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特許7663372使用済み核燃料キャスク用の熱分割挿入体および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】使用済み核燃料キャスク用の熱分割挿入体および方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 5/10 20060101AFI20250409BHJP
   G21C 19/32 20060101ALI20250409BHJP
   G21F 5/008 20060101ALI20250409BHJP
   G21F 1/04 20060101ALI20250409BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
G21F5/10 N
G21C19/32 110
G21F5/008
G21F1/04
G21F9/36 541A
G21F9/36 501F
G21F9/36 501J
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021032772
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2021148783
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】16/826,533
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506121386
【氏名又は名称】エヌエーシー インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーヴァー, ジョージ シー.
(72)【発明者】
【氏名】シスレー, スティーブ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェルウッド, ジェイ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】クライン, ケヴィン
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-048893(JP,A)
【文献】特開2001-141891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0172484(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0027608(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/04,5/008,5/10,9/36
G21C 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
危険核物質を適切に冷却するために空気取込口に流入してキャスクを通る空気流が不十分である程度に1以上の空気取込口が完全に又は部分的に塞がれている場合において、前記危険核物質を安全に貯蔵するための乾式貯蔵キャスクであって、
頂部、底部、および側壁を有する金属製で円筒状のャニスタであって、危険核物質を収容するキャニスタと、
前記危険核物質を有する前記ャニスタを収容するコンクリート製で円筒状のーバーパックであって、頂部、底部、および側壁を有するとともに、前記キャニスタの外面から離間して配置された内面を有し、表面間での空気の流れを可能にする環状領域を形成するオーバーパックと、
外部環境から前記環状領域内に空気を連通させることができる、前記オーバーパックの前記底部の付近にあるオーバーパックの空気取込口と、
前記環状領域から前記外部環境に空気を連通させることができる、前記オーバーパックの前記頂部の付近にあるオーバーパックの排出通気口と、
前記排出通気口から前記環状領域の上部を通って延び、前記環状領域の上部を前記オーバーパック側の外側環状領域と前記キャニスタ側の内側環状領域とに分割する熱分割挿入体と、
を備え、
前記熱分割挿入体の下端部は、前記環状領域内で、前記キャニスタの前記底部よりも垂直方向の上方に位置し、
前記熱分割挿入体は、(a)前記空気取込口が塞がれていない場合に、前記空気取込口から取り込まれた空気が前記外側環状領域および内側環状領域の各々を通って上向きに流れ、前記排出通気口から外向きに排出される第1空気流を確立し、(b)前記空気取込口が塞がれた場合に、前記排出通気口から内向きに取り込まれた空気が前記外側環状領域を通って下向きに流れてから前記内側環状領域を通って上向きに流れ、前記排出通気口から外向きに排出される第2空気流確立するように設計されている、乾式貯蔵キャスク。
