(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/40 20160101AFI20250409BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20250409BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250409BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250409BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20250409BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250409BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250409BHJP
B60W 20/10 20160101ALI20250409BHJP
B60K 6/48 20071001ALN20250409BHJP
【FI】
B60W20/40
B60K6/547
B60L15/20 K
B60L50/16
B60W10/02 900
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/10
B60K6/48 ZHV
(21)【出願番号】P 2021059528
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 順
(72)【発明者】
【氏名】小室 正樹
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273460(JP,A)
【文献】特開2014-113870(JP,A)
【文献】特開2020-131880(JP,A)
【文献】特開2019-055712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60K 6/48
B60W 10/00 - 20/50
B60L 15/20
B60L 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御する車両用制御装置であって、
第1車輪に連結されるモータジェネレータと、
前記第1車輪または第2車輪に動力伝達経路を介して連結されるエンジンと、
前記動力伝達経路に設けられる変速機構と、
前記動力伝達経路に設けられ、前記エンジンと前記変速機構との間に位置するクラッチ機構と、
互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記モータジェネレータ、前記エンジン、前記変速機構および前記クラッチ機構を制御する制御システムと、
を有し、
前記制御システムは、
前記クラッチ機構を締結状態に制御し、前記エンジンを運転状態に制御し、かつ前記モータジェネレータを回転状態に制御する第1走行モードと、
前記クラッチ機構を解放状態に制御し、前記エンジンを停止状態に制御し、かつ前記モータジェネレータを回転状態に制御する第2走行モードと、
を備え、
前記制御システムは、前記変速機構の変速比
がロー側になるにつれて移行時間を
長く設定し、
前記制御システムは、前記第1走行モードから前記第2走行モードに切り替える際に、前記移行時間に亘って前記クラッチ機構を締結し、前記クラッチ機構が締結された状態のもとで、前記エンジンのトルクを減少させ、かつ前記モータジェネレータの力行トルクを増加させる、
車両用制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用制御装置において、
前記制御システムは、車両加速度の絶対値が小さくなるにつれて前記移行時間を長く設定する、
車両用制御装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の車両用制御装置において、
前記制御システムは、前記エンジンのトルクが大きくなるにつれて前記移行時間を長く設定する、
車両用制御装置。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1項に記載の車両用制御装置において、
前記第1走行モードは、前記クラッチ機構が締結状態に制御され、前記エンジンが運転状態に制御され、かつ前記モータジェネレータが発電状態に制御される走行モードである、
車両用制御装置。
【請求項5】
車両を制御する車両用制御装置であって、
第1車輪に連結されるモータジェネレータと、
前記第1車輪または第2車輪に動力伝達経路を介して連結されるエンジンと、
前記動力伝達経路に設けられる変速機構と、
前記動力伝達経路に設けられ、前記エンジンと前記変速機構との間に位置するクラッチ機構と、
互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記モータジェネレータ、前記エンジン、前記変速機構および前記クラッチ機構を制御する制御システムと、
を有し、
前記制御システムは、
前記クラッチ機構を締結状態に制御し、前記エンジンを運転状態に制御し、かつ前記モータジェネレータを回転状態に制御する第1走行モードと、
前記クラッチ機構を解放状態に制御し、前記エンジンを停止状態に制御し、かつ前記モータジェネレータを回転状態に制御する第2走行モードと、
を備え、
前記制御システムは、前記変速機構の変速比
および車両加速度の絶対値に基づいて移行時間を設定し、
前記制御システムは、前記車両加速度の絶対値が小さくなるにつれて前記移行時間を長く設定し、
