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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】ヒト抗PD-L1抗体の配合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20250409BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250409BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250409BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250409BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250409BHJP
   A61K 9/19 20060101ALN20250409BHJP
   A61K 9/14 20060101ALN20250409BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20250409BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61K9/08
A61P35/00
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/19
A61K9/14
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020558048
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060498
(87)【国際公開番号】W WO2019206987
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】62/662,324
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビドルコーム,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】メイン,ジェニー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー,ジアリー
(72)【発明者】
【氏名】アルバーグーティ,メタル
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537070(JP,A)
【文献】国際公開第2017/189433(WO,A1)
【文献】A Phase 1/2 Study to Evaluate the Safety, Tolerability, and Pharmacokinetics of MEDI4736 in Subjects,Protocol CD-ON-MEDI4736-1108,2014年,Amendment 7,p.1-6,52-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)50mg/mLのデュルバルマブ;
(b)25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液;
(c)265mMのスクロース;及び、
(d)0.02%(w/v)のポリソルベート80;
を含む、安定な抗体液体製剤であって、
ここで、前記製剤のpHは、pH6.0であり、前記液体製剤が少なくとも3回の凍結/解凍サイクルにわたり安定である、安定な抗体液体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デュルバルマブなどのヒト抗PD-L1を対象とする抗体の製剤及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
B7H1としても公知のプログラム死リガンド1(PD-L1)は、抗癌免疫に大きな障害をもたらす40kDaの膜貫通タンパク質である。プログラム死受容体(PD-1)に結合するPD-L1は、T細胞を不活性化し、腫瘍細胞を保護し、免疫系の検出を抑制し、癌細胞の未確認の増殖を可能とする。PD-L1はまた、共刺激分子であるCD80に結合する。
【0003】
抗原提示細胞、マクロファージ、単球、B細胞、T細胞、及び非造血細胞を含む、広範囲な腫瘍原性及び活性化免疫細胞型は、PD-L1を自然に発現する。加えて、インターフェロンガンマ(IFNγ)などの炎症性サイトカインは、PD-L1の発現を誘導する可能性がある。例えば、活性化T細胞は、IFNγを生産し、これが、PD-L1の最も有力な誘導因子である。IFNγにより誘導されるPD-L1の発現が腫瘍保護を促進し、これが、適応性のある免疫耐性として公知の機構である。
【0004】
適応性のある免疫耐性及びPD-L1の致死性を抑制するための1つの戦略は、抗PD-L1抗体を用いる。このアプローチと一貫して、PD-L1がPD-1に結合するのを妨害する、親和性最適化抗PD-L1モノクローナルIgG1三重変異体(TM)である149kDaの抗PD-L1抗体デュルバルマブは、細胞傷害性T細胞に対するPD-L1の免疫抑制効果を失わせるために採用できる。その結果が、腫瘍増殖を促進する負の阻害信号の軽減、抗腫瘍免疫の増強、免疫系による腫瘍細胞の殺傷を増強する反応である。
【0005】
重要なことに、液状原薬及び凍結乾燥された薬物製品の安定性を保つ抗PD-L1抗体の緩衝液製剤が、抗PD-L1抗体の有効性に不可欠である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、40mg/mL~50mg/mLの抗PD-L1抗体、15mM~35mMの緩衝液、255mM~275mMの二糖類、0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の界面活性剤を含む抗体製剤を提供し、ここで、製剤のpHは、約pH5.5~約pH7.2である。
【0007】
一態様では、本開示は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含む抗体製剤を提供し、ここで、製剤のpHは、pH6.0である。
【0008】
一態様では、本開示は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含む抗体製剤を提供し、ここで、製剤のpHは、約pH5.5である。
【0009】
一態様では、本開示は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含む抗体製剤を提供し、ここで、製剤のpHは、約pH6.5である。
【0010】
一態様では、本開示は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのトレハロース無水物、0.04%(w/v)のポリソルベート80を含む抗体製剤を提供し、ここで、製剤のpHは、約pH6.0である。
【0011】
一態様では、本開示は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのスクロース、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含む抗体製剤を提供し、ここで、製剤のpHは、約pH6.0である。
【0012】
一態様では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体、並びに組成物のキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を使用し測定して45%以上の組成物中のタンパク質を含む抗体の主要形態を含む組成物を提供する。
【0013】