【請求項2】
前記熱分割挿入体は、
前記オーバーパックの前記排出通気口を通って延びる平面状の水平方向放射状プレートであって、前記オーバーパックの前記排出通気口に関連する湾曲に対応する内側縁部および外側縁部に沿った湾曲を有し、前記オーバーパックの前記排出通気口内に下部空気流領域および上部空気流領域を確立し、前記下部空気流領域は、前記外部環境から内向きの空気流のためのものであり、前記上部空気流領域は、前記外部環境への外向きの空気流のためのものである、水平方向放射状プレートと、
前記水平方向放射状プレートの前記内側縁部から直角に下方に延びる湾曲垂直プレートであって、前記環状領域に関連する湾曲に対応する湾曲を有し、前記外側環状領域および前記内側環状領域を確立し、前記外側環状領域は、前記排出通気口内の前記下部空気流領域から内向きの空気流を可能にし、前記内側環状領域は、前記排出通気口の前記上部空気流領域への外向きの空気流を可能にする、湾曲垂直プレートと、
を含む、請求項1に記載の乾式貯蔵キャスク。
【請求項3】
前記湾曲垂直プレートは、前記環状領域を通る実質的に垂直な距離を延在し、前記実質的な距離は、前記環状領域の垂直長さの少なくとも半分である、請求項2に記載の乾式貯蔵キャスク。
【請求項4】
前記環状領域における空気流は、前記排出通気口における気流の垂直下方にある、請求項1に記載の乾式貯蔵キャスク。
【請求項5】
前記熱分割挿入体は、実質的に金属製である、請求項1に記載の乾式貯蔵キャスク。
【請求項6】
危険核物質を適切に冷却するために空気取込口に流入してキャスクを通る空気流が不十分である程度に1以上の空気取込口が完全に又は部分的に塞がれている場合において、前記危険核物質を安全に貯蔵するためのキャスクであって、
頂部、底部、および側壁を有する金属製で円筒状のャニスタであって、危険核物質を収容するキャニスタと、
前記危険核物質を有する前記ャニスタを収容するコンクリート製で円筒状のーバーパックであって、頂部、底部、および側壁を有するとともに、前記キャニスタの外面から離間して配置された内面を有し、表面間での空気の流れを可能にする環状領域を形成するオーバーパックと、
外部環境から前記環状領域内に空気を連通させることができる、前記オーバーパックの前記底部の付近にあるオーバーパックの空気取込口と、
前記環状領域から前記外部環境に空気を連通させることができる、前記オーバーパックの前記頂部の付近にあるオーバーパックの排出通気口と、
熱分割挿入体と、
を備え、
前記熱分割挿入体は、
前記オーバーパックの前記排出通気口を通って延びる平面状の水平方向放射状プレートであって、前記オーバーパックの前記排出通気口に関連する湾曲に対応する内側縁部および外側縁部に沿った湾曲を有し、前記オーバーパックの前記排出通気口内に下部空気流領域および上部空気流領域を確立し、前記下部空気流領域および前記上部空気流領域は、前記空気取込口が塞がれていない場合に前記外部環境への外向きの空気流のためのものであり、前記空気取込口が塞がれた場合において、前記下部空気流領域は、前記外部環境から内向きの空気流のためのものであり、前記上部空気流領域は、前記外部環境への外向きの空気流のためのものである、水平方向放射状プレートと、
前記水平方向放射状プレートの前記内側縁部から直角に下方に延びる湾曲垂直プレートであって、前記環状領域に関連する湾曲に対応する湾曲を有し、外側環状領域および内側環状領域を確立し、前記外側環状領域および前記内側環状領域は、前記空気取込口が塞がれていない場合に前記排出通気口内の前記下部空気流領域および前記上部空気流領域内にそれぞれ上向きの空気流を可能にし、前記空気取込口が塞がれた場合において、前記内側環状領域は、前記排出通気口の前記上部空気流領域への上向きの空気流を可能にし、前記外側環状領域は、前記排出通気口内の前記下部空気流領域から内向きの空気流を可能にする、湾曲垂直プレートと、を含み、
前記湾曲垂直プレートの下端部は、前記環状領域内で、前記キャニスタの前記底部よりも垂直方向の上方に位置する、キャスク。
【請求項7】
前記熱分割挿入体は、実質的に金属製である、請求項6に記載のキャスク。
【請求項8】
前記湾曲垂直プレートは、前記環状領域を通る実質的に垂直な距離を延在し、前記実質的な距離は、前記環状領域の垂直長さの少なくとも半分である、請求項6に記載のキャスク。
