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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-08
(45)【発行日】2025-04-16
(54)【発明の名称】カラオケ装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20250409BHJP
【FI】
G10K15/04 302D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021138084
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032143
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 潤
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-124062(JP,A)
【文献】特開2006-259089(JP,A)
【文献】特開2019-090936(JP,A)
【文献】特開2010-060844(JP,A)
【文献】特開2019-082571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の楽曲について、複数のバージョンのカラオケ演奏データを記憶するデータ記憶部と、
ある楽曲の一のバージョンが選曲された場合、当該一のバージョンを含む当該ある楽曲の複数のバージョンそれぞれのカラオケ演奏データを再生し、複数の演奏音信号を生成するよう演奏手段を制御する第1の制御部と、
生成された前記複数の演奏音信号のうち、選曲された一のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう前記演奏手段を制御する第2の制御部と、
前記演奏手段による前記一のバージョンに対応する演奏音信号の出力中に、バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、当該演奏音信号が出力されている一の演奏区間の次の演奏区間から、当該一のバージョンに対応する演奏音信号の代わりに、当該一のバージョンとは異なる他のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう前記演奏手段を制御する演奏処理部と、
を有するカラオケ装置。
【請求項2】
前記演奏処理部は、前記他のバージョンに対応する演奏音信号を出力させる場合、前記一のバージョンに対応する演奏音信号の生成を中止するよう前記演奏手段を制御することを特徴とする請求項1記載のカラオケ装置。
【請求項3】
前記演奏手段は、
MIDI形式のカラオケ演奏データを再生し、演奏音信号を生成する第1の音源と、
オーディオ形式のカラオケ演奏データを再生し、演奏音信号を生成する第2の音源と、
を含むことを特徴とする請求項1または2記載のカラオケ装置。
【請求項4】
前記演奏処理部は、音声による前記指示入力に基づいて、前記他のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう前記演奏手段を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のカラオケ装置。
【請求項5】
前記演奏処理部は、前記一のバージョンのカラオケ演奏データに紐付けられたテンポ情報に基づいて、前記他のバージョンの演奏音信号を生成するよう前記演奏手段を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のカラオケ装置。
【請求項6】
前記演奏処理部は、前記一の演奏区間において演奏音信号を出力中は、前記他のバージョンのカラオケ演奏データの再生を、前記次の演奏区間の先頭のタイミングまで早送りし、一時停止するよう前記演奏手段を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のカラオケ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラオケ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ装置でカラオケ歌唱が可能な楽曲の中には、たとえば、通常バージョン、ライブバージョン、生音バージョンのように、複数のバージョンが存在する楽曲がある。そのため、利用者は、カラオケ歌唱を希望するバージョンとは異なるバージョンを選曲してしまう可能性がある。
