(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 15/06 20060101AFI20250409BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250409BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
B41J15/06
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B65H20/02 Z
(21)【出願番号】P 2020157329
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】林 真司
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-011396(JP,A)
【文献】実開昭49-030605(JP,U)
【文献】特開2016-175709(JP,A)
【文献】特開2017-211151(JP,A)
【文献】特表2014-522350(JP,A)
【文献】特開2013-184327(JP,A)
【文献】特開2016-150439(JP,A)
【文献】特開2019-167233(JP,A)
【文献】特開2012-080346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/06
B41J 2/01
B65H 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材にインクを付着させる印刷部と、
前記印刷部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、熱を用いて前記基材に付着したインクを乾燥させる乾燥部と、
前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材を撮像する撮像部と、
前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材を鉛直上向きに案内する搬送ローラと、
光が前記基材を透過して前記撮像部に前記光を入射するように、前記光を照射する照明部と、
前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流で、かつ前記撮像部
および前記搬送ローラに対して前記基材の搬送方向の上流に設けられ、前記基材に搬送力を与えると共に前記基材を冷却する機能を有する第1駆動ローラと、
前記撮像部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材に搬送力を与える第2駆動ローラと、
を備え、
前記第1駆動ローラは、
前記基材が巻き付けられるローラ本体と、
前記ローラ本体を回転させる電動モータと、
前記ローラ本体の第1端と前記電動モータとを連結するカップリングと、
前記ローラ本体の第2端と水平軸回りに回転可能に連結されるロータリジョイントと、
前記ロータリジョイントを貫通するように配置されて冷却媒体を前記ローラ本体の内部に供給する供給管と、
前記ロータリジョイントを貫通するように配置されて前記ローラ本体の内部から冷却媒体を回収する排出管と、を備え、
前記供給管は、前記第1端側に前記水平軸に沿って延びており、
前記ローラ本体の内部において、前記供給管には、前記水平軸に沿って複数の吐出口が形成されており、
前記複数の吐出口は各々、上向きに開口し、
前記複数の吐出口は、吐出された冷却媒体が前記ローラ本体の上側の内壁に到達されるように、冷却媒体を吐出
し、
前記撮像部および前記照明部は、前記搬送ローラによって鉛直上方向に搬送された前記基材を水平方向に挟んで対向するように配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記第1駆動ローラは、その内部に冷却媒体が供給されることで、前記基材を冷却することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置において、
前記第1駆動ローラは、送風部を備え、前記送風部により前記第1駆動ローラに巻き付けられた前記基材の巻き付け部分に向けて気体が吹き付けられることで、前記基材を冷却することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
基材にインクを付着させる印刷部と、
前記印刷部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、熱を用いて前記基材に付着したインクを乾燥させる乾燥部と、
前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材を撮像する撮像部と、
前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材を鉛直上向きに案内する搬送ローラと、
光が前記基材を透過して前記撮像部に前記光を入射するように、前記光を照射する照明部と、
前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流で、かつ前記撮像部
および前記搬送ローラに対して前記基材の搬送方向の上流に設けられ、前記基材に搬送力を与えると共に前記基材を冷却する機能を有する第1駆動ローラと、
前記撮像部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材に搬送力を与える第2駆動ローラと、
を備え、
前記第1駆動ローラは、送風部と、前記基材が巻き付けられるローラ本体と、を備え、
前記送風部は、前記ローラ本体に巻き付けられた前記基材を介して前記ローラ本体の反対側に配置され、
前記送風部は、前記ローラ本体に巻き付けられた前記基材の巻き付け部分に向けて気体を吹き付けることで、前記基材を冷却
し、