一態様では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体、組成物のcIEFを使用し測定して45%以上の組成物中のタンパク質を含む抗体の主要形態、並びに組成物のcIEFを使用し測定して45%~50%の組成物中のタンパク質を含む抗体の酸性形態を含む組成物を提供する。
【0014】
一態様では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体、組成物のcIEFを使用し測定して45%以上の組成物中のタンパク質を含む抗体の主要形態、並びに組成物のcIEFを使用し測定して18%~23%の組成物中のタンパク質を含む抗体の塩基形態を含む組成物を提供する。
【0015】
一態様では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体、組成物のcIEFを使用し測定して45%以上の組成物中のタンパク質を含む抗体の主要形態、組成物のcIEFを使用し測定して45%~50%の組成物中のタンパク質を含む抗体の酸性形態、並びに組成物のcIEFを使用し測定して18%~23%の組成物中のタンパク質を含む抗体の塩基形態を含む組成物を提供する。
【0016】
一態様では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含む組成物を提供し、抗PD-L1抗体のグリカン構造は、G0f、G1f、G2f、及びG0グリコフォームを含む。
【0017】
一態様では、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含む組成物を提供し、高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SPEC)により決定して1.5%~2.5%の抗PD-L1抗体は、凝集体を形成し、並びにHP-SECにより測定して97%~98%の抗PD-L1抗体は、モノマーとして存在する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】デュルバルマブ製剤開発活動の概要を示す。
図2】製剤緩衝液(26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0)中の、3mg/mLでのデュルバルマブの示差走査熱量測定(DSC)プロファイルを示し、ここで、Tmは、64.5℃と実証され、Tmは、73.04℃であると実証された。
図3】製剤緩衝液(26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0)中のデュルバルマブの、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)プロファイルである。4つのピークは、8.3~8.8のpI範囲を示した。主要なピークは、8.6のpIを有した。
図4】製剤緩衝液(26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0)中で、5℃又は40℃で、1ヶ月間インキュベーションした後の、デュルバルマブのクローン1又はクローン2の液体安定性を実証する。
図5A-B】5℃(図5A)、25℃(図5B)、及び40℃(図5C)で3ヶ月保管した後のデュルバルマブの電気泳動図を図示する。25℃及び40℃で3ヶ月保管した後に、追加のピログルタミン酸ピークが存在した。
図5C】5℃(図5A)、25℃(図5B)、及び40℃(図5C)で3ヶ月保管した後のデュルバルマブの電気泳動図を図示する。25℃及び40℃で3ヶ月保管した後に、追加のピログルタミン酸ピークが存在した。
図6】製剤緩衝液(26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0)中のデュルバルマブの、崩壊の開始及び完全な崩壊の温度を示す、凍結乾燥顕微鏡法を実証する。
図7】製剤緩衝液(26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0)中のデュルバルマブのガラス転移(Tg’)温度を示す、DSCサーモグラムを図示する。
図8】設計空間生成プロセスモデルである。実験計画は、変更された一次乾燥温度、圧力、一次乾燥時間、及び最大製品温度で実施される。チャンバー圧でのサイクル中点(点)及びプロセスの頑健性(白色の三角形の領域)、並びに棚温度が表される。
図9】ピラニゲージ(Δ10μbar)の収束がおおよそ103時間~115時間の乾燥工程で生じる、デュルバルマブNMF凍結乾燥の実施データを実証する。これは、10%の安全域に相当する。
図10】Amsco凍結乾燥機中で実施された大規模なNMF凍結乾燥を実証する。結果は、割り当てられた一次時間内での製品熱電対の収束を示した。
図11】デュルバルマブ震盪研究のマイクロフローイメージング(MFI)の結果を実証する。
図12-1】デュルバルマブに対する2-AB標識オリゴ糖の超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)のピーク同定を実証する。
図12-2】図12-1の続き。
図12-3】図12-2の続き。
図12-4】図12-3の続き。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、デュルバルマブなどの抗PD-L1を対象とする抗体の製剤及び組成物に関する。
【0020】
本開示に従い使用されるように、下記の用語は、別に指示されない限り、以下の意味を有すると理解される。特に文脈上必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0021】
用語「抗体」は、本明細書で使用されるとき、抗原を認識する、特に抗原に結合する能力があるタンパク質を指す。通常又は慣例の哺乳動物抗体は、四量体を含み、それは、典型的には、ポリペプチド鎖の2つの相同対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(典型的には、約25kDaの分子量を有する)及び1つの「重」鎖(典型的には、約50~70kDaの分子量を有する)からなる。用語「重鎖」及び「軽鎖」は、本明細書で使用されるとき、標的抗原用特異性を付与するように十分な可変ドメイン配列を有する、あらゆる免疫グロブリンポリペプチドを指す。各軽鎖及び重鎖のアミノ末端部分は、典型的には抗原認識の役割を果たす約100~110以上のアミノ酸の可変ドメインを、典型的に含む。各鎖のカルボキシル末端部分は、典型的には、エフェクター機能の役割を果たす定常ドメインを画定する。従って、自然発生の抗体では、完全長の重鎖免疫グロブリンポリペプチドは、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)、並びにCH1とCH2との間のヒンジ領域を含み、ここで、VHドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にあり、CH3ドメインは、カルボキシル末端にあり、並びに完全長の軽鎖免疫グロブリンポリペプチドは、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含み、ここで、VLドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にあり、CLドメインは、カルボキシル末端にある。
【0022】
完全長の軽鎖及び重鎖内では、可変及び定常ドメインは、典型的には、約12個以上のアミノ酸の「J」領域により連結され、重鎖はまた、約10個を超えるアミノ酸の「D」領域をさらに含む。各軽質/重鎖対の可変領域は、典型的には、抗原結合部位を形成する。自然発生の抗体の可変ドメインは、典型的には相補性決定領域又はCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域により連結される、比較的保管性の高いフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。各対の2つの鎖のCDRは、典型的には、フレームワーク領域により整列し、特定のエピトープに結合することを可能とすることもある。アミノ末端からカルボキシル末端まで、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインは、典型的には、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。
