(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】苗マット
(51)【国際特許分類】
A01G 24/46 20180101AFI20250409BHJP
【FI】
A01G24/46
(21)【出願番号】P 2021062561
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 創
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智洋
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】坂垣内 貴保
(72)【発明者】
【氏名】大井戸 直幸
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-156337(JP,A)
【文献】特開平09-074898(JP,A)
【文献】特開2019-146537(JP,A)
【文献】実開昭48-094744(JP,U)
【文献】特開2021-153583(JP,A)
【文献】特開2011-125246(JP,A)
【文献】実開昭54-154211(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0263508(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 24/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子が播種される苗マットであって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有し、根が伸びることを許容する第1構成材を含む複数の構成材で構成されている苗床部と、
前記苗床部に設けられ、前記種子を配置するための複数の播種穴部と
を備え、
前記複数の播種穴部の各々は、前記苗床部の前記第1主面から前記第2主面に向いている所定方向に延びており、
前記苗床部は、前記複数の播種穴部にそれぞれ対応して設けられる複数の根張り部を有し、
前記根張り部は、前記第1構成材で構成され、前記所定方向における前記播種穴部の端部に接続され
、
前記苗床部を構成する前記複数の構成材は、前記第1構成材の剛性よりも高い剛性を有する第2構成材を含み、
前記苗床部において、前記根張り部に対して、前記播種穴部の軸線に対する径方向に隣接する部分は、前記第2構成材で構成される、苗マット。
【請求項2】
種子が播種される苗マットであって、
互いに対向する第1主面および第2主面を有し、根が伸びることを許容する第1構成材を含む複数の構成材で構成されている苗床部と、
前記苗床部に設けられ、前記種子を配置するための複数の播種穴部と
を備え、
前記複数の播種穴部の各々は、前記苗床部の前記第1主面から前記第2主面に向いている所定方向に延びており、
前記苗床部は、前記複数の播種穴部にそれぞれ対応して設けられる複数の根張り部を有し、
前記根張り部は、前記第1構成材で構成され、前記所定方向における前記播種穴部の端部に接続され、
前記苗床部を構成する前記複数の構成材は、前記第1構成材の剛性よりも高い剛性を有する第2構成材を含み、
前記苗床部は、
前記第1主面から前記第2主面に向かって前記第1構成材で構成される第1層と、
前記第2主面から前記第1主面に向かって
前記根張り部を除いて前記第2構成材で構成される第2層と
をさらに有し、
前記播種穴部は、前記第1層に設けられ、
前記根張り部は、前記第2層に設けられる
、苗マット。
【請求項3】
前記根張り部は、前記所定方向に向かって先細りの形状を有する、請求項
2に記載の苗マット。
【請求項4】
前記複数の播種穴部にそれぞれ対応して設けられる複数の貫通孔部をさらに備え、
前記貫通孔部は、前記播種穴部に繋がり、前記苗床部の前記第2主面まで延びており、
前記貫通孔部の孔幅は、前記播種穴部の穴幅より小さく、前記種子の最小径よりも小さい、請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の苗マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗マットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている育苗資材は、硬質層と、苗根貫入容易層とで構成される。硬質層上に苗根貫入容易層が形成される。硬質層は、床上代替材を固結した普通の強度を有する。苗根貫入容易層は、床上代替材を苗根の貫入抵抗を少なくするために軟質にした層である。種子の発根先端は、苗根貫入容易層を伸長し、次いで硬質層に至る。そして、苗根は、硬質層内へ貫入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている育苗資材では、硬質層の剛性によっては、苗根が硬質層に貫入し難い場合がある。