【請求項9】
危険核物質を貯蔵するためのキャスクであって、
頂部、底部、および側壁を有し、危険核物質を収容するキャニスタと、
部、底部、および側壁を有するコンクリート製のオーバーパックであって、前記キャニスタの外面から離間して配置された内面を有し、表面間の空気の流れを可能にする環状領域を形成する、オーバーパックと、
外部環境から前記環状領域内に空気を連通させることができる、前記オーバーパックの前記底部の付近にあるオーバーパックの空気取込口と、
前記環状領域から前記外部環境に空気を連通させることができる、前記オーバーパックの前記頂部の付近にあるオーバーパックの排出通気口と、
(a)前記空気取込口が塞がれていない場合に、前記空気取込口から取り込まれた空気が前記環状領域を通って上向きに流れ、前記排出通気口から外向きに排出される第1空気流を確立し、(b)前記空気取込口が塞がれた場合に、前記排出通気口から内向きに取り込まれた空気が前記環状領域のオーバーパック側を通って下向きに流れてから前記環状領域のキャニスタ側を通って上向きに流れ、前記排出通気口から外向きに排出される第2空気流確立するための熱分割手段と、を含み、
前記熱分割手段は、前記環状領域を前記オーバーパック側と前記キャニスタ側とに分割するように前記環状領域内に配置されたプレートを含み、前記プレートの下端部は、前記キャニスタの前記底部よりも垂直方向の上方に位置する、キャスク。
【請求項10】
前記キャニスタおよび前記熱分割手段は実質的に金属製であり、前記オーバーパックは実質的にコンクリート製である、請求項9に記載のキャスク。
【請求項11】
前記キャニスタおよび前記オーバーパックに関連する前記側壁は、略円筒形状である、請求項9に記載のキャスク。
【請求項12】
前記熱分割手段は、
前記オーバーパックの前記排出通気口を通って延びる平面状の水平方向放射状プレートであって、前記オーバーパックの前記排出通気口に関連する湾曲に対応する内側縁部および外側縁部に沿った湾曲を有し、前記オーバーパックの前記排出通気口ないに下部空気流領域および上部空気流領域を確立し、前記下部空気流領域および前記上部空気流領域は、前記空気取込口が塞がれていない場合に前記外部環境への外向きの空気流のためのものであり、前記空気流が塞がれた場合において、前記下部空気流領域は、前記外部環境から内向きの空気流のためのものであり、前記上部空気流領域は、前記外部環境への外向きの空気流のためのものである、水平方向放射状プレートと、
前記水平方向放射状プレートの前記内側縁部から直角に下方に延びる湾曲垂直プレートであって、前記環状領域に関連する湾曲に対応する湾曲を有し、外側環状領域および内側環状領域を確立し、前記外側環状領域および前記内側環状領域は、前記空気取込口が塞がれていない場合に前記排出通気口内の前記下部空気流領域および前記上部空気流領域内にそれぞれ上向きの空気流を可能にし、前記排出通気口が塞がれた場合において、前記内側環状領域は、前記排出通気口の前記上部空気流領域への上向きの空気流を可能にし、前記外側環状領域は、前記排出通気口内の前記下部空気流領域から内向きの空気流を可能にする、湾曲垂直プレートと、
を構造内に含むみ、
前記湾曲垂直プレートは、前記環状領域内に配置された前記プレートであり、前記環状領域を前記オーバーパック側の外側環状領域と前記キャニスタ側の内側環状領域とに分割する、請求項9に記載のキャスク。
【請求項13】
前記キャスクは、複数の空気取込口と、複数の排出通気口と、前記複数の排出通気口にそれぞれ対応する複数の熱分割手段とを含む、請求項9に記載のキャスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、危険な放射性物質の貯蔵に関し、より詳細には、使用済み核燃料または他の危険な放射性物質を収容するための乾式貯蔵、使用済み核燃料キャスクに関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み核燃料は、歴史的に、原子力発電所内の「使用済み燃料プール」と呼ばれる深い貯水池に貯蔵(保管)されてきた。この使用済み燃料の貯蔵技術は、しばしば「湿式貯蔵」と呼ばれている。原子炉の使用済み燃料プールは、使用済み燃料の容量の限界に達しており、使用済み燃料のための余地がなくなるため、原子炉を停止する必要性が懸念されている。乾式使用済み核燃料の貯蔵技術(「乾式貯蔵」と呼ばれる)は、原子炉の使用済み燃料プールの外部に使用済み燃料を放出して貯蔵するように原子力発電所の能力を拡張し、それによって発電所の運転寿命を延ばすために、世界中で展開されている。