前記撮像部および前記照明部は、前記搬送ローラによって鉛直上方向に搬送された前記基材を水平方向に挟んで対向するように配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれかに記載の印刷装置において、
前記第1駆動ローラに対して前記基材の搬送方向の下流で、かつ前記撮像部に対して前記基材の搬送方向の上流に設けられ、前記基材に付着するゴミを除去するクリーナを更に備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれかに記載の印刷装置において、
前記第2駆動ローラは、前記第1駆動ローラの上方に配置されており、
前記撮像部は、前記第1駆動ローラよりも高い位置に配置され、
前記第2駆動ローラは、前記撮像部よりも高い位置に配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載の印刷装置において、
前記撮像部は、コンタクトイメージセンサで構成されていることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の基材に文字および図形などの画像を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置は、印刷部、乾燥部および画像取得部(撮像部および照明部)を備えている。印刷部は、インクジェット方式のヘッドを備えている。ヘッドは、透明基材に対してインクを吐出する。乾燥部は、温風を送ってインクを乾燥させる。画像取得部は、印刷画像を撮影する。撮影した印刷画像に基づいて欠陥検査が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、印刷媒体の搬送経路において、乾燥部と画像取得部(スキャナ)の間には、冷却機構が設けられている(例えば、特許文献2参照)。冷却機構は、複数の冷却用従動ローラ(冷却ローラ)を備えている。複数の冷却用従動ローラは、印刷媒体を冷却する。各冷却用従動ローラは、冷却媒体供給装置から水などの冷却媒体が回転軸の一端側から供給されて、他端側から排出されて再び冷却媒体供給装置に戻されるように構成されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-142007号公報
【文献】特開2020-011396号公報
【文献】特開2018-122525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾燥部で加熱されたままの基材が画像取得部(撮像部および照明部)まで搬送される際には、次の3点の問題がある。撮像部が例えばCIS(コンタクトイメージセンサ)である場合に、CISが70℃以上に温度上昇すると撮像が不可能となる(1点目)。照明部の温度上昇により光量が下がり、同じ絵柄であっても撮像結果が異なり検査品質が落ちる(2点目)。基材の種類、絵柄によっては温度による基材の伸縮量が異なり、誤検知の原因となる(3点目)。
【0006】
そこで、乾燥部と撮像部の間には、複数個の冷却用従動ローラが設置される。これにより、撮像部自体の温度および、撮像部付近の基材の温度を一定にし、温度による影響の面からは撮像不良および誤検知をある程度抑制することができる。
【0007】
しかしながら、各冷却用従動ローラには、水などの冷媒が供給されるので、各冷却用従動ローラが重い場合がある。そのため、各冷却用従動ローラのイナーシャや回転抵抗が大きくなるため、基材の張力制御が難しくなり、基材の伸縮量が安定せず検査が正確に行われなくなる可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、張力制御が行い易くして安定した基材の検査を行える印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。すなわち、本発明に係る印刷装置は、基材にインクを付着させる印刷部と、前記印刷部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、熱を用いて前記基材に付着したインクを乾燥させる乾燥部と、前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材を撮像する撮像部と、前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材を鉛直上向きに案内する搬送ローラと、光が前記基材を透過して前記撮像部に前記光を入射するように、前記光を照射する照明部と、前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流で、かつ前記撮像部および前記搬送ローラに対して前記基材の搬送方向の上流に設けられ、前記基材に搬送力を与えると共に前記基材を冷却する機能を有する第1駆動ローラと、前記撮像部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材に搬送力を与える第2駆動ローラと、を備え、前記第1駆動ローラは、前記基材が巻き付けられるローラ本体と、前記ローラ本体を回転させる電動モータと、前記ローラ本体の第1端と前記電動モータとを連結するカップリングと、前記ローラ本体の第2端と水平軸回りに回転可能に連結されるロータリジョイントと、前記ロータリジョイントを貫通するように配置されて冷却媒体を前記ローラ本体の内部に供給する供給管と、前記ロータリジョイントを貫通するように配置されて前記ローラ本体の内部から冷却媒体を回収する排出管と、を備え、前記供給管は、前記第1端側に前記水平軸に沿って延びており、前記ローラ本体の内部において、前記供給管には、前記水平軸に沿って複数の吐出口が形成されており、前記複数の吐出口は各々、上向きに開口し、前記複数の吐出口は、吐出された冷却媒体が前記ローラ本体の上側の内壁に到達されるように、冷却媒体を吐出し、前記撮像部および前記照明部は、前記搬送ローラによって鉛直上方向に搬送された前記基材を水平方向に挟んで対向するように配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る印刷装置によれば、撮像部の上流には、第1駆動ローラが設けられている。第1駆動ローラは、基材を冷却させることができる。これにより、撮像部の撮像不良の原因となる所定値以上の温度上昇を防止し、その結果、検査の安定性を保つことができる。また、基材に搬送力を与えず、冷却機能を有する従動ローラである冷却用従動ローラは、基材の張力制御が難しくなり、基材の伸縮量が安定せず検査が正確に行われなくなる可能性がある。本発明では、冷却機能を有する第1駆動ローラを設けている。かかる構成においては、ローラそのものが冷却機能を有すると共に、ローラの回転速度をコントロールして基材に搬送力を付与できるので、基材の張力制御を適正に行いつつ安定した正確な基材の検査を行うことができる。