【0003】
ここで、特許文献1には、複数の音楽作品が存在する同一楽曲を正しく利用者に選曲させるためのユーザインタフェースを備えた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-197549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、カラオケ歌唱を希望するバージョンとは異なるバージョンを利用者が選曲した場合であっても、カラオケ歌唱を希望するバージョンのカラオケ演奏を容易に行うことを可能とする新規なカラオケ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための一の発明は、一の楽曲について、複数のバージョンのカラオケ演奏データを記憶するデータ記憶部と、ある楽曲の一のバージョンが選曲された場合、当該一のバージョンを含む当該ある楽曲の複数のバージョンそれぞれのカラオケ演奏データを再生し、複数の演奏音信号を生成するよう演奏手段を制御する第1の制御部と、生成された前記複数の演奏音信号のうち、選曲された一のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう前記演奏手段を制御する第2の制御部と、前記演奏手段による前記一のバージョンに対応する演奏音信号の出力中に、バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、当該演奏音信号が出力されている一の演奏区間の次の演奏区間から、当該一のバージョンに対応する演奏音信号の代わりに、当該一のバージョンとは異なる他のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう前記演奏手段を制御する演奏処理部と、を有するカラオケ装置である。
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カラオケ歌唱を希望するバージョンとは異なるバージョンを利用者が選曲した場合であっても、カラオケ歌唱を希望するバージョンのカラオケ演奏を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るカラオケ装置を示す図である。
図2】実施形態に係るカラオケ本体を示す図である。
図3】実施形態に係るカラオケ装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
図1から図3を参照して、実施形態に係るカラオケ装置について説明する。
【0010】
==カラオケ装置==
カラオケ装置は、楽曲のカラオケ演奏、及び利用者がカラオケ歌唱を行うための装置である。図1に示すように、本実施形態に係るカラオケ装置Kは、カラオケ本体10、スピーカ20、表示装置30、マイク40、及びリモコン装置50を備える。
【0011】
カラオケ本体10は、選曲された楽曲のバージョンに応じたカラオケ演奏制御、歌詞や背景映像等の表示制御、マイク40を通じて入力された音声信号の処理といった、カラオケ演奏やカラオケ歌唱に関する各種の制御を行う。スピーカ20はカラオケ本体10から出力される信号に基づいて放音するための構成である。表示装置30はカラオケ本体10から出力される信号に基づいて映像や画像を画面に表示するための構成である。マイク40は利用者が行うカラオケ歌唱の歌唱音声をアナログの音声信号に変換してカラオケ本体10に入力するための構成である。リモコン装置50は、カラオケ本体10に対する各種操作をおこなうための装置である。
【0012】
図2に示すように、本実施形態に係るカラオケ本体10は、記憶手段10a、通信手段10b、入力手段10c、演奏手段10d、及び制御手段10eを備える。各構成はインターフェース(図示なし)を介してバスBに接続されている。
【0013】
[記憶手段]
記憶手段10aは、各種のデータを記憶する大容量の記憶装置である。本実施形態において、記憶手段10aの記憶領域の一部は、データ記憶部100として機能する。
【0014】
(データ記憶部)
データ記憶部100は、一の楽曲について、複数のバージョンのカラオケ演奏データを記憶する。
【0015】
楽曲のバージョンは、一般的なカラオケ演奏で使用される通常バージョン、ライブバージョン、生音バージョン、アコーステックバージョンのように、同一の楽曲を異なる環境や楽器で演奏したものである。カラオケ演奏データは、カラオケ演奏音の元となるデータである。カラオケ演奏データはバージョン毎に設けられている。また、カラオケ演奏データは様々な形式のデータがある。たとえば、通常バージョンのカラオケ演奏データはMIDI形式のデータであり、ライブバージョンのカラオケ演奏データはオーディオ形式のデータである。