【0003】
乾式使用済み燃料貯蔵に使用される技術には、(a)使用済み燃料を装填した後に発電所でボルト締めされて閉鎖される最終閉鎖蓋を有する金属キャスク(cask)、および(b)使用済み燃料装填後に発電所で機械的方法で溶接閉鎖または封止されるキャニスタ最終閉鎖蓋を有する金属キャニスタ(canister)を含むコンクリート貯蔵キャスク、の2つの基本クラスがある。この後者の乾式貯蔵技術は、「キャニスタベースのコンクリート使用済み燃料貯蔵」と呼ばれる。コンクリートキャスクは、放射性物質を包み込む内側金属キャニスタのための機械的保護、熱除去特徴、および放射線遮蔽を提供する筐体(enclosure)、または「オーバーパック(overpack)」として働く。この技術の使用は、貯蔵のための金属キャスク技術の使用よりも、かなりの資本コストおよび他の経済的利点を有する傾向がある。
【発明の概要】
【0004】
乾式貯蔵、使用済み核燃料キャスク用の熱分割挿入体および方法の実施形態が開示されている。熱分割挿入体は、危険核物質を適切に冷却するために空気取込口に流入してキャスクを通る空気流が不十分である程度に1以上の空気取込口が完全に又は部分的に塞がれている場合に、当該危険核物質の安全な貯蔵を可能にする。
【0005】
一実施形態では、特に、キャスクは、頂部、底部、および側壁を有する金属キャニスタを含む。キャニスタは、危険な核物質を収容する。コンクリートオーバーパックは、危険核物質を有する金属キャニスタを収容する。オーバーパックは、頂部、底部、および側壁を有する。オーバーパックは、キャニスタの外面から離間して配置された内面を有し、キャニスタを冷却するために表面間での空気の流れを可能にする環状領域を形成する。オーバーパックの底部の付近にある1以上の空気取込口は、外部環境から環状環境内に空気を連通させる。オーバーパックの頂部の付近にある1以上の排出通気口は、環状領域から外部環境に空気を連通させる。熱分割挿入体は、それぞれの排出通気口を通って環状領域内に延びるとともに、オーバーパックの空気取込口が塞がれている場合に、それぞれの排出通気口および環状領域を通る2つの別個で反対の空気流(即ち、内向きの空気流、および外向きの空気流)を確立するように設計される。通常動作で塞がれていない場合、2つの空気は、両方とも環状領域を通って上向きに流れ、排出通気口から外向きに流れる。
【0006】
熱分割挿入体の一実施形態は、特に、排出通気口を通る2つの別個で反対の空気流を確立するため、(a)平面状の水平方向放射状プレートと、(b)放射状プレートから延びる湾曲垂直プレートとを備える。水平方向放射状プレートは、オーバーパックの排出通気口を通って延びている。放射状プレートは、オーバーパックの排出通気口に関連する湾曲に対応するその内側縁部および外側縁部に沿った湾曲を有する。放射状プレートは、下部空気流領域および上部空気流領域をオーバーパックの排出通気口内に確立する。1以上の空気取込口が塞がれた場合、下部空気流領域は、外部環境からの内向きの空気流を可能にし、上部空気気流領域は、外部環境への外向きの空気流を可能にする。1以上の空気取込口が塞がれていない場合、上部空気流領域および下部空気流領域は、外部環境への外向きの空気流を可能にする。
【0007】
湾曲垂直プレートに関し、それは放射状プレートの内側縁部から直角に下方に延び、環状領域に関連する湾曲に対応する湾曲を有する。湾曲垂直プレートは、本質的に、外部環状領域および内部環状領域を確立する。1以上の空気取込口が塞がれた場合、外側環状領域は、排出通気口内の下部空気流領域から内向きの空気流を可能にし、内側環状領域は、排出通気口の上部空気流領域への外向きの空気流を可能にする。1以上の空気取込口が塞がれていない場合、外側環状領域および内側環状領域は、下部空気流領域および上部空気流領域内への上向きの空気流をそれぞれ可能にし、次いで、排出通気口から外部環境内への外向きの空気流を可能にする。
【0008】
特に、危険核物質の適切な冷却のために空気取込口に流入してキャスクを通る空気流が不十分である程度に1以上の空気取込口が完全に又は部分的に塞がれている場合において、危険核物質を安全に貯蔵するための方法の実施形態は、1以上の空気取込口が塞がれていない場合に、空気取込口に流入し、環状領域を通り、次いで1以上の空気通気口を通って流出する空気流を可能にする工程と、空気取入口が塞がれている場合に、排出通気口を通り、次いで環状領域を通り、次いで排出通気口を通って流出する内向きの空気流を可能にする工程とを含む。さらに、別の実施形態は、前述の工程の各々を実行するための手段を有する装置である。
