IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤンマーホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-廃熱発電システム 図1
  • 特許-廃熱発電システム 図2
  • 特許-廃熱発電システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】廃熱発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 27/02 20060101AFI20250409BHJP
   F01D 25/18 20060101ALI20250409BHJP
【FI】
F01K27/02 Z
F01D25/18 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021112232
(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公開番号】P2023008563
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 健一
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰右
(72)【発明者】
【氏名】岩見 拓馬
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-127060(JP,A)
【文献】特開2017-053254(JP,A)
【文献】特開2019-082180(JP,A)
【文献】特開2001-355955(JP,A)
【文献】特開2002-054852(JP,A)
【文献】特開2000-142090(JP,A)
【文献】国際公開第2012/120556(WO,A1)
【文献】特表2008-522081(JP,A)
【文献】国際公開第2012/054049(WO,A1)
【文献】特表2011-503405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/00
B60H 1/00
F25B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃熱を用いて発電を行うものであり、冷媒を循環させる冷媒回路内で冷媒と共に潤滑用のオイルを循環させる廃熱発電システムであって、
廃熱によって冷媒を加熱し、冷媒を気相化させる蒸発器と、
前記蒸発器で気相化された冷媒を膨張させる膨張機と、
前記膨張機に接続され、膨張する冷媒から動力を発生させて発電を行う発電機とを備えており、
前記蒸発器は、前記冷媒回路内で、互いに並列に接続されたメイン蒸発器とサブ蒸発器とを有し、
前記膨張機と前記メイン蒸発器を接続する冷媒配管と前記メイン蒸発器の冷媒入口側と前記サブ蒸発器の冷媒入口側を接続する冷媒配管とが並列に接続されていることを特徴とする廃熱発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の廃熱発電システムであって、
前記メイン蒸発器は、その内部で冷媒を下から上に流すものであり、
前記サブ蒸発器は、その内部で冷媒を上から下に流すものであることを特徴とする廃熱発電システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の廃熱発電システムであって、
前記メイン蒸発器と前記サブ蒸発器とを冷媒入口側で接続する接続配管は、メイン蒸発器の下部とサブ蒸発器の上部とを接続していることを特徴とする廃熱発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の廃熱発電システムであって、
前記接続配管に、開閉可能な第1電磁弁が設けられていることを特徴とする廃熱発電システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の廃熱発電システムであって、
前記サブ蒸発器は、内部における冷媒配管が上下方向に沿って配置される縦置きとされており、
前記接続配管は、入口側よりも出口側の方が高くなっていることを特徴とする廃熱発電システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の廃熱発電システムであって、
前記蒸発器と前記膨張機との間が、前記膨張機内のタービンを回転させるために冷媒を送り込む第1経路と、前記膨張機内のタービンの軸受部分にオイルを供給するための第2経路とに分岐されており、
前記第2経路には、冷媒流量の調整を行うオリフィスが備えられていることを特徴とする廃熱発電システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の廃熱発電システムであって、
前記膨張機と並列に設けられ、前記膨張機を経由させずに冷媒を流すためのバイパス経路と、