【0016】
各カラオケ演奏データは、個々の楽曲を特定するための楽曲識別情報、及びバージョンを特定するためのバージョン識別情報が紐付けられている。楽曲識別情報は、楽曲を識別するための楽曲ID等、各楽曲に固有の情報である。バージョン識別情報は、バージョンを識別するためのバージョンID等、各バージョンに固有の情報である。なお、同一の楽曲の複数のバージョンについては、楽曲識別情報が共通である一方、バージョン識別情報がそれぞれ異なっている。或いは、同一の楽曲の複数のバージョンについては、それぞれ異なる楽曲識別情報を紐付けると共に、同一の楽曲であってバージョンが異なることを示す情報を別途紐付けてもよい。
【0017】
各カラオケ演奏データは、演奏区間を示す情報(演奏区間情報)が紐付けられている。演奏区間は、カラオケ演奏が行われる区間である。一の楽曲の演奏区間は、所定の基準(たとえば、Aメロ、Bメロ、サビ等)に基づいて複数の演奏区間に分割されている。なお、少なくとも同一の楽曲については、異なるバージョンであっても演奏区間情報は同一である(すなわち、各バージョンにおける演奏区間は一致している)。
【0018】
また、各カラオケ演奏データは、カラオケ演奏の基準となるテンポを示すテンポ情報が紐付けられている。
【0019】
記憶手段10aは、各楽曲に対応する歌詞テロップをカラオケ演奏に合わせて表示装置30等に表示させるための歌詞テロップデータ、カラオケ演奏時に表示装置30等に表示される背景映像のデータ、及び楽曲の属性情報を記憶する。楽曲の属性情報は、たとえば、歌手名、楽曲の音楽ジャンル等を含む。なお、バージョン毎に異なる歌詞テロップデータや背景映像データが設定されていてもよい。
【0020】
[通信手段・入力手段]
通信手段10bは、リモコン装置50との通信を行うためのインターフェースを提供する。入力手段10cは、利用者が各種の指示入力を行うための構成である。入力手段10cは、カラオケ本体10に設けられたボタン等である。或いは、リモコン装置50が入力手段10cとして機能してもよい。
【0021】
[演奏手段]
演奏手段10dは、制御手段10eの制御に基づき、楽曲のカラオケ演奏、及びマイク40を通じて入力された歌唱音声に基づく信号の処理を行う。
【0022】
図2に示すように、演奏手段10dは、音源200、切替器300、ミキサ400、及びアンプ500を含む。なお、演奏手段10dは、エフェクタ等、他のハードウェアを含んでもよい。
【0023】
(音源)
音源200は、カラオケ演奏データに基づいてカラオケ演奏のための信号(すなわち、演奏音信号)を生成する。音源200は、生成した演奏音信号を切替器300に出力する。
【0024】
本実施形態において、音源200は、第1の音源200a及び第2の音源200bを含む。第1の音源200aは、MIDI形式のカラオケ演奏データを再生し、演奏音信号を生成する。第2の音源200bは、オーディオ形式のカラオケ演奏データを再生し、演奏音信号を生成する。
【0025】
(切替器)
切替器300は、音源200から出力された複数の演奏音信号のうち、一の演奏音信号を選択してミキサ400に出力する。
【0026】
(ミキサ)
ミキサ400は、切替器300から出力された演奏音信号と、マイク40を通じて入力された歌唱音声に基づく信号をミキシングし、アンプ500に出力する。なお、ミキサ400が切替器300の機能を有していてもよい。
【0027】
(アンプ)
アンプ500は、ミキサ400から出力された信号を増幅してスピーカ20から放音させる。
【0028】
[制御手段]
制御手段10eは、カラオケ装置Kにおける各種の制御を行う。制御手段10eは、CPUおよびメモリ(いずれも図示無し)を備える。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。
【0029】
本実施形態においてはCPUがメモリに記憶されるプログラムを実行することにより、制御手段10eは、第1の制御部600、第2の制御部700、及び演奏処理部800として機能する。
【0030】
(第1の制御部)
第1の制御部600は、ある楽曲の一のバージョンが選曲された場合、当該一のバージョンを含む当該ある楽曲の複数のバージョンそれぞれのカラオケ演奏データを再生し、複数の演奏音信号を生成するよう演奏手段10dを制御する。
【0031】