前記制御システムは、前記第1走行モードから前記第2走行モードに切り替える際に、前記移行時間に亘って前記クラッチ機構を締結し、前記クラッチ機構が締結された状態のもとで、前記エンジンのトルクを減少させ、かつ前記モータジェネレータの力行トルクを増加させる、
車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両には、動力源としてエンジンおよびモータジェネレータが搭載されている(特許文献1~3参照)。また、ハイブリッド車両は、走行モードとして、モータジェネレータを用いて車両を走行させるEV(Electric Vehicle)モードと、エンジンおよびモータジェネレータを用いて車両を走行させるHEV(Hybrid Electric Vehicle)モードと、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-98804号公報
【文献】特開2005-130564号公報
【文献】特開2014-196104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、HEVモードからEVモードに走行モードを切り替える際には、車輪からエンジンを切り離して停止させるため、エンジンと車輪との間のクラッチを解放することが必要である。ここで、HEVモードにおいてエンジントルクが増大していた場合には、走行モードを切り替える際のクラッチ解放時に、過度なトルク変動によるショックを発生させてしまう虞がある。このようなショックの発生は、運転者に違和感を与えてしまう要因であることから、走行モードを切り替える際のショックを低減することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、走行モードを切り替える際のショックを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の車両用制御装置は、車両を制御する車両用制御装置であって、第1車輪に連結されるモータジェネレータと、前記第1車輪または第2車輪に動力伝達経路を介して連結されるエンジンと、前記動力伝達経路に設けられる変速機構と、前記動力伝達経路に設けられ、前記エンジンと前記変速機構との間に位置するクラッチ機構と、互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記モータジェネレータ、前記エンジン、前記変速機構および前記クラッチ機構を制御する制御システムと、を有する。前記制御システムは、前記クラッチ機構を締結状態に制御し、前記エンジンを運転状態に制御し、かつ前記モータジェネレータを回転状態に制御する第1走行モードと、前記クラッチ機構を解放状態に制御し、前記エンジンを停止状態に制御し、かつ前記モータジェネレータを回転状態に制御する第2走行モードと、を備える。前記制御システムは、前記変速機構の変速比がロー側になるにつれて移行時間を長く設定する。前記制御システムは、前記第1走行モードから前記第2走行モードに切り替える際に、前記移行時間に亘って前記クラッチ機構を締結し、前記クラッチ機構が締結された状態のもとで、前記エンジンのトルクを減少させ、かつ前記モータジェネレータの力行トルクを増加させる。
一実施形態の車両用制御装置は、車両を制御する車両用制御装置であって、第1車輪に連結されるモータジェネレータと、前記第1車輪または第2車輪に動力伝達経路を介して連結されるエンジンと、前記動力伝達経路に設けられる変速機構と、前記動力伝達経路に設けられ、前記エンジンと前記変速機構との間に位置するクラッチ機構と、互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記モータジェネレータ、前記エンジン、前記変速機構および前記クラッチ機構を制御する制御システムと、を有する。前記制御システムは、前記クラッチ機構を締結状態に制御し、前記エンジンを運転状態に制御し、かつ前記モータジェネレータを回転状態に制御する第1走行モードと、前記クラッチ機構を解放状態に制御し、前記エンジンを停止状態に制御し、かつ前記モータジェネレータを回転状態に制御する第2走行モードと、を備える。前記制御システムは、前記変速機構の変速比および車両加速度の絶対値に基づいて移行時間を設定する。前記制御システムは、前記車両加速度の絶対値が小さくなるにつれて前記移行時間を長く設定する。前記制御システムは、前記第1走行モードから前記第2走行モードに切り替える際に、前記移行時間に亘って前記クラッチ機構を締結し、前記クラッチ機構が締結された状態のもとで、前記エンジンのトルクを減少させ、かつ前記モータジェネレータの力行トルクを増加させる。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態の車両用制御装置は、第1走行モードから第2走行モードに切り替える際に、移行時間に亘ってクラッチ機構を締結し、クラッチ機構が締結された状態のもとで、エンジンのトルクを減少させ、かつモータジェネレータの力行トルクを増加させる。これにより、走行モードを切り替える際のショックを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態である車両用制御装置を備えた車両の構成例を示す図である。
【
図3】各制御ユニットの基本構造を簡単に示した図である。
【
図6】EVモードおよびHEVモードの実行領域の一例を示す走行モードマップである。
【
図7】走行モード切替制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】変速比と第1時間との関係の一例を示す図である。
【
図9】車両加速度と第2時間との関係の一例を示す図である。
【