【0023】
本明細書に開示される抗体製剤は、抗PD-L1抗体を含む。特定の実施形態では、製剤は、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、又は60mg/mLの抗PD-L1抗体を含む。他の実施形態では、製剤は、40mg/mL~50mg/mLの抗PD-L1抗体を含む。他の実施形態では、製剤は、50mg/mLの抗PD-L1抗体を含む。特定の実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト型である。
【0024】
本明細書に開示される抗体製剤は、1又は複数の緩衝液を含む。本明細書で使用されるとき、「緩衝液」は、製剤のpHを維持するための賦形剤を指す。特定の実施形態では、緩衝液は、ヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液である。緩衝液は、約15mM、20mM、25mM、又は30mMの濃度で存在する。特定の実施形態では、緩衝液の濃度は、26mMである。
【0025】
特定の実施形態では、抗体製剤は、二糖類を含む。特定の実施形態では、二糖類は、トレハロース二水和物又はスクロースである。二糖類は、約250mM、255mM、260mM、265mM、270mM、275mM、又は280mMの濃度で存在する。特定の実施形態では、二糖類の濃度は、265mMである。他の実施形態では、二糖類の濃度は、275mMである。
【0026】
特定の実施形態では、抗体製剤は、界面活性剤を含む。用語「界面活性剤」は、本明細書で使用されるとき、両親媒性構造を有する有機物質を指し;すなわち、そのような物質は、相反する溶解性傾向の基、典型的には、油溶性の炭化水素鎖及び水溶性のイオン基から構成される。界面活性剤は、表面活性部分の電荷に応じて、陰イオン、陽イオン、及び非イオン界面活性剤に分類できる。界面活性剤は、生体物質の様々な医薬製剤及び調製物のための、湿潤、乳化、可溶化、及び分散剤として頻繁に使用される。特定の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80である。界面活性剤は、約0.001%~約0.5%(体積)の濃度で存在する。
【0027】
特定の実施形態では、40mg/mL~50mg/mLの抗PD-L1抗体、15mM~35mMの緩衝液、255mM~275mMの二糖類、0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の界面活性剤を含む抗体製剤が本明細書で開示され、製剤のpHは、約pH5.5~約pH7.2である。特定の実施形態では、抗体製剤は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含み、ここで、製剤のpHは、約6.0である。他の実施形態では、抗体製剤は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含み、ここで、製剤のpHは、約5.5である。他の実施形態では、抗体製剤は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含み、ここで、製剤のpHは、約6.5である。他の実施形態では、抗体製剤は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのトレハロース無水物、0.04%(w/v)のポリソルベート80を含み、ここで、製剤のpHは、約6.0である。他の実施形態では、抗体製剤は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのスクロース、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含み、ここで、製剤のpHは、約6.0である。他の実施形態では、抗体製剤は、50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体、25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液、265mMのスクロース、0.02%(w/v)のポリソルベート80を含み、ここで、製剤のpHは、約6.0である。
【0028】
特定の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。他の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2、配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3、配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む。
【0029】
特定の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が100%未満のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が100%未満のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。他の実施形態では、ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列に対する90%の配列同一性、91%の配列同一性、92%の配列同一性、93%の配列同一性、94%の配列同一性、95%の配列同一性、96%の配列同一性、97%の配列同一性、98%の配列同一性、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列に対する90%の配列同一性、91%の配列同一性、92%の配列同一性、93%の配列同一性、94%の配列同一性、95%の配列同一性、96%の配列同一性、97%の配列同一性、98%の配列同一性、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0030】
用語「MEDI4736」及び「デュルバルマブ」は、本明細書で使用されるとき、米国特許第8,779,108号明細書及び同第9,493,565号明細書に開示されているように、ヒト抗PD-L1に選択的に結合し、PD-L1の、PD-1及びCD80受容体への結合を妨害する抗体を指し、各文献は、それら全体を、本明細書において参照することにより組み込まれる。デュルバルマブの断片結晶性(Fc)ドメインは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の媒介に関与する補体成分C1q及びFcγ受容体への結合を低下させるIgG1重鎖の定常領域中の三重変異を含む。デュルバルマブは、インビトロでヒトT細胞活性化のPD-L1媒介性抑制を軽減することができ、T細胞依存性機構を介して異種移植片モデルでの腫瘍成長を阻害する。
【0031】
本明細書で使用されるとき、句「医薬製剤」、「製剤」、並びに「抗体製剤」は、交換可能に使用され、抗PD-L1抗体、並びに1つ又は複数の適正な緩衝液及び/又は賦形剤を含む組成物を指す。適切に、本明細書に記載される医薬製剤は、「薬学的に許容可能」であり、従って、連邦若しくは州の政府の規制当局により要求されているか、又は動物及びとりわけヒトにおいて使用するための、米国薬局方、欧州薬局方、又は他の一般的に認識されている薬局方に表記されている必要な認可要件を満たすであろう。
【0032】
本明細書に開示される抗体製剤は、液体製剤、凍結製剤、凍結乾燥製剤、又は再構成製剤として製剤化できる。
【0033】
凍結乾燥は、オーブン、真空遠心分離、又は当業者により公知の他の手段で乾燥することにより発生させることができる。凍結乾燥されたデュルバルマブは、再構成された場合に、抗PD-L1抗体の活性を保つ。