カラオケ装置Kの利用者は、リモコン装置50を介してカラオケ歌唱を希望する楽曲の一のバージョンを選曲することができる。第1の制御部600は、選曲された楽曲の楽曲識別情報及び一のバージョンのバージョン識別情報に基づいて、データ記憶部100から、楽曲の一のバージョンのカラオケ演奏データを読み出す。また、第1の制御部600は、データ記憶部100から、選曲された楽曲と楽曲識別情報が共通する他のバージョンのカラオケ演奏データを読み出す。第1の制御部600は、読み出したカラオケ演奏データを、バージョン識別情報と紐付けて演奏手段10d(具体的には音源200)に出力する。そして、第1の制御部600は、選曲された楽曲の演奏順が到来した場合、それぞれのカラオケ演奏データを再生し、バージョン毎の複数の演奏音信号を生成するよう音源200を制御する。
【0032】
たとえば、データ記憶部100は、楽曲Xについて、通常バージョンV1のカラオケ演奏データKV1と、ライブバージョンV2のカラオケ演奏データKV2を記憶しているとする。通常バージョンV1とライブバージョンV2は、楽曲IDが共通である一方、バージョンIDが異なっている。また、カラオケ演奏データKV1はMIDI形式であり、カラオケ演奏データKV2はオーディオ形式であるとする。
【0033】
ここで、利用者がリモコン装置50を介して楽曲Xの通常バージョンV1を選曲した場合、第1の制御部600は、楽曲Xの楽曲ID及びバージョンV1のバージョンIDに基づいて、データ記憶部100から、カラオケ演奏データKV1を読み出す。また、第1の制御部600は、データ記憶部100から、楽曲Xと楽曲IDが共通し、バージョンIDが異なるカラオケ演奏データKV2を読み出す。
【0034】
第1の制御部600は、読み出したカラオケ演奏データKV1を通常バージョンV1のバージョンIDと紐付け、音源200に出力する。ここで、カラオケ演奏データKV1は通常バージョンV1のバージョンIDと紐付けられているため、MIDI形式のカラオケ演奏データを再生可能な第1の音源200aに出力される。また、第1の制御部600は、読み出したカラオケ演奏データKV2をライブバージョンV2のバージョンIDと紐付け、音源200に出力する。ここで、カラオケ演奏データKV2はライブバージョンV2のバージョンIDと紐付けられているため、オーディオ形式のカラオケ演奏データを再生可能な第2の音源200bに出力される。
【0035】
楽曲Xの演奏順が到来した場合、第1の制御部600は、カラオケ演奏データKV1を再生し、演奏音信号S1を生成するよう第1の音源200aを制御すると共に、カラオケ演奏データKV2を再生し、演奏音信号S2を生成するよう第2の音源200bを制御する。
【0036】
(第2の制御部)
第2の制御部700は、生成された複数の演奏音信号のうち、選曲された一のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう演奏手段10dを制御する。
【0037】
音源200は、生成した複数の演奏音信号を切替器300に出力する。第2の制御部700は、選曲された一のバージョンの演奏音信号のみをミキサ400に出力するよう、切替器300を制御する。
【0038】
たとえば、上述の通り、利用者がリモコン装置50を介して楽曲Xの通常バージョンV1を選曲したとする。この場合、第1の音源200aは、演奏音信号S1を生成し、切替器300に出力する。また、第2の音源200bは、演奏音信号S2を生成し、切替器300に出力する。
【0039】
第2の制御部700は、演奏音信号S1及び演奏音信号S2のうち、利用者が選曲した通常バージョンV1に対応する演奏音信号S1(すなわち、第1の音源200aから出力された演奏音信号)のみをミキサ400に出力するよう、切替器300を制御する。
【0040】
(演奏処理部)
演奏処理部800は、カラオケ演奏に関する処理を行う。
【0041】
演奏処理部800は、切替器300から出力された演奏音信号をアンプ500に出力するよう、ミキサ400を制御する。また、演奏処理部800は、ミキサ400から出力された信号を増幅し、スピーカ20からカラオケ演奏音を放音させるよう、アンプ500を制御する。利用者は、カラオケ演奏音に合わせて楽曲のカラオケ歌唱を行うことができる。利用者がカラオケ歌唱を行った場合、演奏処理部800は、切替器300から出力された演奏音信号と、マイク40を通じて入力された歌唱音声に基づく信号とをミキシングし、アンプ500に出力するよう、ミキサ400を制御する。
【0042】