前記バイパス経路に設けられた開閉可能な第2電磁弁とを備えており、
前記第2電磁弁を開き、一部の冷媒を前記バイパス経路に流して運転を行うオイル循環モードを有していることを特徴とする廃熱発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設などで発生する廃熱を利用して発電を行う廃熱発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃熱が生じる施設(温泉や工場など)で、廃熱を利用して発電することが広く行われている。特許文献1には、ランキンサイクルを用いて発電を行う廃熱発電システムが開示されている。
【0003】
特許文献1の廃熱発電システムは、廃熱によって作動流体(冷媒)を加熱し、ランキンサイクル内を循環する作動流体によって発電機を稼働させ発電を行うものである。このような熱サイクルを用いた廃熱発電システムでは、熱サイクルに備えられた膨張機においてタービンを回転させ、タービンに接続した発電機にて発電を行う。そのため、膨張機では、タービンの軸受における潤滑が必要となる。通常の潤滑方式としては、熱サイクルの冷媒回路において潤滑用のオイルを充填し、冷媒と共にオイルを循環させる方法がとられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-143533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱サイクルの冷媒回路内でオイルを循環させる方法では、熱サイクル内における蒸発器にオイルが滞留し、オイル循環量が低減するといった課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、蒸発器におけるオイルの滞留を抑制することのできる廃熱発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の廃熱発電システムは、廃熱を用いて発電を行う廃熱発電システムであって、廃熱によって冷媒を加熱し、冷媒を気相化させる蒸発器と、前記蒸発器で気相化された冷媒を膨張させる膨張機と、前記膨張機に接続され、膨張する冷媒から動力を発生させて発電を行う発電機とを備えており、前記蒸発器は、冷媒を循環させる冷媒回路内で、互いに並列に接続されたメイン蒸発器とサブ蒸発器とを有することを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、メイン蒸発器において冷媒を効率的に加熱できる一方、サブ蒸発器では、蒸発器内から冷媒と共にオイルを回収し、蒸発器におけるオイルの滞留を抑制することができる。
【0009】
また、上記廃熱発電システムでは、前記メイン蒸発器は、その内部で冷媒を下から上に流すものであり、前記サブ蒸発器は、その内部で冷媒を上から下に流すものである構成とすることができる。
【0010】
上記の構成によれば、冷媒を上から下に流すサブ蒸発器では、冷媒とオイルも共に容易に排出され、サブ蒸発器の内部にオイルが滞留することはない。
【0011】
上記の構成によれば、冷媒を下から上に流すメイン蒸発器において冷媒を効率的に加熱できる一方、冷媒を上から下に流すサブ蒸発器では、蒸発器内から冷媒と共にオイルを回収し、蒸発器におけるオイルの滞留を抑制することができる。すなわち、冷媒を上から下に流すサブ蒸発器では、冷媒とオイルも共に容易に排出され、サブ蒸発器の内部にオイルが滞留することはない。
【0012】
また、上記廃熱発電システムでは、前記メイン蒸発器と前記サブ蒸発器とを冷媒入口側で接続する接続配管は、メイン蒸発器の下部とサブ蒸発器の上部とを接続している構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、メイン蒸発器の下部に滞留するオイルは、接続配管を通ってサブ蒸発器に移動することができる。メイン蒸発器からサブ蒸発器に移動したオイルは、サブ蒸発器の内部に滞留することはなく、容易に冷媒回路に戻される。
【0014】
また、上記廃熱発電システムは、前記接続配管に、開閉可能な第1電磁弁が設けられている構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、サブ蒸発器を用いなくても、メイン蒸発器に滞留させることなくオイルを冷媒回路に戻せる場合(例えば、冷媒の流速が大きい場合)には、第1電磁弁を閉じて、冷媒をメイン蒸発器のみに循環させることで、蒸発器における熱交換効率を上昇させることができる。
【0016】
また、上記廃熱発電システムでは、前記サブ蒸発器は、内部における冷媒配管が上下方向に沿って配置される縦置きとされており、前記接続配管は、入口側よりも出口側の方が高くなっている構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、サブ蒸発器の冷媒流量が増加し、メイン蒸発器の冷媒流量が低下する(蒸発器における熱交換効率が低下する)といった不具合を抑制できる。