【0009】
本発明の他の実施形態、装置、方法、特徴、および利点は、以下の図面および詳細な説明を検討することにより、当業者には明らかになるのであろう。そのような追加の実施形態、装置、方法、特徴、および利点はすべて、本開示内に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照することにより、より良く理解することができる。図面中の構成要素は、必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに、本開示の原理を明確に示すことに重点が置かれている。また、図面中、同様の参照番号は、いくつかの図面にわたって対応する部分を示している。
【0011】
図1図1は、オーバーパックとキャニスタとの間の環状領域を通る典型的な空気移動を伴う、放射性物質を収容するキャニスタを有するオーバーパックを有する典型的な従来技術の乾式貯蔵の使用済み核燃料キャスクの断面図である。
【0012】
図2図2は、1以上のオーバーパック空気取込口の実質的な閉塞による停滞空気を有する図1のキャスクの断面図である。
【0013】
図3図3は、分離された空気流を確立し、それによって、オーバーパックの空気取込口の実質的な閉塞にも関わらずキャニスタおよび放射性内容物を冷却する、本発明の熱分割挿入体によって確立された内側環状空気流を有するオーバーパックを伴う、放射性物質を収容するキャニスタを有するオーバーパックを有するキャスクを示す。
【0014】
図4図4は、図3の熱分割挿入体を有するキャスクの部分拡大断面図である。
【0015】
図5図5は、図3および図4の取り外された熱分割挿入体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、1以上の空気取込口(air inlet)17に流入し、オーバーパック(overpack)12とキャニスタ(canister)14との間の環状領域18を通り、次いで1以上の空気排出通気口(air outlet vent)22から流出する典型的な空気16を有する、内部に貯蔵された放射性物質15を収容するキャニスタ14を有するオーバーパック12を有する、典型的な従来技術の乾式貯蔵の使用済み核燃料キャスク(cask)10の断面図を示す。好ましい実施形態におけるキャニスタ14は、主に(または実質的に)ステンレス鋼などの金属であり、平坦な頂部、平坦な底部、および円筒状の側壁を有する略円筒形状をしている。好ましい実施形態におけるオーバーパック12は、主に(または実質的に)コンクリートであり、平坦な頂部、平坦な底部、および円筒形の側壁を有する略円筒形状をしている。
【0017】
キャニスタベースの使用済み燃料貯蔵に関連するオーバーパック熱除去機能は、オーバーパック垂直内部境界とオーバーパック12内に貯蔵された放射性物質を収容する金属キャニスタ14の垂直外部境界との間の環状領域18を通る空気の自然循環に依存する。より低温でより密度の高い空気16は、キャニスタ14内の放射性物質15から放出されている熱を空気16が吸収する1以上の空気取込口17を介して環状領域18に導入され、それにより密度が低くなり浮力が増加する。この増加した浮力は、空気16が1以上の複数の排出通気口22を介してオーバーパック12を出る上部領域に到達するまで、環状領域18を通って上方に上昇するより密度の低い空気16をもたらす。上述したように、環状領域18を通る空気16の移動は、キャニスタ14内に貯蔵された放射性物質15から熱の除去をもたらし、それによって放射性物質15の温度が所定の限界値未満に維持されることを保証する連続的なプロセスである。
【0018】
図2を参照すると、万が一、キャスク10が貯蔵されている領域の浸水が起きた場合、浸入した水24が1以上のオーバーパック空気取込口17を全体的に又は部分的に覆い、それによって環状領域18内への空気16の導入(図1)が遮断される可能性があると考えられる。一般に、図2は、浸入した水24によるオーバーパック空気取込口17の実質的な閉塞に起因する停滞空気16’を有するキャスク10の断面図を示す。この空気16の流れの遮断は、放射性物質15の温度の望ましくない危険な上昇をもたらす可能性があり、潜在的に望ましい及び/又は許容可能なレベルを超える。
【0019】
オーバーパック12内の環状領域18は、空気16が熱を吸収して密度が低くなるにつれて、空気16が上方に移動するための単一のカラム(柱)として機能する。オーバーパック12の底部でより低温でより密度の低い空気16用の通常の導入経路が閉塞すると、この空気16用の単一のカラムが停滞し、それにより、異なる空気密度に基づいて熱的に誘発される駆動力を作り出す手段がなくなる。