ここで、本実施形態に係る演奏処理部800は、演奏手段10dによる一のバージョンに対応する演奏音信号の出力中に、バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、当該演奏音信号が出力されている一の演奏区間の次の演奏区間から、当該一のバージョンに対応する演奏音信号の代わりに、当該一のバージョンとは異なる他のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう演奏手段10dを制御する。すなわち、一のバージョンのカラオケ演奏音の放音中に、バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、当該カラオケ演奏音が放音されている一の演奏区間の次の演奏区間から、当該一のバージョンのカラオケ演奏音の代わりに、当該一のバージョンとは異なる他のバージョンのカラオケ演奏音が放音されるようになる。
【0043】
バージョンの変更を要求する指示入力は、様々な方法で行うことができる。たとえば、リモコン装置50を介して指示入力を行うことができる。具体的に、利用者は、リモコン装置50の表示画面に表示される専用のアイコンを選択することにより、指示入力を行う。或いは、音声による指示入力を行うこともできる。具体的に、利用者は、マイク40を介して所定のキーワード(たとえば、「変更」、「間違い」、「チェンジ」)を発することにより、指示入力を行う。
【0044】
バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、演奏処理部800は、演奏中の一のバージョンの演奏区間情報を参照し、演奏音信号が出力されている一の演奏区間の次の演奏区間を特定する。演奏処理部800は、特定した次の演奏区間から他のバージョンに対応する演奏音信号(すなわち、選曲されたバージョンに対応する演奏音信号とは異なる演奏音信号)をミキサ400に出力するよう、切替器300を制御する。また、演奏処理部800は、切替器300から出力された他のバージョンに対応する演奏音信号をアンプ500に出力するよう、ミキサ400を制御する。更に、演奏処理部800は、ミキサ400から出力された信号を増幅し、一のバージョンのカラオケ演奏音の代わりに、他のバージョンのカラオケ演奏音をスピーカ20から放音させるよう、アンプ500を制御する。
【0045】
たとえば、楽曲Xの通常バージョンV1のカラオケ演奏音を聴いた利用者が、カラオケ歌唱を希望するバージョン(ライブバージョンV2)と異なるバージョンを選曲したことに気づいたとする。この場合、利用者は、マイク40を介してバージョンの変更を要求する指示入力を行う。
【0046】
バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、演奏処理部800は、通常バージョンV1の演奏区間情報を参照し、現在、演奏音信号が出力されている演奏区間Pnの次の演奏区間Pn+1を特定する。演奏処理部800は、特定した演奏区間Pn+1からライブバージョンV2に対応する演奏音信号S2をミキサ400に出力するよう、切替器300を制御する。演奏処理部800は、切替器300から出力された演奏音信号S2をアンプ500に出力するよう、ミキサ400を制御する。演奏処理部800は、ミキサ400から出力された信号を増幅し、通常バージョンV1のカラオケ演奏音の代わりに、ライブバージョンV2のカラオケ演奏音をスピーカ20から放音させるよう、アンプ500を制御する。よって、利用者は、演奏区間Pn+1から、カラオケ歌唱を希望する楽曲XのライブバージョンV2のカラオケ歌唱を行うことができる。
【0047】
なお、演奏処理部800は、他のバージョンに対応する演奏音信号を出力させる場合、一のバージョンに対応する演奏音信号の生成を中止するよう演奏手段10dを制御することができる。
【0048】
たとえば、上述の通り、楽曲Xの通常バージョンV1のカラオケ演奏音の代わりに、ライブバージョンV2のカラオケ演奏音がスピーカ20から放音されたとする。この際、演奏処理部800は、楽曲Xの通常バージョンV1に対応する演奏音信号S1の生成を中止するよう第1の音源200aを制御することができる。従って、第1の音源200aは、特定された演奏区間Pn+1以降、通常バージョンV1に対応する演奏音信号S1を生成しない。
【0049】
また、一の楽曲について、3以上のバージョンのカラオケ演奏データが記憶されている場合もありうる。この場合、バージョンの変更を要求したとしても、カラオケ歌唱を希望するバージョンのカラオケ演奏が行われるとは限らない。そこで、演奏処理部800は、再度、バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、改めて上述の処理を行う。
【0050】