【0018】
また、上記廃熱発電システムは、前記蒸発器と前記膨張機との間が、前記膨張機内のタービンを回転させるために冷媒を送り込む第1経路と、前記膨張機内のタービンの軸受部分にオイルを供給するための第2経路とに分岐されており、前記第2経路には、冷媒流量の調整を行うオリフィスが備えられている構成とすることができる。
【0019】
上記の構成によれば、オリフィスによって第2経路における冷媒流量の調整を行うことで、第2経路における冷媒流量を必要最小限とし、第1経路における冷媒流量の低下(発電効率の低下)を抑制することができる。
【0020】
また、上記廃熱発電システムは、前記膨張機と並列に設けられ、前記膨張機を経由させずに冷媒を流すためのバイパス経路と、前記バイパス経路に設けられた開閉可能な第2電磁弁とを備えており、前記第2電磁弁を開き、一部の冷媒を前記バイパス経路に流して運転を行うオイル循環モードを有している構成とすることができる。
【0021】
上記の構成によれば、オイル循環モードでは、膨張機の回転数を抑制した状態で冷媒およびオイルの温度を上昇させることができ、冷媒回路内でオイルを循環させやすくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の廃熱発電システムは、メイン蒸発器において冷媒を効率的に加熱できる一方、サブ蒸発器によって蒸発器内から冷媒と共にオイルを回収することで、蒸発器におけるオイルの滞留を抑制することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態を示すものであり、廃熱発電システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】廃熱発電システムの外観例を示す斜視図である。
図3】廃熱発電システムにおけるサブ蒸発器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の廃熱発電システム(以下、本システム)の概略構成を示すブロック図である。図2は、本システムの外観例を示す斜視図である。本システムは、ランキンサイクルなどの熱サイクルを用いて発電を行うシステムとなっている。
【0025】
図1に示すように、本システムは、蒸発器11、膨張機12、凝縮器13、レシーバ14、過冷却熱交換機15、ポンプ16、電動弁17および発電機18を構成要素として備えている。本システムでは、冷媒(作動流体)は、ポンプ16、電動弁17、蒸発器11、膨張機12、凝縮器13、レシーバ14および過冷却熱交換機15の順に循環する。
【0026】
蒸発器11は、メイン蒸発器111およびサブ蒸発器112により構成されており、これらは熱サイクルの冷媒回路において並列に接続されている。メイン蒸発器111およびサブ蒸発器112は、温泉や工場などの施設で発生する廃熱によって冷媒を加熱し、冷媒を気相化させる。本システムでは、廃熱は温水や高温ガスなどの熱源媒体によって供給され、冷媒と熱源媒体との間の熱交換によって冷媒が加熱される。
【0027】
膨張機12は、気相化した冷媒を膨張させる。本システムは、膨張する冷媒から動力を発生させ、この動力によって発電を行うものとなっている。具体的には、膨張する冷媒によって膨張機12内でタービンを回転させ、このタービンに接続された発電機18によって発電を行う。
【0028】
凝縮器13は、膨張した冷媒を凝縮し、冷媒を液相化させる。凝縮器13では、冷却水との熱交換によって冷媒の温度が下げられる。但し、本システムでは、凝縮器13において全ての冷媒が液相化するものではなく、凝縮器13の出口において、冷媒は気液混合状態となっている。
【0029】
レシーバ14は、熱サイクル内で気液分離器として機能する。すなわち、レシーバ14の入口で気液混合状態となっている冷媒は、レシーバ14内で液相の冷媒と気相の冷媒とに分離され、レシーバ14の出口からは液相の冷媒のみが排出される。過冷却熱交換機15は、レシーバ14で分離された液相の冷媒を冷却水との熱交換によってさらに冷却し、過冷却液とする。
【0030】
ポンプ16は、熱サイクル内で冷媒を循環させる動力源であり、過冷却熱交換機15の下流側に配置されることで、液相の冷媒に対して作用する。電動弁17は、その開度を調整可能な開度調整弁であり、熱サイクル内での冷媒の流量制御に使用される。すなわち、電動弁17の開度を大きくすれば冷媒の流量を増やすことができ、開度を小さくすれば冷媒の流量を減らすことができる。尚、ポンプ16および電動弁17は、液相の冷媒に対して作用させるため、本システム内での低い位置、少なくとも蒸発器11よりも低い位置に配置されていることが好ましい。
【0031】
