した複数の部分走行経路を記憶する記憶部と、
前記複数の部分走行経路を連結して前記自律走行経路を生成する自律走行経路生成部と、
前記走行部を制御することで前記本体を前記自律走行経路に沿って移動させる走行制御部と、
前記指定された領域内の前記本体の位置を、緯度と経度との組み合わせとして測定するGNSS測定部と、
GNSS信号以外の手段により、前記本体の位置に関する情報を検出する位置検出器と、
前記GNSS測定部からの信号に基づいて、前記指定された領域を少なくとも含むグローバル座標の座標値により構成される前記本体の位置情報を算出する、又は、前記位置検出器からの信号に基づいて、前記グローバル座標とは異なる座標系の座標値により構成される前記本体の位置情報を算出する位置算出部と、
を備え、
前記複数の部分走行経路のそれぞれは、少なくとも一部に、前記グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含み、
前記自律走行経路生成部は、
前記グローバル座標値に基づいて、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを連結し前記グローバル座標の座標値により構成される第1通過点を含む連結経路を自律的に計画し、
前記連結元の部分走行経路と、前記連結先の部分走行経路と、前記連結経路と、を紐付けることにより前記自律走行経路を生成し、
前記連結元の部分走行経路、又は、前記連結先の部分走行経路のいずれかは、前記GNSS測定部により緯度及び経度を測定できない領域内で生成された経路であり、
前記GNSS測定部により緯度、経度を測定できない領域内で生成された経路は、前記グローバル座標とは異なる前記座標系の座標値により構成され、
前記自律走行経路生成部は、前記連結経路に含まれる前記第1通過点を前記グローバル座標とは異なる前記座標系の座標値により構成される第2通過点に変換し、前記第2通過点を前記第1通過点に変換する変換用テーブルを作成する、 自律走行台車。
【請求項2】
指定された領域内において予め決められた自律走行経路を自律走行する自律走行台車であって、
走行部を有する本体と、
前記指定された領域内に生成した複数の部分走行経路を記憶する記憶部と、
前記複数の部分走行経路を連結して前記自律走行経路を生成する自律走行経路生成部と、
前記走行部を制御することで前記本体を前記自律走行経路に沿って移動させる走行制御部と、
前記指定された領域内の前記本体の位置を、緯度と経度との組み合わせとして測定するGNSS測定部と、
GNSS信号以外の手段により、前記本体の位置に関する情報を検出する位置検出器と、
前記GNSS測定部からの信号に基づいて、前記指定された領域を少なくとも含むグローバル座標の座標値により構成される前記本体の位置情報を算出する、又は、前記位置検出器からの信号に基づいて、前記グローバル座標とは異なる座標系の座標値により構成される前記本体の位置情報を算出する位置算出部と、
を備え、
前記複数の部分走行経路のそれぞれは、少なくとも一部に、前記グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含み、
前記自律走行経路生成部は、
前記グローバル座標値に基づいて、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを連結し前記グローバル座標の座標値により構成される第1通過点を含む連結経路を自律的に計画し、
前記連結元の部分走行経路と、前記連結先の部分走行経路と、前記連結経路と、を紐付けることにより前記自律走行経路を生成し、
前記連結元の部分走行経路、又は、前記連結先の部分走行経路は、一部において前記GNSS測定部により緯度及び経度を測定できない領域内で生成された経路であり、他方は、前記GNSS測定部により緯度及び経度を測定できる領域で生成された経路であり、
前記GNSS測定部により緯度、経度を測定できない領域内で生成された経路は、前記グローバル座標とは異なる前記座標系の座標値により構成され、
前記自律走行経路生成部は、前記連結経路に含まれる前記第1通過点を前記グローバル座標とは異なる前記座標系の座標値により構成される第2通過点に変換し、前記第2通過点を前記第1通過点に変換する変換用テーブルを作成する、
自律走行台車。
【請求項3】
前記連結元の部分走行経路の終点と、前記連結先の部分走行経路の始点は、前記グローバル座標値で表される、請求項1又は2に記載の自律走行台車。
【請求項4】
前記グローバル座標値は、緯度と経度とにより構成される座標値である、請求項1~3のいずれかに記載の自律走行台車。
【請求項5】
走行部を有する本体を備え、指定された領域内において予め決められた自律走行経路を自律走行する自律走行台車の制御方法であって、
前記指定された領域内に生成した複数の部分走行経路を記憶するステップと、
前記複数の部分走行経路を連結して前記自律走行経路を生成するステップと、
前記走行部を制御することで前記本体を前記自律走行経路に沿って移動させるステップと、
GNSS測定部により、前記指定された領域内の前記本体の位置を、緯度と経度との組み合わせとして測定するステップと、
位置検出器が、GNSS信号以外の手段により、前記本体の位置に関する情報を検出するステップと、
前記GNSS測定部からの信号に基づいて、前記指定された領域を少なくとも含むグローバル座標の座標値により構成される前記本体の位置情報を算出する、又は、前記位置検出器からの信号に基づいて、前記グローバル座標とは異なる座標系の座標値により構成される前記本体の位置情報を算出するステップと、
を備え、
前記複数の部分走行経路のそれぞれは、少なくとも一部に、前記グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含み、
前記自律走行経路を生成するステップは、前記グローバル座標値に基づいて、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを連結し前記グローバル座標の座標値により構成される第1通過点を含む連結経路を自律的に計画するステップと、
前記連結元の部分走行経路と、前記連結先の部分走行経路と、前記連結経路と、を紐付けることにより前記自律走行経路を生成するステップと、
を有し、
前記連結元の部分走行経路、又は、前記連結先の部分走行経路のいずれかは、前記GNSS測定部により緯度及び経度を測定できない領域内で生成された経路であり、
前記GNSS測定部により緯度、経度を測定できない領域内で生成された経路は、前記グローバル座標とは異なる前記座標系の座標値により構成され、
前記自律走行経路を生成するステップは、前記連結経路に含まれる前記第1通過点を前記グローバル座標とは異なる前記座標系の座標値により構成される第2通過点に変換し、前記第2通過点を前記第1通過点に変換する変換用テーブルを作成するステップを有する、
制御方法。
【請求項6】
走行部を有する本体を備え、指定された領域内において予め決められた自律走行経路を自律走行する自律走行台車の制御方法であって、
前記指定された領域内に生成した複数の部分走行経路を記憶するステップと、
前記複数の部分走行経路を連結して前記自律走行経路を生成するステップと、
前記走行部を制御することで前記本体を前記自律走行経路に沿って移動させるステップと、
GNSS測定部により、前記指定された領域内の前記本体の位置を、緯度と経度との組み合わせとして測定するステップと、
位置検出器が、GNSS信号以外の手段により、前記本体の位置に関する情報を検出するステップと、
前記GNSS測定部からの信号に基づいて、前記指定された領域を少なくとも含むグローバル座標の座標値により構成される前記本体の位置情報を算出する、又は、前記位置検出器からの信号に基づいて、前記グローバル座標とは異なる座標系の座標値により構成される前記本体の位置情報を算出するステップと、
を備え、
前記複数の部分走行経路のそれぞれは、少なくとも一部に、前記グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含み、
前記自律走行経路を生成するステップは、前記グローバル座標値に基づいて、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを連結し前記グローバル座標の座標値により構成される第1通過点を含む連結経路を自律的に計画するステップと、
前記連結元の部分走行経路と、前記連結先の部分走行経路と、前記連結経路と、を紐付けることにより前記自律走行経路を生成するステップと、
を有し、
前記連結元の部分走行経路、又は、前記連結先の部分走行経路は、一部において前記GNSS測定部により緯度及び経度を測定できない領域内で生成された経路であり、他方は、前記GNSS測定部により緯度及び経度を測定できる領域で生成された経路であり、
前記GNSS測定部により緯度、経度を測定できない領域内で生成された経路は、前記グローバル座標とは異なる前記座標系の座標値により構成され、
前記自律走行経路を生成するステップは、前記連結経路に含まれる前記第1通過点を前記グローバル座標とは異なる前記座標系の座標値により構成される第2通過点に変換し、前記第2通過点を前記第1通過点に変換する変換用テーブルを作成するステップを有する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定された領域内において予め決められた走行経路を自律走行する自律走行台車、及び、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指定された領域内においてあらかじめ決められた走行経路を自律的に走行する自律走行台車が知られている。例えば、作業者が教示した走行経路を自律的に再現する自律走行台車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
また、作業者が指定した領域内を「塗り潰す」経路(塗り潰し経路)を生成し、生成した塗り潰し経路を自律的に移動する自律走行台車が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6136543号
【文献】国際公開第2018/043180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指定された領域内を自律走行する自律走行台車においては、当該領域を複数の部分領域に分け、各部分領域において個別に部分走行経路を生成し、部分領域毎に生成した複数の部分走行経路を連続的に自律走行させたい場合がある。