たとえば、楽曲Yについては、通常バージョンV3、ライブバージョンV4、及び生音バージョンV5が存在するとする。また、利用者は、楽曲Yの生音バージョンV5を選曲しようとしたところ、誤って通常バージョンV3を選曲したとする。この場合、演奏処理部800は、楽曲Yの通常バージョンV3のカラオケ演奏音を放音するよう演奏手段10dを制御する。
【0051】
楽曲Yの通常バージョンV3のカラオケ演奏音を聴いた利用者は、カラオケ歌唱を希望する生音バージョンV5と異なるバージョンを選曲したことに気づく。この場合、利用者は、マイク40を介してバージョンの変更を要求する指示入力を行う。
【0052】
ここで、バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、演奏処理部800は、通常バージョンV3に対応する演奏音信号の代わりに、ライブバージョンV4及び生音バージョンV5のうち、ライブバージョンV4に対応する演奏音信号をミキサ400に出力するよう切替器300を制御し、ライブバージョンV4のカラオケ演奏音をスピーカ20から放音させるよう、アンプ500を制御したとする。
【0053】
上述の通り、ライブバージョンV4は、利用者がカラオケ歌唱を希望するバージョンではない。よって、利用者は、再度、バージョンの変更を要求する入力を行う。
【0054】
この場合、演奏処理部800は、ライブバージョンV4に対応する演奏音信号の代わりに、生音バージョンV5に対応する演奏音信号をミキサ400に出力するよう切替器300を制御し、生音バージョンV5のカラオケ演奏音をスピーカ20から放音させるようアンプ500を制御する。
【0055】
==カラオケ装置Kの動作について==
次に、図3を参照して本実施形態におけるカラオケ装置Kの動作の具体例について述べる。図3は、カラオケ装置Kの動作例を示すフローチャートである。なお、この例では、利用者がある楽曲の通常バージョンを選曲したとする。また、データ記憶部100は、ある楽曲の通常バージョンに対応するMIDI形式のカラオケ演奏データ、及びライブバージョンに対応するオーディオ形式のカラオケ演奏データを記憶しているとする。
【0056】
第1の制御部600は、通常バージョンのカラオケ演奏データを再生し、通常バージョンの演奏音信号を生成するよう第1の音源200aを制御する。また、第1の制御部600は、ライブバージョンのカラオケ演奏データを再生し、ライブバージョンの演奏音信号を生成するよう第2の音源200bを制御する(通常バージョン及びライブバージョンの演奏音信号を生成。ステップ10)。
【0057】
第2の制御部700は、ステップ10で生成された複数の演奏音信号のうち、選曲された通常バージョンに対応する演奏音信号を出力するよう切替器300を制御する(通常バージョンに対応する演奏音信号を出力。ステップ11)。
【0058】
演奏処理部800は、切替器300から出力された演奏音信号をアンプ500に出力するよう、ミキサ400を制御する。また、演奏処理部800は、ミキサ400から出力された信号を増幅し、スピーカ20から通常バージョンのカラオケ演奏音を放音させるよう、アンプ500を制御する(通常バージョンのカラオケ演奏音を放音。ステップ12)。
【0059】
ここで、カラオケ装置Kから放音されるカラオケ演奏音を聴いた利用者が、ある楽曲のライブバージョンを選曲しようとして、誤って通常バージョンを選曲したことに気づいたとする(ステップ13でYの場合)。
【0060】
この場合、利用者は、通常バージョンのカラオケ演奏音の放音中にバージョンの変更を要求する指示入力を行う(バージョンの変更を要求。ステップ14)。
【0061】
演奏処理部800は、ステップ14の指示入力に基づき、演奏音信号が出力されている一の演奏区間の次の演奏区間から、通常バージョンに対応する演奏音信号の代わりに、ライブバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう、演奏手段10dを制御する(通常バージョンに対応する演奏音信号の代わりに、ライブバージョンに対応する演奏音信号を出力。ステップ15)。具体的に、演奏処理部800は、通常バージョンの演奏区間情報を参照し、現在、演奏音信号が出力されている演奏区間の次の演奏区間を特定する。演奏処理部800は、特定した次の演奏区間からライブバージョンに対応する演奏音信号をミキサ400に出力するよう、切替器300を制御する。演奏処理部800は、切替器300から出力された演奏音信号をアンプ500に出力するよう、ミキサ400を制御する。演奏処理部800は、ミキサ400から出力された信号を増幅し、ライブバージョンのカラオケ演奏音をスピーカ20から放音させるよう、アンプ500を制御する。