また、本システムでは、冷媒中の水分を除去するためのドライヤ19や、冷媒中のゴミを除去するためのフィルタ20が備えられていてもよい。さらに、本システムでは、熱サイクル内の所定の箇所で冷媒の温度や圧力を検知する温度センサや圧力センサが適宜備えられている。例えば、蒸発器11における冷媒流れ方向の下流側には、温度計T1および圧力計P1が配置されており、温度計T1および圧力計P1の出力からは熱サイクル内での冷媒の過熱度が算出される。また、ポンプ16における冷媒流れ方向の上流側には、温度計T2および圧力計P2が配置されており、温度計T2および圧力計P2の出力からは熱サイクル内での冷媒の過冷却度が算出される。無論、本システムでは、温度計T1,T2および圧力計P1,P2意外に温度センサや圧力センサが設けられていてもよい。
【0032】
上述したように、本システムでは、膨張機12においてタービンを回転させ、タービンに接続した発電機18にて発電を行う。このとき、タービンの軸受における潤滑のため、熱サイクルの冷媒回路において潤滑用のオイルが冷媒と共に循環させられる。
【0033】
本システムでは、蒸発器11と膨張機12との間において冷媒回路が第1経路41と第2経路42とに分岐されている。第1経路41は、膨張機12内のタービンを回転させるために冷媒を送り込む経路である。一方、第2経路42は、膨張機12内のタービンの軸受部分にオイルを供給するための経路である。このため、第2経路42の下流側は、膨張機12内のタービンの軸受部分にオイルを供給できる箇所で膨張機12に接続されている。また、膨張機12内でタービンの軸受部分が複数ある場合、第2経路42の下流側は、軸受部分の数に合わせて複数に分岐されていてもよい。
【0034】
尚、第2経路42における冷媒流量が大きくなり、これに伴って第1経路41における冷媒流量が小さくなると、本システムの発電効率が低下する。このため、第2経路42における冷媒流量は必要最小限とすることが好ましく、第2経路42には冷媒流量を調整するためのオリフィスが設けられていることが好ましい。例えば、第2経路42と膨張機12との接続箇所にオリフィスを設け、冷媒流量の調整を行うことが考えられる。
【0035】
また、第2経路42には閉鎖弁31が設けられていると共にPORT1が接続されている。PORT1は冷媒回路にオイルを充填するためのポートであり、PORT1にオイルを充填するときは、閉鎖弁31を閉じることで確実にオイルを膨張機12側へ送り込むことができる。また、本システムの冷媒回路では、電動弁17の下流側において、閉鎖弁32を介してPORT2が接続されている。PORT2は冷媒回路からオイルを回収するためのポートである。さらに、本システムの冷媒回路では、レシーバ14において、閉鎖弁33を介してPORT3が接続されている。PORT3は冷媒回路に冷媒を充填するためのポートである。
【0036】
本システムは、蒸発器11におけるオイルの滞留を抑制することのできる構成に特徴を有するものである。以下、この特徴的構成について詳細に説明する。
【0037】
上述したように、本システムにおける蒸発器11は、メイン蒸発器111とサブ蒸発器112とによって構成されている。蒸発器11は、廃熱によって冷媒を加熱・気相化させるものであるが、その機能は主にメイン蒸発器111によって担われる。一方、サブ蒸発器112は、蒸発器11から冷媒と共にオイルを回収し、蒸発器11におけるオイルの滞留を抑制することを目的として備えられている。
【0038】
メイン蒸発器111においては、冷媒と熱源媒体との間の熱交換を効率よく行うことが求められる。このため、メイン蒸発器111では、図1に示すように、冷媒は下から供給され、上から排出されるようになっており、熱源媒体は冷媒とは逆に上から供給され、下から排出されるようになっている。このとき、蒸発器11がメイン蒸発器111のみからなる(サブ蒸発器112を有しない)構成であれば、気相化されないオイルはメイン蒸発器111の下部に滞留しやすくなる。
【0039】
このため、本システムは、メイン蒸発器111と並列にサブ蒸発器112を備え、サブ蒸発器112からオイルを冷媒回路中へ戻すようになっている。サブ蒸発器112は、冷媒と熱源媒体との間の熱交換が主な目的ではないため、図2に示すように、メイン蒸発器111に比べて容量の小さなものとされており、特に、メイン蒸発器111に比べて低背化されたものとなっている。
【0040】
また、サブ蒸発器112は、内部における冷媒配管が上下方向に沿って配置される縦置きとされており、図1に示すように、冷媒は上から供給され、下から排出されるようになっている。また、熱源媒体は、冷媒とは逆に下から供給され、上から排出されるようになっている。サブ蒸発器112においては、冷媒は下から排出されるため、冷媒と共にオイルも容易に排出され、サブ蒸発器112の内部にオイルが滞留することはない。
【0041】
さらに、メイン蒸発器111とサブ蒸発器112とは、図1に示すように、冷媒入口側において接続配管43を介して接続されている。接続配管43は、メイン蒸発器111の下部とサブ蒸発器112の上部とを接続するように設置されるが、入口側(メイン蒸発器111側)よりも出口側(サブ蒸発器112側)の方が高くなっている(図3参照)。