【0011】
また、撮像部の上流に第1駆動ローラが、撮像部の下流に第2駆動ローラが、それぞれ設けられているので、撮像部を通過する基材に作用する張力は制御が容易である。つまり、撮像部を通過する基材に作用する張力には、第1駆動ローラを含む、それよりも上流にあるローラ群による負荷の影響がない。従って、撮像部を通過する基材に作用する張力の制御(第2駆動ローラによる張力制御)が容易であるので、基材の伸び縮みにより検査精度の低下を抑制することができる。
【0012】
また、上述の印刷装置において、前記第1駆動ローラの一例は、その内部に冷却媒体が供給されることで、前記基材を冷却することである。内部に供給される冷却媒体により、第1駆動ローラは、基材を冷却することができる。
【0013】
また、上述の印刷装置において、前記第1駆動ローラの一例は、前記第1駆動ローラは、送風部を備え、前記送風部により前記第1駆動ローラに巻き付けられた前記基材の巻き付け部分に向けて気体が吹き付けられることで、前記基材を冷却することである。基材の巻き付け部分に向けて吹き付けられる送風部からの気体により、第1駆動ローラは、基材を冷却することができる。
また、本発明に係る印刷装置は、基材にインクを付着させる印刷部と、前記印刷部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、熱を用いて前記基材に付着したインクを乾燥させる乾燥部と、前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材を撮像する撮像部と、前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材を鉛直上向きに案内する搬送ローラと、光が前記基材を透過して前記撮像部に前記光を入射するように、前記光を照射する照明部と、前記乾燥部に対して前記基材の搬送方向の下流で、かつ前記撮像部および前記搬送ローラに対して前記基材の搬送方向の上流に設けられ、前記基材に搬送力を与えると共に前記基材を冷却する機能を有する第1駆動ローラと、前記撮像部に対して前記基材の搬送方向の下流に設けられ、前記基材に搬送力を与える第2駆動ローラと、を備え、前記第1駆動ローラは、送風部と、前記基材が巻き付けられるローラ本体と、を備え、前記送風部は、前記ローラ本体に巻き付けられた前記基材を介して前記ローラ本体の反対側に配置され、前記送風部は、前記ローラ本体に巻き付けられた前記基材の巻き付け部分に向けて気体を吹き付けることで、前記基材を冷却し、前記撮像部および前記照明部は、前記搬送ローラによって鉛直上方向に搬送された前記基材を水平方向に挟んで対向するように配置されていることを特徴とするものである。
本発明に係る印刷装置によれば、撮像部の上流には、第1駆動ローラが設けられている。第1駆動ローラは、基材を冷却させることができる。これにより、撮像部の撮像不良の原因となる所定値以上の温度上昇を防止し、その結果、検査の安定性を保つことができる。また、基材に搬送力を与えず、冷却機能を有する従動ローラである冷却用従動ローラは、基材の張力制御が難しくなり、基材の伸縮量が安定せず検査が正確に行われなくなる可能性がある。本発明では、冷却機能を有する第1駆動ローラを設けている。かかる構成においては、ローラそのものが冷却機能を有すると共に、ローラの回転速度をコントロールして基材に搬送力を付与できるので、基材の張力制御を適正に行いつつ安定した正確な基材の検査を行うことができる。
また、撮像部の上流に第1駆動ローラが、撮像部の下流に第2駆動ローラが、それぞれ設けられているので、撮像部を通過する基材に作用する張力は制御が容易である。つまり、撮像部を通過する基材に作用する張力には、第1駆動ローラを含む、それよりも上流にあるローラ群による負荷の影響がない。従って、撮像部を通過する基材に作用する張力の制御(第2駆動ローラによる張力制御)が容易であるので、基材の伸び縮みにより検査精度の低下を抑制することができる。
また、基材の巻き付け部分に向けて吹き付けられる送風部からの気体により、第1駆動ローラは、基材を冷却することができる。
【0014】
また、上述の印刷装置において、前記第1駆動ローラに対して前記基材の搬送方向の下流で、かつ前記撮像部に対して前記基材の搬送方向の上流に設けられ、前記基材に付着するゴミを除去するクリーナを更に備えていることが好ましい。これにより、撮像部は、クリーナによって、ゴミを除去した状態で撮像を実施できる。そのため、ゴミが原因で印刷部分を欠陥として判定してしまうことを防止することができる。
【0015】
また、上述の印刷装置において、前記第2駆動ローラは、前記第1駆動ローラの上方に配置されており、前記撮像部は、前記第1駆動ローラよりも高い位置に配置され、前記第2駆動ローラは、前記撮像部よりも高い位置に配置されていることが好ましい。これにより、第1駆動ローラと第2駆動ローラとの間の搬送経路において、基材を下から上に上昇するように搬送する。その結果、印刷装置のフットプリントを抑えることができる。
【0016】
また、上述の印刷装置において、前記撮像部は、コンタクトイメージセンサで構成されていることが好ましい。これにより、コンタクトイメージセンサの撮像不良の原因となる所定値以上の温度上昇を防止し、その結果、検査の安定性を保つことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る印刷装置によれば、基材の張力制御を行い易くなり、安定した正確な基材の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】実施例に係る検査ブロックおよび巻取機構を示す図である。