【0062】
以上から明らかなように、本実施形態に係るカラオケ装置Kは、一の楽曲について、複数のバージョンのカラオケ演奏データを記憶するデータ記憶部100と、ある楽曲の一のバージョンが選曲された場合、当該一のバージョンを含む当該ある楽曲の複数のバージョンそれぞれのカラオケ演奏データを再生し、複数の演奏音信号を生成するよう演奏手段10dを制御する第1の制御部600と、生成された複数の演奏音信号のうち、選曲された一のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう演奏手段10dを制御する第2の制御部700と、演奏手段10dによる一のバージョンに対応する演奏音信号の出力中に、バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、当該演奏音信号が出力されている一の演奏区間の次の演奏区間から、当該一のバージョンに対応する演奏音信号の代わりに、当該一のバージョンとは異なる他のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう演奏手段10dを制御する演奏処理部800と、を有する。
【0063】
このようなカラオケ装置Kによれば、カラオケ歌唱を希望するバージョンと異なるバージョンを選曲したことに気づいた利用者が、バージョンの変更を要求する指示入力を行うだけで、カラオケ歌唱を希望するバージョンのカラオケ演奏音を放音することができる。よって、利用者は、リモコン装置を介して現在行われているカラオケ演奏を中止させ、楽曲のバージョンを改めて選択し直すといった作業を行うことなく、希望するバージョンのカラオケ歌唱を楽しむことができる。すなわち、本実施形態に係るカラオケ装置Kによれば、カラオケ歌唱を希望するバージョンとは異なるバージョンを利用者が選曲した場合であっても、カラオケ歌唱を希望するバージョンのカラオケ演奏を容易に行うことができる。
【0064】
また、本実施形態に係るカラオケ装置Kにおいて、演奏処理部800は、他のバージョンに対応する演奏音信号を出力させる場合、一のバージョンに対応する演奏音信号の生成を中止するよう演奏手段10dを制御することができる。このように、演奏処理部800が一のバージョンに対応する演奏音信号の生成を中止させることにより、演奏手段10dの処理負荷を軽減することができる。
【0065】
また、演奏手段10dは、MIDI形式のカラオケ演奏データを再生し、演奏音信号を生成する第1の音源200aと、オーディオ形式のカラオケ演奏データを再生し、演奏音信号を生成する第2の音源200bとを含む。カラオケ演奏データの形式に応じた音源を設けることにより、演奏音信号を効率よく生成することができる。
【0066】
また、演奏処理部800は、音声による指示入力に基づいて、他のバージョンに対応する演奏音信号を出力するよう演奏手段10dを制御することができる。この場合、カラオケ歌唱を希望するバージョンと異なるバージョンを選曲したことに気づいた利用者は、マイク40を介してバージョンの変更の要求を容易に行うことができる。
【0067】
<変形例1>
同一楽曲の異なるバージョン毎に、テンポ情報が示すテンポが異なることがある。
【0068】
たとえば、上記実施形態の例において、楽曲Xの通常バージョンとライブバージョンでテンポが異なるとする。この場合、演奏処理部800が特定した次の演奏区間の先頭からライブバージョンに対応する演奏音信号を出力できない可能性がありうる。
【0069】
そこで、演奏処理部800は、一のバージョンのカラオケ演奏データに紐付けられたテンポ情報に基づいて、他のバージョンの演奏音信号を生成するよう演奏手段10dを制御してもよい。
【0070】
バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、演奏処理部800は、データ記憶部100から、一のバージョンのカラオケ演奏データに紐付けられたテンポ情報を取得する。演奏処理部800は、取得したテンポ情報が示すテンポに応じてカラオケ演奏データを再生し、演奏音信号を生成するよう音源200を制御する。
【0071】
たとえば、実施形態の例において、バージョンの変更を要求する指示入力があった場合、演奏処理部800は、データ記憶部100から、通常バージョンV1のカラオケ演奏データKV1に紐付けられたテンポ情報TI1を取得する。演奏処理部800は、ライブバージョンV2のテンポ情報TI2が示すテンポt2を、取得したテンポ情報TI1が示すテンポt1に変更してカラオケ演奏データKV2を再生し、演奏音信号S2´を生成するよう第2の音源200bを制御する。なお、この例では楽曲Xの通常バージョンV1のテンポ情報TI1が示すテンポt1と、ライブバージョンV2のテンポ情報TI2が示すテンポt2は異なっている。