換言すれば、硬質層の剛性によっては、硬質層において、根が張り難い可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、剛性の比較的高い構成材を含む場合であっても、種子から伸びる根が張り易い苗マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、苗マットには、種子が播種される。苗マットは、苗床部と、複数の播種穴部とを備える。苗床部は、互いに対向する第1主面および第2主面を有する。苗床部は、根が伸びることを許容する第1構成材を含む複数の構成材で構成されている。複数の播種穴部は、前記苗床部に設けられる。複数の播種穴部には、種子が配置される。前記複数の播種穴部の各々は、前記苗床部の前記第1主面から前記第2主面に向いている所定方向に延びている。前記苗床部は、前記複数の播種穴部にそれぞれ対応して設けられる複数の根張り部を有する。前記根張り部は、前記第1構成材で構成され、前記所定方向における前記播種穴部の端部に接続される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、剛性の比較的高い構成材を含む場合であっても、種子から伸びる根が張り易い苗マットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係る苗マットを示す斜視図である。
【
図2】(a)は、実施形態1に係る苗マットの播種穴部を拡大して示す平面図である。(b)は、(a)のIIB-IIB線に沿った断面図である。
【
図3】(a)は、本発明の実施形態2に係る苗マットの播種穴部を拡大して示す平面図である。(b)は、(a)のIIIB-IIIB線に沿った断面図である。
【
図4】(a)は、本発明の実施形態3に係る苗マットの播種穴部を拡大して示す平面図である。(b)は、(a)のIVB-IVB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図中、理解を容易にするために、三次元直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸を適宜図示している。例えば、X軸およびY軸は、水平方向に略平行であり、Z軸は、鉛直方向に略平行である。
【0010】
(実施形態1)
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態1に係る苗マット100を説明する。
【0011】
まず、
図1を参照して苗マット100を説明する。
図1は、実施形態1に係る苗マット100を示す斜視図である。
図1に示される苗マット100には、複数の種子が播種される。以下、種子を「種子SD」と記載する。種子SDは、例えば、野菜の種子、または、水稲種子である。種子SDから成長した苗は、移植機械の植付爪によって苗マット100から掻き取られ、移植機械によって農地に植え付けられる。例えば、移植機械の植付爪は、種子SDから成長した苗とともに、苗マット100の一部分をブロック状に掻き取る。
【0012】
図1の例では、苗マット100は、略直方体形状(例えば、略矩形平板形状)を有する。苗マット100は、苗床部1と、複数の播種穴部3とを備える。苗床部1は、略直方体形状(例えば、略矩形平板形状)を有する。苗床部1は、第1主面F1および第2主面F2を有する。第1主面F1および第2主面F2は、互いに対向しており、略平行である。例えば、苗床部1の表面と裏面とのうち、第1主面F1は表面に相当し、第2主面F2は裏面に相当する。
【0013】
苗床部1は、複数の構成材で構成されている。苗床部1を構成する複数の構成材の各々は、複数の素材で構成される。なお、構成材が単一の素材で構成されていてもよい。
【0014】
苗床部1を構成する複数の構成材は、根が伸びることを許容する第1構成材を含む。第1構成材の詳細は、後述する。また、苗床部1を構成する複数の構成材は、第1構成材だけでなく、第1構成材の剛性よりも高い剛性を有する第2構成材を含むことが好ましい。この好ましい例によれば、苗マット100全体としての剛性を向上できる。第2構成材の詳細は、後述する。
【0015】
本明細書において、「剛性」とは、物体の硬さの程度を示す性質のことである。従って、「剛性」が高い程、物体は硬く、「剛性」が低い程、物体は柔らかい。「剛性」は、例えば、物体の弾性率によって表される。弾性率が大きい程、物体の剛性が高く、物体は硬い。一方、弾性率が小さい程、物体の剛性が低く、物体は柔らかい。弾性率は、例えば、ヤング率によって表される。ヤング率が大きい程、物体の剛性が高く、物体は硬い。一方、ヤング率が小さい程、物体の剛性が低く、物体は柔らかい。
【0016】
複数の播種穴部3は、苗床部1に設けられる。複数の播種穴部3の各々は、種子SDを配置するための穴部である。従って、複数の播種穴部3の各々には、種子SDが播種される。