例えば、ある部分領域(例えば、障害物が存在する部分領域)においては走行経路を作業者が教示し、他の部分領域(例えば、障害物が存在しない広い部分領域)においては塗り潰し経路を生成する場合がある。
【0005】
上記のように、複数の部分走行経路は、部分領域毎に個別に生成されたものであり、一般的には共通の座標点(経路)を有さない。また、部分走行経路は、共通の座標系上の座標値として定義されない場合がある。従って、複数の部分走行経路を連続的に自律走行させたい場合には、複数の部分走行経路を連結するために、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを一致させるための対応付けの作業が必要となる。
対応付け作業を人手で行う場合、対応付けすべき部分走行経路の数に応じて、対応付け作業時間と、作業ミスにより誤った対応付けをする可能性が増加し、作業者の負担となる。また、対応付けを行うためには、一方の教示の始点と他方の教示の終点とを一致させる等、走行経路の教示方法に制約が発生し、運用性の低下が発生する。人手に頼らず、周囲の地形情報などをセンサで取得し自動的に対応付けを行う場合でも、周囲の地形が似ているケースなどにおいて、誤った対応付けを行う可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを一致させるための対応付けを作業者に負担をかけることなく、かつ、精度よく行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る自律走行台車は、指定された領域内において予め決められた自律走行経路を自律走行する自律走行台車である。自律走行台車は、本体と、記憶部と、自律走行経路生成部と、走行制御部と、を備える。
本体は、走行部を有する。記憶部は、指定された領域内に生成した複数の部分走行経路を記憶する。自律走行経路生成部は、複数の部分走行経路を連結して自律走行経路を生成する。走行制御部は、走行部を制御することで、本体を自律走行経路に沿って移動させる。
【0008】
上記の自律走行台車において、複数の部分走行経路のそれぞれは、少なくとも一部に、グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含む。グローバル座標は、自律走行台車が自律走行する指定された領域を少なくとも含む座標系であって、共通の座標系である。
また、自律走行経路生成部は、グローバル座標値に基づいて、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを連結する連結経路を自律的に計画する。さらに、自律走行経路生成部は、連結元の部分走行経路と、連結先の部分走行経路と、連結経路と、を紐付けることにより自律走行経路を生成する。
【0009】
上記の自律走行台車においては、部分走行経路は、少なくとも一部に、グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含んでいる。すなわち、部分走行経路は、共通の座標系(グローバル座標系)で定義された座標値を含んでいる。
自律走行経路の生成において連結される部分走行経路に共通の座標系(グローバル座標系)で定義される座標値が含まれることで、当該共通の座標系で定義された座標値を用いて、部分走行経路を連結する連結経路を自律的に計画できる。つまり、人手による部分走行経路の対応付けが不要となる。
【0010】
連結元の部分走行経路の終点と、連結先の部分走行経路の始点は、グローバル座標値で表されてもよい。
これにより、連結経路の始点(連結元の終点)と終点(連結先の始点)とを共通の座標系上の座標値に変換する必要がなくなるので、上記2つの点を結ぶ連結経路を容易に計画できる。
【0011】
上記の自律走行台車は、GNSS測定部をさらに備えてもよい。GNSS測定部は、指定された領域内の本体の位置を、緯度と経度との組み合わせとして測定する。この場合、グローバル座標値は、緯度と経度とにより構成される座標値である。
これにより、屋外空間にて自律走行台車の位置を測定できる。また、グローバル座標系を、原理的には地球表面全体を含む座標系とすることができる。
【0012】
連結元の部分走行経路、又は、連結先の部分走行経路のいずれかは、GNSS測定部により緯度及び経度を測定できない領域内で生成された経路であってもよい。
これにより、自律走行台車は、GNSS測定部にて位置を測定できる屋外空間と、GNSS測定部により位置を測定できない領域との両方を自律走行できる。
【0013】
連結元の部分走行経路、又は、連結先の部分走行経路は、一部においてGNSS測定部により緯度及び経度を測定できない領域内で生成された経路であり、他方は、GNSS測定部により緯度及び経度を測定できる領域内で生成された経路であってもよい。
これにより、自律走行台車は、GNSS測定部にて位置を測定できる屋外空間と、一部においてGNSS測定部により位置を測定できない領域との両方を自律走行できる。また、上記一方の経路の少なくとも一部に、GNSS測定部にて測定した位置を、グローバル座標系のグローバル座標値として容易に含ませることができる。
【0014】
本発明の他の見地に係る制御方法は、走行部を有する本体を備え、指定された領域内において予め決められた自律走行経路を自律走行する自律走行台車の制御方法である。この制御方法は、以下のステップを備える。
◎指定された領域内に生成した複数の部分走行経路を記憶するステップ。
◎複数の部分走行経路を連結して自律走行経路を生成するステップ。
◎走行部を制御することで本体を自律走行経路に沿って移動させるステップ。
【0015】
上記の制御方法において、複数の部分走行経路のそれぞれは、少なくとも一部に、グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含む。グローバル座標は、自律走行台車が自律走行する指定された領域を少なくとも含む座標系である。
また、自律走行経路を生成するステップは、以下のステップを有する。
◎グローバル座標値に基づいて、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを連結する連結経路を自律的に計画するステップ。
◎連結元の部分走行経路と、連結先の部分走行経路と、連結経路と、を紐付けることにより自律走行経路を生成するステップ。
【0016】
上記の自律走行台車の制御方法においては、自律走行経路は、複数の部分走行経路を連結することで生成される。この場合に、上記の制御方法では、部分走行経路は、少なくとも一部に、グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含んでいる。すなわち、部分走行経路は、共通の座標系(グローバル座標系)で定義された座標値を含んでいる。
これにより、連結すべき部分走行経路を共通の座標系に人手によることなく紐付けることができるので、部分走行経路を連結する連結経路を自律的に計画できる。つまり、連結すべき部分走行経路の対応付けを、人手によらず精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本実施形態に係る自律走行台車では、連結すべき部分走行経路を共通の座標系に紐付けて、連結すべき部分走行経路の対応付けを、人手によらず精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ゴルフ練習場の模式的平面図。
図2】集球排球機の模式的斜視図(その1)。
図3】集球排球機の模式的斜視図(その2)。
図4】第1実施形態に係る制御部の全体構成を示す図。
図5】集球排球機の概略動作を示すフローチャート。
図6】コピー走行による部分走行経路の生成を示すフローチャート。
図7】集球排球機の模式的平面図。
図8】集球排球機の折り返し走行を示す模式的平面図。
図9】塗り潰し走行による部分走行経路の生成動作を示すフローチャート。
図10】塗り潰し走行による部分走行スケジュールを生成するステップの詳細を示すフローチャート。
図11】走行領域内に塗り潰し経路が作成される状態を段階的に示した模式図(その1)。
図12】走行領域内に塗り潰し経路が作成される状態を段階的に示した模式図(その2)。
図13】走行領域内に塗り潰し経路が作成される状態を段階的に示した模式図(その3)。
図14】走行領域内に塗り潰し経路が作成される状態を段階的に示した模式図(その4)。
図15】第1実施形態に係る自律走行経路の生成動作を示すフローチャート。
図16】選択された部分走行経路の一例を示す図。
図17】選択された複数の部分経路を連結経路で連結した場合の一例を示す図。
図18】自律走行動作を示すフローチャート。
図19】第2実施形態に係る制御部の構成を示す図。
図20】第2実施形態に係る部分走行経路の生成の一例を示す図。
図21】第2実施形態に係る部分走行経路の生成動作(コピー走行)を示すフローチャート。
図22】第2実施形態に係る位置情報の取得動作を示すフローチャート。
図23】第2実施形態に係る部分走行経路の生成方法で生成される部分走行経路の一例を示す図。
図24】第3実施形態に係る集球排球機を説明するための想定例を示す図。
図25】第3実施形態に係る自律走行経路の生成動作を示すフローチャート。
図26】第3実施形態で生成される自律走行経路の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第1実施形態
(1)集球排球機の概略
以下、図1図3を用いて、集球排球機1を説明する。図1は、ゴルフ練習場の模式的平面図である。図2及び図3は、集球排球機の模式的斜視図である。
集球排球機1(自律走行台車の一例)は、本実施形態では、ゴルフ練習場2(指定された領域の一例)に用いられる。ゴルフ練習場2では、短時間で多数のゴルフ球Bが散乱した状態になるので、集球排球機1は、それを集めて再利用する。
ゴルフ練習場2は、複数のゴルフ球Bが散乱した球散乱エリア3と、集められたゴルフ球Bが排出される排球溝7とを有する。この実施形態では、球散乱エリア3は芝生が植えられている。排球溝7は、球散乱エリア3内に設けられた溝である。排球溝7に配球されたゴルフ球Bは、吐き出された水によって回収プールまで送られる。
【0020】
すなわち、集球排球機1は、球散乱エリア3を自律走行しながら当該エリアに散乱したゴルフ球Bを集球する(集球動作)。また、球散乱エリア3から排球溝7の側まで自律走行して、球散乱エリア3にて集球したゴルフ球Bを、排球溝7に排球する(排球動作)。さらに言い換えると、集球排球機1は、ゴルフ練習場2において、教示再現走行しながら集球及び排球を行う装置である。