図10】エンジントルクと第3時間との関係の一例を示す図である。
【
図11】実施例1として走行モード切替制御の実行状況を示すタイミングチャートである。
【
図12】比較例として走行モード切替制御の実行状況を示すタイミングチャートである。
【
図13】実施例2として走行モード切替制御の実行状況を示すタイミングチャートである。
【
図14】パワートレインの他の構成例を示す図である。
【
図15】パワートレインの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[全体構成]
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10を備えた車両11の構成例を示す図である。
図1に示すように、車両11には、エンジン12および変速機13を備えたパワートレイン14が搭載されている。図示する車両11はハイブリッド車両であり、変速機13には動力源としてのモータジェネレータ15が組み込まれている。また、変速機13の出力軸16には、プロペラ軸17およびデファレンシャル機構18を介して後輪(第1車輪)19rが連結されている。なお、図示するパワートレイン14は、後輪19rを駆動する後輪駆動用のパワートレインであるが、これに限られることはない。例えば、前輪(第2車輪)19fを駆動する前輪駆動用のパワートレインであっても良く、前輪19fと後輪19rとの双方を駆動する全輪駆動用のパワートレインであっても良い。
【0011】
図2は車両用制御装置10の構成例を示す図である。
図2に示すように、パワートレイン14には、プライマリプーリ20、セカンダリプーリ21および駆動チェーン27からなる無段変速機構(変速機構)22が設けられている。プライマリプーリ20を支持するプライマリ軸23の一方側には、前進クラッチ(クラッチ機構)24およびトルクコンバータ25を介してエンジン12が連結されている。また、プライマリプーリ20を支持するプライマリ軸23の他方側には、モータジェネレータ15のロータ15rが連結されている。さらに、セカンダリプーリ21を支持するセカンダリ軸26には、出力軸16、プロペラ軸17、およびデファレンシャル機構18を介して後輪19rが連結されている。なお、前進クラッチ24は、前後進切替機構の一部を構成するクラッチである。
【0012】
エンジン12と後輪19rとは、トルクコンバータ25、前進クラッチ24、無段変速機構22、プロペラ軸17およびデファレンシャル機構18等によって構成される動力伝達経路30を介して連結されている。図示する例では、
図2に示すように、動力伝達経路30は、クランク軸31、トルクコンバータ25、タービン軸32、前進クラッチ24、プライマリ軸23、無段変速機構22、セカンダリ軸26、出力軸16、プロペラ軸17およびデファレンシャル機構18によって構成されている。
【0013】
前述したように、エンジン12と後輪19rとを連結する動力伝達経路30には、前進クラッチ24および無段変速機構22が設けられている。また、動力伝達経路30上の前進クラッチ24は、エンジン12と無段変速機構22との間に位置している。さらに、動力伝達経路30を構成するプライマリ軸23には、モータジェネレータ15が連結されている。つまり、モータジェネレータ15は、無段変速機構22の入力側から動力伝達経路30を介して後輪19rに連結されている。
【0014】
エンジン12の吸気マニホールド40には、吸入空気量を調整するスロットルバルブ41が設けられている。また、エンジン12には、吸気ポートやシリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ42が設けられており、イグナイタや点火プラグ等からなる点火装置43が設けられている。さらに、エンジン12には、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ44が設けられている。また、エンジン12から出力されるトルク(以下、エンジントルクと記載する。)を制御するため、スロットルバルブ41、インジェクタ42および点火装置43等には、電子制御ユニットであるエンジン制御ユニットCU1が接続されている。
【0015】
パワートレイン14の前進クラッチ24や無段変速機構22等を制御するため、パワートレイン14には複数の電磁バルブや油路等からなるバルブユニット45が設けられている。また、バルブユニット45には、エンジン等によって駆動されるオイルポンプ46が接続されている。オイルポンプ46から吐出される作動油は、バルブユニット45によって供給先や圧力等が制御され、前進クラッチ24や無段変速機構22等に供給される。また、バルブユニット45を介して前進クラッチ24等の作動状態を制御するため、バルブユニット45には電子制御ユニットである変速機制御ユニットCU2が接続されている。なお、変速機制御ユニットCU2には、プライマリプーリ20の回転速度を検出するプライマリ回転センサ47と、セカンダリプーリ21の回転速度を検出するセカンダリ回転センサ48と、が接続されている。
【0016】
モータジェネレータ15のステータ15sには、インバータ50を介してバッテリモジュール51が接続されている。バッテリモジュール51には高電圧バッテリ52を構成する複数のバッテリセル53が組み込まれている。さらに、バッテリモジュール51には、高電圧バッテリ52の接続を制御するメインリレー54が設けられるとともに、高電圧バッテリ52の充放電電流、端子電圧および温度等を検出するバッテリセンサ55が設けられている。また、バッテリモジュール51には、電子制御ユニットであるバッテリ制御ユニットCU3が接続されている。バッテリ制御ユニットCU3は、高電圧バッテリ52の充放電を監視するとともにメインリレー54等を制御する機能を有している。また、バッテリ制御ユニットCU3は、バッテリセンサ55によって検出される充放電電流や端子電圧等に基づいて、高電圧バッテリ52の充電状態であるSOC(State of Charge)を算出する機能を有している。なお、高電圧バッテリ52のSOCとは、高電圧バッテリ52の電気残量を示す比率であり、高電圧バッテリ52の満充電容量に対する蓄電量の比率である。