【0017】
図1の例では、複数の播種穴部3は、略正方格子状または略矩形格子状に配置される。具体的には、2以上の播種穴部3が第1方向D1に沿って一直線上に配置される。第1方向D1に隣り合う播種穴部3は、間隔Lxをあけて配置される。また、2以上の播種穴部3が第2方向D2に沿って一直線上に配置される。第2方向D2に隣り合う播種穴部3は、間隔Lyをあけて配置される。間隔Lxと間隔Lyとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1方向D1および第2方向D2は、第1主面F1に略平行である。第1方向D1と第2方向D2とは、互いに略直交する。
【0018】
次に、
図2(a)および
図2(b)を参照して、播種穴部3を説明する。
図2(a)は、播種穴部3を拡大して示す平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のIIB-IIB線に沿った断面図である。
【0019】
図2(b)に示すように、播種穴部3は、苗床部1の第1主面F1から第2主面F2に向かってに延びている。具体的には、複数の播種穴部3の各々は、苗床部1の第1主面F1から所定方向D12に延びている。所定方向D12は、苗床部1の第1主面F1から第2主面F2に向いている。
図2(b)の例では、所定方向D12は、第1主面F1および第2主面F2に略直交する。従って、所定方向D12は、
図1に示す第1方向D1および第2方向D2に略直交する。
【0020】
実施形態1では、播種穴部3の穴幅d3は、所定方向D12に向かって一定である。本明細書において、穴幅d3が一定であることは、穴幅d3が略一定であることを含む概念である。穴幅d3は、所定方向D12に直交する方向における播種穴部3の長さを示す。穴幅d3は、種子SDの最小径よりも大きいことが好ましい。例えば、細長い種子SD(例えばキュウリ)において、「種子SDの最小径<穴幅d3<種子SDの最大径」である場合にも、播種穴部3に種子SDを容易に配置できる。なお、例えば、穴幅d3は、種子SDの最大径よりも大きくてもよい。この場合も、播種穴部3に種子SDを容易に配置できる。
【0021】
また、播種穴部3は略柱体形状を有する。具体的には、播種穴部3は、壁面WLと、壁面WLに囲まれた空間SP3とを有する。壁面WLは略筒面である。従って、空間SP3は略柱体形状を有する。播種穴部3は、播種穴部3の軸線AXに対して線対称である。軸線AXは、所定方向D12に略平行である。
図2(b)の例では、軸線AXは、播種穴部3の中心を通る中心線である。本明細書では、軸線AXに対する径方向RDを適宜使用して説明を行う。径方向RDは、軸線AXに対して略直交する方向を示す。
【0022】
図2(a)および
図2(b)の例では、播種穴部3は略円柱形状を有する。従って、壁面WLは略円筒面である。そして、空間SP3は略円柱形状を有する。なお、播種穴部3に種子SDを配置できる限りは、播種穴部3の形状は特に限定されない。例えば、播種穴部3および空間SP3が略角柱形状を有していてもよい。例えば、平面視における播種穴部3の形状は、対称形状であってもよいし、非対称形状であってもよい。対称形状は、例えば、略円形、略多角形、または、略楕円形である。本明細書において、平面視は、所定方向D12から対象物を視ることを示す。例えば、播種穴部3および空間SP3が、略錐体形状(例えば、略円錐形状または略角錐形状)、または、略錐台形状(例えば、略円錐台形状または略角錐台形状)を有していてもよい。
【0023】
種子SDは、播種穴部3の底部30に配置される。底部30は、所定方向D12における播種穴部3の端部である。
【0024】
苗床部1は、根張り部6を有する。具体的には、苗床部1は、複数の根張り部6を有する。そして、複数の根張り部6は、
図1に示す複数の播種穴部3にそれぞれ対応して設けられる。根張り部6は、根が伸びることを許容する第1構成材で構成される。第1構成材は、例えば、少なくとも有機質繊維資材を含む。有機質繊維資材は素材の一例である。有機質繊維資材とは、有機物によって構成される繊維材料のことである。有機質繊維資材は、例えば、ココピート、ピートモス、または、籾殻である。また、第1構成材は、有機質繊維資材に加えて、例えば、バインダー(凝固剤)、土壌改良資材、肥料、および、土のうちの少なくとも1つの素材をさらに含んでいてもよい。バインダーは、例えば、ラテックス、または、ポリビニルアルコールである。
【0025】
根張り部6は、播種穴部3の底部30に接続される。従って、底部30に配置された種子SDから生長する根が根張り部6に進入し易く、さらに根張り部6において根が伸びやすい。すなわち、実施形態1によれば、苗マット100が剛性の比較的高い構成材(具体的には第2構成材)を含む場合であっても、根張り部6において、底部30に配置された種子SDから伸びる根が張り易い。本明細書において、「剛性の比較的高い構成材」とは、第1構成材の剛性よりも高い剛性を有する構成材のことである。