【0021】
上記の「教示再現走行」とは、作業者により教示された情報に基づいて生成された経路を自律走行して再現することである。「教示再現走行」には、例えば、予め作業者が教示した経路そのものを自律走行して再現する「コピー走行」と、予め作業者が教示した領域内を塗り潰すよう計画された経路を自律走行して再現する「塗り潰し走行」と、が含まれる。
【0022】
本実施形態に係る集球排球機1は、上記「教示再現走行」のために個別に教示又は計画された複数の経路(部分走行経路)を連続的に自律走行する。その目的のため、集球排球機1は、個別に教示/計画された複数の部分走行経路を連結するための連結経路CRを、自律的に計画する。
【0023】
(2)集球排球機の基本構成
以下、本実施形態に係る集球排球機1の基本構成について説明する。集球排球機1は、本体11と、記憶部13(図4)と、制御部15とを備えている。
本体11は、走行部21と、ゴルフ球Bを集める動作とゴルフ球Bを排出する動作が可能な集球排球部23とを有する。具体的には、走行部21は、集球排球機1を走行させる装置である。走行部21は、例えば、本体11に設けられた走行モータ31(図4)と、車輪33とを有する。
集球排球機1は、本体11に設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)受信機35(GNSS測定部の一例)を有している。GNSS受信機35は、ゴルフ練習場2における集球排球機1の地上の現在位置に関する情報(位置情報)を取得する。これにより、集球排球機1は自己位置を把握しながら屋外を走行することができる。
【0024】
集球排球機1は、本体11に設けられた方角検出センサ41(図4)を有している。方角検出センサ41は、ゴルフ練習場2における集球排球機1(本体11)の向き(方角)を測定する。方角検出センサ41は、例えば、集球排球機1の位置における地磁気の向きを測定する地磁気センサ、GNSSコンパスなどである。
【0025】
その他、上記のGNSS受信機35を本体11に1対設けた構成を方角検出センサ41とできる。例えば、1対のGNSS受信機35を本体11の所定の軸(例えば、集球排球機1の直進方向と平行な軸)上に並べて配置する。これにより、ゴルフ練習場2における本体11の向き(方角)を、1対のGNSS受信機35から得られる2つの座標値(緯度と経度の組み合わせ)から算出できる(ムービングベースライン(MovingBaseline)法)。GNSS受信機35にて得られる座標を用いて方角を算出することにより、周囲の磁性体の影響なく集球排球機1の方角を容易に測定(算出)できる。
【0026】
さらに、集球排球機1の方角は、例えば、GNSS受信機35にて測定した緯度及び経度の移動前後の変化からも算出できる。
【0027】
集球排球部23は、連結構造26によって、本体11に接続される。集球排球部23は、ゴルフ球Bを集球する集球部24と、ゴルフ球Bを排球する排球部25とを有している。集球部24は、公知の技術であり、本体11の走行に伴って連れまわり回転されるピックアップロータ24aにより構成される。なお、集球部24を、集球部モータ(図示せず)によりピックアップロータ24aが回転する構成としてもよい。排球部25は、公知の技術であり、排球部モータ25a(図4)と、それによって駆動される排球ゲート25bを有している。
【0028】
また、集球排球部23は、球の貯留量検出器(図示せず)を有していても構わない。貯留量検出器において、球の貯留量が閾値を超えると、排球可能な状態になる。具体的には、貯留量検出器は、例えば、貯まったゴルフ球Bの重量を測定する重量センサ、貯まったゴルフ球Bの上面を検出する光電センサである。
【0029】
記憶部13は、この実施形態では制御部15内に設けられている。記憶部13は、制御部15を構成するコンピュータシステムの記憶装置の記憶領域の一部又は全部であり、集球排球機1に関する各種情報を記憶する。記憶部13は、例えば、複数の部分走行経路に関するデータ(部分走行スケジュール101と呼ぶ)と、複数の部分走行経路を連結経路CRで連結した全体の走行経路(自律走行経路と呼ぶ)に関するデータ(自律走行スケジュール103と呼ぶ)を記憶する。
【0030】
(3)制御部の構成
制御部15は、CPU、記憶装置(RAM、ROM、ハードディスクドライブ、SSDなど)、各種インターフェースなどを備えたコンピュータシステムである。制御部15は、集球排球機1に関する各種制御を行う。
【0031】
図4を用いて、制御部15の構成を詳細に説明する。図4は、第1実施形態に係る制御部の全体構成を示す図である。なお、以下に説明する制御部15の各機能ブロックの全部又は一部は、制御部15を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムにより実現されてもよい。この場合、当該プログラムは、メモリ部及び/又は記憶装置に記憶されていてもよい。制御部15の各機能ブロックの全部又は一部は、SoC(System on Chip)などのカスタムICとして実現されていてもよい。
【0032】
制御部15は、1つのコンピュータシステムにより構成されていてもよいし、複数のコンピュータシステムにより構成されていてもよい。複数のコンピュータシステムにより制御部15を構成する場合、例えば、制御部15の複数の機能ブロックにて実現される機能を複数のコンピュータシステムに任意の割合で振り分けて実行させることができる。
【0033】
制御部15は、走行制御部51を有する。走行制御部51は、走行モータ31を制御する。走行制御部51には、走行経路教示部37からの教示内容、走行指令算出部53(後述)からの走行指令が入力される。
なお、走行経路教示部37は、例えば、ハンドルなどの集球排球機1の操作手段である。すなわち、走行制御部51には、走行経路教示部37による作業者の操作が入力される。
【0034】
制御部15は、走行指令算出部53を有する。走行指令算出部53は、走行指令を走行制御部51に出力する。走行指令算出部は、走行モータ31の目標回転速度を算出し、当該目標回転速度にて走行モータ31を回転させるための駆動電力を、走行モータ31に出力する。走行指令算出部53に与えられるデータは、自律走行スケジュール103である。
また、走行指令算出部53は、位置算出部55(後述)から集球排球機1の位置情報が入力され、自律走行スケジュール103に示された目標位置と上記位置情報とに基づいて、走行モータ31の目標回転速度を算出する。走行指令算出部53は、当該目標回転速度にて走行モータ31を回転させるための駆動電力を、走行モータ31に出力する。
【0035】
制御部15は、位置算出部55を有している。位置算出部55は、GNSS受信機35にて取得された情報に基づいて、ゴルフ練習場2における集球排球機1の現在位置を示す位置情報を算出する。具体的には、位置算出部55は、RTK(Real Time Kinematic)測位により求められた現在地の位置を、緯度と経度との組み合わせとして測定する。その他、センチメータ級測位補強サービス(Centi-meter Level Augumentation Service、CLAS)による現在地の位置を用いることもできる。
また、位置算出部55は、方角検出センサ41からの信号に基づいて、集球排球機1の向き(方角)を算出する。すなわち、位置算出部55は、位置情報として、集球排球機1の存在位置の緯度と経度、及び、その位置における集球排球機1の方角を算出する。なお、位置算出部55は、位置情報に含める方角を、例えば、北を基準(0°)として時計回りに増加する角度として表す。
【0036】
制御部15は、第1走行経路生成部57を有する。第1走行経路生成部57は、自律走行スケジュール103において連結される部分走行経路を、部分走行スケジュール101として生成する。
第1走行経路生成部57は、走行経路教示部37により集球排球機1が操作されているときに、所定時間毎(例えば、制御部15における制御周期毎)に、位置算出部55から入力された位置情報(緯度、経度、方角)を受信する。これにより、第1走行経路生成部57は、ゴルフ練習場2において集球排球機1が操作による走行で通過した位置を表す情報と、当該位置における集球排球機1の方角を表す情報とを、複数の位置情報の点列として取得する。すなわち、部分走行スケジュール101は、複数の位置情報の点列を記憶したものである。
【0037】
その他、部分走行スケジュール101は、部分走行スケジュール101に含まれる位置情報のそれぞれに、当該位置情報で示される位置を集球排球機1が通過した時間を関連付けて記憶してもよい。
【0038】
本実施形態では、位置情報は、GNSS受信機35からの信号に基づいて算出された緯度及び経度と、方角検出センサ41に基づいて算出された方角と、により構成される座標値(例えば、位置情報は、(緯度,経度,方角)との座標で表される)である。つまり、GNSS受信機35及び方角検出センサ41からの信号に基づく位置情報は、地球表面を含む大きな座標(グローバル座標の一例)上の座標値((緯度,経度,方角))として表される。
【0039】
また、第1走行経路生成部57は、ゴルフ練習場2の特定の領域を囲むような点列が取得された場合に、当該領域内をまんべんなく(「塗り潰す」ように)走行する部分走行経路を、部分走行スケジュール101として生成可能となっている。
つまり、第1走行経路生成部57は、「コピー走行」による部分走行経路と、「塗り潰し走行」による部分走行経路と、を生成可能である。
【0040】
なお、第1走行経路生成部57により「コピー走行」による部分走行経路を生成するか、又は、「塗り潰し走行」による部分走行経路を生成するかは、例えば、集球排球機1の動作モードの切り替えにより切り替えることができる。
【0041】
制御部15は、第2走行経路生成部59(自律走行経路生成部の一例)を有している。第2走行経路生成部59は、集球排球機1に自律走行させたい自律走行経路を生成する。具体的には、第2走行経路生成部59は、記憶部13に記憶された複数の部分走行スケジュール101を連結することで、自律走行スケジュール103を生成する。
【0042】
なお、制御部15は、集球排球機1を自律走行させる際に、自律走行スケジュール103に記憶された排球作業を実行するか否かの情報(排球指示)に基づいて、排球制御部71を制御してもよい。これにより、集球排球機1は、自律走行スケジュール103に従って自律的に走行中の教示されたタイミングにて、排球作業を実行できる。
【0043】