【
図3】(a)は、冷却駆動ローラを示す図であり、(b)は、(a)のA-Aから見た図である。
【
図5】2つの搬送ローラおよび検査部を示す図である。
【
図6】変形例に係る冷却駆動ローラを示す図である。
【実施例】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る印刷装置1の概略構成図である。
図2は、実施例に係る検査ブロック7および巻取機構12を示す図である。
【0020】
(1)印刷装置1の構成
図1を参照する。印刷装置1は、塗布部2、印刷ブロック3、乾燥ブロック5、検査ブロック7、繰出機構11および巻取機構12を備える。繰出機構11、塗布部2、印刷ブロック3、乾燥ブロック5、検査ブロック7および巻取機構12は、この順番で水平方向かつ一列に配置される。
【0021】
「上流」とは、長尺の透明基材Mを搬送する搬送経路(または搬送方向)の上流を意味する。また、「下流」とは、その搬送経路(または搬送方向)の下流を意味する。
【0022】
印刷装置1は、繰出機構11から巻取機構12にロール・トゥー・ロールで長尺(または長尺帯状)の透明基材(または透明印刷媒体)Mを搬送する。透明基材Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene terephthalate)等の樹脂フィルムである。本実施例において、透明基材Mの両面のうち、画像が印刷される面を印刷面F1と呼び、印刷面F1の反対側の面を裏面F2と呼ぶ。
【0023】
塗布部2は、搬送される透明基材Mに対して塗布液を塗布する。その後、印刷ブロック3は、透明基材Mに画像を形成するために、搬送される透明基材Mに対してインクジェット方式でインクを吐出する。乾燥ブロック5は、搬送される透明基材Mに付着したインクを乾燥させる。検査ブロック7は、搬送される透明基材Mに印刷された画像に対して欠陥検査を行う。
【0024】
印刷装置1は、制御部14と、図示しない記憶部(例えばメモリ)とを備えている。制御部14は、中央演算処理装置(CPU)を備えている。制御部14は、印刷装置1の各構成(例えば検査ブロック7と巻取機構12)を制御する。記憶部には、印刷装置1の動作に必要なプログラムが記憶されている。
【0025】
(1-1)塗布部2の構成
塗布部2は、駆動ローラ16、複数の搬送ローラ18、パン21およびグラビアローラ23を備える。駆動ローラ16は、塗布部2の入口側に配置される。駆動ローラ16は、繰出機構11から透明基材Mを取り込む。駆動ローラ16および複数の搬送ローラ18は、Y方向の水平軸周りに回転可能に支持されている。駆動ローラ16は、電動モータで駆動される。各搬送ローラ18は、電動モータの回転軸に連結されておらず、透明基材Mに搬送力を与えないローラである。各搬送ローラ18は、透明基材Mを案内する。パン21は、液状のプライマー(塗布液)を貯留する。
【0026】
パン21に貯留されたプライマーには、グラビアローラ23の下部が部分的に浸かっている。グラビアローラ23の上部は、搬送される透明基材Mに接触する。グラビアローラ23は、電動モータで駆動する。グラビアローラ23は、透明基材Mの搬送方向と逆方向に回転する。グラビアローラ23が回転すると、プライマーはグラビアローラ23の外周面に保持され、保持されたプライマーは透明基材Mに転写される。これにより、透明基材Mの印刷面F1にプライマーが塗布される。プライマーが塗布された透明基材Mは、印刷ブロック3に送られる。
【0027】
(1-2)印刷ブロック3の構成
印刷ブロック3は、複数の搬送ローラ18、カラー印刷部31、第1乾燥部32、白色印刷部33および第2乾燥部34を備える。カラー印刷部31、第1乾燥部32、白色印刷部33および第2乾燥部34は、この順番で透明基材Mの搬送経路に沿って配置される。
【0028】
カラー印刷部31は、例えば6つ(複数)の吐出ヘッド41を備える。6つの吐出ヘッド41は、透明基材Mの搬送経路に沿って配置される。また、6つの吐出ヘッド41および後述する吐出ヘッド43は各々、透明基材Mの幅方向(Y方向)で透明基材Mを横断するように配置される。6つの吐出ヘッド41は、インクジェット方式で白以外の色のインクを吐出する。6つの吐出ヘッド41は、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ブルー、オレンジのインクをそれぞれ吐出する。これにより、透明基材Mの印刷面F1にカラー画像が形成される。
【0029】
第1乾燥部32は、搬送経路に沿って配置された複数のノズル42を備える。複数のノズル42および後述する複数のノズル44,48は、Y方向に長手の吐出口を有する。複数のノズル42、および後述する複数のノズル44,48の各々の吐出口は、透明基材Mの幅方向(Y方向)で透明基材Mを横断するように配置される。複数のノズル42は各々、例えば電動ファンによって生成された室温のエアを噴射する。これにより、透明基材Mの印刷面F1に付着した6色のインクの乾燥作業を行う。
【0030】
白色印刷部33は、1つの吐出ヘッド43を備える。吐出ヘッド43は、インクジェット方式で白色のインクを吐出する。これにより、透明基材Mの印刷面F1に白画像が形成される。
【0031】
第2乾燥部34は、搬送方向に沿って配置された複数のノズル44を備える。複数のノズル44は各々、例えば電動ファンによって生成された室温のエアを噴射する。これにより、透明基材Mの印刷面F1に付着した白色のインクの乾燥作業を行う。第2乾燥部34を通過した透明基材Mは、乾燥ブロック5に搬送される。
【0032】
(1-3)乾燥ブロック5の構成
乾燥ブロック5は、例えば3段(複数段)の乾燥経路DP1~DP3、複数の搬送ローラ18、2つのエアターンバー46および乾燥部47を備える。2つのエアターンバー46は各々、吐出口(図示しない)からエアを吐出する。2つのエアターンバー46は非接触で透明基材Mを折り返すことができる。3段の乾燥経路DP1~DP3は、上下方向に配置されており、上段乾燥経路DP1、中段乾燥経路DP2および下段乾燥経路DP3で構成される。すなわち、乾燥ブロック5内において、透明基材MはS字状に搬送される。