【0017】
また、モータジェネレータ15の通電制御を実行するインバータ50には、電子制御ユニットであるモータ制御ユニットCU4が接続されている。モータ制御ユニットCU4は、複数のスイッチング素子等からなるインバータ50を制御することにより、モータジェネレータ15から出力されるモータトルクを制御する。なお、モータジェネレータ15のモータトルクには、力行状態のモータジェネレータ15から出力される力行トルクがあり、発電状態のモータジェネレータ15から出力される発電トルクがある。力行トルクの作用方向と発電トルクの作用方向とは、互いに逆向きになっている。モータジェネレータ15を力行状態に制御する際には、高電圧バッテリ52からの直流電力がインバータ50を介して交流電力に変換されてステータ15sに供給される。一方、モータジェネレータ15を発電状態に制御する際には、ステータ15sからの交流電力がインバータ50を介して直流電力に変換されて高電圧バッテリ52に供給される。
【0018】
[制御システム]
図2に示すように、車両用制御装置10には、パワートレイン14を制御するため、複数の電子制御ユニットからなる制御システム60が設けられている。制御システム60を構成する電子制御ユニットとして、前述したエンジン制御ユニットCU1、変速機制御ユニットCU2、バッテリ制御ユニットCU3およびモータ制御ユニットCU4がある。また、制御システム60を構成する電子制御ユニットとして、各制御ユニットCU1~CU4に制御信号を出力する車両制御ユニットCU5がある。これらの制御ユニットCU1~CU5は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワーク61を介して互いに通信可能に接続されている。車両制御ユニットCU5は、各種制御ユニットCU1~CU4や後述する各種センサからの入力情報に基づき、パワートレイン14の作動目標を設定する。そして、パワートレイン14の作動目標に応じた制御信号を生成し、これらの制御信号を各種制御ユニットに対して出力する。
【0019】
車両制御ユニットCU5に接続されるセンサとして、車両11の走行速度である車速を検出する車速センサ62があり、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ63があり、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ64がある。また、車両制御ユニットCU5には、車両前後に作用する車両加速度を検出する加速度センサ65が接続されている。さらに、車両制御ユニットCU5には、制御システム60を起動する際に運転者によって操作されるスタートスイッチ66が接続されている。
【0020】
図3は各制御ユニットCU1~CU5の基本構造を簡単に示した図である。
図3に示すように、各制御ユニットCU1~CU5は、プロセッサ70およびメモリ71等が組み込まれたマイクロコントローラ72を有している。メモリ71には所定のプログラムが格納されており、プロセッサ70によってプログラムの命令セットが実行される。プロセッサ70とメモリ71とは、互いに通信可能に接続されている。なお、図示する例では、マイクロコントローラ72に1つのプロセッサ70と1つのメモリ71とが組み込まれているが、これに限られることはなく、マイクロコントローラ72に複数のプロセッサ70を組み込んでも良く、マイクロコントローラ72に複数のメモリ71を組み込んでも良い。
【0021】
また、各制御ユニットCU1~CU5には、入力変換回路73、駆動回路74、通信回路75、外部メモリ76および電源回路77等が設けられている。入力変換回路73は、各種センサから入力される信号を、マイクロコントローラ72に入力可能な信号に変換する。駆動回路74は、マイクロコントローラ72から出力される信号に基づき、前述したバルブユニット45等のアクチュエータに対する駆動信号を生成する。通信回路75は、マイクロコントローラ72から出力される信号を、他の制御ユニットに向けた通信信号に変換する。また、通信回路75は、他の制御ユニットから受信した通信信号を、マイクロコントローラ72に入力可能な信号に変換する。さらに、電源回路77は、マイクロコントローラ72、入力変換回路73、駆動回路74、通信回路75および外部メモリ76等に対し、安定した電源電圧を供給する。また、不揮発性メモリ等の外部メモリ76には、非通電時にも保持すべきデータ等が記憶される。
【0022】
[走行モード]
図4はEVモードの実行状況を示す図であり、
図5Aおよび
図5BはHEVモードの実行状況を示す図である。制御システム60は、走行モードとして、EV(Electric Vehicle)モードと、HEV(Hybrid Electric Vehicle)モードと、を有している。後述するように、EVモードとは、エンジン12を停止させてモータジェネレータ15を作動させる走行モードであり、HEVモードとは、エンジン12およびモータジェネレータ15を作動させる走行モードである。また、本明細書において、HEVモードが第1走行モードであり、EVモードが第2走行モードである。
【0023】
図4に示すように、EVモードを実行する際に、制御システム60は、前進クラッチ24を解放状態に制御し、エンジン12を停止状態に制御し、かつモータジェネレータ15を力行状態(回転状態)に制御する。これにより、