以上の構成により、制御部15は、ゴルフ練習場2の個別の領域において個別に生成(教示)した部分走行経路を連結して、自律走行スケジュール103を生成できる。これにより、本実施形態に係る集球排球機1は、領域によって特性の異なる走行が必要となるゴルフ練習場2を自律走行できる。
【0044】
例えば、ゴルフ練習場2の球散乱エリア3のような広い領域をまんべんなく走行する必要がある領域では、「塗り潰し走行」による部分走行経路を生成できる。その一方、排球溝7のような接近するには集球排球機1の熟練操作が必要な領域では、排球溝7の近傍から排球溝7までの「コピー走行」による部分走行経路を生成できる。
そして、球散乱エリア3で生成した「塗り潰し走行」による部分走行経路と、排球溝7の近傍領域で生成した「コピー走行」による部分走行経路と、を連結する連結経路CRを経路計画できる。
以上のようにして、上記の構成を有する制御部15は、球散乱エリア3に散乱したゴルフ球Bを集球し、集球したゴルフ球Bを排球溝7にて排球するまでの一連の動作を、集球排球機1に自律的に実行させることができる。
【0045】
制御部15は、排球教示部39を有している。排球教示部39は、例えば、押しボタン等からなる操作盤である、排球教示部39は、例えば、操作者による押しボタンの操作を排球制御部71に送信する。
排球制御部71は、排球教示部39からボタン操作を受け付けて、その操作を排球指示に変換する。排球制御部71は、排球指示を排球部モータ25aに出力することで、排球ゲート25bを駆動する。
【0046】
排球制御部71は、部分走行経路を教示中に、自身が出力する排球指示とその指示が発生したタイミングとを関連付けて、部分走行スケジュール101に記憶できる。その他、部分走行スケジュール101を編集して、排球指示と当該指示を出すタイミングとを関連付けて記憶することもできる。
一方、自律走行スケジュール103により自律走行中に、排球制御部71は、排球指示を、自律走行スケジュール103に記憶されたタイミングで出力する。これにより、集球排球機1は、自律走行中に、自律走行スケジュール103に記憶されたタイミングに従って自律的に排球作業を実行できる。
【0047】
(4)集球排球機の概略動作
以下、図5を用いて、制御部15が、自律走行経路を生成し、当該自律走行経路を集球排球機1に自律走行させるまでの制御動作の概略を説明する。図5は、集球排球機の概略動作を示すフローチャートである。
ステップS1で、制御部15の第1走行経路生成部57は、ゴルフ練習場2内に複数の部分走行経路を生成し、記憶部13記憶する。このとき、第1走行経路生成部57は、複数の部分走行経路のそれぞれの少なくとも一部に、ゴルフ練習場2を少なくとも含むグローバル座標上に定義されたグローバル座標値(緯度、経度、及び方角により構成される座標値)を含める。
【0048】
ステップS2で、制御部15の第2走行経路生成部59は、複数の部分走行経路を連結して、自律走行経路を生成する。このとき、第2走行経路生成部59は、部分走行経路に含まれるグローバル座標値に基づいて、連結元の部分走行経路の終点と、連結先の部分走行経路の始点とを連結する連結経路CRを自律的に計画する。
また、第2走行経路生成部59は、連結元の部分走行経路と、連結先の部分走行経路と、連結経路CRと、を紐付けることにより自律走行経路を生成する。
【0049】
ステップS3で、走行制御部51は、ステップS2で生成した自律走行経路に従って走行部21を制御することで、本体11を自律走行経路に沿って移動させる。
【0050】
(5)部分走行経路の生成動作の詳細説明
(5-1)コピー走行による部分走行経路の生成動作
以下、図5のステップS1の動作を詳細に説明する。上記のように、本実施形態においては、部分走行経路として「コピー走行」による経路と「塗り潰し走行」による経路とが生成されうる。
まず、図6を用いて、コピー走行による部分走行経路の生成を説明する。図6は、コピー走行による部分走行経路の生成を示すフローチャートである。
【0051】
コピー走行による部分走行経路の生成は、走行経路教示部37の操作により集球排球機1が走行した経路を、複数の通過点の点列として取得することで実現される。
具体的には、第1走行経路生成部57は、走行経路教示部37の操作中(ステップS11)に、所定の周期(ステップS12で「Yes」)にて、位置算出部55から位置情報((緯度,経度,方角))を取得する(ステップS13)。所定の周期は、例えば、制御部15の制御周期である。
【0052】
第1走行経路生成部57は、ステップS14で、ステップS13にて取得した位置情報と、それを取得した時間とを関連付けて部分走行スケジュール101に記憶する。
コピー走行時に排球作業を行う場合、排球制御部71は、排球指示の有無を上記所定の周期にて取得し、指示の有無とそれを取得した時間とを関連付けて部分走行スケジュール101に記憶する。
【0053】
上記ステップS11~ステップS14は、走行経路教示部37による操作が継続されるか、又は、コピー走行の停止が指令されない限り(ステップS15で「No」)、繰り返し実行される。
一方、走行経路教示部37による操作が停止されるか、又は、コピー走行の停止が指令されると(ステップS15で「Yes」)、位置情報の取得と部分走行スケジュール101への記憶を停止する。
【0054】
第1走行経路生成部57は、ステップS16で、コピー走行による部分走行スケジュール101の通過点の少なくとも一部に、グローバル座標上の座標値、すなわち、緯度と経度と方角とにより構成される座標値(緯度,経度,方角)を含ませておく。例えば、部分走行スケジュール101の開始位置(始点)と終了位置(終点)とにおいて、元の座標値と緯度と経度と方角とにより構成される座標値とを重複させておいてもよい。
【0055】
なお、本実施形態では、部分走行スケジュール101の全ての通過点が(緯度,経度,方角)との座標値で表されている。このように、ステップS11~S15の実行の段階で部分走行スケジュール101にグローバル座標上の座標値が含まれているなら、上記のステップS16は実行されない。
【0056】
上記の緯度と経度と方角とにより構成される座標値は、コピー走行中に、所定の位置(例えば、コピー走行の始点と終点)で予め取得しておく。
【0057】
上記のステップS11~S16を実行することにより、第1走行経路生成部57は、コピー走行による部分走行スケジュール101の少なくとも一部に、緯度と経度と方角との組み合わせに座標値を含めることができる。
【0058】
(5-2)塗り潰し走行による部分走行経路の生成動作
(5-2-1)走行特性
次に、塗り潰し走行による部分走行経路の生成動作を説明する。塗り潰しによる部分走行経路の具体的な生成工程を説明する前に、図7及び図8を用いて、集球排球機1の走行特性を説明する。図7は、集球排球機の模式的平面図である。図8は、集球排球機の折り返し走行を示す模式的平面図である。
前述のように、集球排球部23は、走行部21(本体11)に対して、連結構造26によって連結されており、回転時の最小半径が大きくなってしまう。したがって、集球排球機1が折り返し走行する場合には、図8に示すように、往路と復路とで間に大きな間隔が形成されてしまう。例えば、集球排球部23の横幅が1.4m、最小回転半径が2.4mであれば、塗り残し幅である間隔Wは3.4mになる。
上記の問題を解決するためには、複数の周回経路を横にずらして互いに接続することで塗り潰し走行による部分走行経路を作成することが一つの解決方法である。
【0059】
(5-2-2)塗り潰し走行による部分走行経路の生成動作
以下、図9を用いて、塗り潰し走行による部分走行経路の具体的な生成動作を説明する。図9は、塗り潰し走行による部分走行経路の生成動作を示すフローチャートである。
ステップS17で、第1走行経路生成部57は、走行領域TAを表す位置情報の点列(座標値)を取得する。具体的には、ユーザが、走行経路教示部37を用いて、走行領域TAの境界に沿って集球排球機1を走行させる。この走行中に、第1走行経路生成部57が、所定の周期(制御周期)ごとに位置情報を取得する。
【0060】
ステップS18で、第1走行経路生成部57は、走行領域TAを確定する。
ステップS19で、第1走行経路生成部57は、走行領域TA内に塗り潰し走行による部分走行スケジュール101を作成し、記憶部13に保存する。
【0061】
(5-2-3)塗り潰し走行による部分走行経路の生成動作の詳細説明
図10図14を用いて、図9のステップS19を詳細に説明する。図10は、塗り潰し走行による部分走行スケジュールを生成するステップの詳細を示すフローチャートである。図11図14は、走行領域内に塗り潰し経路が作成される状態を段階的に示した模式図である。
ステップS20で、図11に示すように、第1走行経路生成部57は、走行領域TAを短冊状に2N個の領域に分割する。なお、この分割数は奇数(2N+1個)であってもよい。このとき、分割領域の幅は、集球排球部23の幅以下とする。
ステップS21で、図12に示すように、第1走行経路生成部57は、1個目の領域→N+1個目の領域→2個目の領域→N+2個目の領域→・・・と分割した領域の走行順番を決定する。
ステップS22で、図13に示すように、第1走行経路生成部57は、2N個の領域のそれぞれに走行経路を設定する。この場合、1~N個目の領域の走行方向と、N+1~2N個目の領域の走行方向とを逆に設定する。このとき、第1走行経路生成部57は、各領域の走行経路を通過点の点列として設定するが、当該通過点を(緯度,経度,方角)で表される座標値(緯度と経度と方角とにより構成される座標値)とする。
【0062】
ステップS23で、図14に示すように、経路同士を接続する。具体的には、m(1、2、・・・N-1)個目の走行経路の終点とm+N個目の走行経路の始点とを接続し、m+N個目の走行経路の終点とm+1番目の走行経路の始点とを接続する。この接続動作を、mを1から開始しN-1となるまで1ずつ増加して繰り返す。
さらに、N番目の走行経路の終点と2N番目の走行経路の始点とを接続し、その後、2N番目の走行経路の終点を1番目の走行経路の始点に接続し、部分走行経路の生成を終了する。
上記のように2つの走行経路を接続する際、図14に示すように、2つの走行経路の接続線には、90°のカーブが設けられる。このカーブの半径は、集球排球機1の回転時の最小半径以上とする。
【0063】
このようにして、ユーザが設定した走行領域TAをまんべんなく塗り潰す部分走行経路を作成できる。上記走行経路上に所定の間隔で通過点(の座標値)を設定することで、塗り潰し走行による部分走行スケジュール101を生成できる。
【0064】