【0033】
具体的に説明する。印刷ブロック3から検査ブロック7へ向かう順方向XFに上段乾燥経路DP1に沿って透明基材Mが搬送され、2つの搬送ローラ18で折り返される。その後、検査ブロック7から印刷ブロック3へ向かう逆方向XBに中段乾燥経路DP2に沿って透明基材Mが搬送され、2つのエアターンバー46によって非接触で折り返される。その後、順方向XFに下段乾燥経路DP3に沿って透明基材Mが搬送される。3段の乾燥経路DP1~DP3には各々、乾燥部47が設けられる。乾燥部47は、複数のノズル48を備える。複数のノズル48は、例えば電動ファンによって生成され、ヒータで例えば80℃に加熱されたエア(温風)を噴射する。複数のノズル48によって温風が透明基材Mの印刷面F1に噴射される。これにより、透明基材Mは更に乾燥される。3つの乾燥経路DP1~DP3を通過した透明基材Mは、検査ブロック7に搬送される。
【0034】
(1-4)検査ブロック7の構成
次に、本発明の特徴部分である検査ブロック7について説明する。
図2を参照する。
【0035】
検査ブロック7は、複数の搬送ローラ18、冷却駆動ローラ51、第1クリーナ53、第2クリーナ54、センサ55、エンコーダローラER、検査部57、張力検出ローラ58、検査下流駆動ローラ59、ダンサーローラ61、およびニップローラ63,64を備えている。なお、ニップローラ63は、ニップローラ63と冷却駆動ローラ51が透明基材Mを挟み込むように配置されている。なお、複数の搬送ローラ18、冷却駆動ローラ51、検査下流駆動ローラ59等のローラは、Y方向の水平軸周りに回転可能に支持されている。
【0036】
冷却駆動ローラ51は、本発明の第1駆動ローラに相当する。検査下流駆動ローラ59は、本発明の第2駆動ローラに相当する。
【0037】
図3(a)は、冷却駆動ローラ51を示す図である。
図3(b)は、
図3(a)のA-Aの矢印方向から見た断面図である。冷却駆動ローラ51は、乾燥部47(乾燥ブロック5)の下流に設けられ、透明基材Mに搬送力を伝えると共に透明基材Mを冷却する。冷却駆動ローラ51は、ローラ本体71、電動モータ72、ロータリジョイント73、液供給管74、液排出管75およびカップリング76を備えている。なお、
図3(b)に示すように、円筒状の冷却駆動ローラ51の外周面の直径DM1は、搬送ローラ18の外周面の直径DM2よりも大きい。
【0038】
ローラ本体71は、貯留部71A、回転軸71Bおよび中空軸71Cを備える。貯留部71Aは、円筒状のローラ本体71の内部空間に形成される。回転軸71Bは、ローラ本体71の第1端の円形状側面CS1に設けられる。
【0039】
中空軸71Cは、ローラ本体71の第2端の円形状側面CS2に設けられる。中空軸71Cは、管状に形成される。そのため、中空軸71Cの内部は、貯留部71Aに対する出入口となる。ロータリジョイント73の一端は、中空軸71Cの内部に挿入される。これにより、ロータリジョイント73は、中空軸71Cの内部および貯留部71Aを塞ぐと共に、中空軸71Cに対して水平軸AX1周りに回転可能に連結される。
【0040】
カップリング76は、電動モータ72の回転軸72Aとローラ本体71の回転軸71Bとを連結させる。そのため、電動モータ72の回転軸72Aが回転すると、ローラ本体71が回転する。また、中空軸71Cは、ローラ本体71と一体的に回転する。これに対して、ロータリジョイント73、液供給管74および液排出管75は、ローラ本体71および中空軸71などと一体的に回転せずに、固定されている。
【0041】
液供給管74および液排出管75は、ロータリジョイント73を貫通するように配置される。液供給管74および液排出管75の一端は、中空軸71Cを通って、貯留部71A内に配置される。液供給管74は、回転軸71Bの近くまで水平軸AX1に沿って延びている。貯留部71Aの内部に配置される液供給管74には、複数の吐出口74Aが形成されている。複数の吐出口74Aは、水平軸AX1に沿って一列に配置されている。また、複数の吐出口74Aは各々、上向きに開口する。液排出管75の一端には、排出口75Aが形成されている。
【0042】
図示しない冷却水循環機構は、液供給管74に冷却水(恒温水とも呼ばれる)を供給する。冷却水は、20℃~25℃に調整されている。冷却水は、複数の吐出口74Aから上向きに吐出される。また、吐出された冷却水は、上側の内壁71Dに到達される。
図3(a)において、冷却水は、例えば貯留部71Aの容量の半分ぐらいで貯留部71Aに貯留されている。この点、貯留部71Aの容量のほぼ全てで満たすように、貯留部71Aに冷却水を貯留してもよい。また、貯留部71Aにおける冷却水の量は、任意に設定してもよい。貯留部71A内の冷却水は、排出口75Aを通じて液排出管75に回収される。回収された冷却水は、冷却水循環機構によって、液供給管74に再度供給される。
【0043】
図2に戻る。2つのクリーナ53,54は、冷却駆動ローラ51の下流に設けられている。第1クリーナ53は、透明基材Mの印刷面F1に付着するゴミを除去する。第2クリーナ54は、印刷面F1の反対側の透明基材Mの裏面F2に付着するゴミを除去する。第2クリーナ54は、第1クリーナ53と異なる透明基材Mの搬送経路上の位置でゴミを除去する。すなわち、
図4に示すように、第1クリーナ53がゴミを除去する位置を位置P1とし、また、第2クリーナ54がゴミを除去する位置を位置P2とする。この場合、位置P1は、位置P2と異なる位置である。
【0044】
図4は、2つのクリーナ53,54を示す図である。2つの搬送ローラ18A,18Bは、S字状に透明基材Mを搬送する。搬送ローラ18Aには、搬送ローラ18Aと裏面F2とが接触するように、透明基材Mが巻き付けられる。また、搬送ローラ18Bには、搬送ローラ18Bと印刷面F1とが接触するように、透明基材Mが巻き付けられる。
【0045】