図4に白抜きの矢印で示すように、力行トルクを後輪19rに伝達することができ、モータジェネレータ15を用いて車両11を走行させることができる。なお、車両11を減速させる際には、モータジェネレータ15が回生発電状態に制御され、車両11の運動エネルギーが電気エネルギーに変換されて高電圧バッテリ52に蓄えられる。
【0024】
また、制御システム60は、HEVモードとして、モータジェネレータ15を力行状態に制御するアシストモードと、モータジェネレータ15を発電状態に制御する発電走行モードと、を有している。
図5Aに示すように、アシストモードを実行する際に、制御システム60は、前進クラッチ24を締結状態に制御し、エンジン12を運転状態に制御し、かつモータジェネレータ15を力行状態(回転状態)に制御する。これにより、
図5Aに白抜きの矢印で示すように、エンジントルクおよび力行トルクを後輪19rに伝達することができ、エンジン12およびモータジェネレータ15を用いて車両11を走行させることができる。なお、車両11を減速させる際には、モータジェネレータ15が回生発電状態に制御され、車両11の運動エネルギーが電気エネルギーに変換されて高電圧バッテリ52に蓄えられる。
【0025】
図5Bに示すように、発電走行モードを実行する際に、制御システム60は、前進クラッチ24を締結状態に制御し、エンジン12を運転状態に制御し、かつモータジェネレータ15を発電状態(回転状態)に制御する。これにより、
図5Bに白抜きの矢印で示すように、エンジントルクを後輪19rに伝達するとともに、エンジントルクをモータジェネレータ15に伝達することができる。すなわち、エンジントルクを用いてモータジェネレータ15を発電状態に作動させつつ、エンジントルクを用いて車両11を走行させることができる。
【0026】
ここで、
図6はEVモードおよびHEVモードの実行領域の一例を示す走行モードマップである。
図6に示すように、走行モードマップには、EVモードとHEVモードとの実行領域を区画する境界線L1が設定されている。なお、
図6に示される要求駆動力は、制御システム60からパワートレイン14に対して要求される駆動力である。制御システム60は、例えば、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度に基づいて要求駆動力を設定することが可能である。つまり、アクセル開度が増加するにつれて要求駆動力は大きく設定され、アクセル開度が減少するにつれて要求駆動力は小さく設定される。
【0027】
図6に矢印Aで示すように、HEVモードにおいて境界線L1を下回るように要求駆動力や車速が低下すると、制御システム60は、走行モードをHEVモードからEVモードに切り替える。すなわち、アシストモードで走行していた場合には、アシストモードからEVモードに切り替えられ、発電走行モードで走行していた場合には、発電走行モードからEVモードに切り替えられる。一方、
図6に矢印Bで示すように、EVモードにおいて境界線L1を上回るように要求駆動力や車速が上昇すると、走行モードがEVモードからHEVモードに切り替えられる。
【0028】
前述したように、HEVモードとしてアシストモードおよび発電走行モードがあり、アシストモードと発電走行モードとの何れを実行するかについては、高電圧バッテリ52のSOC等に基づき決定される。例えば、境界線L1を上回るように要求駆動力や車速が上昇する際に、高電圧バッテリ52のSOCが所定値を上回っている場合には、走行モードがEVモードからアシストモードに切り替えられる。また、境界線L1を上回るように要求駆動力や車速が上昇する際に、高電圧バッテリ52のSOCが所定値を下回っている場合には、走行モードがEVモードから発電走行モードに切り替えられる。
【0029】
[走行モード切替制御(フローチャート)]
続いて、HEVモードからEVモードに走行モードを切り替える走行モード切替制御について説明する。
図7は走行モード切替制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図8は変速比と第1時間T1との関係の一例を示す図である。さらに、
図9は車両加速度と第2時間T2との関係の一例を示す図であり、
図10はエンジントルクと第3時間T3との関係の一例を示す図である。なお、
図7のフローチャートに示される各ステップには、制御システム60を構成する1つまたは複数のプロセッサ70によって実行される処理が示されている。また、
図7に示される走行モード切替制御は、運転者によってスタートスイッチ66が操作され、車両制御ユニットCU5等からなる制御システム60が起動された後に、制御システム60によって所定周期毎に実行される制御である。
【0030】
図7に示すように、ステップS10において、制御システム60は、HEVモードの実行中であるか否かを判定する。つまり、ステップS10において、制御システム60は、アシストモードまたは発電走行モードの実行中であるか否かを判定する。ステップS10において、HEVモードの実行中であると判定されると、制御システム60は、ステップS11に進み、第1移行フラグがON設定されているか否かを判定する。ここで、第1移行フラグとは、HEVモードからEVモードへの切り替えが決定されたときにON設定される制御フラグである。つまり、第1移行フラグは、
図6に符号x1で示すように、HEVモードにおいて要求駆動力や車速が低下することにより、車両11の走行状態が境界線L1を下回るタイミングでON設定される制御フラグである。
【0031】