【0034】
用語「安定性」及び「安定している」は、抗PD-L1抗体を含む製剤の文脈において本明細書で使用されるとき、与えられた製造、調製、輸送、及び保管条件下での、凝集、分解、又は断片化に対する製剤中の抗体の耐性を指す。「安定している」製剤は、与えられた製造、調製、輸送、及び保管条件下で、生物活性を保つ。抗体の安定性は、参照製剤と比較して、高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)、静的光散乱(SLS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、円二色性(CD)、尿素アンフォールディング技術、内因性トリプトファン蛍光、示差走査熱量測定、及び/又はANS結合技術により測定されるような、凝集、分解、又は断片化の程度により評価できる。ヒトPD-L1抗体を含む製剤の全体的な安定性は、例えば、単離した抗原分子を使用するELISA及びラジオイムノアッセイを含む様々な免疫学的アッセイにより評価できる。
【0035】
特定の実施形態では、HP-SECにより決定して約1%未満の抗PD-L1抗体が、40℃で、約1ヶ月間の保管時に凝集体を形成する。他の実施形態では、HP-SPECにより測定して少なくとも97%のヒト抗PD-L1抗体は、約40℃で約1ヶ月間保管した後に、モノマーとして存在する。他の実施形態では、HP-SPECにより測定して少なくとも99%のヒト抗PD-L1抗体は、約40℃で約1ヶ月間保管した後に、モノマーとして存在する。他の実施形態では、HP-SPECにより測定して少なくとも98%のヒト抗PD-L1抗体は、約5℃で約1ヶ月間保管した後に、モノマーとして存在する。特定の実施形態では、抗体製剤は、少なくとも3回の凍結/解凍サイクルの後に、安定性を維持する。
【0036】
特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含み;ここで、抗体の主要形態は、組成物のキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を使用し測定して45%以上の組成物中のタンパク質を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含み;ここで、抗体の主要形態は、組成物のcIEFを使用し測定して45%以上の組成物中のタンパク質を含み;ここで、抗体の酸性形態は、組成物のcIEFを使用し測定して45%~50%の組成物中のタンパク質を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含み;ここで、抗体の主要形態は、組成物のcIEFを使用し測定して45%以上の組成物中のタンパク質を含み;ここで、抗体の塩基形態は、組成物のcIEFを使用し測定して18%~23%の組成物中のタンパク質を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含み;ここで、抗体の主要形態は、組成物のcIEFを使用し測定して45%以上の組成物中のタンパク質を含み;ここで、抗体の酸性形態は、組成物のcIEFを使用し測定して45%~50%の組成物中のタンパク質を含み;ここで、抗体の塩基形態は、組成物のcIEFを使用し測定して18%~23%の組成物中のタンパク質を含む。
【0037】
特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含み;ここで、抗PD-L1抗体のグリカン構造は、G0f、G1f、G2f、及びG0グリコフォームを含む。他の実施形態では、抗PD-L1抗体のグリカン構造は、G0f、G1f、G2f、及びG0形態に関して約90%よりも高い含有量を有する。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体の組成物は、約65~75%のG0f含有量、13~23%のG1f含有量、0~3%の含有量G2f、及び0~4%のG0含有量を含む。他の実施形態では、抗PD-L1抗体の組成物は、約71.9%のG0f含有量、18.4%のG1f含有量、1.5%の含有量G2f、及び1.9%のG0含有量を含む。
【0038】
特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含み;ここで、高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SPEC)により決定して1.5%~2.5%の抗PD-L1抗体は、凝集体を形成し、ここで、HP-SECにより測定して、97%~98%の抗PD-L1抗体は、モノマーとして存在する。
【0039】
本開示を限定することなく、本開示の多数の実施形態が、例示の目的のために以下に記載される。続く実施例は、本発明の特定の実施形態及びそれらの様々な使用を例証する。それらは、説明の目的のためだけに記載され、本発明を限定するものとしてはみなされない。
例えば本発明は、以下の実施形態を包含する:
[実施形態1](a)40mg/mL~50mg/mLの抗PD-L1抗体;
(b)15mM~35mMの緩衝液;
(c)255mM~275mMの二糖類;及び、
(d)0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の界面活性剤、
を含む、抗体製剤であって、
ここで、前記製剤のpHは、pH5.5~pH7.2である、抗体製剤。
[実施形態2]前記抗PD-L1抗体は:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;又は、
(b)配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1;
配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2;
配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3;
配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1;
配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び
配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3、
を含む、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態3]前記緩衝液は、ヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液である、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態4]前記二糖類は、トレハロース二水和物である、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態5]前記二糖類は、スクロースである、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態6]前記界面活性剤は、ポリソルベート80である、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態7]前記製剤は、液体製剤、凍結製剤、凍結乾燥製剤、又は再構成製剤である、実施形態1~6のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態8]高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SPEC)により測定して、約1%未満の前記抗PD-L1抗体が、40℃で約1ヶ月間保管した際に凝集体を形成する、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態9]高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)により測定して少なくとも97%の前記抗PD-L1抗体が、約40℃で約1ヶ月間保管した後にモノマーとして存在する、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態10]高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)により測定して少なくとも99%の前記抗PD-L1抗体が、約40℃で約1ヶ月間保管した後にモノマーとして存在する、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態11]高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)により測定して少なくとも98%の前記抗PD-L1抗体が、約5℃で約1ヶ月間保管した後にモノマーとして存在する、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態12]前記抗体製剤は、少なくとも3回の凍結/解凍サイクルの後に安定性を維持する、実施形態1に記載の抗体製剤。