ステップS24で、第1走行経路生成部57は、ステップS20~S23を実行することにより生成した部分走行スケジュール101の少なくとも一部に、緯度と経度と方角とにより構成される座標値を含める。なお、上記のように、部分走行スケジュール101が、緯度と経度と方角とにより構成される座標値(緯度,経度,方角)を含んでいる場合には、ステップS24は実行されない。
【0065】
ステップS24が実行される場合、第1走行経路生成部57は、走行領域TAの点列の座標値を用いて、例えば以下のようにして、塗り潰し走行による部分走行スケジュール101に、緯度と経度と方角とにより構成される座標値を含めることができる。なぜなら、走行領域TAの点列は、GNSS受信機35からの信号に基づいて算出した位置情報であるからである。すなわち、走行領域TAの点列は、緯度と経度と方角とにより構成される座標値で表されているからである。
【0066】
まず、第1走行経路生成部57は、走行領域TAを教示したときの経路の開始位置と、塗り潰し走行による部分走行スケジュール101のいずれかの通過点との間の実空間における距離を算出する。
次に、第1走行経路生成部57は、この実空間における距離から、上記通過点と走行領域TAの開始位置との間の緯度と経度のずれを算出する。また、上記通過点における方角と走行領域TAの開始位置における方角とのずれを算出する。
その後、第1走行経路生成部57は、走行領域TAを教示したときの経路の開始位置の緯度と経度に、上記で算出した緯度と経度のずれを加算することで、上記通過点を、緯度と経度と方角により構成される座標値で表す。また、走行領域TAを教示したときの経路の開始位置における方角(角度)に上記で算出した方角のずれを加算して、上記通過点の方角を算出する。
【0067】
第1走行経路生成部57は、緯度と経度と方角とにより構成される座標値で表された通過点を、部分走行スケジュール101の対応する通過点と入れ替えるか又は重複させる。これにより、部分走行スケジュール101の一部に、緯度と経度と方角とにより構成される座標値で表された通過点を含めることができる。
【0068】
例えば、塗り潰し走行による部分走行スケジュール101の始点及び終点に対して上記の処理を実行することで、第1走行経路生成部57は、始点と終点とを緯度と経度と方角とにより構成される座標値で表した、塗り潰し走行による部分走行スケジュール101を生成できる。
【0069】
(6)自律走行経路の生成動作
部分走行経路を生成し記憶部13に記憶した後、図5のステップS2では、複数の部分走行経路を連結して自律走行経路を生成する。以下、図15図17を用いて、図5のステップS2の動作を詳細に説明する。
図15は、第1実施形態に係る自律走行経路の生成動作を示すフローチャートである。図16は、選択された部分走行経路の一例を示す図である。図17は、選択された複数の部分経路を連結経路で連結した場合の一例を示す図である。
最初に、ステップS31で、記憶部13に記憶された複数の部分走行経路(部分走行スケジュール101)から、自律走行経路に含める部分走行経路が選択される。
具体的には、例えば、第2走行経路生成部59が、記憶部13に記憶された部分走行スケジュール101のリストを、制御部15のディスプレイ(図示せず)に表示する。ユーザは、制御部15の入力手段(例えば、タッチパネルなど)を用いて、表示されたリストから、複数の部分走行スケジュール101を選択する。
【0070】
例えば、図16に示すような2つの部分走行経路(部分走行スケジュール101a、101b)が選択されたとする。
図16において、部分走行スケジュール101aは塗り潰し走行による部分走行経路であり、部分走行スケジュール101bはコピー走行による部分走行経路である。部分走行スケジュール101bは、排球溝7へ接近するための走行経路であり、熟練の操作が必要とされる経路である。
【0071】
図16に示す例では、部分走行スケジュール101aの始点と終点は同一であり、緯度と経度と方角とにより構成される座標値にて(緯度,経度,方角)=(LA1,LO1,Θ1)と表される。
また、部分走行スケジュール101bの始点は(緯度,経度,方角)=(LA2,LO2,Θ2)と表され、終点は(緯度,経度,方角)=(LA3,LO3,Θ3)と表される。
【0072】
複数の部分走行経路を選択後、ステップS32で、第2走行経路生成部59は、自律走行経路内での複数の部分走行経路の走行順を特定する。複数の部分走行経路の走行順は、例えば、上記ステップS31における部分走行経路の選択順とできる。その他、上記ステップS31において、部分走行経路の選択時にユーザが走行順を設定してもよい。
図16に示す例では、集球排球機1は、部分走行スケジュール101aに従って走行することでゴルフ球Bを集球し、その後、排球溝7へ移動して排球する。従って、この場合には、走行順は、1番目が部分走行スケジュール101a、2番目が部分走行スケジュール101bとなる。
【0073】
以下、選択された2つの部分走行経路において、先に走行する部分走行経路を、連結経路CRにて連結する「連結元の部分走行経路」と呼ぶ。一方、後で走行する部分走行経路を、連結経路CRにて連結する「連結先の部分走行経路」と呼ぶ。
図16に示す例では、集球排球機1は、部分走行スケジュール101aが連結元の部分走行経路、部分走行スケジュール101bが連結先の部分走行経路となる。
【0074】
走行順を特定後、ステップS33で、第2走行経路生成部59は、連結元の部分走行経路と連結先の部分走行経路とを連結する連結経路CRを、自律的に経路計画する。具体的には、第2走行経路生成部59は、連結元の部分走行経路の終点と、連結先の部分走行経路の始点と、を結ぶ経路を経路計画により生成する。
図16に示す2つの部分走行スケジュール101a、101bにおいては、第2走行経路生成部59は、部分走行スケジュール101aの終点(LA1,LO1)と、部分走行スケジュール101bの始点(LA2,LO2)と、を結ぶ経路を、連結経路CRとして計画する。また、第2走行経路生成部59は、当該連結経路CRにおいて、集球排球機1の方角が、Θ1(部分走行スケジュール101aの終点の方角)からΘ2(部分走行スケジュール101bの始点の方角)へと変化するよう経路計画する。すなわち、連結経路CRも、集球排球機1の方角に関する情報を含んでいる。
【0075】
第2走行経路生成部59は、例えば、図17に示すように、始点を(LA1,LO1)と、終点を(LA2,LO2)とし、かつ、これらを最短で結ぶ連結経路CRを計画できる。また、当該連結経路CRにおいて、集球排球機1の方角はΘ1からΘ2へと変化する。
その他、第2走行経路生成部59は、上記2点間に障害物が存在する場合には、その障害物を回避するような連結経路CRを計画できる。また、例えば上記2点以外の所定の点を経由する連結経路CRを計画できる。
【0076】
連結経路CRを計画する際、第2走行経路生成部59は、集球排球機1が通過する通過点の点列として連結経路CRを計画する。
上記のように、連結経路CRの始点(連結元の終点)と終点(連結先の始点)は、緯度と経度とにより構成される座標値で表されている。従って、第2走行経路生成部59は、緯度と経度により構成される座標上にて連結経路CRを計画し、連結経路CRの全ての通過点を緯度と経度とにより表す。
【0077】
連結経路CRを生成後、ステップS34で、第2走行経路生成部59は、連結元の部分走行経路と、連結先の部分走行経路と、連結経路CRと、を紐付けて、自律走行経路(自律走行スケジュール103)を生成する。
本実施形態のように、部分走行スケジュール101の全ての通過点が緯度と経度と方角とにより構成される座標値(グローバル座標上の座標値)として表されていれば、第2走行経路生成部59は、例えば、部分走行スケジュール101a、101bと、通過点の点列である連結経路CRと、を合体して1つのデータ(電子ファイル)として自律走行スケジュール103を生成できる。
【0078】
上記ステップS33及びステップS34は、選択された全ての部分走行スケジュール101について連結経路が計画されるまで、繰り返し実行される。
一方、全ての部分走行スケジュール101について連結経路の計画を終了したら(ステップS35で「Yes」)、自律走行スケジュール103の生成を終了する。
【0079】
(7)自律走行経路の生成までのまとめ
上記にて説明した自律走行経路の生成までの動作について、以下のようにまとめることができる。
上記にて説明した集球排球機1において、記憶部13に記憶された複数の部分走行経路(部分走行スケジュール101)のそれぞれは、少なくとも一部に、緯度と経度との組み合わせによる座標(グローバル座標)上に定義された緯度と経度とにより構成された座標値(グローバル座標値)を含む。緯度と経度との組み合わせによる座標は地球表面を定義するものであるので、集球排球機1が自律走行するゴルフ練習場2は、上記座標に含まれる。
【0080】
また、第2走行経路生成部59は、部分走行スケジュール101に含まれる緯度と経度により構成される座標値に基づいて、連結元の部分走行スケジュール101の終点と、連結先の部分走行スケジュール101の始点とを連結する連結経路を自律的に計画する。
さらに、第2走行経路生成部59は、連結元の部分走行スケジュール101と、連結先の部分走行スケジュール101と、連結経路と、を紐付けることにより自律走行経路(自律走行スケジュール103)を生成する。
【0081】
上記の集球排球機1においては、記憶部13に記憶されている複数の部分走行スケジュール101のそれぞれは、少なくとも一部に、緯度と経度とにより構成された座標値を含んでいる。すなわち、複数の部分走行スケジュール101は、共通の座標系で定義された座標値を含んでいる。
自律走行スケジュール103の生成において連結される部分走行スケジュール101に、共通の座標系で定義される座標値が含まれることで、当該共通の座標系で定義された座標値を用いて、部分走行スケジュール101を連結する連結経路を自律的に計画できる。つまり、連結すべき部分走行スケジュール101の対応付けを、人手によらず精度よく行うことができる。
【0082】
第1実施形態において、連結元の部分走行スケジュール101の終点と、連結先の部分走行スケジュール101の始点は、緯度と経度とにより構成される座標値である。
これにより、連結経路の始点(連結元の終点)と終点(連結先の始点)とを共通の座標系上の座標値に変換する必要がなくなるので、上記2つの点を結ぶ連結経路を容易に計画できる。
【0083】
上記の集球排球機1は、GNSS受信機35を備えている。GNSS受信機35は、ゴルフ練習場2内の本体11の位置を、緯度と経度との組み合わせとして測定する。
これにより、屋外空間にて集球排球機1の位置を測定できる。また、共通の座標系を、原理的には地球表面全体を含む座標系とすることができる。