第1クリーナ53は、搬送ローラ18Aに巻き付けられた部分の透明基材Mの印刷面F1に付着するゴミを除去する。第2クリーナ54は、搬送ローラ18Bに巻き付けられた部分の透明基材Mの裏面F2に付着するゴミを除去する。
【0046】
第1クリーナ53は、除去ローラ81と粘着ローラ82を備える。除去ローラ81と粘着ローラ82は各々、透明基材Mの幅方向で透明基材Mを横断するように配置される。除去ローラ81は、例えばゴムなどの柔軟性を有する材料で形成されている。搬送ローラ18A,18Bは、金属で形成されている。すなわち、除去ローラ81は、搬送ローラ18A,18Bよりも柔らかい材料で構成されている。搬送ローラ18Aは、水平軸AX2周りに回転する。除去ローラ81は、水平軸AX3周りに回転する。粘着ローラ82は、水平軸AX4周りに回転する。
【0047】
除去ローラ81は、透明基材Mに線接触する。粘着ローラ82は除去ローラ81に線接触する。透明基材Mの搬送に伴い、搬送ローラ18Aおよび除去ローラ81が回転し、更に、除去ローラ81が接触する粘着ローラ82が回転する。除去ローラ81が回転すると、除去ローラ81が透明基材Mの印刷面F1に付着するゴミを除去する。すなわち、除去ローラ81の粘着力により、除去ローラ81にゴミが付着される。そして、除去ローラ81に付着されたゴミは、粘着ローラ82に転写される。このように、第1クリーナ53は、印刷面F1に付着するゴミを除去する。
【0048】
なお、
図4に示すように、第2クリーナ54は、第1クリーナ53と同様に構成されている。第2クリーナ54は、裏面F2に付着するゴミを除去する。なお、粘着ローラ82は、粘着テープのようなロール状の粘着シートで構成される。ゴミが転写された粘着シートを剥がして切断することで、新たな粘着面が露出される。
【0049】
図2に戻る。第2クリーナ54の下流には、センサ55が設けられている。更に、センサ55の下流には、エンコーダローラERが設けられている。センサ55は、コントラストセンサ、例えばCCD(charge-coupled device)またはCMOS等のイメージセンサ、CIS(コンタクトイメージセンサ)、光電センサ、あるいはレーザセンサで構成される。センサ55は、裏面F2側から、カラー印刷部31で印刷された各ページの先頭マークを検出する。例えばセンサ55がコントラストセンサである場合、コントラストセンサは、先頭マークの有無を反射光の光量で検出する。また、センサ55は、搬送ローラ18Bに巻き付けられた部分で先頭マークを検出する。エンコーダローラERは、透明基材Mの移動距離を検出する。エンコーダローラERは、例えばロータリエンコーダを備えている。制御部14(
図1参照)は、例えば、センサ55で検出した先頭マークおよびエンコーダローラERにより検出した移動距離により、検出した先頭マークと撮像部85との間の距離を計算することができる。
【0050】
2つの搬送ローラ18C,18Dおよび検査部57は、エンコーダローラERの下流に設けられている。搬送ローラ18Cは、2つのクリーナ53,54よりも高い位置に配置され、透明基材Mを鉛直上向きに案内する。検査部57は、透明基材Mを裏面F2から撮像することで、印刷された部分の欠陥検査を行う。裏面F2側から撮像する理由は、白色のインクが最後に印刷されるので、画像を正しく認識できないためである。また、消費者が見る面は裏面F2である。検査部57は、
図5に示すように、撮像部85と照明部86を備えている。撮像部85および照明部86は、搬送ローラ18Cによって鉛直上方向に搬送された透明基材Mを水平方向に挟んで対向するように配置されている。
【0051】
すなわち、撮像部85は、照明部86側に水平方向に向いており、照明部86は、撮像部85側に水平方向に向いている。また、撮像部85の前面85Fは、鉛直方向に沿うように配置され、照明部86の前面86Fは、鉛直方向に沿うように配置されている。
【0052】
撮像部85は、例えば、ラインセンサの一種であるCIS(コンタクトイメージセンサ)で構成される。撮像部85がCISで構成される場合、撮像部85は、例えば、撮像素子87、2つの光源88A,88Bおよび等倍結像レンズ(図示しない)を備える。2つの光源88A,88Bは、搬送方向に沿って配置される。撮像素子87は、2つの光源88A,88Bの間に配置される。2つの光源88Aは各々、例えばLED(light emitting diode)で構成される。撮像素子87は、例えばCMOSイメージセンサで構成される。2つの光源88A,88Bから照射された光は各々、透明基材Mで反射して撮像素子87に入射する。
【0053】
照明部86は、LEDなどの光源86Aを備えている。光源86Aは、白光色の光を発光する。照明部86から照射された光は、透明基材Mを透過して撮像素子87に入射する。なお、照明部86は、光源86Aから照射されて反射板で反射された光を撮像素子87に入射させてもよい。照明部86の前面85Fには、必要により拡散板が設けられる。
【0054】
張力検出ローラ58は、2つの搬送ローラ18C,18Dおよび検査部57の下流に設けられている。また、検査下流駆動ローラ59は、張力検出ローラ58の下流に設けられる。張力検出ローラ58は、例えば歪ゲージを備え、透明基材Mの張力を検出する。張力検出ローラ58で検出された張力は、冷却駆動ローラ51と検査下流駆動ローラ59の間の搬送経路の張力制御に使用される。検査下流駆動ローラ59は、電動モータより駆動される。検査下流駆動ローラ59は、冷却駆動ローラ51の次に配置される駆動ローラである。ニップローラ64は、ニップローラ64と検査下流駆動ローラ59が透明基材Mを挟み込むように配置されている。ダンサーローラ61は、検査下流駆動ローラ59の下流に設けられる。
【0055】
なお、制御部14(
図1参照)は、例えば、張力検出ローラ58で検出された張力に基づいて検査下流駆動ローラ59を操作することで、冷却駆動ローラ51と検査下流駆動ローラ59との間における透明基材Mの張力を予め設定された値にするように制御する。すなわち、制御部14は、2つの駆動ローラ51,59間の張力を一定に制御する。
【0056】