ステップS11において、第1移行フラグがON設定されていると判定されると、制御システム60は、ステップS12に進み、移行時間Ttを設定する。つまり、ステップS12において、制御システム60は、変速比、車両加速度およびエンジントルクに基づき第1時間T1、第2時間T2および第3時間T3を設定し、これらの時間T1~T3を加算することで移行時間Ttを設定する。ここで、
図8に示すように、無段変速機構22の変速比がロー側になるにつれて、移行時間Ttを構成する第1時間T1は長く設定される。また、
図9に示すように、車両加速度が加速側(+側)に大きくなるにつれて第2時間T2は短く設定され、車両加速度が減速側(-側)に大きくなるにつれて第2時間T2は短く設定される。つまり、
図9に示すように、車両加速度の絶対値が小さくなるにつれて、移行時間Ttを構成する第2時間T2は長く設定される。さらに、
図10に示すように、エンジントルクが大きくなるにつれて、移行時間Ttを構成する第3時間T3は長く設定される。
【0032】
また、無段変速機構22の変速比は変速機制御ユニットCU2によって算出され、エンジントルクはエンジン制御ユニットCU1によって算出され、車両加速度は加速度センサ65によって検出される。なお、無段変速機構22の変速比は、出力回転速度に対する入力回転速度の比、すなわちセカンダリ軸26の回転速度に対するプライマリ軸23の回転速度の比である。つまり、変速比がロー側に変化するということは、変速比の値が大きくなることを意味しており、変速比がハイ側に変化するということは、変速比の値が小さくなることを意味している。
【0033】
図7に示すように、ステップS12において移行時間Ttが設定されると、制御システム60は、ステップS13に進み、モード切替処理を実行する。つまり、ステップS13において、制御システム60は、前進クラッチ24を締結状態に制御し、エンジントルクを減少させ、かつモータジェネレータ15の力行トルクを増加させる。そして、制御システム60は、ステップS14に進み、モード切替処理を開始してから移行時間Ttが経過したか否かを判定する。ステップS14において、移行時間Ttが経過していないと判定されると、制御システム60は、ステップS13に戻り、モード切替処理の実行を継続する。一方、ステップS14において、移行時間Ttが経過したと判定されると、制御システム60は、ステップS15に進み、前進クラッチ24を解放状態に制御するとともに、EVモードへの切替完了を意味する第2移行フラグをON設定する。
【0034】
このように、制御システム60は、変速比、車両加速度およびエンジントルクに基づき移行時間Ttを設定し、この移行時間Ttに亘ってモード切替処理を実行することにより、走行モードをHEVモードからEVモードに切り替えている。つまり、変速比、車両加速度およびエンジントルクに基づき設定される移行時間Ttに亘り、前進クラッチ24を締結状態に制御する。そして、前進クラッチ24が締結された状態のもとで、エンジントルクを減少させ、かつモータジェネレータの力行トルクを増加させる。これにより、前進クラッチ24を解放する際のショックを低減することができ、運転者に違和感を与えることなくHEVモードからEVモードに切り替えることができる。
【0035】
[走行モード切替制御(タイミングチャート)]
[実施例1]
続いて、実施例1として、前述した走行モード切替制御をタイミングチャートに沿って説明する。
図11は実施例1として走行モード切替制御の実行状況を示すタイミングチャートである。なお、
図11において、「Tcl」は前進クラッチ24によって伝達されるクラッチトルクであり、「Tpri」はプライマリプーリ20への入力トルクであり、「Tmg」はモータトルク(力行トルク,発電トルク)である。
【0036】
図11に示すように、時刻t11においては、HEVモードである発電走行モードが実行されるため(符号a1)、前進クラッチ24が締結状態に制御され(符号b1)、エンジントルクつまりクラッチトルクTclが引き上げられ(符号c1)、モータトルクTmgが発電側に引き上げられる(符号d1)。続いて、時刻t12で示すように、第1移行フラグがON設定されると(符号e1)、前進クラッチ24を締結状態に制御したまま(符号b2)、エンジントルクつまりクラッチトルクTclが引き下げられ(符号c2)、モータトルクTmgが力行側に引き上げられる(符号d2)。なお、
図11に示した例では、発電走行モードであることから、符号d2で示すように、モータジェネレータ15の発電トルクを減少させた後に、モータジェネレータ15の力行トルクを増加させている。次いで、時刻t13で示すように、移行時間Ttが経過して第2移行フラグがON設定されると(符号f1)、前進クラッチ24が解放状態に制御され(符号b3)、走行モードがEVモードに切り替えられる(符号a2)。また、前進クラッチ24が解放状態に制御されると(符号b3)、インジェクタ42が燃料カット状態に制御される(符号g1)。
【0037】
このように、移行時間Ttに亘って前進クラッチ24を締結し、エンジントルクを減少させ、かつモータジェネレータ15の力行トルクを増加させる。これにより、前進クラッチ24を解放する際には、エンジントルクつまりクラッチトルクTclを十分に低下させることができ、前進クラッチ24の解放ショックを低減することができる。また、モータジェネレータ15の力行トルクを増加させることから、エンジントルクを減少させた場合であっても、矢印α1で示すように、車両加速度の過度な変動を抑制することができ、運転者に違和感を与えることなく走行モードを切り替えることができる。
【0038】
しかも、