[実施形態13](a)50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体;
(b)26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液;
(c)275mMのトレハロース二水和物;及び、
(d)0.02%(w/v)のポリソルベート80;
を含む、抗体製剤であって、
ここで、前記製剤のpHは、pH6.0である、抗体製剤。
[実施形態14](a)50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体;
(b)25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液;
(c)265mMのトレハロース二水和物;及び、
(d)0.02%(w/v)のポリソルベート80;
を含む、抗体製剤であって、
ここで、前記製剤のpHは、pH5.5である、抗体製剤。
[実施形態15](a)50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体;
(b)25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液;
(c)265mMのトレハロース二水和物;及び、
(d)0.02%(w/v)のポリソルベート80;
を含む、抗体製剤であって、
ここで、前記製剤のpHは、pH6.5である、抗体製剤。
[実施形態16](a)50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体;
(b)25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液;
(c)265mMのトレハロース二水和物;及び、
(d)0.04%(w/v)のポリソルベート80;
を含む、抗体製剤であって、
ここで、前記製剤のpHは、pH6.0である、抗体製剤。
[実施形態17](a)50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体;
(b)25mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液;
(c)265mMのスクロース;及び、
(d)0.02%(w/v)のポリソルベート80;
を含む、抗体製剤であって、
ここで、前記製剤のpHは、pH6.0である、抗体製剤。
[実施形態18]前記ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖を含む、実施形態13~17のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態19]前記ヒト抗PD-L1抗体は:
配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1;及び
配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び
配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3;及び
配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1;及び
配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び
配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3、
を含む、実施形態13~17のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態20]前記製剤は、液体製剤、凍結製剤、凍結乾燥製剤、又は再構成製剤である、実施形態13~17のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態21]高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SPEC)により決定して約1%未満の前記ヒト抗PD-L1抗体が、40℃で約1ヶ月間保管した際に凝集体を形成する、実施形態13~17のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態22]高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)により測定して少なくとも97%の前記ヒト抗PD-L1抗体が、約40℃で約1ヶ月間保管した後にモノマーとして存在する、実施形態13~17のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態23]高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)により測定して少なくとも99%の前記ヒト抗PD-L1抗体が、約40℃で約1ヶ月間保管した後にモノマーとして存在する、実施形態13~17のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態24]高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)により測定して少なくとも98%の前記ヒト抗PD-L1抗体が、約5℃で約1ヶ月間保管した後にモノマーとして存在する、実施形態13~17のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態25]前記抗体製剤は、少なくとも3回の凍結/解凍サイクルの後に安定性を維持する、実施形態13~17のいずれかに記載の抗体製剤。
[実施形態26]組成物であって:
(a)配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体;並びに、
(b)前記組成物のキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を使用し測定して前記組成物中の45%以上のタンパク質を含む前記抗体の主要形態、
を含む、組成物。
[実施形態27]組成物であって:
(a)配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体;
(b)前記組成物のcIEFを使用し測定して前記組成物中の45%以上のタンパク質を含む前記抗体の主要形態;並びに
(c)前記組成物のcIEFを使用し測定して前記組成物中の45%~50%のタンパク質を含む抗体の酸性形態、
を含む、組成物。
[実施形態28]組成物であって:
(a)配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体;
(b)前記組成物のcIEFを使用し測定して前記組成物中の45%以上のタンパク質を含む前記抗体の主要形態;並びに、