図2を参照する。検査ブロック7の冷却駆動ローラ51と検査下流駆動ローラ59との間の搬送経路において、透明基材Mは下から上に上昇するように搬送される。具体的に説明する。検査ブロック7は、2つの駆動ローラ(冷却駆動ローラ51、検査下流駆動ローラ59)を備える。検査下流駆動ローラ59は、冷却駆動ローラ51の上方に設けられている。また、2つのクリーナ53,54は、冷却駆動ローラ51よりも高い位置に配置されている。搬送ローラ18Cは、2つのクリーナ53,54よりも高い位置に配置されている。検査部57(撮像部85および照明部86)は、搬送ローラ18Cよりも高い位置に配置されている。検査下流駆動ローラ59は、検査部57よりも高い位置に配置されている。このように構成することにより、検査ブロック7、すなわち印刷装置1のフットプリントを抑えることができる。透明基材Mは、巻取機構12に搬送される。
【0057】
(1-5)巻取機構12の構成
巻取機構12は、複数の搬送ローラ18、巻取ローラ91およびスプライサ(splicer)93を備えている。巻取ローラ91は、電動モータにより駆動する。巻取ローラ91は、検査下流駆動ローラ59の下流に設けられている。また、巻取ローラ91は、検査下流駆動ローラ59よりも低い位置に配置されている。すなわち、巻取機構12は、検査ブロック7において下から上に上昇するように搬送された透明基材Mを下降させている。
【0058】
スプライサ93は、検査下流駆動ローラ59から巻取ローラ91へ向かう搬送経路に沿って配置されている。また、スプライサ93は、巻取ローラ91の上方に配置されている。具体的には、スプライサ93は、巻取ローラ91に巻き取られた透明基材MのロールRLの検査ブロック7側半分の鉛直上方向に配置される。また、スプライサ93は、検査下流駆動ローラ59よりも低い位置に配置されている。
【0059】
スプライサ93は、透明基材の切断および連結を行うために用いられる。スプライサ93は、本発明の作業台に相当する。冷却駆動ローラ51と検査下流駆動ローラ59との間の搬送経路において、透明基材Mは下から上に上昇するように搬送される。そのため、巻取ローラ91まで透明基材Mを下降させる必要がある。この際、巻取ローラ91の上方でかつ検査下流駆動ローラ59よりも低い位置のスプライサ93を経由させる。これにより、検査下流駆動ローラ59から巻取ローラ91に下降するように透明基材Mを搬送しながら、印刷装置1のフットプリントを抑えることができる。
【0060】
(2)印刷装置の動作
次に、印刷装置1の動作、特に、検査ブロック7および巻取機構12の動作を簡単に説明する。
図1に示す乾燥ブロック5の乾燥部47は、複数のノズル48から透明基材Mに温風を送り出して、透明基材Mに付着したインクを乾燥させる。そのため、乾燥部47によってインクが乾燥された透明基材Mは、加熱されている。この加熱された透明基材Mは、検査ブロック7に搬送される。
【0061】
図2を参照する。加熱された透明基材Mは、冷却駆動ローラ51に搬送される。冷却駆動ローラ51は、透明基材Mを冷却する。これにより、撮像部85の撮像不良の原因となる所定値以上の温度上昇を防止し、その結果、検査の安定性を保つことができる。その後、透明基材Mは、2つのクリーナ53,54に搬送される。2つのクリーナ53,54は、透明基材Mの両面(印刷面F1および裏面F2)に付着するゴミを除去する。
【0062】
その後、透明基材Mは、センサ55およびエンコーダローラERにこの順番で搬送される。センサ55は、各ページの先頭マークを検出する。エンコーダローラERは、透明基材Mの搬送距離を計測する。エンコーダローラERに搬送された後、透明基材Mは、2つの搬送ローラ18C,18Dおよび検査部57(撮像部85および照明部86)に搬送される。搬送ローラ18Cは、透明基材Mを鉛直上向きに案内する。撮像部85および照明部86は、搬送ローラ18Cによって鉛直上方向に搬送された透明基材Mを水平方向に挟んで対向するように配置されている。これにより、撮像部85の前面85Fおよび照明部86の前面86Fにゴミが付着しにくい。そのため、ゴミによる撮像不良を防止することができる。
【0063】
撮像部85は、裏面F2から印刷画像を撮像する。撮像された印刷画像のデータに基づき、欠陥検査が行われる。撮像部85、エンコーダローラERおよびセンサ55の近くで透明基材Mに付着したゴミが除去されるので、ゴミに起因して欠陥と判断されることを防止することができる。
【0064】
検査部57に搬送された後、検査下流駆動ローラ59およびダンサーローラ61にこの順番で搬送される。その後、透明基材Mは、スプライサ93に搬送される。スプライサ93は、作業台である。作業者は、スプライサ93で透明基材Mを切断したり、連結させたりすることができる。巻取ローラ91は、スプライサ93を通過した透明基材Mを巻き取る。
【0065】
本実施例によれば、撮像部85の上流には、冷却駆動ローラ51が設けられている。冷却駆動ローラ51は、透明基材Mを冷却させることができる。これにより、撮像部85の撮像不良の原因となる所定値以上の温度上昇を防止し、その結果、検査の安定性を保つことができる。また、透明基材Mに搬送力を与えず、冷却機能を有する従動ローラである冷却用従動ローラは、透明基材Mの張力制御が難しくなり、基材の伸縮量が安定せず検査が正確に行われなくなる可能性がある。本実施例の冷却駆動ローラ51は、透明基材Mを冷却する冷却機能を有すると共に、ローラの回転速度をコントロールして透明基材Mに対して搬送力を付与することができる。そのため、張力制御を適正に行いつつ安定した正確な基材の検査を行うことができる。
【0066】
また、撮像部85の上流に冷却駆動ローラ51が、撮像部85の下流に検査下流駆動ローラ59が、それぞれ設けられているので、撮像部85を通過する透明基材Mに作用する張力は制御が容易である。つまり、撮像部85を通過する透明基材Mに作用する張力には、冷却駆動ローラ51を含む、それよりも上流にある搬送ローラ18群による負荷の影響がない。従って、撮像部85を通過する透明基材Mに作用する張力の制御(検査下流駆動ローラ59による張力制御)が容易であるので、透明基材Mの伸び縮みにより検査精度の低下を抑制することができる。