図8に示したように、無段変速機構22の変速比がロー側になるにつれて、エンジントルクを減少させる移行時間Ttが長く設定される。無段変速機構22がロー側に制御される状況とは、エンジントルクが増幅されて後輪19rに伝達される状況であり、クラッチ解放に伴うエンジントルクの遮断が車両加速度を変動させ易い状況である。このような走行状況において移行時間Ttを長く設定することにより、エンジントルクを十分に低下させることができ、前進クラッチ24の解放ショックを低減することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく走行モードを切り替えることができる。
【0039】
また、
図9に示したように、車両加速度の絶対値が小さくなるにつれて、エンジントルクを減少させる移行時間Ttが長く設定される。車両加速度の絶対値が小さい状況とは、クラッチ解放に伴う車両加速度の変化が、運転者に対して違和感を与え易い状況である。このような走行状況において移行時間Ttを長く設定することにより、エンジントルクを十分に低下させることができ、クラッチ解放に伴う車両加速度の変動を抑制することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく走行モードを切り替えることができる。
【0040】
また、
図10に示したように、エンジントルクが大きくなるにつれて、エンジントルクを減少させる移行時間Ttが長く設定される。エンジントルクが大きい状況とは、クラッチ解放によるエンジントルク遮断が車両加速度を変動させ易い状況である。このような走行状況において移行時間Ttを長く設定することにより、エンジントルクを十分に低下させることができ、前進クラッチ24の解放ショックを低減することができる。これにより、運転者に違和感を与えることなく走行モードを切り替えることができる。
【0041】
なお、
図11に示した実施例1では、車両加速度を一定に保持するように、つまりプライマリプーリ20への入力トルクTpriを一定に保持するように、エンジントルクおよびモータトルクを制御しているが、これに限られることはない。例えば、車両加速度を増加させるようにエンジントルクおよびモータトルクを制御しても良く、車両加速度を減少させるようにエンジントルクおよびモータトルクを制御しても良い。
【0042】
[比較例]
図12は比較例として走行モード切替制御の実行状況を示すタイミングチャートである。
図12に示すように、時刻t21においては、HEVモードである発電走行モードが実行されるため(符号a1)、前進クラッチ24が締結状態に制御され(符号b1)、エンジントルクつまりクラッチトルクTclが引き上げられ(符号c1)、モータトルクTmgが発電側に引き上げられる(符号d1)。続いて、時刻t22で示すように、第1移行フラグがON設定されると(符号e1)、前進クラッチ24が解放状態に制御され(符号b2)、走行モードがEVモードに切り替えられる(符号a2)。また、前進クラッチ24が解放状態に制御されると(符号b2)、インジェクタ42が燃料カット状態に制御される(符号g1)。
【0043】
このように、移行時間Ttを用いてエンジントルクおよびモータトルクを制御することなく、第1移行フラグのON設定に伴って前進クラッチ24を解放状態に制御した場合には、クラッチ解放によってクラッチトルクTclが急減することになる(符号c2)。つまり、矢印α2で示すように、クラッチ解放によって車両加速度が急変するため、走行モードの切り替えに伴って運転者に大きな違和感を与えることになる。これに対し、移行時間Ttを用いてエンジントルクおよびモータトルクを制御した場合には、
図11に矢印α1で示すように、車両加速度の過度な変動を抑制することができ、運転者に違和感を与えることなく走行モードを切り替えることができる。
【0044】
[実施例2]
図11に示した例では、発電走行モードからEVモードに走行モードを切り替えているが、これに限られることはなく、アシストモードからEVモードに走行モードを切り替えても良い。ここで、
図13は実施例2として走行モード切替制御の実行状況を示すタイミングチャートである。
【0045】
図13に示すように、時刻t31においては、HEVモードであるアシストモードが実行されるため(符号a1)、前進クラッチ24が締結状態に制御され(符号b1)、エンジントルクつまりクラッチトルクTclが引き上げられ(符号c1)、モータトルクTmgが力行側に引き上げられる(符号d1)。続いて、時刻t32で示すように、第1移行フラグがON設定されると(符号e1)、前進クラッチ24を締結状態に制御したまま(符号b2)、エンジントルクつまりクラッチトルクTclが引き下げられ(符号c2)、モータトルクTmgが力行側に引き上げられる(符号d2)。次いで、時刻t33で示すように、移行時間Ttが経過して第2移行フラグがON設定されると(符号f1)、前進クラッチ24が解放状態に制御され(符号b3)、走行モードがEVモードに切り替えられる(符号a2)。また、前進クラッチ24が解放状態に制御されると(符号b3)、インジェクタ42が燃料カット状態に制御される(符号g1)。
【0046】
このように、移行時間Ttに亘って前進クラッチ24を締結し、エンジントルクを減少させ、かつモータジェネレータ15の力行トルクを増加させる。これにより、前進クラッチ24を解放する際には、エンジントルクつまりクラッチトルクTclを十分に低下させることができ、前進クラッチ24の解放ショックを低減することができる。また、モータジェネレータ15の力行トルクを増加させることから、エンジントルクを減少させた場合であっても、矢印α3で示すように、車両加速度の過度な変動を抑制することができ、運転者に違和感を与えることなく走行モードを切り替えることができる。なお、
図13に示した例においても、移行時間Ttは、変速比、車両加速度およびエンジントルクに基づき設定されている。
【0047】
[パワートレインの他実施形態]
パワートレイン14の構成としては、