【0026】
特に、実施形態1では、根張り部6の上端部60の一部60aが、播種穴部3の底部30を構成する。根張り部6の上端部60は、所定方向D12の反対方向D21における根張り部6の端部である。また、根張り部6の上端部60の幅d6は、播種穴部3の穴幅d3よりも大きいことが好ましい。この好ましい例によれば、種子SDから伸びる根が容易に根張り部6に進入できる。幅d6は、所定方向D12に直交する方向における上端部60の長さを示す。なお、根張り部6の上端部60の幅d6は、播種穴部3の穴幅d3と略同じでもよい。この場合は、根張り部6の上端部60が、播種穴部3の底部30を構成する。なお、幅d6は穴幅d3以上であることが好ましいが、幅d6は穴幅d3よりも小さくてもよい。
【0027】
また、実施形態1では、苗床部1において、根張り部6に対して径方向RDに隣接する部分は、第1構成材の剛性よりも高い剛性を有する第2構成材で構成されることが好ましい。この好ましい例によれば、種子SDの根が張らなくてもよい部分の剛性が高くすることで、苗マット100全体の剛性を高くすることができる。
【0028】
具体的には、
図1および
図2(b)に示すように、実施形態1では、苗床部1は、第1層11と、第2層12とをさらに有することが好ましい。なお、
図2(b)では、理解の容易のために、第1層11と根張り部6との境界を、便宜上、破線で示している。
【0029】
第1層11は、第1主面F1から第2主面F2に向かって第1構成材で構成される。つまり、第1層11は、第2主面F2に対して、所定方向D12の反対方向D21に離隔している。
図2(b)の例では、反対方向D21における第1層11の表面が第1主面F1である。第1構成材は根が伸びることを許容する。そして、播種穴部3は第1層11に設けられる。第2層12は、第2主面F2から第1主面F1に向かって第2構成材で構成される。つまり、第2層12は、第1主面F1に対して、所定方向D12に離隔している。
図2(b)の例では、所定方向D12における第2層12の表面が第2主面F2である。そして、根張り部6は第2層12に設けられる。また、第2層12を構成する第2構成材は、第1構成材の剛性よりも高い剛性を有する。
【0030】
従って、第1層11の剛性は第2層12の剛性よりも低い。つまり、第1層11は第2層12よりも柔らかい。従って、植付爪によって苗マット100から苗を掻き取る際に、第1層11は、第1層11への植付爪の進入に起因する衝撃を緩和できる。加えて、第2層12の剛性は第1層11の剛性よりも高い。つまり、第2層12は第1層11よりも硬い。従って、植付爪によって苗マット100から苗を掻き取る際に、第2層12は、苗マット100の変形を抑制して、植付爪による苗の掻き取りを円滑にする。
【0031】
また、第1層11の構成材および根張り部6の構成材は、第1構成材であり、同じ構成材である。従って、第1層11の構成材および根張り部6の構成材が異なる場合と比較して、苗マット100の製造が容易である。例えば、まず、第2構成材を容器に敷設して、第2層12を形成する。容器は、例えば、上部が開口した略直方体形状を有する。次に、容器中の第2層12に、複数の根張り部6をそれぞれ配置する複数の穴10を形成する。次に、容器において、第2層12上に第1構成材を敷設することで、第1構成材で構成される複数の根張り部6および第1層11が形成される。次に、第1層11において、複数の根張り部6の上方にそれぞれ複数の播種穴部3を形成する。
【0032】
特に、実施形態1では、根張り部6は、所定方向D12に向かって先細りの形状を有することが好ましい。この好ましい例によれば、苗マット100の製造がさらに容易である。理由は、この好ましい例では、根張り部6を配置するための穴10を所定方向D12に向かって先細りの形状を有すればよいので、根張り部6を配置する穴10を第2層12に容易に形成できるからである。なお、穴10の形状によって、根張り部6の形状が定まる。
【0033】
具体的には、根張り部6は、所定方向D12に向かって先細りの略錐体形状を有する。
図2(b)の例では、根張り部6は、略円錐形状を有する。なお、根張り部6が第1構成材で形成される限りにおいて、根張り部6の形状は特に限定されない。根張り部6は、略錐体形状の他の例として、略角錐形状を有していてもよいし、例えば、略錐台形状(例えば、略円錐台形状または略角錐台形状)を有していてもよい。
【0034】
引き続き