【0067】
また、検査ブロック7は、冷却駆動ローラ51に対して透明基材Mの搬送方向の下流で、かつ検査部57に対して透明基材Mの搬送方向の上流に設けられ、透明基材Mに付着するゴミを除去する2つのクリーナ53,54を備えている。これにより、検査部57は、2つのクリーナ53,54によって、ゴミを除去した状態で検査を実施できる。そのため、検査部57は、ゴミが原因で印刷部分を欠陥として判定してしまうことを防止することができる。
【0068】
また、検査ブロック7において、検査下流駆動ローラ59は、冷却駆動ローラ51の上方に配置されている。撮像部85は、冷却駆動ローラ51よりも高い位置に配置されている。検査下流駆動ローラ59は、撮像部85よりも高い位置に配置されている。これにより、冷却駆動ローラ51と検査下流駆動ローラ59との間の搬送経路において、透明基材Mを下から上に上昇するように搬送する。その結果、検査ブロック7および印刷装置1のフットプリントを抑えることができる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0070】
(1)上述した実施例の冷却駆動ローラ51の内部には、冷却水が供給されるように構成されている。この点、冷却駆動ローラ51の内部に供給される冷却媒体は、水に限られず、例えば油であってもよい。また、冷却媒体は、液体に限られず、気体であってもよい。
【0071】
(2)上述した実施例および変形例(1)では、検査ブロック7は、冷却駆動ローラ51を備えている。冷却駆動ローラ51は、冷却能力を向上させるために、送風部101を備えてもよい。
図6において、2つの送風部101が設けられている。この点、1つの送風部101が設けられてもよいし、3つ以上の送風部101が設けられてもよい。
【0072】
2つの送風部101は、透明基材Mの搬送方向に沿って配置されている。各送風部101は、ファン102とノズル103とを備えている。ファン102は電動モータによって駆動される。ノズル103は、Y方向に長手の吐出口を有する。その吐出口は、透明基材Mの幅方向(Y方向)で透明基材Mを横断するように配置されている。各送風部101は、冷却駆動ローラ51(ローラ本体71)に巻き付けられた透明基材Mの巻き付け部分に向けて気体を吹き付けることにより、透明基材Mを冷却する。
【0073】
なお、冷却駆動ローラ51が
図6に示す送風部101を備える場合、必要により、冷却駆動ローラ51は、その内部に冷却媒体が供給されない構成であってもよい。
【0074】
(3)上述した実施例および各変形例では、撮像部85は、CISで構成されている。この点、撮像部85は、ラインカメラセンサであってもよい。ラインカメラセンサは、例えばCCDイメージセンサを備えている。また、ラインカメラセンサは、CCDイメージセンサの上流および下流から照射する2つの光源を備えてもよい。
【0075】
(4)上述した実施例および各変形例では、
図4に示すように、第2クリーナ54は、第1クリーナ53と異なる位置でゴミを除去する。この点、第2クリーナ54は、第1クリーナ53と同じ位置でゴミを除去してもよい。この場合、透明基材Mの所定の位置は、2つのクリーナ53,54の2つの除去ローラ81によって挟み込まれる。
【0076】
(5)上述した実施例および各変形例では、2つのクリーナ53,54は各々、接触式のクリーナである。この点、2つのクリーナ53,54の少なくとも一方は、非接触式であってもよい。例えば、第1クリーナ53は、超音波を発生させて、透明基材Mに付着するゴミを除去してもよい。また、第1クリーナ53は、ノズルより気体を噴出させて、透明基材Mに付着するゴミを除去してもよい。
【0077】
(6)上述した実施例および各変形例では、カラー印刷部31は、6色のインクを吐出したが、6色のインクに限られない。例えば、カラー印刷部31は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクを吐出してもよい。すなわち、カラー印刷部31は、複数色のインクを吐出すればよい。インクの色は、白色以外で任意に設定される。
【0078】
(7)上述した実施例および各変形例において、第1クリーナ53は、印刷面F1(第1面)に付着するゴミを除去し、第2クリーナ54は、裏面F2(第2面)に付着するゴミを除去する。この点、役割が逆であってもよい。すなわち、第1クリーナ53は、裏面F2(第1面)に付着するゴミを除去し、第2クリーナ54は、印刷面F1(第2面)に付着するゴミを除去してもよい。
【0079】
(8)上述した実施例および各変形例の2つの駆動ローラ51,59の間以外の搬送経路において、複数の搬送ローラ18の少なくとも1つは、電動モータで駆動する駆動ローラ16に置き換えられてもよい。
【0080】
(9)上述した実施例および各変形例において、印刷装置1は、透明基材Mに対して画像の印刷を行っている。この点、印刷装置1は、透明でない基材に対して画像の印刷を行ってもよい。この場合、検査部57の照明部86は設けなくてもよい。また、印刷装置1は、連続紙に対して画像を印刷してもよい。この場合、印刷装置1は、塗布部2を備えなくてもよい。
【0081】
(10)上述した実施例および各変形例において、印刷ブロック3は、透明基材Mに画像を形成するために、搬送される透明基材Mに対してインクジェット方式でインクを吐出していたが、インクジェット方式に限られない。例えば、印刷ブロック3は、オフセット印刷やグラビア印刷により透明基材Mにインクを付着させてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 … 印刷装置
3 … 印刷ブロック
5 … 乾燥ブロック
7 … 検査ブロック
14 … 制御部
18 … 搬送ローラ
31 … カラー印刷部
33 … 白色印刷部
47 … 乾燥部
48 … ノズル
51 … 冷却駆動ローラ
53 … 第1クリーナ
54 … 第2クリーナ
57 … 検査部
59 … 検査下流駆動ローラ
81 … 除去ローラ
82 … 粘着ローラ
85 … 撮像部
86 … 照明部
M … 透明基材