(c)前記組成物のcIEFを使用し測定して前記組成物中の18%~23%のタンパク質を含む前記抗体の塩基形態、
を含む、組成物。
[実施形態29]組成物であって:
(a)配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体;
(b)前記組成物のcIEFを使用し測定して前記組成物中の45%以上のタンパク質を含む前記抗体の主要形態;
(c)前記組成物のcIEFを使用し測定して前記組成物中の45%~50%のタンパク質を含む前記抗体の酸性形態;並びに、
(d)前記組成物のcIEFを使用し測定して前記組成物中の18%~23%のタンパク質を含む前記抗体の塩基形態、
を含む、組成物。
[実施形態30]組成物であって:
(a)配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体を含み;並びに、
(b)前記抗PD-L1抗体のグリカン構造は、G0f、G1f、G2f、及びG0グリコフォームを含む、組成物。
[実施形態31]前記抗PD-L1抗体のグリカン構造は、前記G0f、G1f、G2f、及びG0グリコフォームに関して90%よりも高い含有量を有する、実施形態30に記載の組成物。
[実施形態32]前記抗PD-L1抗体は、71.9%のG0f含有量、18.4%のG1f含有量、1.5%のG2f含有量、及び1.9%のG0含有量を含む、実施形態30に記載の組成物。
[実施形態33]組成物であって:
(a)配列番号1のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%のアミノ酸配列を有する重鎖を含む抗PD-L1抗体;を含み、
(b)高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SPEC)により決定して1.5%~2.5%の前記抗PD-L1抗体が、凝集体を形成し;並びに、
(c)HP-SECにより測定して、97%~98%の前記抗PD-L1抗体が、モノマーとして存在する、組成物。
[実施形態34]前記PD-L1抗体は:
配列番号3のアミノ酸配列を有するVH CDR1;及び
配列番号4のアミノ酸配列を有するVH CDR2;及び
配列番号5のアミノ酸配列を有するVH CDR3;及び
配列番号6のアミノ酸配列を有するVL CDR1;及び
配列番号7のアミノ酸配列を有するVL CDR2;及び
配列番号8のアミノ酸配列を有するVL CDR3、
を含む、実施形態26~33のいずれかに記載の組成物。
[実施形態35](a)50mg/mLのヒト抗PD-L1抗体;
(b)26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝液;
(c)275mMのトレハロース二水和物;並びに、
(d)0.02%(w/v)のポリソルベート80;
を含む、抗体製剤であって、
ここで、前記製剤のpHは、pH6.0であり、ここで、前記ヒト抗PD-L1抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖を含む、抗体製剤。
【実施例
【0040】
実施例1
材料及び方法
1.タンパク質濃度の決定
デュルバルマブタンパク質濃度を、Aligent UV-V分光光度計で、280nmの吸収度を測定することにより決定した。希釈物を、製剤緩衝液中で作製した。タンパク質濃度を、1.55(mg/mL)-1cm-1の理論上の吸光係数を使用することにより計算した。決定の一部では、1.52(mg/mL)-1cm-1の実験的な係数を、計算で使用した。
【0041】
2.高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)分析
HP-SEC分析のための試料を、最初に、0.1Mの硫酸ナトリウムを含む0.1Mの2ナトリウムリン酸塩pH6.8を用いて、1.0mL/分の流量で、均一濃度で溶離した。溶離したタンパク質を、280nmの吸収度で検出した。結果を、すべての他のピークと比較した、製品モノマーのピークの領域パーセントとして報告した。おおよそ12分で観察された緩衝液関連ピークを、報告した結果から除外した。モノマーピークよりも早く溶離したあらゆるピークを、凝集パーセントとして記録した。モノマーピークの後に溶離したピークを、断片パーセントとして記録した。
【0042】
3.視覚分析
試料の目視検査を、明るい背景及び暗い背景の両方を備えるライトボックスを使用して、ガラスバイアルを、色、清澄性、並びに微粒子及び繊維状物の存在に関して試験することにより実施した。可視粒子及び清澄性を評価した。
【0043】
4.高精度(HIAC)液体粒子計数器による可視粒子分析
試料を、濾過した製剤緩衝液を用いて5mg/mLに希釈し、その後、分析前に30分間静置させた。試料を、超純水で3回すすいだファルコンチューブ中で調製した。タンパク質濃度が<5mg/mLである試料を、そのまま分析した。各試料につき6つの読み取り値を、Pacific Standard HIAC Royco 3000A、及び8チャネル粒子計数器8000Aを使用して得た。最終的な3つの読み取り値の平均を、最終的なサブ可視粒子数として記録した。>10~25μmの累積的な粒子数を記録した。
【0044】
5.浸透圧及びpH
浸透圧を、Gonotec Osmomat 030-D浸透圧計を使用し測定した。溶液のpHを、PHM220 Lab pHメーターを使用し測定した。
【0045】
6.カールフィッシャー分析
凍結乾燥製剤中の残留水分の存在を、カールフィッシャー滴定(Mettler Toledo)を使用し測定した。凍結乾燥材料を、乾燥メタノールを使用して再構成した。残留水分を、乾燥メタノール中の水の量、及び全固形分の重量に基づいて決定した。
【0046】
7.キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)
試料を、HPLCグレード水を用いて0.25mg/mLに調節した。試料を、カルボキシペプチダーゼB(CBP)を用いて、10分間、37℃で消化し、その後、1%のメチルセルロース溶液、Pharmalyte pH3~10、pIマーカー9.46、及びpIマーカー5.85で希釈した。試料を、iCE280 Analyzer上へと載せ、1500Vで1分間集束させた後、3000Vで7分間集束させた。生じた電気泳動図を、EZChromソフトウェアを使用して分析し、参照標準と比較した。
【0047】
8.還元及び非還元ゲル電気泳動
Protein 230 LabChip技術(Agilent)を用いるAgilent 2100 BioAnalyzerを、還元及び非還元ゲル電気泳動により、デュルバルマブを分析するために使用した。LabChipの流路が、分離、染色、脱染、及び検出を可能とした。試料及び標準を、PBS中で4mg/mLに調節し、60mMのN-エチルマレイミド(非還元)又は60mMのジチオスレイトール(還元)の存在下で、試料緩衝液を変性するSDSと、1:1で混合させた。その後、試料を、加熱し、遠心分離し、水で希釈し、LabChip上のウェルへと充填した。第1の次元では、タンパク質を、4~20%の勾配ゲルに匹敵する分解能で分離した。タンパク質を、分子量により第2の次元で分離した。試料緩衝液中に存在する蛍光染料を、633nmで励起させた。
【0048】
9.示差走査熱量測定
示差走査熱量測定(DSC)を、溶融温度(Tm1)を決定するために使用した。
【0049】
10.粘度
試料及び緩衝液の粘度を、Anton Paar AMVn Viscometerを使用し測定した。測定を、標的濃度で行った。
【0050】
11.ホットスポットに対するアミノ酸配列分析
デュルバルマブのアミノ酸配列を、BLAZEソフトウェアを使用して分析して、ホットスポットに対するアミノ酸残基、又は潜在的修飾部位を同定した。ホットスポットの反応性を、他のモノクローナル抗体を用いる経験に基づく配列ライアビリティー基準に合致する、高、中、又は低のリスクスコアを割り当てた。
【0051】
12.デュルバルマブ中のN結合オリゴ糖の同定