【0072】
その後、実施形態と同様、演奏処理部800は、通常バージョンV1の演奏区間情報を参照し、現在、演奏音信号が出力されている演奏区間Pnの次の演奏区間Pn+1を特定する。演奏処理部800は、特定した演奏区間Pn+1からライブバージョンV2に対応する演奏音信号S2´をミキサ400に出力するよう、切替器300を制御する。演奏処理部800は、切替器300から出力された演奏音信号S2´をアンプ500に出力するよう、ミキサ400を制御する。演奏処理部800は、ミキサ400から出力された信号を増幅し、通常バージョンV1のテンポTI1と同じテンポt1で再生されたカラオケ演奏データKV2に基づくカラオケ演奏音を放音させるよう、アンプ500を制御する。
【0073】
なお、演奏処理部800は、演奏区間Pn+1以降の演奏区間についても、テンポ情報TI1が示すテンポt1でカラオケ演奏データKV2を再生するよう、第2の音源200bを制御する。
【0074】
このようなカラオケ装置Kによれば、一のバージョンのカラオケ演奏音の代わりに、他のバージョンのカラオケ演奏音を放音した場合であっても、カラオケ演奏のテンポが変わることがない。よって、利用者は、バージョンの変更に伴う違和感を持つことなく、スムーズにカラオケ歌唱を行うことができる。
【0075】
<変形例2>
同一楽曲の異なるバージョンについては、変形例1で述べたようなテンポ情報が示すテンポが異なる場合や、演奏区間の長さが異なる場合がある。たとえば、アーティストがライブを行う際、前奏の前にギターソロを行ったり、間奏の間にコールアンドレスポンスを行うことがある。このようなライブを忠実に再現したライブバージョンのカラオケ演奏データは、通常バージョンのカラオケ演奏データに比べて前奏や間奏の区間が長くなる。
【0076】
ここで、テンポや演奏区間の長さが異なるバージョンのカラオケ演奏データを用いる場合、一のバージョンのカラオケ演奏音の代わりに、一のバージョンとは異なる他のバージョンのカラオケ演奏音を放音する際にカラオケ演奏がスムーズに繋がらない可能性がある。
【0077】
本変形例に係る演奏処理部800は、一の演奏区間において演奏音信号を出力中は、他のバージョンのカラオケ演奏データの再生を、次の演奏区間の先頭のタイミングまで早送りし、一時停止するよう演奏手段10dを制御することができる。
【0078】
たとえば、実施形態同様、楽曲Xの通常バージョンV1のカラオケ演奏音を聴いた利用者が、カラオケ歌唱を希望するバージョン(ライブバージョンV2)と異なるバージョンを選曲したことに気づいたとする。
【0079】
利用者からバージョンの変更を要求する指示入力があった場合、演奏処理部800は、通常バージョンV1の演奏区間情報を参照し、現在、演奏音信号が出力されている演奏区間Pnの次の演奏区間Pn+1を特定する。
【0080】
本変形例に係る演奏処理部800は、ライブバージョンV2のカラオケ演奏データの再生を、次の演奏区間Pn+1の先頭のタイミングまで早送りし、一時停止するよう第2の音源200bを制御する。
【0081】
その後、演奏処理部800は、特定した演奏区間Pn+1からライブバージョンV2のカラオケ演奏データの一時停止を解除して再生を開始し、実施形態と同様、ライブバージョンV2に対応する演奏音信号S2をミキサ400に出力するよう、切替器300を制御する。演奏処理部800は、切替器300から出力された演奏音信号S2をアンプ500に出力するよう、ミキサ400を制御する。演奏処理部800は、ミキサ400から出力された信号を増幅し、通常バージョンV1のカラオケ演奏音の代わりに、ライブバージョンV2のカラオケ演奏音をスピーカ20から放音させるよう、アンプ500を制御する。
【0082】
このようなカラオケ装置Kによれば、一のバージョンと他のバージョンのテンポや演奏区間の長さが異なる場合であっても、カラオケ演奏を中断させることなく、バージョンの変更が可能となる。よって、利用者は、バージョンの変更に伴う違和感を持つことなく、スムーズにカラオケ歌唱を行うことができる。
【0083】
<その他>
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
100 データ記憶部
200 音源
200a 第1の音源
200b 第2の音源
300 切替器
400 ミキサ
500 アンプ
600 第1の制御部
700 第2の制御部
800 演奏処理部
K カラオケ装置
図1
図2
図3