図2に示した構成に限られることはなく、他の構成を備えるパワートレインであっても良い。
図14および
図15はパワートレインの他の構成例を示す図である。
【0048】
図14に示すように、エンジン12と後輪19rとは、回転軸等によって構成される動力伝達経路30を介して連結されている。エンジン12と後輪19rとを連結する動力伝達経路30には、前進クラッチ24および無段変速機構22が設けられている。また、前進クラッチ24は、エンジン12と無段変速機構22との間に位置している。さらに、動力伝達経路30を構成するセカンダリ軸26には、ギア列80を介してモータジェネレータ15が連結されている。つまり、モータジェネレータ15は、無段変速機構22の出力側から動力伝達経路30を介して後輪19rに連結されている。このようなパワートレイン81を制御する車両用制御装置であっても、前述した車両用制御装置10と同様に機能させることができる。
図14や前述の
図4に示した例では、エンジン12およびモータジェネレータ15を後輪19rに連結しているが、これに限られることはない。例えば、
図1に示した前輪19fに対し、エンジン12およびモータジェネレータ15を連結する構成であっても良い。この場合には、前輪19fが第1車輪として機能し、後輪19rが第2車輪として機能することになる。
【0049】
図15に示すように、後輪(第1車輪)90rには、動力伝達経路91を介してモータジェネレータ15が連結されている。また、前輪(第2車輪)90fには、回転軸等によって構成される動力伝達経路92を介してエンジン12が連結されている。エンジン12と前輪90fとを連結する動力伝達経路92には、前進クラッチ24および無段変速機構22が設けられている。また、動力伝達経路92上の前進クラッチ24は、エンジン12と無段変速機構22との間に位置している。このように、図示するパワートレイン93においては、エンジン12が前輪90fに連結される一方、モータジェネレータ15が後輪90rに連結されている。このようなパワートレイン94を制御する車両用制御装置であっても、前述した車両用制御装置10と同様に機能させることができる。なお、エンジン12が後輪90rに連結される一方、モータジェネレータ15が前輪90fに連結される構成であっても良い。この場合には、前輪90fが第1車輪として機能し、後輪90rが第2車輪として機能することになる。また、モータジェネレータ15として、前輪90fまたは後輪90rのハブ内に設けられる所謂インホイールモータを用いても良い。
【0050】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、複数の制御ユニットCU1~CU5によって制御システム60を構成しているが、これに限られることはない。例えば、1つの制御ユニットによって制御システム60を構成しても良い。また、前述の説明では、動力伝達経路30に設けられる変速機構として、一対のプーリ20,21からなる無段変速機構22を用いているが、これに限られることはなく、遊星歯車式や平行軸式の自動変速機構であっても良い。また、前進クラッチ24としては、摩擦クラッチであっても良く、噛合クラッチであっても良い。また、
図11に示した例では、前進クラッチ24の解放後にインジェクタ42を燃料カット状態に制御しているが、これに限られることはなく、前進クラッチ24の解放前にインジェクタ42を燃料カット状態に制御しても良い。
【0051】
図11や
図13に示した例では、移行時間Ttに亘ってエンジントルクおよびモータトルク(力行トルク,発電トルク)を継続的に変化させているが、これに限られることはない。例えば、移行時間Tt内の任意のタイミングにおいて、エンジントルクを減少させても良く、モータジェネレータ15の力行トルクを増加させても良い。この場合であっても、前進クラッチ24が締結された状態のもとで、エンジントルクを減少させ、かつ力行トルクを増加させることができ、前進クラッチ24を解放する際のショックを低減することができる。すなわち、制御システム60は、HEVモードからEVモードに切り替える際に、移行時間Ttに亘って前進クラッチ24を締結し、前進クラッチ24が締結された状態のもとで、エンジン12のトルクを減少させ、かつモータジェネレータ15の力行トルクを増加させている。
【0052】
前述の説明では、移行時間Ttを、変速比、車両加速度およびエンジントルクに基づき設定しているが、これに限られることはない。例えば、移行時間Ttを変速比だけに基づき設定しても良く、移行時間Ttを変速比および車両加速度に基づき設定しても良く、移行時間Ttを変速比およびエンジントルクに基づき設定しても良い。また、移行時間Ttを、変速比、車両加速度およびエンジントルクの少なくとも何れか1つに基づいて設定しても良い。また、
図8~
図10に示した例では、移動時間Ttを構成する各時間T1~T3を連続的に設定しているが、これに限られることはなく、各時間T1~T3を段階的に設定しても良い。さらに、前述の説明では、各時間T1~T3を加算することで移動時間Ttを算出しているが、これに限られることはない。例えば、変速比、車両加速度およびエンジントルクに基づき係数を設定し、基本時間に係数を乗じて移動時間Ttを算出しても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 車両用制御装置
11 車両
12 エンジン
15 モータジェネレータ
19f 前輪(第2車輪)
19r 後輪(第1車輪)
22 無段変速機構(変速機構)
24 前進クラッチ(クラッチ機構)
30 動力伝達経路
60 制御システム
70 プロセッサ
71 メモリ
90f 前輪(第2車輪)
90r 後輪(第1車輪)
92 動力伝達経路
Tt 移行時間