超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)中の有意なピークとして検出される、デュルバルマブ中のN結合オリゴ糖を、FLR検出器を用いるWaters UPLCシステムを使用して同定した。26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース二水和物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0中で製剤化した、デュルバルマブ参照標準(10.2mg/mL;100μg)を、50mMのトリス緩衝液(pH7.8)中で、0.5mg/mLまで再構成した。試料を、2μLのPNGase F(Promega)で消化し、蛍光タグ2-アミノベンズアミド(2-AB;Sigma Aldrich)で標識し、HILIC SPEカートリッジで洗浄し、UPLCプロファイリングのために水へと溶離させた。2-AB標識オリゴ糖をさらに、ピーク同定のために、フコシダーゼ、シアリダーゼA、マンノシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼを含む様々なexo-グリコシドで消化した。
【0052】
試料を、移動相Aとして50mMのギ酸アンモニウム、pH4.4、及び移動相Bとして100%のアセトニトリルを使用して、Waters UPLCシステム上でAcquity UPLC(登録商標)BEH Glycanカラム(1.7μM、2.1×150mm)に注入した。データを収集し、グリコシダーゼ消化された試料のプロファイルを、消化されていない試料と入念に比較して、グリカン及びそれらのオリゴ糖の結合を同定した。
【0053】
実施例2
開発性の研究
デュルバルマブ製剤を、ホットスポット分析、溶融温度、等電点(pI)、及び安定性の決定を含む開発性の研究後に決定した(図1)。
【0054】
1.ホットスポット分析
保管中のデュルバルマブの安定性は、モノクローナル抗体の有効性には不可欠である。抗体保管のリスクは、凝集を介する一次分解経路による活性の損失である。加えて、長期保管のアミノ酸残基の改変は、抗体の安定性及び活性に影響を及ぼす可能性がある。
【0055】
デュルバルマブの活性の損失を、ホモジニアス時間分解蛍光測定法(HTRF)により評価した。活性の損失は、高い及び低いpHの緩衝液の両方において、1ヶ月間の40℃でのインキュベーション後には観察されなかった。D54(G)での微量なレベルのAsp異性化のみが、40℃のpH6.0緩衝液中で1ヶ月後にペプチドマッピングすることにより検出された。
【0056】
2.溶融温度、等電点(pI)、及び安定性の決定
抗体の融点を、製剤緩衝液中で、3mg/mLのデュルバルマブの示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定した。デュルバルマブのpI及び安定性を、それぞれキャピラリー等電点電気泳動及び高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)を使用して決定した。
【0057】
デュルバルマブのDSCプロファイルは、64.5℃のTm、及び73.04℃のTmとして示された(図2)。8.3~8.8の範囲の4つのピークは、デュルバルマブのキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)プロファイル中に検出された。主要なピークは、8.6の等電点を有していた(図3)。液体安定性の研究は、クローン1及びクローン2が、5℃又は40℃のいずれかでの1ヶ月のインキュベーション後にデフォルト製剤中で安定していたことを示した(図4)。開発性研究の結果を、表1に要約する。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例3
凍結乾燥製剤
5つの製剤をスクリーニングして、液状原薬及び凍結乾燥薬物製品の安定性を評価した。スクリーニングした製剤を、表2に示す。
【0060】
初期レベルのP80(すなわち、0.02%w/v)を使用した。凍結乾燥製剤に対する後続の製剤スクリーニングの間、0.02%(w/v)のP80を含有する製剤を再構成する際に粒子が観察された場合には、0.04%(w/v)のP80(製剤4)も含まれていた。この研究のデータに基づいて、0.02%(w/v)のP80が、デュルバルマブの最適な界面活性剤レベルであることが見出された。
【0061】
【表2】
【0062】
製剤を、製剤スクリーニング研究のために凍結乾燥した。製剤は、Virtis Genesis 25EL Freeze-Dryer中で、凍結、アニール、一次乾燥、及び二次乾燥を受けた。凍結乾燥サイクルのパラメーターを、表3に提供する。
【0063】
【表3】
【0064】
1.安定性
40℃で1ヶ月後、凍結乾燥製剤のすべてのモノマー損失率は、1ヶ月当たり<0.3%であった(表4A)。5℃では、すべての製剤に対する1ヶ月当たりのモノマー損失の割合は、1ヶ月当たり<0.1%であった。すべての製剤は、40℃で4週間後、凝集の観点から同等であった(表4B)。凝集は、40℃で4週間後、製剤のいずれの場合でも存在しなかった(表4C)。
【0065】
凍結-融解研究を、5つの製剤すべてに対して実施した。製剤は、-70℃での凍結及び周囲温度での融解からなる、0、1、及び3回の凍結-融解サイクルを受けた。試料を、視覚的に検査し、サイクルの終了時にHP-SECにより分析した。HP-SECの結果は、いかなる試料においても、HP-SECによる純度の有意な変化を示さなかった。すべての試料は、3回のサイクル後に可視粒子を実質的に含まなかった。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
2.再構成後の安定性
5つの凍結乾燥製剤のすべてを、5℃及び25℃で、最大24時間保存して再構成した後に、安定性に関して試験した。5つの製剤のいずれも、SEC-HPLCにより評価された際に、可視粒子の数の変化、又はモノマー純度の有意な減少を示さなかった。T0での結果は表5Aに、5℃で24時間の結果は表5Bに、25℃で24時間の結果は表5Cに示される。
【0070】
【表7】
【0071】
【表8】
【0072】
【表9】
【0073】
3.26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0の製剤中の、デュルバルマブに対する凍結-融解研究
繰り返される凍結/融解サイクルに関する抗体構造の分解を評価して、デュルバルマブの安定性を調査した。これに一貫して、デュルバルマブの安定性を、凍結-融解研究を使用して試験した。
【0074】
デュルバルマブの製剤化されていない製剤原料(UDS)の凍結-融解研究を、製剤(26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0)に対して実施した。デュルバルマブは、5.6mLで充填された8mLのNalgeneボトル中、又は20mLで充填された30mLのCelsius Pakバッグ中で、0、1、及び3回の制御されていない凍結-融解サイクルを受けた。Nalgeneボトルは-80℃で、Celsius Pakバッグは-40℃で凍結し、両方を周囲温度で融解した。その後、試料を、高圧サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)分析による純度、A280により決定されるタンパク質濃度、及び、各凍結-融解サイクル後に評価される外観に関して分析した。
【0075】
デュルバルマブは、以下の表6A(Nalgeneボトル)及び6B(Celsius Pak)に示されるように、3回の凍結-融解サイクル後に安定していることが見出された。
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
これらの結果は、Nalgeneボトル及びCelsius Pakの両方において繰り返される凍結/融解サイクル後に、デュルバルマブが安定していたことを示す。
【0079】
実施例4:
ピログルタミン酸の形成及び検出