図2(b)を参照して、第1構成材および第2構成材の一例を説明する。第1構成材は、例えば、少なくとも、有機質繊維資材およびバインダーを含む。バインダーは有機質繊維資材を固める。第2構成材は、例えば、少なくとも、特定の素材およびバインダーを含む。バインダーは特定の素材を固める。第2層12における単位体積当たりのバインダーの含有量は、第1層11における単位体積当たりのバインダーの含有量よりも多い。従って、第2層12を構成する第2構成材の剛性は、第1層11を構成する第1構成材の剛性よりも高い。つまり、第2層12の剛性は第1層11の剛性よりも高い。例えば、第2層12を構成する第2構成材の弾性率は、第1層11を構成する第1構成材の弾性率よりも大きい。つまり、第2層12の弾性率は、第1層11の弾性率よりも大きい。
【0035】
なお、第2構成材を構成する「特定の素材」は、例えば、有機質繊維資材であってもよい。この場合、第1構成材を構成する有機質繊維資材と第2構成材を構成する有機質繊維資材とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2構成材を構成する「特定の素材」は、有機質繊維資材と異なる素材であってもよい。なお、第2構成材は、単一の素材によって構成されていてもよい。この場合、第2構成材は、例えば、コルクまたは石膏である。
【0036】
引き続き
図2(b)を参照して、苗マット100の詳細を説明する。苗床部1は厚みtを有する。具体的には、第1層11は厚みt1を有する。第2層12は厚みt2を有する。厚みtは、苗床部1の所定方向D12の長さを示す。厚みt1は、第1層11の所定方向D12の長さを示す。厚みt2は、第2層12の所定方向D12の長さを示す。
【0037】
図2(b)の例では、第1層11の厚みt1と第2層12の厚みt2とは、略等しい。ただし、第1層11の厚みt1と第2層12の厚みt2とは、異なっていてもよい。
【0038】
播種穴部3は、第1主面F1からの深さDP3を有する。深さDP3は、所定方向D12における播種穴部3の長さを示す。播種穴部3の深さDP3は、苗床部1の厚みtよりも小さい。従って、播種穴部3は苗床部1を貫通していない。
図2(b)の例では、播種穴部3の深さDP3は第1層11の厚みt1と略等しい。ただし、深さDP3と厚みt1とが異なっていてもよい。
【0039】
また、根張り部6は、第2主面F2からの高さDP6を有する。高さDP6は、所定方向D12における根張り部6の長さを示す。根張り部6の高さDP6は、苗床部1の厚みtよりも小さい。
図2(b)の例では、根張り部6の高さDP6は第2層12の厚みt2と略等しい。ただし、高さDP6と厚みt2とが異なっていてもよい。
【0040】
さらに、
図2(b)の例では、播種穴部3の深さDP3と根張り部6の高さDP6とは、略等しい。ただし、深さDP3と高さDP6とが異なっていてもよい。
【0041】
(実施形態2)
図1および
図3を参照して、本発明の実施形態2に係る苗マット100Aを説明する。実施形態2に係る苗マット100Aが播種穴部3に対する貫通孔部8を備える点で、実施形態2は実施形態1と主に異なる。実施形態2に係る苗マット100Aの全体構成は、
図1に示す実施形態1に係る苗マット100の全体構成と同様である。従って、実施形態2の説明において、
図1を適宜参照する。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0042】
図3(a)は、実施形態2に係る苗マット100Aの播種穴部3を拡大して示す平面図である。
図3(b)は、
図3(a)のIIIB-IIIB線に沿った断面図である。
図3(a)および
図3(b)に示すように、苗マット100は、貫通孔部8をさらに備える。具体的には、苗マット100Aは、複数の貫通孔部8を有する。そして、複数の貫通孔部8は、
図1に示す複数の播種穴部3(複数の根張り部6)にそれぞれ対応して設けられる。
【0043】
図3(b)に示すように、貫通孔部8は貫通空間SP8を有する。また、貫通孔部8は、播種穴部3に繋がり、第2主面F2まで延びる。従って、実施形態2によれば、貫通孔部8を通して、苗マット100Aの透水性を向上できる。例えば、播種穴部3への潅水時に、貫通孔部8を通して、過剰な水分を播種穴部3から苗マット100Aの外部へ排出できる。従って、播種穴部3において種子SDが浸水することを抑制できる。その結果、種子SDの発芽率を向上できる。また、貫通孔部8によって、苗マット100Aの通気性をさらに向上できる。
【0044】
具体的には、貫通孔部8は、播種穴部3よりも苗床部1の第1主面F1から離隔した位置に設けられる。そして、貫通孔部8は、播種穴部3の底部30に繋がる。さらに、貫通孔部8は、播種穴部3の底部30から苗床部1の第2主面F2まで延びている。なお、貫通孔部8が播種穴部3から第2主面F2まで延びている限りにおいては、貫通孔部8と播種穴部3との接続箇所は特に限定されない。例えば、貫通孔部8が、播種穴部3の壁面WLから第2主面F2まで延びていてもよい。
【0045】
また、
図3(b)の例では、貫通孔部8の孔幅d8は、播種穴部3の穴幅d3よりも小さい。具体的には、貫通孔部8の孔幅d8は、播種穴部3の底部30の幅よりも小さい。なお、孔幅d8は、所定方向D12に直交する方向における貫通孔部8の長さを示す。また、底部30の幅は、所定方向D12に直交する方向における底部30の長さを示す。