【0084】
(8)自律走行動作
以下、図18を用いて、上記のようにして作成した自律走行スケジュール103(自律走行経路)に従って自律走行する際の集球排球機1の動作を説明する。図18は、自律走行動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS41で、走行指令算出部53は、自律走行スケジュール103に含まれる複数の通過点から、目標となる通過点(目標通過点と呼ぶ)を特定する。例えば、自律走行スケジュール103において、各通過点と当該通過点を通過する時間とが関連付けられている場合には、自律走行の開始からの経過時間に最も近い時間に関連付けられた通過点を、目標通過点と特定できる。
上記と同様にして、排球制御部71は、目標通過点において排球作業を実行するか否かを、自律走行スケジュール103から特定する。
【0085】
次に、ステップS42で、走行指令算出部53は、位置算出部55から、現在の集球排球機1の位置情報を取得する。
位置情報を取得後、ステップS43で、走行指令算出部53は、ステップS41にて特定した目標通過点と、ステップS42にて取得した位置情報と、に基づいて走行モータ31の制御量を算出する。例えば、目標通過点と現在の位置情報との差分、又は、目標通過点と現在の位置情報との比に基づいて、走行モータ31の制御量を算出できる。
【0086】
ステップS44で、走行指令算出部53は、ステップS43で算出した走行モータ31の制御量を、走行制御部51に出力する。走行制御部51は、受信した制御量に基づいた電力を、走行モータ31に供給する。これにより、集球排球機1は、目標通過点において目標の方角を向くようその姿勢を変化させつつ、目標通過点に向けて自律的に走行する。
目標通過点に向けて走行を開始してから所定の時間(例えば、制御周期)経過後、集球排球機1が目標通過点をまだ通過していない場合(ステップS45で「No」)には、自律走行動作はステップS42に戻り、目標通過点を通過するまで上記ステップS42~S44が実行される。
【0087】
一方、集球排球機1が目標通過点を通過したが(ステップS45で「Yes」)、自律走行スケジュール103の全ての通過点をまだ通過していない場合(ステップS46で「No」)、自律走行動作は上記のステップS41に戻り次の目標通過点を特定し、ステップS42~S44を実行して走行モータ31を制御する。これにより、集球排球機1は、次の目標通過点に向けて走行する。
【0088】
このとき、排球制御部71は、到達した目標通過点において排球作業をするか否かに基づいて、排球部モータ25aを制御する。これにより、ゴルフ練習場2の指定された位置において排球作業を実行できる。
【0089】
一方、集球排球機1が目標通過点を通過し(ステップS45で「Yes」)、かつ、当該目標通過点が自律走行スケジュール103の終点である(すなわち、自律走行スケジュール103の全ての通過点を通過した)場合(ステップS46で「Yes」)、自律走行動作は終了する。
【0090】
自律走行スケジュール103に従って自律走行することで、集球排球機1は、複数の部分走行スケジュール101を自律走行できる。すなわち、集球排球機1は、それぞれを個別に作成した複数の部分走行スケジュール101を、1つの走行経路のように連続的に自律走行できる。
【0091】
2.第2実施形態
(1)第2実施形態に係る集球排球機の概略
上記の第1実施形態において、集球排球機1は、GNSS受信機35にてGNSS信号を受信可能な屋外を走行するものであった。これに限られず、第2実施形態に係る集球排球機1は、屋外のみでなく、他の手段によりその位置を推定できる領域も走行可能である。
例えば、屋外のうち建物の側(半屋外の一例)では、GNSS信号の多重反射により緯度と経度を精度よく測定できない。このような場所では、むしろ、他の手段による方が位置を正確に推定できる。第2実施形態に係る集球排球機1は、このような「半屋外」を走行可能なものである。
【0092】
以下、第2実施形態に係る集球排球機1を説明する。第2実施形態に係る集球排球機1は、GNSS受信機35以外の位置推定用の検出器が存在すること、及び、部分走行経路(部分走行スケジュール101)の生成方法が第1実施形態とは異なるのみで、他の構成及び機能は、第1実施形態と同じである。
従って、以下では、第2実施形態における制御部の構成と、部分走行経路の生成方法のみを説明し、集球排球機1の他の構成についての説明は省略する。
【0093】
(2)第2実施形態に係る制御部の構成
以下、図19を用いて、第2実施形態に係る集球排球機1の制御部15’を説明する。図19は、第2実施形態に係る制御部の構成を示す図である。
図19に示すように、制御部15’には、本体11に設けられた位置情報取得装置(位置検出器)36が接続されている。位置検出器36は、GNSS信号以外の手段により、集球排球機1の位置に関する情報を検出する。位置検出器36は、例えば、レーザレンジファインダ、エンコーダ、ビーコン受信機、などである。位置検出器36は、上記3種類の検出器を全て含んでいてもよいし、いずれか1種類又は2種類のみを含んでいてもよい。また、方角検出センサ41についても、複数のセンサを設けておいてもよい。例えば、GNSSコンパスと地磁気センサとにより方角検出センサ41を構成できる。
なお、屋内においては、例えば、屋内用の位置検出器36(例えば、レーザレンジファインダ)からの信号に基づいて集球排球機1の方角を検出するようにしてもよい。
【0094】
また、制御部15’は、位置算出部55’を有する。位置算出部55’は、緯度と経度により構成される座標値のみでなく、位置検出器36にて取得した情報に基づいて位置情報を算出する。なお、位置検出器36にて取得した情報に基づいた位置情報は、x’-y’座標の座標値として定義される。
レーザレンジファインダを位置検出器36として用いた場合、位置検出器36は、集球排球機1の周囲に存在する壁、障害物などの情報を取得する。この場合、位置算出部55’は、集球排球機1の走行環境を表す地図(グローバルマップ)と、集球排球機1の周囲の壁、障害物などの存在を表す地図情報(ローカルマップ)と、をマップマッチングすることにより位置を推定できる。
【0095】
エンコーダを位置検出器36として用いた場合、位置検出器36は、走行モータ31(すなわち、車輪33)の回転量を取得する。この場合、位置算出部55’は、当該車輪33の回転量に基づいて算出された集球排球機1の走行距離に基づいて、その位置を推定する。
ビーコン受信機を位置検出器36として用いた場合、位置検出器36は、所定の位置に固定されたビーコン発信機の信号を受信する。この場合、位置算出部55’は、ビーコン発信機からビーコン信号が発信されてから、位置検出器36で当該ビーコン信号を受信するまでの時間から、ビーコン発信機と集球排球機1との間の距離を算出する。その後、当該距離に基づいて、集球排球機1の位置を推定する。なお、ビーコン信号を用いた位置推定の場合、ビーコン発信機は3以上存在する。なぜなら、二次元の座標値の情報を算出するには、少なくとも3つの距離の情報が必要だからである。
【0096】
第2実施形態に係る位置算出部55’は、GNSS受信機35からの信号に基づいた位置推定と、位置検出器36からの信号に基づいた位置推定と、を切り替えることができる。
例えば、GNSS受信機35又は位置検出器36で取得される信号が、所定のレベル以上のノイズを含んでいたら、位置算出部55’は、ノイズがより少ない方からの信号を用いて位置推定を実行できる。
【0097】
その他、例えば、集球排球機1の位置が建物の壁から所定の距離以下の範囲内に入ったときに、位置算出部55’は、GNSS受信機35に基づく位置推定から、位置検出器36に基づく位置推定に切り替えることもできる。さらに、位置算出部55’は、GNSS受信機35に基づく位置推定と、位置検出器36に基づく位置推定と、を両方同時に実行でき、また双方の位置推定を利用して位置推定しても構わない。
【0098】
方角検出センサ41が複数種類のセンサにて構成される場合、位置算出部55’は、上記の位置検出器36の場合と同様に、いずれのセンサにてより精度よく方角が検出できるかに基づいて、いずれのセンサで方角を測定するかを決定してもよい。
【0099】
なお、制御部15’の他の構成及びその機能については、第1実施形態に係る制御部15の対応する構成及び機能と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0100】
(3)第2実施形態に係る部分走行経路の生成動作
以下、図20図22を用いて、第2実施形態に係る部分走行経路の生成動作を説明する。図20は、第2実施形態に係る部分走行経路の生成の一例を示す図である。図21は、第2実施形態に係る部分走行経路の生成動作(コピー走行)を示すフローチャートである。図22は、第2実施形態に係る位置情報の取得動作を示すフローチャートである。
本実施形態では、図20に示すように、内部空間SPを有する建物において、建物の壁Wの近傍を始点STとし、内部空間SP内の所定位置を終点EDとした、コピー走行による部分走行経路(部分走行スケジュール101c)の生成を例にとって説明する。
【0101】
上記内部空間SPには屋根(図示せず)が設けられており、内部空間SP内では、GNSS受信機35は、GNSS信号を受信できない。その一方、位置検出器36からの信号に基づいて、内部空間SP内における集球排球機1の位置情報は精度よく推定できる。
また、建物の壁Wから屋外へ所定の距離には境界線BOR1が設けられている。この境界線BOR1と壁Wとの間の領域を「臨界領域CA」と定義する。臨界領域CAでは、GNSS信号による位置情報の推定と、位置検出器36からの信号に基づいた位置情報の推定を両方実行できる。
【0102】
臨界領域CAよりも壁Wから遠い領域は屋外であり、GNSS信号に基づいて精度よく位置情報を推定できる。その一方、位置検出器36からの信号に基づいて、位置推定をすることはできない(あるいは、推定精度が低い)。
【0103】
まず、第1走行経路生成部57は、走行経路教示部37の操作中(ステップS11’)に、所定の周期(ステップS12’で「Yes」)にて、位置算出部55から位置情報を取得する(ステップS13’)。
【0104】
第2実施形態に係る位置情報の取得は、図22に示すフローチャートに従って実行される。まず、制御部15’は、集球排球機1がどの位置(屋外、臨界領域CA内、内部空間SP内)に存在するかを推定する。この推定は、例えば、GNSS受信機35が受信するGNSS信号の強度、及び、位置検出器36から得られる信号の強度及び位置推定精度に基づいて実現できる。