【0020】
図3図5に示されるように、本開示は、空気取込口17が塞がれた場合に、この停滞した空気状態に対処するように特別に考案された熱分割挿入体(thermal divider insert)26を提供する。1以上の熱分割挿入体26は、オーバーパック12内に設置される。各熱分割挿入体26は、それぞれの空気排出通気口22を通って環状領域18内に延びている。
【0021】
図5に示されるように、各熱分割挿入体26は、垂直面及び水平面の両方に沿ってオーバーパック12の内側半径方向寸法に適合(一致)するように同時に半径方向に成形された複雑な直角の外観を有するように構成された角度板である。熱分割挿入体26は、任意の適切な材料から作製されうるが、好ましい実施形態では、主にステンレス鋼などの金属である。熱分割挿入体26は、任意の適切な厚さとすることができる。材料および厚さは、構造に十分な剛性を与える必要がある。さらに、熱分割挿入体26は、ボルト、溶接、または他の適切な公知の方法を介して取り付けられる。
【0022】
図3を参照すると、熱分割挿入体26は、オーバーパック12内に設置され、挿入体26の水平部分28がオーバーパック排出通気口22を下部領域と上部領域との2つの別個の領域に効果的に分割するように構成される。熱分割器挿入体26の垂直プレート32は、オーバーパック12の内側境界壁と、オーバーパック12内に貯蔵された放射性物質15を収容するキャニスタ14の外壁との間のオーバーパック環状領域18内に位置合わせされ、それによって環状領域18を、内側環状領域および外側環状領域の2つの別個の領域に分割する。湾曲垂直プレート32は、環状領域18、好ましくは環状領域18の垂直スパンの少なくとも半分を通って下方に実質的な垂直距離を延ばしている。好ましい実施形態では、垂直プレート32は、環状領域の垂直距離の約60%延びている。
【0023】
熱分割器挿入体26は、通常のシステム動作中(即ち、オーバーパック取込口17を塞ぐ浸水状態ではない)に熱材料シールドとして作用する。1以上の空気取込口が塞がれていない場合、外側環状領域および内側環状領域は、それぞれ、通気口22の下部空気流領域および上部空気流領域内への上向きの空気流を可能にし、次いで、通気口22から外部環境への外向きの空気流を可能にする。
【0024】
浸水によるオーバーパック取込口17の閉塞(または、オーバーパック取込口17へのより低温でより密度の高い空気16の導入を防止するか、または他の方法で阻止する任意の他の仮定状態)の際、最初は環状領域18内で熱不均衡に遭遇し、その結果、最初は停滞空気状態になる。キャニスタ14内の放射性物質15は熱を放出し続けるので、キャニスタ14に最も近い空気16は熱を吸収し続け、それによってオーバーパック12の内面に最も近い空気16と比較して密度の差を生じさせうる。図3に矢印で示されるように、熱分割挿入体26の存在により、キャニスタ14に最も近い空気16が浮力により上昇し始め、オーバーパック通気口22の上部領域を介してオーバーパック12を出るように、異なる密度の空気塊の分離が確立されるのであろう。逆に、比較的低温でより密度の高い空気は、オーバーパック排出通気口22の下部領域を介してオーバーパック12内に入り、環状領域18の外側環状領域内を下向きに進み、次いで、熱分割挿入体26によって確立された環状領域18の内側環状領域内を内向きに回り且つ上方に進み、それによって環状領域18を通る空気流を再確立し、キャニスタ14内に貯蔵された放射性物質15から放出される熱を除去する。
【0025】
最後に、本発明の上述の実施形態、特に、任意の「好ましい」実施形態は、単に実施の可能な非限定的な例であり、単に本発明の原理の明確な理解のために記載されていることを強調しておくべきである。本発明の精神および原理から実質的に逸脱することなく、本発明の上記実施形態の多くの変形および修正が可能である。そのような全ての修正及び変形は、本開示及び本発明の範囲内において本明細書に含まれることが意図される。
【0026】
一例として、図5の熱分割挿入体26の他の実施形態は、オーバーパック空気取込口17が遮断された場合に、それぞれの通気口および環状領域を通る2つの別個で反対の空気流(内向きの空気流、および外向きの空気流)を確立するという所望の目標を達成するための好ましい実施形態と比較して、異なる構成、形状、大きさなどで設計することができることが想定される。
図1
図2
図3
図4
図5