デュルバルマブは、重鎖及び軽鎖上にN末端グルタミン酸を有する。経時的に、グルタミン酸は、ピログルタミン酸へと環化する。この変換を、25℃及び40℃で3ヶ月保管した後に、pI8.8のピークとして、cIEFアッセイにおいて検出した。ピークは、同様に、2~8℃で24ヶ月後に発生した(図4)。環化は、凍結乾燥及び液体の両方の形態で発生した。環化が抗体の効力に影響を及ぼさなかったことを示す変異型デュルバルマブが作り出された。
【0080】
実施例5:
最終的な凍結乾燥製剤のパラメーター及び安定性
26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0の凍結乾燥製剤は、50mg/mLのデュルバルマブを含有していた。26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%のポリソルベート80、pH6.0の製剤のパラメーターは、表7に示され、最終的な製剤中の凍結乾燥された薬物製品の安定性は、表8に提供される。ポリプロピレン管における最終的な製剤中の凍結乾燥された製剤原料の溶解性プロファイルは、表9に示される。
【0081】
【表12】
【0082】
【表13】
【0083】
【表14】
【0084】
実施例6
凍結乾燥サイクルの開発
凍結乾燥サイクルの開発により、表10に示されるパラメーターがもたらされた。
【0085】
【表15】
【0086】
凍結乾燥顕微鏡法を使用して、崩壊開始(-33℃)及び完全な崩壊(-27.3℃;図6)の凍結乾燥サイクル温度を評価した。ガラス転移温度(Tg’)を、示差走査熱量測定(DSC;図7)により-27.14℃と決定した。
【0087】
凍結乾燥プロセスの設計空間モデルを、実験計画法(DoE)のアプローチを用いるDesign Expert 7を使用して生成した。DoEアプローチを使用して、<7日の頑健な保守的サイクルを達成する。中点(おおよそTg’)及び実験的な空間の4つの「角」を示す選択した実施条件は、表11に記載される。
【0088】
【表16】
【0089】
すべての実験的なサイクルは、最終的なサイクルに記載されるものと同じランプ速度、凍結温度、及び二次乾燥条件であった。最終的なデュルバルマブ凍結乾燥サイクル条件は表12に示される。
【0090】
【表17】
【0091】
凍結乾燥サイクルの開発における主要な基準は:(1)崩壊温度(Tg’とほぼ同等)を超える製品温度を維持すること;(2)6日未満のサイクル時間を保つために、一次乾燥時間が115時間を超えていないことを確かめること;(3)スケールアップのために十分な頑健性(2~3℃の棚温度、及び40mTorrのチャンバー圧)を提供することである。
【0092】
表11の実験的実施は、凍結乾燥プロセスの設計空間をもたらした。5つの実験的実施から生成された設計空間は、図8に図示される。簡潔に言えば、チャンバーでのサイクル中点及びプロセスの頑健性、並びに棚温度を決定した。NMF Edwards凍結乾燥器のデータは、おおよそ103時間~115時間の一次乾燥工程でピラニゲージの収束(Δ10ubar)を示した。これは、おおよそ10%の安全域と同等である(図9)。このことは、以前の大規模での実施と一貫しており、Amsco凍結乾燥器は、割り当てられた一次時間内で製品熱電対の収束を示した(図10)。
【0093】
実施例7
液体製剤の開発
1.界面活性剤レベルを最適化するための震盪研究
ポリソルベート80の液体製剤の適切性を、バイアルにおける震盪研究を介して評価した。0、0.005%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、及び0.05%(w/v)のポリソルベート80を含有する試料を管中に入れ、最悪の場合、空気対液体の体積比は6.5mLであった。管を、600rpmで、4時間、周囲温度で勢いよく撹拌した。その後、試料を、視覚分析、A280、BioA、HP-SEC、及びマイクロフローイメージング(MFI)により検査した。2~8℃に配した対照の未浸透管も分析した。
【0094】
観察可能な変化は、BioA及びHP-SECにより分析されるような純度パーセントでは気付かなかった。A280タンパク質濃度の変化は、震盪によりもたらされなかった。MFI分析は、試料のすべてが、低レベルの>10μm及び>25μmのサブ可視粒子(sub-visible particles)を有することを示した(図11)。サブ可視粒子レベルは、全体的に、すべての管中で低く、0.02%のポリソルベート80は、液体製剤に対して最適な界面活性剤レベルとして選択された。
【0095】
2.制御された凍結-融解研究
26mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、275mMのトレハロース無水物、0.02%のポリソルベート80、pH6.0の製剤は、5回の制御された凍結-融解サイクル、5℃での融解、及び-40℃での凍結を受けた。5回目の凍結/融解サイクルの終了時に、純度、外観、サブ可視粒子、及びタンパク質濃度を決定した。5回目の凍結-融解サイクル後の生成物の品質の有意な変化は、観察されなかった(表13)。
【0096】
【表18】
【0097】
3.製剤安定性の概要
最終的な製剤中の凍結乾燥された薬物製品の安定性プロファイルは、表14に提供される。結果は、最終的な製剤中の凍結乾燥されたデュルバルマブが、長期保管後に安定したままであることを実証する。
【0098】
【表19】
【0099】
実施例8
N結合オリゴ糖の同定
デュルバルマブのFc領域は、Asn-301で重鎖上の単一部位に結び付いたN結合オリゴ糖鎖を含む。デュルバルマブ上のオリゴ糖の構造特性分析は、製品の構造的な微小不均一性の理解に不可欠である。プロセスが変わる場合の品質管理にとっても重要である。
【0100】
2-AB標識N結合オリゴ糖プロファイルにおいて存在したデュルバルマブから開裂したオリゴ糖は、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)により特性決定され、少量のグリコフォームを含んでいた。表15に記載されるようにexo-グリコシダーゼを用いる2-AB標識オリゴ糖の消化を実施して、非還元末端単糖残基を立証した。オリゴ糖プロファイリングを、表16に示されるように完了した。LC/MS分析を使用して、分子量を立証した。
【0101】
【表20】
【0102】
【表21】
【0103】
UPLCにおける有意なピークとして検出されたデュルバルマブ中のN結合オリゴ糖を同定し、結果は、図12に示される。デュルバルマブの主要素をなすグリコフォームは、端末ガラクトース残基(G0f)、又はモノ-ガラクトシル化(G1f)及びジ-ガラクトシル化(G2f)形態を持たない、フコシル化された二分岐(biatennary)の複合型オリゴ糖である。少量の複合グリコフォームは、アフコシル化されたG0及びG1、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を含まないトランケート型G0f及びG0形態、シアル化されたG1f及びG2f形態(G1f+NAc、G2f+NAc、又はG2f+2NAc)、並びにバイセクト構造のG0fb及びG1fbであった。IgGが採取されるときのチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞の成熟に応じて、高マンノースグリコフォーム(Man4、Man5、Man6、Man7、及びMan8)も存在した。
【0104】
前述の開示が、本発明のある特定の実施形態を強調し、それと同等の変形形態又は代替物のすべてが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨及び範囲内にあることを理解するべきである。
【0105】
【表22】
図1
図2
図3
図4
図5A-B】
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図12-4】
【配列表】
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