【0105】
例えば、GNSS受信機35がGNSS信号を受信できる一方、位置検出器36からは位置情報の推定に十分な信号が得られない場合、第1走行経路生成部57は、集球排球機1が屋外に存在すると判定する(ステップS51で「Yes」)。この場合、位置算出部55’は、GNSS受信機35からの信号に基づいて位置情報を算出している。
従って、第1走行経路生成部57は、ステップS52で、緯度と経度と方角とにより構成される座標値を位置情報として取得する。
【0106】
また、例えば、GNSS受信機35がGNSS信号を受信でき、かつ、位置検出器36により位置情報の推定に十分な信号が得られる場合、第1走行経路生成部57は、集球排球機1が臨界領域CA内に存在すると判定する(ステップS51で「No」、ステップS53で「Yes」)。この場合、位置算出部55’は、GNSS受信機35からの信号に基づいて位置情報を算出し、位置検出器36からの信号に基づいて位置情報を算出している。
従って、第1走行経路生成部57は、ステップS54で、緯度と経度と方角とにより構成される座標値(緯度,経度,方角)と、位置検出器36の信号から算出された座標値(すなわち、x-y座標の座標値(x,y,θ)。θ:x-y座標における集球排球機1の向き(方角))と、の両方を位置情報として取得する。
【0107】
さらに、例えば、GNSS受信機35がGNSS信号を受信できない一方、位置検出器36からは位置情報の推定に十分な信号が得られる場合、第1走行経路生成部57は、集球排球機1が内部空間SP内に存在すると判定する(ステップS51で「No」、ステップS53で「No」)。この場合、位置算出部55’は、位置検出器36からの信号に基づいて位置情報を算出している。
従って、第1走行経路生成部57は、ステップS55で、位置検出器36の信号から算出された座標値を位置情報(すなわち、x-y座標の座標値)として取得する。
【0108】
位置情報を取得後、ステップS14’で、ステップS13’にて取得した位置情報と、それを取得した時間とを関連付けて部分走行スケジュール101に記憶する。
上記ステップS11’~ステップS14’は、走行経路教示部37による操作が継続されるか、又は、コピー走行の停止が指令されない限り(ステップS15’で「No」)、繰り返し実行される。一方、走行経路教示部37による操作が停止されるか、又は、コピー走行の停止が指令されると(ステップS15’で「Yes」)、位置情報の取得と部分走行スケジュール101への記憶を終了する。
【0109】
上記のステップS11’~S15’を図20に示す例において実行すると、図23に示すような部分走行経路(部分走行スケジュール101c)が生成される。図23は、第2実施形態に係る部分走行経路の生成方法で生成される部分走行経路の一例を示す図である。
すなわち、部分走行スケジュール101cの始点STから中間点MP(内部空間SPへの入口付近)までには、緯度と経度と方角とにより構成される座標値と、位置検出器36からの信号から算出された座標値(x-y座標の座標値)と、が重複して存在する。なぜなら、部分走行スケジュール101cの始点から中間点MPまでは、臨界領域CAに含まれるからである。
【0110】
一方、中間点MPから終点EDまでには、位置検出器36からの信号から算出された座標値(x-y座標の座標値)のみが存在する。なぜなら、部分走行スケジュール101cの中間点MPから終点までは、内部空間SP内に含まれるからである。
【0111】
図23に示す部分走行経路の場合、その始点STには、緯度と経度と方角とにより構成される座標値(LA4,LO4,Θ4)と、x-y座標の座標値(x4,y4,θ4)とが両方存在する。その一方、その終点EDには、x-y座標の座標値(x5,y5,θ5)のみが存在する。
【0112】
上記のように、部分走行経路が臨界領域CAを走行する場合、その部分走行経路の部分走行スケジュール101は、少なくとも一部に、緯度と経度により構成される座標値と、位置検出器36からの信号から算出された座標値(x-y座標の座標値)と、を含む。これにより、部分走行経路に緯度と経度により構成される座標値を含める処理(例えば、第1実施形態で説明したステップS16)を省略できる。
なお、図20に示す例では、部分走行経路の始点STは臨界領域CA内にあり、この部分走行経路の部分走行スケジュール101cの始点STは、緯度と経度により構成される座標値を含んでいる。従って、この場合には、部分走行スケジュール101cの始点STを、緯度と経度により構成される座標値に変換する処理を省略できる。
【0113】
上記のように、屋外で生成された部分走行経路と、内部空間SP内への部分走行経路と、を連結可能とすることで、屋外から屋内(内部空間SP内)へ又はその逆方向に自律走行が可能な自律走行スケジュール103を生成できる。
【0114】
なお、第2実施形態において部分走行スケジュール101を生成する際、各通過点に、位置情報がGNSS信号に基づいて算出されたか、位置検出器36からの信号に基づいて算出されたか、あるいはこれら両方により算出されたかを示す情報を、関連付けておいてもよい。
これにより、集球排球機1が自律走行スケジュール103に従って自律走行する際に、走行指令算出部53がどの位置情報(GNSS信号に基づく位置情報、又は、位置検出器36からの信号に基づく位置情報)を用いて走行モータ31への制御量を算出すべきかを簡単に判断できる。
【0115】
3.第3実施形態
(1)第3実施形態に係る集球排球機の概略
上記の第1実施形態において、部分走行経路は屋外に生成されていた。また、第2実施形態において、臨界領域CAに存在する始点と、内部空間SP内に存在する終点と、を有する部分走行経路が生成可能であった。
これに限られず、第3実施形態に係る集球排球機1は、屋外で生成された部分走行経路と、内部空間SP内(屋内)のみで生成された部分走行経路を連結して、自律走行経路を生成できる。すなわち、連結される部分走行経路が、緯度及び経度を測定できない領域内で生成された経路であっても、自律走行経路を生成できる。
【0116】
以下、第3実施形態に係る集球排球機1を説明する。第3実施形態に係る集球排球機1は、部分走行経路の一部に緯度と経度により構成される座標値を含める方法と、自律走行スケジュール103の生成方法が異なるのみで、他の構成及び機能は、第1実施形態及び第2実施形態と同じである。従って、以下では、第3実施形態における自律走行スケジュール103の生成方法のみを説明し、集球排球機1の他の構成についての説明は省略する。
【0117】
以下では、図24に示すような想定例を用いて、第3実施形態に係る集球排球機1を説明する。図24は、第3実施形態に係る集球排球機を説明するための想定例を示す図である。
図24に示す例では、屋外に塗り潰し走行による部分走行経路(部分走行スケジュール101d)が生成され、内部空間SP内(屋内)にコピー走行による部分走行経路(部分走行スケジュール101e)が生成されているものとする。
【0118】
部分走行スケジュール101dによる部分走行経路の始点と終点は、緯度と経度とにより構成される座標値で表され、(緯度,経度,方角)=(LA6,LO6,Θ6)である。
一方、内部空間SP内では、位置検出器36からの信号に基づいて測定できる位置情報は、x-y座標に定義される情報である。
この場合、屋内の部分走行スケジュール101eの始点STと終点EDのそれぞれは、x-y座標の座標値として表される。部分走行スケジュールの101eによる部分走行経路の始点STは(x,y,θ)=(x7,y7,θ7)と表され、終点EDは(x,y,θ)=(x8,y8,θ8)と表される。
【0119】
また、内部空間SP内には、固定の第1基準点SD1と第2基準点SD2が設定されている。これら基準点においては、x-y座標に定義される座標値だけでなく、緯度と経度により構成される座標値も定義されている。
具体的には、第1基準点SD1には(x,y)=(x9,y9)及び(緯度,経度)=(LA9,LO9)との座標値が設定されている。一方、第2基準点SD2には(x,y)=(x10,y10)及び(緯度,経度)=(LA10,LO10)との座標値が設定されている。これら基準点の緯度及び経度は、例えば、内部空間SPを有する建物の緯度と経度から算出できる。
【0120】
(2)部分走行経路の座標変換方法
以下、内部空間SP内の部分走行経路の生成を説明する。内部空間SP内においても、位置検出器36からの信号に基づく位置情報を用いて、第1実施形態で説明したステップS11~ステップS16を実行することで、部分走行経路を生成できる。内部空間SP内では、GNSS受信機35がGNSS信号を受信できないので、内部空間SP内の部分走行スケジュール101eには、緯度と経度により構成される座標値が含まれない。
このような場合には、連結経路を経路計画するために、第1基準点SD1及び第2基準点SD2に設定された座標値を用いて、部分走行スケジュール101eの少なくとも始点STと終点ED(屋外の部分走行経路に連結される点)の座標変換を行う。それと同時に、始点STと終点EDには、元の座標値も重複させておく。
【0121】
以下、部分走行スケジュール101eの始点の座標値(x7,y7,θ7)を、緯度と経度と方角により構成される座標値に変換する場合を例にとって、座標変換方法を説明する。部分走行スケジュール101eの他の通過点の座標変換も同様にして実行できる。
まず、x-y座標における始点STと第1基準点SD1との間の距離D1と、始点STと第2基準点SD2との間の距離D2を算出する。なお、位置検出器36がビーコン受信機であり、各基準点にビーコン発信機が設けられる場合には、ビーコン信号の発信から受信までの時間から上記距離を算出できる。
【0122】
次に、緯度と経度を既知のアルゴリズムによって距離単位の座標系(例えばECEF座標系)に座標変換を行い、始点STと第1基準点SD1との間の距離D1と、始点STと第2基準点SD2との間の距離D2についての式を立てる。続いて、距離D1及び距離D2について連立方程式を立て、解を求めることで、始点STの緯度と経度を求めることができる。
【0123】
(3)第3実施形態に係る自律走行経路の生成動作
以下、図25を用いて、第3実施形態に係る自律走行経路(自律走行スケジュール103)の生成方法を説明する。図25は、第3実施形態に係る自律走行経路の生成動作を示すフローチャートである。
連結する部分走行経路を選択するステップS31’と、部分走行経路の走行順を特定するステップS32’と、連結経路CRの経路計画を実行するステップS33’は、それぞれ、第1実施形態で説明したステップS31~S33と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0124】