【0042】
尚、図2に示すように、メイン蒸発器111とサブ蒸発器112とは、その底面の位置が概ね揃えられている。このため、接続配管43における入口-出口間高さは、概ねサブ蒸発器112の高さに一致するものであり、かつ、サブ蒸発器112がメイン蒸発器111に比べて低背化されていることから、メイン蒸発器111の入口-出口間高さに比べると大幅に低くなっている。
【0043】
これにより、メイン蒸発器111の下部に滞留するオイルは、接続配管43を通ってサブ蒸発器112に移動することができる。すなわち、メイン蒸発器111においては入口-出口間高さが大きいため、メイン蒸発器111の出口からオイルを冷媒回路に戻すことは困難であるが、接続配管43における入口-出口間高さはそれほど高くないため、メイン蒸発器111からサブ蒸発器112にオイルを移動させることは比較的容易である。そして、上述したように、メイン蒸発器111からサブ蒸発器112に移動したオイルは、サブ蒸発器112の内部に滞留することはなく、容易に冷媒回路に戻される。
【0044】
尚、サブ蒸発器112を横向き(内部における冷媒配管が水平面内に配置される向き)に配置するなどして、接続配管43における入口-出口間高さを小さくすれば、メイン蒸発器111からサブ蒸発器112へのオイル移動がより生じやすくなる。しかしながら、その場合は、サブ蒸発器112の冷媒流量が増加し、メイン蒸発器111の冷媒流量が低下することで、蒸発器11における熱交換効率が低下する恐れがある。このため、サブ蒸発器112を縦向きの配置とし、接続配管43における入口-出口間高さにはある程度の高さを持たせることが好ましい。
【0045】
尚、図1では図示していないが、接続配管43に電磁弁(第1電磁弁)を設け、本システムの運転状態に基づいて、接続配管43における電磁弁の開閉制御を行うようにしてもよい。すなわち、メイン蒸発器111内のオイルは、メイン蒸発器111内での冷媒の流速が大きくなれば、サブ蒸発器112を用いなくても、メイン蒸発器111に滞留することなく冷媒回路に戻せる場合もありうる。このため、メイン蒸発器111内での冷媒の流速が所定値よりも大きい場合には、接続配管43における電磁弁を閉じ、蒸発器11において冷媒をメイン蒸発器111のみに循環させてもよい。冷媒の循環をメイン蒸発器111のみとすれば、メイン蒸発器111およびサブ蒸発器112の両方に循環させる場合に比べ、蒸発器11における熱交換効率が上昇する。また、メイン蒸発器111内での冷媒の流速は、例えば、熱サイクルにおける冷媒の過熱度などから推定することが可能である。
【0046】
また、メイン蒸発器111内での冷媒の流速が大きく、接続配管43における電磁弁を閉じる場合であっても、電磁弁を長時間閉じたままとすると、サブ蒸発器112において冷媒およびオイルの流れが停止したままとなり、サブ蒸発器112内でオイルが滞留することも起こりうる。これを防止するために、接続配管43における電磁弁は、所定時間(例えば、1時間)の経過ごとに一定時間(例えば、30秒間)開くものとし、サブ蒸発器112において冷媒およびオイルの流れが長時間停止しないようにしてもよい。
【0047】
〔実施の形態2〕
本システムは、発電機18にて発電を行う通常運転モード以外に、冷媒回路でのオイル循環を促進させることを目的とするオイル循環モードを有していてもよい。本実施の形態2では、このオイル循環モードについて説明する。
【0048】
本システムは、オイル循環モードを実施するための構成として、図1に示すバイパス経路44を有している。バイパス経路44は、膨張機12と並列に設けられ、膨張機12を経由させずに冷媒を流すための経路である。また、バイパス経路44には、電磁弁(第2電磁弁)34が設けられている。
【0049】
本システムの通常運転モードでは、電磁弁34が閉じられ、冷媒はバイパス経路44を流れない。この場合は、冷媒回路を流れる全ての冷媒は、膨張機12を経由して発電機18における発電に寄与する。
【0050】
一方、本システムのオイル循環モードでは、電磁弁34が開かれ、一部の冷媒は膨張機12を経由せずにバイパス経路44を流れる。これにより、オイル循環モードでは、膨張機12の回転数を抑制した状態で冷媒およびオイルの温度を上昇させることができる。オイルの温度が上昇すれば、これに伴ってオイルの粘度が低下し、冷媒回路内でオイルを循環させやすくなる。尚、オイル循環モードは、本システムの起動時に暖機運転モードとして実施されることが好適である。
【0051】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0052】
11 蒸発器
111 メイン蒸発器
112 サブ蒸発器
12 膨張機
13 凝縮器
14 レシーバ
15 過冷却熱交換機
16 ポンプ
17 電動弁
18 発電機
34 電磁弁(第2電磁弁)
41 第1経路
42 第2経路
43 接続配管
44 バイパス経路
図1
図2
図3