【0046】
さらに、貫通孔部8の孔幅d8は、種子SDの最小径よりも小さい。従って、種子SDが貫通孔部8の貫通空間SP8に入り込むことを抑制できる。貫通孔部8の孔幅d8は、種子SDの最小径の1/2以下であることが好ましい。この好ましい例によれば、種子SDが貫通孔部8の貫通空間SP8に入り込むことを、より効果的に抑制できる。
【0047】
さらに、貫通孔部8は、所定方向D12に向かって略直線状に延びている。また、貫通孔部8は、軸線AX上に配置され、軸線AXに沿って延びている。なお、貫通孔部8が播種穴部3から第2主面F2まで延びている限りにおいては、貫通孔部8の形状は特に限定されない。例えば、平面視における貫通孔部8の形状は、対称形状であってもよいし、非対称形状であってもよい。対称形状は、例えば、略円形、略多角形、または、略楕円形である。
【0048】
(実施形態3)
図1および
図4を参照して、本発明の実施形態3に係る苗マット100Bを説明する。実施形態3に係る苗マット100Bの第1層11Aの構成材が根張り部6の構成材と異なる点で、実施形態3は実施形態1と主に異なる。実施形態3に係る苗マット100Bの全体構成は、
図1に示す実施形態1に係る苗マット100の全体構成と同様である。従って、実施形態3の説明において、
図1を適宜参照する。以下、実施形態3が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0049】
図4(a)は、実施形態3に係る苗マット100Bの播種穴部3を拡大して示す平面図である。
図4(b)は、
図4(a)のIVB-IVB線に沿った断面図である。
図4(b)に示すように、苗マット100Bは第1層11Aおよび第2層12を備える。第1層11Aを構成する構成材は、根張り部6を構成する構成材と異なる。具体的には、第1層11Aの構成材は、第3構成材である。根張り部6の構成材は、第1構成材である。第3構成材と第1構成材とは異なる。
【0050】
実施形態3によれば、第1層11Aの構成材が根張り部6の構成材と異なる場合であって、苗マット100Bが剛性の比較的高い構成材(具体的には第2構成材)を含む場合であっても、根張り部6において、播種穴部3に配置された種子SDから伸びる根が張り易い。
【0051】
第3構成材は、例えば、少なくとも、特定の素材およびバインダーを含む。バインダーは特定の素材を固める。第2層12における単位体積当たりのバインダーの含有量は、第1層11Aにおける単位体積当たりのバインダーの含有量よりも多い。従って、第2層12を構成する第2構成材の剛性は、第1層11Aを構成する第3構成材の剛性よりも高い。つまり、第2層12の剛性は、第1層11Aの剛性よりも高い。例えば、第2層12を構成する第2構成材の弾性率は、第1層11Aを構成する第3構成材の弾性率よりも大きい。つまり、第2層12の弾性率は、第1層11Aの弾性率よりも大きい。
【0052】
なお、第3構成材を構成する「特定の素材」は、例えば、有機質繊維資材であってもよい。この場合、第3構成材を構成する有機質繊維資材と第2構成材を構成する有機質繊維資材とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第3構成材を構成する「特定の素材」は、有機質繊維資材と異なる素材であってもよい。なお、第3構成材は、単一の素材によって構成されていてもよい。この場合、第3構成材は、例えば、不織布である。
【0053】
また、実施形態3において、根張り部6を構成する第1構成材はバインダーを含まなくてもよい。
【0054】
ここで、実施形態3に係る苗マット100Bは、
図3を参照して説明した複数の貫通孔部8をさらに備えていてもよい。
【0055】
また、実施形態1~実施形態3では、一例として、苗マット100、100A、100Bが、第1層11および第2層12を備えていた。ただし、苗床部1が根張り部6を有している限りにおいては、本発明の苗マットは、単一の層から構成されていてもよいし、3以上の複数の層から構成されていてもよい。
【0056】
以上、図面を参照して本発明の実施形態および実施例について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態および実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0057】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、苗マットに関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0059】
1 苗床部
3 播種穴部
6 根張り部
8 貫通孔部
11 第1層
12 第2層
100、100A、100B 苗マット
F1 第1主面
F2 第2主面
SD 種子