上記のように、連結経路CRは緯度と経度と方角とにより構成される座標上で計画されるので、連結経路CRの各通過点は、緯度と経度と方角とにより構成される座標値で表されている。第3実施形態のように、屋外の部分走行経路と屋内の部分走行経路とを連結する場合、連結経路CRの一部は、GNSS受信機35がGNSS信号を受信できない領域に含まれる。
このような場合に連結経路CRの全ての通過点を緯度と経度と方角とにより構成される座標値で表していると、GNSS信号を受信できない領域では、連結経路CRに従って集球排球機1を適切に自律走行させることができない。なぜなら、GNSS信号を受信できない領域では位置検出器36からの信号に基づいて位置情報を算出しており、その位置情報と緯度と経度と方角とにより構成される座標値とは同一座標上に定義されていないからである。
【0125】
従って、ステップS33’で連結経路CRを経路計画した後、ステップS34’で、第2走行経路生成部59は、緯度と経度と方角とにより構成される連結経路CRの座標値を、内部空間SP内で定義された座標の座標値に変換する。
具体的には、例えば、第2走行経路生成部59は、連結経路CRの各通過点の緯度と経度と方角とを内部空間SP内で定義されたx-y座標の座標値に変換するとともに、座標変換後のx-y座標の座標値を、座標変換前の緯度と経度と方角とにより構成される座標値に変換する変換用テーブルを作成する。
【0126】
上記とは逆に、第2走行経路生成部59は、連結経路CRの各通過点は緯度と経度と方角とにより構成される座標値のままとしておくとともに、連結経路CRの緯度と経度と方角とにより構成される座標値を、x-y座標の座標値に変換する変換用テーブルを作成してもよい。
【0127】
ステップS34’で連結経路CRを座標変換後、第2走行経路生成部59は、ステップS35’及びS36’(自律走行経路の生成)を実行する。ステップS35’及びS36’は、それぞれ、第1実施形態で説明したステップS34及びS35と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0128】
上記のステップS31’~S36’、及び、ステップS61~S63を実行することで、図24に示す想定例において、図26に示すような自律走行経路が生成される。図26は、第3実施形態で生成される自律走行経路の一例を示す図である。このようにして、屋外で生成された部分走行経路と、屋内で生成された部分走行経路と、を連結可能とすることで、屋外から屋内(内部空間SP内)へ又はその逆方向に自律走行が可能な自律走行スケジュール103を生成できる。
【0129】
(4)第3実施形態に係る集球排球機の自律走行動作
以下、上記のようにして生成された自律走行経路(自律走行スケジュール103)を用いて、集球排球機1が連結経路CRを自律的に走行する動作を簡単に説明する。以下の説明では、連結経路CRの各通過点がx-y座標の座標値に変換されていると仮定する。
集球排球機1が連結経路CRを内部空間SPに向けて自律走行する間、走行指令算出部53は、位置算出部55’がGNSS受信機35又は位置検出器36のいずれの装置からの信号に基づいて位置情報を算出しているかを確認する。
位置算出部55’がGNSS受信機35からの信号に基づいて現在位置を算出していれば、走行指令算出部53は、連結経路CRとともに作成した変換用テーブルを用いて、x-y座標の座標値で表されている連結経路CRの通過点を、緯度と経度と方角とにより構成される座標値に変換する。その後、走行指令算出部53は、位置算出部55’で算出されている位置情報と、緯度と経度と方角とにより構成される座標値に変換された連結経路CRの目標通過点と、に基づいて走行モータ31の制御量を算出する。
【0130】
一方、位置算出部55’が位置検出器36からの信号に基づいて位置情報を算出していれば(例えば、図26の中間点MP’で位置情報の算出方法が切り替わった場合)、走行指令算出部53は、集球排球機1が中間点MPに到達したときに、変換用テーブルを用いた連結経路CRの座標変換を停止する。従って、走行指令算出部53は、位置算出部55’で算出されている位置情報と、x-y座標の座標値で表されている連結経路CRの目標通過点と、に基づいて走行モータ31の制御量を算出する。
【0131】
このようにして、走行指令算出部53が、位置算出部55’で算出されている位置情報と、x-y座標の座標値で表されている目標点と、に基づいて走行モータ31の制御量を算出することで、集球排球機1は、残りの連結経路CRと内部空間SP内の部分走行経路(部分走行スケジュール101e)とを自律的に走行できる。
【0132】
4.実施形態の共通事項
上記第1~第3実施形態の共通事項は下記の通りである。
自律走行台車(例えば、集球排球機1)は、指定された領域(例えば、ゴルフ練習場2)内において予め決められた自律走行経路を自律走行する自律走行台車である。自律走行台車は、本体(例えば、本体11)と、記憶部(例えば、記憶部13)と、自律走行経路生成部(例えば、第2走行経路生成部59)と、走行制御部(例えば、走行制御部51)と、を備える。
本体は、走行部(例えば、走行部21)を有する。記憶部は、指定された領域内に生成した複数の部分走行経路(例えば、部分走行スケジュール101)を記憶する。自律走行経路生成部は、複数の部分走行経路を連結して自律走行経路(例えば、自律走行スケジュール103)を生成する。走行制御部は、走行部を制御することで、本体を自律走行経路に沿って移動させる。
【0133】
上記の自律走行台車において、複数の部分走行経路のそれぞれは、少なくとも一部に、グローバル座標上(例えば、緯度と経度と方角とにより構成される座標)に定義されたグローバル座標値(例えば、緯度と経度と方角とにより構成される座標値)を含む。グローバル座標は、自律走行台車が自律走行する指定された領域を少なくとも含む座標系であって、共通の座標系である。
【0134】
また、自律走行経路生成部は、グローバル座標値に基づいて、連結元の部分走行経路の終点と連結先の部分走行経路の始点とを連結する連結経路(例えば、連結経路CR)を自律的に計画する。さらに、自律走行経路生成部は、連結元の部分走行経路と、連結先の部分走行経路と、連結経路と、を紐付けることにより自律走行経路を生成する。
【0135】
上記の自律走行台車においては、部分走行経路は、少なくとも一部に、グローバル座標上に定義されたグローバル座標値を含んでいる。すなわち、部分走行経路は、共通の座標系(グローバル座標系)で定義された座標値を含んでいる。
自律走行経路の生成において連結される部分走行経路に共通の座標系(グローバル座標系)で定義される座標値が含まれることで、当該共通の座標系で定義された座標値を用いて、部分走行経路を連結する連結経路を自律的に計画できる。つまり、人手による部分走行経路の対応付けが不要となる。
【0136】
5.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0137】
(A)部分走行経路(部分走行スケジュール101)を、集球排球機1の制御部15、15’とは個別のコンピュータにより作成し、記憶部13に記憶してもよい。例えば、上記にて説明した「塗り潰し走行」による部分走行経路を個別のコンピュータにより生成できる。
その他、例えば、CADなどを用いて、指定された領域(例えば、ゴルフ練習場2)を表す地図上に任意の(部分)走行経路を描画し、それを点列に変換して部分走行経路(部分走行スケジュール101)を作成できる。
【0138】
上記のように個別のコンピュータで部分走行経路を作成した場合には、例えば、当該部分走行経路の部分走行スケジュール101に含まれる点列のうち少なくとも一部において、緯度と経度の組み合わせによる座標値を含ませておく。始点と終点とを、緯度と経度により構成される座標値とすることが好ましい。また、必要に応じて個別のコンピュータで作成した走行スケジュールの点列間の距離と実際の距離との対応付けをしておいてもよい。
このようにすることで、第2走行経路生成部59は、個別のコンピュータ等で作成した部分走行経路と、他の部分走行経路と、を連結する連結経路CRを自動的に経路計画し、これらを紐付けて、自律走行経路(自律走行スケジュール103)を生成できる。
【0139】
(B)第2走行経路生成部59は、1つの部分走行経路について、当該部分走行経路の連結先となり得る複数の部分走行経路のそれぞれについて連結経路CRを経路計画してもよい。これにより、部分走行経路と連結経路CRとを様々組み合わせて、様々な自律走行経路を生成できる。
【0140】
(C)第2走行経路生成部59は、1つの部分走行経路について、不適切な連結先の部分走行経路を選択した場合には、ユーザに対してエラーを通知してもよい。
【0141】
(D)部分走行経路(部分走行スケジュール101)の始点及び終点以外の通過点に、緯度と経度と方角とにより構成される座標値を重複させておいてもよい。この場合、部分走行経路の始点の緯度と経度と方角は、緯度と経度と方角により構成される座標値を含む通過点と始点との距離に基づいて算出できる。また、終点の緯度と経度と方角は、緯度と経度と方角とにより構成される座標値を含む通過点と終点との距離に基づいて算出できる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、指定された領域内において予め決められた走行経路を自律走行する自律走行台車に広く適用できる。
【符号の説明】
【0143】
1 集球排球機
2 ゴルフ練習場
3 球散乱エリア
7 排球溝
11 本体
13 記憶部
15、15’ 制御部
21 走行部
23 集球排球部
24 集球部
24a ピックアップロータ
25 排球部
25a 排球部モータ
25b 排球ゲート
26 連結構造
31 走行モータ
33 車輪
35 GNSS受信機
36 位置検出器
37 走行経路教示部
39 排球教示部
41 方角検出センサ
51 走行制御部
53 走行指令算出部
55、55’ 位置算出部
57 第1走行経路生成部
59 第2走行経路生成部
71 排球制御部
101 部分走行スケジュール
101a~101e 部分走行スケジュール
103 自律走行スケジュール
B ゴルフ球
BOR1 境界線
CA 臨界領域
CR 連結経路
SD1 第1基準点
SD2 第2基準点
SP 内部空間
TA 走行領域
W 壁
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